JP6794146B2 - 高温超電導磁石装置 - Google Patents
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Description
従って、電気抵抗がゼロになるといわれる超電導状態においても無限に電流を流すことはできず、上記いずれかの臨界値を超えると、連鎖的な常電導転移現象、すなわちクエンチが発生する。
クエンチ時の常電導転移領域におけるジュール発熱によって、超電導コイルは瞬時に熱暴走し、最悪の場合、焼損に至る。
励磁電源を切り離して超電導コイルおよび保護抵抗のみの閉回路にすることで、保護抵抗のジュール発熱で超電導コイルの蓄積エネルギーが消費され、電流が減衰する。
しかし、このような温度帯における高温超電導線材は、低温運転における低温超電導線材と比較して比熱が大きいため、一部に常電導転移が発生しても常電導領域の拡大が遅い。
よって、高電流密度運転時に常電導転移が発生しても、上述した従来技術の保護措置では、検知する前に局所的に熱暴走が発生し焼損してしまう。
ターン間が短絡されることで、有限の抵抗値を有する常電導転移領域を迂回するように隣接するターンへ転流する電流が発生する。
よって、常電導転移領域におけるコイル周方向の電流密度が自律的に低下され、熱暴走を未然に防止することができる。
つまり、蓄積エネルギーの高い超電導コイルにおいては、他のターンへ超電導電流を迂回させることでコイル内部の局所的な温度上昇を加速させてしまい、より焼損の危険性を助長するという課題があった。
まず、図1の一般的な高温超電導線材20の構成斜視図を用いて、高温超電導線材20(以下、単に「超電導線材20」という)の構成を概説する。
超電導線材20は、図1に示されるように、一般に薄膜状の層が積層されたテープ形状の線材を構成している。
この超電導線材20は、例えばレアメタル酸化物(RE酸化物)からなる高温超電導層25(以下、「超電導層25」という)を含むREBCO線材などの線材である。
なお、超電導線材20を構成する各層の種類および数は、必要に応じて多い場合も少ない場合もある。
超電導線材20は、巻回軸Cを中心に同心円状に巻回されて、いわゆるパンケーキコイル30になる。
第1実施形態にかかる磁石装置10は、図3に示されるように、パンケーキコイル30(30a〜30h)を巻回軸Cに沿って複数積層されて、コイル積層体40を構成する。
コイル積層体40は、真空容器11に収容されて冷凍機12で冷却される。
図4に示されるように、コイル積層体40のうち、隣接するパンケーキコイル30同士は、絶縁体27で絶縁される。
そして、これら隣接するパンケーキコイル30同士は、その最内周および最外周のいずれかにおいて、導通導体13で交互に電気的に接続される。
この導通導体13によってコイル積層体40を構成する全てのパンケーキコイル30が導通されて、1本の超電導電流の流通経路になる。
口出し電極16は、直接にまたは導通導体13を介してパンケーキコイル30に電気的に接続される。
口出し電極16が接続されたこれら両端部のパンケーキコイル30a,30hは、通常、フランジ17などで巻回軸方向にその両端から挟まれて固定される。
口出し電極16が励磁電源18に環状に接続されることで、コイル積層体40を含む閉回路100が形成される。
励磁電源切離スイッチ19は、励磁電源電流Iが励磁工程を経て定常状態になった後に、閉回路100から励磁電源18を切り離すためのスイッチである。
閉回路100を無抵抗にすることで、励磁電源18が切り離されても、超電導電流が流れ続ける永久電流モードになる。
つまり、短絡迂回路31は、コイル積層体40の最内周または最外周において、1以上のパンケーキコイル30を跨いで閉回路100に並列接続される。
以下、短絡迂回路31の接続方法について、具体的に説明する。
このような接続によって、2つの導通導体13が接続された3つのパンケーキコイル30a〜30cのうち、上段の2つのパンケーキコイル30a,30bを電流が迂回することになる。
以下、フラックスフロー抵抗Rfが発生して迂回されるパンケーキコイル30を必要に応じてパンケーキコイル30a,30bと明示する。
フラックスフロー抵抗Rfは、上述した温度等の臨界値に近づくとともに急激に増加するため、フラックスフロー抵抗Rfによる発熱は熱暴走の主要因になる。
つまり、短絡迂回路31は、例えば電気的負荷率が高く、フラックスフロー抵抗Rfの発生率の高いパンケーキコイル30を迂回区間に含むように接続される。
臨界電流特性の磁場に対する角度依存性が強い場合、巻回軸方向の両端部のパンケーキコイル30a,30hにおいて臨界電流値が相対的に低くなる。
なお、フラックスフロー抵抗Rfの発生の容易さは、使用される超電導線材20などにも依存する。
また、例えば、図5に示されるように、一端は導通導体13で他端は口出し電極16であってもよい。
そこで、短絡迂回路31は、図6に示されるように、導通導体13を介さずに、この導体区間15に直接接続されてもよい。
特に、パンケーキコイル30の最外周は、超電導線材20が露出していることも多い。
よって、図8に示されるように、導通導体13を介さずに、短絡迂回路31を直接パンケーキコイルに接続することが容易である。
さらに、図9に示されるように、最内周に巻枠14が設けられていないコイル積層体40の場合には、超電導線材20に直接短絡迂回路31を接続してもよい。
2つのコイル積層体40(40a,40b)を短絡迂回路31で接続する場合、短絡迂回路31の一端を第1コイル積層体40aの最内周、他端を第2コイル積層体40bの最外周に接続することもできる。
つまり、例えば短絡迂回路31が巻回軸方向から傾いて接続されることで、迂回するべきパンケーキコイル30の微小区間だけ超電導電流が流れる場合も、このパンケーキコイル30は迂回されているものとする。
磁石装置10の回路図のように表されることになる。
図11において、パンケーキコイル30は、無抵抗のコイル28(28a〜28f)と
、抵抗値が変動するフラックスフロー抵抗Rfの抵抗値を有する抵抗29(29a〜29
f)と、で表される。
よって、永久電流モードの状態で一部常電導転移が発生すると、熱暴走を発生させることなく超電導電流は消失する。
なお、短絡迂回路31は、図12の第1実施形態にかかる磁石装置10の変形例の回路図に示されるように、当然複数設けられてもよい。
式(1)から次式(2)が導かれる。さらに、Ipが定常状態になってdIp/dtが無視できる場合、次式(3)が成り立つ。
ただし、定格電流値まで励磁電源電流Iを上昇させるいわゆる励磁工程、または降下させる消磁工程においては、dIp/dtが無視できず、式(1)は次式(4)になる。
よって、短絡迂回路31の抵抗値は、励磁速度に応じて設定することが望ましい。
よって、迂回電流Iuの発生による磁石装置10の熱暴走を防止することができる。
よって、他のパンケーキコイル30に高電圧がかかることで発生するアークによる副次的な焼損被害も抑制される。
図13は、第2実施形態にかかる磁石装置10の回路図である。
第2実施形態にかかる磁石装置10は、図13に示されるように、短絡迂回路31に設けられて、この短絡迂回路31へ流入する電流量を検出する検出部32と、検出部32の検出値に基づいて励磁電源切離スイッチ19を切り換える監視部34と、を備える。
また、励磁工程または消磁工程では、コイル積層体40に励磁電源18が接続される。
このように励磁電源18が接続されているときに常電導転移が発生した場合、通常は励磁電源18を閉回路100aから切り離して消磁する。
検出部32は、例えば短絡迂回路31の両端の電圧を検出する電圧計または迂回電流Iuを検出する電流計などである。
検出部32の検出値が既定の閾値を超えた場合に監視部34が励磁電源切離スイッチ19をONにして励磁電源18を含まない閉回路100aを形成することで、第1実施形態と同様の消磁をする。
図面においても、共通の構成または機能を有する部分は同一符号で示し、重複する説明を省略する。
図14は、第3実施形態にかかる磁石装置10の回路図である。
第3実施形態にかかる磁石装置10は、図14に示されるように、短絡迂回路31に迂回スイッチ35が設けられる。
よって、短絡迂回路31の抵抗値が小さいと、大半の電流がパンケーキコイル30を周回せずに短絡迂回路31を流れてしまう。
そこで、第3実施形態では、短絡迂回路31の抵抗値を小さくするとともに、励磁工程などの過渡期間には迂回スイッチ35をOFFにして短絡迂回路31を切断する。
上記のように短絡迂回路31の抵抗値を十分に小さくすることができるので、例えば、迂回スイッチ35として永久電流スイッチ35a(35)を用いることができる。
永久電流スイッチ35aは、抵抗値が超電導状態の超電導線材20と同程度に小さいスイッチである。つまり、永久電流スイッチ35aは、通常、超伝導体で構成される。
永久電流スイッチ35aには、スイッチを入熱によって切り替える熱式のもの、または外部からの外力によってスイッチを切り換える機械式のものなどがある。
永久電流スイッチ35aを用いることで、迂回区間のパンケーキコイル30a,30bにフラックスフロー抵抗Rfが発生した後も永久電流モードが維持されることにもなる。
図面においても、共通の構成または機能を有する部分は同一符号で示し、重複する説明を省略する。
よって、フラックスフロー抵抗Rfが発生したパンケーキコイル30a,30bの迂回を容易にして、より熱暴走を確実に抑制することができる。
図16は、第4実施形態にかかる磁石装置10の回路図である。
第4実施形態にかかる磁石装置10は、図16に示されるように、短絡迂回路31と並列に両端部のパンケーキコイル30a,30hに接続される口出し電極16同士を接続する短絡経路37を備える。
また、フラックスフロー抵抗Rfの発生を誘引する電気的負荷率も、想定外の値になることもある。
よって、磁石装置10の作成時には想定されておらず、短絡迂回路31による保護措置が施されていなかったパンケーキコイル30c,30dに常電導転移が発生することもある。
短絡経路37によって、短絡迂回路31によって迂回されていないパンケーキコイル30c,30dに高いフラックスフロー抵抗Rfが発生した場合、励磁電源電流Iは、全てのパンケーキコイル30(30a〜30f)を迂回することになる。
なお、短絡経路37にも第3実施形態と同様に不要な迂回を防止するための迂回スイッチ35を設けることが望ましい。
図面においても、共通の構成または機能を有する部分は同一符号で示し、重複する説明を省略する。
図17は、第5実施形態にかかる磁石装置10の回路図である。
第5実施形態にかかる磁石装置10は、図17に示されるように、短絡迂回路31に、冷却手段38が接続される。
しかし、局所的に常電導転移が発生してフラックスフロー抵抗Rfが高くなっても、磁石装置10として使用を継続させることが必要なことがある。
例えば、一時的にフラックスフロー抵抗Rfが発生して迂回電流Iuが発生しても、このフラックスフロー抵抗Rfが喪失すれば、超電導電流Ipおよび磁場は回復することもある。
冷却手段38は、コイル積層体40を冷却するために設けられた冷凍機12(図3)を利用してもよいし、短絡迂回路31の冷却専用に設けられた冷凍機を利用してもよい。
つまり、短絡迂回路31の冷却は、磁石装置10の使用を継続せずに消磁する場合も有効である。
図面においても、共通の構成または機能を有する部分は同一符号で示し、重複する説明を省略する。
また、短絡迂回路31のジュール熱が短絡迂回路31の周囲のパンケーキコイル30に伝導して周囲のパンケーキコイル30に熱暴走による焼損が発生することも防止することができる。
これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。
これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
Claims (9)
- 薄膜層を積層した高温超電導線材を巻回されて構成されるパンケーキコイルを巻回軸に沿って複数積層させたコイル積層体と、
積層されて隣接する前記パンケーキコイル同士の最内周および最外周のいずれかを交互に電気的に接続して前記コイル積層体を導通させる複数の導通導体と、
前記コイル積層体の両端部のパンケーキコイルが導通されて形成される前記コイル積層体を含む閉回路と、
前記コイル積層体の最内周および最外周の少なくとも一方において前記閉回路に並列接続されて巻回軸方向の片端部もしくは両端部のパンケーキコイルのみを迂回して接続されており、かつ、前記パンケーキコイルでクエンチの発生前に発生するフラックスフロー抵抗の抵抗値を有し、一端が前記導通導体に、他端が他の導通導体または前記両端部のパンケーキコイルに接続される電極を介して前記パンケーキコイルに接続される短絡迂回路と、を備える高温超電導磁石装置。 - 前記短絡迂回路は、一端が前記導通導体に、他端が他の導通導体または前記両端部のパンケーキコイルに接続される電極に接続される請求項1に記載の高温超電導磁石装置。
- 前記短絡迂回路は、少なくとも一端が前記パンケーキコイルの最内周に設けられた巻枠のうち前記導通導体を接続するための導体区間に接続される請求項1または請求項2に記載の高温超電導磁石装置。
- 前記短絡迂回路は、1のコイル積層体と他のコイル積層体とを接続する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の高温超電導磁石装置。
- 前記短絡迂回路は、超電導体で構成されて前記パンケーキコイルとの接続部分で発生する接続抵抗により前記パンケーキコイル自体の内部抵抗値より高い抵抗値を有する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の高温超電導磁石装置。
- 前記短絡迂回路は、熱式または機械式の迂回スイッチを備える請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の高温超電導磁石装置。
- 前記短絡迂回路と並列に前記両端部のパンケーキコイルに接続される電極同士を接続する短絡経路を備える請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の高温超電導磁石装置。
- 前記短絡迂回路には、冷却手段が接続される請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の高温超電導磁石装置。
- 前記短絡迂回路に設けられてこの短絡迂回路へ流入する電流量を検出する検出部を備える請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の高温超電導磁石装置。
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