JP2004186524A - 超電導磁石装置及び超電導変圧器 - Google Patents
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Abstract
【課題】サージ侵入による超電導コイルの電圧・電流変動を抑制することができる超電導磁石装置を提供する。
【解決手段】超電導回路が、超電導コイル1と、超電導回路の定格通電電流を通電することができ、超電導コイル1と並列に設けられたクエンチ保護抵抗2とを備え、許容通電電流容量が超電導回路の定格通電電流以下であり、超電導回路の定常運転時には微小電流しか流れないサージバイパス抵抗2を、超電導コイル1の巻線に並列に接続して、サージ侵入時には超電導コイル1のバイパス回路となる並列回路を設けた。
【選択図】 図1
【解決手段】超電導回路が、超電導コイル1と、超電導回路の定格通電電流を通電することができ、超電導コイル1と並列に設けられたクエンチ保護抵抗2とを備え、許容通電電流容量が超電導回路の定格通電電流以下であり、超電導回路の定常運転時には微小電流しか流れないサージバイパス抵抗2を、超電導コイル1の巻線に並列に接続して、サージ侵入時には超電導コイル1のバイパス回路となる並列回路を設けた。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、超電導磁石装置に関し、特に、サージ侵入による電圧・電流変動の抑制に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
超電導磁石では、サージが侵入した際に、コイル巻線内部で共振現象を起こし、大電圧、大電流が生じる可能性がある。
【0003】
このような大電圧の発生は、絶縁破壊につながる。また、大電流の発生は、後述のクエンチ(超電導破壊現象)の原因となり得る(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
超電導コイルを構成する超電導線は、超電導状態で抵抗ゼロの超電導フィラメント複数本を10−9〜10−10Ωm程度の抵抗率を持った銅、アルミニウム、銀等からなる母材金属に埋め込んで構成された複合材であり、サージ等の周波数が1MHz程度の高周波電流は、表皮効果によって超電導線の表面、即ち母材中を流れる。
【0005】
サージを吸収するためには、バイパス抵抗、バリスタあるいはアレスタに代表されるサージアブソーバ、あるいはツェナーダイオード等の素子を挿入する方法が考えられる。しかし、これまでは超電導磁石においては、クエンチ現象があるために、コイル巻線に対して上記のような素子を備えることはなかった。
【0006】
超電導コイルの抵抗は、通常運転時には、ゼロであり、励磁電源電圧もゼロである。しかし、サージが侵入して超電導コイルのインダクタンスとコイル間の浮遊容量による共振現象が生じたり、超電導コイルの一部で、電磁力に起因する巻線の動きによって摩擦熱等が生じると数K(ケルビン)の温度上昇が起こり、超電導状態が破壊(クエンチ)される。超電導から常伝導に転移することによって常伝導抵抗が発生すると、抵抗ゼロの状態で大電流を流していた超電導線において急激な発熱が起こる。この発熱が周囲に伝導するに従い、常伝導領域が拡大して電圧降下が生じる。
【0007】
一般に、電流密度が高い超電導コイルほど大量の発熱が起こり、常伝導に転移する温度のマージンも小さいため、常伝導抵抗が拡大しやすい。常伝導抵抗部には数kVの電圧が発生する。
【0008】
超電導コイルのクエンチは、前述のように、摩擦熱等のようなわずかな温度上昇がきっかけで発生するので、常伝導領域が何時、超電導コイルのどこで生じるかは不定である。また、コイルの誘導電圧が常伝導部の電圧降下を打ち消す方向に発生する。
【0009】
超電導コイルと並列にクエンチ保護抵抗が設けられている。超電導コイルがクエンチすると、励磁電源は切り離される。超電導コイルに流れていた電流は、クエンチ保護抵抗に還流する。ここで用いられるクエンチ保護抵抗の抵抗は、0.1〜数Ω程度である。
【0010】
抵抗RとインダクタンスLでなる回路の減衰時定数τは、τ=L/Rにより記述される。超電導コイルのインダクタンスLは一定であり、Rは常伝導抵抗とクエンチ保護抵抗の和である。
【0011】
従って、クエンチ保護抵抗が大きい方が速やかに電流を減少でき、常伝導抵抗部の発熱による最高温度を低く押さえることができるが、クエンチ時の電圧が高くなる。励磁電圧(V=Ldi/dt)は、励磁時間と超電導コイル1のインダクタンスLで決まるが、逆に、クエンチ保護抵抗が小さすぎると、ほとんどの電流がクエンチ保護抵抗に流れてしまうために効率的に励磁することができなくなる。
【0012】
そこで、クエンチ保護回路を、超電導コイルの定格電流以上の電流を通電することができる、1ないし複数の抵抗あるいは非線形素子で構成し、この抵抗あるいは非線形素子を超電導コイルと並列に設け、速やかに電流を減衰させていた(例えば、非特許文献2参照)。
【0013】
【非特許文献1】
岩熊成卓、外5名「超電導変圧器の雷サージに対する応答特性の理論的評価I,II,III」,低温工学、1992年,第27巻,第6号,p.473−501
【非特許文献2】
Martin N.Wilson「SuperconductingMagnets」,Clarendon Press Oxford,p226−231
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような、1ないし複数の抵抗あるいは非線形素子からなるクエンチ保護回路では、素子がクエンチ時の電流転流時に損傷しないように、電流容量が大きい素子、言い換えれば寸法が大きな素子を使用していた。
【0015】
従って、クエンチ保護回路は、一つの超電導コイルに対して、並列に、1個ないし数個程度が取り付けられているだけであったために、サージ侵入による超電導コイルの共振現象(電圧・電流変動)の抑制に対して有効ではなかった。
【0016】
本発明は、上記のような状況に鑑みなされたものであり、サージ侵入による超電導コイルの電圧・電流変動を抑制することができる超電導磁石装置を提供するものである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る超電導磁石装置は、超電導回路が、超電導コイルと、上記超電導回路の定格通電電流を通電することができ、上記超電導コイルと並列に設けられたクエンチ保護抵抗とを備えた超電導磁石装置において、許容通電電流容量が上記超電導回路の定格通電電流以下であり、上記超電導回路の定常運転時には微小電流しか流れないサージバイパス抵抗及び非線形素子の少なくともいずれか一方を、上記超電導コイルの巻線に並列に接続して、サージ侵入時には上記超電導コイルのバイパス回路となる並列回路を設けたものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明に係る超電導磁石装置の実施の形態1を示す回路図である。同図に示したように、超電導磁石装置は、超電導コイル1、許容通電電流容量が超電導回路の定格通電電流以下であり、サージ電圧・電流抑制用のサージバイパス抵抗2、超電導回路の定格通電電流を通電することができ、超電導コイル1と並列に接続されたクエンチ保護抵抗3、断路器7、超電導コイル1に通電するための励磁電源8を備え、サージバイパス抵抗2は超電導コイル1の巻線に、並列に接続されている。超電導コイル1の入口及び出口においては、サージバイパス抵抗2の一端が超電導コイル1の巻線に接続され、他端が超電導コイル1のリード線に接続されている。また、超電導コイル1はアース5によって接地されている。同図においては、超電導磁石装置に侵入してくるサージ9を模式的に示している。
【0019】
超電導コイル1を構成する超電導線は、超電導状態で抵抗ゼロの超電導フィラメント複数本を10−9〜10−10Ωm程度の抵抗率を持った銅、アルミニウム、銀等からなる母材金属に埋め込んで構成された複合材であり、サージ等の周波数が1MHz程度の高周波電流は、表皮効果によって超電導線の表面、即ち母材中を流れる。
【0020】
図2は、サージバイパス抵抗2が接続されている超電導コイルの等価回路を示す回路図である。超電導コイル1のコイル巻線のインダクタンスL14は、例えば、約1.6μH/mである。この値は、1MHzのサージに対して、ωL=10Ω/mのインピーダンスに相当する。実際にはコイル化されているので単純には表記できないが、線路インダクタンスは長さに比例する。また、巻線間には巻線間の浮遊容量15として、10−10〜10−11F/mが存在する。
【0021】
一方、超電導コイル1の定常運転時は、例えば、周波数60Hzの交流通電(ω=2π60)を仮定した場合でも、超電導コイル1の巻線部分のインピーダンスωLは0.3mΩ/mである。
【0022】
本実施の形態におけるサージバイパス抵抗2を超電導コイル1の巻線の長さ10m分の区間に1個取り付けた場合、サージバイパス抵抗2を100Ωとすれば、定常運転時の交流通電に対してはサージバイパス抵抗2と超電導コイル1との抵抗比は100Ω:3mΩであり、殆ど超電導回路の挙動に影響しない。一方、周波数1MHz程度のサージに対しては、高周波のサージ電流が超電導コイル1を流れるので、サージバイパス抵抗2と超電導コイル1との抵抗比は100Ω:100Ωとなり、サージバイパス抵抗2はインピーダンス的にバイパス回路になり、サージのエネルギーがサージバイパス抵抗2において消散される。
【0023】
超電導コイル1がクエンチした場合の超電導線の単位長さ当りの抵抗は、0.01Ω/m程度である。従って、サージバイパス抵抗2と長さ10mの超電導コイル1の巻線との抵抗比は100Ω:0.01×10Ωになり、クエンチ時においては、サージバイパス抵抗2には微小電流しか流れない。この微小電流は、定常稼動時の熱負荷増加につながらない程度のものである。
【0024】
以上のように、本実施の形態においては、サージバイパス抵抗2が超電導コイル1の巻線に、並列に接続され、サージが侵入した場合、サージのエネルギーがサージバイパス抵抗2において消散されるので、サージが侵入した際の超電導コイル1の線路インダクタンスと浮遊容量による共振を抑制し、最大電圧や最大電流を抑制することができる。
【0025】
また、サージバイパス抵抗2は、許容通電電流が超電導回路の定格電流以下であるので、小型であり、超電導コイル1の巻線の任意の位置に接続することができる。
【0026】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、通常運転時には微小電流しか流れず、サージ侵入時にはインピーダンス的に超電導コイル1のバイパス回路となり得るサージバイパス抵抗2を設けたが、サージバイパス抵抗2に代えて非線形素子を設けてもよい。
【0027】
図3は、実施の形態2を示す回路図であり、図に示したように、超電導コイル1の巻線に、並列に接続された複数の非線形素子4を設けている。超電導コイル1の入口及び出口においては、非線形素子4の一端が超電導コイル1の巻線に接続され、他端が超電導コイル1のリード線に接続される。
【0028】
非線形素子4としては、許容通電電流が超電導回路の通電電流以下であり、定常運転時には微小電流しか流れず、サージ侵入時にはインピーダンス的に超電導コイル1のバイパス回路となり得る素子であればよく、例えば、バリスタ、アレスタ、サイリスタ、ダイオード等がある。
【0029】
図4は、液体ヘリウム温度におけるダイオードの電流・電圧特性を示す図であり、図5は、液体ヘリウム温度におけるバリスタの電流・電圧特性を示す図である。
【0030】
図4に示したように、液体ヘリウム温度(〜4.2K)でダイオードは順方向に電圧をかけた場合、10〜30V程度までは、前述のような微小電流しか流れないが、一度導通すると順方向電圧1V程度で電流が流れる。すなわち、超電導コイル1が定常運転時には、ダイオードからなる非線形素子4には微小電流しか流れず、サージ侵入時には、ダイオードからなる非線形素子4は超電導コイル1の巻線のバイパス回路として機能する。
【0031】
また、図5に示したように、液体ヘリウム温度(〜4.2K)でバリスタは数10V〜数100Vを印加すると導通する。すなわち、超電導コイル1が定常運転時には、バリスタからなる非線形素子4には微小電流しか流れず、サージ侵入時には、バリスタからなる非線形素子4は超電導コイル1の巻線のバイパス回路として機能する。
【0032】
本実施の形態によれば、実施の形態1のように、サージバイパス抵抗2を使用した場合よりも、定常運転時における非線形素子4において発生する損失を低減することができる。
【0033】
また、定常運転時及びクエンチ時に発生する電圧を、非線形素子4のオン電圧以下に設定しておけばよいので、設計が容易になる。
【0034】
実施の形態3.
図6及び図7は、実施の形態3を示す回路図であり、図に示したように、超電導コイル1の巻線の巻始めまたは巻終り、あるいは両方とアース5間に、超電導コイル1の巻線に接続したサージバイパス抵抗2とは別に、副サージバイパス抵抗2を設けている。
【0035】
サージバイパス抵抗2を設ける場所は、図6に示したように、クライオスタット10(真空断熱容器)の極低温領域23の外部でもよく、図7に示したように、クライオスタット10の極低温領域23の内部でもよい。
【0036】
サージバイパス抵抗2aに代えて上記実施の形態2の非線形素子4を用いてもよい。
【0037】
また、上記実施の形態2において、本実施の形態のように、超電導コイル1の巻線の巻始めまたは巻終り、あるいは両方とアース5間に、サージバイパス抵抗2または非線形素子4、あるいは両方を設けてもよい。
【0038】
超電導コイル1の巻線の巻始めまたは巻終り、あるいは両方とアース5間に、サージバイパス抵抗2または非線形素子4を設けることによって、サージ9が超電導コイル1の巻線内部に侵入しにくくなる。
【0039】
実施の形態4.
図8は、実施の形態4を示す回路図であり、永久電流スイッチ6を設けており、超電導コイル1の巻線に接続した永久電流スイッチ6とは別に、永久電流スイッチ6と並列にサージバイパス抵抗2を設けている。
【0040】
永久電流スイッチ6はPCS(Persistent Current Switch)と呼ばれ、超電導コイル1を定格電流まで励磁した後、永久電流モードで運転するための短絡スイッチの役目を果たすものである。超電導コイル1を永久電流モードで運転することによって、励磁電源8を切り離すことができ、超電導コイル1が発生する磁界の安定度も、励磁電源8を定電流制御する場合よりも格段に、かつ、容易に向上する。
【0041】
永久電流スイッチ6のうちで最も一般的なものは、熱式永久電流スイッチである。永久電流スイッチヒータ19によって永久電流スイッチ超電導線18を臨界温度以上に加熱して抵抗を発生させる(図9)。OFF時の抵抗は永久電流スイッチ超電導線18の母材の抵抗で決まる。永久電流スイッチ6に適用される永久電流スイッチ超電導線18の母材は高電気抵抗の銅ニッケル合金等である。永久電流スイッチ超電導線18の母材の抵抗が高いことが、超電導コイル1(母材は銅、アルミニウム等)よりもクエンチを生じやすい原因になっている。
【0042】
本実施の形態においては、永久電流スイッチ6と並列にサージバイパス抵抗2を設けているので、サージ9で誘起された大電流により永久電流スイッチ6がクエンチするのを防ぐことができる。
【0043】
図9及び図10は、永久電流スイッチ6の動作原理を説明するための回路図であり、図9は励磁時、図10は永久電流モード運転時である。図にしたがって永久電流スイッチ6の動作を説明する。
▲1▼超電導コイル1を、励磁電源8に着脱式パワーリード20を介して接続し、永久電流スイッチ6のヒータ19をヒータ電源21に接続する。
▲2▼次に、永久電流スイッチ6のヒータ19にヒータ電源21によって通電すると、超電導線18は、暖められて常伝導状態に遷移し、抵抗が発生する。この状態が永久電流スイッチ6のオフ状態である。
▲3▼永久電流スイッチ6のオフ状態で励磁電源8をオンし、超電導コイル1に電流を通電する。
▲4▼超電導コイル1に流れる電流Iが定格電流に達すると、励磁電源8は定電流制御されて超電導コイル1には一定電流が流れる。
▲5▼次に、ヒータ電源21をオフすると、ヒータ19は液体ヘリウムによって冷却されて超電導状態に復帰し、永久電流スイッチ6がオン状態になり、超電導コイル1の端子間が短絡される。
▲6▼その後、励磁電源8の電流を減少させると、超電導コイル1の永久電流スイッチ6の方へ徐々に移り、励磁電源8の電流がゼロになった時点で、図10に示したように、超電導コイル1と永久電流スイッチ6で構成される閉回路に電流Iが流れ続ける。
【0044】
永久電流スイッチ6のインダクタンスは小さい方が望ましい。永久電流スイッチ6のインダクタンスが大きいと、永久電流モードに移行した際に、永久電流スイッチ6側に磁気エネルギが奪われるためにコイル磁場が減少する。実際には、永久電流スイッチ6も超電導線の巻線で構成されているので、10μH程度のインダクタンスを有する。
【0045】
永久電流スイッチ6が10μH程度のインダクタンスを有することは、永久電流スイッチ6は1MHzのサージに対して、ωL=100Ω程度のインピーダンスを有することを意味する。このような永久電流スイッチ6に対して、並列にサージバイパス抵抗2bを接続することによって、永久電流スイッチ6に対するサージ電流の侵入を防止することができる。
【0046】
なお、本実施の形態において、サージバイパス抵抗2に代えて、上記実施の形態2の非線形素子4を設けてもよく、また、非線形素子4にサージバイパス抵抗2を直列接続してもよい。
【0047】
実施の形態5.
上記実施の形態2のように、非線形素子として電流容量の小さなダイオードを使用したときには、ダイオードが、クエンチ時に分流する電流によって破壊される懸念がある。
【0048】
図11は、実施の形態5を示す回路図である。本実施の形態では、ダイオード12とサージバイパス抵抗2とを直列に接続し、この直列回路を超電導コイル1の巻線に並列に接続し、クエンチ時に分流する電流を低減して、クエンチ時の分流電流によってダイオード12が破壊されないようにしている。
【0049】
なお、本実施の形態において、サージバイパス抵抗2に代えて、バリスタ等の他の非線形素子を用いてもよい。
【0050】
実施の形態6.
図12は、実施の形態6を示す回路図である。同図に示したように、本実施の形態は、電流容量の小さなダイオード12を並列に接続するとともに、各ダイオード12にはサージバイパス抵抗2を直列接続して均流化し、ダイオード12の電流容量の総和を超電導コイル1の通電電流以上にし、このダイオード12の並列回路を超電導コイル1の巻線に並列に接続することによって、クエンチ時の分流電流によってダイオード12が破壊されないようにしている。
【0051】
図4に示したように、極低温(4.2K付近)におけるダイオードは順方向の電圧を印加した場合でも、オン電圧以上になるまで順方向電流は流れない。一旦オン電圧以上になると、順方向電流が流れ、1V程度が発生する。ダイオードのオン電圧は、素子毎の個体差が著しく、十数V〜30V程度のばらつきがある。
【0052】
ダイオード12を並列接続した場合、1つだけ低いオン電圧のダイオード12があった場合、その1個だけが先にオン状態になり、一旦オン状態になるとダイオード12両端は電圧1V程度に制限されるために、他のダイオード12はオンせず、電流が一つの素子に集中することになり、最初にオンしたダイオード12が焼損する可能性がある。
【0053】
本実施の形態においては、ダイオード12と直列に挿入されたサージバイパス抵抗2が、あるダイオード12がオンして電流が増大したときに、ダイオード12とサージバイパス抵抗2との直列接続の両端間の電圧を大きくし、他のダイオード12も確実にオンさせて、複数のダイオード12にバランスよく電流を流せるように均流化する。
【0054】
なお、本実施の形態における、サージバイパス抵抗2を直列接続したダイオード12を並列に接続したダイオード12の並列回路は、クエンチ保護回路3に適用して、クエンチ保護回路3の電流容量を増大させることができ、また、複数のダイオードを液体ヘリウム中で並列接続するすべての場合に適用することができる。
【0055】
実施の形態7.
図13は、実施の形態7を示す回路図であり、変圧器11に本発明に係る超電導磁石装置を適用したものである。本実施の形態においては、上記実施の形態1の超電導磁石装置を適用した例を示しているが、上記実施の形態2乃至6の超電導磁石装置も同様に適用可能である。
【0056】
図13に示したように、変圧器11は1次側超電導コイル11aと、2次側超電導コイル11bを備え、1次側超電導コイル11a及び2次側超電導コイル11bにはそれぞれ、サージバイパス抵抗2が並列に接続されている。また、クエンチ保護時にのみ投入されるスイッチ13が設けられている。
【0057】
サージバイパス抵抗2は、抵抗が大きいために、通常周波数(50〜60Hz)で使用した場合には損失を増大させることはない。
【0058】
サージ9が侵入した場合、サージ9のエネルギーがサージバイパス抵抗2において消散されるので、超電導コイル1の線路インダクタンスと浮遊容量による共振を抑制し、最大電圧や最大電流を抑制することができる。
【0059】
【発明の効果】
本発明に係る超電導磁石装置によれば、超電導回路が、超電導コイルと、上記超電導回路の定格通電電流を通電することができ、上記超電導コイルと並列に設けられたクエンチ保護抵抗とを備えた超電導磁石装置において、許容通電電流容量が上記超電導回路の定格通電電流以下であり、上記超電導回路の定常運転時には微小電流しか流れないサージバイパス抵抗及び非線形素子の少なくともいずれか一方を、上記超電導コイルの巻線に並列に接続して、サージ侵入時には上記超電導コイルのバイパス回路となる並列回路を設けたものであるので、サージが侵入した際の、超電導コイルの線路インダクタンスと浮遊容量による共振を抑制し、最大電圧や最大電流を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る超電導磁石装置の、実施の形態1を示す回路図である。
【図2】実施の形態1において、サージバイパス抵抗が接続されている超電導コイルの等価回路を示す回路図である。
【図3】本発明に係る超電導磁石装置の、実施の形態2を示す回路図である。
【図4】液体ヘリウム中における、ダイオードのV−I特性を示す図である。
【図5】液体ヘリウム中における、バリスタのV−I特性を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態3を示す回路図である。
【図7】本発明の実施の形態3を示す回路図である。
【図8】本発明の実施の形態4を示す回路図である。
【図9】実施の形態4における永久電流スイッチの動作を説明する回路図である。
【図10】実施の形態4における永久電流スイッチの動作を説明する回路図である。
【図11】本発明の実施の形態5を示す回路図である。
【図12】本発明に係る超電導磁石装置の、実施の形態6を示す回路図である。
【図13】本発明の実施の形態7を示す回路図である。
【符号の説明】
1 超電導コイル、2 サージバイパス抵抗、3 クエンチ保護抵抗、
4 非線形素子、5 アース、6 永久電流スイッチ、7 断路器、
8 励磁電源、9 サージ、10 クライオスタット、11 超電導変圧器、
11a 1次側超電導コイル、11b 2次側超電導コイル、13 スイッチ、
14 コイル巻線のインダクタンス、15 巻線間の浮遊容量、
18 永久電流スイッチ超電導線、19 永久電流スイッチヒータ、
20 着脱式パワーリード、21 ヒータ電源、22 常伝導抵抗、
23 極低温領域。
【発明の属する技術分野】
本発明は、超電導磁石装置に関し、特に、サージ侵入による電圧・電流変動の抑制に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
超電導磁石では、サージが侵入した際に、コイル巻線内部で共振現象を起こし、大電圧、大電流が生じる可能性がある。
【0003】
このような大電圧の発生は、絶縁破壊につながる。また、大電流の発生は、後述のクエンチ(超電導破壊現象)の原因となり得る(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
超電導コイルを構成する超電導線は、超電導状態で抵抗ゼロの超電導フィラメント複数本を10−9〜10−10Ωm程度の抵抗率を持った銅、アルミニウム、銀等からなる母材金属に埋め込んで構成された複合材であり、サージ等の周波数が1MHz程度の高周波電流は、表皮効果によって超電導線の表面、即ち母材中を流れる。
【0005】
サージを吸収するためには、バイパス抵抗、バリスタあるいはアレスタに代表されるサージアブソーバ、あるいはツェナーダイオード等の素子を挿入する方法が考えられる。しかし、これまでは超電導磁石においては、クエンチ現象があるために、コイル巻線に対して上記のような素子を備えることはなかった。
【0006】
超電導コイルの抵抗は、通常運転時には、ゼロであり、励磁電源電圧もゼロである。しかし、サージが侵入して超電導コイルのインダクタンスとコイル間の浮遊容量による共振現象が生じたり、超電導コイルの一部で、電磁力に起因する巻線の動きによって摩擦熱等が生じると数K(ケルビン)の温度上昇が起こり、超電導状態が破壊(クエンチ)される。超電導から常伝導に転移することによって常伝導抵抗が発生すると、抵抗ゼロの状態で大電流を流していた超電導線において急激な発熱が起こる。この発熱が周囲に伝導するに従い、常伝導領域が拡大して電圧降下が生じる。
【0007】
一般に、電流密度が高い超電導コイルほど大量の発熱が起こり、常伝導に転移する温度のマージンも小さいため、常伝導抵抗が拡大しやすい。常伝導抵抗部には数kVの電圧が発生する。
【0008】
超電導コイルのクエンチは、前述のように、摩擦熱等のようなわずかな温度上昇がきっかけで発生するので、常伝導領域が何時、超電導コイルのどこで生じるかは不定である。また、コイルの誘導電圧が常伝導部の電圧降下を打ち消す方向に発生する。
【0009】
超電導コイルと並列にクエンチ保護抵抗が設けられている。超電導コイルがクエンチすると、励磁電源は切り離される。超電導コイルに流れていた電流は、クエンチ保護抵抗に還流する。ここで用いられるクエンチ保護抵抗の抵抗は、0.1〜数Ω程度である。
【0010】
抵抗RとインダクタンスLでなる回路の減衰時定数τは、τ=L/Rにより記述される。超電導コイルのインダクタンスLは一定であり、Rは常伝導抵抗とクエンチ保護抵抗の和である。
【0011】
従って、クエンチ保護抵抗が大きい方が速やかに電流を減少でき、常伝導抵抗部の発熱による最高温度を低く押さえることができるが、クエンチ時の電圧が高くなる。励磁電圧(V=Ldi/dt)は、励磁時間と超電導コイル1のインダクタンスLで決まるが、逆に、クエンチ保護抵抗が小さすぎると、ほとんどの電流がクエンチ保護抵抗に流れてしまうために効率的に励磁することができなくなる。
【0012】
そこで、クエンチ保護回路を、超電導コイルの定格電流以上の電流を通電することができる、1ないし複数の抵抗あるいは非線形素子で構成し、この抵抗あるいは非線形素子を超電導コイルと並列に設け、速やかに電流を減衰させていた(例えば、非特許文献2参照)。
【0013】
【非特許文献1】
岩熊成卓、外5名「超電導変圧器の雷サージに対する応答特性の理論的評価I,II,III」,低温工学、1992年,第27巻,第6号,p.473−501
【非特許文献2】
Martin N.Wilson「SuperconductingMagnets」,Clarendon Press Oxford,p226−231
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような、1ないし複数の抵抗あるいは非線形素子からなるクエンチ保護回路では、素子がクエンチ時の電流転流時に損傷しないように、電流容量が大きい素子、言い換えれば寸法が大きな素子を使用していた。
【0015】
従って、クエンチ保護回路は、一つの超電導コイルに対して、並列に、1個ないし数個程度が取り付けられているだけであったために、サージ侵入による超電導コイルの共振現象(電圧・電流変動)の抑制に対して有効ではなかった。
【0016】
本発明は、上記のような状況に鑑みなされたものであり、サージ侵入による超電導コイルの電圧・電流変動を抑制することができる超電導磁石装置を提供するものである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る超電導磁石装置は、超電導回路が、超電導コイルと、上記超電導回路の定格通電電流を通電することができ、上記超電導コイルと並列に設けられたクエンチ保護抵抗とを備えた超電導磁石装置において、許容通電電流容量が上記超電導回路の定格通電電流以下であり、上記超電導回路の定常運転時には微小電流しか流れないサージバイパス抵抗及び非線形素子の少なくともいずれか一方を、上記超電導コイルの巻線に並列に接続して、サージ侵入時には上記超電導コイルのバイパス回路となる並列回路を設けたものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明に係る超電導磁石装置の実施の形態1を示す回路図である。同図に示したように、超電導磁石装置は、超電導コイル1、許容通電電流容量が超電導回路の定格通電電流以下であり、サージ電圧・電流抑制用のサージバイパス抵抗2、超電導回路の定格通電電流を通電することができ、超電導コイル1と並列に接続されたクエンチ保護抵抗3、断路器7、超電導コイル1に通電するための励磁電源8を備え、サージバイパス抵抗2は超電導コイル1の巻線に、並列に接続されている。超電導コイル1の入口及び出口においては、サージバイパス抵抗2の一端が超電導コイル1の巻線に接続され、他端が超電導コイル1のリード線に接続されている。また、超電導コイル1はアース5によって接地されている。同図においては、超電導磁石装置に侵入してくるサージ9を模式的に示している。
【0019】
超電導コイル1を構成する超電導線は、超電導状態で抵抗ゼロの超電導フィラメント複数本を10−9〜10−10Ωm程度の抵抗率を持った銅、アルミニウム、銀等からなる母材金属に埋め込んで構成された複合材であり、サージ等の周波数が1MHz程度の高周波電流は、表皮効果によって超電導線の表面、即ち母材中を流れる。
【0020】
図2は、サージバイパス抵抗2が接続されている超電導コイルの等価回路を示す回路図である。超電導コイル1のコイル巻線のインダクタンスL14は、例えば、約1.6μH/mである。この値は、1MHzのサージに対して、ωL=10Ω/mのインピーダンスに相当する。実際にはコイル化されているので単純には表記できないが、線路インダクタンスは長さに比例する。また、巻線間には巻線間の浮遊容量15として、10−10〜10−11F/mが存在する。
【0021】
一方、超電導コイル1の定常運転時は、例えば、周波数60Hzの交流通電(ω=2π60)を仮定した場合でも、超電導コイル1の巻線部分のインピーダンスωLは0.3mΩ/mである。
【0022】
本実施の形態におけるサージバイパス抵抗2を超電導コイル1の巻線の長さ10m分の区間に1個取り付けた場合、サージバイパス抵抗2を100Ωとすれば、定常運転時の交流通電に対してはサージバイパス抵抗2と超電導コイル1との抵抗比は100Ω:3mΩであり、殆ど超電導回路の挙動に影響しない。一方、周波数1MHz程度のサージに対しては、高周波のサージ電流が超電導コイル1を流れるので、サージバイパス抵抗2と超電導コイル1との抵抗比は100Ω:100Ωとなり、サージバイパス抵抗2はインピーダンス的にバイパス回路になり、サージのエネルギーがサージバイパス抵抗2において消散される。
【0023】
超電導コイル1がクエンチした場合の超電導線の単位長さ当りの抵抗は、0.01Ω/m程度である。従って、サージバイパス抵抗2と長さ10mの超電導コイル1の巻線との抵抗比は100Ω:0.01×10Ωになり、クエンチ時においては、サージバイパス抵抗2には微小電流しか流れない。この微小電流は、定常稼動時の熱負荷増加につながらない程度のものである。
【0024】
以上のように、本実施の形態においては、サージバイパス抵抗2が超電導コイル1の巻線に、並列に接続され、サージが侵入した場合、サージのエネルギーがサージバイパス抵抗2において消散されるので、サージが侵入した際の超電導コイル1の線路インダクタンスと浮遊容量による共振を抑制し、最大電圧や最大電流を抑制することができる。
【0025】
また、サージバイパス抵抗2は、許容通電電流が超電導回路の定格電流以下であるので、小型であり、超電導コイル1の巻線の任意の位置に接続することができる。
【0026】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、通常運転時には微小電流しか流れず、サージ侵入時にはインピーダンス的に超電導コイル1のバイパス回路となり得るサージバイパス抵抗2を設けたが、サージバイパス抵抗2に代えて非線形素子を設けてもよい。
【0027】
図3は、実施の形態2を示す回路図であり、図に示したように、超電導コイル1の巻線に、並列に接続された複数の非線形素子4を設けている。超電導コイル1の入口及び出口においては、非線形素子4の一端が超電導コイル1の巻線に接続され、他端が超電導コイル1のリード線に接続される。
【0028】
非線形素子4としては、許容通電電流が超電導回路の通電電流以下であり、定常運転時には微小電流しか流れず、サージ侵入時にはインピーダンス的に超電導コイル1のバイパス回路となり得る素子であればよく、例えば、バリスタ、アレスタ、サイリスタ、ダイオード等がある。
【0029】
図4は、液体ヘリウム温度におけるダイオードの電流・電圧特性を示す図であり、図5は、液体ヘリウム温度におけるバリスタの電流・電圧特性を示す図である。
【0030】
図4に示したように、液体ヘリウム温度(〜4.2K)でダイオードは順方向に電圧をかけた場合、10〜30V程度までは、前述のような微小電流しか流れないが、一度導通すると順方向電圧1V程度で電流が流れる。すなわち、超電導コイル1が定常運転時には、ダイオードからなる非線形素子4には微小電流しか流れず、サージ侵入時には、ダイオードからなる非線形素子4は超電導コイル1の巻線のバイパス回路として機能する。
【0031】
また、図5に示したように、液体ヘリウム温度(〜4.2K)でバリスタは数10V〜数100Vを印加すると導通する。すなわち、超電導コイル1が定常運転時には、バリスタからなる非線形素子4には微小電流しか流れず、サージ侵入時には、バリスタからなる非線形素子4は超電導コイル1の巻線のバイパス回路として機能する。
【0032】
本実施の形態によれば、実施の形態1のように、サージバイパス抵抗2を使用した場合よりも、定常運転時における非線形素子4において発生する損失を低減することができる。
【0033】
また、定常運転時及びクエンチ時に発生する電圧を、非線形素子4のオン電圧以下に設定しておけばよいので、設計が容易になる。
【0034】
実施の形態3.
図6及び図7は、実施の形態3を示す回路図であり、図に示したように、超電導コイル1の巻線の巻始めまたは巻終り、あるいは両方とアース5間に、超電導コイル1の巻線に接続したサージバイパス抵抗2とは別に、副サージバイパス抵抗2を設けている。
【0035】
サージバイパス抵抗2を設ける場所は、図6に示したように、クライオスタット10(真空断熱容器)の極低温領域23の外部でもよく、図7に示したように、クライオスタット10の極低温領域23の内部でもよい。
【0036】
サージバイパス抵抗2aに代えて上記実施の形態2の非線形素子4を用いてもよい。
【0037】
また、上記実施の形態2において、本実施の形態のように、超電導コイル1の巻線の巻始めまたは巻終り、あるいは両方とアース5間に、サージバイパス抵抗2または非線形素子4、あるいは両方を設けてもよい。
【0038】
超電導コイル1の巻線の巻始めまたは巻終り、あるいは両方とアース5間に、サージバイパス抵抗2または非線形素子4を設けることによって、サージ9が超電導コイル1の巻線内部に侵入しにくくなる。
【0039】
実施の形態4.
図8は、実施の形態4を示す回路図であり、永久電流スイッチ6を設けており、超電導コイル1の巻線に接続した永久電流スイッチ6とは別に、永久電流スイッチ6と並列にサージバイパス抵抗2を設けている。
【0040】
永久電流スイッチ6はPCS(Persistent Current Switch)と呼ばれ、超電導コイル1を定格電流まで励磁した後、永久電流モードで運転するための短絡スイッチの役目を果たすものである。超電導コイル1を永久電流モードで運転することによって、励磁電源8を切り離すことができ、超電導コイル1が発生する磁界の安定度も、励磁電源8を定電流制御する場合よりも格段に、かつ、容易に向上する。
【0041】
永久電流スイッチ6のうちで最も一般的なものは、熱式永久電流スイッチである。永久電流スイッチヒータ19によって永久電流スイッチ超電導線18を臨界温度以上に加熱して抵抗を発生させる(図9)。OFF時の抵抗は永久電流スイッチ超電導線18の母材の抵抗で決まる。永久電流スイッチ6に適用される永久電流スイッチ超電導線18の母材は高電気抵抗の銅ニッケル合金等である。永久電流スイッチ超電導線18の母材の抵抗が高いことが、超電導コイル1(母材は銅、アルミニウム等)よりもクエンチを生じやすい原因になっている。
【0042】
本実施の形態においては、永久電流スイッチ6と並列にサージバイパス抵抗2を設けているので、サージ9で誘起された大電流により永久電流スイッチ6がクエンチするのを防ぐことができる。
【0043】
図9及び図10は、永久電流スイッチ6の動作原理を説明するための回路図であり、図9は励磁時、図10は永久電流モード運転時である。図にしたがって永久電流スイッチ6の動作を説明する。
▲1▼超電導コイル1を、励磁電源8に着脱式パワーリード20を介して接続し、永久電流スイッチ6のヒータ19をヒータ電源21に接続する。
▲2▼次に、永久電流スイッチ6のヒータ19にヒータ電源21によって通電すると、超電導線18は、暖められて常伝導状態に遷移し、抵抗が発生する。この状態が永久電流スイッチ6のオフ状態である。
▲3▼永久電流スイッチ6のオフ状態で励磁電源8をオンし、超電導コイル1に電流を通電する。
▲4▼超電導コイル1に流れる電流Iが定格電流に達すると、励磁電源8は定電流制御されて超電導コイル1には一定電流が流れる。
▲5▼次に、ヒータ電源21をオフすると、ヒータ19は液体ヘリウムによって冷却されて超電導状態に復帰し、永久電流スイッチ6がオン状態になり、超電導コイル1の端子間が短絡される。
▲6▼その後、励磁電源8の電流を減少させると、超電導コイル1の永久電流スイッチ6の方へ徐々に移り、励磁電源8の電流がゼロになった時点で、図10に示したように、超電導コイル1と永久電流スイッチ6で構成される閉回路に電流Iが流れ続ける。
【0044】
永久電流スイッチ6のインダクタンスは小さい方が望ましい。永久電流スイッチ6のインダクタンスが大きいと、永久電流モードに移行した際に、永久電流スイッチ6側に磁気エネルギが奪われるためにコイル磁場が減少する。実際には、永久電流スイッチ6も超電導線の巻線で構成されているので、10μH程度のインダクタンスを有する。
【0045】
永久電流スイッチ6が10μH程度のインダクタンスを有することは、永久電流スイッチ6は1MHzのサージに対して、ωL=100Ω程度のインピーダンスを有することを意味する。このような永久電流スイッチ6に対して、並列にサージバイパス抵抗2bを接続することによって、永久電流スイッチ6に対するサージ電流の侵入を防止することができる。
【0046】
なお、本実施の形態において、サージバイパス抵抗2に代えて、上記実施の形態2の非線形素子4を設けてもよく、また、非線形素子4にサージバイパス抵抗2を直列接続してもよい。
【0047】
実施の形態5.
上記実施の形態2のように、非線形素子として電流容量の小さなダイオードを使用したときには、ダイオードが、クエンチ時に分流する電流によって破壊される懸念がある。
【0048】
図11は、実施の形態5を示す回路図である。本実施の形態では、ダイオード12とサージバイパス抵抗2とを直列に接続し、この直列回路を超電導コイル1の巻線に並列に接続し、クエンチ時に分流する電流を低減して、クエンチ時の分流電流によってダイオード12が破壊されないようにしている。
【0049】
なお、本実施の形態において、サージバイパス抵抗2に代えて、バリスタ等の他の非線形素子を用いてもよい。
【0050】
実施の形態6.
図12は、実施の形態6を示す回路図である。同図に示したように、本実施の形態は、電流容量の小さなダイオード12を並列に接続するとともに、各ダイオード12にはサージバイパス抵抗2を直列接続して均流化し、ダイオード12の電流容量の総和を超電導コイル1の通電電流以上にし、このダイオード12の並列回路を超電導コイル1の巻線に並列に接続することによって、クエンチ時の分流電流によってダイオード12が破壊されないようにしている。
【0051】
図4に示したように、極低温(4.2K付近)におけるダイオードは順方向の電圧を印加した場合でも、オン電圧以上になるまで順方向電流は流れない。一旦オン電圧以上になると、順方向電流が流れ、1V程度が発生する。ダイオードのオン電圧は、素子毎の個体差が著しく、十数V〜30V程度のばらつきがある。
【0052】
ダイオード12を並列接続した場合、1つだけ低いオン電圧のダイオード12があった場合、その1個だけが先にオン状態になり、一旦オン状態になるとダイオード12両端は電圧1V程度に制限されるために、他のダイオード12はオンせず、電流が一つの素子に集中することになり、最初にオンしたダイオード12が焼損する可能性がある。
【0053】
本実施の形態においては、ダイオード12と直列に挿入されたサージバイパス抵抗2が、あるダイオード12がオンして電流が増大したときに、ダイオード12とサージバイパス抵抗2との直列接続の両端間の電圧を大きくし、他のダイオード12も確実にオンさせて、複数のダイオード12にバランスよく電流を流せるように均流化する。
【0054】
なお、本実施の形態における、サージバイパス抵抗2を直列接続したダイオード12を並列に接続したダイオード12の並列回路は、クエンチ保護回路3に適用して、クエンチ保護回路3の電流容量を増大させることができ、また、複数のダイオードを液体ヘリウム中で並列接続するすべての場合に適用することができる。
【0055】
実施の形態7.
図13は、実施の形態7を示す回路図であり、変圧器11に本発明に係る超電導磁石装置を適用したものである。本実施の形態においては、上記実施の形態1の超電導磁石装置を適用した例を示しているが、上記実施の形態2乃至6の超電導磁石装置も同様に適用可能である。
【0056】
図13に示したように、変圧器11は1次側超電導コイル11aと、2次側超電導コイル11bを備え、1次側超電導コイル11a及び2次側超電導コイル11bにはそれぞれ、サージバイパス抵抗2が並列に接続されている。また、クエンチ保護時にのみ投入されるスイッチ13が設けられている。
【0057】
サージバイパス抵抗2は、抵抗が大きいために、通常周波数(50〜60Hz)で使用した場合には損失を増大させることはない。
【0058】
サージ9が侵入した場合、サージ9のエネルギーがサージバイパス抵抗2において消散されるので、超電導コイル1の線路インダクタンスと浮遊容量による共振を抑制し、最大電圧や最大電流を抑制することができる。
【0059】
【発明の効果】
本発明に係る超電導磁石装置によれば、超電導回路が、超電導コイルと、上記超電導回路の定格通電電流を通電することができ、上記超電導コイルと並列に設けられたクエンチ保護抵抗とを備えた超電導磁石装置において、許容通電電流容量が上記超電導回路の定格通電電流以下であり、上記超電導回路の定常運転時には微小電流しか流れないサージバイパス抵抗及び非線形素子の少なくともいずれか一方を、上記超電導コイルの巻線に並列に接続して、サージ侵入時には上記超電導コイルのバイパス回路となる並列回路を設けたものであるので、サージが侵入した際の、超電導コイルの線路インダクタンスと浮遊容量による共振を抑制し、最大電圧や最大電流を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る超電導磁石装置の、実施の形態1を示す回路図である。
【図2】実施の形態1において、サージバイパス抵抗が接続されている超電導コイルの等価回路を示す回路図である。
【図3】本発明に係る超電導磁石装置の、実施の形態2を示す回路図である。
【図4】液体ヘリウム中における、ダイオードのV−I特性を示す図である。
【図5】液体ヘリウム中における、バリスタのV−I特性を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態3を示す回路図である。
【図7】本発明の実施の形態3を示す回路図である。
【図8】本発明の実施の形態4を示す回路図である。
【図9】実施の形態4における永久電流スイッチの動作を説明する回路図である。
【図10】実施の形態4における永久電流スイッチの動作を説明する回路図である。
【図11】本発明の実施の形態5を示す回路図である。
【図12】本発明に係る超電導磁石装置の、実施の形態6を示す回路図である。
【図13】本発明の実施の形態7を示す回路図である。
【符号の説明】
1 超電導コイル、2 サージバイパス抵抗、3 クエンチ保護抵抗、
4 非線形素子、5 アース、6 永久電流スイッチ、7 断路器、
8 励磁電源、9 サージ、10 クライオスタット、11 超電導変圧器、
11a 1次側超電導コイル、11b 2次側超電導コイル、13 スイッチ、
14 コイル巻線のインダクタンス、15 巻線間の浮遊容量、
18 永久電流スイッチ超電導線、19 永久電流スイッチヒータ、
20 着脱式パワーリード、21 ヒータ電源、22 常伝導抵抗、
23 極低温領域。
Claims (7)
- 超電導回路が、超電導コイルと、上記超電導回路の定格通電電流を通電することができ、上記超電導コイルと並列に設けられたクエンチ保護抵抗とを備えた超電導磁石装置において、許容通電電流容量が上記超電導回路の定格通電電流以下であり、上記超電導回路の定常運転時には微小電流しか流れないサージバイパス抵抗及び非線形素子の少なくともいずれか一方を、上記超電導コイルの巻線に並列に接続して、サージ侵入時には上記超電導コイルのバイパス回路となる並列回路を設けたことを特徴とする超電導磁石装置。
- 上記サージバイパス抵抗及び非線形素子とは別に、許容通電電流容量が上記超電導回路の定格通電電流以下であり、上記超電導回路の定常運転時には微小電流しか流れない副サージバイパス抵抗及び副非線形素子の少なくともいずれか一方が、上記超電導コイルの巻始めまたは巻終りとアースとの間に設けられていることを特徴とする請求項1記載の超電導磁石装置。
- 上記並列回路は、複数の上記サージバイパス抵抗、あるいは上記サージバイパス抵抗と上記非線形素子、あるいは複数の上記非線形素子が直列に接続されてなることを特徴とする請求項1記載の超電導磁石装置。
- 上記並列回路は、複数の上記非線形素子が並列に接続され、上記並列に接続された非線形素子のそれぞれに、上記サージバイパス抵抗が直列に接続されてなることを特徴とする請求項1記載の超電導磁石装置。
- 上記超電導回路が、上記超電導コイルと並列に配置され、上記超電導コイルとともに閉回路を形成する永久電流スイッチを備え、該永久電流スイッチに並列に、上記サージバイパス抵抗及び非線形素子とは別に、許容通電電流容量が上記超電導回路の定格通電電流以下であり、上記超電導回路の定常運転時には微小電流しか流れない副サージバイパス抵抗及び副非線形素子の少なくともいずれか一方が接続されていることを特徴とする請求項1記載の超電導磁石装置。
- 上記クエンチ保護抵抗は、複数の上記非線形素子が並列に接続され、上記並列に接続された非線形素子のそれぞれに、上記サージバイパス抵抗が直列に接続されてなることを特徴とする請求項1記載の超電導磁石装置。
- 1次側超電導コイルと、2次側超電導コイルとを備えた超電導変圧器において、許容通電電流容量が上記1次側超電導コイル及び2次側超電導コイルの定格通電電流以下であり、上記1次側超電導コイル及び2次側超電導コイルの定常運転時には微小電流しか流れないサージバイパス抵抗及び非線形素子の少なくともいずれか一方を、上記1次側超電導コイル及び2次側超電導コイルそれぞれの巻線に並列に接続して、サージ侵入時には上記1次側超電導コイル及び2次側超電導コイルそれぞれのバイパス回路となる並列回路を設けたことを特徴とする超電導変圧器。
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