以下、図面に基づいて、本発明の実施形態に係る降雪装置について詳細に説明する。
(実施形態1)
まず、本発明の実施形態1に係る降雪装置1の構成について、図1および図2を参照して説明する。本実施形態に係る降雪装置1は、試験室3内に雪100を降らせるための装置である。この降雪装置1によって、年中を通して雪が降らない地域や雪が降らない季節においても、試験室3内において降雪環境を再現することができる。これにより、例えば、周囲の気象環境を監視する車載センサーの動作試験など、降雪環境が必要な様々な試験を行うことができる。なお、降雪装置1の使用用途はこれに限定されるものではない。
図1に示すように、降雪装置1は、降雪部10および雪生成部20を有する試験室3を備えている。雪生成部20は、降雪部10よりも上側に位置する。また降雪装置1は、雪生成部20の天井面23に沿って配置された天井部材30と、雪生成部20内に水を噴霧する噴霧部40と、雪生成部20内の温度を氷点下に調節する温度調節機構50と、天井部材30を揺らす振動を発生する振動機構90と、を主に備えている。以下、これらの構成要素についてそれぞれ詳細に説明する。なお、図1は、本実施形態に係る降雪装置1が備える主要な構成要素のみを示しており、降雪装置1は、図1に示されていない他の構成要素を備え得る。
降雪部10は、空間S1が内部に形成された筐体からなる。図1に示すように、降雪部10は、水平方向に延びる底壁11と、この底壁11の端部から上側に延びる側壁14と、この側壁14の上端部から水平方向内向きに延びる上壁15と、を有している。空間S1は、底壁11、側壁14および上壁15により囲まれるとともに、上向きに開放されている。
底壁11の一方の端部側(図1中の左側)には、降雪部10内の空間S1に空気を供給するための供給口12が設けられている。また底壁11の他方の端部側(図1中の右側)には、降雪部10内の空気を吸い込んで当該降雪部10の外に排出するための下側吸込口13が設けられている。これらの供給口12および下側吸込口13は、底壁11を貫通するとともに、水平方向に間隔を空けて設けられている。
雪生成部20は、試験室3内に降らせる雪100を作るための部分である。図1に示すように、雪生成部20は、降雪部10よりも水平方向の幅が小さく、且つ、降雪部10の上部から上側に張り出すように設けられている。なお、雪生成部20が上側に張り出さず、降雪部10と同空間に設けられていてもよい。
雪生成部20は、降雪部10の上壁15の内端部から上側に延びる側壁21と、この側壁21の上端部に接続されるとともに水平方向に延びる天井壁22と、を有している。天井壁22は、雪生成部20内を向く天井面23を含み、且つ、試験室3の底壁11と上下方向に対向している。また側壁21には、雪生成部20内の空気を吸い込んで当該雪生成部20の外に排出するための上側吸込口24が設けられている。
雪生成部20は、空間S2が内部に形成された筐体からなる。この空間S2は、側壁21および天井壁22により囲まれるとともに、下向きに開放されている。図1に示すように、雪生成部20は、降雪部10とともに一つの筐体として構成されており、降雪部10の空間S1と雪生成部20の空間S2とは互いに連通している。
雪生成部20の空間S2には、天井部材30、噴霧部40および振動機構90がそれぞれ配置されている。これらの天井部材30、噴霧部40および振動機構90によって、雪生成部20内で雪100を人工的に作るとともに、当該雪100を試験室3に降らせることができる。
温度調節機構50は、本実施形態においては空調装置により構成されている。この空調装置によって、氷点下の温度(例えば−10℃以下、好ましくは−20℃以下)に調節された空調空気を降雪部10および雪生成部20の両空間内に送ることができる。これにより、降雪部10内の空間S1および雪生成部20内の空間S2の温度を、ともに氷点下(例えば−10℃以下、好ましくは−20℃以下)に調節することができる。図1に示すように、温度調節機構50は、冷却器51と、送風ファン52と、空調ケーシング53と、給気ダクト56と、第1および第2還気ダクト54,55と、を主に有している。なお、温度調節機構50は、加熱器をさらに有していてもよい。
冷却器51は、冷凍サイクルが構成された冷凍機の蒸発器によって構成されており、空調ケーシング53内に収容されている。この冷却器51は、空調ケーシング53内に取り込まれた空気を冷媒との熱交換によって氷点下の温度まで冷却する。送風ファン52は、空調ケーシング53内において冷却器51の下流側(空気の流れ方向の下流側)に配置されている。冷却器51としては、例えば、フィン&チューブ式熱交換器などを用いることができるが、特に限定されるものではない。
送風ファン52は、冷却器51を通過した冷却後の空気を吸い込み、昇圧した後、下流側に向けて吹き出す。送風ファン52としては、例えば、シロッコファンなどの遠心送風機を用いることができるが、特に限定されるものではない。
空調ケーシング53は、冷却器51および送風ファン52をそれぞれ収容している。図1に示すように、空調ケーシング53においては、当該空調ケーシング53内に空気を取り込むための第1および第2取込口53A,53Bが冷却器51よりも上流側に設けられるとともに、当該空調ケーシング53から空気を送り出すための送出口53Cが送風ファン52よりも下流側に設けられている。
第1還気ダクト54は、雪生成部20の上側吸込口24と空調ケーシング53の第1取込口53Aとを接続するように設けられている。上側吸込口24を通じて雪生成部20内から吸い込まれた空気を、第1還気ダクト54を介して空調ケーシング53内に導くことができる。また第2還気ダクト55は、降雪部10の下側吸込口13と空調ケーシング53の第2取込口53Bとを接続するように設けられている。下側吸込口13を通じて降雪部10内から吸い込まれた空気を、第2還気ダクト55を介して空調ケーシング53内に導くことができる。
図1に示すように、第1および第2還気ダクト54,55の下流端近傍には、モーター駆動式のダンパー(第1還気ダンパー54Aおよび第2還気ダンパー55A)がそれぞれ配置されている。これらのダンパーの開度を調節することにより、各ダクト内を流れる空気の流量を調節し、また各ダクト内における空気の流れを遮断することができる。
給気ダクト56は、空調ケーシング53の送出口53Cと降雪部10の供給口12とを接続するように設けられている。送風ファン52により吹き出された空調空気を、給気ダクト56を介して降雪部10内に供給することができる。また図1に示すように、給気ダクト56の上流端近傍には、モーター駆動式の給気ダンパー56Aが配置されている。この給気ダンパー56Aの開度を調節することにより、給気ダクト56内を流れる空気の流量を調節し、また当該給気ダクト56内における空気の流れを遮断することができる。本実施形態に係る降雪装置1においては、第1および第2還気ダクト54,55ならびに給気ダクト56を用いることにより、空調ケーシング53と降雪部10および雪生成部20との間で空調空気を循環させることができる。
噴霧部40は、例えば、水および圧縮空気(気体)を混合して噴霧する二流体ノズルにより構成されている。二流体ノズルを用いることによって、圧縮空気により微粒化された水滴を雪生成部20内の空間S2に噴霧することができる。
図1に示すように、噴霧部40は、雪生成部20内の空間S2において複数配置されるとともに、水平方向において互いに間隔を空けて配置されている。また各噴霧部40は、水および圧縮空気を混合して噴霧する噴霧口を有しており、当該噴霧口が上向きとなる姿勢で配置されている。これにより、各噴霧部40から天井部材30に向けて微粒化された水滴を噴霧することができる。
雪生成部20内の空間S2は、上述の通り、低温の空調空気によって氷点下の温度(例えば−10℃以下)に調節されている。一方、各噴霧部40から噴霧される水の温度は、例えば0℃以上5℃以下の範囲に調節されている。このため、噴霧部40から雪生成部20内の空間S2に水滴が噴霧されると、当該水滴が空調空気と熱交換することによって冷却され、過冷却状態となる。
図2は、二流体ノズル(噴霧部40)に水および圧縮空気(気体)をそれぞれ供給するための水供給部70および気体供給部60の各構成を示している。図2に示すように、水供給部70は、冷水チラー71(水冷却部)と、この冷水チラー71に接続された水供給経路72と、を主に有している。
冷水チラー71は、例えば空冷式または水冷式の冷凍機を有しており、低温冷媒との熱交換によって水を冷却する。この冷水チラー71によって、二流体ノズル(噴霧部40)に供給される前の水を冷却することができる。本実施形態においては、冷水チラー71は、二流体ノズルに供給される前の水を0℃以上5℃以下の温度まで冷却する。水の温度を0℃以上に保つことにより、水供給経路72内において水が凍結するのを防止することができる。
水供給経路72は、冷水チラー71において冷却された水を二流体ノズル(噴霧部40)に導くための経路である。水供給経路72は、一端が冷水チラー71の出口に接続されるとともに(図2)、他端が側壁21を貫通するとともに雪生成部20内の空間S2において水平に延びている(図1)。図1に示すように、水供給経路72の他端側は複数の経路に分岐しており、各分岐経路が二流体ノズル(噴霧部40)に接続されている。これにより、各分岐経路に分流した冷水を二流体ノズルに導くことができる。
図2に示すように、水供給経路72は、タンク80内を通過するように設けられている。水供給経路72において冷水チラー71とタンク80との間に位置する部位P1には、分岐経路73が接続されている。分岐経路73は、水供給経路72の部位P1からタンク80の上側開放部81まで延びるように設けられており、且つ、その延出端にバルブ74が配置されている。このバルブ74を開くことにより、冷水チラー71で冷却された水を、水供給経路72および分岐経路73を通じてタンク80内に供給することができる。これにより、タンク80内に冷水Lを貯めることができる。また図2に示すように、タンク80内の冷水Lの温度を測定するための温度センサー82を配置し、この温度センサー82の検出値に基づいて、水温が所定の範囲(例えば0℃以上5℃以下)となるように冷水チラー71の動作を制御してもよい。
気体供給部60は、空気圧縮装置61と、この空気圧縮装置61に接続された空気供給経路62と、を主に有している。空気圧縮装置61は、空気を所定の圧力(例えば0.6MPa)まで圧縮するとともに、当該圧縮空気を吐出する。
空気供給経路62は、空気圧縮装置61から吐出される圧縮空気を二流体ノズル(噴霧部40)に導くための経路である。この空気供給経路62は、一端が空気圧縮装置61の吐出口に接続されるとともに(図2)、他端が側壁21を貫通するとともに雪生成部20内の空間S2において水平に延びている(図1)。図1に示すように、空気供給経路62の他端側は複数の経路に分岐しており、各分岐経路が二流体ノズル(噴霧部40)に接続されている。これにより、各分岐経路に分流した圧縮空気を二流体ノズルに導くことができる。
なお、図1では、図面の便宜上、水供給経路72と空気供給経路62とが異なる高さ位置に配置されているが、両経路が同じ高さ位置に配置されていてもよい。
図2に示すように、空気供給経路62は、タンク80内を通過するように設けられており、当該タンク80内の冷水Lに接触する。これにより、空気供給経路62内を流れる圧縮空気を、タンク80内の冷水Lによって冷却することができる。したがって、二流体ノズル(噴霧部40)の噴霧口において圧縮空気を吹き付けて水を微粒化する際に、水温が上がるのを防止することができる。つまり、タンク80は、二流体ノズルに供給される前の圧縮空気(気体)を冷却する気体冷却部として機能し、気体供給部60の一部を構成している。本実施形態においては、空気供給経路62内の圧縮空気は、冷水Lによって0℃以上5℃以下の範囲に温調される。
図1に示すように、天井部材30は、天井面23に当接した状態で当該天井面23に固定された板部材31と、この板部材31の表面(天井面23に当接する表面と反対側の表面)に固定されるとともに波状に形成されたシート材32と、を有している。図1に示すように、板部材31は、天井面23のほぼ全面に亘って配置されている。またシート材32は、複数の山部32Aおよび谷部32Bが水平方向に並ぶように、板部材31の表面に沿って波状に曲げられている。
噴霧部40から噴霧された水滴は、上述のように雪生成部20の空間S2において空調空気との熱交換により過冷却状態となった後、シート材32の表面に付着する。そして、シート材32の表面において当該水滴が凍結することにより雪100の層が形成される。
シート材32としては、雪層を剥がれ易くするため、摩擦係数が低い表面を有するものを用いることが好ましい。シート材32の好ましい一形態としては、テフロン(登録商標)シートが挙げられる。またテフロン(登録商標)シート以外にも、例えば、表面の摩擦係数が低い金属製のシートなどを用いることもできる。さらに、シート材32は、単一の材料からなるものに限定されず、任意のシート基材と、当該シート基材上に形成されるとともに摩擦係数が低い材料からなるコーティング層と、を有するものであってもよい。なお、シート材32としては、過冷却状態の水が付着しても凍結しない材質からなるものを用いることが好ましい。
図1に示すように、シート材32は、波形状の山部分32Aを下側に向けるとともに、波形状の谷部分32Bにおいてネジなどにより板部材31の表面に固定されている。本実施形態のように、シート材32を天井面23に沿った波形状にすることにより、シート材32を平坦状に貼り付ける場合に比べて、シート材32における着雪面積を広く確保することができる。
振動機構90は、シート材32の表面に付着した雪100が剥がれ落ちるように天井部材30を揺らす振動を発生するものである。図1に示すように、振動機構90は、雪生成部20内の空間S2を水平方向に延びる配管91と、この配管91を板部材31から吊り下げる複数の吊り部材94と、配管91と空気供給経路62とを接続する接続経路92(図2)と、この接続経路92の途中に設けられたバルブ93(図2)と、を主に有している。配管91は、噴霧部40よりも上側で且つシート材32よりも下側に位置している。
図2に示すように、接続経路92は、一端が空気供給経路62における空気圧縮装置61とタンク80との間の部位P2に接続されるとともに、他端が配管91の一端に接続されている。これにより、空気圧縮装置61から吐出される圧縮空気を部位P2において接続経路92内に流入させ、当該圧縮空気を接続経路92を通じて配管91に導くことができる。バルブ93は、接続経路92内における圧縮空気の流通および遮断を切り替える。
図1に示すように、配管91には、圧縮空気(圧縮気体)を噴射する複数の噴射口91Aが当該配管91の延設方向に間隔を空けて設けられている。これにより、空気圧縮装置61(図2)から供給される圧縮空気を、噴射口91Aから雪生成部20内の空間S2に向けて噴射することができる。
噴射口91Aから圧縮空気が噴射されると、配管91の振動が起こり、この振動は吊り部材94を介して配管91から板部材31に伝達される。これにより、板部材31が振動し、当該板部材31の表面に固定されたシート材32が揺れる。このシート材32の揺れによって、当該シート材32の表面から雪層を剥離させることが可能となり、図1に示すように降雪部10に向かって雪100を降らせることができる。すなわち、本実施形態に係る降雪装置1においては、圧縮空気の噴射時の衝撃によってシート材32を揺らすことにより、天井面23側から降雪部10に向かって雪100を降らせることができる。このため、配管91の噴射口91Aからシート材32の表面に形成された雪層に向かって直接圧縮空気を吹き付けることは必須ではなく、噴射口91Aが下向きまたは横向きとなる姿勢で配管91が配置されていてもよい。
振動機構90は、バルブ93を所定のインターバルで開閉する制御を行う開閉制御部95をさらに有している。この開閉制御部95からの指令によって、バルブ93を所定のインターバルで開閉させることにより、圧縮空気を噴射口91Aから間欠的に噴射させることができる。つまり、バルブ93および開閉制御部95は、圧縮空気を噴射口91Aから間欠的に噴射するように圧縮空気の噴射タイミングを調整するタイミング調整部を構成している。本実施形態においては、2秒に1回のインターバルでバルブ93を開くことにより、同じインターバルで圧縮空気を噴射口91Aから噴射することができる。
次に、上記の通り説明した構成を有する降雪装置1の動作について説明する。
まず、温度調節機構50によって雪生成部20内の空間S2が雪100の生成に必要な低温に調節される。図1中の一点鎖線の矢印は、降雪部10内の空間S1および雪生成部20内の空間S2における空調空気の流れを示している。ここでは、第1および第2還気ダンパー54A,55Aの両方が開いている場合について説明する。
まず、送風ファン52が駆動すると、当該送風ファン52から吹き出された空調空気が供給口12を通じて降雪部10内に供給される。一方、送風ファン52の駆動によって、雪生成部20の上側吸込口24および降雪部10の下側吸込口13を通じて両空間内の空気を吸い込む力が発生する。
これにより、供給口12から上側吸込口24および下側吸込口13のそれぞれに向かって空調空気が流れる。その結果、図1に示すように、降雪部10から雪生成部20に向かう空調空気の上昇流101(供給口12から上側吸込口24に向かう空気流)を発生させることができるとともに、降雪部10内の空間S1のみにおいて空調空気が流れる空気流102(供給口12から下側吸込口13に向かう空気流)を発生させることができる。図1に示すように、上昇流101は、雪生成部20内において天井面23に向かって流れる。
このように、冷却器51によって氷点下(例えば−10℃以下)に温調された空調空気を降雪部10内の空間S1および雪生成部20内の空間S2の両方に送ることにより、両空間内の温度を氷点下に調節することができる。また本実施形態においては、一つの空調装置で発生させた空調空気が降雪部10および雪生成部20の両空間内に送られる。つまり、降雪部10内を温調するための空調装置と雪生成部20内を温調するための空調装置とが兼用されている。なお、温度調節機構50は、長時間運転による着霜に備えてデフロスト機能を有していてもよい。
次に、噴霧部40から雪生成部20内の空間S2に向けて微粒化された水滴が噴霧される。具体的には、冷水チラー71において冷却された水が水供給経路72を通じて噴霧部40に供給されるとともに、空気圧縮装置61において発生させた圧縮空気が空気供給経路62を通じて噴霧部40に供給される。そして、圧縮空気によって微粒化された水滴が噴霧部40から雪生成部20内の空間S2に噴霧される。噴霧された水滴は、当該空間S2内に導入された低温の空調空気と熱交換することによって冷却され、過冷却状態となる。そして、過冷却状態となった水滴がシート材32の表面に付着し、当該表面において着雪が起こる。
次に、開閉制御部95(図2)によってバルブ93を所定のインターバルで開閉し、空気圧縮装置61から接続経路92を通じて配管91に導かれた圧縮空気を、噴射口91Aから間欠的に噴射する。この圧縮空気の噴射により生じる配管91の振動が吊り部材94を介して板部材31に伝わり、当該板部材31に固定されたシート材32が揺れる。このシート材32の揺れによって、当該シート材32の表面に付着した雪100を当該表面から剥離させることができるため、試験室3において雪100を降らせることができる。
ここで、上記の通り説明した実施形態1に係る降雪装置1の特徴および作用効果について列記する。
降雪装置1は、試験室3内に雪100を降らせるための装置である。この降雪装置1は、降雪部10と、降雪部10よりも上側に位置するとともに、雪100を作るための雪生成部20と、雪生成部20の天井面23に沿って配置された天井部材30と、天井部材30に向けて雪生成部20内に水を噴霧する噴霧部40と、雪生成部20内の温度を氷点下に調節する温度調節機構50と、天井部材30の表面に付着した雪が剥がれ落ちるように天井部材30を揺らす振動を発生する振動機構90と、を備えている。
この降雪装置1では、温度調節機構50により氷点下の温度(例えば−10℃以下)に調節された雪生成部20内の空間S2に噴霧部40から微粒化された水滴を噴霧することにより、雪生成部20内において水滴を過冷却状態にすることができる。過冷却状態となった水滴は、天井部材30の表面に付着し、この表面において雪100が作られる。そして、振動機構90が発生する振動が天井部材30に伝わって天井部材30が揺れることにより、天井部材30の表面に付着した雪100が剥がれ落ちるため、試験室3内に雪100を降らせることができる。
この降雪装置1によれば、雪生成部20の天井面23に沿って配置された天井部材30を揺らして天井部材30の表面に付着した雪100を剥がれ落とすことにより、試験室3内の広い範囲に亘って降雪環境を作ることができる。しかも、天井部材30の揺れによって雪100を剥がれ落とすことにより、天井部材30の表面で作られた雪100が自重のみによって落ちる場合と異なり、視覚的に自然な降雪環境を作ることができる。また、従来の降雪装置のように弾性殴打体を上下移動させて雪を剥離させるものに比べて、コスト面やメンテナンス面においても、本実施形態に係る降雪装置1は優れている。
この降雪装置1において、振動機構90は、圧縮空気を噴射する噴射口91Aが設けられた配管91であって、圧縮空気の噴射による振動を天井部材30へ伝達可能なように吊り部材94を介して天井部材30に接続された配管91を有している。これにより、大掛かりな加振装置などを設けなくても天井部材30を揺らすことができるため、降雪装置1の構成を簡素化することができる。
この降雪装置1において、振動機構90は、圧縮空気を噴射口91Aから間欠的に噴射するように圧縮空気の噴射タイミングを調整するバルブ93および開閉制御部95(タイミング調整部)を有している。これにより、圧縮空気の噴射を停止している間に天井部材30の表面において一定量の雪を作り、その後、圧縮空気を噴射して天井部材30を揺らすことにより、天井部材30の表面にたまった雪100を試験室3内に降らせることができる。つまり、噴射口91Aから圧縮空気を噴射するタイミングを調整することにより、雪100を試験室3内に降らせるタイミングを容易に調整することが可能である。
この降雪装置1において、天井部材30は、波状に形成されたシート材32であって、噴霧部40から噴霧された水滴が付着する表面を含むシート材32を有している。これにより、薄いシート材32を振動機構90によって簡単に揺らすことができるため、シート表面で作られる雪100を簡単に剥離させることができる。またシート材32を波状に形成することにより、シート材32を平坦な構成とする場合に比べて、着雪面積を広く確保することができる。このため、試験室3への降雪量を多く確保することが可能になる。
この降雪装置1において、温度調節機構50は、雪生成部20に送られる氷点下の温度に調節された空調空気を生成する空調装置により構成されている。この降雪装置1は、雪生成部20において天井面23に向かう当該空調空気の上昇流101が発生するように構成されている。これにより、噴霧部40から雪生成部20内に噴霧された霧状の水が降雪部10へ落ちるのを防止することができる。これにより、試験室3内で降雪環境下における様々な試験を行う場合において、噴霧水が降雪部10内に落ちて試験に影響を及ぼすのを防ぐことができる。また試験室3内が霧によって白くなるのを防ぐことにより、視覚的な降雪環境を確保することが可能になる。
この降雪装置1は、降雪部10から雪生成部20に向かう上昇流101を発生させるように構成されている。これにより、降雪部10内を温調するための空気と雪生成部20内を温調するための空気とを兼用することができるため、降雪装置1の構成をより簡素化することが可能になる。
この降雪装置1において、噴霧部40は、二流体ノズルにより構成されている。この降雪装置1は、二流体ノズルに圧縮空気を供給する気体供給部60と、二流体ノズルに水を供給する水供給部70と、を備えている。二流体ノズルを用いることによって、微粒化された水滴を噴霧することができるため、噴霧後の水滴を過冷却状態にするために必要な熱交換量が少なくなる。したがって、噴霧後の水滴を速やかに過冷却状態にすることができる。これにより、噴霧部40と天井部材30との間の高さ距離が小さくなるように降雪装置1を設計した場合でも(例えば、当該高さ距離が1.5m以下)、過冷却状態になった後の水滴を天井部材30の表面に確実に付着させることが可能であり、装置を小型化することができる。
この降雪装置1において、水供給部70は、二流体ノズルに供給される前の水を冷却する冷水チラー71(水冷却部)を有している。また気体供給部60は、二流体ノズルに供給される前の圧縮空気(気体)を冷却するタンク80(気体冷却部)を有している。これにより、二流体ノズルからの噴霧前に水および圧縮空気を予め冷却することができるため、氷点下の温度に調節された雪生成部20の空間S2内に噴霧された水滴を速やかに過冷却状態にすることができる。これにより、上述のように噴霧部40と天井部材30との間の高さ距離を小さくして降雪装置1を小型化した場合でも、過冷却状態になった後の水滴を天井部材30の表面に確実に付着させることができる。
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2に係る降雪装置2について、図3を参照して説明する。実施形態2に係る降雪装置2は、基本的に上記実施形態1に係る降雪装置1と同様の構成を備えているが、上記実施形態1においては一台の空調装置(温度調節機構50)によって降雪部10および雪生成部20の両空間内を温調する構成であるのに対し、実施形態2では降雪部10および雪生成部20のそれぞれに専用の空調装置が設けられている点で異なっている。以下、上記実施形態1に係る降雪装置1と異なる点についてのみ説明する。
図3に示すように、雪生成部20の側壁21には、当該雪生成部20内に空調空気を供給するための上側供給口17と、雪生成部20内の空気を吸い込んで当該雪生成部20の外に排出するための上側吸込口16と、がそれぞれ設けられている。また降雪装置2は、雪生成部20内の温度を氷点下に調節する温度調節機構50(以下、この実施形態において「第1温度調節機構50」と称する)と、降雪部10内の温度を所定の試験温度に調節する第2温度調節機構120と、を備えている。
第1温度調節機構50は、雪生成部20に専用の空調装置として設けられたものである。この第1温度調節機構50は、本発明の「温度調節機構」の一例であって、上記実施形態1で説明した温度調節機構50と基本的に同じ構成を備えている。すなわち、第1温度調節機構50は、第1還気ダクト56と、給気ダクト54と、空調ケーシング53と、当該空調ケーシング53内に収容された冷却器51および送風ファン52と、を備えている。なお、実施形態2の第1温度調節機構50においては、上記実施形態1で説明した「第2還気ダクト55」の構成は省略されている。図3に示すように、実施形態2においては、給気ダクト54の一端が雪生成部20の上側供給口17に接続されており、且つ、第1還気ダクト56の一端が雪生成部20の上側吸込口16に接続されている。
この構成によれば、給気ダクト54および第1還気ダクト56を介して、空調ケーシング53と雪生成部20との間で空調空気を循環させることができる。すなわち、冷却器51によって氷点下の温度に調節された空調空気を、給気ダクト54を介して雪生成部20内に供給するとともに、雪生成部20内から第1還気ダクト56を介して空調ケーシング53に空気を戻すことができる。これにより、上記実施形態1と同様に、雪生成部20内において天井面23に向かう空気の上昇流が発生すると共に、当該雪生成部20内の温度を氷点下に調節することができる。なお、雪生成部20内において空気の上昇流が発生しなくてもよい。
第2温度調節機構120は、降雪部10専用の空調装置として設けられたものであって、基本的に第1温度調節機構50と同様に構成された空調装置である。第2温度調節機構120は、還気ダクト122と、給気ダクト121と、空調ケーシング123と、当該空調ケーシング123内に収容された冷却器124および送風ファン125と、を備えている。
図3に示すように、給気ダクト121の一端は降雪部10の供給口12に接続されており、且つ、還気ダクト122の一端は降雪部10の下側吸込口13に接続されている。これにより、給気ダクト121および還気ダクト122を介して、空調ケーシング123と降雪部10との間で空調空気を循環させることができる。すなわち、冷却器124により所定の温度に調節された空調空気を、給気ダクト121を介して降雪部10内に供給するとともに、降雪部10内から還気ダクト122を介して空調ケーシング123に空気を戻すことができる。これにより、降雪部10内の温度を所定の試験温度に調節することができる。
このように、実施形態2に係る降雪装置2によれば、降雪部10および雪生成部20のそれぞれに専用の空調装置(第1温度調節機構50および第2温度調節機構120)を設けることにより、両部内の温度をそれぞれ独立して制御することが可能になる。すなわち、第1温度調節機構50によって雪生成部20内の温度を雪100の生成に必要な低温に調節するとともに、第2温度調節機構120によって降雪部10内の温度を試験に必要な温度に調節することが可能になる。
(その他実施形態)
最後に、本発明のその他実施形態について説明する。
上記実施形態1においては、配管91の噴射口91Aから圧縮空気を噴射し、その噴射による振動によって天井部材30(シート材32)を揺らして雪100を降らせる場合について説明したが、本発明における「振動機構」の構成はこれに限定されない。例えば、本発明における「振動機構」として、動電型、油圧型またはアンバランスマス型の振動発生装置を採用し、これを板部材31の表面に設置してもよい。この場合、これらの振動発生装置が発生する振動によってシート材32が揺れ、シート材32の表面に付着した雪100が剥がれ落ちることにより、試験室10内に雪100を降らせることができる。また天井部材30全体を揺らす構成に限定されず、圧縮空気などによりシート材32のみを揺らす構成でもよい。
上記実施形態1においては、圧縮空気を噴射口91Aから間欠的に噴射するように振動機構90が構成される場合について説明したがこれに限定されず、圧縮空気を噴射口91Aから常時噴射するように振動機構が構成されていてもよい。
上記実施形態1では、空気供給経路62の途中(部位P2)から取り出した圧縮空気を噴射口91Aから噴射する場合について説明したがこれに限定されず、配管91に導入される圧縮気体を作る気体圧縮装置(図示しない)が、空気圧縮装置61とは別に設けられてもよい。そして、この気体圧縮装置が発生させた圧縮気体を、接続経路92を通じて配管91に導入し、噴射口91Aから噴射させてもよい。この場合、圧縮気体は圧縮空気に限定されず、雪生成部20内における雪100の生成に悪影響を及ぼさない他の種類の圧縮気体を用いることも可能である。
上記実施形態1においては、天井部材30が板部材31およびシート材32を有する場合について説明したがこれに限定されず、シート材32が雪生成部20の天井面23に直接貼り付けられていてもよい。この場合、振動機構90によってシート材32を直接揺らす構成とすることができる。またシート材32が波状に形成された場合に限定されず、シート表面が水平になるようにシート材32が配置されていてもよい。
上記実施形態1においては、温度調節機構50が空調装置により構成される場合について説明したがこれに限定されず、低温の空調空気を供給する以外の手段で雪生成部20内の温度を氷点下に調節するように温度調節機構が構成されていてもよい。
上記実施形態1においては、噴霧部40が二流体ノズルにより構成される場合について説明したがこれに限定されず、噴霧部が水のみを噴霧する一流体ノズルにより構成されていてもよい。この場合、気体供給部60の構成を省略することができる。
上記実施形態1においては、水供給部70が冷水チラー71(水冷却部)を備える場合について説明したが、これに限定されない。例えば、冷水チラー71に代えて、水の冷却機能を持たない貯水タンクを配置し、この貯水タンクから水供給経路72を通じて噴霧部40に水を供給してもよい。
上記実施形態1においては、二流体ノズルに供給される前の圧縮空気を冷却する気体冷却部としてタンク80が機能する場合について説明したが、これに限定されない。気体冷却部は、冷水チラー71で作られた冷水Lによって圧縮空気を冷却する構成に限定されず、他の任意の冷却媒体や冷却手段を用いて圧縮空気を冷却するように構成されていてもよい。また気体冷却部は、本発明の降雪装置において必須の構成要素ではなく、省略されてもよい。この場合、上記実施形態1において、タンク80ならびに当該タンク80内に冷水Lを導くための分岐経路73およびバルブ74が省略されてもよい。
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。