<実施形態1>
本発明の加工装置を具体化した実施形態1について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施形態1では、加工装置として、筒状のワークにかしめローラを押し当ててかしめ加工を行うかしめ装置を例示する。
実施形態1に係るかしめ装置1を図1〜図3に示す。かしめ装置1は、ワークとしての油圧緩衝器60A、60Bの外筒61A、61Bの開口端をかしめる加工を行う装置である。かしめ装置1は、外筒61A、61Bの外径が異なる2種類の油圧緩衝器60A、60Bに対して取り替えをせずに対応することが可能となっている。なお、2種類の油圧緩衝器60A,60Bは、一方の油圧緩衝器60Aが、外筒61Bよりも大径の外筒61Aを有する大径のワークであり、油圧緩衝器60Bが、外筒61Aより小径の外筒61Bを有する小径のワークである。すなわち、本実施形態においては、本発明に係る第1のワークとして油圧緩衝器60Bを例示するとともに、本発明に係る第2のワークとして油圧緩衝器60Aを例示する。
まず、油圧緩衝器60A、60Bについて説明する。製品としての油圧緩衝器60A、60Bは、図8にその一部を示すように、複筒型であって、外筒61A、61B(図8では大径の外筒61Aのみを図示)と、外筒61A、61Bの内側に配置されるシリンダ62と、シリンダ62内に移動可能に挿入されるピストンロッド63と、ピストンロッド63を摺動可能に保持してシリンダ62の上側の開口端と外筒61A、61Bの上端部に形成されたかしめ部64に接して装着されるロッドガイド65と、ロッドガイド65の上方に位置して外筒61A、61Bとシリンダ62との間を封止するシール66を有する環状のインサートメタル67とを備えている。外筒61A、61Bとシリンダ62との間に形成されるリザーバ室68には、作動油が充填される。かしめ装置1は、外筒61A,61Bの開口端にかしめ部64を形成するかしめ加工を行う。
油圧緩衝器60A、60Bは、かしめ加工の際には、図示しないチャックに固定され、外筒61A,61Bのかしめ部64が形成される開口端を上方に向けて、その直立姿勢が維持される。本実施形態1においては、開口端が開放された外筒61A、61Bの上端部をかしめ装置1内に挿入し、外筒61A、61Bの上端部を内側に屈曲し、もって形成されるかしめ部64をインサートメタル67の上面の外周に当接させる。これにより、インサートメタル67がかしめ部64とロッドガイド65との間に挟まれて固定される。なお、本実施形態1においては、かしめ加工の際に、開口端が開放された外筒61A、61Bの上端部をかしめ装置1内に挿入し、インサートメタル67と外筒61A、61Bとの間に形成される隙間を通してリザーバ室68にガスを導入するガス封入処理も行う。つまり、本実施形態1のかしめ装置1は、ガス封入装置としての側面を持っている。
続いて、かしめ装置1の構造を具体的に説明する。かしめ装置1は、図1に示すように、加工部11及び案内部12を備えている。また、かしめ装置1は、筒部13、ハウジング部14、及びヘッド部15を備えている。加工部11及び案内部12は、筒部13の下端に吊下支持されたハウジング部14内に収納されている。また、筒部13の下端部、及びハウジング部14は、ヘッド部15内に収納されている。
筒部13は上下両端が開口する筒状に形成されている。筒部13は、図示しない回転機構により筒部13の軸芯を中心とする軸回りに回転自在に支持されている。これにより、かしめ装置1は、加工部11、案内部12、及びハウジング部14を回転自在に支持する。また、筒部13内にはプッシュロッド13Aが挿通されている。プッシュロッド13Aは、軸方向に摺動自在に筒部13に挿通されている。プッシュロッド13Aは、上端が閉塞され、下端が開放された有底筒状に形成されている。プッシュロッド13Aは、かしめ加工時にインサートメタル67に上方から当接し、インサートメタル67をロッドガイド65側に押圧する。また、プッシュロッド13Aの内側空間は、かしめ加工時のピストンロッド63の逃げ代とされている。プッシュロッド13Aは回転不能に固定されて設けられている。すなわち、筒部13はプッシュロッド13A回りを回転する。
ハウジング部14は、有底筒状をなしており、その軸芯が筒部13の軸芯に同軸にされて筒部13の下端に取り付けられている。ハウジング部14の上壁14Aの中央には上側挿入口14Bが形成され、下壁14Cの中央部には下側挿入口14Dが形成されている。ハウジング部14には、上側挿入口14Bからプッシュロッド13Aが挿入されている。また、下側挿入口14Dからは、かしめ加工時に油圧緩衝器60A,60Bが挿入される。
ヘッド部15は、ハウジング部14を外側から囲い、かしめ加工の際に気密空間を形成する。ヘッド部15は回転不能に固定されて設けられている。ヘッド部15は、下底壁の中央に円形の挿入口15Aが開口しており、挿入口15Aの口縁にはシール部25が装着されている。ヘッド部15の上底壁は筒部13が貫通する貫通孔15Bが形成されている。貫通孔15Bの口縁と筒部13の外周面との間には、ヘッド部15内の空間を気密に保持するためにシール部26が配されている。ヘッド部15内の空間には、プッシュロッド13Aの下端部、ハウジング部14、加工部11、及び案内部12がそれぞれ配置され、図示しないガス供給源からガスが導入される。油圧緩衝器60A、60Bの外筒61A、61Bの上端部は、挿入口15Aからヘッド部15内の空間に挿入される。このとき、外筒61A、61Bの上端部は、外周面がシール部25に密着することで、ヘッド部15内の空間に気密に臨むことが可能となっている。
なお、本実施形態1で言う軸芯とは、これら筒部13、プッシュロッド13A、ハウジング部14、及びヘッド部15の共通の軸芯であり、かしめ装置1の加工軸の軸芯である。
加工部11はワークである油圧緩衝器60A、60Bの外筒61A、61Bの開口端にかしめ加工を行う。加工部11はワークの径方向に近接及び離間可能である。換言すると、加工部11は、ワークの外径に応じて、ワークの径方向に進退自在に設けられている。加工部11は、円盤状の奥壁部35と、奥壁部35の外周縁に当接する鍔部36が外向きに張り出した円筒状の周壁部37と、軸受部38を介して周壁部37内に回転可能に挿入される円柱棒状の本体部39とを備えている。図1に示すように、奥壁部35は、ハウジング部14の側壁14Eに取り付けられた角ブロック状のケーシング部41に保持される。本体部39の径方向内側の先端部にはかしめローラ57が設けられている。かしめローラ57は、周壁部37の開口端から突出し、プッシュロッド13Aの近傍に配置されている。また、かしめローラ57は、先端外周面に曲面状の曲面部58を有している。油圧緩衝器60A、60Bの外筒61A、61Bの開口端は、このかしめローラ57の曲面部58に沿ってかしめられるようになっている。
図4に示すように、ケーシング部41は、ハウジング部14の側壁14Eの外面に当接するベース面42を有し、このベース面42に開口する主凹部43及び副凹部44に奥壁部35が嵌り込む。主凹部43は、ベース面42とそれに隣接する二面(図4の上面と下面)に跨って開口する角溝状に形成されている。副凹部44は、主凹部43の両側内面から円弧凹状に対をなして凹むように形成されている。主凹部43及び副凹部44の奥面は、それぞれ、上下方向に沿った第1ストッパ面45及び第2ストッパ面46とされている。第1ストッパ面45及び第2ストッパ面46は、互いに段違いに配置されている。第2ストッパ面46は、第1ストッパ面45より一段高く、ベース面42寄りに配置されている。ケーシング部41の中央部には、第1ストッパ面45に開口する円形の挿入孔47が貫通して設けられている。
奥壁部35は、径方向外側を向く対向ベース面48を有し、対向ベース面48の中央部に円柱状の突部49が突出し、突部49を挟んだ両側に一対の段差部51を有している。両段差部51は、直線状をなし、互いに平行に配置されている。奥壁部35の対向ベース面48のうち、段差部51を介して一段高い内側の部分は第1当て面52とされ、段差部51を介して第1当て面52より一段低い外側の部分は第2当て面53とされている。
図5及び図6に示すように、奥壁部35がケーシング部41の主凹部43及び副凹部44に嵌ったときに、突部49はケーシング部41の挿入孔47に挿入される。突部49の先端面には直径方向に延出する溝部54が設けられている。溝部54は、操作部80によって操作される。
操作部80は、溝部54の向きを操作してかしめ加工する外筒61A,61Bの外径に応じてかしめローラ57の位置を変更する。図1〜図3に示すように、操作部80は、ヘッド部15の周壁を貫通して径方向に移動可能な円柱棒状の操作軸81と、ヘッド部15の周壁の外周面と操作軸81との間に配置されるばね部材82とを有している。操作軸81の先端部分は、ヘッド部15内の空間に配置される。そして、操作軸81の先端面には、溝部54に嵌り込むことが可能なリブ状の突条部83が設けられている。
鍔部36を挟んで奥壁部35とは反対側の位置には、スプリング55が設けられている。スプリング55は、ハウジング部14に形成された収容凹部56に収容され、収容凹部56の奥端と鍔部36との間に弾性的に保持されている。奥壁部35は、スプリング55の弾性力を受けることで鍔部36を介してケーシング部41に押し当てられた状態を維持することが可能となっている。
図1及び図7に示すように、案内部12は案内面部12A,12Bを有する。また、案内部12は、軸部12C、ニードルローラベアリング12D、2つのアンギュラベアリング12E,12F、及びコイルスプリング12Gを有している。案内面部12A,12Bは、ワークである油圧緩衝器60A,60Bの外筒61A,61Bの外周に当接して案内する。案内面部12A,12Bは、大径のワークである油圧緩衝器60Aの外筒61Aの外径に対応する案内面部12A(本発明に係る第2の案内面部として例示する。)と、小径のワークである油圧緩衝器60Bの外筒61Bの外径に対応する案内面部12B(本発明に係る第1の案内面部として例示する。)である。本実施形態1において、案内面部12A,12Bは円筒状に形成されている。そして、案内部12は、案内面部12A,12Bの外周面が外筒61A,61Bの外周面に転がり接触するローラとして構成されている。
軸部12Cは、その両端部がハウジング部14の上壁14Aと下壁14Cに夫々支持されている。案内面部12A,12Bは、軸部12Cに回転自在に軸支されている。詳細には、案内部12は、軸部12Cが、ラジアル荷重を受けるニードルローラベアリング12Dと、ラジアル荷重及びモーメント荷重を受ける2つのアンギュラベアリング12E,12Fとを介して、大径ワーク用の案内面部12Aを回動自在に軸支し、その外側に小径ワーク用の案内面部12Bを被せて構成されている。本実施形態では、このような構成により、本発明に係る第1の案内面部としての案内面部12Bが第2の案内面部としての案内面部12Aを被覆する形態を実現している。また、案内面部12Bはワークの軸芯方向に移動可能である。本実施形態の場合、小径ワーク用の案内面部12Bは、軸部12Cの軸芯に沿って上下方向に摺動自在に設けられている。
案内部12は、ワークである油圧緩衝器60A,60Bが挿入される前の状態では、小径ワーク用の案内面部12Bが、大径ワーク用の案内面部12Aを覆った状態とされている(図1参照)。そして、案内部12は、小径ワークである油圧緩衝器60Bが挿入されたときには、油圧緩衝器60Bの外筒61Bを案内面部12Bの外周面にて案内する(図2参照)。また、案内部12は、大径ワークである油圧緩衝器60Aが挿入されたときには、小径ワーク用の案内面部12Bが油圧緩衝器60Aの外筒61Aの開口端にて押し上げられて挿入方向に退避して大径ワーク用の案内面部12Aが露出し、油圧緩衝器60Aの外筒61Aを案内面部12Aの外周面にて案内する(図3参照)。
案内面部12Bはワークの挿入方向と逆方向に付勢されている。具体的には、小径ワーク用の案内面部12Bは、コイルスプリング12Gにより付勢力を付与されている。コイルスプリング12Gによる付勢力は、案内面部12Bに対してワークの挿入方向の逆方向に付与されている。このため、小径ワーク用の案内面部12Bは、大径ワークである油圧緩衝器60Aが挿入されたときには、コイルスプリング12Gが圧縮された状態で挿入方向に退避し、かしめ加工が完了して油圧緩衝器60Aが抜去されたときには、元の状態、すなわち大径ワーク用の案内面部12Aを覆った状態に自動的に復帰する。
図5及び図6に示すように、加工部11及び案内部12は、ハウジング部14内に夫々3つずつ配置されている。加工部11及び案内部12は、1つの加工部11と1つの案内部12を一対として計3対設けられている。各一対の加工部11及び案内部12は、軸芯を挟んで対向している。各加工部11及び案内部12は、軸芯回りに120°の等間隔(3等配)でそれぞれ配置されている。
次に、油圧緩衝器60A、60Bの外筒61A、61Bの開口端のかしめ加工の方法について具体的に説明する。
まず、小径の外筒61Bを有する油圧緩衝器60Bのかしめ加工の方法について説明する。小径の外筒61Bにかしめ加工を施すに際し、加工部11においては、図5に示すように、奥壁部35の第1当て面52がケーシング部41の第2ストッパ面46に当接するように設定される。こうすることで、図2に示すように、かしめローラ57が軸芯側により近い位置に配置される。
仮に、第1当て面52が第2ストッパ面46に当接した状態になく、第1当て面52が第1ストッパ面45に当接し、第2当て面53が第2ストッパ面46に当接した状態になっている場合(図6を参照)には、操作部80の操作軸81がばね部材82の弾性力に抗してヘッド部15の外側から径方向内側に押し込まれる。次いで、操作部80の突条部83が突部49の溝部54に嵌められ、さらに、操作軸81がスプリング55の弾性力に抗して押し込まれて約90度回転操作させられる。すると、奥壁部35の第1当て面52がケーシング部41の第2ストッパ面46に乗り上げられる。その後、操作軸81が突部49から離れることで、奥壁部35の第1当て面52がスプリング55による弾性力によってケーシング部41の第2ストッパ面46に押し当てられた状態になる。このように、加工部11は、ケーシング部41に対して径方向内側に移動することで小径の外筒61Bにかしめ加工を施すことが可能な位置に至る。
続いて、かしめ装置1を下降させるか、あるいは油圧緩衝器60Bを上昇させることにより、小径の外筒61Bの上端部をヘッド部15の挿入口15Aからヘッド部15の内部空間に挿入する。図2に示すように、外筒61Bの上端部がヘッド部15内の空間に挿入されると、かしめローラ57の曲面部58が外筒61Bの開口端を上方から臨む位置に配置される。
また、外筒61Bの上端部がヘッド部15内の空間に挿入されると、図5に示すように、外筒61Bの上端部の外周面に各小径ワーク用の案内面部12Bの外周面が夫々接触する。これにより、油圧緩衝器60Bの軸芯が筒部13の回転中心に一致するように芯出しされる。また、ピストンロッド63の上端部がプッシュロッド13Aの内側に挿入される。
次いで、ヘッド部15内の空間にガスが供給され、インサートメタル67と外筒61Bとの間の隙間からリザーバ室68にガスが導入される。リザーバ室68に導入されたガスが所定の圧力に達したら、プッシュロッド13Aの下端がインサートメタル67に押し当てられ、インサートメタル67がロッドガイド65に向けて押圧される。
上記の状態で、かしめ装置1を下降させるか、あるいは油圧緩衝器60Bを上昇させることにより、かしめローラ57の曲面部58が外筒61Bの開口端に接して外筒61Bの開口端を押圧する。さらにモータの駆動により筒部13が軸芯周りに回転すると、加工部11が各小径ワーク用の案内面部12B及び各大径ワーク用の案内面部12Aとともに回転する。これにより、外筒61Bの上端部は、各小径ワーク用の案内面部12Bによって芯出しされて案内された状態で、開口端がかしめローラ57の曲面部58に沿って次第に内側に倒れ込む。また、インサートメタル67の上面の外周にかしめ部64が全周に亘って当接し、リザーバ室68が密閉された状態になる。その後、油圧緩衝器60Bがかしめ装置1から離され、外筒61Bがヘッド部15内の空間から取り出される。
次に、大径の外筒61Aを有する油圧緩衝器60Aのかしめ加工の方法について説明する。図6に示すように、まず、油圧緩衝器60Aの外径に合わせて加工部11を離間させる。加工部11においては、操作部80の操作により、上記小径の外筒61Bへのかしめ加工の場合よりも、かしめローラ57の曲面部58が軸芯から遠ざかる方向に移動させられる。具体的には、最初に、操作部80の操作軸81がばね部材82の弾性力に抗して軸芯側に押し込まれる。次いで、操作部80の突条部83が突部49の溝部54に嵌められ、操作軸81が約90度回転操作させられる。操作軸81は、ばね部材82の弾性力を受けて径方向外側に後退し、突部49から離れる。こうして操作部80の操作力が解かれることで、加工部11がスプリング55の弾性力を受けて径方向外側に移動させられる。これにより、奥壁部35の第1当て面52がケーシング部41の第2ストッパ面46から段落ちして第1ストッパ面45に当接するとともに、奥壁部35の第2当て面53がケーシング部41の第2当て面53に当接する状態になる。
続いて、大径の外筒61Aの上端部がヘッド部15内の空間に挿入される。これにより、案内面部12Bがワークの軸芯方向、すなわちワークの挿入方向に移動し、案内面部12Aがワークである油圧緩衝器60Aの外周に当接する。具体的には、その挿入過程では、外筒61Aの上端が各小径ワーク用の案内面部12Bの下端面に当接し、さらに外筒61Aがヘッド部15内の空間に深く挿入されるに従い、図3に示すように、各小径ワーク用の案内面部12Bが外筒61Aに押圧されてコイルスプリング12Gの弾性力に抗して押し上げられて退避する。大径の外筒61Aがヘッド部15内の空間に正規深さで挿入されると、図6に示すように、外筒61Aの上端部の外周面に各大径ワーク用の案内面部12Aの外周面が接触する。これにより、油圧緩衝器60Aの軸芯が筒部13の回転中心に一致するように芯出しされる。あとは、上述した小径の外筒61Bと同様の手順で外筒61Aの開口端がかしめられる。外筒61Aの開口端がかしめられる間、各小径ワーク用案内面部12Bは外筒61Aの上端に載せられて退避位置に維持される。その後、外筒61Aの上端部がヘッド部15内の空間から取り出されると、各小径ワーク用の案内面部12Bがコイルスプリング12Gの弾性力を受けて下降し、元の位置へと自動的に復帰する。
このように、かしめ装置1の案内部12において、案内面部12Bは、油圧緩衝器60B(外筒61B)のかしめ加工を行うときには外筒61Bの外周に当接し、油圧緩衝器60A(外筒61A)のかしめ加工を行うときには、油圧緩衝器60Aの挿入によって油圧緩衝器60Aの挿入方向(ワークの軸芯方向)に移動する。一方、案内面部12Aは、油圧緩衝器60B(外筒61B)のかしめ加工を行うときには、案内面部12Bにより被覆されており、油圧緩衝器60A(外筒61A)のかしめ加工を行うときにはこの外筒61Aの外周に当接する。
以上説明したように、本実施形態1のかしめ装置1は、外筒61A、61Bの径が異なる複数の油圧緩衝器60A、60Bをかしめ加工するに際し、大径の外筒61Aは大径ワーク用の案内面部12Aによって案内し、小径の外筒61Bは小径ワーク用の案内面部12Bによって案内する。大径の外筒61Aのかしめ加工を行う際には、小径ワーク用の案内面部12Bが大径の外筒61Aに押されてワークの挿入方向に退避する。このように、小径ワーク用の案内面部12Bを装着から取り外す等といった面倒な作業を行う必要がない。その結果、取り替え作業に要する手間を省くことができる。
また、加工部11が径方向に移動することで、大径の外筒61Aと小径の外筒61Bをいずれもかしめることができるため、それぞれの外筒61A、61Bに応じて加工部11を交換する必要もない。
さらに、大径ワーク用の案内面部12A、小径ワーク用の案内面部12B、及び加工部11が、外筒61A、61Bに対して軸芯を中心とする円周方向に回転するため、外筒61A、61Bを円周方向に連続的に処理することができる。
また、大径の外筒61Aがかしめ装置1から取り出されると、小径ワーク用の案内面部12Bがコイルスプリング12Gに付勢されて元の位置へと自動的に復帰することができる。この場合、小径ワーク用の案内面部12Bの退避と復帰の各動作がコイルスプリング12Gを利用した簡易な構成で実現されるため、構成の複雑化を招くことがない。
また、小径ワーク用の案内面部12Bは、コイルスプリング12Gにより、ワークの挿入方向とは逆方向へ付勢されている。案内面部12Bはコイルスプリング12Gにより付勢されている。このため、大径のワークがかしめ装置1から取り出されたときに、小径ワーク用の案内面部12Bがコイルスプリング12Gの弾性力を受けて元の位置へと自動的に復帰することができる。特に、小径ワーク用の案内面部12Bの退避と復帰の各動作がコイルスプリング12Gを利用した簡易な構成で実現されるため、好ましい。
また、案内部12は、案内面部12A,12Bの外周面がワークの外周面に転がり接触するローラである。このため、ワークの外周面が傷付くのを防止することができる。
また、加工部11は、ワークの径に応じて近接及び離間可能である。換言すると、加工部11は、ワークの径に応じてワークの径方向に進退自在に設けられている。このため、加工部11を径方向に進退させることで、同軸芯に挿入される大径及び小径のそれぞれのワークにかしめ加工を施すことができる。したがって、ワークの径に応じて加工部11を交換する必要がない。
また、案内部12は、挿入されるワークの軸芯を中心とする円周方向に120°の等間隔で3つ設けられている。このため、ワークである油圧緩衝器60A,60Bの外筒61A,61Bを3つの案内部12の各案内面部12A,12Bにより好適に案内することができるとともに、ワークの芯出しを行うこともできる。
また、加工部11は、挿入されるワークの軸芯を中心とする円周方向に120°の等間隔で3つ設けられている。このため、加工部11が1つの場合と比較して、加工時間を短縮することができる。また、3つの加工部11によるかしめ加工時の径方向内側に向かう力を好適に受け止め合うことができる。
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態1に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施形態1では、ワークとして油圧緩衝器を例示したが、これに限定されず、ワークは円筒状であれば実質的に種類を問わない。
(2)実施形態1では、かしめ加工を行う加工部を例示したが、これに限定されず、加工部としてはワークに所定の加工を施すものであればよい。
(3)実施形態1では、外径の異なる2種別の筒状のワークを加工する装置を例示したが、これに限定されず、ワークの種類は3種類以上であってもよい。
(4)実施形態1では、加工部及び案内部を夫々3つずつ設ける例を示したが、これに限定されない。加工部及び案内部は、1つずつ設けられていてもよいし、少なくとも一方が2以上設けられていてもよい。
(5)実施形態1では、第1の案内面部としての案内面部12Bがコイルスプリングによって、ワークの挿入方向とは逆方向へ付勢される形態を例示したが、本発明においては、第1の案内面部が付勢されることは必須ではない。
(6)実施形態1では、案内部が、案内面部の外周面がワークの外周面に転がり接触するローラである形態を例示したが、これに限定されず、例えば、案内部が回転不能に固定された形態であってもよい。この場合、案内面部のワークとの当接面は円弧状面に限らず、楕円弧状面、凹曲面などの曲面状の当接面であってもよいし、平面状の当接面であってもよい。
(7)実施形態1では、大径ワーク用の案内面部12Aと小径ワーク用の案内面部12Bとが同軸上に回転自在に設けられている形態を例示したが、夫々異なる軸回りに回転する形態であってもよい。
(8)実施形態1では、加工部及び案内部が、挿入されるワークの軸芯を挟んで対向して配置されている例を示したが、これに限定されず、対向して配置されていなくてもよい。
(9)実施形態1では、3つの案内部を軸芯回りに120°の等間隔で配置する例を示したが、これに限定されず、例えば、2つの案内部を180°間隔で配置したり、4つの案内部を90°の等間隔で配置したりなど、4以上の複数の案内部を軸芯回りに等間隔で配置するようにしてもよい。また、例えば、3つの案内部を軸芯回りに100°、120°、140°など、複数の案内部を軸芯回りに不等間隔で配置してもよい。