JP6792339B2 - インジェクタ - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関の燃焼室に燃料を噴射するインジェクタに関する。
内燃機関として、燃焼室内の空気をピストンで圧縮して高温にし、インジェクタから燃料を噴射することで、燃焼室内で空気と燃料とを混合して自然着火(圧縮着火)させるディーゼルエンジンが知られている。燃料の噴射を行なうインジェクタは、内部に燃料通路を有する筒状のバルブボディーと、その内部に配置されるニードルバルブと、を備え、バルブボディーの先端部には、燃料通路内の燃料を先端部の外部に噴射させる噴射孔が形成されている(例えば、特許文献1を参照)。このような構成を備えるインジェクタでは、ニードルバルブが後退(バルブボディーの先端とは反対側に移動)することで、噴射孔から燃料が噴射される。
ディーゼルエンジンでは、ピストンの頂面に凹部を設けることで当該頂面に燃焼室が形成される。ここで、先端部からの距離が近い凹部の中心付近に燃料が直接噴射されると、燃料が液化し、燃料の燃焼効率が低下する恐れがある。そのため、ディーゼルエンジンのインジェクタでは、噴射孔の軸線をバルブボディーの軸線に対して傾け、燃焼室の周方向に燃料を噴射するように構成されている。そうすることで、燃焼室内の燃料の液化が抑制され、燃焼室全体に燃料が分散し、燃焼室内で空気と燃料とが速やかに混合される。
燃焼室の周方向に燃料を噴射する構成では、燃料の噴射によって、噴射孔の位置から凹部の側壁に向い、さらに凹部の底部側の外方から中心に向う縦向きの気流が形成される。しかし、燃焼室を周回し、凹部の中心付近に到達した気流はその勢いが弱まってしまうので、凹部の中心付近、即ち凹部におけるバルブボディーの先端部近傍の空気が十分に燃料と混合されない恐れがある。この問題点を解決するために、特許文献1の構成では、燃料の噴射孔とは別にバルブボディーの先端部に空気の噴射孔を設けることで、燃焼室内に、凹部の中心から外部に向う空気の流れを追加し、凹部の中心付近の空気を有効に利用している。
特開平9−88610号公報
しかし、特許文献1の構成では、バルブボディーの内部に、燃料の通路だけでなく空気の通路も形成しなければならず、しかも空気の噴射量やタイミングを調整するポンプや弁などの機構も設ける必要がある。このような構成は非常に複雑で、コストを含めたインジェクタの生産性が芳しくない。また、複雑な構成のインジェクタは故障し易いという問題もある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、シンプルな構成でバルブボディーの先端部近傍の空気を有効に利用できるインジェクタを提供することにある。
本発明の一態様に係るインジェクタは、内部に燃料通路を有するバルブボディーと、前記バルブボディーの先端部に設けられ、前記燃料通路内の燃料を前記先端部の外部に噴射させる噴射孔とを備えるインジェクタであって、前記先端部における前記噴射孔の出口側開口部から離れた位置から前記噴射孔の軸方向の中間部に連通する連通孔を備える。
上記インジェクタには噴射孔の軸方向の中間部に連通する連通孔が設けられているため、噴射孔を介して燃料を噴射すると、連通孔が負圧になって連通孔の外部側(噴射孔の軸方向中間部に繋がる側とは逆側)近傍の空気が噴射孔に吸い込まれる。噴射孔に吸い込まれた空気は燃料と共に噴射孔から噴射される。つまり、インジェクタの先端部(バルブボディーの先端部)近傍のうち、空気の流れが悪い箇所に連通孔を開口させることで、当該先端部近傍の空気を有効に利用することができる。例えば、上述したディーゼルエンジンの場合、ピストンの頂面に形成される凹部の中心側に向って連通孔を開口させることで、凹部の中心付近の空気を有効に利用することができる。
上記インジェクタでは、噴射孔の軸方向の中間部に連通する連通孔を設けるだけでインジェクタの先端部近傍の空気を有効に利用できる。つまり、当該先端部近傍の空気を利用するために、連通孔以外の追加の構成が必要ないため、上記インジェクタの構成がシンプルで、インジェクタの生産性が高い。
実施形態1に示す内燃機関の燃焼室周りの概略構成図である。 実施形態1に示す内燃機関に備わるインジェクタの先端部の概略縦断面図である。
以下、本発明の実施形態に係るインジェクタを図面に基づいて説明する。
<実施形態1>
実施形態のインジェクタの説明に先立ち、インジェクタを備えるディーゼルエンジン(内燃機関)を図1に基づいて説明する。
≪内燃機関≫
内燃機関100は、ピストン2と、内部でピストン2を往復させるシリンダライナー3と、シリンダライナー3の上部に配置されるシリンダヘッド4と、を備える。ピストン2の頂面には凹部20が形成されており、その凹部20によって燃焼室9が構成される。シリンダヘッド4には、吸気ポート6と排気ポート7が設けられており、両ポート6,7はシリンダライナー3の内部に繋がっている。吸気ポート6のシリンダライナー3側の開口端である吸気孔は吸気バルブ6bによって開閉され、排気ポート7のシリンダライナー3側の開口端である排気孔は排気バルブ7bによって開閉される。この内燃機関100の燃焼室9の天井部分、即ちシリンダヘッド4のうち、燃焼室9に対向するルーフ面からは、燃焼室9に燃料を噴射するインジェクタ1の先端が露出している。
≪インジェクタ≫
インジェクタ1は、内部に燃料通路を有する筒状のバルブボディー10と、その内部に配置されるニードルバルブ(図示せず)とを備え、バルブボディー10の先端部には、燃料通路内の燃料を先端部の外部に噴射させる複数の噴射孔11が形成されている。このような構成を備えるインジェクタ1では、ニードルバルブが後退(バルブボディー10の先端とは反対側に移動)することで、噴射孔11から燃料が噴射される。インジェクタ1は、エンジンコントロールユニットなどで構成される制御部(図示せず)に繋がっており、制御部の指令によってニードルバルブが進退することで、燃料の噴射量や時間を調節することができる。ニードルバルブは、ソレノイドなどやピエゾ素子などで進退される。
本例のインジェクタ1は、噴射孔11に加えて、噴射孔11の軸方向の中間部に連通する連通孔12(図2参照)を有する。噴射孔11と連通孔12の関係について、図2のバルブボディー10の先端部の縦断面図を用いて説明する。図2では、縦断面図の右下の位置に、噴射孔11の軸線方向から見た噴射孔11周りの概略図を示している。
図2に示すように、噴射孔11は、その軸線がバルブボディー10の軸線に対して傾いている。噴射孔11は、バルブボディー10の内部に形成される燃料通路15に繋がる細径部1Aと、細径部1Aよりも内径の大きな太径部1Bと、太径部1Bに嵌め込まれた環状蓋19の貫通孔部1Cとで構成されている。燃料通路15内の燃料は、白抜き矢印に示すように、細径部1A、太径部1B、貫通孔部1Cを通ってバルブボディー10の先端部の外部に噴射される。燃料は、細径部1Aから太径部1Bに移行する過程で径方向に拡散するので、燃料の噴射をスムースにするために、図2に示すように貫通孔部1Cの内径を細径部1Aの内径よりも大きくすることが好ましい。
上記噴射孔11に加えて設けられる連通孔12は、噴射孔11の出口側開口部(貫通孔部1Cの開口端)とは離れた位置から、噴射孔11の軸方向の中間部(本例では、太径部1B)に連通する。この連通孔12を設けることで、噴射孔11を介して白抜き矢印の方向に燃料を噴射すると、連通孔12が負圧になって連通孔12の外部側(噴射孔11の軸方向中間部に繋がる側とは逆側)近傍の空気が太線矢印に示すように噴射孔11に吸い込まれる。噴射孔11に吸い込まれた空気は燃料と共に噴射孔11から噴射される。本例では、連通孔12の開口端(貫通孔部1Cとは反対側の端部)は、バルブボディー10の先端部の突端側に配置されており、凹部20(図1参照)の中心付近の空気を連通孔12に吸い込む構成となっている。それは、図1の内燃機関100の構成では、バルブボディー10の先端部に対向する凹部20の中心付近の空気の流れが悪くなっているためである。
上記噴射孔11と連通孔12は、例えば次のようにして形成することができる。まず、バルブボディー10の先端部の外部から燃料通路15に繋がる加工孔(細径部1Aと同径の孔)を形成し、その加工孔の軸線を回転中心とするザグリ加工を行なって、細径部1Aと太径部1Bを形成する。次いで、バルブボディー10の先端部の突端側から太径部1Bに向って徐々に深くなる加工溝を形成する。最後に、太径部1Bに環状蓋19を圧入する。その結果、細径部1A、太径部1B、および貫通孔部1Cで構成される噴射孔11が形成される。また、加工溝が太径部1Bに繋がることで連通孔12が形成される。太径部1Bの底部と環状蓋19との間の隙間を大きくすれば、連通孔12からの空気の吸込み量を大きくできる。つまり、連通孔12からの空気の吸込み量をどの程度とするかによって、太径部1Bの底部と環状蓋19との間の隙間の大きさを決定すれば良い。太径部1Bの深さと環状蓋19の厚さとをほぼ同じとし、細径部1Aと貫通孔部1Cとで噴射孔11が形成されるようにしても構わない。その場合、連通孔12は、細径部1Aに繋がるようにする。
≪効果≫
以上説明したインジェクタ1では、噴射孔11の軸方向の中間部(太径部1B)に連通する連通孔12を設けるだけでバルブボディー10の先端部近傍の空気を有効に利用できる。このインジェクタ1では、バルブボディー10の先端部近傍の空気を利用するために、連通孔12以外の追加の構成、例えば弁やポンプなどが必要ないため、インジェクタ1の構成がシンプルである。シンプルな構成のインジェクタ1は生産性に優れる上、故障し難い。
≪変形例≫
図2に示す連通孔12は、バルブボディー10の先端部の突端側に開口する構成に限定されるわけではなく、燃焼室9(図1参照)の空気の流れが悪い箇所の空気を吸い込むように配置すれば良い。また、連通孔12は、一つの噴射孔11に対して複数設けられていても構わない。
その他、図2の太径部1Bが無い噴射孔11とすることもできる。例えば、穴加工によって噴射孔11を形成し、その噴射孔11の出口側開口部とは異なる位置から噴射孔11の軸方向の中間部に連通する連通孔12を穴加工によって形成しても良い。
<実施形態2>
実施形態1で説明したインジェクタ1は、ガソリンエンジンのインジェクタとして利用することもできる。例えば、吸気ポート内にガソリンを噴射するポート噴射式の場合、ポートの下流側にインジェクタの先端部が向くように、インジェクタを斜めに配置することがある。その場合、吸気ポートに露出するインジェクタの先端部が空気の流れを阻害する壁となって、インジェクタの先端部近傍のうち、下流側の部分における空気の流れが悪くなる。そこで、その先端部の下流側の部分に連通する連通孔をインジェクタに設ければ、空気の流れが悪い部分の空気を有効に利用できる。その他、実施形態1のインジェクタ1は、ガソリン直噴エンジンのインジェクタとしても利用することもできる。この場合も、空気の流れの悪い箇所から空気を取り込めるように、連通孔の開口部を配置すると良い。
本発明のインジェクタは、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンのインジェクタとして好適に利用可能である。
100 内燃機関
1 インジェクタ
10 バルブボディー 11 噴射孔 12 連通孔 15 燃料通路 19 環状蓋
1A 細径部 1B 太径部 1C 貫通孔部
2 ピストン 20 凹部
3 シリンダライナー
4 シリンダヘッド
6 吸気ポート 6b 吸気バルブ
7 排気ポート 7b 排気バルブ
9 燃焼室

Claims (1)

  1. 内部に燃料通路を有するバルブボディーと、前記バルブボディーの先端部に設けられ、前記燃料通路内の燃料を前記先端部の外部に噴射させる噴射孔とを備えるインジェクタであって、
    前記噴射孔は、前記燃料通路から前記外部に向かって順に配置される細径部と太径部と貫通孔部とを備え、
    前記太径部の内径は、前記細径部の内径よりも大きく、
    前記貫通孔部の内径は、前記太径部の内径よりも小さく、かつ前記細径部の内径よりも大きく、
    前記先端部における前記噴射孔の出口側開口部から離れた位置から前記太径部に連通する連通孔を備えるインジェクタ。
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