JP6636836B2 - 直噴式エンジンの燃焼室構造 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車等の直噴式エンジンの燃焼室構造に関する。
図4は、従来のディーゼルエンジンの燃焼室構造の構成を示す図である。図4に示すように、エンジン100の燃焼室111は、シリンダブロック112に形成されたシリンダ112aと、該シリンダ112a内を往復動するピストン113の頂面113aと、吸排気ポート114a、114bをそれぞれ開閉する吸気弁115及び排気弁116が配設されたシリンダヘッド114の、ピストン113の頂面113aと対向する下面114cとで構成されている。
ピストン113の頂面113aには、シリンダヘッド114の下面114cから離れる方向に凹となる円形のキャビティ130が形成されており、キャビティ130内の空間も燃焼室111を構成している。そして、キャビティ130もしくは燃焼室111の中央に先端部が位置するように、シリンダヘッド114に燃料噴射弁117が取り付けられている。
燃料噴射弁117の先端部の周囲には複数の噴孔117aが形成され、ピストン113の圧縮上死点近傍において、キャビティ130の周辺に向けて放射状に燃料を噴射するように構成されている(例えば、特許文献1を参照)。
特開2010−121483号公報
上記従来の技術においては、以下のような課題があった。すなわち、エンジンにおいて燃料噴射弁117における燃料の噴射のタイミングと、ピストン113の往復運動の位相とは一致しない。これは、ピストン113のキャビティ130内において噴孔117aから噴射される燃料の到達位置がピストンの上死点毎に異なることを意味し、燃焼室111周縁のスキッシュエリアへの燃料の漏れ量を変動させ、キャビティ130における空燃比の低下、変動を引き起こし、安定した燃焼の妨げとなっていた。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、ディーゼルエンジンのような直噴式エンジンにおいて、燃料の噴射を安定させ、安定した燃焼を実現することが可能な直噴式エンジンの燃焼室構造を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明の側面は、内壁が曲面をなす凹部が中央に形成されたピストンヘッドと、前記ピストンヘッドを有するピストンが上死点にあるときに前記ピストンヘッドの凹部の曲面から滑らかに繋がる曲面をなす凹面が形成されたバルブヘッドと、前記ピストンヘッドの凹部と前記バルブヘッドの凹面とを含んで形成された燃焼室内に配設され、前記バルブヘッドに直接燃料を噴射するインジェクタとを備えた、直噴式エンジンの燃焼室構造である。
なお、本発明は、他の側面として、前記バルブヘッドを収容するシリンダヘッドの内壁はペントルーフ形状を有するものであってもよい。
以上のような本発明は、直噴式エンジンにおいて、燃料の噴射を安定させ安定した燃焼を実現することが可能になるという効果を奏する。
本発明の実施の形態に係る直噴式エンジンの燃焼室構造の構成を示す断面図 本発明の実施の形態に係る直噴式エンジンの燃焼室構造の構成を示す断面図 本発明の実施の形態に係る直噴式エンジンの燃焼室構造の構成を模式的に示す平面図 従来の直噴式エンジンの燃焼室構造の構成を示す断面図
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1及び図2は、本発明の実施の形態に係る直噴式エンジンの燃焼室構造の構成を示す断面図であり、図3は、本発明の実施の形態に係る直噴式エンジンの燃焼室構造の構成を模式的に示す平面図であり、図1は図3のA−A直線による断面図として、図2は図3のB−B直線による断面図として、それぞれ示される。
図1に示すように、本実施の形態における直噴式エンジンの燃焼室構造1は、ディーゼルエンジンを例に取り、シリンダブロック10、シリンダブロック10の上方に位置するシリンダヘッド20、シリンダブロック10内を往復するとともに図示しないコンロッドに連結されるピストン30を主要な構成として備える。シリンダヘッド20においては、ピストン30のピストンヘッド31とともに燃焼室50を形成する内壁20x並びに燃焼室50と連通する吸気ポート21x及び排気ポート22xが形成される。
燃焼室50内には吸気バルブのバルブヘッド41aが、図示しないカム等の機構により動作するバルブステム41bにより上下動自在に固定される。同様に、燃焼室50内には、排気バルブのバルブヘッド42aがバルブステム42bにより上下動自在に固定される。
シリンダヘッドの内壁20xは、バルブステム41b及び42bに略直交してなるペントルーフ形状を形成し、したがって、バルブステム41b及び42bは、それぞれシリンダの延出方向に対して斜行して配置され、図2に示すように、内壁20xのバルブヘッド41a及び41bが設けられていない面は、ピストンヘッド31に対して交差する略円錐面を形成している。
更に、シリンダヘッド20にはインジェクタ60が装着されており、先端が燃焼室50の天井に露出している。
次に、燃焼室50の構成を説明する。燃焼室50の内壁は、シリンダヘッド20の内壁20x、バルブヘッド41a及び42aの表面、並びにピストンヘッド31の中央に形成されたキャビティ31xの内壁により形成される。
バルブヘッド41aの表面には、中央がバルブステム41b側に向かって後退するように湾曲してなる凹部41xが形成され、同様に、バルブヘッド42aの表面には、中央がバルブステム42b側に向かって後退するように湾曲してなる凹部42xが形成される。
ピストンヘッド31のキャビティ31xは、インジェクタ60の先端に向かって突出して形成された突出部31x1の周囲に、平面視すなわち図3の平面図の方向から見て環状に形成され、突出部31x1及び周縁の間が、シリンダの下方に向かって凸に突出するよう湾曲してなる態様を有する。更に、キャビティ31xの周縁と、バルブヘッド41a及び42aの凹部41x及び42xとは、図1に示すように、ピストン30がシリンダ内にて上死点にある際に、滑らかに繋がる曲面を形成している。
次に、インジェクタ60は、先端に4つの燃料噴射口61xと4つの燃料噴射口61yとが交互に配置して設けられている。燃料噴射口61xは燃料噴射口61yより大きな憤孔径を有し、図3に示すように、平面視において燃料噴射口61xはバルブヘッド41a及び42aにそれぞれ対向して配置され、燃料噴射口61yは隣接するバルブヘッドの間に対向して配置される。
更に、図1及び2に示すように、側面視において燃料噴射口61xはそれぞれバルブヘッド41a及び42aの凹部41x及び42xに対向して配置されるとともに、燃料噴射口61yは燃料噴射口61yよりもピストン30向きに傾斜して、ピストンヘッド31のキャビティ31xの表面に対向して配置される。
以上の構成において、直噴式エンジンの燃焼室構造1は本発明の直噴式エンジンの燃焼室構造に相当し、ピストンヘッド31は本発明のピストンヘッドに相当し、バルブヘッド41a及び42aは本発明のバルブヘッドに相当し、インジェクタ60は本発明のインジェクタに相当する。また、キャビティ31xは本発明のピストンヘッドの凹部に相当し、バルブヘッド41a及び42aの凹部41x及び42xは、本発明のバルブヘッドの凹面に相当する。
以上の構成を有する本実施の形態の直噴式エンジンの燃焼室構造1は、バルブヘッド41a及び42aの凹部41x及び42x及びピストンヘッド31のキャビティ31xにより形成される燃焼室50において、ピストン30がシリンダ内にて上死点にある際に、滑らかに繋がる曲面を形成しており、インジェクタ60の燃料噴射口61xがバルブヘッド41a及び42aの凹部41x及び42xにそれぞれ対向して配置された構成を備えたことを特徴とする。
すなわち、図1に示すように、本実施の形態においては、上記構成を備えたことにより、インジェクタ60の燃料噴射口61xから噴射された燃料F1は、バルブヘッド41a及び42aの凹部41x及び42xに衝突し、その表面に沿って図中矢印に沿ってキャビティ31x内に回り込み、突出部31x1を経由してインジェクタ60へ帰還するようにループする軌跡を描く流れを形成する。
以上の動作において、燃料F1の到達位置は、ピストン30の位置に依らず常に燃焼室の50の一定の位置に固定される。したがって、燃焼室50周縁のスキッシュエリアへの燃料の漏れ量の変動が抑制される。さらに、燃料F1の噴霧が、燃料室内でループする軌跡を描くことにより、燃焼室50内にて安定した形状を保ちつつ拡散することで、燃料の噴出タイミングとピストン30の往復運動の位相差に伴い生ずるスキッシュエリアへの燃料漏れの影響を軽減して、燃焼室50内の燃焼ムラを低減する。したがって、燃料の噴射を安定させ、安定した燃焼を実現することが可能となる。
更に、本実施の形態においては、インジェクタ60の燃料噴射口61yが、燃焼室50内にてバルブヘッド41a及び42aに対向しない位置であって、ピストンヘッド31のキャビティ31xに向かって傾斜して配置された構成を備えたことを特徴とする。これにより、燃料F2の到達位置は、燃料噴射口61xから噴射された燃料F1の到達しにくい箇所に及ぶこととなり、燃焼室50内における空気利用効率を向上させることができる。
したがって、安定した燃焼を実現することが可能となる。
更に、本実施の形態においては、シリンダヘッド20側において燃焼室50を構成する内壁20xがペントルーフ形状を備えたことを特徴とする。これにより、吸気バルブのバルブヘッド41aの寸法を大型化して、燃焼室50における空気の導入量を増加させ、安定した燃料を実現することが可能となる。
以上のように、本発明の実施の形態の直噴式エンジンの燃焼室構造1によれば、バルブヘッド41a及び42aの凹部41x及び42x及びピストンヘッド31のキャビティ31xにより形成される燃焼室50において、ピストン30がシリンダ内にて上死点にある際に、滑らかに繋がる曲面を形成しており、インジェクタ60の燃料噴射口61xがバルブヘッド41a及び42aの凹部41x及び42xにそれぞれ対向して配置された構成を備えたことにより、燃料の噴射を安定させ、安定した燃焼を実現することが可能となる。
しかしながら、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。
上記の説明においては、インジェクタ60は燃料噴射口61xと燃料噴射口61yとが交互に配置して設けられている構成としたが、少なくとも燃料噴射口61xが設けられる構成であればよい。
更に、上記の説明においては、シリンダヘッド20の内壁20xはペントルーフ形状であるとしたが、従来例同様、ピストンヘッド31と平行な面を形成するものであってもよい。
更に、本発明は、例えば、ディーゼルエンジン自動車の他、ハイブリッド自動車、二輪車、船舶他、直噴式エンジンにより動作する任意の輸送機器及び当該機器に用いられる任意の構成のエンジンにおいて実施してもよい。
以上のように、本発明は、直噴式エンジンの燃焼室構造であって、内壁が曲面をなす凹部が中央に形成されたピストンヘッドと、前記ピストンヘッドを有するピストンが上死点にあるときに前記ピストンヘッドの凹部の曲面から滑らかに繋がる曲面をなす凹面が形成されたバルブヘッドと、前記ピストンヘッドの凹部と前記バルブヘッドの凹面とを含んで形成された燃焼室内に配設され、前記バルブヘッドに直接燃料を噴射するインジェクタとを備えたものであればよく、その他の具体的な目的、用途、構成によって限定されるものではない。
したがって、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲内であれば、以上説明したものを含め、上記実施の形態に種々の変更を加えたものとして実施してもよい。
以上のような本発明は、直噴式エンジンにおいて、燃料の噴射を安定させ、安定した燃焼を実現することが可能になるという効果を奏し、例えばディーゼルエンジンを搭載した車両への適用において有用である。
1 直噴式エンジンの燃焼室構造
10 シリンダブロック
20 シリンダヘッド
20x 内壁
21x 吸気ポート
22x 排気ポート
30 ピストン
31 ピストンヘッド
31x キャビティ
31x1 突出部
41a、42a バルブヘッド
41b、42b バルブステム
41x、42x 凹部
50 燃焼室
60 インジェクタ
61x、61y 燃料噴射口

Claims (1)

  1. 内壁が曲面をなす凹部が中央に形成されたピストンヘッドと、
    前記ピストンヘッドを有するピストンが上死点にあるときに前記ピストンヘッドの凹部の曲面から滑らかに繋がる曲面をなす凹面が形成されたバルブヘッドと、
    前記ピストンヘッドの凹部と前記バルブヘッドの凹面とを含んで形成された燃焼室内に配設され、前記バルブヘッドに直接燃料を噴射するインジェクタとを備えた、
    直噴式エンジンの燃焼室構造。
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