JP6789862B2 - 静止誘導器 - Google Patents

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本発明は、静止誘導器の巻線導体周辺に形成されるくさび状空隙部における電界緩和構造に関する。
近年の電力需要の高まりから、変圧器は高圧化大容量化する傾向にある。一方、都市部への人口集中により、変圧器の小型化に対するニーズが高まっている。変圧器を小型化する方法の一つとして、絶縁距離の短縮がある。絶縁距離を短縮するために、絶縁構造の工夫や絶縁材料の高機能化に関する検討がなされている。
液体あるいは気体を絶縁及び液体媒体とする変圧器内部の絶縁構造においては、一般に、固体絶縁物の接触部に形成されるくさび状の空隙が絶縁上の弱点になる。これは、くさび状の空隙では、固体絶縁物に比べて比誘電率が小さい液体あるいは気体に電界が集中するためである。
また、油入変圧器に使用される絶縁油は精製処理がなされ、さらに、変圧器の製作の段階において、防塵や異物管理が行われていることは周知の事実である。しかしながら、油中に微細な固形粒子が混入することは避けられない。
くさび状の空隙部は、周囲と比較して油の流れが淀んでいるため、絶縁油中に混入した異物が滞留、沈殿しやすい。したがって、変圧器内の絶縁破壊はくさび状の空隙部を起点として発生することが多い。
特許文献1には、絶縁物の一部を弾性体で構成して、くさび状の空隙部を埋め込むことにより、電界集中を緩和した変圧器が記載されている。特許文献2では、巻線被覆に非線形抵抗材料を塗布あるいは含浸して、くさび状の空隙部における電界集中を緩和した変圧器が記載されている。
特開平6−267761号公報 特開2013−254771号公報
特許文献1では、絶縁物の一部を弾性体で構成して、くさび状の空隙部を埋め込むことにより、電界集中を緩和している。しかし、このような構造では、巻線全体を弾性体で覆ってしまうため、巻線の冷却が十分に冷却できない可能性がある。また、巻線構造によっては、弾性体がくさび状空隙を完全に満たすことができず、更なる絶縁上の弱点を形成してしまう可能性がある。
特許文献2では、巻線被覆に非線形抵抗材料を塗布あるいは含浸して、くさび状の空隙部における電界集中を緩和している。しかし、エポキシ樹脂を母材とする非線形抵抗材を巻線被覆全体に塗布あるいは含浸する構造であるため、巻線の冷却を阻害する。これにより、巻線周辺の温度が上昇し、絶縁物の劣化が促進する。加えて、従来の巻線作業に加え、エポキシ樹脂の塗布あるいは含浸、硬化の工程が加わるため、作業工数および時間が増大する。
本発明は、以上の点を鑑みてなされたもので、その目的とするところは、変圧器内部に形成されるくさび状の空隙部の電界集中を緩和するとともに、巻線の冷却を確保することで、変圧器の絶縁信頼性を向上させることである。
上記の目的を達成するために、本発明は、鉄心脚と、前記鉄心脚に絶縁紙で被覆された導体を同心状に巻回して構成された巻線と、前記鉄心脚と、前記巻線と、絶縁および冷却媒体である気体または液体と共にタンク内に収納した静止誘導器において、前記巻線内で隣接する前記導体間に少なくとも前記絶縁紙より高い比誘電率を有する高誘電材料含有部材を設けたことを特徴とする。
本発明の変圧器によれば、変圧器巻線周辺に形成されるくさび状の空隙部における電界集中を緩和し、くさび状の空隙部を起点とする絶縁破壊を抑制することができる。また、巻線の冷却を確保し、巻線周辺の絶縁物の熱劣化を抑制することで、長期的な絶縁信頼性を確保することができる。
油入変圧器の構成を示す概略図である。 図1の油入変圧器おける巻線の結線を模式的に表した図である。 図2で図示した高圧巻線の断面を模式的に示した図である。 図3におけるA−A’断面の一部を示した図である。 図4において隣接する巻線導体間に形成されるくさび状空隙を拡大した斜視図である。 図5のターン間くさびを拡大した図である。 実施例1に採用される高圧巻線の軸方向断面図である。 実施例1に採用される高誘電材料含有部材の構成を示した斜視図である。 図7において隣接する巻線導体間に形成されるくさび状空隙を拡大した斜視図である。 図9におけるターン間くさびを拡大した図である。 実施例2における高圧巻線の径方向断面を模式的に示した図である。 図11に示したコイルの軸方向断面の一部を示した図である。 実施例2における高誘電材料を静電シールド周辺に塗布あるいは含浸して構成した高誘電材料含有部材25の構成を示した斜視図である。
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
図1は静止誘導電器の一例である油入変圧器の構成を示す概略図である。同図において、鉄心1と巻線2は、これらの絶縁および冷却媒体である絶縁媒体4(例えば絶縁油)を封入したタンク3に収納されている。
図2は、図1の油入変圧器おける巻線2の結線を模式的に表した図である。同図において、鉄心脚5を中心として、低圧巻線6と高圧巻線7が同心円状に配置されている。ここで、高圧巻線7の高圧巻線線路端8と、低圧巻線6の低圧巻線線路端11がある。高圧巻線7は、上下に分割された構造であり、上下の高圧巻線7は高圧巻線接続線10により、中性点端子9に接続されている。
図3は、図2で図示した高圧巻線7の断面を模式的に示した図であり、巻線軸方向に垂直な一断面を示している。同図に示すように、所定の軸方向長さを有する内径側絶縁筒12と、内径側絶縁筒12と同等の長さを有し、その円周方向に複数配置された内径側垂直絶縁物間隔片14とを備えている。内径側絶縁筒12の外周に、絶縁物で被覆された高圧巻線7が鉄心脚(図示せず)を中心として同心円状に所定の回数巻回され、円板コイル17が形成される。円板コイル17の外径側には、内径側垂直絶縁物間隔片14と対応する位置に外径側垂直絶縁物間隔片15が配置され、さらにその外径側には外径側絶縁筒13が配置されている。ここで、円板コイル17の円周上で内径側垂直絶縁物間隔片14と外径側垂直絶縁物間隔片15によって保持される位置に、水平絶縁物間隔片16を挟んで、円板コイル17を軸方向に複数積層することで、円板巻線が構成される。なお、他の巻線形状として、ヘリカル巻線や円筒巻線などが考えられる。
図4は、図3におけるA−A’断面の一部を示した図であり、巻線軸方向の一断面である。同図において、図3と同一の部分には同じ参照番号を付記し、説明は省略する。高圧巻線7は巻線導体20と、巻線導体20の周りに設けられた絶縁被覆21から構成されている。通常、油入変圧器では、巻線導体20の冷却を考慮して、絶縁被覆21として絶縁紙が使用される。また、隣接する巻線導体20間には、くさび状空隙22が形成される。
図5は、図4において隣接する巻線導体20間に形成されるくさび状空隙22を拡大した斜視図である。同図において、図3と同一の部分には同じ参照番号を付記し、説明は省略する。ここで、隣接する巻線導体20間に形成されるくさび状の空隙がターン間くさび23であり、巻線導体20と水平絶縁物間隔片16との間に形成されるくさび状の空隙がコイル間くさび24である。
図6は、図5のターン間くさび23を拡大した図であり、巻線導体20とターン間くさび23周辺に形成される等電位線30を示す。通常、絶縁被覆21には絶縁紙(鉱油中での比誘電率3.5)が使用され、周囲の絶縁媒体4には鉱油(比誘電率2.2)が使用される。絶縁被覆21としては、絶縁紙であるクラフト紙やアラミド紙、その他の絶縁材料として、エナメル、ワニス、絶縁フィルムなどの使用が考えられる。また、絶縁媒体4としては、鉱油の他にシリコーン油、SF6ガスの使用が考えられる。ターン間くさび23周辺では、絶縁被覆21に使用される固体絶縁物に比べて、比誘電率が小さい絶縁媒体4を使用することから、等電位線30が密となる。つまり、ターン間くさび23において電界が集中し、高電界部31が形成される。
図7は、実施例1に採用される高圧巻線の軸方向断面図であり、図3でのA−A’の一断面に対応したものである。同図において、図4と同一の部分には同じ参照番号を付記し、説明は省略する。本実施例における巻線構造では、例えば高誘電材料含有部材25を巻線導体20と共に巻回して構成される。
図8は、実施例1に採用される高誘電材料含有部材25の構成を示した斜視図である。例えば、プレスボードなどの絶縁部材27の周辺に高誘電材料26を塗布または含浸する。高誘電材料を含有するフィルムシートを絶縁部材27周辺に巻回して構成することも考えられる。ここで、高誘電材料26は、少なくとも絶縁被覆21に使用される固体絶縁物よりも高い比誘電率を有する材料である。高誘電材料26として、例えば、酸化亜鉛、酸化バリウム、チタン酸バリウム、二酸化チタン、炭化ケイ素またはアルミナといった高誘電材料粒子、あるいはこれらの混合物を母材と混ぜ合わせたものである。母材としては、絶縁部材27への塗布あるいは含浸を考慮して、例えば、エポキシ樹脂などが考えられる。エポキシ樹脂に対する高誘電材料粒子の混合比を調整することによって、高誘電材料26の特性を調整することができる。高誘電材料26が絶縁部材27から剥離して、変圧器内に異物として混入することを防ぐため、絶縁部材27と高誘電材料26の周辺に絶縁被覆21を施す。
図9は、図7において隣接する巻線導体20間に形成されるくさび状空隙22を拡大した斜視図である。同図において、図7と同一の部分には同じ参照番号を付記し、説明は省略する。巻線導体20間には高誘電材料含有部材25が挿入される。
図10は、図9におけるターン間くさび23を拡大した図であり、隣接する巻線導体20とターン間くさび23周辺に形成される等電位線30を図示したものである。巻線導体20間に高誘電材料含有部材25を挿入することによって、ターン間くさび23周辺における等電位線が疎になる。すなわち、ターン間くさび23周辺の電界が緩和される。本実施例を採ることにより、高誘電材料含有部材25を用いない図6の構造よりも、巻線導体20間に形成されるくさび状空隙22周辺の電界集中を緩和することができる。
また、巻線導体20の絶縁被覆21や絶縁媒体4といった絶縁物は熱によって劣化する。図7に示すような本実施例では巻線導体20が絶縁媒体4と接する表面積が、図4で示した従来の変圧器構造とほとんど変化しないため、本実施例を採ることで、従来と同程度の巻線導体20の冷却が確保できる。したがって、本実施例においては、変圧器内部の温度分布は従来と同程度となることから、絶縁物の劣化については従来程度となる。
以上説明したように、実施例1によれば、巻線導体20間に形成されるくさび状空隙22の電界集中が緩和されるため、くさび状空隙22を起点とする絶縁破壊を抑制することができる。加えて、本実施例の構造においては、従来構造と同程度の冷却性能を確保できることが出来ることから、熱による絶縁物の劣化を抑制することができ、絶縁信頼性の高い機器を提供することができる。
図11は、実施例2における高圧巻線7の径方向断面を模式的に示した図であり、巻線軸方向に垂直な一断面を示している。同図において、所定の軸方向長さを有する内径側絶縁筒12と、内径側絶縁筒12と同等の長さを有し、その円周方向に複数配置された内径側垂直絶縁物間隔片14を備えている。内径側絶縁筒12の外周に、絶縁物で被覆された高圧巻線7および耐衝撃電圧特性を改善するための静電シールド40が鉄心脚(図示せず)を中心として同心円状に所定の回数巻回され、円板コイル17が形成される。円板コイル17の外径側には、内径側垂直絶縁物間隔片14と対応する位置に外径側垂直絶縁物間隔片15が配置され、さらにその外径側には外径側絶縁筒13が配置されている。ここで、円板コイル17の円周上で内径側垂直絶縁物間隔片14と外径側垂直絶縁物間隔片15によって保持される位置に、水平絶縁物間隔片16を挟んで、円板コイル17を軸方向に複数積層することで、円板巻線が構成される。
図12は、図11に示したコイルの軸方向断面の一部を示した図であり、特に、高圧巻線線路端8の周辺を拡大して示した図である。同図において、高圧巻線線路端8、巻線導体20があり、巻線導体20の周囲には巻線導体20の被覆である絶縁被覆21がある。高圧巻線線路端8から異常電圧が侵入した場合、巻線内の電位分布が振動し、高圧巻線線路端8において過渡的に電位の傾斜が大きくなる。この結果、当該部で高電界が発生する。これを抑制するために、静電シールド40が巻線導体20間に挿入されている。
図13は、実施例2における高誘電材料を静電シールド周辺に塗布あるいは含浸して構成した高誘電材料含有部材25の構成を示した斜視図である。静電シールド40の周辺に、少なくとも巻線導体20の絶縁被覆21に使用される固体絶縁物よりも高い比誘電率を有する材料を塗布あるいは含浸して高誘電材料含有部材25を構成する。高誘電材料26を含むフィルムシートを静電シールド40の周辺に巻回して構成することも考えられる。高誘電材料26としては、例えば、酸化亜鉛、酸化バリウム、チタン酸バリウム、二酸化チタン、炭化ケイ素またはアルミナといった高誘電材料粒子、あるいはこれらの混合物を母材と混ぜ合わせたものである。母材としては、静電シールド40への塗布あるいは含浸を考慮して、例えば、エポキシ樹脂などが考えられる。この方法によって生成される高誘電材料26は、エポキシ樹脂に対する高誘電材料粒子の混合比を調整することで、高誘電材料26の特性を調整することができる。高誘電材料26が静電シールド40から剥離して、変圧器内に異物として混入することを防ぐため、静電シールド40と高誘電材料26の周辺に絶縁被覆21を施す。
本構成を採ることにより、図12で示す巻線導体20間に形成されるくさび状空隙22における電界集中を緩和することができる。また、本実施形態の構造では、従来構造と同程度の冷却性能を確保できることから、熱による絶縁物の劣化を抑制することができる。さらに、高誘電材料26を静電シールド40に塗布することで、ターン間の静電容量を増加させることができるため、従来構造よりも異常電圧侵入時の電位分布平滑化の効果が大きく得られる。以上のことから、本実施例を採ることにより、絶縁信頼性の高い機器を提供することができる。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記した実施例は本発明を分かりやすく説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
1…鉄心
2…巻線
3…タンク
4…絶縁媒体
5…鉄心脚
6…低圧巻線
7…高圧巻線
8…高圧巻線線路端
9…中性点端子
10…高圧巻線接続線
11…低圧巻線線路端
12…内径側絶縁筒
13…外径側絶縁筒
14…内径側垂直絶縁物間隔片
15…外径側垂直絶縁物間隔片
16…水平絶縁物間隔片
17…円板コイル
20…巻線導体
21…絶縁被覆
22…くさび状空隙
23…ターン間くさび
24…コイル間くさび
25…高誘電材料含有部材
26…高誘電材料
27…絶縁部材
30…等電位線
31…高電界部
40…静電シールド

Claims (5)

  1. 鉄心脚と、
    前記鉄心脚に絶縁紙で被覆された導体を同心状に巻回して構成された巻線と、
    絶縁および冷却媒体である気体または液体と、をタンク内に収納した静止誘導器において、
    前記巻線内で隣接する前記導体間に少なくとも前記絶縁紙より高い比誘電率を有する高誘電材料含有部材を設けたことを特徴とする静止誘導器。
  2. 請求項1に記載の静止誘導器において、
    前記高誘電材料含有部材は、絶縁物で構成した部材に少なくとも前記絶縁紙より高い比誘電率を有する高誘電材料を塗布あるいは含浸して構成したことを特徴とする静止誘導器。
  3. 請求項2に記載の静止誘導器において、
    前記高誘電材料含有部材は、絶縁物で構成した部材に少なくとも前記絶縁紙より高い比誘電率を有する高誘電材料を塗布あるいは含浸し、
    さらに、絶縁物で被覆して構成したことを特徴とする静止誘導器。
  4. 請求項1に記載の静止誘導器において、
    前記高誘電材料含有部材は、前記巻線と共に巻回して構成された耐衝撃電圧特性を改善する静電シールド巻線に少なくとも前記絶縁紙より高い比誘電率を有する高誘電材料を塗布あるいは含浸した部材であることを特徴とする静止誘導器。
  5. 請求項4に記載の静止誘導器において、
    前記静電シールド巻線に少なくとも前記絶縁紙よりも高い比誘電率を有する高誘電材料を塗布あるいは含浸した部材を、さらに、絶縁物で被覆して構成したことを特徴とする静止誘導器。
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