JP6789652B2 - 樹脂組成物、成形品、電線・ケーブルおよび電線・ケーブルの製造方法 - Google Patents
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Description
詳しくは、従来よりも樹脂肉厚を薄くした場合にも良好な耐摩耗特性、耐熱性、難燃性を有する樹脂組成物、さらには押出成形機を用いて成形された電線・ケーブルなどの成形品に関し、特に、自動車、電気・電子機器などに使用される電線・ケーブルの被覆材料として好適な樹脂組成物および該樹脂組成物を使用する電線・ケーブルの製造方法に関する。
従って、本発明は、従来よりも樹脂肉厚を薄くした場合にも良好な耐摩耗特性、耐熱性、難燃性を有する樹脂組成物、該樹脂組成物からなる電線・ケーブルなどの成形品、該樹脂組成物で成形された電線・ケーブルおよびこれらの製造方法を提供することを課題とする。
<1>低密度ポリエチレン樹脂100質量部に対し、酸化防止剤の芳香族アミン化合物を0.1〜6質量部、酸化防止剤のイミダゾール化合物を7〜20質量部、金属不活性化剤を0.1〜6質量部および三酸化アンチモンを6〜14質量部含有し、かつ、該三酸化アンチモンのアンチモン元素に対してモル比で2〜5倍モルの臭素量となる臭素系難燃剤を含有し、
前記酸化防止剤の芳香族アミン化合物が、ジアリールアミン化合物、又は、ジヒドロもしくはテトラヒドロキノリン環構造を有するアミン化合物もしくはその重合体であり、
前記金属不活性化剤が、下記一般式(M)で表される化合物であることを特徴とする樹脂組成物。
<2>前記低密度ポリエチレン樹脂100質量部に対し、フェノール化合物の酸化防止剤を0〜2質量部含有することを特徴とする<1>に記載の樹脂組成物。
<3>前記低密度ポリエチレン樹脂100質量部に対し、チオエーテル化合物の酸化防止剤を0〜5質量部含有することを特徴とする<1>または<2>に記載の樹脂組成物。
<4>前記の全ての酸化防止剤および前記金属不活性化剤の合計含有量が、前記低密度ポリエチレン樹脂100質量部に対し、10〜28質量部であることを特徴とする<1>〜<3>のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
<5>前記樹脂組成物が、電線もしくはケーブルの被覆材樹脂組成物であることを特徴とする<1>〜<4>のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
<6>前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなることを特徴とする成形品。
<7>導体上に、<1>〜<4>のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなる被覆層を有することを特徴とする電線・ケーブル。
<8>導体上に、<1>〜<4>のいずれか1項に記載の樹脂組成物を押出成形して被覆層を形成することを特徴とする電線・ケーブルの製造方法。
本発明の樹脂組成物は、少なくとも、ポリオレフィン樹脂、酸化防止剤のアミン化合物、酸化防止剤のイミダゾール化合物および金属不活性化剤を含有する。
以下、樹脂組成物に含有する成分を詳細に説明する。
本発明では、樹脂成分として、少なくともポリオレフィン樹脂を使用する。
ポリオレフィン樹脂としては、エチレン、プロピレン、ブタジエン、スチレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸もしくエステル、ビニルアルコール、酢酸ビニル、塩化ビニルのようにエチレン性不飽和基を有するモノマーを単独もしくは共重合して得られる樹脂である。
例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体や、スチレン系、ブタジエン系などの熱可塑性ラストマー、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、シリコーンゴムなどの合成ゴムが挙げられ、酸変性されていてもよい。ここで、酸変性は、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体によるものが好ましい。
なお、ポリオレフィンにおける「低密度」とは、密度(比重)が0.940g/cm3以下を意味する。
本発明では、特に、低密度ポリエチレン、または、低密度ポリエチレンと、ポリプロピレンおよび酸変性ポリオレフィンから選択される少なくとも1種の樹脂との併用が好ましい。
低密度ポリエチレンの密度は、0.940g/cm3以下が好ましく、0.900〜0.940g/cm3がより好ましく、0.910〜0.930g/cm3がさらに好ましい。
なお、密度は、JIS K 7112の方法に従って測定した密度である。
また、低密度ポリエチレンのメルトフローレイト(Melt Flow Rate;MFR)は、0.1〜20g/10minが好ましく、0.2〜10g/10minがより好ましい。
なお、メルトフローレイト(MFR)は、試験機械はJIS K6760で定められた押出し形プラストメータ(メルトインデクサー)を用い、JIS K7210の方法で測定できる。
本発明では、低密度ポリエチレンのなかでも、高圧ラジカル法低密度ポリエチレン樹脂が好ましい。
高圧ラジカル法低密度ポリエチレンのメルトフローレイト(MFR)は、0.1〜20g/10minが好ましく、0.2〜10g/10minがより好ましく、0.5〜8g/10minがさら好ましく、0.5〜6g/10minが特に好ましく、0.7〜4g/10minが最も好ましい。
なお、高圧ラジカル法ポリエチレン樹脂とは、エチレンモノマーを高圧ラジカル重合法により重合したエチレン重合体であり、ノバテック LF280などは単独重合体である。
本発明では、低密度ポリエチレンのなかでも、メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン樹脂も好ましい。
メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン(Me−LLDPE)とは、メタロセン触媒にて重合された狭分子量分布のエチレン−α―オレフィン共重合体である。例えば、エチレンと炭素数4〜12のα−オレフィンとの共重合体が挙げられ、α−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセンおよび1−ドデセンなどが用いられる。
ここで、メタロセン触媒は、金属中心に結合もしくは配位された1つまたは複数のシクロペンタジエニル基(環)を含む有機金属触媒である。シクロペンタジエニル基(環)はハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アミド基、アルコキシ基などの置換基で置換されていてもよく、また、インデニル、テトラヒドロインデニルもしくはフルオレニルなどの飽和または不飽和の多環式ペンタジエニル基を形成してもよい。触媒はシクロペンタジエニル型でない他の配位子も含んでよい。金属中心は元素の周期律表の第IV族またはランタニド系列が挙げられる。
ポリプロピレンは、ホモプロピレン、ランダムプロピレン、ブロックポリプロピレンのいずれでも構わないが、本発明ではブロックポリプロピレンが好ましい。
ブロックポリプロピレンは、エチレン−プロピレンブロック共重合体であって、プロピレン以外の成分が1〜20質量%、好ましくは5〜15質量%の含有量で、プロピレン成分の中に独立して存在する海島構造を有するものである。海島構造は、例えば、ホモポリプロピレンポリマーの「海」の中にエチレン−プロピレン重合体の「島」が浮かぶ構造であり、この「島」は、ホモポリエチレンポリマーの周辺をエチレン−プロピレン重合体で取り囲まれたものであっても構わない。なお、ブロックポリプロピレンは、上記のように、ホモポリプロピレン連鎖とエチレン−プロピレン共重合体連鎖が、必ずしも化学的に結合されているものではない。
示差走査熱量計(DSC)で測定した融点が、上記のような範囲であることにより、成形装置への負荷の低減、樹脂組成物混練時の分散性が改善される。
上記融点は、示差走査熱量計(DSC)、例えば、島津製作所社製のDSC−50で測定することができる。
メルトフローレイト(MFR)が、上記のような範囲であることにより、成形装置への負荷の低減、樹脂組成物の流動性、樹脂組成物混練時の分散性が改善される。
上記メルトフローレイト(MFR)は、メルトインデクサー(例えば、東洋精機社製のメルトインデクサーG−01)を使用し、190℃において荷重2.16kgfの条件および方法で測定することができる。
酸変性は、不飽和カルボン酸もしくはその誘導体によるものが好ましく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水フマル酸などが挙げられる。ポリオレフィンの酸変性は、例えば、ポリオレフィンと不飽和カルボン酸もしくはその誘導体を有機パーオキサイドの存在下で、加熱・混練することにより行うことができる。
本発明では、樹脂成分は、低密度ポリエチレン、または、低密度ポリエチレンと、ポリプロピレンおよび酸変性ポリオレフィンから選択される少なくとも1種の樹脂との併用が好ましい。
低密度ポリエチレンと、ポリプロピレンおよび酸変性ポリオレフィンから選択される少なくとも1種の樹脂との併用する場合、樹脂成分全体に占める低密度ポリエチレンの含有量は65質量%以上100質量%未満が好ましく、65質量%以上90質量%以下がより好ましく、77質量%以上82質量%以下がさらに好ましい。
低密度ポリエチレン、なかでもメタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレンとともにブロックポリプロピレンを使用することで、押出成形における樹脂組成物の押出速度(線速)の高速化が可能となり、電線・ケーブルの被覆材料などの成型品では、高速押出しても、外観にツヤがあり滑らかであり、外観異常が生じない。
このような効果は、ホモポリプロピレン、ランダムプロピレン、ブロックポリプロピレンのなかでも、ブロックポリプロピレンが最も優れている。
酸変性ポリオレフィンを使用する場合、ポリオレフィン樹脂中に含有する酸変性ポリオレフィンの含有量は、0質量%以上35質量%未満が好ましく、0質量%を超え35質量%未満がより好ましく、5質量%以上15質量%以下がさらに好ましい。
本発明では、ポリオレフィン樹脂とともに、ポリオレフィン樹脂以外の樹脂を含有しても構わない。
このような樹脂としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタンなどが挙げられる。
ただし、本発明では、樹脂成分としては、ポリオレフィン樹脂のみが好ましい。
本発明では、酸化防止剤として、少なくともアミン化合物およびイミダゾール化合物を使用する。
なお、以下では、酸化防止剤のアミン化合物をアミン系酸化防止剤、イミダゾール化合物をイミダゾール系酸化防止剤と称す。同じく、酸化防止剤のフェノール化合物をフェノール系酸化防止剤(このなかでも好ましいヒンダードフェノール化合物をヒンダードフェノール系酸化防止剤)、チオエーテル結合(−S−)を有する化合物をチオエーテル系酸化防止剤と称す。
酸化防止剤のアミン化合物としては、ポリマーの劣化防止に使用されるアミン系酸化防止剤が好ましい。
このようなアミン化合物としては、脂肪族アミン化合物、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンのような環状の5または6員環のアミン化合物、芳香族アミン化合物などが挙げられる。
一方、芳香族アミン化合物の好ましい化合物を一般式で示すと、下記一般式(A)で表される。
アルキル基は、置換基を有してもよく、該置換基としては、Raにおける置換基が挙げられる。
アルケニル基は、置換基を有してもよく、Raにおける置換基が挙げられる。
シクロアルキル基は、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルが挙げられる。
シクロアルキル基は、置換基を有してもよく、該置換基としては、Raにおける置換基が挙げられる。
アリール基は、置換基を有してもよく、該置換基としては、Raにおける置換基が挙げられる。
ヘテロ環基のヘテロ環としては、例えば、チオフェン環、フラン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアジン環、チアゾール環、オキサゾール環、テトラヒドロチオフェン環、テトラヒドロフラン環、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、チオモルホリン環またはこれらのベンゼン縮合環が挙げられる。
RaとRbが互いに結合して形成する環としては、5または6員環が好ましく、芳香環でない環が好ましく、例えば、シクロペンタン環、シクロペンテン環、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環が挙げられる。
なお、形成された環に二重結合を含む環、例えば、シクロヘキセン環の場合、該二重結合で重合した重合体も好ましい。
Rbが、アリール基の場合、結合位の原子が、水素原子を有しない炭素原子である基、特に上記−C(Rc)3で表されるアルキル基が置換したアリール基が特に好ましい。
RbがRaと結合して環を形成する基は、形成された環が5または6員環で、上記の窒素原子と、水素原子を1個以下(好ましくは水素原子を有さない)の炭素原子を介して形成された環が特に好ましい。なかでも、環を形成することによって、一般式(A)で表される化合物が、1,2−ジヒドロキノリン環もしくはその重合体である場合が最も好ましい。
これらは1種で用いても2種以上併用してもよい。
イミダゾール化合物は、イミダゾール環を有する化合物であれば、ベンゼン環など、他の環が縮環した化合物でも構わないが、ベンズイミダゾール化合物が好ましい。
本発明では、イミダゾール環にメルカプト基が置換した化合物が特に好ましく、このメルカプト基は金属塩(例えば、カリウム塩、ナトリウム塩、亜鉛塩)を形成しいてもよい。
これらは1種で用いても2種以上併用してもよい。
本発明では、アミン系酸化防止剤とイミダゾール系酸化防止剤に加えて、フェノール系酸化防止剤を併用しても構わない。
フェノール系酸化防止剤は、ポリマーの劣化防止に使用されるフェノール系酸化防止剤が好ましい。
このなかでも、フェノールのオルト位に、第二級もしくは第三級のアルキル基が置換したヒンダードフェノール化合物(ヒンダードフェノール系酸化防止剤)が好ましい。
これらは1種で用いても2種以上併用してもよい。
本発明では、アミン系酸化防止剤とイミダゾール系酸化防止剤に加えて、チオエーテル系酸化防止剤を併用しても構わない。
チオエーテル系酸化防止剤は、チオエーテル結合(−S−)を有する化合物であり、アルキルチオ基を有するフェノールやアミノフェノールも存在する。
これらは1種で用いても2種以上併用してもよい。
金属不活性化剤は、重金属イオンと錯体を形成することにより不活性化し、触媒作用を防止する化合物であり、いわゆるキレート剤である。
金属不活性化剤は、重金属イオンと錯体を形成する化合物であればどのような化学構造でも構わないが、本発明では、下記一般式(M)で表される化合物が好ましい。
アルキル基は、置換基を有してもよく、該置換基としては、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミノ基、カルバモイル基、スルファモイル基、アシル基、スルホニル基、ヒドロキシ基などが挙げられる。
R1におけるアルキル基は、特に、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エチル基が好ましい。
アリール基は、置換基を有してもよく、該置換基としては、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミノ基、カルバモイル基、スルファモイル基、アシル基、スルホニル基、ヒドロキシ基などが挙げられる。
R1におけるアリール基は、特に、2−ヒドロキシフェニル基が好ましい。
R2におけるアリール基は、R1におけるアリール基と同義であり、好ましい範囲も同じである。
ヘテロ環基は、置換基を有してもよく、該置換基としては、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミノ基、カルバモイル基、スルファモイル基、アシル基、スルホニル基、ヒドロキシ基などが挙げられる。
ヘテロ環基のヘテロ環としては、例えば、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアジン環、チアゾール環、オキサゾール環またはこれらのベンゼン縮合環が挙げられる。
R2におけるヘテロ環基は、特に、2H−1,2,4−トリアゾール−5−イル基が好ましい。
アシルアミノ基は、置換基を有してもよく、該置換基としては、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミノ基、カルバモイル基、スルファモイル基、アシル基、スルホニル基、ヒドロキシ基などが挙げられる。
アシルアミノ基は、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、アクリロイルアミノ、メタクリロイルアミノ、シクロプロピオニルアミノ、シクロペンタノイルアミノ、シクロヘキサノイルアミノ、ベンゾイルアミノ、ピリジノイルアミノが挙げられる。
R2におけるアシルアミノ基は、特に、3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパノイル基、11−(2−ヒドロキシベンゾイルヒドラジノカルボニル)ドデカノイルアミノ基が好ましい。
これらは1種で用いても2種以上併用してもよい。
全ての酸化防止剤および金属不活性化剤の合計含有量は、ポリオレフィン樹脂100質量部に対し、10〜30質量部が好ましく、10〜28質量部がより好ましく、12〜26質量部がさらに好ましい。
本発明では、難燃剤を使用することが特に好ましい。
難燃剤としては、水酸化金属を含む金属水和物やハロゲン系難燃剤などが挙げられる。
金属水和物としては、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられ、樹脂組成物中の樹脂成分との相溶性向上、樹脂組成物の機械特性向上などの点から、脂肪酸やシランカップリング剤で表面処理されたものでもよい。
ハロゲン系難燃剤としては、ハロゲン原子が、塩素原子、臭素原子のものが挙げられ、それぞれ塩素系難燃剤、臭素系難燃剤と称す。
塩素系難燃剤は、例えば、塩素化パラフィンが挙げられる。
このうち、本発明では、臭素系難燃剤が好ましい。
臭素系難燃剤は、臭素原子が置換した脂肪族炭化水素化合物、臭素原子が置換した脂環式炭化水素化合物、臭素原子が置換した芳香族炭化水素化合物、臭素原子が置換したエーテル化合物などが挙げられる。
本発明では、エチレンビス(ペンタブロモベンゼン)〔別名:ビス(ペンタブロモフェニル)エタン〕、テトラブロモビスフェノールA(TBBA)、ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)、TBBA−カーボネート・オリゴマー、TBBA−エポキシ・オリゴマー、臭素化ポリスチレン、TBBA−ビス(ジブロモプロピルエーテル)、ポリ(ジブロモプロピルエーテル)、ヘキサブロモベンゼン(HBB)が好ましい。
これらは1種で用いても2種以上併用してもよい。
三酸化アンチモンは臭素系難燃剤の難燃助剤として用いられ、臭素系難燃剤と併用すると相乗効果が得られ、難燃性がさらに向上する。このため、本発明では、三酸化アンチモンを使用することが、特に好ましい。
三酸化アンチモンは、鉱物として産出される三酸化アンチモンを粉砕処理して微粒化して用いる。その際、平均粒子径は、3μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましい。
なお、三酸化アンチモンは純度99%以上のものを用いるのが好ましい。
また、臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの混合比率は、臭素元素とアンチモン元素のモル比において、樹脂組成物中に含有するアンチモン元素に対してモル比で2〜5倍モルの臭素量となる量の範囲内であるのが好ましい。すなわち、アンチモンの含有モル量に対して、2〜5倍モルの臭素量となる臭素系難燃剤を含有することが好ましい。
本発明では、耐熱性向上剤として硫化亜鉛、もしくは酸化亜鉛を適宜添加してもよい。
本発明では、本発明の樹脂組成物を架橋することが好ましい。
このため、架橋剤もしくは架橋助剤を含有することが好ましい。
架橋する方法として、従来の電子線照射架橋法や化学架橋法が採用できる。
このうち、本発明では、電子線照射架橋法で架橋するのが好ましく、本発明の樹脂組成物中に架橋助剤を含有することが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、電線、ケーブルなどにおいて、一般的に使用されている各種の添加剤、例えば、紫外線吸収剤、分散剤、可塑剤、充填剤、顔料などを本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じ適宜配合することができる。
本発明の樹脂組成物は、さらに必要に応じて、これ以外の樹脂、各種添加剤をそれぞれの所望の量調合し、ロール、ニーダー、バンバリーミキサー等のバッチ式混練機あるいは二軸押出機などの通常用いられる混練装置で溶融混練することにより得ることができる。
本発明の樹脂組成物は、各種の成形品、なかでも電線・ケーブルの被覆材料として好ましく適用される。
電線・ケーブルを含む成型品は、本発明の樹脂組成物を押出機により押出成形して、所望の形状に成形して、製造されたものが好ましい。電線・ケーブルの場合、導体、芯線、導体束またはファイバ心線等(導体等ということがある)や、被覆層の周囲に本発明の樹脂組成物を押出被覆して、電線・ケーブルを製造することができる。
本発明の電線・ケーブルにおける導体径や導体の材質、被覆層の厚さなどは特に制限はなく、用途に応じて適宜定められる。
また、導体と被覆層、被覆層と被覆層の間に中間層や遮蔽層を設けるなどの多層構造をとってもよい。
また、押出成形の他の条件として、通常の条件を、適宜に設定でき、特に制限はない。押出速度(押出線速)は、制限するものではないが、特に、本発明では、高速押出に対して優れており、生産性が向上する。
押出機のスクリュー構成は、上述のように、特に限定されず、通常のフルフライトスクリュー、ダブルフライトスクリュー、先端ダブルフライトスクリュー、マドックスクリュー等を使用できる。
また、被覆層の厚みは、特に制限がない。本発明の樹脂組成物を使用した場合、被覆層の厚みを薄くしても耐摩耗性に優れる利点がある。
実施例1〜30および比較例1〜18の樹脂組成物を形成する素材の構成を下記表1〜5に示した。
使用した素材の詳細は下記のとおりである。
A.ポリオレフィン樹脂
・高圧ラジカル法低密度ポリエチレン(LDPE)
ノバテック LF280(商品名 日本ポリエチレン(株)製、MFR0.7g/10min、密度0.928g/cm3)
(1)アミン系酸化防止剤
・ノクラックCD(商品名 大内新興化学工業(株)製)
・ノクラック224(商品名 大内新興化学工業(株)製)
(2)イミダゾール系酸化防止剤
・ノクラックMB(商品名 大内新興化学工業(株)製)
・ノクラックMMB(商品名 大内新興化学工業(株)製)
・ノクラックMBZ(商品名 大内新興化学工業(株)製)
(3)ヒンダートフェノール系酸化防止剤
・Irganox 1010(商品名 BASF社製)
(4)チオエーテル系酸化防止剤
・アデカスタブAO−412S(商品名 (株)アデカ製)
・IRGANOX MD1024(商品名 BASF社製)
・アデカスタブCDA−1(商品名 (株)アデカ製)
・アデカスタブCDA−6(商品名 (株)アデカ製)
・アデカスタブCDA−10(商品名 (株)アデカ製)
(1)臭素系難燃剤
・SAYTEX 8010(商品名 アルベマール社製)
(2)三酸化アンチモン
・PATOX−C(商品名 日本精鉱(株)製)
・オグモントT200(商品名 新中村化学工業(株)製:トリメチロールプロパンメタクリレート)
下記表1〜5に示す配合処方に従い、1.7リットルのバンバリーミキサーを用いて170℃で溶融混合し、混合物を排出し、押出機を通して造粒して、各実施例および比較例の樹脂組成物ペレットを得た。
上記で得られた各樹脂組成物ペレットを、温度を130〜200℃に設定した押出機を用いて、導体上に押出被覆した後、被覆層を電子線で架橋し、それぞれ、以下の(i)および(ii)の2種の絶縁電線を製造した。
なお、電子線による架橋は、加速電圧1000keVにて、200kGyの条件で行った。
(ii)断面積が30mm2の銅からなる導体上に0.8mmの厚さで押出被覆した絶縁電線
上記のようにして製造した各絶縁電線を、下記の耐摩耗性、難燃性および耐熱性の性能評価を行った。
前記(ii)の絶縁電線を使用し、自動車用電線規格(JASO) D618に規定されている方法に基づいて実施した。摩耗テープはアルミナ180番を使用し、追加荷重は1.9kgとし、以下の基準で評価した。
A:導体が露出するまでのテープ移動距離が4500mm以上
B:導体が露出するまでのテープの移動距離が3430mm以上4500mm未満
C:導体が露出するまでのテープの移動距離が3430mm未満
日本自動車技術会規格(JASO) D608−92に基づき、300mmの試料を準備し、水平燃焼試験を実施した。口径10mmのブンゼンバーナーを用いて還元炎の先端を試料中央部の下から10秒間当て、炎を静かに取り去った後の残炎時間を測定し、以下の基準で評価した。
A:炎がすぐに消えるもの
B:炎がすぐに消えないが、残炎時間が30秒以内のもの
C:残炎時間が30秒を超えるもの
自動車規格(JASO)D609:2001およびD611:2009の連続耐熱温度により耐熱性を評価した。具体的には、170℃、180℃、190℃、200℃の各温度で老化試験を実施し、引張伸びが100%を切るまでの時間を求め、アレニウスプロットにより、10000時間で伸びが100%となる温度を求め、耐熱寿命とし、以下の基準で評価した。
A:151℃を超えるもの
B:150℃を超え、151℃未満のもの
C:150℃未満のもの
得られた結果を下記表1〜5にまとめて示す。
ここで、表中の数字は質量部である。また、「−」は未使用であり、従って、配合量は0質量部である。
ここで、酸化防止剤と金属不活性剤の合計量が20質量部を超えなければ耐摩耗性は優れたレベルAとなる傾向にある。また、金属不活性剤は充填しすぎると、難燃性が低下する傾向にあり、6質量部を超えると優れたレベルAにならず合格レベルBにとどまる性能となる。
Claims (8)
- 低密度ポリエチレン樹脂100質量部に対し、酸化防止剤の芳香族アミン化合物を0.1〜6質量部、酸化防止剤のイミダゾール化合物を7〜20質量部、金属不活性化剤を0.1〜6質量部および三酸化アンチモンを6〜14質量部含有し、かつ、該三酸化アンチモンのアンチモン元素に対してモル比で2〜5倍モルの臭素量となる臭素系難燃剤を含有し、
前記酸化防止剤の芳香族アミン化合物が、ジアリールアミン化合物、又は、ジヒドロもしくはテトラヒドロキノリン環構造を有するアミン化合物もしくはその重合体であり、
前記金属不活性化剤が、下記一般式(M)で表される化合物であることを特徴とする樹脂組成物。
- 前記低密度ポリエチレン樹脂100質量部に対し、フェノール化合物の酸化防止剤を0〜2質量部含有することを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
- 前記低密度ポリエチレン樹脂100質量部に対し、チオエーテル化合物の酸化防止剤を0〜5質量部含有することを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂組成物。
- 前記の全ての酸化防止剤および前記金属不活性化剤の合計含有量が、前記低密度ポリエチレン樹脂100質量部に対し、10〜28質量部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 前記樹脂組成物が、電線もしくはケーブルの被覆材樹脂組成物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなることを特徴とする成形品。
- 導体上に、請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなる被覆層を有することを特徴とする電線・ケーブル。
- 導体上に、請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物を押出成形して被覆層を形成することを特徴とする電線・ケーブルの製造方法。
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