JP6787937B2 - クランクシャフトおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関に組み込まれるクランクシャフトに関し、特に、回転軸線周りで周方向にずれた位置に配置されるクランクピンおよびカウンターウエイトに基づき調整された重心位置を有するクランクウエブと、回転軸線に同軸の円筒面から放射方向に突き出る複数のリラクターとを備えるクランクシャフトに関する。
特許文献1は、クランクシャフトと別体で形成されて、クランクアームおよびカウンターウエイトで構成される回転体にボルトで固定されるパルサープレートを開示する。パルサープレートは、回転体に重ねられる円板状の本体と、本体の外周から放射状に突き出る複数のリラクターとを有する。パルサープレートには、パルサープレートが軸方向から回転体に重ねられた際に、回転体に形成されたキー溝に嵌め合わせられるキー部が一体に形成される。キー部は、パルサープレートの一面から弓なりに突出した弓なり帯状部と、パルサープレートに弓なり帯状部の両端を一体に連結する1対の連結部とから構成される。
特開2008−190584号公報
特許文献1では、パルサープレートの組み付けにあたって、パルサープレートのキー部がクランクシャフトのキー溝に嵌め込まれた後に、ボルトが締め付けられてパルサープレートはクランクシャフトに固定されるので、個々の部品の公差が集積し、高い精度で回転軸線周りにリラクターを配置することは難しかった。
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、回転軸線に同軸に高い精度でリラクターを配置することができるクランクシャフトを提供することを目的とする。
本発明の第1側面によれば、回転軸線周りで周方向にずれた位置に配置されるクランクピンおよびカウンターウエイトに基づき調整された重心位置を有するとともに、前記回転軸線に同軸の円筒面で仕切られる外周面を有するクランクウエブと、前記クランクウエブの鍛造時の余肉で前記外周面に一体に形成されて前記外周面から連続し、放射方向に前記外周面から突き出る複数のリラクターとを備え、前記クランクウエブの前記外周面には、前記回転軸線に同軸のリング状に前記外周面から径方向に突出して前記リラクターの根元を支持する環状突起が形成される。
側面によれば、回転軸線周りで周方向にずれた位置に配置されるクランクピンおよびカウンターウエイトに基づき調整された重心位置を有するとともに、前記回転軸線に同軸の円筒面で仕切られる外周面を有するクランクウエブと、前記クランクウエブの鍛造時の余肉で前記外周面に一体に形成されて前記外周面から連続し、放射方向に前記外周面から突き出る複数のリラクターとを備え、前記回転軸線に同軸のリング状で前記リラクターの根元を支持する環状突起が、前記クランクピンとは反対側の前記クランクウエブの外向き表面から前記クランクピンと反対向きに軸方向に突出するようにして、前記クランクウエブに形成される。
側面によれば、回転軸線周りで周方向にずれた位置に配置されるクランクピンおよびカウンターウエイトに基づき調整された重心位置を有するとともに、前記回転軸線に同軸の円筒面で仕切られる外周面を有するクランクウエブと、前記クランクウエブの鍛造時の余肉で前記外周面に一体に形成されて前記外周面から連続し、放射方向に前記外周面から突き出る複数のリラクターとを備え、前記クランクウエブの外周面では、前記クランクウエブに支持される前記クランクピンから離れた縁に沿って前記リラクターは配列される。
第4側面によれば、第1〜第3側面の何れかの構成に加えて、前記リラクターは、前記回転軸線回りの周方向に両隣のリラクターと第1間隔で等間隔に離れる第1リラクターと、前記クランクピンに最も近い位置に配置されて、前記回転軸線回りの周方向に片隣のリラクターと前記第1間隔よりも大きい第2間隔で離れる1対の第2リラクターとを含む
第5側面によれば、第1〜第4側面の何れかの構成に加えて、前記クランクピンは、前記クランクウエブに一体に突出成形されて前記回転軸線に平行な軸心を有する軸体で構成される。
第6側面によれば、回転軸線周りで周方向にずれた位置に配置されるクランクピンおよびカウンターウエイトに基づき調整された重心位置を有するとともに、前記回転軸線に同軸の円筒面で仕切られる外周面を有するクランクウエブと、前記外周面に一体に形成されて前記外周面から連続し、放射方向に前記外周面から突き出る複数のリラクターとを備えるクランクシャフトの製造方法であって、ビレットを、2つの金型でビレットの軸方向に挟み込んで、回転軸線周りで周方向にずれた位置に配置されるクランクピンおよびカウンターウエイトに基づき調整された重心位置を有するクランクウエブを鍛造成型すると共に、前記金型同士の合わせ面に沿って区画された補助キャビティに前記ビレットの余肉を流入させ、該余肉によって、前記回転軸線に同軸の円筒面で仕切られる前記クランクウエブの外周面にフランジを形成する工程と、前記フランジから、前記クランクウエブの前記外周面から連続し放射方向に突き出るリラクターを形成する工程とを備えることで、前記リラクターを、前記クランクウエブの鍛造時に金型の合わせ面で生じる余肉として形成するクランクシャフトの製造方法が提供される。
第1側面によれば、クランクウエブの外周にリラクターが一体に形成されたので、クランクシャフトに別体のパルサーリングが取り付けられる場合に比べて、公差の集積もなく、リラクターは高い精度で同軸にクランクシャフトに設けられることができる。部品点数が減少し、クランクシャフトの構造は簡素化され、製造コストの低減は実現されることができる
また、リラクターはクランクウエブの外周面から径方向に離れた位置に配置されるので、リラクターに基づくパルス信号の検出にあたってクランクウエブの形状変化は影響せず、リラクターの検出誤差は低減されることができる。
側面によれば、リラクターは、クランクピンに連結されるコネクティングロッドから離れた縁に配置されるので、リラクターに基づくパルス信号の検出にあたってコネクティングロッドの影響は抑制され、リラクターの検出誤差は低減されることができる。
第4側面によれば、クランクピンに最も近い位置でリラクター同士の間隔が広がるので、クランクピンに連結されるコネクティングロッドの大端部の形状の影響は抑制され、リラクターの検出誤差は低減されることができる。
第5側面によれば、クランクシャフトの鍛造時にクランクウエブにクランクピンが一体に成型されるので、クランクピンが別体の場合よりも余肉のはみ出しが形成されやすく、リラクターには十分な高さが確保されることができる。また、別体のクランクピンがクランクウエブに差し込まれる場合に比べてクランクシャフトの生産性は向上する。
6側面によれば、クランクウエブの鍛造時に金型の合わせ面で生じる余肉の補助キャビティへのはみ出しを利用してリラクターが形成されるので、一般にプレスのトリミング加工などで削り落とされる余肉のはみ出しが有効に活用されてリラクターは形成されることができる。クランクシャフトの製造工程は簡素化され、製造コストの低減は実現されることができる。
本発明の一実施形態に係る鞍乗り型車両の一具体例であるスクーターの全体構成を概略的に示す側面図である。 内燃機関の拡大断面図である。 第1実施形態に係るクランクシャフトの拡大断面図である クランクシャフトおよびコネクティングロッドの拡大斜視図である。 クランクシャフトの製造工程を概略的に示す概念図である。 第2実施形態に係るクランクシャフトの拡大断面図である クランクシャフトの製造工程を概略的に示す概念図である。
以下、添付図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、前後、左右および上下は自動二輪車の乗員から見た方向をいう。
図1は鞍乗り型車両(自動二輪車)の一具体例であるスクーター11の全体構成を概略的に示す。スクーター11は車体フレーム12を備える。車体フレーム12は、ヘッドパイプ13と、ヘッドパイプ13から下方に延びるダウンチューブ14と、ダウンチューブ14の下端から後方に延びる左右1対のサイドフレーム15とで形成される。ヘッドパイプ13にフロントフォーク16および操向ハンドル17が回転自在に支持される。フロントフォーク16には車軸18回りで回転自在に前輪WFが支持される。
サイドフレーム15は、ダウンチューブ14の下端から下方に延びるダウンフレーム部15aと、ダウンフレーム部15aの後端から地面に平行に延びるロワーフレーム部15bと、ロワーフレーム部15bの後端から後上がりに延びて後輪WRの上方に配置されるシートレール部15cとを有する。シートレール部15c上には乗員シート19が支持される。
スクーター11は車体フレーム12に被さる車体カバー21を備える。車体カバー21には、ヘッドパイプ13と乗員シート19との間でサイドフレーム15のロワーフレーム部15b上にフロアー22が区画される。フロアー22には、乗員シート19に座った乗員が足を載せることができる。フロアー22下でロワーフレーム部15bには燃料タンク23が支持される。車体カバー21内でシートレール部15cには収納ボックス24が支持される。収納ボックス24は乗員シート19で開閉される。
車体フレーム12にはサイドフレーム15の間でスイング式のパワーユニット25がリンク機構26を介して上下方向に揺動自在に支持される。パワーユニット25は、燃料タンク23から供給される燃料に基づき動力を発生する内燃機関27と、内燃機関27に接続されて、後輪WRに線形に変化する変速比で内燃機関27の動力を伝達する伝動装置28とを備える。
パワーユニット25の後端に車軸29回りで回転自在に後輪WRが支持される。パワーユニット25の後端およびシートレール部15cの後端の間にはリアクッションユニット31が取り付けられる。パワーユニット25は、車体フレーム12に対してスイング自在に後輪WRを連結するサスペンション装置の機能を担う。
内燃機関27の機関本体32は、回転軸線33回りで回転自在に後述のクランクシャフトを収容するクランクケース34と、クランクケース34に結合されて、前傾したシリンダー軸線Cに沿ってピストン(後述される)の線形往復運動を案内するシリンダーブロック35と、シリンダーブロック35に結合されて、ピストンとの間に燃焼室を形成するシリンダーヘッド36と、シリンダーヘッド36に結合されて、シリンダーヘッド36に組み付けられる動弁機構に覆い被さるヘッドカバー37とを備える。シリンダーヘッド36には、燃焼室に混合気を導入する吸気系38と、燃焼室から燃焼後の気体を排出する排気系39とが接続される。伝動装置28は、機関本体32のクランクケース34に一体化される変速機ケース41に収容される無段変速機(図示されず)を備える。
リンク機構26は、クランクケース34の上方でサイドフレーム15のシートレール15cに固着されるブラケット42に接続されるリンク部材43を備える。リンク部材43は車軸29に平行な軸線回りで回転自在にブラケット42に連結される。リンク部材43には、図2に示されるように、クランクケース34の上部から上向きに突出するリンク部34aが同様に車軸29に平行な軸線回りで回転自在に連結される。
図2に示されるように、シリンダーブロック35にピストン45が組み込まれる。ピストン45は、シリンダー軸線Cに同軸の円筒空間を区画するシリンダーボア46に収容される。ここでは、シリンダーブロック35には単一のピストン45を受け入れる単一のシリンダーボア46が形成される。シリンダーボア46には、ピストン45の線形往復運動を案内するシリンダーライナー47が嵌め合わせられる。シリンダーライナー47の端部47aはクランクケース34内のクランク室に突出する。
図3および図4に示されるように、クランクシャフト48は、回転軸線33周りで周方向にクランクピン49からずれた位置に配置されるカウンターウエイト51a、51bに基づき調整された重心位置を有し、回転軸線33に同軸の円筒面で仕切られる外周面52a、53aをそれぞれ有する第1クランクウエブ52および第2クランクウエブ53と、回転軸線33上に位置する軸心を有してクランクピン49と反対向きに第1クランクウエブ52から突出し、回転軸線33回りで回転自在にクランクケース34に連結される第1クランクジャーナル54と、回転軸線33上に位置する軸心を有してクランクピン49と反対向きに第2クランクウエブ53から突出し、回転軸線33回りで回転自在にクランクケース34に連結される第2クランクジャーナル55とを有する。第1クランクジャーナル54は、クランクケース34の第1半体56aに嵌め込まれる(圧入される)アウターレース57aを有する第1転がり軸受57のインナーレース57bに嵌め込まれる(圧入される)。第2クランクジャーナル55は、クランクケース34の第2半体56bに嵌め込まれる(挿入される)アウターレース58aを有する第2転がり軸受58のインナーレース58bに嵌め込まれる(圧入される)。第1クランクウエブ52および第2クランクウエブ53は、例えばJIS S48Cの成分組成からケイ素(Si)、リン(P)および硫黄(S)を減量した成分組成の炭素鋼(磁性体)から成型される。
第1実施形態に係るクランクシャフト48は、回転軸線33上に軸心を有し、第1クランクジャーナル54からクランクピン49と反対向きにさらに延びる第1軸体48aと、回転軸線33上に軸心を有し、第2クランクジャーナル55からクランクピン49と反対向きにさらに延びる第2軸体48bとを有する。第1クランクウエブ52、第1クランクジャーナル54および第1軸体48aは一体成型される。同様に、第2クランクウエブ53、第2クランクジャーナル55および第2軸体48bは一体成型される。第1軸体48aには、シリンダーヘッド36に支持されるカムシャフトにクランクシャフト48の回転を伝達する動弁機構の駆動ギア75や、オイルポンプにクランクシャフト48の回転を伝達する駆動ギア76が固定される。第2軸体48bには無段変速機の駆動プーリーが固定される。
第1クランクウエブ52および第2クランクウエブ53はクランクピン49で相互に連結される。クランクピン49は、クランクシャフト48の回転軸線33に平行な軸心を有する軸体で構成され、第1クランクウエブ52のピン孔に圧入されるとともに、第2クランクウエブ53のピン孔に圧入される。クランクピン49には、一端の小端部59aでピストン45に連結されるコネクティングロッド59の大端部(他端)59bがクランクピン49の軸心回りに回転自在に結合される。ピストン45の線形往復運動はコネクティングロッド59の働きでクランクシャフト48の回転運動に変換される。
第2クランクウエブ53の外周面53aには、回転軸線33回りで周方向全周にわたって径方向外側に突出する被検知体61が連続する。被検知体61は、回転軸線33に同軸のリング状に周方向全周にわたって外周面53aから径方向に突出する環状突起62と、環状突起62から連続し、放射方向に環状突起62から外側に突き出る複数のリラクター63とを備える。環状突起62は、クランクピン49とは反対側のクランクウエブ53の外向き表面からクランクピン49と反対向きに軸方向に突出して、リラクター63の根元を支持するとともに、第2クランクウエブ53の外周面53aであって、第2クランクウエブ53に支持されるクランクピン49から離れた縁53bに沿って周方向に延びる。図2に示されるように、個々のリラクター63の根元は環状突起62の外周で支持される。このように、第2クランクウエブ53は、外周面53aに一体に形成されて当該外周面53aから連続し、放射方向に外周面53aから突き出る複数のリラクター63を有する。リラクター63は、後述されるように、第2クランクウエブ53の鍛造時に金型の合わせ面で生じる余肉のはみ出しとして形成される。
図2に示されるように、リラクター63は、回転軸線33回りの周方向に両隣のリラクターと第1間隔Gfで等間隔に離れる第1リラクター63aと、回転軸線33回りの周方向に片隣のリラクターと第1間隔Gfよりも大きい第2間隔Gsで離れる1対の第2リラクター63bとを含む。第2リラクター63bは回転軸線33回りの周方向でクランクピン49に最も近い位置に配置される。ここでは、第1間隔Gfは例えば中心角10度ごとに配列される第1リラクター63aで規定される。第2間隔Gsは中心角30度の間隔で配置される第2リラクター63bで規定される。シリンダーライナー47の端部47aには、被検知体61の逃げを構成する欠け64が形成される。
内燃機関27は、リラクター63の環状軌道に向き合わせられてリラクター63の動きに応じてパルス信号を生成するパルサーセンサー(検知センサー)65を備える。パルサーセンサー65は、クランクケース34に穿たれるセンサー孔に外側から差し込まれてクランクケース34に取り付けられる。パルサーセンサー65は、地面GDに直交する車両上下方向に対して傾斜する姿勢で保持される。パルサーセンサー65は、車両の側面視でリンク部34aの後方であって後輪WRの前方に配置される。
パルサーセンサー65は、磁性体を検知する先端でクランク室に臨む。パルサーセンサー65では最も感度の高い検出軸線65aが回転軸線33に指向する。パルサーセンサー65は、リラクター63の軌道上で検出される磁性体の有無に応じて電気信号を出力する。パルサーセンサー65は、クランクシャフト48の角位置を特定するパルス信号を出力する。
図3に示されるように、クランクシャフト48の第2クランクウエブ53には、回転軸線33に同軸に第2クランクジャーナル55周りで環状に形成される遠心オイルフィルター66が結合される。遠心オイルフィルター66は軸方向から第2クランクウエブ53の外向き表面に重ねられる。遠心オイルフィルター66は第2クランクウエブ53の外向き表面からクランクピン49と反対向きに軸方向に突出する環状突起62の内周によって区画される窪みに嵌め込まれる。遠心オイルフィルター66は、第2クランクウエブ53の外向き表面との間に油溜まり67を形成する。油溜まり67は、クランクピン49内にクランクピン49の軸心に沿って区画される油路68に接続される。遠心オイルフィルター66の内周は、第2クランクジャーナル55周りに環状の隙間すなわち潤滑油の導入口を形成する。遠心オイルフィルター66の内周は第2転がり軸受58のインナーレース58bに接してもよい。遠心オイルフィルター66は第2クランクウエブ53の回転中の遠心力に基づき潤滑油中の異物を濾過する。
クランクピン49には、油路68から径方向(軸心に直交する方向)に延びる供給路69が区画される。供給路69の外端は、クランクピン49にコネクティングロッド59の大端部59bを回転自在に連結する軸受に開口する。油溜まり67の潤滑油は油路68および供給路69を経てコネクティングロッド59の軸受に供給される。
第2転がり軸受58の外側でクランクシャフト48の第2軸体48bとクランクケース34との間にはオイルシール71が配置される。クランクケース34は、クランクシャフト48周りでオイルシール71と第2転がり軸受58との間に油室72を形成する。油室72には、オイルポンプ(図示されず)から延びる油通路73の先端が開口する。油室72にはオイルポンプの働きで潤滑油が供給される。
第2クランクジャーナル55の外周面には軸方向に延びる溝74が区画される。溝74は、軸方向に少なくとも第2転がり軸受58のインナーレース58bを横切る。溝74は、第2転がり軸受58のインナーレース58bとの間に、第2転がり軸受58の外側に形成される油室72に油溜まり67を接続する油路を形成する。オイルポンプから油室72に供給された潤滑油は溝74から油溜まり67に導入される。
次に本実施形態の作用を説明する。本実施形態に係るクランクシャフト48は、第2クランクウエブ53の外周面53aに一体に形成されて外周面53aから連続し、放射方向に外周面53aから径方向外側に突き出る複数のリラクター63を備える。第2クランクウエブ53の外周にリラクター63が一体に形成されたので、クランクシャフト48に別体のパルサーリング(パルサープレート)が取り付けられる場合に比べて、公差の集積もなく、リラクター63は高い精度で同軸にクランクシャフト48に設けられる。部品点数が減少し、クランクシャフト48の構造は簡素化され、製造コストの低減は実現される。
特に、リラクター63は、第2クランクウエブ53の鍛造時に金型の合わせ面で生じる余肉のはみ出しとして形成されるので、一般にプレスのトリミング加工などで削り落とされる余肉のはみ出しが有効に活用されてリラクター63は形成される。クランクシャフト48の製造工程は簡素化され、製造コストの低減は実現される。
本実施形態に係るクランクシャフト48では、第2クランクウエブ53の外周面53aに、回転軸線33に同軸のリング状に外周面53aから径方向に突出してリラクター63の根元を支持する環状突起62が形成される。リラクター63は第2クランクウエブ53の外周面53aから径方向に離れた位置に配置されるので、リラクター63に基づくパルス信号の検出にあたって第2クランクウエブ53の形状変化は影響せず、リラクター63の検出誤差は低減される。
第2クランクウエブ53の外周面53aでは、第2クランクウエブ53に支持されるクランクピン49から離れた縁53bに沿ってリラクター63は配列される。リラクター63は、クランクピン49に連結されるコネクティングロッド59の大端部59bから離れた縁53bに配置されるので、リラクター63に基づくパルス信号の検出にあたってコネクティングロッド59の影響は抑制され、リラクター63の検出誤差は低減される。
本実施形態に係る被検知体61では、リラクター63は、回転軸線33回りの周方向に両隣のリラクターと第1間隔Gfで等間隔に離れる第1リラクター63aと、クランクピン49に最も近い位置に配置されて、回転軸線33回りの周方向に片隣のリラクターと第1間隔Gfよりも大きい第2間隔Gsで離れる1対の第2リラクター63bとを含む。クランクピン49に最も近い位置でリラクター63同士の間隔が広がるので、クランクピン49に連結されるコネクティングロッド59の大端部59bの形状の影響は抑制され、リラクター63の検出誤差は低減される。
次にクランクシャフト48の製造方法を説明する。図5(a)に示されるように、個々のクランクウエブ52、53ごとに、前述の成分組成を有し円筒形に形成された炭素鋼のビレット81が用意される。クランクウエブ52、53ごとにビレット81に鍛造成型は施される。鍛造成型にあたってビレット81は軸方向に金型で挟まれる。ビレット81は、図5(b)に示されるように、大径部82aから軸方向に先細る多段軸82に絞られる。大径部82aからクランクウエブ52、53は鍛造成型される。
図5(c)に示されるように、第2クランクウエブ53の鍛造成型にあたって、第1金型83および第2金型84の合わせ面85に沿ってビレット81の余肉で生じるフランジ86は形成される。第1金型83には、第2金型84との合わせ面85に沿って、第2クランクウエブ53の外周面53aを仕切るキャビティ87に連続して、当該キャビティ87よりも遠心方向に広がる補助キャビティ88が区画される。第1金型83は、キャビティ87内でカウンターウエイト51bおよびピン孔を成型するとともに、大径部82aが潰されることでキャビティ87から補助キャビティ88に流入する大径部82aの余肉に基づき環状のフランジ86を形成する。フランジ86は、軸回りに周方向に全周にわたって連続する平板形状に形成される。
図5(d)に示されるように、十分にフランジ86が確立されると、フランジ86から被検知体61は鍛造成型される。トリミング加工に基づき環状突起62およびリラクター63は打ち抜かれる。大径部82aは第2クランクウエブ53の形状に仕上げられる。こうして第2クランクウエブ53、第2クランクジャーナル55および第2軸体48bは一体に成型される。第2クランクウエブ53の鍛造時に金型83、84の合わせ面85で生じる余肉のはみ出しを利用してリラクター63が形成されるので、一般にプレスのトリミング加工などで削り落とされる余肉のはみ出しが有効に活用されてリラクター63は形成される。クランクシャフト48の製造工程は簡素化され、製造コストの低減は実現される。
図6に示されるように、内燃機関27では、前述のクランクシャフト48に代えて、第2実施形態に係るクランクシャフト91が組み込まれてもよい。このクランクシャフト91は、第2クランクウエブ92に一体に突出成形されて、第2クランクウエブ92から第1クランクウエブ52に向かって延び、クランクシャフト91の回転軸線33に平行な軸心を有する軸体で構成されるクランクピン93を備える。すなわち、第2クランクウエブ92、クランクピン93、第2クランクジャーナル55および第2軸体48bは一体成型される。クランクピン93以外、第2クランクウエブ92およびその他のクランクシャフト91の構成は前述のクランクシャフト48と同様である。その他、前述のクランクシャフト48と同様な構成には同一の参照符号が付され重複する説明は割愛される。
後述されるように、クランクシャフト91の鍛造時に第2クランクウエブ92にクランクピン93が一体に成型されれば、クランクピン93が別体の場合よりも余肉のはみ出しが形成されやすく、リラクター63には十分な高さが確保される。また、別体のクランクピンが第2クランクウエブに差し込まれる場合に比べてクランクシャフト91の生産性は向上する。
図7に示されるように、第2クランクウエブ92は前述と同様に鍛造成型で製造されることができる。図7(a)および(b)に示されるように、ビレット81から多段軸82は成型される。図7(c)に示されるように、第1金型94には、前述のキャビティ87に代えて、第2クランクウエブ92の外周面を仕切るとともにクランクピン93を象るキャビティ95が区画される。このキャビティ95に前述の補助キャビティ88は連続する。第1金型94は、キャビティ95内でカウンターウエイト51bおよびクランクピン93を成型するとともに、大径部82aが潰されることでキャビティ95から補助キャビティ88に流入する大径部82aの余肉に基づき環状のフランジ86を形成する。キャビティ95以外、第1金型94の構造およびその他の構成は前述の製造工程と同様である。その他、前述の製造工程と同様な構成には同一の参照符号が付され重複する説明は割愛される。
こうして第2クランクウエブ92の鍛造時に金型94、84の合わせ面85で生じる余肉のはみ出しを利用してリラクター63が形成されるので、一般にプレスのトリミング加工などで削り落とされる余肉のはみ出しが有効に活用されてリラクター63は形成される。クランクシャフト91の製造工程は簡素化され、製造コストの低減は実現される。特に、第2クランクウエブ92にクランクピン93が一体に成形されるので、クランクピン93が別体の場合よりも余肉のはみ出しが形成されやすく、リラクター63には十分な高さが確保される。また、別体のクランクピンが第2クランクウエブに差し込まれる場合に比べてクランクシャフト91の生産性は向上する。
33…(クランクシャフトの)回転軸線、48…クランクシャフト、49…クランクピン、51b…カウンターウエイト、53…クランクウエブ(第2クランクウエブ)、53a…(クランクウエブの)外周面、53b…(外周面の)縁、62…環状突起、63…リラクター、63a…第1リラクター、63b…第2リラクター、81…ビレット、83…第1金型、84…第2金型、85…合わせ面、86…フランジ、91…クランクシャフト、92…クランクウエブ(第2クランクウエブ)、93…クランクピン、Gf…(リラクターの)第1間隔、Gs…(リラクターの)第2間隔。

Claims (6)

  1. 回転軸線(33)周りで周方向にずれた位置に配置されるクランクピン(49;93)およびカウンターウエイト(51b)に基づき調整された重心位置を有するとともに、前記回転軸線(33)に同軸の円筒面で仕切られる外周面(53a)を有するクランクウエブ(53;92)と、
    前記クランクウエブ(53;92)の鍛造時の余肉で前記外周面(53a)に一体に形成されて前記外周面(53a)から連続し、放射方向に前記外周面(53a)から突き出る複数のリラクター(63)とを備え、
    前記クランクウエブ(53;92)の前記外周面(53a)には、前記回転軸線(33)に同軸のリング状に前記外周面(53a)から径方向に突出して前記リラクター(63)の根元を支持する環状突起(62)が形成されることを特徴とするクランクシャフト。
  2. 回転軸線(33)周りで周方向にずれた位置に配置されるクランクピン(49;93)およびカウンターウエイト(51b)に基づき調整された重心位置を有するとともに、前記回転軸線(33)に同軸の円筒面で仕切られる外周面(53a)を有するクランクウエブ(53;92)と、
    前記クランクウエブ(53;92)の鍛造時の余肉で前記外周面(53a)に一体に形成されて前記外周面(53a)から連続し、放射方向に前記外周面(53a)から突き出る複数のリラクター(63)とを備え、
    前記回転軸線(33)に同軸のリング状で前記リラクター(63)の根元を支持する環状突起(62)が、前記クランクピン(49;93)とは反対側の前記クランクウエブ(53;92)の外向き表面から前記クランクピン(49;93)と反対向きに軸方向に突出するようにして、前記クランクウエブ(53;92)に形成されることを特徴とするクランクシャフト。
  3. 回転軸線(33)周りで周方向にずれた位置に配置されるクランクピン(49;93)およびカウンターウエイト(51b)に基づき調整された重心位置を有するとともに、前記回転軸線(33)に同軸の円筒面で仕切られる外周面(53a)を有するクランクウエブ(53;92)と、
    前記クランクウエブ(53;92)の鍛造時の余肉で前記外周面(53a)に一体に形成されて前記外周面(53a)から連続し、放射方向に前記外周面(53a)から突き出る複数のリラクター(63)とを備え、
    前記クランクウエブ(53)の外周面(53a)では、前記クランクウエブ(53)に支持される前記クランクピン(49;93)から離れた縁(53b)に沿って前記リラクター(63)は配列されることを特徴とするクランクシャフト。
  4. 請求項1〜3の何れかに記載のクランクシャフトにおいて、前記リラクター(63)は、前記回転軸線(33)回りの周方向に両隣のリラクターと第1間隔(Gf)で等間隔に離れる第1リラクター(63a)と、前記クランクピン(49;93)に最も近い位置に配置されて、前記回転軸線(33)回りの周方向に片隣のリラクターと前記第1間隔(Gf)よりも大きい第2間隔(Gs)で離れる1対の第2リラクター(63b)とを含むことを特徴とするクランクシャフト。
  5. 請求項1〜4の何れかに記載のクランクシャフトにおいて、前記クランクピン(93)は、前記クランクウエブ(92)に一体に突出成形されて前記回転軸線(33)に平行な軸心を有する軸体で構成されることを特徴とするクランクシャフト。
  6. 回転軸線(33)周りで周方向にずれた位置に配置されるクランクピン(49;93)およびカウンターウエイト(51b)に基づき調整された重心位置を有するとともに、前記回転軸線(33)に同軸の円筒面で仕切られる外周面(53a)を有するクランクウエブ(53;92)と、前記外周面(53a)に一体に形成されて前記外周面(53a)から連続し、放射方向に前記外周面(53a)から突き出る複数のリラクター(63)とを備えるクランクシャフトの製造方法であって、
    ビレット(81)を、2つの金型(83、84)で該ビレット(81)の軸方向に挟み込んで、回転軸線(33)周りで周方向にずれた位置に配置されるクランクピン(49;93)およびカウンターウエイト(51b)に基づき調整された重心位置を有するクランクウエブ(53;92)を鍛造成型すると共に、前記金型(83、84;94、84)同士の合わせ面(85)に沿って区画された補助キャビティ(88)に前記ビレット(81)の余肉を流入させ、該余肉によって、前記回転軸線(33)に同軸の円筒面で仕切られる前記クランクウエブ(53;92)の外周面(53a)にフランジ(86)を形成する工程と、前記フランジ(86)から、前記クランクウエブ(53;92)の前記外周面(53a)から連続し放射方向に突き出るリラクター(63)を形成する工程とを備えることで、前記リラクター(63)を、前記クランクウエブ(53;92)の鍛造時に金型の合わせ面で生じる余肉として形成することを特徴とするクランクシャフトの製造方法。
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