JP6785347B1 - 床版構造および床版取替え方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】コンクリート床版から鋼床版への床版の取り替えにかかる作業時間の短縮を図ることができ、主桁と鋼床版との間で橋軸方向にせん断力を確実に伝達する床版構造および床版取替え方法を提供する。【解決手段】橋梁の主桁11に支持されて敷設されている鉄筋コンクリート床版を除去し、主桁上フランジ11bの上面11cから突出するようにずれ止め部材50を設け、鋼床版30を主桁上フランジ11bの上方及び側方に間隔をあけてずれ止め部材50に被せるように配設し、主桁上フランジ11bの上面11c側において、一対の主桁横縦リブ32A,32A同士の間にずれ止め部材50を一体的に埋設するモルタル47を充填するようにした床版取替え方法を提供する。【選択図】図4

Description

本発明は、床版構造および床版取替え方法に関する。
高速道路等に使用される橋梁では、老朽化した道路の床版を取り替える必要が生じる場合がある。従来、橋梁のRC床版(鉄筋コンクリート床版)を新しい床版に取り替える場合、まず既存の鉄筋コンクリート床版を除去する。次に、主桁の主桁上フランジを完全に平滑化したうえで、スタッドを打ち直したり、また、RC床版を鋼床版と取り替える場合には主桁の主桁上フランジにボルト穴を開けたりするようにしている。
しかし、従来の工法には以下のような課題がある。(1)スタッドのついた鉄筋コンクリート床版を撤去してフランジを平滑化するのは非常に労力と時間を要する。(2)スタッドの間のコンクリートを除去するときは、騒音、振動、粉じんの問題が生じる可能性がある。(3)鉄筋コンクリート床版を除去すると、橋梁の死荷重が半分以下となるために、桁のたわみが減少し、元と同じ路線計画高を維持するための各種寸法調整を要する。(4)床版を今の基準に従って新設すると、元の構造よりも重量が増加する。そのために、桁や橋脚、場合によっては杭の補強が必要となる(厚さだけでなく幅も広げる必要がある)。
このような課題を解決するための橋梁の床版取替え方法の一例として例えば特許文献1に記載の方法が知られている。特許文献1に記載の床版取替え方法では、橋梁の主桁に支持されて敷設されている鉄筋コンクリート床版を鋼床版に取り替えるために、鉄筋コンクリート床版を除去した位置に鋼床版を配する橋梁の床版取替方法において、前記鉄筋コンクリート床版の下方に、前記主桁に適宜な間隔に配して床版支持ブラケットを取り付け、前記主桁の上フランジに位置した部分の鉄筋コンクリート床版を除いた他の部分を除去して主桁の上フランジ部分に残留部を設け、前記除去した鉄筋コンクリート床版に替えて、前記残留部を回避して配した横リブを有する鋼床版の該横リブを配して、該横リブを前記床版支持ブラケットに載置して取り付けている。
特開2016−194215号公報
しかしながら、上述した特許文献1に記載の床版取替え方法では、以下のような問題があった。
ここで、コンクリート床版が取り替えを要するほど傷んでいる橋梁の多くは交通量が多いケースであり、コンクリート床版を取り替える際に交通量を制限したり、交通止めを行う必要があった。そのため、コンクリートの床版の取り替える際の交通制限にかかる必要時間が短いことが求められており、その点で改善の余地があった。
そして、特許文献1では、主桁のウエブに床版支持ブラケットを溶接等によって取り付けている。そのため、床版支持ブラケットの取り付けに手間がかかるとともに、鋼床版の横リブを床版支持ブラケットに溶接等によって取り付けているので、この横リブに対する取り付けにも手間がかかる。
また、鋼床版の横リブは床版支持ブラケットに載置して当該床版支持ブラケットに取り付けられているが、基本的にこの床版支持ブラケットは片持ち梁として主桁に取り付けられている。そのため、鋼床版の重量を支える床版支持ブラケットは大きな強度を有する必要がある。
また、床版支持ブラケットを介してのみ主桁に取り付けられているので、主桁と鋼床版との間で橋軸方向にせん断力を伝達するのが困難である。そのために鋼床版と主桁との一体構造の橋梁となり難く、橋梁としての強度が不足する虞がある。
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、コンクリート床版から鋼床版への床版の取り替えにかかる作業時間の短縮を図ることができ、主桁と鋼床版との間で橋軸方向にせん断力を確実に伝達することができる床版構造および床版取替え方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る床版構造は、橋梁の主桁に支持された床版構造であって、前記主桁の主桁上フランジの上面から突出するずれ止め部材と、前記主桁上フランジの上方及び側方に間隔をあけて前記ずれ止め部材に被せるように配設された鋼床版と、を備え、前記鋼床版は、前記主桁上フランジの上方に配置されたデッキプレートと、前記デッキプレートの下面側において橋軸方向に配設された主桁横縦リブと、を有し、前記主桁の主桁上フランジは、橋幅方向に隣り合って配置される一対の前記主桁横縦リブ同士の間に配置され、前記主桁上フランジの上面には、所定の厚みで重なるように鉄筋コンクリート床版のコンクリートが部分的に残置されたコンクリート部が設けられ、前記一対の前記主桁横縦リブの互いに対向する内面にずれ止めが突設され、前記主桁上フランジの上面側において、前記一対の主桁横縦リブ同士の間に、前記ずれ止め部材を一体的に埋設する不定形材料が充填されていることを特徴としている。
また、本発明に係る床版取替え方法は、橋梁の主桁に支持されて敷設されている既設の鉄筋コンクリート床版の一部を鋼床版に取り替える床版取替え方法であって、前記鉄筋コンクリート床版を除去し、主桁上フランジの上面に所定の厚みで重なるように前記鉄筋コンクリート床版のコンクリートが部分的に残置されたコンクリート部を設ける工程と、主桁上フランジの上面から突出するようにずれ止め部材を設ける工程と、前記鋼床版を前記主桁上フランジの上方及び側方に間隔をあけて前記ずれ止め部材に被せるように配設する工程と、橋軸方向に配設された一対の主桁横縦リブの互いに対向する内面にずれ止めを突設する工程と、前記主桁上フランジの上面側において、前記一対の前記主桁横縦リブ同士の間に不定形材料を充填する工程と、を有することを特徴としている。
本発明では、鋼床版におけるデッキプレートの下面側において橋軸方向に配設された主桁横縦リブ同士の間に主桁の主桁上フランジの上面から突出して設けられるずれ止め部材(固定部材)を一体的に埋設するように不定形材料が充填され、これにより鋼床版と主桁上フランジとが接合され、橋梁としての一体となった剛性と強度を確保することができる。その結果、従来のような床版支持ブラケットを用いた場合と比較して構造重量を低減したり発生応力を低減することが可能となる。
また、本発明では、鉄筋コンクリート床版のうちスタッド等が固着されている主桁上フランジの上面のコンクリートの大部分を急速に一体的に除去することが可能となるので、コンクリート除去作業にかかる手間や時間を低減することができる。
さらに、本発明では、充填される不定形材料に埋設されるずれ止め部材によって主桁と鋼床版とが橋軸方向にせん断力を確実に伝達し,構造的に一体化することができる。
また、本発明では、鋼床版と主桁上フランジとの間に不定形材料を充填するので、主桁上フランジの上面に配置される鋼床版の下面、主桁上フランジの上面等の腐食を防止できる。
なお、この不定形材料には大きな強度を求める必要はない。そもそもコンクリート部も、十分な施工技術の無かった時代に打設されたコンクリートであり、さらに、長期間共用されていたことから、確実な設計が可能なだけの強度を保証することは困難であるため、そこに充填する不定形材料に大きな強度を求めなくてもよい。
そして、この場合には、鉄筋コンクリート床版を一体的に除去する工法のため、騒音、振動、粉じんの発生を低減することができる。
また、本発明に係る床版構造は、前記ずれ止め部材は、前記主桁上フランジの上面に一体に固定された第1突設部と、該第1突設部の上端に設置された第2突設部と、を有し、前記第1突設部は、前記コンクリート部に埋設され、当該第1突設部の上端が前記コンクリート部の上面と面一となっていることを特徴としてもよい。
この場合には、鉄筋コンクリート床版のうち主桁上フランジの上面のコンクリート部のすべては除去する必要がなく、例えばコンクリートカッタによってコンクリート部内に埋設されている鉄筋やスタッド等も同時に切断することによる施工が可能となり、コンクリート除去作業にかかる手間や時間を低減することができる。
そして、切断により主桁上フランジの上面に残ったスタッド等(第1突設部)の上端に第2突設部をスタッド溶接により固定することで、第2突設部を主桁上フランジの上面から第1突設部を介して上方に向けて突出させることができる。そして、第2突設部は充填される不定形材料に埋設されるため、主桁と鋼床版とが橋軸方向にせん断力を確実に伝達することができる。この場合、主桁や主桁上フランジ上面に少量だけ残ったコンクリートを、第2突設部の固定のためにすべてを除去する必要がなくなるので、通常は当該除去作業に使われるコンクリートブレーカーやグラインダー、チッパー等を使う必要がなくなり、騒音、振動、粉じんの発生を大幅に低減できる。
また、この場合には、コンクリート部の上面に第1突設部の上端が露出した状態で設けることができるので、コンクリート部内に埋設されている第1突設部の上端を露出する切削作業が不要となり、コンクリート除去作業にかかる手間や時間をより低減することができる。
また、本発明に係る床版構造は、前記主桁上フランジを厚さ方向に貫通する貫通孔が設けられ、前記ずれ止め部材は、前記貫通孔に挿通され、前記主桁上フランジの下面側からナットにより固定された棒材であることを特徴としてもよい。
この場合には、主桁上フランジに対して上面側のコンクリート部とともに貫通孔を設けて、その貫通孔に棒材を挿通させてナットで固定するという簡単な作業により棒材をずれ止め部材として設けることができる。そして、コンクリート部よりも上方に突出した棒材は不定形材料に埋設されているため、主桁と鋼床版とが橋軸方向にせん断力を確実に伝達することができる。
また、本発明に係る床版構造は、前記鋼床版には、当該鋼床版の高さを調整可能な高さ調整ボルトが前記主桁上フランジに当接可能に螺合されていることが好ましい。
この場合には、高さ調整ボルトを回すことによって、鋼床版の高さを調整できるので、鋼床版の高さを、狙った位置に、例えば取り替え以前の鉄筋コンクリート床版の高さと等しくすることができる。つまり、現場において路面計画高を調整できる。
また、本発明に係る床版構造は、前記主桁上フランジ及び前記コンクリート部を厚さ方向に貫通する貫通孔が設けられ、前記ずれ止め部材は、前記鋼床版の前記デッキプレートの下面から下方に垂設され橋軸方向に延びる縦板と、前記縦板の下端から橋幅方向に張り出す横板と、を有し、前記横板は、前記コンクリート部の上面に当接された状態で前記貫通孔を介してボルト締結により前記主桁上フランジに固定されていることが好ましい。
この場合には、デッキプレートの下面に設けられた接合用部材をコンクリート部のわずかな残置部分の上面に当接させて貫通孔を通してボルト締結することで固定するという簡単な作業によりずれ止め部材を設けることができる。そして、コンクリート部よりも上方に突出した縦板が不定形材料に埋設されているため、主桁と鋼床版とが橋軸方向にせん断力を確実に伝達することができる。
本発明の床版構造および床版取替え方法によれば、コンクリート床版から鋼床版への床版の取り替えにかかる作業時間の短縮を図ることができ、主桁と鋼床版との間で橋軸方向にせん断力を確実に伝達することができる。
本発明の第1実施形態による床版取替え方法を説明するためのもので、床版取替え前の橋梁を斜め上方から見た斜視図である。ただし、片側の車線のみを示している。 図1に示す床版取替え前の橋梁を斜め下方から見た斜視図である。 鋼床版を設置した状態を示すもので、(a)は橋梁を斜め下方から見た斜視図、(b)は橋梁の正面図である。 鋼床版を主桁に接合する接合部分の構成を示す橋軸方向から見た縦断面図である。 図4に示す接合部分の要部を拡大した縦断面図であって、(a)は鉄筋コンクリート床版を切断した状態の図、(b)はコンクリート床版残置部上のコンクリート除去領域にモルタルを充填した状態の図である。 図4に示すずれ止め部材の構成を示す斜視図である。 床版取替え方法の作業フローチャートである。 横リブ取付部材を主桁ウエブに取り付けた状態を示すもので、(a)は橋梁を斜め下方から見た斜視図、(b)は右側の主桁の横リブ取付部材を含む断面図である。 横リブ取付部材を示すもので、(a)は横リブ取付部材の斜視図、(b)は(a)におけるA矢視図である。 横リブ取付部材を主桁ウエブに取り付けた状態を示す要部の断面図である。 鉄筋コンクリート床版の一部を除去した状態を示すもので、橋梁を斜め上方から見た斜視図である。 鉄筋コンクリート床版の一部を除去した状態を示すもので、橋梁を斜め下方から見た斜視図である。 鋼床版を設置した状態を示すもので、(a)は橋梁を斜め上方から見た斜視図、(b)は仮止め板を設置した状態を示す橋梁を斜め上方から見た斜視図である。 コンクリート床版残置部を含む要部を示すもので、(a)は断面図、(b)は不定形材料を充填した状態を示す断面図である。 横リブを主桁ウエブに剛結合した状態を示すもので、(a)は斜め下方から見た斜視図、(b)は側面図である。 図3(b)における要部の斜視図である。 図15(a)における要部の平断面図である。 (a)は鋼床版とそれに隣り合う鉄筋コンクリート床版とを示す要部の断面図、(b)は鋼床版と鉄筋コンクリート床版との間に仮止め板を仮設して、仮舗装を施した状態を示す要部の断面図である。 第1実施形態による橋梁の構造の要部を示す断面図である。 第1実施形態において、次の鋼床版を設置する方法を説明するためのもので、除去部を設けた状態を示す斜め上方から見た斜視図である。 除去部を設けた状態を示す斜め下方から見た斜視図である。 次の鋼床版を設置した状態を示す斜め上方から見た斜視図である。 次の鋼床版を設置した状態を示す斜め下方から見た斜視図である。 パネル間継手によって橋軸方向に隣り合う鋼床版を接合した状態を示す正断面図である。 他方側の車線の鉄筋コンクリート床版の一部除去した状態を示すもので、橋梁を斜め上方から見た斜視図である。 他方側の車線の鉄筋コンクリート床版の一部を除去した状態を示すもので、除去部における正断面図である。 他方側の車線側に鋼床版を設置した状態を示すもので、橋梁を斜め上方から見た斜視図である。 他方側の車線側に鋼床版を設置した状態を示すもので、当該鋼床版における正断面図である。 鋼床版と鉄筋コンクリート床版との間に仮止め板を仮設して、仮舗装を施した状態を示す正断面図である。 本発明の第2実施形態による鋼床版を主桁に接合する接合部分の構成を示す橋軸方向から見た縦断面図である。 図30に示す鋼床版と主桁の接合部分においてモルタルを充填する前の状態を示す斜視図である。 本発明の第3実施形態による床版取替え方法を説明するためのもので、床版取替え前の橋梁を斜め上方から見た斜視図である。ただし、片側の車線のみを示している。 図32に示す床版取替え前の橋梁を斜め下方から見た斜視図である。 変形例によるずれ止め部材の構成を示す斜視図であって、図6に対応する図である。
以下、本発明の実施形態による床版構造および床版取替え方法について、図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1及び図2に示すように、本第1実施形態による床版構造は、橋梁10の主桁11に支持されて敷設されている鉄筋コンクリート床版14の一部を鋼床版30(図3(a)、(b)、及び図13(a)、(b)参照))に取り替える構造である。つまり、第1実施形態では、橋幅方向Xに隣り合う主桁11、11の間隔が3m程度あり、橋幅方向Xに鉄筋コンクリート床版14の一部を切断して、新設の鋼床版30に取り替える場合に適用される。
図1及び図2は床版取替え前の橋梁10(ただし、片側の車線(図に示すものの場合、片側2車線)のみ)を示すもので、図1は斜め上方から見た斜視図、図2は斜め下方から見た斜視図である。
図1及び図2に示すように、橋梁(橋梁の構造)10は、主桁11、横桁12、対傾構13および鉄筋コンクリート床版14を備えている。
主桁11はH形鋼またはI形鋼によって形成され、橋軸方向(図1においてZ方向)に延在して設けられている。なお、図に示すものの場合、両車線合わせて全部で6本の主桁が設けられている中で、片側の車線の3本のみが表されている。これらの主桁11は、橋幅方向(橋軸方向Zと直交する水平方向(いわゆる橋軸直交方向。図1においてX方向))に所定間隔で配置されている。主桁11は主桁ウエブ11aと主桁上フランジ11bと主桁下フランジ11eとを有している。なお、主桁11は図示しない橋台や橋脚の間に架設されている。
横桁12はH形鋼またはI形鋼によって形成され、橋幅方向Xに延在し、かつ隣り合う主桁11,11間に架設され、横桁12の端部は主桁ウエブ11aに溶接やボルト止め等によって結合されている。また、横桁12は、橋軸方向Zに所定間隔で複数配置されているが、図2では橋梁10の一部を図示しているので、橋軸直交方向に同軸で延在する2本の横桁12が設けられている。
対傾構13は、風や地震等の横荷重に抵抗するためのもので、上弦材、下弦材、縦材および斜材等からなるトラス構造となっている。対傾構13は隣り合う主桁11,11間に架設され、ガセット等によって主桁11に結合されている。また、対傾構13は、橋軸方向Zに所定間隔で複数配置されているが、図2では橋梁10の一部を図示しているので、橋軸直交方向に同軸で延在する2つの対傾構13が設けられ、これら対傾構13が橋軸方向Zに離間し、かつ横桁12を挟む位置に設けられている。
鉄筋コンクリート床版14は内部に鉄筋が縦横に配筋されており、当該鉄筋コンクリート床版14の下面には、当該下面から突出する凸条(ハンチ部)14aが橋軸方向Zに延在していて、本実施形態では凸条14aは橋幅方向Xに所定間隔で3つ形成されている。3つの凸条14aは、3本の主桁11の直上に位置しており、主桁上フランジ11bに設置固定されている。主桁上フランジ11bの上面11cには図示しないスタッドが橋幅方向Xおよび橋軸方向Zにそれぞれ所定間隔で複数立設され、これらスタッドが鉄筋コンクリート床版14のコンクリートと結合されている。また、鉄筋コンクリート床版14は橋幅方向Xの両端部にそれぞれ地覆14bが設けられ、一方の端部に高欄14cが設けられている。さらに、鉄筋コンクリート床版14の上面にはアスファルト等で形成された舗装部15が地覆14b,14b間において施工されている。
次に、新設の鋼床版30の構成について具体的に説明する。
鋼床版30は、図3(a)、(b)に示すように、デッキプレート31と、デッキプレート31の下面に溶接等によって接合された複数の縦リブ32と、縦リブ32に直角に配置された横リブ33と、を備えている。デッキプレート31の上面には予め舗装部34が施工されている。デッキプレート31の外周縁部31aは舗装部34の外周縁部34aより外側に突出している。
複数の縦リブ32は、それぞれ橋軸方向Zに延在するとともに、橋幅方向Xにおいて所定間隔で平行に設けられている。図4に示すように、これら複数の縦リブ32のうち主桁上フランジ11bを橋幅方向Xに挟むようにして配置されている2つの縦リブ32は他の縦リブ32より下方に突出し、下端部が主桁上フランジ11bの下面よりも十分に下方に延出する主桁横縦リブ32A,32Aとなっている。
なお、本実施形態では、主桁横縦リブ32Aは、他の縦リブ32よりも十分に下方に突出した状態で設けられているが、必ずしもこのような長さで突出される必要はなく、主桁上フランジ11bの上面11cよりも下方であればよい。これは型枠としての役割を容易に果たしうるためである.また,型枠の設置の方式によれば,主桁上フランジ11bの宇和面11cよりも上であってもよい。
横リブ33は、図4に示すように、デッキプレート31の下面側において、略橋幅方向Xに配設され、かつ橋幅方向Xの一端面または両端面の少なくとも一部が直近の主桁11の主桁ウエブ11aのウエブ面と対向して設けられている。
具体的には、デッキプレート31の下面には、橋幅方向Xに延在する2つの横リブ33(33A,33B)が主桁11を挟んで溶接等によって接合されている。
また、鋼床版30における橋幅方向Xの紙面右側の横リブ33Aは、主桁11から一定距離までは下端部が略水平方向に形成され、さらに主桁11から離れた位置においては、この主桁11から離れるにしたがって、下端部が次第にデッキプレート31側に近づくように傾斜した態様の板体状に形成されている(図3(a)、(b)参照)。これは、横リブ33Aとしての必要高さよりも、主桁11への接合部のための必要高さが大きいためにこのような形状となっている。そのため、接合部近傍での高さで一様の高さにしてもよい。そして、この横リブ33Aの橋幅方向Xの一端面(つまり、主桁11側の端面)の一部が直近(紙面右側)の主桁ウエブ11aの右側のウエブ面と対向している。なお、横リブ33Aの下端面にはフランジ33bが固定されている。
なお、以下でいう右側とは、本明細書の表示面に向かって右側のことを意味する。左側についても同様である。
このような横リブ33Aはデッキプレート31の短辺の長さ方向(橋軸方向Z)の略中央部に配置されており、この横リブ33Aに前記縦リブ32が直交して配置され、それらの交差部が溶接されている。なお、パネル間の接合部での発生応力を減少させるには、デッキプレート31の長さ方向の略1/3の部分に配置することも有効な手段である。また、前記主桁横縦リブ32Aは、主桁上フランジ11bとは反対側の面が、横リブ33Aの一端面と対向し、かつ主桁横縦リブ32Aの延在方向と横リブ33Aの延在方向とが直交するように当該横リブ33Aの一端面に当接されたうえで、この横リブ33Aと溶接によって接合されている。さらに、主桁横縦リブ32Aの一端部は、主桁上フランジ11bの下面よりも下方に延出していて、主桁ウエブ11aのウエブ面と対向した状態となっている。
図3(b)及び図4に示すように、鋼床版30の橋幅方向Xで左側の横リブ33Bは、矩形板状に形成された基部と、橋幅方向Xの両端部に設けられて当該基部からそれぞれ下方に突出する突出部33cとを一体に有する板体状に形成されている。突出部33cは、その下端側が、横リブ33Bの延在方向の両端側に向かうにしたがって次第に下方側に突出する板体状に形成されている。したがって、横リブ33Bの両端およびその近傍は、突出部33cにより、延在方向の両端部に向かうに従って漸次鉛直方向の長さが大きくなる形状となっている。
また、図4に示すように、横リブ33Bの両端部33dは、それぞれ直近の主桁ウエブ11aのウエブ面と対向している。このような横リブ33Bはデッキプレート31の短辺の長さ方向の略中央部に配置、つまり横リブ33Aの延長上に配置されており、横リブ33Bに前記縦リブ32が直交して配置され、それらの交差部が溶接されている。
次に、第1実施形態において、鉄筋コンクリート床版14を鋼床版30に取り替えるための床版構造について、図4乃至図6に基づいて説明する。
床版構造は、主桁11の主桁上フランジ11bの上面11cから突出するずれ止め部材50と、ずれ止め部材50の一部を埋設し、主桁上フランジ11bの上面11cに薄い厚さ(例えば2〜3cm)で残置されたコンクリート床版残置部21と、主桁上フランジ11bの上方及び側方に間隔をあけてずれ止め部材50に被せるように配設された鋼床版30と、主桁上フランジ11bの上面11c側において、一対の主桁横縦リブ32A、32A同士の間に充填されてずれ止め部材50を一体的に埋設するモルタル47(不定形材料)と、を備えている。
コンクリート床版残置部21(コンクリート部)は、図5(a)に示すように、主桁11上に設けられる鉄筋コンクリート床版14(図13(a)、(b)参照)の鉄筋コンクリートを除去したときにほぼ一定の厚さに残置された部分である。図6において、二点鎖線で示される領域がコンクリート床版残置部21である。具体的にコンクリート床版残置部21は、例えばコンクリートカッタ等を使用して鉄筋コンクリート床版14内に埋設されている定着鉄筋も同時に略水平方向に沿って上下に切断し、上側の鉄筋コンクリートを取り除いた時に残置されたものである。そのため、コンクリート床版残置部21には、切断後に残った定着鉄筋51(第1突設部)が埋設された状態となっている。
なお、本実施形態では、主桁上フランジ11bの上面11cのコンクリート床版残置部21と、鋼床版30(対向する一対の主桁横縦リブ32A、32Aと、デッキプレート31)と、によって囲まれる領域をコンクリート除去領域2Aとする。コンクリート除去領域2Aの内側にモルタル47が充填される。
ずれ止め部材50は、主桁上フランジ11bの上面11cに一体に固定された定着鉄筋51(第1突設部)と、定着鉄筋51の切断面をなす上端51aに上方に突出するように溶接されたスタッド52(第2突設部)と、を有している。
ずれ止め部材50は、本実施形態では、橋幅方向Xに間隔をあけて2本設けられ、橋軸方向Zにも間隔をあけて複数配列されている。
このように主桁上フランジ11bの上面11cの上にずれ止め部材50を溶接すれば、主桁上フランジ11bの上のコンクリート床版残置部21を全く除去する必要がない。
定着鉄筋51は、コンクリート床版残置部21に埋設された状態で主桁上フランジ11bの上面11cに固定された状態で設けられ、定着鉄筋51の上端51aがコンクリート床版残置部21の上面21aと面一となって露出している。
スタッド52は、上端に径方向に拡径された定着部52aを有している。スタッド52は、上述したように鉄筋コンクリート床版14を切断してコンクリート床版残置部21を残置した施工後に、定着鉄筋51の上端51aにスタッド52の下端をスタッド溶接、あるいは突合せ溶接により固着することにより定着鉄筋51と一体的に設けられている。
これらのずれ止め部材50のスタッド52は、主桁横縦リブ32A,32A同士の間のコンクリート除去領域2Aに充填されたモルタル47に一体的に埋設されている。ずれ止め部材50は、モルタル47を介して鋼床版30と主桁11の間のずれ止めとして機能し、橋軸方向Zのせん断力を伝達する作用を有している。
ここで、図4、図5(a)、(b)、及び図6に示すように、一対の主桁横縦リブ32A、32Aの互いに対向する内面32bには、コンクリート床版残置部21の周囲に形成されるコンクリート除去領域2Aにずれ止めスタッド58が設けられている。このずれ止めスタッド58は、通常は頭付きスタッドを用いる。ここで、主桁横縦リブ32A,32Aは、力学的な作用としては鋼床版30の縦リブとして作用する。
ずれ止めスタッド58は、主桁11を挟んだ両側の主桁横縦リブ32A,32Aのそれぞれの主桁横縦リブ32A,32Aの対向する内面32bに対して垂直に突設されている。ずれ止めスタッド58は、頭部を突設先端側とし、軸部の基端部が突合せ溶接等により固着されている。ずれ止めスタッド58は、主桁11を挟んで橋軸方向Zに対象的に所定の間隔をあけて複数配置されている。
これらのずれ止めスタッド58は、コンクリート除去領域2Aに充填されたモルタル47に一体的に埋設されている。ずれ止めスタッド58も、鋼床版30と主桁11の間のずれ止めとして機能し、橋軸方向Zのせん断力を伝達する作用を有している。
本実施形態では、図4に示すように、主桁上フランジ11bと横リブ取付部材16(後述する)との間の主桁ウエブ11aの上下方向の長さL1は、224mm以上である。
この長さL1は、主桁ウエブ11aの厚さの38倍以下であることが好ましい。これは、主桁上フランジ11bと主桁ウエブ11aとの間の溶接部に発生する応力が、疲労の生じないレベルまで十分に低減されるためである。
また、厚肉断面のウエブなども製作されるようになっており、この場合には1600mmの桁高で9mmの板厚とした場合のリブ取付部材の長さL1である224mmを、最低限の離間距離として設定する。よって、主桁上フランジ11bと主桁ウエブ11aとの間の応力を低減するには、長さL1として224mm以上の間隔を確保すれば適切であると言える。
また、座屈のことを考慮に入れると、道路橋示方書に記載されているように、主桁ウエブ11aに高強度鋼SBHSを使った場合の座屈耐力の低減が無いレベルの最大限の無補剛区間幅として、板厚の38倍を設定することが設計的にも適切な上限値である。
次に、上述した構成の橋梁10の主桁11に支持されて敷設されている鉄筋コンクリート床版14の一部を新設の鋼床版30に取り替える施工方法について、図7の施工フローを参照しながら詳細に説明する。
先ず、準備工程(図7のステップS1)として、橋梁10の下に、図示しない全面吊足場を設置し、この全面吊足場から、新設の鋼床版30の設置(取替え)の際に干渉する部材の撤去、改良、仕上げ(一部グラインダー作業)を行う。なお、検査等のためなどに全面足場が予め設置されている場合は、その足場を使って同じ作業を行うことができる。
次に、図8(a)、(b)、及び図9(a)、(b)に示すように、主桁ウエブ11aの上部に横リブ取付部材16を高力ボルトによってボルト結合する。この場合、鉄筋コンクリート床版14の下面側で作業を行って横リブ取付部材16を主桁ウエブ11aにボルト結合する(ステップS2)。
なお、図9(b)は、図9(a)における右側の主桁11の、横リブ取付部材16を含む断面図である。なお、以下でいう右側とは、本明細書の表示面に向かって右側のことを意味する。左側についても同様である。
横リブ取付部材16は、図9(a)、(b)に示すように、断面T形に形成され、矩形板状の固定プレート16aと、この固定プレート16aの幅方向中央部に、当該固定プレート16aの板面から直角方向に突設させた矩形板状の連結プレート16bとを有している。固定プレート16aと連結プレート16bとは上下方向の長さが等しくなっており、連結プレート16bの固定プレート16aからの突出長さは、後述する鋼床版30の横リブ33の端面に連結プレート16bの先端面が当接可能となるような長さに設定されている。この横リブ取付部材16は、横リブ33と主桁ウエブ11aを連続化させるための部材であり、引張ボルト接合によって主桁ウエブ11aに取り付けられ、また、鋼床版30の横リブ33とは2面せん断の摩擦接合により接続される。
また、固定プレート16aにはボルト孔16cが複数設けられ、連結プレート16bにはボルト孔16dが複数設けられている。
横リブ取付部材16は、新設の鋼床版30を取り替える部位の下方に位置する主桁ウエブ11aのウエブ面に固定プレート16aを当接させてボルト結合することによって取り付ける。本実施形態では、図8(a)において右側の主桁11と中央部の主桁11との間において鉄筋コンクリート床版14の一部を鋼床版30に取り替えるので、図10に示すように、右側の主桁11の主桁ウエブ11aの両ウエブ面に、当該主桁ウエブ11aの厚さ方向の中央部を境として横リブ取付部材16を略左右対称的に取り付け、中央部の主桁11の主桁ウエブ11aの、右側の主桁11側を向くウエブ面に横リブ取付部材16を取り付ける。
なお、図10において、右側の横リブ取付部材16の方が左側の横リブ取付部材16より上下方向の長さが長く、かつ、右側の横リブ取付部材16の下端が左側の横リブ取付部材16の下端より下方に突出している。これは、横リブ33Aの主桁ウエブ11a側の端部の上下方向の長さが、横リブ33Bの主桁ウエブ11a側の端部の上下方向の長さより長く、かつ、横リブ33Aの下端が横リブ33Bの下端より下方に突出していることによるものである(図3(b)参照)。したがって、横リブ33Aの主桁ウエブ11a側の端部の上下方向の長さと、横リブ33Bの主桁ウエブ11a側の端部の上下方向の長さとが等しい場合、右側の横リブ取付部材16の上下方向の長さと左側の横リブ取付部材16の上下方向の長さとが等しくてもよい。
また、右側の主桁ウエブ11aのウエブ面に横リブ取付部材16を結合する場合、ウエブ面の塗装を剥離したうえで、高力ボルトによる通常の摩擦接合によって結合する。つまり、図10に示すように、主桁ウエブ11aには、前記ボルト孔16cと対応した位置にボルト孔11fが設けられ、ボルト孔11fと、主桁ウエブ11aの両ウエブ面にそれぞれ当接された横リブ取付部材16,16の固定プレート16aのボルト孔16c,16cに高力ボルト18を挿通し、当該高力ボルト18にナットを螺合して締め付けることによって、主桁ウエブ11aのウエブ面に横リブ取付部材16を結合する。
このとき、横リブ取付部材16の固定プレート16aには、あらかじめ工場で孔あけ加工がなされ、ボルト孔16cが設けられている一方で、主桁ウエブ11aには、結合作業を行う前の段階ではボルト孔11fは設けられていない。横リブ取付部材16を適切な位置に仮設置し、そのボルト孔16cをテンプレートとして、主桁ウエブ11aに現場で図示しない携帯式ボール盤のような器具を用いて穴あけ加工を行う。結合作業時においては、各部材間で位置ずれが生じる可能性がありボルト孔16cの位置を調節する必要があるが、この方式によって横リブ取付部材16と主桁ウエブ11aとのボルト孔の相対的な位置調節が可能となる。
また、中央部の主桁ウエブ11aのウエブ面に横リブ取付部材16を結合する場合も同にして行う。
また、中央部の主桁ウエブ11aの反対側(左側の主桁11側)のウエブ面には、中央部の主桁11と左側の主桁11とに支持されて敷設されている鉄筋コンクリート床版14の一部を新設の鋼床版30に取り替える際に、同様にして横リブ取付部材16を取り付ける。
なお、横リブ取付部材16を主桁11に取り付けた後、図11に示すように、必要に応じて、上部交通の車線規制を行う(ステップS3)。車線規制を行う場合、路面の幅方向(橋幅方向X)の中央部に仮設ガード17を橋軸方向Zに所定間隔で立設する。図11は、右側の1車線を規制したものを示していて、仮設ガード17より左側が車両通行帯であり、右側が工事帯となっている。
次に、工事帯において、図4及び図5(a)、(b)に示すように、鉄筋コンクリート床版14の一部のうち、橋軸方向Zの所定の幅内において主桁上フランジ11bの上面11c側に設けられている部分(コンクリート床版残置部21)を残した領域(コンクリート除去領域2A)を除去することで、鉄筋コンクリート床版14の一部に除去部20を形成する。
これは例えば宮地エンジニアリング株式会社のM−SR工法のように、鉄筋コンクリート床版14と主桁上フランジ11bの上面11cとの間を狙って、主桁上フランジ11bと平行にワイヤーソーを水平に進行させて鉄筋コンクリート床版14を主桁上フランジ11bを切り離すことが行われている。この工法では、ワイヤーソーを主桁上フランジ11bに接触させられないために、この除去部20において主桁上フランジ11bの上面11c側にコンクリート床版残置部21が残置されることになる。
すなわち、図12及び図13(a)、(b)に示すように、橋幅方向Xの右側に位置する主桁11と中央部に位置する主桁11との間に位置する鉄筋コンクリート床版14の橋軸方向Zにおける所定部位を、後述する鋼床版30の平面視形状や大きさ(この実施形態の場合、平面視略矩形状)に応じて、コンクリートカッタによって切断し、撤去する(ステップS4)。
この際、上述したように主桁上フランジ11bの上面11c側に設けられている図5(a)に示すコンクリート床版残置部21以外を除去して空間(コンクリート除去領域2A)を形成する。本実施形態では、主桁11の主桁上フランジ11bの上面11c側に所定厚さのコンクリート床版残置部21を残置する。
また、このとき、コンクリート除去領域2Aにおいて、除去部20と橋幅方向Xに隣り合う鉄筋コンクリート床版14の部分については、主桁11の主桁上フランジ11bの上面11c側において図13(a)、(b)に示す舗装部15の一部を橋軸方向Zに沿って除去し、除去部20に沿う縁部を露出させる。さらに、主桁11,11間に位置し、除去部20と橋軸方向Zにおいて隣り合う鉄筋コンクリート床版14の部分については、橋幅方向Xに沿って舗装部15を除去し、除去部20に沿う一対の縁部を露出させる。
このようにして鉄筋コンクリート床版14の所定部位を平面視略矩形状に切断することで形成された矩形状の除去部20の平面視における橋軸方向Zの長さは、取り替えられる新設の鋼床版30の平面視における橋軸方向Zの長さより若干長く設定される。また、図11に示すように、鉄筋コンクリート床版14の所定部位を平面視略矩形状に切断する場合、右側の地覆14bおよび高欄14cを含めて切断するので、除去部20の橋幅方向X外側(右側)は開放されている。
次に、図4及び図5(b)に示すように、主桁上フランジ11bの上面11cに残置されている定着鉄筋51の上端51aから突出するようにスタッド52をスタッド溶接等により接合して上方に突設させる(ステップS5)。
次に、図14(a)に示すように、前記除去部20に、新設の鋼床版30をコンクリート床版残置部21に被せるように配設して、一旦仮置きする。つまり、鋼床版30を主桁上フランジ11bの上方及び側方に間隔をあけてずれ止め部材50のスタッド52に被せるように配設する。この場合、主桁横縦リブ32A,32A間にコンクリート床版残置部21を橋幅方向Xにおいて挟み込むようにして配置することによって、鋼床版30を仮置きする(ステップS6)。
そして、平面視矩形状の除去部20に、新設の鋼床版30をコンクリート床版残置部21に被せるように配設する際には、図14(a)、(b)に示すように、主桁横縦リブ32A,32Aが主桁11の主桁上フランジ11bを橋幅方向Xに挟むようにして配設する。
なお、主桁上フランジ11bの橋幅方向Xの端部と、この端部と対向している主桁横縦リブ32A,32Aの橋幅方向Xの面との間には隙間があるので、この隙間にシール材36を嵌め込む。また、主桁横縦リブ32A,32Aの主桁上フランジ11bと対向する面から、シール材36の下面と主桁上フランジ11bの下面とにわたって、コンクリート型枠、防水、防蝕のためのチタン箔37を貼り付ける。
また、鋼床版30には、図14(a)、(b)に示すように、鋼床版30の高さを調整可能な高さ調整ボルト40がコンクリート床版残置部21の上面21aに当接可能に螺合されている。すなわち、右側の主桁11の主桁上フランジ11b上のコンクリート床版残置部21の上方に位置するデッキプレート31の部位には、ねじ孔41が設けられており、このねじ孔41に高さ調整ボルト40が螺合され、高さ調整ボルト40の先端部(下端部)がコンクリート床版残置部21の上面21aに当接している。このような高さ調整ボルト40はデッキプレート31の橋軸方向Zの縁部で、かつ主桁11の上方に複数設けられている。そして、鋼床版配設工程の後に、高さ調整ボルト40を適宜正逆方向に回すことによって、鋼床版30を昇降させて高さを調整する。すなわち、鋼床版30の舗装部34の上面と、鉄筋コンクリート床版14の舗装部15の上面とがほぼ面一となるように、鋼床版30の高さを調整する(ステップS7)。
次に、鋼床版30の横リブ33を当該横リブ33の橋幅方向Xの端部において、当該端部に直近の主桁ウエブ11aに剛結合する。図15(a)、(b)、及び図16に示すように、横リブ33A,33Bを、これらの横リブ33A,33Bにおける橋幅方向Xの端部の一端面を主桁ウエブ11aのウエブ面と対向させた状態において、横リブ33A,33Bの橋幅方向Xの端部33e,33eを直近の主桁ウエブ11a,11aに剛結合する。これによって、鋼床版30の床版作用に伴う交通荷重起因の発生応力を低減することができる。すなわち、同じ高さの横リブ33でも、主桁ウエブ11a,11aに剛結合することで鋼床版30に発生する応力が小さくなり,疲労寿命を十分に確保することが可能となる。
具体的に、本実施形態においては、横リブ33Bについては、その橋幅方向Xの端部33eの一端33dを主桁ウエブ11aのウエブ面と対向させた状態において、図17に示すように、中央部の主桁11の主桁ウエブ11aに固定された横リブ取付部材16の連結プレート16bの先端面に当接させたうえで、この端部33eと連結プレート16bをその両面側からスプライスプレート42,42で挟み付け、高力ボルト45とナット45aによって摩擦接合する。これにより、横リブ33Bを当該横リブ33Bの橋幅方向Xの左側の端部33eにおいて、この端部33eに直近の主桁ウエブ11aに剛結合する。
また、同様にして、横リブ33Bの橋幅方向Xの右側の端部33eを右側の主桁11の主桁ウエブ11aに固定された横リブ取付部材16の連結プレート16bの先端部に、スプライスプレート42,42および高力ボルト45とナット45aを用いて剛結合する。
連結プレート16bには、図9(a)、(b)に示すように、予め工場等において複数のボルト孔16dが形成され、スプライスプレート42にも、図16及び図17に示すように、予め工場等において複数のボルト孔42cが形成されている。
そして、同軸に配置されているボルト孔42c,16d,42cおよびボルト孔42c,33g,42cにそれぞれ高力ボルト45を挿通したうえで、この高力ボルト45にナット45aを螺合して締め付けることによって、横リブ33Bを当該横リブ33Bの橋幅方向Xの端部33eにおいて、当該端部33eを直近の主桁ウエブ11aに摩擦接合により剛結合する。なお、図16では、高力ボルト45の図示を省略している。
また、同様にして、図15(a)、(b)に示すように、横リブ33Aについては、その橋幅方向Xの一端部33eの一端33dを主桁ウエブ11aのウエブ面と対向させた状態において、右側の主桁11の主桁ウエブ11aに固定された横リブ取付部材16の連結プレート16bの先端面に当接したうえで、端部33eと連結プレート16bをその両面側からスプライスプレート42,42で挟み付け、高力ボルト45によって締結することで、横リブ33Bを当該横リブ33Aの端部33eにおいて、当該端部33eに直近の主桁ウエブ11aに剛結合する。
また、このような高力ボルトによる摩擦接合構造においても、横リブ33Aの橋幅方向Xの端部33eの表面が接合されるスプライスプレート42の面および連結プレート16bの表面が接合されるスプライスプレート42の面にアルミニウム等の金属溶射による摩擦面処理が工場等によって施されている。
次に、図5(b)に示すように、鋼床版30と主桁上フランジ11bとコンクリート床版残置部21との間に、モルタル47を充填する。このとき、高さ調整ボルト40はねじ孔41から取り外すことなく、デッキプレート31に予め設けられた充填孔(図示省略)から主桁上フランジ11bやコンクリート床版残置部21が収容されている主桁横縦リブ32A,32Aの間の空間内にモルタル47を充填する(ステップS8)。なお、高さ調整ボルト40、モルタル47が十分に硬化してから取り外してもよいし、モルタル47内に埋設させて残置してもよい。
上述したように、主桁横縦リブ32A,32Aが主桁上フランジ11bを橋幅方向Xに挟むようにして配設され、主桁上フランジ11bと主桁横縦リブ32A,32Aとの間の隙間にシール材36(図14(a)、(b)参照)が嵌め込まれているので、ねじ孔41から充填されたモルタル47は、鋼床版30のデッキプレート31と、主桁上フランジ11bと、シール材36と、主桁横縦リブ32A,32Aとによって囲まれた空間(コンクリート除去領域2A)に隙間なく行き渡って当該隙間を埋める。これによって、コンクリート床版残置部21の上鉄筋、デッキプレート31の下面および主桁上フランジ11bの上面11c等の腐食を防止できる。
なお、本実施形態では、不定形材料としてモルタル47を採用しているが、モルタル47以外でも無収縮の樹脂、ゴムラテックスなど、急速硬化性、流動性があるものを使用できる。
なお、このようなモルタル47の充填作業は、後述する鋼床版結合工程の後に行ってもよい。また、全体作業効率化のために、何パネル分かの鋼床版30の施工後にまとめて充填してもよい。鋼床版30に作用する死荷重および活荷重(交通荷重)は、設計的には横リブ33を通じて主桁ウエブ11aに伝達されるためである。
本実施形態では、図4に示すように、主桁11と鋼床版30とを、橋軸方向Zのせん断力を相互に伝達するずれ止め部材50によって結合することによって、主桁11から鋼床版30に向けて橋軸方向Zのせん断力を伝達できる。
次に、図13(b)及び図18(a)、(b)に示すように、鋼床版30と、この鋼床版30に橋幅方向X及び橋軸方向Zにおいて隣り合う鉄筋コンクリート床版14との間に仮止め板55を架け渡し、この仮止め板55の上面側に、仮舗装部56を鋼床版30の上面に予め設けられている舗装部34および鉄筋コンクリート床版14上の舗装部15とほぼ面一に施工する(ステップS9)。仮止め板55は、一時的に鉄筋コンクリート床版14と鋼床版30との間、あるいは隣接する鋼床版間を連続させることにより、道路の陥没状態を抑止して車両の通行を可能ならしめる機能を有している。
すなわち、前述の鉄筋コンクリート床版除去工程によって、鋼床版30が配設されている除去部20を囲む鉄筋コンクリート床版14の周縁部分のうち、橋幅方向Xに隣り合う部分は、主桁11の主桁上フランジ11bの上面側において舗装部15の一部が除去されて、鉄筋コンクリート床版14の橋幅方向Xにおいて除去部20に隣接する縁部が露出した状態となっている。また、主桁11,11間に位置し、橋軸方向Zに隣り合う部分の鉄筋コンクリート床版14は、橋幅方向Xに沿って舗装部15の一部が除去されて、鉄筋コンクリート床版14の橋軸方向Zにおいて除去部20に隣接する縁部が露出した状態となっている。
一方、鋼床版30のデッキプレート31の外周縁部31aは舗装部34の外周縁部より外側に突出しており、この突出している外周縁部31aにボルト孔31bが複数設けられている。
また、橋幅方向X及び橋軸方向Zにおいて、鋼床版30の外周縁部31aと鉄筋コンクリート床版14の橋軸方向Zおよび橋幅方向Xに沿う縁部(外周縁部32a)との間には隙間Sが設けられている。
そして、図18(b)に示すように、デッキプレート31の外周縁部31aと鉄筋コンクリート床版14の橋軸方向Zに沿う外周縁部32aとに前記隙間Sを跨ぐようにして、仮止め板55を架け渡す。この仮止め板55にはボルト孔55bが設けられており、当該ボルト孔55bが前記ボルト孔31bと同軸となるように、仮止め板55を架け渡す。そして、ボルト孔55b,31bにボルト57を挿通して、ナット57aによって締め付けることによって、仮止め板55を固定したうえで、仮止め板55の上面側に、仮舗装部56を鋼床版30の上面に予め設けられている舗装部34および鉄筋コンクリート床版14上の舗装部15とほぼ面一に施工する。
このようにして施工された床版構造は、図20に示すように、鉄筋コンクリート床版14の少なくとも一部のうち、主桁11の主桁上フランジ11bの上面側に設けられている部分以外を除去して残置されてなるコンクリート床版残置部21と、鉄筋コンクリート床版14の少なくとも一部を、コンクリート床版残置部21を露出状態で除去してなる除去部20(図4参照)に、コンクリート床版残置部21に被せるように配設された鋼床版30とを備えている。
また、鋼床版30は、図4に示すように、デッキプレート31の下面側において橋幅方向Xに配設され、橋幅方向Xの一端面または両端面の少なくとも一部が直近の主桁11の主桁ウエブ11aのウエブ面と対向する横リブ33(33A,33B)を有しており、横リブ33が当該横リブ33の端部33eにおいて、当該端部33eに直近の主桁ウエブ11aに、横リブ取付部材16によって剛結合されている。
また、主桁11と鋼床版30とが橋軸方向Zにせん断力を伝達するずれ止め部材50及びモルタル47を介して結合されている。
また、鋼床版30と主桁上フランジ11bとコンクリート床版残置部21との間に、モルタル47が充填されている。さらに、図18(b)に示すように、鋼床版30と、当該鋼床版30に隣り合う鉄筋コンクリート床版14との間に仮止め板55が架け渡され、仮止め板55の上面側に、仮舗装部56が鋼床版30の舗装部34および鉄筋コンクリート床版14上の舗装部15とほぼ面一に施工されている。
このようにして、1つの鋼床版30の取り替えが終了した後、一時交通規制を解除して、工事帯を通行可能とする(ステップS10)。
2つめの鋼床版30の取り替えを行う場合、基本的に上述した工程を順次繰り返すことによって行う。ただし、各工程の詳細な説明は省略する。
まず、図20及び図21に示すように、工事帯において、先に取り換えた(新設した)鋼床版30と橋軸方向Zにおいて隣接する鉄筋コンクリート床版14の一部のうち、橋軸方向Zの所定の幅内において主桁上フランジ11bの上面側に設けられている部分以外を除去することで、鉄筋コンクリート床版14の一部に除去部20を設けるとともに、当該除去部20において主桁上フランジ11bの上面側にコンクリート床版残置部21を残置する。また、主桁ウエブ11aの上部に横リブ取付部材16を高力ボルトによってボルト結合する。
次に、図22及び図23に示すように、除去部20に、次の鋼床版30をコンクリート床版残置部21(図5参照)に被せるように配設するとともに、高さ調整ボルト40(図14(a)、(b)参照)によって、鋼床版30の高さを調整する。
次に、鋼床版30の横リブ33を当該横リブ33の端部において、当該端部に直近の主桁ウエブ11aに、横リブ取付部材16によって剛結合する。
また、この段階において、図24に示すように、隣り合う鋼床版30,30同士はパネル間継手35を使用して高力ボルト46によって接合する。このパネル間継手35は、2面せん断のボルト摩擦接合によって隣接する鋼床版30,30どうしを一体化するものである。このパネル間継手35によって、鋼床版30のデッキプレート31の橋軸方向Z(図24参照)および橋軸直角方向、さらに縦リブ32、主桁横縦リブ32A(図24参照)のそれぞれが2面せん断のボルト摩擦接合によって接合される。なお、パネル間継手35を設ける場合には、先だって存在する仮止め板55が存在する場合には、その仮止め板55は撤去する。
また、図24に示すように、橋軸方向Z(図24において紙面と直交する方向)に隣り合う鋼床版30,30どうしを接合するパネル間継手35は、デッキプレート31の上面側に設けられて、鋼床版30の長辺方向(橋軸直交方向)に延在する継手プレート35aと、デッキプレート31の下面側において橋軸直交方向に隣り合う縦リブ32,32間および縦リブ32と主桁横縦リブ32Aとの間にそれぞれ設けられて、継手プレート35aより短い複数の継手プレート35bとを備えている。そして、継手プレート35aと継手プレート35bとによって、隣り合う鋼床版30,30のデッキプレート31,31が挟み付けられ、高力ボルト46によって締結することで、鋼床版30,30どうしが接合されている。
また、橋軸方向Zに隣り合う鋼床版30,30の縦リブ32,32どうしおよび主桁横縦リブ32A,32Aどうしを接合するパネル間継手35は、2枚の継手プレート35c,35cを備えている。継手プレート35cは橋軸方向Zに隣り合う鋼床版30,30の接合部を跨ぐようにして配置されている。そして、継手プレート35c,35cによって、橋軸方向Zに隣り合う鋼床版30,30の縦リブ32,32および主桁横縦リブ32A,32Aがそれぞれ挟み付けられ、高力ボルト46によって締結することで、鋼床版30,30どうしが接合されている。
また、橋軸直交方向に隣り合う鋼床版30,30どうしを接合するパネル間継手35は、2枚の継手プレート(図示省略)を備えている。この継手プレートは橋軸直交方向に隣り合う鋼床版30,30の接合部を跨ぐように配置されるとともに、鋼床版30の短辺方向に沿って延在している。そして、継手プレートによって、橋軸直交方法に隣り合う鋼床版30,30のデッキプレート31,31がそれぞれ挟み付けられ、高力ボルト46によって締結することで、鋼床版30,30どうしが接合されている。
最後に、今回取り替えた鋼床版30と、この鋼床版30に橋幅方向Xおよび橋軸方向Zにおいて隣り合う鉄筋コンクリート床版14との間に仮止め板55を架け渡し、この仮止め板55の上面側に、仮舗装部56を鋼床版30の上面に予め設けられている舗装部34および鉄筋コンクリート床版14上の舗装部15とほぼ面一に施工する(図18参照)。
このようにして次の(2つめの)鋼床版30を取り替えた後、同様にして必要な数の鋼床版30を次々に取り替えることによって、橋軸方向Zに所望な距離だけ鉄筋コンクリート床版14に替えて新たな鋼床版30を新設する。以上のようにして、片側2車線のうち一方側の車線について橋軸方向Zにおいて所望な距離だけ新な鋼床版30を新設する。
また、一方側の車線について橋軸方向Zに所望な距離だけ鉄筋コンクリート床版14に替えて新たな鋼床版30を新設した後、図25に示すように、片側2車線のうちの他方側の車線(図25において左側の車線)についても同様にして既設の鉄筋コンクリート床版14に替えて新たな鋼床版30を新設する。
図25では、一方側の車線において取り替えた鋼床版30が2枚記載されているが、実際は橋軸方向Zにおいて鋼床版30は所定数だけ連続して施工(新設)されている。
なお、他方側の車線において、鋼床版30を新設する場合、一方側の車線において、鋼床版30を新設した場合と同様にして鋼床版30を新設するので、以下ではその方法を簡単に説明する。
片側2車線のうちの他方側の車線において、鉄筋コンクリート床版14に替えて新たな鋼床版30を新設する場合、準備工程として、全面足場の設置や干渉する部材の撤去を行った後、鉄筋コンクリート床版14の下面側で、所定の主桁11の主桁ウエブ11aの上部に横リブ取付部材16を高力ボルトによってボルト結合する作業を行う。
そして、他方側の車線について上部交通を規制(図示せず)した後、図25及び図26に示すように、他方側の車線の鉄筋コンクリート床版14の少なくとも一部のうち、主桁11の主桁上フランジ11bの上面側に設けられている部分以外を除去することで、鉄筋コンクリート床版14の少なくとも一部に除去部20を設けるとともに、この除去部20において主桁上フランジ11bの上面側にコンクリート床版残置部21を残置する(鉄筋コンクリート床版除去工程)。
次に、図27及び図28に示すように、除去部20に、鋼床版30をコンクリート床版残置部21に被せるように配設する。次に、横リブ33を当該横リブ33の橋幅方向Xの両端部において、当該両端部に直近の主桁ウエブ11aに横リブ取付部材16によって剛結合する。なお、予め主桁ウエブ11aに横リブ取付部材16をボルト結合しておく。また、横リブ取付部材16に横リブ33をボルト結合する場合、横リブ取付部材16と横リブ33の端部とをスプライスプレート42によって挟み付けるとともに高力ボルトによって締結する。
次に、主桁11と鋼床版30とを橋軸方向Zにせん断力を伝達するずれ止め部材50の定着鉄筋51及びスタッド52を介してモルタル47によって結合する。
次に、図29に示すように、鋼床版30と、当該鋼床版30に隣り合う鉄筋コンクリート床版14との間に仮止め板55を架け渡し、仮止め板55の上面側に、仮舗装部56を鋼床版30の上面側の舗装部34および鉄筋コンクリート床版14上の舗装部とほぼ面一に施工する。また、前記鋼床版(他方側の車線の鋼床版)30と、一方側の車線に設置されている鋼床版30との間にはパネル間継手を取り付けて相互に接合し、パネル間継手の上面側に、仮舗装部56を橋幅方向Xに隣り合う鋼床版30の上面側の舗装部34とほぼ面一に施工する。
そして、橋梁において予定していた区間において鋼床版30の取り替えが終了することによって、工事全体を終了する。
なお、他方側の車線においても、前記鉄筋コンクリート床版除去工程において、コンクリート床版残置部21の上部の被りコンクリート22を除去する。
また、鋼床版30に、この鋼床版30の高さを調整可能な高さ調整ボルト40がコンクリート床版残置部21に当接可能に螺合され、鋼床版配設工程の後に、高さ調整ボルト40を回すことによって、鋼床版30の高さを調整する。
さらに、鋼床版配設工程の後に、鋼床版30と主桁上フランジ11bとコンクリート床版残置部21との間に、モルタル47を充填する。
以上説明した床版構造および床版取替え方法によれば、図4乃至図6に示すように、鋼床版30におけるデッキプレート31の下面側において橋軸方向Zに配設された主桁横縦リブ32A、32A同士の間に主桁11の主桁上フランジ11bの上面11cから突出して設けられるずれ止め部材50を一体的に埋設するようにモルタル47が充填され、これにより鋼床版30と主桁上フランジ11bとが接合され、橋梁10としての一体となった剛性と強度を確保することができる。その結果、従来のような床版支持ブラケットを用いた場合と比較して構造重量を低減したり発生応力を低減することが可能となる。
また、本実施形態では、鉄筋コンクリート床版14のうちスタッド等の定着鉄筋51が固着されている主桁上フランジ11bの上面11cのコンクリートの大部分を急速に一体的に除去することが可能となるので、コンクリート除去作業にかかる手間や時間を低減することができる。
さらに、本実施形態では、充填されるモルタル47に埋設されるずれ止め部材50によって主桁11と鋼床版30とが橋軸方向Zにせん断力を確実に伝達し、構造的に一体化することができる。
また、本実施形態では、鋼床版30と主桁上フランジ11bとの間にモルタル47を充填するので、主桁上フランジ11bの上面11cに配置される鋼床版30のデッキプレート31の下面、主桁上フランジ11bの上面11c等の腐食を防止できる。
なお、このモルタル47には大きな強度を求める必要はない。そもそも鉄筋コンクリート床版14のコンクリート床版残置部21も、十分な施工技術の無かった時代に打設されたコンクリートであり、さらに、長期間共用されていたことから、確実な設計が可能なだけの強度を保証することは困難であるため、そこに充填する不定形材料に大きな強度を求めなくてもよい。
そして、この場合には、鉄筋コンクリート床版14を一体的に除去する工法のため、騒音、振動、粉じんの発生を低減することができる。
また、本実施形態では、鉄筋コンクリート床版14のうち主桁上フランジ11bの上面11cの鉄筋コンクリートのすべては除去する必要がなく、例えばコンクリートカッタによって鉄筋コンクリート内に埋設されている鉄筋やスタッド等(本実施形態では定着鉄筋51)も同時に切断することによる施工が可能となり、コンクリート除去作業にかかる手間や時間を低減することができる。
そして、切断により主桁上フランジの上面に残った定着鉄筋51の上端51aにスタッド52をスタッド溶接により固定することで、スタッド52を主桁上フランジ11bの上面11cから定着鉄筋51を介して上方に向けて突出させることができる。そして、スタッド52は充填されるモルタル47に埋設されるため、主桁11と鋼床版30とが橋軸方向Zにせん断力を確実に伝達することができる。
この場合、主桁11や主桁上フランジ上面に少量だけ残ったコンクリート床版残置部21を、スタッド52の固定のためにすべてを除去する必要がなくなるので、通常は当該除去作業に使われるコンクリートブレーカーやグラインダー、チッパー等を使う必要がなくなり、騒音、振動、粉じんの発生を大幅に低減できる。
また、この場合には、コンクリート床版残置部21の上面に定着鉄筋51の上端51aが露出した状態で設けることができるので、コンクリート床版残置部21内に埋設されている定着鉄筋51の上端51aを露出する切削作業が不要となり、コンクリート除去作業にかかる手間や時間をより低減することができる。
さらにまた、本実施形態では、高さ調整ボルト40を回すことによって、鋼床版30の高さを調整できるので、鋼床版30の高さを、狙った位置に、例えば取り替え以前の鉄筋コンクリート床版14の高さと等しくすることができる。つまり、現場において路面計画高を調整できる。
また、鋼床版30と、当該鋼床版30に隣り合う鉄筋コンクリート床版14との間に仮止め板55を架け渡し、この仮止め板55の上面側に、仮舗装部56が、鋼床版30の舗装部34および既設の鉄筋コンクリート床版14上の舗装部15とほぼ面一に施工されているので、既設の鉄筋コンクリート床版14の舗装部15と更新された(取り替えられた)鋼床版30の舗装部34を連続させることができる。このため、床版の取り替えの際に行っていた車線規制を解除して一時的に車両を走行させることができる。
上述のように本実施形態による床版構造および床版取替え方法では、鉄筋コンクリート床版14から鋼床版30への床版の取り替えにかかる作業時間の短縮を図ることができ、主桁11と鋼床版30との間で橋軸方向Zにせん断力を確実に伝達することができる。
次に、本発明の床版構造および床版取替え方法の他の実施形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1実施形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1実施形態と異なる構成について説明する。
(第2実施形態)
図30及び図31に示すように、第2実施形態による床版構造は、接続部材50A(ずれ止め部材)をボルト締結によりコンクリート床版残置部21(コンクリート部)を介して主桁11の主桁上フランジ11bに固定した構造である。本実施形態でも、上記の第1実施形態と同様に主桁上フランジ11bの上面11cに所定の厚みで重なるようにコンクリート床版残置部21が残置されている。
主桁11の主桁上フランジ11b及びコンクリート床版残置部21には、それぞれ厚さ方向に貫通する複数の貫通孔11d、21cが形成されている。貫通孔11d、21cは、同軸に設けられ、主桁上フランジ11bの幅方向の中心を挟んだ両側に設けられ、さらに橋軸方向Zに沿って複数配列されている。
接続部材50Aは、鋼床版30のデッキプレート31の下面31cから下方に垂設され橋軸方向Zに延びる縦板53と、縦板53の下端53aから橋幅方向Xの両側に略水平方向に張り出す横板54と、を有している。接続部材50Aは、橋軸方向Zからみて上下反転したT型形状に形成されている。
縦板53は、鋼床版30の主桁横縦リブ32A、32Aを主桁11に被せて配置する設置位置において、主桁11の主桁ウエブ11aと同軸となる位置に設けられている。横板54は、下面54aをコンクリート床版残置部21の上面21aに当接された状態で貫通孔11d、21cを介してボルト54Aとナット54Bを使用したボルト締結により主桁上フランジ11bに固定されている。
そして、主桁上フランジ11bの上面11c側における一対の主桁横縦リブ32A、32A同士の間には、接続部材50Aの縦板53と横板54とを一体的に埋設するようにコンクリート除去領域2Aにモルタル47(不定形材料)が充填されている。なお、縦板53は、部分的に開口が形成されていてもよい。このように縦板53に開口を形成しておくことで、コンクリート除去領域2Aに充填するモルタル47が縦板53を挟んだ両側に流通させることができ充填作業を効率よく行うことができる。
第2実施形態では、鋼床版30のデッキプレート31の下面31cに設けられた接続部材50Aの横板54をコンクリート床版残置部21のわずかな残置部分の上面21aに当接させて貫通孔11d、21cを通してボルト締結することで固定するという簡単な作業により接続部材50Aを設けることができる。
そして、第2実施形態では、コンクリート床版残置部21よりも上方に突出した縦板53がモルタル47に埋設されているため、コンクリート床版残置部21が長期的な荷重等よって強度を低下してしまう場合でも、有害な変形などを生じずに安定した構造を保つことができる。
(第3実施形態)
図32及び図33に示すように、第3実施形態による床版構造は、鋼床版30に設けられる横リブ330を、主桁上フランジ11bと鋼床版30のデッキプレート31、一対の主桁横縦リブ32A、32Aとに囲まれた接合領域に配置してずれ止め部材として機能させた構造である。
第3実施形態による横リブ330は、主桁11の主桁ウエブ11aを挟んだ両側に配置される側方横リブ330A、330Bの上端同士を連結し、橋幅方向Xに沿って延びる通し横リブ331(ずれ止め部材)を有している。すなわち、横リブ330は、一対の側方横リブ330A、330Bと通し横リブ331とが一体的に設けられ、正面視で下方に開口するコの字状に形成されている。通し横リブ331は、デッキプレート31の下面側において橋幅方向Xに配設されている。
横リブ330は、一対の主桁横縦リブ32A、32Aを橋幅方向Xに貫通して連続して設けられている。通し横リブ331において、一対の主桁横縦リブ32A、32A間に介在している部分がずれ止め部材となる。
第3実施形態では、鋼床版30における横リブ330のうち通し横リブ331が一対の主桁横縦リブ32A、32A間の接合領域に介在した状態で設けられている。この一対の主桁横縦リブ32A、32A間に位置する通し横リブ331をずれ止め部材として設けることができる。そして、一対の主桁横縦リブ32A、32A間の通し横リブ331は充填されるモルタル47に埋設されるため、主桁11から鋼床版30に向けて橋軸方向Zのせん断力を確実に伝達することができる。
また、本実施形態では、通し横リブ331はモルタル47によって固定されるので、補剛材が無くとも座屈を生じるおそれはない。
そして、本実施形態では、通し横リブ331は主桁11左右の横リブ間を連続とするため、横桁やデッキプレート31の発生応力を低減することができる。
また、本実施形態では、通し横リブ331は一対の側方横リブ330A、330Bと連続して一体化され、通し横リブ331が負担するせん断力を横リブ330全体に分散することができる。そのため、側方横リブ330A、330Bの高さ寸法を小さく抑えることができきる。
以上、本発明による床版構造および床版取替え方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本第1実施形態では、コンクリート床版残置部21内に残った定着鉄筋51の上端51aにスタッド52を固着した構成のずれ止め部材50としているが、それぞれ他の部材を採用することも可能である。例えば、スタッド52に代えて長ボルトを頭部側を上にして定着鉄筋51の上端51aに固着した構成とすることも可能である。
また、コンクリート床版残置部21内に残置されている定着鉄筋51(第1突設部)を用いたずれ止め部材50であることに制限されることもない。
例えば、主桁上フランジ11bを厚さ方向に貫通する貫通孔を設け、当該貫通孔に挿通され、主桁上フランジ11bの下面側からナットにより固定された棒材をずれ止め部材とする構成であってもよい。この場合には、主桁上フランジ11bに対して上面側のコンクリート床版残置部21とともに貫通孔を設けて、その貫通孔に棒材を挿通させてナットで固定するという簡単な作業により棒材をずれ止め部材として設けることができる。そして、コンクリート床版残置部21よりも上方に突出した棒材はモルタル47(不定形材料)に埋設されるため、主桁11と鋼床版30とが橋軸方向Zにせん断力を確実に伝達することができる。
さらに、ずれ止め部材として、例えば図34に示す変形例の構成を採用することも可能である。変形例では、定着部50aを上に向けて主桁11の主桁上フランジ11bの上面11cに基端部50bを直接、溶着したスタッドをずれ止め部材50Bとしている。ずれ止め部材50Bは、コンクリート床版残置部21内に残置された定着鉄筋51に干渉しない位置に適宜配置することができる。この場合には、主桁上フランジ11bの上面11cにおいて定着鉄筋51が配置されていない部分(ずれ止め部材50Bを溶着する部分)のコンクリートのみを除去し、グラインダー等で主桁上フランジ11bの上面11cを露出した後にずれ止め部材50Bを溶着することにより施工される。そのため、コンクリートの除去領域がずれ止め部材50Bを溶着する部分のみとなり、コンクリート除去量を低減することができ、鉄筋コンクリート床版14から鋼床版30への床版の取り替えにかかる作業時間の短縮を図ることができる。
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
2A コンクリート除去領域
10 橋梁(橋梁の構造)
11 主桁
11a 主桁ウエブ
11b 主桁上フランジ
11c 上面
11d 貫通孔
14 鉄筋コンクリート床版
15 舗装部
16 横リブ取付部材
18 高力ボルト
20 除去部
21 コンクリート床版残置部(コンクリート部)
21a 上面
21c 貫通孔
22 被りコンクリート
30 鋼床版
31 デッキプレート
32 縦リブ
32A 主桁横縦リブ
33(33A,33B) 横リブ
34 舗装部
40 高さ調整ボルト
41 ねじ孔
47 モルタル(不定形材料)
50、50B ずれ止め部材
50A 接続部材(ずれ止め部材)
50a 定着部
50b 基端部
51 定着鉄筋(第1突設部)
51a 上端
52 スタッド(第2突設部)
52a 定着部
53 縦板
54 横板
330 横リブ
331 通し横リブ(ずれ止め部材)

Claims (6)

  1. 橋梁の主桁に支持された床版構造であって、
    前記主桁の主桁上フランジの上面から突出するずれ止め部材と、
    前記主桁上フランジの上方及び側方に間隔をあけて前記ずれ止め部材に被せるように配設された鋼床版と、
    を備え、
    前記鋼床版は、前記主桁上フランジの上方に配置されたデッキプレートと、前記デッキプレートの下面側において橋軸方向に配設された主桁横縦リブと、を有し、
    前記主桁の主桁上フランジは、橋幅方向に隣り合って配置される一対の前記主桁横縦リブ同士の間に配置され、
    前記主桁上フランジの上面には、所定の厚みで重なるように鉄筋コンクリート床版のコンクリートが部分的に残置されたコンクリート部が設けられ、
    前記一対の前記主桁横縦リブの互いに対向する内面にずれ止めが突設され、
    前記主桁上フランジの上面側において、前記一対の主桁横縦リブ同士の間に、前記ずれ止め部材を一体的に埋設する不定形材料が充填されていることを特徴とする床版構造。
  2. 前記ずれ止め部材は、前記主桁上フランジの上面に一体に固定された第1突設部と、該第1突設部の上端に設置された第2突設部と、を有し、
    前記第1突設部は、前記コンクリート部に埋設され、当該第1突設部の上端が前記コンクリート部の上面と面一となっていることを特徴とする請求項1に記載の床版構造。
  3. 前記主桁上フランジを厚さ方向に貫通する貫通孔が設けられ、
    前記ずれ止め部材は、前記貫通孔に挿通され、前記主桁上フランジの下面側からナットにより固定された棒材であることを特徴とする請求項1に記載の床版構造。
  4. 前記鋼床版には、当該鋼床版の高さを調整可能な高さ調整ボルトが前記主桁上フランジに当接可能に螺合されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の床版構造。
  5. 前記主桁上フランジ及び前記コンクリート部を厚さ方向に貫通する貫通孔が設けられ、
    前記ずれ止め部材は、前記鋼床版の前記デッキプレートの下面から下方に垂設され橋軸方向に延びる縦板と、前記縦板の下端から橋幅方向に張り出す横板と、を有し、
    前記横板は、前記コンクリート部の上面に当接された状態で前記貫通孔を介してボルト締結により前記主桁上フランジに固定されていることを特徴とする請求項1に記載の床版構造。
  6. 橋梁の主桁に支持されて敷設されている既設の鉄筋コンクリート床版の一部を鋼床版に取り替える床版取替え方法であって、
    前記鉄筋コンクリート床版を除去し、主桁上フランジの上面に所定の厚みで重なるように前記鉄筋コンクリート床版のコンクリートが部分的に残置されたコンクリート部を設ける工程と、
    主桁上フランジの上面から突出するようにずれ止め部材を設ける工程と、
    前記鋼床版を前記主桁上フランジの上方及び側方に間隔をあけて前記ずれ止め部材に被せるように配設する工程と、
    橋軸方向に配設された一対の主桁横縦リブの互いに対向する内面にずれ止めを突設する工程と、
    前記主桁上フランジの上面側において、前記一対の前記主桁横縦リブ同士の間に不定形材料を充填する工程と、
    を有することを特徴とする床版取替え方法。
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