JP6783149B2 - 蓄電装置 - Google Patents
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Description
この蓄電装置は、蓄電池たる二次電池と、専用の充電装置を備えている。この蓄電装置は、蓄電する際には、専用の充電装置を使用して二次電池に充電し、外部負荷から電力要求があった場合には、二次電池に充電した電気を外部負荷に送電することが可能となっている。
このような場合には、通常、組電池単位で過充電を防止する制御を行っており、単電池単位での制御はなされていない。そのため、組電池単位の制御では、劣化度合や個体差等によって、組電池を構成する特定の二次電池が過充電状態に陥る場合があり、特定の二次電池の過充電状態を解消できない。それ故に、複数の二次電池を直列接続して組電池を構成する場合は、各二次電池に過充電耐性のある二次電池を使用することが必須となっていた。
ここでいう「充電終止電圧」とは、二次電池に発生する電圧の制限値であって、例えば、リミッターにて制限される電圧である。すなわち、二次電池を安全に充電するための定格値である。
ここで、このような挿入・脱離反応によって充放電を行う二次電池は、抵抗損失(IRドロップ)に含まれる抵抗成分として、主に構成材料間の接触抵抗成分と、金属イオンが電極から非水電解質に拡散する際に生じる拡散抵抗成分がある。
通常の二次電池では、設計容量通りの出力を得るために、接触抵抗や拡散抵抗をできる限り小さくして、実際の容量を設計した容量に近づけている。
また、リチウム二次電池等の二次電池では、金属イオンが空気中の酸素や水分との反応性が高いので、過充電状態に陥ると、安全が損なわれる可能性がある。そのため、過充電による破損を防止するために、一定容量まで定電流で充電した後、定電圧に変更して充電終止電圧を超えないように充電を行うことが一般的に行われている。
一方、本様相の二次電池によれば、これらの従来の常識に反して、正極及び負極の活物質層の平均厚みを0.3mm以上と厚くし、設計容量の80%以上97%以下に抑えている。すなわち、本様相の二次電池では、敢えて金属イオンが拡散しにくい状態を作って、拡散抵抗成分を大きくし、自発的に金属イオンの拡散律速の状態を形成している。
そして、本様相の二次電池は、設計容量通りの容量が出ない状態で充電装置によって充電終止電圧まで定電流で充電している。そのため、充電完了となる充電終止電圧となっても、実際に二次電池の構成部材に印加されている電圧は、拡散抵抗成分の増加による抵抗損失の分だけ低い。それ故に、本様相の二次電池装置によれば、仮に充電終止電圧以上に過充電してしまっても、拡散抵抗成分による電圧上昇の範囲であれば、内部の活物質層自体は過充電状態にはならない。そのため、二次電池の構成材料の破壊や電解質の分解の加速が発生しにくい。
このように、本様相によれば、充電終止電圧に達しても設計上の満充電容量に達しないので、充電深度検知用の電池を用いなくても、二次電池の過充電を防止できる。そのため、制御の簡略化及び低コスト化が可能である。
したがって、充放電の度に、劣化した二次電池に負荷が集中することを防止でき、組電池としての寿命が長くできる。
ここでいう「商用電源系統」とは、購入等によって電力会社等から供給される電源系統をいう。
蓄電装置1は、太陽光発電システムや燃料電池システムなどの発電システム(図示しない)や商用電源系統などの外部電源系統50から送電された電気を一時的に蓄電可能な蓄電装置である。また、蓄電装置1は、蓄電した電気を外部負荷や商用電源系統などの外部電源系統50に対して供給する電力供給装置でもある。
そして、本実施形態の蓄電装置1は、二次電池システム3を構成する二次電池15が充電時において金属イオンの拡散が律速となるものであり、電源制御装置2によって定電流でのみ二次電池15を充電する点を主な特徴の一つとしている。
また、電源制御装置2は、二次電池システム3に対して送電して二次電池システム3を充電する充電装置であり、二次電池システム3に充電された電気を外部電源系統50側に送電する送電装置でもある。
電源制御装置2は、二次電池システム3の各組電池5に対して独立して充放電可能である。すなわち、電源制御装置2は、各組電池5と配線部材16を介して電気的に接続されており、組電池5単位で電圧を監視及び制御可能となっている。
また、二次電池15は、封入体27の内外に端子部材25,26が跨って配されている。すなわち、各端子部材25,26の一方の端部は、図4のように、封入体27の内部でそれぞれ正極部材10及び負極部材11と接続されており、他方の端部は、図3のように封入体27の外部に露出して配線部材16と接続可能となっている。
二次電池セル17は、図4のように、正極20、負極21、及びセパレータ22が積層された積層体である。すなわち、二次電池セル17は、正極20及び負極21によって電解質23を含んだセパレータ22を挟持した部分である。
正極部材10は、板状又はフィルム状の電極部材であり、その片面又は両面に正極20が形成されたものである。
正極20は、金属イオンの挿入・脱離が可能な活物質層31を備えるものであり、板状又はフィルム状の集電体30の両面又は片面上に正極活物質層31が積層されたものである。すなわち、正極20は、正極部材10の一部であって、集電体30上に正極活物質層31が積層された部分である。
正極部材10aは、集電体30の片面に正極活物質層31が形成されて正極20aが形成されている。正極部材10bは、集電体30の両面に正極活物質層31,31が形成されて正極20b,20cが形成されている。
すなわち、正極部材10aは、片面が電極となっており、正極部材10bは、両面が電極となっている。
正極活物質層31は、正極活物質を主要成分とするものであり、必要に応じて導電助材及び/又はバインダーが含まれている。
本実施形態の正極活物質層31は、正極活物質を主成分とし、導電助材及びバインダーが添加されている。
ここでいう「主要成分」とは、性能を決定する成分をいう。
ここでいう「主成分」とは、全体の50%以上占める成分をいう。
正極活物質の主成分は、リチウムマンガン酸化物、及びそのマンガンの一部を異種元素で置換した酸化物からなる群から選ばれる1種以上であることがより好ましい。正極活物質の主成分は、過充電に対して非常に耐性がある観点から、前記異種元素がニッケル、アルミニウム、マグネシウム、チタン、クロム、コバルト、鉄から選ばれる少なくとも1種を含む金属イオンであることが特に好ましい。
正極活物質層31の平均厚みが0.3mm以上であることにより、充電反応において金属イオンの拡散が律速状態となりやすく、二次電池15が充電終止電圧に到達した場合でも活物質層31に加わる電圧を充電終止電圧以下に留めることができる。そのため、充電終止電圧以上の過電圧が二次電池15にかかることによる材料破壊や電解質23の分解の加速を抑制できる。
集電体30の表面に形成された正極活物質層31の平均厚みは、1.5mm以下であることが好ましい。
この範囲であれば、拡散律速となっても、充電終止電圧まで充電したときの容量が正極20の単位重量当たりの固有の容量から算出される設計容量に対して下がりすぎない。
正極活物質層31の空隙率が15%未満の場合、イオン拡散が制限されすぎるので、良好な電池性能が得られにくい。
正極活物質層31の空隙率が60%超過の場合、活物質同士もしくは活物質と導電助材の接触不良になることがあり、電池性能が低下する恐れがある。
また、空隙率が大きい場合には体積エネルギー密度が低下するため、前記範囲内であることが好ましい。
負極部材11は、板状又はフィルム状の電極部材であり、その片面又は両面に負極21が形成されたものである。
負極21は、金属イオンの挿入・脱離が可能な活物質層41を備えるものであり、板状又はフィルム状の集電体40の両面又は片面上に負極活物質層41が積層されたものである。すなわち、負極21は、負極部材11の一部であって、集電体40上に負極活物質層41が積層された部分である。
負極部材11aは、集電体40の両面に負極活物質層41,41が形成されて負極21a,21bが形成されている。負極部材11bは、集電体40の片面に負極活物質層41が形成されて負極21cが形成されている。すなわち、負極部材11aは、両面が電極となっており、負極部材11bは、片面が電極となっている。
負極21aは、正極部材10aの正極20aの対極となっており、負極21bは、正極部材10bの正極20bの対極となっている。また、負極21cは、正極部材10bの正極20cの対極となっている。
負極活物質層41は、負極活物質を主要成分とするものであり、必要に応じて導電助材及び/又はバインダーが含まれている。
本実施形態の負極活物質層41は、負極活物質を主成分とし、導電助材及びバインダーが添加されている。
負極活物質の主成分は、リチウムチタン酸化物、及びリチウムチタン酸化物のチタンの一部を他の金属イオンで置換したものからなる群から選ばれる1種以上であることがより好ましい。負極活物質の主成分は、過充電に対して非常に耐性があり、より長寿命化に効果がある観点から、前記他の金属イオンがニオブであることが特に好ましい。
負極活物質層41の平均厚みが0.3mm以上であることにより、充電反応において金属イオンの拡散が律速状態となりやすく、二次電池15が充電終止電圧に到達した場合でも活物質層41に加わる電圧を充電終止電圧以下に留めることができる。そのため、充電終止電圧以上の過電圧が二次電池15にかかることによる材料破壊や電解質23の分解の加速を抑制できる。
集電体40の表面に形成された負極活物質層41の平均厚みは、1.5mm以下であることが好ましい。
この範囲であれば、充電終止電圧まで充電したときの容量が負極21の単位重量当たりの固有の容量から算出される設計容量から下がりすぎない。
空隙率が15%未満の場合、リチウムイオンの拡散が制限されすぎるため、良好な電池性能が得られにくい。
空隙率が60%超過の場合、活物質同士もしくは活物質と導電助材の接触不良になることがあり、電池性能が低下する恐れがある。
また、空隙率が大きい場合には体積エネルギー密度が低下するため、前記範囲内であることが好ましい。
集電体30,40を構成する導電性材料としては、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン、及びこれら少なくとも1種を含む合金又は導電性を有する高分子が挙げられる。
集電体30,40の形状としては、箔状、メッシュ状、パンチング状、エキスパンド状、又は発泡構造体が挙げられる。このような集電体に用いられる導電性材料は、電極作動電位で安定であればよい。本実施形態のようなリチウムイオン二次電池においては、作動電位がリチウム金属基準で0.7V以下では、銅およびその合金が好ましく、0.7V以上ではアルミニウムおよびその合金が好ましい。
正極活物質層31及び負極活物質層41を構成するバインダーは、結着性があり、水又は有機溶媒に分散可能なものであれば、特に限定されない。
バインダーは、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、ポリアクリル酸エステル、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリイミド(PI)およびそれら誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。これらに分散剤、増粘剤を加えても良い。
正極活物質層31及び負極活物質層41を構成する導電助材は、特に限定されないが、炭素材料又は/及び金属微粒子が好ましい。
炭素材料として、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブ、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンブラック、またはファーネスブラックなどが挙げられる。
金属微粒子としては、例えば、銅、アルミニウム、ニッケルおよびこれら少なくとも1種を含む合金が挙げられる。
また、無機材料の微粒子にめっきを施したものでも良い。これら炭素材料および金属微粒子は1種類でも良いし、2種類以上用いても良い。
セパレータ22は、電解質23が含浸したものであり、多孔質材料又は不織布等が挙げられる。
セパレータ22の材質としては、電解質23を構成する有機溶媒に対して溶解しないものが好ましく、具体的にはポリエチレンもしくはポリプロピレンなどのポリオレフィン系ポリマー、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系ポリマー、セルロース、またはガラスなどの無機材料が挙げられる。
1μm未満であるとセパレータ22の機械的強度の不足により破断し、内部短絡する傾向がある。
一方、500μmより厚い場合、電池15の内部抵抗と、正極20及び負極21の電極間距離が増大することにより、電池15の負荷特性が低下する傾向がある。より好ましい厚みは、10μm以上300μm以下である。
電解質23は、金属イオン伝導性をもち、各正極20及び各負極21との間で電気伝導に伴って金属イオンの挿入・脱離が可能な電解質である。また電解質23は、水を実質的に含まない非水電解質である。
電解質23は、特に限定されないが、非水溶媒に溶質を溶解させた電解液、非水溶媒に溶質を溶解させた電解液を高分子に含浸させたゲル電解質、固体電解質、イオン液体とシリカ微粒子を混合し、疑似固体化した固体電解質などを用いることができる。
本実施形態の電解質23は、非水溶媒に溶質を溶解させた非水電解質であって、液体状の電解液であり、封入体27内に充填されている。
この環状の非プロトン性溶媒としては、環状カーボネート、環状エステル、環状スルホンまたは環状エーテルなどが例示される。
一方、鎖状の非プロトン性溶媒としては、鎖状カーボネート、鎖状カルボン酸エステルまたは鎖状エーテルなどが例示される。
より具体的には、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、スルホラン、ジオキソラン、またはプロピオン酸メチルなどを用いることができる。これら溶媒は1種類で用いてもよいし、2種類以上混合して用いてもよいが、後述の溶質の溶解させやすさ、リチウムイオンの伝導性の高さから、2種類以上混合した溶媒を用いることが好ましい。
また、高分子に電解液またはイオン液体をしみこませたゲル状電解質、疑似固体電解質および硫黄系固体電解質も用いることができる。
電解質23に含まれる溶質の濃度は、0.5mol/L以上2.0mol/L以下であることが好ましい。
電解質23に含まれる溶質の濃度が0.5mol/L未満では所望のイオン伝導性が発現しない場合がある。
一方、電解質23に含まれる溶質の濃度が2.0mol/Lより高いと、溶質がそれ以上溶解しない場合がある。
なお、電解質23には、難燃剤、安定化剤などの添加剤が微量含まれてもよい。
電解質23の量が0.1mL未満の場合、電極反応に伴うイオンの伝導が追いつかず、所望の電池性能が発現しない場合がある。
なお、電解質23として固体電解質を用いる場合には、そのまま加圧成形しても良いし、前述の電極20,21に用いたバインダーを使用し、シート状に成形して使用しても良い。
正極20aの正極活物質層31は、電解質23を含んだセパレータ22を挟んで、負極21aを構成する負極活物質層41と対向している。正極20bの正極活物質層31は、電解質23を含んだセパレータ22を挟んで、負極21bを構成する負極活物質層41と対向している。正極20cの正極活物質層31は、電解質23を含んだセパレータ22を挟んで、負極21cを構成する負極活物質層41と対向している。
正極部材10a,10bを構成する集電体30,30の端部は、互いに接触しており、正極部材10a,10bのうち一方の正極部材10が端子部材25と接続されている。
同様に、負極部材11a,11bの集電体40,40の端部は、互いに接触しており、負極部材11a,11bのうち一方の負極部材11が端子部材26と接続されている。
電解質23は、封入体27の内部に充填されており、各セパレータ22は電解質23が含浸している。
このときの充電レートは、1/16C(16分の1C)以上であることが好ましく、1/12C(12分の1C)以上であることがより好ましい。
また充電レートは、1C以下であることが好ましく、1/2C(2分の1C)以下であることがより好ましく、1/4C(4分の1C)以下であることがさらに好ましい。
これらの範囲であれば、充電に時間がかかりすぎず、二次電池15の構成部材に負荷がかかりすぎない。
本実施形態では、1/8C(8分の1C)で充電している。
ここでいう「1C」とは、既知の容量を持つセルを定電流放電して,1時間で放電終了となる電流値をいう。
ここでいう「設計容量」とは、正極20及び負極21の単位重量当たりの固有の容量から算出される容量をいう。
同様に、組電池5を構成する各二次電池15は、1/8Cの充放電レートで充放電サイクルを80サイクル行った場合の充放電サイクル前の容量に対する充放電サイクル後の容量の低下率は、2%以下であり、1%以下であることが好ましく、0%であることがより好ましい。すなわち、二次電池15は、1/8Cの充放電レートで充放電サイクルを80サイクル行う条件では、見かけ上容量低下がない。
同様に組電池5を構成する二次電池15は、1/8Cの充放電レートで充放電サイクルを100サイクル行った場合の充放電サイクル前の容量に対する充放電サイクル後の容量の低下率は、2%以下であり、1%以下であることが好ましく、0%以下であることがより好ましい。すなわち、二次電池15は、1/8Cの充放電レートで充放電サイクルを100サイクル行う条件では、見かけ上容量低下がない。
ここで、二次電池15の充電後期の電圧の上昇は、電池反応に寄与する金属イオンの拡散に起因する拡散抵抗による上昇と、二次電池内部での材料間の接触抵抗による上昇を含んでいる。
本実施形態の二次電池15では、電極活物質層31,41の平均厚みが0.3mm以上と厚いため、電池反応に寄与する金属イオンの拡散に起因する拡散抵抗が大きく、充電後期における電圧上昇率が大きい。そのため、各二次電池15が見かけ上充電終止電圧以上の過充電状態になっても、実際の二次電池15の内部の活物質層31,41には、充電終止電圧以下の電圧が印加されている。そのため、二次電池15の内部の活物質層31,41は、過電圧に至ることによる材料破壊や電解質23の分解の加速が抑制され、見かけ上容量低下がなかったと考えられる。
ここでいう「満充電容量」とは、電池の定格容量であって、それ以上の電気を蓄えることは電池の使用上推奨されないという量のことである。
このことから、仮に二次電池15の劣化により、実際の満充電容量が例えば100から90に低下したとしても、そもそも80までしか充電しないから、満充電容量が90に至るまでに満充電となる。そのため、二次電池15の劣化が見かけ上容量に反映されず、見かけ上容量低下がなかったと考えられる。
また本実施形態の蓄電装置1によれば、組電池5を構成する二次電池15間で充電終止電圧にばらつきがある場合でも、特定の二次電池15が過電圧にならず、長期間において安定した状態を維持できる。すなわち、蓄電装置1によれば、各二次電池15が過電圧耐性に優れ、全体として長寿命な蓄電装置となる。
しかしながら、本発明の長寿命、高安全という特長に鑑みると、上記した実施形態のように商用電源を含む外部電源系統50に系統連系されて用いることが好ましい。
ここで、チタンを含む酸化物を負極活物質として使用する場合、充放電の際に、チタンを含む酸化物において、異常活性点が発生することがある。この異常活性点が発生すると、電解質23の溶媒が分解してガスが発生する場合がある。
そのため、その対をなす正極20は、一定の充電状態で発生したガスを吸収する能力があるリチウムコバルト酸化物を主成分とする正極活物質を含むことが好ましい。
しかし、正極20は、このリチウムコバルト酸化物を主成分とする正極活物質を含むと、過充電に対し脆弱となる。
そこで、本発明の効果を奏さしめつつ、このようなガス発生を抑制せしめる観点から、二次電池15として、リチウムコバルト酸化物を含んだ正極と、他の種類の活物質を塗布した正極を使用し、これらの電極を電気的に絶縁した状態で同時に一定電流まで充電した後に、リチウムコバルト酸化物を含んだ正極を切り離すことが好ましい。
具体的には、他の種類の正極たる第1の正極として、リチウムマンガン酸化物およびそのマンガンの一部を異種元素で置換した酸化物からなる群から選ばれる1種以上の正極活物質を主成分とする正極を使用する。第2の正極としてリチウムコバルト酸化物を含んだ正極を使用する。すなわち、第1の正極に通常の充放電の機能を担わせ、第2の正極にガスを吸収する機能を担わせる。そして、第2の正極を第1の正極と電気的に分離されておき、第1の正極と第2の正極を同時に一定電流まで充電した後に、第2の正極を電気的に切り離す。
こうすることによって、充電状態の第2の電極を電池内に存在させ、リチウムコバルト酸化物を主成分とする正極活物質を含んだ第2の電極によって、二次電池中に発生したガスを吸収させることができる。
二次電池は、正極/セパレータ/負極からなる二次電池セルを巻回したものであってもよい。
二次電池15が二次電池セル17を巻回したものである場合には、巻回した後に封入体27であるラミネートフィルムで外装してもよい。
また、二次電池セル17を巻回した後、又は積層した後に、角形、楕円形、円筒形、コイン形、ボタン形、シート形の金属缶で外装してもよい。
電解質23としてゲル状の非水電解質を使用する場合は、電解質23が正極20及び負極21に含浸していてもよいし、正極20・負極21間のみにある状態でもよい。また、ゲル状の電解質23により正極20・負極21間が直接接触していなければ、セパレータ22を使用しなくてもよい。
例えば、二次電池15の電極は、集電体の片面に正極活物質層31、もう片面に負極活物質層41を形成させた形態であってもよい。すなわち、二次電池の電極は、正極20及び負極21をそれぞれ両面にもつバイポーラ電極であってもよい。
二次電池の電極をバイポーラ型の電極とする場合には、集電体を介した正極と負極の液絡を防止するため、絶縁材料が正極と負極間に配置されることが好ましい。
また、二次電池の電極をバイポーラ電極とする場合は、隣り合うバイポーラ電極の正極と負極との間にセパレータを配置し、正極と負極とが対向した層内は、液絡を防止するため、正極および負極の周辺部に絶縁材料が配置されることが好ましい。
二次電池システム3は、所望の大きさや電圧によって、電源制御装置2に対して所望数の組電池5を適宜直列接続してもよいし、電源制御装置2に対して所望数の組電池5を適宜並列接続してもよい。
また、並列の個数には、特に制限がなく、使用する用途によって自由に設計することができる。
一の組電池5をリチウムイオン二次電池で構成し、他の組電池5をナトリウムイオン二次電池で構成してもよい。また、各組電池5の容量を異ならせてもよい。
電極活物質であるLi1.1Al0.1Mn1.8O4(以下、LAMOともいう)、LiNi0.5Mn1.5O4(以下、LiNiMOともいう)、又はLi4Ti5O12(以下、LTOともいう)の各々の粉末100重量部に対して、導電助材(アセチレンブラック)を6.8重量部、バインダーを固形分換算で6.8重量部混合して、各々の電極活物質に対応する活物質混合物を調製した。そして、この混合物を用いて電極を作製し、更にこれらの電極を組み合わせて二次電池を作製した。
各々の電極活物質は、以下の方法で製造した。
すなわち、二酸化マンガン、炭酸リチウム、水酸化アルミニウム、およびホウ酸の水分散液を調製し、スプレードライ法で混合粉末を得た。
このとき、二酸化マンガン、炭酸リチウムおよび水酸化アルミニウムの量は、リチウム、アルミニウム、及びマンガンのモル比が1.1:0.1:1.8となるように調製した。次に、この混合粉末を空気雰囲気下900℃で12時間加熱した後、再度650℃で24時間加熱した。最後に、この粉末を95℃の水で洗浄後、乾燥させることによって正極活物質の粉末を得た。
すなわち、まず水酸化リチウム、酸化水酸化マンガン、及び水酸化ニッケルをリチウム、マンガン、及びニッケルのモル比が1:1.5:0.5となるように混合した。次に、この混合物を空気雰囲気下550℃で加熱した後に、再度750℃で加熱することによって正極活物質の粉末を得た。
すなわち、まず二酸化チタンと水酸化リチウムを、チタンとリチウムとのモル比を5:4となるように混合した。次に、この混合物を窒素雰囲気下800℃で12時間加熱することによって負極活物質の粉末を得た。
活物質混合方法および電極作製方法を以下に示す。
その後に、170℃で真空乾燥することにより電極を作製した。乾燥後のアルミニウムエキスパンドメタルを含む電極の厚さはおよそ1.0mmであった。
LAMOまたはLiNiMOを正極として使用し、LTOを負極として使用した。
次に、正極及び負極に引き出し電極となるアルミニウムタブを振動溶接させた後に、このタブ付きの積層体を袋状のアルミラミネートシートに入れた。
正極及び負極の容量の測定には、負極としてリチウム金属電極を用い、ステンレス製シートにリチウム金属を圧着させることにより作製した電極に、ニッケルタブを振動溶接したものを使用した。
前記積層体入りの袋の中に、非水電解液(プロピレンカーボネート/エチルメチルカーボネート=3/7vol%、LiPF6 1mol/L)を入れた後に、袋の出口を引き出し電極ごと熱封止することによって非水電解質二次電池を作製した。
この二次電池を充放電することにより測定される、各電極が持つ単位重量当たりの固有の容量は、LAMOは100mAh/g、LiNiMOは130mAh/g、LTOは165mAh/gであった。
正極にLAMO又はLiNiMOを、負極にLTOを用いた二次電池を、単独で、又は同じ種類の二次電池同士を直列接続した組電池として、外装の外側から金属板で挟んだ状態で、8時間で充電又は放電が終わる電流値(1/8Cレート)で充放電サイクル試験を行った。すなわち、前記組電池は、前記直列接続の任意の点に流れる電流IC(CHARGE)であって、含まれる二次電池に共通に流れる電流ICを1/8Cとして、含まれる全ての二次電池を充放電した。
この単電池又は組電池の充電終止電圧、放電終止電圧、実測/設計容量比、容量維持率の値を表1に示す。
実施例1〜5は、正極にLAMO、負極にLTOを用いた二次電池(以下、LTO/LAMO二次電池ともいう)であり、いずれも正極の厚み及び負極の厚みが0.3mm以上とした。実施例1〜5では、正極及び負極の空隙率をいずれも35%とした。
実施例1〜4では、単電池として使用しており、実施例5では、5つの単電池を直列に接続した組電池を使用した。
実施例1〜5の二次電池では、2.8Vの充電終止電圧に到達した際に、実測の容量は、単位重量当たりの固有の容量から計算される設計容量よりも小さい値となった。
これは、電池反応に関わるリチウムイオンの拡散が追い付かず、電解液中のリチウムイオンの濃度分極により、実測される電圧値が大きくなったことによると考えられる。すなわち、実施例1〜5は、充電反応がリチウムイオンの拡散律速となっており、この拡散抵抗の分、実測される電圧値が大きくなったことによると考えられる。
また、実施例1〜5は、上記した測定条件での容量維持率が100サイクル後も100%を示した。
すなわち、実施例1〜5は、電解液中の濃度分極と、電池内部抵抗を含む条件下では、二次電池に発生する電圧が、見かけ上、充電終止電圧以上の過充電状態になっても、実際には、活物質層の材料には充電終止電圧以下の電圧しかかかっていない。そのため、材料破壊や電解液の分解の加速は抑制されたと考えられる。それ故に、実施例1〜5は、長寿命な二次電池として使用することができる。
二次電池を直列接続した場合、充電終止時にそれぞれの二次電池の電圧が異なると予想されるが、単電池の場合と同様に電解液の濃度分極による電圧上昇を含んでいる。そのため、材料破壊や電解液分解反応が起こらず、容量低下は見られなかったと考えられる。
実施例6,7は、正極にLiNiMO、負極にLTOを用いた二次電池(以下、LTO/LiNiMO二次電池ともいう)であり、いずれも正極の厚み及び負極の厚みが0.3mm以上とした。実施例6,7では、正極及び負極の空隙率をいずれも35%とした。
実施例6,7のLTO/LiNiMO二次電池は、定電流制御、充電終止電圧3.5Vの条件下で充放電サイクル試験を行った場合も、リチウムイオン拡散の影響により、設計容量に対して100%の容量は発現せず、容量維持率は良好であった。
比較例1,3は、正極にLAMO、負極にLTOを用いたLTO/LAMO二次電池であり、いずれも正極の厚み及び負極の厚みが0.2mmとした。比較例1,3では、正極及び負極の空隙率をいずれも35%とした。
比較例1では、このLTO/LAMO二次電池を単電池として使用しており、比較例3では、この単電池を5つ直列に接続した組電池を使用した。
比較例1,3では、実測/設計容量比が100%となり、容量を設計容量通りに取り出すことができた。これは、電極の厚みが薄いので、電解液の濃度分極が充電後期の電圧の立ち上がりに寄与する部分が小さく、大きな濃度分極が発生する前に活物質中の全てのリチウムイオンが脱離、又は挿入している。そのため、設計容量どおりの容量を取り出すことができたと考えられる。
また、比較例1のように単電池のみかつ定電流制御で充放電を行った場合には、容量維持率は良好であったが、比較例3に示すように当該二次電池を5個直列接続した場合には、容量維持率が低下した。このことは、直列した各二次電池の電圧上昇が均一ではないことに加え、電解液の濃度分極の影響が極めて小さい。このため、先に充電終止電圧に到達した二次電池の負荷が大きくなり、活物質の劣化や電解液分解反応が起こることで、容量維持率が低下したと考えられる。
比較例2では、正極及び負極の空隙率をいずれも35%とした。
また比較例2では、5つの単電池を直列に接続して組電池とし、この組電池を充電する際に、充電終止電圧に到達するまで定電流で充電し、充電終止電圧に到達すると、充電終止電圧で電流値が1/40Cとなるまで定電圧で充電した(CCCV)。
この比較例2では、充電完了時に実測/設計容量比が100%となり、容量を設計容量通り取り出せているものの、容量維持率は低下した。
これは、直列接続した各二次電池の電圧上昇にばらつきがあり、先に電圧が上がった二次電池に負荷がかかり、活物質の劣化や電極表面の電解液の分解により容量が減少したことに起因すると考えられる。
また、比較例4では、正極及び負極の空隙率をいずれも10%とした。
比較例4では、充電完了時に実測/設計容量比が72%となり、容量維持率も92%と低下した。これは、比較例4のLTO/LAMO二次電池では、電極の空隙率を小さくすることで電解液中の金属イオンの拡散速度が遅くなる。そのため、設計容量を発現させることが困難になることに加え、局部的な反応が起こりやすくなったためと考えられる。
2 電源制御装置
5 組電池
10 正極部材
11 負極部材
20 正極
21 負極
22 セパレータ
23 電解質
31 正極活物質
41 正極活物質
50 外部電源系統
Claims (10)
- 二次電池と、前記二次電池を充電する充電装置を備えた蓄電装置であって、
前記二次電池は、正極と、負極と、前記正極及び前記負極に挟まれる非水電解質を有し、
前記二次電池は、金属イオンが非水電解質を介して前記正極及び前記負極との間を金属イオンが移動可能であって、前記正極及び前記負極がそれぞれ前記非水電解質との間で前記金属イオンの挿入・脱離反応が起こって充放電可能であり、
前記正極及び前記負極は、いずれも平均厚みが0.3mm以上の活物質層を備えており、
前記充電装置は、前記二次電池に電気的に接続され、充電時に前記二次電池に対して定電流のみで充電するものであり、
前記充電装置によって充電終止電圧まで充電したときの前記二次電池の容量は、前記正極及び前記負極の単位重量当たりの固有の容量から算出される設計容量の80%以上97%以下であり、
前記二次電池は、前記活物質層の空隙率がそれぞれ15%以上であることを特徴とする蓄電装置。 - 放電終止電圧から充電終止電圧の範囲において、8時間で充電又は放電が終わる電流値で充放電サイクルを80サイクル行ったときに、充放電サイクル前の二次電池の容量に対する容量の低下が2%以下であることを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置。
- 複数の前記二次電池が直列接続された組電池を有し、
前記充電装置は、前記組電池単位で各二次電池を充電することを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄電装置。 - 前記組電池を複数有し、
前記充電装置は、充電時に前記組電池単位で電圧の監視及び制御を行うことを特徴とする請求項3に記載の蓄電装置。 - 外部電源系統に連系可能であり、
前記外部電源系統側に送電可能であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の蓄電装置。 - 前記二次電池は、定電流又は定電流以外で放電可能であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の蓄電装置。
- 前記非水電解質は、溶質を溶媒で溶かした非水電解液であり、
前記溶媒は、炭酸塩であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の蓄電装置。 - 前記溶質は、リチウムとハロゲンを含む化合物であることを特徴とする請求項7に記載の蓄電装置。
- 前記負極の活物質層は、リチウムチタン酸化物、及びリチウムチタン酸化物のイオンの一部を別の金属イオンで置換したものから選ばれる少なくとも1種以上の負極活物質を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の蓄電装置。
- 前記正極の活物質層は、リチウムマンガン酸化物、及びリチウムマンガン酸化物のイオンの一部を別の金属イオンで置換したものから選ばれる少なくとも1種以上の正極活物質を含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の蓄電装置。
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