JP6781561B2 - プロピオン酸系非ステロイド性消炎鎮痛薬を含有した医薬組成物 - Google Patents

プロピオン酸系非ステロイド性消炎鎮痛薬を含有した医薬組成物 Download PDF

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Description

本発明は、プロピオン酸系非ステロイド性消炎鎮痛薬、トラネキサム酸、及びアンブロキソール塩酸塩を含有する医薬組成物に関する。
非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAIDs:Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs)は、ステロイド構造以外の抗炎症作用、解熱作用、鎮痛作用を有する薬物の総称である。プロピオン酸系非ステロイド性消炎鎮痛薬であるイブプロフェンやロキソプロフェンも、他のNSAIDsと同様にプロスタグランジン生合成の抑制作用に基づく作用を有する(例えば、非特許文献1参照)。
トラネキサム酸は、抗プラスミン作用に基づく止血効果、抗アレルギー・抗炎症作用に基づく蕁麻疹や口内炎・咽頭炎への効果が知られている(例えば、非特許文献2参照)。
アンブロキソールは、肺表面活性物質の分泌促進作用、気道液の分泌促進作用、線毛運動亢進作用による去痰効果、および、副鼻腔炎の排膿促進作用が知られている(例えば、非特許文献2参照)。
これまでに、イブプロフェン、トラネキサム酸、ブロムヘキシン塩酸塩、他を含有する医薬組成物が開示されている(例えば、特許文献1の製剤例参照)。また、ロキソプロフェン、トラネキサム酸、ブロムヘキシン塩酸塩、他を含有する医薬組成物が開示されている(例えば、特許文献2の実施例13、24参照)。しかし、イブプロフェン又はロキソプロフェンと、トラネキサム酸、アンブロキソールを含有する組成物は知られていない。
特開2006−124380公報 特開2011−246437公報
薬理と治療 Vol.16 No.2 1988 p.611-619 JAPIC 医療用医薬品集2013 丸善 2012
本発明の課題は、プロピオン酸系非ステロイド性消炎鎮痛薬の優れた抗炎症作用、解熱作用、鎮痛作用等を減弱することなく、優れた去痰作用を併せ持つ医薬組成物を提供することである。
本発明者らは、本研究を鋭意進めてゆくなかで、プロピオン酸系非ステロイド性消炎鎮痛薬にアンブロキソール塩酸塩を併用すると、プロピオン酸系非ステロイド性消炎鎮痛薬の抗炎症作用が弱まってしまうという課題を見出し、トラネキサム酸を加えると、この課題が解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記(1)〜(5)に関する。
(1)プロピオン酸系非ステロイド性消炎鎮痛薬、トラネキサム酸又はその塩、及びアンブロキソール又はその塩を含有する医薬組成物。
(2)プロピオン酸系非ステロイド性消炎鎮痛薬が、イブプロフェン又はロキソプロフェンナトリウム水和物である(1)に記載の医薬組成物。
(3)トラネキサム酸又はその塩が、トラネキサム酸である(1)または(2)に記載の医薬組成物。
(4)アンブロキソール又はその塩が、アンブロキソール塩酸塩である(1)乃至(3)のいずれか1に記載の医薬組成物。
(5)感冒用に用いられる(1)乃至(4)のいずれか1に記載の医薬組成物。
本発明によれば、プロピオン酸系非ステロイド性消炎鎮痛薬の優れた抗炎症作用、解熱作用、鎮痛作用等を減弱することなく、優れた去痰作用を併せ持つ医薬組成物を提供することができる。したがって、本発明の組成物は、感冒の諸症状に有効である。
図1は、浮腫率総和(AUC)の結果である。
本発明のロキソプロフェン又はその塩は、例えば、ロキソプロフェンナトリウム水和物として第16改正日本薬局方に掲載されており、イブプロフェンも同様に第16改正日本薬局方に掲載されている。
本発明のトラネキサム酸又はその塩は、例えば、トラネキサム酸として第16改正日本薬局方に掲載されている。また、本発明のアンブロキソール又はその塩は、例えば、アンブロキソール塩酸塩として、医薬品として市場に広く供されており、容易に入手できる。
本発明において、「感冒」とは、普通感冒を意味し、発熱、悪寒、頭痛、のどの痛み、鼻水、鼻づまり、せき、たん、関節の痛み、筋肉の痛み、くしゃみ等の症状を呈するものである。
本発明における、イブプロフェンの組成物中の配合量は、1回あたり50〜600mgであり、好ましくは、1回あたり100〜300mgである。これを1日1〜3回投与する。また、ロキソプロフェンナトリウム水和物の組成物中の配合量は、1回あたり20〜200mgであり、好ましくは、1回あたり40〜120mgである。これを1日1〜3回投与する。
本発明における、トラネキサム酸の組成物中の配合量は、1回あたり100〜1000mgであり、好ましくは、1回あたり200〜700mgである。また、アンブロキソール塩酸塩の組成物中の配合量は、1回あたり5〜50mgであり、好ましくは、1回あたり10〜30mgである。これを1日1〜3回投与する。
本発明の組成物には上記成分以外にも、本発明内容を損なわない範囲で、通常、解熱鎮痛薬及びかぜ薬の用途に適した薬効成分も適宜配合することができる。
このような薬効成分としては、例えば、各種ビタミン類(ビタミンA、D、E、K、Uなどの脂溶性ビタミン類、ビタミンB、C、Pなどの水溶性ビタミン類)、鎮咳薬(例えば、アクロラミド、クロペラスチン、ペントキシベリン、チペピジン、デキストロメトルファン、ノスカピン、コデイン、ジヒドロコデイン、又はそれらの塩等)、交感神経刺激薬(例えば、エフェドリン、メチルエフェドリン、メトキシフェナミン、プソイドエフェドリン、アドレナリン(エピネフィリン)、又はそれらの塩等)、副交感神経遮断薬(例えば、ヨウ化イソプロパミド、ベラドンナアルカロイド、ベラドンナエキス、ロートエキス、ダツラエキス等)、中枢神経興奮薬(例えば、アミノフィリン、テオフィリン、ジプロフィリン、プロキシフィリン、カフェイン等)、抗アレルギー薬又は抗ヒスタミン薬(例えば、ジフェニルピラリン、ジフェンヒドラミン、プロメタジン、カルビノキサミン、アリメマジン、クロルフェニラミン、メキタジン、フェキソフェナジン、オロパタジン、セチリジン、アゼラスチン、プランルカスト、モンテルカスト又はそれらの塩等)。生薬(例えば、マオウ、ナンテンジツ、カンゾウ、ケイヒ、ニンジン、ショウキョウ、又はそれらの塩、並びにそれらの誘導体等)、制酸薬(例えば、アミノ酢酸、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム等)などが例示できる。これら薬効成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
本発明の組成物は、経口投与の固形製剤として製剤化することができる。経口投与の固形製剤としては、例えば、錠剤や顆粒剤が挙げられる。錠剤や顆粒剤は、日本薬局方などに記載される「錠剤」や「顆粒剤」に従って製造することができる。例えば、顆粒剤は、押出造粒、噴霧造粒などにより薬効成分を造粒子、必要により整粒することにより製造することができる。錠剤は、直打あるいは前記造粒物と添加剤とを混合して圧縮成形し、必要に応じて、フィルムコーティングあるいは糖衣を施して製造することができる。なお、錠剤や顆粒剤などの固形製剤は、通常、添加物を用いて調整される。
本発明において用いられる添加物は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜加えればよく、例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤等を挙げることができる。
賦形剤としては、結晶セルロース、粉末セルロース、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、二酸化ケイ素、沈降炭酸カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、酸化マグネシウム、乳酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、合成ケイ酸アルミニウム、ショ糖脂肪酸エステル、硬化油、乳糖、白糖、D−マンニトール、エリスリトール、トレハロース、ブドウ糖、果糖等を挙げることができる。
崩壊剤としては、例えば、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、アルギン酸、部分アルファー化デンプン、ベントナイト等を挙げることができる。
結合剤としては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニールアルコール、ポビドン、マクロゴール、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニールポリマー、ゼラチン、デキストリン、ペクチン、ポリアクリル酸ナトリウム、プルラン等を挙げることができる。
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、硬化油等を挙げることができる。これら製剤添加物は、1種又は2種以上を組み合わせて用いても良い。
本発明において用いられるコーティング剤としては、例えば、糖類、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリオキシエチレングリコール、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートおよびオイドラギット(メタアクリル酸・アクリル酸共重合体など)などが用いられる。コーティング剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートなどの腸溶性成分であってもよく、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートなどの塩基性成分を含むポリマー(オイドラギットなど)で構成された胃溶性成分であってもよい。
上記以外の経口投与剤型(例えば、液剤やシロップ剤など)においても、日本薬局方などに記載される「液剤」や「シロップ剤」等に従い、適宜、製造することができるが、液剤やシロップ剤においては、保存安定性や矯味性の向上を目的として必要に応じ、抗酸化剤、溶解剤、懸濁化剤、pH調整剤、甘味料等を添加することができる。
本発明の医薬組成物は、本発明に係る複数の成分を含む単一の製剤として製し、これを投与(服用)してもよいし、また本発明に係る各成分を分けて別の製剤とし、それら製剤を同時又は順次投与(服用)可能としたキット製剤としてもよい。
また、有効成分の組み合わせで配合変化が生じる場合には、適宜、顆粒分け等で互いに接触しない等、周知の製剤化方法を採用すればよい。
以下に、試験例及び製剤例をあげて本発明を更に具体的に説明するが、これらに限定される必要はない。
(試験例)イブプロフェンによる浮腫抑制試験
(1)被検物質
イブプロフェンはAlbemarle Corporation製のものを、トラネキサム酸は第一ファインケミカル製のものを、アンブロキソール塩酸塩は陽進堂製のものを、それぞれ使用した。媒体として、関東化学製のカルボキシメチルセルロースナトリウム(以下、CMCと称すことがある)を大塚製薬工場製の日局注射用水で希釈して0.5%としたCMC水溶液を使用した。被験薬は表1の通りであり、投与液量はいずれの群も同じ10ml/Kgとした。
(2)試験動物と試験方法
4週齢のラット(Slc:SD)を日本エスエルシーより購入して、検疫・馴化した後に使用した。動物は22±3℃、湿度50±20%、照明時間8:00〜20:00の環境下で飼育馴化した。試験前日の夕方より16時間以上絶食させ、実験当日は朝より絶水した。絶食・絶水は起炎物質投与後5時間の足容積測定時まで継続した。
表3の被験薬を、ディスポーザブル経口ゾンデ(フチガミ器械製)を装着した注射筒に充填して同じ投与液量で10mL/Kg投与した。
起炎物質として、カラゲニン(和光純薬製)と注射用水(大塚製薬工場製)で1%カラゲニン生理食溶液を調製した。被験薬投与30分後に26Gの注射器(テルモ製)に充填した起炎物質0.1mLを右後肢皮下に投与した。
起炎物質投与前、起炎物質投与後3、4及び5時間の4時点について右後肢容積を、ラット用足容積測定装置(室町機械製)を用いて測定した。得られた足容積より、浮腫率を次式で求めた。また、浮腫率総和(AUC)は台形公式により算出した。
浮腫率(%)=100×(起炎物質投与後足容積−投与前足容積)/投与前足容積
(3)試験結果
浮腫率総和(AUC)の結果を図1に示す(n=5)。図より、被験薬B〜Gいずれも被験薬A群(媒体のみ)と有意な浮腫抑制効果が発現していることが認められた(Dunnett法:p<0.01)。
イブプロフェンとトラネキサム酸を併用(被験薬E)しても抗炎症効果の上乗せは発現しない。なお、アンブロキソールは優れた去痰作用を有する薬剤であり、感冒薬に配合できれば有用であるが、イブプロフェンとアンブロキソールの併用(被験薬F)では拮抗作用となりイブプロフェンの抗炎症作用が減弱するというさらに意外な結果が得られた。
一方、イブプロフェンとアンブロキソールの併用における拮抗作用は、更にトラネキサム酸を併用(被験薬G)することによって解消されることが判明した。本併用結果は、アンブロキソール群(被験薬D)よりも有意な浮腫抑制効果が発現していることが認められた($:t検定でp<0.05)。
(製剤例)
(製剤例:錠剤)
下記成分および分量をとり、日局製剤総則「錠剤」の項に準じて錠剤を製造する。(成分量は1日量(mg))。
(製剤例:コーティング製剤)
下記成分及び分量をとり、日局製剤総則「錠剤」の項に準じて製造した錠剤に、コーティングを施してコーティング製剤を製造する。(成分量は1日量(mg))。
(製剤例:糖衣製剤)
下記成分及び分量をとり、日局製剤総則「錠剤」の項に準じて製造した錠剤に、コーティングを施して糖衣製剤を製造する。(成分量は1日量(mg))。
(製剤例:顆粒剤)
下記成分および分量をとり、日局製剤総則「顆粒剤」の項に準じて顆粒剤を製造する。(成分量は1日量(mg))。

Claims (4)

  1. イブプロフェン、トラネキサム酸又はその塩、及びアンブロキソール又はその塩を含有する医薬組成物。
  2. トラネキサム酸又はその塩が、トラネキサム酸である請求項1に記載の医薬組成物。
  3. アンブロキソール又はその塩が、アンブロキソール塩酸塩である請求項1または2に記載の医薬組成物。
  4. 感冒用に用いられる請求項1乃至のいずれか1項に記載の医薬組成物。
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