JP6778663B2 - 防潮壁 - Google Patents
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Description
透明板10’は一般に四辺形状のもので、特許文献1では図9(a)のように、最上辺を除く3辺を上記の枠体20’内に挿入することにより、コンクリート製の堤2’の上部に取り付けている。同文献1にはまた、同様の枠体内に全周(4辺)を挿入した状態の透明板を、コンクリート製の堤の中ほど(全周をコンクリートに囲まれる位置)に設ける例も示されている。
特許文献1には、透明板を枠体内に入れてコンクリートの堤の上面に載せ、枠体をアンカーボルトで留めるとともに支柱で支えることにより、堤の上部に透明板を連続的に並べて配置する例も示されている。しかし、アンカーボルトと支柱によって透明板を十分な強度で支持することは必ずしも容易でなく、相当のコストを要するため、現実的には防潮壁の嵩上げ工事に適していると言いがたい。
発明の一例を、図1(a)(b)に示している。上記した「他の二つの透明板の間に配置された透明板」とは、図1(a)に示す透明板10をさし、連続的配置の起点にあたる図示両端の透明板11(下方縁部とともに側方の他の縁部をも堤の溝に挿入して固定されている)を除いたものである。
なお、樹脂製の透明板としては、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリロニトリルースチレン共重合樹脂、メタクリル酸メチルースチレン共重合樹脂、アクリロニトリルーブタジエン共重合樹脂、ポリカーボネート樹脂およびアクリル樹脂から選ばれる熱可塑性樹脂等を使用できる。樹脂板に代えてガラス板(強化ガラス板等)を使用してもよい。樹脂板またはガラス板が複数枚積層されてできた透明板や、積層された板の間に強化用のメッシュ(網)がはさまれている板も、使用可能である。
透明板が連続する区間の外側にコンクリートの壁(図1(a)における符号2aの部分)を設けずに、既設のコンクリート壁の上部に透明板のみを連続して配置する嵩上げ工事において上記の構成を採用することも可能である。その場合、嵩上げ工事はとくに簡単化され低コストで施工される。
そのようにした例を図3(a)に示す。「面間の寸法を増大させることにより上記透明板の縁部を当該隙間の内側に拘束する拘束手段」としては、図中に例示するネジ式のジャッキのようなもののほか、流体圧を使用するジャッキ類、くさび(ウェッジ)、または各種の膨張材料を使用することができる。
上記で紹介した図3(a)例でも、横断面形状が略U字状の金属枠体20は、横断面形状がL字状の金属板21・22を重ね合わせることにより形成している。
挿入深さが大きい場合に、上記した略U字状の横断面をもつ金属枠体を使用するためには、当然ながら、深いU字状の窪みを金属枠体に形成する必要がある。しかし、強度面で有利であり低コストでもある鋼板等によってその金属枠体を形成するとなると、十分な深さの窪みをもつ金属枠体を、1枚の板からプレス加工等にて製造することは容易でなく、コストアップにつながる。
その点、上記のように、L字状の金属板(鋼板等)を重ね合わせることによって略U字状の横断面形状をもつ金属枠体を形成するなら、その製造は容易でありコスト面で有利である。重ね合わせたL字状の金属板同士を溶接したりボルトナット等で連結したりする必要はないため、接合のためのコストがさらに必要になるわけでもない。
図3に示した例でも、透明板のうち水の側(図の右側)を向いた面と上記枠体の内側面との間に拘束手段30が配置されている。拘束手段の構造等(透明板との接触面積等)によっては、透明板と拘束手段との間に、金属等による硬質のライナー(図3の符号24)をはさんで接触圧力を分散させるとよい。また、透明板のうち陸の側を向いた面は、図3のように金属枠体の内側面に直接に接触させ、またはライナー等をはさんで金属枠体に押し付けるとよい。
図3の例において、上記の「充填部」は符号5の部分である。図では、堤と同一のコンクリートで形成された外溝部4の内側に、堤とは別のコンクリートまたはモルタルにてなる充填部5がある。外溝部4と充填部5とによってなる溝3の内側に金属枠体20が埋設されている。
しかし、コンクリートで形成された上記外溝部の内側に別のコンクリートまたはモルタルが詰められた充填部があり、外溝部と金属枠体との隙間をその充填部が埋めた状態であるなら、そのような不都合を回避でき、透明板を適切な状態に拘束して固定することができる。なお、外溝部と金属枠体との隙間を充填部が埋めた上記の状態は、外溝部の内側に金属枠体を挿入する際、同時に外溝部と金属枠体との隙間にコンクリート等を打設充填すれば実現できる。
そのようなゴムを、拘束手段として透明板とともに金属枠体の内側に入れると、その金属枠体内に水を注入することにより当該ゴムが膨張し、金属枠体の溝の中に透明板を拘束し固定することができる。
上記膨潤材には先に示した水膨張ゴムも含まれ、例示した各種水膨張ゴムを使用することもできるが、ほかにも、日本リステン株式会社製のウレタン系シーラントである「リステンシールD−51」、または膨潤性の粘土「リステン粘土」(いずれも吸水して膨張する)等を膨潤材として使用できる。
使用する膨潤材の体積膨張率が十分に大きければ、膨潤材が、コンクリートの溝の内側に密に接し、かつ、透明板の下方縁部にも密着することによって、当該透明板を拘束することができる。透明板の下方縁部に及ぼす圧力も概ね均一となり、局所的に大きな圧力が作用することもないので、好ましい状態に透明板を拘束できる。膨潤材が膨潤した際に透明板が傾くこと等があるなら、それを修正するためにくさび状の調整具等を併せて使用するとよい。
透明板の下方縁部のみを拘束する上記発明の防潮壁においては、水位が透明板の上部に達したときにもその透明板やコンクリートが破損しないことが求められる。上記発明に基づいてコンクリートの堤の上に突出高さが500mmまでのアクリル製透明板の防潮部分を設けるとき、発明者らの強度解析(図6〜図8を参照)によれば、透明板に関する寸法関係を上記のとおり設定すれば、透明板もコンクリートも破損することなく防潮機能を発揮すると考えられる。
上記透明板の下方縁部を上記堤の上部の溝に挿入し拘束するに関し、挿入の形態や付属物、溝の構成等を工夫すれば、コストを抑制できるほか、透明板やコンクリート(堤)等に作用する力を適切に分散させ均一化することができ、上記の拘束状態を好ましくするとともに、透明板やコンクリートを破損しがたい状態に保つことができる。
まず図1は、防潮壁1の概要を示す正面図(図1(a))および横断面図(同(b))である。海岸または河岸に沿ってコンクリートの堤2が連続して形成され、その上部に樹脂製の透明板すなわち透明樹脂板10・11が設けられている。透明樹脂板10・11は四辺形状のアクリル板であり、隣接する透明樹脂板10・11に対し互いの端部を突き合わせて、岸に沿って側方へ連続的に配置されている。なお、図中、白抜き矢印は洪水等の際の水流の向きをさしており(他の図でも同様)、図1(b)では図示右側が水側、左側が陸側である。
図4(b)は、金属枠体20について、同(a)とは異なる部位での横断面を示す図である。つまり、金属枠体20の金属板21・22には、長さ方向に間隔をおいて、図示のようにナット(雌ネジ部材)21a・21c・30aおよび22a・22cを溶接にてそれぞれ取り付けている。ナット30aは、上記した拘束手段30として使用する一部品である。
図4(c)の金属枠体20は、同(a)(b)のように構成したうえ、さらにボルトやライナー等を取り付けたものである。すなわち、上記のナット21a・21cおよび22a・22cに、それぞれボルト21b・21dおよび22b・22dを通し、また底辺部分の上に透明樹脂板10の設置用弾性シート23を置き、ナット30aに上記の拘束手段30を組み付けるとともにライナー24を取り付ける。ライナー24と金属板22との各内側面(透明樹脂板10と接する面)には低摩擦テープ25を貼り付ける。
なお、連続する区間の端に設ける透明樹脂板11については、下方縁部だけでなく側方の縁部についても同様に金属枠体20内に挿入して拘束手段により拘束し固定する。
以上によって、図1のように、コンクリート堤2の上部に連続して透明樹脂板10を配置した防潮壁1が構成できる。図1では、側方の縁部をも堤2で支持する透明樹脂板11を連続区間の端部に設けているが、それを設けない、したがって下方縁部だけを堤2の溝3に挿入して固定する透明樹脂板10ばかりが連続的に配置されたの防潮壁も、以上のものと同様に構成することができる。
アクリル板の特性を表1に示す。
上記解析の結果を、図7および表2に示す。図7(a)(b)のそれぞれは、アクリル板の厚さを46.5mmとした場合の応力コンター図および変形図である。また、表2において「解析結果」に示した応力は、図7に示される最も応力の高い部分(アクリル板の下端部)での応力値を示している。
図6のように水からの荷重pが透明樹脂板10に作用するとき、透明樹脂板10には、3.964kNm/mのモーメント(杭頭モーメント)Mが発生する。桟橋の杭頭モーメントに対する必要埋込長の計算は、杭(透明樹脂板10)の側方のコンクリートの幅(図8の寸法B)が十分に大きいとき、図8に示すモデルについて下記の計算(数1)を行うことにより求められる。
L=0.066m
すなわち透明樹脂板10の必要な埋め込み深さは約70mmと求められる。余裕をもたせて120mm程度にするのがよい。
なお、堤2の上へのアクリル板の突出高さを増す場合には、アクリル板をさらに厚くするとともに、下方縁部10aの埋め込みをさらに深くする必要がある。発明者らの検討結果によると、突出高さを1000mmにする場合、アクリル板の厚さと埋め込み深さを320mmかそれ以上にするのが好ましい。
2 コンクリート堤
3 溝
4 外溝部
5 充填部
10・11 透明樹脂板(透明板)
10a 下方縁部
20 金属枠体
21・22 金属板
24 ライナー
30 拘束手段
Claims (8)
- コンクリート製の堤の上部に、四辺形状の複数の透明板が、それぞれ隣接する他の透明板と端部を突き合わせて連続的に配置された防潮壁であって、
他の二つの透明板の間に配置された透明板が、上記堤の上部に設けられた溝に下方縁部のみを挿入し、その溝の内側に拘束されることによって支持されていること、
上記の溝の内側に、横断面形状が略U字状の金属枠体がはめ込まれ、その金属枠体の内側に上記透明板の下方縁部が挿入されていること、
上記の溝が、上記の堤と同一のコンクリートで形成された外溝部の内側に、別のコンクリートまたはモルタルで当該外溝部と上記金属枠体との隙間を埋めた充填部を有することにより形成されていること、
上記の金属枠体が、上記外溝部の内側で位置決めをするための突出量調整が可能なボルトを複数本取り付けられたものであること
を特徴とする防潮壁。 - 上記の金属枠体に複数個のナットが取り付けられていて、それらのナットに通されて上記のボルトが取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の防潮壁。
- 横断面形状が略U字状の金属枠体における両側の外向き面に、上記複数個のナットが取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載の防潮壁。
- 上記透明板の下方縁部を拘束するために、上記透明板と上記金属枠体の内側面との隙間に、面間の寸法を増大させることにより上記透明板の縁部を当該隙間の内側に拘束する拘束手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の防潮壁。
- 上記の金属枠体が、横断面形状がL字状の金属板を重ね合わせられることにより略U字状の横断面形状にされたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の防潮壁。
- 上記の拘束手段が、上記透明板の下方縁部のうち水の側を向いた面と上記枠体の内側面との間に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の防潮壁。
- 上記の拘束手段が、水膨張ゴムのシートであることを特徴とする請求項4または6に記載の防潮壁。
- コンクリート製の堤の上部に、四辺形状の複数の透明板が、それぞれ隣接する他の透明板と端部を突き合わせて連続的に配置され、他の二つの透明板の間に配置された透明板が、上記堤の上部に設けられた溝に下方縁部のみを挿入し、その溝の内側に拘束されることによって支持されている防潮壁の構成方法であって、
上記堤の上部に外溝部を形成し、
上記外溝部の内側に、横断面形状が略U字状の金属枠体であって突出量調整が可能なボルトを複数本取り付けられた金属枠体を挿入し、
それらのボルトの突出量調整によって外溝部内での金属枠体の位置決めをしたうえ、
外溝部の内側であって金属枠体の外側に、上記とは別のコンクリートまたはモルタルを流し込んで固化させ、
固定された金属枠体の内側に、上記透明板の下方縁部を挿入して拘束する
ことを特徴とする防潮壁の構成方法。
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