JP6778061B2 - 可縮部材およびトンネル - Google Patents
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Description
大土被りのトンネルでは、トンネル周辺の地山の変形量が増大し、トンネル支保工に対して大きな応力が発生する場合がある。断層破砕帯や膨張性地山を掘進することにより形成されたトンネル等でも同様である。大きな応力が作用することが予想されるトンネルでは、トンネル支保工の剛性や強度を増加させる場合がある。また、特許文献1には、トンネル支保工の一部に形成された隙間に、体積比1.0%近い鋼繊維と中空粒子とを含有する繊維補強セメント系材料からなる可縮部材を介設し、地山の変形をこの可縮部材により吸収するトンネルの安定化方法が開示されている。
そのため、本発明は、簡易かつ安価に製造することができ、なおかつ、トンネル内空の安定を確保することを可能とした可縮部材およびトンネルを提案することを課題とする。
また、本発明のトンネルは、アーチ状あるいはリング状のトンネル支保工と、前記トンネル支保工を横断するように配設された前記可縮部材とを備えていることを特徴としている。
さらに、本体部は、セメント系固化材と多孔質材との混合体により構成されているため、鋼繊維を多量に含むコンクリートと比較して容易に練り混ぜることができ、製造時の手間の低減を可能としている。
本実施形態のトンネル支保工2は、図1(b)に示すように、吹付けコンクリート21、鋼製支保工22およびロックボルト23を備えている。吹付けコンクリート21および鋼製支保工22は、アーチ状(馬蹄形状)に形成されている。なお、吹付けコンクリート21および鋼製支保工22の形状は限定されるものではなく、リング状であってもよい。
可縮部材3は、図3に示すように、円柱状に形成された本体部4と、本体部4の対向する二面(被加圧面)以外の面に周設(被覆)された帯状の繊維シート(シート材)5からなる補強体とを備えている。なお、可縮部材3の形状は限定されるものではなく、例えば、四角柱状であってもよい。
本実施形態では、本体部4にプライマーを塗布して、本体部4側面の凹凸を平滑化した後、エポキシ樹脂を適量塗布する。その後、繊維シート5を巻き付けた後、可縮部材3(繊維シート5)の外周囲にエポキシ樹脂を塗布して繊維シート5に浸み込ませる。なお、プライマーは必要に応じて塗布すればよい。また、接着剤はエポキシ樹脂に限定されるものではない。さらに塗布範囲も本体部4側面全体に必ずしも塗布する必要はない。
本実験では、パーライトを骨材としたモルタルからなる円柱状の本体部4の側面(被加圧面以外の面)に、ポリプロピレン製の繊維シート5をらせん状に巻き付けた可縮部材3について、一軸圧縮試験を行った。可縮部材3は、直径φ100mm、高さH200mmの本体部4に、5cm巾の繊維シート5を重ね代1cmで巻き付けた。
本実験では、繊維シート5を一重に巻き付けたもの(実施例1)と、二重に巻き付けたもの(実施例2)について一軸圧縮試験を行った。また、比較例1として、本体部4の高さ(H200mm)と同じ幅の繊維シートを本体部4の外面に1周させた供試体についても一軸圧縮試験を行った。さらに、比較例2として本体部4にエポキシ樹脂のみを塗布した可縮部材に対しても一軸圧縮試験を行った。
試験結果を図4に示す。
また、比較例1と実施例1とを比較すると、比較例1では、ひずみ15%を超えたあたりから応力が低下しはじめるのに対し、実施例1はひずみが30%程度になるまで応力低下が生じなかった。これは、繊維シート5をらせん状に巻き付けることで、本体部4に軸圧縮(トンネル周方向の圧縮)が生じても、繊維シート5には剥がれが生じず、繊維シート5の破断強度まで繊維シート5が本体部4の側方変形を抑制したためによる。したがって、繊維シート5をらせん状に巻き付けることで、本体部4の拘束効果が向上することが実証された。
ここで、「硬化過程」とは、本体部4の降伏後の軸ひずみの範囲にあって、軸圧縮変形によって生じる本体部4の側方変形が、繊維シート巻付け時の緩み、弛みを解消し、繊維シート5が本体部4の側方変形を有効に拘束しだすことによって、軸ひずみの増加に伴い軸応力が増加していく軸ひずみの範囲を意味する。
図5に示すように、実施例3では40%ひずみまで応力が持続することが達成でき、実施例4では50%ひずみまで応力が持続することを達成できた。この結果、本体部4が角柱状の場合であっても、繊維シート5を二重に巻いた実施例4が、一重に巻いた実施例3よりも硬化過程の勾配が大きくなる結果となった。
例えば、可縮部材3は、設計上で必要とされる強度において、本体部4および繊維シート5(補強体)の剛性および強度を変更することができる。
繊維シート5は、本体部4の側面を拘束することができれば、必ずしもその縁同士を重ねた状態で巻き付ける必要はない。
補強体を構成する材料は、帯状のシート材であれば、必ずしも繊維シートである必要はない。
2 トンネル支保工
21 吹付けコンクリート
22 鋼製支保工
3 可縮部材
4 本体部
5 繊維シート(補強体)
Claims (4)
- トンネル支保工を構成する吹付けコンクリートまたは鋼製支保工を横断するように配設され、前記トンネル支保工とともにトンネル支保構造を構成する可縮部材であって、
多孔質体を含むセメント系硬化体からなり、対向する二面を被加圧面とする本体部と、
前記本体部の前記被加圧面以外の面に被覆された補強体と、を備えており、
前記補強体は、前記本体部にらせん状に巻き付けられたシート材であることを特徴とする、可縮部材。 - 前記シート材は、その縁同士が重ねられた状態でらせん状に巻き付けられていることを特徴とする、請求項1に記載の可縮部材。
- 前記シート材を前記本体部に多重に巻き付けることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の可縮部材。
- アーチ状あるいはリング状のトンネル支保工と、
前記トンネル支保工を横断するように配設された請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の可縮部材と、を備えていることを特徴とする、トンネル。
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