JP6775298B2 - 美容フェイスマスク用不織布 - Google Patents
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前記不織布を用いた美容フェイスマスクは、昨今、国内外において普及の一途をたどっている。
顔面に美容液等を直接に塗る場合には、液垂れが生じないようにするために、塗布量の制限が必要となるが、美容フェイスマスク用不織布を使用した場合には、不織布が多くの美容液等を保持することで、長時間にわたり、美容液を肌に補充しつつ顔面になじませていくことができるので、高い美容効果等を得ることができる点を挙げることが使用量が増加しているものと考えられる。
すなわち、親水性繊維が25〜30質量%、疎水性繊維が70〜75質量%、各々の繊維が4dtex以下の繊度の短繊維で構成するエアスルー不織布であって、その不織布の目付質量が20〜60g/m2、空隙率が85%以上の範囲にあり、親水性繊維がレーヨン短繊維であり、疎水性繊維がさや部の融点130℃以下のポリエチレン、芯部がポリプロピレンまたはポリエステルからなる芯さや短繊維であることを特徴とする美容フェイスマスク用不織布である。
さらに、(2)不織布の目付質量(以後、単に目付ともいう)と空隙率を適切に設定する。これによって、不織布の内部繊維間に適度な空隙を形成することができるので、親水性繊維の使用割合が少なくても高い保液性を得ることができる。
また、(3)使用する繊維の繊度及び目付質量を適切に設定することによって、高い吸液性と適度の強度及び柔軟性を得て、顔面の凹凸にしなやかに追従させるという美容フェイスマスクに必要な要件をすべて満たした特性が優れた不織布を提供できることを見出し、これらの知見に基づき、本発明を完成するに至った。
まず、本発明の不織布の繊維について説明する。
(1)親水性繊維
本発明の不織布に用いる親水性水繊維としては、綿、セルロース系繊維、レーヨン、キュプラ等の溶剤紡糸セルロース繊維が挙げられる。肌への密着性の点から、綿、再生セルロース系繊維が特に好ましい。
疎水性繊維としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維、ナイロン等のポリアミド系繊維、ポリアクリルニトリル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリウレタン繊維等の合成繊維が挙げられる。
これらのうち、単一の不織布を変形又は複数の不織布を圧着させることで立体的な形状に加工させることが容易な加熱によって溶融し、相互に接着性を発現する繊維である熱融着性繊維を用いることが好ましい。
特に、融点の異なる複数の繊維材料を芯鞘型に配した複合短繊維(以下芯鞘短繊維ともいう)を用いることが好ましい。
図1は、芯鞘繊維を説明する斜視図である。
図1に示す鞘部aに低融点樹脂、芯部bに高融点樹脂を配したものである。この芯鞘短繊維により構成されるシート(以下、ウエブという)に対して、鞘部の繊維材料の融点以上の温度に設定された熱風エアを垂直に貫通させ(以下、エアスルー方式ともいう)、繊維の鞘同士が接触する部分を熱融着して、繊維の脱落・解離が生じない不織布を得ることができる。
いずれの繊維も、鞘部の融点が100〜130℃の範囲のものである。
また、繊維の繊度は4dtex以下のものを使用する。これより繊度が大きいとウエブが硬くなり、柔軟性が低下し、顔面形状への追従性が低下するので好ましくない。
本発明では、上記親水性繊維と疎水性繊維を混合して使用する。その混合割合は、親水性繊維が25〜40質量%、疎水性繊維が60〜75質量%である。親水性繊維の割合が25質量%より少ないと、保液性(率)が低下し、また、40質量%より多いと化粧液の移行性が低下し、好ましくない。
次に、前記繊維を使用して作製される不織布の態様について、説明する。
(1)不織布の目付質量
不織布の目付質量は、20〜60g/m2の範囲に設定する。目付質量が20g/m2より小さくなると、保液率および強度が低下し、好ましくない。また、60g/m2より大きいと、柔軟性が低下し、顔面形状への追従性が低下するため好ましくない。
(2)不織布の空隙率
不織布の空隙率は、不織布の目付質量、厚み及び繊維の真比重により以下の式にて算出される。
充填率(%)=目付(g/m2)/厚み(mm)/真比重/1000×100
空隙率(%)=100−充填率
ここで、空隙率とは、不織布の内部における繊維間の空隙の大きさである。この空隙に液が貯留され、保液性が保たれる。
従来のものは、親水性繊維自体の親水性により保液量を確保するものであるが、本発明では、親水性繊維と疎水性繊維を併用することにより不織布の空隙を増やし、その空隙に液を貯留することが特徴である。
本発明の不織布の空隙率が85%以上が好ましい。
本発明の高い空隙率の不織布を得るために、エアスルー方式によるサーマルボンド不織布を採用することが望ましい。ここで、当該サーマルボンド不織布の製造方法について図2を参照して説明する。
カード機1において、短繊維原綿は一定幅と目付質量のシート状2に仕立てられ(これをウエブという)、前方に連続的に移送される。該ウエブは、案内ロール3を経て、コンベア装置4,5により、熱風送風炉6,7に導入される。
炉内に送られる熱風は、ウエブを垂直に貫通し、その熱によりウエブ内の繊維の交点が融着結合して、適切な強度を有する不織布8を形成する。次いで、ロール状に巻き取られて不織布製品9となる。ここで不織布の目付質量は、カード機の紡出量により、また、厚みは、ウエブの繊維構成、目付質量、熱風条件などを適宜選択することにより所定の値に設定される。
まず、評価試験に用いた繊維とその評価方法について説明する。
[親水性繊維]
親水性繊維は、オーミケンシ社製の繊度1.1、1.7、3.3dtex,繊維長40mmのビスコースレーヨンを用いた。
[疎水性繊維]
疎水性繊維は、ESファイバービジョン社製のPP/PE芯鞘短繊維を用い、その繊度は1.1、2.2、および6.6dtex、繊維長は51mmのものを用いた。
また、PET/PE芯鞘短繊維として、ESファイバービジョン社製の繊度1.7dtex、繊維長51mmのものを用いた。
実施例において適用する試験方法及び評価基準を以下に説明する。なお、評価基準は、レーヨン100%の市販品を参考とし、かつ、実用的な観点から美容フェイスマスクとして望ましい値を設定した。
(1)液の移行性
対象となる不織布の液の移行性を以下の手順にて計測する。なお、試験液としては、美容液の主成分である水を用いた。
手順−1
5cm角の不織布試料のを用意し、これを水中に15秒間浸したのち、平板上に静置する。
手順−2
吸水体として、親水性レーヨン繊維を多く含むレーヨン/ポリオレフィン/ポリエステル(質量比60/15/25)のニードルパンチ不織布とポリエチレン製ネットの複合品(135g/m2)を5cm角に切り出し、その質量W1を計測したのち、前記ネット側を試験対象の不織布試料に重ね被せ、さらに、その上に5cm角、厚さ0.5mmの平板状鋼片を“おもし”として置き、そのまま10秒間静置し、その後、直ちにその質量W2を計測する。
手順−3
吸水体の質量変化(W2−W1)を、試料不織布からの水の移行量とし、移行性の指標とする。
移行量=W2−W1
評価基準:移行量1.0g以上を合格とした。
不織布を10cm角の大きさに切り取り、その質量を計測してn=5の平均値を目付質量とした。
(3)厚みの評価
厚み計(接触面積1cm2、荷重100g/cm2)を用いて計測してn=5の平均値を厚みとした。
以上の厚みの測定値と目付質量から、前述のように空隙率を算出する。
また、空隙率は、上記目付質量、厚みの計測値及び繊維の真比重を用いて、
先に説明したように充填率(%)=目付(g/m2)/厚み(mm)/真比重/1000×100 を求めて下記の計算式により算出した。
空隙率(%)=100−充填率
空隙率の評価基準:85%以上を合格とする。
(4)引張強度の評価
JIS L1096−1979織物試験法8.12.1のA法 ストリップ法に準拠して以下のように測定した。
5cm×20cmの試験片を対象不織布(タテ方向)より切り出し、チャック間距離10cm、引張速度200mm/分にて引張破断強度を測定する。
強度の評価基準:20N以上を合格とした。
(6)形状追従性の評価
JIS L1096−1979一般織物試験法 剛軟度A法(カンチレバー法)に準拠し、試料寸法20mm(幅)×150mm(長さ)にて剛軟度を計測する。 この測定は試料のしなやかさを表現するものであり、形状追従性の指標とする。
形状追従性の評価基準:剛軟度90mm以下を合格とした。
(7)保液率の評価
美容液の主成分である水を水槽内に満たし、不織布を十分浸漬したあと、槽内より取り出し、浸漬前後の質量変化を計測して、以下の式によって保液率を求めた。
保液率(%)=(ピックアップした浸漬後の不織布質量―浸漬前の不織布質量)/浸漬前の不織布質量×100(%)
保液性の評価基準:保液率500%以上を合格とした。
親水性繊維として、繊度が1.7dtexのレーヨン短繊維を30質量%、疎水性繊維として繊度が2.2dtexのPP/PE芯鞘短繊維を70質量%の割合で混合綿を調製し、エアスルー方式(エア温度160℃)にて目付質量20g/cm2のサーマルボンド不織布を作製した。その結果、空隙率88.1%の不織布を得た。この不織布について、液(水)の移行率、保液率、引張強度、そして、顔面形状への追従性の指標とした剛軟度を測定し、表1に示すその結果は、前述したすべての評価基準を満たすものであった。
親水性繊維を40質量%、疎水性繊維を60質量%とした以外は、実施例1と同様の条件にて、不織布を作製し評価した。その結果を表1に示す。
実施例1における不織布の目付質量を40g/m2とした以外は、実施例1と同様の条件にて不織布を作製して評価した。その結果を表1に示す。
実施例1における不織布の目付質量を60g/m2とした以外は、実施例1と同様の条件にて不織布を作製し評価した。その結果を表1に示す。
親水性繊維の繊度が1.1dtex、疎水性繊維の繊度が3.3dtexとし、実施例1と同様の条件にて不織布を作製し評価した。その結果を表1に示す。
親水性繊維の繊度が3.3dtex、疎水性繊維の繊度が1.1dtexとし、実施例1とした以外は、同様の条件にて不織布を作製し評価した。その結果を表1に示す。
疎水性繊維を、繊度2.2のPET/PE芯鞘短繊維に代えた以外は、実施例1と同様にして不織布を作製し評価した。その結果を表1に示す。
また、実施例2〜7の評価結果は全ての評価基準を満たすものであった。
親水性繊維を20質量%、疎水性繊維を80質量%に変更した以外は実施例1同様にして不織布を作製し、その結果を表2に示す。保液性の低下が見られた。これは、親水性繊維の不織布に占める成分割合が小さ過ぎ、吸水量の低下を招いたものと考えられる。
親水性繊維を60質量%、疎水性繊維を40質量%とした以外は、実施例1と同様にして不織布を作製し、その結果を表2に示す。液の移行性及び強度が低下した。これは、吸水繊維の割合が多くなり過ぎたためと考えられる。
不織布の目付質量を15g/m2とした以外は、実施例1と同様にして、不織布を作製し、その結果を表2に示す。保液率と引張強度が低下し、評価基準を下回った。これは、目付質量が過小のためと考えられる。
不織布の目付質量を70g/m2とした以外は、実施例1と同様にして、不織布を作製し評価し、その結果を表2に示す。形状追従性が低下した。これは、目付質量の増加により剛難度が高くなったためと考えられる。
疎水性繊維の繊度を6.6dtexとした以外は、実施例1と同様にして、不織布を作製し評価しし、その結果を表2に示す。剛難度が上昇しており、これは繊度が大きいため、不織布が硬くなり、形状追従性が損なわれたものと考えられる。
親水性繊維であるレーヨン短繊維のみを用いて、スパンレース法によって、目付40g/m2の不織布を作製し評価した。その結果を表2に示す。液の移行性及び保液率が、評価基準を下回っていた。液の移行性が低いのは、親水性繊維であるレーヨンのみで占められた結果、液離れが悪くなったためと考えられる。また、保液率が低いのは、空隙率が低いことが原因と考えられる。
Claims (1)
- 親水性繊維が25〜30質量%、疎水性繊維が70〜75質量%、各々の繊維が4dtex以下の繊度の短繊維で構成するエアスルー不織布であって、その不織布の目付質量が20〜60g/m2、空隙率が85%以上の範囲にあり、
親水性繊維がレーヨン短繊維であり、疎水性繊維がさや部の融点130℃以下のポリエチレン、芯部がポリプロピレンまたはポリエステルからなる芯さや短繊維であることを特徴とする美容フェイスマスク用不織布。
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