JP6774750B2 - 製パン用組成物、及びパンの製造方法 - Google Patents

製パン用組成物、及びパンの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、製パン用組成物に関し、特に小麦粉以外の穀粉を主体として良好な食感のパンを製造できる製パン用組成物に関する。
従来から、通常小麦粉が用いられる食品において、健康機能を期待して、又は食感や風味の特徴づけとして、小麦粉の一部又は全部を置き換えて大麦粉、ライ麦粉、米粉、トウモロコシ粉、大豆粉等の小麦粉以外の穀粉が利用されている。パンにおいても、小麦粉以外の穀粉が利用されている例があるが、小麦粉以外の穀粉を主体とするもの(本発明において、原料穀粉の質量に基づいて、小麦粉以外の穀粉が50質量%以上含有するものをいう)は、パンの体積が小さく重たい食感になるなど、日本人が好むふんわりとしたソフトな食感を有するパンを製造することは難しい。
小麦粉以外の穀粉を用いたパンとしては、大麦を用いたパンや、米粉を用いたパン等の種々の開発が行なわれている。例えば、特許文献1では、比容積が大きく、ふくらみが良好でやわらかい大麦パンを製造する方法、及びその方法により製造された大麦パンを提供することを目的とし、大麦粉及びセルラーゼを含有する大麦パン製造用組成物が開発されている。特許文献1には、大麦パン製造用組成物が、グルテンを含有することが好ましいことが開示されている。また、特許文献2では、グルテンを使用せず、従来の小麦粉パンと同一の製造工程によりスポンジ状の商品価値の高いパンを製造できるパン製造用の米粉を提供することを目的とし、グルテンが配合されていない米粉を主材とし、増粘多糖類が配合されていることを特徴とするパン製造用の米粉が開発されている。
特開2012−249613号公報 特開2005−245409号公報
しかしながら、これらの技術は、パンに使用するそれぞれの穀粉ごとにその特徴に合わせた技術であり、小麦粉以外の穀粉全般を主体とするパンに応用可能な汎用性の高い技術は開発されていない。
したがって、本発明の目的は、小麦粉以外の任意の穀粉を主体とした場合でも、パンの体積が十分にあり、良好な食感を有するパンを製造することができる汎用性の高い製パン用組成物、及びパンの製造方法を提供することにある。
本発明者らは、小麦粉以外の穀粉を主体とするパンの体積を向上することができる材料の配合について種々検討した結果、グルテン、ペクチン、及び増粘多糖類、さらに炭酸カルシウムを、それぞれ所定量配合することで、上記課題を解決することができることを見出した。
すなわち、上記目的は、小麦粉以外の穀粉を、原料穀粉に基づいて、50質量%以上含有する製パン用組成物であって、前記小麦粉以外の穀粉100質量部に対して、10〜40質量部のグルテン、0.5〜2.5質量部のペクチン、及び0.1〜0.5質量部の増粘多糖類を含有し、炭酸カルシウムをさらに含有し、前記炭酸カルシウムの含有量が、前記小麦粉以外の穀粉100質量部に対して、0.5〜2.0質量部であり、モルトエキスを含有しないことを特徴とする製パン用組成物によって達成される。これらの材料自体は、それぞれパン類の品質改良剤として従来から知られているものであるが、これらを組み合わせることで、小麦粉以外の任意の穀粉を主体としたパンの体積を顕著に向上し、食感を改善することができることは一切知られていない。本発明の製パン用組成物であれば、小麦粉以外の任意の穀粉を主体として用いた場合であっても、十分な体積を有し、良好な食感を有するパンを製造することができる。
本発明の製パン用組成物の好ましい態様は以下の通りである。
(1)前記増粘多糖類が、キサンタンガムを含む。これにより、さらに良好な食感のパンを製造することができる
また、上記目的は、本発明の製パン用組成物を用いることを特徴とするパンの製造方法によって達成される。上述の通り、本発明の製パン用組成物を用いることで、小麦粉以外の任意の穀粉を主体として用いた場合であっても、十分な体積を有し、良好な食感を有するパンを製造することができる。
本発明により、小麦粉以外の任意の穀粉を主体として用いた場合であっても、十分な体積を有し、良好な食感を有するパンを製造することができる汎用性の高い製パン用組成物、及びパンの製造方法を提供することができる。
[製パン用組成物]
本発明の製パン用組成物は、小麦粉以外の穀粉を、原料穀粉に基づいて、50質量%以上含有する(すなわち、小麦粉以外の穀粉を主体とする)。そして、小麦粉以外の穀粉100質量部に対して、10〜40質量部のグルテン、0.5〜2.5質量部のペクチン、及び0.1〜0.5質量部の増粘多糖類を含有する。これらの材料自体は、それぞれパン類の品質改良剤として従来から知られているものであるが、これらを組み合わせることで、小麦粉以外の任意の穀粉を主体としたパンの体積を顕著に向上し、食感を改善することができることは一切知られていない。後述する実施例で示す通り、これらの材料を上記の適切なバランスで組み合わせて用いることで、小麦粉以外の任意の穀粉を主体として用いた場合であっても、十分な体積を有し、良好な食感を有するパンを製造することができる。この要因は、明らかでないが、グルテンを上記範囲の量で含有することにより、食感を損なうことなく、パンの骨格が良好に形成される。さらにペクチン、及び増粘多糖類を上記範囲の量で含有することにより、食感を損なうことなく、グルテンの伸展性を増強し、パンの体積を十分に向上させることができるものと考えられる。増粘多糖類は、さらに焼き上がりのパンの表面のシワを低減し、外観を良好にする効果も有するものと考えられる。
本発明の組成物において、小麦粉以外の穀粉としては、特に制限はない。本発明において、穀粉とは、いわゆる穀物を挽いて粉にしたものであり、小麦粉以外の穀粉としては、大麦粉、ライ麦粉、燕麦粉、トウモロコシ粉、ホワイトソルガム粉、大豆粉(きな粉)、緑豆粉、そば粉、アマランサス粉、キビ粉、アワ粉、ヒエ粉、タピオカ粉等が挙げられる。より良好なパンが製造できる点で、大麦粉、ライ麦粉、トウモロコシ粉、大豆粉が好ましい。小麦粉以外の穀粉は1種を単独で、又は複数種を混合して使用してもよい。小麦粉以外の穀粉の含有量は、本発明の効果がより発揮されるため、原料穀粉に基づいて、60質量%以上が好ましい。
グルテンは、小麦粉等の穀類に含まれるグリアジンとグルテニンが絡み合って形成されるたん白質の一種である。活性グルテンは、例えば、小麦粉に水を加えて混捏し、グルテンが形成された生地を調製した後、その生地を洗浄して澱粉等を除去し、必要に応じてpH調整、乾燥、粉砕等することにより粉状物として得ることができる。本発明の組成物に含有するグルテンとしては、特に制限はなく、市販のものを適宜使用することができる。後述する実施例に示す通り、グルテンの含有量が上記範囲未満の場合は、パンの体積が十分に得られず、上記範囲を超える場合は、パンの体積を向上する効果は得られるものの、食感が低下する。本発明の組成物において、グルテンの含有量は、小麦粉以外の穀粉100質量部に対して、10〜35質量部が好ましく、20〜30質量部がさらに好ましい。
ペクチンは、一般に、サトウダイコン、オレンジ、ライム、レモン、リンゴ等の野菜や果物の細胞膜または細胞間物質として存在する多糖類であり、D−ガラクツロン酸を構成基本単位とし、これがα−1,4結合で直鎖上に連なった高分子電解質の一つで、D−ガラクツロン酸のカルボキシル基が一部任意にメチルエステル化された構造を有する。ペクチンは、例えば、柑橘類の果皮などから酸抽出、アルコール沈殿、乾燥、粉砕等することにより粉状物として得られる。ペクチンは、メチルエステル化の程度によって、高メトキシルペクチン(エステル化度50%以上)及び低メトキシルペクチン(エステル化度50%未満)に分類され、ゲル化条件等の性質が異なるが、本発明において、ペクチンは、高メトキシルペクチン、又は低メトキシルペクチンのいずれでもよく、両者の混合物でもよい。本発明の組成物に含有するペクチンとしては、特に制限はなく、市販のものを適宜使用することができる。後述する実施例に示す通り、ペクチンの含有量が上記範囲未満の場合は、パンの体積が十分に得られず、上記範囲を超える場合は、パンの体積を向上する効果は得られるものの、食感が低下する。本発明の組成物において、ペクチンの含有量は、小麦粉以外の穀粉100質量部に対して、0.5〜2.2質量部が好ましく、0.7〜2.2質量部がさらに好ましい。
増粘多糖類は、一般に、水に溶解又は分散して増粘作用を示す多糖類である。ただし、本発明においては、上記ペクチンは含まないものとする。本発明の組成物に含有する増粘多糖類としては、特に制限はなく、例えば、キサンタンガム、グアガム、ローカストビーンガム、タラガム、タマリンドガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸、サイリウム、ジェランガム等の市販のものを適宜使用することができる。増粘多糖類は1種を単独で、又は複数種を混合して使用してもよい。後述する実施例に示す通り、増粘多糖類の含有量が上記範囲未満の場合は、パンの体積が十分に得られず、上記範囲を超える場合は、パンの体積を向上する効果は得られるものの、食感が低下する。本発明の組成物において、増粘多糖類の含有量は、小麦粉以外の穀粉100質量部に対して、0.15〜0.30質量部が好ましく、0.15〜0.25質量部がさらに好ましい。本発明の組成物において、増粘多糖類は、さらに良好な食感を有するパンを製造することができる点で、キサンタンガムを含むことが好ましい。
本発明の組成物においては、カルシウム成分をさらに含有することが好ましい。後述する実施例に示す通り、カルシウム成分を含有することで、さらに良好な食感のパンを製造することができる。これは、カルシウム成分がグルテンによるパンの骨格を強化するものと考えられる。本発明の組成物に含有するカルシウム成分としては、特に制限はなく、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、ピロリン酸二水素カルシウム等の無機カルシウム、乳酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、乳酸カルシウム等の有機酸カルシウム、及び貝殻カルシウム、卵殻カルシウム、乳清カルシウム、牛骨カルシウム等の天然カルシウム含有粉末を使用することができる。カルシウム成分は1種を単独で、又は複数種を混合して使用してもよい。本発明の組成物において、カルシウム成分の含有量は、本発明の効果を阻害しなければ特に制限はない。好ましくは、小麦粉以外の穀粉100質量部に対して、0.5〜2.0質量部であり、さらに好ましくは0.7〜2.0質量部であり、特に0.8〜1.9質量部である。本発明の組成物において、カルシウム成分は、パンの風味を損なうことなく、効果を発揮し易い点で無機カルシウムであることが好ましく、炭酸カルシウムであることがさらに好ましい。
本発明の製パン用組成物は、上記原料穀粉、グルテン、ペクチン、増粘多糖類、カルシウム成分以外に、製パンに一般的に使用される他の材料を適宜含有することができる。他の材料としては、砂糖、ぶどう糖、麦芽糖、異性化糖、水あめ、粉あめ、オリゴ糖、デキストリン、澱粉類等の糖質;バター、ラード、サラダ油、マーガリン、ショートニング等の油脂;脱脂粉乳、卵白粉、卵黄粉等のたん白質、食塩、調味料、ビタミンC、乳化剤、イーストフード、イースト、膨張剤等が挙げられる。本発明の組成物は、適宜選択した製パン用材料の全部を均一に混合した組成物であっても良く、物性や配合量の違いにより、均一な混合が困難な場合や、材料の安定性の観点から、製パン用材料の一部を除いて均一に混合した組成物であっても良い。後者の場合は、パンの製造時に、除いた一部の材料を混合することができる(除いた材料が複数の場合は、必要に応じてそれらを混合して別の混合物を調製しておき、それを混合してもよい)。例えば、イースト以外の材料を混合した組成物を調製し、パンの製造時にイーストを添加してパンを製造することができる。
[パンの製造方法]
本発明のパンの製造方法は、本発明の製パン用組成物を用いることを特徴とする。上述の通り、本発明の製パン用組成物を用いることで、小麦粉以外の任意の穀粉を主体として用いた場合であっても、十分な体積を有し、良好な食感を有するパンを製造することができる。本発明のパンの製造方法は、本発明の製パン用組成物を用いる以外は、通常のパンの製造方法と同様に行なうことができる。例えば、まず、本発明の製パン用組成物を、必要に応じてその他の製パン用材料とともに水と混捏して、パン生地を調製する。水の量は、原料穀粉の種類、製造するパンの種類等に応じて、適宜調節することができる。混捏したパン生地を、必要に応じて分割、成形し、イーストを含む場合は発酵させた後、焼成する。本発明のパンの製造方法は、直捏法、中種法、ノータイム法、湯種法等、公知の製パン方法のいずれの方法も用いることができる。また、ホームベーカリー自動パン焼き機を用いて製パンすることもできる。なお、本発明のパンの製造方法においては、イーストを含まないパンを製造してもよく、蒸し調理、又は揚げ調理によってパンを製造してもよい。パンの種類としては、特に制限はなく、例えば、食パン、フランスパン、バターロール、クロワッサン、デニッシュ、蒸しパン、揚げパン、菓子パン等が挙げられる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
1.製パン用組成物の調製
表1〜7に示した各実施例、比較例、参考例(対照)の配合で、各材料を混合し、各製パン用組成物を調製した。なお、グルテン、ペクチン、増粘多糖類、カルシウム成分の含有量は、小麦粉以外の穀粉100質量部に対する質量部を示す。
2.パンの製造試験
1斤タイプホームベーカリー(SD−BMS106(パナソニック株式会社製))を用いてパンの製造試験を行なった。参考例(対照)の組成物は、上記機器の取扱説明書に記載された食パンの配合を基本配合としており、表1に示した製パン用組成物、ドライイースト(日清スーパーカメリヤドライイースト(日清フーズ株式会社製))3g、水180mlを1斤タイプホームベーカリーに投入し、早焼き食パンコースにてパンを焼成した。実施例及び比較例については、表2〜7に示した各製パン用組成物290g、ドライイースト3g、水200mlを1斤タイプホームベーカリーに投入し、早焼き食パンコースにてパンを焼成した。
3.パンの評価
焼成したパンについて、以下の項目を評価した。
(1)体積
焼成された各パンの体積を、超高速レーザー体積計測機(Selnac−WinVM2100(株式会社アステックス製)を用いて測定し、参考例(対照)(小麦粉を原料穀粉とした組成物)のパンの体積を100%としたときの、各パンの体積の百分率を算出した。結果を表2〜7に示す。
(2)膨らみ
焼成された各パンの膨らみ方について、10名のパネラーで、以下の評価基準で目視評価した。パネラーの評価点の平均値を評価結果として表2〜7に示す。なお、評価点は小数点第1位を四捨五入して示した。
5:全体が均一に非常に良く膨らんでいる。
4:全体が均一に良く膨らんでいる。
3:やや均一性に欠けるが、膨らんでおり、許容できる範囲である。
2:やや膨らみに欠け、均一に膨らんでいない。
1:膨らんでいない。
(3)外観(表面)
焼成された各パンの表面の外観について、10名のパネラーで、以下の評価基準で目視評価した。パネラーの評価点の平均値を評価結果として表2〜7に示す。なお、評価点は小数点第1位を四捨五入して示した。
5:シワや凹凸がほぼ無く、外観が非常に良い。
4:シワや凹凸が少なく、外観が良い。
3:多少のシワや凹凸があるが、外観は許容できる範囲である。
2:シワがやや多く、天面の一部に凹凸があるため、外観が悪い。
1:シワが多く、天面の全体に凹凸があるため、外観が非常に悪い。
(4)食感
焼成された各パンの食感について、10名のパネラーで、以下の評価基準で評価した。パネラーの評価点の平均値を評価結果として表2〜7に示す。なお、評価点は小数点第1位を四捨五入して示した。
5:ふんわりとし、ソフトな食感があり、非常に良い。
4:ややふんわりとし、ソフトな食感があり、良い。
3:ソフトな食感がややある。
2:やや口溶けが悪く、パンとして好ましくない食感である。
1:口溶けが悪く、パンとして好ましくない食感である。
Figure 0006774750
Figure 0006774750
表2に示した通り、小麦粉以外の穀粉として、大麦粉を選択し、原料穀粉に基づいて70質量%含有する製パン用組成物を用いてパンを焼成した場合、グルテン、ペクチン、増粘多糖類のいずれも含まない比較例1では、参考例(対照)と比較した体積が50%と非常に低く、各評価も1であるのに対し、大麦粉100質量部に対して、グルテンを14.3〜35.7質量部、ペクチンを1.14質量部、増粘多糖類としてキサンタンガムを0.21質量部含有する参考例1〜3の組成物を用いたパンは、参考例(対照)と比較した体積が88%以上で、遜色ないものであり、膨らみ、外観(表面)、食感の評価も3以上であった。一方、グルテンのみを含む比較例2、グルテン及びペクチンのみを含む比較例3は、比較例1と比較すると、体積がやや向上しているものの、不十分であり、膨らみ、外観の評価も低く、本発明の効果には、グルテン、ペクチン、及び増粘多糖類が必須であることが示唆された。また、グルテンの含有量が、大麦粉100質量部に対して8.6質量部の比較例4は、体積の向上が不十分であり、膨らみ、外観の評価も低く、グルテンの含有量が、大麦粉100質量部に対して42.9質量部の比較例5は、体積は向上しているものの、口溶けが悪く、重い食感となり、食感の評価が低かった。したがって、本発明の効果を発揮するグルテンの含有量の範囲は、小麦粉以外の穀粉100質量部に対して10〜40質量部であることが示唆された。
Figure 0006774750
表3においては、本発明の組成物におけるペクチンの含有量の影響を調べるため、上記参考例2におけるペクチンの含有量を変えて評価した結果を示した。ペクチンの含有量が、大麦粉100質量部に対して、0.71質量部の参考例4、2.14質量部の参考例5、及び2.43質量部の参考例6は、参考例2とほぼ同程度の評価が得られた。一方、ペクチンの含有量が、大麦粉100質量部に対して、0.43質量部の比較例6は、体積の向上が不十分であり、膨らみ、外観の評価も低く、ペクチンの含有量が、大麦粉100質量部に対して2.86質量部の比較例7は、体積は向上しているものの、食感の評価が低かった。したがって、本発明の効果を発揮するペクチンの含有量の範囲は、小麦粉以外の穀粉100質量部に対して0.5〜2.5質量部であることが示唆された。
Figure 0006774750
表4においては、本発明の組成物における増粘多糖類の種類、及び含有量の影響を調べるため、上記参考例2における増粘多糖類(キサンタンガム)の種類、及び含有量を変えて評価した結果を示した。増粘多糖類(キサンタンガム)の含有量が、大麦粉100質量部に対して、0.11質量部の参考例7は、膨らみ、外観(表面)の評価が4で、食感の評価も3と良好であった。また、増粘多糖類としてグアガムを用いて、その含有量が、大麦粉100質量部に対して、0.17質量部の参考例8、キサンタンガムとグアガムとを併用して、その合計の含有量が、大麦粉100質量部に対して、0.17質量部の参考例9、及びキサンタンガムとローカストビーンガムとを併用して、その合計の含有量が、大麦粉100質量部に対して、0.24質量部の参考例10は、評価にやや差があるものの参考例2と同程度の評価が得られた。一方、増粘多糖類(キサンタンガム)の含有量が、大麦粉100質量部に対して、0.07質量部の比較例8は、体積の向上が不十分であり、膨らみ、外観の評価も低く、増粘多糖類(グアガム)の含有量が、大麦粉100質量部に対して0.54質量部の比較例9は、体積は向上しているものの、食感の評価が低かった。したがって、本発明の効果を発揮する増粘多糖類の含有量の範囲は、小麦粉以外の穀粉100質量部に対して0.1〜0.5質量部であることが示唆された。また、本発明の組成物において、増粘多糖類は、特に制限なく用いることができるが、参考例2、8、及び9を比較すると、キサンタンガムを含むことが好ましいことが示唆された。
Figure 0006774750
表5においては、本発明の組成物において、グルテン、ペクチン、増粘多糖類に加えて、さらにカルシウム成分を含有させた場合の効果を調べるため、上記参考例2、又は参考例4の配合に、さらにカルシウム成分として炭酸カルシウムを含有させた組成物を評価した。その結果、炭酸カルシウムの含有量が大麦粉100質量部に対して0.57質量部〜1.86質量部の実施例1〜4において、参考例2又は4より体積がより大きくなり、食感の評価も向上した。炭酸カルシウムの含有量が大麦粉100質量部に対して2.29質量部の参考例11では、参考例2と同程度であった。したがって、本発明の組成物は、さらに炭酸カルシウムを含有することが好ましく、さらに、その含有量の範囲は、小麦粉以外の穀粉100質量部に対して0.5〜2.0質量部が好ましいことが示唆された。
Figure 0006774750
表6においては、本発明の組成物において、原料穀粉中の、小麦以外の穀粉の含有量の影響を調べるため、大麦粉の含有量を変えた組成物を評価した。その結果、大麦粉の含有量が55質量%〜100質量%の実施例で、十分な体積を有し、各評価3以上のパンを製造することが可能であった。したがって、本発明の組成物は、小麦粉以外の穀粉を多く含む(例えば60質量%以上含む)場合も、対応できる製パン用組成物であることが示唆された。
Figure 0006774750
表7においては、本発明の組成物において、小麦以外の穀粉の種類の影響を調べるため、種々の穀粉を用いた組成物を評価した。その結果、ライ麦粉、トウモロコシ粉、大豆粉を用いた実施例11で、十分な体積を有し、各評価3以上のパンを製造することが可能であった。したがって、本発明の組成物は、小麦粉以外の任意の穀粉を主体とした場合でも対応できる汎用性の高い製パン用組成物であることが示唆された。
以上の実施例の結果により、本発明の製パン用組成物によって、小麦粉以外の任意の穀粉を主体として用いた場合であっても、パンの体積が十分にあり、良好な食感を有するパンを製造することができることが示唆された。
なお、本発明は上記の実施の形態の構成及び実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。
本発明により、小麦粉以外の任意の穀粉を主体として用いた場合であっても、十分な体積を有し、良好な食感を有するパンを製造することができる汎用性の高い製パン用組成物、及びパンの製造方法を提供することができる。

Claims (3)

  1. 小麦粉以外の穀粉を、原料穀粉に基づいて、50質量%以上含有する製パン用組成物であって、
    前記小麦粉以外の穀粉100質量部に対して、10〜40質量部のグルテン、0.5〜2.5質量部のペクチン、及び0.1〜0.5質量部の増粘多糖類を含有し、
    炭酸カルシウムをさらに含有し、
    前記炭酸カルシウムの含有量が、前記小麦粉以外の穀粉100質量部に対して、0.5〜2.0質量部であり、
    モルトエキスを含有しないことを特徴とする製パン用組成物。
  2. 前記増粘多糖類が、キサンタンガムを含む請求項1に記載の製パン用組成物。
  3. 請求項1又は2に記載の製パン用組成物を用いることを特徴とするパンの製造方法。
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