JP6774643B2 - カーボンナイトライドナノシート複合体の製造方法 - Google Patents

カーボンナイトライドナノシート複合体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、カーボンナイトライドナノシート含有分散液、カーボンナイトライドナノシート複合体及びその製造方法に関する。
カーボンナイトライド(C)を剥離し、薄層化することによって得られるカーボンナイトライドナノシート(Cナノシート)は、多孔性であり、比表面積が大きく、光触媒活性、半導体特性、熱伝導性、力学物性、摺動性等に優れた材料であることから、水素生成、有機物除去、次世代半導体、センサー、太陽電池、二次電池、ヒートシンク、摺動材、電気・電子系部品等の様々な用途に向けた高機能性材料として期待されている。Cは、メラミン等を原料として用いて加熱処理を行うことによって合成することができるが、Cナノシートを得るためには、Cの剥離が必要であり、高収率かつ簡便な方法でCナノシートを得ることは困難であった。
例えば、S.Yangら、Adv.Mater.、2013年、第25巻、2452〜2456頁(非特許文献1)には、イソプロピルアルコール(IPA)等の高極性の有機溶媒中でCに超音波処理を施してCを剥離することによって、Cナノシートが前記有機溶媒に分散した分散液を得る方法が記載されている。また、国際公開第2011/049085号(特許文献1)には、グラファイト状C(g−C)をアルカリ性水溶液又は酸性水溶液中で加熱処理することによって微細化されたg−Cが得られることが開示されている。しかしながら、これらの方法によって得られる分散液においては、Cナノシートや微細化されたg−Cの濃度や収率が低く、例えば、前記用途に使用するためにはCナノシートの濃度や収率を向上させる必要があった。また、得られたCナノシートや微細化されたg−Cは、強力な長時間の超音波処理や加熱処理によって構造に欠陥が生じ、剥離だけでなく、面内方向の構造も破壊され、一辺のサイズが小さくなり、物性の低下に繋がるという課題もあった。このため、Cナノシートの濃度や収率を向上させるだけでなく、マイルドな条件でCナノシートを製造する必要があった。
このようなマイルドな条件でナノシートを製造する方法として、特開2015−187057号公報(特許文献2)及び特開2015−196632号公報(特許文献3)には、イオン液体中又は超酸中で窒化ホウ素に超音波処理等の層間剥離処理を施して、窒化ホウ素ナノシートにイオン液体又は超酸を吸着させることによって、窒化ホウ素ナノシート含有分散液を得る方法が開示されている。また、特許文献2〜3には、この窒化ホウ素ナノシート含有分散液から、溶媒中や樹脂中での分散性に優れた窒化ホウ素ナノシート複合体が得られることも記載されている。
しかしながら、特許文献2〜3に記載された方法において、窒化ホウ素の代わりにCをそのまま使用したところ、溶媒中での分散性に優れたCナノシート複合体は得られなかった。
国際公開第2011/049085号 特開2015−187057号公報 特開2015−196632号公報
S.Yangら、Adv.Mater.、2013年、第25巻、2452〜2456頁
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、カーボンナイトライドナノシート(Cナノシート)が比較的高濃度でかつ高度に分散しており、一辺のサイズが比較的大きいCナノシートを比較的高収率で得ることが可能なCナノシート含有分散液、イオン液体及び超酸以外の溶媒中での分散性に優れたCナノシート複合体及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、原料カーボンナイトライド(原料C)として予め微粉砕処理を施したものにイオン液体中又は超酸中で弱い超音波処理や撹拌処理等の混合処理を施すだけで、Cナノシートがイオン液体中又は超酸中に比較的高濃度でかつ高度に分散したCナノシート含有分散液が得られ、また、このCナノシート含有分散液から、一辺のサイズが比較的大きいCナノシートが比較的高収率で得られ、更に、前記Cナノシート含有分散液から、イオン液体及び超酸以外の溶媒中での分散性に優れたCナノシート複合体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のカーボンナイトライドナノシート複合体の製造方法は、X線回折スペクトルにおける(100)面のピーク強度(I100)に対する(002)面のピーク強度(I002)の比(I002/I100)が6以上であるカーボンナイトライドと、イオン液体又は超酸と、を混合し、前記カーボンナイトライドの層間を剥離せしめてカーボンナイトライドナノシートを得ると共に該カーボンナイトライドナノシートに、イオン液体又は超酸を吸着させる剥離吸着工程を含むことを特徴とする方法である。
このようなカーボンナイトライドナノシート複合体の製造方法においては、前記カーボンナイトライドと超酸とを混合する際に、前記イオン液体又は前記超酸の存在下で前記カーボンナイトライドに超音波処理、撹拌処理及び粉砕処理からなる群から選択される少なくとも一種の層間剥離処理を施すことが好ましい。
なお、本発明によって、Cナノシートが比較的高濃度でかつ高度に分散しており、一辺のサイズが比較的大きいCナノシートを比較的高収率で得ることが可能なCナノシート含有分散液が得られ、更に、イオン液体及び超酸以外の溶媒中での分散性に優れたCナノシート複合体をマイルドな条件で製造することが可能となる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。
すなわち、通常のCは窒化ホウ素と異なり、平面性に劣り、数百層以上のC層が三次元的に結合及び/又は凝集した構造を形成している。このようなCにイオン液体中又は超酸中で弱い超音波処理や撹拌処理等の混合処理を施しても、Cの層間にイオン液体又は超酸を侵入させることは容易ではない。このため、C層にイオン液体又は超酸が吸着しにくく、Cの層間剥離が進行せず、得られるCナノシートは、層数が多く、イオン液体中又は超酸中での分散性に劣るものとなる。また、層数が多いCナノシートにイオン液体又は超酸が吸着しても、得られるCナノシート複合体は、イオン液体又は超酸の吸着量が少なく、イオン液体及び超酸以外の溶媒中での分散性も劣るものとなる。
一方、本発明においては、原料Cとして予め微粉砕処理を施したものを使用している。微粉砕処理を施したCは層間の結合の少なくとも一部が破壊されており、層間の結合力が弱くなっていると推察される。このような層間の結合力が弱くなったCにイオン液体中又は超酸中で弱い超音波処理や撹拌処理等の混合処理を施すと、僅かにできたCの層間のスペースにイオン液体又は超酸が侵入しやすく、イオン液体のカチオンとC層の窒素原子との間の相互作用、更に前記カチオンがプロトンを有する場合にはカチオンとC層の窒素原子との間の水素結合、或いは、超酸のプロトンとC層の窒素原子との間の相互作用によって、C層の表面へのイオン液体又は超酸の吸着が加速され、Cの層間剥離が効率的に進行し、比較的高収率でCナノシートが得られると推察される。また、前記混合処理がマイルドな条件で行われるため、C層の面内方向の構造破壊が起こりにくく、一辺のサイズが比較的大きいCナノシートが得られると推察される。更に、このようにして得られるCナノシートは、層数が少なく、また、イオン液体又は超酸の吸着により一旦層間剥離したCナノシート同士の再凝集が抑制されるため、イオン液体中又は超酸中での分散性に優れており、その結果、Cナノシートが比較的高濃度で分散したCナノシート含有分散液が得られると推察される。また、本発明のCナノシート複合体は、イオン液体又は超酸がCナノシート表面に吸着したものであるため、従来公知の方法で製造されたイオン液体又は超酸が吸着していないCナノシートと比較して、イオン液体及び超酸以外の溶媒中での分散性に優れたものになると推察される。更に、本発明のCナノシート複合体においては、イオン液体又は超酸がCナノシートに吸着し、層間が剥離することによって、層間剥離が加速するとともに、立体的要因により層間剥離したCナノシート同士の再スタックが抑制されるため、イオン液体及び超酸以外の溶媒中での分散性に優れたCナノシート複合体を比較的高収率で得ることが可能になると推察される。
本発明によれば、Cナノシートが比較的高濃度でかつ高度に分散しており、一辺のサイズが比較的大きいCナノシートを比較的高収率で得ることが可能なCナノシート含有分散液、並びに、イオン液体及び超酸以外の溶媒中での分散性に優れたCナノシート複合体を得ることが可能となる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
[Cナノシート含有分散液、Cナノシート複合体及びその分散液]
先ず、本発明のカーボンナイトライドナノシート含有分散液(Cナノシート含有分散液)、本発明のカーボンナイトライドナノシート複合体(Cナノシート複合体)、及び本発明のカーボンナイトライドナノシート複合体含有分散液(Cナノシート複合体含有分散液)について説明する。
本発明のCナノシート含有分散液は、イオン液体又は超酸と、前記イオン液体又は前記超酸に分散しているCナノシートと、を備えており、前記Cナノシートが層数40以下のCナノシートを数基準で80%以上含むものであることを特徴とするものである。また、本発明のCナノシート複合体は、Cナノシートと、前記Cナノシートに吸着しているイオン液体又は超酸と、を備えており、前記Cナノシートが層数40以下のCナノシートを数基準で80%以上含むものであることを特徴とするものである。更に、本発明のCナノシート複合体含有分散液は、このような本発明のCナノシート複合体と、イオン液体及び超酸以外の溶媒とを含有することを特徴とするものである。
(カーボンナイトライドナノシート)
本発明にかかるカーボンナイトライドナノシート(Cナノシート)は、多層構造を有するカーボンナイトライド(C)を層間剥離して得られる構造に相当する形態のシートである。このようなCナノシートとしては、特に制限されないが、例えば、Cナノシート、カーボンナイトライドナノリボン(Cナノリボン:リボン状のCナノシート)、カーボンナイトライドナノスクロール(Cスクロール:スクロール状のCナノシート)が挙げられる。これらの中でも、得られるCナノシート複合体及びそれを含む樹脂複合材料等における触媒活性や熱伝導性等の特性の向上の観点から、Cナノシートが好ましい。
本発明にかかるCナノシートの厚みとしては、特に制限されないが、100nm以下のCナノシートが含まれるものであることが好ましく、50nm以下のCナノシートが含まれるものであることがより好ましく、30nm以下のCナノシートが含まれるものであることが更に好ましく、20nm以下のCナノシートが含まれるものであることが特に好ましく、10nm以下のCナノシートが含まれるものであることがとりわけ好ましく、3nm以下のCナノシートが含まれるものであることが最も好ましい。前記Cナノシートの厚みが前記上限を超えると、得られるCナノシート複合体及びそれを含む樹脂複合材料等において熱伝導性等の特性が低下する傾向にある。
また、本発明にかかるCナノシートの層数としては、層数40以下のCナノシートを数基準で80%以上含むものである限り、特に制限されないが、Cナノシートの比表面積が増大し、得られるCナノシート複合体及びそれを含む樹脂複合材料等における触媒活性及び熱伝導性等の特性の向上の観点から、100層以下のCナノシートを含むものであることが好ましく、50層以下のCナノシートを含むものであることがより好ましく、30層以下のCナノシートを含むものであることが更に好ましく、20層以下のCナノシートを含むものであることが特に好ましく、10層以下のCナノシートを含むものであることがとりわけ好ましく、単層のCナノシートを含むものであることが最も好ましい。
更に、本発明にかかるCナノシートは、40層以下のCナノシートを数基準で80%以上含むものである。これにより、Cナノシートが比較的高濃度でかつ高度に分散しており、一辺のサイズが比較的大きいCナノシートを比較的高収率で得ることが可能なCナノシート含有分散液、並びに、イオン液体及び超酸以外の溶媒中での分散性に優れたCナノシート複合体を得ることができる。更に、このCナノシート複合体及びそれを含む樹脂複合材料等は、触媒活性や熱伝導性等の特性に優れている。また、得られるCナノシート含有分散液においてCナノシートの濃度、分散性及び収率が向上し、また、得られるCナノシート複合体のイオン液体及び超酸以外の溶媒中での分散性が向上し、更に、このCナノシート複合体及びそれを含む樹脂複合材料等における触媒活性や熱伝導性等の特性の低下の観点から、本発明にかかるCナノシートにおける40層以下のCナノシートの存在割合としては、数基準で、85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
また、本発明にかかるCナノシートにおいて、20層以下のCナノシートの存在割合としては、特に制限されないが、数基準で、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることが更に好ましく、80%以上であることが特に好ましく、90%以上であることが最も好ましい。前記Cナノシートにおいて、20層以下のCナノシートの存在割合が前記下限未満になると、得られるCナノシート含有分散液においてCナノシートの濃度、分散性及び収率が低下し、また、得られるCナノシート複合体のイオン液体及び超酸以外の溶媒中での分散性が低下し、更に、このCナノシート複合体及びそれを含む樹脂複合材料等において触媒活性や熱伝導性等の特性が低下する傾向にある。
更に、本発明にかかるCナノシートにおいて、10層以下のCナノシートの存在割合としては、特に制限されないが、数基準で、10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、30%以上であることが更に好ましく、40%以上であることが特に好ましく、50%以上であることが最も好ましい。前記Cナノシートにおいて、10層以下のCナノシートの存在割合が前記下限未満になると、得られるCナノシート含有分散液においてCナノシートの濃度、分散性及び収率が低下し、また、得られるCナノシート複合体のイオン液体及び超酸以外の溶媒中での分散性が低下し、更に、このCナノシート複合体及びそれを含む樹脂複合材料等において触媒活性や熱伝導性等の特性が低下する傾向にある。
また、本発明にかかるCナノシートにおいて、単層構造のCナノシートの存在割合としては、特に制限されないが、数基準で、4%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、10%以上であることが更に好ましく、15%以上であることが特に好ましく、20%以上であることが最も好ましい。前記Cナノシートにおいて、単層構造のCナノシートの存在割合が前記下限未満になると、得られるCナノシート含有分散液においてCナノシートの濃度、分散性及び収率が低下し、また、得られるCナノシート複合体のイオン液体及び超酸以外の溶媒中での分散性が低下し、更に、このCナノシート複合体及びそれを含む樹脂複合材料等において熱伝導性等の特性が低下する傾向にある。
このような本発明にかかるCナノシートにおいて、Cナノシートの一辺のサイズ(長さ)の下限としては、特に制限されないが、得られるCナノシート複合体及びそれを含む樹脂複合材料等における熱伝導性、力学物性等の特性の向上の観点から、0.001μm以上であることが好ましく、0.01μm以上であることがより好ましく、0.1μm以上であることが更に好ましく、0.5μm以上であることが特に好ましく、1μm以上であることが最も好ましい。前記Cナノシートにおいて、Cナノシートの一辺の長さが前記下限未満になると、得られるCナノシート複合体及びそれを含む樹脂複合材料等において熱伝導性等の特性が低下する傾向にある。なお、従来技術では、例えば、一辺の長さが1μm以上といった一辺の長さの大きなCナノシートの分散は、一辺の長さが1μm未満のCナノシートと比較して難しい傾向にあるが、本発明のように、予め微粉砕処理を施したCにイオン液体中又は超酸中で弱い超音波処理や撹拌処理等の混合処理を施すことによって、一辺の長さの大きなCナノシートの分散性が大きく向上する傾向にある。
なお、本発明において、Cナノシートの厚みと一辺のサイズ(長さ)は、走査型電子顕微鏡観察により得た写真において、それぞれ無作為に抽出した20個の一次粒子について、Cナノシートの厚みと一辺のサイズ(長さ)をそれぞれ測定し、各々の平均値として求めた値である。
(イオン液体)
本発明に用いられるイオン液体は、特に制限されないが、200℃未満の温度、好ましくは150℃未満の温度、より好ましくは100℃未満の温度、更に好ましくは室温又は周囲の温度付近において液体である塩(イオン性液体)である。常温溶融塩又は単に溶融塩(塩溶融物)等とも称されるものであり、常温(室温)を含む幅広い温度域で液体状態を呈する塩である。このような液体の塩は、典型的には有機カチオン及び有機又は無機アニオンを含む。なお、室温で液体のイオン性液体であることが好ましい。
具体的には、このような本発明のイオン液体としては、例えば、下記一般式(1):
(Zp+(Xq− ・・・(1)
で表わされるイオン液体であることが好ましい。式(1)中、Zp+はカチオン、Xq−はアニオンを示し、p、q、k、mは、それぞれ1〜3の整数を示す。
これらの中でも、本発明に係るイオン液体としては、上記一般式(1)において、p、q、k及びmが2以下であることが好ましく、p、q、k及びmが1であること、すなわち下記一般式(2):
・・・(2)
で表わされる化合物からなるイオン液体であることが特に好ましい。式(2)中、Zはカチオン、Xはアニオンを示す。
<Zカチオン>
このような本発明のイオン液体にかかる前記一般式(2)で示されるZ化合物の中のZカチオンとしては、特に制限されないが、好ましくは、下記一般式(3)〜(18):
で表される構造(Zカチオン:イミダゾリウム(3)、ピリジニウム(4)、ピリダジニウム(5)、ピリミジニウム(6)、ピラジニウム(7)、ピロリニウム(8)、2H−ピロリニウムカチオン(9)、トリアゾリウム(10)、ピロリジニウム(11)、ピペリジニウム(12)、アンモニウム(13)、ホスホニウム(14)、スルホニウム(15)、イソオキサゾリウム(16)、オキサゾリウム(17)、チアゾリウム(18))のうち、少なくとも一種及びこれらカチオンの類縁体(前記カチオンにエポキシ基、アミノ基、水酸基、カルボン酸及び酸無水物基等の官能基を導入した変性カチオン等)を挙げることができる。
前記一般式(3)〜(18)において、R〜R12は、それぞれ独立に水素原子、ヒドロキシ基、エステル基、カルボキシ基、スルホン酸基、エポキシ基、ハロゲン及びエーテル結合のうち少なくとも1種の基又は結合を含んでもよい炭素数1〜24のアルキル基、炭素数3〜24のアルケニル基、炭素数6〜24のアリール基、炭素数7〜24のアラルキル基、アルキルシリルアルキル基、アルコキシシリルアルキル基から選ばれるものである。
前記ヒドロキシ基、エステル基、カルボキシ基、エポキシ基、ハロゲン及びエーテル結合のうち、少なくとも1種の基又は結合を含んでもよい炭素数1〜24のアルキル基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種デシル基、各種ドデシル基、各種テトラデシル基、各種ヘキサデシル基、各種オクタデシル基、各種ノニルデシル基、各種エイコシル基、各種ヘンイコシル基、各種ドコシル基、各種トリコシル基、各種テトラコシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、クロロエチル基、ブロモエチル基、(メタ)アクリロイロキシメチル基、(メタ)アクリロイロキシエチル基、(メタ)アクリロイロキシプロピル基、(メタ)アクリロイロキシブチル基等のアクリロイロキシアルキル基、グリシジルオキシメチル基、グリシジルオキシエチル基、3−グリシジルオキシプロピル基、4−グリシジルオキシブチル基、2−メトキシエチル基、3−メトキシプロピル基等が挙げられる。
前記炭素数3〜24のアルケニル基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、例えば、アリル基、プロペニル基、各種ブテニル基、各種ヘキセニル基、各種オクテニル基、各種デセニル基、各種ドデセニル基、各種テトラデセニル基、各種ヘキサデセニル基、各種オクタデセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロオクテニル基等が挙げられる。前記アクリロイロキシアルキル基又は前記アルケニル基を有するイオン液体を用いることにより、Cの層間に挿入又はCナノシート表面に吸着したアクリロイロキシアルキル基又はアルケニル基含有イオン液体と他のアクリロイロキシアルキル基又はアルケニル基イオン液体及び/又はビニル系モノマーとの各種ラジカル重合(in situ重合)や反応が可能となり、Cナノシートが高度に分散したCナノシート含有分散液を作製することもできる。
前記炭素数6〜24のアリール基としては、環上にアルキル基やハロゲン基等の適当な置換基を有していてもよく、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、クロロフェニル基、ジクロロフェニル基、トリクロロフェニル基、ブロモフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、クロロナフチル基等が挙げられ、炭素数7〜24のアラルキル基は、環上にアルキル基等の適当な置換基を有していてもよく、例えば、ベンジル基、メチルベンジル基、フェネチル基、メチルフェネチル基、フェニルプロピル基、メチルフェニルプロピル基、ナフチルメチル基、メチルナフチルメチル基等が挙げられる。
前記アルキルシリルアルキル基としては、トリアルキルシリルアルキル基が好ましく、ケイ素原子に結合するアルキル基は、炭素数1〜20のものが好ましく、それらは同一でも異なっていてもよく、例えば、トリメチルシリルメチル基、トリエチルシリルメチル基、トリプロピルシリルメチル基、トリブチルシリルメチル基等が挙げられる。前記アルコキシシリルアルキル基としては、トリアルコキシシリルアルキル基が好ましく、ケイ素原子に結合するアルコキシ基はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、例えば、トリメトキシシリルメチル基、トリエトキシシリルメチル基、トリプロポキシシリルメチル基、トリブトキシシリルメチル基等が挙げられる。
このようなイオン性液体を構成するZカチオンにおいて、前記一般式(3)で示されるイミダゾリウムカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、1−メチルイミダゾリウム、1−エチルイミダゾリウム、1,2−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ジエチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウム、1−メチル−3−ノニルイミダゾリウム、1−デシル−3−メチルイミダゾリウム、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウム、1−メチル−3−テトラデシルイミダゾリウム、1−ヘキサデシル−3−メチルイミダゾリウム、1−トリメチルシリルメチル−3−メチルイミダゾリウム、1−(2−ヒドロキシエチル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(4−スルホブチル)−3−メチルイミダゾリウム、1−エチル−3−ビニルイミダゾリウム、1−ブチル−3−ビニルイミダゾリウム、1−メチル−3−イソプロピルイミダゾリウム、1−sec−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−メトキシエチル−3−メチルイミダゾリウム、1−メトキシメチル−3−メチルイミダゾリウム、1−アリル−3−メチルイミダゾリウム、1−アリル−3−エチルイミダゾリウム、1−アリル−3−ブチルイミダゾリウム、1,3−ジアリルイミダゾリウム、1−ベンジル−3−メチルイミダゾリウム、1−(4−(メタ)アクリロイロキシメチル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(4−(メタ)アクリロイロキシエチル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(4−(メタ)アクリロイロキシプロピル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(4−(メタ)アクリロイロキシブチル)−3−メチルイミダゾリウム、等が挙げられる。
また、前記一般式(4)で示されるピリジニウムカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、1−メチルピリジニウム、1−エチルピリジニウム、1−プロピルピリジニウム、1−ブチルピリジニウム、1−ヘキシルピリジニウム、1−メトキシエチルピリジニウム、1−イソプロピルピリジニウム、1−エチル−3−メチルピリジニウム、1−プロピル−3−メチルピリジニウム、2−メチル−1−プロピルピリジニウム、1−ブチル−2−メチルピリジニウム、1−ブチル−4−メチルピリジニウム、1−ブチル−3−メチルピリジニウム、1−メトキシメチルピリジニウム、1−sec−ブチルピリジニウム、トリメチルシリルメチルピリジニウム、ビス(トリメチルシリル)メチルピリジニウム、1−プロピル−4−メチルピリジニウム、1‐メチル‐4‐トリメチルシリルメチルピリジニウム等が挙げられる。
更に、前記一般式(5)で示されるピリダジニウムカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、1−メチルピリダジニウム、1−エチルピリダジニウム、1−プロピルピリダジニウム、1−イソプロピルピリダジニウム、1−ブチルピリダジニウム、1−ペンチルピリダジニウム、1−ヘキシルピリダジニウム、1−メトキシメチルピリダジニウム等が挙げられる。
また、前記一般式(6)で示されるピリミジニウムカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、1−メチルピリミジニウム、1−エチルピリミジニウム、1−プロピルピリミジニウム、1−ブチルピリミジニウム、1−メトキシメチルピリミジニウム、1,2−ジメチルピリミジニウム、1−メチル−3−プロピルピリミジニウム等が挙げられる。
更に、前記一般式(7)で示されるピラジニウムカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、1−メチルピラジニウム、1−エチルピラジニウム、1−プロピルピラジニウム、1−ブチルピラジニウム、1−メトキシメチルピラジニウム、1−エチル−2−メチルピラジニウム等が挙げられる。
また、前記一般式(8)で示されるピロリニウムカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、1,1−ジメチルピロリニウム、1,1−ジエチルピロリニウム、1−エチル−1−メチルピロリニウム、1−メチル−1−プロピルピロリニウム、1−ブチル−1−メチルピロリニウム、1−メトキシエチル−1−メチルピロリニウム、1−メトキシメチル−1−メチルピロリニウム、1−イソプロピル−1−メチルピロリニウム等が挙げられる。
更に、前記一般式(9)で示される2H−ピロリニウムカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、1,2−ジメチル−2H−ピロリニウム、1−エチル−2−メチル−2H−ピロリニウム、1−プロピル−2−メチル−2H−ピロリニウム、1−ブチル−2−メチル−2H−ピロリニウム、1−ヘキシル−2−メチル−2H−ピロリニウム、1−オクチル−2−メチル−2H−ピロリニウム、1−トリメチルシリルメチル−2−メチル−2H−ピロリニウム、1−イソプロピル−2−メチル−2H−ピロリニウム、1−sec−ブチル−2−メチル−2H−ピロリニウム、1−メトキシエチル−2−メチル−2H−ピロリニウム、1−メトキシメチル−2−メチル−2H−ピロリニウム等が挙げられる。
また、前記一般式(10)で示されるトリアゾリウムカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、1−メチルトリアゾリウム、1−エチルトリアゾリウム、1−プロピルトリアゾリウム、1−ブチルトリアゾリウム等が挙げられる。
更に、前記一般式(11)で示されるピロリジニウムカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、1−エチル−1−メチルピロリジニウム、1−メチル−1−プロピルピロリジニウム、1−ブチル−1−メチルピロリジニウム、1−ブチル−1−エチルピロリジニウム、1−ブチル−1−プロピルピロリジニウム、1−メトキシエチル−1−メチルピロリジニウム、1−メトキシメチル−1−メチルピロリジニウム、1−イソプロピル−1−メチルピロリジニウム等が挙げられる。
また、前記一般式(12)で示されるピペリジニウムカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、1−メチル−1−プロピルピペリジニウム、1−ブチル−1−メチルピペリジニウム、1−メトキシエチル−1−メチルピペリジニウム、1−メトキシメチル−1−メチルピペリジニウム、1−イソプロピル−1−メチルピペリジニウム等が挙げられる。
更に、前記一般式(13)で示されるアンモニウムカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、メチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウム、ブチルトリメチルアンモニウム、N,N,N−トリブチル−N−メチルアンモニウム、エチル−ジメチル−プロピルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、N,N−ジエチル−N−メチルアンモニウム、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム、テトラエチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、トリメチルヘキシルアンモニウム、トリエトキシ(2−メトキシエチル)アンモニウム、メチルトリ−n−オクチルアンモニウム、シクロヘキシルトリメチルアンモニウム、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ベンジルアンモニウム、N,N−ジメチル−N−エチル−N−フェネチルアンモニウム、2−ヒドロキシエチルアンモニウム、N,N,N−トリメチルエタノールアンモニウム等が挙げられる。
また、前記一般式(14)で示されるホスホニウムカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)ホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、テトラオクチルホスホニウム、トリエチルメチルホスホニウム、トリエチルペンチルホスホニウム、トリエチルオクチルホスホニウム、トリメチルプロピルホスホニウム、トリメチルヘキシルホスホニウム、トリエチルメトキシメチルホスホニウム、トリエチル(2−メトキシエチル)ホスホニウム、トリブチルメチルホスホニウム、トリイソブチルメチルホスホニウム、トリブチルエチルホスホニウム、トリブチルテトラデシルホスホニウム、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウム等が挙げられる。
更に、前記一般式(15)で示されるスルホニウムカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、トリメチルスルホニウム、トリエチルスルホニウム、ジエチルメチルスルホニウム、ジエチル(2−メトキシエチル)スルホニウム、トリプロピルスルホニウム、トリブチルスルホニウム、ジメチルヘキシルスルホニウム等が挙げられる。
また、前記一般式(16)で示されるイソオキサゾリウムカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、2−エチル−5−メチルイソオキサゾリウム、2−プロピル−5−メチルイソオキサゾリウム、2−ヘキシル−5−メチルイソオキサゾリウム、2−メトキシメチル−5−メチルイソオキサゾリウム等が挙げられる。
更に、前記一般式(17)で示されるオキサゾリウムカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、1−エチル−2−メチルオキサゾリウム、1−ブチル−2−メチルオキサゾリウム、1,3−ジメチルオキサゾリウム等が挙げられる。
また、前記一般式(18)で示されるチアゾリウムカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、1,2−ジメチルチアゾリウム、1,2−ジメチル−3−プロピルチアゾリウム等が挙げられる。
このようなイオン性液体を構成するZカチオンにおいては、上記のZアニオンの中でも、Cナノシート表面へのイオン液体の吸着性(吸着量)の向上による分散性及び有機溶媒への再分散性の観点から、前記一般式(3)〜(12)及び(16)〜(18)の環状カチオンであることがより好ましく、前記一般式(3)〜(12)の環状カチオンであることが更に好ましく、前記一般式(3)、(4)及び(8)〜(10)の環状カチオンであることが特に好ましく、前記一般式(3)及び(4)の環状カチオンであることが最も好ましい。
なお、本発明において用いることができるZカチオンとしては、前記一般式(1)〜(18)示されるカチオンの他にも、例えば、1−ヘキシル−1,4−ジアザ[2,2,2]ビシクロオクタニウム、1−ブチル−1,4−ジアザ[2,2,2]ビシクロオクタニウム等のジアザビシクロオクタニウム等のカチオンを挙げることができる。
<Xアニオン>
このような本発明で用いられるイオン液体にかかる前記一般式(2)で示されるZ化合物の中のXアニオンとしては、特に制限されないが、例えば、[C(2n+1−a))SO、(FSO、(CN)、C(2n+1)OSO 、(C(2n+1−a))SO 、CHSO 、HSO 、CSO 、CH(C)SO 、[C(2n+1−a))SO、(C(2n+1−a))COO、NO 、BF4−b(C2n−1 、(CN)4−b 、(CN)4−bBF 、F(HF) 、AlCl 、FeCl 、PF 、AsF 、SbF 、BiF 、NbF 、TaF 、WF 、SiF 、PF6−c(C2n−1 、(CN)、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン及びこれらアニオンの類縁体(変性物等)等を挙げることができる。なお、nは1〜8の整数、aは0〜17の整数、bは0〜4の整数、cは1〜6の整数である。また、このようなXアニオンのうち、Cナノシート含有分散液中でのCナノシートの分散性(分散安定性)と濃度が向上する観点、得られるCナノシート複合体の溶媒中への再分散性が向上し比較的高濃度でかつ高品質のCナノシート含有分散液が得られるという観点から、[C(2n+1−a))SO、C(2n+1)OSO 、(C(2n+1−a))SO 、BF4−b(C2n−1 、(CN)4−b 、(CN)4−bBF がより好ましく、(CFSO(ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)、(CSO(ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド)、CFSO (トリフルオロメタンスルホナート)、CSO (ノナフルオロブタンスルホナート)、BF (テトラフルオロボレート)、PF (ヘキサフルオロホスファート)が更に好ましく、(CFSO、CFSO 、BF 、PF が特に好ましく、中でもCナノシート含有分散液中でのCナノシート濃度と、イオン液体のCナノシートへの吸着量を大きく向上させる観点から、PF が最も好ましい。
なお、本発明に用いられるイオン液体としては、Cの層間剥離性に優れ、比較的高濃度のCナノシート含有分散液が得られる観点や、Cナノシート複合体の分散性、再分散性に優れる観点から、例えば、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホナート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホナート、テトラエチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1,3−ジメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウム(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチルピリジニウムヘキサフルオロホスファート、1−プロピルピリジニウムヘキサフルオロホスファート、1−ブチルピリジニウムヘキサフルオロホスファート、1−ヘキシルピリジニウムヘキサフルオロホスファート、1−ブチル−2−メチルピリジニウムヘキサフルオロホスファート、1−ブチル−3−メチルピリジニウムヘキサフルオロホスファート、1−ブチル−4−メチルピリジニウムヘキサフルオロホスファート、1−エチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチルピリジニウムヘキサフロオロホスファート、1−ブチルピリジニウムテトラフロオロボレート、1−メトキシエチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−イソプロピルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ヘキシルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ヘキシルピリジニウムヘキサフルオロホスファート、1−ヘキシルピリジニウムテトラフルオロボレート、1−ヘキシルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−メトキシメチル−1−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−メトキシエチル−1−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−イソプロピル−1−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が特に好ましい。
このような本発明にかかるイオン液体は、単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。なお、本発明における「イオン液体」とは、いわゆるイオン液体のみならず、イオン液体由来物(イオン液体が変性又は分解して生じたイオン液体由来化合物)を含む概念である。このようなイオン液体由来物としては、特に制限はないが、製造時や製造後の熱、超音波、せん断、水分の混入等によりイオン液体の少なくとも一部が分解、反応することによって生成した化合物、例えば、イオン液体の重合物(オリゴマー、ポリマー)、フッ化水素、二酸化硫黄等を挙げることができる。また、イオン液体と同等の構造単位を主鎖又は側鎖に有するオリゴマーやポリマー、イオン液体のダイマー、トリマー、テトラマー等の複数のイオン液体からなる化合物(会合体)も本発明にかかるイオン液体として用いることができる。
(超酸)
本発明に用いられる超酸は、25℃におけるハメットの酸度関数(H0)が−12未満(すなわち、より負)の酸度関数(H0)を有する酸である。ここで、ハメットの酸度関数(H0)は、酸性度の指標として一般的に使用され、超酸や酸の種類と組成及び濃度に固有の値であり、温度によって変化する(LOUIS P.HAMMETTら、J.Am.Chem.Soc.、1932年、第54巻、2721頁を参照)。なお、25℃での各種超酸のH0については、例えば、化学便覧基礎編(改訂5版、日本化学会編)等に詳述されている(同便覧IIの表11.47、表11.51、表11.52、表11.53等が参照される)。
また、本発明に用いられる超酸としては、Cナノシートへの吸着量及び/又はCの層間剥離性の観点から、酸度関数(H0)の上限が−12.5未満であるものが好ましく、−13未満であるものがより好ましい。また、得られるCナノシート複合体の分散性の観点から、酸度関数(H0)の下限が−60以上であるものが好ましく、−30以上であるものがより好ましく、−25以上であるものが更に好ましく、−20以上であるものが特に好ましい。
このような本発明に用いられる超酸としては、例えば、クロロスルホン酸(塩化スルホン酸、HSOCl)、フルオロスルホン酸(FSOH)、フッ化水素酸(HF)、トリフルオロメタンスルホン酸(CFSOH)、ペンタフルオロエタンスルホン酸(CHFS)、テトラフルオロホウ酸(HBF)、六フッ化リン酸、塩化フッ化ホウ素酸、五フッ化アンチモンとフルオロスルホン酸との混合物、五フッ化アンチモンとフッ化水素酸との混合物、六フッ化アンチモン酸、六フッ化砒素酸、カルボラン酸、フッ素置換カルボラン酸、ジフルオロメタンジスルホン酸、テトラフルオロエタンジスルホン酸、ヘキサフルオロプロパンジスルホン酸、二硫酸、トリフルオロエタントリスルホン酸、ペンタフルオロプロパントリスルホン酸、ヘプタフルオロブタントリスルホン酸、ヘキサフルオロブタンテトラスルホン酸、オクタフルオロペンタンテトラスルホン酸、デカフルオロへキサンテトラスルホン酸等及びそれらの塩や誘導体等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。これらの超酸の中でも、Cの層間剥離性、得られるCナノシート複合体の溶媒中及び樹脂中での分散性の観点から、クロロスルホン酸、フルオロスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、テトラフルオロホウ素酸からなる群から選択される少なくとも一種が好ましく、ハロゲンが直接S原子に結合したスルホン酸であるクロロスルホン酸及び/又はフルオロスルホン酸がより好ましく、クロロスルホン酸が特に好ましい。また、本発明においては、このような超酸を、超酸以外の酸と混合して用いてもよい。
このような本発明にかかる超酸は、単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。なお、本発明における「超酸」とは、いわゆる超酸のみならず、超酸由来物(超酸が変性又は分解して生じた超酸由来化合物)を含む概念である。このような超酸由来化合物としては、例えば、超酸として塩化スルホン酸を用いた場合、Cナノシートの表面や層間に吸着している塩化スルホン酸の少なくとも一部が水と反応することにより生成した塩酸や硫酸を挙げることができる。Cナノシートに吸着している塩化スルホン酸が水と反応して生成する塩化水素は、沸点が低いため通常ガスとして揮発するが、塩化水素が水と混和して生じた塩酸の少なくとも一部が、硫酸や塩化スルホン酸とともに、超酸由来化合物として、Cナノシートの表面や層間に吸着することもある。このような超酸由来化合物の量としては、特に制限はないが、超酸以外の溶媒中でのCナノシート複合体の分散性の向上の観点から、超酸(超酸由来化合物を含む)100質量%に対して、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、70%質量以下であることが更に好ましく、50%質量以下であることが特に好ましい。
(Cナノシート含有分散液)
本発明のCナノシート含有分散液は、前記イオン液体又は前記超酸と、前記イオン液体又は前記超酸に分散している前記Cナノシートと、を備えており、前記Cナノシートが層数40以下のCナノシートを数基準で80%以上含むものである。
このような本発明のCナノシート含有分散液において、含有する前記Cナノシートの濃度としては、特に制限されないが、Cナノシートが有する熱伝導性等の特性をより好ましく発現するという観点から、0.01mg/ml以上であることが好ましく、0.1mg/ml以上であることがより好ましく、0.2mg/ml以上であることが更に好ましく、0.3mg/ml以上であることが特に好ましく、0.4mg/ml以上であることが最も好ましい。
また、本発明のCナノシート含有分散液においては、前記イオン液体又は前記超酸の少なくとも一部が、前記Cナノシートに吸着していることが好ましい。これにより、Cの層間剥離を効率的に進行させ、層数の少ないCナノシートが高度に分散している分散液をより高濃度で得ることができる。
なお、本発明のCナノシート含有分散液における、Cナノシートの厚み、層数、40層以下のCナノシートの存在割合、20層以下のCナノシートの存在割合、一辺の長さについては前述のとおりである。
(Cナノシート複合体)
本発明のCナノシート複合体は、前記Cナノシートと、前記Cナノシートに吸着している前記イオン液体又は前記超酸と、を備えており、前記Cナノシートが層数40以下のCナノシートを数基準で80%以上含むものである。
本発明のCナノシート複合体において、前記Cナノシートと、前記イオン液体又は前記超酸との吸着は、非共有結合による吸着であっても、共有結合(配位結合も含む)による吸着であっても、またこれらの組み合わせであってもよいが、Cナノシート複合体の触媒活性、電気特性、熱伝導性の向上の観点から、前記吸着のうちの少なくとも一部が非共有結合による吸着であることが好ましく、全てが非共有結合による吸着であることが特に好ましい。
本発明において、「非共有結合による吸着」とは、前記Cナノシートと前記イオン液体又は前記超酸との間に生じる共有結合以外の相互作用による吸着を意味する。このような非共有結合による吸着としては、例えば、前記Cナノシートと前記イオン液体のカチオン又は前記超酸の水素カチオンとの間に生じるカチオン−π相互作用、前記Cナノシートと前記イオン液体のアニオン又は前記超酸のアニオンとの間に生じるアニオン−π相互作用、前記イオン液体又は前記超酸と前記Cとの間での電荷移動相互作用及びファンデルワールス力等の相互作用のうちの1種以上の相互作用を利用するもの等が挙げられる。なお、非共有結合による吸着であっても洗浄等により前記イオン液体又は前記超酸が脱離しない理由は必ずしも定かではないが、本発明のCナノシート複合体においては、カチオン−π相互作用、アニオン−π相互作用、電荷移動相互作用及びファンデルワールス力等の相互作用が強く働いているためと推察される。
また、本発明において、「共有結合による吸着」とは、前記Cナノシートと前記イオン液体又は前記超酸とが共有結合を介して吸着するものであれば特に制限されないが、例えば、Cナノシートの平面や端部に存在する微量の残存炭素原子、窒素原子等が前記イオン液体又は前記超酸のプロトンによりプロトネーションされた場合等を挙げることができる。また、前記Cナノシートの構造中にカルボキシル基、ニトロ基、アミノ基、アルキル基、有機シリル基等の置換基、ポリ(メタ)アクリル酸エステル等の高分子、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリ(パラフェニレン)、ポリチオフェン又はポリフェニレンビニレンといった導電性高分子等が化学結合により導入されたもの、Cナノシートを金属ナノ粒子やカーボン系ナノフィラー等の他のナノ構造体で被覆したものも用いることができる。
なお、このような前記Cナノシートへの前記イオン液体又は前記超酸の吸着は、イオン液体又は超酸以外の溶媒中にCナノシート複合体を分散させた場合やイオン液体又は超酸以外の溶媒によりCナノシート複合体を洗浄ろ過した場合においても、Cナノシート複合体中に残存していることが好ましい。
このような前記Cナノシートへの前記イオン液体又は前記超酸の吸着は、前記Cナノシートと前記イオン液体又は前記超酸とを共存させることによって生じるものである。例えば、前記Cナノシートと前記イオン液体とを共存させることによって、イオン液体を構成するカチオンとCの窒素原子との間のカチオン−π相互作用及び/又はイオン液体を構成するプロトンとCの窒素原子との間の水素結合が生じ、更に、イオン液体を構成するアニオンとCの間のアニオン−π相互作用及び/又はイオン液体とCの間の電荷移動相互作用やファンデルワールス力等の非共有結合も生じる。また、前記Cナノシートと前記超酸とを共存させることによって、超酸を構成する水素カチオン(H+)とCの窒素原子との間のカチオン−π相互作用(非共有結合)及び/又は超酸を構成するプロトンとCの窒素原子との間の結合(配位結合(共有結合)及び/又は非共有結合)が生じ、更に、超酸を構成するアニオンとCとの間のアニオン−π相互作用及び/又は超酸とCとの間の電荷移動相互作用やファンデルワールス力等の非共有結合も生じる。また、Cナノシート複合体を多量の水で繰り返し洗浄すると、超酸のプロトンとCナノシートの窒素原子との間の配位結合の一部又は全てが取り除かれ、超酸(超酸由来化合物を含んでもよい)や超酸を構成するアニオンとCナノシートとの間の非共有結合のみによる吸着を有するCナノシート複合体を得ることができる。超酸(超酸由来化合物を含んでもよい)が非共有結合によりCナノシートに吸着したCナノシート複合体は、共有結合により吸着したCナノシート複合体と比較してCナノシート表面に欠陥が少ない若しくは欠陥がなく、Cナノシートが本来有する特性を発現できるため、Cナノシート複合体及びこれを含む分散液、樹脂複合材料等の熱伝導性等の特性が向上する傾向にある。
本発明のCナノシート複合体において、前記イオン液体又は前記超酸の吸着量としては、特に制限されないが、Cナノシート複合体の分散性及び流動性(成形加工性)の向上の観点から、Cナノシート100質量部に対して0.01質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましく、0.3質量部以上が更に好ましく、0.4質量部以上が特に好ましく、0.5質量部以上が最も好ましい。前記イオン液体又は前記超酸の吸着量が前記下限未満になると、Cナノシートの分散性及び流動性(成形加工性)が低下しやすい傾向にある。また、前記イオン液体又は前記超酸の吸着量としては、Cナノシート100質量部に対して100000質量部以下が好ましく、10000質量部以下がより好ましく、Cナノシート複合体を含む樹脂複合材料や樹脂複合材の剛性や吸着安定性の向上の観点から、1000質量部以下が更に好ましく、100質量部以下が特に好ましく、90質量部以下が最も好ましい。なお、Cナノシートへのイオン液体又は超酸の吸着量については、熱重量分析によりイオン液体又は超酸に由来する重量減少を求めることにより算出することができる。
なお、イオン液体又は超酸のCナノシート表面への吸着については前述の熱重量分析やX線光電子分光分析及びX線光電子分光分析を用いた元素分析により確認することができる。例えば、イオン液体としてイミダゾリウムカチオンを含むイオン液体を用いた場合には、X線光電子分光分析において、約402eVにイミダゾリウムカチオンのN1sのピークが存在することにより確認できる。また、イオン液体としてPFアニオンを有するイオン液体を用いた場合には、X線光電子分光分析において、約135eVにP2pのピークが、約687eVにF1sのピークがそれぞれ存在することにより確認できる。更に、イオン液体としてスルホニル基を含むアニオンを有するイオン液体を用いた場合には、X線光電子分光分析において、約168eVにS2pのピークが存在することにより確認できる。また、X線光電子分光分析によるCナノシート複合体の表面の元素分析において、P原子、F原子、S原子等のイオン液体に由来する原子が存在することによっても確認できる。一方、超酸としてクロロスルホン酸を用いた場合には、X線光電子分光分析において、約200eVにクロロスルホン酸のCl2pのピークが、約168eVにS2pのピークが存在することにより確認できる。また、X線光電子分光分析によるCナノシート複合体の表面の元素分析において、Cl原子、S原子等の超酸に由来する原子が存在することによっても確認できる。
なお、本発明のCナノシート複合体における、Cナノシートの厚み、層数、40層以下のCナノシートの存在割合、20層以下のCナノシートの存在割合、一辺の長さについては前述のとおりである。
(Cナノシート複合体含有分散液)
本発明のCナノシート複合体含有分散液は、前記Cナノシート複合体と、イオン液体及び超酸以外の溶媒と、を含有するものである。前記Cナノシート複合体は、前記イオン液体中又は前記超酸中で調製してそのまま分散液として使用することもできるが、イオン液体及び超酸以外の溶媒中での分散性に優れているため、前記イオン液体中又は前記超酸中に添加して、前記イオン液体又は前記超酸を分散媒とする分散液として使用することができる。
このような本発明のCナノシート複合体含有分散液において、含有する前記Cナノシート複合体の濃度としては、特に制限されないが、Cナノシートが有する熱伝導率等の特性をより好ましく発現する観点から、0.01mg/ml以上であることが好ましく、0.05mg/ml以上であることがより好ましく、0.1mg/ml以上であることが更に好ましく、0.2mg/ml以上であることが特に好ましい。
なお、本発明のCナノシート複合体含有分散液における、Cナノシートの厚み、層数、40層以下のCナノシートの存在割合、20層以下のCナノシートの存在割合、一辺の長さについては前述のとおりである。
(イオン液体及び超酸以外の溶媒)
本発明のCナノシート複合体含有分散液において、イオン液体及び超酸以外の溶媒としては、特に制限されないが、例えば、有機溶媒及び水が挙げられる。これらは単独で用いても混合して用いてもよい。前記有機溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸アミル、テトラヒドロフラン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、テトラエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、クロロフェノール、フェノール、テトラヒドロフラン、スルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、γ−ブチロラクトン、1,5−ジメチル−2−ピロリドン、ペンタン、ヘキサン、ネオペンタン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、ジエチルエーテル等が挙げられる。これらの有機溶媒も1種を単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
このような本発明のCナノシート複合体含有分散液における前記有機溶媒としては、前記本発明のCナノシート複合体やその製造時に用いたイオン液体又は超酸、特に、イオン液体又は超酸を構成するアニオン種との親和性が高いものが好ましく、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ヘキサフルオロイソプロパノール、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、γ−ブチロラクトン、1,5−ジメチル−2−ピロリドン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、テトラエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコールを好ましく挙げることができる。また、このような本発明のCナノシート複合体含有分散液においては、スチレン、(メタ)アクリル酸等のビニル系モノマーやエポキシ樹脂等の硬化樹脂の主剤や架橋剤等の原料も溶媒として用いることができ、これら溶媒中でCナノシート複合体を分散させ、重合を行うことによってCナノシート複合体が高度に分散した樹脂複合体を得ることができる。
また、本発明のCナノシート含有分散液及び本発明のCナノシート複合体含有分散液においては、各種フィラーを更に含んでいてもよい。このようなフィラーとしては、特に制限されないが、例えば、アルミナ、窒化アルミ、立方晶カーボンナイトライド、窒化ケイ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、ダイヤモンド、酸化亜鉛、グラファイト、炭素繊維、セルロース、リグニン、セルロースナノファイバー;カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンナノプレートレット、グラフェン、数層グラフェン、ナノグラファイト(グラフェンナノリボン等)、ナノグラフェン、カーボンナノホーン、カーボンナノコーン、カーボンナノコイル、フラーレン等のカーボン系ナノフィラー:遷移金属ダイカルコゲナイド、13族カルコゲナイド、14族カルコゲナイド、ビスマスカルコゲナイド等のカルコゲナイド系層状物質;層状高温超伝導化合物、雲母、滑石、カオリン等の層状ケイ酸塩;酸化チタン系及びペロブスカイト系ナノシート等の層状酸化物が好ましい。これらの中でも、例えば、グラファイト、数層グラフェン、六方晶窒化ケイ素、六方晶炭化ケイ素及びカルコゲナイド系層状物質等の層状物質とC又はCナノシートとをイオン液体中又は超酸中で混合した場合、これらの層状物質の剥離又は分散も進行した分散液を得ることもできる。また、これらの混合物の分散液から溶媒を除去し、前記層状物質の剥離により得られたナノシートとCナノシート又はCナノシート複合体とを配向、配列させることによって、前記層状物質の剥離により得られたナノシートとCナノシート又はCナノシート複合体とからなる積層体を作製することもできる。
[製造方法]
次に、本発明のCナノシート含有分散液の製造方法、本発明のCナノシート複合体の製造方法、及び本発明のCナノシート複合体含有分散液の製造方法について説明する。
本発明のCナノシート含有分散液は、X線回折スペクトルにおける(100)面のピーク強度(I100)に対する(002)面のピーク強度(I002)の比(I002/I100)が6以上であるカーボンナイトライド(C)とイオン液体又は超酸とを混合(混合処理)して、前記Cの層間を剥離して前記Cナノシートを得ると共に、前記イオン液体又は前記超酸に前記Cナノシートを分散させることによって製造することができる。
また、本発明のCナノシート複合体の製造方法は、X線回折スペクトルにおける(100)面のピーク強度(I100)に対する(002)面のピーク強度(I002)の比(I002/I100)が6以上であるカーボンナイトライド(C)とイオン液体又は超酸とを混合し、前記Cの層間を剥離せしめて前記Cナノシートを得ると共に該Cナノシートに前記イオン液体又は前記超酸を吸着させる剥離吸着工程を含む特徴とする方法である。
更に、本発明のCナノシート複合体含有分散液は、本発明のCナノシート複合体をイオン液体及び超酸以外の溶媒に添加して混合することによって製造することができる。
(カーボンナイトライド)
本発明において原料として用いられるカーボンナイトライド(C)は、X線回折スペクトルにおける(100)面のピーク強度(I100)に対する(002)面のピーク強度(I002)の比(I002/I100)が6以上のものである。通常のCは、平面性に劣り、三次元的に非共有結合及び/又は共有結合により連結した構造を有しているため、窒化ホウ素やグラファイトと比べて剥離が困難であり、イオン液体中又は超酸中でそのまま弱い超音波処理や撹拌処理等の混合処理を施してもCの層間剥離が十分に進行しない。一方、前記I002/I100の値が6以上のCは、Cは層間の非共有結合及び/又は共有結合の少なくとも一部が破壊されており、層間の結合力が弱くなっている。このような層間の結合力が弱くなったCは、前記イオン液体中又は前記超酸中で弱い超音波処理や撹拌処理等の混合処理を施すだけで、層間剥離が飛躍的に進行し、層数が少なく、分散性に優れたCナノシートを形成する。更に、このようにして得られるCナノシートは、マイルドな条件で混合処理が施されているため、C層の面内方向の構造破壊が起こりにくく、一辺のサイズが比較的大きくなる。また、原料として用いるCとしては、前記イオン液体中又は前記超酸中での弱い超音波処理や撹拌処理等の混合処理による層間剥離が起こりやすいという観点から、前記I002/I100の値が7以上のCが好ましく、8以上のCがより好ましく、9以上のCが更に好ましく、9.5以上のCが特に好ましく、10以上のCが最も好ましい。
このような所定のI002/I100値を有するCは、例えば、通常のCに微粉砕処理を施すことによって得ることができる。微粉砕処理としては、特に制限はないが、例えば、乳鉢やライカイ機等を用いて磨り潰す方法(具体的には、乳棒やライカイ機等を用いて機械的に緩やかに磨り潰す方法)、ボールミリング装置を用いたボールミリング処理、湿式ジェットミルを用いた湿式での処理、剪断式ミルを用いた剪断力による処理等が挙げられる。また、微粉砕処理は水や有機溶媒等の溶媒の存在下で行なってもよいが、前記I002/I100の値を高めるという観点から、存在する溶媒量が少ないことが好ましく、例えば、C100重量部に対して、溶媒量が100重量部以下であることが好ましく、50重量部以下であることがより好ましく、10重量部以下であることが更に好ましく、5重量部以下であることが特に好ましい。また、通常のCを乳鉢やライカイ機等で磨り潰す場合、磨り潰し時間の下限としては特に制限はないが、前記I002/I100の値を高めるという観点から、1分間以上であることが好ましく、3分間以上であることがより好ましく、5分間以上であることが更に好ましく、10分間以上であることが特に好ましく、20分間以上であることが最も好ましい。磨り潰し時間の上限としては特に制限はないが、C層の面内方向の構造破壊により一次粒子の一辺のサイズが小さくなることを抑制するという観点から、120分間以下が好ましく、60分間以下がより好ましく、30分間以下が更に好ましく、25分間以下が特に好ましい。
所定のI002/I100値を有するCを調製する際に用いられる通常のCとしては、特に制限はないが、グラファイト状カーボンナイトライド、六方晶カーボンナイトライド、乱層構造カーボンナイトライド等が挙げられる。これらの中でも、光触媒活性に優れるという観点から、グラファイト状カーボンナイトライド(以下、「g−C」と略す場合もある。)が好ましい。また、これらのCの形状としては、特に制限はないが、パウダー状、フレーク状、ビーズ状等が好ましい。更に、このようなCとして、通常のCの類縁体としてホウ素やケイ素等のその他の原子も含むものやシランカップリング剤等の公知の表面処理剤で表面処理を施したCも用いることができるが、Cの有する触媒活性、電気特性、熱伝導率、力学物性等を十分に発現するという観点から、CNの純度が高いCが好ましい。例えば、得られるCナノシート含有分散液、Cナノシート複合体及びそれを含む樹脂複合材料、Cナノシート積層体の触媒活性、電気特性、熱伝導率の向上の観点から、CNの純度としては、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが更に好ましく、97質量%以上であることが特に好ましく、99質量%以上であることが最も好ましい。
本発明に用いられる所定のI002/I100値を有するCの平均二次粒子径としては、特に制限されないが、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましく、0.2μm以上であることが更に好ましく、0.3μm以上であることが特に好ましく、0.4μm以上であることが最も好ましい。本発明においては、前記イオン液体又は前記超酸を用いることによって、このような、通常、剥離と孤立分散が困難な平均二次粒子径の大きなCも分散させることが可能となる。また、所定のI002/I100値を有するCの二次粒子を構築するC一次粒子の一辺の平均サイズ(長さ)の下限としては、特に制限されないが、0.01μm以上であることが好ましく、0.05μm以上であることがより好ましく、0.1μm以上であることが更に好ましく、0.2μm以上であることが特に好ましく、0.3μm以上であることが最も好ましい。
(Cナノシート含有分散液の製造方法)
本発明のCナノシート含有分散液は、このような所定のI002/I100値を有するCとイオン液体又は超酸とを混合(混合処理)して、前記Cの層間を剥離して前記Cナノシートを得ると共に、前記イオン液体又は前記超酸に前記Cナノシートを分散させることによって製造することができる。ここで、イオン液体又は超酸としては、前記Cナノシート含有分散液等に関して説明した前記イオン液体又は前記超酸を用いることができる。また、前述した各種フィラーと前記カーボンナイトライド(C)と前記イオン液体又は前記超酸とを混合(混合処理)することによって、各種フィラーを含有する本発明のCナノシート含有分散液を製造することができる。
前記カーボンナイトライド(C)とイオン液体又は超酸とを混合(混合処理)することによって、前記Cの層間剥離が進行し、前記イオン液体中又は前記超酸中に層間剥離したCナノシートが高度に分散する。前記混合処理としては、特に制限されないが、超音波処理、振動処理、攪拌処理、粉砕処理、外場の印加(例えば、電場印加、磁場印加等)、電磁波照射(例えば、マイクロ波照射、ミリ波照射等)、混練から選ばれる少なくとも一種の混合処理であることが好ましい。これらの混合処理の中でも、Cの層間剥離を効率的に進行させ、層数の少ないCナノシートを比較的高濃度でかつ高度に分散したCナノシート分散液が得られるという観点から、超音波処理、撹拌処理及び粉砕処理からなる群から選択される少なくとも一種の混合処理が好ましく、超音波処理がより好ましい。
(Cナノシート複合体の製造方法)
本発明のCナノシート複合体の製造方法は、前記所定のI002/I100値を有するCとイオン液体又は超酸とを混合し、前記Cの層間を剥離せしめて前記Cナノシートを得ると共に該Cナノシートに前記イオン液体又は前記超酸を吸着させる剥離吸着工程を含む特徴とする方法である。このCナノシート複合体の製造方法において、イオン液体又は超酸としては、前記Cナノシート複合体等に関して説明した前記イオン液体又は前記超酸を用いることができる。
このような本発明のCナノシート複合体の製造方法としては、前記所定のI002/I100値を有するCと前記イオン液体又は前記超酸とを混合し、前記Cの層間を剥離せしめて前記Cナノシートを得ると共に前記Cナノシートに前記イオン液体又は前記超酸を吸着させることが可能な方法であれば、特に制限はないが、例えば、以下の方法が挙げられる。
(i)前記所定のI002/I100値を有するCと前記イオン液体又は前記超酸とを溶媒を使用せずに混合して層間剥離処理を施す方法。
(ii)前記所定のI002/I100値を有するCと前記イオン液体又は前記超酸とを溶媒中で混合して層間剥離処理を施す方法。
(iii)前記所定のI002/I100値を有するCと前記イオン液体又は前記超酸とを溶媒を使用せずに混合する方法。
(iV)前記所定のI002/I100値を有するCと前記イオン液体又は前記超酸とを溶媒中で混合する方法。
これらの製造方法は単独で実施しても2つ以上を組み合わせて実施してもよい。
(剥離吸着工程)
本発明のCナノシート複合体の製造方法においては、前記所定のI002/I100値を有するCと前記イオン液体又は前記超酸とを混合し、前記Cの層間を剥離せしめて前記Cナノシートを得ると共に前記Cナノシートに前記イオン液体又は前記超酸を吸着させる工程(剥離吸着工程)を含むことが必要である。
このような剥離吸着工程においては、超音波処理、振動処理、攪拌処理、粉砕処理、外場の印加(例えば、電場印加、磁場印加等)、電磁波照射(例えば、マイクロ波照射、ミリ波照射等)、混練から選ばれる少なくとも一種の層間剥離処理を施すことが好ましい。これらの層間剥離処理の中でも、前記イオン液体又は前記超酸の存在下で前記Cに超音波処理、撹拌処理及び粉砕処理からなる群から選択される少なくとも一種の層間剥離処理を施すことがより好ましい。この層間剥離処理により、前記Cの剥離を効率的に進行させ、層数の少ないCナノシートを含有するCナノシート複合体が得られる傾向にある。
このような層間剥離処理としては、分散性と再分散性に優れるCナノシート複合体が得られるという観点から、超音波処理及び粉砕処理からなる群から選択される少なくとも一種が更に好ましく、超音波処理であることが特に好ましい。このような超音波処理としては、特に制限されないが、例えば、超音波洗浄機を用いる方法や超音波ホモジナイザー(プローブ型ソニケーター)を用いる方法等が挙げられるが、Cナノシートの表面へのダメージを抑制し、Cナノシートの面内方向の構造破壊によるCナノシートの一辺のサイズの低下を抑制することで、Cナノシートの本来の特性を発揮する観点から、超音波洗浄機を用いる方法が特に好ましい。本発明においては、前記所定のI002/I100値を有するCを前記イオン液体中又は前記超酸中に分散させた後、分散液に超音波処理を施す場合、例えば、卓上型超音波洗浄機を用いて、超音波発振周波数を45kHzとした場合、超音波処理時間としては、特に制限されないが、1分以上であることが好ましく、より好ましくは1時間以上であり、更に好ましくは5時間以上であり、特に好ましくは25時間以上であり、最も好ましくは48時間以上である。従来技術では、超音波処理時間が短い場合、例えば、1分以上1時間未満の場合、本発明にかかるCナノシートを得ることが困難であったが、本発明においては、前記所定のI002/I100値を有するCを用いることにより、前記Cの剥離を効率的に進行させることができ、本発明のCナノシート複合体を得ることが可能となる。また、従来技術では、超音波処理時間が24時間程度を超えると得られるCナノシートのサイズが小さくなってしまう課題があったが、本発明においては、イオン液体又は超酸を用いることによって、従来より大きな粒子径を有するC粒子を原料として用いることが可能となり、かつ剥離が効率的に進行することから、Cナノシート構造の破壊を抑制しつつ、層間剥離を更に進行させることができ、収率を更に向上させることができる。
また、本発明にかかる層間剥離処理、中でも特に超音波処理又は撹拌処理を行う場合には、層間剥離処理後に遠心分離操作又は静置を行うことが好ましく、遠心分離操作を行うことがより好ましい。遠心分離操作又は静置は、層間剥離処理後の分散液中に存在する剥離の不十分な大きな粒子や物理的な絡み合い等により剥離が困難なC粒子を除去するためであり、遠心分離操作又は静置により大きな粒子を除去した後の上澄み液は、更にろ過及び/又は乾燥により溶媒使用時には溶媒、又は/及び未吸着のイオン液体又は超酸の少なくとも一部除去し、Cナノシート複合体を得ることができる。なお、遠心分離操作における回転速度としては、特に制限されないが、300〜100000rpmの範囲にあることが好ましく、500〜10000rpmの範囲にあることがより好ましい。前記回転速度が前記上限を超えると、上澄み液中のCナノシートの濃度が低下する傾向にあり、他方、前記下限未満では40層以下のCナノシートの割合が低下し、かつ、Cナノシート複合体の分散性が低下する傾向にある。また、相対遠心加速度は、特に制限されないが、10〜1000000Gの範囲にあることが好ましく、100〜100000Gの範囲にあることがより好ましい。前記相対遠心加速度が前記上限を超えると、上澄み液中のCナノシートの濃度が低下する傾向にあり、他方、前記下限未満では40層以下のCナノシートの割合が低下し、かつ、Cナノシート複合体の分散性が低下する傾向にある。また、遠心分離操作の時間は、特に制限されないが、1分間〜24時間の範囲にあることが好ましく、5分間〜2時間の範囲にあることがより好ましい。前記遠心分離操作の時間が前記上限を超えると、上澄み液中のCナノシートの濃度が低下する傾向にあり、他方、前記下限未満では40層以下のCナノシートの割合が低下し、かつ、得られるCナノシート複合体の再分散性が低下する傾向にある。更に、静置させる場合、静置時間の下限としては、特に制限されないが、5分以上であることが好ましく、10分以上であることがより好ましく、1時間以上が更に好ましく、10時間以上が特に好ましく、20時間以上が最も好ましい。静置時間の上限としては、特に制限されないが、30日以下であることが好ましく、15日以下であることがより好ましく、10日以下が更に好ましい。前記静置時間が前記上限を超えると、上澄み液中のCナノシートの濃度が低下する傾向にあり、他方、前記下限未満では40層以下のCナノシートの割合が低下し、かつ、Cナノシート複合体の分散性が低下する傾向にある。
また、本発明にかかる層間剥離処理において撹拌処理を行う場合には、撹拌処理の回転数としては、特に制限されないが、100rpm以上が好ましく、より好ましくは200rpm以上であり、更に好ましくは300rpm以上であり、特に好ましくは400rpm以上であり、最も好ましくは500rpm以上である。前記撹拌処理の回転数が前記下限未満では、40層以下のCナノシートの割合が低下し、かつ、Cナノシート複合体の分散性が低下する傾向にある。
また、本発明にかかる層間剥離処理において粉砕処理を行う場合には、粉砕処理方法としては、特に制限されないが、乳鉢、せん断式ミル、ジョークラッシャー、衝撃式クラッシャー、コーンクラッシャー、ロールクラッシャー、ハンマーミル、ボールミル、振動ミル、ピンミル、攪拌ミル、乾式ジェットミル、湿式ジェットミルによる粉砕方法、等を用いることができる。乳鉢を用いた粉砕処理により前記イオン液体又は前記超酸の存在下、Cナノシート複合体を製造する場合には、粉砕時間は特に制限はないが、5分以上であることが好ましく、30分以上であることがより好ましく、1時間以上であることが更に好ましく、2時間以上であることが特に好ましく、3時間以上であることが最も好ましい。イオン液体又は超酸の存在下で前記所定のI002/I100値を有するCを粉砕することで、前記所定のI002/I100値を有するC及び得られるCナノシートに加わるせん断力を適切に制御することができ、面内方向の構造破壊を抑制したまま、層間剥離を効率的に進行させることができる。なお、イオン液体又は超酸の非存在下では、粉砕時のせん断が大きくなりすぎるため、層間剥離だけでなく、面内方向での構造破壊が生じ、一辺のサイズが小さくなる課題があり、本発明のCナノシート複合体を得ることができない。
本発明にかかる層間剥離処理において溶融混練を行う場合には、前記所定のI002/I100値を有するCと前記イオン液体又は前記超酸と、更に必要に応じて樹脂及び/又は添加剤とをそれぞれペレット状、粉末状又は細片状にしたものを、攪拌機、ドライブレンダー又は手混合等により均一に混合した後、押出機、ゴムロール機、又はバンバリーミキサー等を用いて溶融混練することができる。
本発明のCナノシート複合体の製造方法においては、前記所定のI002/I100値を有するCと前記イオン液体又は前記超酸とを混合する方法については、特に制限されないが、一括で混合しても分割して混合してもよい。また、その順序については、前記所定のI002/I100値を有するCに前記イオン液体又は前記超酸を添加してもよいし、前記イオン液体又は前記超酸に前記所定のI002/I100値を有するCを添加してもよいし、前記所定のI002/I100値を有するCと前記イオン液体又は前記超酸とを同時に添加してもよいし、少なくとも一部ずつを交互に添加してもよい。
また、本発明のCナノシート複合体の製造方法においては、前記所定のI002/I100値を有するCと前記イオン液体又は前記超酸とを混合する際に、イオン液体及び超酸以外の溶媒、樹脂、フィラー、添加剤を添加してもよい。ここで、イオン液体及び超酸以外の溶媒及びフィラーとしては、前記Cナノシート複合体等に関して説明した前記イオン液体及び超酸以外の溶媒及びフィラーを用いることができる。また、このような樹脂や添加剤の混合も、一括で行っても分割して行ってもよい。また、その混合順序についても特に制限されない。
本発明のCナノシート複合体の製造方法において、前記所定のI002/I100値を有するCと前記イオン液体又は前記超酸との混合比率としては、特に制限されないが、前記イオン液体又は前記超酸の添加量が、前記C100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましく、1.0質量部以上であることが更に好ましく、2.0質量部以上であることが特に好ましく、3.0質量部以上であることが最も好ましい。前記イオン液体又は前記超酸の添加量が前記下限未満になると、溶媒中や樹脂中でのCナノシート複合体の分散性が低下しやすい傾向にある。また、生産性の向上の観点から、前記イオン液体又は前記超酸の添加量の上限としては、前記C100質量部に対して、100000000質量部以下が好ましく、10000000質量部以下がより好ましく、1000000質量部以下が更に好ましく、500000質量部以下が特に好ましく、100000質量部以下が最も好ましい。
また、このような本発明のCナノシート複合体の製造方法において、前記所定のI002/I100値を有するCと前記イオン液体又は前記超酸との混合時の温度としては、特に制限されないが、0℃未満でもよいが、室温(23℃)以上がより好ましく、30℃以上が更に好ましい。
なお、本発明のCナノシート複合体の製造方法においては、前記混合(混合処理)により前記Cナノシートに前記イオン液体又は前記超酸を吸着させた後、そのまま、或いは水及び/又は有機溶媒に滴下して、Cナノシート複合体含有分散液を調製し、必要に応じて、ろ過、遠心分離操作及び/又は静置とろ過との組み合わせ、再沈殿、溶媒の除去(乾燥等)、溶媒を含んだままの溶融混練、Cナノシート複合体のサンプリング等を施すことによって、本発明のCナノシート複合体を得ることができる。
また、超酸が吸着したCナノシート複合体を製造する場合、得られるCナノシート平面のN原子と超酸のプロトンとの間の共有結合(配位結合)を取り除き、Cナノシート平面の欠陥を減少させる、或いは未吸着の超酸を取り除いて、Cナノシート複合体及びそれを含む樹脂複合材料の熱伝導性の向上の観点から、前記ろ過は水及び/又は有機溶媒を用いた洗浄ろ過であることが好ましく、少なくとも水を含む溶媒による洗浄ろ過であることがより好ましい。前記水の容量としては、特に制限されないが、Cナノシート平面のN原子と超酸のプロトンとの共有結合を取り除く、或いは未吸着の超酸を取り除く点から、製造時に用いた超酸の容量の3倍以上であることが好ましく、5倍以上であることがより好ましい。
更に、本発明のCナノシート複合体の製造方法においては、得られたCナノシート複合体に、例えば、150℃以上の温度での加熱処理、アルカリを用いた処理、強力な洗浄処理、強力及び/又は長時間の超音波処理、電子線照射等の処理を施して、Cナノシートの表面に吸着している前記イオン液体又は前記超酸の少なくとも一部を分解したり、取り除いたりすることによって、前記イオン液体又は前記超酸が実質的に表面から除かれたCナノシートを製造することができる。また、本発明のCナノシート複合体においては、高温での加熱処理、アルカリを用いた処理、強力な洗浄処理、強力及び/又は長時間の超音波処理、電子線照射、電磁波(マイクロ波、ミリ波等)の照射等の処理によって前記イオン液体又は前記超酸の少なくとも一部がイオン液体由来の残渣又は超酸由来の残渣に変化しているものや、Cナノシート複合体のCナノシートの平面や端部にNH等が少量存在する場合には、これら官能基を利用した有機反応により、例えばアルキル基等の有機残基が導入されたものが含まれていてもよい。
また、前記製造方法により前記Cナノシートに前記イオン液体又は前記超酸を吸着させた場合には、必要に応じて、混合後の分散液をろ過してイオン液体又は超酸は回収して再利用することができる。更に、遠心分離操作等により沈殿した未剥離のC粒子を回収し、再利用することで、Cナノシート含有分散液やCナノシート複合体及びそれを含む分散液を製造することもできる。また、前記イオン液体又は前記超酸に対する貧溶媒で再沈殿させることにより、Cナノシート複合体を回収することもできる。更に、イオン液体中又は超酸中に分散したCナノシート、好ましくはイオン液体又は超酸が吸着したCナノシート複合体を水や有機溶媒に添加することによって、溶媒をイオン液体又は超酸から水や有機溶媒に変換することができる。
(Cナノシート複合体含有分散液の製造方法)
本発明のCナノシート複合体含有分散液は、前記本発明のCナノシート複合体をイオン液体及び超酸以外の溶媒に添加して超音波処理等を施して混合(混合処理)することによって製造することができる。また、前記所定のI002/I100値を有するC、前記イオン液体又は前記超酸、イオン液体及び超酸以外の溶媒を一括又は分割して混合し、弱い超音波処理や撹拌処理等の混合処理を施すことによって、本発明のCナノシート複合体含有分散液を製造することもできる。この場合、イオン液体及び超酸以外の溶媒中で、前記イオン液体又は前記超酸が前記所定のI002/I100値を有するCに吸着してCが層間剥離され、Cナノシート複合体が形成されることによって、本発明のCナノシート複合体含有分散液を得ることができる。ここで、イオン液体又は超酸としては、前記Cナノシート複合体含有分散液等に関して説明した前記イオン液体又は前記超酸を用いることができる。また、イオン液体及び超酸以外の溶媒としては、前記Cナノシート複合体含有分散液等に関して説明した前記イオン液体及び超酸以外の溶媒を用いることができる。更に、前述した各種フィラーを添加して混合することによって、各種フィラーを含有する本発明のCナノシート複合体含有分散液を製造することができる。
前記混合処理としては、特に制限されないが、超音波処理、振動処理、攪拌処理、粉砕処理、外場の印加(例えば、電場印加、磁場印加等)、電磁波照射(例えば、マイクロ波照射、ミリ波照射等)、混練から選ばれる少なくとも一種の混合処理であることが好ましい。これらの混合処理の中でも、Cの層間剥離を効率的に進行させ、Cナノシート複合体が比較的高濃度でかつ高度に分散したCナノシート複合体含有分散体が得られるという観点から、超音波処理、撹拌処理及び粉砕処理からなる群から選択される少なくとも一種の混合処理が好ましく、超音波処理がより好ましく、マイルドな条件での混合処理が可能であり、Cナノシートへのダメージを抑制しつつ高度に分散させることが可能であるという観点から、超音波洗浄機を用いた超音波処理が特に好ましい。
また、このような混合(混合処理)を行った後、遠心分離操作及び/又は静置により、Cナノシート複合体分散液中に存在する大きな粒子や物理的な絡み合い等により剥離が困難なC粒子を除去することが好ましい。なお、遠心分離操作及び/又は静置は、比較的高濃度の分散液が得られるという観点及び取扱い安全性の観点から、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。また、溶媒中にイオン液体又は超酸が残存する場合には、層数の少ないCナノシート複合体を含有する分散液が得られるという観点から、イオン液体又は超酸をその他の溶媒に置換した後、遠心分離及び/又は静置により、分散液中に存在する大きな粒子や物理的な絡み合い等により剥離が困難なC粒子を除去することが好ましい。特に、溶媒中に超酸が残存する場合には、分散液の取扱い性の向上の観点からも、超酸をその他の溶媒(有機溶媒又は水)に置換することが好ましい。
このような本発明のCナノシート複合体含有分散液の製造において、前記Cナノシート複合体とイオン液体及び超酸以外の溶媒との混合比率については、特に制限されないが、Cナノシートの添加量の下限が、溶媒100質量部に対して、0.0001質量部以上となることが好ましく、0.001質量部以上となることがより好ましく、0.005質量部以上となることが更に好ましく、0.1質量部以上となることが特に好ましい。また、Cナノシートの添加量の上限が、溶媒100質量部に対して、1質量部以下となることが好ましく、0.1質量部以下となることがより好ましく、0.09質量部以下となることが更に好ましく、0.08質量部以下となることが特に好ましい。Cナノシートの添加量が前記下限未満になると、Cナノシート複合体の生産性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、Cナノシートの分散性が低下して凝集が起こりやすく、イオン液体又は超酸の吸着量が減少しやすく、吸着安定性が低下しやすい傾向にある、なお、前記好適な上限を超えた場合でも、例えば、分散液中の凝集や沈殿がない部分(例えば、上澄み液等)を回収すること等によって良質な分散液を得ることができる。
[Cナノシート薄層体及びその製造方法]
次に、本発明のCナノシート複合体を用いて得られるカーボンナイトライドナノシート薄層体(Cナノシート薄層体)について説明する。前記本発明のCナノシート複合体から、吸着している前記イオン液体又は前記超酸を除去することによって、Cナノシート薄層体が得られる。このCナノシート薄層体は、Cナノシートが薄層化された、前記イオン液体及び前記超酸を含まないCナノシート(すなわち、Cナノシート薄層体)である。このようなCナノシート薄層体は、前記本発明のCナノシート複合体におけるCナノシートの特徴である少ない層数と大きな一辺の長さを維持されているため、触媒活性、電気特性、熱伝導性、力学物性に優れている。また、前記イオン液体及び前記超酸が除去されているため、例えば、200℃以上の温度で、例えば、10年以上といった長時間使用する際に有用となる長期耐熱性に優れている。なお、前記Cナノシート薄層体及びその製造方法におけるCナノシート及びイオン液体又は超酸は、前記Cナノシート複合体等に関して説明した前記Cナノシート及び前記イオン液体又は前記超酸である。
このようなCナノシート薄層体の製造方法における前記イオン液体又は前記超酸の除去方法としては、特に制限されないが、例えば、150℃以上の温度での加熱処理、アルカリを用いた処理、強力な洗浄処理、強力及び/又は長時間の超音波処理、電子線照射等の処理であることが好ましい。これらのイオン液体又は超酸の除去方法の中でも、Cナノシート複合体のCナノシートの層数と大きな一辺のサイズを維持し、熱伝導性と長期耐熱性に優れるCナノシート薄層体が得られるという観点から、150℃以上の温度での加熱処理がより好ましく、200℃以上の温度での加熱処理が更に好ましく、250℃以上の温度での加熱処理が特に好ましく、300℃以上の温度での加熱処理が最も好ましい。また、加熱処理時間としては、特に制限されないが、前記イオン液体又は前記超酸を除去する際のCナノシートの再スタッキングを抑制するという観点から、1分以上であることが好ましく、10分以上であることがより好ましく、30分以上であることが更に好ましい。
[複合材料及びその製造方法]
次に、本発明のCナノシート複合体を用いて得られる複合材料について説明する。前記複合材料は、前記本発明のCナノシート複合体と、樹脂、金属、セラミックス等と含有するものである。本発明のCナノシート複合体は、樹脂、金属、セラミックス中での分散性に優れているため、これらの中での均一分散が可能である。中でも、本発明のCナノシート複合体と樹脂とを含有する樹脂複合材料においては、本発明のCナノシート複合体が通常のCと比較して層数が少ないため、その比表面積が大きく、かつ表面に吸着した前記イオン液体又は前記超酸により、有機溶媒や樹脂との親和性に優れていることから、本発明のCナノシート複合体を少量配合しただけで、樹脂複合材料の特性を向上する。
このような樹脂複合材料におけるCナノシート複合体の含有率としては、特に制限されないが、樹脂複合材料100質量%に対して、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、0.2質量%以上が特に好ましく、また、90質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましく、5質量%以下が特に好ましい。前記Cナノシート複合体の含有率が前記下限未満になると、樹脂複合材料の熱伝導性及び機械強度が低下しやすい傾向にあり、他方、前記上限を超えると、樹脂複合材料の流動性が低下しやすい傾向にある。
このような樹脂複合材料における前記樹脂としては、特に制限されないが、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、熱硬化性ポリアミドイミド、熱硬化性シリコーン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ユリア樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アルキド樹脂、及びウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリスチレン、HIPS(耐衝撃性ポリスチレン)、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、AS(アクリロニトリル−スチレン)樹脂、MAS(メタクリル酸メチル−アクリロニトリル−スチレン)樹脂、MABS(メタクリル酸メチル−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、及びSBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)樹脂といった芳香族ビニル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸、これらの共重合体、及びアクリルゴムといったアクリル系樹脂、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル−アクリル酸メチル樹脂、及びアクリロニトリル−ブタジエン樹脂といったシアン化ビニル系樹脂、イミド基含有ビニル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、エチレンプロピレンジエンモノマーゴム、及びエチレンプロピレンゴムといったポリオレフィン系樹脂、酸又は酸無水物変性ポリオレフィン系樹脂、エポキシ変性ポリオレフィン樹脂、酸又は酸無水物変性アクリル系エラストマー、エポキシ変性アクリルエラストマー、シリコーンゴム、フッ素ゴム、天然ゴム、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ1,4−シクロヘキサンジメチルテレフタレート等のポリエステル、ポリアリレート、液晶ポリエステル、ポリフェニレンエーテル、ポリアリーレンスルフィド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリオキシメチレン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン及びポリフッ化ビニルに代表されるフッ素系樹脂、ポリ乳酸、ポリ塩化ビニル、熱可塑性ポリイミド、熱可塑性ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルアミド等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの樹脂は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
また、これらの樹脂の中でも、樹脂複合材料の熱伝導性及び機械強度の観点から、結晶性樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ1,4−シクロヘキサンジメチルテレフタレート等のポリエステル、液晶ポリエステル、ポリアリーレンスルフィド、ポリオキシメチレン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン及びポリフッ化ビニル等のフッ素系樹脂、ポリ乳酸、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルアミド等)がより好ましい。
なお、このような樹脂複合材料においては、必要に応じて各種添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、特に制限されないが、例えば、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、離型剤、結晶核剤、粘度調整剤、着色剤、シランカップリング剤等の表面処理剤、タルク、モンモリロナイト等の粘土鉱物、雲母鉱物及びカオリン鉱物に代表される層状ケイ酸塩、ガラス繊維、炭素繊維、シリカや熱伝導性フィラー等の充填剤、エラストマー類等が挙げられる。
前記熱伝導性フィラーとしては、特に制限されないが、例えば、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ダイヤモンド、酸化亜鉛、グラファイト、炭素繊維や、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンナノプレートレット、グラフェン、数層グラフェン、ナノグラファイト(グラフェンナノリボン等)、ナノグラフェン、カーボンナノホーン、カーボンナノコーン、カーボンナノコイル、フラーレン、等のカーボン系ナノフィラーが挙げられる。これらの熱伝導性フィラーは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。このような樹脂複合材料における熱伝導性フィラーの含有率としては、特に制限されないが、樹脂複合材料100質量%に対して、0.1〜95質量%が好ましく、0.1〜90質量%がより好ましく、0.1〜80質量%が更に好ましく、0.1〜70質量%が特に好ましく、0.1〜50質量%が最も好ましい。前記熱伝導性フィラーの含有率が前記下限未満になると、樹脂複合材料の熱伝導性が十分に向上しない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、樹脂複合材料の流動性が低下しやすい傾向にある。
このような樹脂複合材料を調製する際に用いられるCナノシート複合体は、乾燥処理が施されていてもよいし、溶媒(有機溶媒及び/又は水)を含んでいてもよい。乾燥処理の温度としては、特に制限されないが、乾燥時の凝集を防ぐ観点から、凍結乾燥させることが好ましい。また、Cナノシート複合体が凝集している場合、それをそのまま用いても樹脂中で速やかに分散するが、粉砕や凍結粉砕を施して予め解砕することが好ましい。
このような樹脂複合材料の製造方法としては、特に制限されないが、樹脂中にフィラーを分散させる際に採用される従来公知の混合方法において、前記フィラーの代わりに前記本発明のCナノシート複合体を混合する方法が挙げられる。例えば、溶媒中で樹脂と前記本発明のCナノシート複合体と、必要に応じて各種添加剤とを混合する方法、押出機、ゴムロール機、又はバンバリーミキサー等を用いて樹脂と前記本発明のCナノシート複合体と、必要に応じて各種添加剤とを溶融混練する方法等が挙げられる。溶媒中で樹脂と前記本発明のCナノシート複合体と、必要に応じて各種添加剤とを混合する方法の場合、混合後に溶媒を、例えば、溶液キャスト法、真空乾燥、再沈殿等の従来公知の方法により除去することによってCナノシートが分散した樹脂複合材料を得ることができる。ここで用いられる溶媒としては、Cナノシート作製時に使用した前記イオン液体又は前記超酸と親和性があるものが好ましく、更に、用いる樹脂を溶解するものがより好ましく、使用する樹脂の種類によって適宜選択することができる。例えば、樹脂として透明性の観点から好ましく用いられるアクリル系樹脂を選択した場合に適した溶媒としては、クロロホルムやN,N−ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。更に、樹脂として低粘度の熱硬化性樹脂を用いる場合には、自公転ミキサー等のミキサーを用いて複合化処理を施すことにより混合することも可能である。また、樹脂と前記本発明のCナノシート複合体と、必要に応じて各種添加剤とを混合する場合、これらを一括で混合しても分割して混合してもよい。また、その順序についても特に制限はなく、特定の成分を予備混合した後、残りの成分を混合してもよい。Cナノシート複合体の樹脂中への分散性を向上させるという観点からは、樹脂の一部及び/又は各種添加剤を予めCナノシート複合体と予備混合させることが好ましい。予備混合の方法としては、例えば、溶媒中で混合させる方法、溶融させた樹脂とCナノシート複合体とを混合させる方法、攪拌機、ドライブレンダー又は手混合等により混合する方法、Cナノシート複合体の製造時に樹脂の少なくとも一部及び/又は各種添加剤を混合する方法等が挙げられる。このような予備混合方法の中でも、溶媒中で混合させる方法が好ましく、樹脂の少なくとも一部及び/又は各種添加剤を溶媒中に溶解及び/又は分散(溶解を伴わないもの)させ、これに前記本発明のCナノシート複合体を添加して混合させる方法、又は、前記本発明のCナノシート複合体を含む分散液に樹脂の少なくとも一部及び/又は各種添加剤を添加して混合させる方法がより好ましい。なお、予備混合する際の樹脂の形状は特に制限されず、例えば、粉状、ペレット状、粒状、タブレット状、繊維状等が挙げられる。
また、このような樹脂複合材料の製造方法においては、側鎖等の樹脂骨格中に前記イオン液体又は前記超酸を構成するアニオン種と同様又は類似の構造を導入した樹脂と、Cナノシート複合体と混合することにより、Cナノシート複合体を樹脂中に高度に分散させることができる。また、樹脂中でCナノシート複合体と前記イオン液体又は前記超酸とを混合し、Cナノシートに前記イオン液体又は前記超酸を吸着させることによっても製造することができる。前記混合方法としては、例えば、溶媒中での超音波処理、振動処理、攪拌処理、粉砕処理、外場の印加(例えば、電場印加、磁場印加等)、電磁波(例えば、マイクロ波、ミリ波等)の照射、混練等による混合方法が好ましい。
このような樹脂複合材料を用いて成形体を製造する方法としては、特に制限されないが、前記樹脂複合材料に、射出成形、プレス成形、押出成形、ブロー成形、圧縮成形、ガスアシスト成形、インサート成形、2色成形、外場を利用した成形(例えば、磁場成形、電場を利用した成形等)等の従来公知の成形加工を施すことによって、樹脂複合材(成形体)を得ることができる。成形温度としては、特に制限されないが、本発明のCナノシート複合体が耐熱性に優れているため、例えば、290℃以上(好ましくは300℃以上、より好ましくは310℃以上)の高温での成形も可能である。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、原料C、Cナノシート含有分散液(実施例4及び比較例3においてはCナノシート複合体含有分散液。以下同様。)及びCナノシート複合体(比較例4〜7においてはCナノシート。以下同様。)の各物性は以下の方法により測定した。
<測定方法1:原料CのX線回折ピークの強度比>
原料CのX線回折(XRD)スペクトル(X線源:CuKα)における(100)面のピーク強度(I100)に対する(002)面のピーク強度(I002)の比(I002/I100)をベースラインからのピーク高さに基づいて求めた。I002/I100の値が大きいほど、原料Cの一次粒子の三次元的な連結構造が少ないことを示す。なお、Cの(100)面のX線回折ピークは2θ=約13.0°に、(002)面のX線回折ピークは2θ=約27.7°に確認される。
<測定方法2−1:分散液中のCナノシートの濃度の測定及びCナノシートの収率の測定>
イオン液体を用いた実施例及びイオン液体又はイオン液体以外の溶媒を用いた比較例それぞれにおいて、得られたCナノシート含有分散液を用いてCナノシート複合体を作製する過程で、先ず、洗浄ろ過に用いた桐山漏斗(フィルター:テフロン(登録商標)製フィルター、孔径0.1μm)の質量を予め測定した。次に、前記Cナノシート含有分散液を前記フィルターを用いてアセトン(Cナノシート含有分散液に対して3倍量を複数回に分けて用いた)で洗浄しながら吸引ろ過し、Cナノシート表面に未吸着のイオン液体を完全に除去した。次いで、洗浄ろ過後の濾滓の付いた前記フィルターについて、80℃で12時間真空乾燥を行った後の質量を測定した。この質量から前記フィルターの質量を減じ、Cナノシート複合体の質量を算出した。次に、熱重量分析装置(理学電機(株)製「Thermo plus TG8120」)を用いて窒素雰囲気下、室温から100℃まで昇温し、100℃で30分間保持した後、昇温速度10℃/分で100℃から800℃まで加熱して行った熱重量分析(TGA)により、Cナノシート複合体中から吸着したイオン液体を除いたCナノシートの割合を算出し、Cナノシート含有分散液(イオン液体分散液)中でのCナノシートの濃度(mg/ml)及びCナノシートの収率(%)を求めた。なお、Cナノシートの収率(%)は、次のように算出した。
収率(%)=100×(Cナノシート複合体中から吸着したイオン液体を除いたCナノシートの質量(mg))/(原料として用いたCの質量(mg))。
<測定方法2−2:Cナノシートの収率の測定>
超酸を用いた実施例及び超酸又は超酸以外の酸を用いた比較例それぞれにおいて得られたCナノシート複合体の質量を測定し、更に熱重量分析装置(理学電機(株)製「Thermo plus TG8120」)を用いて窒素雰囲気下、室温から100℃まで昇温し、100℃で30分間保持した後、昇温速度10℃/分で100℃から800℃まで加熱して行った熱重量分析(TGA)により、Cナノシート複合体中から吸着した超酸を除いたCナノシートの割合を算出してCナノシート複合体中のCナノシートの質量を求め、Cナノシートの収率(%)を求めた。なお、Cナノシートの収率(%)は、次のように算出した。
収率(%)=100×(得られたCナノシート複合体中のCナノシートの質量(mg))/(原料として用いたCの質量(mg))。
<測定方法3:Cナノシート複合体のイオン液体又は超酸の吸着量の測定>
実施例及び比較例それぞれにおいて得られたCナノシート複合体を80℃で真空乾燥を施して残留溶媒等の揮発分を除去した後、熱重量分析装置(理学電機(株)製「Thermo plus TG8120」)を用いて窒素雰囲気下、室温から100℃まで昇温し、100℃で30分間保持した後、昇温速度10℃/分で100℃から600℃まで加熱して熱重量分析(TGA)を実施した。ここで、Cは600℃まで重量減少を示さず、一方、イオン液体は約200℃から約600℃の範囲で重量減少を示し、また、超酸は、例えば、塩化スルホン酸は約150℃から約220℃の範囲で重量減少を示し、塩化スルホン酸と水との反応で生成し、Cナノシートに吸着した硫酸は約290℃から約370℃の範囲で重量減少を示し、トリフルオロメタンスルホン酸は約160℃から約220℃の範囲で重量減少を示す。すなわち、100℃から600℃の昇温過程で観察された重量減少は、Cナノシートに吸着したイオン液体又は超酸に由来するものとみなすことができる。したがって、この重量減少をCナノシート複合体におけるイオン液体又は超酸の吸着量として、Cナノシート100質量部に対する量(質量部)で表した。なお、例えば、塩化スルホン酸と水との反応で生成し、そのままCナノシートに吸着した硫酸等の超酸由来化合物に由来する重量減少も超酸に由来するものとみなし、この重量減少もCナノシート複合体における超酸の吸着量として、Cナノシート100質量部に対する量(質量部)で表した。
<測定方法4:Cナノシート複合体におけるCナノシートの剥離度の測定>
微粉砕処理を施していないCのXRDスペクトル(X線源:CuKα)における(002)面のピーク強度(Ism、sm:starting material)に対するCナノシートのXRDスペクトル(X線源:CuKα)における(002)面のピーク強度(Ins、ns:nanosheet)の比(Ins/Ism)をベースラインからのピーク高さに基づいて求めた。Ins/Ismの値が小さいほど、剥離度に優れることを示す。なお、Cの(002)面のX線回折ピークは2θ=約27.7°に確認される。
<測定方法5:Cナノシート複合体及び原料CにおけるCナノシート層数の測定>
実施例及び比較例それぞれにおいて得られたCナノシート複合体について走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行い、得られたSEM写真において、エッジ部を観察できるCナノシート複合体を無作為に20個抽出してCナノシート部分の厚みを測定し、それらの平均値を求めた。次に、それぞれのCナノシートの厚みをCナノシート1層分の厚み(0.32nm)で除してCナノシート複合体を構成するCナノシートの層数を求めた。また、Cナノシートの層数が40層以下及び20層以下であるCナノシート複合体の割合を求めた。なお、原料Cについても前記方法と同様にしてCナノシートの層数を求めた。
<測定方法6:Cナノシート複合体及び原料CにおけるCナノシートの一辺のサイズの測定>
実施例及び比較例それぞれにおいて得られたCナノシート複合体について走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行い、得られたSEM写真において、Cナノシート複合体の一次粒子を無作為に20個抽出してCナノシートの一辺のサイズ(長辺の長さ)を測定し、それらの平均値を求めた。なお、原料Cについても前記方法と同様にしてCナノシートの一辺のサイズ(長辺の長さ)を測定し、それらの平均値を求めた。
<測定方法7:Cナノシート複合体の再分散性の評価>
実施例及び比較例それぞれにおいて得られたCナノシート複合体のそれぞれ4mgをイソプロパノール(IPA)4mlに添加し、これに超音波処理を30分間施してCナノシート複合体を再分散させた。得られた分散液を5時間静置することにより分散性の低いCナノシート複合体を沈殿させて取り除き、上澄み液を得た。得られた上澄み液について過剰のアセトンで洗浄しながら吸引ろ過によりIPAを完全に取り除き、更に80℃で12時間真空乾燥を施してCナノシート複合体を得た。得られたCナノシート複合体の質量(mg)を測定し、上澄み液の容量(ml)で除して、Cナノシート複合体の濃度(mg/ml)を求め、Cナノシート複合体の再分散性を評価した。
[カーボンナイトライド(C)]
実施例及び比較例においては、以下に示すカーボンナイトライド(C)を原料Cとして使用した。
グラファイト状カーボンナイトライド(g−C(a−1)):
Carbodeon社製「Nicanite」、純度≧99.7質量%、前記測定方法1により求めたI002/I100は5.4、前記測定方法5により求めたCナノシートの層数は約540層、前記測定方法6により求めたCナノシートの一辺のサイズは6.4μmであった。
グラファイト状カーボンナイトライド(g−C(a−2)):
乳鉢に前記g−C(a−1)を入れ、10分間磨り潰すことにより三次元的な連結構造を減少させたグラファイト状カーボンナイトライド(g−C(a−2))を得た。このg−C(a−2)について、前記測定方法1により求めたI002/I100は7.8、前記測定方法5により求めたCナノシートの層数は約500層、前記測定方法6により求めたCナノシートの一辺のサイズは5.5μmであった。
グラファイト状カーボンナイトライド(g−C(a−3)):
乳鉢に前記g−C(a−1)を入れ、20分間磨り潰すことにより三次元的な連結構造を減少させたグラファイト状カーボンナイトライド(g−C(a−3))を得た。このg−C(a−3)について、前記測定方法1により求めたI002/I100は10.0、前記測定方法5により求めたCナノシートの層数は約450層、前記測定方法6により求めたCナノシートの一辺のサイズは5.0μmであった。
[イオン液体]
実施例及び比較例においては、以下に示すイオン液体を使用した。
イオン液体(b−1):
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート。
イオン液体(b−2):
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド。
[超酸]
実施例及び比較例においては、以下に示す超酸を使用した。
超酸(c−1):
クロロスルホン酸(ハメットの酸度関数(H0):−13.8(25℃))。
[イオン液体以外の溶媒]
比較例においては、イオン液体以外の溶媒として以下に示す溶媒を使用した。
イオン液体以外の溶媒:
イソプロピルアルコール。
[超酸以外の酸]
比較例においては、超酸以外の酸として以下に示す酸を使用した。
超酸以外の酸:
98%濃硫酸(ハメットの酸度関数(H0):−10.4(25℃)。
(実施例1)
g−Cナノシート含有分散液及びg−Cナノシート複合体の作製:
80℃で12時間真空乾燥を施したg−C(a−3:I002/I100=10.0)150mgとイオン液体(b−1:1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート)30mlとを混合し、得られた混合物に超音波処理(BRANSON社製卓上型超音波洗浄機「BRANSONIC B−220」を使用、発振周波数45kHz)を8時間施して分散液を得た。この分散液に遠心分離(3000rpm、相対遠心加速度1220G、20分間)を施し、得られた上澄み液を回収し、g−Cナノシートがイオン液体に分散したg−Cナノシート含有分散液を得た。
次に、上記で得られたg−Cナノシート含有分散液を、桐山漏斗(フィルター:テフロン(登録商標)製フィルター、孔径0.1μm)を用いてアセトンで洗浄しながら吸引ろ過し、g−Cナノシート表面に未吸着のイオン液体を完全に除去した。なお、アセトンは、g−Cナノシート含有分散液に対して3倍量を複数回に分けて用いた。その後、濾滓を80℃で12時間真空乾燥して溶媒を完全に留去し、g−Cナノシートにイオン液体が吸着したg−Cナノシート複合体を得た。
前記g−Cナノシート含有分散液について、前記測定方法2−1に従ってg−Cナノシートの濃度及びg−Cナノシートの収率を求めた。また、前記g−Cナノシート複合体について、前記測定方法3に従ってイオン液体の吸着量を測定し、前記測定方法4〜6に従ってg−C(a−1)に対するg−Cナノシートの剥離度、層数、一辺の長さを測定し、前記測定方法7に従ってg−Cナノシート複合体の再分散性を評価した。それらの結果を表1に示す。
(実施例2)
g−Cナノシート含有分散液及びg−Cナノシート複合体の作製:
g−C(a−3:I002/I100=10.0)の代わりにg−C(a−2:I002/I100=7.8)を用いた以外は実施例1と同様にして、g−Cナノシート含有分散液及びg−Cナノシート複合体を得た。得られたg−Cナノシート含有分散液について、前記測定方法2−1に従ってg−Cナノシートの濃度及びg−Cナノシートの収率を求めた。また、得られたg−Cナノシート複合体について、前記測定方法3に従ってイオン液体の吸着量を測定し、前記測定方法4〜6に従ってg−C(a−1)に対するg−Cナノシートの剥離度、層数、一辺の長さを測定し、前記測定方法7に従ってg−Cナノシート複合体の再分散性を評価した。それらの結果を表1に示す。
(実施例3)
g−Cナノシート含有分散液及びg−Cナノシート複合体の作製:
イオン液体(b−1:1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート)の代わりにイオン液体(b−2:1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)を用いた以外は実施例1と同様にして、g−Cナノシート含有分散液及びg−Cナノシート複合体を得た。得られたg−Cナノシート含有分散液について、前記測定方法2−1に従ってg−Cナノシートの濃度及びg−Cナノシートの収率を求めた。また、得られたg−Cナノシート複合体について、前記測定方法3に従ってイオン液体の吸着量を測定し、前記測定方法4〜6に従ってg−C(a−1)に対するg−Cナノシートの剥離度、層数、一辺の長さを測定し、前記測定方法7に従ってg−Cナノシート複合体の再分散性を評価した。それらの結果を表1に示す。
(実施例4)
g−Cナノシート複合体含有分散液及びg−Cナノシート複合体の作製:
80℃で12時間真空乾燥を施したg−C(a−3:I002/I100=10.0)100mgを100mlの二口フラスコに入れ、500℃で1時間フレームドライを施して水分を除去した後、窒素雰囲気下で超酸(c−1:クロロスルホン酸)20mlを滴下し、これに窒素雰囲気下で超音波処理(BRANSON社製卓上型超音波洗浄機「BRANSONIC B−220」を使用、発振周波数45kHz)を8時間施してg−Cナノシートが超酸に分散したg−Cナノシート含有分散液を得た。
次に、上記で得られたg−Cナノシート含有分散液を、この分散液の100倍容量の純水を含むビーカー中に、撹拌子で撹拌しながら、ゆっくりと一滴ずつ滴下して純水中に移し、分散液を得た。得られた分散液を24時間静置して粗大粒子や未分散の粒子を沈殿させた後、上澄み液を回収し、g−Cナノシートに超酸(超酸由来化合物(硫酸)を含む)が吸着したg−Cナノシート複合体が超酸(超酸由来化合物を含む)と純水との混合溶媒中に分散したg−Cナノシート複合体含有分散液を得た。
次に、上記で得られたg−Cナノシート複合体含有分散液を、桐山漏斗(フィルター:テフロン(登録商標)製フィルター、孔径0.1μm)を用いて吸引ろ過し、得られた濾滓を、100mlの純水を複数回に分けて用いてろ過洗浄し、g−Cナノシート表面に未吸着の超酸を完全に除去した。その後、濾滓を80℃で12時間真空乾燥して溶媒を完全に留去し、g−Cナノシートに超酸(超酸由来化合物を含む)が吸着したg−Cナノシート複合体を得た。
得られたg−Cナノシート複合体について、前記測定方法2−2に従ってg−Cナノシートの収率を求め、前記測定方法3に従って超酸及び超酸由来化合物の吸着量を測定し、前記測定方法4〜6に従ってg−C(a−1)に対するg−Cナノシートの剥離度、層数、一辺の長さを測定し、前記測定方法7に従ってg−Cナノシート複合体の再分散性を評価した。それらの結果を表1に示す。
(比較例1)
g−Cナノシート含有分散液及びg−Cナノシート複合体の作製:
g−C(a−3:I002/I100=10.0)の代わりにg−C(a−1:I002/I100=5.4)を用いた以外は実施例1と同様にして、g−Cナノシート含有分散液及びg−Cナノシート複合体を得た。得られたg−Cナノシート含有分散液について、前記測定方法2−1に従ってg−Cナノシートの濃度及びg−Cナノシートの収率を求めた。また、得られたg−Cナノシート複合体について、前記測定方法3に従ってイオン液体の吸着量を測定し、前記測定方法4〜6に従ってg−C(a−1)に対するg−Cナノシートの剥離度、層数、一辺の長さを測定し、前記測定方法7に従ってg−Cナノシート複合体の再分散性を評価した。それらの結果を表1に示す。
(比較例2)
g−Cナノシート含有分散液及びg−Cナノシート複合体の作製:
g−C(a−3:I002/I100=10.0)の代わりにg−C(a−1:I002/I100=5.4)を用いた以外は実施例3と同様にして、g−Cナノシート含有分散液及びg−Cナノシート複合体を得た。得られたg−Cナノシート含有分散液について、前記測定方法2−1に従ってg−Cナノシートの濃度及びg−Cナノシートの収率を求めた。また、得られたg−Cナノシート複合体について、前記測定方法3に従ってイオン液体の吸着量を測定し、前記測定方法4〜6に従ってg−C(a−1)に対するg−Cナノシートの剥離度、層数、一辺の長さを測定し、前記測定方法7に従ってg−Cナノシート複合体の再分散性を評価した。それらの結果を表1に示す。
(比較例3)
g−Cナノシート複合体含有分散液及びg−Cナノシート複合体の作製:
g−C(a−3:I002/I100=10.0)の代わりにg−C(a−1:I002/I100=5.4)を用いた以外は実施例4と同様にして、g−Cナノシート複合体含有分散液及びg−Cナノシート複合体を得た。得られたg−Cナノシート複合体について、前記測定方法2−2に従ってg−Cナノシートの収率を求め、前記測定方法3に従って超酸及び超酸由来化合物の吸着量を測定し、前記測定方法4〜6に従ってg−C(a−1)に対するg−Cナノシートの剥離度、層数、一辺の長さを測定し、前記測定方法7に従ってg−Cナノシート複合体の再分散性を評価した。それらの結果を表1に示す。
(比較例4)
g−Cナノシート含有分散液及びg−Cナノシートの作製:
イオン液体(b−1:1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート)の代わりにイソプロピルアルコール(IPA)を用いた以外は実施例1と同様にして、g−Cナノシート含有分散液及びg−Cナノシートを得た。得られたg−Cナノシートについて熱重量分析を行なったところ、g−CナノシートへのIPAの吸着は確認されなかった。得られたg−Cナノシート含有分散液について、前記測定方法2−1に従ってg−Cナノシートの濃度及びg−Cナノシートの収率を求めた。また、得られたg−Cナノシートについて、前記測定方法4〜6に従ってg−C(a−1)に対するg−Cナノシートの剥離度、層数、一辺の長さを測定し、前記測定方法7に従ってg−Cナノシートの再分散性を評価した。それらの結果を表1に示す。
(比較例5)
g−Cナノシート含有分散液及びg−Cナノシートの作製:
g−C(a−3:I002/I100=10.0)の代わりにg−C(a−1:I002/I100=5.4)を用いた以外は比較例4と同様にして、g−Cナノシート含有分散液及びg−Cナノシートを得た。得られたg−Cナノシートについて熱重量分析を行なったところ、g−CナノシートへのIPAの吸着は確認されなかった。得られたg−Cナノシート含有分散液について、前記測定方法2−1に従ってg−Cナノシートの濃度及びg−Cナノシートの収率を求めた。また、得られたg−Cナノシートについて、前記測定方法4〜6に従ってg−C(a−1)に対するg−Cナノシートの剥離度、層数、一辺の長さを測定し、前記測定方法7に従ってg−Cナノシート複合体の再分散性を評価した。それらの結果を表1に示す。
(比較例6)
g−Cナノシート含有分散液及びg−Cナノシートの作製:
80℃で12時間真空乾燥を施したg−C(a−3:I002/I100=10.0)100mgを100mlの二口フラスコに入れ、窒素雰囲気下で98%濃硫酸20mlを滴下し、これに窒素雰囲気下で超音波処理(BRANSON社製卓上型超音波洗浄機「BRANSONIC B−220」を使用、発振周波数45kHz)を8時間施してg−Cナノシートが濃硫酸に分散したg−Cナノシート含有分散液を得た。
次に、上記で得られたg−Cナノシート含有分散液を用いた以外は実施例4と同様にして、g−Cナノシートが濃硫酸と純水との混合溶媒中に分散したg−Cナノシート含有分散液及びg−Cナノシートを得た。得られたg−Cナノシートについて熱重量分析を行なったところ、g−Cナノシートへの濃硫酸の吸着は確認されなかった。得られたg−Cナノシートについて、前記測定方法2−2に従ってg−Cナノシートの収率を求め、前記測定方法4〜6に従ってg−C(a−1)に対するg−Cナノシートの剥離度、層数、一辺の長さを測定し、前記測定方法7に従ってg−Cナノシート複合体の再分散性を評価した。それらの結果を表1に示す。
(比較例7)
g−Cナノシート含有分散液及びg−Cナノシートの作製:
g−C(a−3:I002/I100=10.0)の代わりにg−C(a−1:I002/I100=5.4)を用いた以外は比較例6と同様にして、g−Cナノシート含有分散液及びg−Cナノシートを得た。得られたg−Cナノシートについて熱重量分析を行なったところ、g−Cナノシートへの濃硫酸の吸着は確認されなかった。得られたg−Cナノシートについて、前記測定方法2−2に従ってg−Cナノシートの収率を求め、前記測定方法4〜6に従ってg−C(a−1)に対するg−Cナノシートの剥離度、層数、一辺の長さを測定し、前記測定方法7に従ってg−Cナノシート複合体の再分散性を評価した。それらの結果を表1に示す。
<評価結果>
表1に示した実施例1〜3と比較例1〜2の結果から明らかなように、原料Cとして、XRDスペクトルにおける(100)面のピーク強度(I100)に対する(002)面のピーク強度(I002)の比(I002/I100)が6.0以上のCを用いることによって、I002/I100が6.0未満のCを用いた場合に比べて、イオン液体中での超音波処理においてCナノシートへのイオン液体の吸着とそれに続く層間剥離とが効率的に進行し、Cナノシートが比較的高濃度でイオン液体中に分散したCナノシート含有分散液が得られることがわかった。また、このCナノシート含有分散液から未吸着のイオン液体を除去して得られるCナノシート複合体は、収率が高く、Cナノシートの剥離度に優れており、層数が少なく、一辺の長さが大きく、IPAへの再分散性に優れたものであることもわかった。
さらに、表1に示した実施例1〜3と比較例4〜5の結果から明らかなように、原料Cにイオン液体中で超音波処理を施すことによって、イオン液体以外の溶媒中で超音波処理を施した場合に比べて、Cナノシートが比較的高濃度でイオン液体中に分散したCナノシート含有分散液が得られることがわかった。また、このCナノシート含有分散液から未吸着のイオン液体を除去して得られるCナノシート複合体は、収率が高く、Cナノシートの剥離度に優れており、層数が少なく、一辺の長さが大きく、IPAへの再分散性に優れたものであることもわかった。
また、表1に示した実施例4と比較例3の結果から明らかなように、原料Cとして、I002/I100が6.0以上のCを用いることによって、I002/I100が6.0未満のCを用いた場合に比べて、超酸中での超音波処理においてCナノシートへの超酸の吸着とそれに続く層間剥離とが効率的に進行してCナノシートが効率よく形成され、Cナノシートが高濃度で超酸(超酸由来化合物を含む)と純水との混合溶媒中に分散したCナノシート複合体含有分散液が得られることがわかった。また、このCナノシート複合体含有分散液から純水と未吸着の超酸とを除去して得られるCナノシート複合体は、収率が高く、Cナノシートの剥離度に優れており、層数が少なく、一辺の長さが大きく、IPAへの再分散性に優れたものであることもわかった。
さらに、表1に示した実施例4と比較例6〜7の結果から明らかなように、原料Cに超酸中で超音波処理を施すことによって、超酸以外の酸中で超音波処理を施した場合に比べて、Cナノシートが効率よく形成され、Cナノシートが高濃度で超酸(超酸由来化合物を含む)と純水との混合溶媒中に分散したCナノシート複合体含有分散液が得られることがわかった。また、このCナノシート複合体含有分散液から純水と未吸着の超酸とを除去して得られるCナノシート複合体は、収率が高く、Cナノシートの剥離度に優れており、層数が少なく、一辺の長さが大きく、IPAへの再分散性に優れたものであることもわかった。
また、比較例6で得られたCナノシートにおいては濃硫酸が吸着していなかったのに対して、実施例4で得られたCナノシート複合体において硫酸が吸着していた理由は、微粉砕処理が施された原料Cに超酸であるクロロスルホン酸中で超音波処理を施すと、Cナノシートの表面にはクロロスルホン酸が吸着するが、このクロロスルホン酸が純水と反応して硫酸を生成することによって、実施例4で得られたCナノシート複合体においては、Cナノシートの表面に硫酸が吸着した状態が形成されたと考えられる。
以上説明したように、本発明によれば、Cナノシートが比較的高濃度でかつ高度に分散しており、一辺のサイズが比較的大きいCナノシートを比較的高収率で得ることが可能なCナノシート含有分散液、並びに、イオン液体及び超酸以外の溶媒中での分散性に優れたCナノシート複合体を得ることが可能となる。また、本発明のCナノシート複合体は耐熱性に優れているため、製造時に高温が要求される高耐熱樹脂、金属、セラミックス等と複合化するといった高温での使用や均一分散が可能となる。
したがって、本発明のCナノシート含有分散液、本発明のCナノシート複合体及びその分散液、並びに本発明のCナノシート複合体を用いた樹脂複合材料は、Cナノシートが本来備えている特性を活かすことができる用途、例えば、光触媒活性が求められる用途、半導体特性が求められる用途、熱伝導性が求められる用途、力学物性が求められる用途、摺動性が求められる用途、耐熱性が求められる用途、寸法性(熱線膨張係数の低下)が求められる用途等、幅広い用途に展開可能であり、例えば、水素生成、有機物除去等のための光触媒、電極触媒等のその他の触媒、触媒の担体、次世代半導体、回転センサーや光センサー等のセンサー、太陽電池、二次電池、摺動材、自動車・航空機等の移動体用各種部品、電気・電子機器用各種部品、高熱伝導性シート、放熱板、電磁波吸収体、絶縁被膜、コーティング、機能性素材用の基板、電気二重層コンデンサ(キャパシタ)、燃料電池用の電解質、各種熱流体、光学デバイス素材、マイクロエレクトロニクス部品、エネルギー貯蔵デバイス、医療診断キット、発光デバイス、アクチュエータ等に好適に用いることができる。
また、本発明のCナノシート含有分散液及び本発明のCナノシート複合体の製造においては、高価又は複雑な製造プロセスが不要であり、Cナノシート含有分散液やCナノシート複合体及びCナノシート複合体を用いて得られる樹脂複合材料等の生産コストを削減することも可能となる。

Claims (4)

  1. X線回折スペクトルにおける(100)面のピーク強度(I100)に対する(002)面のピーク強度(I002)の比(I002/I100)が6以上であるカーボンナイトライドとイオン液体とを混合し、前記カーボンナイトライドの層間を剥離せしめてカーボンナイトライドナノシートを得ると共に該カーボンナイトライドナノシートにイオン液体を吸着させる剥離吸着工程を含むことを特徴とするカーボンナイトライドナノシート複合体の製造方法。
  2. 前記カーボンナイトライドとイオン液体とを混合する際に、前記イオン液体の存在下で前記カーボンナイトライドに超音波処理、撹拌処理及び粉砕処理からなる群から選択される少なくとも一種の層間剥離処理を施すことを特徴とする請求項に記載のカーボンナイトライドナノシート複合体の製造方法。
  3. X線回折スペクトルにおける(100)面のピーク強度(I100)に対する(002)面のピーク強度(I002)の比(I002/I100)が6以上であるカーボンナイトライドと超酸とを混合し、前記カーボンナイトライドの層間を剥離せしめてカーボンナイトライドナノシートを得ると共に該カーボンナイトライドナノシートに超酸を吸着させる剥離吸着工程を含むことを特徴とするカーボンナイトライドナノシート複合体の製造方法。
  4. 前記カーボンナイトライドと超酸とを混合する際に、前記超酸の存在下で前記カーボンナイトライドに超音波処理、撹拌処理及び粉砕処理からなる群から選択される少なくとも一種の層間剥離処理を施すことを特徴とする請求項に記載のカーボンナイトライドナノシート複合体の製造方法。
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