以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
[窒化ホウ素ナノシート含有分散液]
先ず、本発明の窒化ホウ素ナノシート含有分散液について説明する。本発明の窒化ホウ素ナノシート含有分散液は、イオン液体と、前記イオン液体に分散している窒化ホウ素ナノシートと、を備えることを特徴とする。この窒化ホウ素ナノシート含有分散液により、窒化ホウ素ナノシートがイオン液体中に高度に分散した窒化ホウ素ナノシート含有分散液とすることができる。
(窒化ホウ素ナノシート)
本発明に用いられる窒化ホウ素ナノシートは、多層構造を有する窒化ホウ素の層が剥離された形態のシートである。このような本発明に用いられる窒化ホウ素ナノシートとしては、特に制限されないが、具体的には、窒化ホウ素ナノシート、炭窒化ホウ素(B−C−N材料)ナノシート、これらシートのリボン様のものとして窒化ホウ素ナノリボンや炭窒化ホウ素ナノリボン、前記シートのスクロール様のものとして窒化ホウ素ナノスクロール、炭窒化ホウ素ナノスクロールが挙げられる。その中でも、絶縁性、耐熱性、耐酸化性等を十分に発現する観点から、窒化ホウ素ナノシートがより好ましい。
このような本発明の窒化ホウ素ナノシートの厚みとしては、特に制限されないが、20nm以下の窒化ホウ素ナノシートが含まれるものであることが好ましく、10nm以下の窒化ホウ素ナノシートが含まれるものであることがより好ましく、5nm以下の窒化ホウ素ナノシートが含まれるものであることが更に好ましく、2nm以下の窒化ホウ素ナノシートが含まれるものであることが特に好ましく、1nm以下の窒化ホウ素ナノシートが含まれるものであることが最も好ましい。前記窒化ホウ素ナノシートの厚みが前記下限未満になると溶媒中や樹脂中での分散性が低下する傾向にある。
なお、本発明において、窒化ホウ素ナノシートの厚みは、透過型電子顕微鏡写真において窒化ホウ素ナノシートのエッジ部を確認できる箇所として、大きさで35nm×35nmの範囲を任意に25箇所抽出して測定を実施し、これらの測定値を平均した値である。
また、このような本発明の窒化ホウ素ナノシートの層数としては、特に制限されないが、窒化ホウ素ナノシートの比表面積が増大し、本発明の窒化ホウ素ナノシート含有分散液を用いて得られる窒化ホウ素ナノシート複合体及びそれを含む樹脂組成物の熱伝導性を向上させる観点から、50層以下の窒化ホウ素ナノシートを含むものであることが好ましく、30層以下の窒化ホウ素ナノシートを含むものであることがより好ましく、10層以下の窒化ホウ素ナノシートを含むものであることが更に好ましく、6層以下の窒化ホウ素ナノシートを含むものであることが特に好ましく、3層以下の窒化ホウ素ナノシートを含むものであることが更に特に好ましく、2層以下の窒化ホウ素ナノシートを含むものであることがとりわけ好ましく、単層の窒化ホウ素ナノシートを含むものであることが最も好ましい。
更に、このような本発明の窒化ホウ素ナノシートにおいて、10層以下の窒化ホウ素ナノシートの存在割合としては、特に制限されないが、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることが更に好ましく、80%以上であることが特に好ましく、90%以上であることが最も好ましい。前記窒化ホウ素ナノシートにおいて、10層以下の窒化ホウ素ナノシートの存在割合が前記下限未満になると、本発明の窒化ホウ素ナノシート含有分散液を用いて得られる窒化ホウ素ナノシート複合体及びそれを含む樹脂組成物等の熱伝導率(熱伝導性)等の向上効果が低下する傾向にある。
また、このような本発明の窒化ホウ素ナノシートにおいて、6層以下の窒化ホウ素ナノシートの存在割合としては、特に制限されないが、10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、30%以上であることが更に好ましく、40%以上であることが特に好ましく、50%以上であることが最も好ましい。前記窒化ホウ素ナノシートにおいて、6層以下の窒化ホウ素ナノシートの存在割合が前記下限未満になると、本発明の窒化ホウ素ナノシート含有分散液を用いて得られる窒化ホウ素ナノシート複合体及びそれを含む樹脂組成物等の熱伝導率(熱伝導性)等の向上効果が低下する傾向にある。
更に、このような本発明の窒化ホウ素ナノシートにおいて、3層以下の窒化ホウ素ナノシートの存在割合としては、特に制限されないが、4%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、10%以上であることが更に好ましく、15%以上であることが特に好ましく、20%以上であることが最も好ましい。前記窒化ホウ素ナノシートにおいて、3層以下の窒化ホウ素ナノシートの存在割合が前記下限未満になると、本発明の窒化ホウ素ナノシート含有分散液を用いて得られる窒化ホウ素ナノシート複合体及びそれを含む樹脂組成物等の熱伝導率(熱伝導性)等の向上効果が低下する傾向にある。
また、このような本発明の窒化ホウ素ナノシートにおいて、2層以下の窒化ホウ素ナノシートの存在割合としては、特に制限されないが、4%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、10%以上であることが更に好ましく、15%以上であることが特に好ましく、20%以上であることが最も好ましい。前記窒化ホウ素ナノシートにおいて、2層以下の窒化ホウ素ナノシートの存在割合が前記下限未満になると、本発明の窒化ホウ素ナノシート含有分散液を用いて得られる窒化ホウ素ナノシート複合体及びそれを含む樹脂組成物等の熱伝導率(熱伝導性)等の向上効果が低下する傾向にある。
更に、このような本発明の窒化ホウ素ナノシートにおいて、単層構造の窒化ホウ素ナノシートの存在割合としては、特に制限されないが、4%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、8%以上であることが更に好ましく、10%以上であることが特に好ましく、20%以上であることが最も好ましい。前記窒化ホウ素ナノシートにおいて、単層構造の窒化ホウ素ナノシートの存在割合が前記下限未満になると、本発明の窒化ホウ素ナノシート含有分散液を用いて得られる窒化ホウ素ナノシート複合体及びそれを含む樹脂組成物等の熱伝導率(熱伝導性)等の向上効果が低下する傾向にある。
また、このような本発明の窒化ホウ素ナノシートにおいて、窒化ホウ素ナノシートの一辺の長さの下限としては、特に制限されないが、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましく、0.5μm以上であることが更に好ましく、1μm以上であることが特に好ましく、2μm以上であることが最も好ましい。前記窒化ホウ素ナノシートにおいて、窒化ホウ素ナノシートの一辺の長さが前記下限未満になると、本発明の窒化ホウ素ナノシート含有分散液を用いて得られる窒化ホウ素ナノシート複合体及びそれを含む樹脂組成物等の熱伝導率(熱伝導性)等の向上効果が低下する傾向にある。なお、従来技術では、例えば一辺の長さが1μm以上、更には2μm以上といった一辺の長さの大きな窒化ホウ素ナノシートの分散は、一辺の長さが1μm未満の窒化ホウ素ナノシートと比較して難しい傾向にあるが、本発明のイオン液体を用いた場合、一辺の長さの大きな窒化ホウ素ナノシートの分散性が大きく向上する傾向にある。
(イオン液体)
本発明に用いられるイオン液体は、特に制限されないが、200℃未満の温度、好ましくは150℃未満の温度、より好ましくは100℃未満の温度、更に好ましくは室温又は周囲の温度付近において液体である塩(イオン性液体)である。常温溶融塩又は単に溶融塩(塩溶融物)等とも称されるものであり、常温(室温)を含む幅広い温度域で液体状態を呈する塩である。このような液体の塩は、典型的には有機カチオン及び有機又は無機アニオンを含む。なお、室温で液体のイオン性液体であることが好ましい。
具体的には、このような本発明のイオン液体としては、例えば下記一般(1):
(Zp+)k(Xq−)m ・・・(1)
で表わされるイオン液体であることが好ましい。式(1)中、Zp+はカチオン、Xq−はアニオンを示し、p、q、k、mは、それぞれ1〜3の整数を示す。
これらの中でも、本発明に係るイオン液体としては、上記一般式(1)において、p、q、k及びmが2以下であることが好ましく、p、q、k及びmが1であること、すなわち下記一般(2):
Z+X− ・・・(2)
で表わされる化合物からなるイオン液体であることが特に好ましい。式(2)中、Z+はカチオン、X−はアニオンを示す。
<Z+カチオン>
このような本発明のイオン液体にかかる前記一般式(2)で示されるZ+X−化合物の中のZ+カチオンとしては、特に制限されないが、好ましくは、下記一般式(3)〜(18):
で表される構造(Z+カチオン:イミダゾリウム(3)、ピリジニウム(4)、ピリダジニウム(5)、ピリミジニウム(6)、ピラジニウム(7)、ピロリニウム(8)、2H−ピロリニウムカチオン(9)、トリアゾリウム(10)、ピロリジニウム(11)、ピペリジニウム(12)、アンモニウム(13)、ホスホニウム(14)、スルホニウム(15)、イソオキサゾリウム(16)、オキサゾリウム(17)、チアゾリウム(18))のうち、少なくとも一種及びこれらカチオンの類縁体(前記カチオンにエポキシ基、アミノ基、水酸基、カルボン酸及び酸無水物基等の官能基を導入した変性カチオン等)を挙げることができる。
前記一般式(3)〜(18)において、R1〜R12は、それぞれ独立に水素原子、ヒドロキシ基、エステル基、カルボキシ基、スルホン酸基、エポキシ基、ハロゲン及びエーテル結合のうち少なくとも1種の基又は結合を含んでもよい炭素数1〜24のアルキル基、炭素数3〜24のアルケニル基、炭素数6〜24のアリール基、炭素数7〜24のアラルキル基、アルキルシリルアルキル基、アルコキシシリルアルキル基から選ばれるものである。
前記ヒドロキシ基、エステル基、カルボキシ基、エポキシ基、ハロゲン及びエーテル結合のうち、少なくとも1種の基又は結合を含んでもよい炭素数1〜24のアルキル基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種デシル基、各種ドデシル基、各種テトラデシル基、各種ヘキサデシル基、各種オクタデシル基、各種ノニルデシル基、各種エイコシル基、各種ヘンイコシル基、各種ドコシル基、各種トリコシル基、各種テトラコシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、クロロエチル基、ブロモエチル基、(メタ)アクリロイロキシメチル基、(メタ)アクリロイロキシエチル基、(メタ)アクリロイロキシプロピル基、(メタ)アクリロイロキシブチル基等のアクリロイロキシアルキル基、グリシジルオキシメチル基、グリシジルオキシエチル基、3−グリシジルオキシプロピル基、4−グリシジルオキシブチル基、2−メトキシエチル基、3−メトキシプロピル基等が挙げられる。
前記炭素数3〜24のアルケニル基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、例えばアリル基、プロペニル基、各種ブテニル基、各種ヘキセニル基、各種オクテニル基、各種デセニル基、各種ドデセニル基、各種テトラデセニル基、各種ヘキサデセニル基、各種オクタデセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロオクテニル基等が挙げられる。前記アクリロイロキシアルキル基又は前記アルケニル基を有するイオン液体を用いることにより、窒化ホウ素の層間や窒化ホウ素ナノシート表面に挿入又は吸着したアクリロイロキシアルキル基又はアルケニル基含有イオン液体と他のアクリロイロキシアルキル基又はアルケニル基イオン液体及び/又はビニル系モノマーとの各種ラジカル重合(in situ重合)や反応が可能となり、窒化ホウ素ナノシートが高度に分散した窒化ホウ素ナノシート含有分散液を作製することもできる。
前記炭素数6〜24のアリール基としては、環上にアルキル基やハロゲン基等の適当な置換基を有していてもよく、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、クロロフェニル基、ジクロロフェニル基、トリクロロフェニル基、ブロモフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、クロロナフチル基等が挙げられ、炭素数7〜24のアラルキル基は、環上にアルキル基等の適当な置換基を有していてもよく、例えばベンジル基、メチルベンジル基、フェネチル基、メチルフェネチル基、フェニルプロピル基、メチルフェニルプロピル基、ナフチルメチル基、メチルナフチルメチル基等が挙げられる。
前記アルキルシリルアルキル基としては、トリアルキルシリルアルキル基が好ましく、ケイ素原子に結合するアルキル基は、炭素数1〜20のものが好ましく、それらは同一でも異なっていてもよく、例えばトリメチルシリルメチル基、トリエチルシリルメチル基、トリプロピルシリルメチル基、トリブチルシリルメチル基等が挙げられる。前記アルコキシシリルアルキル基としては、トリアルコキシシリルアルキル基が好ましく、ケイ素原子に結合するアルコキシ基はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、例えばトリメトキシシリルメチル基、トリエトキシシリルメチル基、トリプロポキシシリルメチル基、トリブトキシシリルメチル基等が挙げられる。
このようなイオン性液体を構成するZ+カチオンにおいて、前記一般式(3)で示されるイミダゾリウムカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、1−メチルイミダゾリウム、1−エチルイミダゾリウム、1,2−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ジエチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウム、1−メチル−3−ノニルイミダゾリウム、1−デシル−3−メチルイミダゾリウム、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウム、1−メチル−3−テトラデシルイミダゾリウム、1−ヘキサデシル−3−メチルイミダゾリウム、1−トリメチルシリルメチル−3−メチルイミダゾリウム、1−(2−ヒドロキシエチル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(4−スルホブチル)−3−メチルイミダゾリウム、1−エチル−3−ビニルイミダゾリウム、1−ブチル−3−ビニルイミダゾリウム、1−メチル−3−イソプロピルイミダゾリウム、1−sec−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−メトキシエチル−3−メチルイミダゾリウム、1−メトキシメチル−3−メチルイミダゾリウム、1−アリル−3−メチルイミダゾリウム、1−アリル−3−エチルイミダゾリウム、1−アリル−3−ブチルイミダゾリウム、1,3−ジアリルイミダゾリウム、1−ベンジル−3−メチルイミダゾリウム、1−(4−(メタ)アクリロイロキシメチル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(4−(メタ)アクリロイロキシエチル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(4−(メタ)アクリロイロキシプロピル)−3−メチルイミダゾリウム、1−(4−(メタ)アクリロイロキシブチル)−3−メチルイミダゾリウム、等が挙げられる。
また、前記一般式(4)で示されるピリジニウムカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、1−メチルピリジニウム、1−エチルピリジニウム、1−プロピルピリジニウム、1−ブチルピリジニウム、1−ヘキシルピリジニウム、1−メトキシエチルピリジニウム、1−イソプロピルピリジニウム、1−エチル−3−メチルピリジニウム、1−プロピル−3−メチルピリジニウム、2−メチル−1−プロピルピリジニウム、1−ブチル−2−メチルピリジニウム、1−ブチル−4−メチルピリジニウム、1−ブチル−3−メチルピリジニウム、1−メトキシメチルピリジニウム、1−sec−ブチルピリジニウム、トリメチルシリルメチルピリジニウム、ビス(トリメチルシリル)メチルピリジニウム、1−プロピル−4−メチルピリジニウム、1‐メチル‐4‐トリメチルシリルメチルピリジニウム等が挙げられる。
更に、前記一般式(5)で示されるピリダジニウムカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、1−メチルピリダジニウム、1−エチルピリダジニウム、1−プロピルピリダジニウム、1−イソプロピルピリダジニウム、1−ブチルピリダジニウム、1−ペンチルピリダジニウム、1−ヘキシルピリダジニウム、1−メトキシメチルピリダジニウム等が挙げられる。
また、前記一般式(6)で示されるピリミジニウムカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、1−メチルピリミジニウム、1−エチルピリミジニウム、1−プロピルピリミジニウム、1−ブチルピリミジニウム、1−メトキシメチルピリミジニウム、1,2−ジメチルピリミジニウム、1−メチル−3−プロピルピリミジニウム等が挙げられる。
更に、前記一般式(7)で示されるピラジニウムカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、1−メチルピラジニウム、1−エチルピラジニウム、1−プロピルピラジニウム、1−ブチルピラジニウム、1−メトキシメチルピラジニウム、1−エチル−2−メチルピラジニウム等が挙げられる。
また、前記一般式(8)で示されるピロリニウムカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、1,1−ジメチルピロリニウム、1,1−ジエチルピロリニウム、1−エチル−1−メチルピロリニウム、1−メチル−1−プロピルピロリニウム、1−ブチル−1−メチルピロリニウム、1−メトキシエチル−1−メチルピロリニウム、1−メトキシメチル−1−メチルピロリニウム、1−イソプロピル−1−メチルピロリニウム等が挙げられる。
更に、前記一般式(9)で示される2H−ピロリニウムカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、1,2−ジメチル−2H−ピロリニウム、1−エチル−2−メチル−2H−ピロリニウム、1−プロピル−2−メチル−2H−ピロリニウム、1−ブチル−2−メチル−2H−ピロリニウム、1−ヘキシル−2−メチル−2H−ピロリニウム、1−オクチル−2−メチル−2H−ピロリニウム、1−トリメチルシリルメチル−2−メチル−2H−ピロリニウム、1−イソプロピル−2−メチル−2H−ピロリニウム、1−sec−ブチル−2−メチル−2H−ピロリニウム、1−メトキシエチル−2−メチル−2H−ピロリニウム、1−メトキシメチル−2−メチル−2H−ピロリニウム等が挙げられる。
また、前記一般式(10)で示されるトリアゾリウムカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、1−メチルトリアゾリウム、1−エチルトリアゾリウム、1−プロピルトリアゾリウム、1−ブチルトリアゾリウム等が挙げられる。
更に、前記一般式(11)で示されるピロリジニウムカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、1−エチル−1−メチルピロリジニウム、1−メチル−1−プロピルピロリジニウム、1−ブチル−1−メチルピロリジニウム、1−ブチル−1−エチルピロリジニウム、1−ブチル−1−プロピルピロリジニウム、1−メトキシエチル−1−メチルピロリジニウム、1−メトキシメチル−1−メチルピロリジニウム、1−イソプロピル−1−メチルピロリジニウム等が挙げられる。
また、前記一般式(12)で示されるピペリジニウムカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、1−メチル−1−プロピルピペリジニウム、1−ブチル−1−メチルピペリジニウム、1−メトキシエチル−1−メチルピペリジニウム、1−メトキシメチル−1−メチルピペリジニウム、1−イソプロピル−1−メチルピペリジニウム等が挙げられる。
更に、前記一般式(13)で示されるアンモニウムカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、メチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウム、ブチルトリメチルアンモニウム、N,N,N−トリブチル−N−メチルアンモニウム、エチル−ジメチル−プロピルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、N,N−ジエチル−N−メチルアンモニウム、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム、テトラエチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、トリメチルヘキシルアンモニウム、トリエトキシ(2−メトキシエチル)アンモニウム、メチルトリ−n−オクチルアンモニウム、シクロヘキシルトリメチルアンモニウム、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ベンジルアンモニウム、N,N−ジメチル−N−エチル−N−フェネチルアンモニウム、2−ヒドロキシエチルアンモニウム、N,N,N−トリメチルエタノールアンモニウム等が挙げられる。
また、前記一般式(14)で示されるホスホニウムカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)ホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、テトラオクチルホスホニウム、トリエチルメチルホスホニウム、トリエチルペンチルホスホニウム、トリエチルオクチルホスホニウム、トリメチルプロピルホスホニウム、トリメチルヘキシルホスホニウム、トリエチルメトキシメチルホスホニウム、トリエチル(2−メトキシエチル)ホスホニウム、トリブチルメチルホスホニウム、トリイソブチルメチルホスホニウム、トリブチルエチルホスホニウム、トリブチルテトラデシルホスホニウム、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウム等が挙げられる。
更に、前記一般式(15)で示されるスルホニウムカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、トリメチルスルホニウム、トリエチルスルホニウム、ジエチルメチルスルホニウム、ジエチル(2−メトキシエチル)スルホニウム、トリプロピルスルホニウム、トリブチルスルホニウム、ジメチルヘキシルスルホニウム等が挙げられる。
また、前記一般式(16)で示されるイソオキサゾリウムカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、2−エチル−5−メチルイソオキサゾリウム、2−プロピル−5−メチルイソオキサゾリウム、2−ヘキシル−5−メチルイソオキサゾリウム、2−メトキシメチル−5−メチルイソオキサゾリウム等が挙げられる。
更に、前記一般式(17)で示されるオキサゾリウムカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、1−エチル−2−メチルオキサゾリウム、1−ブチル−2−メチルオキサゾリウム、1,3−ジメチルオキサゾリウム等が挙げられる。
また、前記一般式(18)で示されるチアゾリウムカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、1,2−ジメチルチアゾリウム、1,2−ジメチル−3−プロピルチアゾリウム等が挙げられる。
このようなイオン性液体を構成するZ+カチオンにおいては、上記のZ+アニオンの中でも、窒化ホウ素ナノシート表面へのイオン液体の吸着性(吸着量)の向上による分散性及び有機溶媒への再分散性の観点から、前記一般式(3)〜(12)及び(16)〜(18)の環状カチオンであることがより好ましく、前記一般式(3)〜(12)の環状カチオンであることが更に好ましく、前記一般式(3)、(4)及び(8)〜(10)の環状カチオンであることが特に好ましく、前記一般式(3)及び(4)の環状カチオンであることが最も好ましい。
なお、本発明において用いることができるZ+カチオンとしては、前記一般式(1)〜(18)示されるカチオンの他にも、例えば、1−ヘキシル−1,4−ジアザ[2,2,2]ビシクロオクタニウム、1−ブチル−1,4−ジアザ[2,2,2]ビシクロオクタニウム等のジアザビシクロオクタニウム等のカチオンを挙げることができる。
<X−アニオン>
このような本発明のイオン液体にかかる前記一般式(2)で示されるZ+X−化合物の中のX−アニオンとしては、特に制限されないが、例えば、[CnF(2n+1−a)Ha)SO2]2N−、(FSO2)2N−、(CN)2N−、CnH(2n+1)OSO3 −、(CnF(2n+1−a)Ha)SO3 −、CH3SO3 −、HSO3 −、C6H5SO3 −、CH3(C6H4)SO3 −、[CnF(2n+1−a)Ha)SO2]3C−、(CnF(2n+1−a)Ha)COO−、NO3 −、BF4−b(CnF2n−1)b −、(CN)4−bBb −、(CN)4−bBFb −、F(HF)b −、AlCl4 −、FeCl4 −、PF6 −、PF6−c(CnF2n−1)c −、(CN)2N−、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン及びこれらアニオンの類縁体(変性物等)等を挙げることができる。なお、nは1〜8の整数、aは0〜17の整数、bは0〜4の整数、cは1〜6の整数である。また、このようなX−アニオンのうち、窒化ホウ素ナノシート含有分散液中での窒化ホウ素ナノシートの分散性(分散安定性)と濃度を向上する観点、得られる窒化ホウ素ナノシート複合体の溶媒中への再分散性を向上し高濃度でかつ高品質の窒化ホウ素ナノシート含有分散液を得るという観点から、[CnF(2n+1−a)Ha)SO2]2N−、CnH(2n+1)OSO3 −、(CnF(2n+1−a)Ha)SO3 −、BF4−b(CnF2n−1)b −、(CN)4−bBb −、(CN)4−bBFb −がより好ましく、(CF3SO2)2N−(ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)、(C4F9SO2)2N−(ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド)、CF3SO3 −(トリフルオロメタンスルホナート)、C4F9SO3 −(ノナフルオロブタンスルホナート)、BF4 −(テトラフルオロボレート)、PF6 −(ヘキサフルオロホスファート)が更に好ましく、(CF3SO2)2N−、CF3SO3 −、BF4 −、PF6 −が特に好ましく、中でも窒化ホウ素ナノシート含有分散液中での窒化ホウ素ナノシート濃度と、イオン液体の窒化ホウ素ナノシートへの吸着量を大きく向上させる観点から、PF6 −が最も好ましい。
なお、本発明に用いられるイオン液体としては、窒化ホウ素の剥離性に優れ、高濃度の窒化ホウ素ナノシート含有分散液が得られる観点や、窒化ホウ素ナノシート複合体の分散性、再分散性に優れる観点から、例えば、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホナート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホナート、テトラエチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1,3−ジメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウム(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチルピリジニウムヘキサフルオロホスファート、1−プロピルピリジニウムヘキサフルオロホスファート、1−ブチルピリジニウムヘキサフルオロホスファート、1−ヘキシルピリジニウムヘキサフルオロホスファート、1−ブチル−2−メチルピリジニウムヘキサフルオロホスファート、1−ブチル−3−メチルピリジニウムヘキサフルオロホスファート、1−ブチル−4−メチルピリジニウムヘキサフルオロホスファート、1−エチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチルピリジニウムヘキサフロオロホスファート、1−ブチルピリジニウムテトラフロオロボレート、1−メトキシエチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−イソプロピルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ヘキシルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ヘキシルピリジニウムヘキサフルオロホスファート、1−ヘキシルピリジニウムテトラフルオロボレート、1−ヘキシルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−メトキシメチル−1−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−メトキシエチル−1−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−イソプロピル−1−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が特に好ましい。また、本発明のイオン液体においては、イオン液体として、前記二種以上のイオン液体の混合物を用いることもできる。
(窒化ホウ素ナノシート含有分散液)
本発明の窒化ホウ素ナノシート含有分散液は、前記イオン液体と前記イオン液体に分散している窒化ホウ素ナノシートとを備えている。
このような本発明の窒化ホウ素ナノシート含有分散液においては、含有する窒化ホウ素ナノシートの濃度としては、特に制限されないが、窒化ホウ素ナノシートの有する熱伝導率等の特性をより好ましく発現する観点から、0.01mg/mL以上であることが好ましく、0.1mg/mL以上であることがより好ましく、0.2mg/mL以上であることが更に好ましく、0.5mg/mL以上であることが特に好ましく、1mg/mL以上であることが最も好ましい。
また、本発明の窒化ホウ素ナノシート含有分散液においては、前記イオン液体の少なくとも一部が、前記窒化ホウ素ナノシートに吸着していることが好ましい。このようにすることにより、窒化ホウ素の剥離を効率的に進行させ、層数の少ない窒化ホウ素ナノシートを含有する分散液をより高濃度で得ることができる傾向にある。
(窒化ホウ素ナノシート含有分散液の製造方法)
本発明の窒化ホウ素ナノシート含有分散液は、イオン液体の存在下で窒化ホウ素に混合処理を施すことにより、窒化ホウ素の剥離が進行し、窒化ホウ素ナノシートがイオン液体中に高度に分散した分散性に優れる分散液を得ることができる。ここで、前記混合処理としては、超音波処理、振動処理、攪拌処理、粉砕処理、外場の印加(例えば、電場印加、磁場印加等)、混練から選ばれる少なくとも一種の混合処理であることが好ましい。これらの混合処理の中でも、超音波処理、撹拌処理及び粉砕処理からなる群から選択される少なくとも一種の処理であることが、窒化ホウ素の剥離を効率的に進行させ、層数の少ない窒化ホウ素ナノシートを含有する分散液をより高濃度で得る観点、及び得られる窒化ホウ素ナノシート複合体の再分散性が向上する観点からより好ましく、これら混合処理の中で超音波処理であることが特に好ましい。また、前記イオン液体は、後述するイオン液体以外の溶媒を含んでもよい。
なお、本発明の窒化ホウ素ナノシート含有分散液においては、前記分散液の色調としては、特に制限されないが、窒化ホウ素種とイオン液体種の組み合わせにより異なる傾向にあり、白色、淡黄色、黄色、淡橙色あるいは橙色を示す。なお、本発明の窒化ホウ素ナノシート含有分散液及び後述のろ過により窒化ホウ素ナノシート複合体を得た後のろ液が淡橙色あるいは橙色に呈色する理由は明確ではないが、イオン液体として、特定のアニオン種(例えば、スルホニル基やイミド基を含有するアニオン種)を用い、一辺のサイズが大きな窒化ホウ素ナノシートを分散させた場合により強く呈色する傾向にある。イオン液体、中でも特にイオン液体のカチオンが窒化ホウ素ナノシートとの間のカチオン−π相互作用等による強い相互作用を示すが、イオン液体のアニオンについても、窒化ホウ素ナノシートとの間のアニオン−π相互作用の寄与が、窒化ホウ素の剥離性及び窒化ホウ素ナノシートの分散性の向上に影響していると推察され、これらの相互作用が呈色に関与していることや、イオン液体のカチオンと窒化ホウ素ナノシートとの間の強い相互作用により、イオン液体中の一部のアニオン種が遊離し、呈色に関与していることが原因として推察される。
[窒化ホウ素ナノシート複合体]
次に、本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体について説明する。本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体は、前記窒化ホウ素ナノシートと、前記窒化ホウ素ナノシートに吸着している前記イオン液体とを備えることを特徴とする。なお、窒化ホウ素ナノシート及びイオン液体は、前記本発明の窒化ホウ素ナノシート含有分散液で説明した窒化ホウ素ナノシート及びイオン液体を用いることができる。
本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体において、前記窒化ホウ素ナノシートと前記イオン液体との吸着は、非共有結合による吸着であっても、共有結合による吸着であっても、またこれらの組み合わせであってもよいが、窒化ホウ素ナノシートの表面構造を破壊せず、欠陥を形成せず、窒化ホウ素ナノシートが本来有する熱伝導性、絶縁性、熱安定性及び機械的特性等の優れた特性を効果的に発現する傾向にあるという点で少なくとも非共有結合による吸着を含むことが好ましい。
本発明において「非共有結合による吸着」とは、前記窒化ホウ素ナノシートと前記イオン液体との間に生じる共有結合以外の相互作用による吸着を意味する。このような非共有結合による吸着としては、例えば、前記窒化ホウ素ナノシートと前記イオン液体のカチオンとの間に生じるカチオン−π相互作用、前記窒化ホウ素ナノシートと前記イオン液体のアニオンとの間に生じるアニオン−π相互作用、前記窒化ホウ素ナノシートと前記イオン液体のアルキル基との間に生じるCH−π相互作用、前記窒化ホウ素ナノシートと前記イオン液体の間に生じるπ−π相互作用、電荷移動相互作用及びファンデルワールス力のうちの1種以上の相互作用を利用するもの等が挙げられる。なお、非共有結合による吸着であっても洗浄等によりイオン液体が脱離しない理由は必ずしも定かではないが、本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体においては、カチオン−π相互作用、アニオン−π相互作用、CH−π相互作用、π−π相互作用、電荷移動相互作用及びファンデルワールス力等の相互作用が強く働いているためと推察される。
また、本発明において「共有結合による吸着」とは、前記窒化ホウ素ナノシートと前記イオン液体とが共有結合を介して吸着するものであれば特に制限されないが、例えば、窒化ホウ素ナノシートの平面や端部に存在する微量の残存炭素原子、主に端部のホウ素原子に結合して存在する水酸基、アミノ基等の官能基、主に端部の窒素原子の孤立電子対等を起点とした化学反応により窒化ホウ素ナノシートにイオン液体を導入したもの等が、前記共有結合により吸着した窒化ホウ素ナノシート複合体として挙げられる。また、前記窒化ホウ素ナノシートの構造中にカルボキシル基、ニトロ基、アミノ基、アルキル基、有機シリル基等の置換基、ポリ(メタ)アクリル酸エステル等の高分子、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリ(パラフェニレン)、ポリチオフェン又はポリフェニレンビニレンといった導電性高分子等が化学結合により導入されたもの、窒化ホウ素ナノシートを金属ナノ粒子やカーボン系ナノフィラー等の他のナノ構造体で被覆したものも用いることができる。
このような窒化ホウ素ナノシートとイオン液体との吸着は、イオン液体に対する良溶媒中に窒化ホウ素ナノシート複合体を再分散させたり、前記良溶媒により窒化ホウ素ナノシート複合体を洗浄ろ過した場合においても窒化ホウ素ナノシート複合体中に残存していることが好ましい。
このような本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体においては、前記イオン液体の吸着量は、特に制限されないが、窒化ホウ素ナノシート複合体の分散性及び流動性(成形加工性)の向上の観点から、窒化ホウ素ナノシート100質量部に対して0.01質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましく、0.1質量部以上が更に好ましく、0.5質量部以上が特に好ましく、1.0質量部以上が最も好ましい。前記イオン液体の吸着量が前記下限未満になると、窒化ホウ素ナノシートの分散性及び流動性(成形加工性)が低下しやすい傾向にある。また、前記イオン液体の吸着量は、窒化ホウ素ナノシート100質量部に対して100000質量部以下が好ましく、10000質量部以下がより好ましく、窒化ホウ素ナノシート複合体を含む樹脂組成物や樹脂複合材の剛性や吸着安定性の向上の観点から、1000質量部以下が更に好ましく、100質量部以下が特に好ましく、90質量部以下が最も好ましい。なお、窒化ホウ素ナノシートへのイオン液体の吸着量については、熱重量分析によりイオン液体に由来する重量減少を求めることにより算出することができる。また、イオン液体の窒化ホウ素ナノシート表面への吸着については、イオン液体の吸着量にもよるが、通常、IR、XRD、ラマン測定により確認することができる。例えば、イオン液体として、イミダゾリウムカチオンを含むイオン液体を用いた場合、窒化ホウ素ナノシート複合体のIRスペクトルにおいて、約1021cm−1と約1416cm−1のイミダゾール環に基づくピークが確認できる。また、XRDスペクトルやラマンスペクトルにおいても、用いたイオン液体に由来するピークが確認できる。
また、前記窒化ホウ素ナノシート複合体に含まれる窒化ホウ素ナノシートの層数としては、特に制限されないが、窒化ホウ素ナノシート複合体の熱伝導率の向上の観点から、50層以下の窒化ホウ素ナノシートを含むものであることが好ましく、30層以下の窒化ホウ素ナノシートを含むものであることがより好ましく、10層以下の窒化ホウ素ナノシートを含むものであることが更に好ましく、6層以下の窒化ホウ素ナノシートを含むものであることが特に好ましく、3層以下の窒化ホウ素ナノシートを含むものであることが更に特に好ましく、2層以下の窒化ホウ素ナノシートを含むものであることがとりわけ好ましく、単層の窒化ホウ素ナノシートを含むものであることが最も好ましい。
更に、このような本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体の窒化ホウ素ナノシートにおいて、10層以下の窒化ホウ素ナノシートの存在割合としては、特に制限されないが、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることが更に好ましく、80%以上であることが特に好ましく、90%以上であることが最も好ましい。また、このような本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体の窒化ホウ素ナノシートにおいて、6層以下の窒化ホウ素ナノシートの存在割合としては、特に制限されないが、10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、30%以上であることが更に好ましく、40%以上であることが特に好ましく、50%以上であることが最も好ましい。更に、このような本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体の窒化ホウ素ナノシートにおいて、3層以下の窒化ホウ素ナノシートの存在割合としては、特に制限されないが、4%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、10%以上であることが更に好ましく、15%以上であることが特に好ましく、20%以上であることが最も好ましい。また、このような本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体の窒化ホウ素ナノシートにおいて、2層以下の窒化ホウ素ナノシートの存在割合としては、特に制限されないが、4%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、10%以上であることが更に好ましく、15%以上であることが特に好ましく、20%以上であることが最も好ましい。更に、このような本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体の窒化ホウ素ナノシートにおいて、単層の窒化ホウ素ナノシートの存在割合としては、特に制限されないが、4%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、8%以上であることが更に好ましく、10%以上であることが特に好ましく、20%以上であることが最も好ましい。
[窒化ホウ素ナノシート複合体含有分散液]
次に、本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体含有分散液について説明する。本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体含有分散液は、前記本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体とイオン液体以外の溶媒とを含有することを特徴とする。なお、窒化ホウ素ナノシート、イオン液体及び窒化ホウ素ナノシート複合体は、前記本発明の窒化ホウ素ナノシート含有分散液及び窒化ホウ素ナノシート複合体で説明した窒化ホウ素ナノシート、イオン液体及び窒化ホウ素ナノシート複合体を用いることができる。
このような本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体含有分散液においては、含有する窒化ホウ素ナノシート複合体の濃度としては、特に制限されないが、窒化ホウ素ナノシートの有する熱伝導率等の特性をより好ましく発現する観点から、0.01mg/mL以上であることが好ましく、0.05mg/mL以上であることがより好ましく、0.1mg/mL以上であることが更に好ましく、0.2mg/mL以上であることが特に好ましい。
また、前記窒化ホウ素ナノシート複合体含有分散液に含まれる窒化ホウ素ナノシートの層数としては、特に制限されないが、窒化ホウ素ナノシート含有分散液の熱伝導率の向上の観点から、50層以下の窒化ホウ素ナノシートを含むものであることが好ましく、30層以下の窒化ホウ素ナノシートを含むものであることがより好ましく、10層以下の窒化ホウ素ナノシートを含むものであることが更に好ましく、6層以下の窒化ホウ素ナノシートを含むものであることが特に好ましく、3層以下の窒化ホウ素ナノシートを含むものであることが更に特に好ましく、2層以下の窒化ホウ素ナノシートを含むものであることがとりわけ好ましく、単層の窒化ホウ素ナノシートを含むものであることが最も好ましい。
更に、このような本発明の窒化ホウ素ナノシートにおいて、10層以下の窒化ホウ素ナノシートの存在割合としては、特に制限されないが、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることが更に好ましく、80%以上であることが特に好ましく、90%以上であることが最も好ましい。また、このような本発明の窒化ホウ素ナノシートにおいて、6層以下の窒化ホウ素ナノシートの存在割合としては、特に制限されないが、10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、30%以上であることが更に好ましく、40%以上であることが特に好ましく、50%以上であることが最も好ましい。更に、このような本発明の窒化ホウ素ナノシートにおいて、3層以下の窒化ホウ素ナノシートの存在割合としては、特に制限されないが、4%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、10%以上であることが更に好ましく、15%以上であることが特に好ましく、20%以上であることが最も好ましい。また、このような本発明の窒化ホウ素ナノシートにおいて、2層以下の窒化ホウ素ナノシートの存在割合としては、特に制限されないが、4%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、10%以上であることが更に好ましく、15%以上であることが特に好ましく、20%以上であることが最も好ましい。更に、このような本発明の窒化ホウ素ナノシートにおいて、単層の窒化ホウ素ナノシートの存在割合としては、特に制限されないが、4%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、8%以上であることが更に好ましく、10%以上であることが特に好ましく、20%以上であることが最も好ましい。
また、本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体含有分散液及び前記本発明の窒化ホウ素ナノシート含有分散液においては、各種フィラーを更に添加して用いることができる。このようなフィラーとしては、特に制限されないが、例えば、アルミナ、窒化アルミ、立方晶窒化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、カーボンナイトライド、ダイヤモンド、酸化亜鉛、グラファイト、炭素繊維や、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンナノプレートレット、グラフェン、数層グラフェン、ナノグラファイト(グラフェンナノリボンなど)、ナノグラフェン、カーボンナノホーン、カーボンナノコーン、カーボンナノコイル、フラーレンなどのカーボン系ナノフィラーや、遷移金属ダイカルコゲナイド、13族カルコゲナイド、14族カルコゲナイド及びビスマスカルコゲナイド等のカルコゲナイド系層状物質や、層状高温超伝導化合物、雲母、滑石、カオリン等の層状ケイ酸塩、酸化チタン系及びペロブスカイト系ナノシート等の層状酸化物が好ましいものとして挙げられる。これらの中でも、例えば、グラファイト、数層グラフェン、六方晶窒化ケイ素、六方晶炭化ケイ素及びカルコゲナイド系層状物質等の層状物質と窒化ホウ素又は窒化ホウ素ナノシートとをイオン液体中で混合した場合、これらの物質の剥離又は分散も進行した分散液を得ることもできる。また、これら混合物の分散液から溶媒を除去し、前記層状物質の剥離により得られたナノシートと窒化ホウ素ナノシート又は窒化ホウ素ナノシート複合体を配向、配列させることで、前記層状物質の剥離により得られたナノシートと窒化ホウ素ナノシート又は窒化ホウ素ナノシート複合体からなる積層体を作製することもできる。
(イオン液体以外の溶媒)
本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体含有分散液においては、イオン液体以外の前記溶媒としては、特に制限されないが、例えば、有機溶媒及び水が挙げられ、これらは単独で用いても混合して用いてもよい。前記有機溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸アミル、テトラヒドロフラン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、テトラエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、クロロフェノール、フェノール、テトラヒドロフラン、スルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、γ−ブチロラクトン、N−ジメチルピロリドン、ペンタン、ヘキサン、ネオペンタン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、ジエチルエーテル等が挙げられる。これらの有機溶媒も1種を単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
このような本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体含有分散液における溶媒においては、有機溶媒として、前記本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体に用いたイオン液体種と親和性の高いものを用いることが好ましい。例えば、前記イオン液体として、アニオンが、[CnF(2n+1−a)Ha)SO2]2N−、(FSO2)2N−、(CN)2N−、CnH(2n+1)OSO3 −、(CnF(2n+1−a)Ha)SO3 −、CH3SO3 −、HSO3 −、C6H5SO3 −、CH3(C6H4)SO3 −、[CnF(2n+1−a)Ha)SO2]3C−、(CnF(2n+1−a)Ha)COO−、NO3 −からなる群から選択される少なくとも一種の場合(なお、nは1〜8の整数、aは0〜17の整数)、有機溶媒としては、分散性の向上の観点から、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ヘキサフルオロイソプロパノール、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、γ−ブチロラクトン、N−ジメチルピロリドン等が特に好ましい。また、前記イオン液体として、例えば、アニオンが、BF4−b(CnF2n−1)b −、(CN)4−bBb −、(CN)4−bBFb −からなる群から選択される少なくとも一種の場合(なお、nは1〜8の整数、bは0〜4の整数)、有機溶媒としては、分散性の向上の観点から、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、テトラエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール等が特に好ましい。また、本発明においては、スチレン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等のビニル系モノマーやε−カプロラクタム等の重縮合用のモノマー等のモノマーやエポキシ樹脂等の硬化樹脂の主剤や架橋剤等の原料も溶媒として好適に用いることもでき、これら溶媒中で窒化ホウ素ナノシート複合体を分散させ、重合を行うことにより窒化ホウ素ナノシート複合体が高度に分散した樹脂組成物を得ることができる。
(窒化ホウ素ナノシート複合体含有分散液の製造方法)
本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体含有分散液においては、前記本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体を前記イオン液体中で調製してそのまま分散液として使用することもできるが、本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体はイオン液体以外の溶媒への再分散性にも優れているため、窒化ホウ素ナノシート複合体をイオン液体以外の溶媒に添加し混合することにより、窒化ホウ素ナノシート複合体含有分散液を製造することができる。また、窒化ホウ素又は窒化ホウ素ナノシート、イオン液体及びイオン液体以外の溶媒を一括又は分割して混合して窒化ホウ素ナノシート複合体含有分散液を製造することもできる。更に、一括で混合して製造する場合、イオン液体がイオン液体以外の溶媒中で窒化ホウ素に吸着、窒化ホウ素を剥離し、窒化ホウ素ナノシート複合体を形成し、窒化ホウ素ナノシート複合体含有分散液を得ることができる。
前記混合方法としては、特に制限されないが、超音波処理、振動処理、攪拌処理、粉砕処理、外場の印加(例えば、電場印加、磁場印加等)、混練から選ばれる少なくとも一種の混合処理であることが好ましい。これらの方法の中でも、超音波処理、撹拌処理及び粉砕処理からなる群から選択される少なくとも一種の混合処理であることが、窒化ホウ素の剥離を効率的に進行させ、層数の少ない窒化ホウ素ナノシートを含有する分散液をより高濃度で得る上でより好ましい。なお、より分散安定性に優れ、かつより高濃度の分散液を得る観点から、これら混合処理の中で超音波処理であることが更に好ましい。また、窒化ホウ素ナノシートへのダメージを抑制しつつより高度に分散させる観点から、前記混合処理の中で超音波洗浄機を用いた超音波処理が特に好ましい。
このような本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体含有分散液の製造においては、前記窒化ホウ素ナノシートと前記溶媒との混合比率については、特に制限されないが、窒化ホウ素ナノシートの添加量の下限は、溶媒100質量部に対して0.0001質量部以上であることが好ましく、0.001質量部以上であることがより好ましく、0.005質量部以上であることが更に好ましく、0.1質量部以上であることが特に好ましい。また、窒化ホウ素ナノシートの添加量の上限については、特に制限されないが、溶媒100質量部に対して1質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以下であることがより好ましく、0.09質量部以下であることが更に好ましく、0.08質量部以下であることが特に好ましい。前記窒化ホウ素ナノシートの添加量が前記下限未満では、窒化ホウ素ナノシート複合体の生産性が低下する傾向にある。他方、前記上限を超えると、窒化ホウ素ナノシートの分散性が低下して凝集が起こりやすく、イオン液体の吸着量が減少しやすく、吸着安定性が低下しやすい傾向にあるが、前記好適な上限を超えた場合でも、例えば分散液中の凝集や沈殿がない部分(例えば、上澄み液等)を回収すること等によって良質な分散液を得ることができる。
[窒化ホウ素ナノシート複合体の製造方法]
次に、本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体の製造方法について説明する。本発明の窒
化ホウ素ナノシート複合体の製造方法は、窒化ホウ素ナノシートと前記窒化ホウ素ナノシートに吸着しているイオン液体とを備える窒化ホウ素ナノシート複合体の製造方法であって、窒化ホウ素とイオン液体とを混合し、前記窒化ホウ素の層間を剥離せしめて窒化ホウ素ナノシートを得ると共に該窒化ホウ素ナノシートにイオン液体を吸着させる剥離吸着工程を含むことを特徴とする方法である。なお、窒化ホウ素ナノシート及びイオン液体は、前記本発明の窒化ホウ素ナノシート含有分散液及び窒化ホウ素ナノシート複合体で説明した窒化ホウ素ナノシート及びイオン液体を用いることができる。
このような本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体の製造方法としては、前記剥離吸着工程を含むこと以外は、前記窒化ホウ素の層間を剥離せしめて窒化ホウ素ナノシートを得ると共に該窒化ホウ素ナノシートに前記イオン液体を吸着させることが可能な方法であれば特に制限はないが、例えば、以下の方法が挙げられる。
(i)前記窒化ホウ素と前記イオン液体とを溶媒を使用せずに混合し、層間剥離処理を施す方法。
(ii)前記窒化ホウ素と前記イオン液体とを溶媒中で混合し、層間剥離処理を施す方法。
これらの製造方法は単独で実施しても2つ以上を組み合わせて実施してもよい。
(窒化ホウ素)
このような本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体の製造方法においては、原料として用いられる窒化ホウ素としては、六方晶窒化ホウ素(h−BN)、菱面体晶窒化ホウ素(r−BN)及び乱層構造窒化ホウ素(t−BN)等の層状窒化ホウ素を含む窒化ホウ素であれば特に制限はないが、得られる窒化ホウ素ナノシート複合体の熱伝導率、絶縁性、耐熱性の観点から、特に好ましくは六方晶窒化ホウ素を含む窒化ホウ素である。このような窒化ホウ素の形状としては、特に制限されないが、パウダー、フレーク、ビーズ等、様々なタイプの窒化ホウ素を用いることができる。また、このような窒化ホウ素としては、窒化ホウ素の類縁体として炭素原子も含む炭窒化ホウ素(B−C−N材料)やシランカップリング剤等で表面処理を施した窒化ホウ素も用いることができるが、窒化ホウ素ナノシートの有する絶縁性、耐熱性、耐酸化性等を十分に発現する観点から、BNの純度が高い窒化ホウ素であることがより好ましい。
原料として用いる窒化ホウ素の平均二次粒子径は、特に制限されないが、本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体の製造方法においては、イオン液体を用いることによって、通常、剥離と孤立分散が困難な平均二次粒子径の大きな窒化ホウ素も分散させることができる。原料として用いる窒化ホウ素の平均二次粒子径の下限は、特に制限されないが、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましく、1μm以上であることが更に好ましく、2μm以上であることが特に好ましく、10μm以上であることが最も好ましい。また、原料として用いられる窒化ホウ素の二次粒子を構築する窒化ホウ素一次粒子の一辺の平均サイズの下限としては、特に制限されないが、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましく、1μm以上であることが更に好ましく、2μm以上であることが特に好ましく、3μm以上であることが最も好ましい。
(剥離吸着工程)
本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体の製造方法においては、前記窒化ホウ素とイオン液体とを混合し、前記窒化ホウ素の層間を剥離せしめて窒化ホウ素ナノシートを得ると共に該窒化ホウ素ナノシートにイオン液体を吸着させる工程(剥離吸着工程)を含むことが必要である。
このような本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体の製造方法にかかる剥離吸着工程においては、超音波処理、振動処理、攪拌処理、粉砕処理、外場の印加(例えば、電場印加、磁場印加等)、混練から選ばれる少なくとも一種の層間剥離処理を施すことが好ましい。これらの層間剥離処理の中でも、前記イオン液体の存在下で前記窒化ホウ素に超音波処理、撹拌処理及び粉砕処理からなる群から選択される少なくとも一種の層間剥離処理を施すことがより好ましい。この層間剥離処理により、窒化ホウ素の剥離を効率的に進行させ、層数の少ない窒化ホウ素ナノシートを含有する窒化ホウ素ナノシート複合体が得られる傾向にある。
このような層間剥離処理としては、分散性と再分散性に優れる窒化ホウ素ナノシート複合体及び高濃度で分散性に優れる窒化ホウ素ナノシート含有分散液を得る観点から、超音波処理及び粉砕処理からなる群から選択される少なくとも一種が更に好ましく、超音波処理であることが特に好ましい。このような超音波処理としては、特に制限されないが、例えば、超音波洗浄機を用いる方法や超音波ホモジナイザー(プローブ型ソニケーター)を用いる方法等が挙げられるが、窒化ホウ素ナノシートの表面へのダメージを抑制し、窒化ホウ素ナノシートの本来の特性を発揮する観点から、超音波洗浄機を用いる方法が特に好ましい。本発明においては、窒化ホウ素をイオン液体中に分散させた後に分散溶液に超音波処理を行う場合、例えば、卓上型超音波洗浄機を用いて、超音波発振周波数を45kHzとした場合、超音波処理時間としては、特に制限されないが、1分以上であることが好ましく、より好ましくは1時間以上であり、更に好ましくは5時間以上であり、特に好ましくは25時間以上であり、最も好ましくは48時間以上である。従来技術では、超音波処理時間が短い場合、例えば、1分以上1時間未満の場合、本発明にかかる窒化ホウ素ナノシートを得ることが困難であったが、本発明においてはイオン液体を用いることにより、窒化ホウ素の剥離を効率的に進行させることができ、本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体及び本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体含有分散液を得ることができる。また、従来技術では、超音波処理時間が24時間程度を超えると六方晶のシート構造が破壊されサイズが小さくなってしまう課題があったが、本発明においては、イオン液体を用いることによって、従来より大きな粒子径を有する窒化ホウ素粒子を原料として用いることが可能となり、かつ剥離が効率的に進行することから、六方晶のシート構造の破壊を抑制しつつ、剥離を更に進行させることができ、収率を更に向上させることができる。
また、本発明の層間剥離処理、中でも特に超音波処理又は撹拌処理を行う場合には、層間剥離処理後に遠心分離操作又は静置を行うことが好ましく、より好ましくは遠心分離操作である。遠心分離操作又は静置は、層間剥離処理後の分散液中に存在する剥離の不十分な大きな粒子や物理的な絡み合い等により剥離が困難な窒化ホウ素粒子を除去するためであり、遠心分離操作又は静置により大きな粒子を除去した後の上澄み液は、更にろ過及び/又は乾燥により溶媒使用時には溶媒、又は/及び未吸着のイオン液体の少なくとも一部除去し、窒化ホウ素ナノシート複合体を得ることができる。なお、遠心分離操作における回転速度としては、特に制限されないが、300〜100000rpmの範囲にあることが好ましく、500〜10000rpmの範囲にあることがより好ましい。前記回転速度が前記上限を超えると、上澄み液中の窒化ホウ素ナノシートの濃度が低下する傾向にあり、他方、前記下限未満では10層以下の窒化ホウ素ナノシートの割合が低下し、かつ、窒素ホウ素ナノシート複合体の分散性が低下する傾向にある。また、相対遠心加速度は、特に制限されないが、10〜1000000Gの範囲にあることが好ましく、100〜100000Gの範囲にあることがより好ましい。前記相対遠心加速度が前記上限を超えると、上澄み液中の窒化ホウ素ナノシートの濃度が低下する傾向にあり、他方、前記下限未満では10層以下の窒化ホウ素ナノシートの割合が低下し、かつ、窒素ホウ素ナノシート複合体の分散性が低下する傾向にある。また、遠心分離操作の時間は、特に制限されないが、1分間〜24時間の範囲にあることが好ましく、5分間〜2時間の範囲にあることがより好ましい。前記遠心分離操作の時間が前記上限を超えると、上澄み液中の窒化ホウ素ナノシートの濃度が低下する傾向にあり、他方、前記下限未満では10層以下の窒化ホウ素ナノシートの割合が低下し、かつ、得られる窒素ホウ素ナノシート複合体の再分散性が低下する傾向にある。更に、静置させる場合、静置時間の下限としては、特に制限されないが、5分以上であることが好ましく、10分以上であることがより好ましく、1時間以上が更に好ましく、10時間以上が特に好ましく、20時間以上が最も好ましい。静置時間の上限としては、特に制限されないが、30日以下であることが好ましく、15日以下であることがより好ましく、10日以下が更に好ましい。前記静置時間が前記上限を超えると、上澄み液中の窒化ホウ素ナノシートの濃度が低下する傾向にあり、他方、前記下限未満では10層以下の窒化ホウ素ナノシートの割合が低下し、かつ、窒素ホウ素ナノシート複合体の分散性が低下する傾向にある。
また、本発明の層間剥離処理において撹拌処理を行う場合には、撹拌処理の回転数としては、特に制限されないが、100rpm以上が好ましく、より好ましくは200rpm以上であり、更に好ましくは300rpm以上であり、特に好ましくは400rpm以上であり、最も好ましくは500rpm以上である。前記撹拌処理の回転数が前記下限未満では、10層以下の窒化ホウ素ナノシートの割合が低下し、かつ、窒素ホウ素ナノシート複合体の分散性が低下する傾向にある。
また、本発明の層間剥離処理において粉砕処理を行う場合には、粉砕処理方法としては、特に制限されないが、乳鉢、せん断式ミル、ジョークラッシャー、衝撃式クラッシャー、コーンクラッシャー、ロールクラッシャー、ハンマーミル、ボールミル、振動ミル、ピンミル、攪拌ミル、乾式ジェットミル、湿式ジェットミルによる粉砕方法、等を用いることができる。乳鉢を用いた粉砕処理によりイオン液体存在下、窒化ホウ素ナノシート複合体又は窒化ホウ素ナノシート複合体を製造する場合には、粉砕時間は特に制限はないが、5分以上であることが好ましく、30分以上であることがより好ましく、1時間以上であることが更に好ましく、2時間以上であることが特に好ましく、3時間以上であることが最も好ましい。イオン液体の存在下で窒化ホウ素を粉砕することで、窒化ホウ素及び窒化ホウ素ナノシートに加わるせん断力を適切に制御することができ、面方向への破壊を抑制したまま、剥離を効率的に進行させることができる。なお、イオン液体非存在下では、粉砕時のせん断が大きくなりすぎるため、剥離だけでなく、面方向での破壊が生じ、一辺のサイズが小さくなる課題があり、本発明の窒化ホウ素ナノシート及び窒化ホウ素ナノシート複合体を得ることができない。
本発明の層間剥離処理において、溶融混練を行う場合には、前記窒化ホウ素及び前記イオン液体、更に必要に応じて樹脂及び/又は添加剤をそれぞれペレット状、粉末状又は細片状にしたものを、攪拌機、ドライブレンダー又は手混合等により均一に混合した後、押出機、ゴムロール機、又はバンバリーミキサー等を用いて溶融混練することができる。
本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体の製造方法においては、前記窒化ホウ素と前記イオン液体とを混合する方法については、特に制限されないが、一括で混合しても分割して混合してもよい。また、その順序については、前記窒化ホウ素に前記イオン液体を添加してもよいし、前記イオン液体に前記窒化ホウ素を添加してもよいし、前記窒化ホウ素と前記イオン液体とを同時に添加してもよいし、少なくとも一部ずつを交互に添加してもよい。
また、本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体の製造方法においては、前記窒化ホウ素と前記イオン液体とを混合する際に、他の溶媒、樹脂、フィラー、添加剤を添加してもよい。溶媒及びフィラーとしては、前記窒化ホウ素ナノシート複合体含有分散液で説明したものを用いることができる。このような樹脂や添加剤の混合も、一括で行っても分割して行ってもよい。また、その混合順序についても特に制限されない。
本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体の製造方法においては、前記窒化ホウ素と前記イオン液体との混合比率については、特に制限されないが、前記イオン液体の添加量は、前記窒化ホウ素100質量部に対して0.01質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましく、0.1質量部以上が更に好ましく、0.5質量部以上が特に好ましく、1.0質量部以上が最も好ましい。前記イオン液体の添加量が前記下限未満では、窒化ホウ素ナノシート複合体の溶媒中や樹脂中での分散性が低下しやすい傾向にある。また、前記イオン液体の添加量は、前記窒化ホウ素100質量部に対して100000000質量部以下が好ましく、10000000質量部以下がより好ましく、生産性の向上の観点から、1000000質量部以下が更に好ましく、500000質量部以下が特に好ましく、100000質量部以下が最も好ましい。
また、このような本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体の製造方法においては、前記イオン液体と前記窒化ホウ素及び/又は窒化ホウ素ナノシートとの混合時の温度については、特に制限されないが、0℃未満でもよいが、用いるイオン液体の融点以上であることが好ましく、室温(23℃)以上がより好ましく、30℃以上が更に好ましく、35℃以上が特に好ましく、40℃以上が最も好ましい。混合時の温度を用いるイオン液体の融点以上とすることでイオン液体の吸着量及び吸着安定性が向上する傾向にある。また、前記イオン液体の流動性を向上し吸着性を高めるという観点から混合時の温度は高い方が好ましく、前記イオン液体が耐熱性に優れるため、幅広い温度の選択が可能であるが、イオン液体の分解を抑制する観点から、その上限は500℃以下であることが好ましく、450℃以下がより好ましく、400℃以下が特に好ましい。
なお、本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体の製造方法においては、前記窒化ホウ素ナノシートに前記イオン液体を吸着させた後、ろ過、遠心分離とろ過との組み合わせ、再沈殿、溶媒の除去(乾燥等)、溶媒を含んだままの溶融混練、窒化ホウ素ナノシート複合体のサンプリング等により窒化ホウ素ナノシート複合体を得ることができる。
また、本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体の製造方法においては、前記窒化ホウ素の層間の剥離により得られた窒化ホウ素ナノシートの表面にイオン液体が吸着する。なお、この場合、必ずしもイオン液体の全てが吸着するわけではない。そこで、必要に応じて、混合後の分散液をろ過して未吸着のイオン液体を回収して再利用することで、窒化ホウ素ナノシート含有分散液、窒化ホウ素ナノシート複合体及び窒化ホウ素ナノシート複合体含有分散液を製造することができる。更に、遠心分離操作等により沈殿した未剥離の窒化ホウ素粒子及び/又は未分散の窒化ホウ素ナノシート複合体を回収し、再利用することで、窒化ホウ素ナノシート含有分散液、窒化ホウ素ナノシート複合体及び窒化ホウ素ナノシート複合体含有分散液を製造することもできる。前記未分散の窒化ホウ素ナノシート複合体としては、前記製造方法により得られる窒化ホウ素ナノシート複合体のうち、用いたイオン液体又は溶媒中での窒化ホウ素ナノシート複合体の分散量(溶解量)の上限値を超えたため沈殿したものが含まれる。この場合、新たに新品のイオン液体又は回収したイオン液体やその他の溶媒と混合させることにより窒化ホウ素ナノシート複合体の分散が可能となり、窒化ホウ素ナノシート含有分散液、窒化ホウ素ナノシート複合体及び窒化ホウ素ナノシート複合体含有分散液を製造することができる。また、前記イオン液体に対する貧溶媒で再沈殿させることにより、窒化ホウ素ナノシート複合体を回収することもできる。
このような本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体の製造方法においては、前記剥離吸着工程において前記窒化ホウ素ナノシートに吸着されなかった未吸着のイオン液体を回収し、前記窒化ホウ素と混合されるイオン液体の全部又は一部として再利用するリサイクル工程を更に含むことが好ましい。このようなリサイクル工程を更に含むことにより、未吸着のイオン液体を再利用することができ、イオン液体の使用量の削減によるコストの低減に有効となる。
更に、本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体の製造方法においては、得られた窒化ホウ素ナノシート複合体を、例えば200℃以上の温度での加熱処理、酸やアルカリを用いた処理、強力な洗浄処理、強力及び/又は長時間の超音波処理、電子線照射等の処理を行うことよって、窒化ホウ素ナノシートの表面に吸着しているイオン液体の少なくとも一部を分解したり、取り除くことにより、イオン液体が実質的に表面から除かれた窒化ホウ素ナノシートを製造することができる。また、本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体及び窒化ホウ素ナノシート複合体含有分散液は、高温での加熱処理、酸やアルカリを用いた処理、強力な洗浄処理、強力及び/又は長時間の超音波処理、電子線照射等の処理によってイオン液体の少なくとも一部がイオン液体由来の残渣に変化しているものや、窒化ホウ素ナノシート複合体の窒化ホウ素ナノシートの平面や端部に少量存在するNH2基やOH基等の反応により、例えばアルキル基等の有機残基を導入したものも含む。
[窒化ホウ素ナノシート薄層体]
次に、本発明の窒化ホウ素ナノシート薄層体について説明する。本発明の窒化ホウ素ナノシート薄層体は、前記本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体の製造方法により得られた窒化ホウ素ナノシート複合体に吸着しているイオン液体を除去して得られたものであることを特徴とする。本発明においては、窒化ホウ素ナノシート複合体に吸着しているイオン液体を除去して得たことにより、窒化ホウ素ナノシートが薄層化されたイオン液体を含まない窒化ホウ素ナノシート(窒化ホウ素ナノシート薄層体)を得ることができる。このような窒化ホウ素ナノシート薄層体は、製造に用いた前記本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体の窒化ホウ素ナノシートの特徴である少ない層数と大きな一辺の長さを維持できるため、熱伝導性に優れる。また、イオン液体を除去しているため、例えば200℃以上の温度で例えば10年以上といった長時間使用する際に有用となる長期耐熱性に優れる。なお、本発明の窒化ホウ素ナノシート薄層体においては、前記本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体やその製造方法等で説明した窒化ホウ素ナノシートを用いることができる。
[窒化ホウ素ナノシート薄層体の製造方法]
次に、本発明の窒化ホウ素ナノシート薄層体の製造方法について説明する。本発明の窒化ホウ素ナノシート薄層体の製造方法は、前記本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体の製造方法により得られた窒化ホウ素ナノシート複合体を用い、該窒化ホウ素ナノシート複合体に吸着しているイオン液体を除去して窒化ホウ素ナノシート薄層体を得ることを特徴とする。このような本発明の窒化ホウ素ナノシート薄層体の製造方法においては、窒化ホウ素ナノシート複合体に吸着しているイオン液体を除去することにより、窒化ホウ素ナノシートが薄層化されたイオン液体を含まない窒化ホウ素ナノシート(窒化ホウ素ナノシート薄層体)とすることができる。なお、本発明の窒化ホウ素ナノシート薄層体の製造方法においては、前記本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体やその製造方法等で説明した窒化ホウ素ナノシートを用いることができる。
このような本発明の窒化ホウ素ナノシート薄層体の製造方法におけるイオン液体の除去方法としては、特に制限されないが、例えば200℃以上の温度での加熱処理、酸やアルカリを用いた処理、強力な洗浄処理、強力及び/又は長時間の超音波処理、電子線照射等の処理であることが好ましい。これらのイオン液体の除去方法の中でも、窒化ホウ素ナノシート複合体の窒化ホウ素ナノシートの層数と大きな一辺のサイズを維持し、熱伝導性と長期耐熱性に優れる窒化ホウ素ナノシートを製造する観点から、200℃以上の温度での加熱処理であることがより好ましく、250℃以上の温度での加熱処理であることが更に好ましく、300℃以上の温度での加熱処理であることが特に好ましく、350℃以上の温度での加熱処理であることが最も好ましい。加熱処理時間としては、特に制限されないが、イオン液体を除去する際の窒化ホウ素ナノシートの再スタッキングを抑制する観点から、1分以上であることが好ましく、10分以上であることがより好ましく、30分以上であることが更に好ましい。
[樹脂組成物]
次に、本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体を用いた樹脂組成物について説明する。本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体を用いた樹脂組成物は、前記本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体と樹脂とを含有することを特徴とする。
本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体は、窒化ホウ素と比較して層数が少ないため、その比表面積が大きく、かつ表面に吸着したイオン液体により、有機溶媒や樹脂との親和性に優れることから、樹脂のフィラーとして用いた場合、添加量が少なくても得られる樹脂組成物の特性を改善することができる。
このような樹脂組成物における窒化ホウ素ナノシート複合体の含有率としては、特に制限されないが、樹脂組成物100質量%に対して0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、0.2質量%以上が特に好ましく、また、90質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましく、5質量%以下が特に好ましい。前記窒化ホウ素ナノシート複合体の含有率が前記下限未満では、本発明の樹脂組成物を成形加工して得られる樹脂複合材の熱伝導性及び機械強度が低下しやすい傾向にあり、他方、前記上限を超えると樹脂組成物の流動性が低下しやすい傾向にある。
このような樹脂組成物における前記樹脂としては、特に制限されないが、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、熱硬化性ポリアミドイミド、熱硬化性シリコーン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ユリア樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アルキド樹脂、及びウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリスチレン、HIPS(耐衝撃性ポリスチレン)、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、AS(アクリロニトリル−スチレン)樹脂、MAS(メタクリル酸メチル−アクリロニトリル−スチレン)樹脂、MABS(メタクリル酸メチル−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、及びSBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)樹脂といった芳香族ビニル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸、これらの共重合体、及びアクリルゴムといったアクリル系樹脂、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル−アクリル酸メチル樹脂、及びアクリロニトリル−ブタジエン樹脂といったシアン化ビニル系樹脂、イミド基含有ビニル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、エチレンプロピレンジエンモノマーゴム、及びエチレンプロピレンゴムといったポリオレフィン系樹脂、酸又は酸無水物変性ポリオレフィン系樹脂、エポキシ変性ポリオレフィン樹脂、酸又は酸無水物変性アクリル系エラストマー、エポキシ変性アクリルエラストマー、シリコーンゴム、フッ素ゴム、天然ゴム、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ1,4−シクロヘキサンジメチルテレフタレート、ポリアリレート、液晶ポリエステル、ポリフェニレンエーテル、ポリアリーレンスルフィド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリオキシメチレン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン及びポリフッ化ビニルに代表されるフッ素系樹脂、ポリ乳酸、ポリ塩化ビニル、熱可塑性ポリイミド、熱可塑性ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルアミド等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの樹脂は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
このような樹脂組成物における前記樹脂の中でも、窒化ホウ素ナノシートの白色性を活かすことのできるという観点から透明樹脂(例えば、ポリスチレン、SBS樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸、これらの共重合体、及びアクリルゴムといったアクリル系樹脂、ポリカーボネート(特殊ポリカーボネートも含む)、環状ポリオレフィン、透明ABS樹脂、AS樹脂、MAS樹脂、透明MABS樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリメチルペンテン、フルオレン系ポリエステル、ポリエチレンナフタレート、脂環式エポキシ樹脂、透明ポリイミド、透明ポリアミド、透明フッ素樹脂、ポリ乳酸、導電性高分子、透明エラストマー)がより好ましく用いることができる。また、熱伝導性及び機械強度の観点から結晶性樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ1,4−シクロヘキサンジメチルテレフタレート、液晶ポリエステル、ポリアリーレンスルフィド、ポリオキシメチレン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン及びポリフッ化ビニル等のフッ素系樹脂、ポリ乳酸、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルアミド等)がより好ましく用いることができる。なお、前記結晶性樹脂は、280℃以上の加工温度を必要とする結晶性樹脂が更に好ましくは、290℃以上の加工温度を必要とする結晶性樹脂(例えば、液晶ポリエステル、ポリアリーレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂及び290℃以上の加工温度を必要とするポリアミド等)が特に好ましく、耐熱性と成形加工性の観点からポリアリーレンスルフィド及び液晶ポリエステルが最も好ましい。本発明にかかる前記イオン液体は、耐熱性に優れているため、本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体は、例えば、290℃以上の高い加工温度を必要とする結晶性樹脂中に良好に分散させることが可能である。
なお、このような樹脂組成物においては、必要に応じて各種添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、特に制限されないが、例えば、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、離型剤、結晶核剤、粘度調整剤、着色剤、シランカップリング剤等の表面処理剤、タルク、モンモリロナイト等の粘土鉱物、雲母鉱物及びカオリン鉱物に代表される層状ケイ酸塩、ガラス繊維、炭素繊維、シリカや熱伝導性フィラー等の充填剤、エラストマー類等が挙げられる。
このような熱伝導性フィラーとしては、特に制限されないが、例えば、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ダイヤモンド、酸化亜鉛、グラファイト、炭素繊維や、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンナノプレートレット、グラフェン、数層グラフェン、ナノグラファイト(グラフェンナノリボン等)、ナノグラフェン、カーボンナノホーン、カーボンナノコーン、カーボンナノコイル、フラーレン、等のカーボン系ナノフィラーが挙げられる。これらの熱伝導性フィラーは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。このような熱伝導性フィラーの熱伝導率としては、特に制限されないが、0.5W/(m・K)以上が好ましく、1W/(m・K)以上がより好ましく、5W/(m・K)以上が更に好ましく、10W/(m・K)以上が特に好ましく、20W/(m・K)以上が最も好ましい。このような樹脂組成物における熱伝導性フィラーの含有率としては、特に制限されないが、樹脂組成物100質量%に対して0.1〜95質量%が好ましく、0.1〜90質量%がより好ましく、0.1〜80質量%が更に好ましく、0.1〜70質量%が特に好ましく、0.1〜50質量%が最も好ましい。前記熱伝導性フィラーの含有率が前記下限未満になると、得られる樹脂組成物の熱伝導性が十分に向上しない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、樹脂組成物の流動性が低下しやすい傾向にある。
このような樹脂組成物の調製の際に用いる窒化ホウ素ナノシート複合体は、乾燥処理が施されていてもよいし、溶媒(有機溶媒及び/又は水)を含んでいてもよい。乾燥処理の温度としては、特に制限されないが、乾燥時の凝集を防ぐ観点から凍結乾燥させることが好ましい。また、窒化ホウ素ナノシート複合体が凝集している場合には、それをそのまま用いても樹脂中で速やかに分散するが、粉砕や凍結粉砕を施して予め解砕することが好ましい。
このような樹脂組成物の製造方法としては、特に制限されないが、樹脂中にフィラーを分散させる際に採用される従来公知の混合方法が挙げられる。例えば、溶媒中で樹脂と前記本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体と必要に応じて各種添加剤とを混合する方法、押出機、ゴムロール機、又はバンバリーミキサー等を用いて樹脂と前記本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体と必要に応じて各種添加剤とを溶融混練する方法等が挙げられる。溶媒中で樹脂と前記本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体と必要に応じて各種添加剤とを混合する方法の場合、混合後に溶媒を例えば溶液キャスト法、真空乾燥、再沈殿等の従来公知の方法により除去することによって窒化ホウ素ナノシート複合体が分散した樹脂組成物を得ることができる。ここで用いられる溶媒としては、窒化ホウ素ナノシート作製時に使用したイオン液体と親和性があるものが好ましく、また、前記溶媒は、用いる樹脂を溶解するものがより好ましく、使用する樹脂の種類によって適宜選択することができる。例えば、樹脂として、透明性の観点から好ましく用いられるアクリル系樹脂を選択した場合に適した溶媒としては、クロロホルムやN,N−ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。また、樹脂として低粘度の熱硬化性樹脂を用いる場合には、自公転ミキサー等のミキサーを用いて複合化処理を施すことにより混合することも可能である。なお、前記本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体、樹脂及び必要に応じ各種添加剤を混合する場合には、一括で混合しても分割して混合してもよい。また、その順序についても特に制限はなく、特定の成分を予備混合した後、残りの成分を混合してもよい。窒化ホウ素ナノシート複合体の樹脂中への分散性を向上させるという観点からは、樹脂の一部及び/又は各種添加剤を予め窒化ホウ素ナノシート複合体と予備混合させることが好ましい。予備混合の方法としては、例えば、溶媒中で混合させる方法、溶融させた樹脂と窒化ホウ素ナノシート複合体とを混合させる方法、攪拌機、ドライブレンダー又は手混合等により混合する方法、窒化ホウ素ナノシート複合体の製造時に樹脂の少なくとも一部及び/又は各種添加剤を混合する方法等が挙げられる。このような予備混合方法の中でも、溶媒中で混合させる方法が好ましく、樹脂の少なくとも一部及び/又は各種添加剤を溶媒中に溶解及び/又は分散(溶解を伴わないもの)させ、これに前記本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体を添加して混合させる方法、又は、前記本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体を含む分散液に樹脂の少なくとも一部及び/又は各種添加剤を添加して混合させる方法がより好ましい。なお、予備混合する際の樹脂の形状は特に制限されず、例えば、粉状、ペレット状、粒状、タブレット状、繊維状等が挙げられる。
また、このような樹脂組成物の製造方法においては、窒化ホウ素ナノシート複合体と樹脂を混合すること以外に、アルケニル基を有するイオン液体を用いることにより、窒化ホウ素の層間や窒化ホウ素ナノシート表面に挿入又は吸着したアルケニル基含有イオン液体と他のアルケニル基イオン液体及び/又はビニル系モノマーとの各種ラジカル重合や、窒化ホウ素の層間や窒化ホウ素ナノシート表面に挿入又は吸着したエポキシ基、アミノ基、水酸基、カルボン酸及び酸無水物基等の官能基をカチオン又はアニオンに導入した変性イオン液体と他の変性イオン液体及び/又はモノマーとの重合により、窒化ホウ素ナノシートが高度に分散した樹脂組成物を製造することもできる。また、側鎖等の樹脂骨格中にイオン液体と同様又は類似の構造を導入した樹脂を用いて、窒化ホウ素ナノシート複合体と混合することにより、窒化ホウ素ナノシート複合体を樹脂中に高度に分散させることもできる。また、樹脂中で窒化ホウ素ナノシートと前記イオン液体を混合し、窒化ホウ素ナノシートに前記イオン液体を吸着させることによっても製造することができる。前記混合方法としては、例えば、溶媒中での超音波処理、振動処理、攪拌処理、粉砕処理、外場の印加(例えば、電場印加、磁場印加等)、混練等による混合方法が好ましく挙げられる。
また、このような樹脂組成物から成形体を製造する方法としては、特に制限されないが、本発明の樹脂組成物に、射出成形、プレス成形、押出成形、ブロー成形、圧縮成形、ガスアシスト成形、インサート成形、2色成形、外場を利用した成形(例えば、磁場成形、電場を利用した成形等)等の従来公知の成形加工を施すことにより樹脂複合材(成形体)を得ることができる。成形温度としては、特に制限されないが、本発明の窒化ホウ素ナノシート複合体が耐熱性に優れる(イオン液体の熱分解温度が高い)ため、例えば、290℃以上、300℃以上又は310℃以上の高温での成形も可能となる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、窒化ホウ素ナノシート含有分散液及び窒化ホウ素ナノシート複合体の各物性は以下の方法により測定した。
<測定方法1:分散液の分散安定性(吸光度)の測定>
実施例及び比較例それぞれにおいて、得られた分散液(遠心分離(3000rpm、相対遠心加速度1220G、1時間)を施して得られた上澄み液)について、それぞれの分散液で使用しているイオン液体や溶媒(ジメチルホルムアミド(DMF)、イソプロピルアルコール(IPA))をリファレンスとしてUV−可視光吸収スペクトルを測定し、650nmの吸光度により分散安定性(耐沈降性)を評価した。なお、イオン液体、DMF、IPAは650nmで吸収を示さないため、650nmでの吸光度の値が大きいほど遠心分離後の分散液中に窒化ホウ素ナノシート複合体が多く分散し、分散性に優れていることを意味する。
<測定方法2:分散液中の窒化ホウ素ナノシートの濃度の測定及び窒化ホウ素ナノシートの収率の測定>
実施例及び比較例それぞれにおいて、得られた分散液を用いて窒化ホウ素ナノシート複合体を作製する過程で、まず、洗浄ろ過に用いた桐山漏斗〔フィルター:テフロン(登録商標)製フィルター、孔径0.1μm〕の質量を予め測定した。次に、得られた分散液をテフロン(登録商標)製フィルターを用いてアセトン(窒化ホウ素ナノシート含有分散液に対して3倍量を複数回に分けて用いた)で洗浄しながら吸引ろ過し、窒化ホウ素ナノシート表面に未吸着のイオン液体を完全に除去した。次いで、洗浄ろ過後の濾滓の付いたテフロン(登録商標)製フィルターについて、80℃で12時間真空乾燥を行った後の質量を測定した。この質量からテフロン(登録商標)製フィルターの質量を減じ、窒化ホウ素ナノシート複合体の質量を算出した。次に、熱重量分析装置(理学電機(株)製「Thermo plus TG8120」)を用いて窒素雰囲気下、室温から100℃まで昇温し、100℃で30分間保持した後、昇温速度10℃/分で100℃から800℃まで加熱して行った熱重量分析(TGA)により、窒化ホウ素ナノシート複合体中から吸着したイオン液体を取り除いた窒化ホウ素ナノシートの割合を算出し、窒化ホウ素ナノシートの窒化ホウ素ナノシート含有分散液(イオン液体分散液)中での濃度及び窒化ホウ素ナノシートの収率(%)を求めた。なお、窒化ホウ素ナノシートの収率(%)は、次のように算出する。
収率(%)=100×(窒化ホウ素ナノシート複合体中から吸着したイオン液体を取り除いた窒化ホウ素ナノシートの質量(mg))/(原料として用いた六方晶窒化ホウ素の質量(mg))。
また、比較例においては、得られた比較用窒化ホウ素ナノシートの質量と原料として用いた六方晶窒化ホウ素の質量を用いて前記と同様に比較用窒化ホウ素ナノシートの収率を求めた。
<測定方法3:窒化ホウ素ナノシート複合体のイオン液体吸着量の測定>
先ず、窒化ホウ素及びイオン液体をそれぞれ80℃での真空乾燥により残留溶媒等の揮発分を除去した後、それぞれについて熱重量分析装置(理学電機(株)製「Thermo plus TG8120」)を用いて窒素雰囲気下、室温から100℃まで昇温し、100℃で30分間保持した後、昇温速度10℃/分で100℃から800℃まで加熱して熱重量分析(TGA)を実施し、窒化ホウ素及びイオン液体の熱分解開始温度及び熱分解終了温度を測定した。
次に、実施例及び比較例それぞれにおいて、得られた窒化ホウ素ナノシート複合体を80℃での真空乾燥により残留溶媒等の揮発分を除去した後、熱重量分析装置(理学電機(株)製「Thermo plus TG8120」)を用いて窒素雰囲気下、室温から100℃まで昇温し、100℃で30分間保持した後、昇温速度10℃/分で100℃から800℃まで加熱して熱重量分析(TGA)を実施した。窒化ホウ素は800℃まで重量減少を示さず、イオン液体は600℃までに分解するために、窒化ホウ素ナノシート複合体においてイオン液体に由来する質量減少を確認することができる。窒化ホウ素ナノシート複合体の質量減少のうちのイオン液体に由来するものを窒化ホウ素ナノシート複合体へのイオン液体の吸着量とし、窒化ホウ素ナノシート100質量部に対する量(質量部)で表した。
<測定方法4:窒化ホウ素ナノシート複合体の再分散性の測定>
実施例及び比較例それぞれにおいて、得られた窒化ホウ素ナノシート複合体1.5mgをジメチルホルムアミド(DMF)3mLに添加して溶解させ、これに超音波処理(BRANSON社製卓上型超音波洗浄機「BRANSONIC B−220」を使用、発振周波数45kHz)を10分間施して窒化ホウ素ナノシート複合体を再分散させた。この分散液を20時間静置して得られた上澄み液についてUV−可視光吸収スペクトルを測定し、650nmの吸光度により再分散性(耐沈降性)を評価した。なお、前記吸光度の値が大きいほど遠心分離後も窒化ホウ素ナノシート複合体は溶媒中に多く分散し、再分散性に優れていることを意味する。
<測定方法5:窒化ホウ素ナノシート複合体の窒化ホウ素ナノシート層数の測定>
実施例及び比較例それぞれにおいて、得られた窒化ホウ素ナノシート複合体をイソプロピルアルコール(IPA)に入れ、超音波処理(BRANSON社製卓上型超音波洗浄機「BRANSONIC B−220」を使用、発振周波数45kHz)を3分間施して得られた分散液をグリッド上に滴下し、透過型電子顕微鏡写真観察を行った。窒化ホウ素ナノシートのエッジ部の観察により、窒化ホウ素ナノシートの層数を測定(確認)した。なお、窒化ホウ素ナノシートは、シート形状で厚さが薄く柔軟性があるため、エッジ部が容易に湾曲することから、エッジ部での層数の観察が可能である。
(窒化ホウ素)
実施例及び比較例においては、以下に示す窒化ホウ素を使用した。なお、窒化ホウ素の平均二次粒子径は、走査型電子顕微鏡観察により得た電子顕微鏡写真について、任意の20個の二次粒子(ここで各々の粒子は凝集した二次粒子を形成する)の粒子径を測定し、平均二次粒子径とした。また、二次粒子を形成する窒化ホウ素一次粒子(板状の窒化ホウ素)の一辺の大きさは、上記同様に走査型電子顕微鏡写真における任意の20個の一辺の大きさを測定しその平均値とした。ここで、窒化ホウ素一次粒子の一辺の大きさとしては長辺の長さを指す。
窒化ホウ素(a−1):
昭和電工(株)製六方晶窒化ホウ素UHP−1K、平均二次粒子径:24μm、窒化ホウ素一次粒子の一辺の平均サイズ:4μm。
窒化ホウ素(a−2):
水島合金鉄(株)製六方晶窒化ホウ素HP−40、平均二次粒子径19μm、窒化ホウ素一次粒子の一辺の平均サイズ:2.5μm。
窒化ホウ素(a−3):
昭和電工(株)製六方晶窒化ホウ素UHP−S1、平均二次粒子径:0.8μm、窒化ホウ素一次粒子の一辺の平均サイズ:0.4μm。
窒化ホウ素(a−4):
水島合金鉄(株)製六方晶窒化ホウ素HP−P1、平均二次粒子径:1.4μm、窒化ホウ素一次粒子の一辺の平均サイズ:0.5μm。
(イオン液体)
実施例及び比較例においては、以下に示すイオン液体を使用した。
イオン液体(b−1):
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド。
イオン液体(b−2):
1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド。
イオン液体(b−3):
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート。
イオン液体(b−4):
1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホナート。
イオン液体(b−5):
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート。
イオン液体(b−6):
1−ブチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド。
(実施例1)
窒化ホウ素ナノシート含有分散液の作製:
まず、スクリュー管瓶に80℃で12時間真空乾燥を行った後の六方晶窒化ホウ素(a−1)150mg及びイオン液体(b−1)30mLを入れ、これに超音波処理(BRANSON社製卓上型超音波洗浄機「BRANSONIC B−220」を使用、発振周波数45kHz)を8時間施して高濃度分散液を得た。この分散液に遠心分離(3000rpm、相対遠心加速度1220G、1時間)を施し、得られた上澄み液を回収し、窒化ホウ素ナノシート含有分散液を得た。
得られた窒化ホウ素ナノシート含有分散液について、分散液の分散安定性(吸光度)を前記方法(測定方法1)に従って評価した。その結果を表1に示す。
窒化ホウ素ナノシート複合体の作製:
次に、上記で得られた窒化ホウ素ナノシート含有分散液を、桐山漏斗〔フィルター:テフロン(登録商標)製フィルター、孔径0.1μm〕を用いてアセトンで洗浄しながら吸引ろ過し、窒化ホウ素ナノシート表面に未吸着のイオン液体を完全に除去した。なお、アセトンは、窒化ホウ素ナノシート含有分散液に対して3倍量を複数回に分けて用いた。その後、濾滓を80℃で12時間真空乾燥して溶媒を完全に留去し、窒化ホウ素ナノシートにイオン液体が吸着した窒化ホウ素ナノシート複合体を得た。
得られた窒化ホウ素ナノシート複合体について、イオン液体の吸着量及び再分散性を前記方法(測定方法3及び4)に従って評価した。その結果を表1に示す。
また、分散液中の窒化ホウ素ナノシートの濃度及び窒化ホウ素ナノシートの収率の測定を、前記方法(測定方法2)に従って確認した。その結果を表1に示す。
更に、窒化ホウ素ナノシート複合体について、窒化ホウ素ナノシートの層数を前記方法(測定方法5)に従って確認した。その結果を表2に示す。なお、各サンプルについて任意の25個の窒化ホウ素ナノシートのエッジ部の観察により層数を確認し、10層数以下、6層以下、3層以下、2層以下、単層の層数を有するナノシートの割合を求めた。また、窒化ホウ素ナノシート複合体について、窒化ホウ素ナノシートの一辺の長さを走査型電子顕微鏡観察により確認した。走査型電子顕微鏡観察により得た電子顕微鏡写真について、任意の20個の窒化ホウ素ナノシート複合体の窒化ホウ素ナノシートの一辺の長さを測定し、平均値を求めた。ここで、窒化ホウ素ナノシートの一辺の長さは長辺の長さを指す。これらの結果を表2に示す。
(実施例2)
イオン液体(b−1)の代わりにイオン液体(b−2)を用いた以外は、実施例1と同様にして窒化ホウ素ナノシート含有分散液及び窒化ホウ素ナノシート複合体を作製した。
得られた窒化ホウ素ナノシート含有分散液及び窒化ホウ素ナノシート複合体について、分散液の分散安定性(吸光度)の測定、分散液中の窒化ホウ素ナノシートの濃度及び窒化ホウ素ナノシートの収率の測定、窒化ホウ素ナノシート複合体のイオン液体吸着量の測定、及び、窒化ホウ素ナノシート複合体の再分散性の測定を実施例1と同様に行った。その結果を表1に示す。
また、得られた窒化ホウ素ナノシート複合体について、窒化ホウ素ナノシート複合体の窒化ホウ素ナノシート層数及び窒化ホウ素ナノシートの一辺の長さの測定を実施例1と同様に行った。その結果を表2に示す。
(実施例3)
イオン液体(b−1)の代わりにイオン液体(b−3)を用いた以外は、実施例1と同様にして窒化ホウ素ナノシート含有分散液及び窒化ホウ素ナノシート複合体を作製した。
得られた窒化ホウ素ナノシート含有分散液及び窒化ホウ素ナノシート複合体について、分散液の分散安定性(吸光度)の測定、分散液中の窒化ホウ素ナノシートの濃度及び窒化ホウ素ナノシートの収率の測定、窒化ホウ素ナノシート複合体のイオン液体吸着量の測定、及び、窒化ホウ素ナノシート複合体の再分散性の測定を実施例1と同様に行った。その結果を表1に示す。
(実施例4)
イオン液体(b−1)の代わりにイオン液体(b−4)を用いた以外は、実施例1と同様にして窒化ホウ素ナノシート含有分散液及び窒化ホウ素ナノシート複合体を作製した。
得られた窒化ホウ素ナノシート含有分散液及び窒化ホウ素ナノシート複合体について、分散液の分散安定性(吸光度)の測定、分散液中の窒化ホウ素ナノシートの濃度及び窒化ホウ素ナノシートの収率の測定、窒化ホウ素ナノシート複合体のイオン液体吸着量の測定、及び、窒化ホウ素ナノシート複合体の再分散性の測定を実施例1と同様に行った。その結果を表1に示す。
(実施例5)
六方晶窒化ホウ素(a−1)の代わりに六方晶窒化ホウ素(a−2)を用い、イオン液体(b−1)の代わりにイオン液体(b−2)を用いた以外は、実施例1と同様にして窒化ホウ素ナノシート含有分散液及び窒化ホウ素ナノシート複合体を作製した。
得られた窒化ホウ素ナノシート含有分散液及び窒化ホウ素ナノシート複合体について、分散液の分散安定性(吸光度)の測定、分散液中の窒化ホウ素ナノシートの濃度及び窒化ホウ素ナノシートの収率の測定、窒化ホウ素ナノシート複合体のイオン液体吸着量の測定、及び、窒化ホウ素ナノシート複合体の再分散性の測定を実施例1と同様に行った。その結果を表1に示す。
(実施例6)
六方晶窒化ホウ素(a−1)の代わりに六方晶窒化ホウ素(a−3)を用い、イオン液体(b−1)の代わりにイオン液体(b−2)を用いた以外は、実施例1と同様にして窒化ホウ素ナノシート含有分散液及び窒化ホウ素ナノシート複合体を作製した。
得られた窒化ホウ素ナノシート含有分散液及び窒化ホウ素ナノシート複合体について、分散液の分散安定性(吸光度)の測定、分散液中の窒化ホウ素ナノシートの濃度及び窒化ホウ素ナノシートの収率の測定、窒化ホウ素ナノシート複合体のイオン液体吸着量の測定、及び、窒化ホウ素ナノシート複合体の再分散性の測定を実施例1と同様に行った。その結果を表1に示す。
(実施例7)
六方晶窒化ホウ素(a−1)の代わりに六方晶窒化ホウ素(a−4)を用い、イオン液体(b−1)の代わりにイオン液体(b−2)を用いた以外は、実施例1と同様にして窒化ホウ素ナノシート含有分散液及び窒化ホウ素ナノシート複合体を作製した。
得られた窒化ホウ素ナノシート含有分散液及び窒化ホウ素ナノシート複合体について、分散液の分散安定性(吸光度)の測定、分散液中の窒化ホウ素ナノシートの濃度及び窒化ホウ素ナノシートの収率の測定、窒化ホウ素ナノシート複合体のイオン液体吸着量の測定、及び、窒化ホウ素ナノシート複合体の再分散性の測定を実施例1と同様に行った。その結果を表1に示す。
(比較例1)
混合処理(層間剥離処理)として超音波処理の代わりに撹拌子を用い500rpmの回転速度で5日間撹拌する撹拌処理を行った以外は、実施例1と同様にして窒化ホウ素ナノシート含有分散液及び窒化ホウ素ナノシート複合体を作製した。
得られた窒化ホウ素ナノシート含有分散液及び窒化ホウ素ナノシート複合体について、分散液の分散安定性(吸光度)の測定、分散液中の窒化ホウ素ナノシートの濃度及び窒化ホウ素ナノシートの収率の測定、窒化ホウ素ナノシート複合体のイオン液体吸着量の測定、及び、窒化ホウ素ナノシート複合体の再分散性の測定を実施例1と同様に行った。その結果を表1に示す。
(比較例2)
まず、乳鉢に80℃で12時間真空乾燥を行った後の六方晶窒化ホウ素(a−1)150mg及びイオン液体(b−1)2mLを入れ、30分間磨り潰しながら混合し、窒化ホウ素ナノシートがイオン液体中に分散したペースト状の分散液を得た。得られた分散液を24時間静置して得られた上澄み液を回収し、窒化ホウ素ナノシート含有分散液を得た。
次に、上記で得られた窒化ホウ素ナノシート含有分散液を、桐山漏斗〔フィルター:テフロン(登録商標)製フィルター、孔径0.1μm〕を用いてアセトンで洗浄(90mLのアセトンを複数回に分けて用いた)しながら吸引ろ過し、窒化ホウ素ナノシート表面に未吸着のイオン液体を完全に除去した。その後、濾滓を80℃で12時間真空乾燥して溶媒を完全に留去し、窒化ホウ素ナノシートにイオン液体が吸着した窒化ホウ素ナノシート複合体を得た。
得られた窒化ホウ素ナノシート複合体について、イオン液体吸着量及び再分散性の測定を実施例1と同様に行った。その結果を表1に示す。
(実施例8)
イオン液体(b−1)の代わりにイオン液体(b−5)を用いた以外は、実施例1と同様にして窒化ホウ素ナノシート含有分散液及び窒化ホウ素ナノシート複合体を作製した。
得られた窒化ホウ素ナノシート含有分散液及び窒化ホウ素ナノシート複合体について、分散液の分散安定性(吸光度)の測定、分散液中の窒化ホウ素ナノシートの濃度及び窒化ホウ素ナノシートの収率の測定、窒化ホウ素ナノシート複合体のイオン液体吸着量の測定、及び、窒化ホウ素ナノシート複合体の再分散性の測定を実施例1と同様に行った。その結果を表1に示す。
また、得られた窒化ホウ素ナノシート複合体について、窒化ホウ素ナノシート複合体の窒化ホウ素ナノシート層数及び窒化ホウ素ナノシートの一辺の長さの測定を実施例1と同様に行った。その結果を表2に示す。
(実施例9)
イオン液体(b−1)の代わりにイオン液体(b−6)を用いた以外は、実施例1と同様にして窒化ホウ素ナノシート含有分散液及び窒化ホウ素ナノシート複合体を作製した。
得られた窒化ホウ素ナノシート含有分散液及び窒化ホウ素ナノシート複合体について、分散液の分散安定性(吸光度)の測定、分散液中の窒化ホウ素ナノシートの濃度及び窒化ホウ素ナノシートの収率の測定、窒化ホウ素ナノシート複合体のイオン液体吸着量の測定、及び、窒化ホウ素ナノシート複合体の再分散性の測定を実施例1と同様に行った。その結果を表1に示す。
(実施例10)
実施例8の窒化ホウ素ナノシート含有分散液の製造過程において遠心分離後に回収した沈殿(0.1mLのイオン液体(b−5)を含む未剥離の窒化ホウ素粒子及び/又は未分散の窒化ホウ素ナノシート複合体(うち窒化ホウ素粒子及び/又は未分散の窒化ホウ素ナノシート複合体の質量は88.2mg相当))に、実施例8の製造時に回収した窒化ホウ素ナノシートに未吸着のイオン液体(b−5)17.54mLを入れ、実施例8と同じ超音波洗浄機を用いて30分間超音波処理を施し分散液を得た。この分散液に実施例8と同様にして遠心分離を施し、得られた上澄み液を回収し、実施例1と同様にして窒化ホウ素ナノシート含有分散液及び窒化ホウ素ナノシート複合体を作製した。
得られた窒化ホウ素ナノシート含有分散液及び窒化ホウ素ナノシート複合体について、分散液の分散安定性(吸光度)の測定、分散液中の窒化ホウ素ナノシートの濃度及び窒化ホウ素ナノシートの収率の測定、窒化ホウ素ナノシート複合体のイオン液体吸着量の測定、及び、窒化ホウ素ナノシート複合体の再分散性の測定を実施例1と同様に行った。その結果を表1に示す。
また、得られた窒化ホウ素ナノシート複合体について、窒化ホウ素ナノシート複合体の窒化ホウ素ナノシート層数及び窒化ホウ素ナノシートの一辺の長さの測定を実施例1と同様に行った。その結果を表2に示す。
(比較例3)
イオン液体(b−1)の代わりに溶媒としてジメチルホルムアミド(DMF、関東化学(株)製)30mLを用いた以外は、実施例1と同様にして比較用窒化ホウ素ナノシート含有分散液及び比較用窒化ホウ素ナノシートを作製した。なお、熱重量分析(TGA)の結果、DMFの比較用窒化ホウ素ナノシートへの吸着は認められなかった。
得られた比較用窒化ホウ素ナノシート含有分散液及び比較用窒化ホウ素ナノシートについて、分散液の分散安定性(吸光度)の測定、分散液中の比較用窒化ホウ素ナノシートの濃度及び窒化ホウ素ナノシートの収率の測定、及び、比較用窒化ホウ素ナノシートの再分散性の測定を実施例1と同様に行った。その結果を表1に示す。
また、得られた比較用窒化ホウ素ナノシートの窒化ホウ素ナノシート層数及び窒化ホウ素ナノシートの一辺の長さの測定を実施例1と同様に行った。その結果を表2に示す。
(比較例4)
イオン液体(b−1)の代わりに溶媒としてイソプロピルアルコール(IPA、和光純薬工業(株)製)30mLを用いた以外は、実施例1と同様にして比較用窒化ホウ素ナノシート含有分散液及び比較用窒化ホウ素ナノシートを作製した。なお、熱重量分析(TGA)の結果、IPAの比較用窒化ホウ素ナノシートへの吸着は認められなかった。
得られた比較用窒化ホウ素ナノシート含有分散液及び比較用窒化ホウ素ナノシートについて、分散液の分散安定性(吸光度)の測定、分散液中の比較用窒化ホウ素ナノシートの濃度及び窒化ホウ素ナノシートの収率の測定、及び、比較用窒化ホウ素ナノシートの再分散性の測定を実施例1と同様に行った。その結果を表1に示す。
<評価結果>
表1に示した実施例1〜10の結果と比較例3〜4の結果との比較から明らかなように、実施例1〜10の窒化ホウ素ナノシート含有分散液及び窒化ホウ素ナノシート複合体は、分散安定性及び再分散性に優れていることが確認された。また、実施例1〜9では、窒化ホウ素ナノシートの収率が比較例3〜4と比較して高いことが確認された。ここで、実施例8の窒化ホウ素ナノシート含有分散液は極めて高濃度であったが、吸光度は実施例1と比較してやや劣る結果となった。この理由としては、実施例8の窒化ホウ素ナノシート複合体が実施例1〜7及び9と比較して極めて白色度が高いため、可視光を反射しやすく、高濃度にもかかわらず吸光度が低めの値になったものと推察する。また、実施例8は極めて高いイオン液体の吸着量を示したが、DMF中での再分散性は実施例1と比較してやや劣った。この理由としては、イオン液体(b−1)の方がイオン液体(b−5)よりDMFとの親和性が高いためであると推察する。
また、表2より、実施例1、2、8及び10の窒化ホウ素ナノシート複合体は、比較例3と比較して層数が少なく、3層以下の窒化ホウ素ナノシートも得られていることが確認された。更に、実施例1、2、8及び10の窒化ホウ素ナノシート複合体は、比較例3と比較して窒化ホウ素ナノシートの一辺の長さが大きいことが確認された。
更に、実施例10より、実施例8で窒化ホウ素ナノシート含有分散液を作製した際に遠心分離操作により沈殿させて取り除いた未剥離の窒化ホウ素粒子及び/又は未分散の窒化ホウ素ナノシート複合体を、実施例8の製造時にろ過して回収した窒化ホウ素ナノシートに未吸着のイオン液体を用いて処理することにより、単層、二層の構造も含む窒化ホウ素ナノシート含有分散液及び窒化ホウ素ナノシート複合体を得ることができた。この結果から、実施例8では、イオン液体(b−5)中での窒化ホウ素ナノシート複合体の可能な分散量の上限値に達し、遠心分離操作で沈殿して未分散となり実施例8では回収不可能であった窒化ホウ素ナノシート複合体も本方法により回収することができ、実施例8と合わせたトータルの収率が49.5%と極めて高くなるとともにイオン液体を回収、再利用できた。これにより、イオン液体の使用量の削減によるコストの低減に有効であることが確認された。