JP6774432B2 - 有機エレクトロルミネッセンス素子、表示装置及び照明装置 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス素子、表示装置及び照明装置 Download PDF

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Description

本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子、及び当該有機エレクトロルミネッセンス素子が具備された表示装置並びに照明装置に関する。より詳しくは、本発明は、初期劣化が抑えられ、発光効率が高く、かつ素子寿命が長い有機エレクトロルミネッセンス素子、及び当該有機エレクトロルミネッセンス素子が具備された表示装置並びに照明装置に関する。
有機エレクトロルミネッセンス(Electroluminescence:以下「EL」と略記する。)は、キャリア(電子と正孔)再結合による電界励起発光であるため発光効率が高く、かつ、水銀等の有害物質を一切使用しないことから、電子ディスプレイや照明、イルミネーション、電飾等に使用されはじめており、その発展が期待されている。
有機ELの発光方式としては、三重項励起状態から基底状態に戻る際に光を発する「リン光発光」と、一重項励起状態から基底状態に戻る際に光を発する「蛍光発光」の二通りがある。有機化合物を電気(電界)で励起する場合は、スピンの方向がランダムであるため、確率的に一重項励起状態は25%しか生成せず、75%は三重項励起状態になる。三重項励起状態から一重項励起状態になるには、スピン反転を伴う禁制遷移が必要となるため、通常はこの場合、全てが熱失活(無輻射失活)してしまい、光は全く得られない。
ところで、白金やイリジウム等の重原子の遷移金属錯体が、重原子効果により禁制遷移である三重項から一重項及び一重項から三重項へのスピン反転を伴う電子遷移を高速化し、かつ、配位子の選択次第では、ほぼ無輻射失活のないリン光発光が得られる物質が存在することが見いだされ、これによって、高効率の有機EL素子が実現可能となった。実際に、2015年現在、スマートフォンやテレビジョンには、赤色リン光発光及び緑色リン光発光が適用されている。しかし、発光寿命が短い青色リン光発光は、まだ旧来の蛍光発光が使われており、青色リン光を使った電子ディスプレイは実用化されるに至っていない。
青色リン光素子の発光寿命が短い要因は数多くあるが、発光ドーパントにエネルギーやキャリアを伝達するホスト化合物が、三重項励起子(トリプレット)となり、それが長時間にわたって存在してしまうことが、特に大きな要因となることが分かってきた。
その一つの解決手段が、ホスト化合物に重原子効果を付与し三重項励起状態(T)から基底状態(S)へのスピン反転を伴う禁制遷移を高速化することである。この場合、発光効率を高く維持するために、ホスト化合物のTから発光ドーパントのTへ素早くエネルギー移動させる必要がある。すなわち、発光ドーパントよりもリン光発光波長が短波長な重原子錯体を使用する必要がある。
しかしながら、現状、純青から青紫に発光する熱的・電気化学的に安定な分子を設計すること自体が非常に難しいことと、そもそも発光ドーパントを凝集させない(濃度消光させない)ことを目的として含有するホスト化合物が、発光ドーパントと同じカテゴリー物質である重原子錯体で成り立つことは希有であり、普遍的な技術にはなり得ない。
他の解決手段としては、三重項励起状態と一重項励起状態のエネルギー準位差の絶対値(以降、ΔEstとも記載する。)を極小にした分子をホスト化合物として用いることで、ホスト化合物の三重項励起子の存在時間を短縮化する方法である。
この現象は、熱活性化型遅延蛍光(Thermally Activated Delayed Fluorescence:以下、「TADF」と略記する)現象と呼ばれる。TADF現象では、本来なら禁制遷移で、かつ、エネルギー準位的には高いところから低いところへの逆電子遷移が起こる。すなわち、三重項励起状態となった場合でも即時に一重項励起状態となるということで、ホスト化合物の三重項励起子の存在時間を短縮できるのである。
有機化合物でΔEstを小さくするには、分子中の最高被占軌道(Highest Occupied Molecular Orbital:以下、「HOMO」と略記する)と最低空軌道(Lowest Unoccupied Molecular Orbital:以下、「LUMO」と略記する)を混在させないこと、できれば、できるだけ遠くに局在させて完全に分離することが望ましい。例えば、図1Aの2CzPN(4,5−bis(carbazol−9−yl)−1,2−dicyanobenzene)では、ベンゼン環上の1位と2位のカルバゾリル基にHOMOが分布し、4位と5位のシアノ基にLUMOが分布することで、HOMOとLUMOを隔絶(局在)することができる。このとき、ΔEstは、およそ0.1eV以下という非常に小さい値になって、TADF現象を発現する。これに対し、2CzPNの4位と5位のシアノ基をメチル基に置き換えた2CzXy(図1B)では、このようなHOMOとLUMOの明確な分離ができない(混在)ため、ΔEstを小さくすることはできず、TADF現象を発現させるには至らない。
このTADF現象は、HOMOとLUMOが分子中で完全に個別に存在し、分子内で電荷移動錯体(Electron−Donor−Acceptor Complex:EDA錯体)を形成することで起こるものである。そのため、電子アクセプター(以下、単に「アクセプター」ともいう。)性分子と電子ドナー(以下、単に「ドナー」ともいう。)性分子を共存させ分子間で電荷移動(charge transfer(CT))遷移を起こしても同じことが起きる。実際に、二分子で形成される励起状態の電荷移動錯体であるエキサイプレックスを使って、高効率の遅延蛍光有機EL素子が実現されている(非特許文献1)。
つまり、このようにドナー性分子とアクセプター性分子の両方をホスト化合物として用いることでも、ホスト化合物の三重項励起子の存在時間を実質的に短縮することが可能である。このコンセプトに基づいているかどうかは定かではないが、2種のホスト化合物を共存させてエキサイプレックスを形成する発光層構成で、緑リン光有機EL素子の長寿命化を図った事例が知られている(特許文献1)。
しかしながら、特許文献1においても、青色リン光素子に関する言及は一切無い。これは、エキサイプレックスを形成すること自体が、ドナー性物質の高い(浅い)HOMO準位と、アクセプター性物質の低い(深い)LUMO準位との間で電子遷移を行うことになるため、アクセプター性物質の励起状態と基底状態のエネルギー差(ギャップ)が小さく(狭く)なり、つまり、エキサイプレックスの発光スペクトルが長波長となるからであると考えられる。すなわち、発光色が短波で、かつ三重項励起状態のエネルギーが高い青色リン光素子に、この技術コンセプトは適用できないためであると考えられる。
前述の通り、青色リン光素子の長寿命化を達成するために解決しなければならない問題として、ホスト化合物が、三重項励起子(トリプレット)となり、それが長時間にわたって存在してしまうという問題がある。ここで、理論的には、ホスト化合物に、重原子錯体、TADF化合物、二分子のエキサイプレックス化合物を用いることで、三重項励起子(トリプレット)の存在時間の短縮化が可能になるはずである。
しかしながら、重金属錯体とエキサイプレックス化合物を用いる方法は、先に述べた理由から、実質的に青色リン光素子に適用することは不可能である。一方、TADF化合物を青色リン光用のホスト化合物に用いることは、原理上の矛盾点はなく、実現できる可能性はあると考えられる。
TADF化合物の分子設計の基本指針は、強いアクセプターと強いドナーを分子内に共存させることである。これは、先に実現不可能と判断したエキサイプレックスと類似している。つまり、このTADF化合物も、「分子内エキサイプレックス」と考えることもできるからである。
現に、スルホン誘導体であるDMAC−DPS(Bis[4−(9,9−diMethyl−9,10−dihydroacridine)phenyl]solfone)が青色発光するTADF化合物として知られているが(非特許文献2)、緑色や赤色に発光するTADF化合物のしばらく後に発見されており、その分子設計が難しいことは、その時間的背景からも容易に想像される。
さらに、青色リン光ホスト化合物として利用するには、TADF化合物の三重項励起状態のエネルギー準位が青色リン光ドーパントの三重項励起状態のエネルギー準位よりも有意に(経験的には、0.2eV程度)高くなければならないため、青色発光するTADF分子では適用することが難しい。
また、近紫外領域で発光するTADF物質でなければホスト化合物としては十分に機能しないはずであるが、TADF分子が分子内エキサイプレックス性を持つことから、従来のTADF分子を設計するコンセプトでは、青色リン光用ホスト化合物としてのTADF化合物を分子設計することは難しい。
特開2012−186461号公報
K.Goushi et al.,Applied Physics Letters,2012,101,023306 H.Uoyama et al.,Nature,2012,492,234−238
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、初期劣化が抑えられ、発光効率が高く、かつ素子寿命が長い有機エレクトロルミネッセンス素子、及び当該有機エレクトロルミネッセンス素子が具備された表示装置並びに照明装置を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討した結果、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層に、HOMOとLUMOの間の電子遷移が、同一分子内のスルースペース相互作用で起こり、かつ、当該HOMO又は当該LUMOの少なくとも一方が局在化する部位にπ共役系芳香族環を有するπ共役系化合物を、ホスト化合物として含有することにより、発光効率が高く、かつ素子寿命が長い有機エレクトロルミネッセンス素子を実現できることを見いだし、本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.陽極と陰極の間に少なくとも1層の発光層を含む有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
当該発光層の少なくとも1層が、π共役系化合物と、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物とを含有し、
前記π共役系化合物が、HOMOとLUMOの間の電子遷移が、同一分子内のスルースペース相互作用で起こり、かつ、前記HOMO又は前記LUMOの少なくとも一方が局在化する部位にπ共役系芳香族環を有し、
前記π共役系化合物として、下記一般式(3)で表される構造を有する化合物を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
Figure 0006774432
(上記一般式(1)において、MはIr、Pt、Rh又はOsを表す。A、A、B及びBは、各々炭素原子又は窒素原子を表す。環Zは、A及びAとともに形成される6員の芳香族炭化水素環、又は5員若しくは6員の芳香族複素環を表す。環Zは、B及びBとともに形成される5員又は6員の芳香族複素環を表す。環Z及び環Zは、置換基を有していてもよく、さらに置換基同士が結合して縮環構造を形成していてもよい。また、環Z及び環Zは、各々の配位子の置換基が互いに結合して、配位子同士が連結していてもよい。L′は、Mに配位したモノアニオン性の二座配位子を表す。m′は、0〜2の整数を表す。n′は、1〜3の整数を表す。m′+n′は、2又は3である。m′及びn′が2以上の場合、環Z及び環Zで表される配位子及びL′は、各々、同じでも異なっていてもよい。)
Figure 0006774432
(上記一般式(3)において、X31は、PR(=O)、SO又はSOを表す。R、R31〜R38は、各々独立に水素原子又は置換基を表す。式中のX31を含む三縮環式母核構造部分が、LUMOの電子密度の割合が80%以上である。R31、R33、R36及びR38の少なくとも一つは、下記一般式(3−A)で表される。
Figure 0006774432
上記一般式(3−A)において、Y31は、2価の連結基を表す。Zは、HOMOの電子密度の割合の合計が80%以上となる芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表す。p3は、0又は1の整数を表す。)
2.陽極と陰極の間に少なくとも1層の発光層を含む有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
当該発光層の少なくとも1層が、π共役系化合物と、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物とを含有し、
前記π共役系化合物が、HOMOとLUMOの間の電子遷移が、同一分子内のスルースペース相互作用で起こり、かつ、前記HOMO又は前記LUMOの少なくとも一方が局在化する部位にπ共役系芳香族環を有し、
前記π共役系化合物として、下記一般式(4)で表される構造を有する化合物を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
Figure 0006774432
(上記一般式(1)において、MはIr、Pt、Rh又はOsを表す。A 、A 、B 及びB は、各々炭素原子又は窒素原子を表す。環Z は、A 及びA とともに形成される6員の芳香族炭化水素環、又は5員若しくは6員の芳香族複素環を表す。環Z は、B 及びB とともに形成される5員又は6員の芳香族複素環を表す。環Z 及び環Z は、置換基を有していてもよく、さらに置換基同士が結合して縮環構造を形成していてもよい。また、環Z 及び環Z は、各々の配位子の置換基が互いに結合して、配位子同士が連結していてもよい。L′は、Mに配位したモノアニオン性の二座配位子を表す。m′は、0〜2の整数を表す。n′は、1〜3の整数を表す。m′+n′は、2又は3である。m′及びn′が2以上の場合、環Z 及び環Z で表される配位子及びL′は、各々、同じでも異なっていてもよい。)
Figure 0006774432
(上記一般式(4)において、X41〜X45は、各々独立に窒素原子又はCReを表
す。Reは、水素原子又は置換基を表す。L41は、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素
環基を表す。R41は、少なくとも一つは、下記一般式(4−A)で表される。
Figure 0006774432
上記一般式(4−A)において、Y41は2価の連結基を表す。Zは、HOMOの電子密度の割合の合計が80%以上となる芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表す。p4は、0又は1の整数を表す。)
3.陽極と陰極の間に少なくとも1層の発光層を含む有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
当該発光層の少なくとも1層が、π共役系化合物と、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物とを含有し、
前記π共役系化合物が、HOMOとLUMOの間の電子遷移が、同一分子内のスルースペース相互作用で起こり、かつ、前記HOMO又は前記LUMOの少なくとも一方が局在化する部位にπ共役系芳香族環を有し、
前記π共役系化合物として、下記一般式(7)で表される構造を有する化合物を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
Figure 0006774432
(上記一般式(1)において、MはIr、Pt、Rh又はOsを表す。A 、A 、B 及びB は、各々炭素原子又は窒素原子を表す。環Z は、A 及びA とともに形成される6員の芳香族炭化水素環、又は5員若しくは6員の芳香族複素環を表す。環Z は、B 及びB とともに形成される5員又は6員の芳香族複素環を表す。環Z 及び環Z は、置換基を有していてもよく、さらに置換基同士が結合して縮環構造を形成していてもよい。また、環Z 及び環Z は、各々の配位子の置換基が互いに結合して、配位子同士が連結していてもよい。L′は、Mに配位したモノアニオン性の二座配位子を表す。m′は、0〜2の整数を表す。n′は、1〜3の整数を表す。m′+n′は、2又は3である。m′及びn′が2以上の場合、環Z 及び環Z で表される配位子及びL′は、各々、同じでも異なっていてもよい。)
Figure 0006774432
(上記一般式(7)において、R71〜R80は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。R71、R72、R79、及びR80のうち少なくとも二つは、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表す。また、これらの芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基のうち一つが、HOMOの電子密度の割合が80%以上であり、これらの芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基のうち他の一つが、LUMOの電子密度の割合が80%以上である。)
4.陽極と陰極の間に少なくとも1層の発光層を含む有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
当該発光層の少なくとも1層が、π共役系化合物と、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物とを含有し、
前記π共役系化合物が、HOMOとLUMOの間の電子遷移が、同一分子内のスルースペース相互作用で起こり、かつ、前記HOMO又は前記LUMOの少なくとも一方が局在化する部位にπ共役系芳香族環を有し、
前記π共役系化合物として、下記一般式(9)で表される構造を有する化合物を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
Figure 0006774432
(上記一般式(1)において、MはIr、Pt、Rh又はOsを表す。A 、A 、B 及びB は、各々炭素原子又は窒素原子を表す。環Z は、A 及びA とともに形成される6員の芳香族炭化水素環、又は5員若しくは6員の芳香族複素環を表す。環Z は、B 及びB とともに形成される5員又は6員の芳香族複素環を表す。環Z 及び環Z は、置換基を有していてもよく、さらに置換基同士が結合して縮環構造を形成していてもよい。また、環Z 及び環Z は、各々の配位子の置換基が互いに結合して、配位子同士が連結していてもよい。L′は、Mに配位したモノアニオン性の二座配位子を表す。m′は、0〜2の整数を表す。n′は、1〜3の整数を表す。m′+n′は、2又は3である。m′及びn′が2以上の場合、環Z 及び環Z で表される配位子及びL′は、各々、同じでも異なっていてもよい。)
Figure 0006774432
(上記一般式(9)において、R91は、HOMOの電子密度の割合が80%以上である芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表す。R92は、LUMOの電子密度の割合が80%以上である芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表す。R93〜R96は、水素原子又は置換基を表す。)
.前記一般式(1)の環Zが、ピリジン環、イミダゾール環、イソキノリン環、トリアゾール環又はピラゾール環であることを特徴とする第1項から第項までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
.第1項から第項までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を具備することを特徴とする表示装置。
.第1項から第項までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を具備することを特徴とする照明装置。
本発明の上記手段により、初期劣化が抑えられ、発光効率が高く、かつ素子寿命が長い有機エレクトロルミネッセンス素子、及び当該有機エレクトロルミネッセンス素子が具備された表示装置並びに照明装置を提供することができる。
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
以下に示すような、代表的なTADF化合物である4CzIPN(2,4,5,6−tetrakis(carbazol−9−yl)−1,3−dicyanobenzene)、青色発光性のTADF化合物であるDMAC−DPS(Bis[4−(9,9−diMethyl−9,10−dihydroacridine)phenyl]solfone)や、赤色発光性のTADF化合物であるHAP−3MF(2,5,8−tris(4−fluoro−3−methylphenyl)−1,3,4,6,7,9,9b−heptaazaphenalene)は、いずれもπ共役系芳香族化合物を骨格として、その骨格に置換基を導入することで、分子内にHOMO部位とLUMO部位を局在化することが、分子構造の特徴であり、定説となっている。
Figure 0006774432
このような分子は、HOMOが局在化するドナー部と、LUMOが局在化するアクセプター部が、その間に存在するπ共役性の部位(以下、「コア」ともいう。)を介して、分子内で電荷移動錯体を形成しており、ほとんどの場合、少なくともドナー部はコアに対してねじれを持った分子構造となっている。
そのねじれ構造は、その基底状態から励起状態に遷移する際に、そのねじれ角を変えながら変形、そして基底状態になるときに元の分子構造に戻るため、発光スペクトルはブロードとなり、発光極大波長と短波側の発光端の波長差は大きくなる。
この発光端の波長は、即ちエネルギーがSエネルギーとなるため、例えば同じ発光色で発光スペクトルがシャープな発光物質と比較すると、より高いSエネルギーが必要となる。即ち、発光色以上にバンドギャップを広くしておくことが必須となり、青色や近紫外発光のTADF化合物を分子設計する上で、困難さを生じる由縁となっている。
さらに、一重項励起状態から三重項励起状態、逆に三重項励起状態から一重項励起状態への項間交差時にも分子のねじれ構造が変動するために、その変位のための時間が必要となり、かつ、その項間交差が順方向・逆方向で繰り返し行われることから、三重項励起子の存在時間は長くなり、結果的にいつかは一重項励起状態になるとしても、本発明の趣旨である「ホストの三重項励起子の存在時間の短縮化」には完全に対応する技術とはなり得ないのである。
次に、違う観点でも考えてみる。
TADF現象を発現するためには、強いドナー部位と強いアクセプター部位が必要になる。ただし、ドナーとなり得る置換基(化合物)はそれほど多く存在せず、ほぼアミノ基置換物質(アクリダン、ジフェニルアミン、カルバゾール、インドロインドール等)に限定され、その他に好適な置換基は今のところ見いだされていない。
一方、アクセプター部位もそれほどバリエーションがある訳ではなく、置換基としては電子吸引性の代表的指標であるσp値の大きなシアノ基、スルホニル基、リンオキシド基等や、ピリミジン、トリアジン、アザトリフェニレン等の窒素原子を多数含有した芳香族複素環化合物等に事実上限定される。実際に、前記の代表的なTADF化合物においても、そのような分子構造になっている。
このような分子の場合、強い電子吸引基の影響で分子のHOMO準位が低く(深く)なってしまう。こうなると、隣接する正孔輸送層を構成する化合物との準位差が大きくなってしまうため、発光層内にホールを注入するのが難しくなる。また、発光ドーパントにHOMO準位の高い(浅い)分子を適用する場合には、該TADF化合物とドーパントのHOMO準位の差が大きくなりすぎて、一端発光層に入った正孔が全て正孔輸送界面付近に存在するドーパントにトラップされてしまい、理想的な状態での再結合が行えなくなることが問題となる。
一方で、我々が見いだした空間電子遷移型のTADF化合物の場合、分子中にドナー部とアクセプター部を持つことは従来のTADF化合物と同じではある。しかし、π共役性のコアを介しての電荷移動遷移ではなく、空間的に重なり合う(又は接近し合う)ドナー部とアクセプター部が、空間的に電子遷移を起こすために電子遷移の際の分子構造変化は非常に少なくなっており、そのため、発光スペクトル形状をシャープにすることも可能である。また、一重項励起状態−三重項励起状態間における項間交差も、その構造変化がないことが寄与して高速化し、結果として三重項励起状態での存在時間を短くすることが可能となっている。
また、分子内空間電子遷移は化学構造上、ドナー部とアクセプター部を分子内で重ね合わせるように設計された分子でのみ起こる現象であるが故に、通常二分子間で起こるエキサイプレックス形成よりも温和なドナー及びアクセプターでも発現することが大きな特徴である。例えば、アクセプターとしては極弱いジベンゾフランと、ドナーとしても決して強いものではないカルバゾールのような組み合わせであっても、立体的な分子構造の工夫により、空間電子遷移が起こり、ごく短い三重項励起子の存在時間を実現することが可能となるのである。
また、TADF化合物は、それ自体が発光せずに、従来の蛍光発光物質のホストとして使うことも知られている。TADFアシスタントドーパントという技術であり、発光寿命が伸長することが知られている(参考文献:H.Nakanоtani,et al.,Nature Communicaion,2014,5,4016−4022.)。しかし、青色の高効率発光で十分な発光寿命を得るには至っていない。
この技術は、TADF分子の三重項励起状態も次第に一重項励起状態へと逆項間交差し、その一重項励起状態がよりS1エネルギーの低い蛍光ドーパントにエネルギー移動して発光するというものであり、TADF発光の弱点であった発光スペクトルのブロード化は、従来のシャープは発光スペクトルの蛍光ドーパントが用いられるため、解消され、さらに発光効率のリン光素子に匹敵するレベルを引き出すことが可能であるため、大変優れた技術である。
ただし、ホスト化合物であるTADF分子の三重項励起状態での存在時間は前記説明のように、決して短くはない。したがって、その影響があらわになる青色発光においては、十分な発光寿命改善効果は原理的に期待できないのも事実である。
一方で、ホスト化合物とTADF分子、発光ドーパントを遷移金属錯体とした、いわゆるリン光素子ではどうなるかを考える。
ホスト化合物であるTADF分子に生成する三重項励起状態は、ある速度でTADF分子の一重項励起状態になる。その一重項励起状態は、そのまま光るものもあるが、高い確率で遷移金属錯体の外部重原子効果によって三重項励起状態に戻される。この戻された三重項励起状態及び最初からできている三重項励起状態は、遷移金属錯体であるリン光ドーパントへT間のエネルギー移動を起こし、リン光ドーパントからの発光が得られる。すなわち、ホスト化合物であるTADF分子は蛍光ドーパントのホスト化合物として用いられるよりも、リン光ドーパントのホストとして用いた方が、ホスト化合物の三重項励起子の存在時間の短縮化の観点では有利であり、長寿命化が期待できることになる。
さらに、このTADF分子が空間電子遷移型TADF分子だった場合は、先に述べたように、リン光ドーパントとの準位の不整合の解消や、TADF分子自体の高T化(つまり、高S化)も可能となるため、ほぼ完璧な技術手段であるといえる。
我々は、このような論理に則り、実際にリン光ドーパントに空間電子遷移型TADF分子をホスト化合物して用いることで、従来にない発光寿命の伸長を確認し、本発明を完成するに至った。
本発明の有機ELの発光層には、ホスト化合物として上述した空間電子遷移型TADF分子であるπ共役系化合物を含有し、発光ドーパントとして前記一般式(1)で表される構造を有する化合物を含有する。当該π共役系化合物は、HOMOとLUMOの間の電子遷移が、同一分子内のスルースペース相互作用で起こり、かつ、当該HOMO又は当該LUMOの少なくとも一方が局在化する部位にπ共役系芳香族環を有するものである。
通常TADFが発現する際の電子遷移は、ドナー部に局在するHOMOとアクセプター部に局在するLUMOの間を、共有結合の分子鎖を経由するスルーボンドで行われる。一方、本発明に係るπ共役系化合物は、TADFが発現する際の電子遷移がスルースペース相互作用で行われていることを特徴としている。スルースペース相互作用での電子遷移は、π共役系化合物におけるHOMOを構成する電子群とLUMOを構成する電子群とが、それぞれ分子内の離れた位置に存在する原子群によって構成され、π共役系化合物においてHOMOを構成する電子群とLUMOを構成する電子群とが、それぞれ分子内の離れた位置に存在する原子群によって構成されているのにもかかわらず、その原子群の間で電子遷移が起こることによって発光現象が起こることを意味する。このスルースペース相互作用での電子遷移は、HOMOとLUMOの分布状態が明確に分離することで起こりやすくなると推測され、具体的には、HOMO及びLUMOの電子密度分布の割合がそれぞれ少なくとも80%以上であり、さらに、前記HOMOと前記LUMOの電子密度分布の重なりが少なくとも20%未満であると、スルースペース相互作用が起こりやすくなると推測される。また、HOMOとLUMOが空間的に近接しているとスルースペース相互作用が起こりやすくなると推測される。
このように有機ELの発光層に、ホスト化合物として上述した空間電子遷移型TADF分子であるπ共役系化合物を含有することで、ホスト化合物の三重項励起子の存在時間を短縮化することができ、発光効率が高く及び発光寿命の長い有機ELが得られたものと考えられる。また、本発明に係るπ共役系化合物は、発光層内で動きが抑制されるものと考えられるため、素子駆動中でのπ共役系化合物の凝集が抑えられることによって励起子安定性も向上し、発光層の初期劣化が抑えられたと考えられる。
ところで、有機ELを取り巻く業界や学術界では、すでに数多くの技術や化合物群が知られている。ただし、本発明のように、ホスト分子の三次元的化学構造と電子状態をコントロールした空間電子遷移型のTADF化合物を、前記のような複数の観点から整合するようにして、リン光ドーパントに適用し、発光寿命の伸長を達成したことは、有機EL業界における革新的な技術と発展であると考えている。
公知となっている学術文献や特許文献において、もしかするとこのような化合物の組み合わせが特に意図せずに掲載されている場合があるのかもしれない。ただし、それらは、ここに記した技術思想を用いたものでないことは明白であり、本発明とは区別されるものであると考える。
TADF化合物(2CzPN:HOMOとLUMOが分離している)のエネルギーダイヤグラムを示した模式図 通常の蛍光発光性化合物(2CzXy:HOMOとLUMOが分離していない)のエネルギーダイヤグラムを示した模式図 π共役化合物がホスト化合物として作用する場合の模式図 有機EL素子から構成される表示装置の一例を示した模式図 アクティブマトリクス方式による表示装置の模式図 画素の回路を示した概略図 パッシブマトリクス方式による表示装置の模式図 照明装置の概略図 照明装置の断面図 例示化合物H2−12におけるHOMOの電子密度分布図 例示化合物H2−12におけるLUMOの電子密度分布図 例示化合物H3−11におけるHOMOの電子密度分布図 例示化合物H3−11におけるLUMOの電子密度分布図
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極と陰極の間に少なくとも1層の発光層を含む有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、当該発光層の少なくとも1層が、π共役系化合物と、前記一般式(1)で表される構造を有する化合物とを含有し、前記π共役系化合物が、HOMOとLUMOの間の電子遷移が、同一分子内のスルースペース相互作用で起こり、かつ、前記HOMO又は前記LUMOの少なくとも一方が局在化する部位にπ共役系芳香族環を有することを特徴とする。この特徴は、各請求項に係る発明に共通する又は対応する特徴である。
本発明の実施形態としては、本発明の効果発現の観点から、前記π共役系化合物として、後述する一般式(2)から一般式(9)までのいずれかで表される構造を有する化合物を含有すること好ましい。
本発明の実施形態としては、本発明の空間電子遷移型の化合物が、3重項励起状態の輻射速度が速いことが特徴の一つであるが、これと組み合わせる発光性化合物も輻射速度が速いことが望ましい。この観点から、前記一般式(1)中の環Zが、ピリジン環、イミダゾール環、イソキノリン環、トリアゾール環又はピラゾール環であることが好ましい。
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、表示装置及び照明装置に好ましく適用することができる。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
[有機EL素子]
本発明の有機EL素子は、陽極と陰極の間に少なくとも1層の発光層を含む有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、当該発光層の少なくとも1層が、π共役系化合物と、後述する一般式(1)で表される構造を有する化合物とを含有し、前記π共役系化合物が、HOMOとLUMOの間の電子遷移が、同一分子内のスルースペース相互作用で起こり、かつ、前記HOMO又は前記LUMOの少なくとも一方が局在化する部位にπ共役系芳香族環を有することを特徴とする。該π共役系化合物のHOMOとLUMOは、汎関数としてB3LYP及び基底関数として6−31G(d)を用いた分子軌道計算により求めることができる。
以下、本発明の有機EL素子について順を追って説明する。
《有機EL素子の構成層》
本発明の有機EL素子における代表的な素子構成としては、以下の構成を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
(1)陽極/発光層/陰極
(2)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(3)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
(4)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(5)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(6)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(7)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/(電子阻止層/)発光層/(正孔阻止層/)電子輸送層/電子注入層/陰極
上記の中で(7)の構成が好ましく用いられるが、これに限定されるものではない。
本発明に用いられる発光層は、単層又は複数層で構成されており、発光層が複数の場合は各発光層の間に非発光性の中間層を設けてもよい。
必要に応じて、発光層と陰極との間に正孔阻止層(正孔障壁層ともいう)や電子注入層(陰極バッファー層ともいう)を設けてもよく、また、発光層と陽極との間に電子阻止層(電子障壁層ともいう)や正孔注入層(陽極バッファー層ともいう)を設けてもよい。
本発明に用いられる電子輸送層とは、電子を輸送する機能を有する層であり、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。また、複数層で構成されていてもよい。
本発明に用いられる正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する層であり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。また、複数層で構成されていてもよい。
上記の代表的な素子構成において、陽極と陰極を除いた層を「有機層」ともいう。
(タンデム構造)
また、本発明の有機EL素子は、少なくとも1層の発光層を含む発光ユニットを複数積層した、いわゆるタンデム構造の素子であってもよい。
タンデム構造の代表的な素子構成としては、例えば以下の構成を挙げることができる。
陽極/第1発光ユニット/中間層/第2発光ユニット/中間層/第3発光ユニット/陰極
ここで、上記第1発光ユニット、第2発光ユニット及び第3発光ユニットは全て同じであっても、異なっていてもよい。また二つの発光ユニットが同じであり、残る一つが異なっていてもよい。
複数の発光ユニットは直接積層されていても、中間層を介して積層されていてもよく、中間層は、一般的に中間電極、中間導電層、電荷発生層、電子引抜層、接続層、中間絶縁層とも呼ばれ、陽極側の隣接層に電子を、陰極側の隣接層に正孔を供給する機能を持った層であれば、公知の材料構成を用いることができる。
中間層に用いられる材料としては、例えば、ITO(インジウム・スズ酸化物)、IZO(インジウム・亜鉛酸化物)、ZnO、TiN、ZrN、HfN、TiO、VO、CuI、InN、GaN、CuAlO、CuGaO、SrCu、LaB、RuO、Al等の導電性無機化合物層や、Au/Bi等の2層膜や、SnO/Ag/SnO、ZnO/Ag/ZnO、Bi/Au/Bi、TiO/TiN/TiO、TiO/ZrN/TiO等の多層膜、またC60等のフラーレン類、オリゴチオフェン等の導電性有機物層、金属フタロシアニン類、無金属フタロシアニン類、金属ポルフィリン類、無金属ポルフィリン類等の導電性有機化合物層等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
発光ユニット内の好ましい構成としては、例えば、上記の代表的な素子構成で挙げた(1)〜(7)の構成から、陽極と陰極を除いたもの等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
タンデム型有機EL素子の具体例としては、例えば、米国特許第6337492号明細書、米国特許第7420203号明細書、米国特許第7473923号明細書、米国特許第6872472号明細書、米国特許第6107734号明細書、米国特許第6337492号明細書、国際公開第2005/009087号、特開2006−228712号公報、特開2006−24791号公報、特開2006−49393号公報、特開2006−49394号公報、特開2006−49396号公報、特開2011−96679号公報、特開2005−340187号公報、特許第4711424号公報、特許第3496681号公報、特許第3884564号公報、特許第4213169号公報、特開2010−192719号公報、特開2009−076929号公報、特開2008−078414号公報、特開2007−059848号公報、特開2003−272860号公報、特開2003−045676号公報、国際公開第2005/094130号等に記載の素子構成や構成材料等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
以下、本発明の有機EL素子を構成する各層について説明する。
《発光層》
本発明に用いられる発光層は、電極又は隣接層から注入されてくる電子及び正孔が再結合し、励起子を経由して発光する場を提供する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても、発光層と隣接層との界面であってもよい。本発明に用いられる発光層は、本発明で規定する要件を満たしていれば、その構成に特に制限はない。
発光層の層厚の総和は、特に制限はないが、形成する膜の均質性や、発光時に不必要な高電圧を印加するのを防止し、かつ、駆動電流に対する発光色の安定性向上の観点から、2nm〜5μmの範囲に調整することが好ましく、より好ましくは2〜500nmの範囲に調整され、更に好ましくは5〜200nmの範囲に調整される。
また、本発明に用いられる個々の発光層の層厚としては、2nm〜1μmの範囲に調整することが好ましく、より好ましくは2〜200nmの範囲に調整され、更に好ましくは3〜150nmの範囲に調整される。
本発明に用いられる発光層には、発光ドーパント(発光性化合物、発光性ドーパント化合物、ドーパント化合物、単にドーパントともいう。)と、ホスト化合物(マトリックス材料、発光ホスト化合物、単にホストともいう。)を含有する。
また、本発明の有機EL素子に係る発光層は、有機EL素子に設けられた発光層の少なくとも1層が、発光ドーパントとして後述する一般式(1)で表される構造を有する化合物と、ホスト化合物としてπ共役系化合物を含有する。
(1)発光ドーパント
発光ドーパントとしては、リン光発光性ドーパント(リン光ドーパント、リン光性化合物ともいう)と、蛍光発光性ドーパント(蛍光ドーパント、蛍光性化合物ともいう)が好ましく用いられる。また、本発明においては、発光層の少なくとも1層が、下記のリン光ドーパントを含有する。
(1.1)リン光ドーパント
リン光ドーパントは、励起三重項からの発光が観測される化合物であり、具体的には室温(25℃)にてリン光発光する化合物であり、リン光量子効率が、25℃において0.01以上の化合物であると定義されるが、好ましいリン光量子効率は0.1以上である。
上記リン光量子効率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中でのリン光量子効率は種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明で用いられるリン光ドーパントは、任意の溶媒のいずれかにおいて上記リン光量子効率(0.01以上)が達成されればよい。
リン光ドーパントの発光は原理としては2種挙げられ、一つはキャリアが輸送されるホスト化合物上でキャリアの再結合が起こって発光性ホスト化合物の励起状態が生成し、このエネルギーをリン光ドーパントに移動させることでリン光ドーパントからの発光を得るというエネルギー移動型である。もう一つはリン光ドーパントがキャリアトラップとなり、リン光ドーパント上でキャリアの再結合が起こり、リン光ドーパントからの発光が得られるというキャリアトラップ型である。いずれの場合においても、リン光ドーパントの励起状態のエネルギーはホスト化合物の励起状態のエネルギーよりも低いことが条件である。
本発明に係るリン光ドーパントとしては、三重項励起状態のエネルギーが、本発明に係るホスト化合物の三重項励起状態のエネルギーよりも低くしやすくする観点から、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物が好ましく用いられる。
Figure 0006774432
一般式(1)中、Mは、Ir、Pt、Rh又はOsを表す。これらのなかでも、Mは、Ir又はPtであることが特に好ましい。
、A、B及びBは、各々炭素原子又は窒素原子を表す。
環Zは、A及びAとともに形成される6員の芳香族炭化水素環、又は5員若しくは6員の芳香族複素環を表す。
環Zにより形成される6員の芳香族炭化水素環又は5員若しくは6員の芳香族複素環としては、例えば、ベンゼン環、ピリジン環、ピリミジン環、ピロール環、チオフェン環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環及びチアゾール環等が挙げられる。
環Zは置換基を有していても良く、更に置換基同士が結合して縮環構造を形成していても良い。
環Zは、B及びBとともに形成される5員又は6員の芳香族複素環を表す。これらのなかでも、環Zは、5員の芳香族複素環であることが好ましく、B及びBは、少なくとも一方が窒素原子であることが好ましい。
環Zに用いられる芳香族複素環としては、輻射速度の観点から、ピリジン環、イミダゾール環、イソキノリン環、トリアゾール環又はピラゾール環であることが好ましい。
また、環Z及び環Zは置換基を有していてもよく、さらに置換基同士が結合して縮環構造を形成していてもよい。また、環Z及び環Zは、各々の配位子の置換基が、互いに結合して、配位子同士が連結していてもよい。ここでいう「置換基」は、本願発明の目的とする性能の微調整を可能とするために、分子設計上適宜選択されるものである。置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、芳香族炭化水素環基(芳香族炭素環基、アリール基等ともいい、例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等)、芳香族複素環基(例えば、ピリジル基、ピリミジニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、トリアゾリル基(例えば、1,2,4−トリアゾール−1−イル基、1,2,3−トリアゾール−1−イル基等)、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、フラザニル基、チエニル基、キノリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(前記カルボリニル基のカルボリン環を構成する炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す。)、キノキサリニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等)、複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基又はヘテロアリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)等が挙げられる。これらの置換基のうち、好ましいものはアルキル基又はアリール基である。
L′は、Mに配位したモノアニオン性の二座配位子を表す。
m′は、0〜2の整数を表す。n′は、1〜3の整数を表す。m′+n′は、2又は3である。m′及びn′が2以上の場合、環Z及び環Zで表される配位子及びL′は、各々、同じでも異なっていてもよい。
(1.2)蛍光発光性化合物
本発明に用いられる発光材料として、公知の蛍光発光性化合物を使用することができる。公知の蛍光発光性化合物としては、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素又は希土類錯体系蛍光体や、レーザー色素に代表される蛍光量子収率が高い化合物等が挙げられる。
(1.3)従来公知のドーパントとの併用
また、本発明に用いられる発光ドーパントは、複数種の化合物を併用して用いてもよく、構造の異なるリン光ドーパント同士の組み合わせや、リン光ドーパントと蛍光ドーパントを組み合わせて用いてもよい。
本発明に使用できる公知のリン光ドーパントの具体例としては、以下の文献に記載されている化合物等が挙げられる。
Nature,395,151(1998)、Appl.Phys.Lett.,78,1622(2001)、Adv.Mater.,19,739(2007)、Chem.Mater.,17,3532(2005)、Adv.Mater.,17,1059(2005)、国際公開第2009/100991号、国際公開第2008/101842号、国際公開第2003/040257号、米国特許出願公開第2006/835469号明細書、米国特許出願公開第2006/0202194号明細書、米国特許出願公開第2007/0087321号明細書、米国特許出願公開第2005/0244673号明細書、Inorg.Chem.,40,1704(2001)、Chem.Mater.,16,2480(2004)、Adv.Mater.,16,2003(2004)、Angew.Chem.lnt.Ed.,2006,45,7800、Appl.Phys.Lett.,86,153505(2005)、Chem.Lett.,34,592(2005)、Chem.Commun.,2906(2005)、Inorg.Chem.,42,1248(2003)、国際公開第2009/050290号、国際公開第2002/015645号、国際公開第2009/000673号、米国特許出願公開第2002/0034656号明細書、米国特許第7332232号明細書、米国特許出願公開第2009/0108737号明細書、米国特許出願公開第2009/0039776号明細書、米国特許第6921915号明細書、米国特許第6687266号明細書、米国特許出願公開第2007/0190359号明細書、米国特許出願公開第2006/0008670号明細書、米国特許出願公開第2009/0165846号明細書、米国特許出願公開第2008/0015355号明細書、米国特許第7250226号明細書、米国特許第7396598号明細書、米国特許出願公開第2006/0263635号明細書、米国特許出願公開第2003/0138657号明細書、米国特許出願公開第2003/0152802号明細書、米国特許第7090928号明細書、Angew.Chem.lnt.Ed.,47,1(2008)、Chem.Mater.,18,5119(2006)、Inorg.Chem.,46,4308(2007)、Organometallics,23,3745(2004)、Appl.Phys.Lett.,74,1361(1999)、国際公開第2002/002714号、国際公開第2006/009024号、国際公開第2006/056418号、国際公開第2005/019373号、国際公開第2005/123873号、国際公開第2007/004380号、国際公開第2006/082742号、米国特許出願公開第2006/0251923号明細書、米国特許出願公開第2005/0260441号明細書、米国特許第7393599号明細書、米国特許第7534505号明細書、米国特許第7445855号明細書、米国特許出願公開第2007/0190359号明細書、米国特許出願公開第2008/0297033号明細書、米国特許第7338722号明細書、米国特許出願公開第2002/0134984号明細書、米国特許第7279704号明細書、米国特許出願公開第2006/098120号明細書、米国特許出願公開第2006/103874号明細書、国際公開第2005/076380号、国際公開第2010/032663号、国際公開第2008/140115号、国際公開第2007/052431号、国際公開第2011/134013号、国際公開第2011/157339号、国際公開第2010/086089号、国際公開第2009/113646号、国際公開第2012/020327号、国際公開第2011/051404号、国際公開第2011/004639号、国際公開第2011/073149号、米国特許出願公開第2012/228583号明細書、米国特許出願公開第2012/212126号明細書、特開2012−069737号公報、特開2011−181303号公報、特開2009−114086号公報、特開2003−81988号公報、特開2002−302671号公報、特開2002−363552号公報等である。
中でも、好ましいリン光ドーパントとしてはIrを中心金属に有する有機金属錯体が挙げられる。さらに好ましくは、金属−炭素結合、金属−窒素結合、金属−酸素結合、金属−硫黄結合のうち少なくとも一つの配位様式を含む錯体が好ましい。
(1.4)リン光ドーパントの例示
本発明に使用できるリン光ドーパントの具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
Figure 0006774432
Figure 0006774432
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Figure 0006774432
(2)ホスト化合物
本発明に用いられるホスト化合物は、発光層において主に電荷の注入及び輸送を担う化合物である。ホスト化合物は、発光層に含有される化合物の内で、その層中での質量比が20%以上であることが好ましい。
ホスト化合物は、単独で用いてもよく、又は複数種併用して用いてもよい。ホスト化合物を複数種用いることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機EL素子を高効率化することができる。
(2.1)π共役系化合物
本発明に係る発光層の少なくとも1層が、発光ドーパントとして上記一般式(1)で表される構造を有する化合物を含有し、かつホスト化合物としてπ共役系化合物を含有する。本明細書でいう、「π共役系化合物」とは、HOMOとLUMOの間の電子遷移が、同一分子内のスルースペース相互作用で起こり、かつ、当該HOMO又は当該LUMOの少なくとも一方が局在化する部位にπ共役系芳香族環を有する化合物のことである。
ここで、本明細書でいうスルースペース相互作用での電子遷移とは、π共役系化合物におけるHOMOを構成する電子群とLUMOを構成する電子群とが、それぞれ分子内の離れた位置に存在する原子群によって構成され、π共役系化合物においてHOMOを構成する電子群とLUMOを構成する電子群とが、それぞれ分子内の離れた位置に存在する原子群によって構成されているのにもかかわらず、その原子群の間で電子遷移が起こることによって発光現象が起こることを意味する。
このスルースペース相互作用での電子遷移は、HOMOとLUMOの分布状態が明確に分離することで起こりやすくなると推測され、具体的には、HOMO及びLUMOの電子密度分布の割合がそれぞれ少なくとも80%以上であり、さらに、前記HOMOと前記LUMOの電子密度分布の重なりが少なくとも20%未満であると、スルースペース相互作用が起こりやすくなると推測される。また、HOMOとLUMOが空間的に近接しているとスルースペース相互作用が起こりやすくなると推測される。
発光層中のπ共役系化合物の濃度については、使用される特定のπ共役系化合物及びデバイスの必要条件に基づいて、任意に決定することができ、発光層の層厚方向に対し、均一な濃度で含有されていてもよく、また任意の濃度分布を有していてもよい。
また、本発明に係るπ共役系化合物は、複数種を併用して用いてもよい。
本発明に係るπ共役系化合物がホスト化合物として作用する場合の模式図を、図2に示す。効果が発現する機構としては、π共役系化合物上に生成した三重項励起子を逆項間交差(Reverse InterSystem Crossing:RISC)で一重項励起子へと変換する点にある。これにより、π共役系化合物上に生成した理論上すべての励起子エネルギーを発光性化合物に蛍光共鳴エネルギー移動(Fluorescence
Resonance Energy Transfer:FRET)することができ、高発光効率発現を可能にする。ここで、π共役系化合物上に生成する三重項励起子の生成過程は電界励起のみに限定されず、発光層内又は周辺層界面からのエネルギー移動や電子移動等も含まれる。また、図2では、リン光発光性化合物を用いた例を示しているが、蛍光発光性化合物も用いることができ、リン光発光性化合物と蛍光発光性化合物の両方を用いることもできる。
発光性化合物の含有量は、π共役系化合物に対して質量比0.1%以上50%以下で含んでいることが好ましい。また、π共役系化合物のSとTのエネルギー準位は、発光性化合物のSとTのエネルギー準位よりも高い方が好ましい。
また、π共役系化合物の発光スペクトルと、発光性化合物の吸収スペクトルとが重なることが好ましい。
π共役系化合物のHOMOとLUMOは、汎関数としてB3LYP及び基底関数として6−31G(d)を用いた分子軌道計算により得られる。
本発明に係るπ共役系化合物は、具体的には、下記一般式(2)から(9)までのいずれかの一般式で表される構造を有する化合物を含有することが好ましい。以下、下記一般式(2)から(9)を順に説明する。
(2.1.1)一般式(2)で表される化合物
本発明に係るπ共役系化合物として、下記一般式(2)で表される構造を有する化合物を含有することが好ましい。
Figure 0006774432
上記一般式(2)において、X及びXは、各々独立に酸素原子、硫黄原子又はNRを表す。X21〜X26は、各々独立に窒素原子又はCRを表し、少なくとも一つは窒素原子である。R、R、及びR21〜R26は、各々独立に水素原子又は置換基を表す。L21〜L26は、2価の連結基を表す。p及びqは、0又は1の整数を表す。
なお、X及びXがそれぞれNRで表される場合、Rが互いに結合して環を形成してもよい。
上記一般式(2)で表される構造を有する化合物は、式中の手前側のXa及びX21〜X26を含む三縮環式母核構造部分において、HOMOの電子密度の割合が、80%以上となる。また、式中の奥側のXを含む三縮環式母核構造部分において、LUMOの電子密度の割合が、80%以上となる。
また、R、R、及びR21〜R26が置換基を表す場合、その置換基としては、一般式(2)で表される構造を有する化合物内において、HOMOとLUMOの間の電子遷移を妨げにくく、本発明の効果を損なわないものであれば、適宜使用である。なお、ここでいう「置換基」は、HOMOとLUMOの間の電子遷移を行う構造部分に直接的に関与するものではなく、本願発明の目的とする性能の微調整を可能とするために、分子設計上適宜選択されるものである。その置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、芳香族炭化水素基(芳香族炭化水素環基、芳香族炭素環基、アリール基等ともいい、例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等)、芳香族複素環基(例えば、ピリジル基、ピリミジニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、トリアゾリル基(例えば、1,2,4−トリアゾール−1−イル基、1,2,3−トリアゾール−1−イル基等)、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、フラザニル基、チエニル基、キノリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(前記カルボリニル基のカルボリン環を構成する炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す)、キノキサリニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等)、複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基又はヘテロアリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、ハロゲノ基(例えば、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基等)、フッ化炭化水素基(例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)、ホスホノ基等が挙げられる。好ましくは、アルキル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基が挙げられる。また、これらの置換基は、上記の置換基によってさらに置換されていてもよい。また、これらの置換基は、複数が互いに結合して環を形成していてもよい。
21〜L26に用いられる2価の連結基としては、HOMOとLUMOの間の電子遷移を円滑に行え、本発明の効果を損なわないものであれば、適宜使用である。その2価の連結基としては、例えば、酸素や硫黄などのカルコゲン原子、ジアルキルシリル基、アルキレン基(例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、プロピレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、2,2,4−トリメチルヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、シクロヘキシレン基(例えば、1,6−シクロヘキサンジイル基等)、シクロペンチレン基(例えば、1,5−シクロペンタンジイル基など)等)、アルケニレン基(例えば、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、ペンテニレン基、1−メチルビニレン基、1−メチルプロペニレン基、2−メチルプロペニレン基、1−メチルペンテニレン基、3−メチルペンテニレン基、1−エチルビニレン基、1−エチルプロペニレン基、1−エチルブテニレン基、3−エチルブテニレン基等)、アルキニレン基(例えば、エチニレン基、1−プロピニレン基、1−ブチニレン基、1−ペンチニレン基、1−ヘキシニレン基、2−ブチニレン基、2−ペンチニレン基、1−メチルエチニレン基、3−メチル−1−プロピニレン基、3−メチル−1−ブチニレン基等)、アリーレン基(例えば、o−フェニレン基、p−フェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、ナフタセンジイル基、ピレンジイル基、ナフチルナフタレンジイル基、ビフェニルジイル基(例えば、[1,1′−ビフェニル]−4,4′−ジイル基、3,3′−ビフェニルジイル基、3,6−ビフェニルジイル基等)、テルフェニルジイル基、クアテルフェニルジイル基、キンクフェニルジイル基、セキシフェニルジイル基、セプチフェニルジイル基、オクチフェニルジイル基、ノビフェニルジイル基、デシフェニルジイル基等)、ヘテロアリーレン基(例えば、カルバゾール環、カルボリン環、ジアザカルバゾール環(モノアザカルボリン環ともいい、カルボリン環を構成する炭素原子のひとつが窒素原子で置き換わった構成の環構成を示す)、トリアゾール環、ピロール環、ピリジン環、ピラジン環、キノキサリン環、チオフェン環、オキサジアゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、インドール環からなる群から導出される2価の基等)、3環以上の環が縮合してなる縮合芳香族複素環から導出される基等(ここで、3環以上の環が縮合してなる縮合芳香族複素環としては、好ましくはN、O及びSから選択されたヘテロ原子を、縮合環を構成する元素として含有する芳香族複素縮合環であることが好ましく、具体的には、アクリジン環、ベンゾキノリン環、カルバゾール環、フェナジン環、フェナントリジン環、フェナントロリン環、カルボリン環、サイクラジン環、キンドリン環、テペニジン環、キニンドリン環、トリフェノジチアジン環、トリフェノジオキサジン環、フェナントラジン環、アントラジン環、ペリミジン環、ジアザカルバゾール環(カルボリン環を構成する炭素原子の任意の一つが窒素原子で置き換わったものを表す)、フェナントロリン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ナフトフラン環、ナフトチオフェン環、ベンゾジフラン環、ベンゾジチオフェン環、ナフトジフラン環、ナフトジチオフェン環、アントラフラン環、アントラジフラン環、アントラチオフェン環、アントラジチオフェン環、チアントレン環、フェノキサチイン環、チオファントレン環(ナフトチオフェン環)等)が挙げられる。
(2.1.2)一般式(3)で表される化合物
本発明に係るπ共役系化合物として、下記一般式(3)で表される構造を有する化合物を含有することが好ましい。
Figure 0006774432

上記一般式(3)において、X31は、PR(=O)、SO又はSOを表す。R、R31〜R38は、各々独立に水素原子又は置換基を表す。式中のX31を含む三縮環式母核構造部分が、LUMOの電子密度の割合が80%以上である。R31、R33、R36及びR38の少なくとも一つは、下記一般式(3−A)で表される。
Figure 0006774432
上記一般式(3−A)において、Y31は、2価の連結基を表す。Zは、HOMOの電子密度の割合の合計が80%以上となる芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表す。p3は、0又は1の整数を表す。
また、上記一般式(3)において、R、R31〜R38が置換基を表す場合、その置換基としては、一般式(3)で表される構造を有する化合物内において、HOMOとLUMOの間の電子遷移を妨げにくく、本発明の効果を損なわないものであれば、適宜使用である。なお、ここでいう「置換基」は、HOMOとLUMOの間の電子遷移を行う構造部分に直接的に関与するものではなく、本願発明の目的とする性能の微調整を可能とするために、分子設計上適宜選択されるものである。その置換基としては、例えば、一般式(2)において説明した置換基を用いることができる。
31に用いられる2価の連結基としては、HOMOとLUMOの間の電子遷移を円滑に行え、本発明の効果を損なわないものであれば、適宜使用である。その2価の連結基としては、例えば、一般式(2)において説明した2価の連結基を用いることができる。
に用いられる芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基としては、HOMOの電子密度の割合が80%以上となり、HOMOとLUMOの間の電子遷移が同一分子内のスルースペース相互作用で起こせるようにする観点から、例えば、ピリジル基、ピリミジニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、トリアゾリル基(例えば、1,2,4−トリアゾール−1−イル基、1,2,3−トリアゾール−1−イル基等)、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、フラザニル基、チエニル基、キノリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(前記カルボリニル基のカルボリン環を構成する炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す)、キノキサリニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等が挙げられる。
(2.1.3)一般式(4)で表される化合物
本発明に係るπ共役系化合物として、下記一般式(4)で表される構造を有する化合物を含有することが好ましい。
Figure 0006774432
上記一般式(4)において、X41〜X45は、各々独立に窒素原子又はCReを表す
。Reは、水素原子又は置換基を表す。L41は、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環
基を表す。R41は、少なくとも一つは、下記一般式(4−A)で表される。
Figure 0006774432
上記一般式(4−A)において、Y41は2価の連結基を表す。Zは、HOMOの電子密度の割合の合計が80%以上となる芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表す。p4は、0又は1の整数を表す。
上記一般式(4)で表される構造を有する化合物は、式中のX41〜X45を含む環部分において、LUMOの電子密度の割合が、80%以上となる。
eが置換基を表す場合、その置換基としては、一般式(4)で表される構造を有する
化合物内において、HOMOとLUMOの間の電子遷移を妨げにくく、本発明の効果を損なわないものであれば、適宜使用である。なお、ここでいう「置換基」は、HOMOとLUMOの間の電子遷移を行う構造部分に直接的に関与するものではなく、本願発明の目的とする性能の微調整を可能とするために、分子設計上適宜選択されるものである。その置換基としては、例えば、一般式(2)において説明した置換基を用いることができる。
41に用いられる芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基としては、HOMOの電子密度の割合が80%以上となり、HOMOとLUMOの間の電子遷移が同一分子内のスルースペース相互作用で起こせるようにする観点から、例えば、一般式(3)において説明した芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を用いることができる。
41に用いられる2価の連結基としては、HOMOとLUMOの間の電子遷移を円滑に行え、本発明の効果を損なわないものであれば、適宜使用である。その2価の連結基としては、例えば、一般式(2)において説明した2価の連結基を用いることができる。
に用いられる芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基としては、HOMOの電子密度の割合が80%以上となり、HOMOとLUMOの間の電子遷移が同一分子内のスルースペース相互作用で起こせるようにする観点から、例えば、一般式(3)において説明した芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を用いることができる。
(2.1.4)一般式(5)で表される化合物
本発明に係るπ共役系化合物として、下記一般式(5)で表される構造を有する化合物を含有することが好ましい。
Figure 0006774432
上記一般式(5)において、R51〜R56は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。Z51及びZ52のうち一方は、HOMOの電子密度の割合が80%以上である芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表し、他方は、LUMOの電子密度の割合が80%以上である芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表す。
51〜R56が置換基を表す場合、その置換基としては、一般式(5)で表される構造を有する化合物内において、HOMOとLUMOの間の電子遷移を妨げにくく、本発明の効果を損なわないものであれば、適宜使用である。なお、ここでいう「置換基」は、HOMOとLUMOの間の電子遷移を行う構造部分に直接的に関与するものではなく、本願発明の目的とする性能の微調整を可能とするために、分子設計上適宜選択されるものである。その置換基としては、例えば、一般式(2)において説明した置換基を用いることができる。
51及びZ52に用いられる芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基としては、HOMO又はLUMOの電子密度の割合が80%以上となり、HOMOとLUMOの間の電子遷移が同一分子内のスルースペース相互作用で起こせるようにする観点から、例えば、一般式(3)において説明した芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を用いることができる。
(2.1.5)一般式(6)で表される化合物
本発明に係るπ共役系化合物として、下記一般式(6)で表される構造を有する化合物を含有することが好ましい。
Figure 0006774432
上記一般式(6)において、X61は、O又はSを表す。R61〜R68は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。R61及びR68、又は、R64及びR65は、それぞれ芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表す。R61及びR68が、それぞれ芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表すとき、R61及びR68のうち一方が、HOMOの電子密度の割合が80%以上である芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表し、他方が、LUMOの電子密度の割合が80%以上である芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表す。R64及びR65が、それぞれ芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表すとき、R64及びR65のうち一方が、HOMOの電子密度の割合が80%以上である芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表し、他方が、LUMOの電子密度の割合が80%以上である芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表す。
61〜R68が置換基を表す場合、その置換基としては、一般式(6)で表される構造を有する化合物内において、HOMOとLUMOの間の電子遷移を妨げにくく、本発明の効果を損なわないものであれば、適宜使用である。なお、ここでいう「置換基」は、HOMOとLUMOの間の電子遷移を行う構造部分に直接的に関与するものではなく、本願発明の目的とする性能の微調整を可能とするために、分子設計上適宜選択されるものである。その置換基としては、例えば、一般式(2)において説明した置換基を用いることができる。
61、R68、R64及びR65に用いられるHOMO又はLUMOの電子密度の割合が80%以上となる芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基としては、HOMO又はLUMOの電子密度の割合が80%以上となり、HOMOとLUMOの間の電子遷移が同一分子内のスルースペース相互作用で起こせるようにする観点から、例えば、一般式(3)において説明した芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を用いることができる。
(2.1.6)一般式(7)で表される化合物
本発明に係るπ共役系化合物として、下記一般式(7)で表される構造を有する化合物を含有することが好ましい。
Figure 0006774432
上記一般式(7)において、R71〜R80は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。R71、R72、R79、及びR80のうち少なくとも二つは、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表す。また、これらの芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基のうち一つが、HOMOの電子密度の割合が80%以上であり、これらの芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基のうち他の一つが、LUMOの電子密度の割合が80%以上である。
71〜R80が置換基を表す場合、その置換基としては、一般式(7)で表される構造を有する化合物内において、HOMOとLUMOの間の電子遷移を妨げにくく、本発明の効果を損なわないものであれば、適宜使用である。なお、ここでいう「置換基」は、HOMOとLUMOの間の電子遷移を行う構造部分に直接的に関与するものではなく、本願発明の目的とする性能の微調整を可能とするために、分子設計上適宜選択されるものである。その置換基としては、例えば、一般式(2)において説明した置換基を用いることができる。
71、R72、R79、及びR80に用いられるHOMO又はLUMOの電子密度の割合が80%以上となる芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基としては、HOMO又はLUMOの電子密度の割合が80%以上となり、HOMOとLUMOの間の電子遷移が同一分子内のスルースペース相互作用で起こせるようにする観点から、例えば、一般式(3)において説明した芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を用いることができる。
(2.1.7)一般式(8)で表される化合物
本発明に係るπ共役系化合物として、下記一般式(8)で表される構造を有する化合物を含有することが好ましい。
Figure 0006774432
上記一般式(8)において、R81は、HOMO又はLUMOの電子密度の割合が80%以上である芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表す。R82〜R89は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。ただし、R81が、HOMOの電子密度の割合が80%以上である芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表す場合、R82又はR89は、LUMOの電子密度の割合が80%以上である芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表す。また、R81が、LUMOの電子密度の割合が80%以上である芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表す場合、R82又はR89は、HOMOの電子密度の割合が80%以上である芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表す。
82〜R89が置換基を表す場合、その置換基としては、一般式(8)で表される構造を有する化合物内において、HOMOとLUMOの間の電子遷移を妨げにくく、本発明の効果を損なわないものであれば、適宜使用である。なお、ここでいう「置換基」は、HOMOとLUMOの間の電子遷移を行う構造部分に直接的に関与するものではなく、本願発明の目的とする性能の微調整を可能とするために、分子設計上適宜選択されるものである。その置換基としては、例えば、一般式(2)において説明した置換基を用いることができる。
81、R82及びR89に用いられるHOMO又はLUMOの電子密度の割合が80%以上となる芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基としては、HOMO又はLUMOの電子密度の割合が80%以上となり、HOMOとLUMOの間の電子遷移が同一分子内のスルースペース相互作用で起こせるようにする観点から、例えば、一般式(3)において説明した芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を用いることができる。
(2.1.8)一般式(9)で表される化合物
本発明に係るπ共役系化合物として、下記一般式(9)で表される構造を有する化合物を含有することが好ましい。
Figure 0006774432
上記一般式(9)において、R91は、HOMOの電子密度の割合が80%以上である芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表す。R92は、LUMOの電子密度の割合が80%以上である芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表す。R93〜R96は、水素原子又は置換基を表す。
91及びR92に用いられるHOMO又はLUMOの電子密度の割合が80%以上となる芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基としては、HOMO又はLUMOの電子密度の割合が80%以上となり、HOMOとLUMOの間の電子遷移が同一分子内のスルースペース相互作用で起こせるようにする観点から、例えば、一般式(3)において説明した芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を用いることができる。
93〜R96が置換基を表す場合、その置換基としては、一般式(9)で表される構造を有する化合物内において、HOMOとLUMOの間の電子遷移を妨げにくく、本発明の効果を損なわないものであれば、適宜使用である。なお、ここでいう「置換基」は、HOMOとLUMOの間の電子遷移を行う構造部分に直接的に関与するものではなく、本願発明の目的とする性能の微調整を可能とするために、分子設計上適宜選択されるものである。その置換基としては、例えば、一般式(2)において説明した置換基を用いることができる。
上記一般式(2)から(9)までのいずれかの構造を有するπ共役系化合物は、分子量が2000以下であることが、成膜性の点で好ましい。上記π共役系化合物の具体例としては、例えば、以下の例示化合物を挙げることができる。
Figure 0006774432
Figure 0006774432
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Figure 0006774432
Figure 0006774432
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Figure 0006774432
Figure 0006774432
Figure 0006774432
Figure 0006774432
Figure 0006774432
Figure 0006774432
Figure 0006774432
Figure 0006774432
Figure 0006774432
<合成方法>
上記π共役系化合物は、例えば以下の文献、又は、その文献に記載の参照文献に記載の方法を参照することにより合成することができる。
(1)S. Riedmuller and Boris J Nachtsheim
.,Beilstein J.Org.Chem.2013,9,1202−1209
(2)Wako Organic Square No.27(2009)
(3)N.M.Moazzam et al.,Appl.Organomet.Chem.,2012,26,7,330−334
(4)H.Kawai,et al.,Chemical Communication,2008,12,1464−1466
(5)S.Oi,et al.,Tetrahedron,2008,64,26,6051−6059
(6)S.Oi,et al.,Organic Letters,2008,10,9,1832−1826
(7)H.Uoyama,et al.,Nature,2012,492,234−238
(8)Y.Nakamura,et al.,Bull.Chem.Soc.Jpn.,2009,82,2743.
以下に、本発明に係るπ共役系化合物に関する種々の測定方法について記載する。
(電子密度分布)
本発明に係るπ共役系化合物は、三重項励起状態と一重項励起状態のエネルギー準位差の絶対値(ΔEst)を小さくするという観点から、分子内においてHOMOとLUMOが実質的に分離していることが好ましい。
これらHOMO及びLUMOの分布状態については、分子軌道計算により得られる構造最適化した際の電子密度分布から求めることができる。
本発明におけるπ共役系化合物の分子軌道計算による構造最適化及び電子密度分布の算出は、計算手法として、汎関数としてB3LYP、基底関数として6−31G(d)を用いた分子軌道計算用ソフトウェアを用いて算出することができ、ソフトウェアに特に限定はなく、いずれを用いても同様に求めることができる。
本発明においては、分子軌道計算用ソフトウェアとして、米国Gaussian社製のGaussian09(Revision C.01,M.J.Frisch,et al,Gaussian,Inc.,2010.)を用いる。
また、HOMOとLUMOの電子密度分離状態については、前述の汎関数としてB3LYP、基底関数として6−31G(d)を用いた構造最適化計算から、さらに時間依存密度汎関数法(Time−Dependent DFT)による励起状態計算を実施してS、Tのエネルギー(それぞれE(S)、E(T))を求めてΔEst=E(S)−E(T)として算出することも可能である。算出されたΔEstが小さいほど、HOMOとLUMOがより分離していることを示す。本発明において好ましくは、前述と同様の計算手法を用いて算出されたΔEstが0.5eV以下であり、さらに好ましくは0.2eV以下であり、最も好ましくは0.1eV以下である。
(最低励起一重項エネルギーS
本発明におけるπ共役系化合物の最低励起一重項エネルギーSについては、本発明においても通常の手法と同様にして算出されるもので定義される。すなわち、測定対象となる化合物を石英基板上に蒸着して試料を作製し、常温(300K)でこの試料の吸収スペクトル(縦軸:吸光度、横軸:波長とする。)を測定する。この吸収スペクトルの長波長側の立ち上がりに対して接線を引き、その接線と横軸との交点の波長値に基づいて、所定の換算式から算出される。
ただし、本発明において使用するπ共役系化合物の分子自体の凝集性が比較的高い場合、薄膜の測定においては凝集による誤差を生じる可能性がある。本発明におけるπ共役系化合物はストークスシフトが比較的小さいこと、さらに励起状態と基底状態の構造変化が小さいことを考慮し、本発明における最低励起一重項エネルギーSは、室温(25℃)におけるπ共役系化合物の溶液状態の最大発光波長のピーク値を近似値として用いた。
ここで、使用する溶媒は、π共役系化合物の凝集状態に影響を与えない、すなわち溶媒効果の影響が小さい溶媒、例えばシクロヘキサンやトルエン等の非極性溶媒等を用いることができる。
(最低励起三重項エネルギーT
本発明におけるπ共役系化合物の最低励起三重項エネルギー(T)については、溶液若しくは薄膜のフォトルミネッセンス(PL)特性により算出した。例えば、薄膜における算出方法としては、希薄状態のπ共役系化合物の分散物を薄膜にした後に、ストリークカメラを用い、過渡PL特性を測定することで、蛍光成分とリン光成分の分離を行い、そのエネルギー差をΔEstとして最低励起一重項エネルギーから最低励起三重項エネルギーを求めることができる。
測定・評価にあたって、絶対PL量子収率の測定については、絶対PL量子収率測定装置C9920−02(浜松ホトニクス社製)を用いた。発光寿命は、ストリークカメラC4334(浜松ホトニクス社製)を用いて、サンプルをレーザー光で励起させながら測定する。
(電子密度の割合の求め方)
本明細書でいうHOMOの電子密度の割合が80%以上である芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基とは、分子軌道計算により算出されるHOMOの全電子密度分布を100%としたときに、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基の部分の原子のHOMOの電子密度の割合が80%以上であることを表す。つまり、HOMOの電子密度の割合が80%以上ということは、その部分に電子密度分布が偏って存在していることを意味している。
以下、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基において、HOMOの電子密度の割合が、80%以上となるときの電子密度分布の割合の計算方法について説明する。
最初に、対象とする分子の基底状態の安定構造を、Gaussian09を用いて、汎関数をB3LYP、基底関数を6−31G(d)として計算する。キーワードとして#pとpop=regularを使用することによりHOMOとLUMOの分子軌道を出力する。そして、そこで得られた分子軌道のHOMO部位の電子分布を解析することによってHOMOの電子密度の割合が得られる。具体的には、HOMOに相当する軌道の全原子の係数を2乗して加算し、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基に相当する部分の炭素原子、ヘテロ原子の割合を算出する。
LUMOの電子密度の割合についても同様の解析で値を得ることができる。この場合も、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基の部位のLUMO電子密度の割合が、80%以上ということは、分子軌道計算により算出されるLUMOの全電子密度分布を100%としたときに、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基の部分の炭素原子、ヘテロ原子のLUMOの電子密度の割合が80%以上であることを表す。
本発明に係るπ共役系化合物の電子密度の割合を計算した結果の例については、後述の実施例で説明する(図9A、図9B、図10A及び図10B)。
(2.2)従来公知のホスト化合物との併用
ホスト化合物としては、上記のπ共役系化合物を単独で用いてもよく、又は複数種併用して用いてもよい。また、従来公知のホスト化合物を併用して用いることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機EL素子を高効率化することができる。
併用して用いることができる従来公知のホスト化合物としては、特に制限はなく、従来有機EL素子で用いられる化合物を用いることができる。低分子化合物でも繰り返し単位を有する高分子化合物でも良く、また、ビニル基やエポキシ基のような反応性基を有する化合物でも良い。また、当該従来公知のホスト化合物は、正孔輸送能又は電子輸送能を有しつつ、かつ、発光の長波長化を防ぎ、更に、有機EL素子を高温駆動時や素子駆動中の発熱に対して安定して動作させる観点から、高いガラス転移温度(Tg)を有することが好ましい。好ましくはTgが90℃以上であり、より好ましくは120℃以上である。
ここで、ガラス転移点(Tg)とは、DSC(Differential Scanning Calorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS−K−7121に準拠した方法により求められる値である。
併用して用いることができる従来公知のホスト化合物の具体例としては、以下の文献に記載の化合物等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
例えば、特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報、米国特許出願公開第2003/0175553号明細書、米国特許出願公開第2006/0280965号明細書、米国特許出願公開第2005/0112407号明細書、米国特許出願公開第2009/0017330号明細書、米国特許出願公開第2009/0030202号明細書、米国特許出願公開第2005/0238919号明細書、国際公開第2001/039234号、国際公開第2009/021126号、国際公開第2008/056746号、国際公開第2004/093207号、国際公開第2005/089025号、国際公開第2007/063796号、国際公開第2007/063754号、国際公開第2004/107822号、国際公開第2005/030900号、国際公開第2006/114966号、国際公開第2009/086028号、国際公開第2009/003898号、国際公開第2012/023947号、特開2008−074939号公報、特開2007−254297号公報、欧州特許出願公開第2034538号明細書等が挙げられる。
《電子輸送層》
本発明において電子輸送層とは、電子を輸送する機能を有する材料からなり、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよい。
本発明において電子輸送層の総層厚については特に制限はないが、通常は2nm〜5μmの範囲であり、より好ましくは2〜500nmであり、さらに好ましくは5〜200nmである。
また、有機EL素子においては発光層で生じた光を電極から取り出す際、発光層から直接取り出される光と、光を取り出す電極と対極に位置する電極によって反射されてから取り出される光とが干渉を起こすことが知られている。光が陰極で反射される場合は、電子輸送層の総層厚を数nm〜数μmの間で適宜調整することにより、この干渉効果を効率的に利用することが可能である。
一方で、電子輸送層の層厚を厚くすると電圧が上昇しやすくなるため、特に層厚が厚い場合においては、電子輸送層の電子移動度は10−5cm/V・s以上であることが好ましい。
電子輸送層に用いられる材料(以下、電子輸送材料という)としては、電子の注入性又は輸送性、正孔の障壁性のいずれかを有していればよく、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
例えば、含窒素芳香族複素環誘導体(カルバゾール誘導体、アザカルバゾール誘導体(カルバゾール環を構成する炭素原子の一つ以上が窒素原子に置換されたもの)、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリダジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、アザトリフェニレン誘導体、オキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、ベンズチアゾール誘導体等)、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、シロール誘導体、芳香族炭化水素環誘導体(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、トリフェニレン誘導体等)等が挙げられる。
また、配位子にキノリノール骨格やジベンゾキノリノール骨格を有する金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。
その他、メタルフリー若しくはメタルフタロシアニン、又はそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。また、発光層の材料として例示したジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることができるし、正孔注入層、正孔輸送層と同様にn型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
また、これらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
本発明に用いられる電子輸送層においては、電子輸送層にドープ材をゲスト材料としてドープして、n性の高い(電子リッチ)電子輸送層を形成してもよい。ドープ材としては、金属錯体やハロゲン化金属など金属化合物等のn型ドーパントが挙げられる。このような構成の電子輸送層の具体例としては、例えば、特開平4−297076号公報、同10−270172号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等の文献に記載されたものが挙げられる。
本発明の有機EL素子に用いられる、公知の好ましい電子輸送材料の具体例としては、以下の文献に記載の化合物等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
米国特許第6528187号明細書、米国特許第7230107号明細書、米国特許出願公開第2005/0025993号明細書、米国特許出願公開第2004/0036077号明細書、米国特許出願公開第2009/0115316号明細書、米国特許出願公開第2009/0101870号明細書、米国特許出願公開第2009/0179554号明細書、国際公開第2003/060956号、国際公開第2008/132085号、Appl. Phys. Lett. 75, 4 (1999)、Appl. Phys. Lett. 79, 449 (2001)、Appl. Phys. Lett. 81, 162 (2002)、Appl. Phys. Lett. 81, 162 (2002)、Appl. Phys. Lett. 79, 156 (2001)、米国特許第7964293号明細書、米国特許出願公開第2009/030202号明細書、国際公開第2004/080975号、国際公開第2004/063159号、国際公開第2005/085387号、国際公開第2006/067931号、国際公開第2007/086552号、国際公開第2008/114690号、国際公開第2009/069442号、国際公開第2009/066779号、国際公開第2009/054253号、国際公開第2011/086935号、国際公開第2010/150593号、国際公開第2010/047707号、EP2311826号、特開2010−251675号公報、特開2009−209133号公報、特開2009−124114号公報、特開2008−277810号公報、特開2006−156445号公報、特開2005−340122号公報、特開2003−45662号公報、特開2003−31367号公報、特開2003−282270号公報、国際公開第2012/115034号等である。
本発明におけるより好ましい電子輸送材料としては、少なくとも一つの窒素原子を含む芳香族複素環化合物が挙げられ、例えばピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、トリアジン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、アザジベンゾフラン誘導体、アザジベンゾチオフェン誘導体、カルバゾール誘導体、アザカルバゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体などが挙げられる。
電子輸送材料は単独で用いてもよく、また複数種を併用して用いてもよい。
《正孔阻止層》
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有する層であり、好ましくは電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が小さい材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
また、前述する電子輸送層の構成を必要に応じて、正孔阻止層として用いることができる。
本発明の有機EL素子に設ける正孔阻止層は、発光層の陰極側に隣接して設けられることが好ましい。
本発明において正孔阻止層の層厚としては、好ましくは3〜100nmの範囲であり、更に好ましくは5〜30nmの範囲である。
正孔阻止層に用いられる材料としては、前述の電子輸送層に用いられる材料が好ましく用いられ、また、前述のホスト化合物として用いられる材料も正孔阻止層に好ましく用いられる。
《電子注入層》
本発明における電子注入層(「陰極バッファー層」ともいう)とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために陰極と発光層との間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されている。
本発明において電子注入層は必要に応じて設け、上記のように陰極と発光層との間、又は陰極と電子輸送層との間に存在させてもよい。
電子注入層はごく薄い膜であることが好ましく、素材にもよるがその層厚は0.1〜5nmの範囲が好ましい。また構成材料が断続的に存在する不均一な層(膜)であってもよい。
電子注入層は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、電子注入層に好ましく用いられる材料の具体例としては、ストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム等に代表されるアルカリ金属化合物、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム等に代表されるアルカリ土類金属化合物、酸化アルミニウムに代表される金属酸化物、8−ヒドロキシキノリネートリチウム(Liq)等に代表される金属錯体等が挙げられる。また、前述の電子輸送材料を用いることも可能である。
また、上記の電子注入層に用いられる材料は単独で用いてもよく、複数種を併用して用いてもよい。
《正孔輸送層》
本発明において正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する材料からなり、陽極より注入された正孔を発光層に伝達する機能を有していればよい。
本発明において正孔輸送層の総層厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μmの範囲であり、より好ましくは2〜500nmであり、さらに好ましくは5〜200nmである。
正孔輸送層に用いられる材料(以下、正孔輸送材料という)としては、正孔の注入性又は輸送性、電子の障壁性のいずれかを有していればよく、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
例えば、ポルフィリン誘導体、フタロシアニン誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、トリアリールアミン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、イソインドール誘導体、アントラセンやナフタレン等のアセン系誘導体、フルオレン誘導体、フルオレノン誘導体、及びポリビニルカルバゾール、芳香族アミンを主鎖又は側鎖に導入した高分子材料又はオリゴマー、ポリシラン、導電性ポリマー又はオリゴマー(例えばPEDOT/PSS、アニリン系共重合体、ポリアニリン、ポリチオフェン等)等が挙げられる。
トリアリールアミン誘導体としては、α−NPD(4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル)に代表されるベンジジン型や、MTDATAに代表されるスターバースト型、トリアリールアミン連結コア部にフルオレンやアントラセンを有する化合物等が挙げられる。
また、特表2003−519432号公報や特開2006−135145号公報等に記載されているようなヘキサアザトリフェニレン誘導体も同様に正孔輸送材料として用いることができる。
さらに不純物をドープしたp性の高い正孔輸送層を用いることもできる。その例としては、特開平4−297076号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報の各公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。
また、特開平11−251067号公報、J.Huang et.al.著文献(Applied Physics Letters 80(2002),p.139)に記載されているような、いわゆるp型正孔輸送材料やp型−Si、p型−SiC等の無機化合物を用いることもできる。さらにIr(ppy)に代表されるような中心金属にIrやPtを有するオルトメタル化有機金属錯体も好ましく用いられる。
正孔輸送材料としては、上記のものを使用することができるが、トリアリールアミン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、アザトリフェニレン誘導体、有機金属錯体、芳香族アミンを主鎖又は側鎖に導入した高分子材料又はオリゴマー等が好ましく用いられる。
本発明の有機EL素子に用いられる、公知の好ましい正孔輸送材料の具体例としては、上記で挙げた文献の他、以下の文献に記載の化合物等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
例えば、Appl.Phys.Lett.69,2160(1996)、J.Lumin.72−74,985(1997)、Appl.Phys.Lett.78,673(2001)、Appl.Phys.Lett.90,183503(2007)、Appl.Phys.Lett.51,913(1987)、Synth.Met.87,171(1997)、Synth.Met.91,209(1997)、Synth.Met.111,421(2000)、SID Symposium Digest,37,923(2006)、J.Mater.Chem.3,319(1993)、Adv.Mater.6,677(1994)、Chem.Mater.15,3148(2003)、米国特許出願公開第2003/0162053号明細書、米国特許出願公開第2002/0158242号明細書、米国特許出願公開第2006/0240279号明細書、米国特許出願公開第2008/0220265号明細書、米国特許第5061569号明細書、国際公開第2007/002683号、国際公開第2009/018009号、EP650955、米国特許出願公開第2008/0124572号明細書、米国特許出願公開第2007/0278938号明細書、米国特許出願公開第2008/0106190号明細書、米国特許出願公開第2008/0018221号明細書、国際公開第2012/115034号、特表2003−519432号公報、特開2006−135145号公報、米国特許出願番号13/585981号等である。
正孔輸送材料は単独で用いてもよく、また複数種を併用して用いてもよい。
《電子阻止層》
電子阻止層とは、広い意味では正孔輸送層の機能を有する層であり、好ましくは正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が小さい材料からなり、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
また、前述する正孔輸送層の構成を必要に応じて、本発明における電子阻止層として用いることができる。
本発明の有機EL素子に設ける電子阻止層は、発光層の陽極側に隣接して設けられることが好ましい。
本発明において電子阻止層の層厚としては、好ましくは3〜100nmの範囲内であり、更に好ましくは5〜30nmの範囲内である。
電子阻止層に用いられる材料としては、前述の正孔輸送層に用いられる材料が好ましく用いられ、また、前述のホスト化合物も電子阻止層に好ましく用いられる。
《正孔注入層》
本発明における正孔注入層(「陽極バッファー層」ともいう)とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために陽極と発光層との間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されている。
本発明において正孔注入層は必要に応じて設け、上記のように陽極と発光層又は陽極と正孔輸送層との間に存在させてもよい。
正孔注入層は、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、正孔注入層に用いられる材料としては、例えば前述の正孔輸送層に用いられる材料等が挙げられる。
中でも銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニン誘導体、特表2003−519432号公報や特開2006−135145号公報等に記載されているようなヘキサアザトリフェニレン誘導体、酸化バナジウムに代表される金属酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム錯体等に代表されるオルトメタル化錯体、トリアリールアミン誘導体等が好ましい。
前述の正孔注入層に用いられる材料は単独で用いてもよく、また複数種を併用して用いてもよい。
《添加物》
前述した本発明における有機層は、更に他の添加物が含まれていてもよい。
添加物としては、例えば臭素、ヨウ素及び塩素等のハロゲン元素やハロゲン化化合物、Pd、Ca、Na等のアルカリ金属やアルカリ土類金属、遷移金属の化合物や錯体、塩等が挙げられる。
添加物の含有量は、任意に決定することができるが、含有される層の全質量%に対して1000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは500ppm以下であり、さらに好ましくは50ppm以下である。
ただし、電子や正孔の輸送性を向上させる目的や、励起子のエネルギー移動を有利にするための目的などによってはこの範囲内ではない。
《有機層の形成方法》
本発明に係る有機層(正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層等)の形成方法について説明する。
本発明に係る有機層の形成方法は、特に制限はなく、従来公知の例えば真空蒸着法、湿式法(ウェットプロセスともいう)等による形成方法を用いることができる。
湿式法としては、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、印刷法、ダイコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、カーテンコート法、LB法(ラングミュア−ブロジェット法)等があるが、均質な薄膜が得られやすく、かつ高生産性の点から、ダイコート法、ロールコート法、インクジェット法、スプレーコート法などのロール・to・ロール方式適性の高い方法が好ましい。
本発明に用いられる有機EL材料を溶解又は分散する液媒体としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル等の脂肪酸エステル類、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素類、シクロヘキサン、デカリン、ドデカン等の脂肪族炭化水素類、DMF、DMSO等の有機溶媒を用いることができる。
また、分散方法としては、超音波、高剪断力分散やメディア分散等の分散方法により分散することができる。
更に層ごとに異なる成膜法を適用してもよい。成膜に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度50〜450℃、真空度10−6〜10−2Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−50〜300℃、層(膜)厚0.1nm〜5μm、好ましくは5〜200nmの範囲内で適宜選ぶことが望ましい。
本発明に係る有機層の形成は、一回の真空引きで一貫して正孔注入層から陰極まで作製するのが好ましいが、途中で取り出して異なる成膜法を施しても構わない。その際は作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
《陽極》
有機EL素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上、好ましくは4.5eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としては、Au等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。
陽極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、又はパターン精度を余り必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。
又は、有機導電性化合物のように塗布可能な物質を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等湿式成膜法を用いることもできる。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極としてのシート抵抗は数百Ω/sq.以下が好ましい。
陽極の膜厚は材料にもよるが、通常10nm〜1μm、好ましくは10〜200nmの範囲内で選ばれる。
《陰極》
陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。
陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させることで作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/sq.以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。
なお、発光した光を透過させるため、有機EL素子の陽極又は陰極のいずれか一方が透明又は半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
また、陰極に上記金属を1〜20nmの膜厚で作製した後に、陽極の説明で挙げる導電性透明材料をその上に作製することで、透明又は半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
《支持基板》
本発明の有機EL素子に用いることのできる支持基板(以下、基体、基板、基材、支持体等ともいう。)としては、ガラス、プラスチック等の種類には特に限定はなく、また透明であっても不透明であってもよい。支持基板側から光を取り出す場合には、支持基板は透明であることが好ましい。好ましく用いられる透明な支持基板としては、ガラス、石英、透明樹脂フィルムを挙げることができる。特に好ましい支持基板は、有機EL素子にフレキシブル性を与えることが可能な樹脂フィルムである。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類又はそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリル又はポリアリレート類、アートン(商品名JSR社製)又はアペル(商品名三井化学社製)といったシクロオレフィン系樹脂等を挙げられる。
樹脂フィルムの表面には、無機物、有機物の被膜又はその両者のハイブリッド被膜が形成されていてもよく、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が0.01g/(m・24h)以下のバリアー性フィルムであることが好ましく、更には、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が、1×10−3mL/(m・24h・atm)以下、水蒸気透過度が、1×10−5g/(m・24h)以下の高バリアー性フィルムであることが好ましい。
バリアー膜を形成する材料としては、水分や酸素等素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素等を用いることができる。更に該膜の脆弱性を改良するために、これら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と有機層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。
バリアー膜の形成方法については特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができるが、特開2004−68143号公報に記載されているような大気圧プラズマ重合法によるものが特に好ましい。
不透明な支持基板としては、例えば、アルミ、ステンレス等の金属板、フィルムや不透明樹脂基板、セラミック製の基板等が挙げられる。
本発明の有機EL素子の発光の室温(25℃)における外部取り出し量子効率は、1%以上であることが好ましく、5%以上であるとより好ましい。
ここで、外部取り出し量子効率(%)=有機EL素子外部に発光した光子数/有機EL素子に流した電子数×100である。
また、カラーフィルター等の色相改良フィルター等を併用しても、有機EL素子からの発光色を、蛍光体を用いて多色へ変換する色変換フィルターを併用してもよい。
《その他の構成》
本発明に用いることができる封止手段、保護膜、保護板、光取り出し効率を向上させる技術及び集光シートとしては、特開2014−152151号公報等に記載の公知の技術を用いることができる。
《用途》
本発明の有機EL素子は、電子機器、例えば、表示装置、ディスプレイ、各種発光装置として用いることができる。
発光装置として、例えば、照明装置(家庭用照明、車内照明)、時計や液晶用バックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるがこれに限定するものではないが、特に液晶表示装置のバックライト、照明用光源としての用途に有効に用いることができる。
本発明の有機EL素子においては、必要に応じ成膜時にメタルマスクやインクジェットプリンティング法等でパターニングを施してもよい。パターニングする場合は、電極のみをパターニングしてもよいし、電極と発光層をパターニングしてもよいし、素子全層をパターニングしてもよく、素子の作製においては、従来公知の方法を用いることができる。
[表示装置]
本発明の有機EL素子を具備する表示装置は単色でも多色でもよいが、ここでは多色表示装置について説明する。
多色表示装置の場合は発光層形成時のみシャドーマスクを設け、一面に蒸着法、キャスト法、スピンコート法、インクジェット法又は印刷法等で膜を形成できる。
発光層のみパターニングを行う場合、その方法に限定はないが、好ましくは蒸着法、インクジェット法、スピンコート法及び印刷法である。
表示装置に具備される有機EL素子の構成は、必要に応じて上記の有機EL素子の構成例の中から選択される。
また、有機EL素子の製造方法は、上記の本発明の有機EL素子の製造の一態様に示したとおりである。
このようにして得られた多色表示装置に直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を−の極性として電圧2〜40V程度を印加すると発光が観測できる。また、逆の極性で電圧を印加しても電流は流れずに発光は全く生じない。更に交流電圧を印加する場合には、陽極が+、陰極が−の状態になったときのみ発光する。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
多色表示装置は、表示デバイス、ディスプレイ又は各種発光光源として用いることができる。表示デバイス又はディスプレイにおいて、青、赤及び緑発光の3種の有機EL素子を用いることによりフルカラーの表示が可能となる。
表示デバイス又はディスプレイとしては、テレビ、パソコン、モバイル機器、AV機器、文字放送表示及び自動車内の情報表示等が挙げられる。特に静止画像や動画像を再生する表示装置として使用してもよく、動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は単純マトリクス(パッシブマトリクス)方式でもアクティブマトリクス方式でもどちらでもよい。
以下、本発明の有機EL素子を有する表示装置の一例を図面に基づいて説明する。
図3は有機EL素子から構成される表示装置の一例を示した模式図である。有機EL素子の発光により画像情報の表示を行う、例えば、携帯電話等のディスプレイの模式図である。
ディスプレイ1は複数の画素を有する表示部A、画像情報に基づいて表示部Aの画像走査を行う制御部B、表示部Aと制御部Bとを電気的に接続する配線部C等を有する。
制御部Bは表示部Aと配線部Cを介して電気的に接続され、複数の画素それぞれに外部からの画像情報に基づいて走査信号と画像データ信号を送り、走査信号により走査線ごとの画素が画像データ信号に応じて順次発光して画像走査を行って画像情報を表示部Aに表示する。
図4はアクティブマトリクス方式による表示装置の模式図である。
表示部Aは基板上に、複数の走査線5及びデータ線6を含む配線部Cと複数の画素3等とを有する。表示部Aの主要な部材の説明を以下に行う。
図4においては、画素3の発光した光が白矢印方向(下方向)へ取り出される場合を示している。
配線部の走査線5及び複数のデータ線6はそれぞれ導電材料からなり、走査線5とデータ線6は格子状に直交して、直交する位置で画素3に接続している(詳細は図示していない)。
画素3は走査線5から走査信号が印加されると、データ線6から画像データ信号を受け取り、受け取った画像データに応じて発光する。
発光の色が赤領域の画素、緑領域の画素、青領域の画素を適宜同一基板上に並置することによって、フルカラー表示が可能となる。
次に、画素の発光プロセスを説明する。図5は画素の回路を示した概略図である。
画素は、有機EL素子10、スイッチングトランジスタ11、駆動トランジスタ12、コンデンサー13等を備えている。複数の画素に有機EL素子10として、赤色、緑色及び青色発光の有機EL素子を用い、これらを同一基板上に並置することでフルカラー表示を行うことができる。
図5において、制御部Bからデータ線6を介してスイッチングトランジスタ11のドレインに画像データ信号が印加される。そして、制御部Bから走査線5を介してスイッチングトランジスタ11のゲートに走査信号が印加されると、スイッチングトランジスタ11の駆動がオンし、ドレインに印加された画像データ信号がコンデンサー13と駆動トランジスタ12のゲートに伝達される。
画像データ信号の伝達により、コンデンサー13が画像データ信号の電位に応じて充電されるとともに、駆動トランジスタ12の駆動がオンする。駆動トランジスタ12は、ドレインが電源ライン7に接続され、ソースが有機EL素子10の電極に接続されており、ゲートに印加された画像データ信号の電位に応じて電源ライン7から有機EL素子10に電流が供給される。
制御部Bの順次走査により走査信号が次の走査線5に移ると、スイッチングトランジスタ11の駆動がオフする。しかし、スイッチングトランジスタ11の駆動がオフしてもコンデンサー13は充電された画像データ信号の電位を保持するので、駆動トランジスタ12の駆動はオン状態が保たれて、次の走査信号の印加が行われるまで有機EL素子10の発光が継続する。順次走査により次に走査信号が印加されたとき、走査信号に同期した次の画像データ信号の電位に応じて駆動トランジスタ12が駆動して有機EL素子10が発光する。
すなわち、有機EL素子10の発光は、複数の画素それぞれの有機EL素子10に対して、アクティブ素子であるスイッチングトランジスタ11と駆動トランジスタ12を設けて、複数の画素3それぞれの有機EL素子10の発光を行っている。このような発光方法をアクティブマトリクス方式と呼んでいる。
ここで、有機EL素子10の発光は複数の階調電位を持つ多値の画像データ信号による複数の階調の発光でもよいし、2値の画像データ信号による所定の発光量のオン、オフでもよい。また、コンデンサー13の電位の保持は次の走査信号の印加まで継続して保持してもよいし、次の走査信号が印加される直前に放電させてもよい。
本発明においては、上述したアクティブマトリクス方式に限らず、走査信号が走査されたときのみデータ信号に応じて有機EL素子を発光させるパッシブマトリクス方式の発光駆動でもよい。
図6は、パッシブマトリクス方式による表示装置の模式図である。図6において、複数の走査線5と複数の画像データ線6が画素3を挟んで対向して格子状に設けられている。
順次走査により走査線5の走査信号が印加されたとき、印加された走査線5に接続している画素3が画像データ信号に応じて発光する。
パッシブマトリクス方式では画素3にアクティブ素子が無く、製造コストの低減が計れる。
本発明の有機EL素子を用いることにより、発光の初期劣化が抑えられ、発光効率が高く、発光寿命の長い表示装置が得られる。
[照明装置]
本発明の有機EL素子は、照明装置に用いることもできる。
また、本発明に用いられる発光ドーパントは、照明装置として、実質的に白色の発光を生じる有機EL素子に適用できる。例えば、複数の発光材料を用いる場合、複数の発光色を同時に発光させて、混色することで白色発光を得ることができる。複数の発光色の組み合わせとしては、赤色、緑色及び青色の3原色の三つの発光極大波長を含有させたものでもよいし、青色と黄色、青緑と橙色等の補色の関係を利用した二つの発光極大波長を含有したものでもよい。
また、本発明の有機EL素子の形成方法は、発光層、正孔輸送層又は電子輸送層等の形成時のみマスクを設け、マスクにより塗り分ける等単純に配置するだけでよい。他層は共通であるのでマスク等のパターニングは不要であり、一面に蒸着法、キャスト法、スピンコート法、インクジェット法及び印刷法等で、例えば、電極膜を形成でき、生産性も向上する。
この方法によれば、複数色の発光素子をアレー状に並列配置した白色有機EL装置と異なり、素子自体が白色発光である。
本発明の有機EL素子や本発明で用いられる化合物の発光する色は、「新編色彩科学ハンドブック」(日本色彩学会編、東京大学出版会、1985)の108頁の図7.16において、分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタ(株)製)で測定した結果をCIE色度座標に当てはめたときの色で決定される。
また、本発明の有機EL素子が白色素子の場合には、白色とは、2度視野角正面輝度を上記方法により測定した際に、1000cd/mでのCIE1931表色系における色度がX=0.33±0.07、Y=0.33±0.1の領域内にあることをいう。
本発明の有機EL素子は、特開2014−152151号公報等に記載の公知の技術を用いて照明装置に具備することができる。
具体的には、本発明の有機EL素子の非発光面をガラスケースで覆い、厚さ300μmのガラス基板を封止用基板として用いて、周囲にシール材として、エポキシ系光硬化型接着剤(東亞合成社製ラックストラックLC0629B)を適用し、これを陰極上に重ねて透明支持基板と密着させ、ガラス基板側からUV光を照射して、硬化させて、封止し、図7及び図8に示すような照明装置を形成することができる。
図7は、照明装置の概略図を示し、本発明の有機EL素子(照明装置内の有機EL素子101)はガラスカバー102で覆われている(なお、ガラスカバーでの封止作業は、照明装置内の有機EL素子101を大気に接触させることなく窒素雰囲気下のグローブボックス(純度99.999%以上の高純度窒素ガスの雰囲気下)で行う。)。
図8は、照明装置の断面図を示し、図8において、105は陰極、106は有機層、107は透明電極付きガラス基板を示す。なお、ガラスカバー102内には窒素ガス108が充填され、捕水剤109が設けられている。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
実施例及び比較例で用いた化合物の構造式を以下に示す。
Figure 0006774432
[実施例1]
<π共役系化合物の電子密度の割合の算出方法>
最初に、対象とする分子の基底状態の安定構造を、Gaussian09を用いて、汎関数をB3LYP、基底関数を6−31G(d)として計算した。次に、キーワードとして#pとpop=regularを使用することにより、HOMOとLUMOの分子軌道を出力した。そこで得られた分子軌道のHOMO部位とLUMO部位の全電子密度分布をそれぞれ解析した。
HOMOの電子密度の割合は、分子軌道計算により算出されるHOMOの全電子密度分布を100%としたときの、HOMOの電子密度分布の割合として算出した。また、LUMOの電子密度の割合は、分子軌道計算により算出されるLUMOの全電子密度分布を100%としたときの、LUMOの電子密度分布の割合として算出した。
<電子密度の割合の算出結果>
実施例で使用した本発明に係るπ共役系化合物と、比較例の化合物について電子密度の割合を算出した。以下では、π共役系化合物については、各一般式(2)〜(9)で代表例を1つ挙げて結果を説明する。
また、電子密度分布を計算した例として、ホスト化合物H2−12におけるHOMOの電子密度分布を図9A、LUMOの電子密度分布を図9Bに示す。また、ホスト化合物H3−11におけるHOMOの電子密度分布を図10A、LUMOの電子密度分布を図10Bに示す。
(一般式(2):ホスト化合物H2−12)
一般式(2)で表される構造を有する化合物であるホスト化合物H2−12は、計算結果より、ジベンゾフラン基におけるHOMOの電子密度の割合が91%であることが分かった(図9A)。また、ジアザジベンゾフラン基におけるLUMOの電子密度の割合が93%であることが分かった(図9B)。
(一般式(3):ホスト化合物H3−11)
一般式(3)で表される構造を有する化合物であるホスト化合物H3−11は、計算結果より、カルバゾール基におけるHOMOの電子密度の割合が85%であることが分かった(図10A)。また、フォスフィンドール基におけるLUMOの電子密度の割合が91%であることが分かった(図10B)。
(一般式(4):ホスト化合物H4−4)
一般式(4)で表される構造を有する化合物であるホスト化合物H4−4は、計算結果より、カルバゾール基におけるHOMOの電子密度の割合が88%であることが分かった。また、ジフェニルトリアジン基におけるLUMOの電子密度の割合が93%であることが分かった。
(一般式(5):ホスト化合物H5−9)
一般式(5)で表される構造を有する化合物であるホスト化合物H5−9は、計算結果より、カルバゾール基におけるHOMOの電子密度の割合が84%であることが分かった。また、ジフェニルトリアジン基におけるLUMOの電子密度の割合が84%であることが分かった。
(一般式(6):ホスト化合物H6−3)
一般式(6)で表される構造を有する化合物であるホスト化合物H6−3は、計算結果より、カルバゾール基におけるHOMOの電子密度の割合が87%であることが分かった。また、ジベンゾフラン−トリアジン基におけるLUMOの電子密度の割合が90%であることが分かった。
(一般式(7):ホスト化合物H7−12)
一般式(7)で表される構造を有する化合物であるホスト化合物H7−12は、計算結果より、フェニルカルバゾール基におけるHOMOの電子密度の割合が98%であることが分かった。また、ジシアノ置換ベンゼン基におけるLUMOの電子密度の割合が81%であることが分かった。
(一般式(8):ホスト化合物H8−26)
一般式(8)で表される構造を有する化合物であるホスト化合物H8−26は、計算結果より、カルバゾール基におけるHOMOの電子密度の割合が88%であることが分かった。また、カルバゾール基におけるLUMOの電子密度の割合が98%であることが分かった。
(一般式(9):ホスト化合物H9−10)
一般式(9)で表される構造を有する化合物であるホスト化合物H9−10は、計算結果より、カルバゾール基におけるHOMOの電子密度の割合が89%であることが分かった。また、ジシアノ置換ベンゼン基におけるLUMOの電子密度の割合が91%であることが分かった。
(結果)
分子軌道計算によってHOMOとLUMOが完全に分離しつつ、なおかつ電子遷移が可能な程度に物理的に近接する分子構造である場合、HOMOとLUMO間の電子遷移が、スルースペース相互作用で起こる。
以上で説明した、本発明に係るπ共役系化合物は、分子内にHOMOの電子密度の割合が80%以上である部分と、LUMOの電子密度の割合が80%以上である部分があることが分かり、それぞれHOMOとLUMOに分離していることが分かった。また、電子遷移が可能な程度に物理的に近接する分子構造であることが分かった。
よって、本発明に係るπ共役系化合物は、HOMOとLUMO間の電子遷移が、同一分子内のスルースペース相互作用で起こる条件を満たしていることが分かった。
また、その他の実施例で用いるπ共役系化合物や、上述したπ共役系化合物の例示化合物について、同様に計算を行ったところ、それぞれ、分子内にHOMOの電子密度の割合が80%以上である部分と、LUMOの電子密度の割合が80%以上である部分があり、かつ電子遷移が可能な程度に物理的に近接する分子構造であることが分かった。
これに対し、比較例の化合物である比較化合物1、比較化合物2−1、比較化合物2−2及び比較化合物3について、同様に計算を行ったところ、本発明に係るπ共役系化合物とは異なり、分子内で電子遷移が可能な程度に物理的に近接する分子構造ではなかった。つまり、HOMOとLUMO間の電子遷移が、同一分子内のスルースペース相互作用で起こる条件を満たしていないことが分かった。
[実施例2]
<有機EL素子1−1の作製>
50mm×50mm、厚さ0.7mmのガラス基板上に、陽極としてITO(インジウム・スズ酸化物)を150nmの厚さで成膜し、パターニングを行った後、このITO透明電極を付けた透明基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った後、この透明基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。
真空蒸着装置内の蒸着用るつぼの各々に、各層の構成材料を、各々素子作製に最適の量を充填した。蒸着用るつぼはモリブデン製又はタングステン製の抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
真空度1×10−4Paまで減圧した後、HAT−CN(1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル)の入った蒸着用るつぼに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒でITO透明電極上に蒸着し、層厚10nmの正孔注入輸送層を形成した。
次いで、α−NPD(4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル)を蒸着速度0.1nm/秒で前記正孔注入層上に蒸着し、層厚40nmの正孔輸送層を形成した。ホスト化合物として比較化合物1、発光ドーパントとして例示化合物(D−37)を、それぞれ85%、15%の体積%になるように蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着し、層厚30nmの発光層を形成した。
その後、BCP(2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン)を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚30nmの電子輸送層を形成した。
さらに、フッ化リチウムを膜厚0.5nmで形成した後に、アルミニウム100nmを蒸着して陰極を形成した。
上記素子の非発光面側を、純度99.999%以上の高純度窒素ガスの雰囲気下で、缶状ガラスケースで覆い、電極取り出し配線を設置して、有機EL素子1−1を作製した。
<有機EL素子1−2〜1−32の作製>
ホスト化合物を表1に示すように変えた以外は有機EL素子1−1と同様の方法で有機EL素子1−2〜1−32を作製した。
<励起子安定性評価用の発光層単層膜1−1の作製>
石英基板上に、ホスト化合物として比較化合物1、発光ドーパントとして例示化合物(D−37)を用いて共蒸着膜を作製(それぞれ蒸着速度0.1nm/秒、0.010nm/秒、40nm)し、非発光面をガラスケースで覆い、厚さ300μmのガラス基板を封止用基板として用いて、周囲にシール材として、エポキシ系光硬化型接着剤(東亞合成社製ラックストラックLC0629B)を適用し、これを陰極上に重ねて透明支持基板と密着させ、ガラス基板側からUV光を照射して、硬化させて、封止した。これらの操作により、発光層単層膜1−1を形成した。
<励起子安定性評価用の発光層単層膜1−2〜1−32の作製>
ホスト化合物を、比較化合物1から表1に示す化合物に変えた以外は発光層単層膜1−1と同様の方法で発光層単層膜1−2〜1−32を形成した。
なお、発光層単層膜1−1〜1−32は、それぞれ有機EL素子の1−1〜1−32に対応しており、有機EL素子の1−1〜1−32の発光層における励起子安定性の評価を行うために、発光層の単層膜を別途形成させたものである。
<評価>
以下のように、励起子安定性、発光効率及び素子寿命を評価した。評価結果は、表1に示す。なお、励起子安定性は励起子安定性評価用の発光層単層膜、発光効率及び素子寿命は有機EL素子にて評価を行った。
(1.励起子安定性)
励起子安定性評価用の発光層単層膜に、UV−LED(5W/cm)光源を20分照射した。なおこの時の光源とサンプルの距離は15mmとした。UV照射後のサンプルに2.5mA/cmの定電流を印加し、発光直後の発光輝度を測定し、下記式を用いて輝度残存率を算出した。なお初期発光輝度は発光効率評価時の発光輝度(L0)である。
励起子安定性(%)=(UV20分後発光輝度)/(初期発光輝度(L0))×100
表1には有機EL素子1−3に対応する発光層を100とする相対値で表した。輝度残存率の値が大きいほうが励起子安定性に優れていることを表す。また、励起子安定性が高いということは、発光層の初期劣化が抑えられていることを表す。
(2.発光効率)
有機EL素子を室温(約23℃)、2.5mA/cmの定電流条件下による点灯を行い、点灯開始直後の発光輝度[cd/m]を測定することにより、外部取り出し量子効率(η)(発光効率)を算出した。ここで、発光輝度の測定はCS−1000(コニカミノルタ社製)を用いて行い、外部取り出し量子効率は、有機EL素子1−3を100とする相対値で表した。
(3.素子寿命)
各有機EL素子を0.65mA/cmで定電流駆動して、輝度が初期輝度の半分になる時間を求め、これを素子寿命の尺度として評価した。なお、素子寿命は有機EL素子1−3を100とする相対値で表した。
Figure 0006774432
以上のように、実施例の有機EL素子は、発光層の励起子安定性が高く、つまり初期劣化が抑えられることが分かった。さらに、実施例の有機EL素子は、発光効率が高く、素子寿命が長いことが分かった。
これらに対して、比較例の有機EL素子は、いずれの項目についても劣るものであった。有機EL素子1−1に係る比較化合物1は、一般的な青色発光性のTADF化合物であり、分子内にHOMO部位とLUMO部位を局在化することができる分子構造である。また、有機EL素子1−2に係る比較化合物2−1及び比較化合物2−2は、2種のホストを共存させて、2分子間で電荷移動錯体を形成することで、TADF現象が起きるものである。また、有機EL素子1−3に係る比較化合物3は、これらの化合物とは異なり空間電子遷移が起きないホスト化合物である。これらの比較化合物1〜3は、実施例1で示したように、HOMOとLUMO間の電子遷移が、同一分子内のスルースペース相互作用で起こる条件を満たしていないため、本発明についての効果が得られかったものと考えられる。
[実施例3]
<有機EL素子2−1〜2−38の作製>
ホスト化合物を表2に示す化合物とし、発光ドーパントを例示化合物(D−37)から例示化合物(D−63)に変更した以外は有機EL素子1−1と同様の方法で有機EL素子2−1〜2−38を作製した。なお、例示化合物(D−63)は、前記一般式(1)の環Zが、イミダゾール環である。
<励起子安定性評価用の発光層単層膜2−1〜2−38の作製>
ホスト化合物を表2に示す化合物とし、発光ドーパントを例示化合物(D−37)から例示化合物(D−63)に変更した以外は発光層単層膜1−1と同様の方法で、発光層単層膜2−1〜2−38を作製した。
<評価>
実施例2と同様の方法で、励起子安定性、発光効率及び素子寿命を評価した。評価結果は、表2に示す。なお、励起子安定性、発光効率及び素子寿命は、それぞれ有機EL素子2−3を100とする相対値で表した。
Figure 0006774432
以上のように、実施例の有機EL素子は、発光層の励起子安定性が高く、つまり初期劣化が抑えられることが分かった。さらに、実施例の有機EL素子は、発光効率が高く、素子寿命が長いことが分かった。これらに対して、比較例の有機EL素子は、いずれの項目についても劣るものであった。
[実施例4]
<有機EL素子3−1〜3−7の作製>
ホスト化合物を表3に示す化合物とし、発光ドーパントを例示化合物(D−37)から例示化合物(D−15)に変更した以外は有機EL素子1−1と同様の方法で有機EL素子3−1〜3−7を作製した。なお、例示化合物(D−15)は、前記一般式(1)の環Zが、ピリジン環である。
<励起子安定性評価用の発光層単層膜3−1〜3−7の作製>
ホスト化合物を表3に示す化合物とし、発光ドーパントを例示化合物(D−37)から例示化合物(D−15)に変更した以外は発光層単層膜1−1と同様の方法で、発光層単層膜3−1〜3−7を作製した。
<評価>
実施例1と同様の方法で、励起子安定性、発光効率及び素子寿命を評価した。評価結果は、表3に示す。なお、励起子安定性、発光効率及び素子寿命は、それぞれ有機EL素子3−3を100とする相対値で表した。
Figure 0006774432
以上のように、実施例の有機EL素子は、発光層の励起子安定性が高く、つまり初期劣化が抑えられることが分かった。さらに、実施例の有機EL素子は、発光効率が高く、素子寿命が長いことが分かった。これらに対して、比較例の有機EL素子は、いずれの項目についても劣るものであった。
[実施例5]
<有機EL素子4−1〜4−7の作製>
ホスト化合物を表4に示す化合物とし、発光ドーパントを例示化合物(D−37)から例示化合物(D−2)に変更した以外は有機EL素子1−1と同様の方法で有機EL素子4−1〜4−7を作製した。なお、例示化合物(D−2)は、前記一般式(1)の環Zが、イソキノリン環である。
<励起子安定性評価用の発光層単層膜4−1〜4−7の作製>
ホスト化合物を表4に示す化合物とし、発光ドーパントを例示化合物(D−37)から例示化合物(D−2)に変更した以外は発光層単層膜1−1と同様の方法で、発光層単層膜4−1〜4−7を作製した。
<評価>
実施例1と同様の方法で、励起子安定性、発光効率及び素子寿命を評価した。評価結果は、表4に示す。なお、励起子安定性、発光効率及び素子寿命は、それぞれ有機EL素子4−3を100とする相対値で表した。
Figure 0006774432
以上のように、実施例の有機EL素子は、発光層の励起子安定性が高く、つまり初期劣化が抑えられることが分かった。さらに、実施例の有機EL素子は、発光効率が高く、素子寿命が長いことが分かった。これらに対して、比較例の有機EL素子は、いずれの項目についても劣るものであった。
[実施例6]
<有機EL素子5−1〜5−7の作製>
ホスト化合物を表5に示す化合物とし、発光ドーパントを例示化合物(D−37)から例示化合物(D−64)に変更した以外は有機EL素子1−1と同様の方法で有機EL素子5−1〜5−7を作製した。なお、例示化合物(D−64)は、前記一般式(1)の環Zが、トリアゾール環である。
<励起子安定性評価用の発光層単層膜5−1〜5−7の作製>
ホスト化合物を表5に示す化合物とし、発光ドーパントを例示化合物(D−37)から例示化合物(D−64)に変更した以外は発光層単層膜1−1と同様の方法で、発光層単層膜5−1〜5−7を作製した。
<評価>
実施例1と同様の方法で、励起子安定性、発光効率及び素子寿命を評価した。評価結果は、表5に示す。なお、励起子安定性、発光効率及び素子寿命は、それぞれ有機EL素子5−3を100とする相対値で表した。
Figure 0006774432
以上のように、実施例の有機EL素子は、発光層の励起子安定性が高く、つまり初期劣化が抑えられることが分かった。さらに、実施例の有機EL素子は、発光効率が高く、素子寿命が長いことが分かった。これらに対して、比較例の有機EL素子は、いずれの項目についても劣るものであった。
[実施例7]
<有機EL素子6−1〜6−7の作製>
ホスト化合物を表6に示す化合物とし、発光ドーパントを例示化合物(D−37)から例示化合物(D−50)に変更した以外は有機EL素子1−1と同様の方法で有機EL素子6−1〜6−7を作製した。なお、例示化合物(D−50)は、前記一般式(1)の環Zが、ピラゾール環である。
<励起子安定性評価用の発光層単層膜6−1〜6−7の作製>
ホスト化合物を表6に示す化合物とし、発光ドーパントを例示化合物(D−37)から例示化合物(D−50)に変更した以外は発光層単層膜1−1と同様の方法で、発光層単層膜6−1〜6−7を作製した。
<評価>
実施例1と同様の方法で、励起子安定性、発光効率及び素子寿命を評価した。評価結果は、表6に示す。なお、励起子安定性、発光効率及び素子寿命は、それぞれ有機EL素子6−3を100とする相対値で表した。
Figure 0006774432
以上のように、実施例の有機EL素子は、発光層の励起子安定性が高く、つまり初期劣化が抑えられることが分かった。さらに、実施例の有機EL素子は、発光効率が高く、素子寿命が長いことが分かった。これらに対して、比較例の有機EL素子は、いずれの項目についても劣るものであった。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、初期劣化が抑えられ、発光効率が高く、かつ素子寿命が長いため、例えば、表示装置及び照明装置等に好適に利用することができる。
1 ディスプレイ
3 画素
5 走査線
6 データ線
7 電源ライン
10 有機EL素子
11 スイッチングトランジスタ
12 駆動トランジスタ
13 コンデンサー
101 照明装置内の有機EL素子
102 ガラスカバー
105 陰極
106 有機層
107 透明電極付きガラス基板
108 窒素ガス
109 捕水剤
A 表示部
B 制御部
C 配線部

Claims (7)

  1. 陽極と陰極の間に少なくとも1層の発光層を含む有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
    当該発光層の少なくとも1層が、π共役系化合物と、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物とを含有し、
    前記π共役系化合物が、HOMOとLUMOの間の電子遷移が、同一分子内のスルースペース相互作用で起こり、かつ、前記HOMO又は前記LUMOの少なくとも一方が局在化する部位にπ共役系芳香族環を有し、
    前記π共役系化合物として、下記一般式(3)で表される構造を有する化合物を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
    Figure 0006774432
    (上記一般式(1)において、MはIr、Pt、Rh又はOsを表す。A、A、B及びBは、各々炭素原子又は窒素原子を表す。環Zは、A及びAとともに形成される6員の芳香族炭化水素環、又は5員若しくは6員の芳香族複素環を表す。環Zは、B及びBとともに形成される5員又は6員の芳香族複素環を表す。環Z及び環Zは、置換基を有していてもよく、さらに置換基同士が結合して縮環構造を形成していてもよい。また、環Z及び環Zは、各々の配位子の置換基が互いに結合して、配位子同士が連結していてもよい。L′は、Mに配位したモノアニオン性の二座配位子を表す。m′は、0〜2の整数を表す。n′は、1〜3の整数を表す。m′+n′は、2又は3である。m′及びn′が2以上の場合、環Z及び環Zで表される配位子及びL′は、各々、同じでも異なっていてもよい。)
    Figure 0006774432
    (上記一般式(3)において、X 31 は、PR (=O)、SO 又はSOを表す。R 、R 31 〜R 38 は、各々独立に水素原子又は置換基を表す。式中のX 31 を含む三縮環式母核構造部分が、LUMOの電子密度の割合が80%以上である。R 31 、R 33 、R 36 及びR 38 の少なくとも一つは、下記一般式(3−A)で表される。
    Figure 0006774432
    上記一般式(3−A)において、Y 31 は、2価の連結基を表す。Z は、HOMOの電子密度の割合の合計が80%以上となる芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表す。p3は、0又は1の整数を表す。)
  2. 陽極と陰極の間に少なくとも1層の発光層を含む有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
    当該発光層の少なくとも1層が、π共役系化合物と、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物とを含有し、
    前記π共役系化合物が、HOMOとLUMOの間の電子遷移が、同一分子内のスルースペース相互作用で起こり、かつ、前記HOMO又は前記LUMOの少なくとも一方が局在化する部位にπ共役系芳香族環を有し、
    前記π共役系化合物として、下記一般式(4)で表される構造を有する化合物を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
    Figure 0006774432
    (上記一般式(1)において、MはIr、Pt、Rh又はOsを表す。A 、A 、B 及びB は、各々炭素原子又は窒素原子を表す。環Z は、A 及びA とともに形成される6員の芳香族炭化水素環、又は5員若しくは6員の芳香族複素環を表す。環Z は、B 及びB とともに形成される5員又は6員の芳香族複素環を表す。環Z 及び環Z は、置換基を有していてもよく、さらに置換基同士が結合して縮環構造を形成していてもよい。また、環Z 及び環Z は、各々の配位子の置換基が互いに結合して、配位子同士が連結していてもよい。L′は、Mに配位したモノアニオン性の二座配位子を表す。m′は、0〜2の整数を表す。n′は、1〜3の整数を表す。m′+n′は、2又は3である。m′及びn′が2以上の場合、環Z 及び環Z で表される配位子及びL′は、各々、同じでも異なっていてもよい。)
    Figure 0006774432
    (上記一般式(4)において、X41〜X45は、各々独立に窒素原子又はCReを表す。Reは、水素原子又は置換基を表す。L41は、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表す。R41は、少なくとも一つは、下記一般式(4−A)で表される。
    Figure 0006774432
    上記一般式(4−A)において、Y41は2価の連結基を表す。Zは、HOMOの電子密度の割合の合計が80%以上となる芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表す。p4は、0又は1の整数を表す。)
  3. 陽極と陰極の間に少なくとも1層の発光層を含む有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
    当該発光層の少なくとも1層が、π共役系化合物と、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物とを含有し、
    前記π共役系化合物が、HOMOとLUMOの間の電子遷移が、同一分子内のスルースペース相互作用で起こり、かつ、前記HOMO又は前記LUMOの少なくとも一方が局在化する部位にπ共役系芳香族環を有し、
    前記π共役系化合物として、下記一般式(7)で表される構造を有する化合物を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
    Figure 0006774432
    (上記一般式(1)において、MはIr、Pt、Rh又はOsを表す。A 、A 、B 及びB は、各々炭素原子又は窒素原子を表す。環Z は、A 及びA とともに形成される6員の芳香族炭化水素環、又は5員若しくは6員の芳香族複素環を表す。環Z は、B 及びB とともに形成される5員又は6員の芳香族複素環を表す。環Z 及び環Z は、置換基を有していてもよく、さらに置換基同士が結合して縮環構造を形成していてもよい。また、環Z 及び環Z は、各々の配位子の置換基が互いに結合して、配位子同士が連結していてもよい。L′は、Mに配位したモノアニオン性の二座配位子を表す。m′は、0〜2の整数を表す。n′は、1〜3の整数を表す。m′+n′は、2又は3である。m′及びn′が2以上の場合、環Z 及び環Z で表される配位子及びL′は、各々、同じでも異なっていてもよい。)
    Figure 0006774432
    (上記一般式(7)において、R71〜R80は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。R71、R72、R79、及びR80のうち少なくとも二つは、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表す。また、これらの芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基のうち一つが、HOMOの電子密度の割合が80%以上であり、これらの芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基のうち他の一つが、LUMOの電子密度の割合が80%以上である。)
  4. 陽極と陰極の間に少なくとも1層の発光層を含む有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
    当該発光層の少なくとも1層が、π共役系化合物と、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物とを含有し、
    前記π共役系化合物が、HOMOとLUMOの間の電子遷移が、同一分子内のスルースペース相互作用で起こり、かつ、前記HOMO又は前記LUMOの少なくとも一方が局在化する部位にπ共役系芳香族環を有し、
    前記π共役系化合物として、下記一般式(9)で表される構造を有する化合物を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
    Figure 0006774432
    (上記一般式(1)において、MはIr、Pt、Rh又はOsを表す。A 、A 、B 及びB は、各々炭素原子又は窒素原子を表す。環Z は、A 及びA とともに形成される6員の芳香族炭化水素環、又は5員若しくは6員の芳香族複素環を表す。環Z は、B 及びB とともに形成される5員又は6員の芳香族複素環を表す。環Z 及び環Z は、置換基を有していてもよく、さらに置換基同士が結合して縮環構造を形成していてもよい。また、環Z 及び環Z は、各々の配位子の置換基が互いに結合して、配位子同士が連結していてもよい。L′は、Mに配位したモノアニオン性の二座配位子を表す。m′は、0〜2の整数を表す。n′は、1〜3の整数を表す。m′+n′は、2又は3である。m′及びn′が2以上の場合、環Z 及び環Z で表される配位子及びL′は、各々、同じでも異なっていてもよい。)
    Figure 0006774432
    (上記一般式(9)において、R91は、HOMOの電子密度の割合が80%以上である芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表す。R92は、LUMOの電子密度の割合が80%以上である芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表す。R93〜R96は、水素原子又は置換基を表す。)
  5. 前記一般式(1)の環Zが、ピリジン環、イミダゾール環、イソキノリン環、トリアゾール環又はピラゾール環であることを特徴とする請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  6. 請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を具備することを特徴とする表示装置。
  7. 請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を具備することを特徴とする照明装置。
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