JP6770916B2 - レーザ加工条件設定方法及びレーザ加工装置 - Google Patents
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例えば、従来の基板加工方法では、二回に分けて基板に対するレーザ光の照射を行い、一回目で高エネルギー密度のレーザ光を照射し、二回目は一回目より低いエネルギー密度のレーザ光の照射を行ってブラインドホールの形成を行っていた(例えば、特許文献1参照)。
このようなボトム銅箔層のダメージの対策として、CO2レーザによる1回目のレーザ光のビームプロファイルをガウシアンモードで照射し、2回目のレーザ光のビームプロファイルをトップフラットモードで照射する方法も検討されている。
しかし、この方法の場合、1回目のガウシアンモードのレーザ光によりボトム銅箔層の貫通が一部発生する場合があり、加工品質に不安定化を生じるおそれがあった。さらに、ビームプロファイルのモード切替を行うので加工時間が長くなるという問題も生じていた。
さらに、従来のレーザ加工方法は、ブラインドホールの内径を適宜調節することが困難であった。
さらに、ボトムダメージを抑えたレーザ光の照射が可能となるので、1回目と2回目とでビームプロファイルのモード切替を行うレーザ光の照射を不要とし、加工時間の短縮化を図ることが可能となる。
この実施形態に示すレーザ加工装置は、分解エネルギー閾値の低い材質の層のトップ面及びボトム面の両面に、より分解エネルギー閾値の高い材質の層が形成された加工対象物W、例えば、樹脂層のトップ面とボトム面の両面に銅箔層が形成された基板をレーザ加工の対象とする。特に、トップ面側の銅箔層が表面処理されていない無垢の状態であって、樹脂層及びボトム面側の銅箔層が薄い基板を対象とする。
また、本実施形態は、レーザ加工装置による、加工対象物Wのトップ面側からのレーザ光の入射に対してボトム面側の銅箔層のみを残すブラインドホールの形成において、目標とする加工トップ径とし、ボトムダメージを低減するための適切なレーザ加工条件を設定することを目的とする。
図1は本発明の実施の形態に係るレーザ加工装置10を示す構成図である。図1においてレーザ光その他の光経路は実線で示し、信号線は破線で示す。
そして、レーザ光源20からXYステージ60上の加工対象物Wに対して入射されるレーザ光の経路に沿って、レンズ群30、マスク装置80、折り返しミラー41、偏向器50、fθレンズ42が順番に配置されている。
このレンズ群30は、各レンズの光軸方向の位置調節によりレーザ光のビーム径が変動し、これに伴い、レーザ光のピークパワーを変動させることができる。
このレンズ群30は制御装置70によって制御される。
但し、本実施形態におけるブラインドホールの形成の際には、モード切替は行われず、ガウシアンモード又はそれに近いモードに固定された状態で加工が行われる。
そして、マスクを選択することでレーザ光のピークパワーを変動させることができる。従って、後述するレーザ光のピークパワーの変更調節の際には、レンズ群30及びマスク装置80が制御装置70に制御されて、レーザ光のピークパワーが適宜調節される。
つまり、レンズ群30とマスク装置80は、「ピークパワー調節部」として機能する。
偏向器50は、制御装置70からの制御信号よりガルバノミラーがレーザ光を目標とする被加工位置に反射させる角度に変えることができる。
XYステージ60による加工対象物Wの移動範囲は、偏向器50による操作範囲比べて大幅に広く、偏向器50との協働により加工対象物Wの広範囲に加工を行うことができる。
この撮像部110は、XYステージ60上の加工対象物Wに対して鉛直下方に光軸が向けられた状態で、偏向器50の筐体に固定支持されている。この撮像部110は、fθレンズ42からXYステージ60上の加工対象物Wに対して鉛直下方に向かうレーザ光とは光軸が異なる位置に設けられているので、レーザ光が加工対象物Wに入射した後に当該入射位置が撮像部110の光軸上となるように、XYステージ60によって加工対象物Wの移動を行ってから加工対象物Wのトップ面の撮像を行う。
撮像部110は、画像処理部112に接続されており、撮像画像データを画像処理部112に送る。
画像処理部112は、加工対象物Wのトップ面の撮像画像データを加工処理し、加工対象物Wのトップ面に形成されたブラインドホールの加工トップ径を求めることができる。
また、この画像処理部112は、加工対象物Wのトップ面の撮像画像データを加工処理し、ブラインドホールの形成状態の良否を判定することができる。例えば、ブラインドホールの内部のボトム側において、貫通が生じているか、ボトム側の銅箔層に損傷が生じているか、ボトム側の銅箔層に損傷がない良好状態か等のいずれかを判定することができる。
また、制御装置70は、加工対象物Wに対するブラインドホールの形成において、目標とする加工トップ径とし、ボトムダメージを低減するための適切なレーザ加工条件を設定する処理と、設定されたレーザ加工条件に従って加工対象物Wにブラインドホールを形成する動作制御とを実施する。
このため、制御装置70には、目標とする加工トップ径をオペレーターが設定入力するための設定入力部71が併設されている。
そして、制御装置70は、レーザ光源20を制御し、パルス出力の際に、そのパルス幅(時間幅)を任意に制御することができ、これにより、レーザ光源20からのレーザ光のパルスエネルギーを任意に調節することができる。つまり、制御装置70は、「パルスエネルギー調節部」として機能する。
以下、図2に示すフローチャートにより、制御装置70により実行されるブラインドホールの形成におけるレーザ加工条件設定処理の制御を説明する。
このレーザ加工条件設定処理では、前提として、加工対象物Wのトップ面側の銅箔層の厚さを2[μm]、樹脂層の厚さを20[μm]、ボトム面側の銅箔層の厚さを5〜7[μm]、目標とするトップ面側のブラインドホールの内径(加工トップ径とする)を63[μm]とする。また、加工時において、一つのブラインドホールにつき1〜3回程度のレーザ光のパルス出力で形成を行い、1〜3回目のパルス出力のビームプロファイルは、いずれも、ガウシアンモードに近いモードが維持され、モード切替は行われない。
なお、加工対象物Wの厚さ、ブラインドホールの加工トップ径等の各数値は例示であり、この数値に限定されるものでない。
この図3に示すように、加工トップ径及びボトムダメージ特性(1)は、レーザ光のピークパワーとパルスエネルギーをパラメータとし、これらを変化させてパルス発振で試し打ち用の加工対象物Wにレーザ光を入射し、ボトム面側の銅箔層に生じたダメージの発生状況及び加工トップ径を個別に記録したものである。
なお、加工時には1〜3回程度のレーザ光のパルス出力を行うが、加工トップ径及びボトムダメージ特性(1)を取得するためのレーザ光のパルス出力は単発で入射される。
これにより、レーザ光のピークパワーとパルスエネルギーの両方をパラメータとする加工トップ径及びボトムダメージ特性(1)を得ることができる。
制御装置70は、レーザ光のピークパワーがいずれかの目標値(例えば、0.5[kW])となるように、レンズ群30及びマスク装置80を制御する。
それぞれの撮像画像から、画像処理部112により、形成された複数のブラインドホールの加工トップ径が求められる。
また、画像処理部112は、それぞれの撮像画像により、形成された複数のブラインドホールについて、ボトム側に貫通あり(図3における「×」)、ボトム側に損傷あり(図3における「▲」)、ボトム側に損傷なし(図3における「●」)のいずれかであるかを判定する。
そして、ピークパワーの全ての目標値について、複数のパルスエネルギーごとにボトム側の貫通、損傷の有無の判定及び加工トップ径が求められ、制御装置70は、加工トップ径及びボトムダメージ特性(1)を取得する。
また、それぞれのピークパワーごとに、パルスエネルギーが一定値を超えるとボトムダメージが発生する。そして、ピークパワーが大きくなるにつれて、ボトムダメージが発生する際のブラインドホールの加工トップ径が大きくなる傾向が現れている。
一方、加工トップ径の目標値は63[μm]であることから、加工トップ径が63[μm]の直線L2と直線L1との交点P1から加工時のレーザ光のピークパワーの候補値を取得することができる。
従って、この交点P1が示すピークパワー値を加工時のレーザ光のピークパワーの適正値として決定しても良いが、ここでは、ピークパワーに裕度を持たせて0.9[kW]を加工時のレーザ光のピークパワーの適正値として選択する。
この図4に示すように、加工トップ径及びボトムダメージ特性(2)は、レーザ光のピークパワーは既に決定された固定値とし、パルスエネルギーをパラメータとしてパルス出力で試し打ち用の加工対象物Wにレーザ光を入射し、ボトム面側の銅箔層に生じたダメージの発生状況及び加工トップ径を個別に記録したものである。
なお、この加工トップ径及びボトムダメージ特性(2)を取得するためのレーザ光のパルス出力も単発で加工対象物Wに入射される。
これにより、パルスエネルギーをパラメータとする加工トップ径及びボトムダメージ特性(2)を得ることができる。
制御装置70は、レーザ光のピークパワーが既に決定された固定値(0.9[kW])となるように、レンズ群30及びマスク装置80を制御する。
そして、制御装置70は、レーザ光源20のパルス幅を漸増させてパルスエネルギーを変えながら、複数回のレーザ光の出射を行い、毎回の加工対象物Wのブラインドホールのトップ面側からの撮像画像を取得する。
さらに、各撮像画像から、画像処理部112により、複数のパルスエネルギーごとにボトム側の貫通、損傷の有無が判定され、さらに、形成された複数のブラインドホールの加工トップ径が求められ、制御装置70は、加工トップ径及びボトムダメージ特性(2)を取得する。
そして、加工トップ径が63[μm]の直線L4と直線L3との交点から、加工トップ径が63[μm]以上となり、ボトムダメージが発生しないパルスエネルギーの数値範囲を取得する。具体的には、パルスエネルギーの数値範囲は、4.0〜4.2[mJ]となる。
この数値範囲内で加工トップ径が63[μm]となるパルスエネルギーの値を、加工時のレーザ光のパルスエネルギーの適正値として選択しても良いし、数値範囲内の最大値を加工時のレーザ光のパルスエネルギーの適正値として選択しても良い。
但し、ここでは、上記数値範囲の中央値となる4.1[mJ]を加工時のレーザ光のパルスエネルギーの適正値として選択する。
ブラインドホールの形成の際には、予め設定入力部71によりブラインドホールの加工トップ径の目標値が設定される。
そして、制御装置70により、設定されたブラインドホールの加工トップ径に応じて、レーザ加工条件設定処理において決定された加工時のレーザ光のピークパワーの適正値となるようにレンズ群30及びマスク装置80が制御される。
さらに、設定されたブラインドホールの加工トップ径に応じて、レーザ加工条件設定処理において決定された加工時のレーザ光のパルスエネルギーの適正値となるパルス幅でレーザ光がパルス出力されるようにレーザ光源20が制御される。
なお、2回目以降のレーザ光のパルス出力については、トップ面の銅箔層よりも分解エネルギー閾値の低い樹脂層の除去を目的とすることから、加工時のレーザ光のパルスエネルギーの適正値よりも低いパルスエネルギーでレーザ光のパルス出力を行っても良い。
また、レーザ光のピークパワーとパルスエネルギーについてより適正値が求められた場合には、パルス出力を1回のみでブラインドホールの形成を行っても良い。
また、複数の被加工位置が定められた加工パターンに基づいて複数のブラインドホールの形成が行われる場合には、偏向器50及びXYステージ60による被加工位置の位置決め制御と連携して上記レーザ光源20のレーザ光のパルス出力が行われる。
レーザ加工装置10の制御装置70は、レーザ光のピークパワーとパルスエネルギーをパラメータとして加工対象物に対する加工トップ径及びボトムダメージ特性(1)を求め、この特性から、加工時のレーザ光のピークパワーの適正値を特定し、さらには、加工時のレーザ光のピークパワーに基づいて、加工時のレーザ光のパルスエネルギーの適正値を特定している。
このように、加工時のレーザ光のピークパワーの適正値を特定することにより、加工対象物Wに形成されるブラインドホールの加工トップ径を目標値に近づけることができ、加工精度の向上を図ることが可能となる。
さらに、加工時のレーザ光のパルスエネルギーの適正値を特定することにより、ボトムダメージの発生を効果的に低減することができ、安定的に良質のブラインドホール形成を行うことが可能となる。
特に、トップ銅箔層が表面処理されていない無垢の状態であって樹脂層及びボトム銅箔層が薄い基板のようにボトムダメージが生じやすい基板の場合にも、ボトムダメージを抑えることが可能となる。
さらに、ボトムダメージを抑えたレーザ光の照射が可能となるので、1回目と2回目とでビームプロファイルのモード切替を行うレーザ光の照射を不要とし、加工時間の短縮化を図ることが可能となる。
このため、レーザ加工装置における既存の構成を利用して加工対象物に対する加工トップ径及びボトムダメージ特性(1)及び(2)を求めることができ、レーザ加工条件を設定するためにレーザ加工装置に新規の構成を加える必要がなく、容易にレーザ加工条件を取得する機能を持たせることが可能である。
本発明は上記の実施形態に限られない。
例えば、レーザ光源20は、パルス出力を行うものであれば例示したもの以外のレーザ媒質を使用しても良い。
また、マスク装置80等の光学機器を用いてレーザ光のピークパワーを調節可能であれば、他の出力方式のレーザ加工装置を使用しても良い。
例えば、加工対象物に対する加工トップ径及びボトムダメージ特性(1)を求める際に、レーザ光のピークパワーについて複数の数値を例示したが、これらは変更可能である。例えば、より細かい数値幅でレーザ光のピークパワーを変化させ、より精細に加工対象物に対する加工トップ径及びボトムダメージ特性(1)を求めても良い。
同様に、加工対象物に対する加工トップ径及びボトムダメージ特性(1)及び(2)を求める際に、レーザ光のパルスエネルギーについて複数の数値を例示したが、これらも、より細かい数値幅でレーザ光のパルスエネルギーを変化させ、より精細に加工対象物に対する加工トップ径及びボトムダメージ特性(1)及び(2)を求めても良い。
その場合、加工対象物に対する加工トップ径及びボトムダメージ特性(2)を取得するためのレーザ光のパルス出力の制御及び上記特性(2)を求めるための演算と処理を省略することができる。
この場合、加工対象物に対する加工トップ径及びボトムダメージ特性(1)及び(2)を求めるために、レーザ光のピークパワー及びパルスエネルギーを複数の数値に設定して、個々にブラインドホールの形成する作業は、レーザ加工条件設定処理を実行するための構成を備えていないレーザ加工装置で実行する。
そして、加工対象物に対する加工トップ径及びボトムダメージ特性(1)及び(2)を求めるための各ブラインドホールの加工トップ径の計測、ボトムダメージの発生状況の判定、加工対象物に対する加工トップ径及びボトムダメージ特性(1)及び(2)からの加工時のレーザ光のピークパワー及びパルスエネルギーの特定をオペレーターが人為的によって行っても良い。
また、上記人為的に行われる処理内容を、レーザ加工装置以外の外部の処理装置に実行させてもよい。
20 レーザ光源
30 レンズ群(光学機器、ピークパワー調節部)
70 制御装置
71 設定入力部
72 ピークパワー特定部
73 パルスエネルギー特定部
80 マスク装置(光学機器、ピークパワー調節部)
81,82 マスク
90 レーザパワー検出部
110 撮像部
112 画像処理部
W 加工対象物
Claims (4)
- レーザ光のピークパワーとパルスエネルギーをパラメータとして加工対象物に対する加工トップ径及びボトムダメージの特性を求め、
前記加工対象物に対する加工トップ径及びボトムダメージの特性から、加工時のレーザ光のピークパワーを特定し、
前記加工時のレーザ光のピークパワーに基づいて、加工時のレーザ光のパルスエネルギーを特定するレーザ加工条件設定方法。 - レーザ光が通過する光学機器を用いて前記レーザ光のピークパワーを調節し、前記加工対象物に対する加工トップ径及びボトムダメージの特性を求める請求項1記載のレーザ加工条件設定方法。
- レーザ光源と、
前記レーザ光源からのレーザ光のピークパワー調節部と、
前記レーザ光源からのレーザ光のパルスエネルギー調節部と、
前記レーザ光源、前記ピークパワー調節部及び前記パルスエネルギー調節部を制御する制御装置と、
前記レーザ光のピークパワーとパルスエネルギーをパラメータとして求められた加工対象物に対する加工トップ径及びボトムダメージの特性から、加工時のレーザ光のピークパワーを特定するピークパワー特定部と、
前記特定されたレーザ光のピークパワーに基づいて加工時のレーザ光のパルスエネルギーを特定するパルスエネルギー特定部とを備えるレーザ加工装置。 - 前記レーザ光源からのレーザ光により加工対象物に形成されたブラインドホールを撮像する撮像部を備える請求項3記載のレーザ加工装置。
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JP2017056830A JP6770916B2 (ja) | 2017-03-23 | 2017-03-23 | レーザ加工条件設定方法及びレーザ加工装置 |
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