以下に、本発明にかかるレーザ加工装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかるレーザ加工装置1の構成を示す図である。レーザ加工装置1は、被加工物11に対し、レーザ光(パルスレーザ光)の照射によるレーザ穴加工を行う。被加工物11は、例えば、パソコンに備えられるプリント基板である。
レーザ加工装置1は、レーザ発振器3a,3b、偏光手段4a,4b、加工ヘッド16、XYテーブル12、レーザパワーセンサ14、ビジョンセンサ15および制御部20を備える。被加工物11は、XYテーブル12上に載置される。
レーザ発振器3aは、レーザ光2a(第1のレーザ光)を出力する第1のレーザ発振手段である。レーザ発振器3bは、レーザ光2b(第2のレーザ光)を出力する第2のレーザ発振手段である。レーザ加工装置1は、被加工物11へレーザ光2a,2bを同時に照射することで、同時に2か所の穴加工を行うことができる。
なお、図1において、レーザ光2aの光路は実線、レーザ光2bの光路は破線として示している。レーザ発振器3aからのレーザ光2aと、レーザ発振器3bからのレーザ光2bとは、互いに同一あるいは同程度の波長であるものとする。例えば、炭酸ガスレーザのピーク波長は9.4μmおよび10.6μmである。そのため、この程度の差異は同程度であるものとみなす。
レーザ発振器3a,3bは、レーザパルスのピークパワー、パルス幅、パルス数、パルス周波数のレーザ発振指令設定値に基づいて、パルス状のレーザ光2a,2bを出力する。レーザ発振器3a,3bは、制御部20から入力されるレーザ発振トリガ信号に応じたタイミングで、レーザ光2a,2bを出力する。
偏光手段4aは、レーザ発振器3aから加工ヘッド16へ入射するレーザ光2aのうち特定の直線偏光を通過させる。偏光手段4aは、例えばS偏光を通過させる。偏光手段4bは、レーザ発振器3bから加工ヘッド16へ入射するレーザ光2bのうち特定の直線偏光を通過させる。偏光手段4bは、例えばP偏光を通過させる。偏光手段4a,4bは、例えば波長板である。レーザ加工装置1は、偏光手段4a,4bの回転を調整することで、レーザ光2a,2bの偏光方向を調整可能とする。
加工ヘッド16は、ベンドミラー5、サブガルバノスキャナ7a,7b、偏光ビームスプリッタ8、メインガルバノスキャナ9a,9bおよびFθレンズ10を備える。ベンドミラー5は、加工ヘッド16へ入射したレーザ光2aの光路とレーザ光2bの光路とに設けられている。レーザ光2aの光路に設けられたベンドミラー5は、レーザ光2aを反射して、サブガルバノスキャナ7aへ導く。レーザ光2bの光路に設けられたベンドミラー5は、レーザ光2bを反射して、サブガルバノスキャナ7bへ導く。
サブガルバノスキャナ7aは、レーザ発振器3aからのレーザ光2aを第1方向へ偏向させる第1のサブガルバノスキャナである。サブガルバノスキャナ7bは、レーザ発振器3bからのレーザ光2bを第2方向へ偏向させる第2のサブガルバノスキャナである。第2方向は、第1方向とは異なる方向であって、第1方向に対して垂直な方向とする。第1方向は、例えばX軸方向とする。第2方向は、例えばY軸方向とする。X軸、Y軸およびZ軸は、互いに垂直な軸とする。
レーザ光偏向装置であるサブガルバノスキャナ7a,7bは、それぞれ、レーザ光2a,2bを反射するガルバノミラーと、ガルバノミラーを駆動するモータとを備える。サブガルバノスキャナ7a,7bは、レーザ光2a,2bを反射するガルバノミラーの角度を、図示を省略した角度センサを搭載するモータが回転制御することで、レーザ光2a,2bを偏向させる。
サブガルバノスキャナ7a,7bは、被加工物11上に照射されるレーザ光2a,2bを、互いに直交するX軸方向とY軸方向に偏向させる。これにより、サブガルバノスキャナ7a,7bは、被加工物11上におけるレーザ光2a,2bの相対照射位置を、二次元方向(XY方向)に変化させる。
偏光ビームスプリッタ8は、サブガルバノスキャナ7aからのレーザ光2aと、サブガルバノスキャナ7bからのレーザ光2bとを混合するレーザ混合手段である。偏光ビームスプリッタ8は、反射によりレーザ光2aの光路を折り曲げるとともに、レーザ光2bを透過させることで、同じ方向へ進行するレーザ光2a,2bを射出する。
偏光ビームスプリッタ8は、S偏光であるレーザ光2aを反射し、P偏光であるレーザ光2bを透過させる偏光特性を備える。偏光手段4aにてレーザ光2aの偏光方向を調整することで、偏光ビームスプリッタ8は、レーザ光2aを効率良く反射させることができる。偏光手段4bにてレーザ光2bの偏光方向を調整することで、偏光ビームスプリッタ8は、レーザ光2bを効率良く透過させることができる。
メインガルバノスキャナ9aは、偏光ビームスプリッタ8からのレーザ光2a,2bを第1方向へ偏向させる第1のメインガルバノスキャナである。メインガルバノスキャナ9bは、偏光ビームスプリッタ8からのレーザ光2a,2bを第2方向へ偏向させる第2のメインガルバノスキャナである。
レーザ光偏向装置であるメインガルバノスキャナ9a,9bは、それぞれ、レーザ光2a,2bを反射するガルバノミラーと、ガルバノミラーを駆動するモータとを備える。メインガルバノスキャナ9a,9bは、レーザ光2a,2bを反射するガルバノミラーの角度を、図示を省略した角度センサを搭載するモータが回転制御することで、レーザ光2a,2bを偏向させる。
メインガルバノスキャナ9a,9bは、被加工物11上に照射されるレーザ光2a,2bを、互いに直交するX軸方向とY軸方向とへ偏向させる。これにより、メインガルバノスキャナ9a,9bは、被加工物11上におけるレーザ光2a,2bの照射位置を、二次元方向(XY方向)において変化させる。
レーザ加工装置1は、サブガルバノスキャナ7aのガルバノミラーを回転させることで、レーザ光2aをX軸方向へ偏向させる。レーザ加工装置1は、サブガルバノスキャナ7bのガルバノミラーを回転させることで、レーザ光2bをY軸方向へ偏向させる。
レーザ加工装置1は、メインガルバノスキャナ9aのガルバノミラーを回転させることで、レーザ光2a,2bをX軸方向へ偏向させる。レーザ加工装置1は、メインガルバノスキャナ9bのガルバノミラーを回転させることで、レーザ光2a,2bをY軸方向へ偏向させる。
メインガルバノスキャナ9a,9bは、広範囲においてレーザ光2a,2bをまとめて偏向させる。メインガルバノスキャナ9a,9bは、XYテーブル12上における走査エリア全体にてレーザ光2a,2bを偏向可能である一方、レーザ光2a,2bの照射位置を個別に変化させることはできない。
サブガルバノスキャナ7a,7bは、狭い範囲においてレーザ光2a,2bを個別に偏向させる。サブガルバノスキャナ7a,7bは、レーザ光2a,2bの照射位置を個別に変化させることができる。
サブガルバノスキャナ7a,7bがレーザ光2a,2bを偏向可能とする有効回転角度は、例えば±0.8deg以下である。かかる有効回転角度において、サブガルバノスキャナ7a,7bは、偏光ビームスプリッタ8へレーザ光2a,2bを入射させることができ、かつ偏光ビームスプリッタ8からメインガルバノスキャナ9a,9bへレーザ光2a,2bを進行させることができる。
メインガルバノスキャナ9a,9bがレーザ光2a,2bを偏向可能とする有効回転角度は、例えば±8deg以下である。サブガルバノスキャナ7a,7bの有効回転角度は、メインガルバノスキャナ9a,9bの有効回転角度の10分の1程度とされている。
サブガルバノスキャナ7a,7bを有効回転角度以上、例えば±8deg程度で回転させることで、レーザ光2a,2bを偏光ビームスプリッタ8以外の方向へ進行させる回避動作が可能となる。サブガルバノスキャナ7a,7bによるこのような回避動作は、1回あたり数msecを要することとなる。かかる回避動作は、加工時間を延長させる要因となるため、本実施の形態では実施しない。
fθレンズ10は、メインガルバノスキャナ9a,9bからのレーザ光2a,2bを被加工物11にて集光する。XYテーブル12は、X軸方向およびY軸方向へ被加工物11を移動させる。XYテーブル12は、被加工物11上の加工点がメインガルバノスキャナ9a,9bによる走査エリア内となるように、被加工物11をXY方向へ移動させる。
XYテーブル12は、XY方向へ例えば600mm×600mmの範囲にて被加工物11を移動させることができる。被加工物11は通常300mm×300mm以上であるのに対し、メインガルバノスキャナ9a,9bによる被加工物11上へのレーザ光2a,2bの走査エリアは50mm×50mm程度、サブガルバノスキャナ7a,7bによる被加工物11上での走査エリアは5mm×5mm程度といずれも小さい。レーザ加工装置1は、被加工物11を順次XYテーブル12で移動させることで、スキャナ自体の走査エリアより大きい被加工物11の全領域を対象とするレーザ穴加工を実施可能に構成されている。
レーザパワー計測手段であるレーザパワーセンサ14は、XYテーブル12のうち被加工物11が載置される位置以外の位置に搭載されている。レーザパワーセンサ14は、被加工物11へ照射されるレーザ光2a,2bのパワーを計測する。
加工ヘッド16は、図示を省略したZ軸テーブルに固定されており、Z軸方向へ移動可能とされている。ビジョンセンサ15は、加工ヘッド16に固定されている。ビジョンセンサ15は、レーザ加工穴13a,13bの穴径および加工位置を計測するための画像を撮影するCCDカメラを備える。
ビジョンセンサ15は、加工ヘッド16とともにZ軸方向に移動することで、計測範囲および焦点を調整可能とされている。被加工物11が載置されているXYテーブル12を移動させることで、ビジョンセンサ15は、レーザ加工穴13a,13bの画像を得ることができる。
制御部20は、レーザ加工装置1の全体を制御する。制御部20は、指令生成部21、レーザ発振器制御部22、ガルバノスキャナ制御部23、ビジョンセンサ制御部24、XYテーブル制御部25およびレーザパワーセンサ制御部26を備える。制御部20は、マイクロプロセッサ、メモリー、モニタおよび各種外部インターフェース(いずれも図示省略)を備えるコンピュータシステムである。
指令生成部21は、加工穴の位置を表す座標、レーザ加工の条件が記載された加工プログラムに基づいて、レーザ発振器制御部22、ガルバノスキャナ制御部23、ビジョンセンサ制御部24、XYテーブル制御部25およびレーザパワーセンサ制御部26へ各種指令を出力する。
レーザ発振制御手段であるレーザ発振器制御部22は、指令生成部21から出力されるレーザ発振指令に基づいて、レーザ発振器3a,3bへレーザ発振指令設定値を送る。レーザ発振指令設定値は、レーザパルスのピークパワー、パルス幅、パルス数、パルス周波数の設定値を含む。レーザ発振器制御部22は、レーザ発振指令に応じてレーザ発振器3a,3bを制御する。
レーザ発振器制御部22は、加工プログラムに記載されている加工穴に関する情報に基づいて、レーザ発振器3a,3bからのレーザ光2a,2bの出力の可否を個別に設定する。レーザ発振器制御部22は、レーザ光2aの出力のタイミングを指令するレーザ発振トリガ信号をレーザ発振器3aへ出力する。レーザ発振器制御部22は、レーザ光2bの出力のタイミングを指令するレーザ発振トリガ信号をレーザ発振器3bへ出力する。
このように、レーザ発振器制御部22は、レーザ発振器3a,3bに対して、レーザ発振トリガ信号を個別に出力する。レーザ発振器制御部22は、レーザ発振トリガ信号を出力することで、設定値に応じたタイミングでレーザ光2a,2bを出力するようにレーザ発振器3a,3bを制御する。
ガルバノスキャナ制御部23は、指令生成部21から出力される回転角指令に基づいて、サブガルバノスキャナ7a,7bおよびメインガルバノスキャナ9a,9bの回転角を制御する。
ビジョンセンサ制御部24は、被加工物11に形成されたレーザ加工穴13a,13bを、ビジョンセンサ15を用いて計測する場合において、ビジョンセンサ15を制御する。ビジョンセンサ制御部24は、ビジョンセンサ15で得られた画像情報を基に、レーザ加工穴13a,13bの穴径、加工位置および真円度を求める演算処理を行う。ビジョンセンサ15およびビジョンセンサ制御部24は、被加工物11に形成されたレーザ加工穴13a,13bに対する各種計測を行う加工穴計測手段である。
XYテーブル制御部25は、指令生成部21から出力されるテーブル位置指令に基づいて、XYテーブル12の移動の制御と位置決めとを行う。テーブル位置指令は、XYテーブル12に対する位置指令である。
レーザパワーセンサ制御部26は、レーザ光2a,2bのパワーを計測する場合において、レーザパワーセンサ14を制御する。レーザパワーセンサ制御部26には、レーザパワーセンサ14から、計測結果であるレーザ平均パワー信号が入力される。レーザパワーセンサ制御部26は、レーザ発振器制御部22へ入力されたレーザ発振指令を用いて、1レーザパルスあたりのエネルギーを計算する。
レーザパワーセンサ制御部26は、レーザ平均パワー、1レーザパルスあたりのエネルギーのレーザパワー計測情報を、例えば制御部20のモニタへ出力する。レーザパワーセンサ制御部26は、かかるレーザパワー計測情報を記録する。
図2は、被加工物を複数の加工エリアに分割する例を示す図である。メインガルバノスキャナ9a,9bによるレーザ光2a,2bの走査エリアは、50mm×50mm程度であるので、例えば、300mm×300mmの被加工物11においては、図2のように50mm×50mmの加工エリア30が複数設定される。レーザ加工の実施において、レーザ加工装置1は、各加工エリア30の中心位置がメインガルバノスキャナ9a,9bの走査エリアの中心と一致するように、XYテーブル12を順次移動して、被加工物11を位置決めする。
図3は、サブガルバノスキャナ7a,7bの走査エリアの例を示す図である。加工エリア30において、加工穴位置31は、レーザ光2a,2bを同時に照射して加工可能な加工穴位置の一例である。加工穴位置32は、レーザ光2a,2bのうちの一方のみを照射して加工可能な加工穴位置の一例である。加工穴位置31,32は、サブガルバノスキャナ7a,7bを回転させてレーザ光2a,2bを偏向することでレーザ走査エリア33内を移動可能である。
サブガルバノスキャナ7a,7bによるレーザ走査エリア33のサイズは5mm×5mm程度であるが、メインガルバノスキャナ9a,9bを回転させることで、50mm×50mmの加工エリア30内の任意の位置にレーザ走査エリア33を移動および位置決め可能である。
レーザ走査エリア33内にて2か所を加工すべき加工穴位置31に対しては、レーザ発振器制御部22は、レーザ発振器3aおよびレーザ発振器3bに対して同時にレーザ発振トリガ信号を出力する。これにより、レーザ加工装置1は、同時に照射される2つのレーザ光2a,2bによる2か所のレーザ穴加工を行う。
レーザ走査エリア33内にて1か所を加工すべき加工穴位置32に対しては、レーザ発振器制御部22は、レーザ発振器3aおよびレーザ発振器3bのいずれか一方に対してレーザ発振トリガ信号を出力する。これにより、レーザ加工装置1は、2つのレーザ光2a,2bのうちの一方による1か所のレーザ穴加工を行う。
本実施の形態によると、レーザ加工装置1は、レーザ発振トリガ信号の出力に応じて、2穴同時加工と1穴加工との切り換えを行う。レーザ加工装置1は、Fθレンズ10で集光される2本のレーザ光2a,2bに対し、互いに独立してONおよびOFFを制御することができる。レーザ加工装置1は、例えばシャッタを用いた遮蔽、あるいはガルバノスキャナを用いた回避動作によって2つのレーザ光2a,2bの同時照射と一方の照射とを切り換える場合に比べて、2穴同時加工と1穴加工とを高速に切り換えることができる。
次に、レーザ加工装置1がレーザ加工の前に実施するレーザ発振器3a,3bのキャリブレーション動作について説明する。図4は、レーザ発振器3a,3bのキャリブレーション動作の手順を説明するフローチャートである。図4に示す手順による処理は、レーザ発振器3a,3bから出力されるレーザ光2a,2bが被加工物11に照射される際にレーザ加工量が同じになるように、レーザ光2a,2bのパワーを合わせる処理である。
レーザ発振器3a,3bに同じレーザ発振条件を設定しても、被加工物11に照射されるレーザ光2a,2bのパワーが相違することがある。その原因は、例えば、レーザ発振器3a,3bの個体差、レーザ光2aおよびレーザ光2bの各光路におけるレーザパワーの損失の違いなどによる。以下、図4を参照して、レーザ発振器3a,3bのキャリブレーション動作の手順の詳細を説明する。
ガルバノスキャナ制御部23は、サブガルバノスキャナ7a,7bおよびメインガルバノスキャナ9a,9bを、回転角の基準とする原点に位置決めする(ステップS1)。この原点は、レーザ光2a,2bを偏向可能とする有効回転角度の中心とする。
XYテーブル制御部25は、レーザパワーセンサ14がレーザ光2aのパワーを計測できる位置に、XYテーブル12を移動させる(ステップS2)。
レーザ発振器制御部22は、レーザ発振器3aに対し、あらかじめ設定されたキャリブレーション用のレーザ発振指令に基づいて、キャリブレーション用のレーザパルスのピークパワーPc0、パルス幅Wc0、パルス数Nc0、パルス周波数Fc0を設定する。
レーザ発振器制御部22は、これらの設定値をレーザ発振器3aへ送るとともに、レーザ発振トリガ信号を一定時間間隔毎に出力する。レーザ加工装置1は、かかるレーザ発振トリガ信号に応じて、レーザ発振器3aからパルス状のレーザ光2aを一定時間連続出力する(ステップS3)。
ステップS2にてレーザ光2aの計測位置へ移動されたレーザパワーセンサ14は、ステップS3にてレーザ発振器3aから出力されたレーザ光2aのパワーを計測する。レーザパワーセンサ制御部26は、レーザパワーセンサ14で計測されたレーザ平均パワーをモニタする。
作業者は、偏光手段4aの回転を調整することで、レーザ平均パワーが最大となるようにレーザ光2aの偏光方向を調整する。レーザパワーセンサ制御部26は、レーザ平均パワーの最大値Pmaを、図示を省略したメモリーに保存する(ステップS4)。レーザ発振器制御部22がレーザ発振トリガ信号の出力を停止することで、レーザ発振器3aは、レーザ光2aの出力を停止する。
XYテーブル制御部25は、レーザパワーセンサ14がレーザ光2bのパワーを計測できる位置に、XYテーブル12を移動させる(ステップS5)。
レーザ発振器制御部22は、レーザ発振器3bに対し、あらかじめ設定されたキャリブレーション用のレーザ発振指令に基づいて、レーザ発振器3aと同じキャリブレーション用のレーザパルスのピークパワーPc0、パルス幅Wc0、パルス数Nc0、パルス周波数Fc0を設定する。
レーザ発振器制御部22は、これらの設定値をレーザ発振器3bへ送るとともに、レーザ発振トリガ信号を一定時間間隔毎に出力する。レーザ加工装置1は、かかるレーザ発振トリガ信号に応じて、レーザ発振器3bからパルス状のレーザ光2bを一定時間連続出力する(ステップS6)。
ステップS5にてレーザ光2bの計測位置へ移動されたレーザパワーセンサ14は、ステップS6にてレーザ発振器3bから出力されたレーザ光2bのパワーを計測する。レーザパワーセンサ制御部26は、レーザパワーセンサ14で計測されたレーザ平均パワーをモニタする。
作業者は、偏光手段4bの回転を調整することで、レーザ平均パワーが最大となるようにレーザ光2bの偏光方向を調整する。制御部20は、レーザ平均パワーの最大値Pmbをメモリーに保存する(ステップS7)。レーザ発振器制御部22がレーザ発振トリガ信号の出力を停止することで、レーザ発振器3bは、レーザ光2bの出力を停止する。
指令生成部21は、保存された前記レーザ平均パワーPma,Pmbを使用して、補正係数Kbを算出する。補正係数Kbは、レーザ発振器3bに対するピークパワーあるいはパルス幅のレーザ発振指令設定値を補正するための係数とする。補正係数Kbは、例えば次の式(1)により求められる。
Kb=Pma/Pmb ・・・(1)
レーザ発振器3bに対するピークパワーの設定値に補正係数Kbが乗算されることで、レーザ加工装置1は、被加工物11に照射されるレーザ光2a,2bのパワーを同じにすることができる。
レーザ発振器3aに対しピークパワーPc0が設定されてレーザ平均パワーPmaが得られた場合に、レーザ発振器3bに対してピークパワーの補正値Pc0bを設定することで、レーザ発振器3bによるレーザ平均パワーPmbをPmaと等しくすることができる。補正値Pc0bは、例えば次の式(2)により求められる。
Pc0b=Kb×Pc0 ・・・(2)
なお、レーザ加工装置1は、補正係数Kbを用いてピークパワーPc0を補正する以外に、補正係数Kbを用いてパルス幅Wc0を補正する場合も、同様の効果を得ることができる。レーザ発振器3bに対するパルス幅の設定値に補正係数Kbが乗算されることで、レーザ加工装置1は、被加工物11に照射されるレーザ光2a,2bのパワーを同じにすることができる。
指令生成部21は、レーザ発振器3bに対する補正係数Kbに代えて、レーザ発振器3aに対する補正係数Kaを算出しても良い。補正係数Kaは、レーザ発振器3aに対するピークパワーあるいはパルス幅のレーザ発振指令設定値を補正するための係数とする。補正係数Kaは、例えば次の式(3)により求められる。
Ka=Pmb/Pma ・・・(3)
レーザ発振器3aに対するピークパワーあるいはパルス幅の設定値に補正係数Kaが乗算されることで、レーザ加工装置1は、被加工物11に照射されるレーザ光2a,2bのパワーを同じにすることができる。指令生成部21は、このようにして求められたレーザ発振指令の補正係数Kaあるいは補正係数Kbを、図示を省略したメモリーに保存する(ステップS8)。
レーザ加工装置1は、レーザ発振器3a,3bのキャリブレーション動作におけるレーザ発振指令の補正係数Kaあるいは補正係数Kbを求める手段は、レーザパワーセンサ14を使用してレーザ光2a,2bのパワーを計測するものに限らない。レーザ発振器3a,3bのキャリブレーション動作において、レーザ加工装置1は、ビジョンセンサ15の使用によるレーザ加工穴の計測を行い、レーザ発振器3a,3bから出力されるレーザ光2a,2bが被加工物11に照射される際にレーザ加工量が同じとなるように、レーザ発振指令の前記補正係数Kaあるいは補正係数Kbを求めて行うこととしても良い。
この場合も、レーザ加工装置1は、レーザ発振器3a,3bに対し、キャリブレーション用のレーザ発振指令に基づいて、キャリブレーション用のレーザパルスのピークパワーPc0、パルス幅Wc0、パルス数Nc0、パルス周波数Fc0を設定する。
レーザ発振器制御部22は、これらの設定値をレーザ発振器3a,3bへ送るとともに、レーザ発振トリガ信号をレーザ発振器3a,3bへ出力する。レーザ加工装置1は、レーザ発振器3a,3bからレーザ光2a,2bを出力し、被加工物11上にキャリブレーション用のレーザ加工穴を形成する。
ビジョンセンサ制御部24は、ビジョンセンサ15で得られた画像情報を基に、レーザ光2aの照射によるレーザ加工穴13aの直径D0a、およびレーザ光2bの照射によるレーザ加工穴13bの直径D0bを求める。
前記補正係数Kbを求める場合は、例えば、レーザ発振器3bのピークパワーを変化させながらキャリブレーション用の加工とレーザ加工穴13bの計測とを実施することで、指令生成部21は、直径D0aと直径D0bとが等しくなるときのレーザ発振器3bのピークパワーPc0bを求める。指令生成部21は、例えば次の式(4)により補正係数Kbを求めても良い。
Kb=Pc0b/Pc0 ・・・(4)
次に、レーザ加工装置1によるレーザ加工の動作について説明する。図5は、レーザ加工装置1によるレーザ加工の動作の手順を説明するフローチャートである。
指令生成部21は、加工プログラムであるNCプログラムを読み込む(ステップS10)。指令生成部21は、加工プログラムに記載されている加工穴のデータとレーザ加工の条件を基に、加工穴のXY座標と、レーザ発振指令をメモリーに保存する。レーザ発振指令は、レーザパルスのピークパワー、パルス幅、パルス数、パルス周波数の情報を含む。例えば携帯電話のプリント基板を被加工物11とする場合、加工穴のデータ数は、通常、数万穴から数十万穴となる。
指令生成部21は、保存されたレーザ発振指令をレーザ発振器制御部22へ送る。レーザ発振器制御部22は、送られたレーザ発振指令を、キャリブレーション動作にて求められた補正係数に基づいて修正する。レーザ発振器制御部22は、レーザ発振器3a,3bに対し、修正されたレーザ発振指令を設定する。
指令生成部21は、例えば図2に示すように被加工物11を複数の加工エリア30に分割し、各加工穴のXY座標に応じて、加工エリア30ごとに加工穴を割り付ける。指令生成部21は、各加工エリア30の中心座標に応じたテーブル位置指令を作成する(ステップS11)。
次に、指令生成部21は、加工エリア30内に割り付けられた加工穴が、図3に示すように2穴同時加工が可能な加工穴位置31、および1穴加工による加工穴位置32のいずれに該当するかを分類する。また、指令生成部21は、加工時間が最短となるように各加工穴の加工順序の並べ替えを行う。
指令生成部21は、2穴同時加工が可能な加工穴に対しては、2か所へ同時にレーザ光2a,2bをそれぞれ照射可能とするメインガルバノスキャナ9a,9bおよびサブガルバノスキャナ7a,7bの各回転角を算出する。また、指令生成部21は、レーザ発振器3a,3bの双方に対するレーザ発振トリガフラグをON(例えば「1」)に設定する。
指令生成部21は、1穴加工とする加工穴に対しては、レーザ光2a,2bのいずれかを、レーザ穴加工に使用するレーザ光として選択する。指令生成部21は、サブガルバノスキャナ7a,7bのうち、選択されたレーザ光に対応する一方と、メインガルバノスキャナ9a,9bの各回転角を算出する。また、指令生成部21は、レーザ発振器3a,3bのうち選択された一方に対してレーザ発振トリガフラグをONに設定し、他方に対してレーザ発振トリガフラグをOFF(例えば「0」)に設定する。
このようにして、指令生成部21は、サブガルバノスキャナ7a,7bおよびメインガルバノスキャナ9a,9bに対する回転角指令を作成する(ステップS12)。指令生成部21は、作成された回転角指令と、設定されたレーザ発振トリガフラグとを、加工穴のデータとのセットとして、メモリーに保存する。
指令生成部21は、ステップS11にて作成されたテーブル位置指令をXYテーブル制御部25へ出力する。XYテーブル制御部25は、テーブル位置指令に応じてXYテーブル12を移動させる。XYテーブル制御部25は、加工の目的とする加工エリア30がメインガルバノスキャナ9a,9bのレーザ走査エリアに入るように、XYテーブル12を位置決めする(ステップS13)。
指令生成部21は、ステップS12にて作成された回転角指令をガルバノスキャナ制御部23へ出力する。ガルバノスキャナ制御部23は、回転角指令に応じて、サブガルバノスキャナ7a,7bおよびメインガルバノスキャナ9a,9bの回転角を制御する(ステップS14)。
指令生成部21は、レーザ発振トリガフラグがONに設定されているレーザ発振器3a,3bに対するレーザ発振トリガ信号をレーザ発振器制御部22へ出力する。レーザ発振器制御部22には、サブガルバノスキャナ7a,7bおよびメインガルバノスキャナ9a,9bへの回転角指令と現在の回転角とが入力される。レーザ発振器制御部22は、指令された回転角に現在の回転角が到達したと判断あるいは推定した場合に、レーザ発振トリガ信号を出力する。
レーザ発振トリガ信号が入力されると、レーザ発振器3a,3bは、レーザ発振指令に設定されたピークパワー、パルス幅、パルス数、パルス周波数のレーザパルスを、レーザ光2a,2bとして出力する(ステップS15)。レーザ加工装置1は、レーザ光2a,2bの照射によりレーザ加工穴13a,13bを形成する。
あるレーザ加工穴13a,13bの形成を終えると、指令生成部21は、当該加工エリア30内の全ての加工穴の加工を終了したか否かを判断する(ステップS16)。当該加工エリア内30に加工が済んでいない加工穴がある場合(ステップS16、No)、指令生成部21は、次に加工する加工穴のデータを読み込む(ステップS17)。また、指令生成部21は、当該加工穴のデータとセットとされている回転角指令とレーザ発振トリガフラグとを読み込む。ステップS14に戻って、ガルバノスキャナ制御部23は、読み込まれた回転角指令に応じて、サブガルバノスキャナ7a,7bの回転角を制御する。
一方、当該加工エリア30内の全ての加工穴の加工を終了した場合(ステップS16、Yes)、指令生成部21は、被加工物11における全ての加工エリア30の加工を終了したか否かを判断する(ステップS18)。
被加工物11に加工が済んでいない加工エリア30がある場合(ステップS18、No)、指令生成部21は、次に加工を施す加工エリア30についての指令を読み込む(ステップS19)。指令生成部21は、次に加工を施す加工エリア30に対するテーブル位置指令を読み込む。指令生成部21は、次の加工エリア30の加工穴のデータ、回転角指令およびレーザ発振トリガフラグを読み込む。ステップS13に戻って、XYテーブル制御部25は、次の加工エリア30がメインガルバノスキャナ9a,9bのレーザ走査エリアに入るように、XYテーブル12を移動および位置決めする。
一方、被加工物11の全ての加工エリア30への加工が終了した場合(ステップS18、Yes)、レーザ加工装置1は、当該被加工物11の加工を終了する。
実施の形態1によると、レーザ加工装置1は、1つのFθレンズ10を透過した2本のレーザ光2a,2bによる2穴同時加工を可能とすることで、高速かつ省スペースでレーザ加工を実現できる。
レーザ加工装置1は、レーザ発振トリガ信号を制御することで、2穴同時加工と1穴加工とを切り換え可能とする。レーザ加工装置1は、ガルバノスキャナによる回避動作を行う場合に比べて、回避動作のための時間が不要となる分、2穴同時加工と1穴加工との高速な切り換えが可能となる。レーザ加工装置1は、短い加工時間でのレーザ加工を実現できる。
レーザ加工装置1は、2穴同時加工におけるレーザ加工量が均等となるようにレーザ光2a,2bのパワーを補正可能とすることで、2点に対する均等なレーザ穴加工を実施できる。
仮に、1つのレーザ発振器からの1本のレーザ光を2本に分光して2穴同時加工を実施する場合、加工に使用されるレーザ光のピークパワーは、レーザ発振器からの出力時に対し半減することとなる。本実施の形態によると、レーザ加工装置1は、2つのレーザ発振器3a,3bからのレーザ光2a,2bによる2穴同時加工を実施することで、高いピークパワーでの加工を実現可能とする。レーザ加工装置1は、ピークパワーを要する材料である金属およびガラスに対しても短時間での加工が可能となる。また、熱の影響による加工品質の悪化を抑制できる。
以上により、レーザ加工装置1は、同時多点照射によるレーザ加工において、省スペースで、高速かつ高品質なレーザ加工を実現できるという効果を奏する。
実施の形態2.
図6は、本発明の実施の形態2にかかるレーザ加工装置41の構成を示す図である。実施の形態2にかかるレーザ加工装置41は、複数の加工ヘッドを備える。複数の加工ヘッドを備えることで、レーザ加工装置41は、高速なレーザ加工を可能とする。上記の実施の形態1と同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
レーザ加工装置41は、例えば2つの加工ヘッド16a(第1の加工ヘッド),16b(第2の加工ヘッド)と、レーザ発振器3a,3b、分光調整手段42a,42b、偏光ビームスプリッタ43a,43b、ベンドミラー45、偏光手段4a,4b,4c,4d、XYテーブル12、レーザパワーセンサ14および制御部50を備える。
XYテーブル12上には、2つの被加工物11a(第1の被加工物),11b(第2の被加工物)が載置される。レーザ加工装置41は、被加工物11a,11bへレーザ光44a,44b,44c,44dを同時に照射することで、被加工物11aに対して2か所および被加工物11bに対して2か所、計4か所の穴加工を同時に行うことができる。
分光調整手段42aは、偏光ビームスプリッタ43aでの分光比率を調整する第1の分光調整手段である。分光調整手段42aは、レーザ発振器3aからのレーザ光2aのうち特定の直線偏光を通過させる。分光調整手段42bは、偏光ビームスプリッタ43bでの分光比率を調整する第2の分光調整手段である。分光調整手段42bは、レーザ発振器3bからのレーザ光2bのうち特定の直線偏光を通過させる。分光調整手段42a,42bは、例えば波長板である。分光調整手段42a,42bの回転を調整することで、レーザ光2a,2bの偏光方向を調整可能とする。
偏光ビームスプリッタ43aは、レーザ発振器3aから分光調整手段42aを経たレーザ光2aを、加工ヘッド16aへ向かう光路と加工ヘッド16bへ向かう光路とへ分岐させる第1の分光手段である。偏光ビームスプリッタ43bは、レーザ発振器3bから分光調整手段42bを経たレーザ光2bを、加工ヘッド16aへ向かう光路と加工ヘッド16bへ向かう光路とへ分岐させる第2の分光手段である。
偏光ビームスプリッタ43aは、例えば、入射したレーザ光2aのうちS偏光を反射し、P偏光を透過させる。偏光ビームスプリッタ43bは、例えば、入射したレーザ光2bのうちS偏光を反射し、P偏光を透過させる。偏光ビームスプリッタ43a,43bは、45度の偏光方向の直線偏光を、S偏光とP偏光とにほぼ均等に分光する。なお、偏光ビームスプリッタ43a,43bは、45度の偏光方向の直線偏光に代えて、円偏光を分光するものであっても良い。偏光ビームスプリッタ43a,43bは、円偏光を、S偏光とP偏光とにほぼ均等に分光する。
偏光ビームスプリッタ43aは、入射したレーザ光2aを、P偏光であるレーザ光44aと、S偏光であるレーザ光44cとに分光する。偏光ビームスプリッタ43bは、入射したレーザ光2bを、P偏光であるレーザ光44bと、S偏光であるレーザ光44dとに分光する。分光調整手段42a,42bにてレーザ光2a,2bの偏光方向をそれぞれ調整することで、偏光ビームスプリッタ43a,43bは、いずれも均等なパワーのレーザ光44a,44b,44c,44dを射出する。なお、偏光ビームスプリッタ43a,43bの反射および透過特性は、適宜変更しても良い。レーザ光44aは、第1の加工ヘッドへ入射する第1のレーザ光である。レーザ光44bは、第1の加工ヘッドへ入射する第2のレーザ光である。レーザ光44cは、第2の加工ヘッドへ入射する第1のレーザ光である。レーザ光44dは、第2の加工ヘッドへ入射する第2のレーザ光である。
ベンドミラー45は、レーザ光44a,44b,44c,44dの光路にそれぞれ設けられている。レーザ光44aの光路に設けられたベンドミラー45は、レーザ光44aを加工ヘッド16aへ導く。レーザ光44bの光路に設けられたベンドミラー45は、レーザ光44bを加工ヘッド16aへ導く。レーザ光44cの光路に設けられたベンドミラー45は、レーザ光44cを加工ヘッド16bへ導く。レーザ光44dの光路に設けられたベンドミラー45は、レーザ光44dを加工ヘッド16bへ導く。
偏光手段4aは、偏光ビームスプリッタ43aからのレーザ光44aのうち特定の直線偏光を通過させる偏光手段である。偏光手段4bは、偏光ビームスプリッタ43bからのレーザ光44bのうち特定の直線偏光を通過させる偏光手段である。偏光手段4cは、偏光ビームスプリッタ43aからのレーザ光44cのうち特定の直線偏光を通過させる偏光手段である。偏光手段4dは、偏光ビームスプリッタ43bからのレーザ光44dのうち特定の直線偏光を通過させる偏光手段である。
偏光手段4aおよび偏光手段4dは、例えばS偏光を通過させる。偏光手段4b,4cは、例えばP偏光を通過させる。偏光手段4a,4b,4c,4dの回転を調整することで、レーザ光44a,44b,44c,44dの偏光方向が調整される。
第1の加工ヘッドである加工ヘッド16aには、偏光ビームスプリッタ43aからのレーザ光44aと、偏光ビームスプリッタ43bからのレーザ光44bが入射する。第2の加工ヘッドである加工ヘッド16bは、偏光ビームスプリッタ43aからのレーザ光44cと、偏光ビームスプリッタ43bからのレーザ光44dが入射する。
加工ヘッド16aは、XYテーブル12に載置された一方の被加工物11aに対し、2つのレーザ光44a,44bを照射させて、レーザ加工穴13a,13bを形成する。加工ヘッド16bは、XYテーブル12に載置された他方の被加工物11bに対し、2つのレーザ光44c,44dを照射させて、レーザ加工穴13c,13dを形成する。
レーザ加工装置41は、各加工ヘッド16a,16bを使用することで、各被加工物11a,11bへ同じパターンのレーザ穴加工を行う。レーザ加工装置41は、加工ヘッドの数を増加させるほど、多くの被加工物に対して同時にレーザ穴加工を施すことができる。レーザ加工装置41は、加工ヘッドの数に比例して生産性を高めることができる。
図7は、第1の加工ヘッドの内部構成を示す図である。第1の加工ヘッドである加工ヘッド16aは、ベンドミラー5、サブガルバノスキャナ7a,7b、偏光ビームスプリッタ8a、メインガルバノスキャナ9a,9b、Fθレンズ10aおよびビジョンセンサ15aを備える。
ベンドミラー5は、加工ヘッド16aへ入射したレーザ光44aの光路とレーザ光44bの光路とに設けられている。レーザ光44aの光路に設けられたベンドミラー5は、レーザ光44aを反射して、サブガルバノスキャナ7aへ導く。レーザ光44bの光路に設けられたベンドミラー5は、レーザ光44bを反射して、サブガルバノスキャナ7bへ導く。
サブガルバノスキャナ7aは、レーザ発振器3aからのレーザ光44aを第1方向へ偏向させる第1のサブガルバノスキャナである。サブガルバノスキャナ7bは、レーザ発振器3bからのレーザ光44bを第2方向へ偏向させる第2のサブガルバノスキャナである。
偏光ビームスプリッタ8aは、サブガルバノスキャナ7aからのレーザ光44aと、サブガルバノスキャナ7bからのレーザ光44bとを混合するレーザ混合手段である。偏光ビームスプリッタ8aは、S偏光であるレーザ光44aを反射し、P偏光であるレーザ光44bを透過させる偏光特性を備える。
メインガルバノスキャナ9aは、偏光ビームスプリッタ8aからのレーザ光44a,44bを第1方向へ偏向させる第1のメインガルバノスキャナである。メインガルバノスキャナ9bは、偏光ビームスプリッタ8aからのレーザ光44a,44bを第2方向へ偏向させる第2のメインガルバノスキャナである。
fθレンズ10aは、メインガルバノスキャナ9a,9bからのレーザ光44a,44bをそれぞれ集光する。ビジョンセンサ15aは、レーザ加工穴13a,13bの穴径および加工位置を計測するための画像を撮影するCCDカメラを備える。
図8は、第2の加工ヘッドの内部構成を示す図である。第2の加工ヘッドである加工ヘッド16bは、ベンドミラー5、サブガルバノスキャナ7c,7d、偏光ビームスプリッタ8b、メインガルバノスキャナ9c,9d、Fθレンズ10bおよびビジョンセンサ15bを備える。加工ヘッド16bは、加工ヘッド16aと同様の構成を備える。
ベンドミラー5は、加工ヘッド16bへ入射したレーザ光44cの光路とレーザ光44dの光路とに設けられている。レーザ光44cの光路に設けられたベンドミラー5は、レーザ光44cを反射して、サブガルバノスキャナ7cへ導く。レーザ光44dの光路に設けられたベンドミラー5は、レーザ光44dを反射して、サブガルバノスキャナ7dへ導く。
サブガルバノスキャナ7cは、レーザ発振器3aからのレーザ光44cを第1方向へ偏向させる第1のサブガルバノスキャナである。サブガルバノスキャナ7dは、レーザ発振器3bからのレーザ光44dを第2方向へ偏向させる第2のサブガルバノスキャナである。
偏光ビームスプリッタ8bは、サブガルバノスキャナ7cからのレーザ光44cと、サブガルバノスキャナ7dからのレーザ光44dとを混合するレーザ混合手段である。偏光ビームスプリッタ8bは、P偏光であるレーザ光44cを反射し、S偏光であるレーザ光44dを透過させる偏光特性を備える。
メインガルバノスキャナ9cは、偏光ビームスプリッタ8bからのレーザ光44c,44dを第1方向へ偏向させる第1のメインガルバノスキャナである。メインガルバノスキャナ9dは、偏光ビームスプリッタ8bからのレーザ光44c,44dを第2方向へ偏向させる第2のメインガルバノスキャナである。
fθレンズ10bは、メインガルバノスキャナ9c,9dからのレーザ光44c,44dをそれぞれ集光する。ビジョンセンサ15bは、レーザ加工穴13c,13dの穴径および加工位置を計測するための画像を撮影するCCDカメラを備える。
制御部50は、レーザ加工装置41の全体を制御する。制御部50は、指令生成部21、レーザ発振器制御部22、ガルバノスキャナ制御部51、ビジョンセンサ制御部52、XYテーブル制御部25およびレーザパワーセンサ制御部26を備える。
ガルバノスキャナ制御部51は、指令生成部21から出力される回転角指令に基づいて、サブガルバノスキャナ7a,7b,7c,7dおよびメインガルバノスキャナ9a,9b,9c,9dの回転角を制御する。
ビジョンセンサ制御部52は、被加工物11aに形成されたレーザ加工穴13a,13bを、ビジョンセンサ15aを用いて計測する場合において、ビジョンセンサ15aを制御する。また、ビジョンセンサ制御部52は、被加工物11bに形成されたレーザ加工穴13c,13dを、ビジョンセンサ15bを用いて計測する場合において、ビジョンセンサ15bを制御する。ビジョンセンサ制御部52は、ビジョンセンサ15a,15bで得られた画像情報を基に、レーザ加工穴13a,13b,13c,13dの穴径、加工位置および真円度を求める演算処理を行う。ビジョンセンサ15a,15bおよびビジョンセンサ制御部52は、被加工物11a,11bに形成されたレーザ加工穴13a,13b,13c,13dに対する各種計測を行う加工穴計測手段である。
次に、レーザ加工装置41がレーザ加工の前に実施するレーザ発振器3a,3bのキャリブレーション動作について説明する。図9は、レーザ発振器3a,3bのキャリブレーション動作の手順を説明するフローチャートである。図9に示す手順による処理は、偏光ビームスプリッタ43a,43bにて分光されたレーザ光44a,44b,44c,44dが被加工物11a,11bに照射される際にレーザ加工量が同じになるように、レーザ光44a,44b,44c,44dのパワーを合わせる処理である。
レーザ発振器3a,3bに同じレーザ発振条件を設定しても、被加工物11aに照射されるレーザ光44a,44b、被加工物11bに照射されるレーザ光44c,44dの各パワーが相違することがある。その原因は、例えば、レーザ発振器3a,3bの個体差、レーザ光44a,44b,44c,44dの各光路におけるレーザパワーの損失の違いなどによる。また、偏光ビームスプリッタ43a,43bでの分光比率が不均等であることも、原因の1つとなり得る。以下、図9を参照して、レーザ発振器3a,3bのキャリブレーション動作の手順の詳細を説明する。
ガルバノスキャナ制御部51は、サブガルバノスキャナ7a,7b,7c,7dおよびメインガルバノスキャナ9a,9b,9c,9dを、回転角の基準とする原点に位置決めする(ステップS20)。
レーザ加工装置41は、レーザ光44aの計測、および偏光手段4aの調整を実施し、計測値Pmaをメモリーに保存する(ステップS21)。XYテーブル制御部25は、レーザパワーセンサ14がレーザ光44aのパワーを計測できる位置に、XYテーブル12を移動させる。
レーザ発振器制御部22は、レーザ発振器3aに対し、あらかじめ設定されたキャリブレーション用のレーザ発振指令に基づいて、キャリブレーション用のレーザパルスのピークパワーPc0、パルス幅Wc0、パルス数Nc0、パルス周波数Fc0を設定する。
レーザ発振器制御部22は、これらの設定値をレーザ発振器3aへ送るとともに、レーザ発振トリガ信号を一定時間間隔毎に出力する。レーザ発振器3aは、かかるレーザ発振トリガ信号に応じて、パルス状のレーザ光2aを一定時間連続出力する。レーザパワーセンサ14は、レーザ光44aのパワーを計測する。レーザパワーセンサ制御部26は、レーザパワーセンサ14で計測されたレーザ平均パワーをモニタする。
作業者は、偏光手段4aの回転を調整することで、レーザ平均パワーが最大となるようにレーザ光44aの偏光方向を調整する。レーザパワーセンサ制御部26は、レーザ平均パワーの最大値Pmaをメモリーに保存する。レーザ発振器制御部22がレーザ発振トリガ信号の出力を停止することで、レーザ発振器3aは、レーザ光2aの出力を停止する。
レーザ加工装置41は、ステップS21と同様に、レーザ光44cの計測、および偏光手段4cの調整を実施し、計測値Pmcをメモリーに保存する(ステップS22)。XYテーブル制御部25は、レーザパワーセンサ14がレーザ光44cのパワーを計測できる位置に、XYテーブル12を移動させる。
レーザ発振器制御部22は、レーザ発振器3aに対し、あらかじめ設定されたキャリブレーション用のレーザ発振指令に基づいて、キャリブレーション用のレーザパルスのピークパワーPc0、パルス幅Wc0、パルス数Nc0、パルス周波数Fc0を設定する。
レーザ発振器制御部22は、これらの設定値をレーザ発振器3aへ送るとともに、レーザ発振トリガ信号を一定時間間隔毎に出力する。レーザ発振器3aは、かかるレーザ発振トリガ信号に応じて、パルス状のレーザ光2aを一定時間連続出力する。レーザパワーセンサ14は、レーザ光44cのパワーを計測する。レーザパワーセンサ制御部26は、レーザパワーセンサ14で計測されたレーザ平均パワーをモニタする。
作業者は、偏光手段4cの回転を調整することで、レーザ平均パワーが最大となるようにレーザ光44cの偏光方向を調整する。レーザパワーセンサ制御部26は、レーザ平均パワーの最大値Pmcをメモリーに保存する。レーザ発振器制御部22がレーザ発振トリガ信号の出力を停止することで、レーザ発振器3aは、レーザ光2aの出力を停止する。
次に、作業者は、レーザ光44aのレーザ平均パワーとレーザ光44cのレーザ平均パワーとが等しくなるように、分光調整手段42aの回転を調整する。レーザパワーセンサ制御部26は、分光調整手段42aの調整後におけるレーザ光44aおよびレーザ光44cのレーザ平均パワーPmacをメモリーに保存する(ステップS23)。
ステップS21で保存されたレーザ平均パワーの計測値Pmaと、ステップS22で保存されたレーザ平均パワーの計測値Pmcとに差がある場合、偏光ビームスプリッタ43aでの分光が不均等であることが原因と考えられる。そこで、分光調整手段42aの回転を調整することで、偏光ビームスプリッタ43aで分光されるレーザ光44aおよびレーザ光44cが均等となるように、レーザ光2aの偏光方向が調整される。
分光調整手段42aの調整後におけるレーザ光44aおよびレーザ光44cのレーザ平均パワーPmacは、次の式(5)により求められる。
Pmac=(Pma+Pmc)/2 ・・・(5)
ステップS23では、レーザ発振器制御部22からレーザ発振器3aへ再度レーザ発振トリガ信号を出力する。レーザパワーセンサ14は、レーザ光44cのレーザ平均パワーPmcを計測する。分光調整手段42aは、計測されるレーザ平均パワーPmcがPmacとなるように回転が調整される。
計測されるレーザ平均パワーPmcがPmacと一致すると、レーザパワーセンサ制御部26は、得られたレーザ平均パワーPmacをメモリーに保存する。レーザ発振器制御部22がレーザ発振トリガ信号の出力を停止することで、レーザ発振器3aは、レーザ光2aの出力を停止する。
次に、レーザ加工装置41は、レーザ光44bの計測、および偏光手段4bの調整を実施し、計測値Pmbをメモリーに保存する(ステップS24)。XYテーブル制御部25は、レーザパワーセンサ14がレーザ光44bのパワーを計測できる位置に、XYテーブル12を移動させる。
レーザ発振器制御部22は、レーザ発振器3bに対し、あらかじめ設定されたキャリブレーション用のレーザ発振指令に基づいて、レーザ発振器3aと同じキャリブレーション用のレーザパルスのピークパワーPc0、パルス幅Wc0、パルス数Nc0、パルス周波数Fc0を設定する。
レーザ発振器制御部22は、これらの設定値をレーザ発振器3bへ送るとともに、レーザ発振トリガ信号を一定時間間隔毎に出力する。レーザ発振器3bは、かかるレーザ発振トリガ信号に応じて、パルス状のレーザ光2bを一定時間連続出力する。レーザパワーセンサ14は、レーザ光44bのパワーを計測する。レーザパワーセンサ制御部26は、レーザパワーセンサ14で計測されたレーザ平均パワーをモニタする。
作業者は、偏光手段4bの回転を調整することで、レーザ平均パワーが最大となるようにレーザ光44bの偏光方向を調整する。レーザパワーセンサ制御部26は、レーザ平均パワーの最大値Pmbをメモリーに保存する。レーザ発振器制御部22がレーザ発振トリガ信号の出力を停止することで、レーザ発振器3bは、レーザ光2bの出力を停止する。
レーザ加工装置41は、ステップS24と同様に、レーザ光44dの計測、および偏光手段4dの調整を実施し、計測値Pmdをメモリーに保存する(ステップS25)。XYテーブル制御部25は、レーザパワーセンサ14がレーザ光44dのパワーを計測できる位置に、XYテーブル12を移動させる。
レーザ発振器制御部22は、レーザ発振器3bに対し、あらかじめ設定されたキャリブレーション用のレーザ発振指令に基づいて、キャリブレーション用のレーザパルスのピークパワーPc0、パルス幅Wc0、パルス数Nc0、パルス周波数Fc0を設定する。
レーザ発振器制御部22は、これらの設定値をレーザ発振器3bへ送るとともに、レーザ発振トリガ信号を一定時間間隔毎に出力する。レーザ発振器3bは、かかるレーザ発振トリガ信号に応じて、パルス状のレーザ光2bを一定時間連続出力する。レーザパワーセンサ14は、レーザ光44dのパワーを計測する。レーザパワーセンサ制御部26は、レーザパワーセンサ14で計測されたレーザ平均パワーをモニタする。
作業者は、偏光手段4dの回転を調整することで、レーザ平均パワーが最大となるようにレーザ光44dの偏光方向を調整する。レーザパワーセンサ制御部26は、レーザ平均パワーの最大値Pmdをメモリーに保存する。レーザ発振器制御部22がレーザ発振トリガ信号の出力を停止することで、レーザ発振器3bは、レーザ光2bの出力を停止する。
次に、作業者は、レーザ光44bのレーザ平均パワーとレーザ光44dのレーザ平均パワーとが等しくなるように、分光調整手段42bの回転を調整する。レーザパワーセンサ制御部26は、分光調整手段42bの調整後におけるレーザ光44bおよびレーザ光44dのレーザ平均パワーPmbdをメモリーに保存する(ステップS26)。
ステップS24で保存されたレーザ平均パワーの計測値Pmbと、ステップS25で保存されたレーザ平均パワーの計測値Pmdとに差がある場合、偏光ビームスプリッタ43bでの分光が不均等であることが原因と考えられる。そこで、分光調整手段42bの回転を調整することで、偏光ビームスプリッタ43bで分光されるレーザ光44bおよびレーザ光44dが均等となるように、レーザ光2bの偏光方向が調整される。
分光調整手段42bの調整後におけるレーザ光44bおよびレーザ光44dのレーザ平均パワーPmbdは、次の式(6)により求められる。
Pmbd=(Pmb+Pmd)/2 ・・・(6)
ステップS26では、レーザ発振器制御部22からレーザ発振器3bへ再度レーザ発振トリガ信号を出力する。レーザパワーセンサ14は、レーザ光44dのレーザ平均パワーPmdを計測する。分光調整手段42bは、計測されるレーザ平均パワーPmdがPmbdとなるように回転が調整される。
計測されるレーザ平均パワーPmdがPmbdと一致すると、レーザパワーセンサ制御部26は、得られたレーザ平均パワーPmbdをメモリーに保存する。レーザ発振器制御部22がレーザ発振トリガ信号の出力を停止することで、レーザ発振器3bは、レーザ光2bの出力を停止する。
指令生成部21は、保存されたレーザ平均パワーPmac,Pmbdを使用して、補正係数Kbを算出する。補正係数Kbは、レーザ発振器3bに対するピークパワーあるいはパルス幅のレーザ発振指令設定値を補正するための係数とする。補正係数Kbは、例えば次の式(7)により求められる。
Kb=Pmac/Pmbd ・・・(7)
レーザ発振器3bに対するピークパワーの設定値に補正係数Kbが乗算されることで、レーザ加工装置41は、被加工物11aに照射されるレーザ光44aおよび被加工物11bに照射されるレーザ光44cのパワーと、被加工物11aに照射されるレーザ光44bおよび被加工物11bに照射されるレーザ光44dのパワーとを同じにすることができる。
また、被加工物11aに照射されるレーザ光44aと被加工物11bに照射されるレーザ光44cとは、ステップS23において、パワーが同じとなるように調整されている。被加工物11aに照射されるレーザ光44bと被加工物11bに照射されるレーザ光44dとは、ステップS26において、パワーが同じとなるように調整されている。これにより、レーザ加工装置41は、被加工物11a,11bに照射されるレーザ光44a,44b,44c,44dのパワーを同じにすることができる。
なお、レーザ加工装置41は、補正係数Kbを用いてピークパワーを補正する以外に、補正係数Kbを用いてパルス幅を補正しても良い。指令生成部21は、レーザ発振器3bに対する補正係数Kbに代えて、レーザ発振器3aに対する補正係数Ka(Ka=Pmbd/Pmacとする)を算出しても良い。補正係数Kaは、レーザ発振器3aに対するピークパワーあるいはパルス幅のレーザ発振指令設定値を補正するための係数とする。
指令生成部21は、このようにして求められたレーザ発振指令の補正係数Kaあるいは補正係数Kbをメモリーに保存する(ステップS27)。レーザ発振器3a,3bのキャリブレーション動作において、レーザ加工装置41は、ビジョンセンサ15a,15bの使用によるレーザ加工穴の計測を行うこととしても良い。
次に、レーザ加工装置41によるレーザ加工の動作について説明する。図10は、レーザ加工装置41によるレーザ加工の動作の手順を説明するフローチャートである。
レーザ加工装置41は、2つの加工ヘッド16a,16bをそれぞれ実施の形態1の加工ヘッド16(図1参照)と同様に動作させることで、被加工物11a,11bのレーザ穴加工を実施する。被加工物11aと被加工物11bとは、加工ヘッド16aと加工ヘッド16bとの間隔と同一の間隔で、XYテーブル12に載置されている。
指令生成部21は、加工プログラムであるNCプログラムを読み込む(ステップS30)。指令生成部21は、加工プログラムに記載されている加工穴のデータとレーザ加工の条件を基に、加工穴のXY座標と、レーザ発振指令をメモリーに保存する。レーザ発振指令は、レーザパルスのピークパワー、パルス幅、パルス数、パルス周波数の情報を含む。
指令生成部21は、保存されたレーザ発振指令をレーザ発振器制御部22へ送る。レーザ発振器制御部22は、送られたレーザ発振指令を、キャリブレーション動作にて求められた補正係数に基づいて修正する。レーザ発振器制御部22は、レーザ発振器3a,3bに対し、修正されたレーザ発振指令を設定する。
指令生成部21は、被加工物11a,11bを、例えば図2に示すように複数の加工エリア30に分割し、各加工穴のXY座標に応じて、加工エリア30ごとに加工穴を割り付ける。指令生成部21は、各加工エリア30の中心座標に応じたテーブル位置指令を作成する(ステップS31)。
次に、指令生成部21は、被加工物11a,11bの双方に対し、加工エリア30内に割り付けられた加工穴が、図3に示すように2穴同時加工が可能な加工穴位置31、および1穴加工による加工穴位置32のいずれに該当するかを分類する。また、指令生成部21は、加工時間が最短となるように各加工穴の加工順序の並べ替えを行う。
指令生成部21は、被加工物11aにおいて2穴同時加工が可能な加工穴に対しては、2か所へ同時にレーザ光44a,44bをそれぞれ照射可能とするメインガルバノスキャナ9a,9bおよびサブガルバノスキャナ7a,7bの各回転角を算出する。指令生成部21は、被加工物11bにおいて2穴同時加工が可能な加工穴に対しては、2か所へ同時にレーザ光44c,44dをそれぞれ照射可能とするメインガルバノスキャナ9c,9dおよびサブガルバノスキャナ7c,7dの各回転角を算出する。また、指令生成部21は、レーザ発振器3a,3bの双方に対するレーザ発振トリガフラグをON(例えば「1」)に設定する。
指令生成部21は、被加工物11aにおいて1穴加工とする加工穴に対しては、レーザ光44a,44bのいずれかを、レーザ穴加工に使用するレーザ光として選択する。指令生成部21は、サブガルバノスキャナ7a,7bのうち、選択されたレーザ光に対応する一方と、メインガルバノスキャナ9a,9bの各回転角を算出する。
レーザ光44aを選択する場合、指令生成部21は、レーザ発振器3aに対してレーザ発振トリガフラグをONに設定し、レーザ発振器3bに対してレーザ発振トリガフラグをOFF(例えば「0」)に設定する。レーザ光44bを選択する場合、指令生成部21は、レーザ発振器3bに対してレーザ発振トリガフラグをONに設定し、レーザ発振器3aに対してレーザ発振トリガフラグをOFFに設定する。
指令生成部21は、被加工物11bにおいて1穴加工とする加工穴に対しては、レーザ光44c,44dのいずれかを、レーザ穴加工に使用するレーザ光として選択する。指令生成部21は、サブガルバノスキャナ7c,7dのうち、選択されたレーザ光に対応する一方と、メインガルバノスキャナ9c,9dの各回転角を算出する。
レーザ光44cを選択する場合、指令生成部21は、レーザ発振器3aに対してレーザ発振トリガフラグをONに設定し、レーザ発振器3bに対してレーザ発振トリガフラグをOFFに設定する。レーザ光44dを選択する場合、指令生成部21は、レーザ発振器3bに対してレーザ発振トリガフラグをONに設定し、レーザ発振器3aに対してレーザ発振トリガフラグをOFFに設定する。
このようにして、指令生成部21は、サブガルバノスキャナ7a,7b,7c,7dおよびメインガルバノスキャナ9a,9b,9c,9dに対する回転角指令を作成する(ステップS32)。指令生成部21は、作成された回転角指令と、設定されたレーザ発振トリガフラグとを、加工穴のデータとのセットとして、メモリーに保存する。
指令生成部21は、ステップS31にて作成されたテーブル位置指令をXYテーブル制御部25へ出力する。XYテーブル制御部25は、テーブル位置指令に応じてXYテーブル12を移動させる。XYテーブル制御部25は、加工ヘッド16aに対しては加工の目的とする加工エリア30がメインガルバノスキャナ9a,9bのレーザ走査エリアに入るように、また、加工ヘッド16bに対しては加工の目的とする加工エリア30がメインガルバノスキャナ9c,9dのレーザ走査エリアに入るように、XYテーブル12を位置決めする(ステップS33)。
指令生成部21は、ステップS32にて作成された回転角指令をガルバノスキャナ制御部51へ出力する。ガルバノスキャナ制御部51は、回転角指令に応じて、サブガルバノスキャナ7a,7b,7c,7dおよびメインガルバノスキャナ9a,9b,9c,9dの回転角を制御する(ステップS34)。
指令生成部21は、レーザ発振トリガフラグがONに設定されているレーザ発振器3a,3bに対するレーザ発振トリガ信号をレーザ発振器制御部22へ出力する。レーザ発振器制御部22には、サブガルバノスキャナ7a,7b,7c,7dおよびメインガルバノスキャナ9a,9b,9c,9dへの回転角指令と現在の回転角とが入力される。レーザ発振器制御部22は、指令された回転角に現在の回転角が到達したと判断あるいは推定した場合に、レーザ発振トリガ信号を出力する。
レーザ発振トリガ信号が入力されると、レーザ発振器3a,3bは、レーザ発振指令に設定されたピークパワー、パルス幅、パルス数、パルス周波数のレーザパルスを、レーザ光2a,2bとして出力する(ステップS35)。レーザ加工装置41は、レーザ光44a,44bの照射により、被加工物11aにレーザ加工穴13a,13bを形成する。レーザ加工装置41は、レーザ光44c,44dの照射により、被加工物11bにレーザ加工穴13c,13dを形成する。
あるレーザ加工穴13a,13b,13c,13dの形成を終えると、指令生成部21は、当該加工エリア30内の全ての加工穴の加工を終了したか否かを判断する(ステップS36)。当該加工エリア内30に加工が済んでいない加工穴がある場合(ステップS36、No)、指令生成部21は、次に加工する加工穴のデータを読み込む(ステップS37)。また、指令生成部21は、当該加工穴のデータとセットとされている回転角指令とレーザ発振トリガフラグとを読み込む。ステップS34に戻って、ガルバノスキャナ制御部51は、読み込まれた回転角指令に応じて、サブガルバノスキャナ7a,7b,7c,7dの回転角を制御する。
一方、当該加工エリア30内の全ての加工穴の加工を終了した場合(ステップS36、Yes)、指令生成部21は、被加工物11a,11bにおける全ての加工エリア30の加工を終了したか否かを判断する(ステップS38)。
被加工物11a,11bに加工が済んでいない加工エリア30がある場合(ステップS38、No)、指令生成部21は、次に加工を施す加工エリア30についての指令を読み込む(ステップS39)。指令生成部21は、次に加工を施す加工エリア30に対するテーブル位置指令を読み込む。指令生成部21は、次の加工エリア30の加工穴のデータ、回転角指令およびレーザ発振トリガフラグを読み込む。
ステップS33に戻って、XYテーブル制御部25は、加工ヘッド16aに対しては次の加工エリア30がメインガルバノスキャナ9a,9bのレーザ走査エリアに入るように、また、加工ヘッド16bに対しては次の加工エリア30がメインガルバノスキャナ9c,9dのレーザ走査エリアに入るように、XYテーブル12を移動および位置決めする。
一方、被加工物11a,11bの全ての加工エリア30への加工が終了した場合(ステップS38、Yes)、レーザ加工装置41は、当該被加工物11a,11bの加工を終了する。
実施の形態2によると、レーザ加工装置41は、1つのFθレンズ10aを透過した2本のレーザ光44a,44bによる2穴同時加工と、1つのFθレンズ10bを透過した2本のレーザ光44c,44dによる2穴同時加工とを可能とする。レーザ加工装置41は、高速かつ省スペースでレーザ加工を実現できる。実施の形態2においても、レーザ加工装置41は、同時多点照射によるレーザ加工において、省スペースで、高速かつ高品質なレーザ加工を実現できるという効果を奏する。
レーザ加工装置41は、複数の加工ヘッド16a,16bを備えることで、複数の被加工物11a,11bの同時加工を可能とする。これにより、レーザ加工装置41は、複数の被加工物11a,11bの高速なレーザ加工を実現できる。
また、レーザ加工装置41は、実施の形態1のレーザ加工装置1と同様、レーザ発振トリガ信号を制御することで、被加工物11aおよび被加工物11b上の2穴同時加工と1穴加工とを切り換え可能とする。レーザ加工装置41は、ガルバノスキャナによる回避動作を行う場合に比べて、回避動作のための時間が不要となる分、被加工物11aおよび被加工物11b上の2穴同時加工と1穴加工との高速な切り換えが可能となり、短い加工時間でのレーザ加工を実現できる。
レーザ加工装置41は、複数の被加工物11a,11bのそれぞれに対し、2穴同時加工におけるレーザ加工量が均等となるように、レーザ光44a,44b,44c,44dのパワーを補正可能とする。レーザ加工装置41は、複数の被加工物11a,11bのそれぞれにおいて、2点に対する均等なレーザ穴加工を実施できる。また、レーザ加工装置41は、複数の被加工物11a,11b同士においても均等なレーザ穴加工を実施できる。
なお、偏光ビームスプリッタ8a,8bおよび偏光ビームスプリッタ43a,43bは、レーザ光の透過率と反射率とに差が生じる場合がある。例えば、レーザ光の透過率が99%であるのに対し、反射率が97%となることがある。透過率と反射率とに差が生じることで、レーザ加工装置41は、レーザ光44a,44b,44c,44dの各光路におけるパワーの損失に差が生じることとなる。
レーザ光44aは、偏光ビームスプリッタ43aを透過し、偏光ビームスプリッタ8aで反射するため、偏光ビームスプリッタ43aおよび偏光ビームスプリッタ8aを99%×97%の効率で通過する。レーザ光44bは、偏光ビームスプリッタ43bおよび偏光ビームスプリッタ8aのいずれも透過するため、偏光ビームスプリッタ43bおよび偏光ビームスプリッタ8aを99%×99%の効率で通過する。
レーザ光44cは、偏光ビームスプリッタ43aおよび偏光ビームスプリッタ8bのいずれでも反射するため、偏光ビームスプリッタ43aおよび偏光ビームスプリッタ8bを97%×97%の効率で通過する。レーザ光44dは、偏光ビームスプリッタ43bで反射し、偏光ビームスプリッタ8bを透過するため、偏光ビームスプリッタ43bおよび偏光ビームスプリッタ8bを97%×99%の効率で通過する。
レーザ加工装置41は、このような光路ごとのレーザパワーの損失に差が生じる場合も、被加工物11aへ入射するレーザ光44a,44bと被加工物11bへ入射するレーザ光44c,44dとのいずれもレーザ平均パワーが均等となるように補正することができる。
実施の形態3.
図11は、本発明の実施の形態3にかかるレーザ加工装置61の構成を示す図である。実施の形態3にかかるレーザ加工装置61は、複数の加工ヘッドを備える。また、レーザ加工装置61は、レーザ光44a,44b,44c,44dの各光路におけるパワーの損失の差を低減可能とする。上記の実施の形態1および2と同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
レーザ加工装置61は、例えば2つの加工ヘッド16a,16cと、レーザ発振器3a,3b、分光調整手段42a,42b、偏光ビームスプリッタ43a,43b、ベンドミラー45、偏光手段4a,4b,4c,4d、XYテーブル12、レーザパワーセンサ14および制御部50を備える。
偏光ビームスプリッタ43aは、例えば、入射したレーザ光2aのうちS偏光を反射し、P偏光を透過させる。偏光ビームスプリッタ43bは、例えば、入射したレーザ光2bのうちS偏光を反射し、P偏光を透過させる。偏光ビームスプリッタ43aは、入射したレーザ光2aを、P偏光であるレーザ光44aと、S偏光であるレーザ光44cとに分光する。偏光ビームスプリッタ43bは、入射したレーザ光2bを、S偏光であるレーザ光44bと、P偏光であるレーザ光44dとに分光する。なお、偏光ビームスプリッタ43a,43bの反射および透過特性は、適宜変更しても良い。
実施の形態2では、加工ヘッド16aへ入射するレーザ光44bは、レーザ光2bのうち偏光ビームスプリッタ43bを透過した成分であり、加工ヘッド16bへ入射するレーザ光44dは、レーザ光2bのうち偏光ビームスプリッタ43bで反射した成分である。これに対し、実施の形態3では、加工ヘッド16aへ入射するレーザ光44bは、レーザ光2bのうち偏光ビームスプリッタ43bで反射した成分とし、加工ヘッド16bへ入射するレーザ光44dは、レーザ光2bのうち偏光ビームスプリッタ43bを透過した成分とする。
第1の加工ヘッドである加工ヘッド16aは、例えば図7に示す実施の形態2の場合と同様の構成を備える。加工ヘッド16a内の偏光ビームスプリッタ8aは、レーザ光2aのうち偏光ビームスプリッタ43aを透過した成分であるレーザ光44aを反射させる。かつ、偏光ビームスプリッタ8aは、レーザ光2bのうち偏光ビームスプリッタ43bで反射した成分であるレーザ光44bを透過させる。
第2の加工ヘッドである加工ヘッド16cは、図8に示す実施の形態2の加工ヘッド16bとは異なる構成とする。図12は、第2の加工ヘッドの内部構成を示す図である。第2の加工ヘッドである加工ヘッド16cは、ベンドミラー5、サブガルバノスキャナ7c,7d、偏光ビームスプリッタ8b、メインガルバノスキャナ9c,9d、Fθレンズ10bおよびビジョンセンサ15bを備える。
偏光ビームスプリッタ8bは、サブガルバノスキャナ7cからのレーザ光44cと、サブガルバノスキャナ7dからのレーザ光44dとを混合するレーザ混合手段である。偏光ビームスプリッタ8bは、P偏光であるレーザ光44cを透過させ、S偏光であるレーザ光44dを反射する偏光特性を備える。
加工ヘッド16cは、偏光ビームスプリッタ8bの偏光特性、およびレーザ光44c,44dの光路の態様が、図8に示す加工ヘッド16bとは異なる。その他の要素については、加工ヘッド16cは、加工ヘッド16bと同様の構成を備える。加工ヘッド16c内の偏光ビームスプリッタ8bは、レーザ光2aのうち偏光ビームスプリッタ43aで反射した成分であるレーザ光44cを透過させる。かつ、偏光ビームスプリッタ8bは、レーザ光2bのうち偏光ビームスプリッタ43bを透過した成分であるレーザ光44dを反射させる。
例えば、偏光ビームスプリッタ8a,8bおよび偏光ビームスプリッタ43a,43bにおけるレーザ光の透過率を99%、反射率を97%とする。レーザ光44aは、偏光ビームスプリッタ43aを透過し、偏光ビームスプリッタ8aを反射するため、偏光ビームスプリッタ43aおよび偏光ビームスプリッタ8aを99%×97%の効率で通過する。レーザ光44bは、偏光ビームスプリッタ43bで反射し、偏光ビームスプリッタ8aを透過するため、偏光ビームスプリッタ43bおよび偏光ビームスプリッタ8aを97%×99%の効率で通過する。
レーザ光44cは、偏光ビームスプリッタ43aで反射し、偏光ビームスプリッタ8bを透過するため、偏光ビームスプリッタ43aおよび偏光ビームスプリッタ8bを97%×99%の効率で通過する。レーザ光44dは、偏光ビームスプリッタ43bを透過し、偏光ビームスプリッタ8bで反射するため、偏光ビームスプリッタ43bおよび偏光ビームスプリッタ8bを99%×97%の効率で通過する。
前記のように、レーザ加工装置61は、各レーザ光44a,44b,44c,44dについて、偏光ビームスプリッタ8a,8bおよび偏光ビームスプリッタ43a,43bにおける透過および反射の回数を揃えることで、光路ごとのレーザパワーの損失の差を低減できる。レーザ加工装置61は、例えばレーザピークパワーを最大限として行われるレーザ加工において、ばらつきが少なく良好な品質の加工を実現できる。レーザ加工装置61は、例えば、被加工物11a,11bが、レーザ加工において最大限のレーザピークパワーを要するような材料、例えば金属である場合に有用である。
実施の形態3においても、レーザ加工装置61は、同時多点照射によるレーザ加工において、省スペースで、高速かつ高品質なレーザ加工を実現できるという効果を奏する。レーザ加工装置61は、複数の被加工物11a,11bのそれぞれにおいて、2点に対する均等なレーザ穴加工を実施できる。また、レーザ加工装置61は、複数の被加工物11a,11b同士でも均等なレーザ穴加工を実施できる。
上記の各実施の形態において、例えば、レーザ発振器3a,3bは、それぞれの筐体内部に、レーザ光を増幅するレーザ共振器を備えている。レーザ加工装置1,41,61は、個別の筐体を備えるレーザ発振器3a,3bに代えて、複数のレーザ共振器を備える1台のレーザ発振器を備えるものであっても良い。この場合、レーザ発振器の筐体内に設けられた第1のレーザ共振器を第1のレーザ発振手段、第2のレーザ共振器を第2のレーザ発振手段とする。
実施の形態2および3にて、レーザ加工装置41,61は、加工ヘッドの数を3個以上としても良い。加工ヘッド数をN個(Nは1以上の整数)とすると、第1の分光手段は、第1のレーザ光をN本に分割し、第k(k=1,2,・・・N)番目に分光された第1のレーザ光を第k番目の加工ヘッドへ進行させる。第2の分光手段は、第2のレーザ光をN本に分割し、第k番目に分光された第2のレーザ光を第k番目の加工ヘッドへ進行させる。第1から第N番目の加工ヘッド内には、前記第1の分光手段から分光された第1のレーザ光を第1方向へ偏向させる第1のサブガルバノスキャナと、前記第2の分光手段から分光された第2のレーザ光を前記第1方向とは異なる第2方向へ偏向させる第2のサブガルバノスキャナと、前記第1のサブガルバノスキャナからの前記第1のレーザ光と、前記第2のサブガルバノスキャナからの前記第2のレーザ光とを混合するレーザ混合手段と、前記レーザ混合手段からの前記第1のレーザ光および前記第2のレーザ光を偏向させるメインガルバノスキャナと、前記メインガルバノスキャナからの前記第1のレーザ光および前記第2のレーザ光を集光するFθレンズと、を持つレーザ加工装置を構成しても良い。
これにより、レーザ加工装置41,61は、第1のレーザ光からN本に分光されたレーザ光と、第2のレーザ光からN本に分光されたレーザ光とを合わせた計2×N本のレーザ光を用いて、N個の被加工物を同時に加工することができる。前記レーザ加工装置41,61は、レーザ発振トリガ信号を制御することで、2×N本のレーザ光を使用する2穴同時加工と、N本のレーザ光を使用する1穴加工とを高速に切り換えることができる。
実施の形態4.
実施の形態1から3のレーザ加工装置1,41,61は、レーザ発振トリガ信号によりレーザ発振器3a,3bを個別に制御する。レーザ加工装置1,41,61は、1つの加工ヘッドで2穴同時加工と1穴加工との切り換えを高速にできるため、高速なレーザ加工が可能となる。実施の形態4のレーザ加工装置70は、1つのレーザ発振器3aを備える構成にて、2穴同時加工と1穴加工との高速な切り換えを可能とする。レーザ加工装置70は、レーザ発振器3aを1つとすることでコストを低減できる。
図13は、本発明の実施の形態4にかかるレーザ加工装置70の構成を示す図である。上記の実施の形態2と同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
レーザ加工装置70は、レーザ発振器3a、分光調整手段71,42a,42b、偏光ビームスプリッタ72,43a,43b、光スイッチ73、ベンドミラー45、偏光手段4a,4b,4c,4d、加工ヘッド16a,16b、XYテーブル12、レーザパワーセンサ14および制御部75を備える。制御部75は、光スイッチ制御部74を含む。
レーザ発振器3aは、レーザ光2を出力するレーザ発振手段である。分光調整手段71は、偏光ビームスプリッタ72での分光比率を調整する。分光調整手段71は、レーザ発振器3aからのレーザ光2のうち特定の直線偏光を通過させる。分光調整手段71は、例えば波長板である。分光調整手段71の回転を調整することで、レーザ光2の偏光方向を調整可能とする。
偏光ビームスプリッタ72は、レーザ光2を2つのレーザ光2a,2bに分岐させる第1の分光手段である。第1のレーザ光であるレーザ光2aは、第2の分光手段である偏光ビームスプリッタ43aへ向かう光路へ進行する。第2のレーザ光であるレーザ光2bは、第3の分光手段である偏光ビームスプリッタ43bへ向かう光路へ進行する。
光スイッチ73は、2つの偏光ビームスプリッタ72,43aの間の光路に配置されている。光スイッチ73は、偏光ビームスプリッタ72からのレーザ光2aを透過または遮断する。光スイッチ73は、外部信号に応じて、レーザ光2aの透過および遮断を高速に切り換え可能とする。光スイッチ73は、光学素子である音響光学素子(AOM)、あるいは電気光学素子(EOM)で構成されている。
光スイッチ73は、光スイッチ制御部74からONに設定された光スイッチ制御信号が入力されると瞬時に、レーザ光2aを透過させる状態となる。また光スイッチ73は、光スイッチ制御部74からOFFに設定された光スイッチ制御信号が入力されると瞬時に、レーザ光2aを遮断させる状態となる。光スイッチ73で遮断されたレーザ光2aは、光スイッチ73で図示しないダンパーに照射され、光スイッチ73からの射出が抑制されている。
分光調整手段42aは、光スイッチ73を透過したレーザ光2aが偏光ビームスプリッタ43aで均等に分光されるように、レーザ光2aの偏光角度を調整する。偏光ビームスプリッタ43aは、分光調整手段42aから入射したレーザ光2aのうちS偏光を反射し、P偏光を透過させる。偏光ビームスプリッタ43aは、入射したレーザ光2aを、P偏光であるレーザ光44aと、S偏光であるレーザ光44cとに分光する。
ベンドミラー45の1つは、偏光ビームスプリッタ72からのレーザ光2bの光路に設けられている。分光調整手段42bは、ベンドミラー45で反射したレーザ光2bが偏光ビームスプリッタ43bで均等に分光されるように、レーザ光2bの偏光角度を調整する。
偏光ビームスプリッタ43bは、分光調整手段42bから入射したレーザ光2bのうちS偏光を反射し、P偏光を透過させる。偏光ビームスプリッタ43bは、入射したレーザ光2bを、P偏光であるレーザ光44bと、S偏光であるレーザ光44dとに分光する。なお、偏光ビームスプリッタ72,43a,43bの反射および透過特性は、適宜変更しても良い。
偏光ビームスプリッタ43aからのレーザ光44a,44cおよび偏光ビームスプリッタ43bからのレーザ光44b,44dは、実施の形態2のレーザ加工装置41の場合と同様に、加工ヘッド16a,16bへ導かれる。レーザ加工装置70は、レーザ加工装置41と同様に、レーザ光44a,44bによる被加工物11aの加工と、レーザ光44c,44dによる被加工物11bの加工とを行う。
制御部75は、レーザ加工装置70の全体を制御する。制御部75は、指令生成部21、レーザ発振器制御部22、光スイッチ制御部74、ガルバノスキャナ制御部51、ビジョンセンサ制御部52、XYテーブル制御部25およびレーザパワーセンサ制御部26を備える。光スイッチ制御部74は、光スイッチ73におけるレーザ光2aの透過および遮断を制御する光スイッチ制御手段である。光スイッチ制御部74は、指令生成部21から出力される光スイッチ制御指令に基づいて、透過および遮断の制御のための光スイッチ制御信号を光スイッチ73へ送る。
次に、レーザ加工装置70によるレーザ加工の動作について説明する。図14は、レーザ加工装置70によるレーザ加工の動作の手順を説明するフローチャートである。
指令生成部21は、図10に示す実施の形態2の場合と同様に、ステップS30およびステップS31にて、加工プログラムを読み込み、位置指令を作成する。指令生成部21は、被加工物11a,11bの双方に対し、加工エリア30内に割り付けられた加工穴が、図3に示すように2穴同時加工が可能な加工穴位置31、および1穴加工による加工穴位置32のいずれに該当するかを分類する。また、指令生成部21は、加工時間が最短となるように各加工穴の加工順序の並べ替えを行う。
指令生成部21は、被加工物11aにおいて2穴同時加工が可能な加工穴に対しては、2か所へ同時にレーザ光44a,44bをそれぞれ照射可能とするメインガルバノスキャナ9a,9bおよびサブガルバノスキャナ7a,7bの各回転角を算出する。指令生成部21は、被加工物11bにおいて2穴同時加工が可能な加工穴に対しては、2か所へ同時にレーザ光44c,44dをそれぞれ照射可能とするメインガルバノスキャナ9c,9dおよびサブガルバノスキャナ7c,7dの各回転角を算出する。また、指令生成部21は、レーザ発振器3aに対するレーザ発振トリガフラグをON(「1」)に設定するとともに、光スイッチ73に対する光スイッチ制御信号をON(「1」)に設定する。
指令生成部21は、被加工物11aにおいて1穴加工とする加工穴に対しては、レーザ光44bを照射可能とするメインガルバノスキャナ9a,9bおよびサブガルバノスキャナ7bの各回転角を算出する。指令生成部21は、被加工物11bにおいて1穴加工とする加工穴に対しては、レーザ光44dを照射可能とするメインガルバノスキャナ9c,9dおよびサブガルバノスキャナ7dの各回転角を算出する。
指令生成部21は、レーザ発振器3aに対するレーザ発振トリガフラグをONに設定する。また、指令生成部21は、光スイッチ73に対する光スイッチ制御信号をOFF(「0」に設定することで、レーザ光44a,44cを遮断する設定とする。
このようにして、指令生成部21は、サブガルバノスキャナ7a,7b,7c,7dおよびメインガルバノスキャナ9a,9b,9c,9dに対する回転角指令を作成する(ステップS42)。指令生成部21は、作成された回転角指令と、設定されたレーザ発振トリガフラグおよび光スイッチ制御指令を、加工穴のデータとのセットとして、メモリーに保存する。
実施の形態2の場合と同様に、指令生成部21は、ステップS33にて、XYテーブル12の移動および位置決めを行う。ガルバノスキャナ制御部51は、ステップS34にて、サブガルバノスキャナ7a,7b,7c,7dおよびメインガルバノスキャナ9a,9b,9c,9dの回転角を制御する。
指令生成部21は、光スイッチ制御指令を光スイッチ制御部74へ出力するとともに、レーザ発振トリガフラグをレーザ発振器制御部22へ出力する。レーザ発振器制御部22には、サブガルバノスキャナ7a,7b,7c,7dおよびメインガルバノスキャナ9a,9b,9c,9dへの回転角指令と現在の回転角とが入力される。
光スイッチ制御部74は、指令された回転角に現在の回転角が到達する直前に、光スイッチ73へ光スイッチ制御信号を出力する。レーザ発振器制御部22は、指令された回転角に現在の回転角が到達したと判断あるいは推定した場合に、レーザ発振器3aへレーザ発振トリガ信号を出力する。このようにして、光スイッチ制御部74は、光スイッチ73の透過および遮断を制御する。レーザ発振器制御部22は、レーザ発振器3aへのレーザ発振トリガ信号の出力を制御する(ステップS43)。
光スイッチ73は、ONに設定された光スイッチ制御信号が入力されると瞬時に、レーザ光2aを透過させる状態となる。光スイッチ73は、OFFに設定された光スイッチ制御信号が入力されると瞬時に、レーザ光2aを遮断する状態となる。光スイッチ73がレーザ光2aを遮断する状態であるとき、レーザ光2aは、光スイッチ73内のダンパーに照射される。
レーザ発振トリガ信号が入力されると、レーザ発振器3aは、レーザ発振指令に設定されたピークパワー、パルス幅、パルス数、パルス周波数のレーザパルスを、レーザ光2aとして出力する。
光スイッチ制御信号がONであるときにレーザ発振器3aからレーザ光2が出力されると、加工ヘッド16aへレーザ光44a,44bが入力される。加工ヘッド16aは、レーザ光44a,44bを用いた2穴同時加工を被加工物11aへ施す。また、加工ヘッド16bへは、レーザ光44c,44dが入力される。加工ヘッド16bは、レーザ光44c,44dを用いた2穴同時加工を被加工物11bへ施す。
レーザ加工装置70は、実施の形態2の場合と同様に、ステップS36以降の工程を経て、被加工物11a,11bの加工を終了する。
実施の形態4によると、レーザ加工装置70は、1つのFθレンズ10aを透過した2本のレーザ光44a,44bによる2穴同時加工と、1つのFθレンズ10bを透過した2本のレーザ光44c,44dによる2穴同時加工とを実施可能とする。また、レーザ加工装置70は、光スイッチ73にてレーザ光2aを遮断することで、レーザ光44bによる1穴加工と、レーザ光44dによる1穴加工とを実施可能とする。実施の形態4においても、レーザ加工装置70は、同時多点照射によるレーザ加工において、省スペースで、高速かつ高品質なレーザ加工を実現できるという効果を奏する。
なお、光スイッチ73は、2つの偏光ビームスプリッタ72,43aの間の光路以外の位置に配置されていても良い。光スイッチ73は、2つの偏光ビームスプリッタ72,43bの間の光路に配置されていても良い。この場合、光スイッチ73は、偏光ビームスプリッタ72からのレーザ光2bを透過または遮断する。レーザ加工装置70は、光スイッチ73がレーザ光2a,2bのいずれの光路に設けられていても、2穴同時加工と1穴加工とを切り換えることができる。
光スイッチ73は、2つの偏光ビームスプリッタ72,43aの間の光路と、2つの偏光ビームスプリッタ72,43bの間の光路との双方に配置されていても良い。この場合も、レーザ加工装置70は、2穴同時加工と1穴加工とを切り換えることができる。
実施の形態4において、偏光ビームスプリッタ43a,43bから被加工物11a,11bまでの光路における構成は、実施の形態2のレーザ加工装置41が備える構成と同様とされている。レーザ加工装置70の偏光ビームスプリッタ43a,43bから被加工物11a,11bまでの光路における構成は、実施の形態3のレーザ加工装置61が備える構成と同様であっても良い。