JP2020082139A - レーザー加工装置および被加工物の加工方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】レーザービームの照射範囲を好適に制御しつつ被加工物を加工する。【解決手段】レーザービームを用いて被加工物を加工するレーザー加工装置が、レーザービームを出射可能な光源と、光源から出射されるレーザービームの光軸上に配置されたアキシコンレンズと、光源とアキシコンレンズの間に配置されてなり、レーザービームのビーム径よりも小さい開口径を有する開口絞りと、を備え、開口絞りによってビーム径が絞られたレーザービームをアキシコンレンズに入射させることによって疑似ベッセルビームを発生させ、疑似ベッセルビームの強度が所定の加工閾値以上となる加工可能強度域に、被加工物の加工対象領域を含めることによって、被加工物を加工する、ことを特徴とする。【選択図】図3
Description
本発明は、被加工物をレーザービームによって加工する装置に関する。
レーザービームを被加工物に照射することによって被加工物に対し分断、穴開け、溝形成などの種々の加工を行うことは、従来より広く行われている。その1つとして、ベッセル型のレーザービームを用いる態様がすでに公知である(例えば、特許文献1参照)。
被加工物に対し一方の表面側からレーザービームを照射し、深さ方向の所定範囲を同時に加工する場合において、ある深さ以上の部分については加工を行いたくない、あるいは、たとえ加工がされないとしても、何らかの悪影響が生じる可能性を懸念して、レーザービームが照射されることを避けたい、というニーズがある。
特許文献1には、アキシコンレンズを用いてベッセル型レーザービームを生成させる旨、および、ベッセル型レーザービームの伝搬方向におけるフルエンス変化において所定の閾値以上の範囲として特定される、光学的絶縁破壊が生じる範囲である最大損傷深さと、被加工物たる層状ガラスの厚みとの大小関係に基づいて、層状ガラスの切断範囲が定まる旨が開示されている。
しかしながら、特許文献1には、レーザービームの伝搬方向における広がりそのものを調整することにより、被加工物における加工範囲を調整する態様については、何らの開示も示唆もなされてはいない。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、レーザービームの照射範囲を好適に制御しつつ被加工物を加工する方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、レーザービームを用いて被加工物を加工するレーザー加工装置であって、前記レーザービームを出射可能な光源と、前記光源から出射される前記レーザービームの光軸上に配置されたアキシコンレンズと、前記光源と前記アキシコンレンズの間に配置されてなり、前記レーザービームのビーム径よりも小さい開口径を有する開口絞りと、を備え、前記開口絞りによって前記ビーム径が絞られた前記レーザービームを前記アキシコンレンズに入射させることによって疑似ベッセルビームを発生させ、前記疑似ベッセルビームの強度が所定の加工閾値以上となる加工可能強度域に、前記被加工物の加工対象領域を含めることによって、前記被加工物を加工する、ことを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載のレーザー加工装置であって、前記アキシコンレンズと前記被加工物の配置位置との間に配置されてなり、前記疑似ベッセルビームを縮小再結像させる縮小レンズ、をさらに備え、前記縮小レンズによって縮小再結像された前記疑似ベッセルビームの前記加工可能強度域に前記加工対象領域を含めることによって、前記被加工物を加工する、ことを特徴とする。
請求項3の発明は、レーザービームを用いて被加工物を加工する方法であって、所定の光源から出射されるレーザービームの光軸上にアキシコンレンズを配置するとともに、前記光源と前記アキシコンレンズの間に前記レーザービームのビーム径よりも小さい開口径を有する開口絞りを配置し、前記開口絞りによって前記ビーム径が絞られた前記レーザービームを前記アキシコンレンズに入射させることによって疑似ベッセルビームを発生させ、前記疑似ベッセルビームの強度が所定の加工閾値以上となる加工可能強度域に、前記被加工物の加工対象領域を含めることによって、前記被加工物を加工する、ことを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項3に記載の被加工物の加工方法であって、前記アキシコンレンズと前記被加工物の配置位置との間に前記疑似ベッセルビームを縮小再結像させる縮小レンズを配置し、前記縮小レンズによって縮小再結像された前記疑似ベッセルビームの前記加工可能強度域に前記加工対象領域を含めることによって、前記被加工物を加工する、ことを特徴とする。
請求項1ないし請求項4の発明によれば、疑似ベッセルビームの加工可能強度域を、加工対象領域以遠に疑似ベッセルビームが照射されない所定の範囲に制限しつつ、一度のレーザービームの出射により深さ方向において加工対象領域全体を同時に加工することができる。
特に、請求項2および請求項4の発明によれば、単位面積あたりの強度が大きい疑似ベッセルビームを局所的に照射することが可能となるとともに、加工装置の作動距離を大きくすることが出来る。
<疑似ベッセルビームの発生と加工への利用>
図1は、アキシコンレンズ1を用いた擬似的なベッセルビーム(疑似ベッセルビーム)の発生について模式的に示す図である。図1(a)は光源2からビーム径d1=d1aのレーザービームLB(LBa)が出射され、アキシコンレンズ1に入射されるときの、疑似ベッセルビームBB(BBa)の発生の様子を示している。図1(b)は光源2からビーム径d1=d1b(<d1a)のレーザービームLB(LBb)が出射され、同じアキシコンレンズ1に入射されるときの、疑似ベッセルビームBB(BBb)の発生の様子を示している。
図1は、アキシコンレンズ1を用いた擬似的なベッセルビーム(疑似ベッセルビーム)の発生について模式的に示す図である。図1(a)は光源2からビーム径d1=d1aのレーザービームLB(LBa)が出射され、アキシコンレンズ1に入射されるときの、疑似ベッセルビームBB(BBa)の発生の様子を示している。図1(b)は光源2からビーム径d1=d1b(<d1a)のレーザービームLB(LBb)が出射され、同じアキシコンレンズ1に入射されるときの、疑似ベッセルビームBB(BBb)の発生の様子を示している。
なお、本実施の形態において、ベッセルビームを「擬似的な」と称しているのは、完全なベッセルビームを発生させるには、無限のエネルギーを必要とするところ、実際のレーザービームのエネルギーは有限であり、そのような完全なベッセルビームを作り出すことはできないという、公知の知見による。
以降においては、光源2からレーザービームLBが出射される際の軸中心を、光軸AXと称し、光軸AXの延在する方向を光軸方向と称することとする。また、レーザービームLBはガウシアンビームであり、本実施の形態においては、その1/e2幅(強度値が最大強度の1/e2倍以上となる範囲)をレーザービームLBのビーム径であるとする。
レーザービームLBとしては、加工対象物に応じて種々のレーザービームを選択することができるが、例えば、ガラス、セラミックス、半導体等の脆性材料を加工するレーザービームとしては、例えば、パルス幅(パルス持続時間)が100ps以下、好ましくは50ps以下(通常は1ps以上)の赤外レーザービーム、特に近赤外レーザービーム(例えば波長1064nm)を使用することができ、例えばコヒレント社製ハイパーラピッド(波長1064nm、パルス幅15ps、平均出力50W)が例示される。
アキシコンレンズ1は、一方端側に平坦面1aを有し、他方端側に円錐面1bを有するレンズである。疑似ベッセルビームBBを発生させる際、アキシコンレンズ1は、その中心軸を光軸AXに一致させる態様にて(円錐面1bの頂点1Sが光軸AX上に位置する態様にて)配置される。係る配置状態において、光源2からレーザービームLBを出射させると、平坦面1aに対し垂直に入射したレーザービームLBは、円錐面1bから出射される際に、該円錐面1bの傾斜に応じた出射角にて光軸AXに向けて傾斜させられる。すると、光軸方向においては、相異なる方向からアキシコンレンズ1の光軸方向に関して対称な2方向から出射されたレーザービームLBが交差する(重畳する)ことにより、疑似ベッセルビームBBが発生する。
係る場合において、アキシコンレンズ1の形状ならびに光源2から出射されるレーザービームLBの強度および波長が同じであるならば、疑似ベッセルビームBBの発生位置および発生範囲は、ビーム径d1の大きさによって異なる。
例えば、図1(a)に示すように、ビーム径d1=d1aのレーザービームLBaがアキシコンレンズ1に対し入射することにより、光軸方向のアキシコンレンズ1の頂点1Sを起点とする長さSaの範囲に最大幅d2=d2aの疑似ベッセルビームBBaが発生し、図1(b)に示すように、ビーム径d1=d1b(<d1a)のレーザービームLBbがアキシコンレンズ1に対し入射することにより、アキシコンレンズ1の頂点1Sから長さSbの範囲に最大幅d2=d2bの疑似ベッセルビームBBbが発生するとした場合、Sa>Sb、d2a>d2bとなる。
図2は、レーザービームLBの出力を一定に保ちつつビーム径d1を3(mm)、5(mm)、7(mm)、9(mm)、および11(mm)の5水準に違えたときの、それぞれのレーザービームLBについての、アキシコンレンズ1の頂点1Sからの光軸AX上における距離と光軸AXの位置における疑似ベッセルビームBBの強度(任意単位:a.u.)との関係についてのシミュレーション結果を示す図である。なお、本実施の形態において示すシミュレーション結果を得るにあたっては、レーザービームLBの波長は1064(nm)とし、アキシコンレンズ1の頂角θは140°としている。
図2からは、ビーム径d1が大きくなるほど、光軸方向のより広い範囲において疑似ベッセルビームBBが発生する一方で、最大強度は小さくなる傾向があることがわかる。
また、各プロファイルは光軸方向において数(mm)〜数十(mm)程度の比較的広い範囲で比較的大きな強度を有していることもわかる。例えばビーム径d1が最小の3(mm)である場合のプロファイルにおいても、10(mm)程度の半値幅を有してなる。
本実施の形態においては、疑似ベッセルビームBBのこのような性質を、被加工物の深さ方向における加工に利用する。なお、本実施の形態において、被加工物の加工とは、変質領域の形成が例示されるが、アブレーションによる溝形成など、他の加工態様であってもよい。
図2に示す結果は、あるビーム径d1のレーザービームLBをアキシコンレンズ1に入射させることによって発生させた疑似ベッセルビームBBを、被加工物に照射すれば、被加工物の深さ方向(光軸方向に相当する方向)の、疑似ベッセルビームBBの強度が所定の加工閾値(被加工物に所定の加工を行うのに必要なレーザービームの強度の最小値)以上となる範囲(以下、加工可能強度域)において、均質な加工を同時に行うことが、少なくとも原理的には可能であることを教示する。
すなわち、レーザービームLBの出力およびビーム径d1を適宜に選択し、かつ、被加工物における加工対象領域の位置を適宜に調整することによって、疑似ベッセルビームBBの加工可能強度域に被加工物における加工対象領域が含まれるようにすれば、一度のレーザービームLBの出射により、深さ方向において加工対象領域全体を同時に加工することが可能となる。
レーザービームLBの波長、出力、ビーム径d1、および、アキシコンレンズの頂角θなどは、被加工物の種類に応じて適宜に選択されてよい。
例えば、図2においてビーム径d1が5(mm)の場合において、疑似ベッセルビームBBの強度の加工閾値が300(a.u.)であれば、アキシコンレンズ1からの距離がおよそ3(mm)〜15(mm)という範囲、すなわち、深さ方向の約12(mm)の範囲が、加工可能強度域となる。
なお、実際に被加工物を加工する際には、被加工物の屈折率nも考慮して、加工可能強度域と被加工物における加工対象領域と一致させる必要がある。例えば、疑似ベッセルビームBBの強度が300(a.u.)以上となる範囲が全て被加工物に含まれる場合、加工可能強度域の範囲は15n(mm)−3n(mm)=12n(mm)となる。
<疑似ベッセルビームの照射範囲の制限>
上述のように、疑似ベッセルビームBBを用いることにより、被加工物の深さ方向につき同時加工が可能となるが、一方で、加工可能強度域には該当しないため加工はされないものの、疑似ベッセルビームBB自体は弱いながらも照射される領域が存在する。係る照射に起因した何らかの悪影響が生じる可能性を懸念して、このような領域にレーザービームが照射されることを避けたい、という技術上の要請がある。
上述のように、疑似ベッセルビームBBを用いることにより、被加工物の深さ方向につき同時加工が可能となるが、一方で、加工可能強度域には該当しないため加工はされないものの、疑似ベッセルビームBB自体は弱いながらも照射される領域が存在する。係る照射に起因した何らかの悪影響が生じる可能性を懸念して、このような領域にレーザービームが照射されることを避けたい、という技術上の要請がある。
本実施の形態においては、係る要請につき、開口絞りを用いて疑似ベッセルビームBBの発生範囲を限定することによって対応する。
図3は、図1に模式的に示した疑似ベッセルビームBBを発生させる構成に、開口絞り3を追加した構成を示す図である。
開口絞り3は、光軸方向において光源2とアキシコンレンズ1との間に配置される。開口絞り3としては、開口径φがレーザービームLBのビーム径d1よりも小さいものが用いられる。
係る態様にて開口絞り3が配置されることで、アキシコンレンズ1の平坦面1aに実際に入射するレーザービームLB(LB1)のビーム径d3は、光源2から出射された時点におけるレーザービームLB(LB0)のビーム径d1よりも絞られる(小さくなる)。係る場合、疑似ベッセルビームBB1の起点こそ、開口絞り3を設けない場合と変わらずアキシコンレンズ1の頂点1Sとなるが、疑似ベッセルビームBB1の光軸方向における長さScおよび最大幅d4はそれぞれ、開口絞り3を設けない場合の長さSaおよび最大幅d2よりも小さな値となる。
図4は、レーザービームLBのビーム径d1を11(mm)とし、開口絞り3を設けない場合と、開口絞り3の開口径φを7(mm)、8(mm)、10(mm)、および11(mm)の4水準に違えたときの、それぞれのレーザービームLBについての、アキシコンレンズ1の頂点1Sからの光軸AX上における距離と光軸AXの位置における疑似ベッセルビームBBの強度との関係についてのシミュレーション結果を示す図である。また、図5は、レーザービームLBのビーム径d1を3(mm)とし、開口絞り3を設けない場合と、開口絞り3の開口径φを2.2(mm)、2.5(mm)、3(mm)、3.5(mm)、4(mm)、および5(mm)の6水準に違えたときの、それぞれのレーザービームLBについての、アキシコンレンズ1の頂点1Sからの光軸AX上における距離と光軸AXの位置における疑似ベッセルビームBBの強度との関係についてのシミュレーション結果を示す図である。
図4および図5のいずれの場合も、開口絞り3を設けた場合のプロファイルでは、アキシコンレンズ1の頂点1Sから所定距離離れた位置において、疑似ベッセルビームBBの強度が急激に減衰し、当該位置以遠においては、ゼロになっている。すなわち、疑似ベッセルビームBBがカットされている。また、開口径φの値を小さくするほど、減衰位置はアキシコンレンズ1に近づいている。
このことを利用すれば、疑似ベッセルビームBBを用いて被加工物を深さ方向の所定範囲について加工する場合に、加工対象領域よりも深い位置にまで疑似ベッセルビームBBが照射されることを、好適に抑制することが出来る。
例えば、図4に示すビーム径d1が11(mm)の場合において、強度が150(a.u.)以上の範囲を加工可能強度域とした場合、開口絞り3の開口径φを7(mm)とすれば、アキシコンレンズ1の頂点1Sからの距離が約19(mm)の位置が疑似ベッセルビームBBの減衰位置となり、当該位置以遠には、疑似ベッセルビームBBは照射されない。そして、当該距離が6.5(mm)〜約19(mm)の範囲が、(被加工物の屈折率を考慮しない場合の)加工可能強度域P1となる。
同様に、図5に示すビーム径d1が3(mm)の場合において、強度が600(a.u.)以上の範囲を加工可能強度域とした場合、開口絞り3の開口径φを2.2(mm)とすれば、アキシコンレンズ1の頂点1Sからの距離が約5.8(mm)の位置が疑似ベッセルビームBBの減衰位置となり、当該位置以遠には、疑似ベッセルビームBBは照射されない。そして、当該距離が2.2(mm)〜約5.8(mm)の範囲が、(被加工物の屈折率を考慮しない場合の)加工可能強度域P2となる。
これら図4および図5に示す結果からは、あるビーム径d1のレーザービームLBを所定の開口径φの開口絞り3にて絞ったうえでアキシコンレンズ1に入射させ、これによって発生させた疑似ベッセルビームBBを被加工物に照射すれば、光軸方向に相当する被加工物の深さ方向において、該疑似ベッセルビームBBの加工可能強度域を開口径φに応じた所定範囲に制限し、当該所定範囲においては均質な加工(例えば変質領域の形成)を同時に行う一方で、当該所定範囲以遠には疑似ベッセルビームBBを照射させないようにすることが、少なくとも原理的には可能であることが教示される。
すなわち、レーザービームLBの出力とビーム径d1と開口絞り3の開口径φとを適宜に選択し、かつ、被加工物の屈折率nも考慮しつつ被加工物における加工対象領域の位置を適宜に調整することによって、一度のレーザービームLBの出射により、深さ方向において加工対象領域全体を同時に加工する一方で、加工対象領域以遠には疑似ベッセルビームBBを照射させないことが、可能となる。
<装置構成例>
図6は、以上のような原理に基づいて被加工物Wの加工を行うレーザー加工装置100の構成の一例を、模式的に示す図である。
図6は、以上のような原理に基づいて被加工物Wの加工を行うレーザー加工装置100の構成の一例を、模式的に示す図である。
レーザー加工装置100は、上述したアキシコンレンズ1、光源2、および開口絞り3に加えて、ステージ4と縮小レンズ5とをさらに、主たる構成要素として備える。
ステージ4は、被加工物Wが載置固定される水平な被載置面を有してなる。そして、レーザー加工装置100においては、ステージ4に載置された被加工物Wに対して鉛直上方からベッセルビームが照射されるようになっている。それゆえ、アキシコンレンズ1、光源2、および開口絞り3は、図3に示された相互の配置関係をみたしつつも光軸方向が鉛直方向と一致するように、配置されてなる。具体的には、光源2から鉛直下方に向けて出射されるレーザービームLB2が、開口絞り3によって絞られてレーザービームLB3としてアキシコンレンズ1に入射した結果として、アキシコンレンズ1の頂点1Sを起点とする疑似ベッセルビームBB2が発生する。いま、頂点1Sから光軸方向において距離z1だけ離隔した、長さSdの範囲に、最大幅d5の加工可能強度域RE1が形成されるものとする。
好ましくは、ステージ4は、図示しない駆動機構よって駆動されることにより、水平面内における並進移動(2軸移動)および回転移動と、鉛直方向における昇降移動とが可能に設けられる。これにより、被加工物Wにおける加工対象領域の位置決めや、被加工物Wを移動させつつ加工を行う走査加工などが可能となる。
ただし、レーザー加工装置100においては、発生した疑似ベッセルビームBB2が直接に被加工物Wに照射されるのではなく、縮小レンズ5を含む縮小光学系にて縮小再結像されたうえで、被加工物Wに照射されるようになっている。係る場合においては、加工可能強度域RE1が縮小再結像されることにより、加工可能強度域RE2が形成されるものとする。
縮小レンズ5は、アキシコンレンズ1とステージ4の間に(より詳細には、被加工物Wがステージ4に載置固定された状態においては被加工物Wとアキシコンレンズ1の間に位置するように)配置されてなる。
より詳細には、縮小レンズ5の焦点距離をfとし、疑似ベッセルビームBB2の発生位置(加工可能強度域RE1の中心位置)と縮小レンズ5との距離をaとし、縮小レンズ5と疑似ベッセルビームの再結像位置(加工可能強度域RE2の中心位置)との距離をb(<a)とし、1/f=(1/a)+(1/b)なる関係をみたす場合、加工可能強度域RE2は、長さSe=(b/a)2S2の範囲に最大幅d6=(b/a)d5を有するように縮小再結像される。
ただし、疑似ベッセルビームBB2のエネルギーは再結像後も実質的に維持されるため、加工可能強度域RE2の単位面積あたりの強度は加工可能強度域RE1の強度よりも大きくなっている。
すなわち、レーザー加工装置100においては、縮小再結像を行わない場合に比して、単位面積あたりの強度が大きい加工可能強度域を、局所的に(ピンポイントに)形成することが、可能となっている。
このことは、加工可能強度域に隣接する、強度が所定の加工閾値に満たない領域がより狭められることを、意味している。これにより、加工対象領域以外に強度の弱い疑似ベッセルビームBBが照射されてしまうことに起因した不具合の発生が好適に抑制される。
また、加工可能強度域RE2が形成されさえすれば加工はなされるので、単位面積あたりの強度が大きい分、疑似ベッセルビームBB2の加工可能強度域RE1をそのまま被加工物Wの加工に用いる場合に比して、光源2から出射させるレーザービームLB2の出力を小さくしたとしても、所望の加工を行うことが出来る。
例えば、図5によれば、光源2から出射されるレーザービームLB2のビーム径が3(mm)の場合、仮に開口絞り3として開口径φが2.2(mm)のものを用いたとしても、加工可能強度域RE1の光軸方向における長さSdは6(mm)〜7(mm)程度となる(被加工物Wの屈折率は考慮せず)。それゆえ、被加工物Wの厚みが1(mm)程度であると、照射不要な範囲にまで疑似ベッセルビームBB2が照射されてしまうことになるが、レーザー加工装置100においては、縮小レンズ5の焦点距離fおよび配置位置を好適に定めることにより、加工可能強度域RE2の長さSeを被加工物Wの厚みと同じ1(mm)程度にすることが可能となる。
さらに、レーザー加工装置100においては、例えば図6に示すように、被加工物W内部の、表面から所定の距離z3離隔した位置以遠が加工対象領域とされるような場合であっても、好適に加工を行うことが可能となる。係る場合においては、被加工物Wの表面から距離z3の範囲に、加工可能強度域RE2が形成されないような加工も可能である。
好ましくは、縮小レンズ5は、図示しない駆動機構によって、鉛直方向に移動自在とされてなる。係る場合、被加工物の厚みが薄い場合など、被加工物の深さ方向における加工対象領域のサイズが小さいような場合でも、縮小レンズ5を移動させることによって距離a、bの比率を適宜に調整することにより、当該加工対象領域のみを加工可能強度域と一致させて加工を行えることを、意味している。
なお、光源2から出射されるレーザービームLB2のビーム径を小さくすることや、開口絞り3の開口径φを小さくすることによって、加工可能強度域を狭める態様も考えられる。しかしながら、前者については、実用される加工用レーザービームのビーム径の下限値が概ね2(mm)〜3(mm)であることを考えると現実的ではない。また、後者については、開口径φを小さくしすぎると、図5に示すような強度プロファイルにおいて、ピーク近傍ひいてはピーク部分そのものをカットすることになり、コスト面や、光学部品へのダメージという点から好ましくない。
一方で、縮小レンズ5を用いることは、被加工物Wとアキシコンレンズ1との距離を確保する効果もある。すなわち、図2からわかるように、ビーム径が数(mm)程度のレーザービームLB2をアキシコンレンズ1に入射させることによって発生させる疑似ベッセルビームBB2が最大強度となるのは、アキシコンレンズ1の頂点1Sからせいぜい5(mm)〜20(mm)程度離隔した位置に過ぎないため、疑似ベッセルビームBB2をそのまま加工に用いる場合、装置の作動距離が十分に確保されず、被加工物Wにおける加工対象領域の位置および範囲によっては、加工の実施そのものが不可能あるいは困難な場合がある。あるいは、加工の際に生じる飛散物がアキシコンレンズ1に付着してしまうなどの不具合が生じる可能性もある。
これに対し、本実施の形態に係るレーザー加工装置100においては、縮小レンズ5を用いることによって、被加工物Wと近接するのはアキシコンレンズ1ではなく縮小レンズ5となるが、距離a、距離bおよび焦点距離fを好適に定めることによって、装置の作動距離を十分に確保することが可能である。
以上、説明したように、本実施の形態によれば、アキシコンレンズにレーザービームを入射させることにより発生させた疑似ベッセルビームを用いることにより、被加工物の深さ方向につき同時加工が可能となる。レーザービームの出力およびビーム径を適宜に選択し、かつ、被加工物における加工対象領域の位置を適宜に調整することによって、疑似ベッセルビームの加工可能強度域に被加工物における加工対象領域が含まれるようにすれば、一度のレーザービームの出射により、深さ方向において加工対象領域全体を同時に加工することが可能となる。
加えて、レーザービームを開口絞りにて絞ったうえでアキシコンレンズに入射させることにより、加工対象領域以遠にはレーザービームを照射させないことが、可能となる。
さらには、いったん発生させた疑似ベッセルビームそのものではなく、係る疑似ベッセルビームを縮小レンズにて縮小再結像させた疑似ベッセルビームを加工に用いるようにすることで、単位面積あたりの強度が大きい疑似ベッセルビームを局所的に照射することが可能となるほか、縮小再結像を行わない場合に比して、作動距離を大きくすることが出来る。
1 アキシコンレンズ
1S (アキシコンレンズの)頂点
1a (アキシコンレンズの)平坦面
1b (アキシコンレンズの)円錐面
2 光源
3 開口絞り
4 ステージ
5 縮小レンズ
100 レーザー加工装置
AX 光軸
BB 疑似ベッセルビーム
BB(BB1、BB2、BB3、BBa、BBb) 疑似ベッセルビーム
LB(LB0、LB1、LB2、LB3、LBa、LBb) レーザービーム
P1、P2 加工可能強度域
W 被加工物
d1、d3 (レーザービームの)ビーム径
d2、d4、d5、d6 (疑似ベッセルビームの)最大幅
1S (アキシコンレンズの)頂点
1a (アキシコンレンズの)平坦面
1b (アキシコンレンズの)円錐面
2 光源
3 開口絞り
4 ステージ
5 縮小レンズ
100 レーザー加工装置
AX 光軸
BB 疑似ベッセルビーム
BB(BB1、BB2、BB3、BBa、BBb) 疑似ベッセルビーム
LB(LB0、LB1、LB2、LB3、LBa、LBb) レーザービーム
P1、P2 加工可能強度域
W 被加工物
d1、d3 (レーザービームの)ビーム径
d2、d4、d5、d6 (疑似ベッセルビームの)最大幅
Claims (4)
- レーザービームを用いて被加工物を加工するレーザー加工装置であって、
前記レーザービームを出射可能な光源と、
前記光源から出射される前記レーザービームの光軸上に配置されたアキシコンレンズと、
前記光源と前記アキシコンレンズの間に配置されてなり、前記レーザービームのビーム径よりも小さい開口径を有する開口絞りと、
を備え、
前記開口絞りによって前記ビーム径が絞られた前記レーザービームを前記アキシコンレンズに入射させることによって疑似ベッセルビームを発生させ、前記疑似ベッセルビームの強度が所定の加工閾値以上となる加工可能強度域に、前記被加工物の加工対象領域を含めることによって、前記被加工物を加工する、
ことを特徴とする、レーザー加工装置。 - 請求項1に記載のレーザー加工装置であって、
前記アキシコンレンズと前記被加工物の配置位置との間に配置されてなり、前記疑似ベッセルビームを縮小再結像させる縮小レンズ、
をさらに備え、
前記縮小レンズによって縮小再結像された前記疑似ベッセルビームの前記加工可能強度域に前記加工対象領域を含めることによって、前記被加工物を加工する、
ことを特徴とする、レーザー加工装置。 - レーザービームを用いて被加工物を加工する方法であって、
所定の光源から出射されるレーザービームの光軸上にアキシコンレンズを配置するとともに、前記光源と前記アキシコンレンズの間に前記レーザービームのビーム径よりも小さい開口径を有する開口絞りを配置し、
前記開口絞りによって前記ビーム径が絞られた前記レーザービームを前記アキシコンレンズに入射させることによって疑似ベッセルビームを発生させ、前記疑似ベッセルビームの強度が所定の加工閾値以上となる加工可能強度域に、前記被加工物の加工対象領域を含めることによって、前記被加工物を加工する、
ことを特徴とする、被加工物の加工方法。 - 請求項3に記載の被加工物の加工方法であって、
前記アキシコンレンズと前記被加工物の配置位置との間に前記疑似ベッセルビームを縮小再結像させる縮小レンズを配置し、
前記縮小レンズによって縮小再結像された前記疑似ベッセルビームの前記加工可能強度域に前記加工対象領域を含めることによって、前記被加工物を加工する、
ことを特徴とする、被加工物の加工方法。
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