JP6769720B2 - ガスセンサ - Google Patents

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この発明は、熱伝導式のガスセンサに関し、特に、特定のガスを検出するための熱伝導式ガスセンサに関する。
気密容器等の試験体からの微小なリークの有無を検知(検査)するリークテストでは、従来より、ヘリウムガスを検知可能な質量分析管を備えたリークディテクタが使用されている(例えば、特許文献1参照)。このようなリークディテクタを用いたリークテストでは、試験体である気密容器を真空チャンバ内に収容した後、この試験体内にヘリウムガスを封止し、併せて真空チャンバを真空排気して真空チャンバ内を真空雰囲気とする。そして、真空雰囲気に混入するヘリウムガスの有無をリークディテクタで検出することにより、試験体からのリークが有無を検査する。
特開2011−107034号公報
しかしながら、質量分析管によりヘリウムガスを検知するリークディテクタを使用する場合、質量分析管を適切に作動させるため、真空チャンバ内の真空度を十分に高くする必要がある。そのため、このようなリークディテクタを用いてリークテストを行う場合、真空チャンバ内の真空度が十分に高くなるまで真空排気を行うこととなるため、リークテストを行うために要する時間が長くなる。
このような問題を解決するため、ヘリウムガスの検出が可能なガスセンサにおいて、検出感度を十分に高くすることが望まれる。しかしながら、ヘリウムガスの検出が可能なガスセンサにおいて、検出感度を十分に高くすることは困難であり、上述の問題は未だ解決されていない。この問題は、ヘリウムガスを使用してリークテストを行う場合に限らず、燃料電池において水素ガスの漏洩を検出する場合等、特定のガスを高い感度で検出をすることが望まれる幅広い分野において、共通する。
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、特定のガスを検出する熱伝導式のガスセンサにおいて、検出対象のガスの検出感度をより高くすることを目的とする。
上記課題の少なくとも一部を達成するために、本発明のガスセンサは、熱伝導式のガスセンサであって、低熱伝導部と、前記低熱伝導部の上に設けられた検出側ヒータおよび補償側ヒータと、前記検出側ヒータから検出対象ガスの平均自由行程よりも短い空隙を空けて配置され、前記検出側ヒータから伝達された熱を前記ガスセンサの外部に放出する、前記検出側ヒータを覆う検出側蓋として構成された検出側放熱体と、前記補償側ヒータから伝達された熱を前記ガスセンサの外部に放出する、前記補償側ヒータを覆う補償側蓋として構成された補償側放熱体と、を備え、前記検出側ヒータおよび前記検出側蓋の間の距離と、前記補償側ヒータおよび前記補償側蓋の間の距離とを、互いに異なるようにすることにより、前記補償側ヒータと前記補償側放熱体との間は、前記検出側ヒータと前記検出側放熱体との間よりも、前記検出対象ガスによる熱伝達が抑制されており、前記ガスセンサは、前記検出側ヒータおよび前記補償側ヒータの温度が測定できるように構成されていることを特徴とする。
検出側ヒータは、低熱伝導部上に設けられているため、検出側ヒータから外部への熱の放出は、主として、検出側ヒータから検出対象ガスの平均自由行程よりも短い空隙を空けて配置された検出側放熱体を介して行われる。この検出側ヒータと検出側放熱体との間の空隙に、検出対象ガスが含まれたガスが導入された場合、検出側ヒータから放熱部への熱の伝達量が顕著に増大する。そのため、検出側ヒータの温度を測定し、検出側ヒータから放熱部への熱の伝達量の増大に伴う検出側ヒータの温度の低下を検出することで、より高い感度で検出対象ガスを検出することができる。
さらに、低熱伝導部上に補償側ヒータを設け、その温度を測定することにより、環境温度の変化等の外的要因によるヒータの温度の変化を評価することができるので、外的要因による検出側ヒータの温度変化を補償し、検出対象ガスの検出感度をより高くすることができる。
また、補償側ヒータから伝達された熱をガスセンサの外部に放出する補償側放熱体を設けることにより、補償側ヒータと検出側ヒータとの熱的な特性をより近くすることができるので、外的要因による検出側ヒータの温度変化を、より高い精度で補償することができ、検出対象ガスの検出感度をさらに高くすることができる。
そして、検出側放熱体を検出側ヒータを覆う検出側蓋として構成し、補償側放熱体を補償側ヒータを覆う補償側蓋として構成するとともに、検出側ヒータおよび検出側蓋の間の距離と、補償側ヒータおよび補償側蓋の間の距離とを、互いに異なるようにすることにより、補償側ヒータと補償側放熱体である補償側蓋との間が、検出側ヒータと検出側放熱体である検出側蓋との間よりも、検出対象ガスによる熱伝達が抑制されるようにしているので、補償側ヒータと検出側ヒータとの熱的な特性を近くし、検出対象ガスの検出感度が高いガスセンサをより容易に形成することができる。
前記ガスセンサは、さらに、前記検出側ヒータの近傍に設けられ、前記検出側ヒータの温度を測定する検出側測温素子を備えるものとしても良い。検出側ヒータの近傍に、ヒータの温度を測定する測温素子を設けることにより、ヒータの構造にかかわらず、ヒータの温度を表す出力信号を十分に大きくすることができる。そのため、検出対象ガスの検出感度をより高くすることができる。
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能である。例えば、ガスセンサ、そのガスセンサを利用したセンサモジュール、そのセンサモジュールを使用した特定のガスの検出装置および検出システム、それらのガスセンサ、センサモジュールおよび検出装置を用いたリーク検査装置やリーク検査システム等の態様で実現することができる。
本発明の第1実施形態におけるリーク検査装置の構成を示す説明図。 センサモジュールの構成を示す説明図。 ガスセンサの構造を示す説明図。 蓋の内法距離を設定する方法を示す説明図 ヒータの温度を測定するための機能的な構成を示す説明図。 第2実施形態におけるガスセンサの構造を示す説明図。
A.第1実施形態:
A1.リーク検査装置:
図1は、本発明の第1実施形態におけるリーク検査装置1の構成を示す説明図である。図1に示すリーク検査装置1は、いわゆる、真空チャンバー方式のリーク検査装置であり、検査対象物WKからのガスの漏洩(リーク)があるか否かに基づいて、検査対象物WKの気密性の検査を行う装置である。リーク検査装置1は、真空チャンバー2と、検査用のガス(トレースガス)を供給するガス供給源3と、真空ポンプ4と、トレースガスを検出するガス検出装置5とを備えている。トレースガスとしては、通常、ヘリウム(He)や水素(H)等の分子サイズが小さいガスが使用される。
検査対象物WKが内部に配置される真空チャンバー2は、配管を通じて真空ポンプ4およびガス検出装置5に接続されている。ガス検出装置5において、配管に接続されている領域には、熱伝導式のガスセンサモジュール10(以下、単に「センサモジュール10」とも呼ぶ)が配置されている。センサモジュール10は、雰囲気中のトレースガスの濃度に対応する信号を出力する。ガス検出装置5は、センサモジュール10が出力する信号に基づいてトレースガスを検出するとともに、トレースガスの有無や濃度等の検出結果を表示し、あるいは、音や光等を発することでトレースガスの検出を報知する。
ガス供給源3は、配管により検査対象物WKの内部に接続されており、ガス供給源3から検査対象物WKの内部にトレースガスが供給されることにより、トレースガスが検査対象物WKの内部に充満した状態となる。また、真空ポンプ4により真空チャンバー2や配管中のガスを排出することにより、真空チャンバー2の内部と、センサモジュール10の雰囲気とは、大気圧よりも圧力が低い(例えば、0.1気圧)減圧状態になる。このように減圧状態となった真空チャンバー2の内部に、トレースガスが充満した検査対象物WKを配置することにより、検査対象物WKの内外の圧力差を大きくすることができるので、リークをより確実に検出することが可能となる。検査対象物WKの気密性が十分でない場合、トレースガスが検査対象物WKの内部から真空チャンバー2の内部に漏出する。真空チャンバー2に漏出したトレースガスがガス検出装置5のセンサモジュール10に到達すると、ガス検出装置5によりトレースガスが検出される。このように、検査対象物WKの気密性が十分でない場合、ガス検出装置5によりトレースガスが検出されるので、検査対象物WKの気密性が十分であるか否かを判断することができる。
A2.センサモジュール:
図2は、センサモジュール10の構成を示す説明図である。図2(a)は、センサモジュール10の断面を示している。第1実施形態のセンサモジュール10では、センサチップ100が、ケース11とキャップ12とからなるパッケージ19内に実装されている。キャップ12は、例えば、ステンレス鋼や真鍮等の焼結金属、ステンレス鋼等からなる金網、あるいは、多孔質セラミックスで形成されている。これにより、パッケージ19内外の通気性が確保されるとともに、センサチップ100の汚染が抑制され、また、センサモジュール10自体の防爆化が図られている。センサチップ100は、その基板110がダイボンド材15によりケース11に接着されることにより、ケース11に固定されている。
図2(b)は、ケース11に固定されたセンサチップ100を上面から見た様子を示している。図2(b)における2本の一点鎖線C1,C2は、それぞれセンサチップ100の中心線(以下、「中心線C1」および「中心線C2」とも呼ぶ)を示し、二点鎖線A−A’は、図2(a)で示したセンサモジュール10の断面の位置を示す切断線(以下、「切断線A−A’」とも呼ぶ)である。図2(b)に示すように、センサチップ100は、図2(b)の横方向に伸びる中心線C1と、図2(b)の縦方向に伸びる中心線C2とのそれぞれに対してほぼ対称に形成されている。そのため、以下では、必要性がない限り、このように対称性を有する部分については、その1つについてのみ説明する。
図2(b)に示すように、センサチップ100の上面には、導電膜が露出したボンディングパッドP11〜P15が形成されている。これら5つのボンディングパッドP11〜P15と、ケース11の外部電極13に接続された端子14とをワイヤ16で接続すること(ワイヤボンド)により、センサチップ100と外部回路との接続が可能となっている。
センサチップ100は、図2(b)において、中心線C1の上側に位置するガス検出部RD1(以下、「検出部RD1」とも呼ぶ)と、中心線C1の下側に位置する補償部RC1とを有している。検出部RD1および補償部RC1の上面側には、それぞれ、開口部197,198を有する蓋191,192が形成されている。蓋191,192は、その一部が空中に浮いた状態で形成されているため、中空の空間(中空空間)CV1,CV2を形成する。これらの中空空間CV1,CV2には、開口部197,198を介して、センサモジュール10外部の雰囲気が導入される。
詳細については後述するが、第1実施形態のセンサチップ100において、検出部RD1は、中空空間CV1の内部における特定のガス(検出対象ガス)の濃度に応じて、検出部RD1に設けられたヒータの温度が変化するように構成されている。一方、補償部RC1は、中空空間CV2の内部における検出対象ガスの濃度が変化しても、補償部RC1に設けられたヒータの温度がほとんど変化しないように構成されている。また、検出部RD1および補償部RC1は、それぞれが有しているヒータの温度を表す信号を出力する。そのため、センサチップ100を用いることで、検出部RD1および補償部RC1の出力信号に基づいて検出部RD1および補償部RC1のヒータの温度差を評価し、中空空間CV1,CV2に導入された雰囲気中における検出対象ガスの濃度を測定することができる。
検出対象ガスの濃度の測定は、例えば、検出部RD1および補償部RC1の出力信号を、センサモジュール10の外部に設けられた演算増幅器に入力し、出力信号の差(すなわち、ヒータの温度差)を表す差分信号を得ることにより行うことができる。なお、一般的に、検出対象ガスの濃度を測定する際には、予めセンサモジュール10の雰囲気を検出対象ガスが含まれない状態とし、その状態における差分信号の値(オフセット)を零に調整し、その後、センサモジュール10の雰囲気を測定対象となるガス(被検ガス)にする。このとき、被検ガス中に検出対象ガスが存在すると、検出部RD1のヒータの温度は、検出対象ガスの濃度に応じて変化するが、補償部RC1のヒータの温度は、ほとんど変化しない。そのため、検出部RD1および補償部RC1のヒータの温度差を表す差分信号の値が検出対象ガスの濃度に対応することとなるので、差分信号の値に基づいて検出対象ガスの濃度を測定することができる。
ところで、第1実施形態のセンサチップ100では、検出部RD1および補償部RC1がほぼ対称に形成されている。そのため、検出部RD1および補償部RC1は、中空空間CV1,CV2の内部における検出対象ガスの濃度に応じてヒータの温度が変化するか否かを除いて、熱的な特性がほぼ同じである。そのため、環境温度の変化等の外的要因による検出部RD1の出力信号の変動を、補償部RC2の出力信号により高い精度で補償することができる。検出部RD1の出力信号を補償部RC2の出力信号で補償することにより、環境温度の変化等の外的要因による検出対象ガスの濃度の測定値変動(ドリフト)を十分に小さくすることができるので、検出対象ガスの検出感度をより高くすることができる。なお、このように、センサチップ100は、センサモジュール10において、特定のガスを検出する機能を担っているので、ガスセンサそのものであると謂える。そのため、以下では、センサチップ100を単に「ガスセンサ100」と呼ぶ。
A3.ガスセンサの構造:
図3は、ガスセンサ100の構造を示す説明図である。図3(a)は、ガスセンサ100を上面から見た様子を示しており、図3(b)および図3(c)は、それぞれ、図3(a)の切断線A−A’および切断線B−B’におけるガスセンサ100の断面を示している。
ガスセンサ100は、2つの空洞部117,118が設けられた基板110と、基板110の上面に形成された絶縁膜120とを有している。絶縁膜120上には、ガスの検出機能を実現するための構造(後述する)を形成する複数の膜(機能膜)が積層されている。具体的には、絶縁膜120上には、n型半導体膜130、第1の層間絶縁膜140、p型半導体膜150、第2の層間絶縁膜160、導電膜170、保護膜180および伝熱膜190が、この順で積層されている。これらの機能膜130〜190は、薄膜として形成されている。ここで、薄膜とは、厚さが100μm以下の膜を謂う。薄膜として形成される機能膜130〜190は、半導体デバイスの製造方法として周知の技術(微細加工技術)を用いて形成することができる。なお、本明細書において、機能膜130〜190とは、成膜されたままのパターニングがされていない膜、成膜後にパターニング等により所定の形状に形成された膜、および、後の工程においてさらにパターニング等がなされた膜の総称である。また、絶縁膜120および絶縁膜120上に積層される機能膜は、ガスセンサの製造工程や構造の変更に伴い、適宜追加あるいは省略される。
ガスセンサ100の作成工程では、まず、空洞部117,118を有さないシリコン(Si)基板を準備する。次いで、準備したSi基板上に、酸化ケイ素(SiO)、窒化ケイ素(Si)およびSiOをこの順に成膜することにより、絶縁膜120を形成する。なお、絶縁膜120を、SiOとSiとの多層膜とせず、酸窒化ケイ素(SiON)の単層膜とすることも可能である。
絶縁膜120の形成の後、n型ポリシリコンの成膜・パターニングを行うことにより、n型半導体膜130を形成する。n型半導体膜130を形成する材料として、ポリシリコンに替えて、鉄シリサイド(FeSi)、シリコン・ゲルマニウム(SiGe)あるいはビスマス・アンチモン(BiSb)等の種々の半導体を用いても良い。n型半導体膜130の形成後、SiOの成膜を行うことにより、パターニングされていない第1の層間絶縁膜140を形成する。次いで、p型ポリシリコンの成膜・パターニングを行うことにより、p型半導体膜150を形成する。p型半導体膜150もn型半導体膜130と同様に、ポリシリコン以外の種々の半導体を用いて形成することができる。また、これら2つの半導体膜130,150の導電型を逆にすることも可能である。
p型半導体膜150の形成の後、SiOを成膜し、第2の層間絶縁膜160を形成する。第2の層間絶縁膜160は、n型半導体膜130とp型半導体膜150とをパターニングすることにより形成された段差を解消するように、上面が平坦化されている。具体的には、最も凹んだ位置においても、SiO膜の上面の位置がp型半導体膜150よりも上面側に位置するように、十分に厚くSiO膜を形成する。次いで、十分に厚く形成されたSiO膜に対して、上面側から化学機械研磨(CMP)あるいはエッチバックを行うことで、上面が平坦な第2の層間絶縁膜160が形成される。第2の層間絶縁膜160の平坦化の後、第1の層間絶縁膜140および第2の層間絶縁膜160をパターニングすることにより、第2の層間絶縁膜160の上面から、n型半導体膜130とp型半導体膜150とのそれぞれに到達する穴(コンタクトホール)を形成する。
コンタクトホールの形成の後、白金(Pt)の成膜・パターニングを行うことにより、導電膜170を形成する。導電膜170を形成する材料として、Ptに替えて、タングステン(W)、レニウム(Rh)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、ハフニウム(Hf)、金(Au)、銅(Cu)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、Al合金(例えば、AlSiやAlSiCu)、窒化チタン(TiN)、チタンタングステン(TiW)等、種々の金属や合金を用いても良い。また、導電膜170の少なくとも一方の面に、Tiやクロム(Cr)からなる密着層を形成しても良い。導電膜170を形成した後、SiOの成膜および平坦化を行い。平坦化されたSiO膜のパターニングを行うことにより、保護膜180を形成する。なお、導電膜170の上面と、保護膜180の上面との距離は、ヒータ(後述する)からの放熱を良好にするため、できるだけ薄く(例えば、0.1μm以下)するのが好ましい。さらに、ヒータ部分については、導電膜170を露出させるようにすることも可能である。パターニングによって保護膜180に開口部181〜185を設けることにより、導電膜170が露出したボンディングパッドP11〜P15が形成される。
これらの開口部181〜185の他、絶縁膜120と、第1および第2の層間絶縁膜140,160と、保護膜180とには、これらの膜120,140,160,180を貫通する4つのコンタクトホールCH1〜CH4が設けられている。これらの4つのコンタクトホールCH1〜CH4を形成した後、中空空間CV1,CV2が形成される領域に犠牲膜を形成する。犠牲膜は、フォトレジストあるいは感光性ポリイミド等の感光性樹脂を塗布した後、露光および現像を行うことによって、中空空間CV1,CV2の形状に形成される。図3に示すように、検出部RD1の中空空間CV1は、周縁部に対して中央部が低くなっている。そのため、検出部RD1では、まず、中央部の高さまで断面が台形の犠牲膜を形成し、次いで、形成された犠牲膜の上面に周縁部を形成するための中央部が開いた犠牲膜を形成して、中空空間CV1の形状の犠牲膜が形成される。一方、補償部RC1の中空空間CV2は、断面がほぼ台形であるため、検出部RD1側における犠牲膜の形成と同時に、断面が台形の犠牲膜を形成し、形成された犠牲膜の上面に、さらに、断面が台形の犠牲膜を形成することで形成される。なお、ハーフトーンマスクを用いて露光を行うことにより、感光性樹脂の塗布、露光および現像の一連の工程を1回行うのみで、周縁部に対して中央部が低い犠牲膜を形成することも可能である。また、インクジェットやスクリーン印刷等の印刷技術を用いてフォトレジストあるいはポリイミド等の有機材料を中空空間CV1,CV2の形状に形成し、犠牲膜とすることも可能である。なお、犠牲膜は、後の工程において除去可能であれば、必ずしも有機材料で形成する必要はなく、ポリシリコン等の無機材料で形成することも可能である。
犠牲膜の形成の後、Alの成膜・パターニングを行うことにより、伝熱膜190を形成する。伝熱膜190を形成する材料として、Alに替えて、W、Au、Cu、銀(Ag)またはベリリウム(Be)等の単体金属、クロム銅またはベリリウム銅等の合金、あるいは、カーボンナノチューブやダイヤモンドライクカーボン等の炭素化合物を使用することも可能である。伝熱膜190としては、一般に、熱伝導度が高い材料で形成するのが好ましい。
伝熱膜190を形成した後、基板110に設けられる空洞部117,118を形成する。空洞部117,118の形成に際しては、まず、基板の機能膜130〜190が形成されていない面(裏面)を研磨する。研磨により基板を所望の厚さにした後、裏面をエッチングすることにより、空洞部117,118を形成する。なお、基板の研磨を省略することも可能である。空洞部117,118の形成は、ドライエッチングと、ウェットエッチングとのどちらによっても行うことができる。ドライエッチングを行う場合には、Cプラズマによるパッシベーションと、SFプラズマによるエッチングとのステップを短い時間間隔で繰り返すエッチング方法(いわゆるボッシュプロセス)を用いるのが好ましい。また、ウェットエッチングを行う場合には、結晶異方性エッチングを行うのが好ましい。空洞部117,118を形成することにより、外枠部111と、2つの空洞部117,118を隔てる板状部112とを備える基板110が形成される。また、空洞部117,118を形成することにより、絶縁膜120が裏面側において露出したメンブレン121,122が形成される。なお、図3から明らかなように、メンブレン121,122は、空洞部117,118を渡るように形成されている。
空洞部117,118の形成後、中空空間CV1,CV2となる領域に形成されている犠牲膜を除去する。有機材料で形成された犠牲膜は、伝熱膜190に設けられた開口部197,198を介してアッシングを行うことにより除去される。また、無機材料で形成された犠牲膜は、伝熱膜190に設けられた開口部197,198を介してエッチングを行うことにより除去される。犠牲膜を除去することにより、伝熱膜190と保護膜180との間に中空空間CV1,CV2が形成される。
ガスセンサ100では、検出部RD1および補償部RC1において、導電膜170として形成され、幅の狭い葛折の線状のヒータ171,172が、メンブレン121,122上に位置している。ヒータ171は、検出部RD1側に形成されているため、「検出側ヒータ」とも呼ぶことができる。一方、ヒータ172は、補償部RC1側に形成されているため、「補償側ヒータ」とも呼ぶことができる。なお、第1実施形態のガスセンサ100では、ヒータ171,172を導電膜170として形成しているが、ヒータをn型半導体膜130やp型半導体膜150として形成しても良い。
メンブレン121,122の下面には、熱を伝達しにくい空洞部117,118が形成されているので、ヒータ171,172に通電して発生した熱は、ガスセンサ100内において、メンブレン121,122およびメンブレン121,122上に形成された保護膜180までの各機能膜130〜180を介して伝達される。メンブレン121,122は、一般に薄く(約1〜5μm)形成されるとともに、熱伝導度が低い絶縁膜(SiO、Si)を主体に構成されている。また、機能膜130〜180は、一般にメンブレン121,122よりも薄く形成されるとともに、比較的厚い第2の層間絶縁膜160と保護膜180は、熱伝導度が低いSiOにより形成されている。そのため、ヒータ171,172で発生した熱のメンブレン121,122の面方向への伝達が抑制される。これにより、ヒータ171,172で発生した熱が、メンブレン121,122および機能膜130〜180を介し、基板110、ダイボンド材15(図2)およびケース11を通して外部に放出されることが抑制される。なお、上述のように、空洞部117,118は、熱を伝達しにくいので、「低熱伝導部」とも呼ぶことができる。
伝熱膜190として形成され、中空空間CV1,CV2を形成する蓋191,192は、中空空間CV1,CV2を挟んだ位置において、ヒータ171,172を覆うように配置されている。そのため、ヒータ171,172で発生した熱は、中空空間CV1,CV2内に存在するガスにより蓋191,192に伝達される。これらの蓋191,192を形成する伝熱膜190は、絶縁膜120、第1および第2の層間絶縁膜140,160、および保護膜180に設けられたコンタクトホールCH1〜CH4を介して基板110の外枠部111に接触している。伝熱膜190は、また、基板110の板状部112の上部において、保護膜180に接触している。そのため、伝熱膜190に伝達された熱は、基板110の外枠部111および板状部112と、ダイボンド材15(図2)と、ケース11とを通して外部に良好に放出される。一方、上述のように、ヒータ171,172で発生した熱が、メンブレン121,122および機能膜130〜180を介して外部に放出されることが抑制される。そのため、ヒータ171,172で発生した熱は、主として、中空空間CV1,CV2内のガスと蓋191,192とを介してガスセンサ100の外部に放出される。このように、蓋191,192は、ヒータ171,172から伝達された熱を外部に放出するので、「放熱体」とも呼ぶことができる。また、蓋191は、検出部RD1側に設けられているので、「検出側蓋」あるいは「検出側放熱体」とも呼ぶことができ、蓋192は、補償部RC1側に設けられているので、「補償側蓋」あるいは「補償側放熱体」とも呼ぶことができる。
第1実施形態のガスセンサ100では、図3に示すように、検出部RD1側の蓋191が、その周縁部191aよりもヒータ171に近い中央部191bにおいて下面側に向かって凹み、中央部191bがヒータ171に近接した状態となっている。蓋191の中央部191bがヒータ171に近接することにより、検出部RD1では、中空空間CV1内の検出対象ガスを介してヒータ171から蓋191に熱が伝達される。この熱の伝達は、保護膜180の上面から蓋191(中央部191b)の下面までの距離(以下、蓋191の「内法距離」とも謂う)が短くなるほど良好に行われる。特に、蓋191の内法距離、すなわち、保護膜180の上面から蓋191の下面までの距離を、特定の長さ(後述する)よりも短くすることにより、中空空間CV1内の検出対象ガスによるヒータ171から蓋191への熱の伝達は、極めて良好に行われる。そのため、蓋191の内法距離を十分短くした検出部RD1では、中空空間CV1内における検出対象ガスの濃度が高くなると、ヒータ171から外部に熱を放出する蓋191への熱の伝達量が増加する。なお、蓋191の周縁部191aでは、保護膜180までの距離が長くなっているので、開口部197から中空空間CV1に入ったガス分子が直ちに開口部197から出て行くことが抑制されるので、ガスセンサ100の周囲のガスは、中空空間CV1に導入される。このように、周縁部191aは、中空空間CV1にガスを導入する機能を有しているので、「ガス導入部」とも謂うことができる。また、このように、中空空間CV1へのガスの導入は、周縁部191aにおいて行われるので、開口部197は、必ずしも全面に形成されている必要はなく、中央部191bに設けられた開口部197を省略することも可能である。
補償部RC1側の蓋192では、内法距離が、検出部RD1側の蓋191の内法距離よりも長くなっている。このように、蓋192の内法距離を十分に長くすることにより、中空空間CV2内の検出対象ガスによるヒータ172から蓋192への熱の伝達が抑制されるので、中空空間CV2内における検出対象ガスの濃度が高くなっても、ヒータ172から外部に熱を放出する蓋192への熱の伝達量は、ほとんど変化しない。なお、補償部RC1側では、検出対象ガスの濃度の変化に対して、ヒータ172から外部に放出される熱量の変化が抑制されていればよい。そのため、ヒータ172で発生した熱を外部に放出する役割を果たす蓋192自体を省略することも可能である。但し、検出部RD1と補償部RC1とをほぼ対称に構成し、外的要因の補償をより確実にするため、蓋192を設けるのが好ましい。また、検出部RD1の蓋191と同様に、開口部198は必ずしも全面に形成されている必要はなく、中央部において開口部198を省略することも可能である。
このように、検出部RD1では、ヒータ171から蓋191を介して外部に放出される熱量は、中空空間CV1内の検出対象ガスの濃度によって変化する。その一方、補償部RC1では、ヒータ172から蓋192を介して外部に放出される熱量は、中空空間CV2内の検出対象ガスの濃度によってはほとんど変化しない。そこで、ヒータ171,172に一定の電力を供給し、ヒータ171,172の発熱量を一定とした場合、検出部RD1のヒータ171の温度は、検出対象ガスの濃度が増加するにつれて低下するが、補償部RC1のヒータ172の温度は、検出対象ガスの濃度が増加してもほとんど変化しない。そのため、これら2つのヒータ171,172の温度を測定し、温度差を評価することにより、中空空間CV1,CV2に導入された雰囲気中における検出対象ガスの濃度を測定することができる。なお、ヒータ171,172の温度を測定するための構成については、後述する。
A4.蓋の内法距離の設定方法:
図4は、検出部RD1および補償部RC1のそれぞれが有する蓋191,192の内法距離を設定する方法を示す説明図である。図4(a)は、図3(b)に示すガスセンサ100の断面図において、検出部RD1側の蓋191の付近を拡大した拡大図である。なお、図4(a)では、補償部RC1側の蓋192を検出部RD1側の蓋191に重ね合わせ、破線にて描いている。図4(b)ないし図4(d)は、内法距離の設定の際に考慮される、種々のガスの平均自由行程を示す表である。
検出部RD1では、検出対象ガスの濃度を測定するため、ヒータ171から蓋191への熱の伝達量を大きくするのが好ましい。ヒータ171から蓋191への熱の伝達量は、内法距離H1が短くなるほど増大するが、内法距離H1が検出対象ガスの平均自由行程より短くなると顕著に増大する。これは、ヒータ171により熱エネルギーが与えられた検出対象ガスの分子の大部分が、他のガス分子に衝突して散乱することなく蓋191に直接衝突するため、散乱により熱エネルギーを失うことなく、熱エネルギーを蓋191に与えるためである。従って、内法距離H1は、検出対象ガスの平均自由行程よりも短くするのが好ましい。
一方、補償部RC1では、検出対象ガスの濃度の影響を受けないようにするため、ヒータ172(図3)から蓋192への熱の伝達量を小さくするのが好ましい。そのため、内法距離H2は、内法距離H1とは反対に、長くするのが好ましい。内法距離H2は、ヒータ172により熱エネルギーが与えられた検出対象ガスの分子の大部分が、蓋192に衝突する前に他のガス分子に衝突して散乱するように、検出対象ガスの平均自由行程よりも長くするのが好ましく、検出対象ガスの平均自由行程の2倍以上とするのが好ましい。さらに、ヒータ172から蓋192への熱の伝達量をより確実に低減するため、内法距離H2は、検出対象ガスの平均自由行程の3倍以上とするのがさらに好ましい。
このように、検出部RD1側における蓋191の内法距離H1は、補償部RC1側の蓋191の内法距離H2よりも短くなっている。従って、検出部RD1側の蓋191とヒータ171との間の距離と、補償部RC1側の蓋192とヒータ172との間の距離とは、互いに異なっている。そして、補償部RC1側の蓋192の内法距離H2が検出部RD1側における蓋191の内法距離H1よりも長くなっているため、補償部RC1側におけるヒータ172と蓋192との間は、検出部RD1側におけるヒータ171と蓋191との間よりも、熱が伝達されにくくなっている。また、以上のことから明らかなように、検出部RD1側の蓋191と保護膜180との間には、平均自由行程より短い内法距離H1の長さの空隙が形成されている。そのため、検出部RD1側の蓋191は、ヒータ171から平均自由行程よりも短い内法距離H1分の空隙を空けて配置されているとも謂うことができる。同様に、補償部RC1側の蓋192は、ヒータ172から平均自由行程よりも長い内法距離H2分の空隙を空けて配置されているとも謂うことができる
検出部RD1側の蓋191の内法距離H1と、補償部RC1側の蓋192の内法距離H2とは、好適な態様として、検出対象ガスの平均自由行程に基づいて決定される。しかしながら、図4(b)ないし図4(d)の表に示すように、ガスの平均自由行程は、ガスの種類、温度および圧力によって大きく変動する。そこで、これらの内法距離H1,H2は、ガスセンサ100の使用状況に合わせて適宜変更される。例えば、図1に示すリーク検査装置1において使用する際に、真空チャンバー2等の内部の圧力を0.1気圧とし、トレースガスとしてHeを使用し、ヒータ171,172の温度を約400Kとする場合、図4(c)のハッチング部分に示すように平均自由行程が2.75μmとなる。そのため、このような場合には、検出部RD1側の蓋191の内法距離H1を2.75μmよりも短く(例えば、2μm)し、補償部RC1側の蓋192の内法距離H2を2.75μmよりも長く(例えば、10μm)すればよい。
第1実施形態では、補償部RC1側の蓋192の内法距離H2を検出部RD1側の蓋191の内法距離H1よりも長くしているが、補償部側の蓋の内法距離を検出部側の蓋の内法距離よりも短くすることも可能である。このようにすることにより、検出対象ガスと、検出対象ガスよりも平均自由行程が短く、かつ、検出対象から外したいガス(検出非対象ガス)とを弁別し、検出非対象ガスの影響を排除して検出対象ガスを検出することが可能になる。このようにする場合には、検出部側の蓋の内法距離は、検出対象ガスの平均自由行程よりも短く、かつ、検出非対象ガスの平均自由行程よりも長くされ、補償部側の蓋の内法距離は、検出非対象ガスの平均自由行程よりも短くされる。
A5.ヒータの温度を測定するための機能的な構成:
図5は、ガスセンサ100においてヒータ171,172の温度を測定するための機能的な構成を示す説明図である。図5(a)は、図3(a)と同様に、ガスセンサ100を上面から見た様子を示している。但し、図5(a)および図5(b)においては、図示の便宜上、伝熱膜190の図示と、第1と第2の層間絶縁膜140,160および保護膜180のハッチングとを省略している。図5(b)は、図5(a)において点線で囲んだ領域の拡大図である。
ガスセンサ100は、ヒータ171,172の温度測定機能を実現するための構造として、n型半導体膜130(図3)として形成されたn型半導体熱電素子131と、p型半導体膜150として形成されたp型半導体熱電素子151と、導電膜170として形成された、温接点接続線173、冷接点接続線174、信号出力電極175、ヒータ通電電極176、サーモパイル接続線177およびグランド配線178とを有している。また、保護膜180に開口部181〜185を設けることにより、信号出力電極175が露出したボンディングパッド(信号出力パッド)P11,P13と、ヒータ通電電極176が露出したボンディングパッド(ヒータ通電パッド)P12,P14と、グランド配線178が露出したボンディングパッド(グランドパッド)P15とが形成されている。なお、ガスセンサ100では、グランド配線178が温度測定機能を実現するための各部を取り囲んでいるため、電磁ノイズに対するシールド性が高くなっている。また、電磁ノイズからのシールド性をさらに向上させるため、絶縁膜120(図3)と、第1および第2の層間絶縁膜140,160とに開口部を設け、グランド配線と基板110とを接続してもよい。
第1実施形態のガスセンサ100においては、図5において横方向に伸びる複数のn型半導体熱電素子131が縦方向に配列され、n型半導体熱電素子131の第1の層間絶縁膜140(図3)を挟んで上の位置に、n型半導体熱電素子131よりも短いp型半導体熱電素子151が形成されている。上述のように、第1および第2の層間絶縁膜140,160には、第2の層間絶縁膜160の上面から、n型半導体膜130とp型半導体膜150とにそれぞれ到達するコンタクトホールが設けられている。温接点接続線173は、ヒータ171側のコンタクトホールを介して、第1の層間絶縁膜140を挟んで上下に積層されたn型半導体熱電素子131とp型半導体熱電素子151とを接続している。一方、冷接点接続線174は、グランド配線178側のコンタクトホールを介して、隣接したn型半導体熱電素子131とp型半導体熱電素子151とを接続している。これにより、n型半導体熱電素子131、p型半導体熱電素子151、温接点接続線173および冷接点接続線174は、温接点接続線173により形成された温接点と、冷接点接続線174により形成された冷接点とを有する複数の熱電対を直列接続したサーモパイルT11を構成する。サーモパイルT12〜T14もサーモパイルT11と同様に構成されている。
サーモパイル接続線177は、熱電対を直列接続したサーモパイルT11,T12をさらに直列接続する。信号出力電極175は、直列接続されたサーモパイルT11,T12の一端のp型半導体熱電素子151に接続されている。一方、直列接続されたサーモパイルT11,T12の他端にあるn型半導体熱電素子131は、グランド配線178に接続されている。また、サーモパイルT13,T14についても、サーモパイルT11,T12と同様に接続されている。これにより、ガス検出部RD1の信号出力パッドP11には、グランドパッドP15に対して、サーモパイルT11,T12の温接点と冷接点との温度差に対応した電圧が発生し、補償部RC1の信号出力パッドP13には、グランドパッドP15に対して、サーモパイルT13,T14の温接点と冷接点との温度差に対応した電圧が発生する。検出部RD1では、複数の熱電対を直列接続したサーモパイルT11,T12をさらに直列接続することで、信号出力パッドP11の電圧、すなわち、検出部RD1のヒータ171の温度を表す出力信号を十分に大きくしている。同様に、補償部RC1では、複数の熱電対を直列接続したサーモパイルT13,T14をさらに直列接続することで、信号出力パッドP13の電圧、すなわち、補償部RC1のヒータ172の温度を表す出力信号を十分に大きくしている。
図5(b)に示すように、温接点を形成する温接点接続線173は、メンブレン121上のヒータ171の付近に配置され、冷接点を形成する冷接点接続線174は、基板110(図3(b))の外枠部111の上部に配置されている。そのため、信号出力パッドP11には、冷接点接続線174が配置された外枠部111を基準とし、温接点接続線173が配置されたヒータ171の付近の温度を表す電圧が出力される。なお、温接点接続線173が配置された位置の温度は、温接点接続線173をヒータ171に十分に近づけることにより、ヒータ171とほぼ同じ温度とすることができるので、以下では、「ヒータ171の温度」とも謂う。冷接点接続線174が配置された外枠部111は、ダイボンド材15(図2)を介してケース11に接着されているので、環境温度とほぼ同温度となる。そのため、ヒータ171の温度の測定基準は、環境温度となる。このように、温接点接続線173により形成される温接点は、ヒータ171,172の温度を測定する機能を有している。温接点接続線173により形成される温接点(すなわち、サーモパイルT11〜T14の温接点)は、ヒータ171,172の温度を測定する機能を有しているため、「測温素子」とも謂うことができる。また、検出部RD1のサーモパイルT11,T12の温接点は、検出部RD1側に設けられているので、「検出側測温素子」とも呼ぶことができる。一方、補償部RC1のサーモパイルT13,T14の温接点は、補償部RC1側に設けられているので、「補償側測温素子」とも呼ぶことができる。
第1実施形態のガスセンサ100では、ヒータ通電パッドP12,P14とグランドパッドP15との間に電圧を印加することにより、ヒータ171,172が発熱する。このヒータ171,172の温度は、ヒータ171,172に投入された電力と、ヒータ171,172からガスセンサ100の外部に放出される熱量により決定される。
上述のように、ヒータ171,172からガスセンサ100の外部への熱の放出は、主として、中空空間CV1,CV2(図3)内のガスを通して行われる。そして、検出部RD1においては、ヒータ171から蓋191へは、検出対象ガスにより良好に熱が伝達されるので、検出対象ガスの濃度が高くなると、ヒータ171から蓋191に伝達される熱量が増加し、ヒータ171の温度が低下する。一方、補償部RC1においては、検出対象ガスによるヒータ172から蓋192への熱の伝達が抑制されるので、ヒータ172から蓋192に伝達される熱量、および、ヒータ172の温度は、検出対象ガスの濃度の影響をほとんど受けない。そのため、2つのヒータ171,172の温度差を評価することで、検出対象ガスの濃度を測定することができる。
ガスセンサ100は、ヒータ171,172のそれぞれの温度を表す信号を出力するので、これらの出力信号から、ヒータ171,172のそれぞれの温度を表す出力信号の差である差分信号を得ることにより、検出対象ガスの濃度に対応するヒータ171,172の温度差を評価し、検出対象ガスの濃度の測定をすることができる。そして、ガスセンサ100では、検出部RD1および補償部RC1がほぼ対称な構造となっており、検出対象ガスによる熱伝達の良否を除き、検出部RD1および補償部RC1は、熱的な特性がほぼ同じとなっている。そのため、ヒータ171の温度を表す検出部RD1の出力信号の環境温度の変化等の外的要因による変動を、ヒータ172の温度を表す補償部RC1の出力信号により高い精度で補償し、検出対象ガスの濃度の測定値の変動(ドリフト)を十分に小さくすることができるので、検出対象ガスの検出感度をより高くすることができる。
また、第1実施形態のガスセンサ100では、検出部RD1側で検出対象ガスによるヒータ171から蓋191への熱伝達を良好にし、補償部RC1側で検出対象ガスによるヒータ172から蓋192への熱伝達を抑制するため、検出部RD1と補償部RC1とにおいて、それぞれに設けられた蓋191,192の内法距離を、平均自由行程に応じて設定している。上述のように、ガスの平均自由行程は、ガスの種類等によって異なるため、蓋191,192の内法距離を適宜設定することによって、検出対象ガスを選択的に検出することができる。特に、同じ圧力および温度の下では、分子サイズが小さいHe、Hは、平均自由行程が他のガスよりも長くなるので、He、Hを選択的に検出することがより容易となる。そのため、図1に示すようなリーク検査装置1に用いた場合、真空チャンバー2を高真空にすることなくHeやHを検出することができるので、真空チャンバー方式のリーク検査をより容易に行うことが可能となる。
さらに、第1実施形態のガスセンサ100では、ガスの検出機能を実現するための構造(すなわち、ヒータ171,172、サーモパイルT11〜T14および蓋191,192等)を、薄膜として形成している。そのため、ガスセンサ100およびガスセンサ100を使用したセンサモジュール10を小型化することができる。このように、ガスセンサ100およびセンサモジュール10を小型化することにより、ガスセンサ100およびセンサモジュール10をガスの検出が行われる検出領域により近づけることができる。そのため、検出領域以外への検出対象ガスの拡散による、検出対象ガスの検出感度の低下や、検出対象ガスが放出されている位置を特定する際の位置精度の低下を抑制することができる。特に、第1実施形態のガスセンサ100では、ガスセンサ100およびセンサモジュール10の高さをより小さくすること(低背化)ができる。これにより、ガスセンサ100およびセンサモジュール10の実装の自由度をより高くすることができる。
また、第1実施形態のガスセンサ100では、ガスの検出機能を実現するための構造を、薄膜として形成しているため、当該構造を、半導体デバイスの製造方法として使用される微細加工技術を用いて形成することができる。そのため、ガスセンサ100の各部の位置合わせの精度をより高くし、検出部RD1および補償部RC1の対称性をより高くすることができる。このように、検出部RD1および補償部RC1の対称性をより高くすることにより、検出部RD1の出力信号の変動の補償部RC1出力信号による補償を、さらに高い精度で行うこと可能となるので、検出対象ガスの検出感度をさらに高くすることができる。加えて、ガスセンサ100は、他の半導体デバイスと同様に、一連の製造工程(半導体プロセス)により形成される。このように、第1実施形態によれば、ガスセンサの製造がより容易となり、ガスセンサを製造するために要する労力が低減されるので、ガスセンサの製造コストの低減を図ることができる。
第1実施形態のガスセンサ100では、2つの空洞部117,118の間の板状部112が、図2(a)に示すように、ダイボンド材15を介して、パッケージ19のケース11に接着されているので、検出部RD1と補償部RC1のそれぞれに形成されたヒータ171,172で発生し、板状部112に向かって伝達された熱は、板状部112からガスセンサ100の外部に放出される。そのため、検出部RD1のヒータ171の温度変化が補償部RC1のヒータ172の温度に与える影響をより小さくすることができるので、外的要因による検出部RD1出力の変動をより正確に補償し、検出対象ガスの検出感度をより高くすることができる。このように、板状部112は、検出部RD1と補償部RC1を熱的に分離する機能を有しているので、「熱分離部」と謂うことができる。熱分離部は、必ずしも板状である必要はなく、また、外枠部111を渡るように形成されている必要はない。一般的には、熱分離部は、基板として検出部RD1と補償部RC1の境界部である中心線C1の近傍に形成されていれば良い。ここで、ある領域の近傍とは、その領域と重なる位置、および、その領域の付近の位置の双方を含む位置を謂う。但し、板状部112等の熱分離部を省略することも可能である。熱分離部を省略しても、ヒータ171,172と、サーモパイルT11〜T14の温接点とが、熱伝導度が低い絶縁膜を主体に構成されたメンブレン上に設けられることにより、メンブレンに沿った方向への熱の伝達が抑制されるので、外的要因による検出部RD1出力の変動を補償することができる。さらに、第1実施形態のガスセンサ100では、ヒータ171,172に通電するためのヒータ通電電極176およびグランド配線178は、空洞部117,118およびメンブレン121,122の上において、検出部RD1と補償部RC1を跨がない。そのため、ヒータ通電電極176およびグランド配線178は、熱伝導度の高い導電膜170として比較的幅広に形成されているが、検出部RD1と補償部RC1の熱的な分離状態がより良好に維持される。
A6.第1実施形態に係る変形例:
第1実施形態のガスセンサ100では、ヒータ171,172を覆う蓋191,192を薄膜として形成しているが、蓋は、必ずしも薄膜として形成する必要はない。例えば、別個のチップとして形成された蓋を、ヒータの上面側に貼り付けるものとしても良い。また、ガスセンサ100では、蓋191,192の下面と保護膜180の上面との距離である内法距離が固定されているが、種々のアクチュエータ(例えば、圧電式、静電式あるいは電磁式のアクチュエータや人工筋肉)を用いて、内法距離を可変にしても良い。内法距離を可変にすることにより、被検ガスの圧力や検出対象ガスの種類に応じて、内法距離をより適切な長さとすることができるので、より正確に検出対象ガスの濃度を測定することが可能となる。
第1実施形態のガスセンサ100では、基板を下面側からエッチングすることにより空洞部117,118を形成しているが、空洞部は、基板を上面側からエッチングして形成することも可能である。この場合、コンタクトホールCH1〜CH4の形成と同時に、絶縁膜120と、第1と第2との層間絶縁膜140,160と、保護膜180とに貫通穴を設け、当該貫通穴を通して基板をエッチングすることにより空洞部を形成することができる。基板のエッチングは、中空空間CV1,CV2を形成するための犠牲膜を除去した後、蓋191,192に設けられた開口部197,198を介して行うことができる。このように基板を上面側からエッチングした場合、基板の上面側からの加工のみでガスセンサを製造でき、また、基板の残存部を下面側からエッチングした場合よりも多くすることができる。そのため、ガスセンサの製造工程を簡略化して歩留まりをより高くすることができるとともに、エッチング後の基板の強度をより高くすることができる点で、基板を上面側からエッチングするのが好ましい。一方、基板の下面側からエッチングする方が、空洞部が形成される領域において絶縁膜120に貫通穴を形成することを避けることができるので、メンブレンに貫通穴が形成されて強度が低下することを抑制し、メンブレンの破損を抑制できる点で、好ましい。
また、空洞部は、必ずしも基板に設ける必要はない。例えば、基板からp型半導体膜までのいずれかの上面に、空洞部を形成することも可能である。このような基板上の空洞部は、基板もしくは絶縁膜120上の空洞部を形成する領域に犠牲膜(以下、「空洞形成膜」とも呼ぶ)を形成した後、上述のように伝熱膜までの各機能膜を形成し、保護膜上面から空洞形成膜に到達する貫通穴を通して空洞形成膜を除去することにより、形成することができる。この空洞形成膜は、中空空間CV1,CV2を形成するための犠牲膜と同様に形成することができる。そして、空洞形成膜は、犠牲膜を除去して中空空間CV1,CV2を形成する際に、中空空間CV1,CV2を形成する犠牲膜と同時に除去することができる。なお、空洞形成膜として半導体等を用いる場合には、基板もしくは半導体膜のエッチングを阻止するため、基板、もしくは、絶縁膜120および犠牲膜の上に、SiOやSi等からなる阻止膜が形成される。このように、基板上に空洞部を形成した場合、基板をエッチングした場合よりも、基板の強度をより高くすることができる。一方、ガスセンサの製造工程をより簡略化できる点においては、基板をエッチングするのが好ましい。
第1実施形態および上記変形例では、低熱伝導部として、基板自体に設けられた空洞部、もしくは、基板上に形成された空洞部を用いているが、低熱伝導部は必ずしも空洞である必要はない。低熱伝導部は、例えば、基板自体に設けられた空洞部に、多孔質材や樹脂等の低熱伝導材を埋め込むことにより形成することができる。多孔質材としてSiOを用いる場合には、周知の低比誘電率(Low-k)絶縁膜やシリカエアロゲルの形成技術により空洞部に多孔質SiOを埋め込むことができる。多孔質材として樹脂を用いる場合には、当該樹脂のモノマやプレポリマを空洞部に充填し、その後、熱や紫外線によりモノマやプレポリマを重合させれば良い。また、低熱伝導部として、基板上に多孔質材や樹脂等の低熱伝導膜を形成するものとしても良い。この場合、上述した基板上に空洞部を形成する工程と同様に、基板もしくは絶縁膜120上に多孔質材や樹脂等の低熱伝導膜を形成し、形成した低熱伝導膜を残存させることにより低熱伝導部を形成することができる。また、基板上に低熱伝導膜を形成するためのポリシリコン膜を形成し、当該ポリシリコン膜を陽極酸化により多孔質化しても良い。さらに、低熱伝導部として、基板自体に多孔質部を形成するものとしても良い。多孔質部は、例えば、基板としてSi基板を用いている場合には、基板自体に空洞部を形成する工程と同様に、基板の下面側もしくは基板の上面側から、空洞部に相当する領域を陽極酸化により多孔質化することで形成することができる。なお、空洞でない低熱伝導部を用いる場合において、低熱伝導部の材料が導電性を有する場合には、低熱伝導部と、半導体膜あるいは導電膜との間には絶縁膜が追加される。このように、空洞でない低熱伝導部を用いることにより、低熱伝導部上に形成された機能膜の破損が抑制される。
B.第2実施形態:
図6は、第2実施形態におけるガスセンサ200の構造を示す説明図である。図6(a)は、ガスセンサ200を上面から見た様子を示しており、図6(b)および図6(c)は、それぞれ、図6(a)の切断線D−D’および切断線E−E’におけるガスセンサ200の断面を示している。第2実施形態のガスセンサ200は、ヒータ271,272から外部への熱の放出が、蓋191,192(図3)に替えて、基板210に設けられた熱伝達部213,214により行われる点と、熱伝達部213,214を介して熱を放出させるために各部の構成が変更されている点とで、第1実施形態のガスセンサ100と異なっている。他の点は、第1実施形態のガスセンサ100と同様である。そのため、第2実施形態のガスセンサ200は、第1実施形態のガスセンサ100と対応する部分を有している。このように対応する部分には、第1実施形態のガスセンサ100において付された符号のうち、2桁以上の数字の最大桁を「1」から「2」に変更し、下位の桁を第1実施形態のガスセンサ100と同一とした符号を付している。
上述のように、ガスセンサ200では、ヒータ271,272から外部への熱の放出が、基板210に設けられた熱伝達部213,214により行われる。そのため、第1実施形態のガスセンサ100(図3)において、その上面側に設けられていた蓋191,192を省略している。また、ヒータ271,272からを熱伝達部213,214に近づけ、ヒータ271,272から熱伝達部213,214への熱の伝達を良好にするため、第2の層間絶縁膜260と保護膜280とについては、平坦化を行わず、それぞれの機能を実現するために必要な厚さで形成している。他の点において、第2実施形態のガスセンサ200の機能膜230〜280は、第1実施形態のガスセンサ100の機能膜130〜180と同様に構成されている。なお、第2実施形態のガスセンサ200では、ヒータ271,272で発生した熱は、熱伝達部213,214を介して外部に放出されるので、熱伝達部213,214も「放熱体」と呼ぶことができる。また、空洞部217,218の下面側には熱伝達部213,214が設けられおり、空洞部217,218中の検出対象ガスによりヒータ271,272の熱が外部に放出される。しかしながら、空洞部217,218自体は、直接熱を伝達しないので、空洞部217,218も「低熱伝導部」と呼ぶことができる。
熱伝達部213,214を有するガスセンサ200は、空洞部217,218に対応する凹部の形成、凹部への犠牲膜(基板犠牲膜)の埋込、絶縁膜220と機能膜230〜280との形成、下面側開口部215,216の形成、および、下面側開口部215,216からの基板犠牲膜の除去の工程を経ることにより形成される。なお、図6には図示しないが、ガスセンサ200には、空洞部217,218へ被検ガスを導入するため、ガスセンサ200の上面から空洞部217,218に達する貫通穴も設けられる。
具体的には、まず、Si基板に、空洞部217,218に対応する凹部を形成する。検出部RD2側においては、中央部の深さが検出対象ガスの平均自由行程よりも短く、周縁部の深さが検出対象ガスの平均自由行程よりも長い凹部が形成される。一方、補償部RC2側においては、検出部RD2側の凹部における周縁部と同じ深さ、すなわち、深さが検出対象ガスの平均自由行程よりも長い凹部を形成する。次いで、この凹部に基板犠牲膜を埋め込む。基板犠牲膜の埋込は、例えば、凹部の最大の深さよりも厚くSiOを成膜し、CMPやエッチバックを行うことにより、基板犠牲膜を平坦化するとともに、Si基板を露出させる。なお、基板犠牲膜を形成する材料としては、SiOに替えて、SiON等の絶縁体、SiGe等の半導体、あるいは、金属を使用することも可能である。基板犠牲膜の埋込の後、第1実施形態と同様に、絶縁膜220と機能膜230〜280とが形成される。次に、下面側からボッシュプロセス等の深堀り反応性イオンエッチング(Deep RIE)を行うことにより、下面側開口部215,216を形成する。そして、形成された下面側開口部215,216を介してエッチングを行うことにより、基板犠牲膜を除去する。このようにして、下面側開口部215,216が設けられた熱伝達部213,214が形成され、第2実施形態のガスセンサ200が得られる。
なお、上述のように、検出部RD2側においては、中央部の深さが検出対象ガスの平均自由行程よりも短い凹部を形成し、補償部RC2側においては、深さが検出対象ガスの平均自由行程よりも長い凹部を形成している。そのため、検出部RD2側の熱伝達部213の上面と、絶縁膜220の下面との距離が検出対象ガスの平均自由行程よりも短く、補償部RC2側の熱伝達部214の上面と、絶縁膜220の下面との距離が検出対象ガスの平均自由行程よりも長くなっている。従って、検出部RD2側の熱伝達部213は、ヒータ271から平均自由行程よりも短い空隙を空けて配置されているとも謂うことができ、補償部RC2側の熱伝達部214は、ヒータ272から平均自由行程よりも長い空隙を空けて配置されているとも謂うことができる。そして、補償部RC2側における熱伝達部214の上面と絶縁膜220の下面との距離が、検出部RD2側における熱伝達部213の上面と絶縁膜220の下面との距離よりも長くなっているため、補償部RC2側におけるヒータ272と熱伝達部214との間は、検出部RD2側におけるヒータ271と熱伝達部213との間よりも、熱が伝達されにくくなっている。また、熱伝達部213,214に伝達された熱は、ダイボンド材15とケース11を介して外部に放出される。そのため、第1実施形態のガスセンサ100と同様に、検出部RD2においては、ヒータ271から熱伝達部213へは、検出対象ガスにより良好に熱が伝達されるので、検出対象ガスの濃度が高くなると、ヒータ271から熱伝達部213に伝達される熱量が増加し、ヒータ271の温度が低下する。一方、補償部RC2においては、検出対象ガスによるヒータ272から熱伝達部214への熱の伝達が抑制されるので、ヒータ272から熱伝達部214に伝達される熱量、および、ヒータ272の温度は、検出対象ガスの濃度の影響をほとんど受けない。そのため、2つのヒータ271,272の温度差を評価することで、検出対象ガスの濃度を測定することができる。
なお、第2実施形態のガスセンサ200では、第1実施形態のガスセンサ100(図3)と異なり、薄膜として上面側に形成された蓋191,192を有していない。そのため、第1実施形態のガスセンサ100を取り扱う際に蓋191,192を変形させ、ガスセンサ100の機能を損なう可能性を低減することができる。この点において、第2実施形態は、第1実施形態よりも好ましい。一方、第1実施形態は、ガスセンサ100の製造がより容易である点で、第2実施形態よりも好ましい。
第2実施形態では、下面側開口部215,216を介して基板犠牲膜のエッチングを行うことにより、基板犠牲膜を除去しているが、基板犠牲膜の除去は、上面側から行うことも可能である。この場合、上面側から基板犠牲膜に達する貫通穴を形成し、当該貫通穴を介して基板犠牲膜をエッチングすればよい。また、第2実施形態では、基板に凹部を形成することにより、空洞部217,218を形成しているが、第1実施形態に係る変形例と同様に、基板からp型半導体膜までのいずれかの上面に空洞部を形成することも可能である。この場合、空洞部の形成のために検出部側の領域に形成される空洞形成膜の厚さを検出対象ガスの平均自由行程以下とし、補償部側の領域に形成される空洞形成膜の厚さを検出対象ガスの平均自由行程以上とすればよい。
C.変形例:
本発明は上記各実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
C1.変形例1:
上記各実施形態では、ヒータ171,271と放熱体191,213との間に設けられた空隙が短い検出部RD1,RD2と、ヒータ172,272と放熱体192,214との間に設けられた空隙が長い補償部RC1,RC2とを用い、検出部RD1,RD2の出力信号を補償部RC1,RC2の出力信号で補償することで、検出対象ガスの濃度の測定値のドリフトを低減し、検出対象ガスの検出感度を高くしている。しかしながら、検出部あるいは補償部は、それぞれ1つである必要はない。例えば、空隙の長さがさらに異なる検出部あるいは補償部を1つ以上追加することも可能である。この場合、追加された検出部あるいは補償部には、上記各実施形態の検出部RD1,RD2あるいは補償部RC1,RC2と同様に、ヒータと、ヒータの温度を測定するためのサーモパイルが設けられる。上述のように、ガスの平均自由行程は、ガスの種類や圧力によって変動する。そのため、検出部あるいは補償部を追加することで、複数の検出部や補償部において、空隙の長さを圧力の異なる環境のそれぞれにおける平均自由行程に基づいて設定することにより、複数の圧力に対応して適切に検出対象ガスを検出し、もしくは、複数の圧力に対応して適切に出力信号の補償を行うことが可能となる。また、複数の補償部を用いる場合、複数の補償部の1つについては、空隙の長さを検出対象ガスの平均自由行程よりも長くし、他の補償部については、空隙の長さを検出対象ガスの平均自由行程よりも短く、かつ、検出非対象ガスの平均自由行程よりも長くするものとしても良い。このようにすれば、環境温度の変化等の影響を低減するとともに、検出非対象ガスの影響を排除して検出対象ガスを検出することが可能となる。
C2.変形例2:
上記各実施形態では、ガスセンサ100,200に、検出部RD1,RD2と補償部RC1,RC2とを設けているが、補償部RC1,RC2を省略することも可能である。この場合、ヒータ171,271への通電を開始してから十分に時間が経過した後、検出対象ガスが存在しない状態において、演算増幅器等を用いて出力電圧が0となるようにオフセットを調整することにより、検出対象ガスの検出を行うことができる。
C3.変形例3:
上記各実施形態では、単一のチップに検出部RD1,RD2と補償部RC1,RC2とを設けているが、検出部と補償部とを別個のチップに形成することも可能である。この場合、2つのチップは、パッケージ19(図2)内において近接して配置される。このようにしても、検出部と補償部との出力信号から、それぞれのヒータの温度差を求めることにより、外的要因による検出部の出力信号の変動が補償されるので、検出対象ガスの濃度の測定値のドリフトを低減し、検出対象ガスの検出感度を高くすることができる。但し、補償をより高い精度で行い、検出対象ガスの検出感度をさらに高くすることができる点で、検出部と補償部とは単一のチップに形成されるのが好ましい。
C4.変形例4:
上記各実施形態では、補償部RC1,RC2におけるヒータ172,272と放熱体192,214との間の空隙に、被検ガスが導入されているが、当該空隙に被検ガスが導入されないようにすることも可能である。具体的には、封止材を用いて、第1実施形態のガスセンサ100(図3)における蓋192の開口部198や、第2実施形態のガスセンサ200において、上面から空洞部218に達する貫通穴を塞ぐものとしても良い。このようにすれば、補償部におけるヒータ172,272と放熱体192,214との間の空隙には被検ガスが導入されないので、被検ガス中の検出対象ガスの濃度が変化しても、補償部のヒータ172,272の温度およびヒータ172,272の温度をあらわす出力信号に変化が生じない。そのため、より確実に出力信号の補償を行うことが可能となる。なお、封止材としては、ポリイミド、金属やガラスの粉末を含むペースト、金属粉末粒子が分散された樹脂等を用いることができる。
C5.変形例5:
上記各実施形態では、検出部RD1,RD2と補償部RC1,RC2とのそれぞれにおいて、2つのサーモパイルT11〜T12,T13〜T14を設けているが、サーモパイルの数は、任意の数とすることができる。例えば、検出部と補償部とのそれぞれにおいて、単一のサーモパイルを設けるものとしても良く、また、さらにサーモパイルを増やすものとしても良い。また、上記各実施形態では、ヒータ171,172,271,272の温度を測定するために、熱電対を直列接続したサーモパイルを用いているが、検出部と補償部とのそれぞれにおいて、単一の熱電対を設け、それによりヒータ171,172,271,272の温度を測定するものとしても良い。但し、出力信号をより大きくすることができる点で、熱電対を直列接続したサーモパイルを用いるのが好ましい。
C6.変形例6:
上記各実施形態では、n型およびp型半導体熱電素子131,151を、温接点接続線173および冷接点接続線174で接続することにより、サーモパイルT11〜T14を構成しているが、n型およびp型半導体熱電素子131,151の少なくとも一方を、金属熱電素子に置き換えて構成されたサーモパイルを用いることも可能である。この場合、金属熱電素子は、導電膜と同時に形成することができるので、ガスセンサを製造するための工程数の増加を抑制することができる。なお、n型およびp型半導体熱電素子131,151の双方を金属熱電素子に置き換える場合には、2つの金属熱電素子は、材質の異なる金属で形成される。但し、サーモパイルにおける熱起電力をより大きくし、ガスセンサの感度をより高くすることができる点で、熱電素子として導電型の異なる2種の半導体を用いるのが好ましい。
C7.変形例7:
上記各実施形態では、温接点接続線173により形成されたサーモパイルT11〜T14の温接点によりヒータ171,172,271,272の温度を測定しているが、ヒータ171,172,271,272の温度は、測温抵抗体や半導体測温素子等の他の測温素子を用いて測定することも可能である。但し、ヒータ171,172,271,272の温度を表す十分に高い電圧信号が直接出力され、検出対象ガスの検出感度をより高くすることが容易となる点で、サーモパイルの温接点によりヒータ171,172,271,272の温度を測定するのが好ましい。さらに、ヒータ171,172,271,272の温度は、別個の測温素子を用いることなく測定することも可能である。この場合、2つのヒータ171,172,271,272の抵抗値を測定することで、ヒータ171,172,271,272自体の温度を測定することができる。但し、ヒータ171,172,271,272の構造にかかわらず、ヒータ171,172,271,272の温度を表す出力信号を十分に大きくすることができる点で、ヒータ171,172,271,272の付近に設けられた測温素子によりヒータ171,172,271,272の温度を測定するのが好ましい。
C8.変形例8:
上記各実施形態では、測温素子としてのサーモパイルT11〜T14の温接点は、ヒータ171,172,271,272から離れた位置に形成されている。しかしながら、機能膜の構成を適宜変更することにより、温接点とヒータとを上下に重なり合うように配置することも可能である。一般的に、温接点等の測温素子は、ヒータの近傍に設けられていればよい。
1…リーク検査装置、2…真空チャンバー、3…ガス供給源、4…真空ポンプ、5…ガス検出装置、10…センサモジュール、11…ケース、12…キャップ、13…外部電極、14…端子、15…ダイボンド材、16…ワイヤ、19…パッケージ、100…ガスセンサ、110…基板、111…外枠部、112…板状部(熱分離部)、117,118…空洞部、120…絶縁膜、121,122…メンブレン、130…n型半導体膜、131…n型半導体熱電素子、140,160…層間絶縁膜、150…p型半導体膜、151…p型半導体熱電素子、170…導電膜、171,172…ヒータ、173…温接点接続線、174…冷接点接続線、175…信号出力電極、176…ヒータ通電電極、177…サーモパイル接続線、178…グランド配線、180…保護膜、181〜185…開口部、190…伝熱膜、191,192…蓋(放熱体)、191a…周縁部、191b…中央部、197,198…開口部、200…ガスセンサ、210…基板、211…外枠部、212…板状部(熱分離部)、213,214…熱伝達部(放熱体)、215,216…下面側開口部、217,218…空洞部(低熱伝導部)、220…絶縁膜、230…n型半導体膜、240,260…層間絶縁膜、250…p型半導体膜、270…導電膜、271,272…ヒータ、280…保護膜、281〜285…開口部、CH1〜CH4…コンタクトホール、CV1,CV2…中空空間、P11,P13…信号出力パッド、P12,P14…ヒータ通電パッド、P15…グランドパッド、P21,P23…信号出力パッド、P22,P24…ヒータ通電パッド、P25…グランドパッド、RC1,RC2…補償部、RD1,RD2…検出部、T11〜T14…サーモパイル、WK…検査対象物

Claims (2)

  1. 熱伝導式のガスセンサであって、
    低熱伝導部と、
    前記低熱伝導部の上に設けられた検出側ヒータおよび補償側ヒータと、
    前記検出側ヒータから検出対象ガスの平均自由行程よりも短い空隙を空けて配置され、前記検出側ヒータから伝達された熱を前記ガスセンサの外部に放出する、前記検出側ヒータを覆う検出側蓋として構成された検出側放熱体と、
    前記補償側ヒータから伝達された熱を前記ガスセンサの外部に放出する、前記補償側ヒータを覆う補償側蓋として構成された補償側放熱体と、
    を備え、
    前記検出側ヒータおよび前記検出側蓋の間の距離と、前記補償側ヒータおよび前記補償側蓋の間の距離とを、互いに異なるようにすることにより、前記補償側ヒータと前記補償側放熱体との間は、前記検出側ヒータと前記検出側放熱体との間よりも、前記検出対象ガスによる熱伝達が抑制されており、
    前記ガスセンサは、前記検出側ヒータおよび前記補償側ヒータの温度が測定できるように構成されている、
    ガスセンサ。
  2. 請求項1記載のガスセンサであって、さらに、
    前記検出側ヒータの近傍に設けられ、前記検出側ヒータの温度を測定する検出側測温素子を備える、
    ガスセンサ。
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