JP6769372B2 - 温度センサ及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、フィルム型サーミスタ温度センサ等に好適な温度センサ及びその製造方法に関する。
温度センサ等に使用されるサーミスタ材料は、高精度、高感度のために、高いB定数が求められている。このようなサーミスタ材料には、Mn,Co,Fe等の遷移金属酸化物が一般的であったが、近年、樹脂フィルム上にサーミスタ材料を形成したフィルム型サーミスタセンサの開発が検討されており、樹脂フィルム上に成膜可能なサーミスタ用金属窒化物材料が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
また、その他にも、非焼成で形成でき、Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Si,Cu及びAlの少なくとも1種の窒化物材料であり、上記結晶構造を有するものであって高B定数が得られる材料が開発されている(特許文献2〜7)。
このサーミスタ用金属窒化物材料を用いた従来のサーミスタ温度センサは、例えば樹脂フィルム等の絶縁性基材と、絶縁性基材上にサーミスタ用金属窒化物材料で形成された薄膜サーミスタ部と、互いに対向して薄膜サーミスタ部上にパターン形成された一対のパターン電極と、パターン電極と共に薄膜サーミスタ部を覆っているポリイミド樹脂とを備えている。
特開2013−205319号公報 特開2014−123646号公報 特開2014−236204号公報 特開2015−65408号公報 特開2015−65417号公報 特開2015−73077号公報 特開2015−73075号公報
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
上記従来の技術では、金属窒化物材料の薄膜サーミスタ部上に絶縁性保護膜としてポリイミド樹脂を形成又は接着しているが、金属窒化物材料の薄膜サーミスタ部とポリイミド樹脂との密着性が弱く、密着性の向上が要望されていた。また、ポリイミド樹脂材料のように有機系樹脂材料は、熱に弱く、十分な耐熱性を有した無機系保護膜用材料も要望されていた。特に、サーミスタ部はセラミックス材料からなることが多いため、絶縁性も兼ね備えた耐熱性を有するセラミックス保護膜が要望されていた。
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、金属窒化物材料の薄膜サーミスタ部との密着性が高いと共に高い耐熱性を有した保護膜を備えた温度センサ及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係る温度センサは、絶縁性基材と、前記絶縁性基材上にサーミスタ用金属窒化物材料で形成された薄膜サーミスタ部と、互いに対向して前記薄膜サーミスタ部の下又は上の少なくとも一方にパターン形成された一対のパターン電極と、前記薄膜サーミスタ部上に形成された絶縁性窒化物保護膜とを備えていることを特徴とする。
すなわち、この温度センサでは、サーミスタ用金属窒化物材料で形成された薄膜サーミスタ部上に形成された絶縁性窒化物保護膜を備えているので、互いに窒化物である薄膜サーミスタ部と絶縁性窒化物保護膜との高い密着性が得られると共に、窒化物の保護膜によりポリイミド樹脂よりも高い耐熱性を得ることができる。
第2の発明に係る温度センサは、第1の発明において、前記薄膜サーミスタ部と前記絶縁性窒化物保護膜との結晶構造が、同じ六方晶系のウルツ鉱型の単相であることを特徴とする。
すなわち、この温度センサでは、薄膜サーミスタ部と絶縁性窒化物保護膜との結晶構造が、同じ六方晶系のウルツ鉱型の単相であるので、互いに格子整合度が高く、さらに高い密着性を確保することができる。
第3の発明に係る温度センサは、第2の発明において、前記薄膜サーミスタ部が、サーミスタ特性を有するM−A−N(但し、MはTi,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni及びCuの少なくとも1種を示すと共に、AはAl又は(Al及びSi)を示す。)であり、前記絶縁性窒化物保護膜が、結晶性Al−Nであることを特徴とする。
すなわち、この温度センサでは、薄膜サーミスタ部が、六方晶系のウルツ鉱型のサーミスタ特性を有するM−A−N(但し、MはTi,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni及びCuの少なくとも1種を示すと共に、AはAl又は(Al及びSi)を示す。)であり、絶縁性窒化物保護膜が、六方晶系のウルツ鉱型のAl−Nであるので、同じ上記結晶構造のAl−NとM−A−N窒化物との積層になり、互いに格子整合度が高いので、Al−N/M−A−Nの界面において、絶縁性窒化物保護膜のAl−Nの結晶格子が薄膜サーミスタ部のM−A−Nの結晶格子へ与える影響が小さく、その結果、電子構造の変化が極めて小さくなるので、保護膜形成によるM−A−Nの薄膜サーミスタ部のサーミスタ特性変化を抑制することができる。
第4の発明に係る温度センサは、第2の発明において、前記薄膜サーミスタ部が、サーミスタ特性を有するM−A−N(但し、MはTi,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni及びCuの少なくとも1種を示すと共に、AはAl又は(Al及びSi)を示す。)であり、前記絶縁性窒化物保護膜が、絶縁性の結晶性M’−Al−N(但し、M’はTi,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni及びCuの少なくとも1種を示す。)であることを特徴とする。
すなわち、この温度センサでは、薄膜サーミスタ部が、六方晶系のウルツ鉱型のサーミスタ特性を有するM−A−Nであり、絶縁性窒化物保護膜が、六方晶系のウルツ鉱型の結晶構造を有する絶縁性の結晶性M−Al−Nであるので、同じ上記結晶構造のM−A−NとM’−Al−Nとの積層になり、互いに格子整合度が高いので、絶縁性窒化物保護膜と薄膜サーミスタ部との界面において、絶縁性窒化物保護膜のM’−Al−Nの結晶格子が薄膜サーミスタ部のM−A−Nの結晶格子へ与える影響が非常に小さく、その結果、電子構造の変化が極めて小さくなるので、保護膜形成によるM−A−Nの薄膜サーミスタ部のサーミスタ特性変化をさらに抑制することができる。
なお、M=M’、すなわち上記M元素と上記M’元素とが同一である場合、特に互いの格子整合度が高くなる。
第5の発明に係る温度センサは、第3又は第4の発明のいずれかにおいて、前記Mの元素が、Tiであることを特徴とする。
第6の発明に係る温度センサは、第1から第5の発明のいずれかにおいて、前記絶縁性基材が、絶縁性フィルムであることを特徴とする。
すなわち、この温度センサでは、絶縁性基材が、絶縁性フィルムであるので、柔軟な絶縁性フィルムの絶縁性基材と柔軟性のあるM−A−Nの薄膜サーミスタ部及び結晶性Al−N又は絶縁性の結晶性M’−Al−Nの絶縁性窒化物保護膜とにより、薄型で全体がフィルム状のフレキシブル温度センサとなる。したがって、フレキシブル性により、曲面等への設置も可能になり、設置自由度を大幅に向上させることができる。
第7の発明に係る温度センサの製造方法は、第1から第6の発明のいずれかに記載の温度センサを製造する方法であって、絶縁性基材上に薄膜サーミスタ部をスパッタリングにより形成する薄膜サーミスタ部形成工程と、互いに対向して前記薄膜サーミスタ部の下又は上に一対のパターン電極をパターン形成するパターン電極形成工程と、前記薄膜サーミスタ部上に絶縁性窒化物保護膜をスパッタリングにより形成する保護膜形成工程とを有し、前記保護膜形成工程が、前記スパッタリングの前に逆スパッタを行うことを特徴とする。
すなわち、この温度センサの製造方法では、保護膜形成工程が、スパッタリングの前に逆スパッタを行うので、スパッタリング後の薄膜サーミスタ部表面の自然酸化膜等を除去して、酸化の影響がなく、高い密着性を有した良質な絶縁性窒化物保護膜を形成することができる。
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係る温度センサ及びその製造方法によれば、サーミスタ用金属窒化物材料で形成された薄膜サーミスタ部上に形成された絶縁性窒化物保護膜を備えるので、互いに窒化物である薄膜サーミスタ部と絶縁性窒化物保護膜との高い密着性が得られると共に、窒化物の保護膜によりポリイミド樹脂よりも高い耐熱性を得ることができる。したがって、薄膜サーミスタ部と絶縁性窒化物保護膜との界面の転位も小さくなり、剥離もし難いので、高温環境等での使用が可能になり高い信頼性が得られる。
本発明に係る温度センサ及びその製造方法の第1実施形態において、温度センサを示す平面図及びA−A線断面図である。 第1実施形態において、温度センサの製造方法を工程順に示す断面図である。 本発明に係る温度センサ及びその製造方法の第2実施形態において、温度センサを示す平面図及びB−B線断面図である。 第2実施形態において、温度センサの製造方法を工程順に示す断面図である。 本発明に係る温度センサ及びその製造方法の比較例1を示す断面TEM像である。 本発明に係る温度センサ及びその製造方法の実施例1を示す断面TEM像である。 本発明に係る温度センサ及びその製造方法の実施例2を示す断面TEM像である。 本発明に係る比較例1におけるTi−Al−N膜断面の電子線回折像である。 本発明に係る実施例2におけるTi−Al−N膜断面の電子線回折像である。 本発明に係る実施例において、薄膜サーミスタ部となるTi−Al−N膜の入射角を1度とした際の視斜角入射X線回折(XRD)の結果を示すグラフである。 本発明に係る実施例において、絶縁性窒化物保護膜となるTi−Al−N膜の入射角を1度とした際の視斜角入射X線回折(XRD)の結果を示すグラフである。 本発明に係る実施例において、薄膜サーミスタ部及び絶縁性窒化物保護膜となるTi−Al−N積層膜の入射角を1度とした際の視斜角入射X線回折(XRD)の結果を示すグラフである。 本発明に係る実施例において、薄膜サーミスタ部となるTi−Al−N膜の入射角0度とした際のX線回折(XRD)の結果を示すグラフである。 本発明に係る実施例において、絶縁性窒化物保護膜となるTi−Al−N膜の入射角0度とした際のX線回折(XRD)の結果を示すグラフである。 本発明に係る実施例において、薄膜サーミスタ部及び絶縁性窒化物保護膜となるTi−Al−N積層膜の入射角0度とした際のX線回折(XRD)の結果を示すグラフである。 図10のTi−Al−N単層膜の断面SEM写真である。 図11のTi−Al−N単層膜の断面SEM写真である。 図12のTi−Al−N積層膜の断面SEM写真である。 本発明に係る実施例において、組成比Al/(Al+Ti)に対するTi−Al−N膜の格子定数(a軸長)を示すグラフである。 本発明に係る実施例において、組成比Al/(Al+Ti)に対するTi−Al−N膜の格子定数(c軸長)を示すグラフである。
以下、本発明に係る温度センサ及びその製造方法における第1実施形態を、図1及び図2を参照しながら説明する。なお、以下の説明に用いる図面の一部では、各部を認識可能又は認識容易な大きさとするために必要に応じて縮尺を適宜変更している。
本実施形態の温度センサ1は、フィルム型サーミスタセンサであって、図1に示すように、絶縁性基材2と、絶縁性基材2上にサーミスタ用金属窒化物材料で形成された薄膜サーミスタ部3と、互いに対向して薄膜サーミスタ部3の下にパターン形成された一対のパターン電極4と、薄膜サーミスタ部3上に形成された絶縁性窒化物保護膜5とを備えている。
上記薄膜サーミスタ部3と絶縁性窒化物保護膜5との結晶構造は、同じ六方晶系のウルツ鉱型の単相であり、薄膜サーミスタ部3が、サーミスタ特性を有するM−A−N(但し、MはTi,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni及びCuの少なくとも1種を示すと共に、AはAl又は(Al及びSi)を示す。)であって、絶縁性窒化物保護膜5が、結晶性Al−N又は絶縁性の結晶性M’−Al−N(但し、M’はTi,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni及びCuの少なくとも1種を示す。)である。なお、Aは、Al又は(Al及びSi)、すなわちAlか、Al及びSiであって、少なくともAlを含む。
特に、本実施形態では、薄膜サーミスタ部3として、サーミスタ特性を有するTi−Al−Nを採用し、絶縁性窒化物保護膜5として、結晶性Al−N又は絶縁性の結晶性Ti−Al−Nを採用している。なお、絶縁性の結晶性Ti−Al−Nは、サーミスタ特性を有するTi−Al−Nよりも、組成比Al/(Al+Ti)を十分に大きくすることで、きわめて高い絶縁性が実現される。
なお、絶縁性窒化物保護膜5が、絶縁性の結晶性M’−Al−N(但し、M’はTi,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni及びCuの少なくとも1種を示す。)の場合、薄膜サーミスタ部3のサーミスタ特性を有するM−A−N(但し、MはTi,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni及びCuの少なくとも1種を示すと共に、AはAl又は(Al及びSi)を示す。)よりも抵抗値が1000倍以上であることが好ましい。なお、絶縁性の結晶性M’−Al−Nの組成比Al/(Al+M’)を、サーミスタ特性を有するM−A−Nの組成比A/(A+M)よりも、十分に大きくすることで、きわめて高い絶縁性が実現される。このように、絶縁性窒化物保護膜5は、その抵抗値が薄膜サーミスタ部3の1000倍以上であれば、薄膜サーミスタ部3に対して十分高い絶縁性を有した保護膜として機能し、薄膜サーミスタ部3のサーミスタ特性に影響を与えない。
本実施形態では、薄膜サーミスタ部3が、一般式:TiAl(0.70≦y/(x+y)≦0.95、0.4≦z≦0.5、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなり、その結晶構造が、六方晶系のウルツ鉱型の単相である。
また、この薄膜サーミスタ部3は、膜状に形成され、前記膜の表面に対して垂直方向に延在している柱状結晶である。さらに、膜の表面に対して垂直方向にa軸よりc軸が強く配向していることが好ましい。薄膜サーミスタ部3のc軸配向度が高いことにより、その薄膜サーミスタ部3上に成膜される結晶性Al−N又は絶縁性の結晶性M’−Al−N(但し、M’はTi,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni及びCuの少なくとも1種を示す。)もc軸配向度が向上し、より格子整合度が高くなることで、より密着性の高い絶縁性窒化物保護膜5が形成される。
上記絶縁性基材2は、絶縁性フィルムであり、例えばポリイミド樹脂シートで形成されている。なお、絶縁性フィルムとしては、他にPET:ポリエチレンテレフタレート,PEN:ポリエチレンナフタレート、LCP(Liquid Crystal Polymer 液晶ポリマー)等でも構わない。
上記一対のパターン電極4は、互いに対向方向に延在した複数の櫛部4aを有している。
このパターン電極4は、絶縁性基材2上に形成されたCrの接合層と、薄膜サーミスタ部3及び絶縁性窒化物保護膜5の外部であって露出した部分のCr接合層上に形成されたAu等の貴金属の電極層とで構成されている。すなわち、本実施形態では、薄膜サーミスタ部3の下にパターン電極4のCr接合層が形成されている。
この温度センサ1の製造方法について、図2を参照して以下に説明する。
本実施形態の温度センサ1の製造方法は、互いに対向して絶縁性基材2の上(薄膜サーミスタ部3の下)に一対のパターン電極4をパターン形成するパターン電極形成工程と、絶縁性基材2及びパターン電極4の上に薄膜サーミスタ部3をスパッタリングにより形成する薄膜サーミスタ部形成工程と、薄膜サーミスタ部3上に絶縁性窒化物保護膜5をスパッタリングにより形成する保護膜形成工程とを有している。
なお、保護膜形成工程では、絶縁性窒化物保護膜5のスパッタリングの前に逆スパッタを行っている。
より具体的な製造方法の例としては、図2の(a)に示す厚さ50μmのポリイミドフィルムの絶縁性基材2上に、パターン電極4のCr接合層を膜厚20nm形成し、さらにその上にAuの電極層を膜厚20nm形成する。これらのスパッタ条件は、到達真空度4.0×10−5Pa、スパッタガス圧0.1Pa、ターゲット投入電力(出力)はCrの接合層が300W、Auの電極層が100Wで、Arガス雰囲気下において行った。
次に、成膜したAuの電極層上にレジスト液をスピンコーターで塗布した後、110℃で1分30秒プリベークを行い、露光装置で感光後、現像液で不要部分を除去し、150℃5分のポストベークにてパターニングを行う。その後、不要な電極部分を市販のAuエッチャント及びCrエッチャントの順番でウェットエッチングを行い、レジスト剥離にて所望のパターン電極4を形成する。
次に、パターン電極4のCr接合層及び絶縁性基材2上に、Ti−Al合金スパッタリングターゲットを用い、窒素含有雰囲気中で反応性スパッタ法にて、Ti−Al−N(Al/(Al+Ti)比=0.85)の薄膜サーミスタ部3を膜厚200nmで成膜する。その時のスパッタ条件は、到達真空度4×10−5Pa、スパッタガス圧0.2Pa、ターゲット投入電力(出力)200Wで、Arガス+窒素ガスの混合ガス雰囲気下において、窒素ガス分率を30%で作製した。
このように、M−A−N(但し、MはTi,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni及びCuの少なくとも1種を示すと共に、AはAl又は(Al及びSi)を示す。)の薄膜サーミスタ部3は、M−A合金スパッタリングターゲットを用い、窒素含有雰囲気中で反応性スパッタ法にて成膜する。
次に、成膜した薄膜サーミスタ部3の上にレジスト液をスピンコーターで塗布した後、110℃で1分30秒プリベークを行い、露光装置で感光後、現像液で不要部分を除去し、150℃で5分のポストベークにてパターニングを行う。その後、不要な薄膜サーミスタ部3の部分を市販のエッチャントでウェットエッチングを行い、図2の(b)に示すように、レジスト剥離にて所望の薄膜サーミスタ部3を形成する。
次に、薄膜サーミスタ部3表面上の自然酸化膜等を除去する。酸化膜除去工程として逆スパッタによるプラズマ表面処理を行うことが好ましい。具体的には、絶縁性窒化物成膜工程のスパッタ前に、基材側に電力を印加することにより、薄膜サーミスタ部3表面に形成されている表面酸化膜(自然酸化膜等の汚染膜)を逆スパッタにより除去する。
この際の逆スパッタ条件は、例えば到達真空度:4×10−5Pa、ターゲット印加電力:50Wで、Arガス雰囲気下において30分間とする。なお、逆スパッタ時に用いられるガス種は、窒素ガス、Arガスと窒素ガスとの混合ガスを用いてもよい。
上記逆スパッタの酸化膜除去工程後、さらにスパッタリングによりAl−N又は絶縁性Ti−Al−Nの絶縁性窒化物保護膜5を薄膜サーミスタ部3上に形成する。
結晶性Al−Nの場合、Alスパッタリングターゲットを用い、窒素含有雰囲気中で反応性スパッタ法にて、結晶性Al−Nの絶縁性窒化物保護膜5を膜厚500nmで成膜する。その時のスパッタ条件は、到達真空度4×10−5Pa、スパッタガス圧0.2Pa、ターゲット投入電力(出力)200Wで、Arガス+窒素ガスの混合ガス雰囲気下において、窒素ガス分率を35%で作製した。
また、絶縁性の結晶性Ti−Al−Nの場合、サーミスタ特性を有する結晶性Ti−Al−Nよりも、組成比Al/(Al+Ti)を十分に大きくするのが好ましい。具体的には、Ti−Al合金スパッタリングターゲットを用い、窒素含有雰囲気中で反応性スパッタ法にて、Ti−Al−N(Al/(Al+Ti)比=0.97)の絶縁性窒化物保護膜5を膜厚200nmで成膜する。その時のスパッタ条件は、到達真空度4×10−5Pa、スパッタガス圧0.25Pa、ターゲット投入電力(出力)200Wで、Arガス+窒素ガスの混合ガス雰囲気下において、窒素ガス分率を30%で作製した。
このように、絶縁性の結晶性M’−Al−N(但し、M’はTi,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni及びCuの少なくとも1種を示す。)の絶縁性窒化物保護膜5は、M’−Al合金スパッタリングターゲットを用い、窒素含有雰囲気中で反応性スパッタ法にて成膜する。
なお、複数の温度センサ1を同時に作製する場合、絶縁性基材2の大判シートに複数のパターン電極4、薄膜サーミスタ部3及び絶縁性窒化物保護膜5を上述のように形成した後に、大判シートから各温度センサ1に切断する。
このようにして、例えばサイズを1.0×0.5mmとし、厚さを0.1mmとした薄いフィルム型サーミスタセンサの温度センサ1が得られる。
このように本実施形態の温度センサ1では、サーミスタ用金属窒化物材料で形成された薄膜サーミスタ部3上に形成された絶縁性窒化物保護膜5を備えているので、互いに窒化物である薄膜サーミスタ部3と絶縁性窒化物保護膜5との高い密着性が得られると共に、窒化物の絶縁性窒化物保護膜5によりポリイミド樹脂よりも高い耐熱性を得ることができる。
また、薄膜サーミスタ部3と絶縁性窒化物保護膜5との結晶構造が、同じ六方晶系のウルツ鉱型の単相であるので、互いに格子整合度が高く、さらに高い密着性を確保することができる。
特に、薄膜サーミスタ部3が、六方晶系のウルツ鉱型のM−A−N(但し、MはTi,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni及びCuの少なくとも1種を示すと共に、AはAl又は(Al及びSi)を示す。)であり、絶縁性窒化物保護膜5が、六方晶系のウルツ鉱型の結晶性Al−Nである場合、同じ上記結晶構造の結晶性Al−NとM−A−N窒化物との積層になり、互いに格子整合度が高いので、Al−N/M−A−Nの界面において、絶縁性窒化物保護膜5の結晶性Al−Nの結晶格子が薄膜サーミスタ部3のM−A−Nの結晶格子へ与える影響が小さく、その結果、電子構造の変化が極めて小さくなるので、保護膜形成によるM−A−Nの薄膜サーミスタ部3のサーミスタ特性変化を抑制することができる。
また、薄膜サーミスタ部3が、六方晶系のウルツ鉱型のサーミスタ特性を有するM−A−N(但し、MはTi,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni及びCuの少なくとも1種を示すと共に、AはAl又は(Al及びSi)を示す。)であり、絶縁性窒化物保護膜5が、六方晶系のウルツ鉱型の結晶構造を有する絶縁性の結晶性M’−Al−N(但し、M’はTi,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni及びCuの少なくとも1種を示す。)である場合、同じ上記結晶構造のM−A−NとM’−Al−Nとの積層になり、互いに格子整合度が高いので、絶縁性窒化物保護膜5と薄膜サーミスタ部3との界面において、絶縁性窒化物保護膜5の結晶性M’−Al−Nの結晶格子が薄膜サーミスタ部3のM−A−Nの結晶格子へ与える影響が非常に小さく、その結果、電子構造の変化が極めて小さくなるので、保護膜形成によるM−A−Nの薄膜サーミスタ部3のサーミスタ特性変化をさらに抑制することができる。なお、M=M’、すなわち上記M元素と上記M’元素とが同一である場合(例えば、M=M’=Ti)、特に互いの格子整合度が高くなる。
さらに、絶縁性基材2が、絶縁性フィルムであるので、柔軟な絶縁性フィルムの絶縁性基材2と柔軟性のあるM−A−Nの薄膜サーミスタ部3及び結晶性Al−N又は絶縁性の結晶性M’−Al−Nの絶縁性窒化物保護膜5とにより、薄型で全体がフィルム状のフレキシブル温度センサとなる。したがって、フレキシブル性により、曲面等への設置も可能になり、設置自由度を大幅に向上させることができる。
また、本実施形態の温度センサ1の製造方法では、保護膜形成工程が、スパッタリングの前に逆スパッタを行うので、スパッタリング後の薄膜サーミスタ部3表面の自然酸化膜等を除去して、酸化の影響が無く、高い密着性を有した良質な絶縁性窒化物保護膜5を形成することができる。
次に、本発明に係る温度センサ及びその製造方法の第2実施形態について、図3及び図4を参照して以下に説明する。なお、以下の実施形態の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、パターン電極4が絶縁性基材2の上、すなわち薄膜サーミスタ部3の下に形成されているのに対し、第2実施形態の温度センサ21では、図3及び図4に示すように、パターン電極4が薄膜サーミスタ部3の上に形成されている点である。
また、第2実施形態では、絶縁性窒化物保護膜5がパターン電極4も覆って薄膜サーミスタ部3上に形成されている点でも第1実施形態と異なっている。しかし、パターン電極4で覆われていない部分においては、薄膜サーミスタ部3上に絶縁性窒化物保護膜5が形成されている点における技術的相違点はない。
すなわち、第2実施形態の温度センサ21の製造方法では、図4の(a)に示すように、絶縁性基材2上に薄膜サーミスタ部3をスパッタリングにより形成する薄膜サーミスタ部形成工程と、図4の(b)に示すように、互いに対向して薄膜サーミスタ部3の上に一対のパターン電極4をパターン形成するパターン電極形成工程と、図4の(c)に示すように、パターン電極4及び薄膜サーミスタ部3の上に絶縁性窒化物保護膜5をスパッタリングにより形成する保護膜形成工程とを有している。
なお、上記各工程における各膜の製法及び製造条件は、第1実施形態で記載のものと同様である。
したがって、第2実施形態の温度センサ21では、第1実施形態と同様に、サーミスタ用金属窒化物材料で形成された薄膜サーミスタ部3上に形成された絶縁性窒化物保護膜5を備えているので、互いに窒化物である薄膜サーミスタ部3と絶縁性窒化物保護膜5との高い密着性が得られると共に、窒化物の保護膜5によりポリイミド樹脂よりも高い耐熱性を得ることができる。
第2実施形態の温度センサ21について、結晶性Al−Nの絶縁性窒化物保護膜5の膜厚を変えて作製し、これらを25℃及び50℃の抵抗値を恒温槽内で測定すると共に、25℃と50℃との抵抗値よりB定数を算出した。その結果を表1に示す。なお、作製した温度センサ21は、25℃と50℃との抵抗値より負の温度特性をもつサーミスタであることを確認している。また、表1では、絶縁性窒化物保護膜5をAl−N保護膜と記載している。
なお、本発明におけるB定数算出方法は、上述したように25℃と50℃とのそれぞれの抵抗値から以下の式によって求めている。
B定数(K)=ln(R25/R50)/(1/T25−1/T50)
R25(Ω):25℃における抵抗値
R50(Ω):50℃における抵抗値
T25(K):298.15K 25℃を絶対温度表示
T50(K):323.15K 50℃を絶対温度表示
上記測定結果から、Ti−Al−N膜上に、Al−N絶縁窒化物膜(絶縁性窒化物保護膜5)が成膜されても、抵抗値、B定数が殆ど変化していないことがわかる。結晶性Al−N、Ti−Al−Nはともに六方晶系のウルツ鉱型結晶構造をもち、互いに格子整合度が高いので、Al−N/Ti−Al−Nの界面において、絶縁性窒化物保護膜5の結晶性Al−Nの結晶格子が薄膜サーミスタ部3のTi−Al−Nの結晶格子へ与える影響が小さく、その結果、電子構造の変化が極めて小さくなるので、保護膜形成によるTi−Al−Nの薄膜サーミスタ部3のサーミスタ特性変化を抑制することができる。
また、第2実施形態は、Ti−Al−N膜上にパターン電極4が形成されているので、トリミングによる抵抗値調整が可能である。絶縁性窒化物保護膜5の結晶性Al−Nを形成しても、Ti−Al−N薄膜のサーミスタ特性変化が抑制されているので、結晶性Al−N薄膜は、抵抗値調整後のTi−Al−N薄膜のサーミスタ素子への絶縁性保護膜形成に適した薄膜材料である。
次に、本発明に係る温度センサ及びその製造方法について、上記実施形態に基づいて作製した実施例により評価した結果を、図5から図20を参照して具体的に説明する。
<膜評価用素子の作製>
本発明の実施例及び比較例として、図1に示す温度センサを膜評価用素子として次のように作製した。
まず、反応性スパッタ法にて、組成比Al/(Ti+Al)=0.85としたTi−Al合金ターゲットを用いて、熱酸化膜(SiO)付きSi基板の基材2上にサーミスタ特性を有するTi−Al−N膜(薄膜サーミスタ部3)を膜厚100nm形成し、さらにこの上に結晶性Al−N膜(絶縁性窒化物保護膜5)を膜厚500nm形成した実施例1を作製した。
また、ポリイミド基板の基材2上に実施例1と同様にサーミスタ特性を有するTi−Al−N膜(薄膜サーミスタ部3)を形成し、この上に組成比Al/(Ti+Al)=0.97としたTi−Al合金ターゲットを用いて、絶縁性の結晶性Ti−Al−N膜(絶縁性窒化物保護膜5)を膜厚200nm形成した実施例2を作製した。
なお、結晶性Al−N膜(絶縁性窒化物保護膜5)、および、組成比Al/(Ti+Al)=0.97をもつ結晶性Ti−Al−N膜(絶縁性窒化物保護膜5)は、組成比Al/(Ti+Al)=0.85をもつサーミスタ特性を有するTi−Al−N膜(薄膜サーミスタ部3)より、1000倍以上の比抵抗を持つことを確認しており、薄膜サーミスタ部3に対して十分高い絶縁性を有した保護膜として機能し、薄膜サーミスタ部3のサーミスタ特性に影響を与えないことを確認している。
上記実施例1では、薄膜サーミスタ部3の成膜後にAr逆スパッタにより表面処理を行い、その後に結晶性Al−N膜の絶縁性窒化物保護膜5を連続成膜した。
なお、連続成膜とは、表面処理後に薄膜サーミスタ部3の表面酸化を防ぐため、大気開放することなく、表面処理後、同一の成膜装置内にて直ちに絶縁性窒化物保護膜5を成膜することを意味する。
また、上記実施例2では、薄膜サーミスタ部3の成膜後に大気開放した後、Ar逆スパッタにより表面処理を行い、その後に絶縁性の結晶性Ti−Al−N膜の絶縁性窒化物保護膜5を成膜した。
なお、比較例1として、組成比Al/(Ti+Al)=0.85としたTi−Al合金ターゲットを用いて、熱酸化膜(SiO)付きSi基板の基材2上にサーミスタ特性を有するTi−Al−N膜(薄膜サーミスタ部3)を膜厚100nm形成し、絶縁性窒化物保護膜5を成膜しないものも作製した。
<電子線回折による結晶配向度の評価>
TEM(透過型電子顕微鏡)を用いて、比較例1及び実施例1,2の結晶配向度について解析を行った。比較例1の断面TEM像を図5に示すと共に、実施例1,2の断面TEM像を図6及び図7に示す。
また、比較例1におけるTi−Al−N膜断面の電子線回折像を図8に示す。さらに、実施例2における絶縁性窒化物保護膜5である絶縁性の結晶性Ti−Al−N膜断面の電子線回折像を図9の(a)に示すと共に、実施例2における薄膜サーミスタ部3であるサーミスタ特性を有するTi−Al−N膜と、絶縁性窒化物保護膜5である絶縁性の結晶性Ti−Al−N膜との両方を含む広範囲による電子線回折像を図9の(b)に示す。
また、これらの電子線回折像の上下方向は、基板面に垂直な方向、すなわちTi−Al−N膜の柱状結晶の成長方向と一致する。
上記断面TEM像から、上記比較例及び実施例では、いずれも薄膜サーミスタ部3として緻密な柱状結晶化膜のTi−Al−N膜が形成され、高い結晶配向度を有していることがわかる。また、実施例1,2の両方とも、絶縁性窒化物保護膜5として緻密な柱状結晶化膜が形成され、高い結晶配向度を有していることがわかる。特に、ポリイミド基板上に成膜した実施例2においても、薄膜サーミスタ部3のTi−Al−N膜および絶縁性のTi−Al−N膜がそれぞれ緻密な柱状結晶化膜が形成されていることがわかる。
また、上記電子線回折像から、上記比較例及び実施例では、いずれも基板に垂直方向(図の上下方向)に、002と00−2との回折点が検出されていることから、基板に垂直な方向に、c軸配向度が高い結晶化膜が形成されていることがわかる。
特に実施例2は、薄膜サーミスタ部3の結晶性Ti−Al−N膜のAr逆スパッタによる表面処理を行っており、薄膜サーミスタ部3の結晶性Ti−Al−N膜上のごくわずかな表面酸化膜も除去されており、絶縁性窒化物保護膜5のTi−Al−N膜は、初期結晶成長時から、よりTi−Al−N膜結晶を窒化させることが可能であり、c軸結晶配向にきわめて優れ、結晶性の高い、絶縁性のTi−Al−N膜を得ることが可能である。
<X線回折による結晶配向性の評価>
次に、本発明の実施例はウルツ鉱型相の単相の膜であり、配向性が強いことから、薄膜サーミスタ部3上に垂直な方向(膜厚方向)の結晶軸においてa軸配向性とc軸配向性のどちらが強いか、視斜角入射X線回折(Grazing Incidence X-ray Diffraction)を用いて調査した。この際、結晶軸の配向性を調べるために、(100)(a軸配向を示すhkl指数)と(002)(c軸配向を示すhkl指数)とのピーク強度比を測定した。
なお、視斜角入射X線回折の条件は、管球をCuとし、入射角を1度とした。なお、図10は、熱酸化膜付Si基板上にAl/(Al+Ti)比=0.85のTi−Al−N単層膜(薄膜サーミスタ部)について調べたXRDプロファイルであり、図11は、熱酸化膜付Si基板上にAl/(Al+Ti)比=0.97のTi−Al−N単層膜(絶縁性窒化物保護膜)について調べたXRDプロファイルである。また、図12は、熱酸化膜Si基板上にAl/(Al+Ti)比=0.85のTi−Al−N膜(薄膜サーミスタ部)とAl/(Al+Ti)比=0.97の結晶性Ti−Al−N膜(絶縁性窒化物保護膜)とを積層した積層膜について調べたXRDプロファイルである。(なお、図10〜12中の(*)のピークは、熱酸化膜付Si基板に由来するピークであり、ウルツ鉱型の結晶相に対応するピークではない。)
また、図10から図12の上記各Ti−Al−N単層膜及びTi−Al−N積層膜について、入射角を0度とし、2θ=20〜100度の範囲で対称測定(一般的なθ−2θ測定)を実施した結果を、図13から図15に示す。
これらの結果からわかるように、いずれの上記Ti−Al−N膜はいずれも、(100)ピークは検出されておらず、c軸配向性がきわめて強いことがわかる。特に、図12に示すサーミスタ特性を有する結晶性Ti−Al−N膜(薄膜サーミスタ部)と絶縁性の結晶性Ti−Al−N膜(絶縁性窒化物保護膜)との積層膜においても、c軸配向性がきわめて強いことがわかる。(なお、図13、図15中の33度近傍で検出される半値幅の小さいピークは、熱酸化膜付Si基板のSiに由来するピークである。)
<結晶形態の評価>
次に、上記図10から図12の各Ti−Al−N単層膜及びTi−Al−N積層膜について、断面SEM写真を、図16から図18に示す。
これらの実施例のサンプルは、熱酸化膜付きSi基板をへき開破断したものを用いている。また、45°の角度で傾斜観察した写真である。
これらの写真からわかるように、上記各Ti−Al−N単層膜及びTi−Al−N積層膜は共に緻密な柱状結晶で形成されている。すなわち、基板面に垂直な方向に柱状の結晶が成長している様子が観測されている。なお、柱状結晶の破断は、熱酸化膜付きSi基板をへき開破断した際に生じたものである。
柱状結晶のアスペクト比を(長さ)÷(粒径)として定義すると、上記各Ti−Al−N単層膜及びTi−Al−N積層膜は6以上の大きいアスペクト比をもっている。柱状結晶の粒径は10nm±5nmφ程度であり、粒径が小さく、緻密な膜が得られている。
<格子定数>
次に、組成比Al/(Al+Ti)を変えた際のウルツ鉱型結晶構造(六方晶、空間群P6mc)をもつTi−Al−Nの格子定数についてa軸長とc軸長とにおいて調べた結果を、図19及び図20に示す。なお、格子定数は、XRD結果より算出した。
これらの結果からわかるように、AlよりTiのイオン半径が大きく(表2参照)、AlサイトにTi元素が部分置換され、固溶されることに伴い(すなわち組成比Al/(Al+Ti)が減少することに伴い)、c軸長(柱状結晶の成長方向)はあまり変化していないのに対し、a軸長(柱状結晶の成長方向に垂直な方向、すなわち、基板に垂直方向)が増大し、結晶性Al−N膜との格子不整合が大きくなっている。しかしながら、本発明の組成範囲において、結晶性Ti−Al−N上に結晶性Al−Nがエピタキシャル成長していることから、Tiよりイオン半径が小さい他のM元素(V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni及びCu)で置換されたM−Al−N膜において、Ti−Al−N膜よりa軸長が小さくなり、結晶性Al−N膜との格子不整合量が小さくなることが考えられるので、M−Al−N膜(V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni及びCu)においても、同様にM−Al−N膜上に結晶性Al−N膜をエピタキシャル成長させることが可能である。
さらに、上記同様な理由より、サーミスタ特性を有する結晶性M−Al−N膜上に絶縁性の結晶性M’−Al−N膜(但し、M’はTi,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni及びCuの少なくとも1種を示す。)をエピタキシャル成長させることが可能である。
なお、本発明の技術範囲は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記各実施形態では、薄膜サーミスタ部の上又は下に形成されるパターン電極としてCrを用いているが、Cr/Au/Crの多層構造のパターン電極などを採用しても構わない。
また、上記各実施形態では、薄膜サーミスタ部として結晶性Ti−Al−Nを用いているが、特に結晶性Ti−Al−Nに限定されることなく、特許文献2〜7に記載されているように、結晶性Al−Nと同じ六方晶系のウルツ鉱型の結晶構造をとる窒化物サーミスタ薄膜、一般式:M(但し、MはTi,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni及びCuの少なくとも1種を示すと共に、AはAl又は(Al及びSi)を示す。0.70≦y/(x+y)≦0.98、0.4≦z≦0.5、x+y+z=1)も適用可能である。
なお、上記各実施形態では、絶縁性窒化物保護膜として結晶性Al−N、又は絶縁性の結晶性Ti−Al−N等の結晶性M’−Al−Nを用いているが、上記Mの窒化物サーミスタ薄膜の組成範囲のうち、抵抗値が薄膜サーミスタ部に採用された材料の1000倍以上であれば、薄膜サーミスタ部3に対して十分高い絶縁性を有した保護膜として機能し、薄膜サーミスタ部3のサーミスタ特性に影響を与えないので、絶縁性窒化物保護膜として採用可能である。
例えば、上記「y/(x+y)」、すなわち、A/(M’+A)が0.98以下であっても、薄膜サーミスタ部に対して1000倍以上の高い抵抗値を有した絶縁性窒化物保護膜は、本発明では薄膜サーミスタ部に対して相対的に十分な絶縁性を有している。例えば、M=Ti,M’=Ti,A=Alの場合、Al/(Ti+Al)が0.85の薄膜サーミスタ部では、25℃抵抗率が2.47×10Ωcmであるが、Al/(Ti+Al)が0.97の絶縁性窒化物保護膜では、25℃抵抗率が2.41×10Ωcmである。したがって、Al/(Ti+Al)が0.97の絶縁性窒化物保護膜は、Al/(Ti+Al)が0.85の薄膜サーミスタ部に対して約10万倍の抵抗値を有することから、十分な絶縁性を有した下地として機能する。
また、Al/(Ti+Al)が0.91の絶縁性窒化物保護膜では、25℃抵抗率が1.38×10Ωcmであるが、Al/(Ti+Al)が0.97の絶縁性窒化物保護膜では、25℃抵抗率が2.41×10Ωcmである。したがって、Al/(Ti+Al)が0.97の絶縁性窒化物保護膜は、Al/(Ti+Al)が0.91の薄膜サーミスタ部に対して、1000倍以上の抵抗値を有することから、十分な絶縁性を有した保護膜として機能する。なお、上記絶縁性窒化物保護膜及び薄膜サーミスタ部の抵抗値は、熱酸化膜(SiO)付きSi基板上に成膜したものを実測している。
上述したように、ウルツ鉱型の結晶構造は、六方晶系の空間群P6mc(No.186)であり、MとAとは同じ原子サイトに属し(MはTi,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni及びCuの少なくとも1種を示すと共に、AはAl又は(Al及びSi)を示す。)、いわゆる固溶状態にある。ウルツ鉱型は、(M,A)N四面体の頂点連結構造をとり、(M,A)サイトの最近接サイトがN(窒素)であり、(M,A)は窒素4配位をとる。
なお、Ti以外に、V(バナジウム)、Cr(クロム)、Mn(マンガン)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Cu(銅)が同様に上記結晶構造においてTiと同じ原子サイトに存在することができ、Mの元素となり得る。有効イオン半径は、原子間の距離を把握することによく使われる物性値であり、特によく知られているShannonのイオン半径の文献値を用いると、論理的にもウルツ鉱型のM(但し、MはTi,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni及びCuの少なくとも1種を示すと共に、AはAl又は(Al及びSi)を示す。)が得られると推測できる。
以下の表2にAl,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Siの各イオン種における有効イオン半径を示す(参照論文 R.D.Shannon, Acta Crystallogr., Sect.A, 32, 751(1976))。
ウルツ鉱型は4配位であり、Mに関して4配位の有効イオン半径を見ると、2価の場合、Ni<Cu<Co<Fe<Mnであり、3価の場合、Al<Feであり、4価の場合、Mn<Co<Cr<Tiであり、5価の場合、Cr<Vとなっている。これらの結果より、(Al,Cu,Co,Ni,Fe,Mn)<Cr<(V,Ti)であると考えられる。(Ti及びV、もしくは、Cu,Co,Ni,Fe,Mn及びAlのイオン半径の大小関係は判別できない。)ただし、4配位のデータは価数がそれぞれ異なっているので、厳密な比較とはならないため、参考で3価イオンに固定したときの6配位(MN八面体)のデータを用いて比較した。表2中のHSは高スピン状態、LSは低スピン状態を示す。低スピン状態(LS)のとき、イオン半径が、Al<Cu<Co<Fe<Mn<Ni<Cr<V<Tiとなっていることがわかる。(高スピン状態のとき、Mn,Fe,Co,Niのイオン半径は、Alのイオン半径より大きく、Tiのイオン半径より小さい。)
絶縁体の結晶性Al−NのAlサイトをTi等のMに置き換えることにより、キャリアドーピングし、電気伝導が増加することで、サーミスタ特性が得られるものであるが、例えばAlサイトをTiに置き換えた場合は、AlよりTiの方が有効イオン半径が大きいので、その結果、AlとTiとの平均イオン半径は増加する。その結果、原子間距離が増加し、格子定数が増加すると推測できる。
実際に、特許文献2〜7にて、ウルツ鉱型のM(但し、MはTi,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni及びCuの少なくとも1種を示すと共に、AはAl又は(Al及びSi)を示す。)が得られ、サーミスタ特性が得られている。また、AlNのAlサイトをTi等に置き換えることによる格子定数の増加が、X線データより確認されていることが報告されている。なお、Siについては、表2より、Si及びAlのイオン半径の大小関係は判別できないが、特許文献5にて、AlとSiの双方を含むMにて、ウルツ鉱型の結晶構造をもち、さらに、サーミスタ特性が得られていることが報告されている。
膜上に結晶性Al−Nをエピタキシャル成長させるには、Al−N原子間距離とより近い(Al,M)−N原子間距離をもつM元素を選択すること、すなわち、Alのイオン半径とより近いイオン半径をもつM元素選択することが必要である。特に、表2に示す、3d遷移金属元素(Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu)は、4d遷移金属元素(例えば、Zr,Nb,Mo)、5d遷移金属元素(例えば、Hf,Ta,W)よりもイオン半径が小さく、Alのイオン半径とより近いため、Al−N原子間距離とより近い(Al,M)−N原子間距離をもつ窒化物サーミスタのエピタキシャル膜の上に結晶性Al−N膜を形成することが可能である。
1,21…温度センサ、2…絶縁性基材、3…薄膜サーミスタ部、4…パターン電極、5…絶縁性窒化物保護膜

Claims (4)

  1. 絶縁性基材と、
    前記絶縁性基材上にサーミスタ用金属窒化物材料で形成された薄膜サーミスタ部と、
    互いに対向して前記薄膜サーミスタ部にパターン形成された一対のパターン電極と、
    前記薄膜サーミスタ部上に形成された絶縁性窒化物保護膜とを備え
    前記薄膜サーミスタ部と前記絶縁性窒化物保護膜との結晶構造が、共に六方晶系のウルツ鉱型の単相であり、
    前記薄膜サーミスタ部が、サーミスタ特性を有するM−A−N(但し、MはTi,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni及びCuの少なくとも1種を示すと共に、AはAl又は(Al及びSi)を示す。)であり、
    前記絶縁性窒化物保護膜が、絶縁性の結晶性M’−Al−N(但し、M’はV,Cr,Mn,Fe,Co,Ni及びCuの少なくとも1種を示す。)であることを特徴とする温度センサ。
  2. 請求項に記載の温度センサにおいて、
    前記Mの元素が、Tiであることを特徴とする温度センサ。
  3. 請求項1又は2に記載の温度センサにおいて、
    前記絶縁性基材が、絶縁性フィルムであることを特徴とする温度センサ。
  4. 請求項1からのいずれか一項に記載の温度センサを製造する方法であって、
    絶縁性基材上に薄膜サーミスタ部をスパッタリングにより形成する薄膜サーミスタ部形成工程と、
    互いに対向して前記薄膜サーミスタ部の下又は上の少なくとも一方に一対のパターン電極をパターン形成するパターン電極形成工程と、
    前記薄膜サーミスタ部上に絶縁性窒化物保護膜をスパッタリングにより形成する保護膜形成工程とを有し、
    前記保護膜形成工程が、前記スパッタリングの前に逆スパッタを行うことを特徴とする温度センサの製造方法。
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