JP6718151B2 - サーミスタ及びその製造方法並びにサーミスタセンサ - Google Patents

サーミスタ及びその製造方法並びにサーミスタセンサ Download PDF

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Description

本発明は、より高い結晶性をもち、高B定数が得られるサーミスタ及びその製造方法並びにサーミスタセンサに関する。
温度センサ等に使用されるサーミスタ材料は、高精度、高感度のために、高いB定数が求められている。また、薄膜サーミスタ材料においては、結晶配向度に優れた、高い結晶性をもつ薄膜サーミスタ材料が求められている。近年、このようなサーミスタ材料として、非焼成で熱処理が不要であり、高B定数が得られる金属窒化物材料が開発されている。
例えば、本願発明者らは、Al−N系のサーミスタ用金属窒化物材料の研究開発を鋭意進め、非焼成で絶縁性基材に直接成膜できるサーミスタ用金属窒化物材料として、一般式:TiAl(0.70≦y/(x+y)≦0.95、0.4≦z≦0.5、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなり、その結晶構造が、六方晶系のウルツ鉱型の単相であるサーミスタ用金属窒化物材料を開発している(特許文献1)。その他にも、非焼成で形成でき、Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Si及びAlの少なくとも1種の窒化物材料であり、上記結晶構造を有するものであって高B定数が得られる材料を開発している(特許文献2〜7)。
特開2013−179161号公報 特開2014−123646号公報 特開2014−236204号公報 特開2015−65408号公報 特開2015−65417号公報 特開2015−73077号公報 特開2015−73075号公報
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
すなわち、上記各特許文献に記載のサーミスタ用金属窒化物材料を膜状に形成した際、a軸配向度よりもc軸配向度に優れた結晶配向をもつウルツ鉱型窒化物サーミスタ材料にて、より高いB定数が得られることが分かっているが、さらに結晶配向度に優れ、高い結晶性を得ることができる金属窒化膜を有するサーミスタが望まれている。
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、より高い結晶性をもち、高B定数が得られるサーミスタ及びその製造方法並びにサーミスタセンサを提供することを目的とする。
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係るサーミスタは、基材上に形成されたサーミスタであって、前記基材上に形成された第1金属窒化膜と、前記第1金属窒化膜上に形成された第2金属窒化膜とを備え、前記第1金属窒化膜が、結晶性Al−Nであり、前記第2金属窒化膜が、一般式:M(但し、MはTi,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni及びCuの少なくとも1種を示すと共に、AはAl又は(Al及びSi)を示す。0.70≦y/(x+y)≦0.98、0.4≦z≦0.5、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなり、前記第1金属窒化膜と前記第2金属窒化膜とが、共に結晶構造が六方晶系のウルツ鉱型の単相であると共に、前記第1金属窒化膜と前記第2金属窒化膜との界面に、Ar(アルゴン)元素が介在していることを特徴とする。
このサーミスタでは、第1金属窒化膜と第2金属窒化膜とが、共に結晶構造が六方晶系のウルツ鉱型の単相であると共に、第1金属窒化膜と第2金属窒化膜との界面に、Ar元素が介在しているので、界面に介在したAr元素により結晶性Al−Nと結晶性M−A−N(但し、MはTi,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni及びCuの少なくとも1種を示すと共に、AはAl又は(Al及びSi)を示す。)の界面近傍にて歪エネルギーが緩和され、結晶格子が緩和されることで、極めて高い格子整合性が実現される。したがって、本発明のサーミスタでは、第2金属窒化膜の下地層である第1金属窒化膜が結晶性Al−Nであり、結晶性Al−Nと同じ結晶系で格子定数のわずかに異なる第2金属窒化膜が第1金属窒化膜上に成膜されているため、成膜開始直後のサーミスタ用M−A−Nの初期結晶成長時より、結晶性M−A−Nは窒素欠陥量が極めて少ない柱状結晶化膜となり、高い結晶性が得られると共に結晶配向度がさらに高くなったウルツ鉱型結晶構造を有して、より高いB定数が得られる。
なお、第2金属窒化膜である結晶性Mについては、上記「y/(x+y)」(すなわち、A/(M+A))が0.70未満であると、ウルツ鉱型の単相が得られず、NaCl型相との共存相又はNaCl型のみの結晶相となってしまい、十分な高抵抗と高B定数とが得られない。
また、上記「y/(x+y)」(すなわち、A/(M+A))が0.98を超えると、抵抗率が非常に高く、きわめて高い絶縁性を示すため、サーミスタ材料として適用できない。
また、上記「z」(すなわち、N/(M+A+N))が0.4未満であると、金属の窒化量が少ないため、ウルツ鉱型の単相が得られず、十分な高抵抗と高B定数とが得られない。
さらに、上記「z」(すなわち、N/(M+A+N))が0.5を超えると、ウルツ鉱型の単相を得ることができない。このことは、ウルツ鉱型の単相において、窒素サイトにおける欠陥がない場合の化学量論比が0.5(すなわち、N/(M+A+N)=0.5)であることに起因する。
第2の発明に係るサーミスタは、第1の発明において、前記第1金属窒化膜と前記第2金属窒化膜とが、共に膜厚方向(結晶が成長する方向)にa軸配向度よりc軸配向度が大きい結晶配向をもつ膜であり、さらに、膜厚方向に、互いに結晶の極性がAl極性となっていることを特徴とする。
すなわち、このサーミスタでは、第1金属窒化膜と第2金属窒化膜とが、膜厚方向(結晶が成長する方向)に、互いに結晶の極性がAl極性となっているので、Al極性面を有した結晶性Al−Nの表面から連続してAl極性面を有した結晶性M−A−Nが結晶成長されていることで、より高い結晶性を得ることができる。このように、結晶性Al−Nと結晶性M−A−Nとにおいて、膜厚方向の原子配列が同じ極性を持つことになり、極めて高い結晶配向度をもつと共に、高い結晶性をもつサーミスタを得ることができる。
第3の発明に係るサーミスタは、第1又は第2の発明において、前記第2金属窒化膜が、結晶性Ti−Al−Nであり、その結晶構造が、六方晶系のウルツ鉱型の単相であることを特徴とする。
すなわち、このサーミスタでは、第2金属窒化膜が、結晶性Ti−Al−Nであるので、結晶性Al−Nの第1金属窒化膜が第2金属窒化膜とAlを共通元素としており、さらに、結晶構造が六方晶系のウルツ鉱型の単相と共通していることで、より結晶性が良いエピタキシャル成長された第2金属窒化膜が容易に得られる。
第4の発明に係るサーミスタセンサは、第1から第3の発明のいずれかのサーミスタの前記基材,前記第1金属窒化膜及び前記第2金属窒化膜と、前記第2金属窒化膜の上に形成された一対のパターン電極とを備えていることを特徴とする。
すなわち、このサーミスタセンサでは、第1から第3の発明のいずれかのサーミスタを備えているので、きわめて高い絶縁性を示す結晶性Al−N膜(第1金属窒化膜)上に非焼成で形成された高B定数の薄膜サーミスタ部(第2金属窒化膜)により、良好なサーミスタ特性を有したサーミスタセンサが得られる。
第5の発明に係るサーミスタセンサは、第4の発明において、前記基材が、絶縁性フィルムであることを特徴とする。
すなわち、このサーミスタセンサでは、前記基材が、絶縁性フィルムであるので、上記薄膜サーミスタ部が柔軟性を有していると共に基材が柔軟性を有することで、サーミスタセンサ全体として柔軟性を有し、例えば測定対象物に押し当てた際に、柔軟に湾曲して測定対象物と接触させることが可能になる。また、測定対象物が曲面をもっていても、測定対象物とサーミスタ部とを面接触させることができるので、柔軟性と応答性とを兼ね備えたサーミスタセンサが得られる。
第6の発明に係るサーミスタの製造方法は、第1から第3の発明のいずれかのサーミスタの製造方法であって、基材上に形成された結晶性Al−Nの前記第1金属窒化膜上に、M−A合金スパッタリングターゲット(但し、MはTi,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni及びCuの少なくとも1種を示すと共に、AはAl又は(Al及びSi)を示す。)を用いて窒素含有雰囲気中で反応性スパッタを行って前記第2金属窒化膜を成膜する成膜工程を有し、前記成膜工程前に、Arガス含有雰囲気中で逆スパッタを行って前記第1金属窒化膜の表面に存在する表面酸化膜を除去すると共に前記第1金属窒化膜の表面近傍にAr元素を注入することを特徴とする。
すなわち、このサーミスタの製造方法では、成膜工程前に、Arガス含有雰囲気中で逆スパッタを行って第1金属窒化膜の表面に存在する表面酸化膜を除去すると共に第1金属窒化膜の表面近傍にAr元素を注入するので、表面酸化膜が除去された結晶性Al−Nの表面から内部の表面近傍にAr元素が注入されることで、界面の歪エネルギーが緩和されて、結晶格子が緩和されることで、高い格子整合度で高結晶性かつ高結晶配向度の結晶性M−A−Nを結晶性Al−N上にエピタキシャル成長させることができる。
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係るサーミスタによれば、第1金属窒化膜と第2金属窒化膜とが、共に結晶構造が六方晶系のウルツ鉱型の単相であると共に、第1金属窒化膜と第2金属窒化膜との界面に、Ar元素が介在しているので、界面に介在したAr元素により第1金属窒化膜と第2金属窒化膜との界面近傍において、界面の歪エネルギーが緩和されて、結晶格子が緩和されることで、極めて高い格子整合性が実現され、サーミスタ用M−A−Nの初期結晶成長時より、結晶性M−A−Nは窒素欠陥量が極めて少ない柱状結晶化膜となり、結晶性M−A−Nの高い結晶性が得られると共に結晶配向度がさらに高くなったウルツ鉱型結晶構造を有して、より高いB定数が得られる。
また、本発明に係るサーミスタの製造方法によれば、成膜工程前に、Arガス含有雰囲気中で逆スパッタを行って第1金属窒化膜の表面に存在する表面酸化膜を除去すると共に第1金属窒化膜の表面近傍にAr元素を注入するので、表面酸化膜が除去された結晶性Al−Nの表面からAr元素が注入されることで、高い格子整合度で高結晶性かつ高結晶配向度の結晶性M−A−Nを成膜することができる。
さらに、本発明に係るサーミスタセンサによれば、上記本発明のサーミスタを備えているので、非焼成で形成された高B定数の薄膜サーミスタ部(第2金属窒化膜)により、良好なサーミスタ特性を有したサーミスタセンサが得られる。
本発明に係るサーミスタ及びその製造方法並びにサーミスタセンサの一実施形態において、サーミスタを示す断面図である。 本実施形態及び本発明に係る実施例において、サーミスタセンサ及び膜評価用素子を示す正面図及び平面図である。 本発明に係る比較例4を示すTi−Al−N膜の断面SEM写真である。 本発明に係る比較例1を示すTi−Al−N膜の断面SEM写真である。 本発明に係る実施例1を示すTi−Al−N膜の断面SEM写真である。 本発明に係る実施例2を示すTi−Al−N膜の断面SEM写真である。 本発明に係る比較例及び実施例における各断面TEM写真((a)比較例4、(b)比較例1、(c)実施例1)である。 本発明に係る比較例及び実施例における各断面TEM写真((a)実施例2、(b)実施例3、(b)比較例2)である。 本発明に係る比較例4におけるTi−Al−N膜断面の電子線回折像である。 本発明に係る比較例1におけるTi−Al−N膜断面の電子線回折像である。 本発明に係る実施例1におけるTi−Al−N膜断面の電子線回折像である。 本発明に係る実施例2におけるTi−Al−N膜断面の電子線回折像である。 本発明に係る実施例3におけるTi−Al−N膜断面の電子線回折像である。 本発明に係る比較例2におけるTi−Al−N膜断面の電子線回折像である。 本発明に係る実施例において、組成比Al/(Al+Ti)に対するTi−Al−N膜の格子定数(a軸長)を示すグラフである。 本発明に係る実施例において、組成比Al/(Al+Ti)に対するTi−Al−N膜の格子定数(c軸長)を示すグラフである。 本発明に係る実施例において、Al−N/Ti−Al−N界面近傍のSTEM−HAADF像及びAl,Ti,Ar元素のEDS−map像である。 本発明に係る実施例において、Al−N/Ti−Al−N界面近傍の原子分解能レベルにおけるSTEM−HAADF像である。 本発明に係る実施例において、界面観察から示唆されたモデル像である。 Al−N結晶がAl極性の場合(a)とN極性の場合(b)とにおいて、ウルツ鉱型結晶構造を[110]方向から見た、膜厚方向の原子配列を示す模式図である。 Al−N結晶とTi−Al−N結晶が共にAl極性であり、それぞれの結晶格子が整合した場合において、ウルツ鉱型結晶構造を[110]方向から見た、Al−N/Ti−Al−N界面近傍の膜厚方向の原子配列を示す模式図である。
以下、本発明に係るサーミスタ及びその製造方法並びにサーミスタセンサにおける一実施形態を、図1及び図2を参照しながら説明する。なお、以下の説明に用いる図面では、各部を認識可能又は認識容易な大きさとするために必要に応じて縮尺を適宜変更している。
本実施形態のサーミスタ1は、図1に示すように、基材2上に形成されたサーミスタであって、基材2上に形成された第1金属窒化膜3と、第1金属窒化膜3上に形成された第2金属窒化膜4とを備えている。すなわち、本実施形態のサーミスタ1は、基材2上に第1金属窒化膜3と第2金属窒化膜4との金属窒化膜の積層構造を有したものである。
上記第1金属窒化膜3は、結晶性Al−Nであり、その結晶構造が六方晶系のウルツ鉱型の単相であると共に、膜厚方向(結晶が成長する方向)にa軸配向度よりc軸配向度が大きい結晶配向度をもつエピタキシャル成長膜又はスパッタ膜である。
上記第2金属窒化膜4は、一般式:M(但し、MはTi,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni及びCuの少なくとも1種を示すと共に、AはAl又は(Al及びSi)を示す。0.70≦y/(x+y)≦0.98、0.4≦z≦0.5、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなる。
なお、上記Aは、Al又は(Al及びSi)、すなわちAlか、Al及びSiであって、少なくともAlを含む。
上記第1金属窒化膜3と第2金属窒化膜4とは、共に結晶構造が六方晶系のウルツ鉱型(空間群P6mc(No.186))の単相であると共に、第1金属窒化膜3と第2金属窒化膜4との界面に、Ar元素が介在している。
特に、第2金属窒化膜4は、結晶性Ti−Al−Nであることが好ましい。
また、六方晶系のウルツ鉱型結晶構造を有する第1金属窒化膜3と第2金属窒化膜4とが、共に膜厚方向にa軸配向度よりc軸配向度が大きい結晶配向をもつ膜であり、さらに、膜厚方向に、互いに結晶の極性がAl極性となっている。すなわち、結晶性Al−Nの第1金属窒化膜3は、界面にAl極性面を有し、その上にエピタキシャル成長された結晶性M−A−Nの第2金属窒化膜4は、Al極性となっている。
なお、結晶相の同定は、視斜角入射X線回折(Grazing Incidence X-ray Diffraction)により、実施し、管球をCuとし、入射角を1度とした。なお、膜の表面に対して垂直方向(膜厚方向)にa軸配向(100)が強いかc軸配向(002)が強いかの判断は、上記X線回折(XRD)を用いて結晶軸の配向性を調べ、(100)(a軸配向を示すhkl指数)と(002)(c軸配向を示すhkl指数)とのピーク強度比から、「(100)のピーク強度」/「(002)のピーク強度」が1未満である場合、c軸配向が強いものとする。なお、(100)ピークを検出されない場合、すなわち、「(100)のピーク強度」/「(002)のピーク強度」がゼロの場合は、膜厚方向のc軸配向度が極めて強い膜であると判断される。
なお、膜厚方向へc軸配向度が極めて強い膜については、本XRD条件(入射角1度)による検出される(002)のピーク強度だけでは、c軸配向度を厳密に評価する、もしくは、エピタキシャル膜であるか評価することが非常に困難なため、TEM(透過型電子顕微鏡)を用いて、膜断面の電子線回折像を取得し、膜厚方向のc軸配向度を評価した。
上述したように、ウルツ鉱型の結晶構造は、六方晶系の空間群P6mc(No.186)であり、MとAとは同じ原子サイトに属し(MはTi,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni及びCuの少なくとも1種を示すと共に、AはAl又は(Al及びSi)を示す。)、いわゆる固溶状態にある。ウルツ鉱型は、(M,A)N4四面体の頂点連結構造をとり、(M,A)サイトの最近接サイトがN(窒素)であり、(M,A)は窒素4配位をとる。
なお、Ti以外に、V(バナジウム)、Cr(クロム)、Mn(マンガン)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Cu(銅)が同様に上記結晶構造においてTiと同じ原子サイトに存在することができ、Mの元素となり得る。有効イオン半径は、原子間の距離を把握することによく使われる物性値であり、特によく知られているShannonのイオン半径の文献値を用いると、論理的にもウルツ鉱型のM(但し、MはTi,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni及びCuの少なくとも1種を示すと共に、AはAl又は(Al及びSi)を示す。)が得られると推測できる。
以下の表1にAl,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Siの各イオン種における有効イオン半径を示す(参照論文 R.D.Shannon, Acta Crystallogr., Sect.A, 32, 751(1976))。
ウルツ鉱型は4配位であり、Mに関して4配位の有効イオン半径を見ると、2価の場合、Ni<Cu<Co<Fe<Mnであり、3価の場合、Al<Feであり、4価の場合、Mn<Co<Cr<Tiであり、5価の場合、Cr<Vとなっている。これらの結果より、(Al,Cu,Co,Fe,Ni,Mn)<Cr<(V,Ti)であると考えられる。(Ti及びV、もしくは、Cu,Co,Fe,Ni,Mn及びAlのイオン半径の大小関係は判別できない。)ただし、4配位のデータは価数がそれぞれ異なっているので、厳密な比較とはならないため、参考で3価イオンに固定したときの6配位(MN6八面体)のデータを用いて比較した。表1中のHSは高スピン状態、LSは低スピン状態を示す。低スピン状態(LS)のとき、イオン半径が、Al<Cu<Co<Fe<Ni<Mn<Cr<V<Tiとなっていることがわかる。(高スピン状態のとき、Mn,Fe,Co,Niのイオン半径は、Alのイオン半径より大きく、Tiのイオン半径より小さい。)
本発明は、ウルツ鉱型の結晶構造をもつ窒化物絶縁体であるAl−NのAlサイトをTi等のMに置き換えることにより、キャリアドーピングし、電気伝導が増加することで、サーミスタ特性が得られるものであるが、例えばAlサイトをTiに置き換えた場合は、AlよりTiの方が有効イオン半径が大きいので、その結果、AlとTiとの平均イオン半径は増加する。その結果、原子間距離が増加し、格子定数が増加すると推測できる。
実際に、特許文献2〜7にて、ウルツ鉱型のM(但し、MはTi,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni及びCuの少なくとも1種を示すと共に、AはAl又は(Al及びSi)を示す。)が得られ、サーミスタ特性が得られている。また、Al−NのAlサイトをTi等に置き換えることによる格子定数の増加が、X線データより確認されていることが報告されている。なお、Siについては、表1より、Si及びAlのイオン半径の大小関係は判別できないが、特許文献5にて、AlとSiの双方を含むMにて、ウルツ鉱型の結晶構造をもち、さらに、サーミスタ特性が得られていることが報告されている。
結晶性Al−N上にM膜をエピタキシャル成長させるには、Al−N原子間距離とより近い(Al,M)−N原子間距離をもつM元素を選択すること、すなわち、Alのイオン半径とより近いイオン半径をもつM元素選択することが必要である。特に、表1に示す、3d遷移金属元素(Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu)は、4d遷移金属元素(例えば、Zr,Nb,Mo)、5d遷移金属元素(例えば、Hf,Ta,Mo)よりもイオン半径が小さく、Alのイオン半径とより近いため、Al−N原子間距離とより近い(Al,M)−N原子間距離をもつ窒化物サーミスタのエピタキシャル膜を結晶性Al−N膜上に形成することが可能である。
さらに、結晶性Al−N膜がウルツ鉱型結晶構造をもち、膜厚方向にc軸配向度が高いエピタキシャル成長膜又はスパッタ膜であると、ウルツ鉱型結晶構造をもつM膜を容易にエピタキシャル成長させることが可能となる。
次に、本実施形態のサーミスタを用いたサーミスタセンサについて説明する。このサーミスタセンサ10は、図2に示すように、サーミスタ1の基材2,互いの界面にArが介在している第1金属窒化膜3及び第2金属窒化膜4と、第2金属窒化膜4の上に形成された一対のパターン電極5とを備えている。
上記基材2は、例えばサファイア基板(コランダム型結晶構造のα−Al)であり、C面サファイア基板を用いた場合、そのAlは膜厚方向にc軸配向しており、第1金属窒化膜3はサファイア基板の基材2上にエピタキシャル成長させた又はスパッタ成膜させた結晶性Al−N膜である。
結晶性Al−N膜をスパッタリングにより形成する場合は、例えば、Alスパッタリングターゲットを用い、スパッタ条件は、到達真空度4×10−5Pa、スパッタガス圧0.2Pa、ターゲット投入電力(出力)200Wで、Arガス+窒素ガスの混合ガス雰囲気下において窒素ガス分率を35%とする。
なお、基材2として、絶縁性フィルムを採用しても良い。なお、上記絶縁性フィルムとしては、他にPET:ポリエチレンテレフタレート,PEN:ポリエチレンナフタレート等でも作製できるが、柔軟性と耐熱性とが要求される。例えば定着ローラの温度測定用としては、最高使用温度が200℃程度と高いため、耐熱性に優れたポリイミドフィルムが望ましい。
上記一対のパターン電極5は、例えばCr膜とAu膜との積層金属膜でパターン形成され、第2金属窒化膜4上で互いに対向状態とされていると共に、複数の櫛部5aを有した櫛形パターンとされている。
上記サーミスタの製造方法及びこれを用いたサーミスタセンサの製造方法について、以下に説明する。
本実施形態のサーミスタの製造方法は、基材2上に形成された結晶性Al−Nの第1金属窒化膜3上に、M−A合金スパッタリングターゲット(但し、MはTi,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni及びCuの少なくとも1種を示すと共に、AはAl又は(Al及びSi)を示す。)を用いて窒素含有雰囲気中で反応性スパッタを行って第2金属窒化膜4を成膜する成膜工程を有し、成膜工程前に、Arガス含有雰囲気中で逆スパッタを行って第1金属窒化膜3の表面に存在する表面酸化膜(自然酸化膜)を除去すると共に第1金属窒化膜3の表面近傍にAr元素を注入することを目的とするArガスによる逆スパッタ工程を有している。
なお、Ar逆スパッタ工程は、成膜工程と同一の成膜装置内で実施することが好ましく、上記酸化膜除去後は、大気開放することなく、同一成膜装置内で直ちに成膜することが望ましい。酸化膜除去後、大気開放してしまうと、直ちに新たな表面酸化が進行してしまうからである。サーミスタ用金属窒化膜の成膜はプラズマプロセスである反応性スパッタリングを行っているため、上記理由より、酸化膜除去の手法もプラズマを用いた手法が好ましい。なお、このプラズマ処理は、酸化膜だけなく、表面の汚れである有機残渣、水分残渣等の除去にも有効であり、基板洗浄の効果もあることから、成膜前の基板表面の異物、汚染物質の混入も防ぐことができる。
また、表面酸化膜(自然酸化膜)を除去された状態で、さらにAr逆スパッタすることで、ウルツ鉱型結晶構造を有する第1金属窒化膜3の表面近傍に、Ar元素を効果的に注入することが可能となる。
より具体的には、例えば、C面サファイア基板(α−Al2O3)の基材2上に結晶性Al−Nの第1金属窒化膜3を厚さ1μmでエピタキシャル成長したもの(例えば、市販されているAl−Nエピタキシャル膜付きサファイア基板)を用意し、第1金属窒化膜3上に、反応性スパッタ法にて上記第2金属窒化膜を200nm成膜する。
例えば、M=Ti,A=Alとした場合、その時のスパッタ条件は、例えば到達真空度:4×10−5Pa、スパッタガス圧:0.2Pa、ターゲット投入電力(出力):200Wで、Arガス+窒素ガスの混合ガス雰囲気下において窒素ガス分圧:30%とする。
上記Ar逆スパッタ工程として、具体的には、上記成膜工程のスパッタ前に、基材2側に電力を印加することにより、第1金属窒化膜3表面に形成されている表面酸化膜(自然酸化膜等の汚染膜)を逆スパッタにより除去する。この際の逆スパッタ条件は、例えば到達真空度:4×10−5Pa、ターゲット印加電力:50Wで、Arガス雰囲気下において30分間とする。なお、逆スパッタ時に用いられるガス種は、Arガスと窒素ガス等との混合ガスを用いてもよい。
また、本実施形態のサーミスタセンサを製造する場合、第1金属窒化膜3上にメタルマスクを用いて所望のサイズで第2金属窒化膜4を成膜して薄膜サーミスタ部を形成する。なお、形成された薄膜サーミスタ部に窒素プラズマを照射することが望ましい。例えば、真空度:6.7Pa、出力:200W及びNガス雰囲気下で、窒素プラズマを薄膜サーミスタ部に照射させる。
次に、スパッタ法にて、例えばCr膜を20nm形成し、さらにAu膜を200nm形成する。さらに、その上にレジスト液をバーコーターで塗布した後、110℃で1分30秒のプリベークを行い、露光装置で感光後、現像液で不要部分を除去し、150℃で5分のポストベークにてパターニングを行う。その後、不要な電極部分を市販のAuエッチャント及びCrエッチャントによりウェットエッチングを行い、図2に示すように、レジスト剥離にて所望の櫛部5aを有したパターン電極5を形成する。このようにして本実施形態のサーミスタセンサ10が作製される。
このように本実施形態のサーミスタ1では、第1金属窒化膜3と第2金属窒化膜4とが、共に結晶構造が六方晶系のウルツ鉱型の単相であると共に、第1金属窒化膜3と第2金属窒化膜4との界面に、Arが介在しているので、界面に介在したAr元素により結晶性Al−Nと結晶性M−A−N(但し、MはTi,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni及びCuの少なくとも1種を示すと共に、AはAl又は(Al及びSi)を示す。)の界面近傍にて、歪エネルギーが緩和され、結晶格子が緩和されることで、極めて高い格子整合性が実現される。
したがって、本発明のサーミスタでは、第2金属窒化膜の下地層である第1金属窒化膜3が結晶性Al−Nであり、結晶性Al−Nと同じ結晶系で格子定数のわずかに異なる第2金属窒化膜4が第1金属窒化膜3上に成膜されているため、成膜開始直後のサーミスタ用M−A−Nの初期結晶成長時より、結晶性M−A−Nは窒素欠陥量が極めて少ない柱状結晶化膜となり、高い結晶性が得られると共に結晶配向度がさらに高くなったウルツ鉱型結晶構造を有して、より高いB定数が得られる。
また、六方晶系のウルツ鉱型結晶構造を有する第1金属窒化膜3と第2金属窒化膜4とが、共に膜厚方向(結晶が成長する方向)にa軸配向度よりc軸配向度が大きい結晶配向をもつ膜であり、さらに、膜厚方向に、互いに結晶の極性がAl極性となっているので、Al極性面を有した結晶性Al−Nの表面から連続してAl極性面を有した結晶性M−A−Nが結晶成長されていることで、より高い結晶性を得ることができる。このように、結晶性Al−Nと結晶性M−A−Nとにおいて、膜厚方向の原子配列が同じ極性を持つことになり、極めて高い結晶配向度をもつとともに、高い結晶性をもつサーミスタを得ることができる。
また、第2金属窒化膜4が、結晶性Ti−Al−Nであるので、結晶性Al−Nの第1金属窒化膜3が第2金属窒化膜4とAlを共通元素としており、さらに、結晶構造が六方晶系のウルツ鉱型の単相と共通していることで、より結晶性が良いエピタキシャル成長された第2金属窒化膜4が容易に得られる。
また、本実施形態のサーミスタセンサ10では、上記サーミスタ1を備えているので、きわめて高い絶縁性を示す結晶性Al−N膜(第1金属窒化膜3)上に非焼成で形成された高B定数の薄膜サーミスタ部(第2金属窒化膜4)により、高精度な温度検出可能な良好なサーミスタ特性を有したサーミスタセンサが得られる。
さらに、基材2に絶縁性フィルムを採用した場合、上記薄膜サーミスタ部が柔軟性を有していると共に基材2が柔軟性を有することで、サーミスタセンサ全体として柔軟性を有し、例えば測定対象物に押し当てた際に、柔軟に湾曲して測定対象物と接触させることが可能になる。また、測定対象物が曲面をもっていても、測定対象物とサーミスタ部とを面接触させることができるので、柔軟性と応答性とを兼ね備えたサーミスタセンサが得られる。
さらに、本実施形態のサーミスタの製造方法では、成膜工程前に、Arガス含有雰囲気中で逆スパッタを行って第1金属窒化膜3の表面に存在する表面酸化膜を除去すると共に第1金属窒化膜3の表面近傍にAr元素を注入するので、表面酸化膜が除去された結晶性Al−Nの表面からAr元素が注入されることで、界面にて、歪エネルギーが緩和され、結晶格子が緩和されることで、高い格子整合度で高結晶性かつ高結晶配向度の結晶性M−A−Nを、結晶性Al−N上にエピタキシャル成長させることができる。なお、上記逆スパッタにより、表面酸化膜を除去することが好ましいが、Al−N/Ti−Al−N界面における格子整合を阻害しない範囲内にて、Al−N膜中およびTi−Al−N膜中に酸素が不可避不純物として含まれていてもよい。
次に、本発明に係るサーミスタ及びその製造方法並びにサーミスタセンサについて、上記実施形態に基づいて作製した実施例により評価した結果を、図2から図21を参照して具体的に説明する。
<膜評価用素子の作製>
本発明の実施例及び比較例として、図2に示すサーミスタセンサを膜評価用素子として次のように作製した。
まず、反応性スパッタ法にて、組成比Al/(Ti+Al)=0.90又は組成比Al/(Ti+Al)=0.85としたTi−Al合金ターゲットを用いて、サファイア基板の基材2上に形成された結晶性Al−Nの第1金属窒化膜3上に、Ti−Al−N膜(第2金属窒化膜4)を形成した。その時のTi−Al−N膜のスパッタ条件は、上述したものと同じである。
なお、組成比Al/(Ti+Al)=0.85としたTi−Al合金ターゲットを用いた実施例では、熱酸化膜付きSi基板上に、まず結晶性Al−Nの第1金属窒化膜3を反応性スパッタ法により成膜し、その後も組成比Al/(Ti+Al)=0.85としたTi−Al合金ターゲットを用いて、結晶性Al−Nスパッタ膜上に、Ti−Al−N膜を形成する実施例を作製した。なお、結晶性Al−NおよびTi−Al−N膜のスパッタ条件は、上述したものと同じである。
また、サファイア基板の基材2上に形成された結晶性Al−Nの第1金属窒化膜3上に、Ti−Al−N膜(第2金属窒化膜4)を形成したもので、この際、逆スパッタにより第1金属窒化膜3の表面酸化膜を除去していない比較例1(膜の組成比Al/(Ti+Al)=0.91)及び比較例3(膜の組成比Al/(Ti+Al)=0.85)と、上記Ar逆スパッタにより第1金属窒化膜3の表面酸化膜を除去し、界面にAr元素が注入された実施例1(膜の組成比Al/(Ti+Al)=0.91)及び実施例2(膜の組成比Al/(Ti+Al)=0.85)とを作製した。
また、熱酸化膜(SiO)付きSi基板上に形成された結晶性Al−Nの第1金属窒化膜3上に、Ti−Al−N膜(第2金属窒化膜4)を形成したもので、Ar逆スパッタにより第1金属窒化膜3の表面酸化膜を除去した実施例3(膜の組成比Al/(Ti+Al)=0.85)と、Ar逆スパッタを有することなく結晶性Al−Nの第1金属窒化膜3上にTi−Al−N膜(第2金属窒化膜4)を連続成膜し、界面にAr元素が注入されていない比較例2(膜の組成比Al/(Ti+Al)=0.85)とを作製した。
なお、連続成膜とは、結晶性Al−Nスパッタ膜の表面酸化を防ぐため、大気開放することなく、結晶性Al−N成膜後同一の成膜装置内にて直ちにサーミスタ用金属窒化膜を成膜することを意味する。
次に、上記第2金属窒化膜4の上に、上述した条件でパターン電極5を形成した。そして、これをチップ状にダイシングして、本発明の実施例の膜評価用素子とした。実施例における結晶性Al−Nの第1金属窒化膜3の膜厚は、サファイア基板の基材2上に形成された結晶性Al−Nが1μmであり、熱酸化膜(SiO)付きSi基板上に形成された結晶性Al−Nが100nmである。Ti−Al−Nの第2金属窒化膜4の膜厚は、200nmである。
また、比較として熱酸化膜(SiO)付きSi基板を基材として用いて、その上に同様にTi−Al−N膜を成膜した比較例4(膜の組成比Al/(Ti+Al)=0.91)及び比較例5(膜の組成比Al/(Ti+Al)=0.85)も作製して評価を行った。この比較例4,5のTi−Al−N膜の膜厚は、200nmである。
なお、スパッタ膜の結晶性Al−Nの第1金属窒化膜3上に第2金属窒化膜4をスパッタ成膜した実施例において、ポリイミド樹脂等の絶縁性フィルムの基材2上に成膜した場合、柔軟性を有し、曲げ前後に抵抗値変化が無いことを確認している。
<組成分析>
反応性スパッタ法にて得られた各Ti−Al−N膜について、X線光電子分光法(XPS)にて元素分析を行った。このXPSでは、Arスパッタにより、最表面から深さ20nmのスパッタ面において、定量分析を実施した。
なお、上記X線光電子分光法(XPS)は、X線源をMgKα(350W)とし、パスエネルギー:58.5eV、測定間隔:0.125eV、試料面に対する光電子取り出し角:45deg、分析エリアを約800μmφの条件下で定量分析を実施した。
この結果、組成比Al/(Ti+Al)=0.90としたTi−Al合金ターゲットを用いて作製された、上記比較例1、比較例4及び実施例1のTi−Al−N膜は、いずれも組成比Al/(Ti+Al)=0.91±0.01であった。また、組成比Al/(Ti+Al)=0.85としたTi−Al合金ターゲットを用いて作製された、上記比較例2,3,5、実施例2,3のTi−Al−N膜は、いずれも組成比Al/(Ti+Al)=0.85±0.01であった。
<比抵抗測定>
反応性スパッタ法にて得られた各Ti−Al−N膜について、4端子法(van der pauw法)にて25℃での比抵抗を測定した。その結果を表2及び表3に示す。表2は、組成比Al/(Ti+Al)=0.91の結果であり、表3は組成比Al/(Ti+Al)=0.85の結果を示している。
なお、本発明の各実施例及び比較例の一覧を、表4に示す。
<B定数測定>
各膜評価用素子の25℃及び50℃の抵抗値を恒温槽内で測定し、25℃と50℃との抵抗値よりB定数を算出した。その結果も表2に示す。また、25℃と50℃との抵抗値より負の温度特性をもつサーミスタであることを確認している。
なお、本発明におけるB定数算出方法は、上述したように25℃と50℃とのそれぞれの抵抗値から以下の式によって求めている。
B定数(K)=ln(R25/R50)/(1/T25−1/T50)
R25(Ω):25℃における抵抗値
R50(Ω):50℃における抵抗値
T25(K):298.15K 25℃を絶対温度表示
T50(K):323.15K 50℃を絶対温度表示
これらの結果からわかるように、熱酸化膜Si基板上にTi−Al−N膜を成膜した比較例に対して、結晶性Al−N付きサファイア基板又は熱酸化膜Si基板上にTi−Al−Nの第2金属窒化膜4を成膜した本発明の実施例及び比較例は、いずれも高い抵抗率及びB定数が得られている。特に、Ar逆スパッタにより、第1金属窒化膜3の表面酸化膜を除去し、さらにAr元素が注入された本発明の実施例は、第1金属窒化膜3の表面酸化膜の除去をおこなっていない比較例よりもさらに高B定数が得られている。
<X線回折による結晶配向度の評価>
次に、本発明の実施例はウルツ鉱型相の単相の膜であり、結晶配向性が強いことから、第1金属窒化膜3上に垂直な方向(膜厚方向)の結晶軸においてa軸配向性とc軸配向性のどちらが強いか、視斜角入射X線回折(Grazing Incidence X-ray Diffraction)を用いて調査した。この際、結晶軸の配向性を調べるために、(100)(a軸配向を示すhkl指数)と(002)(c軸配向を示すhkl指数)とのピーク強度比を測定した。
なお、視斜角入射X線回折の条件は、管球をCuとし、入射角を1度とした。なお、結晶性Al−N膜付きサファイア基板を用いた実施例1及び2については、結晶性Al−Nの第1金属窒化膜3の110方向より、X線を入射した。
この結果、本発明の実施例は、(100)ピークは検出されておらず、c軸配向度がきわめて高いことがわかった。
なお、入射角を0度とし、2θ=20〜100度の範囲で、対称測定(一般的な θ-2θ 測定)も実施した。この入射角を0度とした対称測定を行うことで、第1金属窒化膜3、第2金属窒化膜4が共にウルツ鉱型相の単相であることがわかり、さらに(100)ピークは検出されておらず、第1金属窒化膜3、第2金属窒化膜4共にc軸配向度がきわめて高いことがわかった。
<結晶組織の評価>
次に、上記比較例4、比較例1、実施例1及び実施例2について、パターン電極5を形成していない状態における断面の結晶形態を示すものとして、各Ti−Al−N膜の断面SEM写真を、図3、図4、図5及び図6に示す。
これらの実施例のサンプルは、熱酸化膜付きSi基板及び結晶性Al−N付きサファイア基板をへき開破断したものを用いている。また、45°の角度で傾斜観察した写真である。
これらの写真からわかるように、各比較例及び実施例は共に緻密な柱状結晶で形成されている。すなわち、基板面に垂直な方向に柱状の結晶が成長している様子が観測されている。なお、柱状結晶の破断は、熱酸化膜付きSi基板およびサファイア基板をへき開破断した際に生じたものである。
柱状結晶のアスペクト比を(長さ)÷(粒径)として定義すると、比較例及び実施例は10以上の大きいアスペクト比をもっている。柱状結晶の粒径は10nm±5nmφ程度であり、粒径が小さく、緻密な膜が得られている。
<電子線回折による結晶配向性の評価>
次に、TEM(透過型電子顕微鏡)を用いて、比較例1,2,4及び実施例1,2,3の第2金属窒化膜4の結晶性Ti−Al−N膜および第1金属窒化膜の結晶性Al−N膜の結晶配向性について詳細な解析を行った。比較例4の断面TEM像を図7の(a)に示すと共に、比較例1の断面TEM像を図7の(b)に示し、実施例1の断面TEM像を図7の(c)に示す。また、実施例2の断面TEM像を図8の(a)に示す。さらに、実施例3の断面TEM像を図8の(b)に示し、比較例2の断面TEM像を図8の(c)に示す。
なお、結晶性Al−N膜付きサファイア基板を用いた比較例1及び実施例1,2の断面は、結晶性Al−N単結晶化膜である第1金属窒化膜3の[110]方向から観察した像である。実施例3及び比較例2,4の断面は、任意の断面の方向から観察した像である。
また、比較例4におけるTi−Al−N膜断面の電子線回折像を図9に示すと共に、比較例1におけるTi−Al−N膜断面の電子線回折像を図10に示し、実施例1におけるTi−Al−N膜断面の電子線回折像を図11に示す。さらに、実施例2におけるTi−Al−N膜断面の電子線回折像を図12示すと共に、実施例3におけるTi−Al−N膜断面の電子線回折像を図13に示し、比較例2におけるTi−Al−N膜断面の電子線回折像を図14に示す。
なお、図10〜14の(a)は、Ti−Al−N膜の電子線回折像であるのに対し、図10〜14の(b)は結晶性Al−N膜を含めた広範囲による電子線回折像である。また、図10〜14の(a)及び(b)の電子線回折像の上下方向は、基板面に垂直な方向、すなわちTi−Al−N膜の柱状結晶の成長方向と一致する。
上記断面TEM像から、上記比較例及び実施例では、いずれも緻密な柱状結晶化膜の結晶性Al−N膜およびTi−Al−N膜が形成されていることがわかる。
また、上記電子線回折像から、上記比較例及び実施例では、いずれも基板に垂直方向(図の上下方向)に、002と00−2との回折点が検出されていることから、基板に垂直な方向に、c軸配向性が高い結晶化膜が形成されていることがわかる。
しかしながら、比較例4の回折点は、円弧状となっている。すなわち、全ての結晶の配向が揃っているわけではなく、熱酸化膜付きSi基板に対して垂直方向から僅かにずれたc軸配向化膜が存在していることを示している。これは、Ti−Al−N膜がSiOからなる非晶質(アモルファス)の酸化膜上に形成されていることに起因する。
一方、上記実施例1〜3及び比較例1、2では、比較例4と比べると、回折点の円弧の長さが短くなっており、c軸配向性がより高くなっていることがわかる。結晶性Al−N膜も含めた広範囲における電子線回折像(図10〜14の(b))を見ると、第2金属窒化膜4のTi−Al−Nと第1金属窒化膜3の結晶性Al−Nとの電子線回折像が重なっている。エピタキシャル成長膜が形成されていると考えられ、窒素欠陥量の少ない良質な柱状結晶化膜が得られている。
特に、結晶性Al−N膜付きサファイア基板を用いて、結晶性Al−N表面をAr逆スパッタした後にTi−Al−N結晶化膜が成膜された実施例1,2では、多重散乱が多数検出されていることから、結晶方位が極めて揃った単結晶ライクなTi−Al−N結晶化膜が得られている。これは、Ti−Al−N膜が第1金属窒化膜である結晶性Al−N膜上に形成されており、その結晶性Al−N膜がウルツ鉱型結晶構造をもち、かつ、c軸配向性が極めて高いことに起因する。
特に、実施例1,2では、結晶性Al−N膜上のごくわずかな表面酸化膜も除去されており、Ar逆スパッタ工程がないときと比べて、サーミスタ用Ti−Al−N膜は、初期結晶成長時から、よりTi−Al−N膜結晶を窒化させることが可能であり、さらにc軸結晶配向性に優れたTi−Al−N膜をエピタキシャル成長させることができる。
結晶性Al−N膜と結晶性Ti−Al−N膜との界面にごくわずかな格子不整合があっても、Ar逆スパッタ工程を導入し、界面近傍にAr元素が導入されることで、Al−N膜表面の格子がわずかに歪み、界面の歪エネルギーが緩和されて、結晶格子が緩和されることで、結晶性Ti−Al−N膜は、界面での格子の連続性を保ったまま結晶成長すること(コヒーレント成長)が可能となる。
以上の結果から、実施例では、c軸配向で成長するTi−Al−N柱状結晶が多数存在することがわかり、比較例4に比べて結晶配向性に極めて優れたTi−Al−N膜が得られている。
特に、Ar逆スパッタによる第1金属窒化膜3の表面酸化膜を除去した実施例1,2では、結晶性Al−Nの第1金属窒化膜3に対して、窒素欠陥量が極めて少なく理想的な単結晶化膜であるTi−Al−Nの第2金属窒化膜4がエピタキシャル成長している。
以上の理由より、実施例のいずれも高い抵抗率及びB定数が得られている。組成比Al/(Ti+Al)=0.91の結果(表2)より、Ar逆スパッタにより第1金属窒化膜3の表面酸化膜を除去しAr元素が注入された本発明の実施例1は、除去をおこなっていない比較例1よりもさらに高B定数が得られている。さらに、組成比Al/(Ti+Al)=0.85の結果(表3)より、Ar逆スパッタにより第1金属窒化膜3の表面酸化膜を除去しAr元素が注入された本発明の実施例4,5は、第1金属窒化膜3の表面酸化膜の除去をおこなっていない比較例3よりもさらに高B定数が得られている。
なお、実施例3,比較例2の結晶性Al−N膜、Ti−Al−N膜ともに同一スパッタ装置で得られたスパッタで得られた膜である。結晶性Al−N膜は熱酸化膜付きSi基板だけでなく、ポリイミド樹脂等の絶縁性樹脂フィルム上への成膜が可能である。結晶性Al−N膜を形成することなく直接Ti−Al−N膜をポリイミドフィルム上へ形成したときと比べて、結晶性Al−Nスパッタ膜形成後に成膜されたTi−Al−N膜は、実施例と同様、c軸結晶配向性に優れたウルツ鉱型結晶化膜であることを確認している。ポリイミド樹脂と結晶性Al−Nの第1金属窒化膜3とTi−Al−Nの第2金属窒化膜4とで構成されるサーミスタセンサは、柔軟性を有し、曲げ前後に抵抗値変化が無いことを確認している。
<格子定数>
次に、組成比Al/(Al+Ti)を変えた際のウルツ鉱型結晶構造(六方晶、空間群P6mc)をもつTi−Al−Nの格子定数についてa軸長とc軸長とにおいて調べた結果を、図15及び図16に示す。なお、格子定数は、XRD結果より算出した。
これらの結果からわかるように、AlよりTiのイオン半径が大きく(表1参照)、AlサイトにTi元素が部分置換され、固溶されることに伴い(すなわち組成比Al/(Al+Ti)が減少することに伴い)、c軸長(柱状結晶の成長方向)はあまり変化していないのに対し、a軸長(柱状結晶の成長方向に垂直な方向、すなわち、基板に垂直方向)が増大し、結晶性Al−N膜との格子不整合が大きくなっている。しかしながら、本発明の組成範囲において、結晶性Al−N上にTi−Al−Nがエピタキシャル成長していることから、Tiよりイオン半径が小さい他のM元素(V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni及びCu)で置換されたMAl膜において、Ti−Al−N膜よりa軸長が小さくなり、結晶性Al−N膜との格子不整合度が小さくなることが考えられるので、MAl膜(V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni及びCu)においても、同様に結晶性Al−N膜上にエピタキシャル成長が可能である。
次に、本発明の実施例1について、STEM(走査透過型電子顕微鏡)を用いて、第1金属窒化膜3と第2金属窒化膜4との界面近傍、すなわちAl−N/Ti−Al−N界面近傍を観察した。Al−N/Ti−Al−N界面近傍のSTEM−HAADF像及びAl,Ti,Ar元素のEDS−map像を、図17に示す。なお、この画像は、結晶性Al−N単結晶化膜である第1金属窒化膜3の[110]方向から観察した像である。これら画像において、左側が結晶性Al−Nであり、右側がTi−Al−Nである。なお、結晶性Al−N表面の自然酸化膜は検出されなかった。Ar逆スパッタにより結晶性Al−N表面の酸化膜が除去された後、Ti−Al−N膜が形成されていることを示している。
これらの観察結果から、Al−N/Ti−Al−N界面には、Ar元素が介在していることがわかる。EDSライン分析の結果、Ar元素はAl−N側に分布を持つことを確認した。このAr元素はAr逆スパッタ時に注入されたものと考えられる。つまり、Al−N表面がArガスによる逆スパッタ表面処理により、Al−N表面の自然酸化膜が除去され、さらにAl−N表面に注入されたAr元素が存在したままTi−Al−Nが結晶成長されていることがわかる。なお、Ar/N混合ガス雰囲気による逆スパッタにおいても、同様にAr元素が介在する上記効果が得られることを確認している。
さらに、Al−N/Ti−Al−N界面近傍において原子分解能レベルで格子整合しているかを評価した。図18の(a)に実施例1のAl−N/Ti−Al−N界面近傍のSTEM−HAADF像を示す。この画像は、結晶性Al−N単結晶化膜である第1金属窒化膜3の[110]方向から観察した断面像である。輝度が高い方が、Al元素、Ti元素であり、輝度が低い方が、N(窒素)元素である。なお、Al元素、Ti元素は、結晶学的に同一のサイトを占有しており、図18中の輝度が高い原子位置に、Al元素、Ti元素が組成比Al/(Ti+Al)に応じた確率で存在している。なお、Ar元素は、界面近傍に不均一に存在するため、原子分解能レベルにおけるSTEM−HAADF像では観察されないが、前述の通り、界面近傍にAr元素が存在していることを確認している。図18の縦軸が膜厚方向で、界面近傍のTi−Al−Nは、反応性スパッタリングの初期結晶成長組織を示し、画像の下側から上側に向かって、結晶成長している。
なお、図18の(b)は、わかり易くするため、画像中で界面近傍のAl元素及びTi元素を大きな丸で示し、N元素を小さな黒丸で部分的に示したものである。
また、上記界面観察から示唆されたモデル像を、図19に示す。
これらから得られたAl−NとTi−Al−NとのC面の格子不整合度は、1%程度であり、XRD結果より算出された格子定数の結果と概ね一致する(Al−Nの格子定数:a=3.11Å,c=4.98Å,Ti−Al−N(組成比Al/(Ti+Al)=0.91)の格子定数:a=3.14Å,c=4.98Å)。
上記界面において、Al−N表面起因の自然酸化膜(非晶質)は観測されず、Ar逆スパッタにより、自然酸化膜が除去されたことを示している。また、原子像が取得できることから、界面近傍のAl−N結晶及びTi−Al−N結晶が、共に高い結晶性を持つことがわかる。さらに、Al−N結晶、Ti−Al−N結晶は共に高い結晶配向度(c軸配向)をもつことを示している。Al−NとTi−Al−Nとは格子整合度が高く、さらに、界面にAr元素が介在し、界面の歪エネルギーが緩和されて、結晶格子が緩和されることで、Al−N/Ti−Al−N界面において極めて高い格子整合性が実現されており、その結果、Ti−Al−Nは、反応性スパッタリングの初期結晶成長過程より、高い結晶性と高いc軸配向度とを持つウルツ鉱型結晶構造を形成していることがわかる。
これは、すなわち、結晶性Al−N膜と結晶性Ti−Al−N膜との界面にごくわずかな格子不整合があっても、Ar逆スパッタ工程を導入し、界面近傍にAr元素が導入されることで、Al−N膜表面の格子がわずかに歪み、界面の歪エネルギーが緩和されて、結晶格子が緩和されることで、結晶性Ti−Al−N膜は、界面での格子の連続性を保ったまま結晶成長すること(コヒーレント成長)が可能であることを示している。
さらに、Al−N/Ti−Al−N界面近傍において、Al−N結晶とTi−Al−N結晶との膜厚方向(結晶が成長する方向)の原子配列が同じであることがわかる。これは、Al−N結晶と、Ti−Al−N結晶とは、結晶内にて同じ極性(異種原子間において共有結合では、共有電子対は電気陰性度の大きい原子に偏るが、この電荷の偏りを極性という)を持つことを意味する。
ウルツ鉱型Al−Nの結晶構造は、四本のAl−N結合からなる四面体が頂点連結構造をとり、c軸方向に非対称な構造をとるので、基板上にc軸配向度が高い結晶化膜が形成されていたとしても膜厚方向(結晶が成長する方向)において、極性構造が異なる2種類のケースが考えられる。膜厚方向にc軸配向しながら結晶成長している場合、Al元素に対して1つの窒素元素が結晶成長方向に向いている場合(もしくは、3つの窒素元素が結晶成長方向と反対の基板方向に向いている場合)をAl極性といい、N(窒素)元素に対して1つのAl元素が結晶成長方向に向いている場合(もしくは、3つのAl元素が結晶成長方向と反対の基板方向に向いている場合)をN(窒素)極性という(なお、Al極性を、+c軸方向、(001)方向とよび、N極性を、−c軸方向、(00−1)方向と呼ぶこともある)。なお、ウルツ鉱型Al−Nの[110]方向からみると、Al極性は、図20の(a)のように見え、N極性は図20の(b)のように見える。なお、図20(a)、(b)の四角で囲まれた領域は、単位格子(ユニットセル)である。
Al極性とN極性とのうち、化学的に安定なのはAl極性であり、本発明の実施例においても、柱状結晶化膜中の原子分解能観察により、Al極性を確認しているが、基板界面近傍においては、基板の表面状態如何(酸化等)においては、初期結晶成長時にN極性を持つウルツ鉱型窒化物結晶が生じる場合がある。
図21(a)(b)はそれぞれ、Al−N結晶とTi−Al−N結晶とが共にAl極性であり、それぞれの結晶格子が整合した場合において、ウルツ鉱型結晶構造を[110]方向から見た、Al−N/Ti−Al−N界面近傍のAl−N結晶とTi−Al−N結晶との膜厚方向の原子配列を示す模式図であり、Al−N/Ti−Al−N界面における理想的な結晶格子のモデル像である。
図18に示すように、本実施例では、Al−N結晶とTi−Al−N結晶との膜厚方向の原子配列を詳しく見ると、界面近傍において、共にAl極性を持っていることがわかる。すなわち、Al極性面をもったAl−N表面から連続して、Al極性面をもったTi−Al−N結晶が結晶成長しており、その結果、Ti−Al−Nは、反応性スパッタリングの初期結晶成長過程より、高い結晶性と高いc軸配向度とを持つウルツ鉱型結晶構造を形成していると考えられる。
その理由として、もともと結晶性Al−N膜と結晶性Ti−Al−N膜との格子整合度が高いので、Al−N/Ti−Al−N界面は、わずかな格子不整合度(1%程度)にとどまっていることが考えらえる。さらに、Ar逆スパッタにより自然酸化膜が除去されたことと、もともと格子整合度の高いAl−N/Ti−Al−N界面近傍にAr元素が介在し、歪エネルギーが緩和され、結晶格子が緩和されることで、さらに極めて高い格子整合性が実現されたことが考えられる。
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
1…サーミスタ、2…基材、3…第1金属窒化膜、4…第2金属窒化膜、10…サーミスタセンサ

Claims (6)

  1. 基材上に形成されたサーミスタであって、
    前記基材上に形成された第1金属窒化膜と、
    前記第1金属窒化膜上に形成された第2金属窒化膜とを備え、
    前記第1金属窒化膜が、結晶性Al−Nであり、
    前記第2金属窒化膜が、一般式:M(但し、MはTi,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni及びCuの少なくとも1種を示すと共に、AはAl又は(Al及びSi)を示す。0.70≦y/(x+y)≦0.98、0.4≦z≦0.5、x+y+z=1)で示される金属窒化物からなり、
    前記第1金属窒化膜と前記第2金属窒化膜とが、共に結晶構造が六方晶系のウルツ鉱型の単相であると共に、前記第1金属窒化膜と前記第2金属窒化膜との界面に、Ar元素が介在していることを特徴とするサーミスタ。
  2. 請求項1に記載のサーミスタにおいて、
    前記第1金属窒化膜と前記第2金属窒化膜とが、共に膜厚方向にa軸配向度よりc軸配向度が大きい結晶配向をもつ膜であり、さらに、膜厚方向に互いに結晶の極性がAl極性となっていることを特徴とするサーミスタ。
  3. 請求項1に記載のサーミスタにおいて、
    前記第2金属窒化膜が、結晶性Ti−Al−Nであることを特徴とするサーミスタ。
  4. 請求項1から3のいずれか一項に記載のサーミスタの前記基材,前記第1金属窒化膜及び前記第2金属窒化膜と、
    前記第2金属窒化膜の上に形成された一対のパターン電極とを備えていることを特徴とするサーミスタセンサ。
  5. 請求項4に記載のサーミスタセンサにおいて、
    前記基材が、絶縁性フィルムであることを特徴とするサーミスタセンサ。
  6. 請求項1から3のいずれか一項に記載のサーミスタの製造方法であって、
    基材上に形成された結晶性Al−Nの前記第1金属窒化膜上に、M−A合金スパッタリングターゲット(但し、MはTi,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni及びCuの少なくとも1種を示すと共に、AはAl又は(Al及びSi)を示す。)を用いて窒素含有雰囲気中で反応性スパッタを行って前記第2金属窒化膜を成膜する成膜工程を有し、
    前記成膜工程前に、Ar含有雰囲気中で逆スパッタを行って前記第1金属窒化膜の表面に存在する表面酸化膜を除去すると共に前記第1金属窒化膜の表面近傍にAr元素が注入されることを特徴とするサーミスタの製造方法。
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