JP6769183B2 - 包装体、ポリビニルアルコール系フィルムの保管または輸送方法、ポリビニルアルコール系フィルム、および偏光膜 - Google Patents
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Description
そこで、本発明の解決すべき課題は、内部への水分の侵入を抑制することによって、ポリビニルアルコール系フィルムの変形や光学的ムラの発生を低減することができるポリビニルアルコール系フィルムの包装体を提供することである。
図1は、本発明の実施形態である包装体1の一部を拡大して示す模式断面図であり、図2は、包装体1におけるフィルムロール3の包装手順を示す斜視図である。
なお、図1では、解かりやすくするために、水蒸気バリアフィルム4とフィルムロール3および芯管2との間に間隔を空けて描かれているが、実際は、水蒸気バリアフィルム4はフィルムロール3および芯管2に密着するように巻き付けられるものである。
芯管2の材質としては、金属、プラスチック等が挙げられ、特に限定されない。金属としては、例えば、炭素鋼、高張力鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、ジュラルミン等のアルミニウム合金、銅、黄銅、青銅等が挙げられる。金属製の芯管2の表面または内側面には、軟質ポリ塩化ビニルや低密度ポリエチレンなとの樹脂層が積層されていてもよく、ニッケル、クロム、亜鉛、錫等のメッキ処理が施されていてもよい。プラスチックとしては、例えば、硬質ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエステル等が挙げられる。
芯管2の外径は、7.5cm以上が好ましく、8.5cm以上が特に好ましい。芯管2の外径が小さすぎると、フィルムに皺が発生する傾向がある。円筒状の芯管2の肉厚は、1.5〜20mmが好ましく、特に好ましくは2〜15mm、更に好ましくは3〜10mmである。芯管2のサイズは、一般的には、外径11〜31cm、内径10〜30cmである。
芯管2が突出部を有することによって、突出部両端にブラケットを設けたり、突出部両端を架台等に載置したりして、フィルムロール3が地面あるいは他のフィルムロール等と接触することなく宙に浮いた状態にすることができ、包装体1全体の荷重がフィルムロール3全体に掛かるのを防止し、フィルム同士のブロッキングや劣化を阻止することができる。また、突出部両端に水蒸気バリアフィルム4や後記の包装フィルムを固定することができる。
上記芯管2内部の両端部に吸水材6を設置する場合には、吸水材6の軸線方向の長さは、芯管2内に折り込まれた水蒸気バリアフィルム4の芯管2の両端から先端部までの長さ以上であることが好ましく、かかる長さを超えることが特に好ましい。
ミクロン単位の気孔を有するスポンジとしては、例えば、見掛け密度が0.01〜0.5g/cm3のものが挙げられる。
本発明における帯状のポリビニルアルコール系フィルムとしては、特に限定されず、例えば、後述する手法で製造されるポリビニルアルコール系フィルムが用いられる。かかるフィルムの幅は、大面積化の点から4m以上であることが好ましく、更なる大面積化の点から、特に好ましくは4.5m以上、破断回避の点から、更に好ましくは4.5〜6mである。
帯電防止剤としては、光学性能に悪影響を及ぼさない限り特に制限はなく、例えば、アルキルジエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、高級脂肪酸アルカノールアミド、ソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
本発明では特に、アルミニウム箔とポリオレフィンフィルムの積層フィルム(例えば、アルミニウム箔とポリエチレンフィルムの積層フィルム)、アルミニウム蒸着フィルムとポリオレフィンフィルム積層フィルム(例えば、アルミニウム蒸着ポリエステルフィルムとポリエチレンフィルムの積層フィルム)が有用であり、特には延伸ポリプロピレンフィルム/ポリエチレンフィルム/アルミニウム箔/ポリエチレンフィルムの構成よりなる積層フィルム、延伸ポリプロピレンフィルム/低密度ポリエチレンフィルム/アルミニウム箔の構成よりなる積層フィルム等が有用である。
例えば、フィルム表面に直径5mm程度の複数のラベルが並んでおり、それらラベルが、50%RH検出ラベル、60%RH検出ラベル、70%RH検出ラベル、80%RH検出ラベル、90%RH検出ラベルであり、到達した湿度に対応するラベルが、青色からピンクに変色したり、白色から青色に変色したり、青色が滲んだりすることによって、最高到達湿度を確認するものである。低湿度側は5%RHから、高湿度側は90%RHまでの湿度インジケータが市販されている。測定精度は±5%RH程度である。
本発明のポリビニルアルコール系フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液をキャスト型に流涎して製膜し、金属加熱ロールを用いて連続的に乾燥して得られる。
かかる重量平均分子量が小さすぎると、ポリビニルアルコール系樹脂から光学フィルムを製造する場合に充分な光学性能が得られにくい傾向があり、大きすぎると、ポリビニルアルコール系フィルムを延伸して偏光膜を形成する場合に延伸が困難となり、工業的な生産が難しくなる傾向がある。
なお、上記ポリビニルアルコール系樹脂の重量平均分子量は、GPC−MALS法により測定される重量平均分子量である。
ここで、本発明における平均ケン化度は、JIS K 6726に準じて測定されるものである。
かかるポリビニルアルコール系樹脂ウェットケーキを温水や熱水に溶解して、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液を調製する。
かかる水溶液の樹脂濃度が低すぎると乾燥負荷が大きくなるため生産能力に劣る傾向があり、高すぎると粘度が高くなりすぎて均一な溶解ができ難くなる傾向がある。
(A)キャスト法によりフィルムを製膜する工程
(B)製膜されたフィルムを加熱して乾燥する工程
(C)乾燥されたフィルムをスリットした後、ロール状に巻き取りフィルムロールを得る工程
(D)フィルムロールを水蒸気バリアフィルム(必要に応じて更に包装フィルム)で包装し包装体にする工程
以下、上記の工程(A)〜(D)について順次説明する。
工程(A)において、まず、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液は、通常、脱泡処理される。
脱泡方法としては、静置脱泡やベントを有する多軸押出機による脱泡などの方法が挙げられる。ベントを有する多軸押出機としては、通常は、ベントを有する二軸押出機が用いられる。
かかるポリビニルアルコール系樹脂水溶液の温度が低すぎると、流動不良となる傾向があり、高すぎると発泡する傾向がある。
かかる水溶液の粘度が低すぎると、流動不良となる傾向があり、高すぎると、流涎が困難となる傾向がある。
かかる吐出速度が低すぎると、生産性が低下する傾向があり、高すぎると、流涎が困難となる傾向がある。
かかる直径が小さすぎると、乾燥長が不足し、ドラム上で製膜されたフィルムの送り速度が低くなる傾向があり、大きすぎると輸送性が低下する傾向がある。
キャストドラムの幅が小さすぎると、生産性が低下する傾向がある。
かかる表面温度が低すぎると、乾燥不良となる傾向があり、高すぎると、発泡する傾向がある。
次いで、前記工程(B)について説明する。
工程(B)は、製膜されたポリビニルアルコール系フィルムを加熱して乾燥する工程である。
また、金属加熱ロールは、例えば、表面をハードクロムメッキ処理又は鏡面処理した、直径0.2〜2mのロールであり、通常2〜30本、好ましくは10〜25本を用いて乾燥を行うことができる。
工程(B)での乾燥が行なわれ、更に必要に応じて熱処理が行なわれたフィルムは、工程(C)を経て製品(本発明のポリビニルアルコール系フィルム)となる
工程(C)は、乾燥されたフィルムの両端をスリットで切り落とした後、フィルム幅よりも軸長の長い芯管(以下、ロールともいう。)に巻き取り、帯状のポリビニルアルコール系フィルムをロール状に巻き取る工程である。
ポリビニルアルコール系フィルムの長さは、大面積化の点から4km以上であることが好ましく、更なる大面積化の点から特に好ましくは4.5km以上、輸送重量の点から更に好ましくは5〜50kmである。
得られたフィルムロールは、前記工程(D)を経て包装体となる。
工程(D)は、前述したとおり、フィルムロールを水蒸気バリアフィルムで包装し、必要に応じて更に包装フィルムで包装して包装体にする工程である。得られた包装体は、保管後、出荷先に向けて輸送され、例えば、偏光膜の製造に用いられる。
フィルムロールが包装されてなる包装体は、芯管の両端突出部にブラケット(支持板)を設けたり、該両端突出部を架台に載置したりして支えられ、接地することなく、いわゆる宙に浮いた状態で保管や輸送が行われる。フィルムの幅が比較的小さい場合は通常、ブラケットが使用され、フィルムの幅が比較的大きい場合は通常、架台が使用される。
しかし、本発明の包装体では、かかる条件を逸脱する苛酷な雰囲気下に長時間さらされてもフィルムロールの巻ずれ等の心配がなく、顕著な効果が発揮されるのが大きな特徴である。
なお、偏光度は、一般的に2枚の偏光膜を、その配向方向が同一方向になるように重ね合わせた状態で、波長λにおいて測定した光線透過率(H11)と、2枚の偏光膜を、配向方向が互いに直交する方向になる様に重ね合わせた状態で、波長λにおいて測定した光線透過率(H1)より、下式にしたがって算出される。
〔(H11−H1)/(H11+H1)〕1/2
単体透過率は、分光光度計を用いて偏光膜単体の光線透過率を測定して得られる値である。
(1)ポリビニルアルコール系フィルムの光学的ムラ
長さ30cm×幅30cmのポリビニルアルコール系フィルムの試験片を切り出し、クロスニコル状態の2枚の偏光板(単体透過率43.5%、偏光度99.9%)の間に45°の角度で挟み、暗室で表面照度が14,000lxのライトボックスを用いて、透過モードで光学的ムラを観察し、以下の基準で評価した。
○・・・面内で濃淡は見られない。
×・・・濃淡が全面に確認できる。
得られた偏光膜の長さ方向の中央部を中心に長さ方向で3点、長さ4cm×幅4cmの試験片を幅方向にそれぞれ3点の合計9点を切り出し、自動偏光フィルム測定装置(日本分光(株)製:VAP−7070)を用いて、偏光度と単体透過率を測定し、それぞれの平均値を偏光膜の偏光度と単体透過率とした。
得られた偏光膜から、長さ30cm×幅30cmの試験片を切り出し、クロスニコル状態の2枚の偏光板(単体透過率43.5%、偏光度99.9%)の間に45°の角度で挟み、暗室で表面照度14,000lxのライトボックスを用いて、透過モードで色ムラを観察し、以下の基準で評価した。
○・・・色ムラなし
△・・・かすかに色ムラあり
×・・・色ムラあり
(フィルムロールの製造)
重量平均分子量142,000、ケン化度99.8モル%のポリビニルアルコール系樹脂1,000kg、水2,500kg、可塑剤としてグリセリン100kgを入れ、撹拌しながら140℃まで昇温して、樹脂濃度25重量%に濃度調整を行い、均一に溶解したポリビニルアルコール系樹脂水溶液を得た。
次に、該ポリビニルアルコール系樹脂水溶液を、二軸押出機に供給して脱泡した後、水溶液温度を95℃にし、T型スリットダイ吐出口から、表面温度90℃のキャストドラムに吐出および流延して製膜した。
次いで、得られたフィルムを複数の金属加熱ロールで乾燥し、フローティングドライヤーを用いて熱処理を行い、4m幅にスリットで切り落とした。最後に、外径23cm、内径20cm、長さ4.4mのアルミニウム製芯管に巻き取ることによって、含水率が4重量%の帯状のポリビニルアルコール系フィルム(幅4m、長さ5km、厚み40μm)が芯管に巻き付けられたフィルムロール(A)を得た。得られたフィルムロール(A)の先端部からポリビニルアルコール系フィルムの試験片を切り出し、光学的ムラを観察した。結果は表1に示されるとおりである。
水蒸気バリアフィルムとして、アルミニウム蒸着ポリエステルフィルム(アルミニウムを50nm蒸着したポリエチレンテレフタレートフィルム、12μm厚)とポリエチレンフィルム(25μm厚)の積層フィルムを用意し、包装体内面となるポリエチレン側に湿度インジケータ(株式会社藤田電気製作所社製、「WATCHLOGGER KT−275」)を貼り付けた。
次いで、23℃、50%RHの環境下で、得られたフィルムロール(A)に上記水蒸気バリアフィルムを、ポリエチレンフィルムを内側にして、二重巻きにした。水蒸気バリアフィルムにおける芯管の軸線方向側端部を、ゴムバンドを用いて、芯管突出部(両端各0.2m)の端部外周に固定して、さらに、水蒸気バリアフィルムの余剰部分を、芯管の端部を包むように、芯管の内部に折り込んだ。なお、芯管の片側端部から折り込まれた水蒸気バリアフィルム部分の長さは0.4mである。
最後に、芯管内部に、芯管両端部より、吸水材として、外径20cm、内径10cm、長さ0.5mの円筒状ポリビニルアルコールスポンジ(アイオン社製PVAスポンジ)を、吸水材端面と芯管端が一致するように2本挿入して、包装体(B)を得た。かかる吸水材1本の重量は2.8kgである。
芯管のフィルムロールからの突出部を架台に載せて、得られた包装体(B)を接地することなく宙に浮いた状態とし、60℃、90%RHで7日間、続いて10℃、10%RHで7日間、続いて25℃、50%RHで7日間保管した。保管後の包装体(B)を解包し、湿度インジケータで包装体(B)内部空間の湿度履歴を確認したところ、最低湿度40%RH、最高湿度60%RHであった。保管後のフィルムロール(A)に巻きずれは起きていなかった。また、フィルムロール(A)先端部(フィルム端部から20mの部分)におけるフィルムの光学的ムラを測定したところ、保管前との違いは確認できなかった。
保管後のフィルムロール(A)先端部(フィルム端部から20mの部分)から、幅(TD方向)30cm×長さ(MD方向)30cmのポリビニルアルコール系フィルムの試験片を切り出し、水温25℃の水槽に浸漬して1.7倍に延伸した。次に、ヨウ素0.5g/L、ヨウ化カリウム30g/Lよりなる28℃の水溶液中に浸漬して、染色しながら1.6倍に延伸し、連続してホウ酸40g/L、ヨウ化カリウム30g/Lの組成の水溶液(55℃)に浸漬して2.1倍に一軸延伸してホウ酸処理を行なった。その後、ヨウ化カリウム水溶液で洗浄を行い、乾燥して総延伸倍率5.8倍の偏光膜を得た。得られた偏光膜の偏光特性を表2に示す。
(包装体の製造)
吸水材として、外径20cm、内径10cm、長さ0.5mの円筒状ウレタンスポンジ(アイオン社製ポリウレタンスポンジ)を用いる以外は、実施例1と同様にして、包装体の製造、保管、偏光膜の製造を行った。かかる吸水材1本の重量は2.5kgである。結果を表1と表2に示す。
吸水材を用いないこと以外は実施例1と同様にして、包装体の製造、保管、偏光膜の製造を行った。結果を表1と表2に示す。
また、本発明の包装体から製造された偏光膜は、製造に用いたポリビニルアルコール系フィルムの変形や光学性能の低下が抑止されているので、偏光度や単体透過率が高く、色ムラが起きにくい。
2:芯管
3:フィルムロール
4:水蒸気バリアフィルム
5:接着テープ
6:吸水材
Claims (8)
- 帯状のポリビニルアルコール系フィルムを芯管に巻き付けたフィルムロールを水蒸気バリアフィルムで包装してなる包装体であって、
前記芯管の軸長がフィルム幅よりも長く、前記水蒸気バリアフィルムにおける前記芯管の軸線方向側の端部が、前記フィルムロールから突出した前記芯管の内部に折り込まれることによって前記芯管の端部を包むように巻き付けられており、
さらに、前記芯管の内部に吸水材が配置され、前記吸水材はミクロン単位の気孔を有するスポンジ状であることを特徴とする包装体。 - 前記吸水材は、外径10〜30cmの円柱状もしくは円筒状であり、前記吸水材の外周部が前記芯管の内周部に密着するように配置されていることを特徴とする請求項1記載の包装体。
- 前記吸水材は、樹脂製であり、重量が20kg以下であることを特徴とする請求項1または2記載の包装体。
- 前記吸水材は、ポリビニルアルコールスポンジ、またはウレタンスポンジであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の包装体。
- 前記フィルムロールと共に、湿度インジケータが包装されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の包装体。
- 前記ポリビニルアルコール系フィルムが、幅4m以上、長さ4km以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の包装体。
- 前記ポリビニルアルコール系フィルムの厚さが、5〜40μmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の包装体。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の包装体を用いて、前記ポリビニルアルコール系フィルムの保管および/または輸送を行うことを特徴とするポリビニルアルコール系フィルムの保管または輸送方法。
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