JP6768369B2 - 建物健全度評価システムおよび建物健全度評価方法 - Google Patents

建物健全度評価システムおよび建物健全度評価方法 Download PDF

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Description

本発明は、地震発生後の建物の健全度を評価する建物健全度評価システムおよび建物健全度評価方法に関する。
近年、地震発生後の建物の健全度を評価する方法について関心が高まっている。そして、層間変位計測部が求めた層間変位と、固有周期計測部が求めた固有周期とにより、建物の健全度を評価する建物安全性検証システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2014−134436号公報
ところで、高層や鉄骨造などの建物では、建物の固有周期が比較的長いため、建物の層間変形を比較的精度良く検出することができる。また、高層や鉄骨造などの建物では、建物の層間変形と建物の損傷との関係が比較的明確である。このため、層間変形の大きさを検出することで、建物の健全度を比較的精度良く評価することができる。
一方で、例えば中低層の建物や、鉄筋コンクリート造のような一部の建物では、例えば建物の固有周期が比較的短いため、建物の層間変形を精度良く検出することが困難なことがある。また、上記のような一部の建物では、例えば壁やブレースのような構造材が多いため、層間変形のみをもって建物の健全度を評価することが困難な場合がある。そのため、特許文献1に記載の建物安全性検証システムは、一部の建物に対しては適用が難しい場合があった。
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、より汎用性が高い建物健全度評価システムおよび建物健全度評価方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決するための本発明の一態様は、建物に設けられた加速度計測部により計測された計測データに基づき、入力地震動に対する応答度として前記入力地震動に対する前記建物の応答スペクトルを導出する応答度導出部と、前記加速度計測部により計測された計測データに基づき、前記建物の変形度として層間変形角を導出する変形度導出部と、前記加速度計測部により計測された計測データに基づき、前記建物の塑性化度を導出する塑性化度導出部と、少なくとも、前記応答度導出部により導出された前記応答スペクトルに基づいて導出された前記応答度の大きさをレベル分けした第1判定結果と、前記変形度導出部により導出された前記層間変形角に基づいて導出された前記建物の変形度の大きさをレベル分けした第2判定結果と、前記塑性化度導出部により導出された前記塑性化度に基づいて導出された前記建物の揺れ方の変化の大きさをレベル分けした第3判定結果とを生成し、前記第1判定結果から前記第3判定結果までを組み合わせて判定するための組合せ判定基準を用いて判定し、前記判定した結果に基づき、前記建物の健全度を評価する健全度評価部と、を備えることを特徴とする建物健全度評価システムである。
また、上記の建物健全度評価システムにおいて、前記応答度導出部は、前記応答度として、前記入力地震動に対する前記建物の前記応答スペクトルを導出しまたは前記入力地震動に対する前記建物の前記応答スペクトルおよび前記応答スペクトルに基づく前記建物の応答値の両方を導出し、前記健全度評価部は、前記応答度導出部により導出された前記応答スペクトルの大きさと、前記応答値の大きさとの何れかに基づいて導出された前記応答度の大きさをレベル分けして前記第1判定結果を生成する、ことを特徴とする。
また、上記の建物健全度評価システムにおいて、前記応答度導出部は、前記応答スペクトルとして、前記入力地震動に対する前記建物の加速度応答スペクトルを水平方向の2軸の成分に分けて導出し、または、前記応答値として、前記入力地震動に対する前記建物の加速度応答値を前記2軸の成分に分けて導出し、前記健全度評価部は、前記応答度導出部によって前記2軸の成分に分けて導出された前記加速度応答スペクトルの大きさと、前記2軸の成分に分けて導出された前記加速度応答値の大きさとの何れかに基づいて前記第1判定結果を生成する、ことを特徴とする。
また、上記の建物健全度評価システムにおいて、前記塑性化度導出部は、前記塑性化度として、前記加速度計測部により計測された計測データに基づき、前記建物に関する等価減衰定数を導出する、ことを特徴とする。
また、本発明の一態様は、建物に設けられた加速度計測部により計測された計測データに基づき、入力地震動に対する応答度として前記入力地震動に対する前記建物の応答スペクトルを導出し、前記加速度計測部により計測された計測データに基づき、前記建物の変形度として層間変形角を導出し、前記加速度計測部により計測された計測データに基づき、前記建物の塑性化度を導出し、少なくとも、前記応答スペクトルに基づいた前記応答度の大きさをレベル分けした第1判定結果と、前記層間変形角に基づいた前記建物の変形度の大きさをレベル分けした第2判定結果と、前記塑性化度に基づいた前記建物の揺れ方の変化の大きさをレベル分けした第3判定結果とを生成し、前記第1判定結果から前記第3判定結果までを組み合わせて判定するための組合せ判定基準を用いて判定し、前記判定した結果とに基づき、前記建物の健全度を評価する、ことを特徴とする建物健全度評価方法である。
本発明によれば、より汎用性が高い建物健全度評価システムおよび建物健全度評価方法を提供することができる。
実施形態の建物健全度評価システムの構成例を示す図である。 実施形態の加速度応答スペクトルの一例を示すグラフである。 実施形態の等価減衰定数の変化を示すグラフである。 実施形態の等価減衰定数の導出方法を模式的に示すグラフである。 実施形態の健全度の評価に用いられる判定テーブルの一例を示す図である。 実施形態の情報通知部に表示される情報の一例を示す図である。 実施形態の建物健全度評価方法の処理流れの一例を示すフローチャートである。
以下、実施形態の建物健全度評価システムおよび建物健全度評価方法について説明する。本実施形態の建物健全度評価システム1は、例えば、地震発生後に建物の健全度を評価するシステムであって、揺れの大きさを示す判定指標(例えば入力地震動に対する応答度)、建物の変形の大きさを示す判定指標(例えば建物の変形度)、および建物の揺れ方の変化の大きさを示す判定指標(例えば建物の塑性化度)の3つの判定指標に基づくマトリックス形式の判定手法により建物の健全度を評価するシステムである。
なお本願で言う「建物」とは、ビルや家屋に限らず、橋梁やその他の構造物でもよい。また本願で言う「建物の層」とは、建物の変形性状を考える上で一体として取り扱うことができる建物の一部分を意味する。「建物の層」は、例えば、建物の各階(各階の床、梁、柱、および壁などで構成される部分)を意味する。
図1は、本実施形態の建物健全度評価システム1の構成例を示す図である。
図1に示すように、建物健全度評価システム1は、例えば、センサ群10、判定処理部20、データベース(DB)30、および情報通知部40を備える。ここで、センサ群10は、健全度の評価対象となる建物100に設けられている。一方で、判定処理部20、データベース30、および情報通知部40は、建物100に設けられてもよく、建物100の外部(現場から離れたデータ監視室など)に設けられてもよい。
まず、センサ群10について説明する。
図1に示すように、センサ群10は、例えば、加速度計測部11を含む。
加速度計測部11は、複数の加速度センサSを含む。複数の加速度センサSの各々は、建物100に入力される地震動(以下、入力地震動と称する)を加速度データとして計測する。ここで、建物100は、例えば複数の層Fを有する。本実施形態では、複数の加速度センサSは、建物100の複数の層Fのなかでいくつかの層F(代表階)に設けられている。言い換えると、加速度センサSは、建物100の複数の層Fに対してとびとびに(例えば2層や3層に対して1つずつ)設けられている。なお、加速度センサSは、建物100の全ての層Fに設けられてもよい。また上記に代えて、加速度センサSは、建物100の最下層F(または最下層F近傍の層F)と最上層F(または最上層F近傍の層F)とにのみ設けられてもよい。
本実施形態では、複数の加速度センサSは、加速度センサS、S、Sを含む。加速度センサSは、建物100の基礎部分を含む建物100の最下層F(または最下層F近傍の層F)に設けられ、建物100の最下層F(または最下層F近傍)における加速度を計測する。加速度センサSは、建物100の任意の中間層F(最下層Fおよび最上層F以外の層)に設けられ、建物100の中間層Fにおける加速度を計測する。加速度センサSは、建物100の最上層F(または最上層F近傍の層F)に設けられ、建物100の最上層F(または最上層F近傍)における加速度を計測する。なお、建物100の最上層Fとは、例えば建物100の屋上である。
なお以下では、建物100の「最下層F」および「最下層F近傍の層F」を纏めて「最下層F」と称する。また、建物100の「最上層F」および「最上層F近傍の層F」を纏めて「最上層F」と称する。
センサ群10は、例えば建物100の内部に判定処理部20が設けられた場合、ケーブルや無線通信などを介して、センサ群10により計測された計測データを判定処理部20に送信する。また、センサ群10は、例えば建物100の外部に判定処理部20が設けられた場合、インターネットによる情報通信網や無線通信などを介して、センサ群10により計測された計測データを判定処理部20に送信する。
次に、判定処理部20の説明に先立ち、情報通知部40について説明する。
情報通知部40は、例えば建物100の各層Fに設けられている。情報通知部40は、ケーブルや無線通信、またはインターネットによる情報通信網などを介して、判定処理部20から送られた情報を受信可能である。例えば、情報通知部40は、建物100の利用者が視認可能な表示画面を有し、判定処理部20から送られた判定結果などを表示する。なお上述したように、情報通知部40は、建物100の外部に設けられてもよい。
次に、判定処理部20およびデータベース30について説明する。
図1に示すように、判定処理部20は、例えば、固有周期導出部21、応答度導出部22、変形度導出部23、塑性化度導出部24、健全度評価部(健全度判定部)25、および情報通知制御部26を有する。なお、固有周期導出部21、応答度導出部22、変形度導出部23、塑性化度導出部24、健全度評価部25、および情報通知制御部26のうち一部または全部は、例えば、プログラムがCPUのようなプロセッサによって実行されることで実現されるソフトウェア機能部でもよく、または同様の機能を有するLSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのハードウェアであってもよく、またはソフトウェア機能部とハードウェアとによって実現されてもよい。なお、上記プログラムは、例えば建物健全度評価システム1に含まれるストレージデバイスに格納されている。また、データベース30は、上記ストレージデバイスによって実現されてもよく、インターネットによる情報通信網などを通じてアクセス可能な外部デバイスによって実現されてもよい。
まず、固有周期導出部21について説明する。
固有周期導出部21は、センサ群10により計測された計測データに基づき、建物100の固有周期を導出する。例えば本実施形態では、固有周期導出部21は、建物100の最下層Fの加速度センサSにより計測された計測データと、建物100の最上層Fの加速度センサSにより計測された計測データとを読み込む。そして、固有周期導出部21は、建物100の最下層Fの加速度センサSにより計測された計測データ(絶対加速度の計測データ)をフーリエ変換(周波数解析)することで、建物100の最下層Fにおける加速度フーリエスペクトルを導出する。また、固有周期導出部21は、建物100の最上層Fの加速度センサSにより計測された計測データ(絶対加速度の計測データ)をフーリエ変換することで、建物100の最上層Fにおける加速度フーリエスペクトルを導出する。そして、固有周期導出部21は、例えば、建物100の最上層Fにおける加速度フーリエスペクトルを建物100の最下層Fにおける加速度フーリエスペクトルで除算して平滑化することで、最上層Fと最下層Fとのフーリエスペクトル比を導出する。そして、固有周期導出部21は、最上層Fと最下層Fとのフーリエスペクトル比に基づき、建物100の固有周期を導出する。例えば、固有周期導出部21は、最上層Fと最下層Fとのフーリエスペクトル比において最大値をとる周波数の逆数を、建物100の固有周期として導出する。
なお、固有周期導出部21による建物100の固有周期の導出方法は、上記例に限定されない。例えば、固有周期導出部21は、加速度センサSによって建物100の最上階Fにおける微振動(常時微動)を計測し、この微振動に基づいて固有周期を導出してもよい。また、固有周期導出部21は、建物100が損傷した場合における固有周期伸張の影響を考慮し、前記導出された固有周期に対して予め設定された補正が行われた値を、建物100の固有周期として導出してもよい。
また本願で言う「固有周期に関する情報」とは、上述のように加速度計測部11による計測データに基づいて導出される値に代えて、建物100の構造材や設計内容に基づく構造計算(例えば数値解析)などによって予め導出された固有周期の理論値でもよい。このような理論値は、例えばデータベース30に事前に格納されている。すなわち、判定処理部20の各機能部は、データベース30を参照することで、建物100の固有周期の値を取得してもよい。この場合、固有周期導出部21は、省略されてもよい。
次に、応答度導出部22について説明する。
応答度導出部22は、加速度計測部11により計測された計測データ(絶対加速度の計測データ)に基づき、入力地震動に対する応答度を導出する。なお本願で言う「応答度」とは、入力地震動に対する応答スペクトルおよび応答値の少なくとも一方を含む。
例えば本実施形態では、応答度導出部22は、建物100の任意の1つの層Fの加速度センサS(例えば最下層Fの加速度センサS)により計測された計測データを読み込む。そして、応答度導出部22は、上記加速度センサSにより計測された計測データ(絶対加速度の計測データ)に対して時刻歴応答解析を行うことで、入力地震動に対する加速度応答スペクトルを導出する。すなわち、応答度導出部22は、例えば加速度センサSにより計測された計測データに基づき、一自由度振動系において固有周期を様々に変えながら応答計算を行うことで加速度応答スペクトルを導出する。
図2は、応答度導出部22により導出される加速度応答スペクトルの一例を示すグラフである。なお本願で言う「応答スペクトル」とは、加速度応答スペクトルに限らず、速度応答スペクトルや、変位応答スペクトルでもよい。すなわち、応答度導出部22は、加速度応答スペクトルに代えて、または加速度応答スペクトルに加えて、入力地震動に対する速度応答スペクトルや、入力地震動に対する変位応答スペクトルを導出してもよい。
そして、本実施形態の応答度導出部22は、導出された加速度応答スペクトルと、建物100の固有周期に関する情報(例えば固有周期導出部21により導出された建物100の固有周期)とに基づき、入力地震動に対する加速度応答値(例えば建物100の固有周期に対応した加速度応答値)を導出する。なお、建物100の固有周期に対応した加速度応答値とは、例えば加速度応答スペクトルのなかで、建物100の固有周期に対応した加速度応答値の値である(図2参照)。そして、応答度導出部22は、導出された加速度応答値を、揺れの大きさを示す判定指標として健全度評価部25に出力する。
なお本願で言う「応答値」とは、加速度応答値に限らず、速度応答値や、変位応答値でもよい。すなわち、応答度導出部22は、導出された速度応答スペクトルまたは変位応答スペクトルと、建物100の固有周期に関する情報とに基づき、入力地震動に対する速度応答値や変位応答値(例えば建物100の固有周期に対応した速度応答値や変位応答値)を導出してもよい。そして、応答度導出部22は、導出された速度応答値や変位応答値を、揺れの大きさを示す判定指標として健全度評価部25に出力してもよい。
なお、応答度導出部22は、応答スペクトルを導出することなく、加速度計測部11により計測された計測データと、建物100の固有周期に関する情報とに基づき、入力地震動に対する各種の応答値を直接に導出し、その導出された応答値を揺れの大きさを示す判定指標として健全度評価部25に出力してもよい。また、応答度導出部22は、各種の応答値に代えて、導出された応答スペクトル(加速度応答スペクトルや、速度応答スペクトル、変位応答スペクトル)そのものを、揺れの大きさを示す判定指標として健全度評価部25に出力してもよい。
次に、変形度導出部23について説明する。
変形度導出部23は、例えば加速度計測部11により計測された計測データ(絶対加速度の計測データ)に基づき、建物100の変形度(例えば層間変形度)を導出する。なお本願で言う「変形度」とは、建物100の層間変位および層間変形角の少なくとも一方を含むが、これに限らず、建物100の変形を伴う壁の傾斜角(例えば建物の基礎に対する壁の傾斜角)やねじれなどでもよい。なお本願で言う「変形度」とは、弾性変形を含む建物100の変形の程度を意味する。
例えば本実施形態では、変形度導出部23は、2つ以上の加速度センサSにより計測された計測データを読み込む。そして、変形度導出部23は、各加速度センサSにより計測された計測データ(絶対加速度の計測データ)に含まれる加速度を2回積分することで、各加速度センサSが設けられた層Fの加速度方向の絶対変位(例えば水平方向の絶対変位)を導出する。そして、変形度導出部23は、加速度センサSが設けられた2つの層Fの変位量の差に基づき、それら2つの層Fの間の層間変位を導出する。なお、上記2つの層Fは、例えば加速度センサSが設けられた複数の層Fのなかで互いに隣り合う2つの層Fであるが、これに限らず、加速度センサSが設けられた複数の層Fのなかで1つ以上離れた2つの層Fでもよい。例えば本実施形態の変形度導出部23は、全ての加速度センサSにより計測された計測データを読み込み、加速度センサSが設けられた全ての層Fのなかで互いに隣り合う全ての層Fの間の層間変位をそれぞれ導出する。
また本実施形態では、変形度導出部23は、2つの層Fの間の導出された層間変位を、それら2つの層Fの間の鉛直方向の距離で除算することで、それら2つの層Fの間の層間変形角を導出する。なお、上記計算に用いる「2つの層Fの間の距離」を示す情報は、例えば予めデータベース30に格納されている。例えば本実施形態では、変形度導出部23は、加速度センサSが設けられた全ての層Fの間の層間変形角を導出する。そして、変形度導出部23は、導出された層間変位および層間変形角の少なくとも一方を、建物100の変形の大きさを示す判定指標として健全度評価部25に出力する。
次に、塑性化度導出部24について説明する。
塑性化度導出部24は、加速度計測部11により計測された計測データ(絶対加速度の計測データ)に基づき、建物100の塑性化度(例えば建物100に関する等価減衰定数)を導出する。なお本願で言う「塑性化度」とは、建物100の塑性変形の程度を意味する。また本願で言う「建物に関する等価減衰定数」とは、建物の少なくとも一部における等価減衰定数を意味し、例えば、加速度センサSが設けられた2つの層Fの間の等価減衰定数(例えば図6中に示すブロックBの等価減衰定数)を意味する。なお、塑性化度導出部24により導出される等価減衰定数は、例えば加速度センサSが設けられた複数の層Fのなかで互いに隣り合う2つの層Fの間の等価減衰定数であるが、これに限らず、加速度センサSが設けられた複数の層Fのなかで1つ以上離れた2つの層Fの間の等価減衰定数でもよい。例えば本実施形態の塑性化度導出部24は、全ての加速度センサSにより計測された計測データを読み込み、加速度センサSが設けられた全ての層Fのなかで互いに隣り合う全ての層Fの間の等価減衰定数をそれぞれ導出する。また本願で言う等価減衰とは、例えば瞬間入力等価減衰を意味する。
図3は、等価減衰定数の変化を示すグラフである。ここで、図3中の(a)は、建物100に損傷がない場合における変形量(例えば層間変位)と加速度との関係を示す。図3中の(b)は、建物100に損傷が生じた場合における変形量と加速度との関係を示す。
図3に示すように、建物100に損傷がない場合、変形量と加速度との関係は、直線状の比例関係にある。一方で、建物100に損傷が生じた場合、変形量と加速度との関係は、比例関係ではなくなり、履歴カーブが膨らんだ形状になる。すなわち、建物100に損傷が生じた場合、履歴カーブで囲まれる面積が増加する。この面積の増加量は、入力地震波に対するエネルギー吸収量に相当する。そこで本実施形態では、上記面積の増加量(履歴カーブの膨らみ具合)を、建物100に関する等価減衰定数として指標化する。
図4は、等価減衰定数の導出方法を模式的に示すグラフである。
例えば、等価減衰定数をheq、nステップの加速度をA、変形量(相対変形)をD、nステップの変形量の増分をΔDとすると、下記の式(1)が成り立つ。ここで、ΔWは、履歴カーブに囲まれる面積である。ΔWは、例えば、固定周期の1サイクル分である。なお、ΔWを固定周期の1サイクル分とする場合は、入力地震動の全時間内におけるΔWの最大値を採用する。ここで、1サイクルとされる固有周期の値は、固有周期伸張の影響を考慮して予め設定された補正が行われた固有周期の値でもよい。また、Weは、図4中の斜線の三角形の面積である。Weの計算における加速度と変形量の値は、それぞれの最大値としてもよい。この場合、加速度と変形量の値は、同時刻の値でなくてもよい。また、加速度と変形量の値は、例えば正負の平均値が採用されてもよい。
Figure 0006768369
次に、本実施形態の塑性化度導出部24の具体的な処理の一例について説明する。
本実施形態の塑性化度導出部24は、まず、変形度導出部23と同様に、加速度計測部11により計測された計測データ(絶対加速度の計測データ)を読み込む。そして、塑性化度導出部24は、各加速度センサSにより計測された計測データに含まれる加速度を2回積分することで、各加速度センサSが設けられた層Fの加速度方向の変位を導出する。そして、塑性化度導出部24は、加速度センサSが設けられた2つの層Fの変位量の差に基づき、それら2つの層Fの間の層間変位を導出する。上記2つの層Fは、例えば加速度センサSが設けられた複数の層Fのなかで互いに隣り合う2つの層Fであるが、これに限らず、加速度センサSが設けられた複数の層Fのなかで1つ以上離れた2つの層Fでもよい。例えば、本実施形態の塑性化度導出部24は、全ての加速度センサSにより計測された計測データを読み込み、加速度センサSが設けられた全ての層Fのなかで、互いに隣り合う全ての層Fの間の層間変位をそれぞれ導出する。なお、塑性化度導出部24は、自ら計算することに代えて、変形度導出部23により導出された層間変位を示す情報を、変形度導出部23から受け取ってもよい。図4中のグラフにおける横軸(変形量)はこの層間変位に相当する。
また、塑性化度導出部24は、加速度計測部11により計測された加速度の内、塑性化度算出対象層より上方の層Fで検出された加速度の値から演算処理した値を用いる。図4中のグラフにおける縦軸はこの演算処理により得られた加速度に相当する。塑性化度を導出する場合、本来であれば、縦軸として各層Fの復元力を使用したいところであるが、それを直接的に計測することは困難であるため、加速度値にて代替している。ここで、各層Fの復元力は算出対象層よりも上方の層Fに作用した全ての地震力の累積和にて近似され、各層Fに作用する地震力は、各層Fの加速度と当該層Fの質量の積である。層Fの質量が正確に判明している場合は前述の方法にて算出した復元力を縦軸とすることが可能であるが、正確に判明していない場合は面積見合いにて質量を想定し、算出することも可能である。また、復元力は本来であれば、加速度に質量を乗じた単位となるが、本方法で最終的に求めたいのは(1)式による等価減衰定数であり、これを算出する上では、質量は分子分母の双方に現れ、最終的には相殺されるため含めていない。さらに、地震力(慣性力)の正負の向きと加速度の正負の向きは逆であるため、復元力の代替とする加速度についても符号を反転させる。このように、塑性化度導出上の加速度は、算出対象層よりも上方の層Fで検出された加速度の重み付き累積和の負の値となる。なお、等価減衰定数の導出は、上記の定義による加速度の重み付き累積和の負の値に代えて、計測された加速度より算出される別の値が用いられてもよい。
そして、塑性化度導出部24は、例えば、導出された層間変位と、導出された加速度とに基づき、上述した式(1)による計算を行うことで、加速度センサSが設けられた全ての層Fのなかで互いに隣り合う全ての層Fの間の等価減衰定数を導出する。
例えば本実施形態では、塑性化度導出部24は、建物100の固有周期に関する情報(例えば固有周期導出部21により導出された建物100の固有周期)に基づき、建物100の固有周期の1サイクル毎(すなわち、履歴カーブの1サイクル毎)に対して等価減衰定数の値を導出する。なお、等価減衰定数の値の導出は、入力地震動に対してリアルタイムで行われてもよく、入力地震動が収まった後に纏めて行われてもよい。そして、塑性化度導出部24は、複数の固有周期の期間を通じて見た場合(例えば入力地震動の全時間を通じて見た場合)の等価減衰定数の最大値を、健全度の評価に用いられる等価減衰定数として導出する。なお、塑性化度導出部24は、固有周期の1サイクル毎に等価減衰定数の値を導出することに代えて、建物100の固有周期に関する情報を使用せずに例えば入力地震動の全期間の履歴カーブの情報に基づいて等価減衰定数の最大値を導出し、その導出された等価減衰定数の最大値を、健全度の評価に用いられる等価減衰定数としてもよい。そして、塑性化度導出部24は、導出された等価減衰定数を、建物100の揺れ方の変化を示す判定指標として健全度評価部25に出力する。なお、等価減衰定数の最大値の導出方法は、上記例に限定されない。
次に、健全度評価部25について説明する。
健全度評価部25は、例えば、応答度導出部22により導出された入力地震動に対する応答度(例えば応答スペクトルまたは応答値)、変形度導出部23により導出された変形度(例えば層間変位または層間変形角)、および塑性化度導出部24により導出された塑性化度(例えば等価減衰定数)の3つの判定指標に基づき、建物100の健全度を判定する。なお各判定に用いられる基準スペクトルや基準値(閾値)は、例えば建物100ごとに設定される。
詳しく述べると、健全度評価部25は、応答度導出部22により導出された応答度と、予め設定された基準応答度とを比較する。例えば、健全度評価部25は、応答度導出部22により導出された応答値と、予め設定された複数の基準値(閾値)とを比較する。そして、健全度評価部25は、複数の基準値に対する、応答度導出部22により導出された応答値の大きさに基づき、揺れの大きさを複数のレベル(例えば小、中、大)に分類する。また上記に代えて、健全度評価部25は、応答度導出部22により導出された応答スペクトルと、予め設定された基準スペクトルとを比較してもよい。そして、健全度評価部25は、基準スペクトルに対する、応答度導出部22により導出された応答スペクトルの大きさの程度に基づき、揺れの大きさを複数のレベル(例えば小、中、大)に分類してもよい。
なお、基準スペクトルは、例えば建物設計用の応答スペクトル、またはそれと同等の意味を持つスペクトルである。基準スペクトルは、例えば、告示波スペクトル(超高層建物、免震建物など)、許容応力度のような計算相当のスペクトル(中低層の一般的な耐震建物など)、または限界耐力計算のスペクトルなどであるが、これらに限定されない。また、例えば新耐震設計法の考え方において、標準せん断力係数Coが0.2と1.0の2段階で設定されてもよく、地震地域係数Zや振動特性係数Rtなどが加味されてもよい。また、設計図書などにより余裕度があることが確認された場合、その余裕度が反映されてもよい。これらの考え方は、以下の各判定においても同様である。
また、健全度評価部25は、変形度導出部23により導出された変形度(例えば層間変位または層間変形角)と、予め設定された複数の基準値(閾値)とを比較することで、建物100の変形の大きさを複数のレベル(例えば小、中、大)に分類する。例えば、層間変形角の閾値の一つは、この値を超える層間変形角が発生した場合、構造躯体の部材が変形などの損傷を受ける程の大きさ(破断などを含め、構造躯体の部材が変形した状態から元に戻らない状態となる塑性変形の限界を示す大きさ)に設定される。
また、健全度評価部25は、塑性化度導出部24により導出された塑性化度(例えば等価減衰定数)と、予め設定された複数の基準値(閾値)とを比較することで、建物100の揺れ方の変化の大きさを複数のレベル(例えば小、中、大)に分類する。
なお、上述の基準スペクトルおよび各種の基準値(閾値)は、基準値情報31として、データベース30に格納されている。健全度評価部25は、データベース30を参照することで、基準スペクトルおよび各種の基準値(閾値)の情報を取得することができる。
そして、健全度評価部25は、それぞれ複数のレベルに分類された揺れの大きさ、建物100の変形の大きさ、および建物100の揺れ方の変化の大きさの組み合わせにより、建物100の健全度(例えば建物100の継続使用の可否など)を評価する。本実施形態では、健全度評価部25は、上記評価(健全度の判定)を、加速度センサSが設けられた全ての層Fのなかで互いに隣り合う全ての層Fの間の領域に対して行う。
図5は、健全度評価部25による健全度の評価に用いられる判定テーブルの一例を示す。図5に示すように、判定テーブルでは、揺れの大きさ(例えば入力地震動に対する応答度)のレベル、建物100の変形の大きさ(例えば建物100の変形度)のレベル、および建物100の揺れ方の変化の大きさ(例えば建物100の塑性化度)のレベルと、建物100の健全度に関する複数のレベルとが予め対応付けられている。健全度評価部25は、上記判定テーブルを参照することで、揺れの大きさのレベル、建物100の変形の大きさのレベル、および建物100の揺れ方の変化の大きさのレベルに基づき、建物100の健全度を予め設定された複数のレベルの中から一義的に導出する。建物100の健全度に関する複数のレベルは、例えば、安全、注意、危険などである。
例えば、判定テーブルに割り当てられた建物100の健全度は、建物100の変形の大きさのレベル、および建物100の揺れ方の変化の大きさのレベルが同じであっても、揺れの大きさのレベルが大きい場合に危険度が増え、揺れの大きさのレベルが小さい場合に危険度が少なくなる。同様に、判定テーブルに割り当てられた建物100の健全度は、揺れの大きさのレベル、および建物100の揺れ方の変化の大きさのレベルが同じであっても、建物100の変形の大きさのレベルが大きい場合に危険度が増え、建物100の変形のレベルが小さい場合に危険度が少なくなる。また、判定テーブルに割り当てられた建物100の健全度は、揺れの大きさのレベル、および建物100の変形の大きさのレベルが同じであっても、建物100の揺れ方の変化の大きさのレベルが大きい場合に危険度が増え、建物100の揺れ方の変化の大きさのレベルが小さいに場合に危険度が少なくなる。なお、判定テーブルは、判定テーブル情報32としてデータベース30に格納されている。
次に、情報通知制御部26について説明する。
情報通知制御部26は、情報通知部40に制御信号を送ることで、情報通知部40の表示動作などを制御する。情報通知制御部26は、判定処理部20による判定結果を含む情報を情報通知部40に送り、その情報を情報通知部40の表示画面に表示させる。
図6は、情報通知制御部26による制御により情報通知部40に表示される情報の一例を示す図である。なお、図6中の(a)は、建物100の複数の層Fに対してとびとびに加速度センサSが設けられた場合の例を示す。図6中の(b)は、建物100の最下層Fおよび最上層Fにのみ加速度センサSが設けられた場合の例を示す。
図6に示すように、建物100の複数の層Fに対してとびとびに加速度センサSが設けられた場合、互いに隣り合う2つの加速度センサSの間の領域が1つのブロックBとして表示され、そのブロックBに対する健全度が表示される。なお、情報通知部40の表示画面には、例えば標準出力として、計測震度、層間変形角、および健全度の判定結果などが表示される。また、情報通知部40の表示画面には、詳細出力として、応答スペクトル、建物100の固有周期、および等価減衰定数などが表示されてもよい。また、情報通知制御部26は、これらと同様の内容をレポートファイルとして出力してもよい。
次に、本実施形態の建物健全度評価方法の処理流れの一例を示す。
図7は、建物健全度評価システム1による建物健全度評価方法の処理流れの一例を示すフローチャートである。なお以下に示すフローチャートは、揺れの大きさを示す判定指標として入力地震動に対する加速度応答値を導出し、建物100の変形の大きさを示す判定指標として層間変形角を導出し、揺れ方の変化の大きさを示す判定指標として等価減衰定数を導出する例を示している。
図7に示すように、建物100に地震動が入力された場合、例えば加速度センサSが予め設定された閾値を超える加速度を計測する。本実施形態では、例えば加速度センサSが予め設定された閾値を超える加速度を計測したことをトリガーに、以下のフローチャートの処理がスタートする。なおこれに代えて、建物健全度評価システム1は、以下のフローチャートの処理を所定周期毎に常に行っていてもよい。なお以下に示す処理のなかで加速度の検出以外の処理は、地震動が収まってから行われてもよい。
まず、建物100に設けられた複数の加速度センサSにより建物100の各層Fにおける加速度が計測される(S100)。各加速度センサSにより計測された加速度データは、計測データとして判定処理部20に送られる。
判定処理部20の固有周期導出部21は、例えば最下層Fおよび最上層Fの加速度センサSにより計測された加速度データをそれぞれフーリエ変換し、最下層Fおよび最上層Fにおける加速度フーリエスペクトルをそれぞれ導出する(S111)。次に、固有周期導出部21は、最下層Fおよび最上層Fにおける加速度フーリエスペクトルに基づき、最上層Fと最下層Fとのフーリエスペクトル比を導出する(S112)。そして、固有周期導出部21は、最上層Fと最下層Fとのフーリエスペクトル比に基づき、建物100の固有周期を導出する(S113)。
判定処理部20の応答度導出部22は、加速度センサS(例えば最下層Fの加速度センサS)により計測された計測データに対して時刻歴応答解析を行い、入力地震動に対する加速度応答スペクトルを導出する(S121)。そして、応答度導出部22は、導出された加速度応答スペクトルと、固有周期導出部21により導出された建物100の固有周期とに基づき、地震動に対する加速度応答値を導出する(S122)。そして、応答度導出部22は、導出された加速度応答値を健全度評価部25に出力する。
判定処理部20の変形度導出部23は、各加速度センサSにより計測された計測データに基づき、各加速度センサSが設けられた層Fの絶対変位を導出する(S131)。そして、変形度導出部23は、例えば絶対変位が導出された2つの層Fの変位量の差分に基づき、それら2つの層Fの間の層間変位を導出する(S132)。次に、変形度導出部23は、2つの層Fの間の層間変位を、2つの層Fの間の距離で除算することで、2つの層Fの間の層間変形角を導出する(S133)。そして、変形度導出部23は、導出された層間変形角を健全度評価部25に出力する。
判定処理部20の塑性化度導出部24は、各加速度センサSにより計測された計測データに基づき、各加速度センサSが設けられた層Fの絶対変位を導出する(S141)。そして、変形度導出部23は、例えば絶対変位が導出された2つの層Fの変位量の差分に基づき、それら2つの層Fの間の層間変位を導出する(S142)。次に、塑性化度導出部24は、導出された層間変位と、各加速度センサSにより計測された加速度と、固有周期導出部21により導出された建物100の固有周期とに基づき、例えば固有周期の1サイクル毎の等価減衰定数を導出する。そして、塑性化度導出部24は、例えば入力地震動の全時間を通じて見た場合の等価減衰定数の最大値を、建物100に関する等価減衰定数として導出する(S143)。そして、塑性化度導出部24は、導出された等価減衰定数を健全度評価部25に出力する。なお、S141およびS142の処理は、S131およびS132の処理と共通化されてもよい。
次に、健全度評価部25は、応答度導出部22により導出された地震動に対する加速度応答値、変形度導出部23により導出された層間変形角、および塑性化度導出部24により導出された等価減衰定数の3つの判定指標に基づき、建物100の健全度を評価する(S151)。次に、情報通知制御部26は、健全度評価部25により判定された判定結果を情報通知部40に送信する(S152)。そして、情報通知部40は、健全度評価部25により判定された判定結果を表示画面に表示するなど情報出力を行う(S153)。
このような構成によれば、より汎用性が高い建物健全度評価システム1および建物健全度評価方法を提供することができる。すなわち、例えば本実施形態の建物健全度評価システム1は、入力地震動に対する応答度を導出する応答度導出部22と、建物100の塑性化度を導出する塑性化度導出部24と、応答度導出部22により導出された応答度と塑性化度導出部24により導出された塑性化度との両方に基づき、建物100の健全度を評価する健全度評価部25とを備える。このような構成によれば、複数の指標を用いて多角的見ることで、建物100の健全度を精度良く判定することができる。また、上記構成によれば、例えば、層間変形角を精度良く検出することが難しい建物や、層間変形角のみによって健全度を評価することが難しい建物に対しても、健全度を精度良く判定することができる。このため、より汎用性が高い建物健全度評価システム1を提供することができる。
例えば、建物の構造設計上ゆとりがあり、実際の建物の耐力に十分に余裕がある場合、入力地震度に対する応答度が設計時に想定した値を超過しても、実際にはあまり損傷せずに、建物の塑性化度(例えば等価減衰)が上昇しない場合が考えられる。逆に、例えば、建物の経年劣化や施工ミスなどなんらかの理由により、実際の建物の耐力が設計上必要とする耐力を下回る場合、入力地震動に対する応答度が設計時に想定した値に到達しなくても、実際には損傷し、建物の塑性化度(例えば等価減衰)が上昇する場合が考えられる。そこで、本実施形態の健全度評価部25は、応答度導出部22により導出された応答度と塑性化度導出部24により導出された塑性化度との両方に基づき、建物100の健全度を評価する。このような構成によれば、上記のような場合でも、建物100の健全度を精度良く評価することができる。
一方、等価減衰定数については、その元となる加速度と変形の関係、すなわち建物の復元力特性は構造種別により異なる。例えば、鉄骨造建物の場合、層としての復元力特性は完全バイリニアあるいは完全トリリニアに近い形状になると思われるが、鉄筋コンクリート造建物の場合のそれは剛性低減型バイリニア、あるいは剛性低減型トリリニアに近い形となると思われる。また、実際の建物にはいわゆる内部粘性減衰が存在し、それによっても加速度と変形は影響を受ける。さらに、制振装置を導入している建物であればその影響も受ける。このように、等価減衰定数の値にはばらつきが存在するため、絶対的な判定指標を定めることは困難であり、建物健全度の判定に用いる際にはその点に留意する必要がある。そこで、建物の損傷の判断において同様に有益である、応答度と組み合わせることで判定の精度を高める効果が期待できる。
また本実施形態の構成によれば、層間変形角を精度良く検出することなく建物の健全度の評価が可能になるので、建物の全ての層に対して加速度センサを配置する必要が無くなる。これにより、建物健全度評価システム1の低コスト化を図ることができる。
本実施形態では、応答度導出部22は、前記応答度として、入力地震動に対する応答スペクトルおよび応答値の少なくとも一方を導出する。そして、健全度評価部25は、応答度導出部22により導出された応答スペクトルまたは応答値に基づき、建物100の健全度を評価する。このような構成によれば、建物100の健全度に対して影響が大きい応答スペクトルまたは応答値によって建物100の健全度を判定することができる。これにより、健全度をより精度良く判定することができる。
本実施形態では、応答度導出部22は、前記応答スペクトルおよび前記応答値の少なくとも一方として、入力地震動に対する加速度応答スペクトルおよび加速度応答値の少なくとも一方を導出する。そして、健全度評価部25は、応答度導出部22により導出された加速度応答スペクトルまたは加速度応答値に基づき、建物100の健全度を評価する。このような構成によれば、建物100の健全度に対して影響が大きい加速度応答スペクトルまたは加速度応答値によって建物100の健全度を判定することができる。これにより、健全度をより精度良く判定することができる。
本実施形態では、塑性化度導出部24は、建物100に関する等価減衰定数を導出する。そして、健全度評価部25は、塑性化度導出部24により導出された等価減衰定数に基づき、建物100の健全度を評価する。このような構成によれば、建物100の健全度に対してより影響が大きな等価減衰定数によって建物100の健全度を判定することができる。これにより、健全度をさらに精度良く判定することができる。
本実施形態では、建物健全度評価システム1は、建物100の変形度を導出する変形度導出部23をさらに備える。そして、健全度評価部25は、応答度導出部22により導出された前記応答度と、塑性化度導出部24により導出された前記塑性化度と、変形度導出部23により導出された前記変形度との3つに基づき、建物100の健全度を評価する。このような構成によれば、さらに多くの指標を用いて多角的見ることで、健全度をより精度良く判定することができる。
以上、実施形態に係る建物健全度評価システム1および建物健全度評価方法について説明したが、実施形態は上記例に限定されない。例えば、建物健全度評価システム1は、変形度導出部23を有さずに、応答度導出部22により導出された応答度と、塑性化度導出部24により導出された塑性化度との2つの判定指標に基づき、建物100の健全性を評価してもよい。
1…建物健全度評価システム、11…加速度計測部、21…固有周期導出部、22…応答度導出部、23…変形度導出部、24…塑性化度導出部、25…健全度評価部、26…情報通知制御部、100…建物、S…加速度センサ、F…建物の層。

Claims (5)

  1. 建物に設けられた加速度計測部により計測された計測データに基づき、入力地震動に対する応答度として前記入力地震動に対する前記建物の応答スペクトルを導出する応答度導出部と、
    前記加速度計測部により計測された計測データに基づき、前記建物の変形度として層間変形角を導出する変形度導出部と、
    前記加速度計測部により計測された計測データに基づき、前記建物の塑性化度を導出する塑性化度導出部と、
    少なくとも、前記応答度導出部により導出された前記応答スペクトルに基づいて導出された前記応答度の大きさをレベル分けした第1判定結果と、前記変形度導出部により導出された前記層間変形角に基づいて導出された前記建物の変形度の大きさをレベル分けした第2判定結果と、前記塑性化度導出部により導出された前記塑性化度に基づいて導出された前記建物の揺れ方の変化の大きさをレベル分けした第3判定結果とを生成し、前記第1判定結果から前記第3判定結果までを組み合わせて判定するための組合せ判定基準を用いて判定し、前記判定した結果に基づき、前記建物の健全度を評価する健全度評価部と、
    を備えることを特徴とする建物健全度評価システム。
  2. 前記応答度導出部は、前記応答度として、前記入力地震動に対する前記建物の前記応答スペクトルを導出しまたは前記入力地震動に対する前記建物の前記応答スペクトルおよび前記応答スペクトルに基づく前記建物の応答値の両方を導出し、
    前記健全度評価部は、
    前記応答度導出部により導出された前記応答スペクトルの大きさと、前記応答値の大きさとの何れかに基づいて導出された前記応答度の大きさをレベル分けして前記第1判定結果を生成する、
    ことを特徴とする請求項1に記載の建物健全度評価システム。
  3. 前記応答度導出部は、
    前記応答スペクトルとして、前記入力地震動に対する前記建物の加速度応答スペクトルを水平方向の2軸の成分に分けて導出し、または、前記応答値として、前記入力地震動に対する前記建物の加速度応答値を前記2軸の成分に分けて導出し、
    前記健全度評価部は、前記応答度導出部によって前記2軸の成分に分けて導出された前記加速度応答スペクトルの大きさと、前記2軸の成分に分けて導出された前記加速度応答値の大きさとの何れかに基づいて前記第1判定結果を生成する
    ことを特徴とする請求項2に記載の建物健全度評価システム。
  4. 前記塑性化度導出部は、前記塑性化度として、前記加速度計測部により計測された計測データに基づき、前記建物に関する等価減衰定数を導出する
    ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の建物健全度評価システム。
  5. 建物に設けられた加速度計測部により計測された計測データに基づき、入力地震動に対する応答度として前記入力地震動に対する前記建物の応答スペクトルを導出し、
    前記加速度計測部により計測された計測データに基づき、前記建物の変形度として層間変形角を導出し、
    前記加速度計測部により計測された計測データに基づき、前記建物の塑性化度を導出し、
    少なくとも、前記応答スペクトルに基づいた前記応答度の大きさをレベル分けした第1判定結果と、前記層間変形角に基づいた前記建物の変形度の大きさをレベル分けした第2判定結果と、前記塑性化度に基づいた前記建物の揺れ方の変化の大きさをレベル分けした第3判定結果とを生成し、前記第1判定結果から前記第3判定結果までを組み合わせて判定するための組合せ判定基準を用いて判定し、前記判定した結果とに基づき、前記建物の健全度を評価する、
    ことを特徴とする建物健全度評価方法。
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JP2018077104A (ja) * 2016-11-08 2018-05-17 株式会社Nttファシリティーズ 建物健全度評価システムおよび建物健全度評価方法

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