本出願は、2013年4月3日に出願された米国仮特許出願第61/807,998号の35U.S.C.119(e)に基づく利益を主張する、2013年8月14日に出願された米国特許出願第13/966,450号の一部継続出願であり、それぞれの優先出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
[配列表]
本出願は、EFS−WebによりASCII形式で提出された配列表を含有し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。2013年12月10日に作成された前記ASCIIコピーは、IBC138WO2_SL.txtという名前であり、49,084バイトのサイズである。
定義
別段に指定されない限り、「a」又は「an」は、「1つ以上」を意味する。
本明細書で使用される場合、「及び」及び「又は」という用語は、接続語又は離接語のいずれかを意味するように使用され得る。つまり、両方の用語は、別段に指定されない限り、「及び/又は」と同等として理解されるべきである。
「治療薬剤」は、疾患の治療において有用である原子、分子、又は化合物である。治療薬剤の例は、抗体、抗体断片、ペプチド、薬物、毒素、酵素、ヌクレアーゼ、ホルモン、免疫賦活剤、アンチセンスオリゴヌクレオチド、小分子干渉RNA(siRNA)、キレート剤、ホウ素化合物、光活性薬剤、染料、及び放射性同位体を含む。
「抗体」は、本明細書で使用される場合、全長(すなわち、自然発生的である、又は正常な免疫グロブリン遺伝子断片組換えプロセスにより形成される)免疫グロブリン分子(例えば、IgG抗体)、又は免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な(すなわち、特異的結合)部分、例えば抗体断片を指す。「抗体」は、モノクローナル、ポリクローナル、二重特異性、多重特異性、マウス、キメラ、ヒト化及びヒト抗体を含む。
「裸の抗体」は、治療又は診断薬剤に結合していない抗体又はその抗原結合断片である。無傷の裸の抗体のFc部分は、補体結合及びADCC等のエフェクター機能を提供し得る(例えば、Markrides,Pharmacol Rev50:59−87,1998を参照されたい)。裸の抗体が細胞死を誘導する他の機構は、アポトーシスを含み得る。(Vaswani and Hamilton,Ann Allergy Asthma Immunol81:105−119,1998。)
「抗体断片」は、例えばF(ab’)2、F(ab)2、Fab’、Fab、Fv、scFv、dAb等の無傷抗体の一部である。構造に関わらず、抗体断片は、全長抗体により認識される同じ抗原と結合する。例えば、抗体断片は、可変領域からなる単離された断片、例えば重鎖及び軽鎖の可変領域からなる「Fv」断片、又は軽鎖及び重鎖可変領域がペプチドリンカーにより接続された組換え単鎖ポリペプチド分子(「scFvタンパク質」)を含む。しばしば「scFv」と省略される「単鎖抗体」は、相互作用して抗原結合部位を形成するVH及びVLドメインの両方を含むポリペプチド鎖からなる。VH及びVLドメインは、通常、1〜25アミノ酸残基のペプチドにより連結される。抗体断片はまた、ジアボディ、トリアボディ及び単一ドメイン抗体(dAb)を含む。
「キメラ抗体」は、1つの種、好ましくはげっ歯類抗体から得られる抗体の相補性決定領域(CDR)を含む可変ドメインを含有する組換えタンパク質であり、一方抗体分子の定常ドメインは、ヒト抗体の定常ドメインから得られる。獣医学的用途において、キメラ抗体の定常ドメインは、ネコ又はイヌ等の他の種の定常ドメインから得られてもよい。
「ヒト化抗体」は、1つの種からの抗体、例えばげっ歯類抗体からのCDRが、げっ歯類抗体の可変重鎖及び軽鎖から、ヒトフレームワーク領域(FR)配列を含むヒト重鎖及び軽鎖可変ドメインに移された組換えタンパク質である。抗体分子の定常領域は、ヒト抗体の定常領域から得られる。結合活性を維持するために、親(例えばマウス)抗体からの限定された数のFRアミノ酸残基が、対応するヒトFR残基に置換され得る。
「ヒト抗体」は、抗原負荷に応答して特定のヒト抗体を生成するように遺伝子操作されたトランスジェニックマウスから得られる抗体である。この技術において、ヒト重鎖及び軽鎖遺伝子座の要素は、内在性重鎖及び軽鎖遺伝子座の標的化された断絶を含有する胚幹細胞株から得られたマウスの株に導入される。トランスジェニックマウスは、ヒト抗原に特異的なヒト抗体を合成することができ、マウスを使用して、ヒト抗体分泌ハイブリドーマを生成することができる。トランスジェニックマウスからヒト抗体を得るための方法は、Green et al.,Nature Genet.7:13(1994)、Lonberg et al.,Nature368:856(1994)、及びTaylor et al.,Int.Immun.6:579(1994)により説明されている。ヒト抗体はまた、遺伝子又は染色体トランスフェクション法、及びファージディスプレイ技術により構築することができ、これらは全て、当該技術分野において知られている。(例えば、非免疫化ドナーからの免疫グロブリン可変ドメイン遺伝子レパートリーからの、in vitroでのヒト抗体及びその断片の生成に関して、McCafferty et al.,1990,Nature348:552−553を参照されたい)。この技術において、抗体可変ドメイン遺伝子は、繊維状バクテリオファージの主要又は微量外被タンパク質遺伝子にインフレームでクローニングされ、ファージ粒子の表面上に機能性抗体断片として表示される。繊維状粒子はファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含有するため、抗体の機能的特性に基づく選択はまた、それらの特性を示す抗体をコードする遺伝子の選択をもたらす。このようにして、ファージは、B細胞の特性のいくつかを模倣する。ファージディスプレイは、様々な形式で行うことができるが、それらの検討については、例えば、Johnson and Chiswell,Current Opinion in Structural Biology3:5564−571(1993)を参照されたい。ヒト抗体はまた、in vitro活性化B細胞により生成されてもよい。(米国特許第5,567,610号及び米国特許第5,229,275号を参照されたい。)
本明細書で使用される場合、「抗体融合タンパク質」という用語は、抗体又は抗体断片が別のタンパク質又はペプチド、例えば同じ又は異なる抗体若しくは抗体断片又はDDD若しくはADペプチドに連結した、組換えにより生成された抗原結合分子である。融合タンパク質は、単一の抗体成分、多価若しくは多重特異性の異なる抗体成分の組み合わせ、又は同じ抗体成分の複数のコピーを含んでもよい。融合タンパク質は、抗体又は抗体断片及び治療薬剤を追加的に含んでもよい。そのような融合タンパク質に好適な治療薬剤の例は、免疫賦活剤及び毒素を含む。1つの好ましい毒素は、リボヌクレアーゼ(RNase)、好ましくは組換えRNaseを含む。好ましい免疫賦活剤は、インターフェロン−α、インターフェロン−β又はインターフェロン−λ等のインターフェロンであってもよい。
「多重特異性抗体」は、異なる構造の少なくとも2つの標的、例えば2つの異なる抗原、同じ抗原上の2つの異なるエピトープ、又はハプテン及び/若しくは抗原若しくはエピトープに同時に結合することができる抗体である。「多価抗体」は、同じ又は異なる構造の少なくとも2つの標的に同時に結合することができる抗体である。価数は、単一の抗原又はエピトープに対して抗体がいくつの結合手又は部位を有するか、すなわち一価、二価、三価又は多価を示す。抗体の多価性は、抗原への結合において複数の相互作用を利用することができることを意味し、したがって抗原への結合の親和性を増加させる。特異性は、抗体がいくつの抗原又はエピトープに結合することができるか、すなわち単一特異性、二重特異性、三重特異性、多重特異性を示す。これらの定義を使用して、天然抗体、例えばIgGは、2つの結合手を有するため二価であるが、1つのエピトープに結合するため単一特異性である。多重特異性多価抗体は、異なる特異性の2つ以上の結合部位を有するコンストラクトである。
「二重特異性抗体」は、異なる構造の2つの標的に同時に結合することができる抗体である。二重特異性抗体(bsAb)及び二重特異性抗体断片(bsFab)は、例えば、T細胞、NK細胞、単球又は好中球に特異的に結合する少なくとも1つの手と、疾患細胞、組織、器官又は病原体により生成された、又はそれと関連した抗原、例えば腫瘍関連抗原に特異的に結合する少なくとも1つの他の手とを有し得る。分子工学を使用して、様々な二重特異性抗体を生成することができる。
本明細書に記載の抗体調製物又は組成物は、投与される量が生理学的に重要である場合、「治療上効果的な量」で投与されると言われる。薬剤は、その存在が受容対象の生理学に検出可能な変化をもたらす場合、生理学的に重要である。具体的実施形態において、抗体調製物は、その存在が抗腫瘍反応を惹起する、又は感染性疾患状態の兆候及び症状を軽減する場合、生理学的に重要である。生理学的に重要な効果はまた、標的細胞の成長阻害又は死滅をもたらす、受容対象における体液性及び/又は細胞性免疫反応の誘起であってもよい。
白血球再指向二重特異性抗体複合物
様々な実施形態が、疾患関連抗原に対する抗体又はその断片に結合した抗白血球抗体又はその断片を含むbsAbに関する。例示的なT細胞抗原は、CD2、CD3、CD4、CD5、CD6、CD8、CD25、CD28、CD30、CD40、CD40L、CD44、CD45、CD69及びCD90を含む。他の例示的な抗原は、NK細胞に対するCD8、CD16、CD56、CD57、ADAM17、及びCD137;単球に対するCD74、HLA−DRアルファ鎖、CD14、CD16、CD64及びCD89;並びに好中球に対するCEACAM6、CEACAM8、CD16b、CD32a、CD89、CD177、CD11a、CD11b及びSLC44A2から選択され得る。好ましい実施形態において、抗T細胞抗体はCD3に結合し、又は抗NK抗体はCD16に結合する。後述のように、腫瘍関連抗原(TAA)又は病原体発現抗原等の疾患関連抗原の多くの例が知られている。例示的な好ましいTAAは、CD19である。
BITE(登録商標)(二重特異性T細胞エンゲージャー)(例えば、Nagorsen et al.,2009,Leukemia&Lymphoma50:886−91;Amann et al.,2009,J Immunother32:453−64;Baeuerle and Reinhardt,2009,Cancer Res 69:4941−44)及びDART(登録商標)(例えば、Moore et al.,2011,Blood117:4542−51;Veri et al.,2010,Arthritis Rheum62:1933−43を参照されたい)等、様々な二重特異性抗CD3×抗CD19抗体が当該技術分野において知られており、現在臨床開発中である。ブリナツモマブは、5アミノ酸リンカーにより接続され、自身にアニールして抗原結合部位を形成する単一ポリペプチド鎖として発現する、抗CD3及び抗CD19抗体断片のVH及びVLドメインを含むBITE(登録商標)抗体である。ブリナツモマブは、T細胞特異的CD3及びB細胞特異的CD19抗原を密接させ、がん細胞に対するT細胞特異性を必要としない、並んで位置するB細胞に対するT細胞毒性反応を開始させることにより作用すると考えられている(例えば、Portell et al.,2013,Clin Pharmacol5(Suppl1):5−11)。その短い半減期に起因して、ブリナツモマブは、効果的となるには継続的な静脈内注入を必要とする(Portell et al.,2013)。持続性又は再発性の微小残存病変を有するB細胞ALL患者の第II相試験では、約80%の完全寛解率が報告された(Portell et al.,2013)。
非ホジキンリンパ腫患者におけるがん細胞を排除するために、0.005mg/m2/日という低いブリナツモマブ用量が効果的であると報告された(Bargou et al.,2008,Science321:974−77)。0.015mgの用量レベルで開始して、部分又は完全寛解が観察され、また、0.06mgの用量で試験された6名全ての患者が腫瘍退縮を経験した(Bargou et al.,2008)。In vitroでは、ブリナツモマブは、10pg/mLの濃度で、MEC−1細胞の50%細胞溶解を誘導した(Topp et al.,2012,Blood120:5185−87;Bassan et al.,2012,Blood120:5094−95)。
ブリナツモマブの抗CD19部分は、HD37ハイブリドーマから得られており(例えば、米国特許第7,575,923号を参照されたく、この実施例の項は、参照により本明細書に組み込まれる)、公的に入手可能である(例えば、Santa Cruz Biotechnologyカタログ番号sc−18894)。ブリナツモマブの抗CD3部分は、TR66ハイブリドーマから得られており(米国特許第7,575,923号;Traunecker et al.,1991,EMBO J.10:3655−59)、同じく公的に入手可能である(例えば、Enzo Life Sciences、カタログ番号ALX−804−822−C100)。
請求される方法及び組成物において使用され得るCD3に対する様々な抗体が公知であり、並びに/又は、例えばLSBio(カタログ番号LS−B6698、LS−B8669;LS−B8765、LS−C96311、LS−C58677等);ABCAM(登録商標)(カタログ番号ab5690、ab16669、ab699、ab828、ab8671等);Santa Cruz Biotechnology(カタログ番号sc−20047、sc−20080、sc−19590、sc−59008、sc−101442等);及び多くの他の供給業者から市販されている。
好ましい実施形態において、DNL(商標)複合物の一部として使用される抗CD3部分のアミノ酸配列は、以下で配列番号96から配列番号101に開示されている。しかしながら、当業者には、請求される方法及び組成物において任意の知られた抗CD3抗体を使用することができることが理解される。好ましくは、有用な抗体部分は、ヒト化又はヒトである。
請求される方法及び組成物において使用され得るCD19に対する様々な抗体が公知であり、並びに/又は、例えばSanta Cruz Biotechnology(カタログ番号sc−390244、sc−373897、sc−18894、sc−18896等);ABCAM(登録商標)(カタログ番号ab25232、ab134114、ab140981、ab1255等);ABBIOTEC(商標)(カタログ番号252262、252248、250585、251063等)及び多くの他の販売会社から市販されている。
好ましい実施形態において、抗CD19抗体部分は、軽鎖CDR配列CDR1KASQSVDYDGDSYLN(配列番号90);CDR2DASNLVS(配列番号91);及びCDR3QQSTEDPWT(配列番号92)、並びに重鎖CDR配列CDR1SYWMN(配列番号93);CDR2QIWPGDGDTNYNGKFKG(配列番号94)及びCDR3RETTTVGRYYYAMDY(配列番号95)を含む、ヒト化A19抗体である。
他の抗CD3×抗CD19二重特異性抗体、例えばHD37の抗CD19Fv配列及びTR66の抗CD3Fv配列も組み込むDART(登録商標)が知られている(Moore et al.,2011,Blood117:4542−51;Veri et al.,2010,Arthritis Rheum62:1933−43)。Mooreら(2011)は、DART(登録商標)二重特異性抗体が、B細胞溶解の誘導において、同一の抗CD19及び抗CD3可変領域配列を保持する単鎖二重特異性抗体(BITE(登録商標))よりも強力であり、EC50値がpg/mL範囲であることを報告した(Moore et al.,2011)。DART(登録商標)及びBITE(登録商標)以外の他の抗CD3×抗CD19二重特異性抗体が報告されている(例えば、Wei et al.,2012,Cell Oncol35:423−34;Portner et al.,2012,Cancer Immunol Immunother61:1869−75;Zhou et al.,2012,Biotechnol Lett.34:1183−91を参照されたい)。ある特定の実施形態において、任意の既知の抗CD3×抗CD19二重特異性抗体を使用して、疾患関連細胞又は病原体に対する免疫反応を誘導することができる。
カツマキソマブは、欧州において転移がんに関連した悪性腹水の治療に承認されている抗CD3×抗EpCAM二重特異性抗体である(Chames&Baty,2009,MAbs1:539−47)。マウスモデル系において、カツマキソマブは、10pMの濃度範囲で腫瘍細胞を死滅させることができ、黒色腫腫瘍の全滅をもたらすことが報告された(Chames&Baty,2009)。また、悪性腹水を有する卵巣がん患者に対する人間での臨床試験では、統計的に有意な効用が示された(Chames&Baty,2009)。しかしながら、ラット/マウスハイブリッドbsAbの高い免疫原性が、抗体の静脈内投与を制限し得る(Chames&Baty,2009)。抗腫瘍bsAbの使用は、抗CD3×抗CD19に限定されず、抗HER2×抗CD64(MDX−210、MDX−H210)、抗EGFR×抗CD64(MDX−447)、抗CD30×抗CD16(HRS−3/A9)、抗HER2×抗CD3(Her2Bi)、抗CD20×抗CD3(CD20Bi、Bi20)、抗EpCAM×抗CD3(カツマキソマブ、MT110)、抗HER2×抗CD3(エルツマキソマブ)、及び抗NG2×抗CD28(rM28)も含んでいる(Chames&Baty,2009)。
最も好ましい実施形態において、抗CD3×抗CD19二重特異性抗体又は他の白血球再指向bsAbは、以下の実施例1において開示されるように、DNL(商標)コンストラクトとして作製される。当業者には、主題の白血球再指向二重特異性抗体が、抗CD3×抗CD19コンストラクトに限定されず、抗CD3抗体部分に結合した任意の知られた疾患関連抗原に対する抗体を含み得ることが理解される。代替として、CD3以外の他のT細胞抗原、又はNK細胞、単球若しくは好中球上に発現する他の抗原に対する抗体もまた使用され得る。例示的なT細胞抗原は、CD2、CD3、CD4、CD5、CD6、CD8、CD25、CD28、CD30、CD40、CD40L、CD44、CD45、CD69及びCD90を含むが、これらに限定されない。他の例示的な抗原は、NK細胞に対するCD8、CD16、CD56、CD57、ADAM17、KIR及びCD137;単球に対するCD74、HLA−DRアルファ鎖、CD14、CD16、CD64及びCD89;並びに好中球に対するCEACAM6、CEACAM8、CD16b、CD32a、CD89、CD177、CD11a、CD11b及びSLC44A2から選択され得る。白血球抗原のそれぞれに対する抗体は公知であり、及び/又は市販されている(例えば、ABCAM(登録商標)カタログ番号ab131276、ab139266、ab8360、ab51312、ab846、ab133616、ab75877、ab133255、ab109217、ab93278、ab17147、ab115851、ab128955、ab13463、ab85986;Santa Cruz Biotechnologyカタログ番号sc−46683、sc−59047;Enzo Life Sciences、Inc.カタログ番号ALX−805−037−C100;Sino Biological Inc.カタログ番号12211−RP02、11150−R074;Milliporeカタログ番号04−1102、04−1102、MAB1406を参照されたい)。これらの、及び数々の他の抗白血球抗体は、公的に利用可能であり、主題の白血球再指向bsAbにおいて使用され得ただろう。後述のように、広範な疾患関連抗原に対する数々の抗体が公知であり、及び/又は市販されており、主題の白血球再指向二重特異性抗体において使用され得ただろう。有用となり得る他の例示的な白血球再指向bsAbは、FBTA05(抗CD20×抗CD3)及びTRBS07(抗GD2×抗CD3)を含む。
インターフェロン療法
様々な実施形態において、白血球再指向bsAb、抗体−薬物複合体及び/又はチェックポイント阻害剤抗体は、インターフェロン−α、インターフェロン−β又はインターフェロン−λ等の1種以上のインターフェロンと組み合わせて使用され得る。ヒトインターフェロンは、当該技術分野において周知であり、ヒトインターフェロンのアミノ酸配列は、公開データベース(例えば、GenBank Accession Nos.AAA52716.1;AAA52724;AAC41702.1;EAW56871.1;EAW56870.1;EAW56869.1)から容易に入手することができる。ヒトインターフェロンはまた、様々な販売会社(例えば、Cell Signaling Technology,Inc.、Danvers、MA;Genentech、South San Francisco、CA;EMD Millipore、Billerica、MA)から商業的に入手することができる。
インターフェロン−α(IFNα)は、がんの動物モデル(Ferrantini et al.,1994,J Immunol153:4604−15)及びヒトがん患者(Gutterman et al.,1980,Ann Intern Med93:399−406)において抗腫瘍活性を有することが報告されている。IFNαは、がん遺伝子の下方制御、腫瘍抑制因子の上方制御、腫瘍表面MHCクラスIタンパク質の発現の増加による免疫認識の向上、アポトーシスの増強、及び化学療法薬に対する感作を含む、様々な直接的抗腫瘍効果を発揮することができる(Gutterman et al.,1994,PNAS USA91:1198−205;Matarrese et al.,2002,Am J Pathol160:1507−20;Mecchia et al.,2000,Gene Ther7:167−79;Sabaawy et al.,1999,Int J Oncol14:1143−51;Takaoka et al,2003,Nature424:516−23)。いくつかの腫瘍に対しては、IFNαは、STAT1の活性化による直接的及び強力な抗増殖効果を有し得る(Grimley et al.,1998Blood91:3017−27)。インターフェロン−α2bは、hL243抗HLA−DR抗体等の抗腫瘍抗体に複合化されており、in vitro及びin vivoでリンパ腫及び黒色腫細胞を枯渇させる(Rossi et al.,2011,Blood118:1877−84)。
間接的には、IFNαは血管形成を阻害し得(Sidky and Borden,1987,Cancer Res47:5155−61)、宿主免疫細胞を刺激し得るが、これは、全体的な抗腫瘍反応に不可欠となり得るがほとんど正当に評価されていない(Belardelli et al.,1996,Immunol Today17:369−72)。IFNαは、骨髄細胞(Raefsky et al,1985,J Immunol135:2507−12;Luft et al,1998,J Immunol161:1947−53)、T細胞(Carrero et al,2006,J Exp Med203:933−40;Pilling et al.,1999,Eur J Immunol29:1041−50)、及びB細胞(Le et al,2001,Immunity14:461−70)に対する効果を通して、免疫反応に対し多面的な影響を有する。自然免疫系の重要な調整因子として、IFNαは、樹状細胞の急速な分化及び活性化を誘導し(Belardelli et al,2004,Cancer Res64:6827−30;Paquette et al.,1998,J Leukoc Biol64:358−67;Santini et al.,2000,J Exp Med191:1777−88)、NK細胞の細胞毒性、遊走、サイトカイン産生及び抗体依存性細胞毒性(ADCC)を高める(Biron et al.,1999,Ann Rev Immunol17:189−220;Brunda et al.1984,Cancer Res44:597−601)。
インターフェロン−βは、様々な固形腫瘍の治療に有効であることが報告されている。HCV関連肝臓がんを有する患者における原発腫瘍の完全切除又はアブレーション後、600万単位のIFN−βで週2回36ヶ月間治療された患者は、肝細胞癌の再発の低下を示した(Ikeda et al.,2000,Hepatology32:228−32)。インターフェロン−βによる遺伝子治療は、神経膠腫、黒色腫及び腎細胞癌のアポトーシスを誘導した(Yoshida et al.,2004,Cancer Sci95:858−65)。内因性のIFN−βは、in vivoで血管形成を阻害することにより、腫瘍成長を阻害することが観察されている(Jablonska et al.,2010,J Clin Invest.120:1151−64)。
III型インターフェロンと指定されるIFN−λは、IFN−λ1、2、3からなるサイトカイン(それぞれインターロイキン−29、28A、及び28Bとも呼ばれる)の新しく説明された群であり、それらは染色体19上に位置する3つの異なる遺伝子により遺伝的にコードされている(Kotenko et al.,2003,Nat Immunol4:69−77;Sheppard et al.,2003,Nat Immunol4:63−8)。タンパク質レベルでは、IFN−λ2及びIFN−λ3は極めて相同性であり、96%のアミノ酸同一性を有し、一方IFN−λ1は、IFN−λ2及びIFN−λ3と約81%の相同性を共有している(Sheppard et al.,2003,Nat Immunol4:63−8)。IFN−λは、JAK1及びTYK2キナーゼの活性化、STATタンパク質のリン酸化、並びにIFN刺激遺伝子因子3(ISGF3)の転写複合物の活性化を含む、I型IFNにより誘導されるものと同様のJAK/STAT経路を介してシグナル伝達を活性化する(Witte et al.,2010,Cytokine Growth Factor Rev21:237−51;Zhou et al.,2007,J Virol81:7749−58)。
III型IFN系とI型IFN系との間の大きな違いは、それぞれの受容体複合物の分布である。IFN−α/βは、2つの広範囲に発現したI型インターフェロン受容体を介してシグナル伝達し、IFN−α/β投与に関連した結果的な全身毒性が、その治療薬剤としての使用を制限している(Pestka et al.,2007,J Biol Chem282:20047−51)。対照的に、IFN−λは、固有のIFN−λ受容体1(IFN−λR1)及びIL−10受容体2(IL−10R2)からなるヘテロ二量体受容体複合物を介してシグナル伝達する。以前に報告されたように(Witte et al.,2009,Genes Immun10:702−14)、IFN−λR1は、非常に制限された発現パターンを有し、上皮細胞、メラニン細胞、及び肝細胞において最も高いレベルであり、原発中枢神経系(CNS)細胞において最も低いレベルである。血液免疫系細胞は、IFN−λ作用を阻害する、高レベルの短いIFN−λ受容体スプライス変異(sIFN−λR1)を発現する。神経細胞及び免疫細胞の制限された反応性は、IFN−α療法に関連することの多い重度の毒性が、IFN−λにより存在しない、又は大幅に低減され得ることを示唆している(Witte et al.,2009,Genes Immun10:702−14;Witte et al.,2010,Cytokine Growth Factor Rev21:237−51)。最近の出版物によれば、IFN−α及びIFN−λは肝細胞においてISG(インターフェロン刺激遺伝子)の共通の組の発現を誘導するが、IFN−αとは異なり、IFN−λの投与は、精製されたリンパ球又は単球において、STAT活性化又はISG発現を誘導しないことが報告されている(Dickensheets et al.,2013,J Leukoc Biol.93、12/20/12にオンラインで公開)。IFN−λは、IFN−α療法に関連することの多い白血球減少症を誘導する可能性が低いため、慢性HCV感染の治療においてIFN−αよりも優れている可能性があることが示唆された(Dickensheets et al.,2013)。
IFN−λは、IL−10関連サイトカインに類似した構造的特徴を示すが、機能的にはI型IFN様抗ウイルス及び抗増殖活性を有する(Witte et al.,2009,Genes Immun10:702−14;Ank et al.,2006,J Virol80:4501−9;Robek et al.,2005,J Virol79:3851−4)。IFN−λ1及びIFN−λ2は、DNAウイルス(B型肝炎ウイルス(Robek et al.,2005,J Virol79:3851−4、Doyle et al.,2006,Hepatology44:896−906)及び単純ヘルペスウイルス2型(Ank et al.,2008,J Immunol180:2474−85))、ss(+)RNAウイルス(EMCV;Sheppard et al.,2003,Nat Immunol4:63−8)及びC型肝炎ウイルス(Robek et al.,2005,J Virol79:3851−4、Doyle et al.,2006,Hepatology44:896−906;Marcello et al.,2006,Gastroenterol131:1887−98;Pagliaccetti et al.,2008,J Biol Chem283:30079−89)、ss(−)RNAウイルス(水疱性口内炎ウイルス;Pagliaccetti et al.,2008,J Biol Chem283:30079−89)及びインフルエンザAウイルス(Jewell et al.,2010,J Virol84:11515−22)及び二本鎖RNAウイルス、例えばロタウイルス(Pott et al.,2011,PNAS USA108:7944049)を含む、様々なウイルスのウイルス複製又は細胞変性効果を低減することが実証されている。IFN−λ3は、遺伝子研究から、HCV感染における重要なサイトカインとして同定されており(Ge et al.,2009,Nature461:399−401)、またEMCVに対する強力な活性を示している(Dellgren et al.,2009,Genes Immun10:125−31)。ライノウイルス誘導IFN−λ産生の欠如が、ライノウイルス誘導喘息増悪の重症度と極めて相関することが報告され(Contoli et al.,2006,Nature Med12:1023−26)、IFN−λ療法は、アレルギー性喘息の治療の新たなアプローチとして示唆されている(Edwards and Johnston,2011,EMBO Mol Med3:306−8;Koltsida et al.,2011,EMBO Mol Med3:348−61)。
IFN−λの抗増殖活性が、神経内分泌癌BON1(Zitzmann et al.,2006,Biochem Biophys Res Commun344:1334−41)、膠芽腫LN319(Meager et al.,2005,Cytokine31:109−18)、不死化ケラチノサイトHaCaT(Maher et al.,2008,Cancer Biol Ther7:1109−15)、黒色腫F01(Guenterberg et al.,2010,Mol Cancer Ther9:510−20)、及び食道癌TE−11(Li et al.,2010,Eur J Cancer46:180−90)を含むいくつかのヒトがん細胞株において確立されている。動物モデルにおいて、IFN−λは、自然及び適応免疫反応を通して腫瘍のアポトーシスと破壊の両方を誘導し、IFN−λの局所送達がヒト悪性腫瘍の治療において有用な付加的戦略となり得ることが示唆されている(Numasaki et al.,2007,J Immunol178:5086−98)。Fab連結インターフェロン−λは、標的細胞において強力な抗腫瘍及び抗ウイルス活性を有することが実証されている(Liu et al.,2013,PLoS One8:e63940)。
臨床設定において、PEG化IFN−λ1(PEG−IFN−λ1)は、慢性C型肝炎ウイルス感染患者に対して暫定的に使用されている。第Ib相試験(n=56)において、IFN−α療法後に再発した遺伝子型1型HCV患者にPEG−IFN−λ1を投与すると、抗ウイルス活性が、全ての用量レベル(0.5〜3.0μg/kg)で観察され、ウイルス量が2.3logから4.0logに低下した(Muir et al.,2010,Hepatology52:822−32)。第IIb相試験(n=526)では、HCV遺伝子型1及び4型の患者が、PEG−IFN−αと比較して、PEG−IFN−λ1による治療に対する大幅に高い反応率を有することが示された。同時に、I型インターフェロン治療に一般的に関連する有害事象の割合が、PEG−IFN−αよりもPEG−IFN−λ1において低かった。好中球減少症及び血小板減少症は稀にしか観察されず、インフルエンザ様症状、貧血、及び骨格筋症状の割合が、PEG−IFN−α処理で観察された割合の約1/3に減少した。しかしながら、重篤な有害事象、うつ病及び他の一般的な有害事象の割合(≧10%)は、PEG−IFN−λ1とPEG−IFN−αとの間で同様であった。PEG−IFN−αと比較して、より高い割合の肝毒性が、最高用量のPEG−IFN−λ1で観察された(”Investigational Compound PEG−Interferon Lambda Achieved Higher Response Rates with Fewer Flu−like and Musculoskeletal Symptoms and Cytopenias Than PEG−Interferon Alfa in Phase IIb Study of526Treatment−Naive Hepatitis C Patients,”April2,2011,Press Release from Bristol−Myers Squibb)。
様々な実施形態において、白血球再指向二重特異性抗体、ADC及び/又はチェックポイント阻害剤mAbは、インターフェロン−α、インターフェロン−β、インターフェロン−λ1、インターフェロン−λ2、又はインターフェロン−λ3等の1種以上のインターフェロンと組み合わせて使用され得る。他の薬剤と使用される場合、インターフェロンは、他の薬剤の前に、それと同時に、又はその後に投与され得る。同時に投与される場合、インターフェロンは、他の薬剤に複合化していてもよく、又はそれとは別個であってもよい。
チェックポイント阻害剤抗体
がん治療のためのチェックポイント阻害剤抗体に関する研究は、以前はがん治療に抵抗性であると考えられていたがんにおいて、前例のない反応率をもたらした(例えば、Ott&Bhardwaj,2013,Frontiers in Immunology4:346;Menzies&Long,2013,Ther Adv Med Oncol5:278−85;Pardoll,2012,Nature Reviews Cancer12:252−64;Mavilio&Lugliを参照されたい)。CTLA4、PD1及びPD−L1等の免疫系チェックポイントに対するアンタゴニストチェックポイント遮断抗体による治療は、がん及び他の疾患に対する、最も有望な新しい免疫治療手段の1つである。抗がん剤の大部分と対照的に、チェックポイント阻害剤は、腫瘍細胞を直接的には標的化しないが、むしろ免疫系の内因性抗がん活性を高めるために、リンパ球受容体又はそのリガンドを標的化する。(Pardoll,2012,Nature Reviews Cancer12:252−264。)そのような抗体は、主に疾患細胞、組織又は病原体に対する免疫反応を制御することにより作用するため、それらは、他の治療法、例えば主題の白血球再指向二重特異性抗体、ADC及び/又はインターフェロンと組み合わせて使用されて、そのような薬剤の抗腫瘍効果を高めることができる。チェックポイント活性化はまた、慢性感染症とも関連し得るため(Nirschl&Drake,2013,Clin Cancer Res19:4917−24)、そのような併用療法はまた、感染性疾患の治療に有用となり得る。
現在、腫瘍は、特に腫瘍抗原に特異的なT細胞において、ある特定の免疫チェックポイント経路を共選択(co−opt)することにより免疫学的監視を回避することができることが明らかである(Pardoll,2012,Nature Reviews Cancer12:252−264)。多くのそのような免疫チェックポイントは、リガンド−受容体相互作用により開始されるため、それらは、リガンド及び/又はそれらの受容体に対する抗体により容易にブロックされ得る(Pardoll,2012,Nature Reviews Cancer12:252−264)。CTLA4、PD1及びPD−L1に対するチェックポイント阻害剤抗体が最も臨床的に進んでいるが、LAG3、B7−H3、B7−H4及びTIM3等の他の潜在的なチェックポイント抗原が知られており、治療抗体の標的として使用され得る(Pardoll,2012,Nature Reviews Cancer12:252−264)。
プログラム細胞死タンパク質1(PD1、CD279としても知られる)は、B細胞及びNK細胞上に発現する、免疫グロブリンスーパーファミリーの細胞表面膜タンパク質をコードする(Shinohara et al.,1995,Genomics23:704−6;Blank et al.,2007,Cancer Immunol Immunother56:739−45;Finger et al.,1997,Gene197:177−87;Pardoll,2012,Nature Reviews Cancer12:252−264)。PD1の主要な役割は、感染に応答した炎症中の周辺組織におけるT細胞の活性を制限すること、及び自己免疫を制限することである(Pardoll,2012,Nature Reviews Cancer12:252−264)。PD1発現は、活性化されたT細胞において誘導され、その内因性リガンドの1つに対するPD1の結合は、刺激性キナーゼを阻害することによりT細胞活性化を阻害するように作用する(Pardoll,2012,Nature Reviews Cancer12:252−264)。PD1はまた、TCR「停止シグナル」を阻害するように作用する(Pardoll,2012,Nature Reviews Cancer12:252−264)。PD1は、Treg細胞上に高度に発現し、リガンドの存在下でその増殖を増強し得る(Pardoll,2012,Nature Reviews Cancer12:252−264)。
抗PD1抗体は、黒色腫、非小細胞肺がん、膀胱がん、前立腺癌、結腸直腸がん、頭頸部がん、トリプルネガティブ乳がん、白血病、リンパ腫及び腎細胞がんの治療に使用されている(Topalian et al.,2012,N Engl J Med366:2443−54;Lipson et al.,2013,Clin Cancer Res19:462−8;Berger et al.,2008,Clin Cancer Res14:3044−51;Gildener−Leapman et al.,2013,Oral Oncol49:1089−96;Menzies&Long,2013,Ther Adv Med Oncol5:278−85)。PD1/PD−L1及びCTLA4は、異なる経路により作用するため、それぞれに対するチェックポイント阻害剤抗体との併用療法が、免疫反応の向上を提供し得ることが可能である。
例示的な抗PD1抗体は、ラムブロリズマブ(MK−3475、MERCK)、ニボルマブ(BMS−936558、BRISTOL−MYERS SQUIBB)、AMP−224(MERCK)、及びピジリズマブ(CT−011、CURETECH LTD.)を含む。抗PD1抗体は、例えば、ABCAM(登録商標)(AB137132)、BIOLEGEND(登録商標)(EH12.2H7、RMP1−14)及びAFFYMETRIX EBIOSCIENCE(J105、J116、MIH4)から市販されている。
プログラム細胞死1リガンド1(PD−L1、CD274及びB7−H1としても知られる)は、活性化されたT細胞、B細胞、骨髄細胞及びマクロファージ上に見られるPD1のリガンドである。PD1には2つの内因性リガンド、PD−L1及びPD−L2が存在するが、抗腫瘍療法は、抗PD−L1抗体に重点を置いている。PD1及びPD−L1の複合物は、CD8+T細胞の増殖を阻害し、免疫反応を低減させる(Topalian et al.,2012,N Engl J Med366:2443−54;Brahmer et al.,2012,N Eng J Med366:2455−65)。抗PD−L1抗体は、非小細胞肺がん、黒色腫、結腸直腸がん、腎細胞がん、膵臓がん、胃がん、卵巣がん、乳がん、及び血液悪性腫瘍の治療に使用されている(Brahmer et al.,N Eng J Med366:2455−65;Ott et al.,2013,Clin Cancer Res19:5300−9;Radvanyi et al.,2013,Clin Cancer Res19:5541;Menzies&Long,2013,Ther Adv Med Oncol5:278−85;Berger et al.,2008,Clin Cancer Res14:13044−51)。
例示的な抗PD−L1抗体は、MDX−1105(MEDAREX)、MEDI4736(MEDIMMUNE)MPDL3280A(GENENTECH)及びBMS−936559(BRISTOL−MYERS SQUIBB)を含む。抗PD−L1抗体はまた、例えばAFFYMETRIX EBIOSCIENCE(MIH1)から市販されている。
細胞毒性Tリンパ球抗原4(CTLA4、CD152としても知られる)もまた、T細胞上にのみ発現する免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである。CTLA4は、T細胞活性化を阻害するように作用し、ヘルパーT細胞活性を阻害し、調節性T細胞免疫抑制活性を高めることが報告されている(Pardoll,2012,Nature Reviews Cancer12:252−264)。CTL4−Aの正確な作用機序は未だ調査中であるが、CD80及びCD86への結合においてCD28を打ち負かすことにより、並びにT細胞に阻害剤シグナルを活発に送達することによりT細胞活性化を阻害することが示唆されている(Pardoll,2012,Nature Reviews Cancer12:252−264)。抗CTL4A抗体は、黒色腫、前立腺癌、小細胞肺がん、非小細胞肺がんの治療のための臨床試験において使用されている(Robert&Ghiringhelli,2009,Oncologist14:848−61;Ott et al.,2013,Clin Cancer Res19:5300;Weber,2007,Oncologist12:864−72;Wada et al.,2013,J Transl Med11:89)。抗CTL4Aの顕著な特徴は、抗腫瘍効果の反応速度論であり、生理学的反応に必要な最初の処理後6ヶ月までの遅延期間を有する(Pardoll,2012,Nature Reviews Cancer12:252−264)。いくつかの場合において、腫瘍は、治療開始後、減少が見られる前に実際にはサイズが増加し得る(Pardoll,2012,Nature Reviews Cancer12:252−264)。
例示的な抗CTLA4抗体は、イピリムマブ(Bristol−Myers Squibb)及びトレメリムマブ(PFIZER)を含む。抗PD1抗体は、例えば、ABCAM(登録商標)(AB134090)、SINO BIOLOGICAL INC.(11159−H03H、11159−H08H)、及びTHERMO SCIENTIFIC PIERCE(PA5−29572、PA5−23967、PA5−26465、MA1−12205、MA1−35914)から市販されている。イピリムマブは、最近、FDAにより転移黒色腫の治療に対する認可を受けた(Wada et al.,2013,J Transl Med11:89)。
当業者には、それを必要とする患者に、単独で、又は1種以上の他の薬剤と組み合わせて投与するチェックポイント阻害剤抗体の最適な用量を決定する方法が、当該技術分野において周知である標準的な用量−反応及び毒性試験により決定され得ることが理解される。例示的実施形態において、チェックポイント阻害剤抗体は、好ましくは、約3週間毎又は約6週間毎の投与により、約0.3〜10mg/kgで、又は最大耐量で投与され得る。代替として、チェックポイント阻害剤抗体は、約3mg/kgの第1の用量、約5mg/kgの第2の用量、及び約9mg/kgの第3の用量での投与を含む増量投薬計画により投与され得る。代替として、増量投薬計画は、チェックポイント阻害剤抗体の約5mg/kgの第1の用量及び約9mg/kgの第2の用量での投与を含む。別の段階的増量投薬計画は、チェックポイント阻害剤抗体の約3mg/kgの第1の用量、約3mg/kgの第2の用量、約5mg/kgの第3の用量、約5mg/kgの第4の用量、及び約9mg/kgの第5の用量での投与を含んでもよい。別の態様において、段階的増量投薬計画は、5mg/kgの第1の用量、5mg/kgの第2の用量、及び9mg/kgの第3の用量での投与を含んでもよい。チェックポイント阻害剤mAbの例示的な報告されている用量は、4回の投薬にわたる3週間毎に投与される3mg/kgのイピリムマブ;8サイクルにわたる3週間毎の10mg/kgのイピリムマブ;4サイクルにわたる3週間毎の、次いで合計3年にわたる12週間毎の10mg/kg;2週間又は3週間毎の10mg/kgのMK−3475;3週間毎の2mg/kgのMK−3475;3ヶ月毎の15mg/kgのトレメリムマブ;96週間までの2週間毎の0.1、0.3、1、3又は10mg/kgのニボルマブ;96週間までの2週間毎の0.3、1、3、又は10mg/kgのBMS−936559を含む(Kyi&Postow,October23,2013,FEBS Lett [Epub ahead of print];Callahan&Wolchok,2013,J Leukoc Biol94:41−53)。
腫瘍及び/又は病原体に対する免疫反応を刺激するこれらの、及び他の既知の薬剤は、改善されたがん治療のために、白血球再指向二重特異性抗体のみと組み合わせて、又はさらにインターフェロン−α等のインターフェロン、及び/若しくは抗体−薬物複合体と組み合わせて使用され得る。組み合わせて使用され得る他の既知の共刺激経路調整因子は、アガトリモド、ベラタセプト、ブリナツモマブ、CD40リガンド、抗B7−1抗体、抗B7−2抗体、抗B7−H4抗体、AG4263、エリトラン、抗OX40抗体、ISF−154、及びSGN−70;B7−1、B7−2、ICAM−1、ICAM−2、ICAM−3、CD48、LFA−3、CD30リガンド、CD40リガンド、熱安定性抗原、B7h、OX40リガンド、LIGHT、CD70及びCD24を含むが、これらに限定されない。
ある特定の実施形態において、抗KIR抗体はまた、白血球再指向bsAb、インターフェロン、ADC及び/又はチェックポイント阻害剤抗体と組み合わせて使用され得る。NK細胞は、自然の細胞毒性により、及び抗体により活性された場合のADCCにより、抗腫瘍及び抗感染薬剤活性を媒介する(Kohrt et al.,2013,Blood,[Epub ahead of print12/10/13])。細胞毒性反応の程度は、NK細胞により受容される阻害及び活性化シグナルのバランスにより決定される(Kohrt et al.,2013)。キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)は、NK細胞反応を減少させる阻害シグナルを媒介する。リルルマブ(Innate Pharma)及びIPH2101(Innate Pharma)等の抗KIR抗体は、多発性骨髄腫における抗腫瘍活性を示している(Benson et al.,2012,Blood120:4324−33)。In vitroにおいて、抗KIR抗体は、NK細胞と標的細胞との寛容原性相互作用を防止し、腫瘍細胞に対するNK細胞の細胞毒性反応を強化する(Kohrt et al.,2013)。In vivoにおいて、リツキシマブ(抗CD20)と組み合わせると、抗KIR抗体は、0.5mg/kgの用量で、リンパ腫腫瘍に対するNK細胞媒介性のリツキシマブ依存性細胞毒性の向上を誘導した(Kohrt et al.,2013)。抗KIR mAbは、腫瘍細胞又は病原生物に対する細胞毒性を増強するために、ADC、白血球再指向bsAb、インターフェロン及び/又はチェックポイント阻害剤抗体と組み合わされてもよい。
一般的な抗体技術
事実上任意の標的抗原に対するモノクローナル抗体を調製するための技術は周知である。例えば、Kohler and Milstein,Nature256:495(1975)、及びColigan et al.(eds.),CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY,VOL.1,pages2.5.1−2.6.7(John Wiley&Sons1991)を参照されたい。簡潔に説明すると、モノクローナル抗体は、抗原を含む組成物をマウスに注射し、脾臓を取り出してBリンパ球を得、Bリンパ球を骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマを生成し、ハイブリドーマをクローニングし、抗原に対する抗体を生成する陽性クローンを選択し、抗原に対する抗体を生成するクローンを培養し、ハイブリドーマ培養物から抗体を単離することにより得ることができる。
MAbは、十分に確立された様々な技術により、ハイブリドーマ培養物から単離及び精製され得る。そのような単離技術は、タンパク質−Aセファロースによる親和性クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、及びイオン交換クロマトグラフィーを含む。例えば、Coliganの2.7.1〜2.7.12ページ及び2.9.1〜2.9.3ページを参照されたい。また、Baines et al.,“Purification of Immunoglobulin G(IgG),”in METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY,VOL.10,pages79−104(The Humana Press,Inc.1992)を参照されたい。
免疫原に対する抗体の最初の惹起後、抗体を配列決定し、続いて組み換え技術により調製することができる。マウス抗体及び抗体断片のヒト化及びキメラ化は、当業者に周知である。ヒト化、キメラ又はヒト抗体から得られる抗体成分の使用は、マウス定常領域の免疫原性と関連した潜在的問題を排除する。
キメラ抗体
キメラ抗体は、ヒト抗体の可変領域が、例えばマウス抗体の相補性決定領域(CDR)を含むマウス抗体の可変領域により置き換えられている組換えタンパク質である。キメラ抗体は、対象に投与されると、減少した免疫原性及び増加した安定性を示す。マウス免疫グロブリン可変ドメインをクローニングするための一般的技術は、例えば、Orlandi et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA86:3833(1989)において開示されている。キメラ抗体を構築するための技術は、当業者に周知である。一例として、Leung et al.,Hybridoma13:469(1994)は、抗CD22モノクローナル抗体であるマウスLL2のVκ及びVHドメインをコードするDNA配列を、それぞれのヒトκ及びIgG1定常領域ドメインに組み合わせることにより、LL2キメラを生成した。
ヒト化抗体
ヒト化MAbを生成するための技術は、当該技術分野において周知である(例えば、Jones et al.,Nature321:522(1986)、Riechmann et al.,Nature332:323(1988)、Verhoeyen et al.,Science239:1534(1988)、Carter et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA89:4285(1992)、Sandhu,Crit.Rev.Biotech.12:437(1992)、及びSinger et al.,J.Immun.150:2844(1993)を参照されたい)。キメラ又はマウスモノクローナル抗体は、マウス免疫グロブリンからの可変重鎖又は軽鎖から、対応するヒト抗体の可変ドメインにマウスCDRを移入することによりヒト化され得る。キメラモノクローナル抗体内のマウスフレームワーク領域(FR)もまた、ヒトFR配列で置き換えられる。ヒトFRへのマウスCDRの移入だけでは、多くの場合抗体親和性の低減又はさらに損失がもたらされるため、マウス抗体の元の親和性を修復するために、追加的な改質が必要となり得る。これは、そのエピトープへの良好な結合親和性を有する抗体を得るための、FR領域における1つ以上のヒト残基のそれらのマウス相当物での置き換えにより達成され得る。例えば、Tempest et al.,Biotechnology9:266(1991)及びVerhoeyen et al.,Science239:1534(1988)を参照されたい。一般的に、そのマウス相当物と異なり、また1つ以上のCDRアミノ酸残基に近接して、又は接触して位置するそれらのヒトFRアミノ酸残基が、置換の候補となる。
ヒト抗体
組み合わせアプローチ又はヒト免疫グロブリン遺伝子座により形質転換されたトランスジェニック動物を使用して完全ヒト抗体を生成するための方法は、当該技術分野において知られている(例えば、Mancini et al.,2004,New Microbiol.27:315−28;Conrad and Scheller,2005,Comb.Chem.High Throughput Screen.8:117−26;Brekke and Loset,2003,Curr.Opin.Phamacol.3:544−50)。完全ヒト抗体はまた、遺伝子又は染色体トランスフェクション法、及びファージディスプレイ技術により構築することができ、これらは全て当該技術分野において知られている。例えば、McCafferty et al.,Nature348:552−553(1990)を参照されたい。そのような完全ヒト抗体は、キメラ又はヒト化抗体よりもさらに少ない副作用を示し、またin vivoで本質的に内因性のヒト抗体として機能することが予測される。ある特定の実施形態において、請求される方法及び手順は、そのような技術により生成されたヒト抗体を利用することができる。
一代替例において、ファージディスプレイ技術を使用してヒト抗体が生成され得る(例えば、Dantas−Barbosa et al.,2005,Genet.Mol.Res.4:126−40)。ヒト抗体は、正常なヒトから、又はがん等の特定の疾患状態を示すヒトから生成され得る(Dantas−Barbosa et al.,2005)。疾患を有する個人からヒト抗体を構築することの利点は、循環抗体レパートリーが、疾患関連抗原に対する抗体に向けてバイアスされ得ることである。
この方法の1つの限定されない例において、Dantas−Barbosaら(2005)は、骨肉腫患者からヒトFab抗体断片のファージディスプレイライブラリを構築した。一般に、全RNAが循環血液リンパ球から得られた(同上)。組換えFabは、μ、γ及びκ鎖抗体レパートリーからクローニングされ、ファージディスプレイに挿入された(同上)。RNAは、cDNAに変換され、重鎖及び軽鎖免疫グロブリン配列に対する特定のプライマーを使用してFab cDNAライブラリを作製するために使用された(Marks et al.,1991,J.Mol.Biol.222:581−97)。ライブラリ構築は、Andris−Widhopf et al.(2000,In: PHAGE DISPLAY LABORATORY MANUAL,Barbas et al.(eds),1stedition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY pp.9.1to9.22)に従って行われた。最終Fab断片は、制限エンドヌクレアーゼで消化され、バクテリオファージゲノムに挿入されて、ファージディスプレイライブラリが作製された。そのようなライブラリは、当該技術分野において知られているように、標準的ファージディスプレイ法によりスクリーニングされ得る(例えば、Pasqualini and Ruoslahti,1996,Nature380:364−366;Pasqualini,1999,The Quart.J.Nucl.Med.43:159−162を参照されたい)。
ファージディスプレイは、様々な形式で行うことができるが、それらの検討については、例えば、Johnson and Chiswell,Current Opinion in Structural Biology3:5564−571(1993)を参照されたい。ヒト抗体はまた、in vitro活性化B細胞により生成されてもよい。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第5,567,610号及び米国特許第5,229,275号を参照されたい。当業者には、これらの技術が例示的であり、ヒト抗体又は抗体断片を作製及びスクリーニングするための任意の既知の方法が使用され得ることが理解される。
別の代替例において、標準的免疫化プロトコルを使用して、本質的に任意の免疫原性標的に対する抗体を生成するために、ヒト抗体を生成するように遺伝子操作されたトランスジェニック動物を使用することができる。トランスジェニックマウスからヒト抗体を得るための方法は、Green et al.,Nature Genet.7:13(1994)、Lonberg et al.,Nature368:856(1994)、及びTaylor et al.,Int.Immun.6:579(1994)により開示されている。そのような系の限定されない例は、Abgenix(Fremont、CA)からのXENOMOUSE(登録商標)(例えば、Green et al.,1999,J.Immunol.Methods231:11−23)である。XENOMOUSE(登録商標)及び同様の動物において、マウス抗体遺伝子は不活性化され、機能性ヒト抗体遺伝子により置き換えられており、一方マウス免疫系の残りは無傷のままである。
XENOMOUSE(登録商標)は、アクセサリー遺伝子及び調節配列に沿って、可変領域配列の大部分を含むヒトIgH及びIgκ遺伝子座の一部を含有する生殖細胞系列構成YAC(酵母人工染色体)で形質転換された。ヒト可変領域レパートリーを使用して、既知の技術によりハイブリドーマに処理されていてもよい抗体生成B細胞を生成することができる。標的抗原により免疫化されたXENOMOUSE(登録商標)は、正常な免疫反応によりヒト抗体を生成し、これは、上述の標準的技術により採取及び/又は生成され得る。XENOMOUSE(登録商標)の様々な株が利用可能であり、そのそれぞれは、異なるクラスの抗体を生成することができる。トランスジェニック動物により生成されたヒト抗体は、正常ヒト抗体の薬物動態特性を保持する一方で、治療可能性を有することが示されている(Green et al.,1999)。当業者には、請求される組成物及び方法がXENOMOUSE(登録商標)系の使用に限定されず、ヒト抗体を生成するように遺伝子操作された任意のトランスジェニック動物を使用してもよいことが理解される。
抗体のクローニング及び生成
キメラ又はヒト化抗体の生成等の様々な技術は、抗体のクローニング及び構築の手順を含み得る。対象となる抗体の抗原結合Vκ(可変軽鎖)及びVH(可変重鎖)配列は、RT−PCR、5’−RACE、及びcDNAライブラリスクリーニング等の様々な分子クローニング手順により得ることができる。マウス抗体を発現する細胞からの抗体のV遺伝子は、PCR増幅によりクローニング及び配列決定され得る。それらの信頼性を確実とするために、クローニングされたVL及びVH遺伝子は、Orlandiら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:3833(1989))により説明されているように、キメラAbとして細胞培養物中で発現され得る。V遺伝子配列に基づいて、ヒト化抗体は、次いでLeungら(Mol.Immunol.,32:1413(1995))により説明されるように設計及び構築され得る。
cDNAは、一般的な分子クローニング技術により、任意の既知のハイブリドーマ株又はマウス抗体を生成するトランスフェクトされた細胞株から調製され得る(Sambrook et al.,Molecular Cloning,A laboratory manual,2ndEd(1989))。抗体のVκ配列は、プライマーVK1BACK及びVK1FOR(Orlandi et al.,1989)、又はLeungら(BioTechniques,15:286(1993))により説明される拡張プライマーセットを使用して増幅され得る。VH配列は、プライマー対VH1BACK/VH1FOR(Orlandi et al.,1989)又はLeungら(Hybridoma,13:469(1994))により説明されるマウスIgGの定常領域にアニールするプライマーを使用して増幅され得る。ヒト化V遺伝子は、Leungら(Mol.Immunol.,32:1413(1995))により説明されるような長鎖オリゴヌクレオチド鋳型合成及びPCR増幅の組み合わせにより構築され得る。
VκのPCR産物は、Igプロモーター、シグナルペプチド配列及び好都合な制限部位を含有するpBR327系段階化ベクターVKpBR等の段階化ベクターにサブクローニングされ得る。VHのPCR産物は、pBluescript系VHpBS等の同様の段階化ベクターにサブクローニングされ得る。プロモーター及びシグナルペプチド配列と共にVκ及びVH配列を含有する発現カセットは、VKpBR及びVHpBSから切り出され、それぞれpKh及びpG1g等の適切な発現ベクターにライゲーションされ得る(Leung et al.,Hybridoma,13:469(1994))。発現ベクターは、適切な細胞に共トランスフェクトされ得、上澄み液が、キメラ、ヒト化又はヒト抗体の生成について監視され得る。代替として、Vκ及びVH発現カセットが切り出され、Gillies et al.(J.Immunol.Methods125:191(1989)、またLosman et al.,Cancer,80:2660(1997)にも示されている)により説明されるように、pdHL2等の単一発現ベクターにサブクローニングされ得る。
代替の実施形態において、発現ベクターは、無血清培地中でトランスフェクション、成長及び発現に対し事前に適応された宿主細胞にトランスフェクトされ得る。使用され得る例示的細胞株は、Sp/EEE、Sp/ESF及びSp/ESF−X細胞株を含む(例えば、米国特許第7,531,327号;米国特許第7,537,930号及び米国特許第7,608,425号を参照されたく;それらのそれぞれの実施例の項は、参照により本明細書に組み込まれる)。これらの例示的細胞株は、Sp2/0骨髄腫細胞株に基づき、突然変異Bcl−EEE遺伝でトランスフェクトされ、トランスフェクトされた遺伝子配列を増幅するためにメトトレキセートに曝露され、タンパク質発現のために無血清細胞株に対して事前に適応される。
抗体断片
特定のエピトープを認識する抗体断片は、既知の技術により生成され得る。抗体断片は、例えばF(ab’)2、Fab’、F(ab)2、Fab、Fv、scFv等の抗体の抗原結合部分である。F(ab’)2断片は、抗体分子のペプシン消化により生成され得、Fab’断片は、F(ab’)2断片のジスルフィド架橋を還元することにより生成され得る。代替として、Fab’発現ライブラリを構築して(Huse et al.,1989,Science,246:1274−1281)、所望の特異性を有するモノクローナルFab’断片の迅速及び容易な同定を可能とすることができる。F(ab)2断片は、抗体のパパイン消化により生成され得る。
単鎖Fv分子(scFv)は、VLドメイン及びVHドメインを含む。VL及びVHドメインは、結合して標的結合部位を形成する。これらの2つのドメインは、ペプチドリンカー(L)によりさらに共有結合する。scFv分子を作製するため、及び好適なペプチドリンカーを消化させるための方法は、米国特許第4,704,692号;米国特許第4,946,778号;Raag and Whitlow,FASEB9:73−80(1995)及びBird and Walker,TIBTECH,9:132−137(1991)に記載されている。
単一ドメイン抗体(DAB又はVHH)を生成するための技術もまた、例えば参照により本明細書に組み込まれるCossinsら(2006,Prot Express Purif51:253−259)において開示されるように、当該技術分野において知られている。単一ドメイン抗体は、標準的な免疫化技術により、例えばラクダ、アルパカ又はラマから得ることができる。(例えば、Muyldermans et al.,TIBS26:230−235,2001;Yau et al.,J Immunol Methods281:161−75,2003;Maass et al.,J Immunol Methods324:13−25,2007を参照されたい。)VHHは、強力な抗原結合能力を有することができ、従来のVH−VL対にアクセス不可能な新規エピトープと相互作用し得る。(Muyldermans et al.,2001。)アルパカ血清IgGは、約50%のラクダ科重鎖のみのIgG抗体(HCAb)を含有する(Maass et al.,2007)。アルパカは、TNF−α等の既知の抗原で免疫化され得、標的抗原に結合して中性化するVHHが単離され得る(Maass et al.,2007)。事実上全てのアルパカVHHコード配列を増幅するPCRプライマーが同定されており、当該技術分野において周知の標準的バイオパニング技術による抗体断片単離に使用され得る、アルパカVHHファージディスプレイライブラリを構築するために使用され得る(Maass et al.,2007)。ある特定の実施形態において、抗膵臓がんVHH抗体断片が、請求される組成物及び方法において使用され得る。
抗体断片は、全長抗体のタンパク質分解的加水分解により、又は大腸菌若しくは断片のDNAコードの別の宿主における発現により調製され得る。抗体断片は、従来の方法による全長抗体のペプシン又はパパイン消化により得ることができる。これらの方法は、例えば、Goldenberg、米国特許第4,036,945号及び米国特許第4,331,647号、並びにそれらに含まれる参考文献により説明されている。また、Nisonoff et al.,Arch Biochem.Biophys.89:230(1960);Porter,Biochem.J.73:119(1959)、Edelman et al.,in METHODS IN ENZYMOLOGY VOL.1,page422(Academic Press1967)、並びにColiganの2.8.1〜2.8.10ページ及び2.10.〜2.10.4ページを参照されたい。
抗体アロタイプ
治療抗体の免疫原性は、注入反応のリスクの増加、及び治療反応の期間の減少に関連する(Baert et al.,2003,N Engl J Med348:602−08)。治療抗体が宿主における免疫反応を誘導する程度は、1つには、抗体のアロタイプにより決定され得る(Stickler et al.,2011,Genes and Immunity12:213−21)。抗体アロタイプは、抗体の定常領域配列における特定の位置でのアミノ酸配列変異に関連する。重鎖γ型定常領域を含有するIgG抗体のアロタイプは、Gmアロタイプと指定される(1976,J Immunol117:1056−59)。
一般的なIgG1ヒト抗体において、最も支配的なアロタイプはG1m1である(Stickler et al.,2011,Genes and Immunity12:213−21)。しかしながら、白人においてはG1m3アロタイプもまた頻繁に存在する(Stickler et al.,2011)。G1m1抗体は、G1m3患者等の非G1m1(nG1m1)受容者に投与された場合、免疫反応を誘導する傾向があるアロタイプ配列を含有することが報告されている(Stickler et al.,2011)。非G1m1アロタイプ抗体は、G1m1患者に投与された場合、それほど免疫原性ではない(Stickler et al.,2011).
ヒトG1m1アロタイプは、重鎖IgG1のCH3配列におけるKabat位置356にアミノ酸であるアスパラギン酸を、またKabat位置358にロイシンを含む。nG1m1アロタイプは、Kabat位置356にグルタミン酸を、またKabat位置358にメチオニンを含む。G1ml及びnG1mlアロタイプは共に、Kabat位置357にグルタミン酸残基を含み、アロタイプは時折、DEL及びEEMアロタイプと呼ばれる。G1m1及びnG1m1アロタイプ抗体の重鎖定常領域配列の限定されない例を、例示的抗体リツキシマブ(配列番号85)及びベルツズマブ(配列番号86)に対して示す。
Jefferis及びLefranc(2009,mAbs1:1−7)は、IgGアロタイプの配列変異特性及びその免疫原性に対する効果を検討した。彼らは、G1m3アロタイプが、G1m17アロタイプのKabat214におけるリシン残基と比較して、Kabat位置214におけるアルギニン残基により特徴付けられることを報告した。nG1m1,2アロタイプは、Kabat位置356におけるグルタミン酸、Kabat位置358におけるメチオニン、及びKabat位置431におけるアラニンにより特徴付けられた。G1m1,2アロタイプは、Kabat位置356におけるアスパラギン酸、Kabat位置358におけるロイシン、及びKabat位置431におけるグリシンにより特徴付けられた。重鎖定常領域配列変異に加えて、Jefferis及びLefranc(2009)は、カッパ軽鎖定常領域におけるアロタイプ変異を報告したが、Km1アロタイプはKabat位置153におけるバリン、及びKabat位置191におけるロイシンにより特徴付けられ、Km1,2アロタイプは、Kabat位置153におけるアラニン、及びKabat位置191におけるロイシンにより特徴付けられ、Km3アロタイプは、Kabat位置153におけるアラニン、及びKabat位置191におけるバリンにより特徴付けられた。
治療抗体に関して、ベルツズマブ及びリツキシマブは、それぞれ、広範な血液悪性腫瘍及び/又は自己免疫疾患の治療に有用なCD20に対するヒト化及びキメラIgG1抗体である。表1は、リツキシマブ対ベルツズマブのアロタイプ配列を比較している。表1に示されるように、リツキシマブ(G1m17,1)は、DELアロタイプIgG1であり、ベルツズマブのアルギニンに対して、リツキシマブのリシンのKabat位置214(重鎖CH1)における追加的な配列変異を有する。ベルツズマブは、リツキシマブよりも対象において免疫原性が低いことが報告されており(例えば、Morchhauser et al.,2009,J Clin Oncol27:3346−53;Goldenberg et al.,2009,Blood113:1062−70;Robak&Robak,2011,BioDrugs25:13−25を参照されたい)、これはヒト化抗体とキメラ抗体との間の差に起因した効果である。しかしながら、EEMアロタイプとDELアロタイプとの間のアロタイプの差もまた、ベルツズマブのより低い免疫原性を説明し得る。
nG1m1遺伝子型の個人における治療抗体の免疫原性を低減するためには、Kabat214におけるアルギニンにより特徴付けられるG1m3アロタイプ、並びに、Kabat位置356におけるグルタミン酸、Kabat位置358におけるメチオニン及びKabat位置431におけるアラニンにより特徴付けられるnG1m1,2ヌルアロタイプに対応するように抗体のアロタイプを選択することが望ましい。驚くべきことに、長期間にわたるG1m3抗体の反復皮下投与は、大きな免疫反応をもたらさないことが判明した。代替の実施形態において、ヒトIgG4重鎖は、G1m3アロタイプと共通して、Kabat214におけるアルギニン、Kabat356におけるグルタミン酸、Kabat359におけるメチオニン及びKabat431におけるアラニンを有する。免疫原性は、それらの位置における残基に少なくとも部分的に関連すると思われるため、ヒトIgG4重鎖定常領域配列の治療抗体への使用もまた、好ましい実施形態である。G1m3IgG1抗体とIgG4抗体との組み合わせもまた、治療的投与に有用となり得る。
知られている抗体
標的抗原及び例示的抗体
好ましい実施形態において、抗体は、標的細胞に対して高レベルで発現する抗原を認識及び/又はそれに結合し、正常組織に対して、主に、又は排他的に疾患細胞上に発現する抗体が使用される。例えばがんの治療に有用な例示的抗体は、LL1(抗CD74)、LL2又はRFB4(抗CD22)、ベルツズマブ(hA20、抗CD20)、リツクスマブ(rituxumab)(抗CD20)、オビヌツズマブ(GA101、抗CD20)、ラムブロリズマブ(抗PD1)、ニボルマブ(抗PD1),MK−3475(抗PD1)、AMP−224(抗PD1)、ピジリズマブ(抗PD1)、MDX−1105(抗PD−L1)、MEDI4736(抗PD−L1)、MPDL3280A(抗PD−L1)、BMS−936559(抗PD−L1)、イピリムマブ(抗CTLA4)、トレビリズマブ(抗CTL4A)、RS7(抗上皮糖タンパク質−1(EGP−1、TROP−2としても知られる))、PAM4又はKC4(どちらも抗ムチン)、MN−14(抗癌胎児性抗原(CEA、CD66e又はCEACAM5としても知られる)、MN−15又はMN−3(抗CEACAM6)、Mu−9(抗結腸特異的抗原−p)、Immu31(抗アルファ−フェトプロテイン)、R1(抗IGF−1R)、A19(抗CD19)、TAG−72(例えば、CC49)、Tn、J591又はHuJ591(抗PSMA(前立腺特異的膜抗原))、AB−PG1−XG1−026(抗PSMA二量体)、D2/B(抗PSMA)、G250(抗炭酸脱水酵素IX MAb)、L243(抗HLA−DR)アレムツズマブ(抗CD52)、ベバシズマブ(抗VEGF)、セツキシマブ(抗EGFR)、ゲムツズマブ(抗CD33)、イブリツモマブチウキセタン(抗CD20);パニツムマブ(抗EGFR);トシツモマブ(抗CD20);PAM4(クリバツズマブとしても知られる、抗ムチン)、BWA−3(抗ヒストンH2A/H4)、LG2−1(抗ヒストンH3)、MRA12(抗ヒストンH1)、PR1−1(抗ヒストンH2B)、LG11−2(抗ヒストンH2B)、LG2−2(抗ヒストンH2B)、及びトラツズマブ(抗ErbB2)を含むが、これらに限定されない。そのような抗体は、当該技術分野において知られている(例えば、米国特許第5,686,072号;米国特許第5,874,540号;米国特許第6,107,090号;米国特許第6,183,744号;米国特許第6,306,393号;米国特許第6,653,104号;米国特許第6,730.300号;米国特許第6,899,864号;米国特許第6,926,893号;米国特許第6,962,702号;米国特許第7,074,403号;米国特許第7,230,084号;米国特許第7,238,785号;米国特許第7,238,786号;米国特許第7,256,004号;米国特許第7,282,567号;米国特許第7,300,655号;米国特許第7,312,318号;米国特許第7,585,491号;米国特許第7,612,180号;米国特許第7,642,239号;及び米国特許出願公開第20050271671号;米国特許出願公開第20060193865号;米国特許出願公開第20060210475号;米国特許出願公開第20070087001;それぞれの実施例の項は、参照により本明細書に組み込まれる)。有用な特定の既知の抗体は、hPAM4(米国特許第7,282,567号)、hA20(米国特許第7,251,164号)、hA19(米国特許第7,109,304号)、hIMMU−31(米国特許第7,300,655号)、hLL1(米国特許第7,312,318号)、hLL2(米国特許第7,074,403号)、hMu−9(米国特許第7,387,773号)、hL243(米国特許第7,612,180号)、hMN−14(米国特許第6,676,924号)、hMN−15(米国特許第7,541,440号)、hR1(米国特許出願第12/772,645号)、hRS7(米国特許第7,238,785号)、hMN−3(米国特許第7,541,440号)、AB−PG1−XG1−026(米国特許出願第11/983,372号、ATCC PTA−4405及びPTA−4406として寄託)並びにD2/B(WO2009/130575)を含み、それぞれの列挙された特許又は特許出願の文章は、図面及び実施例の項に関して、参照により本明細書に組み込まれる。
説明された複合体を使用して標的化され得る他の有用な抗原は、炭酸脱水酵素IX、B7、CCCL19、CCCL21、CSAp、HER−2/neu、BrE3、CD1、CD1a、CD2、CD3、CD4、CD5、CD8、CD11A、CD14、CD15、CD16、CD18、CD19、CD20(e.g.、C2B8、hA20、1F5MAbs)、CD21、CD22、CD23、CD25、CD29、CD30、CD32b、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD44、CD45、CD46、CD52、CD54、CD55、CD59、CD64、CD67、CD70、CD74、CD79a、CD80、CD83、CD95、CD126、CD133、CD138、CD147、CD154、CEACAM5、CEACAM6、CTLA4、アルファ−フェトプロテイン(AFP)、VEGF(例えば、AVASTIN(登録商標)、フィブロネクチンスプライス変異)、ED−Bフィブロネクチン(例えば、L19)、EGP−1(TROP−2)、EGP−2(例えば、17−1A)、EGF受容体(ErbB1)(例えば、ERBITUX(登録商標))、ErbB2、ErbB3、H因子、FHL−1、Flt−3、葉酸受容体、Ga733、GRO−β、HMGB−1、低酸素誘導因子(HIF)、HM1.24、HER−2/neu、インスリン様成長因子(ILGF)、IFN−γ、IFN−α、IFN−β、IFN−λ、IL−2R、IL−4R、IL−6R、IL−13R、IL−15R、IL−17R、IL−18R、IL−2、IL−6、IL−8、IL−12、IL−15、IL−17、IL−18、IL−25、IP−10、IGF−1R、Ia、HM1.24、ガングリオシド、HCG、L243が結合するHLA−DR抗原、CD66抗原、すなわちCD66a−d又はそれらの組み合わせ、MAGE、mCRP、MCP−1、MIP−1A、MIP−1B、マクロファージ遊走阻止因子(MIF)、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、MUC5ac、胎盤成長因子(PlGF)、PSA(前立腺特異的抗原)、PSMA、PAM4抗原、PD1受容体、NCA−95、NCA−90、A3、A33、Ep−CAM、KS−1、Le(y)、メソテリン、S100、テネイシン、TAC、Tn抗原、Thomas−Friedenreich抗原、腫瘍壊死抗原、腫瘍血管形成抗原、TNF−α、TRAIL受容体(R1及びR2)、TROP−2、VEGFR、RANTES、T101、及びがん幹細胞抗原、補体因子C3、C3a、C3b、C5a、C5、並びにがん遺伝子産物を含む。
フローサイトメトリーにより示されるような、また免疫治療に好適な抗体を選択するための指針となり得る、造血悪性細胞に対する好適な抗原(クラスター指定、又はCD)標的の総合的分析は、Craig and Foon,Blood prepublished online January15,2008;DOL10.1182/blood−2007−11−120535である。
CD66抗原は、癌胎児性抗原(CEA)遺伝子ファミリーメンバー、BCG、CGM6、NCA、CGM1及びCEAによりそれぞれコードされた、同様の構造を有する5つの異なる糖タンパク質CD66a〜eからなる。これらのCD66抗原(例えば、CEACAM6)は、顆粒球、消化管の正常上皮細胞及び様々な組織の腫瘍細胞において主に発現する。また、がんの好適な標的として含まれるのは、がん精巣抗原、例えばNY−ESO−1(Theurillat et al.,Int.J.Cancer2007;120(11):2411−7)だけでなく、骨髄性白血病(Kozlov et al.,Cancer Genet.Cytogenet.2005;163(1):62−7)及びB細胞疾患におけるCD79a、並びに非ホジキンリンパ腫(Poison et al.,Blood110(2):616−623)のCD79bである。いくつかの上述の抗原が、2002年11月15日に出願された米国仮特許出願第60/426,379、名称「Use of Multi−specific,Non−covalent Complexes for Targeted Delivery of Therapeutics」において開示されている。より治療抵抗性の前駆体悪性細胞集団とみなされるがん幹細胞(Hill and Perris,J.Natl.Cancer Inst.2007;99:1435−40)は、ある特定のがんの種類において標的化され得る抗原、例えば前立腺癌(Maitland et al.,Ernst Schering Found.Sympos.Proc.2006;5:155−79)、非小細胞肺がん(Donnenberg et al.,J.Control Release2007;122(3):385−91)、及び膠芽腫(Beier et al.,Cancer Res.2007;67(9):4010−5)におけるCD133、並びに結腸直腸がん(Dalerba er al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA2007;104(24)10158−63)、膵臓がん(Li et al.,Cancer Res.2007;67(3):1030−7)、及び頭頸部扁平上皮癌(Prince et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA2007;104(3)973−8)におけるCD44を有する。
抗がん抗体は、いくつかの場合において、ヒストンに結合することが示されている。Katoら(1991,Hum Antibodies Hybridomas2:94−101)は、肺がん特異的ヒトモノクローナル抗体HB4C5がヒストンH2Bに結合することを報告した。Garzelliら(1994,Immunol Lett39:277−82)は、Epstein−Barrウイルス形質転換ヒトBリンパ細胞が、ヒストンに対する自然抗体を産生することを観察した。ある特定の実施形態において、ヒストンに対する抗体は、主題の組み合わせにおいて有用となり得る。既知の抗ヒストン抗体は、BWA−3(抗ヒストンH2A/H4)、LG2−1(抗ヒストンH3)、MRA12(抗ヒストンH1)、PR1−1(抗ヒストンH2B)、LG11−2(抗ヒストンH2B)、及びLG2−2(抗ヒストンH2B)を含むが、これらに限定されない(例えば、Monestier et al.,1991,Eur J Immunol21:1725−31;Monestier et al.,1993,Molec Immunol30:1069−75を参照されたい)。
多発性骨髄腫治療に関して、例えば、CD38及びCD138(Stevenson,Mol Med2006;12(11−12):345−346;Tassone et al.,Blood2004;104(12):3688−96)、CD74(Stein et al.,同書)、CS1(Tai et al.,Blood2008;112(4):1329−37)、及びCD40(Tai et al.,2005;Cancer Res.65(13):5898−5906)に対する好適な標的化抗体が説明されている。
マクロファージ遊走阻止因子(MIF)は、自然及び適応免疫及びアポトーシスの重要な制御因子である。CD74は、MIFの内因性受容体であることが報告されている(Leng et al.,2003,J Exp Med197:1467−76)。MIF媒介細胞内経路に対するアンタゴニスト抗CD74抗体の治療効果は、広範な疾患状態、例えば膀胱、前立腺、乳房、肺、結腸のがん、及び慢性リンパ性白血病の治療に有用となり得る(例えば、Meyer−Siegler et al.,2004,BMC Cancer12:34;Shachar&Haran,2011,Leuk Lymphoma52:1446−54)。ミラツズマブ(hLL1)は、MIF媒介疾患の治療のための治療用途の例示的な抗CD74抗体である。
最も好ましい抗体/抗原対の例は、抗CD74MAb(不変鎖、クラスII特異的シャペロン、Ii)であるLL1である(例えば、米国特許第6,653,104号;米国特許第7,312,318号を参照されたく;それぞれの実施例の項は、参照により本明細書に組み込まれる)。CD74抗原は、B細胞リンパ腫(多発性骨髄腫を含む)及び白血病、ある特定のT細胞リンパ腫、黒色腫、結腸、肺、及び腎臓がん、膠芽腫、並びにある特定の他のがんに対して高度に発現する(Ong et al.,Immunology98:296−302(1999))。がんにおけるCD74抗体の使用の検討は、参照により本明細書に組み込まれる、Stein et al.,Clin Cancer Res.2007Sep15;13(18Pt2):5556s−5563sに含まれている。抗CD74抗体により好ましく治療される疾患は、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、黒色腫、肺、腎臓、結腸がん、多形性膠芽腫、組織球腫、骨髄性白血病、及び多発性骨髄腫を含むが、これらに限定されない。
別の好ましい実施形態において、病原体に対する抗体が既知であるため、病原体に対して治療の組み合わせを使用することができる。例えば、例として細菌、リケッチア、マイコプラズマ、原虫、真菌及びウイルス等の病原体、並びにそのような微生物に関連した抗原及び生成物により引き起こされる、ウイルス、細菌、真菌及び寄生虫感染を含む感染病巣により生成された、又はそれに関連したマーカーに特異的に結合する抗体及び抗体断片が、とりわけ、それぞれの実施例の項が参照により本明細書に組み込まれる、Hansen et al.、米国特許第3,927,193号及びGoldenberg、米国特許第4,331,647号、米国特許第4,348,376号、米国特許第4,361,544号、米国特許第4,468,457号、米国特許第4,444,744号、米国特許第4,818,709号及び米国特許第4,624,846号において、並びにReichert及びDewitz(Nat Rev Drug Discovery2006;5:191−195)において開示されている。感染性生物に対する抗体(抗毒素及び抗ウイルス抗体)並びに他の標的を列挙した検討は、参照により本明細書に組み込まれるCasadevall,Clin Immunol1999;93(1):5−15に含まれている。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureaus)(カタログ番号011−90−05)、ストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalactiae)(カタログ番号011−90−08)、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)(カタログ番号01−90−07)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)(カタログ番号01−93−94)、ライム病ボレリア(Borrelia burgdorferi)(カタログ番号05−97−91)、大腸菌(Escherichia coli)(カタログ番号01−95−91;01−95−96)、レジオネラ種(Legionella spp.)(カタログ番号01−90−03)、リステリア種(Listeria spp.)(カタログ番号01−90−90)、コレラ菌(Vibrio cholera)(カタログ番号01−90−50)、シゲラ種(Shigella spp.)(カタログ番号16−90−01)、及びカンピロバクター種(Campylobacter spp.)(カタログ番号01−92−93)を含む、広範なヒト病原体に対する抗体(例えばKPL,Inc.、Gaithersburg、MD)が市販されている。
好ましい実施形態において、病原体は、その実施例の項が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,440,416号において開示されるように、HIVウイルス、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、ストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalactiae)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、レジオネラ・ニューモフィリア(Legionella pneumophilia)、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、大腸菌(Escherichia coli)、ナイセリア・ゴノレー(Neisseria gonorrhoeae)、ナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meningitidis)、肺炎球菌(Pneumococcus)、クリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ヒストプラスマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、ヘモフィリスインフルエンザB(Hemophilis influenzae B)、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)、ライム病スピロヘータ、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、らい菌(Mycobacterium leprae)、ウシ流産菌(Brucella abortus)、狂犬病ウイルス、インフルエンザウイルス、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルスI、単純ヘルペスウイルスII、ヒト血清パルボ様ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス麻疹ウイルス、アデノウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、Epstein−Barrウイルス、マウス白血病ウイルス、ムンプスウイルス、水疱性口内炎ウイルス、シンドビスウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、疣ウイルス、ブルータングウイルス、センダイウイルス、ネコ白血病ウイルス、レオウイルス、ポリオウイルス、シミアンウイルス40、マウス乳がんウイルス、デングウイルス、風疹ウイルス、西ナイルウイルス、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)、ランゲルトリパノソーマ(Trypanosoma rangeli)、クルーズトリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)、ローデシアトリパノソーマ(Trypanosoma rhodesiensei)、ブルーストリパノソーマ(Trypanosoma brucei)、マンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)、日本住血吸虫(Schistosoma japonicum)、ウシバベシア(Babesia bovis)、鶏盲腸コクシジウム(Elmeria tenella)、回旋糸状虫(Onchocerca volvulus)、熱帯リーシュマニア(Leishmania tropica)、旋毛虫(Trichinella spiralis)、タイレリア・パルバ(Theileria parva)、胞状条虫(Taenia hydatigena)、ヒツジ条虫(Taenia ovis)、無鉤条虫(Taenia saginata)、単包条虫(Echinococcus granulosus)、メソセストイド コルチ(Mesocestoides corti)、マイコプラズマ・アルスリチジス(Mycoplasma arthritidis)、マイコプラズマ・ヒオルヒニス(M.hyorhinis)、マイコプラズマ・オラレ(M.orale)、マイコプラズマ・アルギニニ(M.arginini)、アコレプラズマ・ライドラウィー(Acholeplasma laidlawii)、マイコプラズマ・サリバリウム(M.salivarium)並びに肺炎マイコプラズマ(M.pneumoniae)からなる群から選択される。
様々な実施形態において、請求される方法及び組成物は、当該技術分野において知られている様々な抗体のいずれかを使用し得る。有用な抗体は、いくつかの知られた供給元から商業的に得ることができる。例えば、様々な抗体分泌ハイブリドーマ株が、American Type Culture Collection(ATCC、Manassas、VA)から入手可能である。腫瘍関連抗原を含むがこれに限定されない様々な疾患標的に対する多数の抗体が、ATCCに寄託されており、及び/又は可変領域配列を公開しており、請求される方法及び組成物における使用に利用可能である。例えば、米国特許第7,312,318号;米国特許第7,282,567号;米国特許第7,151,164号;米国特許第7,074,403号;米国特許第7,060,802号;米国特許第7,056,509号;米国特許第7,049,060号;米国特許第7,045,132号;米国特許第7,041,803号;米国特許第7,041,802号;米国特許第7,041,293号;米国特許第7,038,018号;米国特許第7,037,498号;米国特許第7,012,133号;米国特許第7,001,598号;米国特許第6,998,468号;米国特許第6,994,976号;米国特許第6,994,852号;米国特許第6,989,241号;米国特許第6,974,863号;米国特許第6,965,018号;米国特許第6,964,854号;米国特許第6,962,981号;米国特許第6,962,813号;米国特許第6,956,107号;米国特許第6,951,924号;米国特許第6,949,244号;米国特許第6,946,129号;米国特許第6,943,020号;米国特許第6,939,547号;米国特許第6,921,645号;米国特許第6,921,645号;米国特許第6,921,533号;米国特許第6,919,433号;米国特許第6,919,078号;米国特許第6,916,475号;米国特許第6,905,681号;米国特許第6,899,879号;米国特許第6,893,625号;米国特許第6,887,468号;米国特許第6,887,466号;米国特許第6,884,594号;米国特許第6,881,405号;米国特許第6,878,812号;米国特許第6,875,580号;米国特許第6,872,568号;米国特許第6,867,006号;米国特許第6,864,062号;米国特許第6,861,511号;米国特許第6,861,227号;米国特許第6,861,226号;米国特許第6,838,282号;米国特許第6,835,549号;米国特許第6,835,370号;米国特許第6,824,780号;米国特許第6,824,778号;米国特許第6,812,206号;米国特許第6,793,924号;米国特許第6,783,758号;米国特許第6,770,450号;米国特許第6,767,711号;米国特許第6,764,688号;米国特許第6,764,681号;米国特許第6,764,679号;米国特許第6,743,898号;米国特許第6,733,981号;米国特許第6,730,307号;米国特許第6,720,155号;米国特許第6,716,966号;米国特許第6,709,653号;米国特許第6,693,176号;米国特許第6,692,908号;米国特許第6,689,607号;米国特許第6,689,362号;米国特許第6,689,355号;米国特許第6,682,737号;米国特許第6,682,736号;米国特許第6,682,734号;米国特許第6,673,344号;米国特許第6,653,104号;米国特許第6,652,852号;米国特許第6,635,482号;米国特許第6,630,144号;米国特許第6,610,833号;米国特許第6,610,294号;米国特許第6,605,441号;米国特許第6,605,279号;米国特許第6,596,852号;米国特許第6,592,868号;米国特許第6,576,745号;米国特許第6,572;856号;米国特許第6,566,076号;米国特許第6,562,618号;米国特許第6,545,130号;米国特許第6,544,749号;米国特許第6,534,058号;米国特許第6,528,625号;米国特許第6,528,269号;米国特許第6,521,227号;米国特許第6,518,404号;米国特許第6,511,665号;米国特許第6,491,915号;米国特許第6,488,930号;米国特許第6,482,598号;米国特許第6,482,408号;米国特許第6,479,247号;米国特許第6,468,531号;米国特許第6,468,529号;米国特許第6,465,173号;米国特許第6,461,823号;米国特許第6,458,356号;米国特許第6,455,044号;米国特許第6,455,040号;米国特許第6,451,310号;米国特許第6,444,206号;米国特許第6,441,143号;米国特許第6,432,404号;米国特許第6,432,402号;米国特許第6,419,928号;米国特許第6,413,726号;米国特許第6,406,694号;米国特許第6,403,770号;米国特許第6,403,091号;米国特許第6,395,276号;米国特許第6,395,274号;米国特許第6,387,350号;米国特許第6,383,759号;米国特許第6,383,484号;米国特許第6,376,654号;米国特許第6,372,215号;米国特許第6,359,126号;米国特許第6,355,481号;米国特許第6,355,444号;米国特許第6,355,245号;米国特許第6,355,244号;米国特許第6,346,246号;米国特許第6,344,198号;米国特許第6,340,571号;米国特許第6,340,459号;米国特許第6,331,175号;米国特許第6,306,393号;米国特許第6,254,868号;米国特許第6,187,287号;米国特許第6,183,744号;米国特許第6,129,914号;米国特許第6,120,767号;米国特許第6,096,289号;米国特許第6,077,499号;米国特許第5,922,302号;米国特許第5,874,540号;米国特許第5,814,440号;米国特許第5,798,229号;米国特許第5,789,554号;米国特許第5,776,456号;米国特許第5,736,119号;米国特許第5,716,595号;米国特許第5,677,136号;米国特許第5,587,459号;米国特許第5,443,953、米国特許第5,525,338を参照されたく、これらのそれぞれの実施例の項は、参照により本明細書に組み込まれる。これらは単なる例であり、広範な他の抗体及びそれらのハイブリドーマが当該技術分野において知られている。当業者には、ATCC、NCBI及び/又はUSPTOデータベースにおける選択された対象疾患関連標的に対する抗体の単純な検索により、ほぼあらゆる疾患関連抗原に対する抗体配列又は抗体分泌ハイブリドーマを得ることができることが理解される。クローニングされた抗体の抗原結合ドメインは、当該技術分野において周知の標準的技術を使用して、増幅され、切断され、発現ベクター内にライゲーションされ、適応宿主細胞内にトランスフェクトされ、タンパク質生成に使用され得る(例えば、米国特許第7,531,327号;米国特許第7,537,930号;米国特許第7,608,425号及び米国特許第7,785,880号を参照されたく、これらのそれぞれの実施例の項は、参照により本明細書に組み込まれる)。
他の実施例において、抗体複合物は、MHCクラスI、MHCクラスII又はアクセサリー分子、例えばCD40、CD54、CD80又はCD86に結合する。また、抗体複合物は、白血球活性化サイトカイン、又はサイトカインメディエーター、例えばNF−κBに結合し得る。
ある特定の実施形態において、2つの異なる標的のうちの1つは、がん細胞受容体又はがん関連抗原、特にB細胞系統抗原(CD19、CD20、CD21、CD22、CD23等)、VEGF、VEGFR、EGFR、癌胎児性抗原(CEA)、胎盤成長因子(PlGF)、テネイシン、HER−2/neu、EGP−1、EGP−2、CD25、CD30、CD33、CD38、CD40、CD45、CD52、CD74、CD80、CD138、NCA66、CEACAM1、CEACAM6(癌胎児性抗原関連細胞接着分子6)、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、MUC16、IL−6、α−フェトプロテイン(AFP)、A3、CA125、結腸特異的抗原−p(CSAp)、葉酸受容体、HLA−DR、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)、Ia、EL−2、インスリン様成長因子(IGF)及びIGF受容体、KS−1、Le(y)、MAGE、壊死抗原、PAM−4、前立腺酸性フォスファターゼ(PAP)、Pr1、前立腺特異的抗原(PSA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、S100、T101、TAC、TAG72、TRAIL受容体、並びに炭酸脱水酵素IXからなる群から選択されるものであってもよい。
使用され得る他の抗体は、細菌、ウイルス、マイコプラズマ又は他の病原体等の感染性疾患物質に対する抗体を含む。そのような感染性物質に対する多くの抗体が当該技術分野において知られており、任意のそのような既知の抗体が、請求される方法及び組成物において使用され得る。例えば、ヒト免疫不全ウイルスI(HIV−1)のgp120糖タンパク質抗原に対する抗体が知られており、そのような抗体のいくつかは、ヒトにおける免疫防御的役割を有し得る。例えば、Rossi et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.86:8055−8058,1990を参照されたい。既知の抗HIV抗体は、Johanssonら(AIDS,2006Oct3;20(15):1911−5)により説明されるような抗エンベロープ抗体、並びにPolymun(Vienna、Austria)により説明及び販売され、また全て参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,831,034号、米国特許第5,911,989号及びVcelar et al.,AIDS2007;21(16):2161−2170及びJoos et al.,Antimicrob.Agents Chemother.2006;50(5):1773−9にも記載されている抗HIV抗体を含む。
マラリア原虫に対する抗体は、スポロゾイト、メロゾイト、シゾント及び生殖母細胞段階に対して指向性であってもよい。スポロゾイトに対するモノクローナル抗体が生成されており(スポロゾイト周囲抗原)、in vitroで、及びげっ歯類においてスポロゾイトを中和することが示されている(N.Yoshida et al.,Science207:71−73,1980)。いくつかのグループは、トキソプラズマ症に関与する寄生原虫であるトキソプラズマ原虫(T.gondii)に対する抗体を開発した(Kasper et al.,J.Immunol.129:1694−1699,1982;同上,30:2407−2412,1983)。幼住血吸虫表面抗原に対する抗体が開発されており、in vivo又はin vitroで幼住血吸虫に対し作用することが判明している(Simpson et al.,Parasitology,83:163−177,1981;Smith et al.,Parasitology,84:83−91,1982:Gryzch et al.,J.Immunol.,129:2739−2743,1982;Zodda et al.,J.Immunol.129:2326−2328,1982;Dissous et al.,J.Immunol.,129:2232−2234,1982)。
クルーズトリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)は、シャーガス病の原因物質であり、吸血性昆虫サシガメにより伝染する。In vitroで寄生虫の1つの形態から別の形態への(上鞭毛型から錐鞭毛期への)分化を特異的に阻害する抗体が生成されており、これは細胞表面糖タンパク質と反応するが、この抗原は、哺乳動物(血流)形態の寄生虫には存在しない(Sher et al.,Nature,300:639−640,1982)。
抗菌核病菌抗体(米国特許第7,910,702号);抗グルクロノキシロマンナン抗体(Zhong and Priofski,1998,Clin Diag Lab Immunol5:58−64);抗カンジダ抗体(Matthews and Burnie,2001,Curr Opin Investig Drugs2:472−76);及び抗スフィンゴ糖脂質抗体(Toledo et al.,2010,BMC Microbiol10:47)等の抗真菌抗体が、当該技術分野において知られている。
ヒトにおける感染症の大多数に関与する微生物(細菌、ウイルス、原虫、真菌、他の寄生虫)のほとんどに対して好適な抗体が開発されており、多くが以前にin vitro診断目的で使用されている。従来の方法により生成され得るこれらの抗体、及びより新しい抗体は、本発明における使用に好適である。
免疫抱合体
ある特定の実施形態において、抗体又はその断片は、1種以上の治療又は診断薬剤に複合化されてもよい。治療薬剤は、同じである必要はなく、異なっていてもよく、例えば薬物及び放射性同位体であってもよい。例えば、131Iは、抗体又は融合タンパク質のチロシンに組み込まれてもよく、また薬物がリシン残基のイプシロンアミノ基に結合してもよい。治療及び診断薬剤はまた、例えば、還元されたSH基及び/又は炭水化物側鎖に結合してもよい。治療又は診断薬剤の抗体又は融合タンパク質との共有結合的又は非共有結合的複合体を作製するための多くの方法が、当該技術分野において知られており、任意のそのような知られた方法が使用され得る。
治療又は診断薬剤は、ジスルフィド結合形成により、還元された抗体成分のヒンジ領域に結合し得る。代替として、そのような薬剤は、N−スクシニル3−(2−ピリジルジチオ)プロパノエート(SPDP)等のヘテロ二機能性架橋剤を使用して結合し得る。Yu et al.,Int.J.Cancer56:244(1994)。そのような複合化のための一般的技術は、当該技術分野において周知である。例えば、Wong,CHEMISTRY OF PROTEIN CONJUGATION AND CROSS−LINKING(CRC Press1991);Upeslacis et al.,“Modification of Antibodies by Chemical Methods,”in MONOCLONAL ANTIBODIES:PRINCIPLES AND APPLICATIONS,Birch et al.(eds.),pages187−230(Wiley−Liss,Inc.1995);Price,“Production and Characterization of Synthetic Peptide−Derived Antibodies,”in MONOCLONAL ANTIBODIES: PRODUCTION,ENGINEERING AND CLINICAL APPLICATION,Ritter et al.(eds.),pages60−84(Cambridge University Press1995)を参照されたい。代替として、治療又は診断薬剤は、抗体のFc領域における炭水化物部分を介して複合化し得る。炭水化物基は、チオール基に結合した同じ薬剤の投入量を増加させるために使用されてもよく、又は、炭水化物部分は、異なる治療又は診断薬剤を結合させるために使用されてもよい。
抗体炭水化物部分を介してペプチドを抗体成分に複合化するための方法は、当業者に周知である。例えば、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる、Shih et al.,Int.J.Cancer41:832(1988);Shih et al.,Int.J.Cancer46:1101(1990);及びShihらの米国特許第5,057,313号を参照されたい。一般的方法は、酸化された炭水化物部分を有する抗体成分を、少なくとも1つの遊離アミン基を有する担体ポリマーと反応させることを含む。この反応は、最初のSchiff塩基(イミン)結合をもたらし、これは、最終複合体を形成する2級アミンへの還元により安定化され得る。
免疫抱合体の抗体成分として使用される抗体が抗体断片である場合、Fc領域は存在しなくてもよい。しかしながら、炭水化物部分を、全長抗体又は抗体断片の軽鎖可変領域に導入することが可能である。例えば、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる、Leung et al.,J.Immunol.154:5919(1995);Hansen et al.、米国特許第5,443,953号(1995)、Leung et al.、米国特許第6,254,868号を参照されたい。治療又は診断薬剤を結合させるために、操作された炭水化物部分が使用される。
いくつかの実施形態において、キレート剤が、抗体、抗体断片又は融合タンパク質に結合してもよく、治療又は診断薬剤、例えば放射性核種をキレート化するために使用されてもよい。例示的なキレート剤は、DTPA(例えばMx−DTPA)、DOTA、TETA、NETA又はNOTAを含むが、これらに限定されない。金属又は他のリガンドをタンパク質に結合させるための複合化の方法及びキレート剤の使用は、当該技術分野において周知である(例えば、米国特許第7,563,433号を参照されたく、その実施例の項は、参照により本明細書に組み込まれる)。
ある特定の実施形態において、イオンを結合させるための複数のキレート基が結合し得る長いテールを有する試薬との反応により、放射性金属又は常磁性イオンがタンパク質又はペプチドに結合してもよい。そのようなテールは、ポリマー、例えばポリリシン、ポリサッカリド、又はキレート基が結合し得るペンダント基を有する他の誘導体化若しくは誘導可能な鎖、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ポルフィリン、ポリアミン、クラウンエーテル、ビス−チオセミカルバゾン、ポリオキシム、及びこの目的に有用であることが知られている同様の基であってもよい。
キレートは、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第4,824,659号において開示されるように、抗体又はペプチドに直接連結してもよい。特に有用な金属−キレートの組み合わせは、放射性画像化法のための60〜4,000keVの一般的なエネルギー範囲内の診断用同位体、例えば125I、131I、123I、124I、62Cu、64Cu、18F、111In、67Ga、68Ga、99mTc、94mTc、11C、13N、15O、76Brと共に使用される、2−ベンジル−DTPA並びにそのモノメチル及びシクロヘキシル類似体を含む。マンガン、鉄及びガドリニウム等の非放射性金属と錯化した場合、同じキレートがMRIに有用である。NOTA、DOTA、及びTETA等の大環状キレートは、様々な金属及び放射性金属と共に、最も具体的にはそれぞれガリウム、イットリウム及び銅の放射性核種と共に使用される。そのような金属−キレート錯体は、対象となる金属に対し環サイズを調整することにより非常に安定とすることができる。RAITのための223Ra等の核種を安定に結合させるのに興味深い大環状ポリエーテル等の他の環型キレートが包含される。
より最近では、例えばF−18と金属又は他の原子、例えばアルミニウムとの反応による、PETスキャニング技術において有用な18F−標識化の方法が開示されている。18F−Al複合体は、抗体に直接結合する、又は事前標的化方法において標的化可能なコンストラクトを標識化するために使用されるDOTA、NOTA又はNETA等のキレート基と錯化され得る。そのようなF−18標識化技術は、米国特許第7,563,433号において開示されており、その実施例の項は、参照により本明細書に組み込まれる。
別の例示的な免疫抱合体は、Johannson et al.(2006,AIDS20:1911−15)において開示されたが、ドキソルビシン複合化P4/D10(抗gp120)抗体は、HIVに感染した細胞の治療に極めて有効であることが判明した。
カンプトテシン複合体
ある特定の好ましい実施形態において、免疫抱合体は、SN−38等のカンプトテシン薬を含んでもよい。カンプトテシン(CPT)及びその誘導体は、強力な抗腫瘍薬剤のクラスである。イリノテカン(CPT−11とも呼ばれる)及びトポテカンは、承認されたがん治療薬であるCPT類似体である(Iyer and Ratain,Cancer Chemother.Phamacol.42:S31−S43(1998))。CPTは、トポイソメラーゼI−DNA複合物を安定化することによりトポイソメラーゼI酵素を阻害することによって作用する(Liu,et al.in The Camptothecins:Unfolding Their Anticancer Potential,Liehr J.G.,Giovanella,B.C.and Verschraegen(eds),NY Acad Sci.,NY922:1−10(2000))。
免疫抱合体の好ましい至適投与量は、好ましくは週1回、週2回又は1週間おきに投与される、3mg/kgから20mg/kgの間の用量を含み得る。最適な投薬スケジュールは、2週連続の治療に続く1週間、2週間、3週間若しくは4週間の休息、又は1週間交代の治療及び休息、又は1週間の治療に続く2週間、3週間若しくは4週間の休息、又は3週間の治療に続く1週間、2週間、3週間若しくは4週間の休息、又は4週間の治療に続く1週間、2週間、3週間若しくは4週間の休息、又は5週間の治療に続く1週間、2週間、3週間、4週間若しくは5週間の休息、又は2週間に1回、3週間に1回若しくは1ヶ月に1回の投与の治療サイクルを含み得る。治療は、任意の数のサイクル、好ましくは少なくとも2、少なくとも4、少なくとも6、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも14、又は少なくとも16サイクルだけ延長されてもよい。用量は、24mg/kgまでであってもよい。有用な例示的用量は、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、11mg/kg、12mg/kg、13mg/kg、14mg/kg、15mg/kg、16mg/kg、17mg/kg、18mg/kg、19mg/kg、20mg/kg、22mg/kg及び24mg/kgを含み得る。好ましい用量は、4、6、8、9、10、12、14、16又は18mg/kgである。当業者には、年齢、全体的な健康、特定の器官機能又は重量、及び特定の器官系(例えば骨髄)に対する以前の治療の効果等の様々な因子が、免疫抱合体の最適な用量の選択において考慮され得ること、並びに、用量及び/又は投与頻度が、治療の間に増加又は減少され得ることが理解される。投薬は、必要に応じて反復され、わずか4〜8回の投薬後に腫瘍収縮の痕跡が観察されてもよい。本明細書において開示される最適化された用量及び投与スケジュールは、ヒト対象における予想外の著しい効力及び低減された毒性を示し、これは動物モデル試験から予測され得なかった。驚くべきことに、著しい効力によって、SN−38がin vivoで得られる親化合物CPT−11を含む1種以上の標準的抗がん治療に対して抵抗性であることが以前に判明した腫瘍の治療が可能となる。
例示的な好ましい実施形態は、薬物誘導体及び一般式1の抗体の複合体に関し、
MAb−[L2]−[L1]−[AA]m−[A’]−薬物(1)
式中、MAbは、疾患標的化抗体であり;L2は、抗体結合部分とアセチレン(又はアジド)基の1つ以上とを含む架橋剤の成分であり;L1は、L2におけるアセチレン(又はアジド)部分に相補的なアジド(又はアセチレン)を一端に有し、カルボン酸又はヒドロキシル基等の反応基を他端に有する明確なPEGを含み;AAは、L−アミノ酸であり;mは、0、1、2、3、又は4の値を有する整数であり;A’は、エタノールアミン、4−ヒドロキシベンジルアルコール、4−アミノベンジルアルコール、又は置換若しくは非置換エチレンジアミンの群から選択される追加的なスペーサである。「AA」のLアミノ酸は、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリンから選択される。A’基がヒドロキシルを含有する場合、カーボネート又はカルバメートの形態でそれぞれ薬物のヒドロキシル基又はアミノ基に連結される。
式1の好ましい実施形態において、A’は、L−アミノ酸から得られる置換エタノールアミンであり、アミノ酸のカルボン酸基は、ヒドロキシメチル部分により置き換えられている。A’は、以下のL−アミノ酸:アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリンのいずれか1つから得ることができる。
式1の好ましい実施形態の複合体の例において、mは0であり、A’はL−バリノールであり、薬物はSN−38により例示される。得られる構造は、式2に示される。
式1の好ましい実施形態の複合体の別の例において、mは1であり、誘導体化L−リシンにより表され、A’はL−バリノールであり、薬物はSN−38により例示される。構造は、式3に示される。
この実施形態において、まず、リシン等のアミノ酸のカルボン酸とバリノールのアミノ基との間に、リシンアミノ基の直交保護基を使用してアミド結合が形成される。リシンの側鎖上の保護基は無傷に保ちながらリシンのN末端上の保護基が除去され、N末端は、他端にアジド(又はアセチレン)を有する明確なPEG上のカルボキシル基にカップリングされる。次いで、バリノールのヒドロキシル基は、10−ヒドロキシ保護SN−38の20−クロロホルメート誘導体に結合し、この中間体は、抗体結合部分、及びクリック付加環化化学に関与する相補的アセチレン(又はアジド)基を保持するL2成分にカップリングされる。最後に、リシン側鎖及びSN−38の両方における保護基の除去により、式2に示されるこの例の生成物が得られる。
別の好ましい実施形態において、一般式2のA’は、A−OHであり、A−OHは、4−アミノベンジルアルコール又はベンジル位置においてC1〜C10アルキル基で置換された置換4−アミノベンジルアルコール等の折り畳み可能な部分であり、後者は、そのアミノ基を介して、L−アミノ酸又は4つまでのL−アミノ酸部分を含むポリペプチドに結合し;N末端は、抗体結合基で終端する架橋剤に結合する。
好ましい実施形態の例を以下に示すが、一般式(1)のA’のA−OH実施形態は、置換4−アミノベンジルアルコールから得られ、「AA」は、一般式(1)においてm=1である単一のL−アミノ酸を含み、薬物は、SN−38で例示される。構造は以下に示される(式2、MAb−CLX−SN−38と呼ばれる)。AAの単一のアミノ酸は、以下のL−アミノ酸:アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリンのいずれか1つから選択される。4−アミノベンジルアルコール部分(A’のA−OH実施形態)上の置換基Rは、水素、又はC1〜C10アルキル基から選択されるアルキル基である。
単一のアミノ酸AAがL−リシンであり、R=Hであり、薬物がSN−38で例示される(式5;MAb−CL2A−SN−38と呼ばれる)式4のMAb−CLX−SN−38の一実施形態。CL2A−SN−38を調製する方法、並びにその抗体複合体を作製及び使用するための方法は、当該技術分野において知られている(例えば、米国特許第7,999,083号及び米国特許第8,080,250号を参照されたく、それぞれの実施例の項は、参照により本明細書に組み込まれる)。
Pro−2−ピロリノドキソルビシン複合体
化合物2−ピロリノドキソルビシンは、1996年、Schallyのグループにより初めて説明され、彼らは後に、それを臨床前調査のためのいくつかの受容体標的化ペプチドの複合化に使用した(Nagy et al.,1996,Proc Natl Aad Sci USA93:7269−73;Nagy et al.,1996,Proc Natl Acad Sci USA96:2464−29)。これは、ダウノサミン窒素が5員エナミンに組み込まれたドキソルビシンの誘導体であり、そのため極めて強力なアルキル化剤であり、ドキソルビシンの500〜1000倍の細胞毒性を有する。その薬物の極めて高い毒性により、安全性のためにアイソレーターにおいて特別な取り扱いが必要である。この薬物のプロドラッグ形態は、N−(4,4−ジアセトキシブチル)ドキソルビシンであり、これはin vivoで2−ピロリノドキソルビシンに変換される。Pro−2−ピロリノドキソルビシン(Pro−2−P−Dox)は、本明細書において開示されるように調製され、ADC治療における使用のために抗体又は抗体断片に複合化され得る。
以下のスキームは、Dox、2−PDox、Pro−2−P−Dox(P2PDox)、及び活性化Pro−2−P−Doxの構造を示す。IgGへのカップリングのために、Pro−2−P−Doxは、SMCC−ヒドラジドで活性化されてもよく、これは、酸に不安定なヒドラゾン及びマレイミド基を導入する手順であり、後者は、穏やかに還元された抗体のチオールへの複合化のためのものである。
現在臨床的に試験されているADCのほとんどは、チューブリン作用性の極めて毒性のメイタンシノイド及びオーリスタチンを組み込んでいるが、これは細胞周期段階特異的である。ちなみに、トラツズマブ−DM1を除き、これらのADCは、固形がんにおいて臨床的に比較的狭い治療指数を示すようである。2−PDox等のDNAアルキル化剤は、細胞周期段階非特異的であり、改善された治療指数を提供するはずである。膵臓がん及び胃がんの2つの進行性異種移植片モデルにおける予備的試験(図示せず)では、hRS7−6複合体が低い安全な用量(例えば、2.25mg/kgのタンパク質用量、又は0.064mg/kgの薬物用量)で非常に活性であり、完全退縮をもたらすことが示された。
シアノ水素化ホウ素ナトリウムを用いた4,4−ジアセトキシブチルアルデヒドによるドキソルビシンの還元的アルキル化により、P2PDoxが得られる(以下のスキーム)。市販の4−ベンジルオキシブチルアルデヒドのジアセトキシル化に続く水素化分解及び酸化により、アルデヒドがもたらされ、これが還元的にドキソルビシンにカップリングされてP2PDoxが得られた。後者は、SMCC−ヒドラジドで活性化された。
複合体調製物を穏やかに混合してPBS中のIgGとTCEPとの鎖間ジスルフィドを還元し、続いて10倍過剰の活性化P2PDoxにカップリングさせた。複合体は、25mMヒスチジン、pH7中で平衡化されたSEPHADEX(登録商標)上の遠心分離されたSEC上で精製され、続いて疎水性カラム上を通過させた。生成物をトレハロース及びTween80と配合し、凍結乾燥させた。6〜7薬物/IgGの典型的な置換を有する複合化生成物は、サイズ排除HPLCにより単一ピークとして溶出し、逆相HPLCにより、典型的に1%未満の非複合化遊離薬剤を含有していた。
当業者には、腫瘍及び/又は感染性疾患のADC治療における使用のために、P2PDoxが、本明細書において議論された免疫賦活剤と組み合わせて、任意の既知の抗体又はその断片に複合化されてもよいことが理解される。
二重特異性抗体
様々な実施形態において、主題の併用療法は、白血球再指向bsAb等の1種以上の二重特異性抗体(bsAb)を使用し得る。以下の項は、bsAbがDOCK−AND−LOCK(商標)(DNL(商標))コンストラクトとして作製される好ましい実施形態を議論しているが、他の多くの種類のbsAbが当該技術分野において知られており、請求される併用療法の範囲内で使用され得る。本明細書で使用される場合、二重特異性抗体は、2つの異なる抗原、又は同じ抗原上の2つの異なるエピトープに対する結合部位を含有する抗体である。単一の抗原上の単一のエピトープにのみ結合し得る抗体は、抗体分子上の抗原結合部位の数に関わらず、単一特異性である。
背景技術の項で議論されたように、二重特異性抗体構築の初期の試みは、化学的架橋又はハイブリッドハイブリドーマ若しくはクアドローマを使用して、2つの異なる抗体の2つの半分を互いに接合した(例えば、Staerz et al.,1985,Nature314:628−31;Milstein and Cuello,Nature1983;305:537−540;Karpovsky et al.,1984,J Exp Med160:1686−701)。この技術は、bsAbの作製に役立つが、抗原結合部位の異なる組み合わせを含有する混合集団の生成、タンパク質発現における困難、対象となるbsAbを精製する必要性、低い収率、精製にかかる経費等の様々な生成上の問題が、そのような複合物の使用を困難とした。
より最近のアプローチは、不要な副生成物を除去するための大規模な精製を必要とせずに単一bsAbの均一生成物を生成することができる、遺伝子操作されたコンストラクトを使用している。そのようなコンストラクトは、タンデムscFv、ジアボディ、タンデムジアボディ、二重可変ドメイン抗体、及びCh1/Ckドメイン又はDNL(商標)等のモチーフを用いたヘテロ二量体化を含んでいた(Chames&Baty,2009,Curr Opin Drug Discov Devel12:276−83;Chames&Baty,mAbs1:539−47)。
トリオマブは、ラット/ラット又はマウス/マウスクアドローマにおいて典型的に見られるランダム対合と比較して、組換え抗体を優先的に生成するためにマウスIgG2a及びラットIgG2b抗体の組み合わせを使用するクアドローマアプローチのバリエーションである(Chames&Baty,mAbs1:539−47)。この技術により形成された抗CD3×抗EpCAM bsAb(カツマキソマブ)は、マクロファージ及びNK細胞を効率的に動員し、T細胞を活性化することができた(Chames&Baty,mAbs1:539−47)。上で議論したように、カツマキソマブは、欧州において、EpCAM陽性癌を有する患者における悪性腹水の治療に認可されている(Chames&Baty,mAbs1:539−47)。驚くべきことに、組換えbsAbは、おそらくは腹水に対する腹腔内投与経路に少なくとも一部起因して、ヒトにおいて中程度の抗マウス及び抗ラット反応のみを誘導することが報告された(Chames&Baty,mAbs1:539−47)。エルツマキソマブは、別のトリオマブ標的化HER2であり、これは転移乳がんに有用となり得る。Bi20は、CD20を標的化する別のトリオマブである。in vitroにおいて、Bi20は、CLL患者からのB細胞の効率的な溶解を示した(Chames&Baty,mAbs1:539−47)。
BITE(登録商標)は、短ペプチドリンカーにより連結されたタンデムscFvsを指す(Chames&Baty,mAbs1:539−47)。ブリナツモマブは、非常に低い濃度での非ホジキンリンパ腫及びALL等の血液がんにおける効力が報告されている抗CD19×抗CD3BITE(登録商標)である(Nagorsen et al.,2009,Leukemia&Lymphoma50:886−91;Chames&Baty,mAbs1:539−47;Topp et al.,2012,Blood120:5185−87;Bargou et al.,2008,Science321:974−77)。EpCAMに対する特異性を有する別のBITE(登録商標)は、胃腸、卵巣、結腸直腸及び肺がんにおいて使用されている(Amann et al.,2009,J Immunother32:452−64;Chames&Baty,mAbs1:539−47)。CEACAM5に標的化された別のBITE(登録商標)(MEDI−565)は、黒色腫、結腸直腸、肺、膵臓、胃、卵巣、子宮、及び乳がんにおける使用が提案されている(Sanders et al.,1994,J Pathol172:343−8)。BITE(登録商標)は、ピコモル又はさらにはフェムトモル濃度で抗腫瘍活性を示すことが報告されている(Chames&Baty,mAbs1:539−47)。
2つの異なる既存の抗体から得られる2つの重鎖及び2つの軽鎖のアセンブリを含む、bsAb形成の別の方法は、ヘテロ二量体形成を促進し、ホモ二量体形成を防止するノブから穴への(knobs−into−holes)アプローチに基づいている(Schaefer et al.,2011,Proc Natl.Acad Sci USA108:11187−92)。「CrossMab」技術は、さらに、二重特異性抗体の一方の半分のFab内の重鎖及び軽鎖ドメインを交換し、軽鎖−重鎖誤対合が生じ得ないように2つの腕を異なるものとすることを含む(Schaefer et al.,2011)。ノブから穴への(knobs−into−holes)アプローチは、他の重鎖のCH3ドメイン内の適切に設計された空洞に適合する嵩のある側鎖を有するアミノ酸を、1つの重鎖のCH3ドメインに導入する。アプローチの組み合わせは、重鎖対重鎖及び重鎖対軽鎖相互作用の両方のミスマッチを防止し、主に単一の生成物をもたらす。アンジオポイエチン−2(Ang−2)及びVEGF−Aに対して生成された最初のCrossMabは、親mAbに匹敵する結合特性を示し、強力な抗血管形成及び抗腫瘍活性有していた(Schaefer et al.,2011,Proc Natl.Acad Sci USA108:11187−92;Kienast et al.,Clin Cancer Res,Oct.25,2013,Epub ahead of print)。
上で議論されたようなDART(商標)技術に加えて、bsAb生成の他のアプローチは、四価IgG−scFv融合(Dong e tal.,2011,MAbs3:273−88);二重作用性Fab(DAF)抗体(Bostrom et al.,2009,Science323:1610−14);Igg様二重可変ドメイン抗体(DVD−Ig)(Wu et al.,2007,Nat Biotechnol25:1290−97);及びIgG4分子間の動的交換の使用(van der Neut Kolfschoten et al.,2007,Science317:1554−57)を含んでいた。以下で議論されるDNL技術は、白血球再指向bsAbの形成に好ましいが、当業者には、請求される方法及び組成物において他の種類のbsAbが使用されてもよいことが理解される。
DOCK−AND−LOCK(商標)(DNL(商標))
好ましい実施形態において、単独の、又はサイトカイン等の1種以上のエフェクターに錯化された二重特異性抗体は、DOCK−AND−LOCK(商標)(DNL(商標))複合物として形成される(例えば、米国特許第7,521,056号;米国特許第7,527,787号;米国特許第7,534,866号;米国特許第7,550,143号;米国特許第7,666,400号;米国特許第7,901,680号;米国特許第7,906,118号;米国特許第7,981,398号;米国特許第8,003,111を参照されたく、これらのそれぞれの実施例の項は、参照により本明細書に組み込まれる)。一般に、この技術は、cAMP−依存性タンパク質キナーゼ(PKA)の調節(R)サブユニットの二量体化及びドッキングドメイン(DDD)配列と、様々なAKAPタンパク質のいずれかから得られるアンカードメイン(AD)配列との間に生じる特異的及び高親和性結合相互作用を利用する(Baillie et al.,FEBS Letters.2005;579:3264。Wong and Scott,Nat.Rev.Mol.Cell Biol.2004;5:959)。DDD及びADペプチドは、任意のタンパク質、ペプチド又は他の分子に結合し得る。DDD配列は、自然に二量体化してAD配列に結合するため、この技術は、DDD又はAD配列に結合し得る任意の選択された分子間の複合物の形成を可能とする。
標準的DNL複合物は、1つのAD連結分子に結合した2つのDDD連結分子との三量体を含むが、複合物構造の変動によって二量体、三量体、四量体、五量体、六量体及び他の多量体の形成が可能となる。いくつかの実施形態において、DNL(商標)複合物は、同じ抗原決定因子又は2つ以上の異なる抗原に結合する、2つ以上の抗体、抗体断片又は融合タンパク質を含んでもよい。DNL(商標)複合物はまた、1種以上の他のエフェクター、例えばタンパク質、ペプチド、免疫賦活剤、サイトカイン、インターロイキン、インターフェロン、結合タンパク質、ペプチドリガンド、担体タンパク質、毒素、リボヌクレアーゼ、例えばオンコナーゼ、阻害オリゴヌクレオチド、例えばsiRNA、抗原若しくは異種抗原、ポリマー、例えばPEG、酵素、治療薬剤、ホルモン、細胞毒性薬剤、抗血管形成薬剤、プロアポトーシス薬剤又は任意の他の分子若しくは凝集体を含んでもよい。
Rサブユニットに対する第2のメッセンジャーcAMPの結合により誘導される、最も研究されたシグナル伝達経路の1つにおいて中心的役割を担うPKAは、1968年に初めてウサギ骨格筋から単離された(Walsh et al.,J.Biol.Chem.1968;243:3763)。ホロ酵素の構造は、Rサブユニットにより不活性形態で保持される2つの触媒サブユニットからなる(Taylor,J.Biol.Chem.1989;264:8443)。PKAのアイソザイムは、2種類のRサブユニット(RI及びRII)を有することが判明しており、それぞれの種類がα及びβアイソフォームを有する(Scott,Pharmacol.Ther.1991;50:123)。したがって、PKA調節サブユニットの4つのアイソフォームは、RIα、RIβ、RIIα及びRIIβであり、それらのそれぞれが、DDD部分アミノ酸配列を含む。Rサブユニットは、安定な二量体としてのみ単離されており、二量体化ドメインは、RIIαの最初の44アミノ末端残基からなることが示されている(Newlon et al.,Nat.Struct.Biol.1999;6:222)。以下で議論されるように、他の調節サブユニットのアミノ酸配列の同様の部分が、二量体化及びドッキングに関与し、それぞれ調節サブユニットのN末端の近くに位置する。Rサブユニットに対するcAMPの結合は、広範なセリン/トレオニンキナーゼ活性のための活性触媒サブユニットの放出をもたらし、これは、AKAPとのドッキングを介したPKAの区画化により、選択された基質に配向する(Scott et al.,J.Biol.Chem.1990;265;21561)。
最初のAKAPである微小管結合タンパク質−2は、1984年に特性決定されているため(Lohmann et al.,Proc.Natl.Acad.Sci USA1984;81:6723)、原形質膜、アクチン細胞骨格、核、ミトコンドリア、及び小胞体を含む細胞内の部位に局在化する50を超えるAKAPが、酵母からヒトまでの範囲の種において多様な構造と共に同定されている(Wong and Scott,Nat.Rev.Mol.Cell Biol.2004;5:959)。PKAのAKAPのADは、14〜18残基の両親媒性螺旋である(Carr et al.,J.Biol.Chem.1991;266:14188)。ADのアミノ酸配列は、個々のAKAP間で様々であり、RII二量体に対して報告されている結合親和性は、2〜90nMの範囲である(Alto et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA2003;100:4445)。AKAPは、二量体Rサブユニットにのみ結合する。ヒトRIIαにおいて、ADは、23アミノ末端残基(Colledge and Scott,Trends Cell Biol.1999;6:216)により形成される疎水性表面に結合する。したがって、ヒトRIIαの二量体化ドメイン及びAKAP結合ドメインは共に、同じN末端44アミノ酸配列内に位置し(Newlon et al.,Nat.Struct.Biol.1999;6:222;Newlon et al.,EMBO J.2001;20:1651)、これは本明細書においてDDDと呼ばれる。
我々は、ヒトPKA調節サブユニットのDDD及びAKAPのADを、以後A及びBと称する任意の2つの実体を、非共有結合複合物にドッキングするためのリンカーモジュールの優れた対として利用するためのプラットフォーム技術を開発したが、これは、ジスルフィド結合の形成を促進するために戦略的位置でDDD及びADの両方にシステイン残基を導入することにより、DNL(商標)複合物にさらにロックされ得る。このアプローチの一般的方法論は、以下の通りである。実体Aは、DDD配列をAの前駆体に連結させ、以後aと称する第1の成分をもたらすことにより構築される。DDD配列は二量体の自然形成をもたらすため、Aはこのようにa2で構成される。実体Bは、AD配列をBの前駆体に連結させ、以後bと称する第2の成分をもたらすことにより構築される。a2に含有されるDDDの二量体モチーフは、bに含有されるAD配列への結合のためのドッキング部位を形成し、したがってa2及びbの容易な結合を促進して、a2bで構成される二元的三量体複合物を形成する。この結合イベントは、ジスルフィド架橋により2つのエンティティを共有結合的に固定するその後の反応により安定化され、これは、最初の結合相互作用がDDD及びADの両方に配置された反応性チオール基を接近させ(Chmura et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA2001;98:8480)、部位特異的にライゲーションするはずであるため、効果的な局所濃度の原理に基づいて非常に効率的に生じる。リンカー、調節モジュール及び前駆体の様々な組み合わせを使用して、異なる化学量論の広範なDNLコンストラクトが生成及び使用され得る(例えば、米国特許第7,550,143号;米国特許第7,521,056号;米国特許第7,534,866号;米国特許第7,527,787号、及び米国特許第7,666,400号を参照されたい)。
2つの前駆体の官能基から離してDDD及びADを結合させることにより、そのような部位特異的ライゲーションはまた、2つの前駆体の元の活性を保存すると予測される。このアプローチは、本質的にモジュール式であり、潜在的に、ペプチド、タンパク質、抗体、抗体断片、及び広範な活性を有する他のエフェクター部分を含む広範な物質を、部位特異的及び共有結合的に連結するように適用され得る。以下の実施例に記載されるAD及びDDD複合化エフェクターを構築する融合タンパク質法を使用して、事実上任意のタンパク質又はペプチドをDNL(商標)コンストラクトに組み込むことができる。しかしながら、この技術は限定的ではなく、他の複合化の方法が使用されてもよい。
対象となる融合タンパク質をコードする合成二本鎖核酸を生成するための、核酸合成、ハイブリダイゼーション及び/又は増幅を含む、融合タンパク質を作製するための様々な方法が知られている。そのような二本鎖核酸は、標準的分子生物学的技術により、融合タンパク質生成のための発現ベクターに挿入され得る(例えば、Sambrook et al.,MOLECULAR CLONING,A LABORATORY MANUAL,2ndEd,1989を参照されたい)。そのような好ましい実施形態において、AD及び/又はDDD部分は、エフェクタータンパク質又はペプチドのN末端又はC末端に結合し得る。しかしながら、当業者には、エフェクター部分に対するAD又はDDD部分の結合部位が、その生理学的活性に関与するエフェクター部分及びエフェクター部分の一部の化学的性質に依存して変動し得ることが理解される。様々なエフェクター部分の部位特異的結合は、二価架橋試薬の使用及び/又は他の化学的複合化技術等の当該技術分野において知られている技術を使用して行うことができる。
Dock−and−Lock(商標)(DNL(商標))技術は、種々の形式で様々な複合物を生成するために使用されている(Rossi et al.,2012,Bioconjug Chem23:309−23)。ベルツズマブ(抗CD20)及びエプラツズマブ(抗CD22)に基づく二重特異性六価抗体(bsHexAb)は、二量体化及びドッキングドメイン(DDD)に融合された安定化された(Fab)2を、各重鎖のC末端に結合したアンカードメイン(AD)を含有するIgG(CH3−AD2−IgG)と組み合わせることにより構築された(Rossi et al.,2009,Blood113,6161−71)。それらの親mAbの混合物と比較して、以後「Fc−bsHexAb」と称するこれらのFc系bsHexAbは、独特のシグナル伝達イベントを誘導し(Gupta et al.,2010,Blood116:3258−67)、in vitroで強力な細胞毒性を示した。しかしながら、Fc−bsHexAbは、親mAbの約2倍速くマウスの循環から除去された(Rossi et al.,2009,Blood113,6161−71)。Fc−bsHexAbはex vivoで極めて安定であるが、in vivoでは、例えば細胞内プロセシングによりある程度の解離が生じ得る。さらに、Fc−bsHexAbは、CDC活性を有さない。
Fc系免疫サイトカインはまた、CH3−AD2−IgG FcのC末端に融合したインターフェロン−アルファ2b(IFNα2b)の2つ又は4つの分子を含むDNL(商標)複合物としてアセンブルされている(Rossi et al.,2009,Blood114:3864−71;Rossi et al.,2010,Cancer Res70:7600−09;Rossi et al.,2011,Blood118:1877−84)。Fc−IgG−IFNαは、組換えIFNαの比活性度に近い高い比活性度を維持し、in vitro及びin vivoで非ホジキンリンパ腫(NHL)異種移植片に対して著しく強力であった。マウスにおけるFc−IgG−IFNαのT1/2は、PEG化IFNαよりも長かったが、親mAbの半分の長さであった。Fc−bsHexAbと同様に、Fc−IgG−IFNαは、in vivoで経時的に解離し、CDCの消失を示したが、ADCCは向上した。
AD及びDDD部分における構造−機能関係
異なる種類のDNL(商標)コンストラクトにおいて、異なるAD又はDDD配列が使用されてもよい。例示的なDDD及びAD配列を以下に示す。
DDD1
SHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号1)
DDD2
CGHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号2)
AD1
QIEYLAKQIVDNAIQQA(配列番号3)
AD2
CGQIEYLAKQIVDNAIQQAGC(配列番号4)
当業者には、DDD1及びDDD2が、タンパク質キナーゼAのヒトRIIαアイソフォームのDDD配列に基づいていることが理解される。しかしながら、代替の実施形態において、DDD及びAD部分は、以下のDDD3、DDD3C及びAD3に例示されるように、タンパク質キナーゼAのヒトRIα形態のDDD配列及び対応するAKAP配列に基づいてもよい。
DDD3
SLRECELYVQKHNIQALLKDSIVQLCTARPERPMAFLREYFERLEKEEAK(配列番号5)
DDD3C
MSCGGSLRECELYVQKHNIQALLKDSIVQLCTARPERPMAFLREYFERLEKEEAK(配列番号6)
AD3
CGFEELAWKIAKMIWSDVFQQGC(配列番号7)
他の代替の実施形態において、AD及び/又はDDD部分の他の配列変異が、DNL(商標)複合物の構築に使用されてもよい。例えば、PKA RIα、RIIα、RIβ及びRIIβのDDD部分に対応して、ヒトPKA DDD配列の4つの変異のみが存在する。RIIα DDD配列は、上で開示されたDDD1及びDDD2の基礎である。4つのヒトPKA DDD配列を以下に示す。DDD配列は、RIIαの残基1〜44、RIIβの1〜44、RIαの12〜61、及びRIβの13〜66を表す。(DDD1の配列は、ヒトPKA RIIα DDD部分から若干変更されていることに留意されたい。)
PKA RIα
SLRECELYVQKHNIQALLKDVSIVQLCTARPERPMAFLREYFEKLEKEEAK(配列番号8)
PKA RIβ
SLKGCELYVQLHGIQQVLKDCIVHLCISKPERPMKFLREHFEKLEKEENRQILA(配列番号9)
PKA RIIα
SHIQIPPGLTELLQGYTVEVGQQPPDLVDFAVEYFTRLREARRQ(配列番号10)
PKA RIIβ
SIEIPAGLTELLQGFTVEVLRHQPADLLEFALQHFTRLQQENER(配列番号11)
AD及びDDDドメインの構造−機能関係が調査の対象であった。(例えば、Burns−Hamuro et al.,2005,Protein Sci14:2982−92;Carr et al.,2001,J Biol Chem276:17332−38;Alto et al.,2003,Proc Natl Acad Sci USA100:4445−50;Hundsrucker et al.,2006,Biochem J396:297−306;Stokka et al.,2006,Biochem J400:493−99;Gold et al.,2006,Mol Cell24:383−95;Kinderman et al.,2006,Mol Cell24:397−408を参照されたく、これらのそれぞれの文章全体は、参照により本明細書に組み込まれる。)
例えば、Kindermanら(2006,Mol Cell24:397−408)は、AD−DDD結合相互作用の結晶構造を検査し、ヒトDDD配列が、以下の配列番号:1に下線で示される、二量体形成又はAKAP結合において重要ないくつかの変換されたアミノ酸残基を含有すると結論した。(参照により本明細書に組み込まれる、Kinderman et al.,2006の図1を参照されたい。)当業者には、DDD配列の配列変異の設計において、下線で示された残基のいずれかの変化を避けるのが望ましいが、二量体化及びAKAP結合に対しより重大ではない残基に同類アミノ酸置換が行われてもよいことが理解される。
SHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号1)
以下でより詳細に議論されるように、同類アミノ酸置換は、20の一般的なL−アミノ酸のそれぞれに対して特徴付けられている。したがって、Kinderman(2006)のデータ及び同類アミノ酸置換に基づいて、配列番号1に基づく潜在的な代替DDD配列が、表2に示される。表2を考案する上で、極めて同類のアミノ酸置換のみが考慮された。例えば、荷電残基は、同じ電荷の残基にのみ置換され、小さい側鎖を有する残基は、同様のサイズの残基と置換され、ヒドロキシル側鎖は、他のヒドロキシルのみと置換された。アミノ酸二次構造に対するプロリンの独特の効果のため、プロリンと置換される他の残基はなかった。限定された数のそのような潜在的な代替DDD部分配列が、以下の配列番号12から配列番号31に示される。当業者には、DDD部分の属内の代替の種が、標準的な技術により、例えば、市販のペプチドシンセサイザー又は周知の部位特異的突然変異生成技術を使用して構築され得ることが理解される。また、AD部分結合に対するアミノ酸置換の効果は、例えばAltoら(2003,Proc Natl Acad Sci USA100:4445−50)において開示されるような標準的な結合アッセイにより容易に決定され得る。
THIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号12)
SKIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号13)
SRIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号14)
SHINIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号15)
SHIQIPPALTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号16)
SHIQIPPGLSELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号17)
SHIQIPPGLTDLLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号18)
SHIQIPPGLTELLNGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号19)
SHIQIPPGLTELLQAYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号20)
SHIQIPPGLTELLQGYSVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号21)
SHIQIPPGLTELLQGYTVDVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号22)
SHIQIPPGLTELLQGYTVEVLKQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号23)
SHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRNQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号24)
SHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQNPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号25)
SHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPELVEFAVEYFTRLREARA(配列番号26)
SHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVDFAVEYFTRLREARA(配列番号27)
SHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFLVEYFTRLREARA(配列番号28)
SHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFIVEYFTRLREARA(配列番号29)
SHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFVVEYFTRLREARA(配列番号30)
SHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVDYFTRLREARA(配列番号31)
Altoら(2003,Proc Natl Acad Sci USA100:4445−50)は、様々なAKAPタンパク質のAD配列の生物情報学的分析を行い、0.4nMのDDDに対する結合定数を有する、AKAP−IS(配列番号3)と呼ばれるRII選択的AD配列を設計した。AKAP−IS配列は、PKAに結合するAKAP結合のペプチドアンタゴニストとして設計された。置換がDDDへの結合を減少させる傾向があるAKAP−IS配列における残基は、以下の配列番号:3において下線で示されている。当業者には、AD配列の配列変異の設計において、下線で示された残基のいずれかの変化を避けるのが望ましいが、DDD結合に対しより重大ではない残基に同類アミノ酸置換が行われてもよいことが理解される。表3は、上記表2におけるDDD1(配列番号1)に対して示されるものと同様の、AKAP−IS(AD1、配列番号3)の配列における潜在的な同類アミノ酸置換を示す。
限定された数のそのような潜在的な代替AD部分配列が、以下の配列番号32から配列番号49に示される。可能なAD部分配列の属内の他の種が、Altoら(2003)のデータに基づいて、当業者により作製、試験及び使用され得る。Alto(2003)の図2は、実際の結合実験に基づく、DDD部分に対する結合活性を維持しながら行うことができるいくつかのアミノ酸置換を示していることに留意されたい。
AKAP−IS
QIEYL
AKQ
IVDN
AIQQA(配列番号3)
NIEYLAKQIVDNAIQQA(配列番号32)
QLEYLAKQIVDNAIQQA(配列番号33)
QVEYLAKQIVDNAIQQA(配列番号34)
QIDYLAKQIVDNAIQQA(配列番号35)
QIEFLAKQIVDNAIQQA(配列番号36)
QIETLAKQIVDNAIQQA(配列番号37)
QIESLAKQIVDNAIQQA(配列番号38)
QIEYIAKQIVDNAIQQA(配列番号39)
QIEYVAKQIVDNAIQQA(配列番号40)
QIEYLARQIVDNAIQQA(配列番号41)
QIEYLAKNIVDNAIQQA(配列番号42)
QIEYLAKQIVENAIQQA(配列番号43)
QIEYLAKQIVDQAIQQA(配列番号44)
QIEYLAKQIVDNAINQA(配列番号45)
QIEYLAKQIVDNAIQNA(配列番号46)
QIEYLAKQIVDNAIQQL(配列番号47)
QIEYLAKQIVDNAIQQI(配列番号48)
QIEYLAKQIVDNAIQQV(配列番号49)
Goldら(2006,Mol Cell24:383−95)は、結晶学及びペプチドスクリーニングを使用して、RIアイソフォームと比較して5桁高いPKAのEIIアイソフォームに対する選択性を示すSuperAKAP−IS配列(配列番号50)を開発した。下線で示された残基は、AKAP−IS配列に対するアミノ酸置換の位置を示し、これはRIIαのDDD部分に対する結合を増加させた。この配列において、N末端Q残基は、残基番号4として付番され、C末端A残基は、残基番号20である。置換がRIIαに対する親和性に影響するようになされ得る残基は、残基8、11、15、16、18、19及び20であった(Gold et al.,2006)。ある特定の代替の実施形態において、DNL(商標)コンストラクトを調製するために、SuperAKAP−IS配列がAKAP−IS AD部分配列に置換され得ることが企図される。AKAP−IS AD配列に置換され得る他の代替配列は、配列番号51〜53に示される。AKAP−IS配列に対する置換は、下線で示されている。配列番号4に示されるAD2配列と同様に、AD部分はまた、追加のN末端残基システイン及びグリシン、並びにC末端残基グリシン及びシステインを含んでもよいことが予測される。
SuperAKAP−IS
QIEYVAKQIVDYAIHQA(配列番号50)
代替AKAP配列
QIEYKAKQIVDHAIHQA(配列番号51)
QIEYHAKQIVDHAIHQA(配列番号52)
QIEYVAKQIVDHAIHQA(配列番号53)
Goldらの図2は、以下に示される様々なAKAPタンパク質からの追加のDDD結合配列を開示した。
RII特異性AKAP
AKAP−KL
PLEYQAGLLVQNAIQQAI(配列番号54)
AKAP79
LLIETASSLVKNAIQLSI(配列番号55)
AKAP−Lbc
LIEEAASRIVDAVIEQVK(配列番号56)
RI特異性AKAP
AKAPce
ALYQFADRFSELVISEAL(配列番号57)
RIAD
LEQVANQLADQIIKEAT(配列番号58)
PV38
FEELAWKIAKMIWSDVF(配列番号59)
二重特異性AKAP
AKAP7
ELVRLSKRLVENAVLKAV(配列番号60)
MAP2D
TAEEVSARIVQVVTAEAV(配列番号61)
DAKAP1
QIKQAAFQLISQVILEAT(配列番号62)
DAKAP2
LAWKIAKMIVSDVMQQ(配列番号63)
Stokkaら(2006,Biochem J400:493−99)もまた、配列番号64〜66に示される、PKAに結合するAKAPのペプチド競合物を開発した。ペプチドアンタゴニストは、Ht31(配列番号64)、RIAD(配列番号65)及びPV−38(配列番号66)として指定された。Ht−31ペプチドは、PKAのRIIアイソフォームに対するより高い親和性を示し、一方RIAD及びPV−38は、RIに対するより高い親和性を示した。
Ht31
DLIEEAASRIVDAVIEQVKAAGAY(配列番号64)
RIAD
LEQYANQLADQIIKEATE(配列番号65)
PV−38
FEELAWKIAKMIWSDVFQQC(配列番号66)
Hundsruckerら(2006,Biochem J396:297−306)は、PKAのRII形態のDDDに対し0.4nMという低い結合定数を有する、PKAに結合するAKAPのさらに他のペプチド競合物を開発した。様々なAKAPアンタゴニストペプチドの配列は、Hundsruckerらの表1に記載されており、以下の表4に複写される。AKAPISは、合成RIIサブユニット結合ペプチドを表す。他の全てのペプチドは、示されたAKAPのRII結合ドメインから得られる。
異なるAKAPタンパク質のADドメイン間で極めて同類である残基は、AKAP IS配列(配列番号3)に関して下線で示すことにより以下に示される。残基は、Altoら(2003)により観察されたのと同じであり、C末端アラニン残基が付加されている。(参照により本明細書に組み込まれる、Hundsruckerら(2006)の図4を参照されたい。)RII DDD配列に対し特に高い親和性を有するペプチドアンタゴニストの配列は、AKAP−IS、AKAP7δ−wt−pep、AKAP7δ−L304T−pep及びAKAP7δ−L308D−pepの配列であった。
AKAP−IS
QIEYLAKQIVDNAIQQA(配列番号3)
Carrら(2001,J Biol Chem276:17332−38)は、ヒト及び非ヒトタンパク質からの異なるAKAP結合DDD配列の間の配列相同性の程度を検査し、異なるDDD部分の間で最も高度に同類であると思われるDDD配列における残基を同定した。これらは、配列番号1のヒトPKA RIIα DDD配列に関して下線で示すことにより以下に示される。特に同類である残基は、さらにイタリック体で示されている。残基は、Kindermanら(2006)によりAKAPタンパク質への結合に重要であることが示唆されている残基と重複するが、同一ではない。当業者には、DDDの配列変異の設計において、最も同類の残基(イタリック体)を変更することを避けることが最も好ましく、また同類の残基(下線)を変更することを避けることも好ましく、一方で、下線でもイタリック体でも示されていない残基に対して同類アミノ酸置換が考慮され得ることが理解される。
Carrら(2001)のデータに基づくDDD1(配列番号1)配列の同類アミノ酸置換の変更されたセットを、表5に示す。この置換配列の低減されたセットにおいてさえ、当業者により必要以上の実験を行うことなく生成、試験及び使用され得る、65,000を超える可能な代替DDD部分配列がある。当業者は、表2及び表3に関して上で開示されたような代替DDDアミノ酸配列を容易に得ることができる。
当業者には、この分野において標準的な技術及び習慣的に過ぎない実験を使用して、AD又はDDD部分の属内の代替の種を生成するために、DDD又はADアミノ酸配列におけるこれらの、及び他のアミノ酸置換を使用することができることが理解される。
アミノ酸置換
代替の実施形態において、開示される方法及び組成物は、1つ以上の置換アミノ酸残基を有するタンパク質又はペプチドの生成及び使用を含んでもよい。例えば、DNL(商標)コンストラクトを作製するために使用されるDDD及び/又はAD配列は、上で議論されたように変更されてもよい。
当業者には、一般に、アミノ酸置換が、典型的には、アミノ酸を比較的同様の特性を有する別のアミノ酸により置き換えること(すなわち、同類アミノ酸置換)を含むことが認識される。様々なアミノ酸の特性、並びにタンパク質構造及び機能に対するアミノ酸置換の効果は、当該技術分野における広範な研究及び知識の対象となっている。
例えば、アミノ酸のハイドロパシー指標が考慮され得る(Kyte&Doolittle,1982,J.Mol.Biol.,157:105−132)。アミノ酸の相対的ハイドロパシー特性は、得られるタンパク質の二次構造に寄与し、一方これは、タンパク質と他の分子との相互作用を決定付ける。疎水性及び電荷特性に基づいて、各アミノ酸にハイドロパシー指標が割り当てられており(Kyte&Doolittle,1982)、これらは、イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);トレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸塩(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸塩(−3.5);アスパラギン(−3.5);リシン(−3.9);及びアルギニン(−4.5)である。同類置換を行う上で、ハイドロパシー指標が±2以内であるアミノ酸の使用が好ましく、±1以内がより好ましく、±0.5以内がさらにより好ましい。
アミノ酸置換はまた、アミノ酸残基の親水性を考慮してもよい(例えば、米国特許第4,554,101号)。以下のように親水性値がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リシン(+3.0);アスパラギン酸塩(+3.0);グルタミン酸塩(+3.0);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);トレオニン(−0.4);プロリン(−0.5.+−.1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);トリプトファン(−3.4)。アミノ酸と、同様の親水性を有する他のアミノ酸との置き換えが好ましい。
他の考慮点は、アミノ酸側鎖のサイズを含む。例えば、一般に、グリシン又はセリン等のコンパクトな側鎖を有するアミノ酸を、トリプトファン又はチロシン等の嵩のある側鎖を有するアミノ酸と置き換えることは好ましくない。タンパク質二次構造に対する様々なアミノ酸残基の効果もまた考慮点である。実証的研究を通して、タンパク質ドメインがアルファ螺旋、ベータシート又は逆回転二次構造をとる傾向に対する異なるアミノ酸残基の効果が決定されており、当該技術分野において知られている(例えば、Chou&Fasman,1974,Biochemistry,13:222−245;1978,Ann.Rev.Biochem.,47:251−276;1979,Biophys.J.,26:367−384を参照されたい)。
そのような考慮点及び広範な実証的研究に基づいて、同類アミノ酸置換の表が構築されており、当該技術分野において知られている。例えば、アルギニン及びリシン;グルタミン酸及びアスパラギン酸;セリン及びトレオニン;グルタミン及びアスパラギン;並びにバリン、ロイシン及びイソロイシンである。代替として、Ala(A)leu、ile、val;Arg(R)gln、asn、lys;Asn(N)his、asp、lys、arg、gln;Asp(D)asn、glu;Cys(C)ala、ser;Gln(Q)glu、asn;Glu(E)gln、asp;Gly(G)ala;His(H)asn、gln、lys、arg;Ile(I)val、met、ala、phe、leu;Leu(L)val、met、ala、phe、ile;Lys(K)gln、asn、arg;Met(M)phe、ile、leu;Phe(F)leu、val、ile、ala、tyr;Pro(P)ala;Ser(S)、thr;Thr(T)ser;Trp(W)phe、tyr;Tyr(Y)trp、phe、thr、ser;Val(V)ile、leu、met、phe、alaである。
アミノ酸置換の他の考慮点は、残基がタンパク質の内部に位置するか、又は溶媒曝露されているか否かを含む。内部残基の場合、同類置換は、Asp及びAsn;Ser及びThr;Ser及びAla;Thr及びAla;Ala及びGly;Ile及びVal;Val及びLeu;Leu及びIle;Leu及びMet;Phe及びTyr;Tyr及びTrpを含む。(例えば、rockefeller.eduのPROWLウェブサイトを参照されたい。)溶媒曝露された残基の場合、同類置換は、Asp及びAsn;Asp及びGlu;Glu及びGln;Glu及びAla;Gly及びAsn;Ala及びPro;Ala及びGly;Ala及びSer;Ala及びLys;Ser及びThr;Lys及びArg;Val及びLeu;Leu及びIle;Ile及びVal;Phe及びTyr.を含む。(同上。)アミノ酸置換の選択を補助するために、PAM250スコア化マトリックス、Dayhoffマトリックス、Granthamマトリックス、McLachlanマトリックス、Doolittleマトリックス、Henikoffマトリックス、Miyataマトリックス、Fitchマトリックス、Jonesマトリックス、Raoマトリックス、Levinマトリックス及びRislerマトリックス等の様々なマトリックスが構築されている(同上)。アミノ酸置換の決定において、分子間又は分子内結合の存在、例えば正電荷残基(例えば、His、Arg、Lys)と負電荷残基(例えば、Asp、Glu)との間のイオン結合(塩架橋)の形成、又は隣接システイン残基間のジスルフィド結合もまた考慮することができる。
任意のアミノ酸を、コードされたタンパク質配列における任意の他のアミノ酸と置換する方法、例えば部位特異的突然変異生成の技術による、又はアミノ酸置換をコードするオリゴヌクレオチドの合成及びアセンブリ、並びに発現ベクターコンストラクトへのスプライシングによる方法が周知であり、当業者にとっては習慣的な実験の問題である。
治療薬剤
代替の実施形態において、主題のbsAb、ADC及び/若しくは抗体に複合化した、又は、bsAb、ADC及び/若しくは抗体の前、それらと同時、若しくはそれらの後に別個に投与される、細胞毒性薬剤、抗血管形成薬剤、プロアポトーシス薬剤、抗生物質、ホルモン、ホルモンアンタゴニスト、ケモカイン、薬物、プロドラッグ、毒素、酵素又は他の薬剤等の治療薬剤が使用されてもよい。有用な薬物は、抗有糸分裂、抗キナーゼ、アルキル化、抗代謝、抗生物質、アルカロイド、抗血管形成、プロアポトーシス薬剤及びそれらの組み合わせからなる群から選択される薬学的特性を有し得る。
有用な例示的薬物は、5−フルオロウラシル、アファチニブ、アプリジン、アザリビン、アナストロゾール、アントラサイクリン、アキシチニブ、AVL−101、AVL−291、ベンダムスチン、ブレオマイシン、ボルテゾミ、ボスチニブ、ブリオスタチン−1、ブスルファ、カリケアミシン、カンプトテシン、カルボプラチン、10−ヒドロキシカンプトテシン、カルムスチン、セレブレックス、クロランブシル、シスプラチン(CDDP)、Cox−2阻害剤、イリノテカン(CPT−11)、SN−38、カルボプラチン、クラドリビン、カンプトテカン、クリゾチニブ、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダサチニブ、ジナシクリブ、ドセタキセル、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、2−ピロリノドキソルビシン(2P−DOX)、シアノ−モルホリノドキソルビシン、ドキソルビシングルクロニド、エピルビシングルクロニド、エルロチニブ、エストラムスチン、エピドフィロトキシン、エルロチニブ、エンチノスタット、エストロゲン受容体結合剤、エトポシド(VP16)、エトポシドグルクロニド、リン酸エトポシド、エキセメスタン、フィンゴリモド、フロクスウリジン(FUdR)、3’,5’−O−ジオレイル−FudR(FUdR−dO)、フルダラビン、フルタミド、ファルネシル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、フラボピリドール、ホスタマチニブ、ガネテスピブ、GDC−0834、GS−1101、ゲフェチニブ、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イブルチニブ、イダルビシン、イデラリシブ、イホスファミド、イマチニブ、L−アスパラギナーゼ、ラパチニブ、レノリダミド、ロイコボリン、LFM−A13、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、6−メルカプトプリン、メトトレキセート、ミトキサントロン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトタン、ナベルビン、ネラチニブ、ニロチニブ、ニトロソ尿素、オラパリブ、プリコマイシン、プロカルバジン、パクリタキセル、PCI−32765、ペントスタチン、PSI−341、ラロキシフェン、セムスチン、ソレフェニブ、ストレプトゾシン、SU11248、スニチニブ、タモキシフェン、テマゾロミド(DTICの水性形態)、トランス白金、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、テニポシド、トポテカン、ウラシルマスタード、バタラニブ、ビノレルビン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンカアルカノイド及びZD1839を含み得るが、これらに限定されない。
有用な毒素は、リシン、アブリン、アルファ毒素、サポリン、リボヌクレアーゼ(RNase)、例えばオンコナーゼ、DNase I、ブドウ球菌エンテロトキシン−A、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素、及びシュードモナス内毒素を含み得る。
有用なケモカインは、RANTES、MCAF、MIP1−アルファ、MIP1−ベータ及びIP−10を含み得る。
ある特定の実施形態において、抗血管形成薬剤、例えばアンギオスタチン、バキュロスタチン、カンスタチン、マスピン、抗VEGF抗体、抗PlGFペプチド及び抗体、抗血管成長因子抗体、抗Flk−1抗体、抗Flt−1抗体及びペプチド、抗Kras抗体、抗cMET抗体、抗MIF(マクロファージ遊走阻止因子)抗体、ラミニンペプチド、フィブロネクチンペプチド、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤、組織金属プロテイナーゼ阻害剤、インターフェロン、インターロイキン−12、IP−10、Gro−β、トロンボスポンジン、2−メトキシオエストラジオール、プロリフェリン関連タンパク質、カルボキシアミドトリアゾール、CM101、マリマスタット、ペントサンポリ硫酸、アンジオポイエチン−2、インターフェロン−アルファ、ハービマイシンA、PNU145156E、16Kプロラクチン断片、リノミド(ロキニメックス)、サリドマイド、ペントキシフィリン、ゲニステイン、TNP−470、エンドスタチン、パクリタキセル、アキュチン、アンギオスタチン、シドフォビル、ビンクリスチン、ブレオマイシン、AGM−1470、血小板因子4又はミノサイクリンが有用となり得る。
有用な免疫賦活剤は、サイトカイン、幹細胞成長因子、リンホトキシン、造血因子、コロニー刺激因子(CSF)、インターフェロン(IFN)、エリスロポエチン、トロンボポエチン及びそれらの組み合わせから選択され得る。特に有用なのは、腫瘍壊死因子(TNF)等のリンホトキシン、インターロイキン(IL)等の造血因子、顆粒球−コロニー刺激因子(G−CSF)又は顆粒球マクロファージ−コロニー刺激因子(GM−CSF)等のコロニー刺激因子、インターフェロン−α、−β又は−λ等のインターフェロン、及び「S1因子」と指定されるもの等の幹細胞成長因子である。サイトカインに含まれるのは、成長ホルモン、例えばヒト成長ホルモン、N−メチオニルヒト成長ホルモン及びウシ成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラキシン;プロリラキシン;糖タンパク質ホルモン、例えば卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)及び黄体形成ホルモン(LH);肝臓成長因子;プロスタグランジン、線維芽細胞成長因子;プロラクチン;胎盤性ラクトゲン、OBタンパク質;腫瘍壊死因子−α及び−β;ミュラー管抑制物質;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);神経成長因子、例えばNGF−β;血小板成長因子;形質転換成長因子(TGF)、例えばTGF−α及びTGF−β;インスリン様成長因子−I及び−II;エリスロポエチン(EPO);骨誘導因子;インターフェロン、例えばインターフェロン−α、−β、及び−γ;コロニー刺激因子(CSF)、例えばマクロファージ−CSF(M−CSF);インターロイキン(IL)、例えばIL−1、IL−1α、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12;IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、IL−21、IL−25、LIF、kit−リガンド又はFLT−3、アンギオスタチン、トロンボスポンジン、エンドスタチン、腫瘍壊死因子及びLTである。
有用な放射性核種は、111In、177Lu、212Bi、213Bi、211At、62Cu、67Cu、90Y、125I、131I、32P、33P、47Sc、111Ag、67Ga、142Pr、153Sm、161Tb、166Dy、166Ho、186Re、188Re、189Re、212Pb、223Ra、225Ac、59Fe、75Se、77As、89Sr、99Mo、105Rh、109Pd、143Pr、149Pm、169Er、194Ir、198Au、199Au、211Pb、及び227Thを含むが、これらに限定されない。治療用放射性核種は、好ましくは、20〜6,000keVの範囲内、好ましくはオージェ放射体の場合60〜200keV、ベータ放射体の場合100〜2,500keV、アルファ放射体の場合4,000〜6,000keVの範囲内の崩壊エネルギーを有する。有用なベータ粒子放出核種の最大崩壊エネルギーは、好ましくは20〜5,000keV、より好ましくは100〜4,000keV、最も好ましくは500〜2,500keVである。また、オージェ放出粒子と共に実質的に崩壊する放射性核種が好ましい。例えば、Co−58、Ga−67、Br−80m、Tc−99m、Rh−103m、Pt−109、In−111、Sb−119、1−125、Ho−161、Os−189m及びIr−192である。有用なベータ粒子放出核種の崩壊エネルギーは、好ましくは1,000keV未満、より好ましくは100keV未満、最も好ましくは70keV未満である。また、アルファ粒子の生成と共に実質的に崩壊する放射性核種が好ましい。そのような放射性核種は、Dy−152、At−211、Bi−212、Ra−223、Rn−219、Po−215、Bi−211、Ac−225、Fr−221、At−217、Bi−213、Th−227及びFm−255を含むが、これらに限定されない。有用なアルファ粒子放出核種の崩壊エネルギーは、好ましくは2,000〜10,000keV、より好ましくは3,000〜8,000keV、最も好ましくは4,000〜7,000keVである。追加的な有用な潜在的放射性核種は、11C、13N、15O、75Br、198Au、224Ac、126I、133I、77Br、113mIn、95Ru、97Ru、103Ru、105Ru、107Hg、203Hg、121mTe、122mTe、125mTe、165Tm、167Tm、168Tm、197Pt、109Pd、105Rh、142Pr、143Pr、161Tb、166Ho、199Au、57Co、58Co、51Cr、59Fe、75Se、201Tl、225Ac、76Br、169Yb等を含む。いくつかの有用な診断用核種は、18F、52Fe、62Cu、64Cu、67Cu、67Ga、68Ga、86Y、89Zr、94Tc、94mTc、99mTc、又は111Inを含み得る。
治療薬剤は、光活性薬剤又は染料であってもよい。蛍光組成物、例えば蛍光色素、及び他の色原体又は染料、例えば可視光に感受性のポルフィリンが、好適な光を病変に導くことにより病変を検出及び治療するために使用されている。治療において、これは光線照射、光線療法、又は光線力学的療法と呼ばれている。Jori et al.(eds.),PHOTODYNAMIC THERAPY OF TUMORS AND OTHER DISEASES(Libreria Progetto1985);van den Bergh,Chem.Britain(1986),22:430を参照されたい。さらに、光線療法を達成するために、モノクローナル抗体が光活性化染料とカップリングされている。Mew et al.,J.Immunol.(1983),130:1473;同上.,Cancer Res.(1985),45:4380;Oseroff et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1986),83:8744;同上,Photochem.Photobiol.(1987),46:83;Hasan et al.,Prog.Clin.Biol.Res.(1989),288:471;Tatsuta et al.,Lasers Surg.Med.(1989),9:422;Pelegrin et al.,Cancer(1991),67:2529を参照されたい。
他の有用な治療薬剤は、オリゴヌクレオチド、特に好ましくはがん遺伝子及びがん遺伝子産物、例えばbcl−2又はp53に対して指向されるアンチセンスオリゴヌクレオチドを含んでもよい。治療オリゴヌクレオチドの好ましい形態は、siRNAである。当業者は、siRNA又は干渉RNA種が、標的化組織への送達のために抗体又はその断片に結合してもよいことを理解するであろう。広範な標的に対する多くのsiRNA種が当該技術分野において知られており、任意のそのような知られたsiRNAが、請求される方法及び組成物において使用され得る。
有用となり得る知られたsiRNA種は、IKK−ガンマ(米国特許第7,022,828号);VEGF、Flt−1及びFlk−1/KDR(米国特許第7,148,342号);Bcl2及びEGFR(米国特許第7,541,453号);CDC20(米国特許第7,550,572号);トランスデューシン(ベータ)様3(米国特許第7,576,196号);KRAS(米国特許第7,576,197号);炭酸脱水酵素II(米国特許第7,579,457号);補体成分3(米国特許第7,582,746号);インターロイキン−1受容体関連キナーゼ4(IRAK4)(米国特許第7,592,443);スルビビン(米国特許第7,608,7070号);スーパーオキシドジスムターゼ1(米国特許第7,632,938号);METがん原遺伝子(米国特許第7,632,939号);アミロイドベータ前駆体タンパク質(APP)(米国特許第7,635,771号);IGF−1R(米国特許第7,638,621号);ICAM1(米国特許第7,642,349号);補体因子B(米国特許第7,696,344号);p53(7,781,575号)、及びアポリポタンパク質B(7,795,421号)に特異的なものを含み、それぞれの参照された特許の実施例の項は、参照により本明細書に組み込まれる。
追加的なsiRNA種は、既知の商業的供給元、例えば、多くの他の供給元の中でも、Sigma−Aldrich(St Louis、MO)、Invitrogen(Carlsbad、CA)、Santa Cruz Biotechnology(Santa Cruz、CA)、Ambion(Austin、TX)、Dharmacon(Thermo Scientific、Lafayette、CO)、Promega(Madison、WI)、Mirus Bio(Madison、WI)及びQiagen(Valencia、CA)から入手可能である。siRNA種の他の公的に利用可能な源は、Stockholm Bioinformatics CentreのsiRNAdbデータベース、MIT/ICBP siRNA Database、Broad InstituteのRNAi Consortium shRNA Library、及びNCBIのProbeデータベースを含む。例えば、NCBI Probeデータベースには30,852のsiRNA種がある。当業者には、対象となる任意の遺伝子に対して、siRNA種がすでに設計されている、又は公的に利用可能なソフトウェアツールを使用して容易に設計され得ることが理解される。任意のそのようなsiRNA種は、対象のDNL(商標)複合物を使用して送達され得る。
治療処置の方法
様々な実施形態は、ヒト、家畜又はコンパニオンペット、例えばイヌ及びネコを含む哺乳動物等の対象におけるがんを治療する方法であって、治療上効果的な量の細胞毒性及び/又は免疫賦活剤の組み合わせを対象に投与することを含む方法に関する。
細胞毒性bsAb、ADC及び/又はチェックポイント阻害剤抗体の投与は、標的細胞の表面上の別の抗原に結合する、又はそれと反応性である、治療上効果的な量の別の抗体を同時又は逐次的に投与することにより補完されてもよい。好ましい追加のMAbは、CD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD16、CD19、IGF−1R、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD30、CD32b、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD45、CD46、CD52、CD54、CD70、CD74、CD79a、CD79b、CD80、CD95、CD126、CD133、CD138、CD154、CEACAM5、CEACAM6、B7、AFP、PSMA、EGP−1、EGP−2、炭酸脱水酵素IX、PAM4抗原、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、MUC5、Ia、MIF、HM1.24、HLA−DR、テネイシン、Flt−3、VEGFR、PlGF、ILGF、IL−6、IL−25、テネイシン、TRAIL−R1、TRAIL−R2、補体因子C5、がん遺伝子産物、又はそれらの組み合わせと反応性のMAbからなる群から選択される、少なくとも1つのヒト化、キメラ又はヒトMAbを含む。抗CD19、抗CD20、及び抗CD22抗体等の有用な様々な抗体が、当該技術分野において知られている。例えば、Ghetie et al.,Cancer Res.48:2610(1988);Hekman et al.,Cancer Immunol.Immunother.32:364(1991);Longo,Curr.Opin.Oncol.8:353(1996)、米国特許第5,798,554号;米国特許第6,187,287号;米国特許第6,306,393号;米国特許第6,676,924号;米国特許第7,109,304号;米国特許第7,151,164号;米国特許第7,230,084号;米国特許第7,230,085号;米国特許第7,238,785号;米国特許第7,238,786号;米国特許第7,282,567号;米国特許第7,300,655号;米国特許第7,312,318号;米国特許第7,501,498号;米国特許第7,612,180号;米国特許第7,670,804号;並びに米国特許出願公開第20080131363号;米国特許出願公開第20070172920号;米国特許出願公開第20060193865号;及び米国特許出願公開第20080138333を参照されたく、それぞれの実施例の項は、参照により本明細書に組み込まれる。
併用療法は、少なくとも1種の治療薬剤の同時又は逐次的な投与でさらに補完されてもよい。例えば、「CVB」(1.5g/m2のシクロホスファミド、200〜400mg/m2のエトポシド、及び150〜200mg/m2のカルムスチン)は、非ホジキンリンパ腫を治療するために使用される投薬計画である。Patti et al.,Eur.J.Haematol.51:18(1993)。他の好適な併用化学療法計画は、当業者に周知である。例えば、Freedman et al.,”Non−Hodgkin’s Lymphomas,”in CANCER MEDICINE,VOLUME2,3rd Edition,Holland et al.(eds.),pages2028−2068(Lea&Febiger1993)を参照されたい。例示として、中悪性度の非ホジキンリンパ腫(NHL)の治療のための第一世代の化学療法計画は、C−MOPP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、プロカルバジン及びプレドニゾン)並びにCHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、及びプレドニゾン)を含む。有用な第二世代の化学療法計画は、m−BACOD(メトトレキセート、ブレオマイシン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、デキサメタゾン及びロイコボリンであり、一方好適な第三世代の投薬計画は、MACOP−B(メトトレキセート、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾン、ブレオマイシン及びロイコボリン)である。追加の有用な薬物は、酪酸フェニル、ベンダムスチン、及びブリオスタチン−1を含む。
治療薬剤の組み合わせは、薬学的に有用な組成物を調製するための既知の方法に従って製剤化され得、bsAb、ADC、インターフェロン及び/又はチェックポイント阻害剤抗体が、薬学的に好適な賦形剤との混合物として組み合わされる。無菌リン酸緩衝生理食塩水が、薬学的に好適な賦形剤の一例である。他の好適な賦形剤が、当業者に周知である。例えば、Ansel et al.,PHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS AND DRUG DELIVERY SYSTEMS,5th Edition(Lea&Febiger1990)、及びGennaro(ed.),REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,18th Edition(Mack Publishing Company1990)、並びにそれらの改訂版を参照されたい。
主題のbsAb、ADC、インターフェロン及び/又は抗体は、例えば、ボーラス注射又は持続注入による静脈内投与用に製剤化されてもよい。好ましくは、bsAb、ADC及び/又は抗体は、約4時間未満の期間にわたり、より好ましくは約3時間未満の期間にわたり注入される。例えば、第1のボーラスは、30分以内、好ましくはさらに15分以内に注入され、残りは次の2〜3時間にわたり注入され得る。注射用製剤は、保存剤が添加された単位投薬形態として、例えば、アンプル又は複数投薬容器内に存在してもよい。組成物は、懸濁液、溶液又は油性若しくは水性ビヒクル中のエマルション等の形態をとってもよく、また懸濁剤、安定剤及び/又は分散剤等の調合剤を含有してもよい。代替として、活性成分は、使用前に好適なビヒクル、例えば無菌発熱性物質除去蒸留水により再構成するための粉末形態であってもよい。
追加的な薬学的方法を使用して、治療の組み合わせの作用期間が制御され得る。制御放出調製物は、投与される薬剤を錯化又は吸着するためのポリマーの使用により調製され得る。例えば、生体適合性ポリマーは、ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)のマトリックス、並びにステアリン酸二量体及びセバシン酸のポリ無水物コポリマーのマトリックスを含む。Sherwood et al.,Bio/Technology10:1446(1992)。そのようなマトリックスからの放出速度は、治療薬剤の分子量、マトリックス中の薬剤の量、及び分散した粒子のサイズに依存する。Saltzman et al.,Biophys.J.55:163(1989);Sherwood et al.,上記参照。他の固体投薬形態は、Ansel et al.,PHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS AND DRUG DELIVERY SYSTEMS,5th Edition(Lea&Febiger1990)、及びGennaro(ed.),REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,18th Edition(Mack Publishing Company1990)、並びにそれらの改訂版に記載されている。
bsAb、インターフェロン及び/又はチェックポイント阻害剤抗体は、皮下で、又はさらに他の非経口経路により、例えば静脈内、筋肉内、腹腔内若しくは経脈管的に、哺乳動物に投与され得る。ADCは、静脈内、腹腔内又は経脈管的に投与され得る。さらに、投与は、持続注入により、又は単回若しくは複数回ボーラスによるものであってもよい。好ましくは、bsAb、ADC、インターフェロン及び/又はチェックポイント阻害剤抗体は、約4時間未満の期間にわたり、より好ましくは約3時間未満の期間にわたり注入される。
より一般的には、ヒトに投与されるbsAb、ADC、インターフェロン及び/又はチェックポイント阻害剤抗体の用量は、患者の年齢、体重、身長、性別、全体的な医学的状態、及び既往歴に依存して変動する。単回静脈内注入として約1mg/kgから25mg/kgの範囲内のbsAb、ADC及び/又は抗体の用量を受容者に提供することが望ましくなり得るが、状況により決定されるように、より低い、又はより高い用量が投与されてもよい。例えば、70kgの患者に対する1〜20mg/kgの用量は、70〜1,400mgであり、又は、1.7mの患者に対して41〜824mg/m2である。投薬は、必要に応じて反復されてもよく、例えば、4〜10週間の間週1回、8週間の間週1回、又は4週間の間週1回であってもよい。また、維持療法において必要に応じて、より少ない頻度で、例えば数ヶ月の間1週間おきに、又は何ヶ月もの間月1回若しくは3ヶ月に1回で与えられてもよい。
代替として、bsAb、ADC、及び/又はチェックポイント阻害剤抗体は、2週間又は3週間おきに1回の投薬として投与され、合計で少なくとも3回の投薬分繰り返されてもよい。または、組み合わせは、4〜6週間の間週2回投与されてもよい。用量が約200〜300mg/m2(1.7mの患者に対して投薬当たり340mg、又は70kgの患者に対して4.9mg/kg)に低下された場合、4〜10週間の間週1回、さらには週2回投与されてもよい。代替として、投薬スケジュールは、減少されてもよく、すなわち、2〜3ヶ月の間2週間又は3週間毎であってもよい。しかしながら、より高い用量、例えば週1回又は2〜3週間毎に1回20mg/kgであっても、繰り返し投薬サイクルでゆっくりとした静脈内注入により投与され得ることが断定されている。投薬スケジュールは、随意に、他の間隔で繰り返されてもよく、投薬は、用量及びスケジュールを適切に調節して様々な非経口経路で行われてもよい。
当業者には、上で議論された投薬スケジュールはADC、bsAb及び/又はmAbに関連しているが、全身毒性を回避するために、インターフェロン薬剤は実質的により低い用量で投与されるべきであることが理解される。ヒトに対するインターフェロン(例えばペグインターフェロン)の用量は、より典型的にはマイクログラム範囲内であり、例えば、インターフェロンの種類に依存して、皮下投与で180μgを週1回、又は皮下投与で1日おきに100〜180μg、若しくは135μg、若しくは135μg/1.73m2、若しくは90μg/1.73m2、若しくは250μgが有用となり得る。
bsAb、インターフェロン、ADC及び/又はチェックポイント阻害剤抗体は、定期的なボーラス注射として投与されてもよいが、代替の実施形態において、bsAb、ADC、インターフェロン及び/又はチェックポイント阻害剤抗体は、持続注入により投与されてもよい。Cmaxを増加させ、血液中の治療薬剤のPKを延長するために、持続注入は、例えば留置カテーテルにより投与されてもよい。そのようなデバイスは、HICKMAN(登録商標)、BROVIAC(登録商標)又はPORT−A−CATH(登録商標)カテーテル等、当該技術分野において知られており(例えば、Skolnik et al.,Ther Drug Monit32:741−48,2010を参照されたい)、任意のそのような知られた留置カテーテルが使用され得る。また、様々な持続注入ポンプも当該技術分野において知られており、任意のそのような知られたポンプが使用され得る。持続注入のための用量範囲は、1日当たり0.1〜3.0mg/kgの間であってもよい。より好ましくは、bsAb、ADC、インターフェロン及び/又はチェックポイント阻害剤抗体は、2〜5時間、より好ましくは2〜3時間の比較的短い期間にわたり、静脈内注入により投与され得る。
好ましい実施形態において、薬剤の組み合わせは、がんの治療に有用である。がんの例は、癌腫、リンパ腫、膠芽腫、黒色腫、肉腫、及び白血病、骨髄腫、又はリンパ性悪性疾患を含むが、これらに限定されない。そのようながんのより具体的な例は、以下に示されるが、扁平上皮がん(例えば、上皮性扁平上皮がん(epithelial squamous cell cancer))、ユーイング肉腫、ウィルムス腫瘍、星状細胞腫、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺の腺癌及び肺の扁平上皮癌を含む肺がん、腹膜のがん、肝細胞がん、消化管がんを含む胃がん、膵臓がん、多形性膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、肝がん、肝細胞癌、神経内分泌腫瘍、甲状腺髄様がん、分化甲状腺癌、乳がん、卵巣がん、結腸がん、直腸がん、子宮内膜がん又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓がん又は腎がん、前立腺癌、外陰がん、肛門癌、陰茎癌、並びに頭頸部がんを含む。「がん」という用語は、原発性悪性細胞又は腫瘍(例えば、その細胞が対象の身体における元の悪性腫瘍若しくは腫瘍の部位以外の部位に移動していないもの)、及び続発性悪性細胞又は腫瘍(例えば、転移、元の腫瘍の部位とは異なる二次的部位への悪性細胞又は腫瘍細胞の移動から生じるもの)を含む。本発明の治療方法につながるがんは、IGF−1Rを発現、過剰発現、又は異常発現する細胞を含む。
がん又は悪性腫瘍の他の例は、急性小児リンパ性白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌;副腎、成人(原発性)肝細胞がん、成人(原発性)肝臓がん、成人急性リンパ球性白血病、成人急性骨髄性白血病、成人ホジキンリンパ腫、成人リンパ急性白血病、成人非ホジキンリンパ腫、成人原発性肝臓がん、成人軟部肉腫、AIDS関連リンパ腫、AIDS関連悪性腫瘍、肛門がん、星状細胞腫、胆管がん、膀胱がん、骨がん、脳幹グリオーマ、脳腫瘍、乳がん、腎盂及び尿管のがん、中枢神経系(原発性)リンパ腫、中枢神経系リンパ腫、小脳星状細胞腫、大脳星状細胞腫、子宮頸がん、小児(原発性)肝細胞がん、小児(原発性)肝臓がん、小児急性リンパ性白血病、小児急性骨髄性白血病、小児脳幹グリオーマ、小児小脳星状細胞腫、小児大脳星状細胞腫、小児頭蓋外胚細胞腫瘍、小児ホジキン病、小児ホジキンリンパ腫、小児視経路及び視床下部膠腫、小児リンパ性白血病、小児髄芽細胞腫、小児非ホジキンリンパ腫、小児テント上原始神経外胚葉性腫瘍、小児原発性肝臓がん、小児横紋筋肉腫、小児軟部肉腫、小児視経路及び視床下部膠腫、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、直腸がん、皮膚T細胞性リンパ腫、内分泌膵島細胞癌、子宮内膜がん、上衣腫、上皮がん、食道がん、ユーイング肉腫及び関連腫瘍、外分泌膵臓がん、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管がん、眼がん、女性乳がん、ゴーシェ病、胆嚢がん、胃がん、消化管カルチノイド腫瘍、消化管腫瘍、胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛腫瘍、ヘアリー細胞白血病、頭頸部がん、肝細胞がん、ホジキンリンパ腫、高ガンマグロブリン血、下咽頭がん、腸がん、眼内黒色腫、島細胞癌、島細胞膵臓がん、カポジ肉腫、腎臓がん、喉頭がん、口唇及び口腔がん、肝臓がん、肺がん、リンパ増殖性疾患、マクログロブリン血症、男性乳がん、悪性中皮腫、悪性胸腺腫、髄芽細胞腫、黒色腫、中皮腫、転移性の原発不明頸部扁平上皮がん、転移性原発性頸部扁平上皮がん、転移性頸部扁平上皮がん、多発性骨髄腫、多発性骨髄腫/形質細胞腫、骨髄異形成症候群、骨髄性白血病、骨髄性白血病(Myeloid Leukemia)、骨髄増殖性障害、副鼻腔及び鼻腔がん、鼻咽腔がん、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、非黒色腫皮膚がん、非小細胞肺がん、原発不明の転移性頸部扁平上皮がん、口腔咽頭がん、骨肉腫/悪性線維性肉腫、骨肉腫/悪性線維性組織球腫、骨肉腫/骨の悪性線維性組織球腫、上皮性卵巣がん、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍、膵臓がん、異常タンパク血症、真性赤血球増加症、副甲状腺癌、陰茎がん、褐色細胞腫、下垂体部腫瘍、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性肝臓がん、前立腺癌、直腸がん、腎細胞がん、腎盂及び尿管がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、サルコイドーシス肉腫、セザリー症候群、皮膚がん、小細胞肺がん、小腸がん、軟部肉腫、頸部扁平上皮がん、胃がん、テント上原始神経外胚葉腫瘍及び松果体腫瘍、T細胞リンパ腫、精巣がん、胸腺腫、甲状腺癌、腎盂及び尿管の移行細胞がん、移行性腎盂及び尿管がん、絨毛性腫瘍、尿管及び腎盂細胞がん、尿道がん、子宮がん、子宮肉腫、膣がん、視覚伝導路及び視床下部グリオーマ、外陰がん、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍、並びに、上に列挙された器官系に位置する新生組織形成以外の任意の他の過剰増殖性疾患を含むが、これらに限定されない。
本明細書において説明及び請求される方法及び組成物は、悪性又は前がん状態を治療するために、及び、上述のような障害を含むがそれらに限定されない新生物又は悪性状態への進行を予防するために使用され得る。そのような使用は、特に、過形成、化生、又は最も具体的には異形成からなる非腫瘍性細胞成長が生じている、新生組織形成又はがんへの進行に先立って知られている、又は疑われる状態に適応される(そのような異常成長状態の検討に関しては、Robbins and Angell,BASIC PATHOLOGY,2d Ed.,W.B.Saunders Co.,Philadelphia,pp.68−79(1976)を参照されたい)。
異形成は、多くの場合がんの前兆であり、主に上皮に見られる。これは、非腫瘍性細胞成長の最も無秩序な形態であり、個々の細胞均一性及び細胞の構造的配向の損失が関与する。異形成は、慢性的な刺激又は炎症が存在する場合に特徴的に生じる。治療され得る異形成障害は、無汗性外胚葉性異形成、前後異形成、窒息性胸郭異形成、心房指異形成、気管支肺異形成、脳異形成、子宮頸部異形成、軟骨外胚葉異形成、鎖骨頭蓋骨異形成、先天性外胚葉異形成、頭蓋骨幹異形成、頭蓋手根足根骨異形成、頭蓋骨幹端異形成、象牙質異形成、骨幹異形成、外胚葉異形成、エナメル質異形成、脳眼異形成、骨端半肢性異形成(dysplasia epiphysialis hemimelia)、多発性骨端異形成(dysplasia epiphysialis multiplex)、点状骨端異形成(dysplasia epiphysialis punctata)、上皮異形成、顔面指趾生殖器異形成(faciodigitogenital dysplasia)、家族性線維性顎異形成(familial fibrous dysplasia of jaws)、家族性白色襞性異形成(familial white folded dysplasia)、線維筋性異形成、線維性骨異形成、開花性骨性異形成(florid osseous dysplasia)、遺伝性腎網膜異形成(hereditary renal−retinal dysplasia)、発汗性外胚葉異形成、発汗低下性外胚葉異形成、リンパ性減少性胸腺異形成(lymphopenic thymic dysplasia)、乳腺異形成、下顎顔面異形成、骨幹端異形成、モンディーニ異形成(Mondini dysplasia)、単骨性線維性骨異形成、粘膜上皮異形成(mucoepithelial dysplasia)、多発性骨端異形成、眼耳脊椎異形成(oculoauriculovertebral dysplasia)、眼歯指異形成、眼脊椎異形成(oculovertebral dysplasia)、歯牙異形成(odontogenic dysplasia)、眼下顎四肢形成不全、根尖性セメント質異形成(periapical cemental dysplasia)、多骨性線維性骨異形成、偽軟骨発育不全脊椎骨端異形成(pseudoachondroplastic spondyloepiphysial dysplasia)、網膜異形成、中隔視神経異形成、脊椎骨端異形成、及び心室橈骨異形成(ventriculoradial dysplasia)を含むが、これらに限定されない。
治療され得る追加の前腫瘍性障害は、良性の非増殖性疾患(例えば、良性腫瘍、線維嚢胞性状態、組織肥大、腸ポリープ又は腺腫、及び食道異形成)、白斑症、角化症、ボーエン病、農夫皮膚、日光口唇炎、並びに日光角化症を含むが、これらに限定されない。
好ましい実施形態において、本発明の方法は、がん、特に上に列挙されたものの成長、進行、及び/又は転移を阻害するために使用される。
追加の過剰増殖性疾患、障害及び/又は状態は、白血病(急性白血病(例えば、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病(骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性、及び赤白血病を含む))及び慢性白血病(例えば、慢性骨髄性(顆粒球性)白血病及び慢性リンパ球性白血病)を含む)、真性多血症、リンパ腫(例えば、ホジキン病及び非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、重鎖病、並びに線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫(endotheliosarcoma)、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫(lymphangioendotheliosarcoma)、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓がん、乳がん、卵巣がん、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭部癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性肺癌、腎細胞癌、肝細胞がん、胆管癌、絨毛がん、精上皮腫、胚性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺がん、膀胱がん、上皮性がん、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫瘍、乏突起神経膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽腫、及び網膜芽腫等の肉腫及び癌腫を含むがこれらに限定されない固形腫瘍等の悪性腫瘍及び関連障害の進行及び/又は転移を含むが、これらに限定されない。
発現ベクター
さらに他の実施形態は、抗体、抗体断片、サイトカイン又はbsAbの構成物質融合タンパク質、例えばDNL(商標)コンストラクトをコードする核酸を含むDNA配列に関連し得る。融合タンパク質は、例えば、AD又はDDD部分に結合した抗体又は断片又はサイトカインを含み得る。
様々な実施形態は、コードDNA配列を含む発現ベクターに関する。ベクターは、軽鎖及び重鎖定常領域、並びに、キメラ、ヒト化又はヒト可変領域配列が結合され得るヒト免疫グロブリンのヒンジ領域をコードする配列を含有することができる。ベクターは、追加的に、選択された宿主細胞におけるコードされたタンパク質を発現するプロモーター、エンハンサー、及びシグナル又はリーダー配列を含有し得る。特に有用なベクターは、pdHL2又はGSである。より好ましくは、軽鎖及び重鎖定常領域並びにヒンジ領域は、ヒトEU骨髄腫免疫グロブリンからのものであってもよく、随意に、アロタイプ位置におけるアミノ酸の少なくとも1つが、異なるIgG1アロタイプにおいて見られるものに変更され、随意に、EU番号系に基づくEUの重鎖のアミノ酸253がアラニンで置き換えられてもよい。Edelman et al.,Proc.Natl.Acad.Sci USA63:78−85(1969)を参照されたい。他の実施形態において、IgG1配列は、IgG4配列に変換されてもよい。
当業者には、発現コンストラクトを遺伝子操作する方法、及び操作されたタンパク質を発現するための宿主細胞への挿入が、当該技術分野において周知であり、習慣的な実験の問題であることが理解される。宿主細胞及びクローニングされた抗体又は断片の発現の方法は、例えば、米国特許第7,531,327号、米国特許第7,537,930号、米国特許第7,785,880号、米国特許第8,076,410号、米国特許第8,153,433号及び米国特許第8,372,603号に記載されており、それぞれの実施例の項は、参照により本明細書に組み込まれる。
キット
様々な実施形態は、患者における疾患組織の治療又は診断に好適な成分を含有するキットに関連し得る。例示的なキットは、本明細書に記載のような1種以上のbsAb、ADC、インターフェロン、及び/又はチェックポイント阻害剤抗体を含有し得る。投与用の成分を含有する組成物が、例えば経口送達による消化管からの送達用に製剤化されていない場合、いくつかの他の経路を介してキット成分を送達することができるデバイスが含まれてもよい。非経口送達等の用途のためのデバイスの1つの種類は、組成物を対象の身体内に注射するために使用されるシリンジである。吸入デバイスもまた使用され得る。ある特定の実施形態において、治療薬剤は、無菌液体製剤又は凍結乾燥調製物を含有する、事前に充填されたシリンジ又はオートインジェクションペンの形態で提供されてもよい。
キット成分は、一緒に包装されてもよく、又は、2つ以上の容器内に分けられてもよい。いくつかの実施形態において、容器は、再構成に好適な組成物の無菌凍結乾燥製剤を含有するバイアルであってもよい。キットはまた、他の試薬の再構成及び/又は希釈に好適な1種以上の緩衝剤を含有してもよい。使用され得る他の容器は、パウチ、トレイ、箱、管等を含むが、これらに限定されない。キット成分は、容器内に包装され、滅菌状態で維持されてもよい。含まれてもよい別の成分は、キットを使用する者に対する、その使用に関する指示である。
以下の実施例は、本発明の特許請求の範囲を例示するために提供され、それを制限するために提供されるのではない。
実施例1.T細胞再指向二重特異性抗体DOCK−AND−LOCK(商標)(DNL(商標))複合物
例示的な白血球再指向二重特異性抗体のいくつかの種を、後述のようにDNL(商標)複合物として作製した。複合物は、適切な標的細胞に対する免疫反応を誘導するのに効果的であった。
材料及び方法
DOCK−AND−LOCK(商標)(DNL(商標))複合物を作製及び使用するための一般的技術を、以下の実施例において説明する。CD3及びCD19に対する結合部位を有する例示的な白血球再指向二重特異性抗体を、(19)−3sと呼ばれるDNL(商標)複合物として作製した(図1)。Fd鎖のカルボキシル末端における二量体化及びドッキングドメイン(DDD2)の組換え融合により、抗CD19F(ab)2DNLモジュールを構築した。抗CD3−scFvモジュールは、Okt3mAbからアンカードメイン(AD2)を付加して設計され、VH−L1−VK−L2−6H−L3−AD2(「6H」は配列番号105として開示される)の形式でアセンブルされたが、Vドメインは、柔軟なペプチドリンカーを介して融合され、AD2ペプチドの前に6−Hisリンカー(配列番号105)が先行している。抗CD3可変領域、リンカー及びAD2の配列は、以下に示す通りであった。
発現ベクター及びDNL(商標)モジュール−一般に(X)−3s bsAbと省略される抗CD3抗体部分に連結した様々な疾患関連抗原に対する抗体部分を含むDNL(商標)複合物を構築した。SpESFX−10マウス骨髄腫細胞において、(X)−3s bsAbを作製するために使用されたDNL(商標)モジュールのそれぞれに対して、独立した生成細胞株を成長させた(Rossi et al.,2011,Biotechnol Prog27:766−75)。Okt3scFv−AD2ポリペプチド(配列番号96〜101)をコードするcDNA配列を合成し、5’Xba I及び3’Eag I制限部位を介してpdHL2発現ベクターにクローニングした。コンストラクトは、構造VH−L1−VK−L2−6H−L3−AD2(「6H」は、配列番号105として開示されている)を有するscFvにおけるVLに融合されたVHドメインを含んでいた。発現したタンパク質は、元のOkt3mAbからの2つのアミノ酸置換を有していた。CDR−H3内のシステイン残基は、セリンに変更された(Kipryanov,1997,J Immunol Methods200:69−77)。VLの最後から2番目の残基は、アスパラギン酸塩からリシンに変更された。
Okt3scFv−AD2モジュールを、様々なCH1−DDD2−Fabモジュールと組み合わせて、(X)−3s三価bsAbのパネルを生成した(表6)。CH1−DDD2−Fab−pdHL2発現ベクターを、同様のコンストラクトに関して以前に説明されたように構築した(Rossi et al.,2008,Cancer Res68:8384−92)。簡潔に説明すると、CH1−ヒンジ−CH2−CH3ドメインのコード配列を、Sac II及びEag I制限酵素で切断し、これを、CH1−DDD2−Fab−hA20−pdHL2発現ベクターから同じ酵素で切断されたCH1−DDD2(Rossi et al.,2008,Cancer Res68:8384−92)をコードする507bp配列と置き換えることにより、CH1−DDD2−Fabをコードする発現ベクターを、対応するIgG−pdHL2発現ベクターから生成した。CH1−DDD2−Fabモジュールは、ヒト化mAb hA19(抗CD19)、ラベツズマブ(hMN−14、抗CEACAM5)、クリバツズマブ(hPAM4、抗ムチン)、hMN−15(抗CEACAM6)、hRS7(抗TROP−2)、ベルツズマブ(hA20、抗CD20)、hL243(抗HLA−DR)及びエプラツズマブ(hLL2、抗CD22)から得られた。hA19で指定されるmAbは、マウス抗CD19mAb B43からヒト化された(Uckun et al.,1988,Blood71:13−29)。それぞれの発現ベクターを、Sal I制限酵素での消化により線形化し、エレクトロポレーションによるSpESFX−10細胞のトランスフェクションに使用した。
0.2μMメトトレキセート(MTX)を含有する培地中でクローンを選択し、ELISAによりタンパク質発現に関してスクリーニングした。Okt3scFv−AD2を、Ni−NTA HisSorbプレート(Qiagen)上に捕捉し、抗AD2mAbで検出した。C
H1−DDD2−Fabモジュールを、ヤギ−抗ヒト−カッパ鎖で捕捉し、ヤギ−抗ヒト−F(ab’)
2−HRPで検出した。タンパク質発現の生産性を、3μMまでのMTX濃度の段階的増加により増幅した。Okt3scFv−AD2及びC
H1−DDD2−Fabモジュールを、それぞれNi−SEPHAROSE(登録商標)及びKappa−Select樹脂を使用した親和性クロマトグラフィーにより、ローラーボトル培養のブロスから均一となるまで精製した。DNL(商標)法を使用して、モル当量のOkt3scFv−AD2及びC
H1−DDD2−Fabモジュールの部位特異的複合化により(X)−3s bsAbをアセンブルした。例えば、22mgのOkt3scFv−AD2を80mgのC
H1−DDD2−Fab−hA19と組み合わせることにより、約100mgの(19)−3sを生成した。2mMの酸化グルタチオンの添加の前に、1mMの還元グルタチオンにより、混合物を室温で一晩還元した。Kappa−Select及びNi−SEPHAROSE(登録商標)での逐次的親和性クロマトグラフィーにより、反応混合物から(19)−3sを精製した。追加的な(X)−3sコンストラクトを、同様のプロセスに従い、様々な規模でアセンブルした。
分析方法−BIOSUITE(商標)250、4μm UHR SECカラム(Waters Corp)を備えるAlliance HPLC Systemを用いて、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE−HPLC)を行った。6210TOF MS(Agilent Technologies、Santa Clara、CA)と連結した1200シリーズHPLCを用いて、エレクトロスプレーイオン化飛行時間(ESI−TOF)液体クロマトグラフィー/質量分析(LC−MS)を行った。Aeris widepore3.6μm C4カラム(Phenomenex)を用い、0.1%ギ酸水溶液中の30〜80%アセトニトリルの14分勾配を使用して、(19)−3sを、逆相HPLC(RP−HPLC)により60℃で分離した。TOF MSにおいて、キャピラリ及びフラグメンター電圧は、それぞれ5500及び300Vに設定した。
細胞株及び試薬−Raji、Ramos、Daudi、LS174T及びCapan−1細胞株を、American Type Cell Culture Collection(ATCC、Manassas、MD)から購入し、Nalm−6細胞を、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellinien(DSMZ、Braunchweig、Germany)から購入した。Capan−1以外の全ての細胞株を、10%FBS、1%L−グルタミン、1%ペニシリン−ストレプトマイシン及び1%MEM非必須アミノ酸を含有するRPMI−1640中に維持した。Capan−1細胞は、20%FBSで維持した。全ての細胞培養培地及び補助物質は、Life Technologies(Carlsbad、CA)から購入した。
PBMC及びT細胞単離−UNI−SEPMAXI管(Novamed,Ltd、Jerusalem、Israel)を使用して、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)をドナー全血(Blood Center of NJ、East Orange、NJ)から精製した。製造者のプロトコルに従い、Pan T Cell Isolation Kit(Miltenyi Biotec、Auburn、CA)を使用して、陰性選択によりCD3陽性T細胞をPBMCから単離した。抗CD3−PE抗体により濃縮T細胞を染色した後、T細胞単離の効率をFACSにより評価した。いくつかの場合において、汚染細胞を特定するために、CD−19及びCD−14によるさらなる染色もまた行った。
T細胞活性化−単離されたT細胞を、2.25×106細胞/ウェルの最終濃度で6ウェル組織培養プレートに播種した。Daudi細胞をいくつかのウェルに1.5×106細胞/ウェルの最終濃度で添加し、他のウェルはT細胞のみを含有したままとした。代替として、PBMCを6ウェル組織培養プレートに6×106細胞/ウェルの最終細胞密度で添加した。各ウェルの体積を、3mLとした。適切なウェルに、3ng/mLの(19)−3s、(M1)−3s又は(19)−DDD2を添加した。37℃で一晩のインキュベーション後、各試料の1mLを取り出した。細胞をペレット化し、氷上で20分間CD69−APC及びCD3−PEで標識化した。細胞をPBS中1%BSAで2回洗浄し、FACSCALIBER(商標)フローサイトメーター(BD Biosciences、San Jose、CA)を使用して分析した。
T細胞増殖−PBMCを、1×106細胞/mLの濃度で、指定の試薬を含有するT25フラスコ内に播種した。B細胞枯渇フラスコに対しては、製造者のプロトコルに従いMiltenyiからのB細胞単離キットを使用して、陰性選択によりB細胞を除去した。選択された日に、100μLの培地を各フラスコから取り出し、氷上で20分間抗CD7−APCで標識化し、1回洗浄し、7−AADを含有する300μLの1%BSA/PBS中に再懸濁させた。各試料に対して、FACSCALIBER(商標)フローサイトメーターを使用して全体積を分析する。各試料は、2回計数する。分析は、FlowJo Softwareを使用して行う。各試料に対して、死滅した(7−AAD+)細胞及び残屑(前方対側方散乱に基づく)を除去した。最後に、生存CD7+細胞を選択し、Prismソフトウェアを使用してプロットした。
細胞結合アッセイ(Jurkat/Capan−1)−Jurkat細胞を、製造者のプロトコルに従い、PKH26Red Fluorescent Cell Linker Kit(Sigma)で染色した。Capan−1細胞を、製造者のプロトコルに従い、5μMのCFSE(カルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル、Life Technologies)で染色した。標識化されたCapan−1細胞を、8ウェルチャンバスライド(ThermoWaltham、MA)に加え、一晩付着させた。翌日、培地を取り出し、0.1μg/mLの(E1)−3s、(M1)−3s又は(19)−3sを含有する培地に、PKH26標識化Jurkat細胞を添加した。37℃で1時間のインキュベーション後、スライドをPBSで洗浄していかなる未結合細胞も除去し、蛍光顕微鏡により観察した。
細胞結合アッセイ(Jurkat/Daudi)−Jurkat及びDaudi細胞を、それぞれ抗CD3−PE及び抗CD20−FITCで標識化した。次いで、標識化された細胞を、0.1μg/mL(19)−3sと、2.5:1の比で室温で30分間共インキュベートした。次いで、細胞のアリコートを、蛍光顕微鏡により観察した。
細胞毒性アッセイ(血液系腫瘍細胞株)−製造者のプロトコルに従い、標的細胞をPKH67Green Fluorescent Cell Linker Kit(Sigma)で標識化した。簡潔に説明すると、5×106標的細胞を、250μLの希釈剤C中に再懸濁させた。第2の管内で、1μLのPKH26染料を250μLの希釈剤Cに添加する。次いで、細胞懸濁液を染料溶液に添加し、完全に混合し、室温で2分間インキュベートする。等体積のFBSを添加することにより、反応をクエンチした。次いで、標識化された細胞を、完全RPMIで3回洗浄した。非刺激単離T細胞を、エフェクター細胞として使用した。エフェクター細胞及びPKH67標識化標的細胞を、10:1の比で組み合わせ、(19)−3s又は(14)−3sの連続希釈物を含有する48ウェルプレートに播種した。各ウェルは、5×104標的細胞及び5×105エフェクター細胞を含有した。20%RPMI中でJeko−1アッセイを行った。5%CO2を含有する37℃のインキュベーター内で、プレートを18〜24時間インキュベートした。インキュベーション後、全ての細胞を48ウェルプレートからフローサイトメーター管内に取り出し、死滅した細胞から生存細胞を区別するための1ug/mLの7AAD、及び30,000のCOUNTBRIGHT(商標)Absolute Counting Beads(Life Technologies)を含有する1%BSA/PBS中に再懸濁させた。FACSCALIBER(商標)フローサイトメーター上で細胞を分析した。各試料に対して、8,000のCOUNTBRIGHT(商標)ビーズを、正規化された参照として計数した。FlowJoソフトウェア(Treestar,Inc.、Ashland、OR)を使用してデータを分析した。各試料に対して、死滅した細胞及び残屑を除外し、全生存標的細胞を計数した。
細胞毒性アッセイ(固形腫瘍細胞株)−PKH23による染色の場合と同じ手順に従い、標的細胞をPKH67Green Fluorescent Cell Linker Kit(Sigma)で標識化した。使用されたエフェクター細胞は、以下の通りであった:Capan−1分析においては、CD8+濃縮カラム(R&D Systems、Minneapolis、MN)からの精製後に、CD8+濃縮T細胞を使用した。LS174T細胞に対しては、25U/mL IL−2及び50ng/mL Okt3Mabを含有する培地中で5日間のPBMCのインキュベーションに続く、25U/mL IL−2のみを含有する培地中で2日間のインキュベーション後に、刺激T細胞を使用した。エフェクター細胞及びPKH67標識化標的細胞を、3:1の比(5×104の標的細胞及び1.5×105のエフェクター細胞/ウェル)で組み合わせ、(E1)−3s、(14)−3s又は(19)−3sの連続希釈物を含有する48ウェルプレート上に播種した。20%RPMI中でCapan−1アッセイを行った。5%CO2を含有する37℃のインキュベーター内で、プレートを42〜48時間インキュベートした。インキュベーション後、懸濁細胞を、全てのウェルからのトリプシン処理付着細胞と組み合わせ、フローサイトメーター管内に移した。細胞を1回洗浄し、死滅した細胞から生存細胞を区別するための1ug/mLの7AAD、及び30,000のCOUNTBRIGHT(商標)Absolute Counting Beadsを含有する1%BSA/PBS中に再懸濁させた。FACSCALIBER(商標)フローサイトメーター上で細胞を分析した。各試料に対して、8,000のCOUNTBRIGHT(商標)ビーズを、正規化された参照として計数した。FlowJoソフトウェア(Treestar,Inc.、Ashland、OR)を使用してデータを分析した。各試料に対して、死滅した細胞及び残屑を除外し、全生存標的細胞を計数した。
In Vivo効力−8週齢の雌NOD/SCIDマウスを、Charles River(Wilmington、MA)から購入した。マウスに、マトリゲルと1:1で混合されたRaji(1×106)及びヒトPBMC(5×106細胞)の混合物を皮下注射した。1時間後に治療を開始した。治療計画、用量、及び各実験における動物の数は、結果に記載される。腫瘍増殖の兆候について、動物を毎日監視した。腫瘍が出現したら、それを週2回測定した。腫瘍体積(TV)は、キャリパーを使用して2つの寸法の測定により決定されたが、体積は、L×w2/2として定義され、式中、Lは、腫瘍の最長寸法であり、wは最短寸法である。効力は、1.0cm3への腫瘍進行時間(TTP)として生存代用評価項目を使用し、Kaplan−Meier曲線上でPrism GraphPadソフトウェア(v5;LaJolla、CA)を使用したログランク検定により決定された。有意性は、P<0.05で考慮された。
結果
白血球再指向二重特異性抗体の構築及び生化学的分析。DNL(商標)法を使用して、(X)−3s、CD19、CD20、HLA−DR、TROP−2、CEACAM5及びMUC5ACを含む様々な腫瘍関連抗原の標的化のための白血球再指向bsAbのパネルを生成した。これらの構造の純度は、SE−HPLC及びSDS−PAGE分析により実証されたが、3つの構成ポリペプチド(Okt3scFv−AD2、hA19−Fd−DDD2及びhA19カッパ)を表すバンドのみが明らかであった(データは示さず)。LC−MS分析では、Okt3scFv−AD2及び2つのCH1−DDD2−hA19Fd鎖のそれぞれにおける予測アミノ末端ピログルタミン酸(データは示さず)を含む、その推定アミノ酸配列からの(19)−3sの計算質量(137432.37Da)と一致する(質量精度=11ppm)デコンボリューションされた質量スペクトルを有する単一のRP−HPLCピークが特定された。グリコシル化を含む追加的な翻訳後修飾は示されなかった。
(19)−3sにより媒介される、Daudi Burkittリンパ腫とT細胞との間の免疫シナプス形成。エフェクターT細胞のCD19+リンパ腫細胞への標的化に対する白血球再指向(19)−3s DNL(商標)複合物の効果を検査した(図2)。新しく単離されたT細胞を、2.5:1のE:T比でDaudi細胞と組み合わせた。細胞を0、1又は5μg/mLの(19)−3s DNL(商標)複合物で室温で30分間処理してから、フローサイトメトリーにより分析した。抗CD20−FITC及び抗CD7−APCを使用して、それぞれDaudi及びT細胞を特定した。同時結合は、CD20+/CD7+イベントの%として示された。(19)−3sでの処理後、抗体を含まない混合細胞に対して測定された2%と比較して(図2B)、フローイベントの45.5%がCD20/CD7二重陽性であり、シナプス形成したDaudi及びT細胞を示していた(図2A)。(19)−3sを添加することにより、Daudiの90%超がT細胞と結合した(図2C)。これらの結果は、(19)−3s DNL(商標)複合物が、T細胞を標的化抗原発現リンパ腫細胞に指向させるのに効果的であったことを示す。
T細胞と標的リンパ腫細胞との間のシナプス形成は、蛍光顕微鏡により実証された(図3)。Jurkat(T細胞)及びDaudi(B細胞)を1:1の比で組み合わせ、0.1μg/mLの(19)−3s DNL(商標)複合物で30分間処理し、抗CD20−FITC(図3A)及び抗CD3−PE(図3B)で染色してから、蛍光顕微鏡により分析した。合成画像(図3C)は、緑色に染色されたDaudiと赤色に染色されたJurkat細胞との間のシナプス形成を明らかにしている。(19)−3sが存在しない場合、シナプス形成は明らかではなかった(図3D)。図3Cは、標的リンパ腫細胞が標的化T細胞と直接接触していることを示している。
例示的B細胞リンパ腫株に対するT細胞の(19)−3s媒介結合に関して、一連の用量−反応を行った(図4)。図4に示されるように、この実験の条件下で、標的細胞に対するT細胞の(19)−3s−媒介細胞間結合の飽和が、0.037〜0.111μg/mlの間のDNL(商標)複合物濃度で達成された。
図5は、T細胞を標的化CD19+B細胞に再指向させるための、BITE(登録商標)(図5A)、DART(商標)(図5A)及びDNL(商標)(図5B)抗CD3×抗CD19複合物の相対的効用の比較を示す。BITE(登録商標)及びDART(商標)のデータは、Mooreら(2011,Blood117:4542−51)から得られた。試験された0.0005μg/mlの最低濃度において、(19)−3s DNL(商標)複合物は、B細胞リンパ腫へのT細胞の標的化において、BITE(登録商標)又はDART(商標)よりも効果的であった(図5)。(19)−3s DNL(商標)複合物はまた、匹敵するBITE(登録商標)及びDART(商標)複合物(図5A)よりも若干高い細胞間結合の最大レベルを誘導した。(19)−3s DNL(商標)複合物に対して作成された単一データ点から外挿するのは困難であるが、EC50レベルは、BITE(登録商標)、DART(商標)及びDNL(商標)に対して同様であるようであった(図5)。
標的腫瘍細胞に対するT細胞の(19)−3s、(E1)−3s及び(M1)−3s−媒介細胞間結合。標的腫瘍細胞に対するT細胞の結合を促進するT細胞再指向BsAbの能力を評価するために、Jurkat T細胞を、(X)−3sを含有する標的腫瘍細胞と共インキュベートし、フローサイトメトリー及び蛍光顕微鏡により評価した。Jurkat T細胞は、CD4+T細胞白血病株であり、様々な濃度の(19)−3sの存在下でFITC標識化Daudi細胞の枯渇なしでT細胞結合を示す能力のために選択され、T細胞−B細胞結合複合物を示す二重陽性(CD3+CD20+)集団の検出についてフローサイトメトリーにより分析される。0.5ng/mLの(19)−3sでの処理後に明らかな細胞間結合が観察され、0.1μg/mLでの処理後に、細胞集団の25%超が、細胞間結合において存在した(図5)。免疫シナプスが0.1μg/mLの(19)−3sによる処理後に明確であるため、蛍光顕微鏡はこのデータを裏付けている(図4)。(19)−3sの非存在下では、シナプス形成は観察されなかった(データは示さず)。
この細胞間結合は、膵臓腫瘍株Capan−1においても同様に観察された(図6)。Capan−1は、高レベルのTROP2及び中レベルのMUC5ACを発現する。したがって、TROP2標的化bsAb、(E1)−3s(図6C)、及びMUC5AC標的化bsAb、(M1)−3s(図6B)の両方を、非標的化対照bsAb、(19)−3s(図6A)と比較した。CFSE標識化Capan−1細胞は、これらのbsAbの存在下でPKH26標識化Jurkatと共インキュベートされた。予測されるように、蛍光顕微鏡は、(E1)−3sにより媒介される大型のT細胞/Capan複合物に続く、(M1)−3sにより媒介されるより小さいが実質的な複合物、及び(19)−3s処理後の比較的低い複合物形成を明らかにした(図6)。
(19)−3sは、T細胞活性化及び増殖を特異的に誘導する。T細胞活性化の初期マーカーであるCD69の発現レベルを測定することにより、T細胞を活性化する(19)−3sの能力を、PBMC(図7A)、又はDaudi B細胞と共インキュベートされたT細胞(図7B)中で評価した。非標的化対照抗体、(19)−DDD2及び(M1)−3s、並びにDaudi標的細胞なしで(19)−3sで処理されたT細胞と比較して、CD69発現の50倍を超える増加により示されるように、3ng/mLの(19)−3sによる処理は、Daudi B細胞と共インキュベートされたT細胞中でT細胞活性化を誘導した(図7B)。抗体がT及びB細胞の両方を含有するPBMCとインキュベートされた場合も同様の結果が観察され;(19)−3sは、非標的化対照よりも20倍超高いCD69発現レベルを刺激した(図7A)。標的細胞の非存在下では、(19)−3sで処理された精製T細胞は、活性化を示さなかった(図7C)。
T細胞活性化の別の指標としてのT細胞増殖を、様々なCD3標的化抗体によるPBMCの処理後に評価した。3nM又は30pMの(19)−3sは、陽性対照IL−2/PHAのT細胞増殖と同様のT細胞増殖を誘導した(図8A)。非標的化対照抗体(14)−3sは、最高(3nM)濃度である程度の非特異的T細胞増殖を示す(図8A)。しかしながら、T細胞増殖は、B細胞が枯渇したPBMCにおいて観察されず(図8B)、特異的(19)−3s誘導T細胞増殖には標的細胞が必要であることを示唆していた。
悪性細胞株の(X)−3s再指向T細胞媒介性の死滅。各白血球標的化分子の細胞毒性を、特定の腫瘍標的細胞の溶解を媒介するその能力により評価した。血液系腫瘍細胞系に対して、18〜24時間アッセイにおいてエフェクター細胞としての非刺激濃縮T細胞集団を使用した10:1のE:T比は、最適アッセイ条件を示した。CD19標的化bsAb(19)−3sは、比較的低いCD19発現細胞株Ramos(IC50=0.17pM、LysisMax=79%)、Daudi(IC50=1pM、LysisMax=60%)、及びNalm6(IC50=6pM、LysisMax=93%)の最も強力な特異的死滅を誘導した(図9A)。興味深いことに、高CD19発現細胞株Namalwa(IC50=63pM、LysisMax=60%)及びRaji(IC50=3nM、LysisMax=41%)は、(19)−3sに対して最も感受性が低かった(図9A)。非標的化(14)−3s DNL(商標)コンストラクトは、試験された細胞株のいずれにおいてもほとんど細胞毒性作用を有さなかった(図9B)。Nalm−6ALL細胞株に対する(19)−3sコンストラクトの一貫した細胞毒性作用は、2つの異なるドナーから得られたPBMCにより得られた(図9C)。
いくつかの細胞株において、(20)−3s、(22)−3s及び(C2)−3s T細胞再指向bsAbのin vitro細胞毒性作用を決定した(図10)。CD22標的化bsAb(22)−3sは、CD22陽性Daudi細胞株において、強力な(IC50=5pM、LysisMax=60%)特異的T細胞媒介溶解を示した(図10C)が、CD22陰性Namalwa細胞においては示さなかった(図10A)。
CD20標的化bsAb(20)−3sは、より低いCD20発現性のNamalwa細胞株(IC50=30pM、LysisMax=53%)(図10A)と比較して、より高い発現性のCD20細胞株Daudi(IC50≦0.3pM、LysisMax=90%)(図10C)及びJeko(IC50=1pM、LysisMax=90%)(図10B)において最も高い効能を示した。
HLA−DR標的化bsAb(C2)−3sを、HLA−DR発現Jeko−1細胞株(IC50=20pM、LysisMax=88%)において試験した(図10B)。
10:1のE:T比において、単離T細胞をエフェクター細胞として使用して、bsAbは、Burkittリンパ腫(Daudi、Ramos、Namalwa)、マントル細胞リンパ腫(Jeko−1)、及び急性リンパ芽球性白血病(Nalm−6)を含む様々なB細胞悪性腫瘍において、強力なT細胞媒介細胞毒性を誘導した(表7)。非腫瘍結合対照(14)−3sは、10nM超で中程度のT細胞死滅のみを誘導した。T細胞再標的化効能のためには、抗原/エピトープの性質、特にそのサイズ及び細胞表面への近接性が、抗原密度よりも重要であるようであった(表7)。(20)−3sは、Namalwa及びJeko−1に関してそれぞれ見られるように、CD19又はHLA−DRの発現がCD20より著しく高い場合であっても、一貫して(19)−3s及び(C2)−3sよりも強力であると考えられる(表7)。これは、CD20エピトープが、細胞表面に極めて近接した小細胞外ループを含むためと考えられる。Daudiを直接使用して比較すると、(22)−3sは最も強力でなかった。CD19及びCD20と比較すると、CD22は、最も低い密度で発現し、急速に内在化する抗原であり、そのエピトープは、さらに細胞表面から離れている。これらの因子のそれぞれが、その低減された効能に寄与し得る。最後に、T細胞再標的化死滅への感受性は、(19)−3sを使用して観察されるように細胞株依存的であり、Raji(IC50>3nM)は主として非反応性である一方、Ramos(IC50=2pM)は極めて反応性であるが、前者はより高いCD19抗原密度を発現する(表7)。
結論として、(19)−3s、(20)−3s、(22)−3s及び(C2)−3sは、T細胞に結合すると同時にB細胞を標的化し、in vitroでT細胞媒介死滅を誘導する。DNL法のモジュラー的性質により、追加的な組換え操作及びタンパク質生成を必要とすることなく、様々なB細胞悪性腫瘍の再指向白血球死滅のためのいくつかの関連複合体の急速な生成が可能であった。CD20細胞外エピトープが細胞表面に非常に近接していることにより、(20)−3sの最も高い効能が得られた。
白血球再指向bsAbのin vitro細胞毒性作用もまた、固形腫瘍細胞において決定した(図11)。固形腫瘍細胞株において、最適なアッセイ条件は、42〜48時間アッセイにおいて刺激T細胞を使用して、3:1のE:T比であると決定された。各bsAbは、腫瘍標的細胞の特異的T細胞媒介溶解を誘導した。CEACAM5発現ヒト結腸腺癌細胞株LS−174Tは、(14)−3sによる処理後に強力な特異的溶解(IC50=2pM)を示した(図11A)。(E1)−3sは、TROP2発現Capan−1ヒト膵臓腺癌細胞株の強力な特異的溶解(IC50=29pM)を媒介した(図11B)。高レベルのCEACAM6及びTROP2の両方を発現する胃癌細胞株NCI−N87は、T細胞標的化分子(15)−3s及び(E1)−3sに対して非常に強力な特異的溶解を示した(それぞれIC50=3pM及び0.85pM)(図11C)。非標的化対照抗体(19)−3sは、Capan−1及びLS174Tに対して、1nM超の濃度で低い(<20%)非特異的溶解を誘導し、NCI−N87細胞において中程度(約40%)の非特異的溶解を誘導した(図11A〜C)。種々の腫瘍細胞株における様々な白血球再指向bsAbに対するin vitro細胞毒性データの概要を、図12に示す。様々なコンストラクトは、90%まで、又はそれ以上の標的化腫瘍細胞の最大細胞溶解を示し、標的化抗原を発現する細胞株に対するIC50値は、一般に低ピコモル範囲内であった(図12)。
実施例2.白血球再指向DNL(商標)複合物のin vivo試験
小(<60kDa)scFv系コンストラクト、例えばBITE(登録商標)及びDART(商標)の1つの潜在的な制限は、それらの毒性及び循環からの急速なクリアランスに起因する、長期持続注入による投与の必要性である。DNL(商標)bsAbの分子サイズは、典型的には腎クリアランスに関連した閾値を超えるため、循環からのより緩やかなクリアランスを示すはずである。我々は、5mg/kgの(19)−3s bsAbの単回ボーラス静脈注射後のマウスにおいて、薬物動態パラメータを測定した(データは示さず)。それぞれ1.1及び5.1時間のt1/2α及びt1/2βで二段階クリアランスが観察され、1880pmol*h/mLの曲線下面積が得られたが(データは示さず)、これは、同じモル濃度で投与されたMT103(抗CD19×抗CD3BITE(登録商標))に関して報告された曲線下面積よりほぼ6倍大きかった(米国特許US2010/0303827A1)。主な違いは、明らかに、(19)−3sのより長いt1/2αである(データは示さず)。(19)−3sの潜在的に有利な特性のために、我々は、動物試験においてBITE(登録商標)に対して典型的に使用される毎日の投与ではなく、より少ない頻度での投薬スケジュールの可能性を評価した。
ヒトPBMCで再構成されたNOD/SCIDマウスにおいて、RajiヒトBurkittリンパ腫異種移植片を使用して予備的試験を行った(図13、図14)。Raji細胞(1×106細胞/マウス)を、単一の健常ドナーからの新しく単離されたPBMC(5×106細胞/マウス)と組み合わせ、マトリゲルと1:1で混合し、0日目に試験における動物の全てにSCを注射した。5匹のマウスの群に、0日目に単回投薬で(図13B)、43μgの3回投薬(0、2及び4日目)(図13C)又は26μgの5回の毎日の投薬(0〜5日目)(図13D)で合計130μgの(19)−3sを静脈注射した。同じ細胞混合物を接種されたが(19)−3sを投与されなかった未処理群(図13A)は、31日の生存期間中央値(MST)を有していた。各治療計画は生存率を改善し(P≦0.05)、3回投薬(1日おき)スケジュールは、最も高い生存率の利益を提供した(MST=91日;ログランク分析によりP=0.0018)。
より低頻度の投薬の効力を決定するために、追跡試験を開始した(図14)。9NOD/SCIDマウスの群に、上記と同様の様式でRaji及びPBMCを接種した。この試験において、治療は、第1の試験における1週間と比較して、2週間に延長された。群に、2週間にわたり、2×130μg(図14B)、4×65μg(図14D)又は6×43μgの投薬で合計360μgの(19)−3sを静脈注射した(図14E)。追加の群に、2×130μgの投薬で、静脈内投与ではなく皮下投与を行った(図14C)。比較のために、未処理マウスの対照群(図14A)又は非標的化(M1)−3s抗体で処理されたマウス(図14F)が準備された。28日目の時点で、(19)−3s処理群のそれぞれは、未処理対照よりも有意に小さいAUCを有していた(P<0.05)。驚くべきことに、皮下経路による2回の週1回投薬は、明らかに、より高頻度の静脈内投薬と同程度に効果的であった。
固形腫瘍を使用して、in vivo試験もまた行った(図15)。LS174T結腸腺癌(図15A、図15B)又はCapan−1膵臓癌(図15C、図15D)に対し、NOD/SCIDマウス異種移植片を上述のように調製した。それぞれの場合において、標的化(E1)−3s(図15B)又は(14)−3s(図15D)bsAb DNL(商標)コンストラクトが投与されたマウスは、対照と比較して改善された生存率を示した。
結論として、(19)−3s、(E1)−3s及び(M1)−3s DNL(商標)コンストラクトを含む白血球再標的化bsAbは、CD3及びCD19に対するそれぞれ一価及び二価結合を介して、それぞれT細胞及びB細胞、結腸腺癌又は膵臓癌細胞の間のシナプス形成を媒介した。T細胞活性化、増殖及び標的細胞死滅は、ex vivoの設定において、DNL(商標)bsAbによりpM濃度で誘導された。二価腫瘍結合及びより緩やかなクリアランスを含むDNL(商標)bsAbの有利な特性は、動物モデルにおいて1日1回静脈内に、及び診療所において持続注入として投与される、BITE(登録商標)又はDART(商標)コンストラクトと比較して、より低頻度での投薬及び皮下投与を可能にする。DNL(商標)法のモジュラー的性質により、追加的な組換え操作及びタンパク質生成を必要とすることなく、様々な悪性腫瘍の再指向白血球死滅のための多くの関連複合体の急速な生成が可能である。
当業者には、CD3又は他の白血球抗原に結合する他の抗体、及び、CD19又は他の疾患関連抗原に結合する他の抗体は当該技術分野において知られており、任意のそのような抗体が、当該技術分野において周知の技術を使用して、F(ab)2、scFv又は他の抗体断片を作製するために使用され得ることが理解される。そのような代替の抗体又はその断片は、本発明の方法及び組成物において使用され得る。以下で議論されるように、DOCK−AND−LOCK(商標)(DNL(商標))複合物を作製する方法は、任意の知られた抗体又は抗体断片を安定な生理活性複合物に組み込むために適用され得る。
実施例3.インターフェロン−αは、白血球再指向二重特異性抗体の細胞毒性作用を高める
DNL(商標)複合物としてhRS7及びOKT3から作製された抗ヒトTrop−2×抗ヒトCD3二重特異性抗体((E1)−3s)の治療効力を、ヒトT細胞と混合されてマウスに注射された場合にCapan−1ヒト膵臓腺癌腫瘍細胞の腫瘍増殖を遅延させるその能力について試験した。この療法と組み合わせた場合のインターフェロン−α(E1*−2b又はPEGASYS(登録商標)の形態で)の効果もまた評価した。
方法
5週齢の雌NOD/SCIDマウスに、マトリゲルと1:1で混合されたCapan−1(5×10
6)及びヒトT細胞(2.5×10
6細胞)を皮下注射した(1:2のE:T比)。それぞれ8匹のマウスの6つの異なる処理群があった。処理は、Capan−1/T細胞混合物の投与から1時間後に開始して47μgの(E1)−3sを5日間毎日静脈内投与される1つの群からなっていた。2つの群を、IFNの等モル量で処理したが、1つの群はIFN−α2b−DDD2−CK−hRS7IgG1から作製されたDNL分子を投与され(E1*−2b;2.5μg皮下、週1回×4週間)、別の群はPEGASYS(登録商標)を投与された(Roche;0.6μg皮下、週1回×4週間)。2つの他の群には、(E1)−3s及びE1*2b又は(E1)−3s及びPEGASYS(登録商標)を投与した。最後の群である対照群は未処理のままであった。表8は、様々な処理群を要約している。
腫瘍増殖の兆候について、マウスを毎日監視した。全ての動物に対して、腫瘍が現れ始めたら、それらの腫瘍を週2回測定した。腫瘍体積が1.0cm3のサイズを超えたら、疾患の進行のためにマウスを安楽死させた。
結果
様々な群に対する平均腫瘍体積を、図16に示す。PEGASYS(登録商標)群(図16B)を含有するデータは、明確性のために、E1*2b群(図16A)とは別個のグラフ上に示されている。全ての処理は、未処理群内の最初のマウスが疾患の進行のために安楽死させられた29日目まで、未処理マウスと比較して曲線下面積(AUC)の点で腫瘍成長の制御において有意に良好であった(P<0.0009;AUC29days)。(E1)−3sをPEGASYS(登録商標)と組み合わせると、腫瘍増殖の点で全体的に最善の抗腫瘍反応が得られた(図16B)。この処理は、個々の処理のいずれよりも有意に良好であり(P<0.042;AUC)、また(E1)−3s及びE1*−2bの組み合わせより優れていた(P=0.0312;AUC53days)(図16A)。(E1)−3sプラスE1*2bの組み合わせは、E1*2b又はPEGASYS(登録商標)単独と比較して有意に腫瘍成長を制御することができた(P<0.0073;AUC46days)が、(E1)−3s単独ではそうではなかった(図16A〜B)。(E1)−3s、PEGASYS(登録商標)、又はE1*−2bで処理されたマウスの間には、有意な差はなかった(図16A〜B)。
生存率の点では、全ての処理が、未処理マウスと比較して、有意な生存率の利点を提供する(P<0.0112;ログランク)(図17)。81日目の時点で、(E1)−3s及びE1*−2bの組み合わせで処理されたマウスと(E1)−3s及びPEGASYS(登録商標)で処理されたマウスとの間で、生存期間中央値(MST)に有意な差はなかった(それぞれMST=79.5及び>81日)(図17)。(E1)−3s及びPEGASYS(登録商標)で処理されたマウスは、個々の処理のいずれよりも、有意に改善された生存率の転帰を有していた(P<0.0237)(図17)。(E1)−3s及びE1*2bで処理されたマウスは、E1*−2b単独で処理されたマウス(MST=53日;P<0.0311)と比較すると、生存率の利点を有していたが、(E1)−3s又はPEGASYS(登録商標)単独でのみ処理されたマウス(それぞれMST=68及び53日)と比較するとそうではなかった(図17)。(E1)−3sでの処理は、E1*−2bで処理されたマウスと比較すると、生存率において有意な改善を提供した(P=0.0406)が、PEGASYS(登録商標)単独で処理されたマウスと比較するとそうではなかった(図17)。E1*2bのみで処理されたマウスと、PEGASYS(登録商標)単独で処理されたマウスとの間に、有意な差はなかった(図17)。
結果は、白血球再指向bsAbと組み合わされると、インターフェロン−αの添加が、生存率の有意な増加及び腫瘍成長の減少を提供することを実証している。当業者には、I型又はIII型インターフェロン(インターフェロン−α、インターフェロン−β、又はインターフェロン−λ)の添加により観察される改善された効力は、特定の(E1)−3s bsAbに限定されず、DNL(商標)複合物として、又はBITE(登録商標)若しくはDART(商標)等の他の形態で作製された他の白血球再指向bsAbでも観察されることが理解される。
実施例4.白血球再指向二重特異性抗体とのインターフェロン−α併用療法に関するさらなる研究
上記実施例において、(E1)−3s及びPEGASYS(登録商標)の組み合わせは、腫瘍成長の制御における非常に効果的な治療法であることが明らかとなった。これらの結果を確認し、それらを拡張するために、2つの新たな群を追加した試験を行った。まず、等モル量のTF12が動物に投与される(E1)−3sの対照群が含まれた。TF12は、1つの非標的化679Fab(抗HSG)に連結した2つのhRS7−Fab分子からなる。さらに、Capan−1はIFNに感受性であるため、Capan−1腫瘍成長に対するPEGASYS(登録商標)の効果がT細胞の利益なしで評価される別の群が追加された。
マウス(40)にCapan−1/T細胞混合物を注射した後、それらを5つの処理群に無作為化した。1時間後、11匹のマウスの1つの群に、腫瘍細胞注射から1時間後に開始して47μgの(E1)−3sを毎日静脈内投与し、さらに連続4日間継続した(qdx5)。7匹の動物の1つの群に、PEGASYS(登録商標)の形態のインターフェロンを、週1回で4週間皮下投与した。別の群に、(E1)−3s(静脈内)及びPEGASYS(登録商標)(皮下)の組み合わせを投与した。未処理対照動物には、Capan−1/T細胞を投与したが、処理は行わなかった。さらなる対照群には、モルの点で(E1)−3sと同等の量(57μg qdx5)のTF12を投与した。群6のマウス(8匹の動物)には、Capan−1細胞のみ(すなわちT細胞なし)の別個の注射を行い、PEGASYS(登録商標)で処理した。全ての治療注射は、100μLの体積であった。表9は、様々な群を要約している。
腫瘍増殖の兆候について、マウスを毎日監視した。全ての動物に対して、腫瘍が現れ始めたら、それらの腫瘍を週2回測定した。腫瘍体積が1.0cm3のサイズを超えたら、疾患の進行のためにマウスを安楽死させた。
結果
平均腫瘍成長(図18)及び生存率曲線(図19)を示す。互いに異ならないが、(E1)−3s、PEGASYS(登録商標)、又はPEGASYS(登録商標)(T細胞なし)で処理されたマウスは、TF12及び未処理対照群と比較して有意な抗腫瘍効果を示した(P<0.0102;AUC)。この実験が終了した日(59日目)に、(E1)−3s及びPEGASYS(登録商標)の組み合わせで処理されたマウスの平均腫瘍体積は、0.083±0.048cm3であった。全体的に、この処理群は、全ての他の処理群と比較して有意な抗腫瘍効果を示した(P<0.0072;AUC)。
それぞれの個々の処理(PEGASYS(登録商標)、T細胞なしでのPEGASYS(登録商標)、及び(E1)−3s)は、TF12及び未処理対照群と比較して、有意に生存率を改善した(P<0.0059;ログランク)(図18、図19)。(E1)−3s及びPEGASYS(登録商標)の組み合わせ以外の群の全てが、それらのそれぞれのMSTに達した。この組み合わせの群において、疾患の進行(TV>1.0cm3)のために安楽死させられた動物はいなかった。重要なことに、(E1)−3s及びPEGASYS(登録商標)の組み合わせは、他の全ての処理と比較して、有意な生存率の利益を提供した(P<0.0007;ログランク)(図18、図19)。
実施例5.ヒト胃がんにおけるT細胞再指向二重特異性抗体とのインターフェロン−α併用療法の効果
上記2つの実施例において開示された方法及び組成物を、IFN不応性NCI−N87ヒト胃腫瘍株における白血球再指向bsAb単独又はインターフェロン−α(PEGASYS(登録商標))との組み合わせの効果を調査するために使用した。マウスに、マトリゲルと混合された5×10
6のNCI−N87細胞+2.5×10
6のT細胞(1:2のE:T比)を皮下注射し、1時間後に治療を開始した。処理群を、表10に示す。
白血球再指向bsAb(E1)−3s単独又はインターフェロンとの組み合わせの効果を、図20及び図21に示す。(E1)−3s bsAbは、胃がんにおいて、腫瘍成長を低減し、生存率を増加させるのに効果的であった。重要なことに、インターフェロン−αとの組み合わせは、インターフェロン耐性腫瘍においても、白血球再指向bsAbの効果を高めた。併用療法は、いずれかの薬剤が単独で加えられた場合よりも効果的であった。TF12bsAb単独又はインターフェロン−αとの組み合わせで処理されたマウスの対照は、未処理動物と比較して、腫瘍成長又は死亡率に対する効果をほとんど示さなかった。
実施例6.ヒト膵臓又は結腸癌の前臨床モデルにおける抗体−薬物複合体(ADC)のin vivo治療用途
CL2A−SN−38抗体複合体を、以前に説明されたように調製した(例えば、米国特許第7,999,083号及び米国特許第8,080,250号を参照されたい)。皮下ヒト膵臓又は結腸腫瘍異種移植片を有する免疫力低下無胸腺ヌードマウス(雌)を、特異的CL2A−SN−38複合体若しくは対照複合体で処理するか、又は未処理とした。特異的複合体の治療効力を観察した。Capan1膵臓腫瘍モデルにおいて、hRS7(抗TROP2)、hPAM4(抗MUC5ac)、及びhMN−14(抗CEACAM5)抗体の特異的CL2A−SN−38複合体は、対照hA20−CL2A−SN−38複合体(抗CD20)及び未処理対照(図示せず)よりも良好な効力を示した。同様に、ヒト膵臓がんのBXPC3モデルにおいて、特異的hRS7−CL2A−SN−38は、対照処理(図示せず)よりも良好な治療効力を示した。同様に、ヒト結腸癌の進行性LS174Tモデルにおいて、特異的hMN−14−CL2A−SN−38による処理は、非処理(図示せず)よりも有効であった。
実施例7.ADC hMN−14−[CL2−SN−38]、IMMU−130を使用した、ヌードマウスにおけるGW−39ヒト結腸腫瘍の肺転移のin vivo治療
GW−39ヒト結腸腫瘍懸濁液の静脈注射により、ヌードマウスにおいて結腸癌の肺転移モデルを確立し、14日後に治療を開始した。特異的抗CEACAM5抗体複合体hMN14−CL2−SN−38、並びに非標的化抗CD22MAb対照複合体hLL2−CL2−SN−38、並びにhMN14及びSN−38の等用量混合物を、異なる用量を使用して、q4d×8の投薬スケジュールで注射した。hMN−14ADCで選択的治療効果が観察された(図示せず)。250μgの用量において、hMN14−CL2−SN−38で処理されたマウスは、107日を超える生存中央値を示した。肺がん細胞を特異的に標的化しない対照複合化抗体hLL2−CL2−SN−38で処理されたマウスは、77日の生存中央値を示したが、一方非複合化hMN14IgG及び遊離SN−38で処理されたマウスは、43.5日の未処理生理食塩水対照と匹敵して、45日の生存中央値を示した。非複合化抗体及び遊離化学療法薬単独よりも有意により効果的であった、複合化したがん細胞標的化抗SN−38複合体の有効性の有意な驚くべき増加が、明確に観察された(図示せず)。複合化抗体の治療効果の用量−反応もまた観察された(図示せず)。これらの結果は、同じin vivoヒト肺がん系において、非複合化抗体及び遊離SN−38の両方の組み合わされた効果と比較して、SN−38抗体の明確な優位性を示している。
実施例8.治療不応性転移性結腸がん(mCRC)を治療するためのADC(IMMU−132又はhRS7−SN−38)の使用
患者は、元々は2012年1月に転移疾患を示したmCRCを有する62歳の女性であった。彼女は、診断から数週間後に第1の治療として腹腔鏡下回腸横行結腸切除を受け、次いでネオアジュバントの設定で4サイクルのFOLFOX(ロイコボリン、5−フルオロウラシル、オキサリプラチン)化学療法を受けてから、肝臓の右葉における転移性病変を除去するために、2012年3月に肝右葉切除を受けた。これに続いて、全体で12サイクルのFOLFOXのアジュバントFOLFOX投薬計画を2012年6月に再開した。8月に、神経毒性の悪化によりオキサリプラチンを計画から除外した。彼女の5−FUの最後のサイクルは、09/25/12であった。
2013年1月に行われたCTは、肝臓への転移を示した。次いで、彼女は、IMMU−132(hRS7−SN−38)治験への参加にふさわしい候補として評価された。彼女の病歴における併存疾患は、喘息、糖尿病、高血圧、高コレステロール血症、心雑音、裂孔ヘルニア、甲状腺機能低下、手根管症候群、緑内障、うつ病、むずむず脚症候群、及び神経障害を含む。彼女の手術歴は、卵管結紮(1975)、甲状腺摘出(1983)、胆嚢摘出(2001)、手根管開放術(2008)、及び緑内障手術を含む。
この治療を開始する時点で、彼女の標的病変は、肝臓の左葉における3.1cmの腫瘍であった。非標的病変は、肝臓におけるいくつかの低弱毒化腫瘤を含んでいた。彼女のベースラインCEAは、781ng/mLであった。
IMMU−132は、週1回のスケジュールで2週間連続して注入により与えられ、次いで1週間おき、これが処理サイクルを構成した。これらのサイクルを、耐えられる限り反復した。IMMU−132(8mg/kg)の第1の注入は、2013年2月15日に開始し、注目されるイベントのないまま完了した。彼女は、第1のサイクルの間、吐き気(グレード2)及び疲労(グレード2)を経験し、それ以降大きな副作用のないまま治療を継続した。彼女は、2013年3月に脱毛及び便秘を報告した。04/08/2013に行われた(6回の投薬後)最初の反応評価は、コンピューター断層撮影(CT)により、29%の標的病変の収縮を示した。彼女のCEAレベルは、2013年3月25日に230ng/mLに低下した。2013年5月23日の第2の反応評価(10回の投薬後)では、標的病変は39%収縮し、このようにしてRECIST基準による部分反応に相当した。彼女は、処理を継続し、hRS7−SN−38(IMMU−132)の8mg/kgでの12回の投薬を構成する6サイクルを受けた。彼女の全体的な健康及び臨床症状は、この治験中の治療の開始以降、顕著に改善した。
実施例9.転移性固形がんに対するIMMU−132によるADC治療
IMMU−132は、pH感受性リンカー(平均薬物−抗体比=7.6)によりhRS7抗Trop−2ヒト化モノクローナル抗体に複合化された、CPT−11の活性代謝物SN−38を含むADCであり、Trop−2に結合すると急速な内在化を示す。IMMU−132は、多くの癌により高い発生率及び特異性で発現するI型膜貫通タンパク質であるTrop−2を標的化する。この実施例は、平均3回の以前の治療(一部は、トポイソメラーゼ−I及び−II阻害薬を含む)に失敗した後の、異なる転移性がんを有する25名の患者(膵臓がん、7名;三重陰性乳がん[TNBC]、4名;結腸直腸がん[CRC]、3名;胃がん、3名、食道がん、前立腺癌、卵巣がん、非小細胞肺がん、小細胞が肺がん[SCLC]、腎臓がん、へんとうがん、膀胱がん、それぞれ1名)の第I相臨床試験を報告する。
IMMU−132を、反復21日サイクルで投与し、各治療は、1日目及び8日目に行われた。投薬は、8mg/kg/投薬(すなわち、16mg/kg/サイクル)で開始し、3+3試験設計で、用量制限好中球減少が生じる前に18mg/kgに上昇させた。疲労、脱毛及び時折の軽度〜中程度の下痢が、より一般的な非血液学的毒性のいくつかであり、2名の患者はまた発疹を報告した。24名の評価可能な患者の80%超が、CTによる最善の反応として、様々な転移性がんの中で安定な疾患又は腫瘍収縮(SD及びPR)を有した。3名の患者(CRC、TNBC、SCLC)は、RECISTによるPRを有し;全ての患者に対する中央TTPは、膵臓がんを有する患者を除いて18週間超である。好中球減少は、8〜10mg/kg/投薬(16〜20mg/kg/サイクル)までの用量低減により制御された。
免疫組織化学は、ほとんどの記録された患者の腫瘍におけるTrop−2の強力な発現を示したが、血清においては検出されない。血液腫瘍マーカー力価(例えば、CEA、CA19−9)における対応する低減は、腫瘍反応を反映した。反復投薬にもかかわらず、抗抗体又は抗SN−38抗体は検出されなかった。血清中のIMMU−132濃度のピーク及びトラフ値の評価は、複合体が7日以内に完全に除去され、in vitro試験に基づく予測される所見は、SN−38の50%が毎日血清中に放出されることを示している。これらの結果は、この新規なADCが、サイクル当たり16〜24mg/kgの範囲の用量で投与されると、多様な転移性固形がんにおいて高い治療指数を示すことを示している。
実施例10.CEACAM5を標的化するSN−38ADCであるIMMU−130は、転移性結腸直腸がん(mCRC)において治療活性を有する
pH感受性リンカー(7.6の平均薬物−抗体比)によりヒト化抗CEACAM5抗体(ラベツズマブ)に複合化された、SN−38のADCであるIMMU−130は、2つの第I相試験を完了している。両方において、進行性mCRCを有する適格患者は、標準的治療(1つはトポイソメラーゼ−I阻害薬、CPT−11(イリノテカン))に失敗/再発している、及び高血漿CEA(>5ng/mL)を有する必要があった。
IMMU−130は、第1のプロトコル(IMMU−130−01)において、2.0mg/kgから出発する用量で14日おきに投与された(EOW)。24mg/kgで3名の患者のうち2名に発熱性好中球減少が生じ;それ以外は、16mg/kg以下において、好中球減少(≧グレード2)が7名の患者に観察され、1名はまた、血小板減少を経験した。[4回(2サイクル)以上の投薬を受けた8名の患者のうち]1名の患者は、4.7ヶ月の間肝臓(7cmで開始)及び肺標的病変(RECISTによるPR)において40.6%の減少を示し、大きな毒性は見られず、全部で16mg/kgで18回の投薬に耐えた。試験は、12mg/kg EOWで継続している。
SN−38は、S期細胞において最も効果的であるため、より長期化した曝露が効力を改善し得る。したがって、第2の第I相試験(IMMU−130−02)において、3+3試験設計で、治療サイクルとして、6mg/kg/投薬で開始して週2回2週間(4回投薬)まで投薬を増加させ、1週間おいた。4.0mg/kgで週2回への用量低減まで、好中球減少及び管理可能な下痢が主な副作用であったが、初期の結果は、複数サイクルが十分耐えられることを示している。現在、3名の患者に腫瘍収縮が生じ、4回(1サイクル)以上の投薬を完了した6名の患者のうち、1名はRECISTによるPR(−46%)が継続中である。両方の試験において、CEA血液力価は、腫瘍反応と相関し、高レベルは治療に干渉しなかった。ELISA試験に基づき、抗抗体又は抗SN−38抗体反応はなかった。各試験において、ADCは、最初の24時間以内に50%除去され、これは、非経口分子CPT−11の典型的な用量よりもはるかに長い曝露である。これらの結果は、この新規なADCが、平均約16〜24mg/kg/サイクルの異なる投薬計画で投与されると、進行性mCRC患者において高い治療指数を示すことを示している。CEACAM5は、乳がん及び肺がん、並びに他の上皮腫瘍において高い発現を有するため、他のがんにおいても有用な標的となり得る。
実施例11.チェックポイント阻害剤抗体単独、又はT細胞再指向bsAb、IFN−α若しくはADCとの組み合わせの抗腫瘍活性
例示的なチェックポイント阻害剤抗体イピリムマブ(抗CTLA4)の抗腫瘍活性が、他の治療薬剤の添加と相乗的である、又はそれにより阻害されるかどうかを決定するために、マウス腫瘍モデルにおいて、CTLA4mAbを単独で、又は例示的なT細胞再指向bsAb(E1)−3s、インターフェロン−α(PEGINTERFERON(登録商標))又は例示的なADC hRS7−SN−38(IMMU−132)と組み合わせて評価した。M109肺癌、SA1N線維肉腫、及びCT26結腸癌モデルは、様々な薬剤及びCTLA4遮断への異なる感受性に基づいて選択される。ヒトT細胞は、抗体と同時投与される。
全ての化合物は、それらの最適用量及びスケジュールで試験される。組み合わせて使用される場合、CTLA4mAbは、IMMU−132、(E1)−3s又はインターフェロン−αの最初の投薬から1日後に開始される。腫瘍成長阻害パーセント及び標的腫瘍サイズに達するまでの日数を使用して、効力を評価する。抗腫瘍活性は、完全退縮(CR;触知不能腫瘍)又は部分退縮(PR;腫瘍体積の50%低減)としてスコア化された。相乗効果は、各薬剤による単剤療法の活性に対して有意に優れた(p<0.05)抗腫瘍活性として定義される。
CTLA4遮断に感受性であり、(E1)−3s、インターフェロン−α、及びIMMU−132にやや感受性であるSA1N線維肉腫腫瘍モデルにおいて、CTLA4mAb及び(E1)−3sの組み合わせによるボーダーラインの相乗効果が明らかであり、一方インターフェロン−αについては効果は観察されない。IMMU−132単剤療法は、有意なSA1N抗腫瘍活性を生成しない。しかしながら、IMMU−132をCTLA4mAbと組み合わせると、相乗効果がもたらされる。M109肺転移モデル及びCT26結腸癌モデルにおいて、IMMU−132、(E1)−3s及びインターフェロン−αのそれぞれと組み合わされたCTLA4mAbに対して相乗効果が検出される。
要約すると、インターフェロン−α、IMMU−132、又は(E1)−3sへのCTLA4mAbの添加は、モデル依存的相乗活性をもたらす。相乗効果は、腫瘍の免疫原性とは無関係に、及び治療薬の少なくとも1つが活性である場合にのみ観察される。全ての組み合わせの投薬計画は、十分な耐性を示し、併用療法は、CTLA4mAb活性を阻害しないようである。CTLA4mAb単独には反応しない腫瘍において相乗効果が観察され、これは、他の治療薬剤が免疫原性細胞死を誘導し得ることを示唆している。
実施例12.不応性転移性非小細胞肺がんを治療するための、ADC(IMMU−132)及びインターフェロン−α(PEGINTERFERON(登録商標))との併用療法
患者は、非小細胞肺がんと診断された60歳の男性である。患者は、6ヶ月間のカルボプラチン、ベバシズマブの化学療法計画を受けて反応を示し、次いで、進行後、次の2年間にわたりカルボプラチン、エトポシド、TAXOTERE(登録商標)、ゲムシタビンによる化学療法のさらなる工程を受け、時折の反応は、2ヶ月以内の間続く。次いで、患者は、6.5×4cmの寸法の左縦隔腫瘤及び胸水を示す。
インフォームド・コンセントへの署名後、患者にIMMU−132を1週間おきに18mg/kgの用量で投与する。治療の第1週目の後、患者にIMMU−132及びPEGINTERFERON(登録商標)の併用療法を施す。最初の2回の注射の間、短期間の好中球減少及び下痢を経験し、4時間以内に4回の排便があるが、これらは2日以内に解消する、又は症状に対する医薬に反応する。全6回のIMMU−132注入及び5回のPEGINTERFERON(登録商標)注入の後、指標病状のCT評価は、22%の低減を示し、部分的反応をわずかに下回るが、確かな腫瘍収縮を見せる。患者に対してさらに2ヶ月間この治療を継続すると、指標病状の直径の合計の45%腫瘍収縮の部分的反応がCTにより認められ、このようにしてRECIST基準による部分的反応に相当する。併用療法は、2つの薬剤を別個に投与した場合と比較して、相乗反応を提供するようである。
実施例13.進行性結腸がんを治療するためのADC(IMMU−130)及びT細胞再指向bsAb(MT100)による併用療法
患者は、最初に転移性結腸がん(第IV期)と診断された75歳の女性である。彼女は、右側の部分的半結腸切除及び小腸の切除を受け、次いでFOLFOX、FOLFOX+ベバシズマブ、FOLFIRI+ラムシルマブ、及びFOLFIRI+セツキシマブ治療を1年半受けるが、彼女は疾患の進行を示し、疾患は後盲嚢、網に広がり、骨盤内の腹水及び胸腔の右側の胸水を見せる。この治療直前の彼女のベースラインCEA力価は、15ng/mLである。彼女に、6mg/kgのIMMU−130(抗CEACAM5−SN−38)を週2回連続2週間投与し、次いで1週間おく(3週間サイクル)。第1のサイクル後、患者にIMMU−132及び白血球再指向bsAb MT110による併用療法を施すが、これは同じ3週間サイクルで持続注入により投与される。いかなる大きな血液学的又は非血液学的毒性もなく非常に良く耐えられた5サイクルの後、彼女の血漿CEA力価は、1.3ng/mLまでやや縮まるが、8週間の評価では、指標腫瘍病変の21%の収縮を示し、これは13週間で27%の収縮に増加する。驚くべきことに、この時点で患者の腹水及び胸水は共に減少し(後者は消失する)、このように患者の全体的状態が顕著に改善される。併用療法は、2つの薬剤を別個に投与した場合と比較して、相乗反応を提供するようである。
実施例14.第IV期転移性疾患を有する胃がん患者を治療するための、ADC(IMMU−130)、T細胞再指向bsAb((E1)−3s)及びインターフェロン−αによる併用療法
患者は、約6年間の胃の不快感及び摂食に関連する痛み、並びに過去12ヶ月の間の体重減少のために医学的処置を求めた52歳の男性である。腹部の触診では硬いしこりを示し、次いでこれを胃カメラ検査すると、胃の下部における潰瘍腫瘤を示す。これは生検され、胃腺癌と診断される。臨床検査では特定の異常変化は見られないが、肝機能試験では、LDH及びCEAが上昇し、後者は10.2ng/mLである。次いで患者は、全身PETスキャンを受け、これは、胃の腫瘍だけでなく、左腋窩及び肝臓の右葉における転移性疾患(2つの小転移)を明らかとする。患者は、胃の腫瘍を切除され、次いで転移腫瘍のベースラインCT測定を受ける。手術から4週間後、彼は、シスプラチン及び5−フルオロウラシル(CF)の投薬計画からなる併用化学療法を3回受けるが、これには良好な耐性を示さないため、ドセタキセルによる治療に切り替えられる。CTスキャンによれば、疾患は約4ヶ月間安定であるようであるが、さらなる体重減少、腹痛、食欲減退、及び極度の疲労という患者の病状により、繰り返しCT検査が行われ、これは、合計で20%の転移のサイズの増加、及び元の胃切除部位における疑わしい病変を示す。
次いで、患者は、8mg/kgの週1回のスケジュールでのIMMU−130(抗CEACAM5−SN−38)による実験的治療を受ける。第1週目の後、IMMU−130、(E1)−3s及びインターフェロン−αの併用療法を開始する。患者は、その後4週間にわたり、下痢又は好中球減少の兆候を示さない。次いで、患者は、転移性腫瘍サイズを測定するため、及び元の胃切除領域を観察するためにCT検査を受ける。放射線科医は、RECIST基準に従い、治療前のベースラインである23%と比較して、転移性病変の合計の減少を測定する。元の胃切除領域にはいかなる明確な病変も見られないようである。この時点での患者のCEA力価は、7.2ng/mLであり、これは14.5ng/mLのベースライン値から大きく低減されている。患者は週1回の併用療法を継続し、合計13回の注入後、彼のCT検査は、1つの肝臓転移が消失し、全ての転移性病変の合計が41%減少し、RECISTによる部分的反応に相当することを示している。患者の全体的な状態は改善し、彼は通常の活動を再開する一方で、3週間毎に維持療法を受ける。血液CEAの最後の測定の時点で、値は4.8ng/mLであり、これはこの患者に該当する喫煙者の正常範囲内である。
実施例15.DOCK−AND−LOCK(商標)の一般的技術
以下で議論される一般的技術は、開示される方法及び組成物を使用して、AD又はDDD部分が任意の抗体又は抗原結合抗体断片に結合したDNL(商標)複合物を生成するために使用され得る。
発現ベクター
プラスミドベクターpdHL2は、いくつかの抗体及び抗体系コンストラクトを生成するために使用されている。Gillies et al.,J Immunol Methods(1989),125:191−202;Losman et al.,Cancer(Phila)(1997),80:2660−6を参照されたい。ジシストロン性哺乳動物発現ベクターは、IgGの重鎖及び軽鎖の合成を誘導する。ベクター配列は、多くの異なるIgG−pdHL2コンストラクトにおいてほとんど同一であり、唯一の違いは、可変ドメイン(VH及びVL)配列に存在する。当業者に知られている分子生物学ツールを使用して、これらのIgG発現ベクターは、Fab−DDD又はFab−AD発現ベクターに変換され得る。
Fab−DDD発現ベクターを生成するために、重鎖のヒンジ、CH2及びCH3ドメインのコード配列を、ヒンジの最初の4つの残基をコードする配列、14残基リンカー及びDDD部分、例えばヒトRIIαの最初の44残基(DDD1と呼ばれる、配列番号1)と置き換えた。Fab−AD発現ベクターを生成するために、IgGのヒンジ、CH2及びCH3ドメインの配列を、ヒンジの最初の4つの残基をコードする配列、15残基リンカー及びAD部分、例えばAKAP−ISと呼ばれる17残基合成AD(AD1と呼ばれる、配列番号3)で置き換えたが、これは、生物情報学及びペプチドアレイ技術を使用して生成され、非常に高い親和性(0.4nM)でRIIα二量体に結合することが示された。Alto,et al.Proc.Natl.Acad.Sci.,U.S.A(2003),100:4445−50を参照されたい。以下に記載のように、IgG−pdHL2ベクターからFab−DDD1又はFab−AD1発現ベクターへの変換を促進するように、2つのシャトルベクターを設計した。
CH1の調製
pdHL2プラスミドベクターをテンプレートとして使用して、PCRによりCH1ドメインを増幅した。左PCRプライマーは、CH1ドメインの上流側(5’)末端、及びCH1コード配列の5’であるSacII制限エンドヌクレアーゼ部位からなっていた。右側プライマーは、ヒンジの最初の4つの残基をコードする配列(PKSC、配列番号102)に続く、4つのグリシン及びセリンからなり、最後の2つのコドン(GS)は、Bam HI制限部位を含んでいた。410bp PCR増幅プライマーをPGEMT(登録商標)PCRクローニングベクター(PROMEGA(登録商標),Inc.)にクローニングし、クローンをT7(5’)方位での挿入に関してスクリーニングした。
リンカーペプチドの11残基に続くDDD1のアミノ酸配列をコードするように二本鎖オリゴヌクレオチドを合成したが、最初の2つのコドンは、BamHI制限部位を含んでいた。停止コドン及びEagI制限部位は、3’末端に付加されている。コードされたポリペプチド配列を以下に示す。
GSGGGGSGGGGSHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号103)
その3’末端上の30塩基対により重複する、RIIA1−44上部及びRIIA1−44下部と指定される2つのオリゴヌクレオチドを、174bp DDD1配列の中心154塩基対を含むように合成及び組み合わせた。オリゴヌクレオチドをアニールし、Taqポリメラーゼによるプライマー伸長反応に供した。プライマー伸長の後、二本鎖をPCRにより増幅した。増幅プライマーをPGEMT(登録商標)にクローニングし、T7(5’)方位での挿入に関してスクリーニングした。
リンカーペプチドの11残基に続くAD1のアミノ酸配列をコードするように二本鎖オリゴヌクレオチドを合成したが、最初の2つのコドンは、BamHI制限部位を含んでいた。停止コドン及びEagI制限部位は、3’末端に付加されている。コードされたポリペプチド配列を以下に示す。
GSGGGGSGGGGSQIEYLAKQIVDNAIQQA(配列番号104)
AKAP−IS上部及びAKAP−IS下部と指定される上記ペプチド配列をコードする2つの相補的重複オリゴヌクレオチドを合成し、アニールした。二本鎖をPCRにより増幅した。増幅プライマーをPGEMT(登録商標)ベクターにクローニングし、T7(5’)方位での挿入に関してスクリーニングした。
DDD1のCH1とのライゲーション
DDD1配列をコードする190bp断片を、BamHI及びNotI制限酵素によりPGEMT(登録商標)から切断し、次いでCH1−PGEMT(登録商標)における同じ部位にライゲーションして、シャトルベクターCH1−DDD1−PGEMT(登録商標)を生成した。
AD1のCH1とのライゲーション
AD1配列を含有する110bp断片を、BamHI及びNotIによりPGEMT(登録商標)から切断し、次いでCH1−PGEMT(登録商標)における同じ部位にライゲーションして、シャトルベクターCH1−AD1−PGEMT(登録商標)を生成した。
このモジュール設計により、CH1−DDD1又はCH1−AD1のいずれかが、pdHL2ベクターにおける任意のIgGコンストラクトに組み込まれ得る。pdHL2からSacII/EagI制限断片(CH1−CH3)を除去し、それをそれぞれのPGEMT(登録商標)シャトルベクターから切断されたCH1−DDD1又はCH1−AD1のSacII/EagI断片と置き換えることにより、重鎖定常ドメイン全体が上記コンストラクトの1つで置き換えられる。
C−DDD2−Fd−hMN−14−pdHL2
C−DDD2−Fd−hMN−14−pdHL2は、14アミノ酸残基Gly/Serペプチドリンカーを介してhMN−14のFdのカルボキシル末端に付加されたDDD2の二量体化及びドッキングドメイン配列(配列番号2)を有する、C−DDD2−Fab−hMN−14の生成のための発現ベクターである。分泌される融合タンパク質は、DDD2ドメインの非共有結合的相互作用により互いに保持されたhMN−14Fabの2つの同一コピーで構成される。
発現ベクターは、以下のように操作された。リンカーペプチドの一部のコード配列及びDDD2の残基1〜13を含む2つの重複する相補的オリゴヌクレオチドを、合成的に作製した。オリゴヌクレオチドをアニールし、T4PNKでリン酸化すると、それぞれ制限エンドヌクレアーゼBamHI及びPstIにより消化されたDNAとのライゲーションに適合する、5’及び3’末端上のオーバーハングが生じる。
二本鎖DNAを、BamHI及びPstIでの消化により調製されたシャトルベクターCH1−DDD1−PGEMT(登録商標)とライゲーションし、シャトルベクターCH1−DDD2−PGEMT(登録商標)を生成した。507bp断片をSacII及びEagIによりCH1−DDD2−PGEMT(登録商標)から切断し、SacII及びEagIでの消化により調製されたIgG発現ベクターhMN−14(I)−pdHL2とライゲーションした。最終発現コンストラクトは、C−DDD2−Fd−hMN−14−pdHL2と指定された。いくつかの異なるヒト化抗体のFab断片のDDD2融合タンパク質を生成するために、同様の技術を使用した。
h679−Fd−AD2−pdHL2
h679−Fab−AD2を、C−DDD2−Fab−hMN−14に対合するように設計した。h679−Fd−AD2−pdHL2は、h679−Fab−AD2の生成のための発現ベクターであり、これは、14アミノ酸残基Gly/Serペプチドリンカーを介してCH1ドメインのカルボキシル末端に付加されたAD2のアンカリングドメイン配列(配列番号4)を有する。AD2は、AD1のアンカードメイン配列の前に1つのシステイン残基、及びその配列の後に別のシステイン残基を有する。
発現ベクターは、以下のように操作された。AD2のコード配列及びリンカー配列の一部を含む2つの重複する相補的オリゴヌクレオチド(AD2上部及びAD2下部)を、合成的に作製した。オリゴヌクレオチドをアニールし、T4PNKでリン酸化すると、それぞれ制限エンドヌクレアーゼBamHI及びSpeIにより消化されたDNAとのライゲーションに適合する、5’及び3’末端上のオーバーハングが生じる。
二本鎖DNAを、BamHI及びSpeIでの消化により調製されたシャトルベクターCH1−AD1−PGEMT(登録商標)にライゲーションし、シャトルベクターCH1−AD2−PGEMT(登録商標)を生成した。CH1及びAD2コード配列を含有する429塩基対断片を、SacII及びEagI制限酵素によりシャトルベクターから切断し、それらの同じ酵素での消化により調製されたh679−pdHL2ベクターにライゲーションした。最終発現ベクターは、h679−Fd−AD2−pdHL2である。
TF2DNL(商標)コンストラクトの生成
C−DDD2−Fab−hMN−14をh679−Fab−AD2と反応させることにより、TF2と指定された三量体DNL(商標)コンストラクトを生成した。TF2のパイロットバッチを、以下のように90%超の収率で生成した。タンパク質L−精製C−DDD2−Fab−hMN−14(200mg)を、h679−Fab−AD2(60mg)と1.4:1のモル比で混合した。全タンパク質濃度は、1mM EDTAを含有するPBS中1.5mg/mlであった。その後のステップは、TCEP還元、HICクロマトグラフィー、DMSO酸化、及びIMP291親和性クロマトグラフィーを含んでいた。TCEPの添加前、SE−HPLCは、a2b形成のいかなる兆候も示さなかった。5mM TCEPの添加は、二元的構造が予測される157kDaタンパク質に一致するa2b複合物の形成を速やかにもたらした。TF2を、IMP291親和性クロマトグラフィーによりほぼ均一となるまで精製した(図示せず)。IMP291は、679Fabが結合するHSGハプテンを含有する合成ペプチドである(Rossi et al.,2005,Clin Cancer Res11:7122s−29s)。IMP291非結合断片のSE−HPLC分析では、生成物からのa4、a2及び遊離カッパ鎖の除去が実証された(図示せず)。
TF2の機能性を、BIACORE(登録商標)アッセイにより決定した。TF2、C−DDD1−hMN−14+h679−AD1(非共有結合a2b複合物の対照試料として使用)、又はC−DDD2−hMN−14+h679−AD2(非還元a2及びb成分の対照試料として使用)を、1μg/ml(全タンパク質)に希釈し、HSGで固定化されたセンサーチップ上に通過させた。TF2に対する反応は、2つの対照試料の約2倍であり、対照試料中のh679−Fab−AD成分のみがセンサーチップに結合及びその上に残留することを示していた。その後のhMN−14の抗イディオタイプ抗体であるWI2IgGの注射は、追加的なシグナル反応により示されるように、TF2のみが、h679−Fab−ADと堅く結合したDDD−Fab−hMN−14成分を有することを示した。センサーチップ上に固定化されたTF2に対するWI2の結合から生じる反応単位のさらなる増加は、2つの完全に機能的な結合部位に対応し、それぞれC−DDD2−Fab−hMN−14の1つのサブユニットにより寄与された。これは、WI2の2つのFab断片に結合するTF2の能力により確認された(図示せず)。
TF10DNL(商標)コンストラクトの生成
同様のプロトコルを使用して、C−DDD2−Fab−hPAM4の2つのコピー及びC−AD2−Fab−679の1つのコピーを含む三量体TF10DNL(商標)コンストラクトを生成した。上述のように、(抗CEA)2×抗HSG bsAb TF2の生成に関して開示された方法を使用して、TF10二重特異性([hPAM4]2×h679)抗体を生成した。TF10コンストラクトは、2つのヒト化PAM4Fab及び1つのヒト化679Fabを有している。
2つの融合タンパク質(hPAM4−DDD2及びh679−AD2)が、安定してトランスフェクトされた骨髄腫細胞において独立して発現した。組織培養上澄み液を組み合わせると、2倍モル過剰のhPAM4−DDD2が得られた。1mMの還元グルタチオンを使用した穏やかな還元条件下で、反応混合物を室温で24時間インキュベートした。還元後、2mM酸化グルタチオンを使用した穏やかな酸化により、反応を完了させた。h679Fabに高い特異性で結合するIMP291−affigel樹脂を使用した親和性クロマトグラフィーにより、TF10を単離した。
実施例16.複数の抗体からの、AD及びDDD結合Fab及びIgG融合タンパク質の生成
上記実施例に記載の技術を使用して、表11に示されるIgG及びFab融合タンパク質を構築し、DNL(商標)コンストラクトに組み込んだ。融合タンパク質は、親抗体の抗原結合特性を保持し、DNL(商標)コンストラクトは、組み込まれた抗体又は抗体断片の抗原結合活性を示した。
実施例17.2つの異なる抗体部分及びサイトカインを含むDNL(商標)コンストラクトの生成及び使用
ある特定の実施形態において、三量体DNL(商標)コンストラクトは、3つの異なるエフェクター部分、例えば2つの異なる抗体部分及びサイトカイン部分を含んでもよい。我々は、本明細書において、IFN−α2bの2つのコピー、及びベルツズマブ(ヒト化抗CD20)に部位特異的に連結したhL243(ヒト化抗HLA−DR;IMMU−114)の安定化F(ab)2を含む、20−C2−2bと指定される二重特異性MAb−IFNαの生成及び特性決定を報告する。In vitroにおいて、20−C2−2bは、4つのリンパ腫及び8つの骨髄腫細胞株のそれぞれを阻害し、1つ(HLA−DR−/CD20−)の骨髄腫株を除き(図示せず)全てにおいて、単一特異性CD20標的化MAb−IFNα、又は親抗体及びIFNαを含む混合物よりも効果的であり、20−C2−2bが様々な造血障害の治療に有用であることを示唆していた。20−C2−2bは、HLA−DR又はCD20(図示せず)のみを標的化する単一特異性MAb−IFNαよりもKMS12−BM(CD20+/HLA−DR+骨髄腫)に対してより高い細胞毒性を示し、20−C2−2bにおける3つ全ての成分が毒性に寄与し得ることを示していた。
抗体
以下の議論において使用される略語は、以下の通りである:20(CH3−AD2−IgG−v−mab、抗CD20IgG DNL(商標)モジュール);C2(CH1−DDD2−Fab−hL243、抗HLA−DR Fab2DNL(商標)モジュール);2b(二量体IFNα2B−DDD2DNL(商標)モジュール);734(非標的化対照として使用される抗−in−DTPA IgG DNL(商標)モジュール)。以下のMAbは、Immunomedics,Inc.により提供された:ベルツズマブ又はv−mab(抗CD20IgG1)、hL243γ4p(Immu−114、抗HLA−DR IgG4)、マウス抗IFNαMAb、並びにv−mab(WR2)及びhL243(WT)に対するラット抗イディオタイプMAb。
DNL(商標)コンストラクト
上記の実施例に記載のように、DNL(商標)法を使用して、単一特異性MAb−IFNα(20−2b−2b、734−2b−2b及びC2−2b−2b)並びに二重特異性HexAb(20−C2−C2)を、DDD2モジュールとのIgG−AD2モジュールの組み合わせにより生成した。四量体IFNα2b及びMAb h734[抗インジウム−DTPA IgG1]を含む734−2b−2bを、非標的化対照MAb−IFNαとして使用した。
哺乳動物発現ベクターの構築、並びにその後の生成クローンの生成及びCH3−AD2−IgG−v−mabの精製は、上記実施例において開示されている。発現した組換え融合タンパク質は、15アミノ酸長の柔軟性リンカーペプチドを介してv−mabのCH3ドメインのカルボキシル末端に連結したAD2ペプチドを有する。重鎖AD2及び軽鎖ポリペプチドの同時発現は、2つのAD2ペプチドを備えるIgG構造の形成をもたらす。発現ベクターは、エレクトロポレーションによりSp/ESF細胞(Sp2/0の操作された細胞株)にトランスフェクトされた。pdHL2ベクターは、ジヒドロ葉酸還元酵素に対する遺伝子を含有し、このようにしてクローン選択及びメトトレキセート(MTX)との遺伝子増幅を可能にする。安定なクローンは、0.2μM MTXを含有する培地で選択された96ウェルプレートから単離された。サンドイッチELISAにより、CH3−AD2−IgG−vmab生産性に関してクローンをスクリーニングした。モジュールは、無血清培地を含むローラーボトル培養において生成された。
上で議論されたように、18アミノ酸長の柔軟性リンカーペプチドによるヒトIFNα2bのカルボキシル末端へのDDD2ペプチドの組換え融合により、DDDモジュール、IFNα2b−DDD2を生成した。全てのDDDモジュールの場合と同様に、発現した融合タンパク質は、自然に安定なホモ二量体を形成する。
CH1−ヒンジ−CH2−CH3ドメインの配列を、SacII及びEagI制限酵素で切断し、これを、C−DDD2−hMN−14−pdHL2発現ベクターから同じ酵素で切断されたCH1−DDD2をコードする507bp配列と置き換えることにより、CH1−DDD2−Fab−hL243発現ベクターを、hL243−IgG−pdHL2ベクターから生成した。エレクトロポレーションによるCH1−DDD2−Fab−hL243−pdHL2のSp/ESF細胞へのトランスフェクション後、ホースラディッシュペルオキシダーゼ複合化ヤギ抗ヒトHabで検出される融合タンパク質を捕捉するためにマウス抗ヒトカッパ鎖でコーティングされた96ウェルマイクロタイタープレートを使用したサンドイッチELISAにより、安定なMTX耐性クローンを生産性に関してスクリーニングした。モジュールは、ローラーボトル培養において生成された。
無血清H−SFM培地内でのローラーボトル培養及び流加培養バイオリアクター生成により、現在まで生成されている他のIgG−AD2モジュール及びサイトカイン−DDD2モジュールに匹敵する収率が得られた。以前に説明されたように(Rossi et al.,Blood2009,114:3864−71)、MABSELECT(商標)(GE Healthcare)及びHIS−SELECT(登録商標)HF Nickel Affinity Gel(Sigma)を使用した親和性クロマトグラフィーにより、それぞれCH3−AD2−IgG−v−mab及びIFNα2b−DDD2を培養ブロスから精製した。CH1−DDD2−Fab−hL243モジュールを含有する培養ブロスを、KAPPASELECT(登録商標)親和性ゲル(GE−Healthcare)に直接適用し、これをPBSでベースラインまで洗浄し、0.1Mグリシン、pH2.5で溶出した。
DNL(商標)による20−C2−2bの生成
3つのDNL(商標)モジュール(CH3−AD2−IgG−v−mab、CH1−DDD2−Fab−hL243、及びIFN−α2b−DDD2)を、等モル量で組み合わせ、bsMAb−IFNα、20−C2−2bを生成した。穏やかな還元条件下(1mMの還元グルタチオン)での室温で一晩のドッキングステップの後、酸化グルタチオンを添加して(2mM)、ジスルフィド結合形成(ロッキング)を促進した。3つの逐次的親和性クロマトグラフィーステップを使用して、20−C2−2bをほぼ均一となるまで精製した。まず、DNL(商標)混合物を、CH3−AD2−IgG−v−MAb基に結合して、未反応IFNα2b−DDD2又はCH1−DDD2−Fab−hL243を除去するタンパク質A(MABSELECT(商標))で精製した。IFNα2b−DDD2部分に特異的に結合して、この基を有さないいかなるコンストラクトも排除するHIS−SELECT(登録商標)HF Nickel Affinity Gelを使用して、タンパク質A結合材料をIMACによりさらに精製した。hL243−抗イディオタイプ親和性ゲルを使用した最終プロセスステップにより、CH1−DDD2−Fab−hL243を有さないいかなる分子も除去された。
当業者には、3つのエフェクター部分のそれぞれに対するリガンドが得られ、カラム材料に結合し得る限り、親和性クロマトグラフィーを使用して、エフェクター部分の任意の組み合わせを含むDNL(商標)複合物を精製することができることが理解される。選択されたDNL(商標)コンストラクトは、3つのエフェクター部分のそれぞれに対するリガンドを含有する3つのカラムのそれぞれに結合し、また非結合複合物を除去するために洗浄後に溶出され得るコンストラクトである。
以下の例は、20−C2−2bのいくつかの同様の調製の代表例である。等モル量のCH3−AD2−IgG−v−mab(15mg)、CH1−DDD2−Fab−hL243(12mg)、及びIFN−α2b−DDD2(5mg)を、30mLの反応容積内で組み合わせ、1mMの還元グルタチオンを溶液に添加した。室温で16時間後、2mMの酸化グルタチオンを混合物に添加し、これを室温でさらに6時間保持した。反応混合物を5mLのタンパク質A親和性カラムに適用し、これをPBSでベースラインまで洗浄し、0.1Mのグリシン、pH2.5で溶出した。約20mgのタンパク質を含有する溶出物を、3MのTris−HCl、pH8.6で中和し、HIS−SELECT(登録商標)結合緩衝液(10mMのイミダゾール、300mMのNaCl、50mMのNaH2PO4、pH8.0)中に透析してから、5mLのHIS−SELECT(登録商標)IMACカラムに適用した。カラムを結合緩衝液でベースラインまで洗浄し、250mMのイミダゾール、150mMのNaCl、50mMのNaH2PO4、pH8.0で溶出した。
約11.5mgのタンパク質を含有するIMAC溶出液を、WP(抗hL243)親和性カラムに直接適用し、これをPBSでベースラインまで洗浄し、0.1Mのグリシン、pH2.5で溶出した。プロセスにより、7mgの高純度20−C2−2bが得られた。これは、全出発材料(この例では16mg)の50%である20−C2−2bの理論的収率の約44%であったが、副生成物としてそれぞれ25%の20−2b−2b及び20−C2−C2が生成された。
20−C2−2bの生成及び特性決定
IgG−AD2モジュール、CH3−AD2−IgG−v−mabを、2つの異なる二量体DDD分子、CH1−DDD2−Fab−hL243及びIFNα2b−DDD2と組み合わせることにより、二重特異性MAb−IFNαを生成した。いずれかのDDD分子と2つのAD2基との無作為な結合に起因して、20−C2−2bに加え、2つの副生成物、20−C2−C2及び20−2b−2bが形成されることが予測される。
非還元性SDS−PAGE(図示せず)は、20−C2−C2(約365kDa)及び20−2b−2b(255kDa)のバンドの間に位置するバンドのクラスタとして、20−C2−2b(約305kDa)を分離した。還元性SDS−PAGEは、20−C2−2bを含む5つのポリペプチド(v−mab HC−AD2、hL243Fd−DDD2、IFNα2b−DDD2並びに同時移動v−mab及びhL243カッパ軽鎖)を分離した(図示せず)。IFNα2b−DDD2及びhL243Fd−DDD2は、20−C2−C2及び20−2b−2bには存在しなかった。MABSELECT(商標)は、DNL(商標)反応において生成された主要な種の3つ全てに結合するが、いかなる過剰なIFNα2b−DDD2及びCH1−DDD2−Fab−hL243も除去する。HIS−SELECT(登録商標)非結合断片は、ほとんど20−C2−C2を含有していた(図示せず)。WT親和性クロマトグラフィーからの非結合断片は、20−2b−2bを含んでいた(図示せず)。試料のそれぞれを、SE−HPLC及び免疫反応性分析に供したが、これらはSDS−PAGE分析の結果及び結論を裏付けた。
20−C2−2bの還元後、その5つの成分ポリペプチドをRP−HPLCにより分離し、各ピークに対して個々のESI−TOFのデコンボリューションされた質量スペクトルを生成した(図示せず)。天然であるが細菌で発現されていない組換えIFNα2は、Thr−106でO−グリコシル化される(Adolf et al.,Biochem J1991;276(Pt2):511−8)。我々は、IFNα2b−DDD2モジュールを含むポリペプチドの約15%がO−グリコシル化され、RP−HPLC及びSDS−PAGEにより非グリコシル化ポリペプチドから分離され得ることを特定した(図示せず)。20−C2−2bのLC/MS分析では、IFNα2b−DDD2のO−グリコシル化及び非グリコシル化種の両方が、それぞれ15ppm及び2ppmの質量精度で同定された。O−グリコシル化形態の観察された質量は、同じく20−2b−2bに対して予測された(<1ppm)構造NeuGc−NeuGc−Gal−GalNAcを有するO−連結グリカンを示している(図示せず)。LC/MSでは、v−mab及びhL243カッパ鎖の両方並びにhL243−Fd−DDD2(図示せず)が、単一の非改質種として同定され、観察された質量は、計算質量と一致していた(<35ppm)。v−mab HC−AD2の2つの主要な糖型は、53,714.73(70%)及び53,877.33(30%)の質量を有するものとして同定され、典型的にIgGと関連するG0F及びG1F N−グリカンをそれぞれ示している(図示せず)。また、分析により、アミノ末端グルタミンを有するポリペプチドに対して予測されるように、HC−AD2のアミノ末端がピログルタミン酸に改質されることが確認された。
20−C2−2bのSE−HPLC分析は、その計算質量と一致する、及びより大きい20−C2−C2(6.6分)及びより小さい20−2b−2b(6.85分)の質量の間の保持時間(6.7分)を有する主要なタンパク質ピーク、並びに、IFNα2bの自己切断により形成された非共有結合二量体を表している可能性があるいくつかのより高い分子量のピークを分離した(図示せず)。
免疫反応性アッセイは、20−C2−2bの均一性を示し、各分子は、3つの官能基を含有していた(図示せず)。3つの構成モジュールのいずれかに対する過剰の抗体との20−C2−2bのインキュベーションは、高分子量免疫複合物の量的形成及び20−C2−2bピークの消失をもたらした(図示せず)。HIS−SELECT(登録商標)及びWT親和性非結合断片は、それぞれWT及び抗IFNαと免疫反応性ではなかった(図示せず)。MAb−IFNαは、その親MAbに対する同様の結合親和力を示した(図示せず)。
IFNα生物活性
細胞ベースレポーター遺伝子アッセイを使用して、様々なMAb−IFNαの比活性度を測定し、ペグインターフェロンアルファ−2bと比較した(図示せず)。予測されるように、2つのIFNα2b基を有する20−C2−2bの比活性度(2454IU/pmol)は、20−2b−2b(4447IU/pmol)又は734−2b−2b(3764IU/pmol)の比活性度よりも有意に低いが、ペグインターフェロンアルファ−2bよりも高い(P<0.001)(図示せず)。20−2b−2bと734−2b−2bとの間の差は、有意ではなかった。全ての薬剤の間での比活性度は、全IFNαのIU/pmolに正規化すると、あまり変化がない。これらのデータに基づき、MAb−IFNαの各IFNα2b基の比活性度は、組換えIFNα2bの約30%である(約4000IU/pmol)。
Ex−vivo設定において、20−C2−2b DNL(商標)コンストラクトは、正常B細胞よりも効果的にリンパ腫細胞を枯渇させ、T細胞に対する効果は有さなかった(図示せず)。しかしながら、単球を効率的に排除した(図示せず)。v−mabが単球に対する効果を有さない場合、hL243α4p及びMAb−IFNαによる治療後に枯渇が観察され、20−2b−2b及び734−2b−2bは、同様の毒性を示した(図示せず)。したがって、20−C2−2bの予測され得るようにより高い効能は、抗HLA−DR及びIFNαの組み合わされた作用に起因し、これはHLA−DR標的化により強化され得る。これらのデータは、単球枯渇が、抗HLA−DR及びIFNα治療に関連した薬力学的効果であり得ることを示唆しているが、単球集団は造血幹細胞から再分布されるはずであるため、この副作用は一時的となり得る。
当業者には、二重特異性免疫サイトカイン、又は3つの異なるエフェクター部分を含む他のDNL(商標)コンストラクトを生成及び使用する、本明細書に記載のアプローチが、DNL(商標)コンストラクトに組み込むことができる抗体、抗体断片、サイトカイン又は他のエフェクターの任意の組み合わせ、例えば、抗CD3及び抗CD19又は他の抗TAAとIFNα2bとの組み合わせと共に使用され得ることが理解される。
実施例18.NK標的化白血球再指向bsAbの使用
白血球を再標的化するためのbsAbの使用は、T細胞に対する抗体に限定されない。代替の実施形態において、単球、NK細胞又は好中球に結合するbsAbもまた、再標的化の目的に使用され得る。
CD16は、IgGの活性化低親和性Fc−γ受容体であり、これはNK細胞のCD56dimサブセットにより高度に発現される(Gleason et al.,2012,Mol Cancer Ther11:2674−84)。NK細胞再標的化におけるそれらの使用に加えて、抗CD16抗体成分を含むbsAbは、CD16の直接シグナリングによりNK媒介細胞毒性を活性化し、溶解性顆粒の指向性分泌及び標的細胞死を誘導する能力を有する(Gleason et al.,2012)。
CD16/CD19二重特異性キラー細胞エンゲージャー(BiKE)及びCD16/CD19/CD22三重特異性キラー細胞エンゲージャー(TriKe)は、以前に報告されたようなDNAシャフリング及びライゲーション技術(Vallera et al.,2005,Clin Cancer Res11:3879−88)を使用して、(Gleason et al.,2012,Mol Cancer Ther11:2674−84)に従い調製される。発現したBiKE及びTriKEは、逐次的イオン交換及びサイズ排除カラムクロマトグラフィーにより精製される。休止PBMCは、CD16/CD19BiKE又はCD16/CD19/CD22TriKE(10μg/mL)の存在下で、原発性ALL及びCLL腫瘍細胞に曝露される。再標的化抗体のない細胞と比較して、BiKE又はTriKEの存在下では、腫瘍細胞に対する細胞毒性の有意な増加が観察される。PBMCの非存在下では、BiKE又はTriKEに曝露された腫瘍細胞に対する効果は観察されなかった。TriKEは、BiKEと比べて腫瘍細胞毒性に対するより大きな効果を有し、追加的な腫瘍細胞抗原への結合が、再標的化効果を高めることができることを示している。PBMCの代わりに精製NK細胞を使用しても同様の結果が得られる。
CD16/CD33BiKEは、Wiernikら(2013,Clin Cancer Res19:3844−55)において開示されているように調製される。BiKEは、ヒトPBMCを同時投与されたヒトHL60前骨髄球性白血病異種移植片細胞を注射されたヌードマウスに投与される。BiKE処理マウスは、対照bsAbで処理されたマウスと比較して、死亡率及び腫瘍成長の低下を示す。抗CD33−SN−38ADCの追加は、BiKEの細胞毒性効果をさらに高める。
実施例19.複合化抗HIV抗体を使用したIn Vitro及びIn VivoでのHIV感染の阻害
概要
HIV−1に対する免疫抱合体の効力を実証するため、HIVのエンベロープ抗原に対するマウスモノクローナル抗体(Mab)(P4/D10)を、従来の抗がん薬物ドキソルビシンと複合化し、in vitro及びin vivoの両方において、感染性ウイルス及び感染細胞に対して試験した。P4/D10抗体を、遊離ウイルス(中和)又はHIV感染細胞(阻害)と共にインキュベートし、生じた感染を、p24捕捉酵素免疫測定法により測定した。HIV−1/MuLVマウス負荷モデルにおいて、in vivoで感染を阻害する複合体の能力を測定した。
ドキソルビシン複合化P4/D10は、in vitroにおいて、HIV−1IIIBを中和し、感染Jurkat細胞における細胞間伝播及びHIV複製を排除した。また、ドキソルビシン複合化P4/D10は、遊離抗体おいて必要な濃度より8倍低い濃度で、マウスをHIV−1IIIB/MuLVの負荷から保護し、一方遊離薬物又は無関係な複合体対照においては効果は観察されなかった。
これらの結果は、ドキソルビシンがP4/D10抗体によりHIV感染細胞に濃縮され、HIV排除に有意に(P=0.0001)寄与することを示している。ART(抗レトロウイルス療法)により処理された患者における残りの抗原発現T細胞を根絶するために、同じ組成物及び方法が有用である。
この試験において、我々は、患者における既知の薬理学、毒性学、及び抗腫瘍活性を有する抗がんアントラサイクリンであるドキソルビシンを、HIV−1外側エンベロープgp120(第3可変ループ領域)に対して確立された中和及びADCC媒介モノクローナル抗体(Mab)に複合化した。
ドキソルビシンに複合化されたP4/D10抗体を、非感染細胞からのHIV−1感染細胞の排除におけるその効力に関してin vitroで、及びマウスモデルにおいてHIV−1/MuLV(マウス白血病ウイルス)感染同系細胞を腹腔から取り出すことにより試験した。抗gp120抗体、P4/D10は、HIV−1ウイルスを中和し、ADCCを媒介する(Broliden et al.,1990)。これはまた、末期HIV−1感染個人に対する第I相臨床試験において、その非複合化形態で使用されており、長期間HIV抗原を減少させた(Hinkula et al.,1994)。本試験は、遊離Mab、遊離薬物、並びにドキソルビシンと同様に複合化した無関係の抗体hRS7(Stein et al.,Int J Cancer1993,55:938−946)及びhLL1(Griffiths et al.,Clin Cancer Res2003,9:6567−6571;Sapra et al.,Clin Cancer Res2005,11:5257−5264)と比較して、薬物複合化形態でのP4/D10の組み合わせを前臨床HIVモデルにおいて初めて検査するものであった。
材料及び方法
抗体及び薬物複合化。ドキソルビシンのIgG1κ抗gp120抗体P4/D10(Broliden et al.,1990)及び対照抗体との複合化、並びにマレイミド基を有する二官能性ドキソルビシンヒドラゾン誘導体の調製を、Griffithsら(2003)に従い行った。簡潔に説明すると、約9mg/mlの最終濃度の抗体P4/D10、hLL1(ヒト化抗CD74)、及びhRS7(ヒト化抗EGP−1)を、5mMのEDTAを含有するPBS(pH7.5)中のDTT(ジチオスレイトール)で、抗体に対して38倍モル過剰の還元剤に相当する約2.2mMの最終DTT濃度を使用して穏やかに還元した。溶液を、37℃で40分間インキュベートした。150mMのNaCl及び2mMのEDTAを含有する50mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.3)中で、還元したMabをSephadex G50/80のスピンカラム上で精製した。抗体上に生成されたチオール基の数を、エルマンアッセイにより決定した。複合化に関して、6.5mg/mlの穏やかに還元された抗体を、二官能性ドキソルビシンと混合した。インキュベートを氷上で15分間維持し、0.1Mの酢酸ナトリウム(pH6.5)中のG50/80のスピンカラム上で精製し、続いて同じ緩衝液で平衡化されたBio−Beads SM2(Bio−Rad、Hercules、CA)の短いカラムに通過させた。吸光度を測定することにより、生成物をドキソルビシン/Mab置換比に関して分析した。分析BioSil250カラム上でサイズ排除HPLC分析を行った。
HIV感染患者からのIgGのGMP生成ロット(HIVIgG)(Guay et al.AIDS2002,16:1391−1400)を陽性対照として使用し、HIV陰性個人からの血清を陰性対照として使用した。遊離ドキソルビシン、並びにドキソルビシンに同様に複合化した抗がんヒト化Mab LL1及びRS7を、複合化P4/D10抗体の対照として含めた。
HIV−1中和アッセイ。ドキソルビシンP4/D10、非標識化P4/D10、HIV免疫グロブリン(HIVIgG)、及びHIV陰性血清を、HIV−1分離株HIV−1IIIB(LAI)と混合し、37℃で1時間インキュベートしてから、50,000Jurkat T細胞/ウェルを添加した。1時間のインキュベーション後、細胞を培地で洗浄し、新しい完全培地を添加した(200μl/ウェル)。7日間の培養後、生成されたp24の量を、p24捕捉ELISA(酵素免疫測定法)により測定し、HIV−1p24生成の阻害パーセントを計算した。
In vitroでのHIV−1阻害。5〜10×106の細胞を100×TCID50HIV−1IIIBと混合し、37℃で1時間インキュベートすることにより、Jurkat T細胞を、HIV−1IIIBに感染させた。細胞を培地中で洗浄し、37℃でインキュベートした。3日毎に培地を交換し、p24生成に関して上澄みをチェックした。細胞の100%近くが感染したら、異なる割合のHIV−1IIIB感染細胞を、非感染細胞と混合した。細胞を、100〜0.00001μg/mlの抗体、血清、又は遊離ドキソルビシンの連続希釈物により処理した。37℃で数日の培養後、HIV−1p24阻害を測定し、事前に0.1〜10μg/mlのドキソルビシンP4/D10、非複合化P4/D10、及び0.05〜0.5mg/ml HIV陰性血清で処理された細胞からの上澄みを収集して、新鮮なJurkat T細胞に移し、培養開始後3、7、10、12、及び15日目に感染性HIVがp24ELISAにより同定されるかどうかを試験した。
HIV−1/MuLV負荷モデル。遺伝子的に統合されたMuLVゲノムを有するヒトT細胞株、CEM−1Bを、HIV−1IIIBに感染させ、これによりHIV−1ゲノム及びMuLVエンベロープを有する偽ウイルスの生成をもたらした(Adang et al.,PNAS USA1999,96:12749−753;Hinkula et al.,Cells Tissues Organs2004,177:169−184)。これらのウイルスの上澄みを使用して、HLA−A201に対してトランスジェニックであるC57Bl/6xDBA F1Kb/dマウスからの脾細胞を感染させた。同系マウスを、HIV−1IIIB/MuLV感染脾細胞で腹腔内経路で負荷し、速やかに複合化抗体、遊離抗体又は遊離ドキソルビシンを腹腔内投与した。負荷から10日後、マウスを致死させ、腹腔細胞を収集した。腹腔細胞をペレット化し、24ウェルプレート内で増殖させた1×106のHIV感受性Jurkat T細胞又はヒトPBMCに添加した。3〜4日毎に、これらの2次培養物から上澄みを取り出し、新鮮な培地を添加した。上澄み中に回収された感染性HIVの量を、p24ELISAにより3週間測定した。
統計分析。抗gp120Mab及び対照抗体のin vitro HIV−1中和能力を比較するために、スチューデントt−検定及びノンパラメトリックKruskal−Wallis検定を使用した。ノンパラメトリックMann−Whitney U及びKruskal−Wallis検定を使用して、異なる抗体で処理されたマウスの群の間の統計分析を行った。0.05未満のp値が得られたら、差が有意であるとみなした。GraphPad Prismバージョン4.0a(GraphPad Software、San Diego、CA)を使用してノンパラメトリック一元配置ANOVA検定を行い、試験群間のHIV−1単離及びp24抗原陽性度の比較に使用した。
結果
穏やかな還元によりそれぞれの抗体上に生成されたチオール基の数、及び最終的な精製複合体におけるドキソルビシン/Mab置換比は、8.8(P4/D10、hRS7)から9.4(hLL1)の間の範囲であり、IgG当たり約9個の薬物分子の比を与えた。高圧液体クロマトグラフィー分析では、複合体及び天然Mabが同様の保持時間を有し、ゼロから最小限の凝集を伴うことを示した(データは示さず)。
ドキソルビシン複合化P4/D10Mabと非複合化P4/D10Mab又はHIVIgG抗体との間で、遊離HIV−1ウイルスのHIV−1中和能力に有意な差は示され得なかった(図示せず)。しかしながら、全ての抗HIV−1特異的抗体は、HIV−1IIIBの中和において陰性対照血清(p=0.001)よりも有意に良好であった。
3%のHIV−1IIIB感染Jurkat細胞を97%の非感染細胞と混合すると、ドキソルビシン−P4/D10は、0.5又は0.05μg/mlの濃度で、遊離P4/D10、ドキソルビシン複合化対照抗体、hLL1、又は遊離ドキソルビシンよりも有意に(p=0.002)強くHIV−1感染の細胞間伝播の阻害を媒介した(図示せず)。感染及び非感染細胞の他の全ての濃度において、同様の結果が見られた。感染の細胞間伝播は、中和薬剤としてのドキソルビシン−P4/D10により得られた効果よりもさらにより強力に阻害されるようであることが特に興味深かった。また、これらの細胞培養物から非感染Jurkat細胞に上澄みを移した後にp24生成が検出されなかったため(データは示さず)、高用量のドキソルビシン−P4/D10で処理された培地中に感染性ウイルスを見出すことはできなかった。ドキソルビシン−P4/D10と非複合化P4/D10との間の効果の有意な差は、遊離HIV−1ウイルスの中和に関する結果から予測され得なかった(図示せず)。
ドキソルビシン−P4/D10抗体のin vivoでの効用を試験するために、マウスに同系HIV/MuLV感染細胞を複合体と共に腹腔内に投与した。10日後に腹腔細胞を採取し、以前の研究(Hinkula et al.,2004)と同様に、全ての対照において感染HIVが示された。ドキソルビシン−P4/D10抗体は、HIV−1感染原発性リンパ細胞による負荷から、マウスを完全に保護した(p=0.0001)(図示せず)。負荷及び100μgのドキソルビシン−P4/D10抗体による処理後、腹腔細胞から感染性HIVは回収されなかった。マウスを100μgの非複合化P4/D10抗体で処理すると、全てp24生成に関して陽性であった。抗体のみによる完全保護は、マウス当たり800μgの非複合化P4/D10まで用量を8倍に増加させた場合にのみ見られた。ドキソルビシン複合化対照抗体(hLL1又はhRS7)はいずれも、100〜200μgの用量においていかなる保護も提供せず、また100〜400μgの用量の遊離ドキソルビシンも保護を提供しなかった。
考察
上記の結果は、HIV−1のエンベロープに対して指向された抗体の全ウイルス阻害特性が、ドキソルビシンへのカップリングにより有意に増幅され得ることを示している。ドキソルビシン−P4/D10は、in vitroで、及びin vivo負荷モデルでの実験においてHIV−1感染細胞を排除することができた。HIV−1感染標的細胞に対してADCCを媒介する、及びHIV−1を中和する非複合化P4/D10Mabの能力(Broliden et al.,1990;Hinkula et al.,1994)は、薬物免疫抱合体として非毒性的にその効用を高めることができる。
同様にドキソルビシンに複合化した抗がん抗CD74Mab、LL1は、非常に低い用量で、in vitroで、及び非ホジキンリンパ腫又は多発性骨髄腫のヒト異種移植片モデルにおいて顕著な活性を示した(Griffiths et al.,2003;Sapra et al.,2005)。これらの研究は、サルにおける毒性学と同様に、非常に高い用量の免疫抱合体のみが骨髄抑制の兆候を示すことを示したが、ドキソルビシンに関連した心毒性は観察されなかった(Sapra et al.,2005)。ウイルスの脱出を回避するために、HIVのアクセス可能なエピトープの保存及び可変部位の両方に指向性の抗体が共に試験されるべきである(Trkola et al.,2005;Ferrantelli et al.,J Infect Dis2004,189:2167−2173)。
以前のin vitro研究において、シュードモナス外毒素A(PE40)に複合化されたHIV−1特異的免疫グロブリンは、HIV−1感染細胞を除去した(Pincus et al.,2003;Ashorn et al.,Proc Natl Acad Sci U S A1990,87:8889−8893)。しかしながら、臨床試験において、CD4細胞にカップリングしたPE40は、免疫原性及び肝毒性であることが判明した(Davey et al.,1994;Ramachandran et al.,1994)。したがって、副作用をほとんど、又は全く示さないドキソルビシン−Mab複合体の効用を示す本発明の結果は、驚くべきものであり、予想外である。PE40−CD4の毒性は、高いウイルス量を有する非ART処理患者において高濃度で存在する遊離gp120との毒性複合体の形成により説明され得る(Berger et al.,1998)。高いウイルス量に関連した潜在的毒性問題を回避するために、好ましくは、ウイルス負荷が低い設定において、例えばARTの間に、HIV感染の初期において、又はさらにHIVによる感染への既知の若しくは潜在的な曝露の直後に、HIVエンベロープ特異的エピトープを標的化する分子が使用されるべきである。例えば、針刺し事故によりHIV汚染又は潜在的に汚染された血液又は液体に曝露された医療従事者は、開示された方法に従い複合化抗体で処置され得る。ドキソルビシン−P4/D10複合体の抗細胞活性の結果、ARTで治療された患者への薬物複合体の追加は、抗原保持細胞及び遊離ビリオンを排除することができ、したがってウイルス量をさらに低減し得る。当業者には、請求される組成物及び方法が、P4/D10のドキソルビシン複合体に限定されず、むしろP4/D10又は他の既知の抗HIV抗体に複合化された他の既知の細胞毒性薬剤を使用することができることが理解される。
他の実施形態において、非特異的毒性を回避するために、二重特異性抗体、並びに抗体標的化及び毒性薬剤の送達が別個である他の事前標的化戦略が使用されてもよい(Wu et al.,2005)。この戦略は、前臨床及び臨床がん試験の両方において有望な結果を示した(Forero et al.,Blood2004,104:227−236;Rossi et al.,Clin Cancer Res2005,11:7122s−7129s)。ヒト対象におけるin vivoでの使用の場合、反復的な臨床用途のためにヒト又はヒト化形態の抗体が好ましい。
実施例20.ADC及びT細胞再指向bsAbによるHIV感染患者の治療
47歳の男性の患者が、HIVに対し血清反応陽性であると判定される。患者は、200/mm3未満のCD4カウントを有する。患者を、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害薬ネビラピンの標準投薬計画で治療する。CD4細胞カウントは300/mm3に改善するが、患者はまだHIVに対し血清反応陽性である。患者を、ヒト化ドキソルビシン−P4/D10抗体で、続いて白血球再指向(P4/D10)−3s bsAbで治療する。患者のCD4カウントは、350/mm3超まで改善し、患者はもはやHIVに対し血清反応陽性ではない。1年後、患者は無症状のままであり、検出可能なHIV感染の存在はない。
実施例21.治療用途の三価抗体
(i)EP1309795の請求項1のFabが得られる、特許US618728に記載のようなマウス抗CD16mabを、キメラ化又はヒト化することと;(ii)US7512189に記載のヒト化抗HLA−DR抗体のFvを含む一本鎖抗体を構築し、(i)の抗CD16Fabの軽鎖のカルボキシル末端にscFvをリンカーにより繋げることと;(iii)US8486395に記載のヒト化抗CD19のFvの一本鎖を構築し、(ii)の抗CD16FabのCH1のカルボキシル末端にscFvをリンカーにより繋げることとを含む特許EP1309795B1に記載のように、三価三重特異性細胞標的化コンストラクトを作製する。
三価コンストラクトを、非ホジキンリンパ腫を有する患者に、hLL2−SN38と組み合わせて投与する。部分反応が観察され、腫瘍は、12ヶ月持続するサイズの退縮を示す。
本明細書において開示及び請求される組成物及び方法は全て、本開示に照らして必要以上の実験を行うことなく作製及び使用することができる。組成物及び方法は、好ましい実施形態に関して説明されたが、当業者には、本発明の概念、精神及び範囲から逸脱せずに、本明細書に記載の組成物及び方法に、並びに方法のステップ又は一連のステップにおいて変形例が適用されてもよいことが明らかである。より具体的には、化学的にも生理学的にも関連したある特定の薬剤が本明細書に記載の薬剤と置換されてもよく、一方で同じ又は同様の結果が達成される。当業者に明らかな全てのそのような同様の置換及び修正は、添付の特許請求の範囲により定義されるような本発明の精神、範囲及び概念に含まれるとみなされる。