次に、図1から図8の各図に基づいて本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において矢印FRは、本ウェビング巻取装置10が適用された車両の前側を示し、矢印OUTは、車幅方向外側を示し、矢印UPは、車両上側を示す。
<本実施の形態の構成>
図1に示されるように、本実施の形態に係るウェビング巻取装置10は、フレーム12を備えている。フレーム12は、車両の車体としてのセンターピラー(図示省略)の車両下側部分に固定されている。また、フレーム12は、脚板14、16を備えており、脚板14と脚板16とは、略車両前後方向に対向されている。
また、本ウェビング巻取装置10は、スプール18を備えている。スプール18は、略円筒形状に形成されており、フレーム12の脚板14と脚板16との間に配置されている。スプール18の中心軸線方向は、脚板14と脚板16との対向方向(すなわち、略車両前後方向)に沿っており、スプール18は、中心軸線周りに回転可能とされている。
スプール18には、長尺帯状のウェビング20の長手方向基端部が係止されており、スプール18が巻取方向(図1等の矢印A方向)へ回転されると、ウェビング20が長手方向基端側からスプール18に巻取られる。また、ウェビング20の長手方向先端側は、スプール18から車両上側へ延びており、ウェビング20の長手方向先端側は、フレーム12の車両上側でセンターピラーに支持されたスルーアンカ(図示省略)に形成されたスリット孔を通って車両下側へ折返されている。
さらに、ウェビング20の長手方向先端部は、アンカプレート(図示省略)に係止されている。アンカプレートは、鉄等の金属板材によって形成されており、車両の床部(図示省略)又は本ウェビング巻取装置10に対応するシート(図示省略)の骨格部材等に固定されている。
また、本ウェビング巻取装置10が適用された車両用のシートベルト装置は、バックル装置(図示省略)を備えている。バックル装置は、本ウェビング巻取装置10が適用されるシートの車幅方向内側に設けられている。シートに着座した乗員の身体にウェビング20が掛回された状態で、ウェビング20に設けられたタング(図示省略)がバックル装置に係合されることによって、ウェビング20が乗員の身体に装着される。
一方、スプール18の車両後側には、軸部(図示省略)がスプール18に対する同軸上でスプール18に一体的に設けられており、この軸部は、フレーム12の脚板14に形成された孔(図示省略)を通ってフレーム12の車両後側へ延びている。
また、図1に示されるように、フレーム12の脚板14の車両後側には、スプリングハウジング22が設けられている。スプリングハウジング22の内側には、ぜんまいばね等のスプール付勢手段(図示省略)が設けられている。スプール付勢手段は、上記の軸部を介してスプール18に直接又は間接的に係合され、スプール18は、スプール付勢手段の付勢力によって巻取方向(図1の矢印A方向)へ付勢されている。
さらに、本ウェビング巻取装置10は、フォースリミッタ機構を構成するトーションバー24を備えている。トーションバー24は、略車両前後方向に長い棒状に形成されている。トーションバー24の車両後側部分は、スプール18の内側に配置され、スプール18に対する相対回転が制限された状態でスプール18に繋がっている。これに対して、トーションバー24の車両前側部分は、フレーム12の脚板16に形成された孔を通ってフレーム12の外側(車両前側)へ延びている。
フレーム12の脚板16の車両前側には、プリテンショナ26の回転部材28が設けられている。回転部材28は、第1回転部30を備えている。回転部材28の第1回転部30は、スプール18に対する同軸上に配置されており、回転部材28の第1回転部30には、トーションバー24の車両前側部分が連結されている。このため、回転部材28は、トーションバー24の車両前側部分に対する相対回転が制限され、これによって、回転部材28は、トーションバー24を介して間接的にスプール18に対する相対回転が制限されている。
また、回転部材28の第1回転部30は、第1フランジ32を備えている。第1フランジ32は、円板状とされており、第1フランジ32の車両前側には、係合部としての複数の第1係合歯34が配置されている。これらの第1係合歯34は、第1フランジ32の中心軸線周りに所定の間隔をおいて形成されており、第1係合歯34の車両後側端は、第1フランジ32に一体に繋がっている。回転部材28の第1回転部30の第1係合歯34における回転部材28の回転周方向に沿った寸法は、回転部材28の径方向外側へ向けて短くされている。
さらに、回転部材28の第1回転部30の車両前側には、第1回転部30と共に回転部材28を構成する第2回転部36が設けられている。第2回転部36は、第2フランジ38を備えている。第2フランジ38は、円板状とされており、第2フランジ38の車両後側には、係合部としての複数の第2係合歯40が配置されている。これらの第2係合歯40は、第2フランジ38の中心軸線周りに所定の間隔をおいて形成されている。第2回転部36の中心軸線周りに隣合う第2係合歯40の間隔は、上述した回転部材28の第1回転部30の中心軸線周りに隣合う第1回転部30の第1係合歯34の間隔と同じにされている。
また、回転部材28の第2回転部36の第2係合歯40の各々は、回転部材28の中心軸線方向に見て、回転部材28の第1回転部30の中心軸線周りに隣合う第1回転部30の第1係合歯34の間の略中央に配置される。この状態で、第2回転部36は、第1回転部30に連結され、第2回転部36は、第1回転部30に対する相対回転を含んだ第1回転部30に対する相対移動が制限されている。
さらに、回転部材28の第2回転部36において第2フランジ38よりも車両前側部分は、ロック機構42のロックベース44とされている。ロックベース44は、パウルピン46を備えている。パウルピン46の軸方向は、車両前後方向とされており、パウルピン46の車両後側端部は、ロックベース44(すなわち、回転部材28)に支持されている。また、ロックベース44には、ロックパウル48が設けられている。ロックパウル48の基端部は、パウルピン46周りに回動可能にパウルピン46に支持されている。
このロックベース44のロックパウル48に対応して、フレーム12の脚板16の車両前側には、ロック機構42及びプリテンショナ26の双方を構成する曲げ手段としてのカバープレート50が固定されている。カバープレート50は、車両後側へ開口されており、カバープレート50の底板52は、フレーム12の脚板16から車両前側へ離れた状態で脚板16に対向されている。
カバープレート50の底板52には、ラチェット孔54が形成されており、ラチェット孔54の内周部には、ラチェット歯が形成されている。ロックベース44のロックパウル48は、回動径方向にカバープレート50の底板52のラチェット孔54の内周部と対向されており、ロックパウル48がパウルピン46周りの一方へ回動されると、ロックパウル48の先端部がラチェット孔54の内周部へ接近され、ロックパウル48の先端部がラチェット孔54のラチェット歯に噛合う。これによって、ロックベース44の引出方向への回転が制限され、スプール18の引出方向への回転が間接的に制限される。
また、カバープレート50の車両前側には、ロック機構42のセンサホルダ56が設けられている。センサホルダ56は、車両後側へ開口されており、直接又はカバープレート50を介して間接的にフレーム12の脚板16に固定されている。センサホルダ56の内側には、車両の緊急状態を検出するセンサ機構を構成する各部品が収容されており、車両緊急時にセンサホルダ56内のセンサ機構が作動されると、ロック機構42のロックベース44の引出方向へ回転に連動してロックベース44のロックパウル48がパウルピン46周りの一方へ回動される。
一方、ウェビング巻取装置10は、プリテンショナ26を構成する筒状部材として案内部材を構成するシリンダ58を備えている。シリンダ58は、円筒形状に形成されており、シリンダ58の中心軸方向基端部はフレーム12の車両後上側に配置されている。シリンダ58の中心軸方向基端部には、流体圧力発生手段として荷重発生手段を構成するマイクロガスジェネレータ60(以下、マイクロガスジェネレータ60を「MGG60」と称する)が挿入されている。MGG60は、制御手段としてのECUを介して車両に設けられた衝突検知センサ(何れも図示省略)に電気的に接続されており、車両衝突時の衝撃が衝突検知センサによって検知されると、ECUによってMGG60が作動され、MGG60において発生された流体の一態様であるガスが、シリンダ58の内側へ供給される。
プリテンショナ26のシリンダ58の内側には、ピストンとしてのシールボール62が配置されている。シールボール62は、合成樹脂材によって形成されており、シールボール62に荷重が付与されていない状態でのシールボール62の形状は、略球形状とされている。シリンダ58の内部空間は、シールボール62によってシールボール62よりも中心軸方向基端側とシールボール62よりも中心軸方向先端側とに仕切られている。MGG60が作動され、MGG60で発生されたガスが、シリンダ58におけるMGG60とシールボール62との間に供給され、これによって、シリンダ58におけるMGG60とシールボール62との間で内圧が上昇されると、シールボール62は、シリンダ58の中心軸方向先端側へ移動されると共にシリンダ58の中心軸方向に圧縮されて変形される。
また、プリテンショナ26のシリンダ58の内側には、移動部材64が配置されている。移動部材64は、合成樹脂材によって円柱形状に形成されており、外力を受けることによって変形可能とされている。移動部材64は、シールボール62よりもシリンダ58の中心軸方向先端側に配置されており、シールボール62がシリンダ58の中心軸方向先端側へ移動されると、移動部材64は、シールボール62に押圧されてシリンダ58の中心軸方向先端側へ移動される。
一方、プリテンショナ26のシリンダ58は、中心軸方向中間部で曲がっており、シリンダ58の中心軸方向先端部は、フレーム12の脚板16の車両前上側に配置され、カバープレート50とフレーム12の脚板16とに挟まれて保持されている。シリンダ58の中心軸方向先端は、略車両下側(更に言えば、車両下側に対して車幅方向外側へ傾斜した方向側)へ開口されており、シリンダ58の中心軸方向先端部に到達した移動部材64が、シールボール62によって更に押圧されて移動されると、移動部材64は、シリンダ58の中心軸方向先端部から車両下側へ突出される。
さらに、シリンダ58の中心軸方向先端面は、シリンダ58の中心軸方向先端部における中心軸方向に対して直交する平面とされ、シリンダ58の中心軸方向先端面とシリンダ58の中心軸方向先端部でのシリンダ58の内周面とは、シリンダ58の中心軸方向先端面の内周縁で直交し、また、シリンダ58の中心軸方向先端面とシリンダ58の中心軸方向先端部でのシリンダ58の外周面とは、シリンダ58の中心軸方向先端面の外周縁で直交している。
カバープレート50の内側において、シリンダ58の中心軸方向先端よりも略車両下側(更に言えば、車両下側に対して車幅方向外側へ傾斜した方向側)は、第1変形許容部66とされている。図3に示されるように、第1変形許容部66では、シリンダ58の中心軸方向先端よりも略車両下側の空間が、シリンダ58の中心軸方向先端での外周縁よりもシリンダ58の中心軸直交方向外側へ広がっている。このため、シリンダ58の中心軸方向先端よりも車両下側へ突出された移動部材64は、移動部材64の軸直交方向外側へ膨張するように変形できる。
ここで、本実施の形態では、シリンダ58の中心軸方向先端は、第1制限部68とされている。図7に示されるように、シリンダ58の中心軸方向先端よりも車両下側へ突出された移動部材64が、第1変形許容部66で移動部材64の軸直交方向外側へ膨張されると、この移動部材64の膨張部分は、シリンダ58の中心軸方向先端部におけるシリンダ58の中心軸方向にシリンダ58の第1制限部68(シリンダ58の中心軸方向先端)と対向される。このため、シリンダ58の中心軸方向先端よりも車両下側へ突出された移動部材64が、シリンダ58へ戻ろうとすると、移動部材64において移動部材64の中心軸直交方向外側へ膨張部分が、シリンダ58の第1制限部68(シリンダ58の中心軸方向先端)へ当接される。
さらに、カバープレート50の内側において第1変形許容部66よりも略車両下側(更に言えば、車両下側に対して車幅方向外側へ傾斜した方向側)には、上述した回転部材28が配置されている。シールボール62に押圧された移動部材64は、カバープレート50の第1変形許容部66よりも略車両下側へ移動されると、回転部材28の第1回転部30の第1フランジ32と第2回転部36の第2フランジ38との間に入り、回転部材28の第1回転部30の第1係合歯34又は第2回転部36の第2係合歯40に当接され、第1係合歯34又は第2係合歯40は、移動部材64によって車両下側へ押圧される。
これによって、回転部材28は、巻取方向(図3等の矢印A方向)へ回転され、移動部材64は、シールボール62からの圧力によって更に車両下側へ移動される。このように、移動部材64が車両下側へ移動され、回転部材28が巻取方向へ回転されることによって、回転部材28の第1回転部30の第1係合歯34及び第2回転部36の第2係合歯40は、移動部材64に突刺さり、この状態で、移動部材64が更に車両下側へ移動されることにより、回転部材28は、更に巻取方向へ回転される。
また、カバープレート50における第1変形許容部66よりも車両下側には、誘導部70が設けられている。誘導部70は、カバープレート50の壁部としての側壁72の車幅方向内側部分の一部とされており、図2及び図3に示されるように、誘導部70では、カバープレート50の側壁72が、カバープレート50の内側で且つ車幅方向外側へ変形されている。図3に示されるように、誘導部70の車両下側部分におけるカバープレート50の側壁72の内側面は、シリンダ58の中心軸方向先端部での内周面における車幅方向内側部分に対してシリンダ58の中心軸方向先端側へ一点鎖線C上に配置されている。また、誘導部70の車両下側端部は、シリンダ58の中心軸方向先端部におけるシリンダ58の中心軸方向に対して直交し回転部材28の回転中心から車幅方向内側を通る一点鎖線D上に配置され、誘導部70の車両下側端は、一点鎖線Dよりも車両下側に配置されている。
さらに、カバープレート50における誘導部70の車両下側は、第2変形許容部74とされている。第2変形許容部74では、カバープレート50の側壁72の内側面が、誘導部70でのカバープレート50の側壁72の内側面よりも車幅方向内側に配置されている。このため、第2変形許容部74において移動部材64は、車幅方向内側へ膨張できる。
ここで、誘導部70の車両下側面は、第2制限部76とされている。第2制限部76は、シリンダ58の中心軸方向先端部におけるシリンダ58の中心軸方向に対して直交する平面とされており、第2変形許容部74で移動部材64が車幅方向内側へ膨張されると、この移動部材64の膨張部分は、シリンダ58の中心軸方向先端部におけるシリンダ58の中心軸方向に第2制限部76と対向される。このため、移動部材64が軸方向基端側へ移動しようとすると、移動部材64において第2変形許容部74での膨張部分が第2制限部76へ当接される。
また、カバープレート50の側壁72における第2変形許容部74よりも車両下側部分は、曲部78とされている。曲部78は、回転部材28の回転中心側を曲率中心として湾曲されている。曲部78は、巻取方向側へ向けて回転部材28の回転中心からの距離が大きくなっており、曲部78の巻取方向側端78Aでは、回転部材28の回転中心からの距離が、回転部材28における第1係合歯34及び第2係合歯40の歯先円の半径寸法と、移動部材64の直径寸法との和以上にされている。このため、移動部材64は、曲部78に倣って曲げられることによって、曲部78の巻取方向側端78Aでは、回転部材28の第1係合歯34又は第2係合歯40から離れることができる。
ここで、シリンダ58の中心軸方向先端部におけるシリンダ58の中心軸方向に対して直交し回転部材28の回転中心から車幅方向内側を通る一点鎖線Dに対して、回転部材28の回転中心と、曲部78の巻取方向側端78Aとを通過する一点鎖線Eが成す角度θは、180度未満に設定されており、特に、本実施の形態では、角度θが90度に設定されている。
さらに、カバープレート50の側壁72における曲部78よりも車幅方向外側部分には、コーナ部としての第1コーナ部80が形成されており、側壁72における第1コーナ部80を挟んだ曲部78とは反対側は、第1コーナ部80から車両上側に対して車幅方向内側へ傾斜した方向へ延びている。このカバープレート50の側壁72において第1コーナ部80から車両上側へ延びた部分は、上記の一点鎖線Eから離れるように一点鎖線Eに対して傾いている。これに対して、カバープレート50の側壁72の第1コーナ部80は、カバープレート50の内側を曲率中心として曲がっており、第1コーナ部80の曲率半径は、カバープレート50の側壁72の曲部78の曲率半径よりも小さくされている。
また、カバープレート50の側壁72における第1コーナ部80よりも車両上側部分には、コーナ部としての第2コーナ部82が形成されており、側壁72における第2コーナ部82を挟んだ第1コーナ部80とは反対側は、第2コーナ部82から車幅方向内側へ延びている。カバープレート50の側壁72の第2コーナ部82は、カバープレート50の内側を曲率中心として曲がっており、第2コーナ部82の曲率半径は、カバープレート50の側壁72の曲部78の曲率半径以下とされている。これに対して、カバープレート50の側壁72において第2コーナ部82から車幅方向内側へ延びた部分は、シリンダ58の側方でシリンダ58に倣って曲がっている。
このようなカバープレート50は、図1に示される複数の第1リベット84及び1つの第2リベット86によってフレーム12の脚板16に固定されている。カバープレート50の側壁72からはフランジ部88がカバープレート50の外側へ延出されており、第1リベット84は、カバープレート50側からカバープレート50のフランジ部88と、フレーム12の脚板16とを貫通した状態で第1リベット84の先端部(車両後側端部)かしめられている。
一方、第2リベット86は、シリンダ58の中心軸方向先端部の車幅方向外側で、回転部材28の車両上側に設けられている。第2リベット86は、カバープレート50側からカバープレート50の底板52と、フレーム12の脚板16とを貫通した状態で第2リベット86の先端部(車両後側端部)かしめられている。第2リベット86の中間部は、移動制限部90とされており、図8に示されるように、移動部材64の軸方向先端が第2リベット86の移動制限部90に当接されることによって、移動部材64の軸方向先端側への移動が制限される。また、本実施の形態では、移動部材64の軸方向先端が第2リベット86の移動制限部90に当接された状態で、シリンダ58内に移動部材64の軸方向基端がシリンダ58の中心軸方向先端から抜けないように移動部材64の軸方向長さが設定されている。
<本実施の形態の作用、効果>
次に、本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
本ウェビング巻取装置10では、車両緊急時の一態様である車両衝突時には、ロック機構42のセンサ機構が作動される。ロック機構42のセンサ機構が作動状態では、ロック機構42のロックベース44の引出方向(図1等の矢印B方向)へ回転に連動してロックベース44のロックパウル48がパウルピン46周りの一方へ回動される。これによって、ロックパウル48の先端部がカバープレート50の底板52のラチェット孔54の内周部へ接近され、ロックパウル48の先端部がラチェット孔54のラチェット歯に噛合い、ロックベース44の引出方向への回転が制限される。
ロックベース44は、回転部材28の第2回転部36に形成されており、回転部材28の第1回転部30は、第2回転部36に対する相対回転が制限されていると共にトーションバー24の車両前側が繋がっている。回転部材28の第1回転部30及びスプール18は、何れもトーションバー24に対する相対回転が制限されているため、回転部材28の引出方向(図1等の矢印B方向)への回転が制限されることによって、スプール18の引出方向への回転が制限される。これによって、スプール18からのウェビング20の引出しが制限されるため、ウェビング20によって乗員の身体を拘束できる。
また、ロックベース44の引出方向(図1等の矢印B方向)への回転が制限された状態で、乗員が車両前側へ慣性移動しようとすると、乗員の身体から引張力がウェビング20へ付与され、この引張力に基づく引出方向への回転力がスプール18を介してトーションバー24の車両後側部分に付与される。トーションバー24の車両後側部分に付与された引出方向への回転力がトーションバー24の機械的強度を上回ると、トーションバー24の車両後側部分が車両前側部分に対して引出方向へ回転するように捻り変形される。
このトーションバー24の捻り変形分だけスプール18が引出方向(図1等の矢印B方向)へ回転され、このスプール18の引出方向への回転量に応じた長さのウェビング20がスプール18から引出される。このウェビング20のスプール18からの引出長さ分だけ乗員は車両前側へ慣性移動できると共に、乗員からウェビング20に付与された引張力の一部がトーションバー24の捻り変形に供されて吸収される。
また、本ウェビング巻取装置10では、車両緊急時の一態様である車両衝突時に、ECUによってプリテンショナ26のMGG60が作動されると、MGG60からシリンダ58の内側へ高圧のガスが瞬時に供給される。このガスの圧力によってシールボール62がシリンダ58の中心軸方向先端側へ移動されると、移動部材64がシールボール62に押圧されて移動部材64がシリンダ58の中心軸方向先端側へ移動される。
移動部材64が軸方向先端側へ移動されることによって、移動部材64の軸方向先端部がシリンダ58の中心軸方向先端から車両下側(図3等の矢印F方向)へ抜け、更に、移動部材64の軸方向先端部における車幅方向内側部分が、カバープレート50の側壁72に設けられた誘導部70におけるカバープレート50の内側面に当接される。この状態で、移動部材64が更に軸方向先端側へ移動されると、図4に示されるように、移動部材64が回転部材28の第1フランジ32と第2フランジ38との間に入り、回転部材28の第1係合歯34又は第2係合歯40が移動部材64の軸方向先端によって車両下側(図4等の矢印F方向)へ押圧されると、回転部材28が巻取方向(図4等の矢印A方向)へ回転される。
さらに、回転部材28の複数の第1係合歯34又は第2係合歯40のうち、移動部材64の軸方向先端に押圧された第1係合歯34又は第2係合歯40よりも引出方向側(図4等の矢印B方向側)の第1係合歯34又は第2係合歯40は、図5に示されるように、回転部材28の巻取方向への回転によって移動部材64の外周面から移動部材64の径方向中央側へ食込み又は突刺さる。
このように、回転部材28の第1係合歯34又は第2係合歯40が食込み又は突刺さった移動部材64が車両下側(図5等の矢印F方向)へ移動されることによって、回転部材28が更に巻取方向(図5等の矢印A方向)へ回転される。回転部材28の巻取方向への回転は、トーションバー24を介してスプール18に伝わり、スプール18が巻取方向へ回転される。これによって、ウェビング20がスプール18に巻取られて、ウェビング20による乗員の拘束力が増加される。
また、回転部材28の第1係合歯34又は第2係合歯40は、図3の一点鎖線Dの位置よりも車両上側で移動部材64に食込み又は突刺さる。この状態から、移動部材64の軸方向先端側への移動によって回転部材28が巻取方向(図3等の矢印A方向)へ回転されると、回転部材28の第1係合歯34又は第2係合歯40の移動部材64に対する食込み量又は突刺さり量(すなわち、移動部材64に対する回転部材28の第1係合歯34又は第2係合歯40の係合範囲)が増加される。
回転部材28の中心から第1係合歯34の先端又は第2係合歯40の先端への方向が、移動部材64における回転部材28の第1係合歯34又は第2係合歯40との係合部分での移動部材64の軸方向に対して直交されると(すなわち、回転部材28の第1係合歯34の先端又は第2係合歯40の先端が図3の一点鎖線D上に配置されると)、回転部材28の第1係合歯34又は第2係合歯40の移動部材64に対する食込み量又は突刺さり量(すなわち、移動部材64に対する回転部材28の第1係合歯34又は第2係合歯40の係合範囲)が最大となる。
また、カバープレート50の誘導部70の車両下側端は、図3の一点鎖線Dよりも車両下側に配置される。このため、誘導部70における図3の一点鎖線Dよりも車両下側部分では、回転部材28の回転中心から誘導部70におけるカバープレート50の内側面までの長さが、図3の一点鎖線D上での回転部材28の回転中心から誘導部70におけるカバープレート50の内側面までの長さよりも長くなる。
これによって、移動部材64が、カバープレート50の誘導部70におけるカバープレート50の内側面に当接された状態で、移動部材64が軸方向先端側へ移動され、これによって、移動部材64が図3の一点鎖線Dの位置を通過すると、移動部材64は、回転部材28の回転中心から離間される。このため、回転部材28の第1係合歯34又は第2係合歯40の移動部材64に対する食込み量又は突刺さり量(すなわち、移動部材64に対する回転部材28の第1係合歯34又は第2係合歯40の係合範囲)が小さくなる。
また、本実施の形態では、この状態から、移動部材64が更に車両下側(図5の矢印F方向)へ移動され、移動部材64がカバープレート50の誘導部70及び第2変形許容部74の側方を通過すると、移動部材64は、カバープレート50の側壁72に設定された曲部78に到達する。移動部材64が曲部78に到達した状態から更に軸方向先端側へ移動されると、移動部材64は、曲部78におけるカバープレート50の内側面に当接され、移動部材64の軸方向先端側への移動と共に移動部材64は、曲部78の内側面に倣って回転部材28の回転中心側を曲率の中心として曲げ変形される。
ここで、カバープレート50の曲部78は、巻取方向側(図5等の矢印A方向側)へ向けて回転部材28の回転中心からの距離が大きくなっており、曲部78の巻取方向側端78Aでは、回転部材28の回転中心からの距離が、回転部材28における第1係合歯34及び第2係合歯40の歯先円の半径寸法と、移動部材64の直径寸法との和以上にされている。
このため、移動部材64は、曲部78に倣って曲げられながら軸方向先端側へ移動されることによって、回転部材28の回転中心から離れる。これによって、移動部材64の軸方向先端側への移動及び回転部材28の巻取方向(図5等の矢印A方向)への回転に伴い、回転部材28の第1係合歯34又は第2係合歯40の移動部材64に対する食込み量又は突刺さり量が減少される。したがって、移動部材64は、軸方向先端側へ移動されながら曲部78に倣って曲げられることで移動部材64の曲げの曲率半径が大きくなる。
移動部材64を軸方向先端側へ移動させる力(すなわち、MGG60にて生じたガス圧)の一部は、移動部材64の曲げ変形、移動部材64と曲部78の内側面との間の摩擦等に吸収される。しかしながら、上記のように、回転部材28の第1係合歯34又は第2係合歯40の移動部材64に対する食込み量又は突刺さり量が減少され、移動部材64の曲げの曲率半径が大きくなることによって、移動部材64の曲げ変形、移動部材64と曲部78の内側面との間の摩擦等による移動部材64を軸方向先端側へ移動させる力の吸収を抑制できる。
さらに、曲部78の巻取方向側端78Aでは、回転部材28の第1係合歯34又は第2係合歯40の移動部材64に対する食込み又は突刺さりが解消され、図6に示されるように、曲部78の巻取方向側端78Aよりも車幅方向外側では、移動部材64が回転部材28の第1係合歯34又は第2係合歯40から離れる。
このように、移動部材64において回転部材28の第1係合歯34又は第2係合歯40の食込み又は突刺さりが解消されて第1係合歯34又は第2係合歯40から離れた移動部材64の回転部材28からの係合解消部分64Aは、移動部材64自身の弾性に基づく復元力により変形される。これによって、移動部材64は、回転部材28の第1係合歯34又は第2係合歯40が食込み又は突刺さった状態よりも曲げの曲率半径が大きくなる(図6及び図7参照)。この状態で移動部材64が更に軸方向先端側へ移動されると、移動部材64の軸方向先端部は、車両上側へ移動され、図7に示されるように、移動部材64の軸方向先端は、カバープレート50の側壁72において第2コーナ部82よりも車幅方向内側部分に当接される。これによって、移動部材64の軸方向先端側への移動が抑制された移動部材64の移動抑制状態になる。
ここで、カバープレート50の側壁72の第1コーナ部80の曲率半径は、カバープレート50の側壁72の曲部78の曲率半径よりも小さく、また、カバープレート50の側壁72の第2コーナ部82の曲率半径は、カバープレート50の曲部78の曲率半径以下とされている。移動部材64は、カバープレート50の曲部78に倣って曲げられ、しかも、移動部材64の回転部材28からの係合解消部分64Aは、復元力によって変形される。このため、移動部材64の曲げの曲率半径は、カバープレート50の側壁72の第1コーナ部80の曲率半径及び第2コーナ部82の曲率半径よりも大きい。これによって、図7に示される移動部材64の軸方向先端側への移動抑制状態では、移動部材64の回転部材28からの係合解消部分64Aと、カバープレート50の側壁72の第1コーナ部80及び第2コーナ部82との間に空間92が形成される。
このため、上記の移動部材64の移動抑制状態で、更に、移動部材64の軸方向基端側が軸方向先端側へ移動されると、移動部材64の回転部材28からの係合解消部分64Aは、空間92を小さくし、カバープレート50の側壁72へ接近するように変形され、図8に示されるように、移動部材64の回転部材28からの係合解消部分64Aは、カバープレート50の側壁72へ当接される。このような移動部材64の回転部材28からの係合解消部分64Aの変形によって移動部材64の軸方向先端とカバープレート50の側壁72との当接が解消されると、移動部材64の回転部材28からの係合解消部分64Aが移動部材64の軸方向先端側へ移動される。これによって、移動部材64の軸方向先端が第2リベット86の中間部の移動制限部90に当接され、移動部材64の軸方向先端側への移動が制限される。
ここで、本実施の形態では、カバープレート50の曲部78は、巻取方向側(図5等の矢印A方向側)へ向けて回転部材28の回転中心から距離が大きくなっており、曲部78の引出方向側端78Aでは、回転部材28の回転中心から距離が、回転部材28における第1係合歯34及び第2係合歯40の歯先円の半径寸法と、移動部材64の直径寸法との和以上にされている。
このため、移動部材64は、曲部78に倣って曲げられながら軸方向先端側へ移動されることによって、移動部材64の曲げの曲率半径が大きくされる。このため、移動部材64の軸方向先端部が回転部材28の回転中心よりも車幅方向外側へ移動された状態で、移動部材64の軸方向を車幅方向内側に対して車両上側へ傾けることができる。これによって、図7に示されるように、移動部材64の軸方向先端がカバープレート50の側壁72において第2コーナ部82よりも車幅方向内側部分に当接されるまで、移動部材64は車両上側へ移動でき、移動部材64の軸方向先端側への移動量を大きくできる。
また、図3に示されるように、回転部材28の第1係合歯34又は第2係合歯40の移動部材64に対する食込み量又は突刺さり量(すなわち、移動部材64に対する回転部材28の第1係合歯34又は第2係合歯40の係合範囲)が最大となる第1係合歯34又は第2係合歯40の回転位置である係合最大位置と、回転部材28の第1係合歯34又は第2係合歯40の移動部材64に対する食込み又は突刺さりが解消される(すなわち、移動部材64に対する回転部材28の第1係合歯34又は第2係合歯40の係合が解消される)第1係合歯34又は第2係合歯40の回転位置である係合解消位置とが成す角度θは、180度未満とされ、特に本実施の形態では、90度とされる。
このため、回転部材28の回転中心を挟んで係合最大位置とは反対の位置に到達するまでの間に移動部材64は、回転部材28の第1係合歯34又は第2係合歯40から離れる。これによって、移動部材64が回転部材28の回転中心を挟んで係合最大位置とは反対側の位置に到達した状態では、移動部材64は、移動部材64自身の弾性による復元力によって、曲部78で曲げられていた状態よりも曲率半径が大きくなる。このため、移動部材64の軸方向先端部が回転部材28の回転中心よりも車幅方向外側へ移動された状態で、移動部材64の軸方向を車幅方向内側に対して車両上側へ効果的に傾けることができる。これによって、図7に示されるように、移動部材64の軸方向先端がカバープレート50の側壁72において第2コーナ部82よりも車幅方向内側部分に当接されるまで、移動部材64は車両上側へ大きく移動させることができる。
また、図7に示されるように、移動部材64の軸方向先端がカバープレート50の側壁72において第2コーナ部82よりも車幅方向内側部分に当接されて、移動部材64の軸方向先端側への移動が抑制された状態では、移動部材64の軸方向先端は、カバープレート50の側壁72を挟んでシリンダ58と対向されている。このため、移動部材64の軸方向先端がカバープレート50の側壁72において第2コーナ部82よりも車幅方向内側部分に当接された際に、カバープレート50の側壁72が受ける衝撃を、シリンダ58によって支持できる。これによって、カバープレート50の機械的強度の高強度化を抑制でき、カバープレート50の薄型化等、カバープレート50の軽量化が可能になる。
さらに、本実施形態では、誘導部70及び曲部78がカバープレート50に形成される。このため、上記の係合最大位置に対する係合解消位置の相対的な位置精度の低下を抑制でき、カバープレート50の曲部78による移動部材64の曲げ、移動部材64が回転部材28の第1係合歯34又は第2係合歯40から離れるタイミング等を安定できる。
さらに、本実施の形態では、移動部材64の回転部材28からの係合解消部分64Aを曲げ手段としてのカバープレート50内に収容できる。ここで、上記のように、本実施の形態では、移動部材64の回転部材28からの係合解消部分64Aを収容するための構成の機械的強度に関しても高強度化を抑制でき、軽量化等が可能になる。しかも、本実施の形態では、移動部材64の回転部材28からの係合解消部分64Aは、カバープレート50の内側において、回転部材28の回転中心を挟んで回転部材28の第1係合歯34、第2係合歯40が移動部材64に突刺さり又は食込む部分とは反対側に配置される。このため、カバープレート50の車両上下方向寸法及び車幅方向寸法の一方が他方に対して極端に大きくなることを抑制できる。
なお、本実施の形態では、回転部材28の第1係合歯34又は第2係合歯40から離れた移動部材64が収容されるカバープレート50に曲部78を形成し、カバープレート50を曲げ手段とした構成であった。しかしながら、例えば、フレーム12の脚板16に曲部78のように移動部材64を曲げるための構成を形成し、フレーム12を曲げ手段としてもよく、また、シリンダ58の中心軸方向先端から移動部材64を案内しながら曲部78のように移動部材64を曲げる部分を設け、シリンダ58を曲げ手段としてもよい。このように、曲げ手段は、カバープレート50等の具体的な態様に限定されることなく広く適用が可能である。
また、本実施の形態では、移動部材64は、曲げ手段としてのカバープレート50の曲部78によって回転部材28側を曲率の中心として曲げられる構成であった。この曲げ手段による移動部材64の曲げは、曲線的な湾曲のみならず、曲げ手段での特定の位置で移動部材64が屈曲するように曲げられる構成であってもよい。