次に、図1から図8の各図に基づいて本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において矢印FRは、本ウェビング巻取装置10が適用された車両の前側を示し、矢印OUTは、車幅方向外側を示し、矢印UPは、車両上側を示す。また、各図において矢印Aは、スプール18等の回転方向一側である巻取方向を示し、矢印Bは、巻取方向とは反対の引出方向を示す。さらに、各図において矢印Cは、ロックパウル68の回動方向であるロック方向を示す。
<本実施の形態の構成>
図1に示されるように、本実施の形態に係るウェビング巻取装置10は、フレーム12を備えている。フレーム12は、車両の車体としてのセンターピラー(図示省略)の車両下側部分に固定されている。また、フレーム12は、脚板14、16を備えており、脚板14と脚板16とは、略車両前後方向に対向されている。
また、本ウェビング巻取装置10は、スプール18を備えている。スプール18は、略円筒形状に形成されており、フレーム12の脚板14と脚板16との間に配置されている。スプール18の中心軸線方向は、脚板14と脚板16との対向方向(すなわち、略車両前後方向)に沿っており、スプール18は、中心軸線周りに回転可能とされている。
スプール18には、長尺帯状のウェビング20の長手方向基端部が係止されており、スプール18が巻取方向(図1等の矢印A方向)へ回転されると、ウェビング20が長手方向基端側からスプール18に巻取られる。また、ウェビング20の長手方向先端側は、スプール18から車両上側へ延びており、ウェビング20の長手方向先端側は、フレーム12の車両上側でセンターピラーに支持されたスルーアンカ(図示省略)に形成されたスリット孔を通って車両下側へ折返されている。
さらに、ウェビング20の長手方向先端部は、アンカプレート(図示省略)に係止されている。アンカプレートは、鉄等の金属板材によって形成されており、車両の床部(図示省略)又は本ウェビング巻取装置10に対応するシート(図示省略)の骨格部材等に固定されている。
また、本ウェビング巻取装置10が適用された車両用のシートベルト装置は、バックル装置(図示省略)を備えている。バックル装置は、本ウェビング巻取装置10が適用されるシートの車幅方向内側に設けられている。シートに着座した乗員の身体にウェビング20が掛回された状態で、ウェビング20に設けられたタング(図示省略)がバックル装置に係合されることによって、ウェビング20が乗員の身体に装着される。
一方、スプール18の車両後側には、軸部(図示省略)がスプール18に対する同軸上でスプール18に一体的に設けられており、この軸部は、フレーム12の脚板14に形成された孔(図示省略)を通ってフレーム12の車両後側へ延びている。
また、図1に示されるように、フレーム12の脚板14の車両後側には、スプリングハウジング22が設けられている。スプリングハウジング22の内側には、ぜんまいばね等のスプール付勢手段(図示省略)が設けられている。スプール付勢手段は、上記の軸部を介してスプール18に直接又は間接的に係合され、スプール18は、スプール付勢手段の付勢力によって巻取方向(図1の矢印A方向)へ付勢されている。
さらに、本ウェビング巻取装置10は、フォースリミッタ機構を構成するトーションバー24を備えている。トーションバー24は、略車両前後方向に長い棒状に形成されている。トーションバー24の車両後側部分は、スプール18の内側に配置され、スプール18に対する相対回転が制限された状態でスプール18に繋がっている。これに対して、トーションバー24の車両前側部分は、フレーム12の脚板16に形成された孔を通ってフレーム12の外側(車両前側)へ延びている。
フレーム12の脚板16の車両前側には、プリテンショナ26の回転部材28が設けられている。回転部材28は、第1回転部30を備えている。回転部材28の第1回転部30は、スプール18に対する同軸上に配置されており、回転部材28の第1回転部30には、トーションバー24の車両前側部分が連結されている。このため、回転部材28は、トーションバー24の車両前側部分に対する相対回転が制限され、これによって、回転部材28は、トーションバー24を介して間接的にスプール18に対する相対回転が制限されている。
また、回転部材28の第1回転部30は、第1フランジ32を備えている。第1フランジ32は、円板状とされており、第1フランジ32の車両前側には、係合部としての複数の第1係合歯34が配置されている。これらの第1係合歯34は、第1フランジ32の中心軸線周りに所定の間隔をおいて形成されており、第1係合歯34の車両後側端は、第1フランジ32に一体に繋がっている。回転部材28の第1回転部30の第1係合歯34における回転部材28の回転周方向に沿った寸法は、回転部材28の径方向外側へ向けて短くされている。
さらに、回転部材28の第1回転部30の車両前側には、第1回転部30と共に回転部材28を構成する第2回転部36が設けられている。第2回転部36は、第2フランジ38を備えている。第2フランジ38は、円板状とされており、第2フランジ38の車両後側には、係合部としての複数の第2係合歯40が配置されている。これらの第2係合歯40は、第2フランジ38の中心軸線周りに所定の間隔をおいて形成されている。第2回転部36の中心軸線周りに隣合う第2係合歯40の間隔は、上述した回転部材28の第1回転部30の中心軸線周りに隣合う第1回転部30の第1係合歯34の間隔と同じにされている。
また、回転部材28の第2回転部36の第2係合歯40の各々は、回転部材28の中心軸線方向に見て、回転部材28の第1回転部30の中心軸線周りに隣合う第1回転部30の第1係合歯34の間の略中央に配置される。この状態で、第2回転部36は、第1回転部30に連結され、第2回転部36は、第1回転部30に対する相対回転を含んだ第1回転部30に対する相対移動が制限されている。
一方、ウェビング巻取装置10は、回転部材28と共にプリテンショナ26を構成する筒状部材としてのシリンダ42を備えている。シリンダ42は、円筒形状に形成されており、シリンダ42の中心軸方向基端部はフレーム12の車両後上側に配置されている。シリンダ42の中心軸方向基端部には、流体圧力発生手段として荷重発生手段を構成するマイクロガスジェネレータ44(以下、マイクロガスジェネレータ44を「MGG44」と称する)が挿入されている。MGG44は、制御手段としてのECUを介して車両に設けられた衝突検知センサ(何れも図示省略)に電気的に接続されており、車両衝突時の衝撃が衝突検知センサによって検知されると、ECUによってMGG44が作動され、MGG44において発生された流体の一態様であるガスが、シリンダ42の内側へ供給される。
プリテンショナ26のシリンダ42の内側には、ピストンとしてのシールボール46が配置されている。シールボール46は、合成樹脂材によって形成されており、シールボール46に荷重が付与されていない状態でのシールボール46の形状は、略球形状とされている。シリンダ42の内部空間は、シールボール46によってシールボール46よりも中心軸方向基端側とシールボール46よりも中心軸方向先端側とに仕切られている。MGG44が作動され、MGG44で発生されたガスが、シリンダ42におけるMGG44とシールボール46との間に供給され、これによって、シリンダ42におけるMGG44とシールボール46との間で内圧が上昇されると、シールボール46は、シリンダ42の中心軸方向先端側へ移動されると共にシリンダ42の中心軸方向に圧縮されて変形される。
また、プリテンショナ26のシリンダ42の内側には、移動部材48が配置されている。移動部材48は、合成樹脂材によって円柱形状に形成されており、外力を受けることによって変形可能とされている。移動部材48は、シールボール46よりもシリンダ42の中心軸方向先端側に配置されており、シールボール46がシリンダ42の中心軸方向先端側へ移動されると、移動部材48は、シールボール46に押圧されてシリンダ42の中心軸方向先端側へ移動される。
一方、プリテンショナ26のシリンダ42は、中心軸方向中間部で曲がっており、シリンダ42の中心軸方向先端部は、フレーム12の脚板16の車両前上側に配置されている。フレーム12の脚板16の車両前側には、ロック機構50及びプリテンショナ26の双方を構成する案内手段としてのカバープレート52が固定されている。図2に示されるように、カバープレート52は、底板54を備えている。底板54の厚さ方向は、車両前後方向とされており、底板54は、フレーム12の脚板16から車両前側へ離れた状態で脚板16に対向されている。
また、カバープレート52は、ガイド壁56を備えている。ガイド壁56は、カバープレート52の底板54の外周部から車両後側へ延出されている。さらに、ガイド壁56の車両後側端部からは、取付フランジ58がガイド壁56の外側へ延出されており、この取付フランジ58が、フレーム12の脚板16に固定されることによって、カバープレート52は、フレーム12に取付けられている。また、ガイド壁56の車両上側部分における車幅方向内側部分は、車両上下方向に開放されており、このガイド壁56の開放部分から上述したシリンダ42の中心軸方向先端部がカバープレート52の内側に入っている。
図1に示されるシリンダ42の中心軸方向先端部は、カバープレート52とフレーム12の脚板16とに挟まれて保持されている。シリンダ42の中心軸方向先端は、略車両下側(更に言えば、車両下側に対して車幅方向外側へ傾斜した方向側)へ開口されており、シリンダ42の中心軸方向先端部に到達した移動部材48が、シールボール46によって更に押圧されて移動されると、移動部材48は、シリンダ42の中心軸方向先端部から車両下側へ突出される。このようにシリンダ42の中心軸方向先端部から車両下側へ突出された移動部材48は、カバープレート52のガイド壁56の内側面に案内されて車両下側へ移動される。
さらに、カバープレート52の内側においてシリンダ42の中心軸方向先端部よりも略車両下側(更に言えば、車両下側に対して車幅方向外側へ傾斜した方向側)には、上述した回転部材28が配置されている。シールボール46に押圧された移動部材48は、シリンダ42の中心軸方向先端部よりも略車両下側へ移動されると、回転部材28の第1回転部30の第1フランジ32と第2回転部36の第2フランジ38との間に入り、回転部材28の第1回転部30の第1係合歯34又は第2回転部36の第2係合歯40に当接され、第1係合歯34又は第2係合歯40は、移動部材48によって車両下側へ押圧される。
これによって、回転部材28は、巻取方向(図1等の矢印A方向)へ回転され、移動部材48は、シールボール46からの圧力によって更に車両下側へ移動される。このように、移動部材48が車両下側へ移動され、回転部材28が巻取方向へ回転されることによって、回転部材28の第1回転部30の第1係合歯34及び第2回転部36の第2係合歯40は、移動部材48に突刺さり、この状態で、移動部材48が更に車両下側へ移動されることにより、回転部材28は、更に巻取方向へ回転される。
シールボール46からの圧力によって回転部材28よりも車両下側へ移動された移動部材48は、カバープレート52のガイド壁56の内側面に案内され、これによって、移動部材48は、車幅方向外側へ移動される。回転部材28よりも車幅方向外側へ移動された移動部材48は、カバープレート52のガイド壁56の内側面に案内されて、回転部材28よりも車両上側へ移動される。
一方、図2及び図3に示されるように、上述した回転部材28の第2回転部36において第2フランジ38よりも車両前側部分は、ロック機構50の支持手段としてのロックベース60とされている。ロックベース60に対応して、上述したカバープレート52の底板54には、ラチェット孔62が形成されている。ラチェット孔62は、回転部材28に対する同軸上に形成されており、ロックベース60は、ラチェット孔62の内側に配置されている。
ロックベース60は、当接部としてのパウル配置部64を備えている。パウル配置部64は、第2フランジ38の一部によって構成されており、パウル配置部64には、パウルピン66が設けられている。パウルピン66は、パウル配置部64から車両前側へ突出されている。パウルピン66には、ロック部材としてのロックパウル68が設けられている。ロックパウル68の基部には、円形の孔部が形成されており、ロックパウル68の孔部にはパウルピン66が貫通配置され、ロックパウル68の車両後側面(ロック直交方向他側面)は、パウル配置部64の車両前側面(ロック直交方向一側面)へ当接されている。
また、ロックベース60は、厚肉部72を備えている。厚肉部72には、荷重受部74が形成されている。荷重受部74は、パウルピン66を曲率の中心としてC字形状に湾曲されている。荷重受部74には、ロックパウル68の基部の外周一部が当接される。ロックパウル68の基部の外周一部は、ロックパウル68の孔部を曲率の中心として湾曲されており、ロックパウル68は、パウルピン66と荷重受部74とによって、パウルピン66周りのロック方向(図2等の矢印C方向)及びその反対方向へ回動可能に支持されている。
ロックパウル68の先端部におけるロックパウル68の幅方向一側部分には、係合歯76が形成されており、ロックパウル68がロック方向(図2等の矢印C方向)へ回動されると、ロックパウル68の係合歯76がカバープレート52の底板54のラチェット孔62の内周部へ接近される。これによって、ロックパウル68の係合歯76がカバープレート52のラチェット孔62のラチェット歯へ係合されると、ロックベース60(すなわち、回転部材28)の引出方向への回転が制限され、スプール18の引出方向への回転が間接的に制限される。
一方、ロックベース60の厚肉部72には、支持軸78が設けられている。支持軸78は、支持軸本体80を備えている。支持軸本体80は、回転部材28の第2回転部36の回転中心に配置されており、厚肉部72から突出形成されている。ロックベース60の厚肉部72における支持軸78を中心とした巻取方向側端部には、抑制部としての制限片82が設けられている。制限片82は、厚肉部72の車両前側端部から巻取方向側へ延出されている。
ロックベース60の制限片82に対応してロックパウル68の先端部におけるロックパウル68の幅方向他側部分には、ラップ部84が形成されており、ロックパウル68のラップ部84は、制限片82の車両後側に配置される。ロックパウル68がロック方向(図2等の矢印C方向)へ回動されると、ラップ部84は、制限片82の車両後側から抜けるようにロックベース60のパウル配置部64の支持軸78周りに回動される。但し、ロックパウル68がロック方向へ回動されて、ロックパウル68の係合歯76がカバープレート52のラチェット孔62のラチェット歯へ係合された状態で、ロックパウル68のラップ部84の一部は、制限片82の車両後側に配置される。
また、図2及び図3に示されるように、ロックベース60のパウル配置部64の制限片82側には、傾斜部86が形成されており、制限片82は、傾斜部86の車両前側で傾斜部86と対向されていると共に、ロックパウル68のラップ部84は、傾斜部86と制限片82との間に配置されている。傾斜部86の車両前側面における回転部材28の径方向内側端は、ロックベース60のパウル配置部64に対して回転部材28の中心軸線方向に同じ位置に配置されている。
また、図4に示されるように、ロックベース60の傾斜部86の車両前側面は、回転部材28の径方向外側へ向けて車両後側へ変位して、パウル配置部64の車両前側面に対して車両後側へ離れるように傾斜されている。さらに、傾斜部86のパウル配置部64側の端部は、制限片82よりも巻取方向側に配置されている。このため、傾斜部86のパウル配置部64側の端部は、制限片82と対向されていない。
このようなロックベース60を有する回転部材28の第2回転部36は、例えば、ダイキャストによって一体成形される。ここで、第2回転部36のロックベース60における傾斜部86と制限片82との間の部分は、所謂「アンダーカット」になる。このため、ダイキャストによる第2回転部36の一体成形において、傾斜部86と制限片82との間の部分には、中子(コア)が配置され、第2回転部36が成形されると、中子は、制限片82と傾斜部86との間から、回転部材28の径方向外側へ抜かれる。このようにして成形された回転部材28の第2回転部36では、傾斜部86の車両前側面にパーティングライン88(図2参照)が形成される。パーティングライン88は、回転部材28の径方向に長い線状の突部とされ、ダイキャストの成形で用いられる金型の母型と中子との境、すなわち、制限片82の巻取方向側端の車両後側に形成される。
このパーティングライン88は、傾斜部86の車両前側面に形成されるが、パーティングライン88の先端(車両前側端)は、例えば、全て又は大部分において、ロックベース60のパウル配置部64の車両前側面よりも車両後側に配置される。ここで、ロックパウル68は、ロックベース60のパウル配置部64と傾斜部86とを跨いで配置され、ロックパウル68の車両後側面は、パウル配置部64の車両前側面へ当接される。このため、上記のように、パーティングライン88の先端(車両前側端)は、ロックベース60のパウル配置部64の車両前側面よりも車両後側に配置されるため、ロックパウル68の傾斜部86側部分は、傾斜部86の車両前側面に形成されたパーティングライン88に対して車両前側に離れて配置される。
一方、図1に示されるように、ロックベース60の厚肉部72から突出形成された支持軸78は、カバープレート52の底板54のラチェット孔62を通って底板54の外側へ突出されている。また、カバープレート52の底板54の外側にはVギヤ90が配置されている。図2に示されるように、Vギヤ90は、支持軸78の支持軸本体80に回転可能に支持されている。Vギヤ90には、ガイド孔120が形成されている。ガイド孔120には、ロックパウル68から車両前側へ突出形成されたガイドピン122が入っている。ロックベース60(すなわち、回転部材28)が、Vギヤ90に対して引出方向へ相対回転されると、ロックパウル68のガイドピン122がVギヤ90のガイド孔120に案内されて移動され、これによって、ロックパウル68がロック方向(図2等の矢印C方向)へ回動される。
また、ロックベース60の厚肉部72には、配置孔124が形成されている。配置孔124は、回転部材28の第2回転部36の回転中心を曲率の中心として湾曲されており、厚肉部72の車両前側面で開口されている。配置孔124には、図1に示される圧縮コイルばね126が配置されている。さらに、配置孔124の内側における圧縮コイルばね126の引出方向側の端部の側方には、Vギヤ90の一部が入っている。圧縮コイルばね126の引出方向側端部は、Vギヤ90の一部へ当接され、圧縮コイルばね126の巻取方向側端部は、配置孔124の巻取方向側端部へ当接されている。ロックベース60(すなわち、回転部材28)が引出方向へ回転されると、圧縮コイルばね126によってVギヤ90の一部が引出方向へ押圧され、これによって、Vギヤ90は、ロックベース60(すなわち、回転部材28)に追従して引出方向へ回転される。
また、図1に示されるように、カバープレート52の車両前側には、センサホルダ92が設けられている。図5に示されるように、センサホルダ92は、車両後側へ向けて開口された箱形状とされており、カバープレート52又はフレーム12の脚板16に固定されている。センサホルダ92の底部94の内側面には、内歯のラチェット歯がロックベース60(すなわち、回転部材28)の支持軸78に対する同軸上に形成されている。
このセンサホルダ92の底部94のラチェット歯の内側には、WSIR機構としてロック機構50を構成するWパウル96(図1参照)が設けられている。Wパウル96は、車両前後方向を軸方向とする軸周りに回動可能にVギヤ90に支持されている。Vギヤ90の引出方向への回転加速度が一定の大きさを越えた場合、Wパウル96は、Vギヤ90に対して回転遅れが生じるようにされており、Vギヤ90に対するWパウル96の回転遅れが生じると、Wパウル96は、センサホルダ92の底部94のラチェット歯へ係合される。これによって、Vギヤ90の引出方向への回転が制限される。
また、図5から図7の各図に示されるように、センサホルダ92は、センサ収容部98を備えている。センサ収容部98は、センサホルダ92の車幅方向内側部分における車両下側部分に形成されており、車両後側へ向けて開口された箱形状とされている。センサホルダ92がカバープレート52又はフレーム12の脚板16に固定された状態で、センサ収容部98は、カバープレート52の取付フランジ58の車両前側に配置されると共に、カバープレート52のガイド壁56の車幅方向内側における車両下側に配置される。すなわち、スプール18の中心軸線直交方向に見て、センサホルダ92のセンサ収容部98は、カバープレート52のガイド壁56に対してスプール18の中心軸線方向に重なるように配置される。このため、スプール18の中心軸線方向への本ウェビング巻取装置10の大型化を抑制できる。
図6及び図7に示されるように、センサホルダ92のセンサ収容部98の内側には、VSIR機構としてロック機構を構成するVセンサ100が配置される。図1及び図5に示されるように、Vセンサ100は、センサハウジング102を備えている。センサハウジング102には、センサボール104が設けられており、車両衝突時等の車両急減速時には、センサボール104がセンサハウジング102上で転がる。
また、センサハウジング102には、センサレバー106が設けられている。センサレバー106の一部は、車両上側からセンサボール104へ係合されており、センサボール104がセンサハウジング102上で転がると、センサレバー106は、センサボール104に押上げられる。センサレバー106の先端部は、Vギヤ90の外周部の側方に配置されており、センサレバー106がセンサボール104に押上げられると、センサレバー106の先端部がVギヤ90の外周部のラチェット歯に係合される。これによって、Vギヤ90の引出方向への回転が制限される。
また、図6及び図7に示されるように、センサホルダ92のセンサ収容部98の内側には、スペーサ108が配置される。スペーサ108は、センサ収容部98内において、Vセンサ100のセンサハウジング102の車両後側に配置されている。スペーサ108は、センサハウジング102に対して車両後側から当接されている。この状態で、センサハウジング102の車両前側端は、センサ収容部98の壁面へ当接されている。このように、スペーサ108がセンサハウジング102へ当接され、センサハウジング102がセンサ収容部98の壁面へ当接された状態では、スペーサ108の車両後側面と、カバープレート52の取付フランジ58の車両前側面との間に隙間が形成されるように、センサハウジング102及びスペーサ108の各部位の寸法が設定されている。
さらに、図7に示されるように、スペーサ108の車両後側面には、1又は複数のリブ110が形成されている。これらのリブ110は、車両後側へ向けて先細の突起状又は車幅方向に長い三角柱状とされている。これらのリブ110の車両後側端は、カバープレート52の取付フランジ58の車両前側面へ当接され、取付フランジ58の車両前側面からの荷重によって潰されている。これによって、スペーサ108の車両後側への変位が制限され、センサ収容部98のセンサハウジング102(すなわち、Vセンサ100)は、スペーサ108とセンサ収容部98の壁面とによって車両前後方向の変位が制限される。これによって、Vセンサ100は、センサ収容部98の内側で安定した状態で保持され、車両走行時等におけるVセンサ100の振動を抑制でき、Vセンサ100の振動に起因する異音の発生を抑制できる。
一方、図1及び図8に示されるように、Vギヤ90が支持された支持軸78の支持軸本体80の車両前側には、装着部112が形成されている。支持軸本体80の中心軸方向に対して直交する方向に装着部112を切った装着部112の断面の外周形状は、非円形とされており、装着部112の外周形状は、支持軸本体80の外周形状よりも小さくされている。装着部112には、カラー114が設けられている。カラー114は、筒状に形成されており、カラー114の外周形状は、支持軸本体80の外周形状よりも大きな円形とされている。これに対して、カラー114の内周部の断面形状は、支持軸78の装着部112の外周形状と同じ(すなわち、非円形)にされている。
支持軸78の装着部112は、カラー114を貫通しており、カラー114の車両後側端は、支持軸78の支持軸本体80の車両前側端へ当接されている。このため、カラー114は、支持軸78に対する相対回転が制限されている。この支持軸78の装着部112へのカラー114の装着状態で、カラー114の外周部は、支持軸78の支持軸本体80に対する同軸上に配置される。
カラー114は、センサホルダ92の底部94に形成された円形の孔に挿入されており、カラー114は、センサホルダ92の底部94に回転自在に支持され、これによって、ロックベース60(すなわち、回転部材28の第2回転部36)は、センサホルダ92に回転自在に支持される。ここで、カラー114の外周形状は、支持軸78の支持軸本体80の外周形状よりも大きな円形とされている。このため、カラー114が挿入されて支持されるセンサホルダ92の底部94の孔の内周形状は、支持軸本体80の外周形状よりも大きい。
また、カラー114にはフランジ部116が設けられている。フランジ部116は、板状に形成されており、フランジ部116の厚さ方向は、カラー114の中心軸方向に沿っている。フランジ部116は、カラー114の車両後側端部からカラー114の径方向外側へ延出されており、支持軸78の装着部112へのカラー114の装着状態でフランジ部116は、センサホルダ92の底部94の内側面(車両後側面)へ当接される。ここで、フランジ部116の車両前側面の面積は、支持軸78の支持軸本体80の車両前側面の面積よりも大きい。このため、本実施の形態を支持軸78の支持軸本体80の車両前側面がセンサホルダ92の底部94の内側面へ当接される構成と比べた場合、例えば、センサホルダ92の底部94の内側面は、回転部材28が車両前側へ変位しようとした際の荷重を広い面積で受けることができる。
このため、本実施の形態では、支持軸78の支持軸本体80の車両前側面の面積を小さくできる(すなわち、支持軸本体80の径方向に沿った支持軸本体80の外周部と装着部112の外周部との段差を小さくできる)。これによって、支持軸本体80の外周形状、すなわち、支持軸本体80の半径寸法を小さくでき、支持軸本体80が貫通されるVギヤ90の孔の半径寸法を小さくできる。これによって、Vギヤ90の大型化を抑制できる
一方、ロックベース60(すなわち、回転部材28の第2回転部36)の支持軸78の装着部112は、センサホルダ92の底部94を通って底部94よりも車両前側へ突出されている。この支持軸78の装着部112においてセンサホルダ92の底部94よりも車両前側部分には、プッシュナット118が設けられている。プッシュナット118は、リング状に形成されており、車両後側から支持軸78の装着部112が貫通され、これによって、プッシュナット118は、支持軸78の装着部112に固定されている。
図8に示されるように、センサホルダ92の底部94の車両前側面におけるプッシュナット118との対向部分は、カラー114の車両前側端よりも車両後側に配置されている。このため、プッシュナット118の車両後側面は、カラー114の車両前側端へ当接されており、プッシュナット118の車両後側面と、センサホルダ92の底部94の車両前側面におけるプッシュナット118との対向部分との間には、隙間が設けられている。したがって、カラー114は、プッシュナット118と支持軸78の支持軸本体80とによって支持軸78の中心軸方向に挟まれている。
また、プッシュナット118の車両後側面は、カラー114の車両前側面へ当接されている。このため、プッシュナット118が支持軸78の装着部112へ装着される際に、プッシュナット118がカラー114の車両前側面へ当接された状態よりもプッシュナット118が車両後側へ移動されることを抑制でき、支持軸78の装着部112におけるプッシュナット118の装着位置を安定できる。
このため、プッシュナット118とカラー114のフランジ部116とがセンサホルダ92の底部94を強く挟むことを抑制できる。このため、回転部材28が回転され、これによって、カラー114が支持軸78と共に回転された際に、センサホルダ92の底部94と、カラー114のフランジ部116及びプッシュナット118との間の摩擦が大きくなることを抑制できると共に、カラー114の中心軸方向に沿ったカラー114の外周部とセンサホルダ92の底部94の孔の内周部との摺動範囲を確保できる。これによって、カラー114が円滑に回転できる。
<本実施の形態の作用、効果>
本ウェビング巻取装置10では、車両衝突時等の車両緊急時には、ロック機構50を構成するWSIR機構及びVSIR機構の少なくとも一方が作動される。例えば、車両衝突時に車両の乗員が車両前側へ慣性移動されるとウェビング20が引張られ、スプール18が引出方向へ回転される。このスプール18の引出方向への回転加速度が一定の大きさを越えた場合には、Wパウル96を含んで構成されるWSIR機構が作動され、これによって、Vギヤ90の引出方向への回転が制限される。また、車両衝突時には車両が急減速される。これによって、Vセンサ100を含んで構成されるVSIR機構が作動され、これによって、Vギヤ90の引出方向への回転が制限される。
このように、WSIR機構及びVSIR機構の少なくとも一方が作動されてVギヤ90の引出方向への回転が制限された状態で、回転部材28がスプール18と共に引出方向へ回転されると、ロックパウル68のガイドピン122がVギヤ90のガイド孔120に案内されて移動され、これによって、ロックパウル68は、ロックベース60(すなわち、回転部材28の第2回転部36)のパウルピン66を中心にロック方向へ回動される。
これによって、ロックパウル68の係合歯76がカバープレート52の底板54のラチェット孔62の内周部へ接近され、係合歯76がラチェット孔62のラチェット歯へ係合される。これによって、ロックベース60(すなわち、回転部材28)の引出方向への回転が制限され、スプール18の引出方向への回転が間接的に制限される。これによって、スプール18からのウェビング20の引出しを制限でき、ウェビング20によって車両の乗員の身体を拘束できる。
また、本ウェビング巻取装置10では、車両緊急時の一態様である車両衝突時に、ECUによってプリテンショナ26のMGG44が作動されると、MGG44からシリンダ42の内側へ高圧のガスが瞬時に供給される。このガスの圧力によってシールボール46がシリンダ42の中心軸方向先端側へ移動されると、移動部材48がシールボール46に押圧されて移動部材48がシリンダ42の中心軸方向先端側へ移動される。
移動部材48が軸方向先端側へ移動されることによって、移動部材48の軸方向先端部がシリンダ42の中心軸方向先端から車両下側へ抜ける。このようにしてシリンダ42の中心軸方向先端から車両下側へ抜けた移動部材48は、カバープレート52の内側でカバープレート52のガイド壁56に案内されて移動される。これによって、移動部材48が回転部材28の第1フランジ32と第2フランジ38との間に入り、回転部材28の第1係合歯34又は第2係合歯40が移動部材48の軸方向先端によって車両下側へ押圧されると、回転部材28が巻取方向へ回転される。
さらに、回転部材28の複数の第1係合歯34又は第2係合歯40のうち、移動部材48の軸方向先端に押圧された第1係合歯34又は第2係合歯40よりも引出方向側の第1係合歯34又は第2係合歯40は、回転部材28の巻取方向への回転によって移動部材48の外周面から移動部材48の径方向中央側へ食込み又は突刺さる。
このように、回転部材28の第1係合歯34又は第2係合歯40が食込み又は突刺さった移動部材48が車両下側へ移動されることによって、回転部材28が更に巻取方向へ回転される。回転部材28の巻取方向への回転は、トーションバー24を介してスプール18に伝わり、スプール18が巻取方向へ回転される。これによって、ウェビング20がスプール18に巻取られて、ウェビング20による乗員の拘束力が増加される。
ところで、本ウェビング巻取装置10では、ロックベース60(すなわち、回転部材28の第2回転部36)の厚肉部72からは制限片82が延出されており、ロックパウル68のラップ部84の一部は、制限片82の車両後側に配置されている。このため、ロックパウル68が車両前側へ変位しようとすると、ロックパウル68のラップ部84は、制限片82へ当接される。
これによって、ロックパウル68の車両前側への変位を制限できる。これによって、ロックパウル68の車両前後方向のガタつきを抑制できる。また、ロックパウル68の係合歯76がカバープレート52の底板54のラチェット孔62のラチェット歯へ係合された状態で、回転部材28と共に引出方向へ回転しようとするロックパウル68の係合歯76がカバープレート52のラチェット孔62のラチェット歯から受ける力によってロックパウル68が車両前側へ変位しようとする。
ここで、上記のように、ロックパウル68の車両前側への変位を制限片82によって制限できる。このため、ロックパウル68が車両前側へ変位することによるロックパウル68の係合歯76におけるカバープレート52のラチェット孔62のラチェット歯との噛合いの減少を抑制できる。
また、この制限片82は、ロックベース60(すなわち、回転部材28の第2回転部36)に一体成形される。このため、制限片82からの車両前側への押圧力に対する制限片82の機械的強度(例えば、曲げ強度)を高くできる。
一方、ロックパウル68が配置されるロックベース60のパウル配置部64及び傾斜部86は、回転部材28の軸方向にロックパウル68と対向される。ここで、パウル配置部64の車両前側及び傾斜部86のパウル配置部64側部分の車両前側には制限片82が配置されない。このため、ロックパウル68がロック方向へ回動される際に、ロックパウル68が車両前側へ変位されても、ロックパウル68においてパウル配置部64及び傾斜部86のパウル配置部64側部分と対向する部分の車両前側面が制限片82へ当接されることがない。このため、ロックパウル68が制限片82に当接されることでロックパウル68のロック方向への回動の円滑性が低下されることを抑制できる。
また、このようなロックベース60を有する回転部材28の第2回転部36は、例えば、ダイキャストによって一体成形される。ここで、このようなダイキャストでは、金型の母型の型割れ方向が回転部材28の中心軸方向に設定されると、第2回転部36のロックベース60における傾斜部86と制限片82との間の部分は、所謂「アンダーカット」になる。このため、ダイキャストによる第2回転部36の一体成形において、傾斜部86と制限片82との間の部分は、中子(コア)によって形成される。
ここで、傾斜部86は、傾斜部86の車両前側面は、回転部材28の径方向外側へ向けて車両後側へ変位して、パウル配置部64の車両前側面に対して車両後側へ離れるように傾斜される。このため、傾斜部86と制限片82との間隔は、回転部材28の径方向外側へ向けて大きくなる。このため、傾斜部86の傾斜は、ダイキャストによって回転部材28の第2回転部36が成形された際に、中子が傾斜部86と制限片82との間から回転部材28の径方向外側へ抜かれる際の抜き勾配になる。このため、ダイキャストによって第2回転部36が成形された際に、中子を傾斜部86と制限片82との間から容易に抜くことができる。
一方で、ロックベース60の傾斜部86のパウル配置部64側部分の車両前側には、制限片82が配置されない。このため、上記のように回転部材28の第2回転部36がダイキャストによって一体成形される場合、傾斜部86のパウル配置部64側部分は、アンダーカットにならず、傾斜部86のパウル配置部64側部分はパウル配置部64と共に金型の母型によって成形される。
ところで、ダイキャストによって一体成形されたロックベース60の第2回転部36には、金型の母型と中子との境界部分にパーティングライン88が形成される。ここで、本実施の形態では、傾斜部86のパウル配置部64側部分はパウル配置部64と共に金型の母型によって成形される。このため、パーティングライン88は、傾斜部86の車両前側面に形成される。上記のように、傾斜部86の車両前側面は、パウル配置部64の車両前側面に対して車両後側へ離れるように傾斜される。このため、パーティングライン88の全て又は大部分は、パウル配置部64の車両前側面よりも車両後側に形成される。
また、ロックパウル68は、ロックベース60のパウル配置部64と傾斜部86とを跨いで配置され、ロックパウル68の車両後側面は、パウル配置部64の車両前側面へ当接される。このため、ロックパウル68の車両後側面は、傾斜部86の車両前側面及びパーティングライン88の先端(車両前側端)から車両前側へ離れる。このため、ロックパウル68がパーティングライン88へ当接されることによるロックパウル68のロック方向への回動の円滑性の低下を抑制できる。
なお、本実施の形態では、ロックベース60の傾斜部86の車両前側面における回転部材28の径方向内側端は、ロックベース60のパウル配置部64に対して回転部材28の中心軸線方向に同じ位置に配置されていた。しかしながら、傾斜部86の車両前側面における回転部材28の径方向内側端は、ロックベース60のパウル配置部64に対して回転部材28の中心軸線方向にずれて配置されてもよい。
また、本実施の形態では、ロックベース60の制限片82は、ロックベース60の傾斜部86のパウル配置部64とは反対側部分と対向していた。しかしながら、制限片82は、傾斜部86全体と対向する構成でもよいし、さらには、制限片82がパウル配置部64の一部と対向する構成であってもよい。