JP6764245B2 - フィルム及び積層体 - Google Patents

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Description

本発明は、樹脂組成物からなるフィルム、及び該フィルムを被着体に積層してなる積層体に関する。
熱可塑性樹脂からなるフィルムは二次加工が容易であるため、加飾用途等に広く用いられている。中でも、アクリル系樹脂フィルムは、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするアクリル系重合体からなり、透明性が高く、透湿性も低いため、光学用途や加飾用途等に広く使用されている。熱可塑性樹脂からなるフィルムは接着剤を介して被着体に積層されることも多い。例えば、熱可塑性樹脂からなるフィルムを偏光子に積層することで偏光板を作製できる。
積層時に使用される接着剤として、ポリビニルアルコール水溶液等の水系接着剤がある(特許文献1)。水系接着剤は溶媒として水を含有する。水系接着剤を用いた係る積層方法は溶媒の乾燥のために加熱を要するため、積層体に反りが生じやすい。また、車載用途等で用いられる積層体は例えば100℃以上の高温環境に置かれることがあり、この場合にも積層体に反りが生じやすい。これらの反りは熱可塑性樹脂からなるフィルムが加熱されて伸縮することで生じる。接着剤の溶媒が有機溶媒である場合も同様の課題が生じる。
上記課題を解決するため、接着剤の硬化に溶媒の乾燥を必要としない接着剤を用いることができ、例えば活性エネルギー線硬化型接着剤が挙げられる。係る活性エネルギー線硬化型接着剤として、特許文献2はヒドロキシ基を有するN−置換アミド系単官能性モノマーとアクリレート系多官能モノマーとを含有する接着剤を開示している。特許文献3はエポキシ化合物とオキセタン化合物と光カチオン重合開始剤とを含有する接着剤を開示している。特許文献4は重合性モノマーを含有する活性エネルギー線硬化型接着剤を開示している。
特開2007−127893号公報 特開2010−078700号公報 特開2010−209126号公報 特開2014−232251号公報
しかしながら、熱可塑性樹脂からなるフィルムに活性エネルギー線硬化型接着剤を塗布して積層体を製造する場合、該活性エネルギー線硬化型接着剤を塗布したあと、ある程度の時間、例えば1分間以上の間を置いて活性エネルギー線を照射しないと十分な接着性を発現しなかった。そのため、活性エネルギー線硬化型接着剤の塗布から活性エネルギー線の照射まで時間が掛かり、積層体の生産性に課題があった。
本発明は、加熱寸法変化が小さく、活性エネルギー線硬化型接着剤を塗布したあと短時間を置いて活性エネルギー線を照射しても接着性に優れるフィルムを提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、熱可塑性樹脂、並びに特定の組成、分子量およびガラス転移温度を有するアクリル系共重合体を含有する樹脂組成物からなるフィルムは、加熱寸法変化が小さく、活性エネルギー線硬化型接着剤の浸透性に優れ、該フィルムに活性エネルギー線硬化型接着剤を塗布すると、短時間しか置かずに活性エネルギー線を照射しても優れた接着力を発現することを見出した。
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、以下の態様を包含する発明を完成するに至った。
[1] 樹脂組成物からなるフィルムであって、
前記樹脂組成物は、熱可塑性樹脂85〜95質量%及びアクリル系共重合体(B)5〜15質量%を含有し、
前記アクリル系共重合体(B)は、
メタクリル酸メチル単位80〜97質量%及びアクリル酸エステル単位3〜20質量%からなる共重合体であり、
ガラス転移温度(Tg[℃])が90〜115℃であり、
数平均分子量(Mb)が15,000〜50,000である、
フィルム。
[2] 前記アクリル系共重合体(B)の数平均分子量(Mb)及びガラス転移温度(Tg[℃])が下記式(1)を満たす、[1]のフィルム。
365≦(Mb/1,000)+3.5×Tg≦420 ・・・(1)
[3] 前記熱可塑性樹脂はメタクリル系樹脂(A)であり、
前記メタクリル系樹脂(A)は、
メタクリル酸メチル単位を95質量%以上含有し、
数平均分子量(Ma)が50,000超である、
[1]又は[2]のいずれかのフィルム。
[4] 前記熱可塑性樹脂が、前記樹脂組成物100質量%に対して弾性体粒子10〜35質量%を含有する、[1]〜[3]のいずれかのフィルム。
[5] 前記弾性体粒子は、数平均粒径が150〜350nmである、[4]のフィルム。
[6] 前記弾性体粒子は、アクリル系弾性架橋重合体を含有するアクリル系弾性体粒子(C)であり、
前記アクリル系弾性架橋重合体は、アクリル酸アルキルエステル単位50質量%以上からなる、[4]又は[5]のフィルム。
[7] 前記フィルムを100℃で30分間加熱した際、前記フィルムの加熱寸法変化が−2.0〜+2.0%である、[1]〜[6]のいずれかのフィルム。
[8] 300μm以下の厚さを有する、[1]〜[7]のいずれかのフィルム。
[9] 光学フィルムである、[1]〜[8]のいずれかのフィルム。
[10] [1]〜[8]のいずれかのフィルムが、活性エネルギー線硬化樹脂を介して、被着体に接着されている、積層体。
[11] 前記被着体が偏光子であり、偏光板として機能する、[10]の積層体。
本発明により、加熱寸法変化が小さく、活性エネルギー線硬化型接着剤の浸透性に優れ、該フィルムに活性エネルギー線硬化型接着剤を塗布すると、短時間しか置かずに活性エネルギー線を照射しても優れた接着力を発現するフィルムを提供することができる。
本発明の一実施形態である、弾性体粒子を含有する樹脂組成物からなるフィルムの断面図である。 一実施形態である、二層を有する弾性体粒子の断面図である。 一実施形態である、三層を有する弾性体粒子の断面図である。 本発明の一実施形態である、二層フィルムの断面図である。 アクリル系共重合体(B)の数平均分子量(Mb)とガラス転移温度(Tg[℃])との関係を表すグラフである。
以下、本発明を適用した実施形態の一例について説明する。なお、本明細書で特定する数値は、後述する実施例に記載した方法により測定したときに得られる値を示す。また、本明細書で特定する数値「A〜B」とは、数値Aおよび数値Aより大きい値であって、且つ数値Bおよび数値Bより小さい値を満たす範囲を示す。また、本発明の「フィルム」とは、厚さ等により限定されるものではなく、JISに定義される「シート」も含むものとする。また、本発明に記載する「A単位」とは、「Aに由来する構造単位」を意味する。
樹脂組成物からなる本発明のフィルムは、被着体への接着に好適に用いられる。以下、本発明のフィルムを単にフィルムという場合がある。接着は接着剤により行われる。接着によりフィルムと被着体とからなる積層体が得られる。
[フィルムを構成する樹脂組成物]
本発明のフィルムは、熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物からなる。樹脂組成物は、樹脂組成物を100質量%として、85〜95質量%の熱可塑性樹脂を含有し、好ましくは87〜92質量%の熱可塑性樹脂を含有する。
樹脂組成物はさらにアクリル系共重合体(B)を5〜15質量%の範囲で含有し、好ましくは8〜13質量%の範囲で含有する。樹脂組成物はこれらを溶融状態で均質に混ぜ合わせたものであることが好ましい。5質量%以上のアクリル系共重合体(B)は、フィルムに対する活性エネルギー線硬化型接着剤の浸透性を高め、活性エネルギー線硬化型接着剤を塗布したあと短時間を置いて活性エネルギー線を照射した場合でも、活性エネルギー線硬化型接着剤による、被着体へのフィルムの接着強度を高めることができる。15質量%以下のアクリル系共重合体(B)は、フィルムの耐熱性を高めることができる。
[フィルムの特性]
上記フィルムは優れた靭性を備える。このためフィルムを偏光子の保護フィルムとして用いることで偏光板を作ることができる。また、フィルムを賦形して加飾用途に用いることができる。
上記フィルムは加熱寸法変化が小さく耐熱性に優れるため、例えば車載用途等、100℃以上となるような高温環境下でも変形が小さい。
上記フィルムはまた、フィルムに対する活性エネルギー線硬化型接着剤の浸透性に優れる。ここで接着剤の浸透性とは、フィルムに対する接着剤の含浸速度のことをいう。このため、フィルムを活性エネルギー線硬化型接着剤で被着体と接着した場合に、短時間で被着体とフィルムとの間の接着力を高めることができる。さらに、接着剤以外の層をフィルムに付与せずとも、フィルムと被着体との間に強い接着力をもたらすことができる。このため積層体を効率よく生産することができる。
本実施形態のフィルムの好ましい態様を以下に示す。
[熱可塑性樹脂の選択]
熱可塑性樹脂は、アクリル系共重合体(B)以外であれば特に制限されない。熱可塑性樹脂として、例えばノルボルネン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、アクリル系共重合体(B)を除く(メタ)アクリル系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。また、これらのうち2種以上をブレンドした樹脂でもよい。熱可塑性樹脂を、アクリル系共重合体(B)を除く(メタ)アクリル系樹脂とすることで、アクリル系共重合体(B)との相溶性、透明性に優れる樹脂組成物を得られる。(メタ)アクリル系樹脂はメタクリル酸メチル単位を主体とするメタクリル系樹脂(A)が好ましい。
[メタクリル系樹脂(A)の組成]
メタクリル系樹脂(A)は、メタクリル酸メチル単位を95質量%以上含有することが好ましい。これによりフィルムの耐熱性及び表面硬度をより高めることができる。メタクリル系樹脂(A)はさらに5質量%未満のアクリル酸アルキルエステル単位を含有してもよい。メタクリル系樹脂(A)はアクリル酸アルキルエステル単位を含有しなくてもよい。メタクリル系樹脂(A)の好ましい組成において、メタクリル酸メチル単位が96質量%以上、且つアクリル酸エステル単位が0〜4質量%の範囲である。より好ましい組成において、メタクリル酸メチル単位が98質量%以上、且つアクリル酸エステル単位が0〜2質量%の範囲である。
アクリル酸アルキルエステル単位としては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。中でも、アクリル酸メチル又はアクリル酸ブチルを含有するメタクリル系樹脂(A)を含有する樹脂組成物からなるフィルムは、これらの代わりに他のアクリル酸アルキルエステル単位を含むメタクリル系樹脂(A)からなるフィルムよりも、耐熱性及び成形性に優れ好ましい。
また、メタクリル系樹脂(A)は、三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)が好ましくは45〜65%の範囲であり、より好ましくは50〜65%での範囲である。係るシンジオタクティシティが45%以上であることで、フィルムの耐熱性及び耐薬品性をより優れたものとすることができる。
ここで、上記シンジオタクティシティ(rr)とは、三連子が有する2つの二連子が、ともにラセモ(rrと表記する)である割合を百分率で表したものである。三連子とは連続する3つの構造単位の連鎖(triad)である。二連子とは連続する2つの構造単位の連鎖(diad)である。なお、メタクリル系樹脂(A)の構造単位の連鎖(二連子、diad)において、構造単位の立体配置が、構造単位間で同じものをメソ(meso、m)と称する。構造単位の立体配置が、構造単位間で異なるものをラセモ(racemo、r)と称する。
上記シンジオタクティシティ(rr)[%]を算出するには、まず重水素化クロロホルム中、30℃でポリマー分子のH−NMRスペクトルを測定する。次に、そのスペクトルから、テトラメチルシラン(TMS)を0ppmとした際の、0.6〜0.95ppmの領域の面積(X)と0.6〜1.35ppmの領域の面積(Y)とを算出する。シンジオタクティシティ(rr)[%]は、式:(X/Y)×100で表される。
[メタクリル系樹脂(A)の数平均分子量]
メタクリル系樹脂(A)の数平均分子量(Ma)は、好ましくは25,000〜75,000の範囲であり、より好ましくは30,000〜70,000の範囲であり、さらに好ましくは35,000〜60,000の範囲である。メタクリル系樹脂(A)の数平均分子量(Ma)は50,000以上であることが特に好ましい。数平均分子量(Ma)を25,000以上とすることで、フィルム自体の引裂き強度が向上する。このため、積層体の製造時にフィルムを剥がして再度貼り合わせることができるようになり、積層体のリワーク性及び歩留まりが向上する。数平均分子量(Ma)を75,000以下とすることでメタクリル系樹脂(A)を含有する組成物の流動性が向上するため、樹脂組成物を成形してフィルムを製造する際の加工性が向上する。なお、メタクリル系樹脂(A)の数平均分子量(Ma)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定した値である。GPCでは標準ポリスチレンの分子量を基準として、これらの分子量を算出する。
[メタクリル系樹脂(A)の製造]
メタクリル系樹脂(A)の製造は、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等により行うことができる。塊状重合は連続塊状重合が好ましい。重合反応は重合反応原料に、重合開始剤を添加することによって開始される。重合反応原料とは上記メタクリル酸メチル単位及びその他の構造単位を構成する単量体である。また、連鎖移動剤を重合反応原料に添加することによって、得られるメタクリル系樹脂(A)の分子量を調節できる。なお、重合反応原料中の溶存酸素量は、好ましくは10ppm以下、より好ましくは5ppm以下、さらに好ましくは4ppm以下、特に好ましくは3ppm以下である。溶存酸素量がこのような範囲にある重合反応原料を用いると、フィルムが透明性に優れる。
重合開始剤は、反応性ラジカルを発生するものであれば特に限定されない。重合開始剤として、例えばtert−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ヘキシルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、ベンゾイルパーオキシド 、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等が挙げられる。これらのうち、tert−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)が好ましい。
重合開始剤は所定の1時間半減期温度を有することが好ましい。係る温度は好ましくは60〜140℃の範囲であり、より好ましくは80〜120℃の範囲である。また、塊状重合に用いられる重合開始剤は所定の水素引抜き能を有することが好ましい。係る水素引抜き能は20%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、5%以下がさらに好ましい。これら重合開始剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、重合開始剤の添加量や添加方法等は、目的に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものでない。例えば、塊状重合において、重合開始剤の量は、重合反応原料100質量部に対して、好ましくは0.0001〜0.02質量部の範囲であり、より好ましくは0.001〜0.01質量部の範囲であり、さらに好ましくは0.005〜0.007質量部の範囲である。
なお、上記水素引抜き能は、α−メチルスチレンダイマーを使用したラジカルトラッピング法、即ちα−メチルスチレンダイマートラッピング法によって測定することができる。係る方法は、次のようにして行われる。まず、重合開始剤とα−メチルスチレンダイマーとの共存下で重合開始剤を開裂させることでラジカル断片を生成する。α−メチルスチレンダイマーはラジカルトラッピング剤として働く。生成したラジカル断片のうち、水素引抜き能が低いラジカル断片はα−メチルスチレンダイマーに捕捉される。このとき、係るラジカル断片はα−メチルスチレンダイマーの二重結合に付加される。一方、水素引抜き能が高いラジカル断片はシクロヘキサンから水素を引き抜くことで、シクロヘキシルラジカルを発生させる。シクロヘキシルラジカルがα−メチルスチレンダイマーに捕捉されることでシクロヘキサン捕捉生成物を生成する。このときシクロヘキシルラジカルがα−メチルスチレンダイマーの二重結合に付加される。水素引抜き能が高いラジカル断片の発生量は、シクロヘキサン、又はシクロヘキサン捕捉生成物の量を定量することで求められる。水素引抜き能は、理論的なラジカル断片発生量に対する、水素引抜き能が高いラジカル断片の発生量の割合(モル分率)である。
連鎖移動剤としては、例えばn−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、1,4−ブタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、エチレングリコールビスチオプロピオネート、ブタンジオールビスチオグリコレート、ブタンジオールビスチオプロピオネート、ヘキサンジオールビスチオグリコレート、ヘキサンジオールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリス−(β−チオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート等のアルキルメルカプタン類等が挙げられる。これらのうちn−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等の単官能アルキルメルカプタンが好ましい。これら連鎖移動剤は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。連鎖移動剤の使用量は、重合反応原料100質量部に対して、好ましくは0.1〜1質量部の範囲であり、より好ましくは0.15〜0.8質量部の範囲であり、さらに好ましくは0.2〜0.6質量部の範囲であり、特に好ましくは0.2〜0.5質量部の範囲である。また、連鎖移動剤の使用量は、重合開始剤100質量部に対して、好ましくは2,500〜7,000質量部の範囲であり、より好ましくは3,500〜4,500質量部の範囲であり、さらに好ましくは3,800〜4,300質量部の範囲である。
[アクリル系共重合体(B)の組成]
アクリル系共重合体(B)は、メタクリル酸メチル単位及びアクリル酸エステル単位からなる。アクリル系共重合体(B)はメタクリル酸メチル単位を80〜97質量%の範囲で含有し、アクリル酸エステル単位を3〜20質量%の範囲で含有する。アクリル系共重合体(B)の好ましい組成は、メタクリル酸メチル85〜93質量%、かつアクリル酸エステル7〜15質量%である。メタクリル酸メチルの組成比は、86、87、88、89、90、91及び92質量%のいずれかとすることができる。アクリル酸エステルの組成比は、8、9、10、11、12、13、14及び15質量%のいずれかとすることができる。係る組成を有するアクリル系共重合体(B)を含有するフィルムは、耐熱性と活性エネルギー線硬化型接着剤の浸透性とのバランスに優れる。
[アクリル系共重合体(B)のガラス転移温度]
アクリル系共重合体(B)の有するガラス転移温度(Tg[℃])は90〜115℃の範囲であり、好ましくは95〜110℃の範囲である。ここでセルシウス度(℃)は、ケルビン(K)で表した熱力学温度の値から273.15を減じたものである。ガラス転移温度(Tg[℃])は、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108及び109℃のいずれかとすることができる。ガラス転移温度(Tg[℃])が90℃以上であることで、フィルムの耐熱性が向上する。ガラス転移温度(Tg[℃])が115℃以下であることで、フィルムに対する活性エネルギー線硬化型接着剤の浸透性が高まり、活性エネルギー線硬化型接着剤を塗布したあと短時間を置いて活性エネルギー線を照射した場合でも、積層体の接着強度を高めることができる。
[アクリル系共重合体(B)の数平均分子量]
アクリル系共重合体(B)の数平均分子量(Mb)は15,000〜50,000の範囲であり、好ましくは15,000〜40,000の範囲であり、より好ましくは25,000〜35,000の範囲である。数平均分子量(Mb)は、2.6×10、2.7×10、2.8×10、2.9×10、3.0×10、3.1×10、3.2×10、3.3×10及び3.4×10のいずれかとすることができる。数平均分子量(Mb)を15,000以上とすることでフィルムの耐熱性を向上させることができる。数平均分子量(Mb)を50,000以下とすることで活性化エネルギー線硬化型接着剤の浸透性を高めることができる。このためフィルムと被着体との間の接着強度及び積層体の生産性を向上させることができる。
[アクリル系共重合体(B)のアクリル酸エステル単位]
アクリル系共重合体(B)のアクリル酸エステル単位を形成するアクリル酸エステルとしては、例えばアルキル、シクロアルキル、フェニル及びこれらの誘導体とアクリル酸とからなるエステルが挙げられる。アクリル系共重合体(B)は、アクリル酸エステル単位として、これらを2種以上含んでも良い。係るアクリル酸エステルの単量体の例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸n−ラウリル、アクリル酸ヒドロキシエチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル等が挙げられる。中でも、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル及びアクリル酸ベンジルのいずれかとすることが好ましい。この時、活性エネルギー線硬化型接着剤による接着性、フィルムの耐熱性、及び積層体製造時の取扱い性等のバランスに優れる。また、フィルムを被着体に接着する前に、フィルムをコロナ処理してもよい。この場合、アクリル酸エステルをアクリル酸シクロヘキシル又はアクリル酸tert−ブチルの少なくともいずれかとすることで、活性エネルギー線硬化型接着剤とフィルムの接着性がより向上する。
[アクリル系共重合体(B)の製造]
アクリル系共重合体(B)の重合反応は、公知の塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等により行うことができる。アクリル系共重合体(B)は、後述する弾性体粒子や添加剤の分散性を向上させる観点から、乳化重合で製造することが好ましい。また、アクリル系共重合体(B)を含有するエマルジョンを、弾性体粒子を含有するエマルジョンと混合した後、凝固させ、取り出すことがより好ましい。
また、アクリル系共重合体(B)を含有するエマルジョンを、弾性体粒子を含有するエマルジョンと混合した後、アクリル系共重合体(B)および弾性体粒子を凝固させ、取り出す場合、エマルジョン中のアクリル系共重合体(B)の数平均粒径は、弾性体粒子の数平均粒径を基準として、その1/2〜1/10の範囲とすることが好ましい。また乳化剤の量を調整することで係る粒径を得ることが好ましい。係る粒径を有するアクリル系共重合体(B)を用いることで、弾性体粒子の分散性をより高めることができる。
[乳化重合に使用される乳化剤]
アクリル系共重合体(B)の乳化重合に用いる乳化剤の種類及び量は適宜選択できる。係る選択により、アクリル系共重合体(B)の粒径を調節することができる。乳化剤の種類としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤等がある。これらの乳化剤を単独で又は2種以上を組み合せて用いることができる。本実施形態ではアニオン界面活性剤が好ましい。
アニオン界面活性剤としては、例えばステアリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、N−ラウロイルザルコシン酸ナトリウム等のカルボン酸塩;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩;モノ−n−ブチルフェニルペンタオキシエチレンリン酸ナトリウム等のリン酸エステル塩;ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム、ポリオキシエチレンジデシルエーテル酢酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩等が挙げられる。中でもポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウムを乳化剤として用いることで、重合中に生成する凝集物の量を著しく低減することができる。またアクリル系共重合体(B)において加熱による着色が減少し、フィルムが透明性に優れる。
乳化重合によりアクリル系共重合体(B)を製造した場合、乳化剤に起因する化合物が不純物として残る場合がある。係る不純物は、フィルムの耐熱性を低下させるため、200℃かつ50kg・f・cmの条件におけるアクリル系共重合体(B)のエマルジョンの溶融粘度(ηa)が一定となるまで、アクリル系共重合体(B)のエマルジョンを洗浄することが好ましい。アクリル系共重合体(B)の好ましい溶融粘度(ηa)は500〜2,000Pa・sの範囲である。なお溶融粘度(ηa)はアクリル系共重合体(B)の分子設計によっても調節できる。このため、分子設計に応じて洗浄時に目標とする溶融粘度(ηa)を定めてもよい。
[乳化重合における他の重合開始剤の使用等]
アクリル系共重合体(B)の乳化重合に使用される重合開始剤は特に限定されない。重合開始剤として、例えば過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物;過酸化水素−第一鉄塩系、過硫酸カリウム−酸性亜硫酸ナトリウム系及び過硫酸アンモニウム−酸性亜硫酸ナトリウム系等の水溶性レドックス系開始剤;クメンハイドロパーオキシド−ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート系、及びtert−ブチルハイドロパーオキシド−ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート系等の水溶性及び油溶性を併せ持つレドックス系の開始剤が用いられる。
また、必要に応じてアクリル系共重合体(B)の乳化重合に連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤としては、例えばn−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、1,4−ブタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、エチレングリコールビスチオプロピオネート、ブタンジオールビスチオグリコレート、ブタンジオールビスチオプロピオネート、ヘキサンジオールビスチオグリコレート、ヘキサンジオールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリス−(β−チオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート等のアルキルメルカプタン類等が挙げられる。これらのうちn−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等の単官能アルキルメルカプタンが好ましい。
アクリル系共重合体(B)の乳化重合において、単量体、乳化剤、開始剤、連鎖移動剤等の添加は、公知の方法を任意に選択して実施してもよい。係る方法として一括添加法、分割添加法、連続添加法等が挙げられる。
[Mb及びTgの間の関係]
アクリル系共重合体(B)の数平均分子量(Mb)及びガラス転移温度(Tg[℃])は、下記関係式(1)を満たすことが好ましい。
365≦(Mb/1000)+3.5×Tg≦420 ・・・(1)
関係式(1)を満たすアクリル系共重合体(B)は、フィルムの物性と活性エネルギー線硬化型接着剤の浸透性とを高い水準で調和させることができる。上記関係式(1)は、ガラス転移温度(Tg[℃])が高いときは数平均分子量(Mb)を小さくすべきことを示しており、ガラス転移温度(Tg[℃])が低いときは数平均分子量(Mb)を大きくすべきことを示している。(Mb/1000)+3.5×Tgの値をNとすると、Nを365以上とすることで、フィルムに対する活性エネルギー線硬化型接着剤の浸透性の低下を抑制しつつ、フィルムの耐熱性を高めることができる。また、Nを420以下とすることで、フィルムの耐熱性の低下を抑制しつつ、フィルムに対する活性エネルギー線硬化型接着剤の浸透性を高めることができる。
[弾性体粒子の樹脂組成物への添加]
熱可塑性樹脂は弾性体粒子を含有してもよい。図1に示すフィルム20は樹脂組成物からなる本発明のフィルムの一態様である。フィルム20は、耐衝撃性の観点から、弾性体粒子10又は13を含有する樹脂組成物17からなることが好ましい。なお、弾性体粒子成分19は、図2又は図3に示す弾性体粒子10又は13を、図1に示すように樹脂組成物17に混合した時の結果物である。図1〜3は例示であり、本実施形態の樹脂組成物にはいかなる構造の弾性体粒子を混合してもよく、また混合しなくてもよい。
[弾性体粒子の含有量]
樹脂組成物中の弾性体粒子の含有量は、樹脂組成物を100質量%として、好ましくは10〜35質量%の範囲であり、より好ましくは12〜30質量%の範囲であり、さらに好ましくは15〜25質量%の範囲である。係る含有量は、樹脂組成物に弾性体粒子を混合する前の、これらの質量に基づく。上記含有量が10質量%以上であることで、フィルムの耐衝撃性を向上できる。このため、フィルムの取扱性を向上できる。上記含有量が35質量%以下であることで、フィルムの表面硬度を高めることができる。
図1に示すように、弾性体粒子を含有する樹脂組成物からなるフィルムにおいて、弾性体粒子はその構造上、熱可塑性樹脂及びアクリル系共重合体(B)を含有する混合物18と区別して観察される。樹脂組成物及びフィルム20において、熱可塑性樹脂及びアクリル系共重合体(B)を含有する混合物18は溶融状態で、弾性体粒子成分19は非溶融状態、又は不完全な溶融状態で存在している。
図1に示すフィルム20では、弾性体粒子成分19を分散質、熱可塑性樹脂及びアクリル系共重合体(B)を含有する混合物18を分散媒として、分散系が成立している。樹脂組成物17が弾性体粒子10又は13を含有することにより、フィルム20の耐衝撃性が向上する。係るフィルム20は破断しにくいため、フィルム20及びこれを備える積層体の生産性を向上できる。また、フィルム20が破断して生じた屑による積層体の汚染を防止できる。
弾性体粒子10又は13としては、例えばオレフィン系弾性重合体、ジエン系弾性重合体、スチレン−ジエン系弾性共重合体、アクリル系弾性重合体が挙げられる。本明細書ではアクリル系弾性架橋重合体を含有する弾性体粒子をアクリル系弾性体粒子(C)という。アクリル系弾性体粒子(C)は、他の弾性体を用いた弾性体粒子に比べて、フィルムの表面硬度、成形性、耐光性及び透明性をより向上させることができる。
[アクリル系弾性体粒子(C)の組成及び構造]
アクリル系弾性架橋重合体は、アクリル酸アルキルエステル単位50質量%以上からなることが好ましく、アクリル酸アルキルエステルの単独重合体であってもよい。アクリル系弾性架橋重合体を形成するアクリル酸アルキルエステルの単量体において、そのアルキル基の炭素数は好ましくは4〜8の範囲であり、例えばアクリル酸n−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸メチルブチル、アクリル酸エチルプロピル、アクリル酸ジメチルプロピル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。中でもアクリル酸n−ブチルが好ましい。
アクリル系弾性架橋重合体は、アクリル酸アルキルエステルの単量体50質量%以上とアクリル酸アルキルエステル以外の単量体50質量%以下との共重合体であってもよい。アクリル系弾性架橋重合体を形成するアクリル酸アルキルエステル以外の単量体の例としては、メタクリル酸メチルやメタクリル酸エチル等のメタクリル酸アルキルエステル;スチレンやアルキルスチレン等のスチレン系単量体;アクリロニトリルやメタクリロニトリルのような不飽和ニトリル等の単官能単量体;(メタ)アクリル酸アリルや(メタ)アクリル酸アリル等の不飽和カルボン酸のアルケニルエステル;マレイン酸ジアリル等の二塩基酸のジアルケニルエステル;アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート等のグリコール類の不飽和カルボン酸ジエステル等の多官能単量体が挙げられる。中でもスチレンが好ましい。
アクリル系弾性架橋重合体を含有するアクリル系弾性体粒子(C)は、二層、三層、又は三層より多くの層を有する複層構造の粒子であることが好ましい。
また、図2に示す少なくとも二層を有する弾性体粒子10において、アクリル系弾性架橋重合体からなる内層11の外側にメタクリル酸アルキルエステルを主体とする重合体の外層12が配置されていることが好ましい。内層11は最内層でもよく、最内層でなくてもよい。また、外層12は最外層でもよく、最外層でなくてもよい。
図3に示す少なくとも三層を有する弾性体粒子13において、アクリル系弾性架橋重合体からなる中間層15の外側及び内側にメタクリル酸アルキルエステルを主体とする重合体の外層16及び内層14が配置されていることが好ましい。内層14は最内層でもよく、最内層でなくてもよい。また、外層16は最外層でもよく、最外層でなくてもよい。
アクリル系弾性体粒子(C)を形成する、メタクリル酸アルキルエステルを主体とする重合体は、上述のメタクリル系樹脂(A)と同じものでもよい。係る重合体は、例えばメタクリル酸メチルを主体とする重合体でもよい。図2及び3に示す弾性体粒子10及び13において、最外層がメタクリル酸メチルを主体とする重合体の層でもよい。また係る層の内側にアクリル系弾性架橋重合体の層が配置されていてもよい。
[弾性体粒子の大きさ]
最外層が外層12又は外層16である弾性体粒子10又は13を、上記メタクリル系樹脂(A)及びアクリル系共重合体(B)を含有する混合物18に配合する場合、図1に示すように弾性体粒子10又は13の最外層となっている外層12又は外層16と混合物18との界面において、互いの成分が混じり合うため、係る弾性体粒子10又は13は、最外層である外層12又は外層16が観察されないことがある。観察は、例えばフィルムの断面を酸化ルテニウムによって染色し、電子顕微鏡等により該フィルム断面を観察することで行うことができる。このとき、該フィルムの断面に存在する弾性体粒子中のアクリル系弾性架橋重合体が染色されて観察される。例えば、図1に示すように、弾性体粒子10を混合物18中に配合した場合、内層11のアクリル系弾性架橋重合体部分が染色される。このため弾性体粒子10は単層構造の粒子として観察される。係る粒子が弾性体粒子成分19を構成している。また、図1に示すように、弾性体粒子13を混合物18中に配合した場合、中間層15のアクリル系弾性架橋重合体部分が染色される。このため弾性体粒子13は二層構造又は単層構造の粒子として観察される。係る粒子が弾性体粒子成分19を構成している。
弾性体粒子の数平均粒径は、好ましくは150〜350nmの範囲であり、より好ましくは200〜300nmの範囲である。係る数平均粒径が150nm以上であることで、フィルムの耐衝撃性が向上する。係る数平均粒径が350nm以下であることで、フィルムの透明性が向上する。なお、フィルム20の断面を酸化ルテニウムで染色し、電子顕微鏡で観察したときの、略円形に観察される弾性体粒子の染色部分の外径の平均値を弾性体粒子の数平均粒径とする。
アクリル系弾性架橋重合体を含有する弾性体粒子は、例えば特公昭55−27576号公報に記載の方法により、製造することができる。
[樹脂組成物への弾性体粒子の配合方法]
樹脂組成物を構成する熱可塑性樹脂及びアクリル系共重合体(B)は弾性体粒子と同時に混合してもよい。また、予め熱可塑性樹脂及びアクリル系共重合体(B)を混合して混合物を作製し、該混合物に弾性重合体を配合してもよい。混合は溶融混練等により行ってもよい。さらに、弾性体粒子を得た後、その存在下で熱可塑性樹脂の原料となる単量体を重合させて、熱可塑性樹脂を生成し、これにアクリル系共重合体(B)を配合することで、樹脂組成物を得てもよい。
[樹脂組成物への添加剤]
樹脂組成物は、必要に応じて、顔料、染料、着色剤、加工助剤、蛍光増白剤、分散剤、熱安定剤、光安定剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、酸化防止剤、滑剤、溶剤等を含有してもよい。
紫外線吸収剤は400nm以下の紫外線を吸収する。このため、フィルムの耐候性が向上する。紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、アクリロニトリル系紫外線吸収剤等の公知のものが使用可能である。中でも、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,4−ジ−tert−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン等が好適に用いられる。これらの中でも、特に2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]が好ましい。
フィルムを偏光子の保護フィルムとして用いる場合、紫外線吸収剤の含有量は、フィルムの波長370nm以下の光の透過率を考慮して選択する。係る透過率が、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは2%以下となる範囲から紫外線吸収剤の濃度を選択することができる。樹脂組成物に紫外線吸収剤を配合する方法は制限されない。係る方法としては、例えば紫外線吸収剤を予め熱可塑性樹脂又は樹脂組成物中に配合する方法;樹脂組成物の溶融押出成形時に直接供給する方法等が挙げられる。
赤外線吸収剤としては、例えばニトロソ化合物及びその金属錯塩;シアニン系化合物;スクワリリウム系化合物;チオールニッケル錯塩系化合物;フタロシアニン系化合物;ナフタロシアニン系化合物;トリアリルメタン系化合物;イモニウム系化合物;ジイモニウム系化合物;ナフトキノン系化合物;アントラキノン系化合物;アミン系化合物;アミニウム塩系化合物;カーボンブラック;酸化インジウムスズ;酸化アンチモンスズ;周期表4A、5A又は6A族に属する金属の酸化物、炭化物、ホウ化物等の化合物;等を挙げることができる。これらの赤外線吸収剤としては、赤外線全体を吸収できるものを選択することが好ましい。赤外線全体の波長は約800〜1,100nmの範囲に含まれる。赤外線全体を吸収するために、2種類以上の赤外線吸収剤を併用することも好ましい。フィルムを偏光子の保護フィルムとして用いる場合、赤外線吸収剤の含有量は、フィルムにおける800nm以上の波長の光線の透過率が10%以下となるように調整してもよい。
[フィルムの層構成]
フィルムは1、2、3及び4個以上の層を有する単層又は複層フィルムである。フィルムが複層である場合、少なくとも一層が上述の樹脂組成物からなる。他の層の組成は限定されない。樹脂組成物からなる層及び他の層において弾性体粒子は含まれていてもよく、含まれていなくてもよい。一例として、図4に示す二層フィルム21は弾性体粒子成分19を含む上層及び弾性体粒子成分19を含まない下層を有する。
フィルムを被着体と積層する場合、熱可塑性樹脂およびアクリル系共重合体(B)を含有する樹脂組成物からなる層に活性エネルギー線硬化型接着剤を塗布することが好ましい。これにより活性エネルギー線硬化型接着剤がフィルムに速やかに浸透し、効率的に接着強度を向上できる。
[フィルムの厚さ]
フィルムの厚さは好ましくは300μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは80μm以下、特に好ましくは40〜80μmの範囲である。フィルムが複層フィルムである場合、樹脂組成物からなる層の厚さは、フィルム全体の厚さの20〜80%の範囲であることが好ましい。熱可塑性樹脂およびアクリル系共重合体(B)を含有する樹脂組成物からなる層が複数ある場合は、これらの層の厚さを合計した値が、複層フィルム全体の厚さの20〜80%の範囲であることが好ましい。
[フィルムの成形]
フィルムは、Tダイ法、インフレーション法、溶融流延法、カレンダー法等の公知の方法を用いて成形できる。Tダイ法では、樹脂組成物の溶融混練物をTダイから溶融状態で押し出す。
Tダイ法では、単軸あるいは二軸押出スクリューのついたエクストルーダ型溶融押出装置等が使用できる。溶融押出装置における溶融押出温度は好ましくは200〜300℃の範囲であり、より好ましくは220〜270℃の範囲である。係る装置を使用する場合、樹脂組成物の溶融混練を、減圧下で行うことが好ましい。減圧にはベントを使用する。また窒素気流下で溶融押出しを行うことも好ましい。これらの方法により、フィルムにおける意図しない着色を抑制できる。
押し出された溶融混練物の両面に鏡面ロール又は鏡面ベルトの表面を接触させてフィルムを成形することが好ましい。係る方法により良好な表面平滑性及び低ヘーズを有するフィルムが得られる。
上記鏡面ロール及び鏡面ベルトは、いずれも金属製であることが好ましい。押し出された溶融混練物の両面を鏡面ロール又は鏡面ベルトで加圧しながら、押し出された溶融混練物を挟むことが好ましい。係る挟み込みの圧力は、線圧で表すと、好ましくは10N/mm以上であり、より好ましくは30N/mm以上である。
フィルム状に押し出された溶融混練物の少なくとも一方において、上記鏡面ロール又は鏡面ベルトの表面の温度を60℃以上とすることが好ましい。さらに、押し出された溶融混練物の両方において、鏡面ロール又は鏡面ベルトの表面の温度を130℃以下とすることが好ましい。鏡面ロール又は鏡面ベルトの表面の温度を60℃以上とすることで、フィルムの表面平滑性を高めるとともに、ヘーズを低減できる。鏡面ロール又は鏡面ベルトの表面の温度を130℃以下とすることで、鏡面ロール又は鏡面ベルトの溶融混練物への密着を緩和でき、このため成形されたフィルムを鏡面ロール又は鏡面ベルトから引き剥がす際に、フィルムの表面が荒れることを抑制できる。このため、フィルムの表面平滑性を高めるとともに、ヘーズを低減できる。
[フィルムの耐熱性]
フィルムの加熱寸法変化は好ましくは−2.0〜2.0%の範囲であり、より好ましくは−1.0〜1.0%の範囲であり、さらに好ましくは−0.8〜0.8%の範囲であり、特に好ましくは−0.6〜0.6%の範囲である。フィルムの加熱寸法変化は、加熱前のフィルムの長さを100%として、フィルムを100℃で30分間加熱した際の、フィルムの長さの不可逆な変化の割合をいう。加熱寸法変化が正の値であれば、フィルムが収縮したことを示す。加熱寸法変化が負の値であれば、フィルムが伸長したことを示す。加熱寸法変化はJIS K 7133(ISO 11501)に記載の方法より測定できる。本明細書において加熱寸法変化が小さいとは、加熱寸法変化の絶対値が小さいことを意味する。
[フィルムの透湿度]
フィルムの透湿度は、10g・m−2・day−1以上、200g・m−2・day−1以下であることが好ましい。係る透湿度により、活性エネルギー線硬化型接着剤に対するフィルムの密着性を向上できる。透湿度とは、40℃、相対湿度(RH)92%の環境下で24時間放置した後のフィルムについて、JIS Z0208に記載のカップ法で測定した値である。
[フィルムの用途]
フィルムは光学フィルムや加飾フィルムとして用いることができる。接着剤を介してフィルムを被着体に接着することで積層体を形成する。被着体の一例は偏光子である。積層体の一例は偏光板である。接着剤は好ましくは活性エネルギー線硬化型接着剤である。活性エネルギー線硬化型接着剤により、溶媒の乾燥を必要とせず、また接着剤を塗布したあと短時間しか置かず活性エネルギー線を照射しても接着性に優れるため、積層体の生産性が向上する。
[活性エネルギー線硬化型接着剤]
活性エネルギー線硬化型接着剤の主成分は活性エネルギー線硬化性化合物である。係る化合物としては、例えば光ラジカル重合性化合物及び光カチオン重合性化合物が挙げられる。光ラジカル重合性化合物は、活性エネルギー線によりラジカル重合を起こして硬化する。係る化合物の例は、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基等の官能基を有する化合物である。光カチオン重合性化合物は、活性エネルギー線により光カチオン反応を起こして硬化する。係る化合物の例は、エポキシ基、オキセタン基、水酸基、ビニルエーテル基、エピスルフィド基、エチレンイミン基等の官能基を有する化合物である。
光ラジカル重合性化合物として、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等のヒドロキシアルキルアクリレート;2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート等のヒドロキシアリールアクリレート;2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸等のアクリル変性カルボン酸;トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート等のポリエチレングリコールジアクリレート;ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート等のポリプロピレングリコールジアクリレート;その他、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジアクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキシド変性ジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の多官能アクリレート;エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ネオペンチルグリコールのアクリル酸安息香酸混合エステル等その他のアクリレート;これらのメタクリレート体;等が挙げられる。
光カチオン重合性化合物として、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂に分類される化合物;脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、異節環状型エポキシ樹脂、多官能性エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂;水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂等のアルコール型エポキシ樹脂に分類される化合物;臭素化エポキシ樹脂等のハロゲン化エポキシ樹脂;ゴム変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、エポキシ基含有ポリエステル樹脂、エポキシ基含有ポリウレタン樹脂、エポキシ基含有アクリル樹脂等のエポキシ基を有する化合物;フェノキシメチルオキセタン、3,3−ビス(メトキシメチル)オキセタン、3,3−ビス(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−{[3−(トリエトキシシリル)プロポキシ]メチル}オキセタン、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、オキセタニルシルセスキオキサン、フェノールノボラックオキセタン、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン等のオキセタニル基を有する化合物が挙げられる。
光ラジカル重合性化合物であるとともに光カチオン重合性化合物である化合物はラジカル・カチオン両性モノマーともいう。係る両性モノマーとして、例えば(3−エチルオキセタン−3−イル)メチルアクリレート等が挙げられる。これらの活性エネルギー線硬化性化合物は、それぞれ単独で使用してもよいし、複数を組み合わせて使用してもよい。
活性エネルギー線硬化型接着剤に重合開始剤を配合することで、活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化反応効率を高めることができる。重合開始剤は、使用する活性エネルギー線の種類に合わせて選択される。重合開始剤としては、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ベンゾイン系、ベンゾインアルキルエーテル系等の光ラジカル重合開始剤;芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等の光カチオン重合開始剤;等が挙げられる。これらは一種単独で若しくは二種以上を組み合わせて用いることができる。
アセトフェノン系重合開始剤としては、例えば4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−tert−ブチル−ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエチル)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。
ベンゾインアルキルエーテル系重合開始剤としては、例えばベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等が挙げられる。
ベンゾフェノン系重合開始剤としては、例えばベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。
光カチオン重合開始剤は、光カチオン重合性化合物の光カチオン重合を効果的に開始及び進行させることができる。光カチオン重合開始剤は、波長300nm以上の活性エネルギー線で活性化されることが好ましい。光カチオン重合開始剤は、イオン性の光酸発生剤(Photo Acid Generator)でもよく、非イオン性の光酸発生剤でもよい。
イオン性の光酸発生剤は、特に限定されるものではない。係る光酸発生剤として、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ハロニウム塩、芳香族スルホニウム塩等のオニウム塩類;鉄−アレン錯体、チタノセン錯体、アリールシラノール−アルミニウム錯体等の有機金属錯体類;テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等の嵩高い対アニオンを有する化合物が挙げられる。これらのイオン性の光酸発生剤は、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
上記イオン性の光酸発生剤としては、例えば旭電化工業株式会社製の商品名「アデカオプトマーSP150」、商品名「アデカオプトマーSP170」等の「アデカオプトマー」シリーズや、ゼネラルエレクトロニクス株式会社製の商品名「UVE−1014」、サートマー株式会社製の商品名「CD−1012」、ローディア株式会社製の商品名「Photoinitiator 2074」等を用いてもよい。
非イオン性の光酸発生剤は、特に限定されるものではない。例えばニトロベンジルエステル、スルホン酸誘導体、リン酸エステル、フェノールスルホン酸エステル、ジアゾナフトキノン、N−ヒドロキシイミドホスホナート等が挙げられる。これらの非イオン性の光酸発生剤は、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
活性エネルギー線硬化型接着剤における重合開始剤の含有量は、活性エネルギー線硬化性化合物100質量部に対して、好ましくは0.5〜20質量部の範囲である。係る含有量はより好ましくは1質量部以上である。またより好ましくは10質量部以下である。活性エネルギー線硬化性化合物がエポキシ樹脂である場合、係る含有量が0.5質量部以上であることで活性エネルギー線硬化型接着剤を十分に硬化させることができ、積層体の機械強度や、フィルムと被着体との間の接着強度を高めることができる。また、重合開始剤がイオン性である場合、係る含有量が20質量部以下であることで、活性エネルギー線硬化型接着剤が硬化してなる活性エネルギー線硬化樹脂において、イオン性物質の含有量が増加し、接着性の低下を抑制できる。
活性エネルギー線硬化型接着剤は、溶剤の含有量が好ましくは0〜2質量%の範囲であり、より好ましくは溶剤を含有しない。活性エネルギー線硬化型接着剤接着剤中の溶剤の含有量はガスクロマトグラフィー等によって測定できる。活性エネルギー線硬化型接着剤中の溶剤の含有量は、溶剤と他の成分を混合する際の混合比によって調節できる。
活性エネルギー線硬化型接着剤に用いられる溶剤としては、例えばn−ヘキサンやシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;トルエンやキシレン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール類;アセトン、ブタノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエチレングリコールエーテル類;ジクロロメタンやクロロホルム等のハロゲン化炭化水素類等が挙げられる。
活性エネルギー線硬化型接着剤の粘度は、23℃でB型粘度計により測定した時、50〜2,000mPa・sの範囲であることが好ましい。係る粘度の活性エネルギー線硬化型接着剤は塗布性に優れる。
[活性エネルギー線硬化型接着剤に対する添加剤]
さらに活性エネルギー線硬化型接着剤には、光増感剤、帯電防止剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、有機系粒子、無機酸化物粒子、金属粉末、着色剤、顔料、染料等が添加されていてもよい。
光増感剤は、活性エネルギー線硬化型接着剤の反応性を向上させる。光増感剤は、硬化後の活性エネルギー線硬化型接着剤が硬化してなる活性エネルギー線硬化樹脂の機械強度や接着強度を向上させる。光増感剤は特に限定されるものではない。光増感剤として、例えばカルボニル化合物、有機硫黄化合物、過硫化物、レドックス系化合物、アゾ化合物、ジアゾ化合物、ハロゲン化合物、光還元性色素等が挙げられる。
光増感剤の具体例としては、例えばベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン等のベンゾイン誘導体;ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体;2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン誘導体;2−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン等のアントラキノン誘導体;N−メチルアクリドン、N−ブチルアクリドン等のアクリドン誘導体;その他、α,α−ジエトキシアセトフェノン、ベンジル、フルオレノン、キサントン、ウラニル化合物、ハロゲン化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらはそれぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
光増感剤の添加量は、活性エネルギー線硬化性化合物を100質量部とした場合に、好ましくは0.1〜20質量部の範囲であり、より好ましくは0.1〜5.0質量部の範囲である。
[活性エネルギー線による硬化条件]
活性エネルギー線としては、例えばマイクロ波、赤外線、可視光、紫外線線、X線、γ線等が挙げられる。中でも紫外線は取扱いが簡便であり好ましい。
活性エネルギー線を照射するために用いる光源は特に限定されない。活性エネルギー線の好ましい例として紫外線の場合を挙げると、光源として、例えば低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。
活性エネルギー線の照射強度は特に限定されないが、重合開始剤の活性化に有効な、活性エネルギー線中の波長領域の光の照射強度を0.1〜100mW/cmの範囲とすることが好ましい。係る照射強度を0.1mW/cm以上とすることで、反応時間を短くできる。係る照射強度を100mW/cm以下とすることで、短時間のうちに光源の輻射熱が活性エネルギー線硬化型接着剤に放射されることを抑制でき、短時間のうちに活性エネルギー線硬化型接着剤において重合反応熱が発生することを抑制できる。これにより、硬化後の活性エネルギー線硬化型接着剤、すなわち活性エネルギー線硬化樹脂の黄色みを抑制でき、積層体が透明性に優れる。また偏光子等の被着体の劣化も抑制できる。
活性エネルギー線の照射時間は、照射強度に応じて適宜選択できる。本実施形態では積算光量を上述の照射強度と照射時間との積として表す。係る積算光量を10〜5,000mJ/cmの範囲とすることが好ましい。
[偏光板]
本発明のフィルムは偏光子の保護フィルムとして用いることができる。被着体である偏光子の少なくとも一方の面に、活性エネルギー線硬化型接着剤又は活性エネルギー線硬化樹脂を介してフィルムを貼り合わせることで、係る面を保護する。本明細書では係るフィルムを貼り付けた偏光子を偏光板と呼ぶものとする。以下の方法は偏光子以外の被着体にも応用できる。
偏光板は、偏光子の少なくとも一方の面に上記フィルムが積層されてなる。偏光子の両面に上記フィルムを積層してもよい。偏光子の一方の面に本発明のフィルムが積層され、他方の面には、他の偏光子の保護フィルムが積層されていてもよい。
[偏光子]
偏光子は市販品を用いてもよく、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂で構成されるものが好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂はポリ酢酸ビニル系樹脂を鹸化することにより得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、例えば酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルや、酢酸ビニルとそれに共重合可能な他の単量体との共重合体がある。他の単量体としては、例えば不飽和カルボン酸類、不飽和スルホン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類等が挙げられる。
偏光子の厚さは、好ましくは5〜40μmの範囲であり、より好ましくは10〜35μmの範囲である。
[接着]
被着体への活性エネルギー線硬化型接着剤の塗布手段は限定されない。例えばドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーター等、種々の塗布装置が利用できる。フィルムを被着体に貼り付ける前に、被着体の表面に、ケン化処理、コロナ処理、プライマー処理、アンカーコーティング処理等の易接着処理を施してもよい。
[偏向板の用途]
偏向板は、画像表示装置に組み込んで使用することができる。画像表示装置としては、例えば液晶ディスプレイ(LCD)、陰極線管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、タッチパネル、タブレットPC、電子ペーパー、ヘッドアップディスプレイ(HUD)等が挙げられる。
本発明のフィルムを有する偏光板は、湿度の高い環境における耐熱性に優れ、湿度及び温度の高い使用環境で用いられる画像表示装置に好適である。係る画像表示装置は、例えば大型テレビ、カーナビゲーションシステム、スマートフォン、タブレット型やモバイル型等のパーソナルコンピュータ、ウェラブルディスプレイ等に用いることができる。
以下に実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例によって制限されるものではない。また、本発明は、上記実施形態及び下記実施例に述べる、特性値、形態、製法、用途等の技術的特徴を表す事項を、任意に組み合わせて成るすべての態様を包含している。
実施例及び比較例における物性値の測定等は以下の方法によって実施した。
〔数平均分子量(Ma及びMb)〕
数平均分子量(Ma及びMb)は、GPC(ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー)を用いて測定した値に基づき、ポリスチレン換算分子量として求めた。測定条件は以下の通りであった。
装置:GPC装置(東ソー株式会社製;商品名HLC−8320)
分離カラム:TSKguardcolumn SuperHZ−H、TSKgel HZM−M及びTSKgel SuperHZ4000(いずれも東ソー株式会社製、商品名)を直列に連結したもの
溶離剤:テトラヒドロフラン
溶離剤流量:0.35ml/分
カラム温度:40℃
検出方法:示差屈折率(RI)法
〔三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)の測定〕
メタクリル系樹脂(A)等についてH−NMR測定を実施した。テトラメチルシラン(TMS)の示す値を0ppmの基準として、0.6〜0.95ppmの領域の面積(X)と、0.6〜1.35ppmの領域の面積(Y)とを計測した。式:(X/Y)×100に基づき算出した値を三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)(%)とした。測定条件は以下の通りであった。
装置:核磁気共鳴装置(Bruker社製;ULTRA SHIELD 400 PLUS)
溶媒 :重クロロホルム
測定核種:
測定温度:23℃
積算回数:64回
〔ガラス転移温度(Tg[℃])の測定〕
ガラス転移温度(Tg[℃])はJIS K7121に準拠して測定した。測定に示差走査熱量測定(DSC)装置(株式会社島津製作所製;DSC−50)を用いた。DSC曲線の測定に際して、試料を230℃まで一度昇温し、次いで25℃まで冷却し、その後、10℃/分で25℃から230℃までを昇温させる条件を用いた。2回目の昇温時に測定されるDSC曲線から中間点ガラス転移温度を求めた。係る中間点ガラス転移温度をアクリル系共重合体(B)の有するガラス転移温度(Tg[℃])とした。
〔数平均粒径の測定〕
製造例に記載の弾性体粒子の粒径を測定した。係る測定は、フィルムの断面を酸化ルテニウム溶液で染色して該断面を電子顕微鏡で観察し、略円形に染色されるアクリル系弾性架橋重合体の外径の平均値を弾性体粒子の数平均粒径とした。
〔加熱寸法変化〕
フィルムから試験片(縦100mm×横100mm)を切り出した。試験片の中心に油性マジックで70mmの長さの直線を、直線が元のフィルムの長手方向に対して平行になるように記入した。試験片を100℃の温度に保たれた強制温風循環式恒温オーブン内で30分間加熱した。その後、記入した直線の長さL(mm)を測り、下記式により加熱寸法変化を求めた。
加熱寸法変化(%)=(70−L)/70×100
〔接着性〕
実施例に記載の方法で得られた積層体(偏光板)からサンプル(縦50mm×横25mm)を無作為に10個切り出した。各サンプルについて、活性エネルギー線硬化樹脂の層にカッターで切れ込みを入れ、本発明のフィルムと偏光子/活性エネルギー線硬化樹脂/フィルムとに分かれるようにサンプルを手で剥離した。実施例及び比較例を、以下のa〜cで分類することで、これらの接着性の評価を行った。
a:接着力が強く、全てのサンプルでフィルムが破断し、偏光子とフィルムとを分離できなかった。
b:9個のサンプルでフィルムが破断し、偏光子とフィルムとを分離できなかったが、1個のサンプルでフィルムが破断することなく偏光子とフィルムとを分離できた。
c:フィルムが破断し偏光子とフィルムとを分離できなかったサンプルが8個以下であり、フィルムが破断することなく偏光子とフィルムとを分離できたサンプルが2個以上だった。全てのサンプルでフィルムが破断せず偏光子と分離できた比較例もここに分類される。
〔製造例1〕メタクリル系樹脂(A)の調製
攪拌機及び採取管が取り付けられたオートクレーブ内の空気を窒素で置換した。オートクレーブ内に、精製されたメタクリル酸メチル100質量部、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)0.0074質量部、及びn−オクチルメルカプタン0.20質量部を入れた。2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)の水素引抜能は1%であり、1時間半減期温度は83℃であった。攪拌機でこれらの化合物を撹拌することで、原料液を得た。係る原料液中にさらに窒素を送り込み、原料液中の溶存酸素を除去した。
以下において、採取管を通じてオートクレーブに接続された槽型反応器に、前記オートクレーブから原料液を供給した。供給された原料液の体積は槽型反応器の容量の2/3以下となるようにした。原料液の温度を140℃に維持しながら、まず槽型反応器中で、バッチ方式の重合反応を行い、反応液を得た。反応液における重合転化率が55質量%になったところで、オートクレーブから槽型反応器への原料液の追加供給を開始した。このとき原料液の供給流量を調節するとともに、原料液の供給流量と同じ流量で、反応液を槽型反応器から抜き出した。これにより、槽型反応器における液の平均滞留時間が150分となるようにした。このようにして槽型反応器内の温度を140℃に維持しつつ、バッチ方式の重合反応を、連続流通方式の重合反応に切り替えた。切り替え後、定常状態における重合転化率は52質量%であった。
定常状態になった槽型反応器から抜き出される反応液を、内温230℃の多管式熱交換器に供給して加温した。多管式熱交換器内の平均滞留時間が2分間となるように流量を調節した。次いで加温された反応液をフラッシュ蒸発器に導入した。反応液中の、未反応単量体を主成分とする揮発分を除去することで、溶融樹脂を得た。揮発分が除去された溶融樹脂をΦ41mmのベント付二軸押出機に供給し、溶融樹脂をストランド状に吐出した。ベント付二軸押出機の内温は260℃であった。ストランド状の溶融樹脂を、ペレタイザーでカットし、ペレット状のメタクリル系樹脂(A)を得た。数平均分子量(Ma)は58,000であった。シンジオタクティシティ(rr)は51%であった。ガラス転移温度は120℃であった。メタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量は100質量%であった。以上により得られたメタクリル系樹脂(A)の物性を表1に示す。
〔製造例2〕アクリル系共重合体(B1)の調製
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、単量体導入管及び還流冷却器を備えた反応器に、窒素雰囲気下でイオン交換水2,700g、ポリオキシエチレン(EO=3)トリデシルエーテル酢酸ナトリウム(日光ケミカルズ株式会社製;商品名ニッコールECT−3NEX)1.8質量部及び炭酸ナトリウム2.1質量部を投入した。これらを攪拌しながら混合することで、pH=8の水性媒体を得た。水性媒体の温度を75℃を目標に昇温させた。
上記とは別のビーカーにて、メタクリル酸メチル92質量%、アクリル酸メチル7質量%、アクリル酸ベンジル1質量%、n−オクチルメルカプタン0.42質量%からなる単量体混合物2,000質量部及びポリオキシエチレン(EO=3)トリデシルエーテル酢酸ナトリウム(日光ケミカルズ株式会社製;商品名ニッコールECT−3NEX)4.5質量部を計量し、これらをビーカー中で混合することで、乳化剤が添加された単量体混合物を調製した。
反応容器の内温が75℃になった段階で、反応器に過硫酸カリウム1.8質量部を投入した。その後、上記乳化剤が添加された単量体混合物を1.43質量%/分の速度で連続的に供給することで、重合反応を行った。単量体混合物の全量の供給が終了したのち、水性媒体を攪拌しながら75℃に60分間保持した。その後、重合反応物を40℃まで冷却したのち、325メッシュの金網で濾過することで、重合体のエマルジョンを得た。得られたエマルジョンを凍結凝固法により凝固させ、凝固した重合体に対して洗浄、濾過及び乾燥を行ってアクリル系共重合体(B1)を得た。以上により得られたアクリル系共重合体(B1)の物性を表1に示す。
〔製造例3〜14〕アクリル系共重合体(B2)〜(B13)の調製
製造例2において、単量体混合物2,000gの組成を表1に示す通りとしたこと以外は、製造例2と同様の方法により、アクリル系共重合体(B2)〜(B13)の製造を行った。以上により得られたアクリル系共重合体(B2)〜(B13)の物性を表1に示す。
Figure 0006764245
表1中、MMAはメタクリル酸メチルを表す。MAはアクリル酸メチルを表す。BzAはアクリル酸ベンジルを表す。t−BAはアクリル酸tert−ブチルを表す。n−OMは連鎖移動剤として用いたn−オクチルメルカプタンを表す。Nは(Mb/1000)+3.5×Tgの値を表す。
図5にアクリル系共重合体(B1)〜(B13)のガラス転移温度(Tg[℃])と、数平均分子量(Mb)との関係を示す。x軸はガラス転移温度(Tg[℃])を表す。y軸は数平均分子量(Mb)を表す。円はアクリル系共重合体(B1)〜(B11)を表す。正方形はアクリル系共重合体(B12)〜(B13)を表す。破線で囲まれた範囲にアクリル系共重合体(B1)〜(B11)が含まれている。さらに、アクリル系共重合体(B1)〜(B11)のうち下記式(1)を満たすものは、一点鎖線で挟まれた領域に含まれている。
365≦(Mb/1000)+3.5×Tg≦420 ・・・(1)
〔製造例15〕アクリル系弾性体粒子(C)の調製
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、単量体導入管及び還流冷却器を備えた反応器内に、イオン交換水1,050質量部、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム0.3質量部及び炭酸ナトリウム0.7質量部を仕込んだ後、反応器内の空気を窒素ガスで十分に置換した。次いで反応器の内温を80℃にした。同反応器内にさらに過硫酸カリウム0.25質量部を投入した後、5分間攪拌した。同反応器内に、メタクリル酸メチル95.4質量%、アクリル酸メチル4.4質量%及びメタクリル酸アリル0.2質量%からなる単量体混合物245質量部を60分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、さらに30分間重合反応を行った。
次いで、同反応器内に、過硫酸カリウム0.32質量部を投入して5分間攪拌した。その後、アクリル酸ブチル80.5質量%、スチレン17.5質量%及びメタクリル酸アリル2質量%からなる単量体混合物315質量部を60分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、さらに30分間重合反応を行った。
次に、同反応器内に、過硫酸カリウム0.14質量部を投入して5分間攪拌した。その後、メタクリル酸メチル95.2質量%、アクリル酸メチル4.4質量%及びn−オクチルメルカプタン0.4質量%からなる単量体混合物140質量部を30分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、さらに60分間重合反応を行った。
得られたアクリル系弾性体粒子(C)を含有するラテックス状の生成物を凍結、凝固させて、水洗、乾燥することで、アクリル系弾性体粒子(C)を精製した。アクリル系弾性体粒子(C)の数平均粒径は0.23μmであった。
〔製造例16〕活性エネルギー線硬化型接着剤の調製
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製;jER−828)35質量%、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン(東亞合成株式会社製;商品名アロンオキセタンOXT−211)59質量%、光カチオン重合開始剤としてトリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェートを主成分とする有効成分50%のプロピレンカーボネート溶液(ダウ・ケミカル株式会社製;商品名UVI−6992)6質量%を配合して活性エネルギー線硬化型接着剤を得た。これらの原料は常法に従って攪拌混合した。
<実施例1>
メタクリル系樹脂(A)70質量部と、アクリル系共重合体(B1)9質量部と、アクリル系弾性体粒子(C)21質量部と、をヘンシェルミキサーで混合した。さらに40mmφの一軸押出機にて、これらの溶融混練物を押し出すことで、ペレット状の樹脂組成物を得た。
次にTダイを取り付けたΦ65mmのベント付単軸押出機に、ペレット状樹脂組成物を投入し、溶融させて、Tダイから押し出した。Tダイのダイリップのリップ開度は1mmとした。押し出された溶融状態の樹脂組成物に対して、金属弾性ロールと金属剛体ロールで30N/mmの線圧をかけながら挟み込んでフィルムを引き取った。以上により、厚さ80μmのフィルムを得た。
得られたフィルムの一方の面に対して、バーコーターを用いて活性エネルギー線硬化型接着剤を塗布した。活性エネルギー線硬化型接着剤の厚さは2μmとした。次に、この活性エネルギー線硬化型接着剤の表面に、厚さ10μmの偏光子を重ね合わせた。係る偏光子は、ポリビニルアルコールからなるフィルムに対してヨウ素による染色及び延伸を施したものである。
その後、上記偏光子のうち活性エネルギー線硬化型接着剤に触れていない方の面に、バーコーターを用いて同じ活性エネルギー線硬化型接着剤を塗布した。活性エネルギー線硬化型接着剤の厚さは2μmとした。この接着剤の表面に、上記と同じフィルムを重ね合わせた。このようにして得られた積層体をローラーにて押圧した。積層体はフィルム/活性エネルギー線硬化型接着剤/偏光子/活性エネルギー線硬化型接着剤/フィルムの層構成を有していた。
その後、メタルハライドランプ(GC YUASA株式会社製)を用い、上記積層体において後から重ね合わせたフィルムの側から、積層体に対して、積算光量が700mJ/cmとなるよう紫外線を照射した。このとき、二回目の活性エネルギー線硬化型接着剤の塗布から紫外線を照射し始めるまでの時間を10秒間とした。上記積算光量はUV計測器(GS YUASA株式会社)を用いて検測した。紫外線照射後、温度23℃、相対湿度50%で積層体を24時間静置し、積層体(偏光板)を得た。
上記フィルムの加熱寸法変化及び接着性を測定した。その結果を表2に示す。他の実施例及び比較例において同様である。
Figure 0006764245
表2中、メタクリル系樹脂(A)、アクリル系共重合体(B1)〜(B13)及びアクリル系弾性体粒子(C)に係る数値はこれらの配合比[質量部]を表す。
<実施例2>
製造例3で製造したアクリル系共重合体(B2)のエマルジョン1質量部に対し、製造例15で製造したアクリル系弾性体粒子(C)のエマルジョン2質量部を加え、均一に混合した後、凍結凝固法により凝固、洗浄して乾燥させ、樹脂混合物を得た。係る樹脂混合物24質量部(アクリル系共重合体(B)8質量部及びアクリル系弾性体粒子(C)16質量部を含有する)にメタクリル系樹脂(A)76質量部を加えてヘンシェルミキサーで混合し、40mmφの一軸押出機にて溶融混練してペレット状の樹脂組成物を得た。その後は実施例1と同様の方法にて、厚さ80μmのフィルム及び積層体(偏光板)を得た。フィルム及び積層体の評価結果を表2に示す。
<実施例3〜11>
実施例2において、表2に示す配合比とした以外、実施例2と同じ方法で厚さ80μmのフィルム及びこれを備える積層体(偏光板)を得た。
<実施例12>
メタクリル系樹脂(A)88質量部及びアクリル系共重合体(B1)12質量部をヘンシェルミキサーで混合した。混合物を40mmφの一軸押出機にて溶融混練することで、ペレット状の樹脂組成物を得た。このペレット状の樹脂組成物を、Tダイを取り付けた単軸押出機で溶融しながら、ダイリップのリップ開度を1mmに設定したTダイから押し出した。押し出された溶融状態の樹脂組成物を金属弾性ロールと金属剛体ロールで30N/mmの線圧をかけながら挟み込んで引き取り、厚さ160μmのフィルムを得た。次いでこのフィルムをテンター式延伸機にて、縦2倍、横2倍の長さになるよう同時二軸延伸し、厚さ40μmのフィルムを得た。
<比較例1〜5>
表2に示す配合比とした以外、実施例1と同じ方法で厚さ80μmのフィルム及び積層体(偏光板)を得た。
<比較例6>
メタクリル系樹脂(A)を、Tダイを取り付けた単軸押出機に単独で投入し、該単軸押出機で溶融しながら、ダイリップのリップ開度を1mmに設定したTダイから押し出した。押し出された溶融状態の樹脂組成物を金属弾性ロールと金属剛体ロールで30N/mmの線圧をかけながら挟み込んで引き取り、厚さ160μmのフィルムを得た。次いでこのフィルムをテンター式延伸機にて、縦2倍、横2倍の長さになるよう同時二軸延伸し、厚さ40μmのフィルムを得た。
表2から、フィルムを構成する樹脂組成物中のアクリル系共重合体(B)の数平均分子量(Mb)が15,000〜50,000の範囲であり、ガラス転移温度(Tg[℃])が90〜115℃の範囲であり、より好適には数平均分子量(Mb)とガラス転移温度(Tg[℃])が下記式(1)の関係を満たすと、得られるフィルムの加熱寸法変化の度合いと接着性のバランスに優れることが分かる。
365≦(Mb/1000)+3.5×Tg≦420 ・・・(1)
一方、上記の数平均分子量(Mb)又はガラス転移温度(Tg[℃])を満たさないアクリル系共重合体(B)を用いた比較例(図5の□に相当する)は、得られるフィルムの加熱寸法変化の度合いと接着性のバランスに劣る。
10 弾性体粒子、11 内層、12 外層、13 弾性体粒子、14 内層、15 中間層、16 外層、17 樹脂組成物、18 熱可塑性樹脂及びアクリル系共重合体(B)を含有する混合物、19 弾性体粒子成分、20 フィルム、21 二層フィルム、

Claims (10)

  1. 樹脂組成物からなるフィルムであって、
    前記樹脂組成物は、熱可塑性樹脂85〜95質量%及びアクリル系共重合体(B)5〜15質量%を含有し、
    前記熱可塑性樹脂は、
    前記アクリル系共重合体(B)を除く(メタ)アクリル系樹脂であり、
    メタクリル酸メチル単位100質量%のメタクリル系樹脂(A)と、さらに、アクリル系弾性架橋重合体を含有するアクリル系弾性体粒子(C)を含み、
    前記樹脂組成物中の前記アクリル系弾性体粒子(C)の含有量は前記樹脂組成物を100質量%として15〜25質量%であり、
    前記アクリル系共重合体(B)は、
    メタクリル酸メチル単位80〜97質量%及びアクリル酸エステル単位3〜20質量%からなる共重合体であり、
    ガラス転移温度(Tg[℃])が90〜115℃であり、
    数平均分子量(Mb)が15,000〜50,000である、
    フィルム。
  2. 前記アクリル系共重合体(B)の数平均分子量(Mb)及びガラス転移温度(Tg[℃])が下記式(1)を満たす、請求項1に記載のフィルム。
    365≦(Mb/1,000)+3.5×Tg≦420 ・・・(1)
  3. 記メタクリル系樹脂(A)は、数平均分子量(Ma)が50,000超である、請求項1又は2に記載のフィルム。
  4. 前記アクリル系弾性体粒子(C)は、数平均粒径が150〜350nmである、請求項1〜3のいずれかに記載のフィルム。
  5. 記アクリル系弾性架橋重合体は、アクリル酸アルキルエステル単位50質量%以上からなる、請求項1〜4のいずれかに記載のフィルム。
  6. 前記フィルムを100℃で30分間加熱した際、前記フィルムの加熱寸法変化が−2.0〜+2.0%である、請求項1〜のいずれかに記載のフィルム。
  7. 300μm以下の厚さを有する、請求項1〜のいずれかに記載のフィルム。
  8. 光学フィルムである、請求項1〜のいずれかに記載のフィルム。
  9. 請求項1〜のいずれかに記載のフィルムが、活性エネルギー線硬化樹脂を介して、被着体に接着されている、積層体。
  10. 前記被着体が偏光子であり、偏光板として機能する、請求項に記載の積層体。
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