JP6762782B2 - 含有する葉酸の安定性が優れた酸性組成物 - Google Patents

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本発明は、葉酸の分解速度が低減されている、及び/又は葉酸の安定性が優れた、葉酸含有酸性組成物に関する。
葉酸は生体必須ビタミンの一つであり、また、葉酸は生体内で補酵素として機能し、タンパク質の生合成等に関与している。このため葉酸の欠乏は様々な疾患や障害(例えば、巨赤芽球性貧血、神経障害、腸機能不全等)を生じ得る。さらに、母体の妊娠時の栄養欠乏により生じ得る胎児の神経管異常は、葉酸を投与することにより予防できること、また葉酸が癌、特に上皮系の癌に対して防御作用を示すことが報告されている(非特許文献1,2)。このため、近年、葉酸の重要性が注目されている。
厚生労働省が公表する「日本人の食事摂取基準(2015年版)」(非特許文献3)によれば、葉酸の推奨摂取量は成人で240μg/日、妊婦で480μg/日、授乳婦で340μg/日とされている。葉酸は様々な食品中に含まれるものの、食品中の葉酸は調理・加熱により半分近くが消失してしまうため、上記推奨摂取量を得るためには大量の食品を摂取しなければならず容易ではない。
そのため、高濃度の葉酸を含有するサプリメントや飲食品が開発・販売されており、食品を摂取するよりも効率的に上記推奨摂取量の葉酸を摂取できることから人気を博している。特に、その摂取容易性や嗜好品としての面から、高濃度の葉酸を含有する液体タイプのサプリメントや飲料は高い人気を得ている。
一方、葉酸は乾燥状態では安定であるが、水溶液中、特に飲料に適した酸性領域においてはその安定性が低下することが知られている(特許文献1、2)。特許文献1においては、葉酸をラクトフェリンと共に複合体とすることによって、酸性水溶液中における葉酸の安定性を向上させる手法が開示されている。特許文献2には、防腐剤である安息香酸類を配合した葉酸含有飲料に、カルシウム、銅、及び亜鉛からなる群から選ばれる一種以上の金属の無機塩又は有機塩を配合することによって、当該飲料中の葉酸の安定性を向上させる手法が開示されている。
しかしながら、これらの手法による葉酸の保存安定性は十分とはいえず、当該分野においては依然として、酸性組成物中における葉酸の安定性を向上させることが可能な新たな手段が切望されている。
特許第4339979号公報 特開2011−55828号公報
Czeizel,A.E.,J.Pediat.Gastroenterol.Nutr.,vol.20,pp.4−16,1995 Glynn.S.A.,D.Albanes,Nutr.Cancer,vol.22,p.101,1994 日本人の食事摂取基準(2015年版)、厚生労働省、2014年3月
本発明は、葉酸の分解速度が低減されている、及び/又は葉酸の安定性が優れた、葉酸含有酸性組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、酸性組成物中に葉酸と共に、酸性溶液中において親水基に正電荷を有する界面活性剤を含めることによって、酸性組成物中における葉酸の分解速度が低減すること、及び/又はその安定性が向上することを見出した。
本発明はこれらの知見に基づくものであり、以下の発明を包含する。
[1] 葉酸、及び酸性溶液中において親水基に正電荷を有する界面活性剤を含む、酸性組成物。
[2] 前記界面活性剤が、レシチンである、[1]の組成物。
[3] 前記界面活性剤が、ホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、及び、ホスファチジルエタノールアミンからなる群から選択される一又は複数の界面活性剤を含む、[1]又は[2]の組成物。
[4] 容器詰め飲料又は容器詰めゼリー飲料である、[1]〜[3]のいずれかの組成物。
[5] 葉酸を含有する酸性組成物の製造方法であって、葉酸、及び酸性溶液中において親水基に正電荷を有する界面活性剤を含む原材料を配合することを含む、方法。
[6] 酸性組成物が、容器詰め飲料又は容器詰めゼリー飲料である、[5]の方法。
[7] 酸性組成物中における葉酸の安定性を向上させる方法であって、葉酸と酸性溶液中において親水基に正電荷を有する界面活性剤とを配合することを含む、方法。
本発明によれば、葉酸の分解速度が低減されている、及び/又は葉酸の安定性が優れた、葉酸含有酸性組成物を提供することができる。本発明によれば、保存安定性に優れ、上記推奨摂取量の葉酸を効率的に摂取することが可能な、葉酸含有酸性組成物を提供することができる。
本発明は、葉酸、及び酸性溶液中において親水基に正電荷を有する界面活性剤を含有することを特徴とする酸性組成物に関する。
本発明において、「葉酸」とは、ビタミンB複合体の水溶性ビタミンの一つであり、プテロイルモノグルタミン酸と称される下記構造式で表される化合物、
Figure 0006762782
あるいはその誘導体又は医薬品や飲食品において許容可能なその塩を意味する。誘導体としては例えば、複数のグルタミン酸が結合したポリグルタミン酸型等が挙げられるが、これらに限定はされない。
葉酸は食物から抽出又は精製されたものであってもよいし、化学的に合成されたものであってもよい。葉酸を含有する食物としては、特に限定はされないが、アスパラガス、ブロッコリー、ホウレンソウ、エダマメ、ソラマメ、トウモロコシ、メキャベツ、ケール、クキニンニク、シュンギク等の野菜や、ライチ、イチゴ、マンゴー、アボガド、ドリアン等の果物や、トリ、ウシ、ブタのレバー等の肉類を挙げることができる。また、葉酸の合成方法は公知の手法(第8版食品添加物公定書解説書、D−1655〜D−1660頁、株式会社廣川書店、平成19年12月10日発行)に基づいて行うことができ、例えば、2,4,5−トリアミノ−6−ヒドロキシピリミジンとバラアミノベンゾイルグルタミン酸の等モル水溶液をpH4に保ちながら、α,β−ジブロモプロピオンアルデヒドのエタノール溶液を加えて縮合させ、これをpH9以上の水溶液に溶かした後、pH7に調整して不溶物を除去することによって精製された葉酸を得ることができる(本手法に限定はされない)。
本発明の組成物には葉酸を、0.1ppm〜10ppm、好ましくは1ppm〜10ppm、より好ましくは、1ppm〜5ppmの範囲より選択される量にて適宜含めることができる。例えば、本発明の組成物には一回の経口摂取量当たり、葉酸を100μg以上、150μg以上、200μg以上、240μg以上、250μg以上、300μg以上、350μg以上、400μg以上、450μg以上、500μg以上、550μg以上の範囲で適宜含めることができる。例えば、厚生労働省が公表する「日本人の食事摂取基準(2015年版)」にて推奨される葉酸の摂取量(日)が含まれる範囲が好ましい。「一回の経口摂取量」とは、上記組成物が一度に経口摂取される量、あるいは短い時間間隔(例えば10分以下、好ましくは5分以下の時間)をおいて連続的に複数回で経口摂取される総量を意味する。当該組成物が液状又は半固形状(ゲル状、ゾル状等)の形態である場合には、例えば50mL〜500mL(典型的には50mL、100mL、150mL、180mL、200mL、250mL、300mL、350mL、400mL、450mL又は500mL)がその量である。一回の経口摂取量当たりに含まれる葉酸の量の上限は特に限定されず、例えば、1000μg以下、900μg以下、800μg以下、700μg以下、600μg以下の範囲より適宜決定することができる。
本発明において、「酸性溶液中において親水基に正電荷を有する界面活性剤」とは、酸性溶液に溶解した際に、親水基が電離してプラスに帯電する界面活性剤を意味する。ここで「酸性溶液」とは、pH7未満の水溶液を意味する。なお、本明細書において、pH値は全て、品温20℃で測定された値を指す。
このような界面活性剤としては、医薬や飲食品において一般的に利用可能なものであればよく、上記の特徴を有するかぎり特に限定はされず、両性の界面活性剤や陽イオン性の界面活性剤を利用することができる。本発明において利用可能な「酸性溶液中において親水基に正電荷を有する界面活性剤」の一例としては、レシチンが挙げられる。
本発明において「レシチン」とは、グリセリンを中心骨格とし、そのC1位及びC2位に脂肪酸が結合し、C3位にリン酸が結合し、さらに当該リン酸にアルコールが結合した構造を有するリン脂質の総称を意味する。レシチンは、脂肪酸からなる疎水部と、リン酸及びアルコールからなる親水部を有する。本発明において利用可能なレシチンとしては、酸性溶液中において親水部の親水基に正電荷を有するものであればよく、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、パルミトイル・オレオイルホスファチジルコリン等が挙げられ、これら化合物からなる群から選択される一又は複数の化合物を含むか、当該一又は複数の化合物からなる。ここで「複数」とは、2,3,4,5又はそれ以上を意味する。
レシチンは、食物から抽出又は精製もしくは粗精製されたものであってもよいし、化学的に合成されたものであってもよい。レシチンを含有する食物としては、特に限定はされないが、大豆、卵黄、綿実、ナタネ、トウモロコシ等を挙げることができる。
また、本発明においては「レシチン」は、酸性溶液中において親水基に正電荷を有する限り、レシチンの誘導体又は医薬品や飲食品において許容可能なその塩であってもよい。誘導体としては例えば、レシチンにおいてグリセリンのC1位又はC2位に結合している脂肪酸を加水分解して除去し、1化合物内に1つの脂肪酸のみを含有するように改変したレシチン(すなわち、リゾレシチン)が挙げられる。脂肪酸の加水分解は公知の手法に基づいて行うことができ、酸、アルカリ触媒、又は加水分解酵素を用いて行うことができる。加水分解酵素としては、C1位のアシル基を加水分解することが可能なホスホリパーゼA1や、C2位のアシル基を加水分解することが可能なホスホリパーゼA2が挙げられるが、これらに限定はされない。
本発明において利用可能なリゾレシチンとしては、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルセリン、ラウロイルリゾホスファチジルコリン、ミリストイルリゾホスファチジルコリン、パルミトイルリゾホスファチジルコリン、リゾステアロイルホスファチジルコリン、リゾオレオイルホスファチジルコリン等が挙げられ、これら化合物からなる群から選択される一又は複数の化合物を含むか、当該一又は複数の化合物からなる。ここで「複数」とは、2,3,4,5又はそれ以上を意味する。
本発明においては、レシチン、及び/又はリゾレシチンを高純度に、例えば、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、又は90重量%以上の割合で含むように精製/粗精製されたもの(高純度レシチン又は高純度リゾレシチンと称される場合がある)、ならびに、レシチン及び/又はリゾレシチンが複数の化合物を含む場合において、含まれる化合物の組成比を調整したもの(分別レシチン又は分別リゾレシチンと称される場合がある)を利用することができる。このようなレシチン及びリゾレシチンとしては、例えば、レシチン及びリゾレシチンを90〜95重量%含み、その組成がリゾホスファチジルコリンを65〜75重量%、ホスファチジルコリンを1〜5重量%、ホスファチジルエタノールアミンを0〜3重量%にて含むもの(リゾホスファチジルコリン濃縮リゾレシチンと称される場合がある)等が挙げられる。なお、レシチン及びリゾレシチンはアセトン不溶物であるリン脂質換算の量で表すことができ、当該リン脂質量は公知の手法(例えば、日本油化学会編「基準油脂分析試験法4.3.3.1−1996リン脂質組成」に記載の方法)により測定することができる。
本発明の組成物に含まれる、酸性溶液中において親水基に正電荷を有する界面活性剤の量は、酸性組成物中において当該界面活性剤がミセルを形成することが可能な量であればよく、臨界ミセル濃度(critical micelle concentration:CMC)以上(25℃の酸性組成物環境下)となる量より適宜選択することができる。CMCは利用する界面活性剤の種類及び酸性組成物の温度に応じて適宜決定することができるが、例えば、本発明の組成物には、酸性溶液中において親水基に正電荷を有する界面活性剤を0.01重量%〜10重量%、好ましくは、0.01重量%〜1重量%、より好ましくは、0.1重量%〜1重量%の範囲より選択される量(例えば、0.1重量%以上、0.2重量%以上、もしくは0.4重量%以上、かつ1重量%以下)にて含めることができる。
下記実施例にて詳述されるとおり、酸性溶液中において親水基に正電荷を有する界面活性剤は、酸性組成物中にて葉酸の分解速度を低減することができ、酸性組成物中における葉酸の保存安定性を高めることができる。本発明の酸性組成物中、前記界面活性剤はその疎水部が分子間力により互いに集合し、酸性溶液中において正電荷を有する親水基を含む親水部が外側に向けられたミセルを形成する。酸性条件下、葉酸(pKa:8.3)は極性が低くなることからミセルの内側の疎水部に可溶化する。この構造により酸性組成物中の水素イオンはミセルの親水部との静電反発によりミセルの親水部を透過することができず、また、酸性組成物中の酸素は極性が低く、ミセルの親水部を透過することができない。このため、酸性組成物中の水素イオン及び酸素はいずれも、葉酸に近づくことができない。これによって、本発明の酸性組成物においては、前記界面活性剤を含有しない組成物と比べて、葉酸の分解速度が低減し、及び/又は、葉酸の保存安定性を向上させることができる。
本発明において、「酸性組成物」とは、pH値が7未満、好ましくは4.5以下である組成物を意味し、例えば、pH4.5未満、pH4.4未満、pH4.3未満、pH4.2未満、pH4.1未満、pH4.0未満、pH3.9未満、pH3.8未満、pH3.7未満、pH3.6未満、pH3.5未満、pH3.4未満、又は、pH3.3未満とすることができる。pH値の下限は特に限定されず、酸性組成物の形態に応じて適宜決定することが可能であり、例えば、pH2.5以上、pH2.6以上、pH2.7以上、pH2.8以上、pH2.9以上、pH3.0以上、pH3.1以上、又は、pH3.2以上とすることができる。
本発明の酸性組成物が清涼飲料水の形態である場合には、当該pH値はpH4.0未満とすることが好ましい。食品衛生法の食品別規格基準によれば、清涼飲料水の殺菌・除菌の方法はpH4.0を境に大きく異なっており、pH4.0未満のものの殺菌は、中心部温度を65℃にて10分間加熱することが求められるのに対して、pH4.0以上のものの殺菌は、中心部温度を85℃にて30分間加熱することが求められる。故に、pH値の上限をpH4.0未満とすることによって、殺菌工程による負荷を小さくし、殺菌工程における葉酸の分解を小さくすることができ、好ましい。
本発明の酸性組成物のpH値は、加えられる酸味料の量を適宜調節することによって調節することができる。酸味料としては医薬や飲食品の製造に一般的に利用されるものが挙げられ、例えばクエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、酒石酸、乳酸、コハク酸、又はこれらの塩などがあり、これらのうちの1種又は2種以上の混合物を加えることができる。
本発明の酸性組成物には、上記葉酸及び上記界面活性剤に加えて、医薬又は飲食品として許容可能な賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、酸化防止剤、着色剤、凝集防止剤、吸収促進剤、溶剤、溶解補助剤、等張化剤、安定化剤、矯味矯臭剤、pH調整剤、香料、甘味料、増粘剤、防腐剤、ビタミン類、寒天等のその他の原材料を、当該酸性組成物において所望される形態に応じて適宜選択、配合することができる。
本発明の酸性組成物は、医薬品(医薬部外品を含む)又は飲食品の形態で提供することができる。これらの形態は、液状組成物又は半固形状組成物(ゲル状、ゾル状等)等の形態とすることができ、上記葉酸及び上記界面活性剤に加えて、上記その他の原材料をその剤形に応じて、適宜配合し、常法に従って調製することができる。
例えば、本発明の酸性組成物は、容器詰め飲料とすることができる。本発明の酸性組成物(液状組成物)を収容するための容器は、飲料用容器として使用される容器を適宜用いることができ、限定されないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)製容器、所謂PETボトルや、金属缶容器等が挙げられる。容器の形態は特に限定されない。また、容器の容量は特に限定されないが、例えば50〜500mL(典型的には50mL、100mL、150mL、180mL、200mL、250mL、300mL、350mL、400mL、450mL又は500mL)、好ましくは100〜200mLとすることができる。
あるいは、本発明の酸性組成物は、容器詰めゼリー飲料とすることができる。本発明の酸性組成物(半固形状(ゲル状、ゾル状等)組成物)を収容するための容器は、ゼリー飲料用容器として使用される容器を適宜用いることができ、限定されないが、樹脂フィルム、及び/又は、金属フィルム製容器、パウチ容器等が挙げられる。また、容器の容量は特に限定されないが、例えば50mL〜200mL(典型的には50mL、100mL、150mL、180mL、200mL)とすることができる。
本発明の酸性組成物は、食物から抽出もしくは精製された葉酸、又は、化学的に合成された葉酸、上記酸性溶液中において親水基に正電荷を有する界面活性剤、酸味料、必要に応じて上述のようなその他の原材料、並びに残部として水を混合して製造することができる。各材料を配合する順序は特に限定されず、全てを同時に配合し、混合してもよいし、あるいは、一又は複数の材料を別にして、残りの材料を予め混合し、そこに前記一又は複数の材料を配合し、混合してもよい。当該「一又は複数の材料」や、当該「残りの材料」の組合せは、材料や製造方法に応じて適宜選択することができ、特に限定はされない。本発明の酸性組成物の容器への収容、及び殺菌の手段は任意に選択することができる。
以下に実施例及び試験例を示し、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
I.材料・測定方法
1.標準原液
葉酸100mgを200mL褐色ビーカーに精秤し、0.1N水酸化ナトリウム溶液(和光純薬)を5mL添加して溶解した。次いで、特級エタノール(和光純薬)10mLを添加・混和後、イオン交換水100mLと0.1N塩酸(和光純薬)にて溶液のpHを7.0〜8.0に調整した。200mL褐色メスフラスコとイオン交換水を用いて所定量に定容し、HPLC測定における検量線作成のための標準原液とした。
2.HPLC測定
葉酸を含む溶液サンプルは、重量を測定後、1.0N水酸化ナトリウム溶液(和光純薬)を用いてpH12.0(HORIBA製pHメーター(F−72))に調整した。次いで、5分間撹拌後(AS ONE製マグネティックスターラー(RSH−1AN))、1.0N塩酸(和光純薬)を用いてpH7.0に調整し、ろ過し(AS ONE製0.45μmフィルター(SY25TF))、得られたろ液をHPLC測定に付した。
HPLC測定は、以下の条件にて実施した。
装置:Waters ACQUITY H−Classシステム
カラム:Waters XBridge C18 5μm 6×250mm
温度:50℃
流量:1.2ml/min
移動相:12%メタノール(和光純薬)、0.3%酢酸(和光純薬)、1.08%オクタスルホン酸Na溶液(和光純薬)
3.ベース液
イオン交換水にグラニュー糖2.5重量%、果糖1.2重量%、L−アスコルビン酸0.8重量%、クエン酸0.2重量%、クエン酸三ナトリウム0.2重量%、及び葉酸0.0003重量%を添加し、1.0N塩酸(和光純薬)、及び1.0N水酸化ナトリウム(和光純薬)を用いて、pH3.5に調整し、ベース液とした。
II.試験1:界面活性剤添加の影響
下記表1に示す組成にしたがって、ベース液、エタノール、界面活性剤(リゾホスファチジルコリン濃縮リゾレシチン(SLP−LPC70(辻製油株式会社製):HLB値12)、又はグリセリン脂肪酸エステル(L−7D(三菱化学フーズ株式会社製)、構成脂肪酸:ラウリン酸:HLB値17))を含む溶液(pH3.5)(実施例1〜3、比較例1〜3)をそれぞれ調製した(0日目)。表1の数値は重量%にて示す。
各溶液を遮光されたレトルトパウチに100mL室温充填し、その後80℃にて10分間湯殺菌(LAUDA製恒温水槽(D20KP))を行った。次いで、各溶液を50℃で7日間保存し(ADVANTEC社製恒温庫(AGX−345))、保存後の各溶液中の葉酸量をHPLCにより測定した。
保存後の各溶液中の葉酸量の測定結果を下記表2に示す。なお、表中の葉酸量の数値は、0日目の溶液中の葉酸量を「100」とする相対値にて示す。
表2の比較例1及び比較例2の結果より明らかなとおり、エタノールの存在下、葉酸の分解速度は顕著に大きくなることが確認された。
一方、リゾホスファチジルコリンを添加することによって、エタノールの存在下であっても、葉酸の分解を抑制することができることが確認された(実施例1〜3)。このような葉酸の分解抑制効果は、リゾホスファチジルコリンと同じく両親媒性の界面活性剤であるが、リゾホスファチジルコリンと異なり酸性溶液中において親水部に正電荷を有する親水基を含むものではないグリセリン脂肪酸エステルを用いた場合には、認められなかった(比較例3)。
Figure 0006762782
Figure 0006762782

Claims (7)

  1. 葉酸、及び酸性溶液中において親水基に正電荷を有する界面活性剤を含む、pH3.9未満の酸性組成物。
  2. 前記界面活性剤が、レシチンである、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記界面活性剤が、ホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、及び、ホスファチジルエタノールアミンからなる群から選択される一又は複数の界面活性剤を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
  4. 容器詰め飲料又は容器詰めゼリー飲料である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
  5. 葉酸を含有するpH3.9未満の酸性組成物の製造方法であって、葉酸、及び酸性溶液中において親水基に正電荷を有する界面活性剤を含む原材料を配合することを含む、方法。
  6. 酸性組成物が、容器詰め飲料又は容器詰めゼリー飲料である、請求項5に記載の方法。
  7. pH3.9未満の酸性組成物中における葉酸の安定性を向上させる方法であって、葉酸と酸性溶液中において親水基に正電荷を有する界面活性剤とを配合することを含む、方法。
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