[I.コンバインの基本構成]
本発明に係るコンバインの第一実施形態であるコンバイン1の全体構成について図面を参照して説明する。
図1に示すように、コンバイン1は、走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、穀粒貯溜部7、排藁処理部8及び操縦部9を備える。コンバイン1は、動力をエンジン11から走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、穀粒貯溜部7及び排藁処理部8にトランスミッションを含む動力伝達系を介して伝達し、これらの各部を駆動させる。
走行部2は、機体の下部に設けられる。走行部2は、左右一対のクローラを有するクローラ式走行装置21を有する。走行部2は、機体をクローラ式走行装置21により走行させる。
刈取部3は、機体の前部に昇降可能に設けられる。刈取部3は、分草具31、引起装置32、搬送装置33及び切断装置34を有する。刈取部3は、圃場の穀稈を分草具31により分草し、分草後の穀稈を引起装置32により引き起こし、引起後の穀稈を搬送装置33により後方へ搬送しつつ切断装置34により切断し、切断後の穀稈を搬送装置33により脱穀部4に向けてさらに後方へ搬送する。
脱穀部4は、機体の左上側に配置される。脱穀部4は、フィードチェン41、扱胴42を有する(図4参照)。脱穀部4は、刈取部3から搬送されてきた刈取後の穀稈をフィードチェン41により受け継いで後方へ搬送し、その搬送中の穀稈を扱胴42により脱穀し、脱穀後の処理物を選別部5に向けて下方へ漏下させる。
選別部5は、機体の左下側に配置される。選別部5は、揺動選別装置50、風選別装置及び穀粒搬送装置を有する(図4参照)。選別部5は、脱穀部4から落下してきた処理物を揺動選別装置50により揺動選別し、揺動選別後のものを風選別装置により風選別し、風選別後のもののうち、穀粒を穀粒搬送装置により穀粒貯溜部7に向けて右側方へ搬送し、藁屑や塵埃などを風選別装置により後方へ飛ばして機体の外部へ排出する。
穀粒貯溜部7は、機体の右後側に配置される。穀粒貯溜部7は、グレンタンク71及び穀粒排出装置72を有する。穀粒貯溜部7は、選別部5から搬送されてきた穀粒をグレンタンク71により貯溜し、その貯溜している穀粒を穀粒排出装置72によりグレンタンク71から機体の外部へ排出する。
排藁処理部8は、機体の後側に配置される。排藁処理部8は、排藁搬送装置81及び排藁切断装置82を有する。排藁処理部8は、脱穀部4から搬送されてきた脱穀済みの排稈を排藁として排藁搬送装置81により後方へ搬送して機体の外部へ排出し、又は排藁切断装置82へ搬送し、排藁を排藁切断装置82へ搬送した場合には排藁切断装置82により切断した後に機体の外部へ排出する。
操縦部9は、機体の右前側に配置される。操縦部9は、運転席91や、ステアリングハンドル92、キャビン93、操作パネル98などを有して、運転席91やステアリングハンドル92、操作パネル98などをキャビン93により覆い、運転席91に操縦者を着座させ、ステアリングハンドル92や操作パネル98に配置された操作レバーや操作スイッチ類により操縦者が各部の装置を操作することができるように構成される(図2、図3参照)。図2に示すように、サイドパネル98aには、自動ロス制御操作部94−9を備えている。図3に示すように、主変速レバー94のグリップ部94−1には、ノークラッチ刈取変速ボタン94−2、こぎ深さ調節スイッチ94−3、刈取オートリフトボタン94−4、刈取オートセットボタン94−5、ノークラッチ副変速ボタン94−6、エンジン負荷に伴う車速制御スイッチ94−7、ロス制御リセット操作部94−10、旋回モード切替スイッチ94−11の各種操作部を設けている。また、ステアリングハンドル92には表示装置300を備えており、液晶パネルnの下には画面を切り替えて、各種機能を選択操作するための各種スイッチ300a,・・,330eを設けている。なお、図2中符号99はバックモニターカメラやオ―ガモニターカメラからの映像を表示するためにハンドルの側方に配設したデユアルモニターである。
こうして、コンバイン1は、操縦部9における操作具類の操作に応じて、動力をエンジン11から操縦部9を除く前記各部に伝達し、機体を走行部2により走行させながら、圃場の穀稈を刈取部3により刈り取って、刈取後の穀稈を脱穀部4により脱穀し、脱穀後の処理物を選別部5により選別して、選別後の穀粒を穀粒貯溜部7に貯溜する一方、脱穀後の排藁を排藁処理部8により任意に処理して機体の外部へ排出することができるようになっている。
次に、図4乃至図11を用いて、脱穀部4及び選別部5の構成について説明する。
脱穀部4は、フィードチェン41、扱胴42及び受網45を備えるとともに、処理胴43、処理胴網47を備える。
扱胴42は、前端部を面取りした円筒状に形成される。扱胴42は、その軸心方向(長手方向)を前後方向として扱室44に収納されて、扱室44の前壁と後壁との間に回転自在に架設された回転支軸に取り付けられる。扱胴42は、エンジン11からの動力が当該回転支軸に伝達されることによって、この回転支軸と一体的にその前後方向の軸心回りに回転する。扱胴42の外周面には複数の扱歯42aが螺旋状に取り付けられている。受網45は、扱胴42下側外周面に沿って配置されており、扱室44に配置される。
図4及び図9乃至図11に示すように、扱室44の上壁には、送塵装置230を配設している。すなわち、送塵装置230は、正逆回転駆動可能な回動駆動手段としての電動モータ231と、電動モータ231の駆動軸に連動連結したピニオンギヤ232と、ピニオンギヤ232に連動して回動するセクタギヤ233とからなるアクチュエータ44fと、アクチュエータ44fのセクタギヤ233に連動して回動する送塵弁44aと、送塵弁44aの回動角を検出するポテンショメータ235と、を具備している。アクチュエータ44fは、後述する制御装置200により駆動制御される。送塵弁44aは、天井部222の内面側に送塵弁44aを垂下状に取り付けて、扱室44内において開度調節可能に配設している。そして、送塵装置230は、送塵弁44aの開度の調節により、扱室44内における穀粒や塵埃等の脱穀処理物の滞留時間、換言すると脱穀処理物の後方への移送速度を調節可能としている。224は、脱穀部4の内側壁部であり、225は脱穀部4の内側壁部224の上端部に天井部222の右側縁部を枢支する枢支部であり、229は、内壁222aに内方へ向けて突設した固定刃である。
この送塵弁44aが開度調節される際に、回動力が電動モータ231→ピニオンギヤ232→セクタギヤ233→送塵弁44aに伝達される。つまり、開度調節される送塵弁44aに伝達される作用力は回動力のみである。そのため、電動モータ231から送塵弁44aまで作用力が伝動される間に、機械的なこじれが発生するのを少なくすることができる。したがって、送塵弁44aの開度調節を堅実に行うことができる。
扱室44の上部を被覆する扱室カバー221には、支持手段としての支持基板240を介して、電動モータ231とピニオンギヤ232とポテンショメータ235とを一体的に取り付け可能とするとともに、これらの手段の扱室カバー221に対する取付位置を一体的に微調整可能としている。
支持基板240は、四角形板状に形成しており、支持基板240の上面側にはポテンショメータ235を取り付ける一方、支持基板240の下面側には電動モータ231と、その駆動軸に取り付けたピニオンギヤ232とを取り付けて、ユニット化している(支持基板取付ユニットUとなしている)。支持基板240の左右側前後部には、左右方向に横長の取付位置微調整用の左側長孔241を設けている。支持基板240は、扱室カバー221の天井部222の前中央部に配設している。
すなわち、天井部222の内壁222aには、支持基板240の左側部を取り付けるための二本の左側取付脚片242,242を立設している。二本の左側取付脚片242,242は、内壁222aの左側縁部に各下端部242a,242aを前後方向に間隔をあけて取り付け、各中途部242b,242bを上方へ直状に立ち上げて、各上端部242c,242cを右側方へ水平に突出させて形成している。支持基板240の右側前部には、右側取付脚片243を垂設している。右側取付脚片243は、支持基板240の右側前部に上端部を取り付けて、支持基板240の右側縁部位置から中途部を下方へ直状に垂下させて、下端部を右側方へ水平に突出させて形成している。下端部には、左右方向に横長の取付位置微調整用の右側長孔247を設けている。下端部は、内壁222aの前中途部に載設した脚載せ台上に右側長孔247を介して取付ボルト245により取り付けている。
このように形成した支持基板240は、二本の取付脚片242,242の上端部上と脚載せ台上に、左・右側長孔241,247を介して取付ボルト245により左右方向に微調整可能に、かつ、着脱自在に取り付けている。ここで、三本の取付脚片242,242,243は、外壁222bの前中央部に平面視四角形状に形成した開口部246から上方へ突出させて、支持基板240さらには支持基板240に取り付けた電動モータ231等の支持基板取付ユニットUを開口部246よりも上方に配置している。したがって、支持基板240に取り付けた電動モータ231等は、二本の取付脚片242,242と脚載せ台に支持基板240を取り付ける際に、内・外壁222a,222bと干渉して、これら内・外壁222a,222bを損傷等させるのを防止することができる。
電動モータ231は、支持基板240の下面に補強板248を介して下方から取り付けている。電動モータ231の駆動軸には、ピニオンギヤ232を取り付けて、ピニオンギヤ232を支持基板240の後中央部の直下方に水平に配置している。
ピニオンギヤ232は、支持基板240の後中央部の直下方において、軸線を上下方向に向けて水平に配置している。ピニオンギヤ232の背後には、セクタギヤ233を配置して、両ギヤ232,233を前後方向に噛合させている。
セクタギヤ233は、平面視扇状に形成して、円弧状に形成した前端縁部にギヤ部233aを形成し、基端部233bを後方に向けて配置している。セクタギヤ233の中途部には、左右方向に伸延して前方へ凸状に湾曲する弧状の開度調整長孔260を形成している。開度調整長孔260の開孔縁部には、開度目盛263を付している。
送塵弁44aは、内壁222aの内面に沿って左右方向に延伸する複数(本実施形態では六個)の送塵弁形成片250と、各送塵弁形成片250の中途部を枢支する前後方向長手状の帯状枢支片251と、各送塵弁形成片250の右側端部同士を連動連結する前後方向長手状の連動連結片252と、を具備している。六個の送塵弁形成片250は、内壁222aの内面に沿って前後方向に間隔をあけて配置しており、前から2番目の送塵弁形成片250をセクタギヤ233に連動連結した駆動用の送塵弁形成片250となして、その他の送塵弁形成片250を従動用の送塵弁形成片250となしている。帯状枢支片251は、前後方向に短手状の短手片251aと、短手片251aの後端部に連設したボス部251bと、ボス部251bに前端部を連設した前後方向に長手状の長手片251cとから形成している。短手片251aの前端部には、前から一番目の送塵弁形成片250の中途部を枢支連結している。ボス部251bは、開口部246内に貫通状に配置しており、ボス部251b中には、上下方向に軸線を向けた枢支軸253を挿通し、枢支軸253の上端部に外壁222bよりも上方に配置したセクタギヤ233の基端部233bを取り付けている。一方、枢支軸253の下端部には、外壁222bよりも下方に配置した前から二番目の駆動用の送塵弁形成片250の中途部を取り付けて、セクタギヤ233と送塵弁形成片250とを、枢支軸253を介して一体となしている。そして、セクタギヤ233の回動動作に、枢支軸253を介して、駆動用の送塵弁形成片250が一体的に回動動作して、その開度を変更するようにしている。長手片251cには、前から三番目〜六番目の各送塵弁形成片250の中途部を枢支連結ボルト254により枢支するとともに、外壁222bに長手片251cを連結している。連動連結片252には、各送塵弁形成片250の右側端部を上下方向に軸線を向けた枢支連結ピン255により枢支連結して、駆動用の送塵弁形成片250の回動動作に連動して他の送塵弁形成片250も一体的に回動動作して、全ての送塵弁形成片250が同一の開度に変更されるようにしている。ここで、図11に示すθは、開度であり、開度θは、枢支軸253と交差する左右方向の仮想線Kと、枢支軸253を中心に後方へ退避した駆動用の送塵弁形成片250の延伸線Pとの間に形成される角度(退避角度)である。256は、開口部246を上方から被覆する蓋体であり、蓋体256は、キャップ状に形成して外壁222bに着脱自在に取り付けて、開口部246を通して露出する支持基板取付ユニットUやセクタギヤ233や短手片251aやボス部251bや枢支軸253等を開閉蓋自在としている。
アクチュエータ44fの駆動力によりセクタギヤ233が一方向に回動する場合、送塵弁44aが一方向に回動する。扱胴42による脱穀時において、送塵弁44aが一方向に回動されたとき、扱胴42の外周面に沿って、後方へ向かって螺旋状に送出される穀粒や藁屑等が、送塵弁44aに案内されて前方へ流され、つまり、戻されるようになり、これにより、扱室44の後部へ送出される穀粒や藁屑等の量が減少する。
これに対し、アクチュエータ44fの駆動力によりセクタギヤ233が他方向に回動する場合、送塵弁44aが他方向に回動する。扱胴42による脱穀時において、送塵弁44aが他方向に回動されたとき、扱胴42の外周面に沿って、後方へ向かって螺旋状に送出される穀粒や藁屑等が、送塵弁44aに案内されて後方へ流され、これにより、扱室44の後部へ送出される穀粒の量が増加する。
従って、脱穀時における、扱室44の後部へ送出される穀粒の量に関しては、各送塵弁44aが一方向に回動されるのに伴って減少していき、他方向に回動されるのに伴って増加していく。
扱室44の上部を被覆する扱室カバー221には、セクタギヤ233を機械的に固定可能として、セクタギヤ233を介して送塵弁44aを固定可能としている。そして、セクタギヤ233を機械的に固定することで、送塵弁44aを固定可能としているため、電気的なトラブルの発生により電動モータ231が駆動停止された場合でも、送塵弁44aを機械的に固定することで、脱穀作業を継続させることができる。
より具体的説明すると、セクタギヤ233の中途部に設けた開度調整長孔260の直下方には、短手片251aを配置しており、開度調整長孔260と上下方向に対向して位置する短手片251aの部分には、正面視門型に形成したボルト支持片261を載設している。ボルト支持片261の中途部には、開度調整長孔260中に挿通した固定ボルト262の下端部を螺着支持させている。そして、固定ボルト262を締め付けることで、ボルト支持片261を介して短手片251aにセクタギヤ233を固定可能としている。その結果、枢支軸253を介してセクタギヤ233に一体的に取り付けた駆動用の送塵弁形成片250を一定の開度θに固定することができる。この際、開度調整長孔260を介してセクタギヤ233の姿勢を固定ボルト262により設定することで、送塵弁形成片250の開度θを任意に設定することができる。
ポテンショメータ235は、ピニオンギヤ232の回動動作に連動して枢支軸253を中心に回動するセクタギヤ233の回動角度を検出する角度検出センサである。ポテンショメータ235は、支持基板240の右側後部に載設した正面視門型のセンサ取付台270上に本体271を載置し、本体271からセンサ取付台270を貫通させてセンサ軸272を下方へ向けて突出させ、センサ軸272の下端部に後方へ向けて延伸するセンサアーム273の基端部を取り付けている。セクタギヤ233の左側前部には、アーム当接ピン264を上方へ向けて突設して、アーム当接ピン264の周面にセンサアーム273の先端部(後端部)を当接させている。そして、セクタギヤ233が回動動作すると、アーム当接ピン264を介してセンサアーム273が回動し、センサアーム273の回動に連動してセンサ軸272が回動して、センサ軸272の回動動作を回動量として本体271が電気的に検出する。その結果、セクタギヤ233と一体回動する駆動用の送塵弁形成片250の回動動作、つまり、開度θが検出される。
図4乃至図8に示すように、処理胴43は、円筒状に形成される。処理胴43は、その軸心方向を前後方向として処理室46に配置されて、処理室46の前壁と後壁との間に回転自在に架設された回転支軸に支持される。処理胴43は、エンジン11からの動力が当該回転支軸に伝達されることによって、この回転支軸と一体的にその前後方向の軸心回りに回転する。処理胴網47は、処理胴43をその外周面に沿って下方から覆うように、処理室46に配置される。処理室46は、扱室44の右後方に位置し、扱室44と送塵口40を介して連通する。
フィードチェン41は、扱胴42の左側方で刈取部3と排藁処理部8との間にわたって配置されて、複数のスプロケットに巻き掛けられる。フィードチェン41は、エンジン11からの動力が前記スプロケットに伝達されることによって、前後方向に回転する。前記複数のスプロケットは、扱胴42の左側方で前後方向に延設された支持フレームに支持される。
上述の如く、本実施形態に係るコンバイン1は、扱胴42に加えて処理胴43を具備する、いわゆる複胴形のコンバインである。
図4及び図5に示すように、選別部5は、揺動選別装置50、風選別装置及び穀粒搬送装置を備える。揺動選別装置50は、揺動選別装置本体50−1(図14参照)、前フィードパン51、後フィードパン52、チャフシーブ53、グレンシーブ54及びストローラック55を有する。
揺動選別装置本体50−1は、選別部5の平面視で矩形枠状に形成される。揺動選別装置本体50−1は、その長手方向を前後方向として脱穀部4の扱胴42及び受網45並びに処理胴43及び処理胴網47の下方に配置されて、下部機枠12に揺動可能かつ着脱可能に支持される。揺動選別装置本体50−1は、揺動機構の揺動軸にエンジン11からの動力が伝達されることによって、下部機枠12に対して揺動する。
フィードパンは、前フィードパン51及び後フィードパン52から構成される。前フィードパン51は、脱穀部4の扱胴42及び受網45の下方に配置されて、揺動選別装置本体50−1の前部に支持される。後フィードパン52は、脱穀部4の扱胴42及び受網45の下方で前フィードパン51の後下方に配置されて、揺動選別装置本体50−1の前部に支持される。
チャフシーブ53は、脱穀部4の扱胴42及び受網45並びに処理胴43及び処理胴網47の下方で前フィードパン51の後方に配置されて、揺動選別装置本体の前後中途部に支持される。
チャフシーブ53は、前後方向に所定間隔を空けて並列する複数のフィン53aを有している。各フィン53aは、前低後高状に傾斜しており、その上下中央部を中心にして回動可能に支持されている。各フィン53aは、揺動に伴って処理物を後方へ移送しつつ、隣り合うフィン53a間の隙間から穀粒を漏下させる。図17に示す各フィン53aは、アクチュエータ(モータ等)340に接続されており、アクチュエータ340の駆動力により回動可能に構成されている。各フィン53aが回動されることによって、各フィン53aの傾斜角度が変更され、これにより隣り合うフィン53a間の隙間寸法(フィン開度)が変更される。
チャフシーブ53の複数のフィン53aの具体的な開閉構造及びその連動機構の詳細は次の通りである。すなわち、図12乃至図14及び図17に示すように、チャフシーブ53に対しては、その開度を調節するための開度調節装置314が設けられる。開度調節装置314には、アクチュエータ340、第二ギヤアーム341、後述のチャフ開度検出装置342、ワイヤ343、調整レバー347、付勢部材348等が備えられる。開度調節装置314(主要部をなすアクチュエータ340)は、大まかに言えば、唐箕ファン56の左吸入口391b近傍であって、当該左吸入口391bの後方に配置される。ここで、開度調節装置314は、チャフシーブ53の開度を予め設定された基準開度に対して増大または減少するように調節する。なお、図12中符号350は揺動駆動機構であり、351は一番搬送用駆動機構であり、352は二番搬送用駆動機構である。
アクチュエータ340は、電動式モータで構成される。アクチュエータ340の出力軸には、第二小径ギヤ340aが固設される。第二ギヤアーム341は、第二小径ギヤ340aと噛合可能な歯部と、半径方向外側に突出する突出部341aとを備えて構成される。そして、第二小径ギヤ340aと第二ギヤアーム341の歯部とが噛合され、第二ギヤアーム341の突出部341aとワイヤ343の一端部とが連結される。
アクチュエータ340及び第二ギヤアーム341は、唐箕ファン56の近傍であって左側板391aの吸入口391bの後方に配置され、左側板391aの左外側に第二取付部材344を介して取り付けられる。第二取付部材344は側面視で一つの角部を切り欠いた略矩形状に形成される。第二取付部材344の上部344a及び下部344bは、それぞれ上下中途部から左側板391a側に向かって前面視略クランク状に屈曲されて、この上下中途部と左側板391aとの間に空間が生じるように、各端部で左側板391aに当接可能とされる。
そして、アクチュエータ340及び第二ギヤアーム341が、第二取付部材344の上下中途部と左側板391aとの間に形成される前記空間に収容されつつ、第二取付部材344の上下中途部の右内側に固定されたうえで、第二取付部材344の上部344a及び下部344bの各端部が左側板391aに当接した状態にボルト等により固定される。これにより、アクチュエータ340及び第二ギヤアーム341が左側板391aの左外側に取り付けられることとなる。
図15(a)に示すように、調整レバー347は板状部材で構成される。調整レバー347は、側面視で五角形状に形成され、その長手方向を略上下方向として前低後高状に傾斜した状態で、左側第一枢支片345及び第二枢支片346の左側方に配置される。調整レバー347は、その上端部で左側第一枢支片345の前後中途部に支軸347aを介して回動自在に支持されるとともに、その上下中途部で左側第二枢支片345の前後中途部に回動自在に枢結される。調整レバー347の下端部には、ワイヤ343の他端部が前方から連結される。つまり、調整レバー347の下端部が、第二ギヤアーム341の突出部341aとワイヤ343を介して連係される。
また、調整レバー347の下端部には、ばね等からなる付勢部材348の一端部が後方から連結される。そして、調整レバー347が、ワイヤ343の引張方向(前方向)とは逆方向(後方向)に支軸347aを介して回動するように、付勢部材348により付勢される。図15(b)に示すように、調整レバー347が付勢部材348の付勢力に従って支軸347aを中心に後方向へ回動するとき、各第二枢支片346・346が各第一枢支片345・345に対して後方へ移動して、各フィン53aが左右両側の上端縁部を中心に回動し、各フィン53aの角度が増大方向へ変化することとなる。
このような構成において、アクチュエータ340の駆動により第二小径ギヤ340aが回動し、この第二小径ギヤ340aと噛合する第二ギヤアーム341がその支軸347aを中心に図13における反時計回り方向に回動する場合、第二ギヤアーム341の突出部341aが下方へ移動して、調整レバー347の下端部がワイヤ343により付勢部材348の付勢力に抗して前方へ引っ張られ、調整レバー347が支軸を中心に前方へ回動する。この調整レバー347の回動にともなって、各第二枢支片346・346が各第一枢支片345・345に対して前方へ移動して、各フィン53aが左右両側の上端縁部を中心に前方へ回動する。これにより、図15(a)に示すように、各フィン53aの角度が小さくなって、隣り合うフィン53a・53aの間隔が狭まり、チャフシーブ53の開度が減少することとなる。
一方、アクチュエータ340の駆動により第二小径ギヤ340aが回動し、この第二小径ギヤ340aと噛合する第二ギヤアーム341がその支軸347aを中心に図13における時計回り方向に回動する場合、第二ギヤアーム341の突出部341aが上方へ移動して、ワイヤ343が緩み、調整レバー347が付勢部材348の付勢力に従って支軸347aを中心に後方向へ回動する。この調整レバー347の回動にともなって、各第二枢支片346・346が各第一枢支片345・345に対して後方へ移動して、各フィン53aが左右両側の上端縁部を中心に後方へ回動する。これにより、図15(b)に示すように、各フィン53aの角度が大きくなって、隣り合うフィン53a・53aの間隔が広がり、チャフシーブ53の開度が増大することとなる。
図4及び図5に示すグレンシーブ54は、チャフシーブ53の下方に配置されて、揺動選別装置本体の前後中途部に支持される。ストローラック55は、チャフシーブ53の後方でグレンシーブ54の後上方に配置されて、揺動選別装置本体50−1の後部に支持される。揺動選別装置50(ストローラック55)の後方、には、機体外部に連なる排出口50aが配置される。
風選別装置は、唐箕ファン56、プレファン57、セカンドファン58及び吸引ファン59を備える。
唐箕ファン56は、前フィードパン51の後部及び後フィードパン52の下方に配置されて、下部機枠12の前部に左右方向に横設される。プレファン57は、前フィードパン51の前部の下方で唐箕ファン56の前上方に配置されて、下部機枠12の前端部付近に左右方向に横設される。セカンドファン58は、チャフシーブ53の後端部の下方で後述の穀粒搬送装置の一番搬送装置61と二番搬送装置62との間に配置されて、下部機枠12の前後中途部に左右方向に横設される。
吸引ファン59は、機体後部に配置されており、ストローラック55の上方に配置されて、下部機枠12の後端部の上方で左右方向に横設される。吸引ファン59は、上下方向に所定間隔を空けて配置される上部吸引カバー59aと下部吸引カバー59bとの間に設けられている。上部吸引カバー59a及び下部吸引カバー59bの後端部は、吸引ファン59の後方に存在しており、機体外部に連なる排気口59cを構成している。排気口59cは、排出口50aの上方に配置されており、下部吸引カバー59bにより排出口50aと仕切られている。
唐箕ファン56、プレファン57、セカンドファン58及び吸引ファン59は、エンジン11からの動力がそれぞれの回転軸に伝達されることによって、回転して選別風を発生させる。前記選別風は、機体内部において後上方に流れ、そして吸引ファン59に吸引された後に排気口59cから機体外部に排出され、又は排出口50aから機体外部に排出される。
穀粒搬送装置は、一番搬送装置61、二番搬送装置62、一番揚穀装置63、二番還元装置64を備える。
一番搬送装置61は、唐箕ファン56の後方であってチャフシーブ53及びグレンシーブ54の下方に配置され、下部機枠12の前後中途部に左右方向に横設される。二番搬送装置62は、一番搬送装置61及びセカンドファン58の後方でストローラック55の下方に配置されて、下部機枠12の後部に左右方向に横設される。
一番揚穀装置63は、一番搬送装置61の右側方に配置されて、下部機枠12の右外側で上下方向に立設される。一番揚穀装置63は、その下端部で一番搬送装置61の右端部と接続されるとともに、その上端部で穀粒貯溜部7のグレンタンク71と接続される。
二番還元装置64は、二番搬送装置62の右側方に配置されて、下部機枠12の右外側で前後方向に斜設される。二番還元装置64は、その後下端部で二番搬送装置62の右端部と接続されるとともに、その前上端部で脱穀部4の扱室44又は揺動選別装置50の上方の空間と接続される。
[II.脱穀、選別作業]
このような構成において、脱穀及び選別作業が行われる際、脱穀部4では、刈取部3から搬送されてきた刈取後の穀稈が、その株元でフィードチェン41により受け継がれ、排藁処理部8に向かって後方へ搬送される。この搬送中に、穀稈の穂先部が扱胴42により脱穀され、その穀粒や藁屑や塵埃を含む処理物が選別部5へ落下する過程で受網45により選別される。扱胴42により脱穀されなかった藁くず等の未処理物は、扱室44から送塵口40を介して処理室46に搬送されたあと、処理胴43により処理され、その処理物が選別部5へ落下する過程で処理胴網47により選別され選別部5に投入される。
選別部5では、揺動選別装置本体が揺動機構により揺動されている状態で、脱穀部4の受網45から落下した処理物の層が前後フィードパン51・52により均平化されて、処理物が比重選別される。前フィードパン51による選別後のものが、チャフシーブ53により粗選別される。後フィードパン52による選別後のものが、グレンシーブ54により選別される。また、脱穀部4の受網45、処理胴網47から落下した処理物が、チャフシーブ53により粗選別される。チャフシーブ53による選別後のものが、グレンシーブ54と唐箕ファン56、プレファン57及びセカンドファン58からの選別風とにより精選別される。
チャフシーブ53及びグレンシーブ54から落下する穀粒や藁屑などが、唐箕ファン56及びプレファン57からの選別風により精選別される。このとき、比重が大きく重い穀粒は、一番物として選別風に逆らって落下し、一番搬送装置61に収容される。これよりも比重が小さく軽いものは、唐箕ファン56及びプレファン57からの選別風により、さらにはセカンドファン58からの選別風により二番搬送装置62の上方へ向けて飛ばされる。
この飛ばされたものの中でも比較的重いもの、例えば枝梗付穀粒は、二番物として落下し、二番搬送装置62に収容される。これを除いたものは、唐箕ファン56、プレファン57及びセカンドファン58からの選別風によりストローラック55へ向けてさらに飛ばされる。そのうちの藁屑は、ストローラック55によりほぐされる。この藁屑の中にある穀粒は、二番物として落下し、二番搬送装置62に収容される。他の塵埃は、前記選別風により排出口50aから機体外部に排出される。
一番物は、一番搬送装置61により一番揚穀装置63に搬送され、つづいて一番揚穀装置63により穀粒貯溜部7のグレンタンク71に搬送されて、グレンタンク71に貯溜される。二番物は、二番搬送装置62により二番還元装置64に搬送され、つづいて二番還元装置64により脱穀部4の扱室44又は揺動選別装置50の上方空間へ搬送されて、脱穀されて、又は脱穀されずに、揺動選別装置50及び風選別装置により再選別される。
[III.走行部までの動力伝達経路]
次に、図16を用いて、コンバイン1におけるエンジン11から走行部2(クローラ式走行装置21)まで(走行系)の動力の伝達経路について説明する。
図16に示すように、コンバイン1の走行系の動力の伝達経路には、走行用の油圧式無段変速装置(以下、走行用HSTという。)110、操向用の油圧式無段変速装置(以下、操向用HSTという。)120、伝動機構140が備えられる。
走行用HST110には、可変容量型の走行ポンプ110P、固定容量型の走行モータ110Mが備えられる。走行ポンプ110Pと走行モータ110Mとはそれぞれ油圧ポンプと油圧モータとで構成され、互いに流体接続される。なお、走行ポンプ110Pと走行モータ110Mとは少なくとも一方が可変容量型であればよい。
走行ポンプ110Pには、走行ポンプ軸111、プランジャ、シリンダ、走行ポンプ容量調整手段113が備えられる。走行ポンプ軸111はエンジン11の出力軸と連動連結され、シリンダは走行ポンプ軸111に相対回転不能に支持される。シリンダに複数のプランジャが往復摺動可能に収納される。走行ポンプ容量調整手段113は可動斜板と制御軸とを有し、制御軸にて可動斜板を傾転させることによりプランジャの往復摺動するストロークが変更され、走行ポンプ110Pからの吐出量を変更することができるように構成される。
走行モータ110Mには、プランジャ、シリンダ、走行モータ軸115、固定斜板が備えられる。シリンダは走行モータ軸115に相対回転不能に支持される。固定斜板は走行モータ本体114に固定され、走行ポンプ110Pから送油される圧油により、プランジャが押されてシリンダ及び走行モータ軸115を回転させる。
走行用HST110は変速操作装置によって走行ポンプ容量調整手段113が操作可能とされる。図16又は図17に示すように、変速操作装置には、人為操作可能な主変速操作具としての主変速レバー94、第一操作位置検出センサ94a、走行ポンプ110P用の作動装置である変速アクチュエータ116が備えられる。第一操作位置検出センサ94a、変速アクチュエータ116は、コンバイン1に備えられる後述の制御装置200と接続される。
主変速レバー94は、操縦部9で運転席91近傍に配置される。主変速レバー94は、中立位置から前進側又は後進側へと回動操作可能とされる。
第一操作位置検出センサ94aは、主変速レバー94の回動基部に設けられ、主変速レバー94の回動角を主変速レバー94の操作位置として検出可能とされる。また、変速アクチュエータ116は、本実施の形態においては、油圧シリンダ、電磁弁、この電磁弁を作動させるソレノイド等から構成される。但し、変速アクチュエータ116は、特に限定するものではなく、電動モータや電動シリンダ等で構成することも可能である。
主変速レバー94が中立位置から前進側又は後進側へ回動操作されると、その操作位置が第一操作位置検出センサ94aにより検出され、変速アクチュエータ116のソレノイドが制御装置200により作動させられて、電磁弁が切り換えられる。この電磁弁の切り換えによって、油圧シリンダが第一操作位置検出センサ94aの検出値に応じた長さに伸縮され、走行ポンプ容量調整手段(可動斜板)113が中立位置から前進側又は後進側へ傾転されて、走行ポンプ110Pの容量が変更される。
こうして、走行用HST110では、走行ポンプ110Pの駆動時に、走行ポンプ容量調整手段(可動斜板)113の傾転に応じて走行ポンプ110Pの容量が変更されることによって、走行ポンプ110Pから走行モータ110Mへ吐出される作動油の吐出量及び吐出方向が変更され、走行モータ軸115の回転方向が正又は逆方向に変更されるとともに、回転数が無段階に変更される。
図16に示すように、操向用HST120には、可変容量型の操向ポンプ120P、固定容量型の操向モータ120Mが備えられる。操向ポンプ120Pと操向モータ120Mとはそれぞれ油圧ポンプと油圧モータとで構成され、互いに流体接続される。なお、操向ポンプと操向モータとは少なくとも一方が可変容量型であればよい。
走行部に係る伝動機構140は、一対の遊星ギヤ機構、即ち第一遊星ギヤ機構150a及び第二遊星ギヤ機構150b、走行用出力伝動機構160、操向用出力伝動機構170が備えられる。
第一遊星ギヤ機構150aにおける各遊星ギヤ152はインターナルギヤ154の内歯とサンギヤ151の外歯とに噛合するように両ギヤ間に介装され、キャリア153に回転自在に軸支される。そして、キャリア153が第一出力軸130aと固定される。サンギヤ151は回転軸156に固定される。
同様に、第二遊星ギヤ機構150bにおける各遊星ギヤ152はインターナルギヤ154の内歯とサンギヤ151の外歯とに噛合するように両ギヤ間に介装され、キャリア153に回転自在に軸支される。そして、キャリア153が第二出力軸130bと固定される。
走行用出力伝動機構160には、出力軸161、分岐軸165、第一走行用出力ギヤ列166a、第二走行用出力ギヤ列166b、歯車噛合式の副変速機構167、駐車用ブレーキ装置162が備えられる。出力軸161は走行用HST110における走行モータ110Mの走行モータ軸115と連動連結され、分岐軸165は出力軸161に副変速機構167を介して連動連結される。
副変速機構167は走行用の走行モータ軸115の回転動力を出力軸161と分岐軸165との間で多段変速させることができるように構成される。なお、本実施形態においては、副変速機構を、作業用の低速段と走行用の高速段とに変速可能となるように構成しているが、三段以上に変速可能となるように構成してもよい。
副変速機構167には、高速駆動ギヤ167a及び低速駆動ギヤ167bと、高速従動ギヤ167c及び低速従動ギヤ167dと、走行系シフタ167eと、伝動軸167fとが備えられる。副変速機構167は、副変速操作装置によって操作可能とされており、副変速操作装置には、人為操作可能な副変速操作具としての副変速レバー95と、第二操作位置検出センサ95aとが備えられる。
なお、走行モータ110Mの走行モータ軸115にはPTOプーリ118が固定され、このPTOプーリ118から走行モータ110Mの回転動力が刈取部3の伝動機構に伝達可能とされる。
第一走行用出力ギヤ列166aは分岐軸165の回転動力を第一遊星ギヤ機構150aのインターナルギヤ154に伝達し、第二走行用出力ギヤ列166bは分岐軸165の回転動力を第二遊星ギヤ機構150bのインターナルギヤ154に伝達することができるように構成される。第一走行用出力ギヤ列166aと第二走行用出力ギヤ列166bの各伝動方向及び伝動比は、互いに同一に設定される。
駐車用ブレーキ装置162は、ブレーキ軸163、ブレーキユニット164を有し、ブレーキ軸163により出力軸161から回転動力を受けて分岐軸165へ出力し、ブレーキユニット164によりブレーキ軸163に対して選択的に制動力を付加することができるように構成される。
操向用出力伝動機構170には、出力軸171、共通軸172、第一操向用出力ギヤ列173a、第二操向用出力ギヤ列173b、クラッチ装置175、操向用ブレーキ装置174が設けられる。
このような構成において主変速レバー94が中立位置から回動操作されて走行用HST110の走行モータ110Mが駆動する場合、走行モータ110Mの回転動力が、走行モータ軸115から、走行用出力伝動機構160の出力軸161、分岐軸165、第一及び第二走行用出力ギヤ列166a・166b、第一及び第二遊星ギヤ機構150a・150bのインターナルギヤ154、遊星ギヤ152、キャリア153の順に各部材に伝達され、ついで第一及び第二出力軸130a・130bに伝達される。
この回転動力の伝達によって、第一出力軸130aと第二出力軸130bとが同一回転数で回転され、ひいては左右の各クローラ式走行装置21に備えられた駆動輪が同一回転方向に同一回転数で回転される。その結果、左右のクローラ式走行装置21が駆動し、機体が直進走行することとなる。
第一出力軸130aと第二出力軸130bとの互いの反対方向回転により左右一方のクローラ式走行装置21の駆動輪が正又は逆方向へ回転され、左右他方のクローラ式走行装置21の駆動輪が逆又は正方向へ回転される。その結果、左右のクローラ式走行装置21が駆動され、その場で機体のスピンターン旋回が行われる。これにより、例えば圃場や枕地での方向転換が可能とされる。
[IV.制御装置]
以下では、図4乃至図6、図8及び図17を用いて、コンバイン1の制御に関する構成について説明する。
図17に示すように、コンバイン1は制御装置200を具備する。
制御装置200は、コンバイン1の任意の位置に設けられ、中央処理装置、記憶装置等により構成される。
制御装置200には、送塵弁44a、チャフシーブ53、第一操作位置検出センサ94a、第二操作位置検出センサ95a、操向位置検出センサ92a、第一閾値調節ダイヤル96の操作位置を検出する第一ダイヤル位置検出センサ96a、第二閾値調節ダイヤル97の操作位置を検出する第二ダイヤル位置検出センサ97a、走行速度検出センサ204、扱胴ロスセンサ202、揺動ロスセンサ203、変速アクチュエータ116及び操向アクチュエータ126が接続される。
本発明に係る制御は、扱胴ロスセンサ202と揺動ロスセンサ203により算出されたロス量をロス量目標範囲に収めるために脱穀を最適な状態に調整することにあり、扱胴ロスセンサ202と揺動ロスセンサ203により算出されたロス量によってフィードバック制御を行い送塵弁44aやチャフシーブ53や車速を制御してロス量目標範囲にロス量を納めるように調整することにある。
以下に、かかる制御作動を行うための制御装置に接続した送塵弁44a、チャフシーブ53、扱胴ロスセンサ202、揺動ロスセンサ203、走行速度検出センサ204等を制御することによりロス量を可及的に減少させる制御態様を詳細に説明する。
すなわち、各送塵弁44aは、アクチュエータ44fを介して制御装置200に接続されており、アクチュエータ44fを駆動することにより各送塵弁44aを回動可能に構成される。
更に、チャフシーブ53(各フィン53a)は、アクチュエータ340を介して制御装置200に接続されており、アクチュエータ340を駆動することにより、各フィン53aを回動して、隣り合うフィン53a間の隙間寸法(フィン開度)を変更可能に構成される。
扱胴ロスセンサ202は、処理室46の処理胴網47の終端部から漏下する穀粒の量を検出するものであり、図6及び図8に示すように、平板状の感圧センサにより構成され処理室46の側壁46aに固定される。
処理室46の構造と処理過程は次の通りである。
すなわち、脱穀部4で刈取部3から搬送されてきた刈取後の穀稈はその株元でフィードチェン41により受け継がれ、排藁処理部8に向かって後方へ搬送されるものであるが、この搬送中に、穀粒や藁屑や塵埃を含む処理物が選別部5へ落下する過程で受網45により選別され、扱胴42により脱穀されなかった藁くず等の未処理物は、扱室44から送塵口40を介して処理室46に搬送されるように構成されている。
そして、処理胴43により処理されるとその処理物が選別部5へ落下する過程で処理胴網47により選別され処理胴網47から選別部5に投入される。
扱胴ロスセンサ202は、方形箱状のケースに形成されて重量質の穀粒の接触負荷に伴う負荷感知によって穀粒の量を感知することができるように構成されている。
このような処理室46において、扱胴ロスセンサ202は、処理胴43の終端部近傍の側壁46aに配置される(図4乃至図6及び図8参照)。
また、扱胴ロスセンサ202は、上下(高さ)方向において処理胴網47下の高さに位置するように、処理室46の右側壁46aに固定される(図6参照)。
当該ロスセンサ202は、検出面を左方(処理胴43の方向)に向けた状態で配置される。このように、扱胴ロスセンサ202を処理室46の側壁46aに固定することで、当該扱胴ロスセンサ202の検出面に処理物等が堆積するのを防止し、検出精度の低下を防止することができる。
なお、脱穀作業が行われる場合、処理胴43は正面視において時計回りに回転し、当該処理胴43の下側と処理胴網47との間で未処理物が脱穀処理される。
処理胴43により処理されるとその処理物が選別部5へ落下する過程で処理胴網47により選別され処理胴網47から選別部5に投入される。
このとき、処理胴網47の終端部から漏下する穀粒は、処理胴43の回転により処理胴網47の右方へと飛ばされて扱胴ロスセンサ202に接触する。これにより、扱胴ロスセンサ202は漏下する穀粒の量を検出することができる。
揺動ロスセンサ203は、揺動選別装置50の後部(ストローラック55)から落下する穀粒の量、すなわち穀粒のロス量を検出するものである。
図4乃至図8に示すように、揺動ロスセンサ203は、例えば感圧センサにより構成され、揺動選別装置50の後部(ストローラック55下方)に配置されており、ストローラック55から落下する穀粒が接触可能な位置に配置されている。
揺動ロスセンサ203は、横方向に伸延したローラ状のセンサ本体203aを構成しており、その一端に感圧センサ203bを付設し、センサ本体203aに穀粒が接触したときにセンサ本体203aが感圧センサ203bで穀粒の量を検出する。なお、図8中符号203cはセンサ本体203aを支持するヘ字形の支持プレートである。
コンバイン1においては、作業(刈取作業、脱穀作業、及び選別作業)が行われる場合、藁屑に混じった穀粒や、枝梗に付着したままの穀粒が、揺動選別装置50の揺動や前記風選別装置の選別風により後方へ送られ、ストローラック55によりほぐされて落下することがある。このとき、落下する穀粒は、揺動ロスセンサ203に接触する。
これにより、揺動ロスセンサ203は、揺動選別装置50の後部(ストローラック55)から落下する穀粒の量(ロス量)を検出することができる。揺動選別装置50の後部から落下した穀粒は、二番還元装置64により脱穀部4の扱室44へ搬送され、そして再度、扱室44内を送出され、又は、二番還元装置64により揺動選別装置50の上方空間へ搬送され、そして再度、揺動選別装置50及び風選別装置により選別される。
なお、揺動選別装置50の後部(ストローラック55)から落下する穀粒の量(ロス量)は、扱胴42による穀稈の脱穀が円滑に行われず、受網45の終端部から漏下する穀粒の量が増大する場合や、揺動選別装置50のチャフシーブ53のフィン開度が小さすぎるために、フィン間から穀粒が円滑に落下しない場合は、増大する傾向にある。
なお、扱胴ロスセンサ202・揺動ロスセンサ203に換えて、発光素子及び受光素子を有する光センサを用い、発光素子及び受光素子の間を通過する穀粒の量を検出するように構成してもよい。また、扱胴ロスセンサ202・揺動ロスセンサ203に換えて、発信器及び受信機を有する超音波センサを用い、発信器及び受信機の間を通過する穀粒の量を検出するように構成してもよい。
また、各ロスセンサにより算出されたロス値をロス量目標範囲に収めるために予め送塵弁やチャフシーブや車速をフィードバック制御する場合のロス量目標範囲の初期設定は任意に調整可能としている。すなわち、扱胴ロスセンサ202に関しては、扱胴ロスセンサ202の検出値の閾値(第一閾値)を設定するために操縦部9の運転席91近傍に第一閾値調節ダイヤル96が配置され、第一閾値調節ダイヤル96は、所定の角度範囲内で回動操作可能とされる。
また、揺動ロスセンサ203に関しては、揺動ロスセンサ203の検出値の閾値(第二閾値)を設定するために操縦部9の運転席91近傍に第二閾値調節ダイヤル97が配置され、第二閾値調節ダイヤル97は、所定の角度範囲内で回動操作可能とされる。
走行速度検出センサ204は、コンバイン1の走行速度を検出するものであり、コンバイン1の走行系の動力の伝達経路における適宜の軸やギヤの回転速度を走行速度として検出することができるように構成される。
[V.制御装置200の制御の態様]
以下では、図18を用いて、コンバイン1による作業(刈取作業、脱穀作業、及び選別作業)中における制御装置200の制御の態様について説明する。
本発明の制御態様の基本は、ロス量が目標範囲を超過した場合は送塵弁44aをまず調整し、測定ロス量が目標範囲内に収まることができない送塵弁制限値に達したら、次いでチャフシーブ53を調整し、測定ロス量が目標範囲内に収まることができないチャフシーブ制限値に達したら、次いで車速を調整するように制御することにあり、他方、ロス量が目標範囲を下回った場合は車速を調整し、測定ロス量が目標範囲内に収まることができない車速制限値に達したら、次いでチャフシーブ53を調整し、測定ロス量が目標範囲内に収まることができないチャフシーブ制限値に達したら、次いで送塵弁44aを調整するように制御したことを特徴とする。
更には、前記制御装置200は、前記扱胴ロスセンサ202の検出値が所定の第一閾値以上になった場合に、送塵弁44aにより穀粒の送出量を減少させるように制御し、また、車速を下げるように制御し、前記揺動ロスセンサ203の検出値が所定の第二閾値以上になった場合に、前記チャフシーブ53のフィン開度を増加させるように制御することにも特徴を有する。
なお、本実施形態では、作業者は、第一閾値調節ダイヤル96により第一閾値をQtに設定し、第二閾値調節ダイヤル97により第二閾値をRtに設定していることとし、第一閾値Qt・第二閾値Rtの大きさは、作業条件等に応じて作業者が適宜決定することとする。
以下具体的な制御の態様について説明する。
図18のステップS101において、制御装置200は、検出値Qdが第一閾値Qt未満であり、かつ、検出値Rdが第二閾値Rt未満であるか否かを判定する。
検出値Qdが第一閾値Qt未満であり、かつ、検出値Rdが第二閾値Rt未満である場合、制御装置200はステップS231に移行し、それ以外の場合はステップS102に移行する。
ステップS102において、制御装置200は、検出値Qdが第一閾値Qt以上であり、かつ、検出値Rdが第二閾値Rt未満であるか否かを判定する。
検出値Qdが第一閾値Qt以上であり、かつ、検出値Rdが第二閾値Rt未満である場合、制御装置200はステップS103に移行し、それ以外の場合はステップS104に移行する。
ステップS103において、制御装置200は、各送塵弁44aにより穀粒の送出量を減少させる制御を行う。
制御装置200による各送塵弁44aの制御は、各送塵弁44aをアクチュエータ44fにより一方向に回動して、各送塵弁44aの位相を、扱胴ロスセンサ202の検出値Qdが第一閾値Qtとなったときの位相よりも、前記一方向側にずらすことによって行われる。
これにより、扱胴42による脱穀時において、扱胴42の外周面に沿って、後方へ向かって螺旋状に送出される穀粒が、各送塵弁44aに当接して前方へ案内されて、扱室44の後部へ送出される穀粒の量が減少するので、扱胴ロスセンサ202の検出値Qdが減少する。制御装置200は、検出値Qdが第一閾値Qt未満になるまで、各送塵弁44aの制御を継続する。
ステップS104において、制御装置200は、検出値Qdが第一閾値Qt未満であり、かつ、検出値Rdが第二閾値Rt以上であるか否かを判定する。検出値Qdが第一閾値Qt未満であり、かつ、検出値Rdが第二閾値Rt以上である場合、制御装置200はステップS105に移行し、それ以外の場合はステップS106に移行する。
ステップS105において、制御装置200は、隣り合うフィン53a間の隙間寸法、すなわちチャフシーブ53のフィン開度を増加させる。
制御装置200によるフィン開度の制御は、各フィン53aをアクチュエータ340により回動して、各フィン53aの傾斜角度を、揺動ロスセンサ203の検出値Rdが第二閾値Rtとなったときの角度よりも、増大させることによって行われる。
これにより、各フィン53a間から穀粒が落下しやすくなり、各フィン53a間から穀粒が円滑に落下するので、揺動ロスセンサ203の検出値Rdが減少する。制御装置200は、検出値Rdが第二閾値Rt未満になるまで、フィン開度の制御を継続する。
ステップS106において、すなわち、検出値Qdが第一閾値Qt以上であり、かつ、検出値Rdが第二閾値Rt以上である場合においては、制御装置200は、コンバイン1の車速Vを下げる制御を行う。
制御装置200による車速Vを減少させる制御は、車速Vを、扱胴ロスセンサ202の検出値Qdが第一閾値Qtとなったときの車速V1以下に制限することによって行われる。
すなわち、検出値Qdが第一閾値Qtに達した場合、作業者が主変速レバー94を増速側へ回動操作しても、制御装置200はコンバイン1の車速VがV1以上に増加しないように制御する。
これにより、刈取部3による穀稈の刈り取り量が減少し、扱胴42による穀稈の脱穀が円滑に行われるようになるので、扱胴ロスセンサ202の検出値Qdが減少する。制御装置200は、検出値Qdが第一閾値Qt未満になるまで、車速Vの制御を継続する。
検出値Qdが第一閾値Qt未満であり、かつ、検出値Rdが第二閾値Rt未満である場合、制御装置200はステップS231に移行する。このステップにおいては、ロス量が目標範囲を下回っているため、まず車速を調整し、測定ロス量が目標範囲内に収まることができない車速制限値に達したら、次いでチャフシーブを調整し、測定ロス量が目標範囲内に収まることができないチャフシーブ制限値に達したら、次いで送塵弁を調整するように制御する。制御の態様はロス量が目標範囲を上回っている場合の制御態様の順番の逆態様で処理される。
以上にように構成することで、上記S106に示すように、揺動ロスセンサ203の検出値が大きい場合、すなわち穀粒のロス量が多い場合で、さらに扱胴ロスセンサ202の検出値も大きいときには、穀粒のロス量の増加の原因は、受網45の後端部から漏下する穀粒の量が多いことによるものであるとともに、チャフシーブ53のフィン開度が小さすぎることによるものであると判断することが可能である。
これに対し、上記S105に示すように、揺動ロスセンサ203の検出値が大きい場合で、扱胴ロスセンサ202の検出値が小さいときには、穀粒のロス量の増加の原因は、チャフシーブ53のフィン開度が小さすぎることによるものであり、受網45の後端部から漏下する穀粒の量によるものではないと判断することが可能である。
また、上記S103に示すように、揺動ロスセンサ203の検出値が小さい場合でも、扱胴ロスセンサ202の検出値が大きいときには、扱胴42による穀稈の脱穀が円滑に行われておらず、今後揺動ロスセンサ203の検出値(穀粒のロス量)が増加する可能性があると判断することが可能である。
従って、扱胴ロスセンサ202と揺動ロスセンサ203とにより、穀粒のロス量が増加する原因を精度よく特定することが可能となり、そのロスへの対応が容易に図れる。
また、制御装置200により扱胴ロスセンサ202及び揺動ロスセンサ203の検出値に応じた制御が行われることによって、穀粒のロス量の増加を的確に抑制することが可能となる。
上記のように、扱胴ロスセンサ202と揺動ロスセンサ203により穀粒のロス量を可及的に減少して十分な穀粒の脱穀回収を行うようにしている。しかも、各ロスセンサ202,203からの検出値に応じてロス値をロス量目標範囲内に収めるために制御装置200を介して、送塵弁44aやチャフシーブ53や車速をフィードバック制御する。
ここで、車速を制御するに際してはエンジンの負荷に応じて自動で減速し、元の速度まで徐々に復帰し、条件に合う負荷率の設定により作業を効率化する、いわゆるエンジン負荷に伴う車速制御が採用されている。すなわち、負荷が大となれば自動減速し、負荷が小となれば元の速度へ復帰するように制御される。
かかるエンジン負荷に伴う車速制御の実行トリガーは、作業者が判断するように構成されており、圃場の状況や扱胴ロスセンサ202、揺動ロスセンサ203の検出値を参考にしながらエンジン負荷に伴う車速制御を実行するか否かを判断する。
図3(b)に示すようにエンジン負荷に伴う車速制御スイッチ94-7は主変速レバー94のグリップ部94-1に配置したり、運転席91のハンドルの近傍に快速操作レバーを配置して構成し、それぞれエンジン負荷に伴う車速制御のON・OFF操作をすることができるように構成している。
しかも、これらの作業者のエンジン負荷に伴う車速制御の実行の操作はエンジン負荷に伴う車速制御がONであることが条件であり、このようにエンジン負荷に伴う車速制御を実行することにより、エンジンの回転は一定となり、扱胴42や揺動選別装置50等の脱穀選別作業領域を最適な環境作動にすることができる。
また、エンジン負荷に伴う車速制御中で元の速度復帰後においては、送塵弁44a角度やチャフシーブ53の角度や車速は、作業者の設定値ではなく、穀粒ロス量によって補正された値を基準として制御される。
しかし、エンジン負荷に伴う車速制御になっていない場合には、ロス量が第一、第二の閾値の上限を超えるか下限以下の場合には、送塵弁44a、チャフシーブ53、車速の順で制御してロス量を可及的に減少させる。
車速が補正制限値以下で、かつ、チャフシーブ53の角度が補正制限値以下の場合には、ロス量によるチャフシーブ53の補正量を算出して加算し、また、車速の補正量を算出し加算する。
このように、ロス量によって各補正量を算出するものであり、車速に関しては作業者の設定した閾値ではなく、ロス量によって補正された値を基準としてエンジン負荷に伴う車速制御を行う(図19参照)。
一般に、ロス自動制御とエンジン負荷に伴う車速制御との優劣は、エンジン負荷に伴う車速制御が優先されるように構成されており、従ってエンジン負荷に伴う車速制御状態では正常なロス量の検出が通常できないためにロス自動制御は停止している。すなわち、エンジン負荷に伴う車速制御をロス自動制御より優先して制御するように構成するようにしてエンジン負荷の発生するような走行状態はコンバインの機構自体に大きな負荷が発生してこのままでの走行刈取り作業は故障や作業安全性に支障を及ぼすと仮定してロス自動制御での穀粒収穫の向上よりもエンジン負荷に応じた車速減速制御の方を優先するように構成している。
従って、ロス自動制御をONして刈取り作業を行っていると、特に走行部2は目標値内にロス量を修正することができるように所定の補正値で走行することになり、この際に作業者は圃場の状況や扱胴ロスセンサ202、揺動ロスセンサ203の検出値を参考にしながらエンジン負荷に伴う車速制御を実行するか否かを判断し、その結果エンジン負荷に伴う車速制御をON又はOFF操作する。エンジン負荷に伴う車速制御の実行トリガーは、このように作業者が判断しON又はOFF操作するように構成されている。
ここでエンジン負荷に伴う車速制御は車速を制御するに際してエンジンの負荷に応じて自動で減速し、負荷が小となれば元の速度まで徐々に復帰し条件に合う負荷率の設定により作業を効率化するものである。
車速が補正制限値以下で、かつ、チャフシーブ53の角度が補正制限値以下の場合には、ロス量によるチャフシーブ53の補正量を算出して加算し、また、車速の補正量を算出し加算する。
ここで、車速を制御するに際してはエンジンの負荷に応じて自動で減速し、元の速度まで徐々に復帰し、条件に合う負荷率の設定により作業を効率化する、いわゆるエンジン負荷に伴う車速制御が採用されている。すなわち、負荷が大となれば自動減速し、負荷が小となれば元の速度へ復帰するように制御される。
かかるエンジン負荷に伴う車速制御の実行トリガーは、作業者が判断するように構成されており、圃場の状況や扱胴ロスセンサ202、揺動ロスセンサ203の検出値を参考にしながらエンジン負荷に伴う車速制御を実行するか否かを判断する。
しかも、これらの作業者のエンジン負荷に伴う車速制御の実行の操作はエンジン負荷に伴う車速制御がONであることが条件であり、このようにエンジン負荷に伴う車速制御を実行することにより、エンジンの回転は一定となり、扱胴42や揺動選別装置50等の脱穀選別作業領域を最適な環境作動にすることができる。
また、エンジン負荷に伴う車速制御中で元の速度復帰後においては、送塵弁44a角度やチャフシーブ53の角度や車速は、作業者の設定値ではなく、穀粒ロス量によって補正された値を基準として制御される。
しかし、エンジン負荷に伴う車速制御になっていない場合には、ロス量が第一、第二の閾値の上限を超えるか下限以下の場合には、送塵弁44a、チャフシーブ53、車速の順で制御してロス量を可及的に減少させる。
この発明では、ロス自動制御形態で刈取り作業を遂行している時に圃場環境の変化、例えば直進刈取り走行から刈取り条を変更するために行うUターン走行の刈取り作業一時中断状態や刈取り作業終了後の路上走行状態などのような刈取り非作業形態においては作業効率の面からロス自動制御を解除し、かつ補正値設定も解除することによってロス自動制御の減速状態を解除し基準値の走行として作業効率の向上を図るものである。
この際に、ロス自動制御での減速状態を解除し基準値の走行速度になるまでの復帰速度をエンジン負荷に伴う車速制御の原速度への復帰速度と略同一の速度に変更することができるように構成した。
そのためにはロス自動制御の解除操作をすることにより走行部の油圧モータの回転速度がロス自動制御の補正値に基づき制御されていた状態を解除して走行部の操作速度に戻す。この際に減速解除になってから走行部の操作速度になるまでの立上がりの復帰速度をエンジン負荷に伴う車速制御における原速度への復帰速度と略同一の速度となるように変更する。
すなわち、減速解除されてから走行部の操作速度にまで立ち上がる速度をエンジン負荷に伴う車速制御の原速度への復帰速度と略同一の速度とするものであり、このような機能により迅速に所望の時間内に走行部の操作速度に立ち上げることができ作業効率の向上を図ることができる効果がある。
特に、この立ち上がる速度をエンジン負荷に伴う車速制御の復帰速度と略同速度としたことにより急な復帰速度とすることによるハンチングを生起することなく自然な作業速度で原速度に復帰して円滑な刈取り作業を達成することができる。
また、一般に走行部の前進、後進、中立のシフト操作を行う主変速レバー94が中立位置にシフトされる状態、例えば圃場での角部の刈取り作業のように機体を頻繁に前進後退走行をさせる隅部刈取り作業状態であり、その状態は刈取りの非作業状態であると想定してこの主変速レバー94の中立シフト位置の確認検出を行うことによりロス自動制御を解除する構成とした。すなわち、機体を頻繁に前進後退走行をさせる隅部刈取り作業状態では主変速レバー94のシフト作動時に必ずシフト軌跡の中途で中立位置を通過してシフトされるというシフト機構上の特性を利用して変速レバーのかかる中立位置シフトをパラメータとして自動的にロス自動制御を解除する構成とした。
かかる理は副変速レバー95の高速走行シフトにも当てはまることであり、超高速走行にするために主変速レバー94の高速シフトと加えて副変速レバー95のシフトによる高速シフト操作においてもかかるシフト操作を例えば路上走行、すなわち刈取り非作業と想定してこの副変速レバー95の高速シフト位置の確認検出を行うことによりロス自動制御を解除する構成とした。
なお、副変速レバー95による高速シフト操作は構造上ギアの噛み合いによる連動機構として構成されているため走行部の停止状態でのみ作動することができるように構成されている。従って、副変速レバー95による高速シフト操作は主変速レバーとは別個のパラメータとしてロス自動制御を解除する構成とした。上記の非作業状態の具体的な例示として主変速レバー94、副変速レバー95のシフト位置(回行時や後進走行や副変速シフト等の変速レバー位置)を例示したが、これらは要するに穀稈が前方から搬送されてこない状態を示しており、穀稈の前方からの流れがない状態とは、刈取り非作業状態を想定しているものである。
このように構成することにより主変速レバー94が中立位置にシフトされている状態では走行部をはじめとしてロス自動制御の作動補正がないために通常の設定基準で作動をすることになるが、かかる通常の設定基準にまで立ち上がる速度はエンジン負荷に伴う車速制御の原速度への復帰速度と略同速度とするものである。
また、副変速レバー95の操作などにより走行速度を高速走行にシフトしたことを検出すると、この状態では刈取り作業以外の状態、例えば路上走行であると想定してロス自動制御の車速制御を解除しロス自動制御の作動補正がないために通常の設定基準で作動をすることになり、この際に通常の設定基準にまで立ち上がる速度をエンジン負荷に伴う車速制御の原速度への復帰速度と略同一の速度とするものである。
このように本発明の要旨は、ロス自動制御の必要のない状態、すなわち、路上走行時や圃場内でのUターン走行などの刈取作業をしていない非作業状態においては、今までのロス自動制御下での車速減速を解除すべく減速解除操作をして走行性の向上を図る。かかる減速解除操作によって減速解除の基準速度になるまでの間の立ち上がり速度、すなわち任意シフト速度或いは基準の速度に復帰するまでの速度を速くし、例えば、通常の刈取り作業時のエンジン負荷に伴う車速低減制御における原速度復帰への立ち上がり速度と略同速度になるように構成した。従って、刈取り作業をしていない非作業状態では可及的迅速に走行速度を元に戻して作業性や応答性を良好にして脱穀ロスを可及的に減少して圃場での最適な刈取、脱穀作業を行うことができる。
このように刈取り作業を実施していない非作業状態ではロス自動制御の減速解除速度が悪くなると作業性や応答性が低下して刈取り作業全般の効率化の低下を招来することになるが、本発明では車速復帰速度を変更して可及的迅速に元の走行速度に戻して作業性や応答性を良好にすることができる。
更には、走行部の前進、後進、中立のシフト操作を行う主変速レバー94が中立位置にシフトされたことを検出するとこれをパラメータとしてロス自動制御の車速制御を解除するように構成し、特に、主変速レバー後進シフトの過程では必ず中立位置を通過してシフトされるためその時点でロス自動制御における車速補正制御を自動的に解除して可及的瞬時に車速を上げるという立ち上がり速度アップを図ることによりロス自動制御機構を具備しながら変速レバーのシフト状況に応じて刈取り作業の効率化を図ることができる。
同様に、変速レバーを高速走行にシフトする場合も路上走行の刈取り非作業状態と想定してかかる高速走行シフト状態を検出するとこの状態をパラメータとして自動的にロス自動制御の車速制御を解除し基準速度に復帰するまでの立ち上がり速度をエンジン負荷に伴う車速制御における原速度復帰と略同復帰速度として走行応答性を良好にしてコンバインの走行性を向上して刈取り作業の効率を向上する。