この種の電動弁として、弁体が弁座に着座した後も弁体付勢ばねが所定量圧縮されるまでは弁体を下降させ続け(押圧し続け)、弁体を弁座に所定の押圧力をもって押し付けた押圧閉弁状態を作り出すようにしたものが知られている(例えば特許文献1、2参照)。
このような電動弁の従来例を図12に示し、以下、簡単に説明する(後述する本発明の実施形態のものと基本構成は略同じであるので、詳細はそちらを参照されたい)。
図示例の電動弁1'は、弁体25と、弁体25を軸方向に相対移動及び相対回転可能に保持する、雄ねじ部21eを持つ弁軸21と、弁体25と弁軸21との間に縮装された弁体付勢ばね24と、弁軸21の雄ねじ部21eが螺合する雌ねじ部15iを持つガイドステム15及び弁体25が接離する弁座11aが設けられた弁本体10と、弁軸21をガイドステム15に対して回転させながら昇降させるためのロータ30及びステータ50を有する昇降駆動機構と、弁軸21の制御用原点位置を定める閉弁方向ストッパ機構(固定ストッパ55、可動ストッパ35)と、を備え、弁体付勢ばね24の付勢力により弁体25が弁座11aに押し付けられた押圧閉弁状態を作り出すべく、前記昇降駆動機構により弁軸21を一方向に回転させながら下降させて弁体25を弁座11aに着座させた後、さらに弁軸21を弁体付勢ばね24の付勢力に抗して、閉弁方向ストッパ機構により定められる制御用原点位置、言い換えれば、閉弁方向ストッパ機構を構成する固定ストッパ55に可動ストッパ35が接当係止される前記制御用原点位置まで下降させるようにされる。
かかる電動弁1'の動作をより具体的に説明する。
すなわち、ステータ50に閉弁方向用駆動パターンとなるパルス(正転パルスと称することがある)を供給することにより、ロータ30及び弁軸21が一方向(例えば、平面視時計回り)に回転せしめられ、雌ねじ部15iと雄ねじ部21eからなるねじ送り機構により、弁軸21及び閉弁方向用可動ストッパ35が回転しながら下降し、弁体25が弁座11aに着座して弁口が閉じられる。
この時点では、可動ストッパ35は未だ固定ストッパ55に接当しておらず、ロータ30及び弁軸21の回転下降は停止されず、弁体付勢ばね24が所定量圧縮されるまでパルス供給が継続され、それによって、弁体25が弁座部材11に着座したままロータ30、弁軸21、弁ホルダ23等はさらに回転しながら下降する。
このときは、弁体25に対して弁軸21及び弁ホルダ23が下降するため、弁体付勢ばね24が圧縮せしめられ、これによって弁軸21及び弁ホルダ23の下降力が吸収され、その後、弁体付勢ばね24の圧縮量が所定量となったとき、可動ストッパ35が固定ストッパ55に接当して係止され、ロータ30及び弁軸21が最下降位置に達し、ステータ50に閉弁方向用駆動パターンとなるパルス供給が続行されてもロータ30及び弁軸21の下降は強制的に停止される。このときの弁軸21の位置を制御用原点位置と称し、前記着座位置から前記原点位置までの下降量Laは、パルス数で換算するとPo(例えば32パルスで、これを開弁セットパルス数Poと称することがある)である。なお、本例の電動弁1'では、ステッピングモータにおける1パルス供給による回転角度、弁軸21の雄ねじ部21eのピッチ等が予め分かっているので、弁軸21の下降量及び上昇量は、閉弁方向用駆動パターンとなる正転パルス数、開弁方向用駆動パターンとなる逆転パルス数をカウントすることにより設定できる。
このように、弁体25が弁座11aに着座して弁口が閉じられた後においても、可動ストッパ35が固定ストッパ55に接当して係止される制御用原点位置に達するまでは、ロータ30、弁軸21、及び弁ホルダ23の回転下降が継続されることにより、弁体付勢ばね24が圧縮されるため、弁体25が弁座11aに強く押し付けられ(この状態を押圧閉弁状態と称する)、弁漏れ等を確実に防止できる。
一方、上記制御用原点位置(押圧閉弁状態)からステータ50に開弁方向用駆動パターンとなるパルス(逆転パルスと称することがある)を供給すると、ロータ30及び弁軸21が前記とは逆方向(例えば、平面視反時計回り)に回転せしめられ、雌ねじ部15iと雄ねじ部21eからなるねじ送り機構により、ロータ30、弁軸21、弁ホルダ23及び開弁方向用可動ストッパ36が回転しながら上昇し、これに伴い、弁体25に対する押圧力が弱められ、弁体付勢ばね24が所定量伸張して元のセット状態に戻り、弁体25が弁座11aから離れ、弁口が開く。この場合、図8に示される如くに、ステータ50への供給パルス数に応じて弁体25のリフト量(弁開度=流量)が定まり、さらに前記パルス供給を続けると、最終的には、全開状態となるとともに、可動ストッパ36が開弁方向用固定ストッパ56に接当係止され、これにより、ロータ30、弁軸21、及び弁ホルダ23の回転及び上昇が強制的に停止せしめられる。
上記のような電動弁1'においては、組立時において、正確に制御用原点位置を出して、この原点位置にて閉弁方向ストッパ機構の固定ストッパ55に可動ストッパ35が確実に接当係止されるようにしておくことが要求される。
そのため、上記電動弁1'の組立にあたっては、例えば、次のような工程がとられる。
なお、本例では、図13に示される如くに、弁軸21を回転させながら昇降させるための、前記電動弁1'におけるロータ30やステータ50を有するステッピングモータと同一仕様の組立用モータ210を含む組立用モータユニット200が予め用意されている。該ユニット200は、ハードウェア自体はよく知られた構成の、マイクロコンピュータを内蔵するコントローラ100、操作盤120等が備えられ、組立用モータ210の出力軸220は、回転伝動機構240を介して弁軸21に連結されており、また、出力軸220には、弁軸21に加えられる負荷トルクを検出するための、トルクセンサ150が付設されている。トルクセンサ150からコントローラ100には、弁軸21の負荷トルクに応じた信号が供給される。
組立にあたっては、まず、図13に示される如くに、弁本体10にガイドステム15、弁座部材11を組み付け、弁軸21に弁ホルダ23を組み付けるとともに、弁体25を、間に弁体付勢ばね24を介装させた状態で組み付けて弁軸組立体20を得る。弁軸組立体20の弁軸21(の雄ねじ部21e)をガイドステム15(の雌ねじ部15i)に螺合させる。
次に、組立用ユニット200における操作盤120を操作してコントローラ100にスタート信号を送る。そうすると、コントローラ100は、図6(A)にフローチャートで示される如くの処理を実行する。すなわち、スタート後、ステップS71(以下、ステップは省略)で組立用モータ210に向けて正転パルスを供給するとともに、S72でトルクセンサ150からの信号に基づいて負荷トルクの変化率ΔTを算出し、続いて、S73で負荷トルクの変化率ΔTが予め定められたしきい値αより大きいか否かを判断し、このステップS73において、変化率ΔTがしきい値α以下であると判断された場合(Noの場合)には、変化率ΔTがしきい値αを超えるまでステップS71、72、73を繰り返し実行する。
ここでの処理は、図5(A)における、供給パルス数が0である点から着座点までを示し、弁軸組立体20における摩擦抵抗等により負荷トルクが緩やかに上昇するがその変化率ΔTは通常は前記しきい値α以下となる。前記しきい値αは、弁体25が弁座11aに着座した後もさらに弁軸21が下降して弁体付勢ばね24が圧縮せしめられるときに超えることのできる値に設定されている。
S73において、変化率ΔTがしきい値αを超えたと判断された場合(Yesの場合)には、弁体25が弁座11aに着座したと判断する。この着座した時点の状態が図14に示されており、この着座点位置が組立用基準位置とされる。S73でYesの場合は、S74に進み、予め定められたパルス数Po(例えば32パルス)の正転パルスの供給を開始し、送ったパルス数をカウントする(今回のパルス数P←前回のパルス数P+1)。
そして、S75において、正転パルス数Pが予め定められたパルス数Poに達するまで、S74を繰り返し実行し、正転パルス数Pがパルス数Po以上となった場合には、S76に進んで、正転パルスの供給を停止してこのプログラムを終了する。前記パルス数Po(例えば32パルス)を供給することにより、前記したように弁軸21は、図5(A)及び図15に示される如くに、着座点位置(組立用基準位置)から制御用原点位置まで下降する(下降量Lo)。この場合、図7(A)の(1)、(2)に示される如くに、図14に示される着座点位置にあるときには、弁体付勢ばね24の長さはW1であるが、図15に示される如くに、弁軸21がLo分下降せしめられると、弁体付勢ばね24は、前記Lo分圧縮せしめられてその長さはW2となる。
上記のように弁軸21が制御用原点位置にある状態において、図12に示される如くに、弁軸21に閉弁方向用可動ストッパ35をねじ込んで閉弁方向用固定ストッパ55に接当させた状態にするとともに、その上にロータ30を被せるようにして載せ置き、ロータ30の連結体32と弁軸21の小径部21bとを溶接等で固着する。これにより、ロータ30と可動ストッパ35は一体的に回転しながら昇降し、弁軸21が制御用原点位置に達したときには、固定ストッパ55に可動ストッパ35が接当係止される。
次に、キャン45の下端部を弁本体10に溶接等により密封接合するとともに、キャン45の外周にステータ50を位置決め固定すると、電動弁1'の組立が完了する。
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
[第1実施形態]
図1(A)は、本発明に係る電動弁の第1実施形態を示す縦断面図、図1(B)は、図1(A)のA矢視図(ロータの上面図)、図2〜図4は、図1に示される電動弁の組立方法(制御用原点出し)の説明に供される図である。
図示電動弁1は、上面が開口した有底円筒状の弁本体10、該弁本体10の上端面部外周側にその下端部が溶接等により密封接合されたキャン45、弁本体10の上端面部内周側に溶接等により固定された鍔状円板18付きのガイドステム15、該ガイドステム15の小径上部15bに形成された雌ねじ部15iに、その軸状部21a外周に形成された雄ねじ部21eが螺合せしめられた弁軸21、該弁軸21に一体回動可能に連結固定されたロータ30、及び該ロータ30を回転駆動すべく前記キャン45の外周に外嵌されたステータ50を備えている。
ここでは、ロータ30とステータ50とでステッピングモータが構成され、また、ガイドステム15の雌ねじ部15iと弁軸21の雄ねじ部21eとでねじ送り機構が構成され、前記ステッピングモータとねじ送り機構とで弁軸21を回転させながら昇降させるための昇降駆動機構が構成されている。
前記弁本体10は、金属板材を素材としてプレス加工により作製されたもので、その底部10bには、弁座(弁口)11aを有する弁座部材11がろう付け等で固定され、その上部にはガイドステム15の下部が挿入されている。
前記弁本体10の弁室12の一側方には、管継手からなる第1入出口6が、また、弁座部材11には、管継手からなる第2入出口7がそれぞれろう付け等により接合されている。
前記弁軸21は、前記ロータ30の連結体32が外嵌せしめられる小径部21b、ガイドステム15の雌ねじ部15iに螺合する雄ねじ部21e、及び、該雄ねじ部21eより下側の鍔状部21d及びかしめ部21f付きの下部連結部21cを有し、該弁軸21の下端部には、そのかしめ部21fにその天井穴部分が連結固定され、ガイドステム15の大径円筒状胴部15aに摺動自在に嵌挿された天井部23b付き円筒状の弁ホルダ23が保持され、該弁ホルダ23の円筒部23a下部には、弁体25の上部が摺動自在に挿入されている。
弁体25は、逆円錐面部を有する弁座(弁口)11a内にその下部が挿入されて着座する逆円錐台状の弁体部25a、該弁体部25aの上部に連なる円柱状胴部25b、及び、この円柱状胴部25bの上部に圧入・溶接等により外嵌固定された厚肉の抜止スリーブ25cを有することに加えて、前記円柱状胴部25bの下部の所定部位には鍔状部29が設けられている。ここで、前記弁ホルダ23の下端部に固定された底板部27の通し穴に挿通される前記円柱状胴部25b(の上部)の外径は、前記弁座(弁口)11aの口径よりも大きくされている。
弁ホルダ23の下端部には、前記弁体25(の抜止スリーブ25c)を、間に薄肉の環状円板28を挟んで抜け止め係止するとともに、通し穴が設けられた厚肉板からなる底板部27がかしめ・溶接等により保持固定されている。
一方、弁体25の上面には、断面外形がハット形のばね受け部材26が乗せられ、このばね受け部材26の鍔状部と弁ホルダ23の天井部23bとの間には弁体押圧兼緩衝用の圧縮コイルばねからなる弁体付勢ばね24が縮装されており、弁体25は弁体付勢ばね24により常時下向きに付勢されている。
ここで、前記弁体25に設けられた鍔状部29及び弁ホルダ23に設けられた該弁ホルダ23の底部を構成する底板部27は、それぞれ後述する組立時(組立用基準位置を検出するため)の便宜を図るための組立用ストッパ機構の固定ストッパ及び可動ストッパとなる(詳細は後述)。
上記した弁軸21、弁ホルダ23、弁体25、及び弁体付勢ばね24は、弁体25が弁座11aから離隔している状態(開弁状態)においては実質的に一体的に回転しながら昇降せしめられる。
この場合、図2に示される如くの開弁状態(組立初期状態)においては、弁体25の抜止スリーブ25cは、間に環状円板28を挟んで底板部27に対接係止されており、底板部27の下面と前記鍔状部29の上面、言い換えれば、組立用ストッパ機構の可動ストッパ(底板部)27と固定ストッパ(鍔状部)29とは、所定の距離Lpだけ離隔している(組立については後で詳述する)。
また、ロータ30及び弁軸21の制御用原点位置を設定すべく、ガイドステム15の小径上部15bの上面には、所定の幅、高さ、奥行きを持つ断面矩形の閉弁方向用固定ストッパ55が上向きに突設され、ガイドステム15の大径円筒状胴部15aの上部には所定の幅、高さ、奥行きを持つ断面矩形の開弁方向用固定ストッパ56が下向きに突設されている。
弁軸21における雄ねじ部21eの上端部には、閉弁方向用可動ストッパ35が螺合せしめられてロータ30の円板状天井部に抜け止め係止されている。この閉弁方向用可動ストッパ35は、雄ねじ部21eに螺合する平面視外形が六角形でその一辺が円弧状とされたナット部35aとこのナット部35aから下向きに突設された所定の幅、高さ、奥行きを持つ断面矩形のストッパ部35sとからなっている。
また、弁軸21の雄ねじ部21eの下端部には、前記開弁方向用固定ストッパ56に接当係止される開弁方向用可動ストッパ36が螺合せしめられて前記弁ホルダ23の天井部23bに抜け止め係止されている。この開弁方向用可動ストッパ36は、雄ねじ部21eに螺合するナット部36aとこのナット部36aから上向きに突設された所定の幅、高さ、奥行きを持つ断面矩形のストッパ部36sとからなっている。
前記ロータ30は、天井付き円筒状のマグネット31とこれの天井部に一体結合された連結体32とからなり、連結体32は、弁軸21における小径部21bに外嵌されるとともに、前記閉弁方向用可動ストッパ35上に載せられて前記小径部21bに溶接固定されている。
ここで、前記ロータ30の天井部の下面側には、図1(B)に破線で示される如くに、両端部が平面視でD字状に形成されたDカット部を備えた凹部33が設けられ、この凹部33に形成されたDカット部以外の円弧状とされた部分に前記閉弁方向用可動ストッパ35のナット部35aの円弧状とされた一辺が接当した状態で嵌め込まれ、Dカット部に前記ナット部35aの他の2辺が接当した状態で嵌め込まれており、これにより、ロータ30と閉弁方向用可動ストッパ35と弁軸21とは、一体的に回転しながら昇降せしめられる。
一方、前記キャン45の外周には、ヨーク51、ボビン52、コイル53、樹脂モールド54等からなるステータ50が外嵌されている。このステータ50は、その底部に設けられた位置決め固定具(図示省略)により、弁本体10に対して所定の位置に位置決め固定されている。
また、本実施形態の電動弁1には、当該電動弁1の動作(流量)制御等を行うべく、マイクロコンピュータを内蔵したコントローラが備えられている。コントローラは、当該電動弁1が組み込まれているシステム内に配置された各センサ類や操作盤(リモコン)等からの信号に基づき所要の演算処理を行い、電動弁1のステータ50に駆動パルスを供給する。
これにより、電動弁1のロータ30が供給パルス数に応じた分だけ回転する。ロータ30が回転せしめられると、それと一体に弁軸21が回転せしめられ、このとき、前記ねじ送り機構により弁軸21が弁体25を伴って昇降せしめられ、これによって、冷媒の通過流量が調整される。
かかる電動弁1の動作をより具体的に説明する。
すなわち、ステータ50に閉弁方向用駆動パターンとなるパルス(正転パルスと称することがある)を供給することにより、ロータ30及び弁軸21が一方向(例えば、平面視時計回り)に回転せしめられ、雌ねじ部15iと雄ねじ部21eからなるねじ送り機構により、弁軸21及び閉弁方向用可動ストッパ35が回転しながら下降し、弁体25が弁座11aに着座して弁口が閉じられる。
この時点では、可動ストッパ35は未だ固定ストッパ55に接当しておらず、ロータ30及び弁軸21の回転下降は停止されず、弁体付勢ばね24が所定量圧縮されるまでパルス供給が継続され、それによって、弁体25が弁座部材11に着座したままロータ30、弁軸21、弁ホルダ23等はさらに回転しながら下降する。
このときは、弁体25に対して弁軸21及び弁ホルダ23が下降するため、弁体付勢ばね24が圧縮せしめられ、これによって弁軸21及び弁ホルダ23の下降力が吸収され、その後、弁体付勢ばね24の圧縮量が所定量となったとき、可動ストッパ35が固定ストッパ55に接当して係止され、ロータ30及び弁軸21が最下降位置に達し、ステータ50に閉弁方向用駆動パターンとなるパルス供給が続行されてもロータ30及び弁軸21の下降は強制的に停止される。このときの弁軸21の位置を制御用原点位置と称し、前記着座位置から前記原点位置までの下降量Loは、パルス数で換算するとPo(例えば32パルスで、これを開弁セットパルス数Poと称することがある)である。なお、本例の電動弁1では、ステッピングモータにおける1パルス供給による回転角度、弁軸21の雄ねじ部21eのピッチ等が予め分かっているので、弁軸21の下降量及び上昇量は、閉弁方向用駆動パターンとなる正転パルス数、開弁方向用駆動パターンとなる逆転パルス数をカウントすることにより設定できる。
このように、弁体25が弁座11aに着座して弁口が閉じられた後においても、可動ストッパ35が固定ストッパ55に接当して係止される制御用原点位置に達するまでは、ロータ30、弁軸21、及び弁ホルダ23の回転下降が継続されることにより、弁体付勢ばね24が圧縮されるため、弁体25が弁座11aに強く押し付けられ(この状態を押圧閉弁状態と称する)、弁漏れ等を確実に防止できる。
一方、上記制御用原点位置(押圧閉弁状態)からステータ50に開弁方向用駆動パターンとなるパルス(逆転パルスと称することがある)を供給すると、ロータ30及び弁軸21が前記とは逆方向(例えば、平面視反時計回り)に回転せしめられ、雌ねじ部15iと雄ねじ部21eからなるねじ送り機構により、ロータ30、弁軸21、弁ホルダ23及び開弁方向用可動ストッパ36が回転しながら上昇し、これに伴い、弁体25に対する押圧力が弱められ、弁体付勢ばね24が所定量伸張して元のセット状態に戻り、弁体25が弁座11aから離れ、弁口が開く。この場合、図8に示される如くに、ステータ50への供給パルス数に応じて弁体25のリフト量(弁開度=流量)が定まり、さらに前記パルス供給を続けると、最終的には、全開状態となるとともに、可動ストッパ36が開弁方向用固定ストッパ56に接当係止され、これにより、ロータ30、弁軸21、及び弁ホルダ23の回転及び上昇が強制的に停止せしめられる。
上記のような電動弁1においては、組立時において、正確に制御用原点位置を出して、この原点位置にて閉弁方向ストッパ機構の固定ストッパ55に可動ストッパ35が確実に接当係止されるようにしておくことが要求される。
そのため、上記電動弁1の組立にあたっては、例えば、次のような工程がとられる。
なお、本例では、図2に示される如くに、弁軸21を回転させながら昇降させるための、前記電動弁1におけるロータ30やステータ50を有するステッピングモータと同一仕様の組立用モータ210を含む組立用モータユニット200が予め用意されている。該ユニット200は、ハードウェア自体はよく知られた構成の、マイクロコンピュータを内蔵するコントローラ100、操作盤120等が備えられ、組立用モータ210の出力軸220は、回転伝動機構240を介して弁軸21に連結されており、また、出力軸220には、弁軸21に加えられる負荷トルクを検出するための、トルクセンサ150が付設されている。トルクセンサ150からコントローラ100には、弁軸21の負荷トルクに応じた信号が供給される。
組立にあたっては、まず、図2に示される如くに、弁本体10にガイドステム15、弁座部材11を組み付け、弁軸21に弁ホルダ23を組み付けるとともに、弁体25を、間に弁体付勢ばね24を介装させた状態で組み付けて弁軸組立体20を得る。弁軸組立体20の弁軸21(の雄ねじ部21e)をガイドステム15(の雌ねじ部15i)に螺合させる。
次に、組立用ユニット200における操作盤120を操作してコントローラ100にスタート信号を送る。そうすると、コントローラ100は、図6(B)にフローチャートで示される如くの処理を実行する。すなわち、スタート後、ステップS81(以下、ステップは省略)で組立用モータ210に向けて正転パルスを供給するとともに、S82でトルクセンサ150からの信号に基づいて負荷トルクの変化率ΔTを算出し、続いて、S83で負荷トルクの変化率ΔTが予め定められたしきい値βより大きいか否かを判断し、このステップS83において、変化率ΔTがしきい値β以下であると判断された場合(Noの場合)には、変化率ΔTがしきい値βを超えるまでステップS81、82、83を繰り返し実行する。
この処理は、図5(B)における、供給パルス数が0である点から組立用可動ストッパ27が固定ストッパ29に接当する、組立用基準位置までを示す。ここで、組立用可動ストッパ27が固定ストッパ29に接当係止されると、負荷トルクが垂直に近い角度で増大し、負荷トルクの変化率ΔTが急激に大きくなるため、前記しきい値βを、弁体付勢ばね24が圧縮(弾性変形)されている状態ではとり得ない程度の大きな値に設定することができ、そのため、組立用可動ストッパ27が固定ストッパ29に接当する組立用基準位置を正確にかつ確実に検出することができる。
S83において、変化率ΔTがしきい値βを超えたと判断された場合(Yesの場合)には、組立用可動ストッパ27が固定ストッパ29に接当係止された組立用基準位置まで来ていると判断する。この組立用基準位置にある状態が図3に示されている。S83でYesの場合は、S84に進み、予め定められたパルス数Prの逆転パルスの供給を開始し、送ったパルス数をカウントする(今回のパルス数P'←前回のパルス数P'+1)。ここで、逆転パルス数Prは、組立用可動ストッパ27が固定ストッパ29に接当するまでの、設計値としての下降量Lpから、前述した着座点位置から制御用原点位置までの下降量Loを差し引いた戻し量Lr(Lr=Lp−Lo)に相当するパルス数とされる。本例では、下降量Lp、下降量Lo、戻し量(上昇量)Lrは、設計値として予め設定されており、下降量Loは、パルス数Po(例えば32パルス)に換算され、下降量Lpは、下降量Loの2倍、つまり、パルス数Po(例えば32パルス)の2倍のパルス数Pp(例えば64パルス)に換算され、上昇量Lrは、パルス数Pp(例えば64パルス)からパルス数Po(例えば32パルス)を差し引いたパルス数Pr(例えば32パルス)に換算される。
そして、S85において、逆転パルス数P'が戻しパルス数Prに達するまで、S84を繰り返し実行し、逆転パルス数P'がパルス数Pr以上となった場合には、S86に進んで、逆転パルスの供給を停止してこのプログラムを終了する。前記逆転パルス数Pr(例えば32パルス)を供給することにより、前記したように弁軸21は、図5(B)及び図4に示される如くに、組立用可動ストッパ27が固定ストッパ29に接当する組立用基準位置から制御用原点位置まで上昇する(上昇量Lr)。この場合、図5(B)、図7(B)の(1)、(2)、(3)に示される如くに、図2に示される初期セット位置にあるときには、弁体付勢ばね24の長さはW1であるが、図3、図4に示される如くに、弁軸21がb=Lp分下降せしめられると、弁体付勢ばね24は、前記Lp分圧縮せしめられてその長さはW3となる。その後、弁軸21がLr分上昇せしめられると、弁体付勢ばね24は、前記Lr分伸長してその長さはW2となり、このときの圧縮量はa=Loである。なお、圧縮量b=Lpを圧縮量a=Loの整数倍とすることにより、治具等を大きく変更する必要がなく、従前の治具をそのまま使うことができる。なお、ここでは、圧縮量b=Lpを圧縮量a=Loの整数倍としたが、圧縮量b=Lpは圧縮量a=Loよりも大きく、且つ弁体付勢ばね24が弾性を維持できる圧縮量の上限までで自由に設定可能であり、例えば圧縮量b=Lpを圧縮量a=Loの1.5〜3.0倍の間で設定すると好適である。
上記のように弁軸21が制御用原点位置にある状態において、図1に示される如くに、弁軸21に閉弁方向用可動ストッパ35をねじ込んで閉弁方向用固定ストッパ55に接当させた状態にするとともに、その上にロータ30を被せるようにして載せ置き、ロータ30の連結体32と弁軸21の小径部21bとを溶接等で固着する。これにより、ロータ30と可動ストッパ35は一体的に回転しながら昇降し、弁軸21が制御用原点位置に達したときには、固定ストッパ55に可動ストッパ35が接当係止される。
次に、キャン45の下端部を弁本体10に溶接等により密封接合するとともに、キャン45の外周にステータ50を位置決め固定すると、電動弁1の組立が完了する。
上記のように、本実施形態の電動弁1では、弁体25と弁軸21との間に固定ストッパ29と可動ストッパ27からなる組立用ストッパ機構が設けられ、組立時において、弁軸21を下降させて固定ストッパ29に可動ストッパ27を接当させて、負荷トルクを大きく変化させるようにしているので、負荷トルクの変化率に基づいて、弁軸21を制御用原点位置よりさらに所定量だけ下降させた組立用基準位置を正確にかつ確実に検出することができる。この場合、下降量Lp、下降量Lo、戻し量(上昇量)Lrは、設計値として予め設定されているので、前記組立用基準位置を正確に検出することができることと相俟って、その誤差は、従来のように弁体25が弁座11aに着座した際の負荷トルクの変化の変曲点を検出する場合に比べて相当小さくなり、そのため、制御用原点出しを的確に行うことができ、その結果、流量等の制御精度を可及的に向上することができる。
[実施形態2]
図9は、本発明に係る電動弁の第2実施形態を示す縦断面図である。図示例の電動弁2において、第1実施形態の電動弁1の各部と同一構成ないし同一機能部分には共通の符号を付して重複説明を省略し、以下においては相違点のみを説明する。
本実施形態の電動弁2では、弁体65が、逆円錐台状の弁体部65a、短円柱状胴部65b、及び上部突設部65cを有し、ガイドステム15の円筒部15aに摺動自在に嵌挿される弁ホルダ60が弁体65の短円柱状胴部65bの上部に固着されるとともに、該弁ホルダ60に、弁軸21が軸方向の相対移動可能及び相対回転可能に内挿されて当該弁ホルダ60の天井部60bに間に環状円板66を挟んで抜け止め係止される。また、弁ホルダ60の円筒部60a内で、弁体65の上部突設部65cに外嵌された下側ばね受け部材62と弁軸21の下部連結部21cに外嵌固定された上側ばね受け部材61との間に弁体付勢ばね24が縮装されるとともに、弁軸21における弁ホルダ60の天井部60bより上側に位置している部分に鍔状部21gが設けられ、弁ホルダ60の天井部60bを固定ストッパ、弁軸21の鍔状部21gを可動ストッパとして前記組立用ストッパ機構が構成されている。
このような構成とされた電動弁2では、固定ストッパとされる弁ホルダ60の天井部60bと可動ストッパとされる弁軸21の鍔状部21gとの間の離隔距離が、第1実施形態の下降量Lpとされ、また、第1実施形態の下降量Lo、戻し量(上昇量)Lrも同様に設定され、組立時において、弁軸21を下降させて固定ストッパ60bに可動ストッパ21gを接当させて、負荷トルクを大きく変化させるようにしているので、負荷トルクの変化率に基づいて、弁軸21を制御用原点位置よりさらに所定量だけ下降させた組立用基準位置を正確にかつ確実に検出することができる。この場合、下降量Lp、下降量Lo、戻し量(上昇量)Lrは、設計値として予め設定されているので、前記組立用基準位置を正確に検出することができることと相俟って、その誤差は、従来のように弁体65が弁座11aに着座した際の負荷トルクの変化の変曲点を検出する場合に比べて相当小さくなり、そのため、第1実施形態と同様に、制御用原点出しを的確に行うことができ、流量等の制御精度を可及的に向上することができる。
[実施形態3]
図10は、本発明に係る電動弁の第3実施形態を示す縦断面図であり、図1に示された第1実施形態から弁体25に設けられた鍔状部29を削除して、ばね受け部材26に固定ストッパを形成し、弁ホルダ23に可動ストッパを設けた例を示したものである。図示例の電動弁3において、第1実施形態の電動弁1の各部と同一構成ないし同一機能部分には共通の符号を付して重複説明を省略し、以下においては相違点のみ説明する。
本実施形態の電動弁3では、弁ホルダ23の天井部23bに設けられた天井穴の周囲の部分がかしめ部21fよりも下側に延長されてその下部が可動ストッパとして形成され、弁体25の上部に設けられたばね受け部材26が第1実施形態と比較して上側に延長されてその上部が固定ストッパとして形成され、これにより前記組立用ストッパが構成されている。
このような構成とされた電動弁3では、可動ストッパとされる弁ホルダ23の天井部23bと固定ストッパとされるばね受け部材26との間の離間距離が、第1実施形態の下降量Lpとされ、また、第1実施形態の下降量Lo、戻し量(上昇量)Lrも同様に設定され、組立時において、弁軸21を下降させて固定ストッパ26に可動ストッパ23bを当接させて、負荷トルクを大きく変化させるようにしているので、第1実施形態と同様に、負荷トルクの変化率に基づいて、弁軸21を制御用原点位置よりさらに所定量だけ下降させた組立用基準位置を正確にかつ確実に検出することができる。
[実施形態4]
図11は、本発明に係る電動弁の第4実施形態を示す縦断面図であり、図9に示された第2実施形態から弁軸21に設けられた鍔状部21gを削除して、弁軸21の下端に一体に設けられた上側ばね受け部材61に可動ストッパを形成し、下側ばね受け部材62に固定ストッパを設けた例を示したものである。図示例の電動弁において、第2実施形態の電動弁2の各部と同一構成ないし同一機能部分には共通の符号を付して重複説明を省略し、以下においては相違点のみ説明する。
本実施形態の電動弁4では、上側ばね受け部材61と弁軸21とを一体に形成し、上側ばね受け部材61の下面が下側まで延長されてその下部が可動ストッパとして形成され、弁体65の上部に設けられた下側ばね受け部材62が第2実施形態と比較して上側に延長されてその上部が固定ストッパとして形成され、これにより前記組立用ストッパが構成されている。
このような構成とされた電動弁4では、可動ストッパとされる上側ばね受け部材61と固定ストッパとされる下側ばね受け部材62との間の離間距離が、第1実施形態の下降量Lpとされ、また、第1実施形態の下降量Lo、戻し量(上昇量)Lrも同様に設定され、組立時において、弁軸21を下降させて固定ストッパ62に可動ストッパ61を当接させて、負荷トルクを大きく変化させるようにしているので、第2実施形態と同様に、負荷トルクの変化率に基づいて、弁軸21を制御用原点位置よりさらに所定量だけ下降させた組立用基準位置を正確にかつ確実に検出することができる。