以下、本発明に係る電動弁の実施形態を図面を参照しながら説明する。なお、各図において、部材間に形成される隙間や部材間の離隔距離等は、発明の理解を容易にするため、また、作図上の便宜を図るため、誇張して描かれている場合がある。また、本明細書において、上下、左右等の位置、方向を表わす記述は、図1及び図6の方向矢印表示を基準としており、実際の使用状態での位置、方向を指すものではない。
[第1実施形態]
図1は、本発明に係る電動弁の第1実施形態を示す縦断面図である。
図示実施形態の電動弁1は、主に、弁軸10と、ガイドブッシュ20と、弁軸ホルダ30と、弁本体40と、キャン55と、ロータ51とステータ52とからなるステッピングモータ50と、圧縮コイルばね(付勢部材)60と、抜け止め係止部材70と、ねじ送り機構28と、下部ストッパ機構29とを備える。
前記弁軸10は、上側から、上部小径部11と、中間大径部12と、下部小径部13とを有し、その下部小径部13の下端部に、段付き逆円錐状の弁体14が一体的に形成されている。
前記ガイドブッシュ20は、前記弁軸10(の中間大径部12)が軸線O方向に相対移動(摺動)可能及び軸線O回りに相対回転可能な状態で内挿される円筒部21と、該円筒部21の上端部から上方に延びており、該円筒部21よりも内径が大きく、前記弁軸10の中間大径部12の上端側と上部小径部11の下端側とが内挿される延設部22とを有している。前記ガイドブッシュ20の円筒部21の外周には、ロータ51の回転駆動に応じて前記弁軸10の弁体14を弁本体40の弁シート部46aに対して昇降させるねじ送り機構28の一方を構成する固定ねじ部(雄ねじ部)23が形成されている。また、前記円筒部21の下部(固定ねじ部23より下側の部分)は、大径とされ、弁本体40の嵌合穴44への嵌合部27とされる。前記固定ねじ部23(における弁軸ホルダ30より下側)には、下部ストッパ25が、嵌合部27の上面27aと所定の隙間hをあけて螺着されており、その下部ストッパ25の外周には、弁軸ホルダ30の回転下動規制を行う下部ストッパ機構29の一方を構成する固定ストッパ体24が一体的に突設されている。なお、後で詳述するように、本実施形態では、嵌合部27の上面27aは、下部ストッパ25の下動規制を行う(言い換えれば、下動限界位置を規定して着座状態における下部ストッパ25の位置を規定する)ストッパ部とされる。
前記弁軸ホルダ30は、前記ガイドブッシュ20が内挿される円筒部31と前記弁軸10(の上部小径部11)の上端部が挿通される挿通穴32aが貫設された天井部32とを有している。前記弁軸ホルダ30の円筒部31の内周には、前記ガイドブッシュ20の固定ねじ部23と螺合して前記ねじ送り機構28を構成する可動ねじ部(雌ねじ部)33が形成されると共に、その円筒部31の外周下端には、前記下部ストッパ機構29の他方を構成する可動ストッパ体34が一体的に突設されている。
また、前記弁軸10の上部小径部11と中間大径部12との間に形成された段丘面と前記弁軸ホルダ30の天井部32の下面との間には、弁軸10の上部小径部11に外挿されるように、前記弁軸10と前記弁軸ホルダ30とが昇降方向(軸線O方向)で離れる方向に付勢する、言い換えれば前記弁軸10(弁体14)を常時下方(閉弁方向)に付勢する圧縮コイルばね(付勢部材)60が縮装されている。
前記弁本体40は、例えば真鍮やSUS等の金属製円筒体から構成されている。この弁本体40は、内部に弁室40aを有し、該弁室40aの側部に設けられた横向きの第1開口41に第1導管41aがろう付け等により連結固定され、該弁室40aの天井部に前記弁軸10(の中間大径部12)が軸線O方向に相対移動(摺動)可能及び軸線O回りに相対回転可能な状態で挿通される挿通穴43及び前記ガイドブッシュ20の下部(嵌合部27)が嵌合されて取付固定される嵌合穴44が形成され、該弁室40aの下部に設けられた縦向きの第2開口42に第2導管42aがろう付け等により連結固定されると共に、前記弁室40aと前記第2開口42との間の底部壁45に前記弁体14が接離する弁シート部46aを有する弁口オリフィス46が形成されている。
前記弁本体40の上端部には鍔状板47がかしめ等により固着される共に、該鍔状板47の外周に設けられた段差部に、天井付き円筒状のキャン55の下端部が突き合わせ溶接されている。
前記キャン55の内側かつ前記ガイドブッシュ20及び前記弁軸ホルダ30の外側には、ロータ51が回転自在に配在され、前記キャン55の外側に、前記ロータ51を回転駆動すべく、ヨーク52a、ボビン52b、ステータコイル52c、及び樹脂モールドカバー52d等からなるステータ52が配置されている。ステータコイル52cには、複数のリード端子52eが接続され、これらのリード端子52eには、基板52fを介して複数のリード線52gが接続され、ステータコイル52cへの通電励磁によってキャン55内に配在されたロータ51が軸線O回りで回転するようになっている。
キャン55内に配在された前記ロータ51は、前記弁軸ホルダ30に係合支持されており、当該弁軸ホルダ30は前記ロータ51とともに(一体に)回転するようになっている。
詳細には、前記ロータ51は、内筒51a、外筒51b、及び内筒51aと外筒51bとを軸線O回りの所定の角度位置で接続する接続部51cからなる二重管構成とされ、内筒51aの内周に、(例えば、軸線O回りで120度の角度間隔で)軸線O方向(上下方向)に延びる縦溝51dが形成されている。
一方、前記弁軸ホルダ30の外周(の上半部分)には、(例えば、軸線O回りで120度の角度間隔で)上下方向に延びる突条30aが突設され、その突条30aの下部両側には、前記ロータ51を支持する上向きの係止面(不図示)が形成されている。
ロータ51の内筒51aの縦溝51dと弁軸ホルダ30の突条30aとが係合し、かつロータ51の内筒51aの下面と弁軸ホルダ30の係止面とが当接することにより、ロータ51が弁軸ホルダ30に対して位置合わせされた状態で支持固定され、前記弁軸ホルダ30は、前記ロータ51を前記キャン55内で支持しながら当該ロータ51と共に回転される。
前記ロータ51及び弁軸ホルダ30の上側には、弁軸ホルダ30とロータ51との昇降方向における相対移動を防止する(言い換えれば、弁軸ホルダ30に対してロータ51を下方に押し付ける)と共に弁軸10と弁軸ホルダ30とを連結すべく、前記弁軸10(の上部小径部11)の上端部に圧入・溶接等により外嵌固定されたプッシュナット71と、該プッシュナット71とロータ51との間に介在され、弁軸10の上端部が挿通される挿通穴72aが中央に形成された円板状部材からなるロータ押さえ72とから構成される抜け止め係止部材70が配在されている。すなわち、前記ロータ51は、圧縮コイルばね60の付勢力により上方に付勢される弁軸ホルダ30と前記ロータ押さえ72との間で挟持されている。なお、弁軸ホルダ30の上端から係止面までの(上下方向の)高さは、ロータ51の内筒51aの(上下方向の)高さと同じであり、弁軸ホルダ30(の天井部32)の上面は、前記ロータ押さえ72の下面(平坦面)と当接している。
また、前記弁軸10の上端部に固定された前記プッシュナット71には、動作時にガイドブッシュ20に対して弁軸ホルダ30が上方に移動し過ぎて、ガイドブッシュ20の固定ねじ部23と弁軸ホルダ30の可動ねじ部33との螺合が外れるのを防止すべく、弁軸ホルダ30をガイドブッシュ20側に付勢するコイルばねからなる復帰ばね75が外装されている。
そして、当該電動弁1では、例えば弁シート部46aへの弁体14の喰いつきを防止すると共に、低流量域での制御性を確保すべく、弁体14が最下降位置(原点位置)にあるときに、弁体14と弁シート部46aとの間に所定の大きさの間隙(昇降方向における寸法がHの間隙)が形成されるようになっている。
この電動弁1の組立工程、特に、弁体14の原点位置(最下降位置)出し工程を、図2を参照しながら詳説すると、まず、弁軸10、ガイドブッシュ20、下部ストッパ25、圧縮コイルばね60、弁軸ホルダ30、ロータ51、弁本体40等を組み付ける。このとき、下部ストッパ25は、ガイドブッシュ20に対して相対回転可能に螺合させておく。なお、下部ストッパ25は、この段階で、ガイドブッシュ20のストッパ部27aと当接させて配置してもよいし、そのストッパ部27aと間隔をあけて配置してもよい。次いで、弁軸10の下端部に設けられた弁体14が弁シート部46aに接当(着座)し、圧縮コイルばね60が若干圧縮され、弁軸ホルダ30の可動ストッパ体34と下部ストッパ25の固定ストッパ体24とが当接し、かつ、下部ストッパ25(の下面)がガイドブッシュ20のストッパ部27aと当接するまで、ガイドブッシュ20の固定ねじ部23と弁軸ホルダ30の可動ねじ部33とからなるねじ送り機構28を利用して、前記弁軸ホルダ30、ロータ51、及び弁軸10を回転させながら下降させる。そして、このように弁軸ホルダ30が最下降位置に配置された状態で、弁軸10の上端部に、ロータ押さえ72を嵌め込むと共にプッシュナット71を圧入・溶接等により外嵌固定する(着座状態、図2(A)参照)。
次に、上記着座状態から、弁軸10、弁軸ホルダ30、ロータ51、抜け止め係止部材70(プッシュナット71とロータ押さえ72)等が一体とされた組立体を、前記ねじ送り機構28を利用して回転させながら上昇させてガイドブッシュ20から取り外した後、下部ストッパ25をガイドブッシュ20に対して開弁方向(図示例では、平面視で反時計回り)に所定回転角度だけ回転させる。そして、その下部ストッパ25を、ガイドブッシュ20(の固定ねじ部23)に溶接・溶着・接着等により相対回転不能に連結固定した後、再びねじ送り機構28を利用して前記組立体をガイドブッシュ20に組み付ける。これにより、下部ストッパ25の固定ストッパ体24のガイドブッシュ20に対する位置が変わるので、弁軸ホルダ30の可動ストッパ体34と下部ストッパ25の固定ストッパ体24とが当接して、弁軸ホルダ30が最下降位置にあるときでも、弁体14と弁シート部46aとの間に所定の大きさの間隙(昇降方向における寸法がHの間隙)が形成される(離間状態、図3(B)参照)。なお、前記組立体を上昇させてガイドブッシュ20から取り外した後、下部ストッパ25をガイドブッシュ20に対して開弁方向に所定回転角度だけ回転させ、その下部ストッパ25をガイドブッシュ20に溶接・溶着・接着等により相対回転不能に連結固定するものとして説明したが、前記組立体をガイドブッシュ20に対して上昇させるだけで、下部ストッパ25をガイドブッシュ20に対して開弁方向に所定回転角度だけ回転させることができ、かつ下部ストッパ25をガイドブッシュ20に溶接・溶着・接着等により相対回転不能に連結固定することができる程度の隙間を形成することができれば、前記組立体をガイドブッシュ20から取り外す必要はない。
なお、下部ストッパ25の雌ねじ部26やガイドブッシュ20の固定ねじ部(雄ねじ部)23にバックラッシレス(ノンバックラッシ)タイプのねじ部を採用する場合には、弁体14と弁シート部46aとの間に形成される間隙の昇降方向における寸法Hは、下部ストッパ25(の下面)とガイドブッシュ20のストッパ部27aとの隙間hと一致もしくは略一致する。しかし、一般に、ねじ部にはバックラッシ(遊び又はガタ)が設けられている。そのため、上記実施形態のように下部ストッパ25をガイドブッシュ20のストッパ部27aと当接させて締め込んだ後に開弁方向に回転させて(緩めて)弁体14の原点位置出しを行う場合、前記下部ストッパ25は、回転当初の段階では、ガイドブッシュ20のストッパ部27aに当接したまま(すなわち、上昇せずに)回転するため、前記寸法Hは前記隙間hと必ずしも一致しない。
具体的には、図3を参照すればよく理解されるように、下部ストッパ25の雌ねじ部26とガイドブッシュ20の固定ねじ部23との間のバックラッシ分の回転角度をθb[°](図示例では、約180°)とした場合、上記した原点位置出し工程において、下部ストッパ25をガイドブッシュ20のストッパ部27aと当接させて締め込んだ状態(この状態では、下部ストッパ25の雌ねじ部26の上面側とガイドブッシュ20の固定ねじ部23の下面側とが接触)から、当該下部ストッパ25を開弁方向に回転させる(緩める)と、バックラッシ分の回転角度θb[°]の範囲内では、自重により下部ストッパ25(の下面)はガイドブッシュ20のストッパ部27aと当接し続ける(図3の(1)〜(3))。ただし、下部ストッパ25自体は回転するため、当該下部ストッパ25に設けられた固定ストッパ体24の回転位置は変化する。
仮に、このバックラッシ分の回転角度θb[°]の範囲内で下部ストッパ25をガイドブッシュ20に固定し、ねじ送り機構28を利用して弁軸ホルダ30を回転させながら下降させ、弁軸ホルダ30の可動ストッパ体34と下部ストッパ25の固定ストッパ体24とを当接させると、弁軸ホルダ30の最下降位置は、下部ストッパ25の回転量に応じて次第に上昇することとなる。例えば、バックラッシ相殺時点での弁軸ホルダ30の最下降位置の上昇量Hbは、下部ストッパ25の雌ねじ部26のねじピッチ(ねじ山同士の間隔)をpとしたとき、p×θb/360で規定される(図3の(3))。
バックラッシが相殺された後(下部ストッパ25の回転角度がバックラッシ分の回転角度θb[°]に到達した後)(この状態では、下部ストッパ25の雌ねじ部26の下面側とガイドブッシュ20の固定ねじ部23の上面側とが接触)、下部ストッパ25を開弁方向に更に回転させると、下部ストッパ25は回転しながら上昇し始め、下部ストッパ25とガイドブッシュ20のストッパ部27aとの間に隙間hが形成される。
最終的に、下部ストッパ25をガイドブッシュ20のストッパ部27aと当接させて締め込んだ状態から回転角度θだけ開弁方向に回転させてガイドブッシュ20に固定したとすると、弁軸ホルダ30の最下降位置は、p×θ/360で規定される上昇量Hだけ上昇するため、弁軸ホルダ30が最下降位置にあるときに、弁体14と弁シート部46aとの間に、昇降方向における寸法がHの間隙が形成される。一方で、下部ストッパ25とガイドブッシュ20のストッパ部27aとの間には、前記上昇量Hからバックラッシ分を差し引いた隙間h、すなわち、p×(θ−θb)/360で規定される隙間hが形成される。
なお、図示実施形態では、下部ストッパ25をバックラッシ分の回転角度θb[°]を超えて回転させることで、下部ストッパ25とガイドブッシュ20のストッパ部27aとの間に隙間hが形成されているが、弁体14と弁シート部46aとの間に形成される間隙の昇降方向における寸法が上記Hb以下に設定される場合には、下部ストッパ25はバックラッシの回転角度θb[°]の範囲内で回転すればよいので、下部ストッパ25とガイドブッシュ20のストッパ部27aとの間に隙間は形成されず、下部ストッパ25(の下面)はガイドブッシュ20のストッパ部27aと当接したままとなる。
また、上記の実施形態では、下部ストッパ25をガイドブッシュ20のストッパ部27aと当接させて締め込んだ状態を、下部ストッパ25の開弁方向への回転の基準状態(すなわち、前記着座状態)としたが、その基準状態における下部ストッパ25の締結状態や上下方向における位置は、図示実施形態に限定されないことは当然である。例えば、下部ストッパ25は、図3の(1)〜(3)に示すバックラッシ分の回転角度の範囲内における如何なる状態を基準状態としてもよい。また、当該下部ストッパ25は、その基準状態においてガイドブッシュ20のストッパ部27aと当接している必要はなく、例えば図3の(4)に示すような、ガイドブッシュ20(の固定ねじ部23)における如何なる位置を基準状態としてもよい。なお、下部ストッパ25がガイドブッシュ20のストッパ部27aと離間している(当接していない)状態を前記基準状態とする場合、上記バックラッシは存在しなくなり、組立完了後(すなわち、前記離間状態)において、弁体14と弁シート部46aとの間に形成される間隙の昇降方向における寸法Hは、下部ストッパ25(の下面)とガイドブッシュ20のストッパ部27aとの隙間hより小さくなる(言い換えれば、下部ストッパ25とガイドブッシュ20のストッパ部27aの昇降方向における隙間hが、前記寸法Hより大きくなる)。
また、図示実施形態では、ガイドブッシュ20の嵌合部27の上面からなるストッパ部27aによって下部ストッパ25の下動を規制したが、例えば図4に示すように、ガイドブッシュ20の円筒部21の外周に形成した固定ねじ部23(の下端)に不完全ねじ部23aを形成することにより、下部ストッパ25の雌ねじ部26の締め込みを制限して下部ストッパ25の下動を規制してもよい。
かかる構成の電動弁1では、ステータ52(のステータコイル52c)への通電励磁によってロータ51が回転せしめられると、それと一体に弁軸ホルダ30及び弁軸10が回転せしめられる。このとき、ガイドブッシュ20の固定ねじ部23と弁軸ホルダ30の可動ねじ部33とからなるねじ送り機構28により、弁軸10が弁体14を伴って昇降せしめられ、これによって、弁体14と弁シート部46aとの間の間隙(リフト量)が増減されて、冷媒等の流体の通過流量が調整される。また、弁軸ホルダ30の可動ストッパ体34とガイドブッシュ20に固定された下部ストッパ25の固定ストッパ体24とが当接し、弁体14が最下降位置にあるときでも、弁体14と弁シート部46aとの間に間隙(閉弁時要求リフト量)が形成されるため、所定量の通過流量が確保される(図5参照)。
このように、本第1実施形態の電動弁1においては、ねじピッチpの雌ねじ部26を持つ下部ストッパ25がガイドブッシュ20の所定位置に相対回転可能に螺合され、下部ストッパ機構29により弁軸ホルダ30が最下動位置にあるときに、弁体14が弁シート部46aに接当する着座状態と、前記所定位置にある下部ストッパ25をガイドブッシュ20に対して開弁方向に所定回転角度θだけ回転させて該ガイドブッシュ25に相対回転不能に連結すると、下部ストッパ機構29により弁軸ホルダ30が最下動位置にあるときに、弁体14と弁シート部46aとの間に、昇降方向における寸法Hがp×θ/360で規定される間隙が形成される離間状態とをとり得るように、各部が設計されており、下部ストッパ25がガイドブッシュ20に対して開弁方向に回転された後に当該ガイドブッシュ20に相対回転不能に連結されることにより、弁体14の最下降位置、言い換えれば弁体14が最下降位置にあるときの弁体14と弁シート部46aとの間の間隙が規定される。すなわち、原点位置における弁体14と弁シート部46aとの間の間隙の寸法精度が、基本的に下部ストッパ機構29を構成する下部ストッパ25の雌ねじ部26とガイドブッシュ20の固定ねじ部23の寸法精度に依存することとなるため、前記間隙の寸法ばらつきを抑えることができ、もって、低流量域における流体(冷媒)流量の制御性を向上させることができる。
[第2実施形態]
図6は、本発明に係る電動弁の第2実施形態を示す縦断面図である。
上記第1実施形態の電動弁1では、固定ストッパ体24が設けられた下部ストッパ25をガイドブッシュ20(の固定ねじ部23)に直接的に接合して連結固定したが、本第2実施形態の電動弁2では、下部ストッパ25に係合して当該下部ストッパ25のガイドブッシュ20に対する相対回転を防止するストッパ押さえ(押さえ部材)35を介して当該下部ストッパ25をガイドブッシュ20(の固定ねじ部23)に対して回転不能に連結しており、その他の構成は、上記第1実施形態の電動弁1とほぼ同じである。そのため、以下では、ストッパ押さえ35に関する構成についてのみ詳細に説明し、図1等に示した電動弁1と同じ構成については、同様の符号を付してその詳細な説明を省略する。なお、本第2実施形態の電動弁2の動作も上記第1実施形態における電動弁1と同様である。
本実施形態の電動弁2におけるストッパ押さえ(押さえ部材)35は、図7を参照すればよく理解されるように、前記下部ストッパ25が挿通される嵌挿穴35aが形成された円板状部材からなり、その嵌挿穴35aの外周部分における軸線Oに対して略反対側(略180°離れた位置)に、前記下部ストッパ25を挟持すべく、一対の支持爪36a、36bが立設されている。この一対の支持爪36a、36bは、前記下部ストッパ25の外表面に対向するように設けられると共に、その一対の支持爪36a、36bのうち相対的に小さい(周方向の幅及び高さが相対的に小さい)支持爪36bは、嵌挿穴35aにおける平面視扇形状の固定ストッパ体24が嵌挿される扇状部35bに隣接して(詳細には、扇状部35bに嵌挿される固定ストッパ体24の開弁方向側の側面に隣接して)配置されている。また、前記扇状部35bの外周部分(詳細には、扇状部35bに嵌挿される固定ストッパ体24の開弁方向側の側面とは反対側の側面に隣接する部分)には、固定ストッパ体24の外表面に対向するように支持爪36cが立設されており、この支持爪36cは、前記支持爪36bと共に固定ストッパ体24の周方向における両側面を挟持する。
ガイドブッシュ20(の固定ねじ部23)に下部ストッパ25(の雌ねじ部26)を相対回転可能な状態で螺合させ、前記ストッパ押さえ35をその下部ストッパ25に外装し、支持爪36a、36b、36cにより挟持される下部ストッパ25をストッパ押さえ35と共に軸線O回りで開弁方向(図示例では、平面視で反時計回り)に回転させると、前記下部ストッパ25は回転しながら上昇する(場合によっては、回転のみして上昇はしない)。この状態で、このストッパ押さえ35を溶接・溶着・接着等により弁本体40の鍔状部47等に接合固定すると、下部ストッパ25は、ガイドブッシュ20(の固定ねじ部23)に対して相対回転不能に連結される(図6参照)。
なお、各支持爪36a、36b、36cは、例えば当該ストッパ押さえ35の一部を略垂直に折り曲げる折り曲げ加工等により形成することができる。
この電動弁2の組立工程、特に、弁体14の原点位置(最下降位置)出し工程を概説すると、まず、上記第1実施形態と同様の工程を経て着座状態を形成する。次に、その着座状態から、弁軸10、弁軸ホルダ30、ロータ51、抜け止め係止部材70等が一体とされた組立体を、前記ねじ送り機構28を利用して回転させながら上昇させてガイドブッシュ20から取り外した後、ストッパ押さえ35を下部ストッパ25に外装するようにして弁本体40上に載置し(図8(A)参照)、下部ストッパ25をストッパ押さえ35と共にガイドブッシュ20に対して開弁方向に所定回転角度だけ回転させる(図8(B)参照)。そして、ストッパ押さえ35を弁本体40の鍔状板47に溶接・溶着・接着等により接合固定して、下部ストッパ25を、ガイドブッシュ20(の固定ねじ部23)に相対回転不能に連結した後、再びねじ送り機構28を利用して前記組立体をガイドブッシュ20に組み付ける。これにより、下部ストッパ25の固定ストッパ体24のガイドブッシュ20に対する位置が変わるので、弁軸ホルダ30の可動ストッパ体34と下部ストッパ25の固定ストッパ体24とが当接して、弁軸ホルダ30が最下降位置にあるときでも、弁体14と弁シート部46aとの間に所定の大きさの間隙(昇降方向における寸法がHの間隙)が形成され、上記第1実施形態と同様の離間状態が形成される。
なお、前記ストッパ押さえ35は、最初に弁軸10、ガイドブッシュ20、下部ストッパ25、圧縮コイルばね60、弁軸ホルダ30、ロータ51、弁本体40等を組み付ける段階で、下部ストッパ25に外装して組み付けてもよい。また、前記ストッパ押さえ35は、弁本体40の鍔状部47に代えて又はその鍔状部47と共に、弁本体40に固定されたガイドブッシュ20に固定してもよい。
また、上記第1実施形態において図4に基づき説明したように、本実施形態においても、ガイドブッシュ20の嵌合部27の上面からなるストッパ部27aに代えて、ガイドブッシュ20の円筒部21の外周に形成した固定ねじ部23(の下端)に不完全ねじ部23aを形成することにより、下部ストッパ25の雌ねじ部26の締め込みを制限して下部ストッパ25の下動を規制してもよいことは勿論である。
このように、本第2実施形態の電動弁2においては、下部ストッパ25のガイドブッシュ20に対する相対回転を防止するストッパ押さえ(押さえ部材)35を利用することにより、下部ストッパ25をガイドブッシュ20に対して精緻に位置決めできるため、前記間隙の寸法ばらつきをより効果的に抑えることができる。