JP6760160B2 - R−t−b系焼結磁石の製造方法 - Google Patents
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Description
R1:28.5〜33.5質量%(R1は、希土類元素のうち少なくとも1種でありNdおよびPrの少なくとも1種を含む)、
B:0.84〜0.92質量%、
Ga:0.3〜0.7質量%、
Cu:0.05〜0.35質量%、
Al:0.02〜0.50質量%、
T:61.0質量%以上(Tは、FeとCoでありTの90質量%以上がFeである)を含み、下記式(1)を満足するR−T−B系焼結磁石の製造方法であって、
14[B]/10.8<[T]/55.85 (1)
([B]は質量%で示すBの含有量であり、[T]は質量%で示すTの含有量である)
R2:80〜95質量%(R2は、希土類元素のうち少なくとも1種)、
Ga:5〜20質量%(Gaの40質量%以下をCuで置換できる)、
Fe:0〜1質量%(Feの一部または全部をCoで置換できる)を含む1種以上のR−Ga合金と、1種以上の主合金とを準備する工程と、
前記R−Ga合金を水素雰囲気で200℃以上450℃以下の温度に加熱して、水素吸蔵R−Ga合金を得る水素吸蔵工程と、
前記1種以上の水素吸蔵R−Ga合金と前記1種以上の主合金とを用いて、R−Ga合金粉末と主合金粉末を含む混合合金粉末を得る工程と、
前記混合合金粉末を成形して成形体を得る成形工程と、
前記成形体を焼結し焼結体を得る焼結工程と、
前記焼結体に熱処理を施す熱処理工程と、
を含み、
前記混合合金粉末を得る工程において、少なくとも前記1種以上の水素吸蔵R−Ga合金は水素を吸蔵している状態で粉砕され、
前記混合合金粉末の質量に対する前記R−Ga合金粉末の質量の比が、1〜5%である、R−T−B系焼結磁石の製造方法である。
(条件a)前記水素吸蔵R−Ga合金が水素を吸蔵している状態で、前記水素吸蔵R−Ga合金を粉砕して得たR−Ga合金粉末と、前記主合金を粉砕して得た主合金粉末と、を混合する。
(条件b)前記水素吸蔵R−Ga合金と前記主合金の粗粉砕粉とを混合した混合合金を得て、前記水素吸蔵R−Ga合金が水素を吸蔵している状態で、前記混合合金を粉砕する。
R1:28.5〜33.5質量%(R1は、希土類元素のうち少なくとも1種でありNdおよびPrの少なくとも1種を含む)、
B:0.84〜0.92質量%、
Ga:0.3〜0.7質量%、
Cu:0.05〜0.35質量%、
Al:0.02〜0.50質量%、
を含み、
残部がT(Tは、FeとCoでありTの90質量%以上がFeである)および不可避的不純物であり、下記式(1)を満足するR−T−B系焼結磁石の製造方法であって、
14[B]/10.8<[T]/55.85 (1)
([B]は質量%で示すBの含有量であり、[T]は質量%で示すTの含有量である)
R2:80〜95質量%(R2は、希土類元素のうち少なくとも1種)、
Ga:5〜20質量%(Gaの40質量%以下をCuで置換できる)、
Fe:0〜1質量%(Feの一部または全部をCoで置換できる)を含む1種以上のR−Ga合金と、1種以上の主合金とを準備する工程と、
前記R−Ga合金を水素雰囲気で200℃以上450℃以下の温度に加熱して、水素吸蔵R−Ga合金を得る水素吸蔵工程と、
以下の(条件a)または(条件b)により、R−Ga合金粉末と主合金粉末を含む混合合金粉末を得る工程と、
(条件a)前記水素吸蔵R−Ga合金が水素を吸蔵している状態で、前記水素吸蔵R−Ga合金を粉砕して得たR−Ga合金粉末と、前記主合金を粉砕して得た主合金粉末と、を混合する
(条件b)前記水素吸蔵R−Ga合金と前記主合金の粗粉砕粉とを混合した混合合金を得て、前記水素吸蔵R−Ga合金が水素を吸蔵している状態で、前記混合合金を粉砕する
前記混合合金粉末を成形して成形体を得る成形工程と、
前記成形体を焼結し焼結体を得る焼結工程と、
前記焼結体に熱処理を施す熱処理工程と、
を含み、前記混合合金粉末の質量に対する前記R−Ga合金粉末の質量の比が、1〜5%である、R−T−B系焼結磁石の製造方法である。
前記混合合金粉末を得る工程の(条件a)において、前記水素吸蔵工程の後、前記水素吸蔵R−Ga合金を450℃を超える温度に加熱することなく、前記水素吸蔵R−Ga合金を粉砕することを特徴とする、態様2または4に記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法である。
以下に本発明の実施形態に係る製造方法について詳述する。
まず、本発明の実施形態に係る製造方法により得られるR−T−B系焼結磁石について説明する。
本実施形態に係るR−T−B系焼結磁石の組成は、
R1:28.5〜33.5質量%(R1は、希土類元素のうち少なくとも1種でありNdおよびPrの少なくとも1種を含む)、
B:0.84〜0.92質量%、
Ga:0.3〜0.7質量%、
Cu:0.05〜0.35質量%、
Al:0.02〜0.50質量%、
T:61.0質量%以上(Tは、FeとCoでありTの90質量%以上がFeである)を含み、下記式(1)を満足する。
14[B]/10.8<[T]/55.85 (1)
([B]は質量%で示すBの含有量であり、[T]は質量%で示すTの含有量である。)
R1:28.5〜33.5質量%(R1は、希土類元素のうち少なくとも1種であり、NdおよびPrの少なくとも1種を含む)、
B:0.84〜0.92質量%、
Ga:0.3〜0.7質量%、
Cu:0.05〜0.35質量%、
Al:0.02〜0.50質量%、
を含み、
残部がT(Tは、FeとCoでありTの90質量%以上がFeである)および不可避的不純物であり、下記式(1)を満足する。
14[B]/10.8<[T]/55.85 (1)
([B]は質量%で示すBの含有量であり、[T]は質量%で示すTの含有量である)
以下に、各組成について詳述する。
R1は、希土類元素のうち少なくとも1種であり、NdおよびPrの少なくとも1種を含む。R1の含有量は、28.5〜33.5質量%である。R1が28.5質量%未満であると焼結時の緻密化が困難となるおそれがあり、33.5質量%を超えると主相比率が低下して高いBrを得られないおそれがある。R1の含有量は、好ましくは29.5〜32.5質量%である。R1がこのような範囲であれば、より高いBrを得ることができる。
Bの含有量は、0.84〜0.92質量%である。Bが0.84質量%未満であるとR2T17相が生成されて高いHcJが得られないおそれがあり、0.92質量%を超えるとR−T−Ga相の生成量が少なすぎて高いHcJが得られないおそれがある。Bの含有量は、好ましくは0.85〜0.92質量%である。Bの一部はCと置換することができる。
14[B]/10.8<[T]/55.85 (1)
式(1)を満足することにより、Bの含有量が一般的なR−T−B系焼結磁石よりも少なくなる。一般的なR−T−B系焼結磁石は、主相であるR2T14B相以外に軟磁性相であるR2T17相が生成しないように、[T]/55.85(Feの原子量)は14[B]/10.8(Bの原子量)よりも少ない組成となっている([T]は、質量%で示すFeの含有量である)。本発明のR−T−B系焼結磁石は、一般的なR−T−B系焼結磁石と異なり、[T]/55.85が14[B]/10.8よりも多くなるように式(1)で規定している。なお、本発明のR−T−B系焼結磁石におけるTの主成分はFeであるため、Feの原子量を用いた。
Gaの含有量は、0.3〜0.7質量%である。Gaが0.3質量%未満であると、R−T−Ga相の生成量が少なすぎて、R2T17相を消失させることができず、高いHcJを得ることができないおそれがあり、0.7質量%を超えると不要なGaが存在することになり、主相比率が低下してBrが低下するおそれがある。
Cuの含有量は、0.05〜0.35質量%である。Cuが0.05質量%未満であると高いHcJを得ることができないおそれがあり、0.35質量%を超えると焼結性が悪化して高いHcJが得られないおそれがある。
Alの含有量は、0.02〜0.50質量%である。Alを含有することによりHcJを向上させることができる。Alは通常、製造工程で不可避的不純物として0.02質量%以上含有されるが、不可避的不純物で含有される量と意図的に添加した量の合計で0.50質量%以下含有してもよい。
Tは、遷移金属元素のうち少なくとも1種でありFeを必ず含む。また、Feの10質量%以下をCoで置換できる。つまり、Tの90質量%以上がFeである。Coを含有することにより耐食性を向上させることができるが、Coの置換量がFeの10質量%を超えると、高いBrが得られないおそれがある。Tの含有量は、61.0質量%以上であり、且つ、上述した式(1)を満足する。Tの含有量が61.0質量%未満であると、大幅にBrが低下する恐れがある。好ましくは、Tが残部である。
以下に、本発明の実施形態に係るR−T−B系焼結磁石の製造方法の詳細を説明する。
[主合金]
本発明の態様に係る主合金は、Rm(Rmは、希土類元素の少なくとも1種であり、NdおよびPrの少なくとも1種を含む)が27.5質量%以上である。Rmは、後述するR−Ga合金と混合して上述した組成を有するR−T−B系焼結磁石となるように調整した任意の組成であってよい。典型的には、Rmが27.5質量%以上の既知のR−T−B系焼結磁石用合金を用いることができる。Rmが27.5質量%未満であると本発明のR−T−B系焼結磁石の焼結時における緻密化が困難となるおそれがある。なお、主合金は1種の合金でもよいし、組成が異なる2種以上の合金から構成されていてもよい。
本発明の態様に係るR−Ga合金の組成は、
R2:80〜95質量%(R2は、希土類元素のうち少なくとも1種)、
Ga:5〜20質量%(Gaの40質量%以下をCuで置換できる)、
Fe:0〜1質量%(Feの一部またはすべてをCoで置換できる)を含む。
以下に、各元素の限定理由を記載する。
R2は、希土類元素の少なくとも1種である。R2の含有量は、80〜95質量%である。R2が80質量%未満であると、高いHcJを有するR−T−B系焼結磁石を得ることができないおそれがあり、95質量%を超えるとR2量が多すぎるため、酸化の問題が発生して、磁気特性の低下や発火の危険等を招き、生産上問題となるおそれがある。
Gaの含有量は、5〜20質量%である。Gaが5質量%未満であると、高いHcJを有するR−T−B系焼結磁石を得ることができないおそれがあり、20質量%を超えるとHcJが低下するおそれがある。Gaの40質量%以下をCuで置換できる。
Feの含有量は0〜1質量%である。Feが1質量%を超えると高いHcJを得ることができない。また、Feの一部またはすべてをCoで置換できる。好ましくは、R−Ga合金には、FeおよびCoを含有しない。
[水素吸蔵工程]
上述した組成からなるR−Ga合金を、水素雰囲気で200℃以上450℃以下の温度に加熱して、水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)を得る。具体的には、フレーク状のR−Ga合金鋳片を水素炉の内部へ収容し、水素吸蔵処理を行う。水素吸蔵処理は、水素炉内を真空引きした後、炉内温度を200℃以上450℃以下に設定し、圧力が30kPa〜1.0MPaの水素ガスを水素炉内に供給し(すなわち、炉内を水素雰囲気にして)、R−Ga合金鋳片に水素を吸蔵させることによって行う。なお、R−Ga合金への加熱温度は、R−Ga合金に熱電対をとりつけることにより確認することができる。水素の吸蔵によってR−Ga合金鋳片は自然崩壊して脆化(一部は粉化)し、例えば1.0mm以下の粗粉末状の水素吸蔵R−Ga合金を得る。200℃未満の温度で水素吸蔵処理を行うと、水素の吸蔵量が少なすぎるため、脆化させることができない。また450℃を超える温度に加熱するとR−Ga合金が溶融してしまい、粉砕することができない。従って、R−Ga合金を200℃以上450℃以下の温度で水素吸蔵処理を行う。このような温度範囲で水素吸蔵処理を行うことにより、後述する粉砕工程において、D50が8μm以下の微細なR−Ga合金粉末を得ることができ、当該R−Ga合金粉末を用いて製造したR−T−B系焼結磁石は高いHcJを有することができる。
なお本明細書において、「水素吸蔵R−Ga合金」とは、R−Ga合金を水素吸蔵処理することにより得られる粗粉末状のR−Ga合金を意味する。
次に、前記1種以上の水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)と前記1種以上の主合金とを用いて、R−Ga合金粉末(微粉砕粉末)と主合金粉末(微粉砕粉末)を含む混合合金粉末(微粉砕粉末)を得る。混合合金粉末(微粉砕粉末)を得る工程において、少なくとも前記1種以上の水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)は水素を吸蔵している状態で粉砕(微粉砕)される。混合合金粉末(微粉砕粉末)は、水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)と主合金とを混合してから粉砕することにより得てもよいし、水素吸蔵R−Ga合金と主合金を別々に粉砕(粗粉砕および微粉砕)した後混合することにより得てもよい。例えば、以下の条件(a)または条件(b)により、R−Ga合金粉末と、主合金粉末と、を含む混合合金粉末を得る。
(条件a)水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)が水素を吸蔵している状態で、水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)を粉砕(微粉砕)して得たR−Ga合金粉末(微粉砕粉末)と、主合金を粉砕(粗粉砕および微粉砕)して得た主合金粉末(微粉砕粉末)と、を混合する。
(条件b)水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)と主合金の粗粉砕粉とを混合した混合合金(粗粉砕粉末)を得て、水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)が水素を吸蔵している状態で、混合合金(粗粉砕粉末)を粉砕(微粉砕)する。
以下、(条件a)および(条件b)について説明する。
本発明にかかる混合合金粉末(微粉砕粉末)は、それぞれ準備したR−Ga合金粉末(微粉砕粉末)と、主合金粉末(微粉砕粉末)とを混合することにより得てもよい。
図1Aは、(条件a)における本発明の工程の例を示すフローチャートである。図1Aに示すように、(条件a)の場合、主合金及びR−Ga合金の粗粉砕粉末(主合金の粗粉砕粉末及び水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末))を別々に作製し、さらに別々に微粉砕粉末(主合金粉末及びR−Ga合金粉末)を作製する。そして作製した主合金粉末(微粉砕粉末)及びR−Ga合金粉末(微粉砕粉末)を混合して混合合金粉末(微粉砕粉末)を得る。
まず、得られた水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)を粉砕(微粉砕)して、R−Ga合金粉末(微粉砕粉末)を得る。具体的には、得られた水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)が水素を吸蔵している状態で、不活性ガス中でジェットミル等により微粉砕することによりR−Ga合金粉末(微粉砕粉末)を得る。ここで、本発明において、水素吸蔵R−Ga合金が水素を吸蔵している状態とは、水素吸蔵R−Ga合金が含有する水素量(水素含有量)が2600ppm以上であることをいう。水素吸蔵R−Ga合金が水素を吸蔵している状態で微粉砕することにより、D50が8μm以下の微粉砕粉状のR−Ga合金粉末を得ることができる。当該R−Ga合金粉末を用いて製造したR−T−B系焼結磁石は、高いHcJを有することができる。
さらに好ましくは、水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)を加熱することなく、水素吸蔵工程後の水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)を粉砕(微粉砕)する。(但し、微粉砕時に水素吸蔵R−Ga合金の温度が上昇する場合があるため、自身の発熱による温度上昇は加熱に含まない。)
なお本明細書において、「合金粉末」とは、D50が8μm以下の微粉砕粉状の粉末を意味する。
このようにして得られるR−Ga合金粉末(微粉砕粉末)と、主合金を粉砕(粗粉砕および微粉砕)して得られる主合金粉末(微粉砕粉末)と、を含む混合合金粉末(微粉砕粉末)を得る。
具体的には、混合合金粉末(微粉砕粉末)は、水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)を粉砕して得たR−Ga合金粉末(微粉砕粉末)と、主合金を粉砕(粗粉砕および微粉砕)して得た主合金粉末(微粉砕粉末)とをそれぞれ準備し、これらを混合することにより得ることができる。R−Ga合金粉末(微粉砕粉末)と主合金粉末(微粉砕粉末)は例えば、V型混合機などの公知の混合器で混合すればよい。
この場合、前記R−Ga合金粉末(微粉砕粉末)を得る工程とは別に、上述したような公知の粉砕方法を用いて主合金粉末(微粉砕粉末)を準備する。具体的には、主合金を水素粉砕等によって粗粉砕し、平均粒度が1.0mm以下の粗粉砕粉末(主合金の粗粉末)を準備する。次に、粗粉砕粉末を不活性ガス中でジェットミル等により微粉砕し、例えば粒径D50が3〜5μmの微粉砕粉(主合金粉末)を得る。このようにして得られた主合金粉末(微粉砕粉末)と、R−Ga合金粉末(微粉砕粉末)を得る工程により得られたR−Ga合金粉末(微粉砕粉末)とを混合することにより、混合合金粉末(微粉砕粉末)を得ることができる。
また、本発明の実施形態に係る混合合金粉末(微粉砕粉末)は、水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)と主合金の粗粉砕粉とを混合した混合合金(粗粉砕粉末)を粉砕(微粉砕)することにより得てもよい。
図1Bは、(条件b)おける本発明の工程の例を示すフローチャートである。図1Bに示すように、(条件b)の場合、主合金及びR−Ga合金の粗粉砕粉末(主合金の粗粉砕粉末及び水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末))を別々に作製した後、主合金の粗粉砕粉末と水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)を混合して混合合金(粗粉砕粉末)を得る。そして得られた混合合金(粗粉砕粉末)を粉砕(微粉砕)することにより、混合合金粉末(微粉砕粉末)を得る。
まず、主合金を、公知の粉砕方法(例えば水素粉砕)を用いて粉砕することにより、例えば1.0mm以下の主合金の粗粉砕粉を得る。次に、得られた主合金の粗粉砕粉と、水素吸蔵R−Ga合金と、を混合することにより、混合合金を得る。
このようして得られる混合合金を粉砕することにより、混合合金粉末を得る。
具体的には、混合合金に含まれる水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)が水素を吸蔵している状態で、不活性ガス中でジェットミル等により、混合合金を微粉砕することにより混合合金粉末を得る。ここで、混合合金に含まれる水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)が水素を吸蔵している状態とは、混合合金に含まれる水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)が含有する水素量(水素含有量)が2600ppm以上であることをいう。混合合金(粗粉砕粉末)に含まれる水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)が水素を吸蔵している状態で、混合合金(粗粉砕粉末)を微粉砕することにより、D50が8μm以下の微粉砕粉状のR−Ga合金粉末を含む、混合合金粉末を得ることができる。当該混合合金粉末を用いて製造したR−T−B系焼結磁石は、高いHcJを有することができる。
さらに好ましくは、水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)を得た後から混合合金の微粉砕が完了するまでの間、混合合金(粗粉砕粉末)に含まれる水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)を加熱することなく、混合合金(粗粉砕粉末)を粉砕(微粉砕)する。(但し、微粉砕時に水素吸蔵R−Ga合金の温度が上昇する場合があるため、自身の発熱による温度上昇は加熱に含まない。)
得られた混合合金粉末を用いて磁界中成形を行い、成形体を得る。磁界中成形は、金型のキャビティー内に乾燥した合金粉末を挿入し、磁界を印加しながら成形する乾式成形法、金型のキャビティー内にスラリーを注入し、スラリーの分散媒を排出しながら成形する湿式成形法を含む既知の任意の磁界中成形方法を用いてよい。
成形体を焼結することにより焼結体(焼結磁石)を得る。成形体の焼結は既知の方法を用いることができる。なお、焼結時の雰囲気による酸化を防止するために、焼結は真空雰囲気中または不活性ガス中で行うことが好ましい。不活性ガスは、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスを用いることが好ましい。
得られた焼結磁石に対し、磁気特性を向上させることを目的とした熱処理を行うことが好ましい。熱処理温度、熱処理時間などは既知の条件を用いることができる。例えば、比較的低い温度(400℃以上600℃以下)のみでの熱処理(一段熱処理)をしてもよく、あるいは比較的高い温度(700℃以上焼結温度以下(例えば1050℃以下))で熱処理を行った後比較的低い温度(400℃以上600℃以下)で熱処理(二段熱処理)をしてもよい。好ましい条件は、730℃以上1020℃以下で5分から500分程度の熱処理を施し、冷却後(室温まで冷却後、または440℃以上550℃以下まで冷却後)、さらに440℃以上550℃以下で5分から500分程度熱処理をすることが挙げられる。熱処理雰囲気は、真空雰囲気あるいは不活性ガス(ヘリウムやアルゴンなど)で行うことが好ましい。
実施例1の本発明例は、混合合金粉末を得る工程を条件bで行った。
表1の試料No.1〜4(いずれも比較例)に示すR−T−B系焼結磁石の組成となるように各元素を秤量し、ストリップキャスト法により、それぞれの合金を作製した。得られた各合金に対して、公知の水素粉砕を行い粗粉砕粉を得た。具体的には、前記合金をそれぞれ水素炉内に装入した後真空にし、室温で絶対圧が295kPaになるまで水素導入し水素脆化した後、550℃まで真空中で加熱、冷却する脱水素処理を施し、粗粉砕粉末を得た。
表3に記載の他の水素吸蔵R−Ga合金(合金No.a−1、a−2、b−1、c−1、d−1〜d−4)、並びに表8、表13および表19に記載の各水素吸蔵R−Ga合金についても、水素吸蔵工程の条件を同様の記載ルールに沿って記載している。なお、R−Ga合金への加熱温度は、R−Ga合金に熱電対をとりつけることにより確認した。
表4に記載の他の試料(試料No.6〜15)、並びに表9、表14、表20に記載の各試料についても、各合金および混合比の条件を同様の記載ルールに沿って記載している。
実施例2では、混合合金粉末を得る工程を条件bで行った。
表7に示す主合金(No.K〜Q)及びR−Ga合金(No.e〜j)の組成となるように各元素を秤量し、ストリップキャスト法により合金を作製した。得られた主合金およびR−Ga合金の成分の分析結果を表7に示す。得られた前記主合金を上述した公知の水素粉砕と同様な条件で水素粉砕を行い、主合金の粗粉砕粉末を得た。また、得られた前記R−Ga合金に対して表8に示す本発明の水素吸蔵工程を行うことにより水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)を得た。得られた主合金の粗粉砕粉末と水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)を、表9に示す比率でそれぞれV型混合機に投入して混合し、ジェットミルにより微粉砕し、粒径D50(気流分散法によるレーザー回折法で得られる体積中心値)が4.5μmの微粉砕粉末(主合金粉末及びR−Ga合金粉末が混合された混合合金粉末)を作製した(条件b)。得られた微粉砕粉を実施例1と同様な方法で成形して成形体を得た。さらに、得られた成形体を実施例1と同様な方法で焼結、熱処理を行った。得られた焼結体(R−T−B系焼結磁石)の成分の分析結果を表10に示す。表10に示す様に、試料No.16〜22は、いずれもほぼ同じ組成である。
実施例3では、混合合金粉末を得る工程を条件aで行った。
主合金(No.T,U)及びR−Ga合金(No.t,u)の組成がおよそ表12に示す組成となるように各元素を秤量し、ストリップキャスト法により合金を作製した。得られた主合金およびR−Ga合金の成分の分析結果を表12に示す。得られた前記主合金を実施例1と同様な条件で水素粉砕を行い、主合金の粗粉砕粉末を得た。さらに得られた主合金の粗粉砕粉末をジェットミルにより微粉砕し、粒径D50(気流分散法によるレーザー回折法で得られる体積中心値)が4.5μmの微粉砕粉末(主合金粉末)を作製した。また、得られた前記R−Ga合金に対して表13に示す本発明の水素吸蔵工程を行うことにより水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)を得た。さらに得られた水素吸蔵R−Ga合金をジェットミルにより微粉砕し、粒径D50(気流分散法によるレーザー回折法で得られる体積中心値)が4.5μmのR−Ga合金粉末(微粉砕粉末)を作製した。得られた主合金粉末(微粉砕粉末)とR−Ga合金粉末(微粉砕粉末)を、表14に示す比率でそれぞれV型混合機に投入して混合し、混合合金粉末(微粉砕粉末)を作製した(条件a)。得られた混合合金粉末を実施例1と同様な方法で成形して成形体を得た。さらに、得られた成形体を実施例1と同様な方法で焼結、熱処理を行った。得られた焼結体(R−T−B系焼結磁石)の成分の分析結果を表15に示す。
実施例4の本発明例は、混合合金粉末を得る工程を条件bで行った。
およそ表17の試料No.25〜28(いずれも比較例)に示すR−T−B系焼結磁石の組成となるように各元素を秤量し、ストリップキャスト法によりそれぞれの合金を作製した。得られた前記合金を実施例1と同様な方法で公知の水素粉砕を行い粗粉砕粉を得た。具体的には、前記合金をそれぞれ水素炉内に装入した後真空にし、室温で絶対圧が295kPaになるまで水素導入し水素脆化した後、550℃まで真空中で加熱、冷却する脱水素処理を施し、粗粉砕粉末を得た。
また、水素吸蔵R−Ga合金No.k−1、n−1における水素含有量を測定した。測定結果を表19に示す。
よってR−T−B系焼結磁石に重希土類元素を含有させる場合、主合金側よりもR−Ga合金側に重希土類元素を多く含有させた方が好ましい。
Claims (7)
- R1:28.5〜33.5質量%(R1は、希土類元素のうち少なくとも1種でありNdおよびPrの少なくとも1種を含む)、
B:0.84〜0.92質量%、
Ga:0.3〜0.7質量%、
Cu:0.05〜0.35質量%、
Al:0.02〜0.50質量%、
T:61.0質量%以上(Tは、FeとCoでありTの90質量%以上がFeである)を含み、下記式(1)を満足するR−T−B系焼結磁石の製造方法であって、
14[B]/10.8<[T]/55.85 (1)
([B]は質量%で示すBの含有量であり、[T]は質量%で示すTの含有量である)
R2:80〜95質量%(R2は、希土類元素のうち少なくとも1種)、
Ga:5〜20質量%(Gaの40質量%以下をCuで置換できる)、
Fe:0〜1質量%(Feの一部または全部をCoで置換できる)を含む1種以上のR−Ga合金と、1種以上の主合金とを準備する工程と、
前記R−Ga合金を水素雰囲気で200℃以上450℃以下の温度に加熱して、水素吸蔵R−Ga合金を得る水素吸蔵工程と、
前記1種以上の水素吸蔵R−Ga合金と前記1種以上の主合金とを用いて、R−Ga合金粉末と主合金粉末を含む混合合金粉末を得る工程と、
前記混合合金粉末を成形して成形体を得る成形工程と、
前記成形体を焼結し焼結体を得る焼結工程と、
前記焼結体に熱処理を施す熱処理工程と、
を含み、
前記混合合金粉末を得る工程において、少なくとも前記1種以上の水素吸蔵R−Ga合金は水素を吸蔵している状態で粉砕され、
前記混合合金粉末の質量に対する前記R−Ga合金粉末の質量の比が、1〜5%であり、
前記水素吸蔵R−Ga合金における水素含有量は2600ppm以上である、R−T−B系焼結磁石の製造方法。 - 前記混合合金粉末を得る工程は、以下の(条件a)または(条件b)により混合合金粉末を得る、請求項1に記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
(条件a)前記水素吸蔵R−Ga合金が水素を吸蔵している状態で、前記水素吸蔵R−Ga合金を粉砕して得たR−Ga合金粉末と、前記主合金を粉砕して得た主合金粉末と、を混合する
(条件b)前記水素吸蔵R−Ga合金と前記主合金の粗粉砕粉とを混合した混合合金を得て、前記水素吸蔵R−Ga合金が水素を吸蔵している状態で、前記混合合金を粉砕する - R1:28.5〜33.5質量%(R1は、希土類元素のうち少なくとも1種でありNdおよびPrの少なくとも1種を含む)、
B:0.84〜0.92質量%、
Ga:0.3〜0.7質量%、
Cu:0.05〜0.35質量%、
Al:0.02〜0.50質量%、
を含み、
残部がT(Tは、FeとCoでありTの90質量%以上がFeである)および不可避的不純物であり、下記式(1)を満足するR−T−B系焼結磁石の製造方法であって、
14[B]/10.8<[T]/55.85 (1)
([B]は質量%で示すBの含有量であり、[T]は質量%で示すTの含有量である)
R2:80〜95質量%(R2は、希土類元素のうち少なくとも1種)、
Ga:5〜20質量%(Gaの40質量%以下をCuで置換できる)、
Fe:0〜1質量%(Feの一部または全部をCoで置換できる)を含む1種以上のR−Ga合金と、1種以上の主合金とを準備する工程と、
前記R−Ga合金を水素雰囲気で200℃以上450℃以下の温度に加熱して、水素吸蔵R−Ga合金を得る水素吸蔵工程と、
以下の(条件a)または(条件b)により、R−Ga合金粉末と主合金粉末を含む混合合金粉末を得る工程と、
(条件a)前記水素吸蔵R−Ga合金が水素を吸蔵している状態で、前記水素吸蔵R−Ga合金を粉砕して得たR−Ga合金粉末と、前記主合金を粉砕して得た主合金粉末と、を混合する
(条件b)前記水素吸蔵R−Ga合金と前記主合金の粗粉砕粉とを混合した混合合金を得て、前記水素吸蔵R−Ga合金が水素を吸蔵している状態で、前記混合合金を粉砕する
前記混合合金粉末を成形して成形体を得る成形工程と、
前記成形体を焼結し焼結体を得る焼結工程と、
前記焼結体に熱処理を施す熱処理工程と、
を含み、前記混合合金粉末の質量に対する前記R−Ga合金粉末の質量の比が、1〜5%であり、
前記水素吸蔵R−Ga合金における水素含有量は2600ppm以上である、R−T−B系焼結磁石の製造方法。 - 前記混合合金粉末を得る工程の(条件a)において、前記水素吸蔵工程の後、前記水素吸蔵R−Ga合金を450℃を超える温度に加熱することなく、前記水素吸蔵R−Ga合金を粉砕することを特徴とする、請求項2または3に記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
- 前記混合合金粉末を得る工程の(条件a)において、前記水素吸蔵工程の後、前記水素吸蔵R−Ga合金を加熱することなく、前記水素吸蔵R−Ga合金を粉砕することを特徴とする、請求項2または3に記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
- 前記混合合金粉末を得る工程の(条件b)において、前記水素吸蔵工程の後、前記水素吸蔵R−Ga合金を450℃を超える温度に加熱することなく、前記混合合金を粉砕することを特徴とする、請求項2または3に記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
- 前記混合合金粉末を得る工程の(条件b)において、前記水素吸蔵工程の後、前記水素吸蔵R−Ga合金を加熱することなく、前記混合合金を粉砕することを特徴とする、請求項2または3に記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
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