JP6760160B2 - R−t−b系焼結磁石の製造方法 - Google Patents

R−t−b系焼結磁石の製造方法 Download PDF

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本開示は、R−T−B系焼結磁石の製造方法に関する。
R−T−B系焼結磁石(Rは希土類元素のうち少なくとも一種であり、NdおよびPrの少なくとも1種を含む、Tは遷移金属元素のうち少なくとも一種でありFeを必ず含む)は、R14B型結晶構造を有する化合物からなる主相と、この主相の粒界部分に位置する粒界相とから構成されており、永久磁石の中で最も高性能な磁石として知られている。
このため、ハードディスクドライブのボイスコイルモータ(VCM)、電気自動車(EV、HV、PHV)用モータ、産業機器用モータなどの各種モータや家電製品など多種多様な用途に用いられている。
このように用途が広がるにつれ、例えば電気自動車用モータで用いられた場合は、100℃〜160℃のような高温下に曝される場合があり、高温下においても安定した動作が要求されている。
しかし、従来のR−T−B系焼結磁石は、高温になると保磁力HcJ(以下、単に「HcJ」と記載する場合がある)が低下し、不可逆熱減磁が起こるという問題がある。電気自動車用モータにR−T−B系焼結磁石が使用される場合、高温下での使用によりHcJが低下し、モータの安定した動作が得られない恐れがある。そのため、室温において高いHcJを有し、かつ高温においても高いHcJを有するR−T−B系焼結磁石が求められている。
室温におけるHcJ向上のために、従来R−T−B系焼結磁石に重希土類元素RH(主としてDy)を添加していたが、残留磁束密度B(以下、単に「B」と記載する場合がある)が低下するという問題があった。さらに、Dyは、産出地が限定されている等の理由から、供給が不安定であり、また価格が大きく変動することがあるなどの問題を有している。そのため、Dyなどの重希土類元素RHをできるだけ使用せずにR−T−B系焼結磁石のHcJを向上させる技術が求められている。
このような技術として、例えば特許文献1は、通常のR−T−B系合金よりもB量を低くするとともに、Al、GaおよびCuのうちから選ばれる1種以上である金属元素Mを含有させることによりR17相を生成させ、当該R17相を原料として生成させた遷移金属リッチ相(R−T−Ga相)の体積率を充分に確保することにより、Dyの含有量を抑制しつつ、保磁力の高いR−T−B系焼結磁石が得られることを開示している。
国際公開第2013/008756号公報
しかし、特許文献1に記載されるR−T−B系焼結磁石はHcJが向上しているものの、近年の要求を満足するには不十分である。
そこで本発明は、高い保磁力HcJを有するR−T−B系焼結磁石の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の態様1は、
R1:28.5〜33.5質量%(R1は、希土類元素のうち少なくとも1種でありNdおよびPrの少なくとも1種を含む)、
B:0.84〜0.92質量%、
Ga:0.3〜0.7質量%、
Cu:0.05〜0.35質量%、
Al:0.02〜0.50質量%、
T:61.0質量%以上(Tは、FeとCoでありTの90質量%以上がFeである)を含み、下記式(1)を満足するR−T−B系焼結磁石の製造方法であって、

14[B]/10.8<[T]/55.85 (1)
([B]は質量%で示すBの含有量であり、[T]は質量%で示すTの含有量である)

R2:80〜95質量%(R2は、希土類元素のうち少なくとも1種)、
Ga:5〜20質量%(Gaの40質量%以下をCuで置換できる)、
Fe:0〜1質量%(Feの一部または全部をCoで置換できる)を含む1種以上のR−Ga合金と、1種以上の主合金とを準備する工程と、
前記R−Ga合金を水素雰囲気で200℃以上450℃以下の温度に加熱して、水素吸蔵R−Ga合金を得る水素吸蔵工程と、
前記1種以上の水素吸蔵R−Ga合金と前記1種以上の主合金とを用いて、R−Ga合金粉末と主合金粉末を含む混合合金粉末を得る工程と、
前記混合合金粉末を成形して成形体を得る成形工程と、
前記成形体を焼結し焼結体を得る焼結工程と、
前記焼結体に熱処理を施す熱処理工程と、
を含み、
前記混合合金粉末を得る工程において、少なくとも前記1種以上の水素吸蔵R−Ga合金は水素を吸蔵している状態で粉砕され、
前記混合合金粉末の質量に対する前記R−Ga合金粉末の質量の比が、1〜5%である、R−T−B系焼結磁石の製造方法である。
本発明の態様2は、前記混合合金粉末を得る工程は、以下の(条件a)または(条件b)により混合合金粉末を得る、態様1に記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法である。
(条件a)前記水素吸蔵R−Ga合金が水素を吸蔵している状態で、前記水素吸蔵R−Ga合金を粉砕して得たR−Ga合金粉末と、前記主合金を粉砕して得た主合金粉末と、を混合する。
(条件b)前記水素吸蔵R−Ga合金と前記主合金の粗粉砕粉とを混合した混合合金を得て、前記水素吸蔵R−Ga合金が水素を吸蔵している状態で、前記混合合金を粉砕する。
本発明の態様3は、前記水素吸蔵R−Ga合金における水素含有量は2600ppm以上である、態様1または2に記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法である。
本発明の態様4は、
R1:28.5〜33.5質量%(R1は、希土類元素のうち少なくとも1種でありNdおよびPrの少なくとも1種を含む)、
B:0.84〜0.92質量%、
Ga:0.3〜0.7質量%、
Cu:0.05〜0.35質量%、
Al:0.02〜0.50質量%、
を含み、
残部がT(Tは、FeとCoでありTの90質量%以上がFeである)および不可避的不純物であり、下記式(1)を満足するR−T−B系焼結磁石の製造方法であって、

14[B]/10.8<[T]/55.85 (1)
([B]は質量%で示すBの含有量であり、[T]は質量%で示すTの含有量である)

R2:80〜95質量%(R2は、希土類元素のうち少なくとも1種)、
Ga:5〜20質量%(Gaの40質量%以下をCuで置換できる)、
Fe:0〜1質量%(Feの一部または全部をCoで置換できる)を含む1種以上のR−Ga合金と、1種以上の主合金とを準備する工程と、
前記R−Ga合金を水素雰囲気で200℃以上450℃以下の温度に加熱して、水素吸蔵R−Ga合金を得る水素吸蔵工程と、
以下の(条件a)または(条件b)により、R−Ga合金粉末と主合金粉末を含む混合合金粉末を得る工程と、
(条件a)前記水素吸蔵R−Ga合金が水素を吸蔵している状態で、前記水素吸蔵R−Ga合金を粉砕して得たR−Ga合金粉末と、前記主合金を粉砕して得た主合金粉末と、を混合する
(条件b)前記水素吸蔵R−Ga合金と前記主合金の粗粉砕粉とを混合した混合合金を得て、前記水素吸蔵R−Ga合金が水素を吸蔵している状態で、前記混合合金を粉砕する
前記混合合金粉末を成形して成形体を得る成形工程と、
前記成形体を焼結し焼結体を得る焼結工程と、
前記焼結体に熱処理を施す熱処理工程と、
を含み、前記混合合金粉末の質量に対する前記R−Ga合金粉末の質量の比が、1〜5%である、R−T−B系焼結磁石の製造方法である。
本発明の態様5は、前記水素吸蔵R−Ga合金における水素含有量は2600ppm以上である、態様4に記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法である。
本発明の態様6は、
前記混合合金粉末を得る工程の(条件a)において、前記水素吸蔵工程の後、前記水素吸蔵R−Ga合金を450℃を超える温度に加熱することなく、前記水素吸蔵R−Ga合金を粉砕することを特徴とする、態様2または4に記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法である。
本発明の態様7は、前記混合合金粉末を得る工程の(条件a)において、前記水素吸蔵工程の後、前記水素吸蔵R−Ga合金を加熱することなく、前記水素吸蔵R−Ga合金を粉砕することを特徴とする、態様2または4に記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法である。
本発明の態様8は、前記混合合金粉末を得る工程の(条件b)において、前記水素吸蔵工程の後、前記水素吸蔵R−Ga合金を450℃を超える温度に加熱することなく、前記混合合金を粉砕することを特徴とする、態様2または4に記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法である。
本発明の態様9は、前記混合合金粉末を得る工程の(条件b)において、前記水素吸蔵工程の後、前記水素吸蔵R−Ga合金を加熱することなく、前記混合合金を粉砕することを特徴とする、態様2または4に記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法である。
本発明によれば、高い保磁力HcJを有するR−T−B系焼結磁石の製造方法を提供することができる。
図1Aは、(条件a)における本発明の工程の例を示すフローチャートである。 図1Bは、(条件b)における本発明の工程の例を示すフローチャートである。
以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するためのR−T−B系焼結磁石の製造方法を例示するものであって、本発明を以下に限定するものではない。
特許文献1に記載されているように一般的なR−T−B系焼結磁石よりもB量を少なく(R14B型化合物の化学量論比のB量よりも少なく)し、Ga等を添加することにより、遷移金属リッチ相(R−T−Ga相)を生成させてHcJを向上させることができる。しかし、本発明者らが鋭意検討した結果、R−T−Ga相は若干の磁化を有しており、R−T−B系焼結磁石における2つの主相間に存在する第一の粒界(以下、「二粒子粒界」と記載する場合がある)と、3つ以上の主相間に存在する第二の粒界(以下、「三重点粒界」と記載する場合がある)のうち、特にHcJに主に影響すると考えられる二粒子粒界にR−T−Ga相が多く存在すると、HcJ向上の妨げになることが分かった。また、R−T−Ga相の生成とともに、二粒子粒界にR−T−Ga相よりも磁化が低いと考えられるR−Ga相が生成されていることが分かった。そこで、高いHcJを有するR−T−B系焼結磁石を得るためには、R−T−Ga相を生成する必要はあるものの、二粒子粒界にR−Ga相を多く生成させることが重要であると想定した。
本発明者らは、二粒子粒界にR−Ga相を多く生成させるためには、R−Ga合金粉末と主合金粉末とを準備し、それらの合金粉末を混合する、いわゆるブレンド法によりR−T−B系焼結磁石を製造することが有効であると考えた。
しかし、R−Ga合金は粉砕性が悪く、ブレンド法において、R−Ga合金粉末を得るために通常の水素粉砕等の方法を用いて粉砕しても、D50(気流分散式レーザー回折法による測定で得られる体積中心値(体積基準メジアン径)をいう。以下において同じ。)が20μm程度の大きさまでしか粉砕することができなかった。このような大きさのR−Ga合金を用いてブレンド法によりR−T−B系焼結磁石を製造した場合、R−T−B系焼結磁石の二粒子粒界にR−Ga相を十分に生成させることができず、さらには、そもそも粒径が大きすぎる(高いHcJ及び高いBを得るには8μm以下に粉砕する必要がある)ため高い保磁力HcJと残留磁束密度Bとを有するR−T−B系焼結磁石を得ることができなかった。R−Ga合金に対してFeを過多に添加することにより粉砕性を高めることができたが、この場合、得られたR−T−B系焼結磁石の二粒子粒界において、磁化を有するFe濃度が上昇し、やはり高いHcJを得ることができなかった。
本発明者らはさらに鋭意検討した結果、ブレンド法において、特定組成のR−Ga合金に対して特定の温度で水素を吸蔵させ、水素が吸蔵された状態(水素含有量が2600ppm以上)のR−Ga合金を粉砕することにより、得られるR−Ga合金粉末の大きさをD50が8μm以下まで小さくできることを見出した。これにより、HcJを低下させる原因となるFeを過多に添加することなく、R−Ga合金を8μm以下に粉砕することができる。そして、本発明の特定組成のR−Ga合金と主合金粉末とを用いてR−T−B系焼結磁石を作製することにより、二粒子粒界に多くのR−Ga相が生成されると考えられる。これにより高い保磁力HcJをおよび高い残留磁束密度Bを有するR−T−B系焼結磁石を得ることができる。
以下に本発明の実施形態に係る製造方法について詳述する。
[R−T−B系焼結磁石]
まず、本発明の実施形態に係る製造方法により得られるR−T−B系焼結磁石について説明する。
[R−T−B系焼結磁石の組成]
本実施形態に係るR−T−B系焼結磁石の組成は、
R1:28.5〜33.5質量%(R1は、希土類元素のうち少なくとも1種でありNdおよびPrの少なくとも1種を含む)、
B:0.84〜0.92質量%、
Ga:0.3〜0.7質量%、
Cu:0.05〜0.35質量%、
Al:0.02〜0.50質量%、
T:61.0質量%以上(Tは、FeとCoでありTの90質量%以上がFeである)を含み、下記式(1)を満足する。

14[B]/10.8<[T]/55.85 (1)
([B]は質量%で示すBの含有量であり、[T]は質量%で示すTの含有量である。)
また、本発明の好ましい実施形態に係るR−T−B系焼結磁石の組成は、
R1:28.5〜33.5質量%(R1は、希土類元素のうち少なくとも1種であり、NdおよびPrの少なくとも1種を含む)、
B:0.84〜0.92質量%、
Ga:0.3〜0.7質量%、
Cu:0.05〜0.35質量%、
Al:0.02〜0.50質量%、
を含み、
残部がT(Tは、FeとCoでありTの90質量%以上がFeである)および不可避的不純物であり、下記式(1)を満足する。

14[B]/10.8<[T]/55.85 (1)
([B]は質量%で示すBの含有量であり、[T]は質量%で示すTの含有量である)
上記組成により、一般的なR−T−B系焼結磁石よりもB量を少なくするとともに、Ga等を含有させているので、二粒子粒界にR−T−Ga相が生成して、高いHcJを有することができる。ここで、R−T−Ga相とは、代表的にはNdFe13Ga化合物である。R13Ga化合物は、LaCo11Ga型結晶構造を有する。また、R13Ga化合物は、その状態によっては、R13−δGa1+δ化合物(δは典型的には2以下)になっている場合がある。例えば、R−T−B系焼結磁石中に比較的多くCu、Alが含有される場合、R13−δ(Ga1−x−yCuAl1+δになっている場合がある。
以下に、各組成について詳述する。
(R1:28.5〜33.5質量%)
R1は、希土類元素のうち少なくとも1種であり、NdおよびPrの少なくとも1種を含む。R1の含有量は、28.5〜33.5質量%である。R1が28.5質量%未満であると焼結時の緻密化が困難となるおそれがあり、33.5質量%を超えると主相比率が低下して高いBを得られないおそれがある。R1の含有量は、好ましくは29.5〜32.5質量%である。R1がこのような範囲であれば、より高いBを得ることができる。
(B:0.84〜0.92質量%)
Bの含有量は、0.84〜0.92質量%である。Bが0.84質量%未満であるとR17相が生成されて高いHcJが得られないおそれがあり、0.92質量%を超えるとR−T−Ga相の生成量が少なすぎて高いHcJが得られないおそれがある。Bの含有量は、好ましくは0.85〜0.92質量%である。Bの一部はCと置換することができる。
Bの含有量は下記式(1)を満たす。

14[B]/10.8<[T]/55.85 (1)

式(1)を満足することにより、Bの含有量が一般的なR−T−B系焼結磁石よりも少なくなる。一般的なR−T−B系焼結磁石は、主相であるR14B相以外に軟磁性相であるR17相が生成しないように、[T]/55.85(Feの原子量)は14[B]/10.8(Bの原子量)よりも少ない組成となっている([T]は、質量%で示すFeの含有量である)。本発明のR−T−B系焼結磁石は、一般的なR−T−B系焼結磁石と異なり、[T]/55.85が14[B]/10.8よりも多くなるように式(1)で規定している。なお、本発明のR−T−B系焼結磁石におけるTの主成分はFeであるため、Feの原子量を用いた。
(Ga:0.3〜0.7質量%)
Gaの含有量は、0.3〜0.7質量%である。Gaが0.3質量%未満であると、R−T−Ga相の生成量が少なすぎて、R17相を消失させることができず、高いHcJを得ることができないおそれがあり、0.7質量%を超えると不要なGaが存在することになり、主相比率が低下してBが低下するおそれがある。
(Cu:0.05〜0.35質量%)
Cuの含有量は、0.05〜0.35質量%である。Cuが0.05質量%未満であると高いHcJを得ることができないおそれがあり、0.35質量%を超えると焼結性が悪化して高いHcJが得られないおそれがある。
(Al:0.02〜0.50質量%)
Alの含有量は、0.02〜0.50質量%である。Alを含有することによりHcJを向上させることができる。Alは通常、製造工程で不可避的不純物として0.02質量%以上含有されるが、不可避的不純物で含有される量と意図的に添加した量の合計で0.50質量%以下含有してもよい。
(T:61.0質量%以上(Tは、FeとCoでありTの90質量%以上がFe))
Tは、遷移金属元素のうち少なくとも1種でありFeを必ず含む。また、Feの10質量%以下をCoで置換できる。つまり、Tの90質量%以上がFeである。Coを含有することにより耐食性を向上させることができるが、Coの置換量がFeの10質量%を超えると、高いBが得られないおそれがある。Tの含有量は、61.0質量%以上であり、且つ、上述した式(1)を満足する。Tの含有量が61.0質量%未満であると、大幅にBが低下する恐れがある。好ましくは、Tが残部である。
さらに、本発明のR−T−B系焼結磁石は、ジジム合金(Nd−Pr)、電解鉄、フェロボロンなどに通常含有される不可避的不純物としてCr、Mn、Si、La、Ce、Sm、Ca、Mgなどを含有することができる。さらに、製造工程中の不可避的不純物として、O(酸素)、N(窒素)およびC(炭素)などを例示できる。また、本発明のR−T−B系焼結磁石は、1種以上の他の元素(不可避的不純物以外の意図的に加えた元素)を含んでもよい。例えば、このような元素として、少量(各々0.1質量%程度)のV、Ni、Mo、Hf、Ta、W、Nb、Zrなどを含有してもよい。このような元素は、合計で例えば0.5質量%以下含まれてもよい。この程度であれば、高いHcJを有するR−T−B系焼結磁石を得ることが十分に可能である。
上述した本実施形態に係る組成を有するR−T−B系焼結磁石は、1種以上の主合金と1種以上のR−Ga合金とを用いてブレンド法により製造することができる。具体的には、主合金とR−Ga合金とを準備する工程、水素吸蔵R−Ga合金を得る水素吸蔵工程、R−Ga合金粉末と、主合金粉末と、を含む混合合金粉末を得る工程、混合合金粉末を成形して成形体を得る成形工程、成形体を焼結し焼結体を得る焼結工程、焼結体に熱処理を施す熱処理工程を含んで製造される。
以下に、本発明の実施形態に係るR−T−B系焼結磁石の製造方法の詳細を説明する。
1.主合金およびR−Ga合金を準備する工程
[主合金]
本発明の態様に係る主合金は、R(Rは、希土類元素の少なくとも1種であり、NdおよびPrの少なくとも1種を含む)が27.5質量%以上である。Rは、後述するR−Ga合金と混合して上述した組成を有するR−T−B系焼結磁石となるように調整した任意の組成であってよい。典型的には、Rが27.5質量%以上の既知のR−T−B系焼結磁石用合金を用いることができる。Rが27.5質量%未満であると本発明のR−T−B系焼結磁石の焼結時における緻密化が困難となるおそれがある。なお、主合金は1種の合金でもよいし、組成が異なる2種以上の合金から構成されていてもよい。
上述した組成からなる主合金は、例えば、金型鋳造によるインゴット法や、冷却ロールを用いて合金溶湯を急冷するストリップキャスト法等により得ることができる、フレーク状の合金鋳片である。
[R−Ga合金]
本発明の態様に係るR−Ga合金の組成は、
R2:80〜95質量%(R2は、希土類元素のうち少なくとも1種)、
Ga:5〜20質量%(Gaの40質量%以下をCuで置換できる)、
Fe:0〜1質量%(Feの一部またはすべてをCoで置換できる)を含む。
このような組成を有するR−Ga合金を特定の温度に加熱して水素を吸蔵させ、水素を吸蔵した状態のまま粉砕することにより、D50が8μm以下である微細なR−Ga合金粉末を得ることができる。このようにして得られるR−Ga合金粉末と、上述した主合金を粉砕して得られる主合金粉末とを特定の質量比率で含む混合合金粉末を、成形、焼結および熱処理することにより、高いHcJを有するR−T−B系焼結磁石を得ることができる。
また、このような組成を有するR−Ga合金を特定の温度に加熱して水素を吸蔵させて得られる水素吸蔵R−Ga合金と、主合金の粗粉砕粉と、を混合した混合合金を得て、水素吸蔵R−Ga合金が水素を吸蔵した状態のまま、混合合金を粉砕することにより、D50が8μm以下である微細なR−Ga合金粉末を含む混合合金粉末が得られる。そしてこの混合合金粉末を、成形、焼結および熱処理することにより、高いHcJを有するR−T−B系焼結磁石を得ることができる。
以下に、各元素の限定理由を記載する。
(R2:80〜95質量%)
R2は、希土類元素の少なくとも1種である。R2の含有量は、80〜95質量%である。R2が80質量%未満であると、高いHcJを有するR−T−B系焼結磁石を得ることができないおそれがあり、95質量%を超えるとR2量が多すぎるため、酸化の問題が発生して、磁気特性の低下や発火の危険等を招き、生産上問題となるおそれがある。
(Ga:5〜20質量%)
Gaの含有量は、5〜20質量%である。Gaが5質量%未満であると、高いHcJを有するR−T−B系焼結磁石を得ることができないおそれがあり、20質量%を超えるとHcJが低下するおそれがある。Gaの40質量%以下をCuで置換できる。
(Fe:0〜1質量%)
Feの含有量は0〜1質量%である。Feが1質量%を超えると高いHcJを得ることができない。また、Feの一部またはすべてをCoで置換できる。好ましくは、R−Ga合金には、FeおよびCoを含有しない。
R−Ga合金は、R2、GaおよびFeを上述した範囲で含み、残部が不可避的不純物からなることが好ましい。不可避的不純物としては、例えばCr、Mn、Si、La、Ce、Sm、Ca、Mgなどを含有することができる。さらに、製造工程中の不可避的不純物として、O(酸素)、N(窒素)およびC(炭素)などを例示できる。また、少量(0.1質量%程度)のV、Ni、Mo、Hf、Ta、W、Nb、Zrなどを含有してもよい。
上述した組成からなるR−Ga合金は、既知のR−T−B系焼結磁石の製造方法と同様の方法により製造することができる。例えば、金型鋳造によるインゴット法や、冷却ロールを用いて合金溶湯を急冷するストリップキャスト法等によりフレーク状の合金鋳片を作製する。なお、R−Ga合金は1種の合金でもよいし、組成が異なる2種以上の合金から構成されていてもよい。
2.水素吸蔵R−Ga合金を得る水素吸蔵工程
[水素吸蔵工程]
上述した組成からなるR−Ga合金を、水素雰囲気で200℃以上450℃以下の温度に加熱して、水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)を得る。具体的には、フレーク状のR−Ga合金鋳片を水素炉の内部へ収容し、水素吸蔵処理を行う。水素吸蔵処理は、水素炉内を真空引きした後、炉内温度を200℃以上450℃以下に設定し、圧力が30kPa〜1.0MPaの水素ガスを水素炉内に供給し(すなわち、炉内を水素雰囲気にして)、R−Ga合金鋳片に水素を吸蔵させることによって行う。なお、R−Ga合金への加熱温度は、R−Ga合金に熱電対をとりつけることにより確認することができる。水素の吸蔵によってR−Ga合金鋳片は自然崩壊して脆化(一部は粉化)し、例えば1.0mm以下の粗粉末状の水素吸蔵R−Ga合金を得る。200℃未満の温度で水素吸蔵処理を行うと、水素の吸蔵量が少なすぎるため、脆化させることができない。また450℃を超える温度に加熱するとR−Ga合金が溶融してしまい、粉砕することができない。従って、R−Ga合金を200℃以上450℃以下の温度で水素吸蔵処理を行う。このような温度範囲で水素吸蔵処理を行うことにより、後述する粉砕工程において、D50が8μm以下の微細なR−Ga合金粉末を得ることができ、当該R−Ga合金粉末を用いて製造したR−T−B系焼結磁石は高いHcJを有することができる。
なお本明細書において、「水素吸蔵R−Ga合金」とは、R−Ga合金を水素吸蔵処理することにより得られる粗粉末状のR−Ga合金を意味する。
3.混合合金粉末を得る工程
次に、前記1種以上の水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)と前記1種以上の主合金とを用いて、R−Ga合金粉末(微粉砕粉末)と主合金粉末(微粉砕粉末)を含む混合合金粉末(微粉砕粉末)を得る。混合合金粉末(微粉砕粉末)を得る工程において、少なくとも前記1種以上の水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)は水素を吸蔵している状態で粉砕(微粉砕)される。混合合金粉末(微粉砕粉末)は、水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)と主合金とを混合してから粉砕することにより得てもよいし、水素吸蔵R−Ga合金と主合金を別々に粉砕(粗粉砕および微粉砕)した後混合することにより得てもよい。例えば、以下の条件(a)または条件(b)により、R−Ga合金粉末と、主合金粉末と、を含む混合合金粉末を得る。

(条件a)水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)が水素を吸蔵している状態で、水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)を粉砕(微粉砕)して得たR−Ga合金粉末(微粉砕粉末)と、主合金を粉砕(粗粉砕および微粉砕)して得た主合金粉末(微粉砕粉末)と、を混合する。
(条件b)水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)と主合金の粗粉砕粉とを混合した混合合金(粗粉砕粉末)を得て、水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)が水素を吸蔵している状態で、混合合金(粗粉砕粉末)を粉砕(微粉砕)する。
(条件a)および(条件b)のいずれの方法によっても、D50が8μm以下の微粉砕粉状のR−Ga合金粉末を含む混合合金粉末(微粉砕粉末)を得ることができる。このような混合合金粉末(微粉砕粉末)を成形、焼結および熱処理することにより、高い保磁力HcJをおよび高い残留磁束密度Bを有するR−T−B系焼結磁石を得ることができる。
以下、(条件a)および(条件b)について説明する。
[(条件a)水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)が水素を吸蔵している状態で、水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)を粉砕(微粉砕)して得たR−Ga合金粉末(微粉砕粉末)と、主合金を粉砕(粗粉砕および微粉砕)して得た主合金粉末(微粉砕粉末)と、を混合する]
本発明にかかる混合合金粉末(微粉砕粉末)は、それぞれ準備したR−Ga合金粉末(微粉砕粉末)と、主合金粉末(微粉砕粉末)とを混合することにより得てもよい。
図1Aは、(条件a)における本発明の工程の例を示すフローチャートである。図1Aに示すように、(条件a)の場合、主合金及びR−Ga合金の粗粉砕粉末(主合金の粗粉砕粉末及び水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末))を別々に作製し、さらに別々に微粉砕粉末(主合金粉末及びR−Ga合金粉末)を作製する。そして作製した主合金粉末(微粉砕粉末)及びR−Ga合金粉末(微粉砕粉末)を混合して混合合金粉末(微粉砕粉末)を得る。
・水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)を粉砕(微粉砕)してR−Ga合金粉末(微粉砕粉末)を得る工程
まず、得られた水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)を粉砕(微粉砕)して、R−Ga合金粉末(微粉砕粉末)を得る。具体的には、得られた水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)が水素を吸蔵している状態で、不活性ガス中でジェットミル等により微粉砕することによりR−Ga合金粉末(微粉砕粉末)を得る。ここで、本発明において、水素吸蔵R−Ga合金が水素を吸蔵している状態とは、水素吸蔵R−Ga合金が含有する水素量(水素含有量)が2600ppm以上であることをいう。水素吸蔵R−Ga合金が水素を吸蔵している状態で微粉砕することにより、D50が8μm以下の微粉砕粉状のR−Ga合金粉末を得ることができる。当該R−Ga合金粉末を用いて製造したR−T−B系焼結磁石は、高いHcJを有することができる。
なお、水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)に対して、例えば500℃〜800℃程度の温度に加熱する脱水素処理を行うと、水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)がほとんど水素を含有しなくなり、更に水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)が溶融してしまうため、当該粉砕工程によって、D50が8μm以下のR−Ga合金粉末(微粉砕粉末)を得ることができない。
上述した水素吸蔵工程において水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)を得た後から(すなわち、水素炉から水素吸蔵R−Ga合金を取り出した時から)、微粉砕が完了するまでの間、水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)を450℃を超える温度に加熱することなく粉砕することが好ましい。このような条件であれば、水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)が溶融しないため、D50が8μm以下の微粉砕粉状のR−Ga合金粉末を確実に得ることができる。
さらに好ましくは、水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)を加熱することなく、水素吸蔵工程後の水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)を粉砕(微粉砕)する。(但し、微粉砕時に水素吸蔵R−Ga合金の温度が上昇する場合があるため、自身の発熱による温度上昇は加熱に含まない。)
なお本明細書において、「合金粉末」とは、D50が8μm以下の微粉砕粉状の粉末を意味する。
ジェットミル粉砕前の粗粉砕粉(すなわち、水素吸蔵R−Ga合金)、ジェットミル粉砕中およびジェットミル粉砕後の合金粉末に助剤として既知の潤滑剤を添加してもよい。
このように、R−Ga合金に対して、200℃以上450℃以下の温度で水素吸蔵処理を行い、水素を吸蔵した状態のまま粉砕することにより、D50が8μm以下のR−Ga合金粉末(微粉砕粉末)を得ることができる。このような微細なR−Ga合金粉末を用いて、主合金粉末と混合するブレンド法によってR−T−B系焼結磁石を製造することにより、二粒子粒界に多くのR−Ga相が存在すると考えられ、それにより高いHcJを有するR−T−B系焼結磁石を得ることができる。ここで、R−Ga相とは、R:70質量%以上95質量%以下、Ga:5質量%以上30質量%以下、T(Fe):20質量%以下(0を含む)を含むものである。R−T−B系焼結磁石中にCuを比較的多く含む場合は、Gaの一部がCuで置換されるため、例えばR(Ga,Cu)化合物になっている場合がある。
・R−Ga合金粉末(微粉砕粉末)と、主合金粉末(微粉砕粉末)と、を混合する工程
このようにして得られるR−Ga合金粉末(微粉砕粉末)と、主合金を粉砕(粗粉砕および微粉砕)して得られる主合金粉末(微粉砕粉末)と、を含む混合合金粉末(微粉砕粉末)を得る。
具体的には、混合合金粉末(微粉砕粉末)は、水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)を粉砕して得たR−Ga合金粉末(微粉砕粉末)と、主合金を粉砕(粗粉砕および微粉砕)して得た主合金粉末(微粉砕粉末)とをそれぞれ準備し、これらを混合することにより得ることができる。R−Ga合金粉末(微粉砕粉末)と主合金粉末(微粉砕粉末)は例えば、V型混合機などの公知の混合器で混合すればよい。
この場合、前記R−Ga合金粉末(微粉砕粉末)を得る工程とは別に、上述したような公知の粉砕方法を用いて主合金粉末(微粉砕粉末)を準備する。具体的には、主合金を水素粉砕等によって粗粉砕し、平均粒度が1.0mm以下の粗粉砕粉末(主合金の粗粉末)を準備する。次に、粗粉砕粉末を不活性ガス中でジェットミル等により微粉砕し、例えば粒径D50が3〜5μmの微粉砕粉(主合金粉末)を得る。このようにして得られた主合金粉末(微粉砕粉末)と、R−Ga合金粉末(微粉砕粉末)を得る工程により得られたR−Ga合金粉末(微粉砕粉末)とを混合することにより、混合合金粉末(微粉砕粉末)を得ることができる。
[(条件b)前記水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)と前記主合金の粗粉砕粉とを混合した混合合金(粗粉砕粉末)を得て、前記水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)が水素を吸蔵している状態で、前記混合合金(粗粉砕粉末)を粉砕(微粉砕)する]
また、本発明の実施形態に係る混合合金粉末(微粉砕粉末)は、水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)と主合金の粗粉砕粉とを混合した混合合金(粗粉砕粉末)を粉砕(微粉砕)することにより得てもよい。
図1Bは、(条件b)おける本発明の工程の例を示すフローチャートである。図1Bに示すように、(条件b)の場合、主合金及びR−Ga合金の粗粉砕粉末(主合金の粗粉砕粉末及び水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末))を別々に作製した後、主合金の粗粉砕粉末と水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)を混合して混合合金(粗粉砕粉末)を得る。そして得られた混合合金(粗粉砕粉末)を粉砕(微粉砕)することにより、混合合金粉末(微粉砕粉末)を得る。
・混合合金を得る工程
まず、主合金を、公知の粉砕方法(例えば水素粉砕)を用いて粉砕することにより、例えば1.0mm以下の主合金の粗粉砕粉を得る。次に、得られた主合金の粗粉砕粉と、水素吸蔵R−Ga合金と、を混合することにより、混合合金を得る。
・混合合金を粉砕する工程
このようして得られる混合合金を粉砕することにより、混合合金粉末を得る。
具体的には、混合合金に含まれる水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)が水素を吸蔵している状態で、不活性ガス中でジェットミル等により、混合合金を微粉砕することにより混合合金粉末を得る。ここで、混合合金に含まれる水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)が水素を吸蔵している状態とは、混合合金に含まれる水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)が含有する水素量(水素含有量)が2600ppm以上であることをいう。混合合金(粗粉砕粉末)に含まれる水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)が水素を吸蔵している状態で、混合合金(粗粉砕粉末)を微粉砕することにより、D50が8μm以下の微粉砕粉状のR−Ga合金粉末を含む、混合合金粉末を得ることができる。当該混合合金粉末を用いて製造したR−T−B系焼結磁石は、高いHcJを有することができる。
なお、水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)を含む混合合金(粗粉砕粉末)に対して、例えば500℃〜800℃程度の温度に加熱する脱水素処理を行うと、混合合金に含まれる水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)がほとんど水素を含有しなくなり、更に水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)が溶融してしまうため、当該粉砕工程によって、D50が8μm以下のR−Ga合金粉末(微粉砕粉末)を含む混合合金粉末(微粉砕粉末)を得ることができない。
上述した水素吸蔵工程において水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)を得た後から(すなわち、水素炉から水素吸蔵R−Ga合金を取り出した時から)、混合合金(粗粉砕粉末)の微粉砕が完了するまでの間、混合合金(粗粉砕粉末)に含まれる水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)を450℃を超える温度に加熱することなく混合合金(粗粉砕粉末)を粉砕(微粉砕)することが好ましい。このような条件であれば、混合合金(粗粉砕粉末)に含まれる水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)が溶融しないため、D50が8μm以下の微粉砕粉状のR−Ga合金粉末を含む混合合金粉末(微粉砕粉末)を確実に得ることができる。
さらに好ましくは、水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)を得た後から混合合金の微粉砕が完了するまでの間、混合合金(粗粉砕粉末)に含まれる水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)を加熱することなく、混合合金(粗粉砕粉末)を粉砕(微粉砕)する。(但し、微粉砕時に水素吸蔵R−Ga合金の温度が上昇する場合があるため、自身の発熱による温度上昇は加熱に含まない。)
ジェットミル粉砕前の混合合金、ジェットミル粉砕中およびジェットミル粉砕後の混合合金粉末に助剤として既知の潤滑剤を添加してもよい。
このように、R−Ga合金に対して、200℃以上450℃以下の温度で水素吸蔵処理を行い、水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)が水素を吸蔵した状態のまま、水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)を含む混合合金(粗粉砕粉末)を粉砕(微粉砕)することにより、D50が8μm以下のR−Ga合金粉末(微粉砕粉末)を含む混合合金粉末(微粉砕粉末)を得ることができる。このような微細なR−Ga合金粉末を含む混合合金粉末を用いて、R−T−B系焼結磁石を製造することにより、二粒子粒界に多くのR−Ga相が存在すると考えられ、それにより高いHcJを有するR−T−B系焼結磁石を得ることができる。
混合合金粉末を得る工程において、(条件a)および(条件b)のいずれの方法により混合合金を得る場合であっても、混合合金粉末の質量に対するR−Ga合金粉末(微粉砕粉末)の質量の比が1〜5%となるように、R−Ga合金粉末(微粉砕粉末)と主合金粉末(微粉砕粉末)とを混合する。混合合金粉末の質量に対するR−Ga合金粉末(微粉砕粉末)の質量の比をこのような範囲にすることにより、高いHcJを有することができる。尚、混合合金粉末(微粉砕粉末)を得る工程を上記(条件b)で行う場合は、水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)と主合金の粗粉砕粉とを混合した混合物の質量に対する水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)の質量の比が1〜5%になるように調整すればよい。
4.成形工程
得られた混合合金粉末を用いて磁界中成形を行い、成形体を得る。磁界中成形は、金型のキャビティー内に乾燥した合金粉末を挿入し、磁界を印加しながら成形する乾式成形法、金型のキャビティー内にスラリーを注入し、スラリーの分散媒を排出しながら成形する湿式成形法を含む既知の任意の磁界中成形方法を用いてよい。
5.焼結工程
成形体を焼結することにより焼結体(焼結磁石)を得る。成形体の焼結は既知の方法を用いることができる。なお、焼結時の雰囲気による酸化を防止するために、焼結は真空雰囲気中または不活性ガス中で行うことが好ましい。不活性ガスは、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスを用いることが好ましい。
6.熱処理工程
得られた焼結磁石に対し、磁気特性を向上させることを目的とした熱処理を行うことが好ましい。熱処理温度、熱処理時間などは既知の条件を用いることができる。例えば、比較的低い温度(400℃以上600℃以下)のみでの熱処理(一段熱処理)をしてもよく、あるいは比較的高い温度(700℃以上焼結温度以下(例えば1050℃以下))で熱処理を行った後比較的低い温度(400℃以上600℃以下)で熱処理(二段熱処理)をしてもよい。好ましい条件は、730℃以上1020℃以下で5分から500分程度の熱処理を施し、冷却後(室温まで冷却後、または440℃以上550℃以下まで冷却後)、さらに440℃以上550℃以下で5分から500分程度熱処理をすることが挙げられる。熱処理雰囲気は、真空雰囲気あるいは不活性ガス(ヘリウムやアルゴンなど)で行うことが好ましい。
最終的な製品形状にするなどの目的で、得られた焼結磁石に研削などの機械加工を施してもよい。その場合、熱処理は機械加工前でも機械加工後でもよい。さらに、得られた焼結磁石に、表面処理を施してもよい。表面処理は、既知の表面処理であってもよく、例えばAl蒸着や電気Niめっきや樹脂塗料などの表面処理を行うことができる。
本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
・実施例1
実施例1の本発明例は、混合合金粉末を得る工程を条件bで行った。
表1の試料No.1〜4(いずれも比較例)に示すR−T−B系焼結磁石の組成となるように各元素を秤量し、ストリップキャスト法により、それぞれの合金を作製した。得られた各合金に対して、公知の水素粉砕を行い粗粉砕粉を得た。具体的には、前記合金をそれぞれ水素炉内に装入した後真空にし、室温で絶対圧が295kPaになるまで水素導入し水素脆化した後、550℃まで真空中で加熱、冷却する脱水素処理を施し、粗粉砕粉末を得た。
前記粗粉砕粉末をそれぞれジェットミルにより微粉砕し、粒径D50(気流分散法によるレーザー回折法で得られる体積中心値)が4.5μmの微粉砕粉末を作製した。前記微粉砕粉末に、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を微粉砕粉末100質量部に対して0.05質量部添加、混合した。その後、磁界中で成形し、成形体を得た。なお、成形装置には、磁界印加方向と加圧方向とが直交する、いわゆる直角磁界成形装置(横磁界成形装置)を用いた。得られた成形体を、真空中で組成に応じて1030〜1070℃で4時間焼結し、R−T−B系焼結磁石を得た。焼結磁石の密度は7.5Mg/m以上であった。焼結後のR−T−B系焼結磁石に、真空中で900℃で2時間保持した後室温まで冷却し、次いで真空中で500℃で2時間保持した後、室温まで冷却する熱処理を施した。得られたR−T−B系焼結磁石の成分の分析結果を表1に示す。
表1におけるNd、Pr、B、Zr、Co、Al、Cu、Ga及びFeは、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−OES)を使用して測定した。また、O(酸素量)は、ガス融解−赤外線吸収法、N(窒素量)は、ガス融解−熱伝導法、C(炭素量)は、燃焼−赤外線吸収法、によるガス分析装置を使用して測定した。以下、表5及び表10も同様である。また、表1に、本発明における式(1)を満たしている場合は「○」と満たしていない場合は「×」と記載した。以下、表5、表10、表15、表17および表21も同様である
Figure 0006760160
更に、表2に示す主合金(No.A〜J)およびR−Ga合金(No.a〜d)の組成となるように各元素を秤量し、ストリップキャスト法により合金を作製した。得られた主合金およびR−Ga合金の成分の分析結果を表2に示す。表2におけるNd、Pr、B、Zr、Co、Al、Cu、Ga及びFeは、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−OES)を使用して測定した。以下、表7も同様である。得られた前記主合金を上述した公知の水素粉砕と同様な条件で水素粉砕を行い、主合金の粗粉砕粉末を得た。また、得られた前記R−Ga合金に対して表3に示す条件で水素吸蔵工程を行うことにより水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)を得た。例えば、表3の水素吸蔵R−Ga合金No.b−2は、表2の合金No.bのR−Ga合金を水素炉内に装入した後、真空で250℃に加熱し、絶対圧が295kPaになるまで水素導入し水素脆化させた後、冷却し、さらに400℃まで真空中で加熱、冷却する追加処理を行ったものである。
表3に記載の他の水素吸蔵R−Ga合金(合金No.a−1、a−2、b−1、c−1、d−1〜d−4)、並びに表8、表13および表19に記載の各水素吸蔵R−Ga合金についても、水素吸蔵工程の条件を同様の記載ルールに沿って記載している。なお、R−Ga合金への加熱温度は、R−Ga合金に熱電対をとりつけることにより確認した。
また、水素吸蔵R−Ga合金No.a−1、a−2、b−2、d−3における水素含有量(水素量)を測定した。測定結果を表3に示す。水素含有量は、株式会社堀場製作所製:EMGA−621Wの装置を用いて、Ar雰囲気中で加熱・溶解カラム分離―熱伝導度法(TCD)により測定した。尚、水素吸蔵R−Ga合金No.a―1、a―2、b−1、b−2、c−1及びd−1は後工程の微粉砕をすることができたが、水素吸蔵R−Ga合金No.d−2及びNo.d−4は、加熱温度が高すぎた(いずれも450℃を超える温度で加熱した)ため、R−Ga合金が溶解してしまい微粉砕することができなかった。更に、水素吸蔵R−Ga合金No.d−3は、合金の加熱温度が低すぎた(150℃)ため、R−Ga合金が水素脆化せず(水素含有量が50ppmと少ない)、微粉砕することができなかった。そのため、表3に示す様に、水素吸蔵R−Ga合金は、少なくとも水素を2600ppm(a−2)以上吸蔵させた状態で粉砕しなければならない。
得られた主合金の粗粉砕粉末と水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)を、表4に示す比率でそれぞれV型混合機に投入して混合し、ジェットミルにより微粉砕し、粒径D50(気流分散法によるレーザー回折法で得られる体積中心値)が4.5μmの微粉砕粉末(主合金粉末及びR−Ga合金粉末が混合された混合合金粉末)を作製した(条件b)。例えば、表4における試料No.5は、表2に示す合金No.Aの粗粉砕粉と表3の水素吸蔵R−Ga合金No.a−1を混合し、混合合金粉末を作製したものであり、前記混合合金粉末の質量に対するR−Ga合金粉末の質量の比(この場合、合金No.Aと水素吸蔵R−Ga合金No.a−1を混合した混合合金の全質量に対する、水素吸蔵R−Ga合金No.a−1の質量の比)は2.5質量%である。
表4に記載の他の試料(試料No.6〜15)、並びに表9、表14、表20に記載の各試料についても、各合金および混合比の条件を同様の記載ルールに沿って記載している。
前記微粉砕粉末に、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を微粉砕粉末100質量部に対して0.05質量部添加、混合した後、磁界中で成形し、成形体を得た。なお、成形装置には、磁界印加方向と加圧方向とが直交する、いわゆる直角磁界成形装置(横磁界成形装置)を用いた。得られた成形体を、真空中で組成に応じて1030〜1070℃で4時間焼結し、焼結体(R−T−B系焼結磁石)を得た。焼結磁石の密度は7.5Mg/m以上であった。焼結後のR−T−B系焼結磁石に、真空中で900℃で2時間保持した後室温まで冷却し、次いで真空中で500℃で2時間保持した後、室温まで冷却する熱処理を施した。得られたR−T−B系焼結磁石の成分の分析結果を表5に示す。
Figure 0006760160
Figure 0006760160
Figure 0006760160
Figure 0006760160
熱処理後の焼結磁石(試料No.1〜15)に機械加工を施し、縦7mm、横7mm、厚み7mmの試料を作製し、B−Hトレーサによって各試料の特性(B及びHcJ)を測定した。測定結果を表6に示す。
Figure 0006760160
表6に示すように、試料No.1〜4は単一合金を用いて作製した比較例である。試料No.6、8、9、13は、試料No.1〜4とほぼ同じ組成(R−T−B系焼結磁石の組成)となるように主合金粉末とR−Ga合金粉末を含む混合合金粉末を用いて作製(つまり、本発明の製造方法により作製)した本発明例である。試料No.6(試料No.1とほぼ同じ組成)、試料No.8(試料No.2とほぼ同じ組成)、試料No.9(試料No.3とほぼ同じ組成)、試料No.13(試料No.4とほぼ同じ組成)の特性を試料No.1〜4と特性をそれぞれ比較すると、いずれも本発明例の試料(試料No.6、8、9、13)の方が高いB及び高いHcJが得られている。
これに対し、本発明の組成範囲(R−T−B系焼結磁石の組成範囲)から外れている試料No.5(式1が本発明の範囲外)、試料No.10及び14(B量が本発明の範囲外)の比較例は、本発明の製造方法により作製しているものの、HcJが大幅に低下している。
・実施例2
実施例2では、混合合金粉末を得る工程を条件bで行った。
表7に示す主合金(No.K〜Q)及びR−Ga合金(No.e〜j)の組成となるように各元素を秤量し、ストリップキャスト法により合金を作製した。得られた主合金およびR−Ga合金の成分の分析結果を表7に示す。得られた前記主合金を上述した公知の水素粉砕と同様な条件で水素粉砕を行い、主合金の粗粉砕粉末を得た。また、得られた前記R−Ga合金に対して表8に示す本発明の水素吸蔵工程を行うことにより水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)を得た。得られた主合金の粗粉砕粉末と水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)を、表9に示す比率でそれぞれV型混合機に投入して混合し、ジェットミルにより微粉砕し、粒径D50(気流分散法によるレーザー回折法で得られる体積中心値)が4.5μmの微粉砕粉末(主合金粉末及びR−Ga合金粉末が混合された混合合金粉末)を作製した(条件b)。得られた微粉砕粉を実施例1と同様な方法で成形して成形体を得た。さらに、得られた成形体を実施例1と同様な方法で焼結、熱処理を行った。得られた焼結体(R−T−B系焼結磁石)の成分の分析結果を表10に示す。表10に示す様に、試料No.16〜22は、いずれもほぼ同じ組成である。
Figure 0006760160
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熱処理後の焼結磁石(試料No.16〜22)に機械加工を施し、縦7mm、横7mm、厚み7mmの試料を作製し、B−Hトレーサによって各試料の特性(B及びHcJ)を測定した。測定結果を表11に示す。
Figure 0006760160
試料No.17、19、20、22は、本発明例である。試料No.16は比較例であり、R−Ga合金の組成が本発明の範囲から外れている(R−Ga合金におけるFeが本発明の範囲外)。試料No.18は比較例であり、R−Ga合金にけるR量及びGa量が本発明の範囲から外れている。試料No.21は比較例であり、R−Ga合金粉末の混合量が本発明の範囲から外れている。表11に示す様に、本発明例の試料No.17、19、20、22の特性は、比較例の試料No,16、18、21の特製と比べて、いずれも高いHcJが得られている。
・実施例3
実施例3では、混合合金粉末を得る工程を条件aで行った。
主合金(No.T,U)及びR−Ga合金(No.t,u)の組成がおよそ表12に示す組成となるように各元素を秤量し、ストリップキャスト法により合金を作製した。得られた主合金およびR−Ga合金の成分の分析結果を表12に示す。得られた前記主合金を実施例1と同様な条件で水素粉砕を行い、主合金の粗粉砕粉末を得た。さらに得られた主合金の粗粉砕粉末をジェットミルにより微粉砕し、粒径D50(気流分散法によるレーザー回折法で得られる体積中心値)が4.5μmの微粉砕粉末(主合金粉末)を作製した。また、得られた前記R−Ga合金に対して表13に示す本発明の水素吸蔵工程を行うことにより水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)を得た。さらに得られた水素吸蔵R−Ga合金をジェットミルにより微粉砕し、粒径D50(気流分散法によるレーザー回折法で得られる体積中心値)が4.5μmのR−Ga合金粉末(微粉砕粉末)を作製した。得られた主合金粉末(微粉砕粉末)とR−Ga合金粉末(微粉砕粉末)を、表14に示す比率でそれぞれV型混合機に投入して混合し、混合合金粉末(微粉砕粉末)を作製した(条件a)。得られた混合合金粉末を実施例1と同様な方法で成形して成形体を得た。さらに、得られた成形体を実施例1と同様な方法で焼結、熱処理を行った。得られた焼結体(R−T−B系焼結磁石)の成分の分析結果を表15に示す。
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熱処理後の焼結磁石(試料No.23及び24)に機械加工を施し、縦7mm、横7mm、厚み7mmの試料を作製し、B−Hトレーサによって各試料の特性(B及びHcJ)を測定した。測定結果を表16に示す。
Figure 0006760160
表16に示すように、(条件a)にて混合合金粉末を作製した本発明例(試料No.23及び24)においても、高いB及び高いHcJが得られている。
・実施例4
実施例4の本発明例は、混合合金粉末を得る工程を条件bで行った。
およそ表17の試料No.25〜28(いずれも比較例)に示すR−T−B系焼結磁石の組成となるように各元素を秤量し、ストリップキャスト法によりそれぞれの合金を作製した。得られた前記合金を実施例1と同様な方法で公知の水素粉砕を行い粗粉砕粉を得た。具体的には、前記合金をそれぞれ水素炉内に装入した後真空にし、室温で絶対圧が295kPaになるまで水素導入し水素脆化した後、550℃まで真空中で加熱、冷却する脱水素処理を施し、粗粉砕粉末を得た。
前記粗粉砕粉末をそれぞれジェットミルにより微粉砕し、粒径D50(気流分散法によるレーザー回折法で得られる体積中心値)が4.5μmの微粉砕粉末を作製した。前記微粉砕粉末に、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を微粉砕粉末100質量部に対して0.05質量部添加、混合した。その後、実施例1と同様な方法で成形して成形体を得た。さらに、得られた成形体を実施例1と同様な方法で焼結、熱処理を行った。得られた焼結体(R−T−B系焼結磁石)の成分の分析結果を表17に示す。
Figure 0006760160
およそ表18に示す主合金(No.V〜Y)及びR−Ga合金(No.k〜n)の組成となるように各元素を秤量し、ストリップキャスト法により合金を作製した。得られた主合金およびR−Ga合金の成分の分析結果を表18に示す。得られた前記主合金を上述した公知の水素粉砕と同様な条件で水素粉砕を行い、主合金の粗粉砕粉末を得た。また、得られた前記R−Ga合金に対して表19に示す本発明の水素吸蔵工程を行うことにより水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)を得た。
また、水素吸蔵R−Ga合金No.k−1、n−1における水素含有量を測定した。測定結果を表19に示す。
得られた主合金の粗粉砕粉末と水素吸蔵R−Ga合金(粗粉砕粉末)を、表20に示す比率でそれぞれV型混合機に投入して混合し、ジェットミルにより微粉砕し、粒径D50(気流分散法によるレーザー回折法で得られる体積中心値)が4.5μmの微粉砕粉末(主合金粉末及びR−Ga合金粉末が混合された混合合金粉末)を作製した(条件b)。なお、表20における水素吸蔵R−Ga合金No.a−1及び合金No.Bは実施例1と同じものを用いたものである。得られた微粉砕粉を実施例1と同様な方法で成形して成形体を得た。さらに、得られた成形体を実施例1と同様な方法で焼結、熱処理を行った。得られたR−T−B系焼結磁石の成分の分析結果を表21に示す。表17及び表21に示すように、試料No.25〜37は、重希土類元素(Dy及びTb)の含有量以外はいずれもほぼ同じ組成である。
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熱処理後の焼結磁石(試料No.25〜37)に機械加工を施し、縦7mm、横7mm、厚み7mmの試料を作製し、B−Hトレーサによって各試料の特性(B及びHcJ)を測定した。測定結果を表22に示す。
Figure 0006760160
表22に示すように、同じ重希土類元素を同じ量で含有する試料の組み合わせは、以下の通りである。試料No.25及び29及び33は、いずれもDy:0.5質量%含有している。試料No.26及び30及び34は、いずれもTb:0.2質量%含有している。試料No.27及び31及び35は、いずれもTb:0.5質量%含有している。そして、試料No.28及び32及び36及び37は、いずれもTb:1.0質量%している。同じ重希土類元素を同じ量で含有する試料同士で比較すると、単一合金を用いて作製した比較例の試料に比べて、主合金粉末とR−G合金粉末を含む混合合金粉末を用いて作製した本発明例の試料の方が、いずれも高いB及び高いHcJが得られている。
また、本発明例同士を比べると、主合金側に重希土類元素を含有させて作製した試料No.29〜32よりも、R−Ga合金側に重希土類元素を含有させて作製した試料No.33〜37の方がより高いB及び高いHcJが得られている。なお、試料No.36は、主合金とR−G合金のいずれにも重希土類元素が含有されているが、その含有量が主合金よりもR−Ga合金の方が多い。
よってR−T−B系焼結磁石に重希土類元素を含有させる場合、主合金側よりもR−Ga合金側に重希土類元素を多く含有させた方が好ましい。

Claims (7)

  1. R1:28.5〜33.5質量%(R1は、希土類元素のうち少なくとも1種でありNdおよびPrの少なくとも1種を含む)、
    B:0.84〜0.92質量%、
    Ga:0.3〜0.7質量%、
    Cu:0.05〜0.35質量%、
    Al:0.02〜0.50質量%、
    T:61.0質量%以上(Tは、FeとCoでありTの90質量%以上がFeである)を含み、下記式(1)を満足するR−T−B系焼結磁石の製造方法であって、

    14[B]/10.8<[T]/55.85 (1)
    ([B]は質量%で示すBの含有量であり、[T]は質量%で示すTの含有量である)

    R2:80〜95質量%(R2は、希土類元素のうち少なくとも1種)、
    Ga:5〜20質量%(Gaの40質量%以下をCuで置換できる)、
    Fe:0〜1質量%(Feの一部または全部をCoで置換できる)を含む1種以上のR−Ga合金と、1種以上の主合金とを準備する工程と、
    前記R−Ga合金を水素雰囲気で200℃以上450℃以下の温度に加熱して、水素吸蔵R−Ga合金を得る水素吸蔵工程と、
    前記1種以上の水素吸蔵R−Ga合金と前記1種以上の主合金とを用いて、R−Ga合金粉末と主合金粉末を含む混合合金粉末を得る工程と、
    前記混合合金粉末を成形して成形体を得る成形工程と、
    前記成形体を焼結し焼結体を得る焼結工程と、
    前記焼結体に熱処理を施す熱処理工程と、
    を含み、
    前記混合合金粉末を得る工程において、少なくとも前記1種以上の水素吸蔵R−Ga合金は水素を吸蔵している状態で粉砕され、
    前記混合合金粉末の質量に対する前記R−Ga合金粉末の質量の比が、1〜5%であり、
    前記水素吸蔵R−Ga合金における水素含有量は2600ppm以上である、R−T−B系焼結磁石の製造方法。
  2. 前記混合合金粉末を得る工程は、以下の(条件a)または(条件b)により混合合金粉末を得る、請求項1に記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
    (条件a)前記水素吸蔵R−Ga合金が水素を吸蔵している状態で、前記水素吸蔵R−Ga合金を粉砕して得たR−Ga合金粉末と、前記主合金を粉砕して得た主合金粉末と、を混合する
    (条件b)前記水素吸蔵R−Ga合金と前記主合金の粗粉砕粉とを混合した混合合金を得て、前記水素吸蔵R−Ga合金が水素を吸蔵している状態で、前記混合合金を粉砕する
  3. R1:28.5〜33.5質量%(R1は、希土類元素のうち少なくとも1種でありNdおよびPrの少なくとも1種を含む)、
    B:0.84〜0.92質量%、
    Ga:0.3〜0.7質量%、
    Cu:0.05〜0.35質量%、
    Al:0.02〜0.50質量%、
    を含み、
    残部がT(Tは、FeとCoでありTの90質量%以上がFeである)および不可避的不純物であり、下記式(1)を満足するR−T−B系焼結磁石の製造方法であって、

    14[B]/10.8<[T]/55.85 (1)
    ([B]は質量%で示すBの含有量であり、[T]は質量%で示すTの含有量である)

    R2:80〜95質量%(R2は、希土類元素のうち少なくとも1種)、
    Ga:5〜20質量%(Gaの40質量%以下をCuで置換できる)、
    Fe:0〜1質量%(Feの一部または全部をCoで置換できる)を含む1種以上のR−Ga合金と、1種以上の主合金とを準備する工程と、
    前記R−Ga合金を水素雰囲気で200℃以上450℃以下の温度に加熱して、水素吸蔵R−Ga合金を得る水素吸蔵工程と、
    以下の(条件a)または(条件b)により、R−Ga合金粉末と主合金粉末を含む混合合金粉末を得る工程と、
    (条件a)前記水素吸蔵R−Ga合金が水素を吸蔵している状態で、前記水素吸蔵R−Ga合金を粉砕して得たR−Ga合金粉末と、前記主合金を粉砕して得た主合金粉末と、を混合する
    (条件b)前記水素吸蔵R−Ga合金と前記主合金の粗粉砕粉とを混合した混合合金を得て、前記水素吸蔵R−Ga合金が水素を吸蔵している状態で、前記混合合金を粉砕する
    前記混合合金粉末を成形して成形体を得る成形工程と、
    前記成形体を焼結し焼結体を得る焼結工程と、
    前記焼結体に熱処理を施す熱処理工程と、
    を含み、前記混合合金粉末の質量に対する前記R−Ga合金粉末の質量の比が、1〜5%であり、
    前記水素吸蔵R−Ga合金における水素含有量は2600ppm以上である、R−T−B系焼結磁石の製造方法。
  4. 前記混合合金粉末を得る工程の(条件a)において、前記水素吸蔵工程の後、前記水素吸蔵R−Ga合金を450℃を超える温度に加熱することなく、前記水素吸蔵R−Ga合金を粉砕することを特徴とする、請求項2またはに記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
  5. 前記混合合金粉末を得る工程の(条件a)において、前記水素吸蔵工程の後、前記水素吸蔵R−Ga合金を加熱することなく、前記水素吸蔵R−Ga合金を粉砕することを特徴とする、請求項2またはに記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
  6. 前記混合合金粉末を得る工程の(条件b)において、前記水素吸蔵工程の後、前記水素吸蔵R−Ga合金を450℃を超える温度に加熱することなく、前記混合合金を粉砕することを特徴とする、請求項2またはに記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
  7. 前記混合合金粉末を得る工程の(条件b)において、前記水素吸蔵工程の後、前記水素吸蔵R−Ga合金を加熱することなく、前記混合合金を粉砕することを特徴とする、請求項2またはに記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
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