以下、本発明に係る医療用の穿刺針及びこの穿刺針の製造方法の実施形態について、図1〜図17を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
<実施形態1>
まず、本発明に係る医療用の穿刺針の一実施形態としての穿刺針1について説明する。図1は、穿刺針1を示す図である。具体的に、図1(a)は、穿刺針1の正面側の平面図、図1(b)は、穿刺針1の側面図、図1(c)は、穿刺針1の背面側の平面図を示すものである。図1(d)は、穿刺針1の斜視図である。
図1(a)〜(d)に示すように、穿刺針1は、本体部2と、先端部3とを備え、本体部2から先端部3まで連通する中空部10を区画している。
本体部2は、先端部3と連続する中空棒状、すなわち筒状の管体である。より具体的に、本実施形態の本体部2は、先端部3と連続し、略円形状の断面外形を有する管体である。なお、ここで言う「断面外形」の「断面」とは、本体部2の中心軸線Oと直交する横断面を意味している。
図1(a)〜(d)に示すように、先端部3は刃面4を備えており、刃面4は、曲面で構成されている第1刃面部5、第2刃面部6及び第3刃面部7を備えている。また、第1刃面部5及び第2刃面部6は、互いが交差する稜線により、針先8を一端とする刃縁9を形成している。なお、「針先」とは、本体部2の中心軸線Oの軸線方向A(以下、単に「中心軸線方向A」と記載する。)における穿刺針1の先端を意味する。
第3刃面部7は、中心軸線方向Aにおける本体部2側で本体部2の外周面と連続し、中心軸線方向Aにおける針先8側で第1刃面部5及び第2刃面部6と連続している。
より具体的に、第1刃面部5及び第2刃面部6は、中心軸線方向Aにおける本体部2側で第3刃面部7とそれぞれ連続し、針先8側で互いに交差することにより稜線を形成、すなわち刃縁9を形成している。また、本実施形態における第1刃面部5及び第2刃面部6は、中空部10の先端部3側の一端である開口11を区画している。
ここで、図1(b)の側面図から分かるように、第2刃面部6は、中心軸線方向Aにおける位置により、中心軸線方向Aに直交する断面における角度が変化する。具体的には、図1(b)において、中心軸線方向Aにおける第2刃面部6と第3刃面部7とが連続する位置では、第2刃面部6の外縁しか視認できないが、中心軸線方向Aにおいて刃縁9が形成されている位置では、第2刃面部6を視認することができる。すなわち、第2刃面部6は、例えば螺旋面のような、中心軸線方向Aにおいて、第3刃面部7と連続する位置から針先8に向かって捩れるように延在する曲面で構成されている。なお、第1刃面部5についても、第2刃面部6と同様、中心軸線方向Aにおいて、第3刃面部7と連続する位置から針先8に向かって捩れるように延在する曲面で構成されている。但し、第1刃面部5及び第2刃面部6の、針先8側に向かって捩れる方向は、逆向きである。
換言すれば、第1刃面部5及び第2刃面部6は、本体部2の中心軸線Oを含む1つの仮想平面を設定した場合に、中心軸線方向Aにおいて針先8側に向かうにつれて、中心軸線方向Aに直交する断面における上記1つの仮想平面に対する角度θが漸減する曲面で構成されている。つまり、本実施形態の穿刺針1は、このような1つの仮想平面を定義可能な穿刺針である。
ここで、本実施形態の穿刺針1では、上述の「仮想平面」として定義可能な平面を1つ有している。具体的に、本実施形態の穿刺針1では、上述の「仮想平面」を、中心軸線O及び針先8を含む一平面(以下、「中心平面X」と記載する。)に設定可能であり、第1刃面部5及び第2刃面部6はいずれも、中心軸線方向Aにおいて針先8側に向かうにつれて、中心軸線方向Aに直交する断面における中心平面Xに対する角度θが漸減する曲面で構成されている。なお、本実施形態の中心平面Xは、針先8のみならず刃縁9をも含む平面である。
本実施形態の穿刺針1は、第1刃面部5及び第2刃面部6の両方が、中心軸線方向Aにおいて針先8側に向かうにつれて、中心軸線方向Aに直交する断面における中心平面Xに対する角度θが漸減する曲面で構成されているが、第1刃面部5及び第2刃面部6のいずれか一方を、このような曲面で構成し、他方を平面や別の表面形状を有する曲面で構成するようにしてもよい。また、第1刃面部5及び第2刃面部6の両方を平面や別の表面形状を有する曲面で構成してもよい。但し、本実施形態のように、第1刃面部5及び第2刃面部6の両方を、中心軸線方向Aにおいて針先8側に向かうにつれて、中心軸線方向Aに直交する断面における中心平面Xに対する角度θが漸減する曲面で構成すれば、第1刃面部5及び第2刃面部6と、第3刃面部7との間で、刺通抵抗となり得る稜線(ジャンクション)が形成されない刃面4を実現し易くすることができる。
第1刃面部5及び第2刃面部6の曲面形状についての詳細は後述する(図3等参照)。
また、第3刃面部7は凸型曲面を有している。具体的に、本実施形態の第3刃面部7は、第1刃面部5及び第2刃面部6と連続する凸型曲面のみで構成されている。より具体的に、第3刃面部7は、中心軸線方向Aに直交する断面における中心平面Xに対する角度θが、中心軸線方向Aの位置によらず略一定な凸型の曲面で構成されている。
ここで、本願における「先端部」とは、穿刺針のうち、中心軸線方向Aにおいて刃面が形成されている部分を意味し、「本体部」とは、穿刺針のうち、中心軸線方向Aにおいて刃面が形成されていない部分を意味する。従って、本実施形態における先端部3は、穿刺針1を構成する一体の中空棒状部材としての筒状部材のうち、中心軸線方向Aにおいて第1刃面部5、第2刃面部6、及び第3刃面部7が形成されている部分である。また、本実施形態における本体部2は、穿刺針1を構成する一体の筒状部材のうち、中心軸線方向Aにおいて、第1刃面部5、第2刃面部6、及び第3刃面部7が形成されていない、略円形状の断面外形を有する部分である。
本実施形態における穿刺針1の材料としては、ステンレス鋼、アルミニウムまたはアルミニウム合金、チタンまたはチタン合金等の金属材料を使用することができる。
以下、本実施形態の各構成及び特徴部について詳しく説明する。
[本体部2]
本実施形態の本体部2は、中心軸線方向Aにおいて、内周面の内径及び外周面の外径が一様な管体であり、中心軸線方向Aにおける先端部3側とは反対側の端部は、針基等を介して例えばシリンジなどの医療用器具に接続される。
なお、本実施形態では、穿刺針1全体を構成する筒状部材の内周面(本体部2の内周面及び先端部3の内周面)が中空部10を区画し、筒状部材の内周面の内径及び外周面の外径が中心軸線方向Aにおいて一様な構成であるが、この構成に限られるものではない。例えば、筒状部材の内周面の内径及び筒状部材の外周面の外径が、中央軸線方向Aにおいて、先端部3側に向かって漸減する構成としてもよい。また、例えば、筒状部材の外径を、中心軸線方向Aにおいて先端部3側に向かうにつれて漸減するテーパー形状とし、筒状部材の内径を、中心軸線方向Aにおいて一様な構成とすることもできる。更に、中心軸線方向Aにおける一部の領域に、中心軸線方向Aにおいて先端部3側に向かうにつれて内径が漸減する、又は漸増する部位を設けるなど、穿刺針1を構成する筒状部材の内径及び外径は、穿刺針1の用途等に応じて、各種構成を採用することが可能である。
[先端部3の第1刃面部5及び第2刃面部6]
図2(a)、(b)は、それぞれ図1(a)、(b)に示す先端部3の拡大図である。図3(a)、(b)、(c)、(d)は、それぞれ図2におけるI-I断面図、II-II断面図、III-III断面図、IV-IV断面図である。
図2(a)に示すように、第1刃面部5及び第2刃面部6のそれぞれは、中心軸線方向Aにおける本体部2側で、第3刃面部7と連続している。より具体的に、第1刃面部5及び第2刃面部6は、中心平面Xを挟む両側でそれぞれ第3刃面部7と連続している。
図3(b)は図2のII-II断面、すなわち、中心軸線方向Aにおいて第1刃面部5及び第2刃面部6と、第3刃面部7とが接続する位置での、中心軸線方向Aと直交する断面を示す。図3(b)に示すように、図2のII-II断面における第1刃面部5及び第2刃面部6それぞれの、中心平面Xに対する角度θ2は約90度である。換言すれば、図2のII-II断面において、第1刃面部5及び第2刃面部6のそれぞれは、中心平面Xと直交する方向に直線状に延在している。
なお、図3(b)に示す第1刃面部5及び第2刃面部6は、中心平面Xと略直交する線により表されているが、この線は、第1刃面部5及び第2刃面部6と、第3刃面部7との間の境界を表す境界線12a及び12bと略一致している。具体的には図2(a)に示すように、境界線12aから針先8側が第1刃面部5であり、境界線12aから本体部2側が第3刃面部7である。同様に、境界線12bから針先8側が第2刃面部6であり、境界線12bから本体部2側が第3刃面部7である。なお、本実施形態において、第1刃面部5及び第2刃面部6と、第3刃面部7との間の境界線12a及び12bは、稜線(ジャンクション)が形成されないように滑らかに連続しており、図2(a)に示す境界線12a及び12bは単に境界を示しているにすぎず、稜線を表すものではない。ただし、この境界線12a及び12bを、刺通抵抗が大きく増加しない程度の稜線により形成する構成としてもよい。
図3(c)は、図2のIII-III断面、すなわち、中心軸線方向Aにおいて開口11がある位置での、中心軸線方向Aと直交する断面を示す。図3(c)に示すように、図2のIII-III断面における第1刃面部5及び第2刃面部6それぞれの、中心平面Xに対する角度θ3は、角度θ2よりも小さい鋭角である。なお、図3(c)では、上述した境界線12a及び12bを二点鎖線により示している。
図3(d)は、図2のIV-IV断面、すなわち、中心軸線方向Aにおいて刃縁9が形成されている位置での、中心軸線方向Aと直交する断面を示す。図3(d)に示すように、図2のIV-IV断面における第1刃面部5及び第2刃面部6それぞれの、中心平面Xに対する角度θ4は、角度θ2よりも小さく、かつ、角度θ3よりも小さい鋭角である。なお、図3(d)においても、上述した境界線12a及び12bを二点鎖線により示している。
このように、第1刃面部5及び第2刃面部6は、それぞれ、中心軸線方向Aに直交する断面視(図3(b)〜(d)参照)において直線であり、本実施形態における第1刃面部5及び第2刃面部6それぞれの、中心軸線方向Aと直交する断面における中心平面Xに対する角度θは、中心軸線方向Aにおいて針先8側に向かう(針先8に近づく)につれて漸減する。なお、図3(b)〜(d)では、第2刃面部6の中心平面Xに対する角度θ2〜θ4をそれぞれ示しているが、第1刃面部5の中心平面Xに対する角度も、第2刃面部6の角度θ2〜θ4と同じである。また、図3(b)〜(d)の3つの断面は、上記角度θ2、θ3、及びθ4の大小関係を示すために例示的に用いたものであり、これら3つの断面に限って上記角度θの大小関係が成立するものではない。
ここで、図3(b)〜(d)に示すように、本実施形態の第2刃面部6は、中心軸線方向Aに直交する断面視において直線であるが、この構成に限られるものではなく、例えば、第2刃面部を、中心軸線方向Aと直交する断面視が円弧状の曲線となる構成や、同断面視が直線とこの直線に連続する円弧状の曲線とからなる構成とすることもできる。これは第1刃面部についても同様である。なお、かかる場合の第1刃面部及び第2刃面部の角度θとは、中心軸線方向Aと直交する断面において、第1刃面部及び第2刃面部それぞれの内縁と外縁とを通過する直線と、設定された1つの仮想平面(本実施形態では中心平面X)とで形成される角度を意味している。
[先端部3の刃縁9]
刃縁9は、上述したように、第1刃面部5及び第2刃面部6が交差する稜線により形成される。また、本実施形態の刃縁9は、上述したように、中心平面X上に延在しており、刃縁9の一端である針先8についても、中心平面X上に位置する。つまり、本実施形態における穿刺針1は、中心平面Xについて対称な構成を有する中空針である。
本実施形態のように、穿刺針1の先端を鋭くして刃縁9を設ける構成にすると、穿刺針1を人体へ穿刺する際に、刃縁9や、刃縁9近傍の第1刃面部5の外縁及び第2刃面部6の外縁が、皮膚を切り裂く切れ刃として働き、穿刺時に皮膚にかかる抵抗を低減することができる。そのため、穿刺針1が穿刺される患者等が感じる痛みを軽減することができる。
ここで、上述したように、第1刃面部5及び第2刃面部6の角度θ(図3(b)〜(d)参照)は、中心軸線方向Aにおいて針先8に向かうにつれて小さくなる。これは、中心軸線方向Aにおいて刃縁9が位置する領域内であっても同様である。つまり、刃縁9のうち中心軸線方向Aの本体部2側の一端から、刃縁9に沿って針先8に向かうにつれて、角度θは漸減する。そのため、本実施形態の穿刺針1は、中心軸線方向Aにおける刃縁9が延在する領域において角度θが一様な構成と比較して、針先8近傍をより鋭い構成にすることができるため、穿刺針1の穿刺時における患者等の痛みを一層軽減することが可能となる。なお、角度θは部分的に漸減する態様であってもよい。例えば、そのような態様は、第1刃面部及び第2刃面部の角度θが漸減する2つの部分と、その間にそれら2つの部分と連続する角度θが一定の部分とから構成される。
[先端部3の第3刃面部7]
図2(a)、(b)に示すように、第3刃面部7は、中心軸線方向Aに対して傾斜する曲面であり、第3刃面部7の本体部2側は本体部2の外周面と連続し、第3刃面部7の針先8側は第1刃面部5及び第2刃面部6と連続している。
第3刃面部7は、図2(b)の側面視が、中心軸線方向Aにおいて針先8に向かうにつれ中心軸線Oに近づくように傾斜した凸型の曲面である。また、本実施形態の第3刃面部7は、中心軸線方向Aに直交する断面における中心平面Xに対する角度θが、中心軸線方向Aの位置によらず略一定である。具体的には図3(a)に示すように、図2のI-I断面における本実施形態の第3刃面部7の中心平面Xに対する角度θ1は約90度であり、本実施形態の第3刃面部7の中心平面Xに対する角度θは、図2のI-I断面だけではなく、中心軸線方向Aの位置によらず約90度である。換言すれば、本実施形態の第3刃面部7は、図3(a)に示すように、中心軸線方向Aと直交する断面において、中心平面Xと直交する方向に直線状に延在している。
なお、第3刃面部7は、中心軸線方向Aにおいて針先8側に向かうにつれ中心軸線Oに漸次近づくように傾斜しており、第3刃面部7の中心軸線方向Aに対する傾斜角度は、中心軸線O全体を含む断面での中心軸線方向Aに対する本体部2の外壁の傾斜角度よりも大きい。なお、第3刃面部7は曲面であるため、ここで言う「第3刃面部の中心軸線方向に対する傾斜角度」とは、中心軸線全体を含み第3刃面部上を通る断面において、第3刃面部上の任意の点での接線が、中心軸線となす角度を意味している。
本実施形態では、穿刺針1を構成する筒状部材の外径が中心軸線方向Aにおいて一様な構成であり、中心軸線O全体を含む断面で見た場合に、筒状部材の外壁は中心軸線方向Aに延在している。従って、第3刃面部7が、中心軸方向Aに対して傾斜していれば、第3刃面部7の傾斜角度は、本体部2の外壁の傾斜角度よりも大きくなる。但し、穿刺針1を構成する筒状部材を、その外径が中心軸線方向Aにおいて先端部3側に向かうにつれて漸減又は漸増する構成とする場合には、第3刃面部7は、中心軸線方向Aに対して傾斜するのみならず、中心軸線O全体を含む断面での本体部2の外壁に対しても傾斜するように構成する。
ここで、本実施形態の第3刃面部7の中心平面Xに対する角度θは、上述したように、中心軸線方向Aの位置によらず約90度であり、本実施形態の第1刃面部5及び第2刃面部6は、上述した境界線12a及び12bで第3刃面部7との間に稜線を形成することなく、第3刃面部7と滑らかに連続している(図3(b)参照)。
また、図2(a)に示すように、第3刃面部7は、正面側の平面視において、中心軸線方向Aで針先8側に向かうにつれて、中心軸線方向Aと直交する直交方向Bの幅Wが大きくなる曲面であり、更に、その幅Wの増加量(中心軸線方向Aにおける単位長さ当たりの幅Wの変化量)は、中心軸線方向Aにおいて針先8側に向かうにつれて大きくなっている。
[第1刃面部5、第2刃面部6及び第3刃面部7を備える刃面4]
刃面4は、上述した第1刃面部5、第2刃面部6及び第3刃面部7を備えている。刃面4の第1刃面部5及び第2刃面部6は、上述したように、中心軸線方向Aにおいて針先8側に向かうにつれて、中心軸線方向Aに直交する断面における中心平面Xに対する角度θが漸減する曲面で構成されている。第1刃面部5及び第2刃面部6をこのような形状とすれば、第1刃面部5及び第2刃面部6は、II-II断面の位置から針先8側に向かうにつれ対向する向きが変化していくため、第3刃面部7との間の接続位置で刺通抵抗となり得る稜線を形成せずに、又は第3刃面部7との間の接続位置に大きな刺通抵抗とならない程度の稜線が形成されるのみで、中心軸線方向Aの開口11よりも針先8側の位置に、第1刃面部5及び第2刃面部6の互いが交差する刃縁9を形成することができる(図3(a)〜図3(d)参照)。
また、図14は、穿刺針1を体表面Pから体内へと穿刺する際に、穿刺針1の図3(c)に示す断面が体表面Pを通過する瞬間の状態を示す模式図である。図14に示すように、第1刃面部5及び第2刃面部6の中心平面Xに対する角度θ3は90度よりも小さい鋭角となっているため、穿刺針1を体表面から体内に穿刺する際に、体表面に形成された切り口Qの縁部Q1は、第1刃面部5及び第2刃面部6により、切り口Qを押し広げる方向(図14の白抜き矢印参照)に押圧される。そして、第1刃面部5及び第2刃面部6の中心平面Xに対する角度θは、図3(c)に示す断面に限らず、90度よりも小さい鋭角となっているため、第1刃面部5及び第2刃面部6が体表面Pを通過する間、切り口Qの縁部Q1は切り口Qを押し広げる方向に押圧される。これにより、第1刃面部5及び第2刃面部6が体表面Pを通過する際に、第1刃面部5及び第2刃面部6と共に切り口Qの縁部Q1が体内側に押し込まれることを抑制することができる。特に、第1刃面部5及び第2刃面部6と第3刃面部7との接続位置は、内縁13及び内縁14が中心軸線方向Aに平行となる位置よりも本体部2側であることにより、開口11(図1等参照)の本体部2(図1等参照)側の縁部近傍が体表面Pを通過する際についても、切り口Qの縁部Q1が体内側に押し込まれ難くなる。また、第1刃面部5及び第2刃面部6は、本体部2側に向かうに連れて中心平面Xに直交する平面に対する傾斜角度が漸増する曲面で構成されているため、第1刃面部5及び第2刃面部6が体表面Pを通過する間、切り口Qの縁部Q1は切り口Qを押し広げる方向に押圧される。これによっても、第1刃面部5及び第2刃面部6が体表面Pを通過する際に、第1刃面部5及び第2刃面部6と共に切り口Qの縁部Q1が体内側に押し込まれ難くなる。そのため、穿刺針1の刺通抵抗の増加を抑制できると共に、体表面Pの雑菌等による感染のリスクを軽減することができる。
更に、刃面4の第1刃面部5及び第2刃面部6は、上述したように、中心軸線方向Aにおいて針先8側に向かうにつれて、中心軸線方向Aに直交する断面における中心平面Xに対する角度θが漸減する曲面で構成され、これら第1刃面部5及び第2刃面部6が、開口11よりも針先8側の位置で、互いに交差して刃縁9を形成している。このような構成とすることにより、刃縁9の刃先角度α(図2(b)参照)を、2つの平面状の刃面部が交差した稜線によって刃縁を形成した場合の刃先角度αよりも小さくすることができる。すなわち、刃先を薄くすることができる。そのため、穿刺針1を人体へ穿刺する際の、針先8近傍での刺通抵抗を低減することができる。なお、刃先角度αとは、穿刺針の側面視(図2(b)参照)にて、刃縁とこの刃縁の裏面とが針先にて交わる角度を意味している。
特に本実施形態の穿刺針1は、1つの仮想平面である中心平面Xにおいて、針先8と第3刃面部7上の点Kとを結ぶ直線L(図2(b)の二点鎖線)が、中心軸線Oに対して、12度より大きく、かつ、18以下の角度で傾斜している。なお、直線Lが通過する第3刃面部7上の点Kとは、中心平面Xにおける第3刃面部7上の任意の点である。このような構成とすることにより、中心軸線方向Aにおける刃面4の刃面長M(中心軸線方向Aにおいて針先8から第3刃面部7の本体部2側の一端までの長さ)を、筋肉注射等に主に利用される所謂「レギュラーベベル」(中心軸線に対する傾斜角度が12度の一傾斜面のみにより刃面が形成された穿刺針)の刃面長よりも短くし、静脈注射等に主に利用される所謂「ショートベベル」(中心軸線に対する傾斜角度が18度の一傾斜面のみにより刃面が形成された穿刺針)の刃面長と同程度の刃面長としつつ、刃先角度αを「レギュラーベベル」と同程度又はそれ以下の角度にすることができる。つまり、静脈等の脈管の突き抜けが起こり難い短い刃面長を有しつつ、針先8近傍での刺通抵抗が低減でき脈管の確保が容易な穿刺針1を実現することができる。また、針先8近傍での刺通抵抗が低減できることから、刺通抵抗の変化量を小さくでき、穿刺する際に医療従事者が穿刺方向に加える力の変化量をも小さくすることができる。そのため、穿刺する際に、医療従事者が操作し易い穿刺針1を実現することができる。
なお、第1刃面部5及び第2刃面部6を、中心軸線方向Aにおいて針先8側に向かうにつれて、中心軸線方向Aに直交する断面における中心平面Xに対する角度θが漸減する曲面で構成することにより、上述したように、刃縁9の刃先角度αを小さくすることができるが、かかる場合に、第1刃面部5及び第2刃面部6の側面視が、図2(b)に示すように凹型形状となり易い。第1刃面部5及び第2刃面部6の側面視が凹型形状になると、第1刃面部5及び第2刃面部6の本体部2側の一端の位置に刺通抵抗となる稜線が形成され易く、たとえ針先8近傍での刺通抵抗の低減が実現できたとしても、第1刃面部5及び第2刃面部6の本体部2側の一端の位置での刺通抵抗が増大するおそれがある。
しかしながら、刃面4の第3刃面部7が凸型の曲面を有する構成(本実施形態の場合は第3刃面部7が凸型の曲面のみにより構成されている)とすることにより、刃縁9の刃先角度αを小さい構成としても、第1刃面部5及び第2刃面部6の本体部2側の一端の位置、すなわち、第1刃面部5及び第2刃面部6と、第3刃面部7との間の境界線12a及び12bの位置で、刺通抵抗となり得る稜線が形成され難い構成とすることができる。そのため、刃縁9の刃先角度αを小さい構成としつつ、第1刃面部5及び第2刃面部6の本体部2側の一端の位置での刺通抵抗が増大し難い穿刺針1を実現することができる。
また、第3刃面部7が凸型の曲面を有するため、中心軸線方向Aでの第3刃面部7と本体部2の外面との間の境界についても、比較的滑らかな接続が実現可能であり、刺通抵抗の低減に有利である。
このように、本実施形態によれば、刺通抵抗となり得る稜線(ジャンクション)が形成され難く、針先8近傍での刺通抵抗を低減可能な刃先角度αが小さい刃面4を有する穿刺針1を実現することができる。そのため、人体へ穿刺する際に、穿刺される患者等が感じる痛みを軽減することができると共に、刃先角度αが小さい薄い刃先とすることにより、脈管内への穿刺時に脈管が逃げ難く、脈管の確保が容易となる。
なお、中心軸線方向Aにおける単位長さ当りの、第1刃面部5及び第2刃面部6それぞれの角度θの角度変化量は一定であることが好ましい。このようにすれば、第1刃面部5及び第2刃面部6は、第3刃面部7との接続位置から針先8に向かって、なだらかに捩れる螺旋面により形成されるため、角度θの角度変化量にばらつきがある構成と比較して、人体への穿刺時における刺通抵抗をより低減することができる。
また、本実施形態では、図2(a)に示すように、中空部10の中心軸線方向Aにおける一端の開口11は、第1刃面部5の内縁13及び第2刃面部6の内縁14により主に区画されているが、このような構成に限られるものではない。例えば、図4に示すように、第1刃面部5´及び第2刃面部6´と、第3刃面部7´との接続位置を、図4に示す平面視において、中心軸線方向Aにおける開口11´が位置する領域に設ける構成とし、すなわち、第1刃面部5´及び第3刃面部7´の接続位置となる境界線12cと、第2刃面部6´及び第3刃面部7´の接続位置となる境界線12dとを、開口11´を挟む位置に設ける構成とし、第1刃面部5´、第2刃面部6´、及び第3刃面部7´のそれぞれの縁によって開口11´を区画するようにしてもよい。なお、図4に示す境界線12c及び12dにおいても、第1刃面部5´と第3刃面部7´とは、及び第2刃面部6´と第3刃面部7´とは、稜線が形成されないように滑らかに接続されている。また、境界線12c及び12dは、図4の平面視において、中心軸線方向Aと直交する直交方向Bに沿って延在しているが、図4の平面視において、直交方向Bに平行して延在する構成であっても、直交方向Bに対して所定の角度で傾斜して延在する構成であってもよい。更に、第3刃面部7´は、凸型曲面のみで構成されているが、境界線12c及び12dと連続する部分を平面とし、例えば中心軸線方向Aにおいて、開口11´の本体部2側の端部よりも更に本体部2側に延在する部分を凸型曲面とした、一部のみに凸型曲面を有する構成としてもよい。
なお、本実施形態の穿刺針1は、中空部10を区画する中空針であるが、中空部10を区画しない中実針としてもよい。
<実施形態2>
次に、本発明の別の実施形態としての穿刺針101について説明する。図5は、穿刺針101を示す図である。具体的に、図5(a)は、穿刺針101の正面側の平面図、図5(b)は、穿刺針101の側面図、図5(c)は、穿刺針101の背面側の平面図を示すものである。図5(d)は、穿刺針101の斜視図である。また、図6(a)、(b)は、それぞれ図5(a)、(b)に示す先端部3の拡大図である。図7(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)は、それぞれ図6におけるV-V断面図、VI-VI断面図、VII-VII断面図、VIII-VIII断面図、IX-IX断面図、X-X断面図である。
図5〜図7に示す穿刺針101は、上述した穿刺針1と比較して刃面の構成が相違しているが、その他の構成は穿刺針1と共通している。そのため、ここでは主に、穿刺針101のうち上述した穿刺針1と相違する構成について説明し、穿刺針1と共通する構成については説明を省略する。
図5(a)〜(d)に示すように、穿刺針101は、本体部2と、先端部3とを備え、先端部3は刃面104を備えている。刃面104は、正面側刃面104aと、この正面側刃面104aの裏側に形成された背面側刃面104bと、を備えている。換言すれば、本実施形態の穿刺針101は、バックカット加工が施された刃面104を備えている。
刃面104の正面側刃面104aは、第1刃面部5、第2刃面部6及び第3刃面部107を備えている。第1刃面部5及び第2刃面部6の詳細は上述したとおりであるため、ここでは説明を省略する。
本実施形態の第3刃面部107は、中心軸線方向Aにおける本体部2側で本体部2の外周面と連続し、中心軸線方向Aにおける針先8側で第1刃面部5及び第2刃面部6と連続している。また、第3刃面部107は凸型曲面を有している。具体的に本実施形態の第3刃面部107は、第1刃面部5及び第2刃面部6と連続する凸型曲面のみで構成されている。更に、第3刃面部107は、中心軸線方向Aに直交する断面における中心平面Xに対する角度θが、中心軸線方向Aの位置によらず略一定な凸型の曲面で構成されている。
より具体的には図5、図6に示すように、本実施形態の第3刃面部107は、中心軸線方向Aにおける針先8側で第1刃面部5及び第2刃面部6と連続する先端側部107aと、中心軸線方向Aにおいて先端側部107aの本体部2側に連続する基端側部107bと、で構成されている。先端側部107a及び基端側部107bは、側面視(図5(b)、図6(b)参照)において曲率が互いに異なる凸型曲面で構成されている。また、先端側部107a及び基端側部107bはいずれも、中心軸線方向Aに直交する断面における中心平面Xに対する角度θが、中心軸線方向Aの位置によらず略一定な曲面で構成されている。そして、第1刃面部5及び第2刃面部6と先端側部107aとの間、並びに先端側部107aと基端側部107bとの間は、稜線が形成されないように滑らかに連続している。
換言すれば、本実施形態では、穿刺針101の側面視(図5(b)、図6(b)参照)において曲率の異なる先端側部107a及び基端側部107bを中心軸線方向Aに連続させることにより、第1刃面部5及び第2刃面部6と、第3刃面部107との間に、刺通抵抗となる稜線が形成されないように構成されている。つまり、第3刃面部107の先端側部107aは、第1刃面部5及び第2刃面部6と、第3刃面部107の基端側部107bとを、滑らかに接続するための接続曲面であり、側面視における曲率が基端側部107bの曲率よりも大きく構成されている。
より具体的に、本実施形態の先端側部107aは、図6(a)に示すように、中心軸線方向Aにおいて第1刃面部5と基端側部107bとの間に位置する第1接続曲面130aと、中心軸線方向Aにおいて第2刃面部6と基端側部107bとの間に位置する第2接続曲面130bと、で構成されている。なお、図6(a)では、第1刃面部5と先端側部107aの第1接続曲面130aとの間、第2刃面部6と先端側部107aの第2接続曲面130bとの間、第1接続曲面130aと基端側部107bとの間、及び第2接続曲面130bと基端側部107bとの間に、境界線を意味する線が引かれているが、これらの線は単なる境界線を意味し、これら面同士が交差することにより形成される稜線を表すものではない。上述したように、第1刃面部5は、先端側部107aの第1接続曲面130aを介して、基端側部107bと滑らかに接続され、第2刃面部6は、先端側部107aの第2接続曲面130bを介して、基端側部107bと滑らかに接続される。なお、図5(a)及び図5(d)において、第1刃面部5及び第2刃面部6と先端側部107aとの間に引かれている線、及び先端側部107aと基端側部107bとの間に引かれている線に関しても、上記同様、単に境界線を意味している。
刃面104の背面側刃面104bは、第1刃面部5の裏側に形成された第4刃面部21と、第2刃面部6の裏側に形成された第5刃面部22と、を備えており、第4刃面部21と第5刃面部22とは、中心軸線方向Aの針先8側において、互いが交差する稜線により針先8を一端とする刃縁23を形成している。
また、第1刃面部5と第4刃面部21とは、互いが交差する稜線により針先8を一端とする刃縁24を形成している。より具体的に、刃縁24は、第1刃面部5の外縁と、第4刃面部21の外縁とにより形成された稜線により構成されている。
更に、第2刃面部6と第5刃面部22とは、互いが交差する稜線により針先8を一端とする刃縁25を形成している。より具体的に、刃縁25は、第2刃面部6の外縁と、第5刃面部22の外縁とにより形成された稜線により構成されている。
なお、以下、説明の便宜上、第1刃面部5と第2刃面部6とが交差する稜線により形成された刃縁9を「第1刃縁9」と記載し、第4刃面部21と第5刃面部22とが交差する稜線により形成された刃縁23を「第2刃縁23」と記載し、第1刃面部5と第4刃面部21とが交差する稜線により形成された刃縁24を「第3刃縁24」と記載し、第2刃面部6と第5刃面部22とが交差する稜線により形成された刃縁25を「第4刃縁25」と記載する。
このように、本実施形態の穿刺針101は、正面側刃面104aに加えて背面側刃面104bを備えるため、穿刺針101の針先8を、上述した穿刺針1よりも更に鋭くすることができ、針先8近傍の刺通抵抗をより低減することが可能となる。
ここで、本実施形態の第4刃面部21及び第5刃面部22は、第1刃面部5及び第2刃面部6と同様、中心軸線方向Aにおける位置により、中心軸線方向Aに直交する断面における角度が変化する。具体的に、本実施形態の第4刃面部21及び第5刃面部22は、本体部2の中心軸線Oを含む1つの仮想平面を設定した場合に、中心軸線方向Aにおいて針先8側に向かうにつれて、中心軸線方向Aに直交する断面における上記1つの仮想平面に対する角度γが漸増する曲面で構成されている。なお、本実施形態の穿刺針101では、上記仮想平面を中心平面Xに設定可能であり、本実施形態の第4刃面部21及び第5刃面部22は、中心軸線方向Aにおいて針先8側に向かうにつれて、中心軸線方向Aに直交する断面における中心平面Xに対する角度γが漸増する曲面で構成されている。
第4刃面部21及び第5刃面部22を、上述した曲面で構成することにより、針先8近傍を鋭くすることができると共に、第4刃面部21及び第5刃面部22と、穿刺針101を構成する筒状部材の外周面との間で、刺通抵抗となり得る稜線(ジャンクション)が形成されない構成を実現し易い。
以下、本実施形態の刃面104の形状について、図7を参照して詳細に説明する。
図7(a)は、図6のV-V断面、すなわち、第3刃面部107の基端側部107bを通り中心軸線方向Aと直交する断面を示している。図7(a)に示すように、図6のV-V断面における基端側部107bの中心平面Xに対する角度θ5は約90度であり、本実施形態の基端側部107bの中心平面Xに対する角度θは、図6のV-V断面だけではなく、中心軸線方向Aの位置によらず約90度である。換言すれば、本実施形態の第3刃面部107における基端側部107bは、図7(a)に示すように、中心軸線方向Aと直交する断面において、中心平面Xと直交する方向に直線状に延在している。
図7(b)は、図6のVI-VI断面、すなわち、第3刃面部107の先端側部107aを通り中心軸線方向Aと直交する断面を示している。図7(b)に示すように、図6のVI-VI断面における先端側部107aの中心平面Xに対する角度θ6は約90度であり、本実施形態の先端側部107aの中心平面Xに対する角度θは、図6のVI-VI断面だけではなく、中心軸線方向Aの位置によらず約90度である。換言すれば、本実施形態の第3刃面部107における先端側部107aは、図7(b)に示すように、中心軸線方向Aと直交する断面において、中心平面Xと直交する方向に直線状に延在している。なお、図7(b)及び後に参照する図7(c)〜(f)では、第3刃面部107における先端側部107aと基端側部107bとの間の境界線を二点鎖線により示している。
図7(c)は、図6のVII-VII断面、すなわち、第1刃面部5及び第2刃面部6と、第3刃面部107の先端側部107aとが接続される位置での、中心軸線方向Aと直交する断面を示す。図7(c)に示すように、図6のVII-VII断面における第1刃面部5及び第2刃面部6それぞれの、中心平面Xに対する角度θ7は約90度であり、図7(c)に示すように中心平面Xと直交する方向に直線状に延在している。つまり、第1刃面部5及び第2刃面部6は、先端側部107aとの間で稜線を形成することなく滑らかに接続されている。
図7(d)は、図6のVIII-VIII断面、すなわち、中心軸線方向Aにおいて第1刃面部5及び第2刃面部6が形成されている位置で、かつ、第4刃面部21及び第5刃面部22が形成されていない位置での、中心軸線方向Aと直交する断面を示す。図7(d)に示すように、図6のVIII-VIII断面における第1刃面部5及び第2刃面部6それぞれの、中心平面Xに対する角度θ8は、角度θ7よりも小さい鋭角である。なお、図7(d)及び次に参照する図7(e)及び図7(f)では、第1刃面部5及び第2刃面部6と第3刃面部107の先端側部107aとの間の境界線を二点鎖線により示している。
図7(e)は、図6のIX-IX断面、すなわち、中心軸線方向Aにおいて第1刃面部5、第2刃面部6、第4刃面部21及び第5刃面部22が形成されている位置で、かつ、中心軸線方向Aにおいて開口11がある位置での、中心軸線方向Aと直交する断面を示す。換言すれば、図7(e)は、中心軸線方向Aにおいて第1刃縁9及び第2刃縁23が形成されていない位置で、かつ、第3刃縁24及び第4刃縁25が形成されている位置での、中心軸線方向Aと直交する断面である。図7(e)に示すように、図6のIX-IX断面における第1刃面部5及び第2刃面部6それぞれの、中心平面Xに対する角度θ9は、角度θ7よりも小さく、かつ、θ8よりも小さい鋭角である。
また、図7(e)に示すように、図6のIX-IX断面では第4刃面部21及び第5刃面部22が形成されており、第4刃面部21及び第5刃面部22は、図7(e)の断面視にて、中心平面Xに対して鋭角の所定の角度γ1をなして直線状に延在している。
図7(f)は、図6のX-X断面、すなわち、第1刃縁9、第2刃縁23、第3刃縁24及び第4刃縁25が形成されている位置での、中心軸線方向Aと直交する断面を示す。図7(f)に示すように、図6のX-X断面における第1刃面部5及び第2刃面部6それぞれの、中心平面Xに対する角度θ10は、角度θ7よりも小さく、かつ、θ8よりも小さく、かつ、角度θ9よりも小さい鋭角である。
また、図7(f)に示すように、図6のX-X断面での第4刃面部21及び第5刃面部22それぞれの、中心平面Xに対する角度γ2は、角度γ1よりも大きい鋭角である。
このように、第1刃面部5及び第2刃面部6は、それぞれ、中心軸線方向Aに直交する断面視において直線であり、本実施形態における第1刃面部5及び第2刃面部6それぞれの、中心軸線方向Aと直交する断面における中心平面Xに対する角度θは、中心軸線方向Aにおいて針先8側に向かう(針先8に近づく)につれて漸減する(図7(c)〜図7(f)参照)。また、第4刃面部21及び第5刃面部22は、それぞれ、中心軸線方向Aに直交する断面視において直線であり、本実施形態における第4刃面部21及び第5刃面部22それぞれの、中心軸線方向Aと直交する断面における中心平面Xに対する角度γは、中心軸線方向Aにおいて針先8側に向かう(針先8に近づく)につれて漸増する(図7(e)、図7(f)参照)。
なお、図7(c)〜(f)では、第2刃面部6の中心平面Xに対する角度θ7〜θ10をそれぞれ示しているが、第1刃面部5の中心平面Xに対する角度も、第2刃面部6の角度θ7〜θ10と同じである。また、図7(e)及び図7(f)では、第5刃面部22の中心平面Xに対する角度γ1及びγ2を示しているが、第4刃面部21の中心平面Xに対する角度も、第5刃面部22の角度γ1及びγ2と同じである。更に、図7(c)〜(f)の4つの断面は、上記角度θ7〜θ10の大小関係、及び上記角度γ1、γ2の大小関係を示すために例示的に用いたものであり、これら4つの断面に限って上記角度θ及びγの大小関係が成立するものではない。
ここで、本実施形態の穿刺針101では、第4刃面部21及び第5刃面部22の両方が、中心軸線方向Aにおいて針先8側に向かうにつれて、中心軸線方向Aに直交する断面における中心平面Xに対する角度γが漸増する曲面で構成されているが、第4刃面部21及び第5刃面部22のいずれか一方をこのような曲面で構成し、他方を平面や別の表面形状を有する曲面で構成するようにしてもよい。また、第4刃面部21及び第5刃面部22の両方を、平面や別の表面形状を有する曲面で構成するようにしてもよい。但し、本実施形態のように、第4刃面部21及び第5刃面部22の両方を、中心軸線方向Aにおいて針先8側に向かうにつれて、中心軸線方向Aに直交する断面における中心平面Xに対する角度γが漸増する曲面で構成すれば、針先8近傍をより鋭くすることができると共に、第4刃面部21及び第5刃面部22と、穿刺針101を構成する筒状部材の外周面との間で、刺通抵抗となり得る稜線(ジャンクション)が形成されない構成をより容易に実現することができる。
<実施形態3>
次に、本発明の実施形態としての穿刺針51について説明する。図8、図9は、穿刺針51を示す図であり、図8(a)は穿刺針51の先端部53近傍の斜視図、図8(b)は穿刺針51の先端部53近傍の正面側の平面図、図9(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)それぞれは、図8(b)のXI-XI断面図、XII-XII断面図、XIII-XIII断面図、XIV-XIV断面図、XV-XV断面図、XVI-XVI断面図である。
穿刺針51は、本体部52と、先端部53とを備え、本体部52から先端部53まで連通する中空部60を区画している。なお、本実施形態の穿刺針51は、上述した実施形態1の穿刺針1と比較して、刃面54の形状が相違しており、その他の構成は共通するものである。したがって、ここでは刃面54の形状について主に説明する。
図8(a)、図8(b)に示すように、先端部53は刃面54を備えており、刃面54は、曲面で構成されている第1刃面部55及び第2刃面部56と、平面及び曲面で構成されている第3刃面部57と、を備えている。また、第1刃面部55及び第2刃面部56は、互いが交差する稜線により、針先58を一端とする刃縁59を形成している。なお、「針先」とは、上述した実施形態1と同様、本体部52の中心軸線方向Aにおける穿刺針51の先端を意味している。
第3刃面部57は、中心軸線方向Aにおける本体部52側で本体部52の外周面と連続し、中心軸線方向Aにおける針先58側で第1刃面部55及び第2刃面部56と連続している。
より具体的に、第1刃面部55及び第2刃面部56は、中心軸線方向Aにおける本体部52側で第3刃面部57とそれぞれ連続し、針先58側で互いに交差することにより稜線を形成、すなわち刃縁59を形成している。また、本実施形態における第1刃面部55及び第2刃面部56は、中空部60の先端部53側の一端である開口61を区画している。
ここで、第2刃面部56は、上述した実施形態1の第2刃面部6と同様、中心軸線方向Aにおける位置により、中心軸線方向Aに直交する断面における角度が変化する。具体的に、第2刃面部56は、例えば螺旋面のような、中心軸線方向Aにおいて、第3刃面部57と連続する位置から針先58に向かって捩れるように延在する曲面で構成されている。なお、第1刃面部55についても、上述した実施形態1の第1刃面部5と同様、中心軸線方向Aにおいて、第3刃面部57と連続する位置から針先58に向かって捩れるように延在する曲面で構成されている。但し、第1刃面部55及び第2刃面部56の、針先58側に向かって捩れる方向は、逆向きである。
換言すれば、第1刃面部55及び第2刃面部56は、上述した実施形態1の第1刃面部5及び第2刃面部6と同様、本体部52の中心軸線Oを含む1つの仮想平面を設定した場合に、中心軸線方向Aにおいて針先58側に向かうにつれて、中心軸線方向Aに直交する断面における上記1つの仮想平面に対する角度θが漸減する曲面で構成されている。つまり、本実施形態の穿刺針51は、このような1つの仮想平面を定義可能な穿刺針である。
ここで、本実施形態の穿刺針51では、上述の「仮想平面」として定義可能な平面を1つ有している。具体的に、本実施形態の穿刺針51では、上述の「仮想平面」を、中心軸線O及び針先58を含む一平面である中心平面Xに設定可能であり、第1刃面部55及び第2刃面部56はいずれも、中心軸線方向Aにおいて針先58側に向かうにつれて、中心軸線方向Aに直交する断面における中心平面Xに対する角度θが漸減する曲面で構成されている。なお、本実施形態の中心平面Xは、針先58のみならず刃縁59をも含む平面である。
本実施形態の穿刺針51は、第1刃面部55及び第2刃面部56の両方が、中心軸線方向Aにおいて針先58側に向かうにつれて、中心軸線方向Aに直交する断面における中心平面Xに対する角度θが漸減する曲面で構成されているが、第1刃面部55及び第2刃面部56のいずれか一方を、このような曲面で構成し、他方を平面や別の表面形状を有する曲面で構成するようにしてもよい。また、第1刃面部55及び第2刃面部56の両方を平面や別の表面形状を有する曲面で構成してもよい。但し、上述した実施形態1の第1刃面部5及び第2刃面部6と同様、第1刃面部55及び第2刃面部56の両方を、中心軸線方向Aにおいて針先58側に向かうにつれて、中心軸線方向Aに直交する断面における中心平面Xに対する角度θが漸減する曲面で構成することが好ましい。
また、本実施形態の第3刃面部57は、第1刃面部55及び第2刃面部56と連続する平面部57aと、第1刃面部55、第2刃面部56及び平面部57aと連続する凸型曲面としての曲面部57bと、を備えている。
平面部57aは、中心軸線方向Aに対して所定の角度で傾斜した平面であり、図8(b)に示す平面視において、開口61の本体部52側の内縁に沿うように湾曲したアーチ形又は円弧形の形状を有している。また、図8(b)の平面視において、アーチ形又は円弧形の平面部57aの一端側の外縁は第1刃面部55との境界線62aとなっており、他端側の外縁は第2刃面部56との境界線62bとなっている。なお、図8(b)の平面視における平面部57aの形状は、本実施形態のアーチ形や円弧形に限られるものではなく、開口61の本体部52側の内縁端部から放射状に拡がる扇形や、開口61の本体部52側の内縁端部を通過する直線とこの直線の両端を結ぶアーチ状の曲線とで構成される山形、などにすることも可能である。
本実施形態において、第1刃面部55及び第2刃面部56と、第3刃面部57の平面部57aと、の間の境界線62a及び62bは、稜線(ジャンクション)が形成されないように滑らかに連続しており、図8(b)に示す境界線62a及び62bは単に境界を示しているにすぎず、稜線を表すものではない。但し、この境界線62a及び62bを、刺通抵抗が大きく増加しない程度の稜線により形成する構成としてもよい。
凸型曲面としての曲面部57bは、中心軸線方向Aにおいて平面部57aの本体部52側に位置しており、平面部57aと連続して形成されている。また、曲面部57bは、平面部57aの本体部52側に位置しているのみならず、第1刃面部55及び第2刃面部56の外縁と連続するように、穿刺針51の周方向に延在している。つまり、曲面部57bは、穿刺針51の周方向の異なる位置で、第1刃面部55、第2刃面部56及び第3刃面部57の平面部57aのそれぞれと連続している。
また、曲面部57bは、中心軸線方向Aの本体部52側で、本体部52の外周面と連続している。
ここで、凸型曲面としての曲面部57bは、中心軸線方向Aにおいて針先58側に向かうにつれて、中心軸線方向Aに直交する断面における中心平面Xに対する角度δが漸減する曲面で構成されている。第3刃面部57の形状の詳細は後述する。
以下、本実施形態の刃面54について詳しく説明する。なお、刃縁59の構成については、上述した実施形態1の刃縁9と同様であるため、ここでは説明を省略する。
[先端部53の第1刃面部55及び第2刃面部56]
図8(b)に示すように、第1刃面部55及び第2刃面部56のそれぞれは、中心軸線方向Aにおける本体部52側で、第3刃面部57と連続している。より具体的に、第1刃面部55及び第2刃面部56は、中心平面Xを挟む両側でそれぞれ第3刃面部57の平面部57a及び曲面部57bと連続している。
図9(c)は図8(b)のXIII-XIII断面、すなわち、中心軸線方向Aにおいて第1刃面部55及び第2刃面部56と、第3刃面部57の平面部57aとが接続する位置での、中心軸線方向Aと直交する断面を示す。図9(c)に示すように、図8(b)のXIII-XIII断面における第1刃面部55及び第2刃面部56それぞれの、中心平面Xに対する角度θ13は約90度である。換言すれば、図8(b)のXIII-XIII断面において、第1刃面部55及び第2刃面部56のそれぞれは、中心平面Xと直交する方向に直線状に延在している。なお、図9(c)及び以下で参照する図9(d)〜図9(f)では、境界線62a及び62bを二点鎖線により示している。
図9(d)は、図8(b)のXIV-XIV断面、すなわち、中心軸線方向Aにおいて図8(b)のXIII-XIII断面よりも針先58側の位置での、中心軸線方向Aと直交する断面であり、別の言い方をすれば、第3刃面部57の曲面部57bの最も針先58側の点を含む、中心軸線方向Aと直交する断面である。図9(d)に示すように、図8(b)のXIV-XIV断面における第1刃面部55及び第2刃面部56それぞれの、中心平面Xに対する角度θ14は、角度θ13よりも小さい鋭角である。
図9(e)は、図8(b)のXV-XV断面、すなわち、中心軸線方向Aにおいて図8(b)のXIV-XIV断面よりも針先58側の位置での、中心軸線方向Aと直交する断面を示す。図9(e)に示すように、図8(b)のXV-XV断面における第1刃面部55及び第2刃面部56それぞれの、中心平面Xに対する角度θ15は、角度θ13よりも小さく、かつ、角度θ14よりも小さい鋭角である。
図9(f)は、図8(b)のXVI-XVI断面、すなわち、中心軸線方向Aにおいて刃縁59が形成されている位置での、中心軸線方向Aと直交する断面を示す。図9(f)に示すように、図8(b)のXVI-XVI断面における第1刃面部55及び第2刃面部56それぞれの、中心平面Xに対する角度θ16は、角度θ13よりも小さく、かつ、角度θ14よりも小さく、かつ、角度θ15よりも更に小さい鋭角である。
このように、第1刃面部55及び第2刃面部56は、それぞれ、中心軸線方向Aに直交する断面視(図9(c)〜(f)参照)において直線であり、本実施形態における第1刃面部55及び第2刃面部56それぞれの、中心軸線方向Aと直交する断面における中心平面Xに対する角度θは、中心軸線方向Aにおいて針先58側に向かう(針先58に近づく)につれて漸減する。なお、図9(c)〜(f)では、第2刃面部56の中心平面Xに対する角度θ13〜θ16をそれぞれ示しているが、第1刃面部55の中心平面Xに対する角度も、第2刃面部56の角度θ13〜θ16と同じである。また、図9(c)〜(f)の4つの断面は、上記角度θ13〜θ16の大小関係を示すために例示的に用いたものであり、これら4つの断面に限って上記角度θの大小関係が成立するものではない。
ここで、図9(c)〜(f)に示すように、本実施形態の第2刃面部56は、中心軸線方向Aに直交する断面視において直線であるが、この構成に限られるものではなく、例えば、第2刃面部を、中心軸線方向Aと直交する断面視が円弧状の曲線となる構成や、同断面視が直線とこの直線に連続する円弧状の曲線とからなる構成とすることもできる。これは第1刃面部についても同様である。なお、かかる場合の第1刃面部及び第2刃面部の角度θとは、中心軸線方向Aと直交する断面において、第1刃面部及び第2刃面部それぞれの内縁と外縁とを通過する直線と、設定された1つの仮想平面(本実施形態では中心平面X)とで形成される角度を意味している。
[先端部53の第3刃面部57]
第3刃面部57は、上述したように、平面部57aと、凸型曲面としての曲面部57bと、を備えている。
第3刃面部57の平面部57aは、上述したように、中心軸線方向Aに対して所定の角度で傾斜する平面である。そのため、平面部57aの、中心軸線方向Aに直交する断面における中心平面Xに対する角度λは、中心軸線方向Aの位置によらず略一定である。具体的には図9(b)に示すように、図8(b)のXII-XII断面における本実施形態の平面部57aの中心平面Xに対する角度λ1は約90度であり、本実施形態の平面部57aの中心平面Xに対する角度λは、図8(b)のXII-XII断面だけではなく、中心軸線方向Aの位置によらず約90度である。換言すれば、本実施形態の平面部57aは、図9(b)に示すように、中心軸線方向Aと直交する断面において、中心平面Xと直交する方向に直線状に延在している。
本実施形態の曲面部57bは、中心軸線方向Aに直交する断面における中心平面Xに対する角度δが、中心軸線方向Aの位置によって変化する凸型の曲面である。図9(a)は、図8(b)のXI-XI断面、すなわち、刃面54のうち第3刃面部57の曲面部57bのみを含む、中心軸線方向Aに直交する断面である。図9(a)に示すように、図8(b)のXI-XI断面における本実施形態の曲面部57bは、本体部52の曲率よりも小さい曲率の凸型の円弧形状を有している。
図9(b)に示すように、図8(b)のXII-XII断面、すなわち、図9(a)よりも中心軸線方向Aにおいて針先58側の位置、かつ、平面部57a及び曲面部57bを含む位置での中心軸線方向Aに直交する断面では、曲面部57bの中心平面Xに対する角度δ1は90度より小さい鋭角である。
図9(c)に示すように、図8(b)のXIII-XIII断面、すなわち、図9(b)よりも中心軸線方向Aにおいて針先58側の位置、かつ、曲面部57bを含む位置での中心軸線方向Aに直交する断面では、曲面部57bの中心平面Xに対する角度δ2は、角度δ1より小さい鋭角である。
このように、第3刃面部57の曲面部57bの、中心軸線方向Aと直交する断面における中心平面Xに対する角度δは、中心軸線方向Aにおいて針先58側に向かう(針先58に近づく)につれて漸減する(図9(b)及び図9(c)参照)。なお、図9(b)、図9(c)では、第3刃面部57の曲面部57bのうち、中心平面Xの右側に位置する部分について、中心平面Xに対する角度δ1及びδ2をそれぞれ示しているが、中心平面Xの左側に位置する部分の中心平面Xに対する角度も同じである。また、図9(b)及び図9(c)の2つの断面は、上記角度δ1及びδ2の大小関係を示すために例示的に用いたものであり、これら2つの断面に限って上記角度δの大小関係が成立するものではない。
本実施形態の刃面54によれば、上述した実施形態1の刃面4と同様の効果を得ることができる。更に、本実施形態のように、曲面部57bを、中心軸線方向Aにおいて針先58側に向かうにつれて、中心軸線方向Aに直交する断面における中心平面Xに対する角度δが漸減する曲面で構成すれば、上述した実施形態1の第3刃面部7の曲面形状とする場合と比較して、中心軸線方向Aにおける刃面54の刃面長M(図8(b)参照)を短くすることができる。そのため、刃面54全体を脈管内に入れることが可能な穿刺針51をより実現し易い。
なお、本実施形態の曲面部57bの曲面形状とすると、図9(b)及び図9(c)に示すように、曲面部57bと、第1刃面部55及び第2刃面部56それぞれと、の間に稜線が形成され易い。しかしながら、その稜線が、本実施形態のように中心軸線方向Aに沿う方向に延在する構成とすれば、この稜線をジャンクションとして機能し難くすることができる。
ここで、本実施形態の穿刺針51は、中空部61を区画する中空針であるが、中空部61を区画しない中実針とすることも可能である。図10、図11は、本実施形態の穿刺針51の変形例としての、中実針である穿刺針71を示すものである。なお、図10、図11に示す穿刺針71は、本実施形態の穿刺針51と比較して、中空部を区画していない点で相違しており、その他の構成は共通するものである。
図10(a)は穿刺針71の斜視図、図10(b)は穿刺針71の先端部73近傍の正面側の平面図、図11(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)それぞれは、図10(b)のXVII-XVII断面図、XVIII-XVIII断面図、XIX-XIX断面図、XX-XX断面図、XXI-XXI断面図、XXII-XXII断面図である。
図10、図11に示す穿刺針71は、本体部72と、先端部73とを備える中実針である。本体部72は、中実棒状の形状を有している。先端部73は刃面74を備えており、刃面74は、曲面で構成されている第1刃面部75及び第2刃面部76と、平面部77a及び凸型曲面としての曲面部77bを有する第3刃面部77と、を備えている。また、第1刃面部75及び第2刃面部76は、中心平面X上で互いが交差する稜線により、針先78を一端とする刃縁79を形成している。
穿刺針71は中空部を区画していないため、第1刃面部75及び第2刃面部76は、本実施形態の第1刃面部55及び第2刃面部56と比較して幅が広い。そして、第1刃面部75及び第2刃面部76が中心平面X上で交差して形成される刃縁79は、本実施形態の刃縁59よりも長い。また、第3刃面部77の平面部77aは、境界線82a及び82bの位置で、第1刃面部75及び第2刃面部76と連続しており、図10(b)に示す平面視において、扇形の形状を有している。穿刺針71の刃面74の形状は、これらの点以外は、本実施形態の穿刺針51の刃面54の形状と同じである。
また、図11(d)〜図11(f)に示すように、第1刃面部75及び第2刃面部76は、それぞれ、中心軸線方向Aに直交する断面視において直線であり、第1刃面部75及び第2刃面部76それぞれの、中心軸線方向Aと直交する断面における中心平面Xに対する角度θは、中心軸線方向Aにおいて針先58側に向かう(針先58に近づく)につれて漸減する(図11(d)〜図11(f)のθ20〜θ22参照)。なお、図11(d)〜図11(f)では、平面部77aと第1刃面部75及び第2刃面部76との境界線82a及び境界線82bを二点鎖線により示している。
更に、図11(b)及び図11(c)に示すように、平面部77aの、中心軸線方向Aに直交する断面における中心平面Xに対する角度λは、中心軸線方向Aの位置によらず略一定であり、約90度である(図11(b)及び図11(c)のλ2及びλ3参照)。
また更に、図11(a)に示すように、図10(b)のXVII-XVII断面における曲面部77bは、本体部72の曲率よりも小さい曲率の凸型の円弧形状を有している。そして、図11(b)〜図11(d)に示すように、第3刃面部77の曲面部77bの、中心軸線方向Aと直交する断面における中心平面Xに対する角度δは、中心軸線方向Aにおいて針先78側に向かう(針先78に近づく)につれて漸減する(図11(b)〜図11(d)のδ3〜δ5参照)。
なお、本発明に係る穿刺針は、様々な具体的構成により実現することが可能であり、上述した実施形態1〜3に示した構成に限られるものではない。例えば、実施形態1の穿刺針1の第3刃面部7に、実施形態2の第3刃面部107を適用することも可能である。また、実施形態2の穿刺針101を中実針とすることも可能である。更に、実施形態3の穿刺針51の背面側に、実施形態2の第4刃面部21及び第5刃面部22を設けてもよい。このように、各実施形態で記載された構成を組み合わせて、新たな穿刺針を構成することは、本発明の技術的範囲に属するものである。更に、本発明に係る穿刺針は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲で変更することが可能である。例えば、上述した実施形態1〜3に示した穿刺針の本体部は、任意の横断面が略円形状の断面外形を有するものであるが、中空棒状又は中実棒状の本体部であればよく、この構成に限られるものではない。例えば、任意の横断面が略楕円形状の断面外形を有する本体部としてもよく、任意の横断面が略円形状及び略楕円形状のいずれかの断面外形を有する本体部としてもよい。更に、断面外形が略円形状又は略楕円形状となる部分を一部に有する本体部であってもよい。また更に、円形状以外の形状としては、長軸及び短軸が規定される偏平状の断面外形を有するものであればよく、上述した楕円形状に限られるものではなく、例えば長方形の短辺両端に半円形を合わせた角丸長方形が挙げられる。
図15、図16は、任意の横断面の外形が略円形状又は略楕円形状となる本体部152を備える穿刺針151を示す図であり、図15(a)は穿刺針151の先端部153近傍の斜視図、図15(b)は穿刺針151の先端部153近傍の正面側の平面図、図15(c)は穿刺針151の先端部153近傍の側面図、図16(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)それぞれは、図15(b)のXXIII-XXIII断面図、XXIV-XXIV断面図、XXV-XXV断面図、XXVI-XXVI断面図、XXVII-XXVII断面図、XXVIII-XXVIII断面図である。
図15、図16に示す穿刺針151は、本体部152と、先端部153とを備え、本体部152から先端部153まで連通する中空部160を区画している。
本体部152は、先端部153と連続する中空棒状、すなわち筒状の管体である。より具体的に、本体部152は、先端部153と連続する略楕円形状の断面外形を有する本体先端部152aと、この本体先端部152aの基端側に位置し、略円形状の断面外形を有する本体胴部152bと、本体先端部152aと本体胴部152bとの間に位置し、本体先端部152aと本体胴部152bとを繋ぐ連結部152cと、を備えている。なお、ここで言う「断面外形」とは、上述した実施形態と同様、本体部152の中心軸線Oと直交する横断面を意味している。
本体先端部152aは、図15(b)の平面視における幅S1が長軸、図15(c)の側面視における幅S2が短軸となる略楕円形状の断面外形を有している。図15(b)、図15(c)に示すように、本体先端部152aの長軸となる幅S1は、本体胴部152bの外径よりも大きく、本体先端部152aの短軸となる幅S2は、本体胴部152bの外径よりも小さい。また、本体先端部152aの中心軸線と本体胴部152bの中心軸線とは略一致しており、本体部152の中心軸線Oは略直線となっている。したがって、連結部152cは、正面側及び背面側の平面視(図15(b)参照)では、中心軸線方向Aにおいて先端部153側に向かうにつれて漸増するのに対して、側面視(図15(c)参照)の側面視では、中心軸線方向Aにおいて先端部153側に向かうにつれて漸減する、テーパー形状を有している。なお、中心軸線O及び針先158を含む中心平面Xは、本体先端部152aの中心軸線方向Aと直交する断面における短軸を含む平面である。
図15(a)〜図15(c)に示すように、先端部153は、断面外形が略楕円形状の本体先端部152aと連続している。先端部153は刃面154を備えており、刃面154は、第1刃面部155、第2刃面部156及び第3刃面部157を備えている。第1刃面部155及び第2刃面部156は、短軸を含む中心平面Xを挟んで位置している。第1刃面部155及び第2刃面部156は曲面で構成されており、互いが交差する稜線により、針先158を一端とする刃縁159を形成している。第1刃面部155及び第2刃面部156の曲面形状は、上述した第1〜第3実施形態で示す第1刃面部及び第2刃面部と同様の形状であるため、ここでは説明を省略する。
第3刃面部157は、中心軸線方向Aにおける本体部152側で本体先端部152aの外周面と連続し、中心軸線方向Aにおける針先158側で第1刃面部155及び第2刃面部156と連続している。また、第3刃面部157は凸型曲面を有している。より具体的に、第3刃面部157は、平面部157aと、凸型曲面としての曲面部157bと、を備えている。
曲面部157bは、中心軸線方向Aにおいて平面部157aの針先158側に連続する先端側部190aと、中心軸線方向Aにおいて平面部157aの本体部152側に連続する基端側部190bと、を備えており、先端側部190a及び基端側部190bはいずれも凸型曲面である。換言すれば、平面部157aは、中心軸線方向Aにおいて先端側部190aと基端側部190bの間に位置している。
より具体的に、先端側部190a及び基端側部190bは、側面視(図15(c)参照)において曲率が互いに異なる凸型曲面で構成されている。また、先端側部190a及び基端側部190bはいずれも、中心軸線方向Aに直交する断面における中心平面Xに対する角度θが、中心軸線方向Aの位置によらず略一定な曲面で構成されている。そして、第1刃面部155及び第2刃面部156と先端側部190aとの間、先端側部190aと平面部157aとの間、並びに平面部157aと基端側部190bとの間は、稜線が形成されないように滑らかに連続している。
また、曲面部157bの先端側部190aは、中心軸線方向Aにおいて第1刃面部155と平面部157aとの間に位置する第1接続曲面191aと、中心軸線方向Aにおいて第2刃面部156と平面部157aとの間に位置する第2接続曲面191bと、で構成されている。なお、図15(a)、(b)では、第1刃面部155と先端側部190aの第1接続曲面191aとの間、第2刃面部156と先端側部190aの第2接続曲面191bとの間、第1接続曲面191aと平面部157aとの間、及び第2接続曲面191bと平面部157aとの間に、境界線を意味する線が引かれているが、これらの線は単なる境界線を意味し、これら面同士が交差することにより形成される稜線を表すものではない。第1刃面部155は、先端側部190aの第1接続曲面191aを介して、平面部157aと滑らかに接続され、第2刃面部156は、先端側部190aの第2接続曲面191bを介して、平面部157aと滑らかに接続される。
なお、第1及び第2接続曲面191a及び191bは、中心軸線方向Aに直交する断面における中心平面Xに対する角度θが、中心軸線方向Aの位置によらず略一定な凸型曲面であるが、第1刃面部155及び第2刃面部156を平面部157aと滑らかに連続する凸型曲面であればよく、同角度θが中心軸線方向Aの位置によらず略一定な凸型曲面に限られるものではない。
また、図15(a)、図15(b)において、平面部157aと、曲面部157bの基端側部190bとの間に引かれている線に関しても、上記同様、単に境界線を意味している。
図16(a)は、図15(b)のXXIII-XXIII断面、すなわち、第3刃面部157の曲面部157bにおける基端側部190bを通り中心軸線方向Aと直交する断面を示している。図16(a)に示すように、図15(b)のXXIII-XXIII断面における基端側部190bの中心平面Xに対する角度θ23は約90度であり、基端側部190bの中心平面Xに対する角度θは、図15(b)のXXIII-XXIII断面だけではなく、中心軸線方向Aの位置によらず約90度である。換言すれば、基端側部190bは、図16(a)に示すように、中心軸線方向Aと直交する断面において、中心平面Xと直交する方向に直線状に延在している。
図16(b)は、図15(b)のXXIV-XXIV断面、すなわち、第3刃面部157の平面部157aを通り中心軸線方向Aと直交する断面を示している。図16(b)に示すように、図15(b)のXXIV-XXIV断面における平面部157aの中心平面Xに対する角度θ24は約90度であり、平面部157aの中心平面Xに対する角度θは、図15(b)のXXIV-XXIV断面だけではなく、中心軸線方向Aの位置によらず約90度である。換言すれば、第3刃面部157における平面部157aは、図16(b)に示すように、中心軸線方向Aと直交する断面において、中心平面Xと直交する方向に直線状に延在している。なお、図16(b)及び以下で参照する図16(c)〜(f)では、平面部157aと基端側部190bとの間の境界線を二点鎖線により示している。
図16(c)は、図15(b)のXXV-XXV断面、すなわち、第3刃面部157の曲面部157bにおける先端側部190aを通り中心軸線方向Aと直交する断面を示している。図16(c)に示すように、図15(b)のXXV-XXV断面における先端側部190aの中心平面Xに対する角度θ25は約90度であり、先端側部190aの中心平面Xに対する角度θは、図15(b)のXXV-XXV断面だけではなく、中心軸線方向Aの位置によらず約90度である。換言すれば、第3刃面部157の曲面部157bにおける先端側部190aは、図16(c)に示すように、中心軸線方向Aと直交する断面において、中心平面Xと直交する方向に直線状に延在している。なお、図16(c)及び以下で参照する図16(d)〜(f)では、先端側部190aと平面部157aとの間の境界線を二点鎖線により示している。
図16(d)〜(f)それぞれは、図15(b)のXXVI-XXVI〜XXVIII-XXVIII断面、すなわち、第1刃面部155及び第2刃面部156を通り中心軸線方向Aと直交する断面を示している。図16(d)〜(f)に示すように、第1刃面部155及び第2刃面部156は、それぞれ、中心軸線方向Aに直交する断面視において直線であり、第1刃面部155及び第2刃面部156それぞれの、中心軸線方向Aと直交する断面における中心平面Xに対する角度θは、中心軸線方向Aにおいて針先158側に向かう(針先158に近づく)につれて漸減する(図16(d)〜図16(f)のθ26〜θ28参照)。なお、図16(d)〜図16(f)では、第1刃面部155及び第2刃面部156と、第3刃面部157の曲面部157bにおける先端側部190aと、の境界線を二点鎖線により示している。また、図16(d)に示すθ26は約90度であり、第1刃面部155及び第2刃面部156は、この境界線の位置で上述した先端側部190aと滑らかに連続している。
図15、図16に示す穿刺針151は、上述した実施形態1〜3の穿刺針と比較して、本体部152及び先端部153の、中心軸線方向Aと直交する断面の外形が異なっており、穿刺針151の側面視(図15(c)参照)における先端部153の最大厚みは、上述した実施形態1〜3の穿刺針の側面視(図1(b)等参照)における先端部の最大厚みよりも薄い。そして、図15、図16に示す穿刺針151では、本体先端部152aの中心軸線方向Aと直交する断面での短軸が、中心平面Xに含まれる。このような構成とすれば、上述した実施形態1〜3に示す穿刺針と比較して、より刃面長Mが短い穿刺針151を実現し易い。
ここで、図17は、図15に示す穿刺針151を針先158側から見た図である。図17において、一点鎖線で示す「R1」は長軸であり、「R2」は短軸である。図17に示すように、針先158は、中心軸線方向Aで見た場合に、本体胴部152bの外周(説明の便宜上、外周のうち図17の視点で目視できない部分は破線BLにより表記)よりも内側に位置している。
すなわち、穿刺針151は、針先を含む偏平状の断面外形を有する先端部153と、この先端部153と連続し、長軸R1と短軸R2で規定される偏平状の断面外形を有する本体先端部152aと、この本体先端部152aよりも基端側に位置し、略円形状の断面外形を有する本体胴部152bと、を備え、先端部153は刃面154を備え、この刃面154は、互いが交差する稜線により針先158を一端とする刃縁159を形成する第1刃面部155及び第2刃面部156を備え、針先158は、中心軸線方向Aで見た場合に、本体胴部152bの外周よりも内側に位置している。
中心軸線方向Aで見た場合の針先158の位置をこのような位置とすることにより、第1刃面部155及び第2刃面部156について、中心軸線方向Aの長さを、中心軸線方向Aで見た場合の針先の位置が本体胴部152bの外周上又は外周よりも外側に位置する比較構成での第1刃面部及び第2刃面部の中心軸線方向Aの長さと等しくしつつ、中心軸線方向Aに対する傾斜角度を、上述の比較構成での第1刃面部及び第2刃面部の中心軸線方向Aに対する傾斜角度よりも小さくすることができる。そのため、穿刺途中に体内組織から背面側に向かって押圧される押圧力を低減可能な第1刃面部155及び第2刃面部156を実現し易い。すなわち、直進性を向上させる穿刺針151を実現し易くなる。
また、上述したように、中心軸線方向Aで見た場合の針先158の位置を本体胴部152bの外周よりも内側とすれば、中心軸線方向Aで見た場合の針先の位置が本体胴部152bの外周上又は外周よりも外側に位置する構成と比較して、第1刃面部155及び第2刃面部156の中心軸線方向Aにおける長さを同じ長さとしつつ、刃先角度αを更に小さくすることができる。そのため、刃先が薄く、刃先での刺通抵抗を軽減可能な穿刺針151を実現し易い。
更に、針先158は、中心軸線方向Aで見た場合(図17参照)に、短軸方向(図17において短軸R2に平行な方向)の一端に形成されているが、中心軸線方向Aで見た場合(図17参照)に本体胴部152bの外周の内側に位置していればよく、図17に示す針先158の位置に限られるものではない。但し、針先158は、図15〜図17に示すように短軸方向の一端の位置、又は短軸方向の一端の位置の近傍(以下、短軸方向の一端の位置及びその近傍の位置を「短軸方向の一端側の位置」と記載する。)に形成することが好ましい。このようにすれば、図17に示す楕円形状のように、中心軸線方向Aで見た場合に偏平状の断面外形を有する先端部153において、第1刃面部155及び第2刃面部156を、曲率半径の大きい位置に形成することができる。これにより、第1刃面部155及び第2刃面部156それぞれの外縁の長さに対する、交差角度τ(図16(e)の「τ27」及び図16(f)の「τ28」参照)が所定角度(例えば60度)以下となる切れ刃の長さの割合を高くすることができる。
より具体的に、第1刃面部155及び第2刃面部156を曲率半径の大きい位置に形成すれば、中心軸線方向Aと直交する断面における、先端部153の外周面の外縁の位置での接線(第1刃面部155及び第2刃面部156それぞれの外縁の位置での接線)の長軸方向(図17において長軸R1に平行な方向)に対する接線傾斜角度U(図16(e)、図16(f)参照)は、中心軸線方向Aの位置によって変化し難くなる。つまり、接線傾斜角度Uの中心軸線方向Aの位置による変化の割合を小さくすることができる。これにより、中心軸線方向Aにおける交差角度τ(図16(e)の「τ27」及び図16(f)の「τ28」参照)の変化の割合が小さくなり、その結果、第1刃面部155及び第2刃面部156それぞれの外縁の長さに対する、交差角度τが所定角度(例えば60度)以下となる切れ刃の長さの割合を高くすることができる。
なお、第1刃面部155及び第2刃面部156それぞれの外縁とは、第1刃面部155及び第2刃面部156それぞれと先端部153の背面側の外周面とが交差する稜線により形成される部分である。そして、ここで言う切れ刃とは、第1刃面部155及び第2刃面部156それぞれの外縁のうち、交差角度τが所定角度(例えば60度)以下となる、針先158から所定の長さに亘る部分を意味している。また、交差角度τとは、中心軸線方向Aと直交する断面において、第1刃面部155とこの第1刃面部155の外縁の位置での外周面上の接線と、がなす角度、及び、中心軸線方向Aと直交する断面において、第2刃面部156とこの第2刃面部156の外縁の位置での外周面上の接線と、がなす角度を意味している(図16(e)の「τ27」及び図16(f)の「τ28」参照)。この切れ刃は、穿刺時に、刃縁159と共に皮膚を切り裂く。したがって、第1刃面部155及び第2刃面部156それぞれの外縁における切れ刃の割合を高くすることにより、穿刺時において、第1刃面部155及び第2刃面部156それぞれの外縁が通過することにより患者が感じる痛みを軽減することができる。
ここで、第1刃面部155及び第2刃面部156の少なくとも一方の刃面部の外縁は、先端部153を中心軸線方向Aで見た場合(図17参照)に、本体胴部152bの外周よりも外側まで延在していることが好ましい。図17に示す例では、第1刃面部155及び第2刃面部156の両方の外縁が、本体胴部152bの外周よりも外側まで延在している。上述したように、穿刺針151の先端部153は偏平状の断面外形を有しており、針先158が短軸方向(図17において短軸R2に平行な方向)の一端側の位置に形成されている。そのため、上述したように、第1刃面部155及び第2刃面部156それぞれの外縁のうち、交差角度τが所定角度(例えば60度)以下となる切れ刃の部分を長く確保し易い。その上で、図17に示すように、第1刃面部155及び第2刃面部156の外縁が、先端部153を中心軸線方向Aで見た場合に、本体胴部152bの外周よりも外側まで延在する構成とすれば、先端部153を中心軸線方向Aで見た場合に針先158から本体胴部152bの外周の外側まで延在する、長軸方向(図17において長軸R1に平行な方向)に長い切れ刃を実現し易い。このような長い切れ刃が実現できれば、穿刺時に、第1刃面部155及び第2刃面部156の外縁が通過することにより患者が感じる痛みをより軽減することができる。
なお、図16(e)に示す断面において、第1刃面部155及び第2刃面部156の外縁は、交差角度τ27が所定角度(例えば60度)以下となる切れ刃を形成している。すなわち、第1刃面部155及び第2刃面部156の外縁は、先端部153を中心軸線方向Aで見た場合に針先158から本体胴部152bの外周の外側まで延在する、長軸方向(図17において長軸R1に平行な方向)に長い切れ刃を形成している。
更に、図17に示す例のように、第1刃面部155及び第2刃面部156の少なくとも一方の外縁が、先端部153を中心軸線方向Aで見た場合に、針先158から長軸方向において先端部153の幅が最大となる位置に到達している構成とすることが好ましい。また更には、図17に示す例のように、第1刃面部155及び第2刃面部156の両方の外縁が、先端部153を中心軸線方向Aで見た場合に、針先158から長軸方向において先端部153の幅が最大となる位置に到達している構成とすることが特に好ましい。このような構成とすれば、先端部153の長軸方向全幅に亘って切れ刃を形成し得る。そして、先端部153の長軸方向全幅に亘って交差角度τが所定角度(例えば60度)以下となる切れ刃が形成できる場合には、穿刺時に先端部153が通過することにより患者が感じる痛みを更に軽減することができる。
<実施形態4>
最後に、本発明の一実施形態としての、穿刺針101の製造方法について説明する。図12は、本実施形態としての、穿刺針101の製造方法を示すフローチャートである。図12に示すように、穿刺針101の製造方法は、穿刺針101の刃付け前の状態である、棒状部材のうち中空棒状部材としての筒状部材を得る筒状部材取得工程S1と、筒状部材の少なくとも一方の端部を回転する砥石の研削表面に摺接させることにより、この一方の端部に刃面104(図6等参照)を形成し、穿刺針101を形成する刃面形成工程S2と、を含むものである。なお、本実施形態の穿刺針101の製造方法では、刃面形成工程S2の後に、形成した穿刺針101を電解研磨処理等の各種研磨処理を用いて研磨する研磨工程S3を更に含むものである。
筒状部材取得工程S1は、各種公知の方法により行うことができ、例えば、帯状をなす金属製の板材をプレス成形機に受け入れる受入工程S1−1と、このプレス成形機により、板材を連続的にプレス成形し、その板材に一部が繋がった状態の複数の管体を得るプレス成形工程S1−2と、管体の継ぎ目の部分を溶接又は接着剤により接着する接合工程S1−3と、管体の中心軸が略直線になるようにその管体の形状を矯正する矯正工程S1−4と、板材から管体を分離して、穿刺針101の刃付け前の状態である筒状部材を得る分離工程S1−5と、を含むものとすることができる。
刃面形成工程S2は、第1刃面部5及び第2刃面部6(図5等参照)を形成する第1工程S2−1と、第3刃面部107(図5等参照)を形成する第2工程S2−2と、第4刃面部21及び第5刃面部22(図5等参照)を形成する第3工程S2−3と、を含むものである。図13は、刃面形成工程S2において第1、2、3、4及び5刃面部5、6、107、21及び22を形成する方法の概要を示す概要図であり、図13(a)は第1工程S2−1において原形刃面を形成する方法を示し、図13(b)は第1工程S2−1において第2刃面部6を形成する方法を示し、図13(c)は第1工程S2−1において第1刃面部5を形成する方法を示し、図13(d)は第2工程S2−2において第3刃面部107を形成する方法を示し、図13(e)は第3工程S2−3において第5刃面部22を形成する方法を示し、図13(f)は第3工程S2−3において第4刃面部21を形成する方法を示している。
図12、図13に示すように、刃面形成工程S2の第1工程S2−1は、上述した筒状部材取得工程S1において形成された筒状部材80の端部に、穿刺針101の刃面104を形成する前の原形刃面を形成する原形刃面形成工程S2−1−1と、第2刃面部6を形成する第2刃面部形成工程S2−1−2と、第1刃面部5を形成する第1刃面部形成工程S2−1−3と、を含むものである。
原形刃面形成工程S2−1−1では、筒状部材80の端部に、砥石による研削加工により、筒状部材80の中心軸線Yに対して傾斜する、原形刃面としての平面状の斜面を形成する。本実施形態の原形刃面形成工程S2−1−1では、筒状部材80は回動させず、かつ、筒状部材80の中心軸線Yの砥石の研削表面に対する傾倒角度も変動させずに、筒状部材80の端部を砥石の研削表面に摺接させることにより、原形刃面を形成する。但し、この原形刃面は、上述した筒状部材取得工程S1におけるプレス成形工程S1−2において形成するようにしてもよい。また、原形刃面は、砥石による研削加工に代えて、ワイヤカット加工等により形成することも可能である。なお、図13(a)〜(f)では、回転する砥石の研削表面を二点鎖線「G」により表している。
第2刃面部形成工程S2−1−2及び第1刃面部形成工程S2−1−3では、高速で回転する砥石を移動させながら、砥石の研削表面Gに対して、筒状部材80の一方の端部に位置する原形刃面形成工程S2−1−1により形成された原形刃面を摺接させることにより研削を行い(プランジオシレーション研削)、第2刃面部6及び第1刃面部5を形成する。
具体的に、第2刃面部形成工程S2−1−2及び第1刃面部形成工程S2−1−3では、筒状部材80の中心軸線Yを中心に筒状部材80を回動させると共に筒状部材80の中心軸線Yの砥石の研削表面Gに対する傾倒角度を変動させながら、横断面の外形が略円形状の筒状部材80の一方の端部の原形刃面を砥石の研削表面Gに摺接させることにより、曲面で構成された刃面部としての第2刃面部6及び第1刃面部5(図5、図6等参照)を形成する(図13(b)、(c)参照)。なお、第2刃面部形成工程S2−1−2及び第1刃面部形成工程S2−1−3では、筒状部材80の回動及び傾斜角度の変動によっても、砥石の研削表面Gと筒状部材80との摺接が維持されるように、砥石を筒状部材80に近づくように移動させる(図13(b)及び図13(c)の矢印「N1」参照)。
より具体的に、第2刃面部形成工程S2−1−2は、筒状部材80を筒状部材80の中心軸線Yを中心に一方向(図13(b)の矢印「L1」参照)に回動させると共に筒状部材80の中心軸線Yの砥石の研削表面Gに対する傾倒角度を一傾倒方向(図13(b)の矢印「M1」参照)に変動させながら、筒状部材80の一方の端部の原形刃面を、砥石の研削表面Gに摺接させることにより行うことができる。この第2刃面部形成工程S2−1−2により、第2刃面部6が形成される。なお、第2刃面部形成工程S2−1−2において、筒状部材80の回動速度及び傾倒速度は、一定とすることも、研削位置に応じて変動させることも可能であるが、刺通抵抗となる稜線(ジャンクション)が形成され難いように一定速度とすることが好ましい。
また、筒状部材80は、第2刃面部形成工程S2−1−2後に、第1刃面部形成工程S2−1−3を開始する位置及び姿勢に再セットされ、再セット完了後に第1刃面部形成工程S2−1−3を開始することができる。
第1刃面部形成工程S2−1−3は、筒状部材80を筒状部材80の中心軸線Yを中心に、第2刃面部形成工程S2−1−2の際の一方向とは逆方向(図13(c)の矢印「L2」参照)に筒状部材80を回動させると共に、筒状部材80の中心軸線Yの砥石の研削表面Gに対する傾倒角度を、第2刃面部形成工程S2−1−2の際の一傾倒方向と同方向(図13(c)の矢印「M1」参照)に変動させながら、筒状部材80の一方の端部であって第1刃面部5と開口11(図5等参照)を挟んで対向する位置を、砥石の研削表面Gに摺接させることにより行うことができる。この第1刃面部形成工程S2−1−3により、第1刃面部5が形成されると共に、第1刃縁9(図5等参照)が形成される。なお、上述した第2刃面部形成工程S2−1−2と同様、第1刃面部形成工程S2−1−3において、筒状部材80の回動速度及び傾倒速度は、一定とすることも、研削位置に応じて変動させることも可能であるが、刺通抵抗となる稜線(ジャンクション)が形成され難いように一定速度とすることが好ましい。
なお、本実施形態では、第2刃面部形成工程S2−1−2の後に、第1刃面部形成工程S2−1−3を行っているが、第1刃面部形成工程を第2刃面部形成工程よりも前に行うようにしてもよい。
本実施形態の刃面形成工程S2の第2工程S2−2では、筒状部材80の中心軸線Yを中心に筒状部材80を回動させずに筒状部材80の中心軸線Yの砥石の研削表面Gに対する傾倒角度を変動させながら、筒状部材80の一方の端部を砥石の研削表面に摺接させることにより、曲面を有する刃面部(本実施形態では凸型曲面のみで構成された刃面部)としての第3刃面部107(図5、図6等参照)を形成する。すなわち、第2工程S2−2は、第3刃面部形成工程S2−2−1を含むものである。
第2工程S2−2は、第1工程S2−1の第1刃面部形成工程S2−1−3の完了後に実行される。具体的には、図13(d)に示すように、筒状部材80の中心軸線Yを中心に筒状部材80を回動させずに、筒状部材80の中心軸線Yの砥石の研削表面Gに対する傾倒角度を、第2刃面部形成工程S2−1−2及び第1刃面部形成工程S2−1−3における一傾倒方向と同方向(図13(d)の矢印「M1」参照)に変動させながら、筒状部材80の一方の端部のうち第1刃面部5及び第2刃面部6の基端側(刃縁9が形成されている先端側とは反対側)の部分を砥石の研削表面Gに摺接させることにより行うことができる。
なお、上述したように、穿刺針101の第3刃面部107は、側面視(図6(b)参照)において曲率が異なる先端側部107aと基端側部107bとを備えている(図5、図6等参照)。したがって、第2工程S2−1において、筒状部材80を一傾倒方向(図13(d)の矢印「M1」参照)に変動させる傾倒速度を、先端側部107aを形成する際と、基端側部107bを形成する際と、で変化させる。これにより、先端側部107aと基端側部107bとを形成することができる。
本実施形態の刃面形成工程S2の第3工程S2−3では、筒状部材80の中心軸線Yを中心に筒状部材80を回動させると共に筒状部材80の中心軸線Yの砥石の研削表面Gに対する傾倒角度を変動させながら、筒状部材80の一方の端部のうち、第1刃面部5及び第2刃面部6の裏側を砥石の研削表面Gに摺接させることにより、曲面で構成された刃面部としての第4刃面部21及び第5刃面部22を形成する。
具体的に、本実施形態の第3工程S2−3は、第5刃面部22を形成する第5刃面部形成工程S2−3−1と、第4刃面部21を形成する第5刃面部形成工程S2−3−2と、を含むものである(図12、図13(e)及び図13(f)参照)。
図13(e)に示すように、第5刃面部形成工程S2−3−1は、筒状部材80を筒状部材80の中心軸線Yを中心に一方向(本実施形態では第2刃面部形成工程S2−1−2での回動方向と同じであり、図13(e)の矢印「L1」参照)に回動させると共に筒状部材80の中心軸線Yの砥石の研削表面Gに対する傾倒角度を一傾倒方向(本実施形態では第2刃面部形成工程S2−1−2での傾倒方向と同じであり、図13(e)の矢印「M1」参照)に変動させながら、筒状部材80の一方の端部のうち第2刃面部6の裏側を、砥石の研削表面Gに摺接させることにより行うことができる。この第5刃面部形成工程S2−3−1により、第5刃面部22が形成されると共に、第4刃縁25が形成される。なお、第5刃面部形成工程S2−3−1において、筒状部材80の回動速度及び傾倒速度は、一定とすることも、研削位置に応じて変動させることも可能であるが、刺通抵抗となる稜線(ジャンクション)が形成され難いように一定速度とすることが好ましい。
筒状部材80は、第5刃面部形成工程S2−3−1後に、第4刃面部形成工程S2−3−2を開始する位置及び姿勢に再セットされ、再セット完了後に第4刃面部形成工程S2−3−2を開始することができる。
第4刃面部形成工程S2−3−2は、筒状部材80を筒状部材80の中心軸線Yを中心に、第5刃面部形成工程S2−3−1の際の一方向とは逆方向(本実施形態では第1刃面部形成工程S2−1−3での回動方向と同じであり、図13(f)の矢印「L2」参照)に筒状部材80を回動させると共に、筒状部材80の中心軸線Yの砥石の研削表面Gに対する傾倒角度を、第5刃面部形成工程S2−3−1の際の一傾倒方向と同方向(図13(f)の矢印「M1」参照)に変動させながら、筒状部材80の一方の端部のうち第1刃面部5の裏側を、砥石の研削表面Gに摺接させることにより行うことができる。この第4刃面部形成工程S2−3−2により、第4刃面部21が形成されると共に、第2刃縁23及び第3刃縁24が形成される。なお、第5刃面部形成工程S2−3−1と同様、第4刃面部形成工程S2−3−2においても、筒状部材80の回動速度及び傾倒速度は、一定とすることも、研削位置に応じて変動させることも可能であるが、刺通抵抗となる稜線(ジャンクション)が形成され難いように一定速度とすることが好ましい。
なお、本実施形態では、第5刃面部形成工程S2−3−1の後に、第4刃面部形成工程S2−3−2を行っているが、第4刃面部形成工程を第5刃面部形成工程よりも前に行うようにしてもよい。
また、本実施形態の第5刃面部形成工程S2−3−1及び第4刃面部形成工程S2−3−2では、筒状部材80の回動及び傾斜角度の変動によっても、砥石の研削表面Gと筒状部材80との摺接が維持されるように、砥石を筒状部材80に近づくように移動させる(図13(e)及び図13(f)の矢印「N1」参照)。
このように、本実施形態としての穿刺針101の製造方法における刃面形成工程S2では、砥石の回転、砥石の移動、筒状部材80の回動、及び筒状部材80の傾倒角度の変動を同時に行いながら筒状部材80の端部を砥石の研削表面Gに摺接させることにより、第1刃面部5、第2刃面部6、第4刃面部21及び第5刃面部22を形成することができる。また、本実施形態としての穿刺針101の製造方法における刃面形成工程S2では、筒状部材80を回動させずに、砥石の回転、砥石の移動及び筒状部材80の傾倒角度の変動を同時に行いながら、筒状部材80の端部を砥石の研削表面Gに摺接させることにより、第3刃面部107を形成することができる。
なお、本実施形態では、上述した実施形態2の穿刺針101の製造方法を示したが、実施形態3の穿刺針51の第1刃面部55及び第2刃面部56(図8等参照)についても、実施形態2の第1刃面部5及び第2刃面部6の形成方法と同様の方法により形成することができる。更に、実施形態3の穿刺針51における第3刃面部57の平面部57a(図8等参照)については、上述した原形刃面を形成する形成方法と同様の方法により形成可能であり、曲面部57b(図8等参照)についても、上述した第1刃面部5及び第2刃面部6の形成方法と同様、砥石の回転、砥石の移動、筒状部材の回動、及び筒状部材の傾倒角度の変動を同時に行いながら砥石の研削表面Gに摺接させることにより、形成することができる。また更に、図15及び図16に示す穿刺針151については、筒状部材取得工程S1において又は原形刃面形成工程S2−1−1の直前に、円筒状の筒状部材の一端部をプレス加工することにより、刃面154が形成される一端部の断面外形を略楕円形状にすることができる。また、図10、図11に示す穿刺針71については、上述した筒状部材取得工程S1に代えて、中実棒状部材を形成する公知の中実棒状部材取得工程により中実棒状部材を形成し、この中実棒状部材の一端部に、上述した刃面形成工程S2と同様の方法により刃面74を形成することができる。