以下、本発明に係る医療用の穿刺針及び医療用の穿刺針の製造方法の実施形態について、図1〜図22を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
<実施形態1>
まず、本発明に係る医療用の穿刺針の一実施形態としての穿刺針1について説明する。図1は、穿刺針1を示す図である。具体的に、図1(a)は、穿刺針1の正面側の平面図、図1(b)は、穿刺針1の側面図、図1(c)は、穿刺針1の背面側の平面図を示すものである。図1(d)は、穿刺針1の斜視図である。また、図2(a)、(b)は、それぞれ図1(a)、(b)に示す穿刺針1の本体部2における先端部3近傍の拡大図である。
図1(a)〜図1(d)、図2(a)、図2(b)に示すように、穿刺針1は、棒状の本体部2を備えており、この本体部2の先端部3に刃面4が形成されている。本体部2は、本体部2の中心軸線Oと平行な軸線方向(以下、「中心軸線方向A」と記載する。)において連通する中空部10を区画している。
本体部2は、中空棒状、すなわち筒状の管体である。より具体的に、本実施形態の本体部2は、略円形状の断面外形を有する管体である。なお、ここで言う「断面外形」の「断面」とは、本体部2の中心軸線Oと直交する横断面を意味している。
刃面4は複数の刃面部により構成されており、図1(a)〜図1(d)、図2(a)、図2(b)に示すように、本実施形態の刃面4は、一つの平面により構成されている第1刃面部5、1つの平面により構成されている第2刃面部6、1つの平面により構成されている第3刃面部7、並びに、第1刃面部5及び第2刃面部6と第3刃面部7とを連結する複数の連結刃面部15、を備えている。本実施形態の各連結刃面部15は、1つの平面により構成されている。また、本実施形態の複数の連結刃面部15は、第1刃面部5と第3刃面部7とを連結する第1連結刃面部15aと、第2刃面部6と第3刃面部7とを連結する第2連結刃面部15bと、を備えている。
第1刃面部5及び第2刃面部6は、刃面4のうち、本体部2の先端側に形成されている。また、第1刃面部5及び第2刃面部6は、互いが交差する稜線により針先8を一端とする刃縁9を形成している。なお、「針先」とは、中心軸線方向Aにおける穿刺針1の先端、すなわち本体部2の先端を意味すると共に、刃面4の先端である刃先を意味するものである。したがって、以下、「先端側」とは、中心軸線方向Aにおける針先側を意味し、「基端側」とは、中心軸線方向Aにおける針先側とは反対側を意味する。
第1刃面部5は、本体部2の基端側で、第1連結刃面部15aと連続している。第2刃面部6は、本体部2の基端側で、第2連結刃面部15bと連続している。
第3刃面部7は、刃面4のうち、本体部2の基端側に形成されており、刃面4の基端を構成している。具体的に、第3刃面部7は、本体部2の基端側で、本体部2の筒状の外周面と連続している。また、第3刃面部7は、本体部2の先端側で連結刃面部15と連続している。より具体的に、第3刃面部7は、本体部2の先端側で、第1連結刃面部15a及び第2連結刃面部15bと連結している。
複数の連結刃面部15は、複数の第1連結刃面部15aと、複数の第2連結刃面部15bと、を有している。具体的に、本実施形態の複数の連結刃面部15は計4つであり、2つの第1連結刃面部15aと、2つの第2連結刃面部15bと、を有している。また、本実施形態の各連結刃面部15は、上述したように、一平面により構成された平面刃面部であり、2つの第1連結刃面部15aは、連続して形成された2つの平面刃面部により構成されており、2つの第2連結刃面部15bもまた、連続して形成された2つの平面刃面部により構成されている。
以上のように、本実施形態の刃面4は、第1刃面部5、第2刃面部6、複数の連結刃面部15、及び第3刃面部7により構成されている。そして、図2(a)等に示すように、刃面4は、先端側に第1刃面部5及び第2刃面部6を備え、基端側に第3刃面部7を備えている。また、本実施形態の第1刃面部5、第2刃面部6、各連結刃面部15、及び第3刃面部7それぞれは、平面により構成されている。つまり、本実施形態の刃面4は、平面状の刃面部を連続して形成されたものである。なお、本体部2の中空部10のうち本体部2の先端側の一端である先端開口11は、刃面4の内縁により区画されている。より具体的に、本実施形態の先端開口11は、第1刃面部5の内縁、第2刃面部6の内縁、複数の連結刃面部15の内縁、及び第3刃面部7の内縁により区画されている。
ここで、図2(a)、図2(b)に示すように、第1刃面部5及び第2刃面部6は、刃面4が形成されている刃面領域Tの中心軸線方向Aにおける中間位置Hよりも本体部2の基端側まで延在している。なお、「刃面領域T」とは、刃面の外縁により区画される領域を意味し、本実施形態では、刃面4の外縁により区画される領域、すなわち、第1刃面部5の外縁、第2刃面部6の外縁、複数の連結刃面部15の外縁、及び第3刃面部7の外縁により区画される領域を意味する。また、「中間位置H」とは、刃面領域Tが中心軸線方向Aにおいて延在する範囲の中間となる位置を意味しており、本実施形態では、針先8と第3刃面部7の基端との中心軸線方向Aにおける中間の位置を意味する。
このように、第1刃面部5及び第2刃面部6を中間位置Hよりも本体部2の基端側まで延在する構成とすれば、刃面4において、刃縁9を形成する第1刃面部5及び第2刃面部6の中心軸線方向Aの長さを、比較的大きく確保することができる。第1刃面部5及び第2刃面部6の中心軸線方向Aにおける長さを大きくすることができれば、第1刃面部5及び第2刃面部6それぞれを平面により構成したとしても、刃先角度αを比較的小さくすることが可能となり、刃先の薄い穿刺針1を実現することができる。なお、ここで言う「刃先角度α」とは、中心軸線方向Aと直交する方向Bの一端に針先8が位置する本体部2の側面視(本実施形態の穿刺針1では図1(b)、図2(b)に示す側面視)において、刃縁9と、この刃縁9の裏面とが針先8にて交わる角度を意味している。
また、本実施形態では、平面状の第1刃面部5及び第2刃面部6の両方が中間位置Hよりも本体部2の基端側まで延在する構成であるが、この構成に限られるものではなく、第1刃面部5及び第2刃面部6の少なくともいずれか一方の平面状の刃面部が、中間位置Hよりも本体部2の基端側まで延在する構成であればよい。したがって、第1刃面部及び第2刃面部のうちいずれか一方のみを平面により形成し、この平面状の刃面部を中間位置Hよりも本体部2の基端側まで延在する構成とすると共に、他方の刃面部を平面又は曲面により形成し、この他方の刃面部を、中間位置Hよりも本体部2の基端側まで延在しない構成とすることもできる。但し、本実施形態のように平面状の第1刃面部5及び第2刃面部6の両方が中間位置Hよりも本体部2の基端側まで延在する構成とすれば、いずれか一方の平面状の刃面部のみが中間位置Hよりも本体部2の基端側まで延在する構成とする場合と比較して、刃先角度αが小さい構成をより容易に実現することができる。そのため、本実施形態のように、第1刃面部5及び第2刃面部6の両方を平面により形成し、第1刃面部5及び第2刃面部6の両方が中間位置Hよりも本体部2の基端側まで延在する構成とすることが好ましい。
なお、刃面4は、針先8から中間位置Hよりも本体部2の基端側の位置まで延在する先端側の刃面部(本実施形態では第1刃面部5及び第2刃面部6)の他に、この先端側の刃面部に対して基端側に位置する別の刃面部があればよく、この別の刃面部の構成としては、本実施形態の連結刃面部15や第3刃面部7の構成に限られるものではない。したがって、例えば、本実施形態の第3刃面部7は平面により構成されているが、凸状又は凹状の曲面により構成されていてもよい。また、本実施形態の穿刺針1では、第1刃面部5及び第2刃面部6それぞれと、第3刃面部7と、の間に連結刃面部15を有するが、連結刃面部15を有さない構成であってもよい。
但し、第1刃面部5及び第2刃面部6の少なくとも一方の刃面部が刃面領域Tの中間位置H(図2参照)よりも基端側まで延在する構成の場合、連結刃面部15を全く設けない構成とすると、上述の一方の刃面部と第3刃面部との間の稜線により形成される段差が大きくなる可能性が高い。かかる場合には、この段差の部分が大きな刺通抵抗となるおそれがある。そのため、刃面領域Tの中間位置H(図2参照)よりも基端側まで延在する第1刃面部5及び第2刃面部6を設ける場合には、本実施形態のように、第1刃面部5と第3刃面部7との間、及び第2刃面部6と第3刃面部7との間それぞれに、連結刃面部15を設けることが好ましい。連結刃面部15を設ければ、第1刃面部5と第3刃面部7との間、及び第2刃面部6と第3刃面部7との間に、大きな段差が形成されることを抑制することができる。
更に、第1刃面部5と第3刃面部7との間、及び第2刃面部6と第3刃面部7との間それぞれに、本実施形態のように、複数の連結刃面部15(本実施形態では複数の第1連結刃面部15a及び複数の第2連結刃面部15b)を設けることが特に好ましい。このようにすれば、第1刃面部5と第3刃面部7との間、及び、第2刃面部6と第3刃面部7との間を、大きな段差が形成されることなく、より滑らかに連結することが可能となる。したがって、本実施形態では2つの第1連結刃面部15a及び2つの第2連結刃面部15bを有する構成であるが、3つ以上の第1連結刃面部15a及び3つ以上の第2連結刃面部15bを有する構成としてもよい。3つ以上の第1連結刃面部15a及び3つ以上の第2連結刃面部15bを有する穿刺針についての詳細は後述する(図5等参照)。
また更に、本実施形態の各連結刃面部15は、平面により構成された平面刃面部であるが、曲面により構成された曲面刃面部を含むものであってもよく、連結刃面部15すべてを曲面刃面部により構成するものであってもよい。連結刃面部15を曲面刃面部とした構成の詳細についても後述する(図8及び図9参照)。
ここで、刃面4の内縁の形状について説明する。刃面4の内縁は、図1(b)及び図2(b)に示す穿刺針1の側面視において、内縁の針先8側(中心軸線方向Aにおける先端側と同じ)の一端、換言すれば刃縁9の基端、から凹状に湾曲して延在する湾曲部を備えている。
より具体的に、刃面4の内縁は、第1刃面部5の内縁及び複数の第1連結刃面部15aの内縁により構成される第1湾曲部13aと、第2刃面部6の内縁及び複数の第2連結刃面部15bの内縁により構成される第2湾曲部13bと、の2つの湾曲部を有しており、図1(b)、図2(b)の側面視では、第2湾曲部13bのみ視認できる状態となっている。
そして、図2(a)に示すように、第1湾曲部13a及び第2湾曲部13bそれぞれは、中心軸線方向Aにおける刃面4の内縁の中間位置Vよりも本体部2の基端側まで延在している。
このように、穿刺針1の刃面4の内面が、中心軸線方向Aと直交する方向の一端に針先8が位置する本体部2の側面視(本実施形態の穿刺針1では図1(b)、図2(b)に示す側面視)において、凹状の湾曲部を有する構成とすれば、湾曲部が無い構成と比較して、体表面上の切り口から体内へ雑菌等が入り難くなる。具体的に、穿刺針1の穿刺時において体表面に形成される切り口を第1湾曲部13a及び第2湾曲部13bが通過する際に、切り口の縁部は、第1湾曲部13a及び第2湾曲部13bによって切り口を押し広げる方向に押圧される。これにより、第1湾曲部13a及び第2湾曲部13bが体表面を通過する際に、刃面4と共に切り口の縁部が体内側に巻き込まれることにより体内側に押し込まれることを抑制することができ、雑菌等による感染のリスクを軽減することができる。
そして、図1(b)及び図2(b)の側面視において、刃面4の内縁の針先側の一端から凹状に湾曲して延在する湾曲部(本実施形態では第1湾曲部13a及び第2湾曲部13b)が、中間位置Vよりも本体部2の基端側まで延在する構成とすれば、凹状の湾曲部が無い構成や凹状の湾曲部が中間位置Vよりも基端側まで延在していない構成と比較して、同側面視において、刃面4と刃面4の裏面との間の厚みを薄肉化しつつ、刃先角度αが小さい構成を実現し易くなる。つまり、刺通抵抗の小さい刃面4の形状が実現し易くなる。
本体部2の材料としては、ステンレス鋼、アルミニウムまたはアルミニウム合金、チタンまたはチタン合金等の金属材料を使用することができる。
以下、本実施形態の各構成及び特徴部についての更なる詳細を説明する。
[本体部2]
本実施形態の本体部2は、中心軸線方向Aにおいて、内周面の内径及び外周面の外径が一様な管体であり、中心軸線方向Aにおける基端側の端部は、針基等を介して例えばシリンジなどの医療用器具に接続される。したがって、穿刺針1は、本体部2に接続された針基等を備える構成であってもよい。
なお、本実施形態の本体部2では、内周面が中空部10を区画し、内周面の内径及び外周面の外径が中心軸線方向Aにおいて一様な構成であるが、この構成に限られるものではない。例えば、本体部2の内周面の内径及び外周面の外径が、中心軸線方向Aにおいて、先端側に向かって漸減する構成としてもよい。また、例えば、本体部2の外径を、中心軸線方向Aにおいて先端側に向かうにつれて漸減するテーパー形状とし、本体部2の内径を、中心軸線方向Aにおいて一様な構成とすることもできる。更に、中心軸線方向Aにおける本体部2の一部の領域に、中心軸線方向Aにおいて先端側に向かうにつれて内径が漸減する、又は漸増する部位を設けるなど、本体部2の内径及び外径は、穿刺針1の用途等に応じて、各種の構成を採用することが可能である。
また、本実施形態の穿刺針1は、本体部2が基端から先端まで連通する中空部10を区画する中空針であるが、中空部を区画しない中実針であってもよい。中実針とした場合の構成については後述する(図11〜図13参照)。
[第1刃面部5及び第2刃面部6]
図2(a)に示すように、第1刃面部5及び第2刃面部6のそれぞれは、中心軸線方向Aにおける本体部2の基端側で、連結刃面部15を介して第3刃面部7と連続している。より具体的に、第1刃面部5は、中心軸線方向Aにおける本体部2の基端側で、複数の第1連結刃面部15aを介して第3刃面部7と連続している。また、第2刃面部6は、中心軸線方向Aにおける本体部2の基端側で、複数の第2連結刃面部15bを介して第3刃面部7と連続している。
図3(a)、(b)、(c)、(d)、(e)は、それぞれ図2(a)におけるI−I断面図、II-II断面図、III-III断面図、IV-IV断面図、V-V断面図である。なお、図3に示す符号「X」は、本体部2の中心軸線O及び針先8を含む1つの仮想平面であり、以下「中心平面X」と記載する。本実施形態の中心平面Xは、針先8のみならず、刃縁9をも含む平面であり、本実施形態の本体部2は、中心平面Xを挟んで対称の構造を有している。また、図3では、刃面部間の稜線を実線により示している。
図3(a)は、図2(a)のI-I断面、すなわち、中心軸線方向Aにおいて刃縁9が形成されている位置での、中心軸線方向Aと直交する断面である。図3(a)に示すように、第1刃面部5及び第2刃面部6それぞれは、中心平面Xに対して角度θ1だけ傾斜して延在している。この角度θ1は、45度〜75度の範囲とすることが好ましく、50度〜60度の範囲とすることがより好ましい。第1刃面部5の外縁及び第2刃面部6の外縁は、第1刃面部5及び第2刃面部6のそれぞれと本体部2の外周面とが互いが交差する稜線によって切れ刃が形成しているが、角度θ1が45度未満の場合には、第1刃面部5及び第2刃面部6それぞれと本体部2の外周面とがなす切れ刃角度βが大きくなり、鋭利な切れ刃を形成し難い。また、角度θ1が75度よりも大きい場合には、穿刺針1の正面視(図1(a)、図2(a)参照)における、第1刃面部5の外縁と針先8とで形成される見かけ角度γ1(図2(a)参照)、及び、第2刃面部6の外縁と針先8とで形成される見かけ角度γ2(図2(a)参照)が大きくなり、針先8での刺通抵抗が大きくなる。
図3(b)は、図2(a)のII-II断面、すなわち、中心軸線方向Aにおいて先端開口11がある位置での、第1刃面部5及び第2刃面部6を含み、かつ、連結刃面部15及び第3刃面部7を含まない、中心軸線方向Aと直交する断面である。図3(b)に示すように、図2(a)のII-II断面における第1刃面部5及び第2刃面部6それぞれの、中心平面Xに対する角度θ2は、角度θ1と等しい。
図3(c)は、図2(a)のIII-III断面、すなわち、中心軸線方向Aにおいて先端開口11がある位置での、第1刃面部5、第2刃面部6及び連結刃面部15を含み、かつ、及び第3刃面部7を含まない、中心軸線方向Aと直交する断面である。図3(c)に示すように、図2(a)のIII-III断面における第1刃面部5及び第2刃面部6それぞれの、中心平面Xに対する角度θ3は、角度θ1及び角度θ2と等しい。
このように、中心軸線方向Aと直交する断面における第1刃面部5及び第2刃面部6それぞれの中心平面Xに対する角度θは、中心軸線方向Aの位置によらず一定である。
[連結刃面部15]
本実施形態の複数の連結刃面部15は、上述したように、第1刃面部5と第3刃面部7とを連結する複数の第1連結刃面部15aと、第2刃面部6と第3刃面部7とを連結する複数の第2連結刃面部15bと、で構成されている。また、本実施形態における各連結刃面部15は、平面により構成された平面刃面部である。そして、図1(a)及び図2(a)等に示すように、先端開口11の周方向における各連結刃面部15の輪郭は、隣接する刃面部との間で形成された稜線であり、各連結刃面部15の先端開口11の周方向両側に位置する稜線は、中心軸線Oに沿って延在している。換言すれば、先端開口11の周方向両側に位置する稜線により画定された各連結刃面部15も、中心軸線Oに沿って延在している。そして、各連結刃面部15の中心軸線Oに沿う延在方向における長さは、この延在方向と直交する方向の長さ(以下、「幅」と記載する)よりも長い。つまり、各連結刃面部15は、中心軸線Oに沿った延在方向において細長い細長形状を有している。更に、各連結刃面部15は、図1(a)及び図2(a)に示す正面視にて、中心軸線Oに沿う延在方向において基端側に向かうにつれて幅が漸増する形状を有している。
ここで、「中心軸線Oに沿う」とは、中心軸線Oに略平行する状態のみならず、中心軸線Oに対してなす角度が比較的小さい状態(30度以下)を含む意味である。
このように、各連結刃面部15と、その連結刃面部15と隣接する刃面部と、の間に形成される稜線を中心軸線Oに沿って延在する構成とすれば、その稜線が中心軸線Oに沿わずに延在する構成と比較して、その稜線部分による刺通抵抗の増大を抑制することができる。
次に、本実施形態において、各連結刃面部15と、この連結刃面部15と隣接する刃面部と、の間で形成される稜線の具体例と、その延在方向について説明する。
まず、本実施形態における第1連結刃面部15aは2つあり、図2(a)に示すように、2つの第1連結刃面部15aは、第1刃面部5と互いが交差する稜線を境界として連続する先端側の第1連結刃面部15a1と、第3刃面部7と互いが交差する稜線を境界として連続する基端側の第1連結刃面部15a2と、で構成されている。そして、先端側の第1連結刃面部15a1と基端側の第1連結刃面部15a2とは、互いが交差する稜線を境界として連続している。
また、本実施形態における第2連結刃面部15bも2つあり、図2(a)に示すように、2つの第2連結刃面部15bは、第2刃面部6と互いが交差する稜線を境界として連続する先端側の第2連結刃面部15b1と、第3刃面部7と互いが交差する稜線を境界として連続する基端側の第2連結刃面部15b2と、で構成されている。そして、先端側の第2連結刃面部15b1と基端側の第2連結刃面部15b2とは、互いが交差する稜線を境界として連続している。
各連結刃面部15と、この各連結刃面部15と隣接する別の刃面部(本実施形態では第1刃面部5、第2刃面部6、連結刃面部15又は第3刃面部7)との間の稜線を「尾根部」とした場合に、本実施形態における各尾根部の延在方向の詳細について説明する。
本実施形態では、第1刃面部5と、先端側の第1連結刃面部15a1との間の第1尾根部16は、中心軸線Oに沿って延在している。また、先端側の第1連結刃面部15a1と、基端側の第1連結刃面部15a2との間の第2尾根部17も、中心軸線Oに沿って延在している。更に、第3刃面部7と、基端側の第1連結刃面部15a2との間の第3尾根部18も、中心軸線Oに沿って延在している。
また更に、第2刃面部6と先端側の第2連結刃面部15b1との間の第4尾根部19、先端側の第2連結刃面部15b1と基端側の第2連結刃面部15b2との間の第5尾根部20、及び、第3刃面部7と基端側の第2連結刃面部15b2との間の第6尾根部21、についても、中心軸線Oに沿って延在している。
このように、本実施形態では全ての尾根部(本実施形態では第1尾根部16、第2尾根部17、第3尾根部18、第4尾根部19、第5尾根部20及び第6尾根部21)が中心軸線Oに沿って延在している。
本実施形態では、第1尾根部16、第2尾根部17、第3尾根部18、第4尾根部19、第5尾根部20及び第6尾根部21の全てが、中心軸線Oに沿って延在しているが、この構成に限られるものではなく、尾根部の一部のみが中心軸線Oに沿って延在する構成としてもよい。かかる場合には、先端開口11の基端側における刃面4の内縁(刃面4のヒール部分と称される場合がある)での刺通抵抗の増大を抑制する目的で、刃面4の内縁の基端に近い尾根部、すなわち、本実施形態では第3刃面部7及び連結刃面部15が交差する稜線により形成された第3尾根部18及び第6尾根部21を、少なくとも中心軸線Oに沿って延在する構成とすることが好ましい。但し、穿刺時に生じる全ての刺通抵抗を考慮すると、本実施形態のように、連結刃面部15を設けることにより形成される全ての尾根部を中心軸線Oに沿う構成とすることが特に好ましい。
また、第3刃面部7と連結刃面部15との間に形成される尾根部のうち本体部2の基端側の一端は、中心軸線方向Aにおいて、刃面4の内縁における本体部2の基端側の一端(図2(a)における点「R1」参照)と、刃面4の基端(図2(a)における点「R2」参照)と、の間に位置する。なお、刃面4の基端とは、刃面4の外縁における本体部2の基端側の一端を意味している。
より具体的に、本実施形態の第3尾根部18及び第6尾根部21の基端側の一端が、中心軸線方向Aにおいて、図2(a)に示す点R1と点R2との間に位置している。但し、全ての尾根部の本体部2の基端側の一端が、中心軸線方向Aにおいて、刃面4の内縁における本体部2の基端側の一端となる点R1と、刃面4の基端となる点R2と、の間に位置することがより好ましい。尾根部がこのような構成となるように、第1刃面部5及び第2刃面部6と第3刃面部7とを滑らかに連結する連結刃面部15を形成すれば、刃面領域Tにおける、第1刃面部5及び第2刃面部6の中心軸線方向Aにおける割合をより大きく確保することができる。これにより、より刃先角度αの小さい刃面形状が実現し易くなる。なお、全ての尾根部の基端側の一端が、中心軸線方向Aにおいて、刃面の内縁における基端側の一端と、刃面の基端と、の間に位置する構成を有する穿刺針についての詳細は後述する(図10等参照)。
更に、図2(a)に示すように、正面視において、中心軸線Oに沿って延在する尾根部の中心軸線Oに対する角度ρ1(例えば、図2(a)において二点鎖線で示す延長線Uと中心軸線Oとがなす角度)は、同正面視において、第1刃面部5又は第2刃面部6の外縁上の点Nと針先8とを通過する仮想直線D1の中心軸線Oに対する角度ρ2よりも小さいことが好ましい。ここで、第1刃面部5又は第2刃面部6の外縁上の点Nとは、同正面視において、刃縁9の基端を通り中心軸線方向Aと直交する仮想直線D2が第1刃面部5又は第2刃面部6の外縁と交わる点である。図2(a)では、仮想直線D2を二点鎖線により示している。なお、図2(a)では、点Nを、第2刃面部6の外縁上の点としているが、第1刃面部5の外縁上の点としてもよい。
また更に、本実施形態における複数の第1連結刃面部15aは、図1(a)及び図2(a)に示す正面視において、先端開口11の周方向に沿って連続している。換言すれば、複数の第1連結刃面部15aは、中心軸線Oに沿って延在する延在方向と直交する幅方向に連続している。更に、本実施形態における複数の第2連結刃面部15bについても、同正面視において、先端開口11の周方向に沿って連続している。換言すれば、複数の第2連結刃面部15bも、幅方向に連続している。
なお、中心軸線方向Aにおいて、刃面領域Tの長さに対する第1刃面部5及び第2刃面部6の長さの割合は、50%より大きく、かつ、95%以下とすることが好ましく、50%より大きく、かつ、60%以下とすることがより好ましい。第1刃面部5及び第2刃面部6の割合が95%より大きくなると、連結刃面部15を形成したとしても、第3刃面部7との間に大きな段差が形成されてしまい、刺通抵抗の低減が難しくなる。
以下、中心軸線方向Aと直交する断面における連結刃面部15の構成について説明する。
図3(c)に示すように、図2(a)のIII-III断面における、先端側の第1連結刃面部15a1及び先端側の第2連結刃面部15b1それぞれは、中心平面Xに対して角度δa3をなして傾斜して延在している。また、同断面における、基端側の第1連結刃面部15a2及び基端側の第2連結刃面部15b2それぞれは、中心平面Xに対して角度δb3をなして傾斜して延在している。ここで、角度δb3は、角度δa3よりも大きく、かつ、上述した角度θ1〜θ3よりも大きい。また、角度δa3についても、上述した角度θ1〜θ3よりも大きい。
図3(d)は、図2(a)のIV-IV断面、すなわち、中心軸線方向Aにおける先端開口11の基端の位置での、連結刃面部15及び第3刃面部7を含み、かつ、第1刃面部5及び第2刃面部6を含まない、中心軸線方向Aと直交する断面である。図3(d)に示すように、図2(a)のIV-IV断面における、先端側の第1連結刃面部15a1及び先端側の第2連結刃面部15b1それぞれは、中心平面Xに対して角度δa4をなして傾斜して延在している。また、同断面における、基端側の第1連結刃面部15a2及び基端側の第2連結刃面部15b2それぞれは、中心平面Xに対して角度δb4をなして傾斜して延在している。
ここで、図3(c)における角度δa3は、図3(d)における角度δa4と等しい。また、図3(c)における角度δb3は、図3(d)における角度δb4と等しい。このように、中心軸線方向Aと直交する断面における先端側の第1連結刃面部15a1及び先端側の第2連結刃面部15b1それぞれの中心平面Xに対する角度δaは、中心軸線方向Aの位置によらず一定である。また、中心軸線方向Aと直交する断面における基端側の第1連結刃面部15a2及び基端側の第2連結刃面部15b2それぞれの中心平面Xに対する角度δbは、中心軸線方向Aの位置によらず一定である。
このように、第1刃面部5と第3刃面部7とは、先端側の第1連結刃面部15a1及び基端側の第1連結刃面部15a2によって滑らかに連結されている。また、第2刃面部6と第3刃面部7とは、先端側の第2連結刃面部15b1及び基端側の第2連結刃面部15b2によって滑らかに連結されている。
[刃縁9]
刃縁9は、上述したように、第1刃面部5及び第2刃面部6が交差する稜線により形成される。また、本実施形態の刃縁9は、上述したように、中心平面X上に延在しており、刃縁9の一端である針先8についても、中心平面X上に位置する。
本実施形態のように、穿刺針1の先端を鋭くして刃縁9を設ける構成にすると、穿刺針1を人体へ穿刺する際に、刃縁9や、刃縁9近傍の第1刃面部5の外縁及び第2刃面部6の外縁が、皮膚を切り裂く切り刃として働き、穿刺時に皮膚にかかる抵抗を低減することができる。そのため、穿刺針1が穿刺される患者等が感じる痛みを軽減することができる。
[第3刃面部7]
本実施形態の第3刃面部7は平面により構成されている。具体的に、第3刃面部7は、図2(b)の側面視が、中心軸線方向Aにおいて針先8に向かうにつれ中心軸線Oに近づくように傾斜した直線状の平面である。第3刃面部7の中心軸線方向Aに対する傾斜角度は、中心軸線O全体を含む断面での中心軸線方向Aに対する本体部2の外周面の傾斜角度よりも大きい。
本実施形態では、穿刺針1の本体部2の外径が中心軸線方向Aにおいて一様な構成であり、中心軸線O全体を含む断面で見た場合に、本体部2の外周面は中心軸線方向Aに延在している。従って、第3刃面部7が、中心軸線方向Aに対して傾斜していれば、第3刃面部7の傾斜角度は、本体部2の外壁の傾斜角度よりも大きくなる。但し、穿刺針の本体部を、その外径が中心軸線方向Aにおいて先端側に向かうにつれて漸減又は漸増する構成とする場合には、第3刃面部は、中心軸線方向Aに対して傾斜するのみならず、中心軸線O全体を含む断面での本体部2の外周面に対しても傾斜するように構成する。
なお、本実施形態の第3刃面部7は平面であるが、第3刃面部は、上述したように曲面により構成されていてもよい。かかる場合に、上述した「第3刃面部の中心軸線方向に対する傾斜角度」とは、中心軸線全体を含み第3刃面部上を通る断面において、第3刃面部上の任意の点での接線が、中心軸線となす角度を意味するものとする。
次に、中心軸線方向Aと直交する断面における第3刃面部7の構成について説明する
図3(d)に示すように、図2(a)のIV-IV断面における第3刃面部7の中心平面Xに対する角度λ4は約90度である。換言すれば、図2(a)のIV-IV断面において、第3刃面部7は、中心平面Xと直交する方向に直線状に延在している。
図3(e)は、図2(a)のV-V断面、すなわち、中心軸線方向Aにおいて先端開口11よりも基端側の位置での、第3刃面部7のみを含む、中心軸線方向Aと直交する断面である。図3(e)に示すように、図2(a)のV-V断面における第3刃面部7の中心平面Xに対する角度λ5は約90度である。換言すれば、図2(a)のV-V断面において、第3刃面部7は、中心平面Xと直交する方向に直線状に延在している。
このように、中心軸線方向Aと直交する断面における第3刃面部7の中心平面Xに対する角度λは、中心軸線方向Aの位置によらず約90度で一定である(図3(d)、図3(e)参照)。
なお、第1刃面部5の上記角度θと先端側の第1連結刃面部15aの上記角度δaとの間の角度変化量、先端側の第1連結刃面部15a1の上記角度δaと基端側の第1連結刃面部15a2の上記角度δbとの間の角度変化量、及び、基端側の第1連結刃面部15a2の上記角度δbと第3刃面部7の上記角度λとの間の角度変化量を、略等しくなるようにすることができる。また、これら3つの角度変化量が、第1刃面部5から第3刃面部7に向かうにつれて、漸減又は漸増するようにしてもよい。第2刃面部6、先端側の第2連結刃面部15b1、基端側の第2連結刃面部15b2、及び第3刃面部7の角度関係についても同様である。
[側面視における刃面4の形状について]
以上のとおり、本実施形態の穿刺針1は、先端部3に刃面4が形成された本体部2を備えており、刃面4が、上述した、第1刃面部5、第2刃面部6、複数の連結刃面部15及び第3刃面部7により構成されている。そして、刃面4の内縁は、図1(b)、図2(b)の側面視において、凹状の第1湾曲部13a及び第2湾曲部13bを有している。以下、同側面視における刃面4のその他の特徴について説明する。
図4は、図2(b)における先端部3近傍を更に拡大した拡大側面図である。本実施形態の刃面4の内縁の先端は、図4の側面視において、第3刃面部7の延長線W上に位置していない。より具体的に、本実施形態の刃面4の内縁の先端である刃縁9の基端は、図4の側面視において、第3刃面部7の延長線Wよりも針先8側に位置しており、延長線Wとの間に間隙がある。
また、本実施形態の穿刺針1は、中心軸線方向Aと直交する方向の一端に針先8が位置する側面視(図2(b)等参照)において、針先8と、刃面4の基端である点Kと、を通る直線L(図2(b)の二点鎖線)が、中心軸線Oに対して、13度以上、かつ、20度以下の角度(図2(b)の刃面角度「Z」参照)で傾斜している。なお、直線Lが通過する刃面4の基端である点Kとは、本実施形態では第3刃面部7上の基端を表す点R2(図2(a)参照)である。このような構成とすることにより、中心軸線方向Aにおける刃面4の刃面長(中心軸線方向Aにおける刃面領域Tの長さと同じ)を、筋肉注射等に主に利用される所謂「レギュラーベベル」(上述と同様の手法により計測される傾斜角度が12度となる刃面が形成された穿刺針)の刃面長よりも短くし、静脈注射等に主に利用される所謂「ショートベベル」(上述と同様の手法により計測される傾斜角度が18度となる刃面が形成された穿刺針)の刃面長と同程度の刃面長としつつ、刃先角度αを「レギュラーベベル」と同程度又はそれ以下の角度にすることができる。
つまり、静脈等の脈管の突き抜けが起こり難い短い刃面長を有しつつ、刃面4での刺通抵抗が低減でき脈管の確保が容易な穿刺針1を実現することができる。また、針先8近傍での刺通抵抗が低減できることから、刺通抵抗の変化量を小さくでき、穿刺する際に医療従事者が穿刺方向に加える力の変化量をも小さくすることができる。そのため、穿刺する際に、医療従事者が操作し易い穿刺針1を実現することができる。
なお、図2(b)に示す直線Lの中心軸線Oに対する角度を、13度以上、かつ、20度以下の範囲としつつ、15度〜27度の刃先角度αとすることが好ましい。刃先角度αが15度未満の場合には、刃先が薄くなり過ぎるため、製造工程におけるダメージ等により所定の性能を満足できなくなるおそれがあり、製造が難しくなる。また、27度を超える場合には、所謂ショートベベルの刃先角度αと同等になるため、穿刺時の刺通抵抗が大きくなる。
また、本実施形態において、刃面4の内縁の基端(図2(a)における点「R1」参照)は、第3刃面部7の内縁に設けられている。更に、刃面4の内縁は、その先端から基端に至るまで、本体部2の先端側から基端側に向かって延びている。より具体的に、本実施形態において、刃面4の内縁が中心平面Xと交わる2点のうち、本体部2の先端側の点が刃面4の内縁の先端であり、本体部2の基端側の点が刃面4の内縁の基端である。そして、刃面4の内縁は、刃面4の内縁の先端から基端に至るまで、常に、本体部2の先端側から基端側に向かって延びている。なお、先端開口11は、正面視において、涙滴状である。
<実施形態2>
次に、上述した実施形態1の穿刺針1とは別の実施形態としての穿刺針101について説明する。本実施形態の穿刺針101は、上述した穿刺針1と比較して、連結刃面部115の構成が相違しているが、その他の構成は同様である。
図5は、穿刺針101を示す図である。具体的に、図5(a)は、穿刺針101の正面側の平面図、図5(b)は、穿刺針101の側面図、図5(c)は、穿刺針101の背面側の平面図を示すものである。図5(d)は、穿刺針101の斜視図である。また、図6(a)、(b)は、それぞれ図5(a)、(b)に示す本体部102の先端部103近傍の拡大図である。
図5、図6に示すように、穿刺針101の本体部102の先端部103には刃面104が形成されており、刃面104は、第1刃面部105、第2刃面部106、複数の連結刃面部115及び第3刃面部107を備えている。第1刃面部105と第2刃面部6とは、互いが交差する稜線により、針先108を一端とする刃縁109を形成している。本体部102は、先端開口111を一端とする中空部110を区画している。穿刺針101の第1刃面部105、第2刃面部106、及び第3刃面部107の構成は、上述した穿刺針1の第1刃面部5、第2刃面部6、及び第3刃面部7の構成と同様であるため、ここでは説明を省略する。穿刺針101は、上述した穿刺針1と比較して、連結刃面部の数が異なっている。
具体的に、上述した穿刺針1は、2つの第1連結刃面部15aと、2つの第2連結刃面部15bと、を有する構成であるのに対して、穿刺針101は、4つの第1連結刃面部115aと、4つの第2連結刃面部115bと、を有している。このように、第1連結刃面部及び第2連結刃面部の数を増加させることにより、第1刃面部105と第3刃面部107との間、及び第2刃面部106と第3刃面部107との間を、より滑らかに連結することが可能となる。
図7(a)、(b)、(c)、(d)、(e)は、それぞれ図6(a)におけるVI-VI断面図、VII-VII断面図、VIII-VIII断面図、IX-IX断面図、X-X断面図である。図7(a)〜図7(e)に示す断面図において、第1刃面部105及び第2刃面部106の中心平面Xに対する角度θ6〜θ8は等しい角度であり、第3刃面部107の中心平面Xに対する角度λ9及びλ10もいずれも約90度で等しい角度である。そして、図7(c)、図7(d)に示すように、第1刃面部105と第3刃面部107との間は、4つの第1連結刃面部115aにより、大きな段差となる稜線が形成されないように、滑らかに連結されている。同様に、第2刃面部106と第3刃面部107との間は、4つの第2連結刃面部115bにより、大きな段差となる稜線が形成されないように、滑らかに連結されている。なお、図7では、刃面部間の稜線を実線により示している。
このように、第1刃面部105及び第2刃面部106と、第3刃面部107とを連結する連結刃面部115の数は、本実施形態のように3つ以上とすることもでき、連結刃面部115の数を増やすことにより、第1刃面部105及び第2刃面部106と、第3刃面部107と、をより滑らかに連結することができ、刃面部間の稜線の部分、すなわち尾根部での刺通抵抗をより軽減することができる。
なお、上述した実施形態1の穿刺針1や、本実施形態の穿刺針101では、各連結刃面部を平面により構成された平面刃面部としているが、連結刃面部を、曲面により構成された曲面刃面部としてもよい。図8は、図5〜図7に示す4つの平面状の第1連結刃面部115aの全体を、1つの曲面状の第1連結刃面部115a´に変更すると共に、図5〜図7に示す4つの平面状の第2連結刃面部115bの全体を、1つの曲面状の第2連結刃面部115b´に変更した刃面204を有する穿刺針201を示す正面側の拡大平面図であり、図8に示す穿刺針201の本体部202のその他の構成は、図5〜図7に示す穿刺針101の本体部102と同様である。
図9(a)、(b)、(c)、(d)、(e)は、それぞれ図8におけるXI-XI断面図、XII-XII断面図、XIII-XIII断面図、XIV-XIV断面図、XV-XV断面図である。中心平面Xに対して角度θ11〜θ13(θ11〜θ13は等しい)で傾斜する第1刃面部105及び第2刃面部106(図9(a)〜(c)参照)は、中心平面Xに対して角度λ14及びλ15(λ14及びλ15は約90度で等しい)で延在する第3刃面部107(図9(d)及び(e)参照)と、曲面により構成された1つの第1連結刃面部115a´及び1つの第2連結刃面部115b´(図9(c)及び(d)参照)により、滑らかに連結されている。
なお、図8及び図9に示す例では、第1刃面部105と第3刃面部107との間、及び、第2刃面部106と第3刃面部107との間のそれぞれを、曲面により構成された連結刃面部115´のみにより連結する構成であるが、この構成に限られるものではなく、例えば、第1刃面部105と第3刃面部107との間、及び、第2刃面部106と第3刃面部107との間のそれぞれを、平面により構成された平面刃面部と、曲面により構成された曲面刃面部と、の両方を連続させることにより構成された複数の連結刃面部としてもよい。但し、図8、図9に示すように、第1刃面部105と第3刃面部107との間、及び、第2刃面部106と第3刃面部107との間のそれぞれを、曲面状の1つの連結刃面部115´(図8、図9の例では第1連結刃面部115a´及び第2連結刃面部115b´)により連結する構成とすれば、第1刃面部105及び第2刃面部106と、第3刃面部107と、の間を、刺通抵抗とならない程度の非常に小さい段差を有する稜線が形成されるように、又は稜線が形成されないように、より滑らかに連結させることできる。なお、図8及び図9では、説明の便宜上、第1刃面部105と第1連結刃面部115a´との間の境界、第2刃面部106と第2連結刃面部115b´との間の境界、並びに、第1連結刃面部115a´及び第2連結刃面部115b´と第3刃面部107との間の境界を、二点鎖線により示しているが、これは刃面部間の稜線を表すものではない。
なお、本発明に係る穿刺針は、様々な具体的構成により実現することが可能であり、上述した実施形態1及び2の説明で示した構成に限られるものではない。
例えば、実施形態2で示す穿刺針101の複数の第1連結刃面部115aや複数の第2連結刃面部115bは、先端開口111の周方向において略等しい幅を有するものが連続して配置されているが、先端開口111の周方向における幅が異なるものを連続して配置した構成としてもよい。図10は、複数の第1連結刃面部315aのうち第3刃面部307と連続する最も基端側の第1連結刃面部315aを他の第1連結刃面部315aよりも広幅にすると共に、複数の第2連結刃面部315bのうち第3刃面部307と連続する最も基端側の第2連結刃面部315bを他の第2連結刃面部315bよりも広幅にした穿刺針301を示す図である。具体的に、図10(a)は、穿刺針301の本体部302における先端部303近傍の正面側の平面図であり、図10(b)は、穿刺針301の本体部302における先端部303近傍の斜視図である。
図10に示すように、穿刺針301の本体部302の先端部303における刃面304は、第1刃面部305、第2刃面部306、複数の連結刃面部315及び第3刃面部307を備えている。第1刃面部305及び第2刃面部306は、互いが交差する稜線により針先308を一端とする刃縁309を形成している。また、本体部302は、先端開口311を一端とする中空部310を区画している。穿刺針301の第1刃面部305及び第2刃面部306は、上述した実施形態1で説明した第1刃面部5及び第2刃面部6や、実施形態2で説明した第1刃面部105及び第2刃面部106と同様の構成であるため、ここでは説明を省略する。
図10に示すように、第3刃面部307は、複数の第1連結刃面部315aを介して、第1刃面部305と連結している。また、第3刃面部307は、複数の第2連結刃面部315bを介して、第2刃面部306と連結している。そして、複数の第1連結刃面部315aのうち最も基端側に位置する第1連結刃面部315aと、第3刃面部307との間の稜線により形成された尾根部318は、刃面304の内縁のうち先端開口311の基端となる位置から、図10(a)の平面視において中心軸線Oとなす角度が30度以下となるように、中心軸線Oに沿って、本体部302の基端側に向かって延在している。また、複数の第2連結刃面部315bのうち最も基端側に位置する第2連結刃面部315bと、第3刃面部307との間の稜線により形成された尾根部321は、刃面304の内縁のうち先端開口311の基端となる位置から、図10(a)の平面視において中心軸線Oとなす角度が30度以下となるように、中心軸線Oを挟んで尾根部318と反対側で、中心軸線Oに沿って、本体部302の基端側に向かって延在している。
換言すれば、第3刃面部307は、図10(a)の平面視において、尾根部318、尾根部321、及び本体部302の外周面との間の境界により区画された、略扇形状を有している。
そして、図10に示す複数の第1連結刃面部315aでは、第3刃面部307と連続する、最も基端側の第1連結刃面部315aの先端開口311の周方向における幅が、他の第1連結刃面部315a(図10では3つの第1連結刃面部315a)の先端開口311の周方向における幅よりも大きい。更に、図10に示す複数の第2連結刃面部315bでは、第3刃面部307と連続する、最も基端側の第2連結刃面部315bの先端開口311の周方向における幅が、他の第2連結刃面部315b(図10では3つの第2連結刃面部315b)の先端開口311の周方向における幅よりも大きい。このように、第1刃面部305及び第2刃面部306と第3刃面部307との間をより滑らかに連結するため、幅の異なる複数の第1連結刃面部315aを連続させることにより、更に、幅の異なる複数の第2連結刃面部315bを連続させることにより構成してもよい。
なお、図10に示す例において、第1刃面部305及び第2刃面部306は、刃面領域Tの中心軸線方向Aにおける中間位置Hよりも基端側まで延在している。
ここで、図19(a)は、穿刺針301の第3刃面部307を含む第1仮想平面E1を一点鎖線により示している。また、図19(b)は、穿刺針301の1つの第1連結刃面部315aを含む第2仮想平面E2を二点鎖線により示している。更に、図19(c)は、穿刺針301の第2刃面部306を含む第3仮想平面E3を破線により示している。そして、図19(d)は、刃縁309が形成されている位置での中心軸線方向Aと直交する断面(図19(a)〜図19(c)のXXVI-XXVI断面)における、第1仮想平面E1、第2仮想平面E2及び第3仮想平面E3の関係を示している。
図19(d)に示すように、図19(a)〜図19(c)のXXVI-XXVI断面において、第3仮想平面E3における第2刃面部306の位置で比較した場合に、第2仮想平面E2は、第1仮想平面E1と第3仮想平面E3との間に位置している。つまり、図19(d)の断面視において、第2仮想平面E2は、第1仮想平面E1と第2刃面部306との間に位置している。換言すれば、穿刺針301のうち刃縁309が形成されている部分は、第1仮想平面E1及び第2仮想平面E2と交わらず、第1仮想平面E1及び第2仮想平面E2を挟んだ一方側に位置している。これは、後述する穿刺針301の製造方法において、第1連結刃面部315aを形成する際に、原形刃面部60(図18参照)のうち第2刃面部306が形成される位置を同時に研削することに起因している(図18(d)〜図18(f)等参照)。
なお、上述の第2仮想平面E2は、最も基端側の第1連結刃面部315aを含む平面であるが、他の第1連結刃面部315aを含む別の平面を第2仮想平面E2としても、上述の第1仮想平面E1、第2仮想平面E2及び第3仮想平面E3の関係は成立する。
また、上述の第1仮想平面E1、第2仮想平面E2及び第3仮想平面E3の関係は、第3刃面部307を含む仮想平面、1つの第2連結刃面部315bを含む仮想平面、及び第1刃面部305を含む仮想平面の3つの仮想平面においても成立する。
更に、上述した図1〜図10に示す穿刺針は、いずれも中空部を区画した中空針であったが、図11に示すような中実針であってもよい。
図11は、図10に示す穿刺針301の中空部310が形成されていない中実の穿刺針401を示す図である。具体的に、図11(a)は、穿刺針401の正面側の平面図、図11(b)は、穿刺針401の側面図、図11(c)は、穿刺針401の背面側の平面図を示すものである。図11(d)は、穿刺針401の斜視図である。また、図12(a)、(b)は、それぞれ図11(a)、(b)に示す穿刺針401の本体部402の先端部403近傍の拡大図である。
図11、図12に示す穿刺針401は、先端部403に刃面404が形成された中実棒状の本体部402を備えており、刃面404は、先端側に、互いが交差する稜線により針先408を一端とする刃縁409を形成する第1刃面部405及び第2刃面部406を備えている。また、刃面404は、第1刃面部405及び第2刃面部406と複数の連結刃面部415を介して連続し、刃面404の基端を構成する平面により構成された第3刃面部407を備えている。図11、図12に示す穿刺針401は、上述した図10に示す穿刺針301と比較して、中空部を区画していない点で相違する。したがって、穿刺針401では先端開口がないため、刃面404における各刃面部の形状が、上述した穿刺針301の刃面304(図10参照)の各刃面部の形状と異なっている。
具体的に、穿刺針401の本体部402は中空部を区画していないため、複数の第1連結刃面部415aは、図11(a)、図12(a)の平面視において、中心軸線方向Aと直交する方向に連続して配置されており、各第1連結刃面部415aは、中心軸線Oに沿って延在している。
また、複数の第2連結刃面部415bは、図11(a)、図12(a)の平面視において、中心軸線O及び針先408を含む中心平面Xを挟んで第1連結刃面部415aと反対側で、中心軸線方向Aと直交する方向に連続して配置されており、各第2連結刃面部415bは、中心軸線Oに沿って延在している。
そして、図11(a)、図12(a)の平面視において、中心平面Xを挟んで隣接する、複数の第1連結刃面部415aのうち最も基端側まで延在する第1連結刃面部415aと、複数の第2連結刃面部415bのうち最も基端側まで延在する第2連結刃面部415bとが、中心平面X内において、互いが交差する稜線により中央尾根部422を形成している。中央尾根部422は、刃縁409の基端から第3刃面部407の先端まで延在している。なお、第3刃面部407の形状については、上述した穿刺針301の第3刃面部307の形状と同様である。具体的に、第3刃面部407は、連結刃面部415との間に位置する2つの尾根部318及び321と、本体部402の外周面との間の境界と、により輪郭が構成された略扇状の形状を有している。
また、複数の第1連結刃面部415aのうち、中央尾根部422を形成する1つの第1連結刃面部415a以外の他の第1連結刃面部415aは、刃縁409の基端Mに収束するように延在している。具体的には、図12(a)に示すように、中央尾根部422を形成する1つの第1連結刃面部415a以外の他の第1連結刃面部415aが3つ存在しており、中央尾根部422を形成する1つの第1連結刃面部415aと第1刃面部405との間で、これら3つの第1連結刃面部415aにより形成される4本の稜線(第1尾根部423、第2尾根部424、第3尾根部425及び第4尾根部246)は、中心軸線Oに沿って延在しており、刃縁409の基端Mで一点に収束している。換言すれば、中央尾根部422を形成する1つの第1連結刃面部415a以外の他の第1連結刃面部415aは、図11(a)及び図12(a)の平面視において、中心軸線Oに沿って延在する細長形状を有しており、その延在方向のうち中心軸線方向Aの基端側に向かうにつれて、延在方向と直交する方向の幅が漸増する形状を有している。
更に、複数の第2連結刃面部415bのうち、中央尾根部422を形成する1つの第2連結刃面部415b以外の他の第2連結刃面部415bについても、刃縁409の基端Mに収束するように延在している。具体的には、図12に示すように、中央尾根部422を形成する1つの第2連結刃面部415b以外の他の第2連結刃面部415bが3つ存在しており、中央尾根部422を形成する1つの第2連結刃面部415bと第2刃面部406との間で、これら3つの第2連結刃面部415bにより形成される4本の稜線(第5尾根部427、第6尾根部428、第7尾根部429及び第8尾根部230)は、中心軸線Oに沿って延在しており、刃縁409の基端Mで一点に収束している。換言すれば、中央尾根部422を形成する1つの第2連結刃面部415b以外の他の第2連結刃面部415bは、図11(a)及び図12(a)の平面視において、中心軸線Oに沿って延在する細長形状を有しており、その延在方向で中心軸線方向Aの基端側に向かうにつれて、延在方向と直交する方向の幅が漸増する形状を有している。
なお、図11、図12に示す中実の穿刺針401においても、上述した図1〜図10に示す穿刺針と同様、第1刃面部405及び第2刃面部406は、刃面404が形成されている刃面領域Tの中心軸線方向Aにおける中間位置Hよりも本体部402の基端側まで延在している。
図13(a)、(b)、(c)、(d)、(e)は、それぞれ図12(a)におけるXVI-XVI断面図、XVII-XVII断面図、XVIII-XVIII断面図、XIX-XIX断面図、XX-XX断面図である。中心平面Xに対して角度θ16〜θ18(θ16〜θ18は等しい)で傾斜する第1刃面部405及び第2刃面部406(図13(a)〜(c)参照)は、中心平面Xに対して角度λ19及びλ20(λ19及びλ20は約90度で等しい)で延在する第3刃面部407(図13(d)及び(e)参照)と、平面により構成された複数の第1連結刃面部415a及び複数の第2連結刃面部415b(図13(b)〜(e)参照)により、滑らかに連結されている。
なお、図11〜図13に示す中実の穿刺針401において、第1刃面部405、第2刃面部406、各連結刃面部415及び第3刃面部407は、いずれも平面により構成されているが、少なくとも1つの連結刃面部415を、曲面により構成された曲面刃面部としてもよい。また、第3刃面部407を曲面により構成してもよい。
更に、上述した図1〜図13に示した穿刺針の本体部は、中心軸線方向Aにおける任意の位置での横断面が略円形状の断面外形を有するものであるが、中空棒状又は中実棒状の本体部であればよく、この構成に限られるものではない。したがって、例えば、中心軸線方向Aにおける任意の位置での横断面が略楕円形状の断面外形を有する本体部としてもよい。また、中心軸線方向Aの位置によって、横断面が略円形状の断面外形となる部分と、横断面が略楕円形状の断面外形となる部分と、の両方を有する本体部としてもよい。更に、断面外形が略円形状又は略楕円形状となる部分を一部に有する本体部であってもよい。また更に、円形状以外の形状としては、長軸及び短軸が規定される偏平状の断面外形を有するものであればよく、上述した楕円形状に限られるものではない。したがって、例えば長方形の短辺両端に半円形を合わせた角丸長方形状の断面外形であってもよい。
図14、図15は、任意の横断面の外形が略円形状又は略楕円形状となる本体部502を備える穿刺針501を示す図である。具体的に、図14(a)は、穿刺針501の正面側の平面図、図14(b)は、穿刺針501の側面図、図14(c)は、穿刺針501の背面側の平面図を示すものである。図14(d)は、穿刺針501の斜視図である。また、図15(a)、(b)は、それぞれ図14(a)、(b)に示す穿刺針501の本体部502の先端部503近傍の拡大図である。
図14、図15に示す穿刺針501は、先端部503に刃面504が形成された本体部502を備えている。本体部502は、中空棒状、すなわち筒状の管体であり、基端から先端まで連通する中空部510を区画している。また、先端部503に形成された刃面504の内縁により、中空部510の先端側の一端である先端開口511が区画されている。
刃面504は、先端側に、互いが交差する稜線により針先508を一端とする刃縁509を形成する第1刃面部505及び第2刃面部506を備えている。また、刃面504は、第1刃面部505及び第2刃面部506と複数の連結刃面部515を介して連続し、刃面504の基端を構成する平面により構成された第3刃面部507を備えている。複数の連結刃面部515は、第1刃面部505と第3刃面部507とを連結する複数の第1連結刃面部515aと、第2刃面部506と第3刃面部507とを連結する複数の第2連結刃面部515bと、を備えている。
図14、図15に示す穿刺針501は、上述した実施形態2の穿刺針101と比較して、本体部の断面外形が異なっており、その他の構成は同様である。以下、この相違点について主に説明する。
穿刺針501の本体部502は、略楕円形状の断面外形を有し、先端部503を含む先端側本体部502aと、この先端側本体部502aの基端側に位置し、略円形状の断面外形を有する基端側本体部502bと、先端側本体部502aと基端側本体部502bとの間に位置し、先端側本体部502aと基端側本体部502bとを繋ぐ連結部502cと、を備えている。なお、ここで言う「断面外形」とは、上述した実施形態と同様、本体部502の中心軸線Oと直交する横断面における外形を意味している。
先端側本体部502aは、図15(a)の平面視における幅S1が長軸、図15(b)の側面視における幅S2が短軸となる略楕円形状の断面外形を有している。図15(a)、図15(b)に示すように、先端側本体部502aの長軸となる幅S1は、基端側本体部502bの外径よりも大きく、先端側本体部502aの短軸となる幅S2は、基端側本体部502bの外径よりも小さい。また、先端側本体部502aの中心軸線と基端側本体部502bの中心軸線とは略一致しており、本体部502の中心軸線Oは略直線となっている。したがって、連結部502cは、正面側及び背面側の平面視(図14(a)、図14(c)、図15(a)参照)では、中心軸線方向Aにおいて先端側に向かうにつれて漸増するのに対して、側面視(図14(b)、15(b)参照)では、中心軸線方向Aにおいて先端側に向かうにつれて漸減する、テーパー形状を有している。なお、中心軸線O及び針先508を含む中心平面Xは、先端側本体部502aの中心軸線方向Aと直交する断面における短軸を含む平面である。
図14、図15に示すように、刃面504は、断面外形が略楕円形状の先端側本体部502aに形成されており、刃面504の第1刃面部505、第2刃面部506及び連結刃面部515は、短軸を含む中心平面Xを挟んで対称に位置している。なお、第1刃面部505、第2刃面部506、連結刃面部515及び第3刃面部507は平面により構成されており、これらの形状は、上述した実施形態1の穿刺針1における第1刃面部5、第2刃面部6、連結刃面部15及び第3刃面部7や、上述した実施形態2の穿刺針101における第1刃面部105、第2刃面部106、連結刃面部115及び第3刃面部107と同様であるため、ここでは説明を省略する。
ここで、図14、図15に示す穿刺針501においても、上述した図1〜図13に示す穿刺針と同様、第1刃面部505及び第2刃面部506は、刃面504が形成されている刃面領域Tの中心軸線方向Aにおける中間位置Hよりも本体部502の基端側まで延在している(図15参照)。また、刃面504の内縁は、図14(b)及び図15(b)に示す穿刺針501の側面視において、内縁の針先508側(中心軸線方向Aにおける先端側と同じ)の一端、換言すれば刃縁509の基端、から凹状に湾曲して延在する湾曲部を備えている。具体的には、図15(a)及び図15(b)に示すように、刃面504の内縁は、第1刃面部505の内縁及び複数の第1連結刃面部515aの内縁により構成される第1湾曲部513aと、第2刃面部506の内縁及び複数の第2連結刃面部515bの内縁により構成される第2湾曲部513bと、の2つの湾曲部を有しており、図14(b)、図15(b)の側面視では、第2湾曲部513bのみ視認できる状態となっている。そして、図15(a)に示すように、第1湾曲部513a及び第2湾曲部513bは、中心軸線方向Aにおける刃面504の内縁の中間位置Vよりも本体部502の基端側まで延在している。
このように、図14、図15に示す穿刺針501は、上述した中空の穿刺針1、101、201及び301と比較して、本体部502の先端部503における横断面外形が異なっているが、このような構成であっても、上述した中空の穿刺針1、101、201及び301と同様、刃先角度αが小さい刃面形状を実現することができる。更に、側面視(図14(b)及び図15(b)参照)において刃面504の内縁の湾曲部を中間位置Vよりも基端側まで延在させる構成とすることにより、同側面視における刃面504と刃面504の裏面との間の厚みを全体的に薄肉化しつつ、刃先角度αが小さい刃面形状を実現することができる。
図16(a)、(b)、(c)、(d)、(e)それぞれは、図15(a)のXXI-XXI断面図、XXII-XXII断面図、XXIII-XXIII断面図、XXIV-XXIV断面図、XXV-XXV断面図である。図16(a)〜図16(e)に示す断面図において、第1刃面部505及び第2刃面部506の中心平面Xに対する角度θ21〜θ23は等しい角度であり、第3刃面部507の中心平面Xに対する角度λ24及びλ25もいずれも約90度で等しい角度である。そして、図16(c)、図16(d)に示すように、第1刃面部505と第3刃面部507との間は、4つの第1連結刃面部515aにより、大きな段差となる稜線が形成されないように、滑らかに連結されている。同様に、第2刃面部506と第3刃面部507との間は、4つの第2連結刃面部515bにより、大きな段差となる稜線が形成されないように、滑らかに連結されている。なお、図16では、刃面部間の稜線を実線により示している。
なお、図5〜図10及び図14〜図16に示す中空の穿刺針においても、上述した図1〜図4に示す穿刺針1と同様、刃面の内縁の基端は、第3刃面部の内縁に設けられている。更に、刃面4の内縁は、その先端から基端に至るまで、本体部2の先端側から基端側に向かって延びている。より具体的に、刃面の内縁が中心平面Xと交わる2点のうち、本体部の先端側の点が刃面の内縁の先端であり、本体部の基端側の点が刃面の内縁の基端である。そして、刃面の内縁は、刃面の内縁の先端から基端に至るまで、常に、本体部の先端側から基端側に向かって延びている。また、図5〜図10及び図14〜図16に示す中空の穿刺針の先端開口についても、上述した図1〜図4に示す穿刺針1の先端開口11と同様、正面視において、涙滴状である。
<実施形態3>
次に、本発明の一実施形態としての、穿刺針301(図10参照)の製造方法について説明する。図17は、穿刺針301の製造方法を示すフローチャートである。図17に示すように、穿刺針301の製造方法は、穿刺針301の刃付け前の状態である筒状部材を得る筒状部材取得工程S1と、筒状部材の少なくとも一方の端部に刃面を形成する刃面形成工程S2と、刃面が形成された筒状部材を電解研磨処理等の各種研磨処理を用いて研磨する研磨工程S3と、を含むものである。
筒状部材取得工程S1は、各種公知の方法により行うことができ、例えば、帯状をなす金属製の板材をプレス成形機に受け入れる受入工程S1−1と、このプレス成形機により、板材を連続的にプレス成形し、その板材に一部が繋がった状態の複数の管体を得るプレス成形工程S1−2と、管体の継ぎ目の部分を溶接又は接着剤により接着する接合工程S1−3と、管体の中心軸が略直線になるようにその管体の形状を矯正する矯正工程S1−4と、板材から管体を分離して、穿刺針301の刃付け前の状態である筒状部材70を得る分離工程S1−5と、を含むものとすることができる。
図18は、刃面形成工程S2の概要を示す概要図である。具体的に、図18(a)〜図18(k)は、刃面形成工程S2において、各刃面部が順次形成されていく過程を示している。
刃面形成工程S2は、筒状部材取得工程S1で取得された筒状部材70の一方の端部に中心軸線方向Yに対して傾斜する原形刃面部60を作成する第1工程S2−1と、第1工程S2−1で形成された原形刃面部60の先端側の一部をワイヤカット又は砥石等で研削することにより、互いが交差する稜線により針先308(図10参照)を一端とする刃縁309(図10参照)を形成する第1刃面部305(図10参照)及び第2刃面部306(図10参照)を作成する第2工程S2−2と、を含むものである。
そして、第2工程S2−2では、第1刃面部305及び第2刃面部306のうち少なくとも一方の刃面部を、原形刃面部60が形成されていた原形刃面領域の中心軸線方向Yにおける中間位置よりも筒状部材70の他方の端部側まで延在する平面により作成する。このようにすれば、穿刺針301のように、第1刃面部305及び第2刃面部306の少なくとも一方が、刃面領域T(図10参照)の中心軸線方向Aにおける中間位置H(図10参照)よりも基端側まで延在する構成を、実現し易い。その結果、刃先角度α(図2(b)参照)の小さい穿刺針301を実現することが容易となる。
更に、刃面304の内縁が、側面視において、内縁の針先308側の一端、換言すれば刃縁309の基端、から凹状に湾曲して延在する湾曲部を備える構成を、実現し易い。その結果、穿刺時において体表面の切り口の縁部の巻き込みを抑制し、雑菌等による感染のリスクを軽減した穿刺針301を実現し易い。また、刃面304が薄く、刃先角度αが小さい穿刺針301を実現し易くなる。
以下、刃面形成工程S2の詳細について説明する。
図18(a)は刃面形成工程S2の第1工程S2−1を示している。図18(a)に示すように、刃面形成工程S2の第1工程S2−1では、ワイヤカット加工又は砥石による研削加工により、筒状部材70の中心軸線方向Yに対して傾斜する原形刃面部60を形成する。具体的に、本実施形態の第1工程S2−1では、砥石による研削加工によって、筒状部材70の端部に、筒状部材70の中心軸線Pに対して傾斜する、原形刃面部60としての平面状の斜面を形成する。本実施形態では、筒状部材70は回動させず、かつ、筒状部材70の中心軸線Pの砥石の研削表面に対する傾倒角度を一定にした状態で、筒状部材70の端部を砥石の研削表面に摺接させることにより、原形刃面部60を形成している。但し、この原形刃面部60は、上述した筒状部材取得工程S1におけるプレス成形工程S1−2において形成するようにしてもよい。
なお、図18(a)では、回転する砥石の研削表面により同時に研削可能な略一平面に含まれ、研削表面によって同時に研削される筒状部材70の研削面Gを、色を塗り潰すことにより表現している。研削面Gの表現は、以下で参照する図18(b)〜図18(k)においても同様である。
図18(b)〜図18(k)は刃面形成工程S2の第2工程S2−2を示している。
刃面形成工程S2の第2工程S2−2は、第1刃面部305の原形を形成する第1刃面部原形形成工程S2−2−1と、複数の第1連結刃面部315a(図10参照)を形成する第1連結刃面部形成工程S2−2−2と、第2刃面部306の原形を形成すると共に、第1刃面部305を形成する第2刃面部原形形成工程S2−2−3と、複数の第2連結刃面部315b(図10参照)を形成すると共に、前記第2刃面部306を形成する第2連結刃面部形成工程S2−2−4と、を含むものである。
図18(b)は、第1刃面部305の原形を形成する第1刃面部原形形成工程S2−2−1を示している。図18(b)に示すように、第1刃面部305の原形は、原形刃面部60の先端側の一部を研削することにより形成される。
図18(b)において第1刃面部305の原形を形成する際は、筒状部材70の中心軸線Pが砥石の研削表面に対して傾斜する傾倒角度を所定の角度にした状態で、筒状部材70の一方の端部に位置する原形刃面部60を、高速で回転する砥石の研削表面に対して摺接させることにより研削を行う。
図18(c)〜図18(f)は、複数の第1連結刃面部315aを形成する第1連結刃面部形成工程S2−2−2を示している。図18(c)に示す筒状部材70は、図18(b)に示す筒状部材70から、中心軸線Pを中心に所定角度だけ回動させると共に、中心軸線Pと砥石の研削表面との間の傾倒角度を変動させた状態となっている。また、図18(d)示す筒状部材70は、図18(c)に示す筒状部材70から、中心軸線Pを中心に所定角度だけ同方向に更に回動させると共に、中心軸線Pと砥石の研削表面との間の傾倒角度を同方向に更に変動させた状態となっている。このように、筒状部材70の中心軸線回りの回動と、筒状部材70の傾倒角度の変動とを順次行うことにより、筒状部材70の研削箇所を順次移動させていき、図18(c)〜図18(f)に示すように、複数の第1連結刃面部315aを形成する。
なお、図18(c)〜図18(f)に示すように、第1連結刃面部315aを形成する際に、原形刃面部60のうち、後の工程で第2刃面部306が形成される際に研削される部分を、同時に研削している。
また、筒状部材70は、第1連結刃面部形成工程S2−2−2後に、第2刃面部原形形成工程S2−2−3を開始する位置及び姿勢に再セットされ、再セット完了後に第2刃面部原形形成工程S2−2−3を開始することができる。
図18(g)は、第2刃面部306の原形を形成すると共に、第1刃面部305を形成する第2刃面部原形形成工程S2−2−3を示している。図18(g)に示すように、第2刃面部306の原形は、第1刃面部305の原形が形成されている位置とは先端開口311(図10参照)を挟んで反対側の位置で、原形刃面部60の先端側の一部を研削することにより形成される。図18(g)において第2刃面部306の原形を形成する際は、筒状部材70の中心軸線Pが砥石の研削表面に対して傾斜する傾倒角度を所定の角度にした状態で、筒状部材70の一方の端部に位置する原形刃面部60を、高速で回転する砥石の研削表面に対して摺接させることにより研削を行う。
なお、第2刃面部306の原形を形成する際に、第2刃面部306の原形の先端側で、第1刃面部305の原形と交差する稜線が形成される。この稜線は、針先308を一端とする刃縁309である。つまり、第2刃面部306の原形を形成することで刃縁309が形成され、その結果、第1刃面部305の輪郭が定まる。つまり、第1刃面部305が形成される。
図18(h)〜図18(k)は、複数の第2連結刃面部315bを形成すると共に、第2刃面部306を形成する第2連結刃面部形成工程S2−2−4を示している。図18(h)に示す筒状部材70は、図18(g)に示す筒状部材70から、中心軸線Pを中心に所定角度だけ回動させると共に、中心軸線Pと砥石の研削表面との間の傾倒角度を変動させた状態となっている。なお、この回動方向は、筒状部材70を、上述した図18(b)に示す状態から図18(f)に示す状態まで順次変化させる際の回動方向とは逆方向である。
また、図18(i)示す筒状部材70は、図18(h)に示す筒状部材70から、中心軸線Pを中心に所定角度だけ同方向に更に回動させると共に、中心軸線Pと砥石の研削表面との間の傾倒角度を同方向に更に変動させた状態となっている。このように、筒状部材70の中心軸線回りの回動と、筒状部材70の傾倒角度の変動とを順次行うことにより、筒状部材70の研削箇所を順次移動させていき、図18(h)〜図18(k)に示すように、複数の第2連結刃面部315bを形成する。
なお、第2連結刃面部形成工程S2−2−4において、第2連結刃面部315bを形成することにより、第2刃面部306の原形と第2連結刃面部315bとの間に稜線が形成される。つまり、第2連結刃面部315bを形成することで第2刃面部306の輪郭が定まる。すなわち、第2刃面部306が形成される。
そして、全ての第2連結刃面部315bが形成された結果、原形刃面部60のうち残った部分が第3刃面部307となる。換言すれば、第3刃面部307は、原形刃面部60の一部により構成されている。
このように、刃面形成工程S2における第2工程S2−2では、第1刃面部原形形成工程S2−2−1、第1連結刃面部形成工程S2−2−2、第2刃面部原形形成工程S2−2−3、及び、第2連結刃面部形成工程S2−2−4を行うことにより、穿刺針301の刃面304を形成している。
なお、筒状部材70は、図18(b)に示す状態から図18(f)に示す状態まで変化させるために、中心軸線回りに複数回(本実施形態では4回)回動しているが、この複数回の回動それぞれにおける角度変化量は略等しくすることができる。筒状部材70を、図18(g)に示す状態から図18(k)に示す状態まで変化させる際も同様である。
ここで、本実施形態の刃面形成工程S2では、上述した第1連結刃面部形成工程S2−2−2及び第2連結刃面部形成工程S2−2−4を行うことにより、原形刃面部60の一部により構成される第3刃面部307と、第1連結刃面部315aと、第2連結刃面部315bと、を形成している。そして、第1連結刃面部315a及び第2連結刃面部315bを形成する際に、第3刃面部307及び第1連結刃面部315aが交差する稜線により形成される尾根部318(図10参照)と、第3刃面部307及び第2連結刃面部315bが交差する稜線により形成される尾根部321(図10参照)とを、中心軸線Pに沿って延在するように形成している。更に、尾根部318及び321における筒状部材70の他方の端部側(穿刺針301の基端側と同じ)の一端が、中心軸線方向Yにおいて、原形刃面部60の内縁における筒状部材70の他方の端部側の一端と、原形刃面部60の外縁における筒状部材70の他方の端部側の一端と、の間に位置するように形成している。このようにすることにより、刃面304のヒール部分での刺通抵抗の増大を抑制することができる。
なお、本実施形態では、図10に示す穿刺針301の製造方法を示したが、図1〜9及び図11〜図16に示す穿刺針についても、同様の製造方法により刃面を形成することができる。また、本実施形態では砥石による研削加工により刃面304を形成する例を示したが、ワイヤカット加工により刃面を形成してもよい。更に、本実施形態の製造方法により製造される穿刺針301において、第1連結刃面部315a及び第2連結刃面部315bは平面により構成された平面刃面部であるが、曲面により構成された曲面刃面部であってもよい(図8等参照)。このような曲面状の第1連結刃面部315a及び第2連結刃面部315bを上述した研削加工により形成する場合には、筒状部材70の研削面Gを回転する砥石の研削表面に摺接させた状態で、筒状部材70の回動、及び筒状部材70の傾倒角度の変動を同時に行う。これにより、曲面状の第1連結刃面部315a及び第2連結刃面部315bを実現することができる。
また、図11、図12に示す中実の穿刺針401については、上述した筒状部材取得工程S1に代えて、中実棒状部材を形成する公知の中実棒状部材取得工程により中実棒状部材を形成し、この中実棒状部材の一端部に、上述した刃面形成工程S2と同様の方法により刃面404を形成することができる。更に、図14及び図15に示す穿刺針501については、筒状部材取得工程S1において又は刃面形成工程S2における第1工程S2−1の直前に、円筒状の筒状部材の一端部をプレス加工することにより、刃面504が形成される一端部の断面外形を略楕円形状にすることができる。
<実施形態4>
更に、本発明の別の実施形態としての穿刺針601について説明する。図20(a)は、穿刺針601の正面側の平面図、図20(b)は、穿刺針601の側面図、図20(c)は、穿刺針601の背面側(裏面側)の平面図を示すものである。図20(d)は、穿刺針601の斜視図である。また、図21(a)、(b)は、それぞれ図20(a)、(b)に示す穿刺針601の本体部602の先端部603近傍の拡大図である。
図20、図21に示す穿刺針601の本体部602は、横断面の外形が扁平状の先端部603を備えている。なお、本体部602の先端部603よりも基端側の横断面の外形は略円形状である。以下、説明の便宜上、本体部602のうち、扁平状の先端部603よりも基端側で断面外形が略円形状の部分を「針幹部640」と記載する。
図20、図21に示す穿刺針601は、先端部603に刃面604が形成された本体部602を備えている。本体部602は、中空棒状、すなわち筒状の管体であり、基端から先端まで連通する中空部610を区画している。また、先端部603に形成された刃面604の内縁により、中空部610の先端側の一端である先端開口611が区画されている。
刃面604は、先端側に、互いが交差する稜線により針先608を一端とする刃縁609を形成する第1刃面部605及び第2刃面部606を備えている。また、刃面604は、第1刃面部605及び第2刃面部606と複数の連結刃面部615を介して連続し、刃面604の基端を構成する平面により構成された第3刃面部607を備えている。複数の連結刃面部615は、第1刃面部605と第3刃面部607とを連結する複数の第1連結刃面部615aと、第2刃面部606と第3刃面部607とを連結する複数の第2連結刃面部615bと、を備えている。
図20、図21に示す穿刺針601は、図14〜図16に示す穿刺針501と比較して、本体部の断面外形が主に異なっている。以下、この相違点について主に説明する。
穿刺針601の本体部602は、断面外形が略円形状の針幹部640と、この針幹部640の一端に連続し、断面外形が扁平状の先端部603と、を備えている。なお、図21では、針幹部640と先端部603との間の境界線を実線Qで表している。
穿刺針601の先端部603は、図21(a)の平面視における幅方向(図21(a)では上下方向)が長軸方向C1、図21(b)の側面視における幅方向(図21(b)では上下方向)が短軸方向C2、となる略楕円形状の断面外形を有している。更に、穿刺針601の先端部603の外周面は、中心軸線方向Aにおいて針先608側に向かうにつれて、長軸方向C1(図21(a)では方向Bと同じ方向)の長さが漸増し、かつ、短軸方向C2の長さが漸減する筒形状を有している。換言すれば、図21(a)に示すように、先端部603の長軸方向C1の幅S3は、針幹部640と連続する位置から中心軸線方向Aにおいて針先608側に向かって広くなり、針幹部640の外径S5よりも大きくなる。逆に、図21(b)に示すように、先端部603の短軸方向C2の幅S4は、針幹部640と連続する位置から中心軸線方向Aにおいて針先608側に向かって狭くなり、針幹部640の外径S5よりも小さくなる。なお、先端部603の中心軸線及び針幹部640の中心軸線は略一致している。つまり、図20、図21に示すように、本体部602の中心軸線Oは、先端部603及び針幹部640の位置で一直線状に延在する。
より具体的に、穿刺針601の先端部603の外周面は、先端部603を短軸方向C2に対向して見た正面視(図21(a)参照)において、中心軸線方向Aで針先608に向かうにつれて長軸方向C1における幅S3が漸増するテーパー部641を有している。このテーパー部641の幅S3は、中心軸線方向Aにおいて、針幹部640と連続する位置から中心軸線方向Aにおいて針先608側に向かうにつれて漸増し、第1刃面部605の外縁及び第2刃面部606の外縁と交わる位置まで漸増し続ける。逆に言えば、先端部603の長軸方向C1における幅S3は、中心軸線方向Aにおいて第1刃面部605及び第2刃面部606がある位置で最大となり、そこから中心軸線方向Aの基端側に向かって漸減していく。
そのため、第1刃面部605の外縁及び第2刃面部606の外縁が皮膚を通過した後に、先端部603の外周面が穿刺穴の周囲の皮膚を穿刺穴から体内に巻き込むように引っ張ることを抑制することができる。これにより、穿刺針601の穿刺時において患者が感じる痛みを軽減することができる。
また、穿刺針601では、先端部603を長軸方向C1に対向して見た側面視(図21(b)参照)において、刃面604の反対側である背面側に位置する先端部603の外周面には、中心軸線方向Aで針先608に向かうにつれて中心軸線Oに近づくように傾斜する背面傾斜部642が形成されている。
このように、刃面604の背面側の外周面に背面傾斜部642を設けることにより、穿刺途中の穿刺針601には、背面傾斜部642を介して背面側から、刃面604が形成されている正面側に向かう押圧力が作用する。そのため、刃面604を介して正面側から背面側に向かう押圧力の少なくとも一部が相殺されるため、同側面視(図21(b)参照)において、刃面604の背面側の外周面が中心軸線方向Aと平行して延在する、本実施形態の背面傾斜部642が無い構成と比較して、直進性を向上させることができる。
なお、図20、図21に示すように、刃面604は先端部603に形成されており、刃面604の第1刃面部605、第2刃面部606及び連結刃面部615は、中心平面Xを挟んで対称に位置している。本実施形態における中心軸線O及び針先608を含む中心平面Xは、先端部603の中心軸線方向Aと直交する断面における短軸を含む平面である。
また、第1刃面部605、第2刃面部606、連結刃面部615及び第3刃面部607は平面により構成されており、これらの形状は、図10に示す上述の穿刺針301における第1刃面部305、第2刃面部306、連結刃面部315及び第3刃面部307と同様であるため、ここでは説明を省略する。
ここで、図20、図21に示す穿刺針601においても、上述した図1〜図16に示す穿刺針と同様、第1刃面部605及び第2刃面部606は、刃面604が形成されている刃面領域Tの中心軸線方向Aにおける中間位置Hよりも本体部602の基端側まで延在している(図21参照)。また、刃面604の内縁は、図20(b)及び図21(b)に示す穿刺針601の側面視において、内縁の針先608側(中心軸線方向Aにおける先端側と同じ)の一端から凹状に湾曲して延在する湾曲部を備えている。具体的には、図21(a)及び図21(b)に示すように、刃面604の内縁は、第1刃面部605の内縁及び複数の第1連結刃面部615aの内縁により構成される第1湾曲部613aと、第2刃面部606の内縁及び複数の第2連結刃面部615bの内縁により構成される第2湾曲部613bと、の2つの湾曲部を有しており、図20(b)、図21(b)の側面視では、第2湾曲部613bのみ視認できる状態となっている。そして、図21(a)に示すように、第1湾曲部613a及び第2湾曲部613bは、中心軸線方向Aにおける刃面604の内縁の中間位置Vよりも本体部602の基端側まで延在している。
このように、図20、図21に示す穿刺針601においても、刃先角度α(図2(b)参照)が小さい刃面形状を実現することができる。更に、側面視(図20(b)及び図21(b)参照)において刃面604の内縁の湾曲部を中間位置Vよりも基端側まで延在させる構成とすることにより、同側面視における刃面604と刃面604の背面(裏面)との間の厚みを全体的に薄肉化しつつ、刃先角度α(図2(b)参照)が小さい刃面形状を実現することができる。
図22(a)、(b)、(c)、(d)、(e)それぞれは、図21(a)のXXVII-XXVII断面図、XXVIII-XXVIII断面図、XXIX-XXIX断面図、XXX-XXX断面図、XXXI-XXXI断面図である。図22(a)〜図22(e)に示す断面図において、第1刃面部605及び第2刃面部606の中心平面Xに対する角度θ27〜θ29は等しい角度であり、第3刃面部607の中心平面Xに対する角度λ30及びλ31もいずれも約90度で等しい角度である。そして、図22(c)、図22(d)に示すように、第1刃面部605と第3刃面部607との間は、4つの第1連結刃面部615aにより、大きな段差となる稜線が形成されないように、滑らかに連結されている。同様に、第2刃面部606と第3刃面部607との間は、4つの第2連結刃面部615bにより、大きな段差となる稜線が形成されないように、滑らかに連結されている。なお、図22では、刃面部間の稜線を実線により示している。
なお、図20〜図22に示す穿刺針601では、刃面604が先端部603に形成されており、針幹部640に形成されていない構成であるが、この構成に限られるものではなく、先端部から針幹部に亘って形成される刃面としてもよい。
また、図20〜図22に示す穿刺針601の第1連結刃面部615a及び第2連結刃面部615bはそれぞれ、平面刃面部により構成されているが、曲面刃面部により構成されていてもよい。
本発明に係る医療用の穿刺針及び医療用の穿刺針の製造方法は、上述した実施形態で説明した具体的な構成及び方法に限られるものではなく、例えば、上述した各穿刺針の一部の構成を別の穿刺針の構成に適用して、新たな穿刺針を構成することは、本発明の技術的範囲に属するものである。
更に、本発明に係る医療用の穿刺針及び医療用の穿刺針の製造方法は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲で変更することが可能である。