JP6757938B2 - イソプレンオリゴマー、ポリイソプレン、及びこれらの製造方法、ゴム組成物、並びに空気入りタイヤ - Google Patents

イソプレンオリゴマー、ポリイソプレン、及びこれらの製造方法、ゴム組成物、並びに空気入りタイヤ Download PDF

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Description

本発明は、イソプレンオリゴマー、ポリイソプレン、及びこれらの製造方法、イソプレンオリゴマー及び/又はポリイソプレンを含むゴム組成物、並びに該ゴム組成物を用いた空気入りタイヤに関する。
従来より、ゴム製品においては、本来的にゴムが有する特性に対して新たな特性を付与することを目的として、その用途に応じて様々な材質や形状の充填剤等をゴム組成物中に導入することで、所望の特性を発現させることが行われている。例えば、自動車用のタイヤにおいては、有機物であるゴム相の中にシリカ、カーボンブラック等の充填剤を導入し、耐摩耗性、低発熱性、ウェットグリップ性能などの特性の向上が図られている。
このようなゴム組成物においてゴム相に対して充填剤等を混合する際には、両者の親和性を高め、低発熱性やウェットグリップ性能等をより向上させる目的で、ゴム相に含まれるゴム分子に対して、例えば、チッ素原子含有基を有し、かつクロロスルフェニル基を有する化合物を反応させる処理等を行い、充填剤に対して親和性を示す官能基をゴム分子内に導入した変性ゴム(変性ジエン系重合体)を使用することが行われていた(例えば、特許文献1、2)。
また、イソプレンオリゴマーやポリイソプレンの末端部分には、反応性の高い二リン酸基等が存在することが知られている。そのため、イソプレンオリゴマーやポリイソプレンに対して変性を行う場合には、この末端部分に存在する反応性の高い二リン酸基等を利用して、官能基を有する化合物をこれらの基に反応させることにより変性が行われてきた。このように、従来から、イソプレンオリゴマーやポリイソプレンに対する変性は、主に分子の末端部分に対して行われてきた。一方、イソプレンオリゴマーやポリイソプレンの主鎖部分を変性する場合には、末端部分に存在する反応性の高い二リン酸基等の影響により、主鎖部分を充分に変性することはできなかった。また、これまで天然ゴムを変性する場合には、パラゴムノキから採集したラテックスを化学的処理することにより変性する方法しか存在せず、本当に分子鎖に変性が入ったのか、どのような官能基変換が起こったのかを確認することは、分析上不可能であった。
特開2000−001573号公報 特開2000−001575号公報
本発明は、前記課題を解決し、分子の主鎖部分に変性が加えられたイソプレンオリゴマー、ポリイソプレンを提供することを目的とする。また、該イソプレンオリゴマー及び/又は該ポリイソプレンを配合したゴム組成物、並びに該ゴム組成物をタイヤの各部材(例えば、トレッド、サイドウォール)に用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
本発明は、下記式(X)で表されるアリル性二リン酸と、下記式(Y)で表される化合物とから合成されて得られるイソプレンオリゴマーに関する。
Figure 0006757938
(式(X)中、nは1〜10の整数を表す。)
Figure 0006757938
(式(Y)中、Rはメチル基以外の基を表す。)
上記イソプレンオリゴマーは、上記式(X)で表されるアリル性二リン酸と、上記式(Y)で表される化合物と、イソペンテニル二リン酸とから合成されて得られることが好ましい。
上記式(X)で表されるアリル性二リン酸が、下記式(X−1)で表されるアリル性二リン酸であり、下記式(X−1)中のII部分に含まれる原子又は原子団の少なくとも1つが他の原子又は原子団により置換され、下記式(X−1)中のIII部分に含まれる原子又は原子団は他の原子又は原子団により置換されていないことが好ましい。
Figure 0006757938
(式(X−1)中、nは1〜10の整数を表す。)
上記合成をプレニルトランスフェラーゼ活性を有する酵素を用いて行うことが好ましい。
本発明はまた、下記式(Z−1)又は下記式(Z−2)で表されるイソプレンオリゴマーであって、下記式(Z−1)又は下記式(Z−2)中のv部分に含まれる原子又は原子団の少なくとも1つが、他の原子又は原子団により置換されているイソプレンオリゴマーに関する。
Figure 0006757938
(式(Z−1)中、nは1〜10の整数を表す。mは1〜30の整数を表す。Yは、水酸基、ホルミル基、カルボキシ基、アルコキシカルボキシ基、アルコキシカルボニル基又はOPP基を表す。)
Figure 0006757938
(式(Z−2)中、nは1〜10の整数を表す。mは1〜30の整数を表す。Yは、水酸基、ホルミル基、カルボキシ基、アルコキシカルボキシ基、アルコキシカルボニル基又はOPP基を表す。)
上記式(Z−1)又は上記式(Z−2)中のiv部分に含まれる原子又は原子団の少なくとも1つが、他の原子又は原子団により置換されていることが好ましい。
本発明はまた、下記式(X)で表されるアリル性二リン酸と、下記式(Y)で表される化合物とから合成するイソプレンオリゴマーの製造方法に関する。
Figure 0006757938
(式(X)中、nは1〜10の整数を表す。)
Figure 0006757938
(式(Y)中、Rはメチル基以外の基を表す。)
上記イソプレンオリゴマーの製造方法は、上記式(X)で表されるアリル性二リン酸と、上記式(Y)で表される化合物と、イソペンテニル二リン酸とから合成することが好ましい。
上記式(X)で表されるアリル性二リン酸が、下記式(X−1)で表されるアリル性二リン酸であり、下記式(X−1)中のII部分に含まれる原子又は原子団の少なくとも1つが他の原子又は原子団により置換され、下記式(X−1)中のIII部分に含まれる原子又は原子団は他の原子又は原子団により置換されていないことが好ましい。
Figure 0006757938
(式(X−1)中、nは1〜10の整数を表す。)
上記合成をプレニルトランスフェラーゼ活性を有する酵素を用いて行うことが好ましい。
本発明はまた、下記式(X)で表されるアリル性二リン酸と、下記式(Y)で表される化合物とから合成されて得られるポリイソプレンに関する。
Figure 0006757938
(式(X)中、nは1〜10の整数を表す。)
Figure 0006757938
(式(Y)中、Rはメチル基以外の基を表す。)
上記式(X)で表されるアリル性二リン酸と、上記式(Y)で表される化合物と、イソペンテニル二リン酸とから合成されて得られることが好ましい。
上記式(X)で表されるアリル性二リン酸が、下記式(X−1)で表されるアリル性二リン酸であり、下記式(X−1)中のII部分に含まれる原子又は原子団の少なくとも1つが他の原子又は原子団により置換され、下記式(X−1)中のIII部分に含まれる原子又は原子団は他の原子又は原子団により置換されていないことが好ましい。
Figure 0006757938
(式(X−1)中、nは1〜10の整数を表す。)
本発明はまた、上記イソプレンオリゴマーと、上記式(Y)で表される化合物及び/又はイソペンテニル二リン酸とから合成されて得られるポリイソプレンに関する。
本発明はまた、下記式(ZZ−1)又は下記式(ZZ−2)で表されるポリイソプレンであって、下記式(ZZ−1)又は下記式(ZZ−2)中のv部分に含まれる原子又は原子団の少なくとも1つが、他の原子又は原子団により置換されているポリイソプレンに関する。
Figure 0006757938
(式(ZZ−1)中、nは1〜10の整数を表す。qは30〜40000の整数を表す。Yは、水酸基、ホルミル基、カルボキシ基、アルコキシカルボキシ基、アルコキシカルボニル基又はOPP基を表す。)
Figure 0006757938
(式(ZZ−2)中、nは1〜10の整数を表す。qは30〜40000の整数を表す。Yは、水酸基、ホルミル基、カルボキシ基、アルコキシカルボキシ基、アルコキシカルボニル基又はOPP基を表す。)
上記式(ZZ−1)又は上記式(ZZ−2)中のiv部分に含まれる原子又は原子団の少なくとも1つが、他の原子又は原子団により置換されていることが好ましい。
本発明はまた、上記イソプレンオリゴマーと、上記式(Y)で表される化合物及び/又はイソペンテニル二リン酸とから合成するポリイソプレンの製造方法に関する。
本発明はまた、上記イソプレンオリゴマー及び/又は上記ポリイソプレンを含むゴム組成物に関する。
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤに関する。
本発明のイソプレンオリゴマーは、上記式(X)で表されるアリル性二リン酸と、上記式(Y)で表される化合物とから合成されて得られるイソプレンオリゴマー、又は上記式(Z−1)若しくは上記式(Z−2)で表されるイソプレンオリゴマーであって、上記式(Z−1)若しくは上記式(Z−2)中のv部分に含まれる原子若しくは原子団の少なくとも1つが、他の原子若しくは原子団により置換されているイソプレンオリゴマーである。また、本発明のポリイソプレンは、上記式(X)で表されるアリル性二リン酸と、上記式(Y)で表される化合物とから合成されて得られるポリイソプレン、上記イソプレンオリゴマーと、上記式(Y)で表される化合物及び/又はイソペンテニル二リン酸とから合成されて得られるポリイソプレン、又は上記式(ZZ−1)若しくは上記式(ZZ−2)で表されるポリイソプレンであって、上記式(ZZ−1)又は上記式(ZZ−2)中のv部分に含まれる原子若しくは原子団の少なくとも1つが、他の原子若しくは原子団により置換されているポリイソプレンである。従って、本発明のイソプレンオリゴマー、及び本発明のポリイソプレンは、分子(ゴム分子)の主鎖部分に変性が加えられており、シリカ等の充填剤との親和性に優れる。よって、本発明のイソプレンオリゴマー及び/又は本発明のポリイソプレンをゴム組成物に配合することにより、高い次元でゴム分子と充填剤が複合したゴム組成物が得られ、例えば、低発熱性、耐摩耗性に優れたゴム組成物を提供できる。また、該ゴム組成物をタイヤの各部材(例えば、トレッド、サイドウォール)に使用することにより、例えば、低発熱性、耐摩耗性に優れた空気入りタイヤを提供することができる。
また、本発明のイソプレンオリゴマーの製造方法、及び本発明のポリイソプレンの製造方法では、末端部分に存在する反応性の高い二リン酸基の影響を受けずに、主鎖部分が充分に変性されたイソプレンオリゴマーやポリイソプレンを製造できる。
また、本発明では、構造既知の官能基等が付加された上記式(Y)で表される化合物を用いることにより得られたイソプレンオリゴマー、ポリイソプレンであるので、イソプレンオリゴマー、ポリイソプレンが有する官能基(変性基)を明確に把握することができる。
人工的にゴム分子(ポリイソプレン)を合成(生合成)する工程においては、ファルネシル二リン酸(FPP)等の開始基質とイソペンテニル二リン酸等のモノマーの混合物にプレニルトランスフェラーゼ等の酵素を作用させることで、開始基質に対して1〜30個程度のイソプレン単位が付加重合したイソプレンオリゴマーが生成する。その後、当該イソプレンオリゴマーに対して更にイソペンテニル二リン酸を付加重合する酵素を含有するラテックス成分を混合することで、オリゴマーに対して多数のイソペンテニル二リン酸が連なったポリイソプレンが生成することが知られている。
このように、開始基質に対してモノマーを順次結合させてゴム分子とする各過程においては、天然の酵素による付加重合が不可欠である。
このため、ゴム分子(ポリイソプレン)を合成(生合成)する際の開始基質やモノマーとしては、当該使用する酵素が反応を触媒するものを使用する必要がある結果、ゴム分子(ポリイソプレン)の原料として使用される開始基質やモノマーの構造が限定されていた。特にモノマーに関しては、プレニルトランスフェラーゼやイソペンテニル二リン酸を付加重合する酵素に起因する制限により、天然に存在するイソペンテニル二リン酸に限定されていた。
この結果、人工的に合成(生合成)されるゴム分子(ポリイソプレン)においても、その構造の自由度が限定され、天然ゴムにない機能性を付加するための自由な分子設計が困難であった。
このため、例えば、官能基等が導入されたゴム分子(ポリイソプレン)を得たい場合には、上述のように、末端部分に存在する反応性の高い二リン酸基等を利用して、官能基を有する化合物をこれらの基に反応させることにより変性が行われてきた。特に、天然ゴムを変性する場合には、パラゴムノキから採集したラテックスを化学的処理することにより変性する方法しか存在せず、本当に分子鎖に変性が入ったのか、どのような官能基変換が起こったのかを確認することは、分析上不可能であった。
これに対し、本発明は、イソプレンオリゴマーやポリイソプレンを製造する際のモノマーとして構造の一部が変性されたイソペンテニル二リン酸を使用することで、主鎖部に機能性を付加したイソプレンオリゴマーやポリイソプレンの製造が可能であることを見出したことに基づくものである。また、本発明では、構造既知の官能基等が付加されたイソペンテニル二リン酸を用いることにより得られたイソプレンオリゴマー、ポリイソプレンであるので、イソプレンオリゴマー、ポリイソプレンが有する官能基(変性基)を明確に把握することができる。
特に、本発明は、天然に存在するモノマーであるイソペンテニル二リン酸の3位のメチル基以外の部分の構造を維持することにより、3位のメチル基を所望の基に置換した場合であっても、天然に存在するオリゴマー生成酵素であるプレニルトランスフェラーゼや、天然に存在するポリマー生成酵素であるイソペンテニル二リン酸を付加重合する酵素を用いることで、イソプレンオリゴマーやポリイソプレンが生成可能であることを見出したことに基づくものである。この理由は必ずしも明らかではないが、プレニルトランスフェラーゼやイソペンテニル二リン酸を付加重合する酵素が、モノマーであるイソペンテニル二リン酸の3位のメチル基以外の部分の構造に吸着を生じ、3位のメチル基部分の構造には比較的鈍感であるためと考えられる。
当該知見に基づけば、所望の特性を有する主鎖部を有するイソプレンオリゴマーやポリイソプレンを提供することが可能となり、様々な機能を付加したイソプレンオリゴマーやポリイソプレンを提供することが可能となる。
すなわち、自然界で行われている生合成では、例えば、下記のように、ジメチルアリル二リン酸(DMAPP)にイソペンテニル二リン酸(IPP)が順次重合することにより、ゲラニル二リン酸(GPP)、ファルネシル二リン酸(FPP)、ゲラニルゲラニル二リン酸(GGPP)、ゲラニルファルネシル二リン酸(GFPP)が生成する。
Figure 0006757938
一方、本発明では、イソペンテニル二リン酸(IPP)の代わりに、IPPの3位に存在するメチル基を所望の基(−R)に置換したR−IPPを使用することにより、下記のように、ジメチルアリル二リン酸にR−IPPが順次重合することにより、主鎖が変性されたゲラニル二リン酸(R−GPP)、主鎖が変性されたファルネシル二リン酸(R−FPP)、主鎖が変性されたゲラニルゲラニル二リン酸(R−GGPP)、主鎖が変性されたゲラニルファルネシル二リン酸(R−GFPP)が生成する。
Figure 0006757938
また、IPPと共に、R−IPPを使用することにより、すなわち、R−IPPと、IPPを併用することにより、下記のように、ジメチルアリル二リン酸にIPP、R−IPPが順次重合することにより、主鎖が変性されたゲラニル二リン酸(R−GPP)、主鎖が変性されたファルネシル二リン酸(R−FPP)、主鎖が変性されたゲラニルゲラニル二リン酸(R−GGPP)、主鎖が変性されたゲラニルファルネシル二リン酸(R−GFPP)が生成する。このように、R−IPPと共に、IPPを併用し、その比率を調整することにより、所望の性質を有するイソプレンオリゴマーを調製できる。
Figure 0006757938
なお、本明細書において、分子(ゴム分子)の主鎖部分を変性とは、分子(ゴム分子)の主鎖に存在するIPPに対応する構造部(特に、IPPの3位に存在するメチル基に対応する部分)が所望の官能基に置換されていること、又は、分子(ゴム分子)の主鎖に存在するIPPに対応する構造部(特に、IPPの3位に存在するメチル基に対応する部分)が異なる構造(メチル基以外の構造)に置換されていることをいう。
(イソプレンオリゴマー)
本発明のイソプレンオリゴマーは、下記式(X)で表されるアリル性二リン酸と、下記式(Y)で表される化合物(R−IPP)とから合成(生合成)されて得られるイソプレンオリゴマーである。
Figure 0006757938
(式(X)中、nは1〜10の整数を表す。)
Figure 0006757938
(式(Y)中、Rはメチル基以外の基を表す。)
なお、本明細書において、OPP(OPP基)は、二リン酸基(下記式(A−1)で表される基)を意味し、リン原子に結合する3個の水酸基を有しているが、水溶液中では、これらの水酸基の一部又は全部が解離する(例えば、下記式(A−2)で表される基となる)。本明細書において、OPPは、このような水酸基の一部又は全部が解離している基も含む概念である。
Figure 0006757938
Figure 0006757938
本発明のイソプレンオリゴマーは、天然ゴムに近い構造を有しており、ゴム分子との相溶性が高い。また、本発明のイソプレンオリゴマーは、主鎖部分に変性が加えられているため、シリカ等の充填剤との相互作用が強い。このように、本発明のイソプレンオリゴマーは、ゴムとの相溶性が高く、さらに、シリカ等の充填剤との相互作用が強いため、ゴム組成物に配合することにより、従来よりも高い次元でゴム分子と充填剤が複合したゴム組成物が得られ、例えば、ゴム組成物の低発熱性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性、破断時伸び、破断強度を向上できる。
本発明のイソプレンオリゴマーは、主鎖部分に極性基等が存在する。そのため、末端部分のみに極性基等を有する場合に比べて、シリカ等の充填剤の分散性が高く、例えば、低発熱性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性、破断時伸び、破断強度の向上効果が高い。
また、本発明のイソプレンオリゴマーは、優れた抗菌活性を示す。これは、自然界に存在する通常のイソプレンオリゴマーと構造が異なり、菌が有する酵素もしくは補酵素の阻害、核酸合成の阻害、細胞膜合成の阻害、細胞質膜の合成の阻害、細胞膜の破壊、細胞質膜の破壊等の作用を有するためであると推測される。
まず、下記式(X)で表されるアリル性二リン酸について説明する。
Figure 0006757938
(式(X)中、nは1〜10の整数を表す。)
式(X)のnは1〜10(好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3)の整数を表す。
上記式(X)で表されるアリル性二リン酸としては、例えば、ジメチルアリル二リン酸(DMAPP)、ゲラニル二リン酸(GPP)、ファルネシル二リン酸(FPP)、ゲラニルゲラニル二リン酸(GGPP)、ゲラニルファルネシル二リン酸(GFPP)等が挙げられる。なかでも、多くのプレニルトランスフェラーゼの基質であるという理由から、DMAPP、GPP、FPPが好ましい。
また、上記式(X)で表されるアリル性二リン酸は、イソプレン単位に二リン酸基が結合した構造を有しているが、上記式(X)で表されるアリル性二リン酸は、該イソプレン単位の一部が改変(変性)されたアリル性二リン酸誘導体であってもよい。
本発明者らは、アリル性二リン酸誘導体を開始基質として使用して、イソプレンオリゴマーやポリイソプレンを製造する方法について、既に特許出願を行なっている(特開2012−036360号公報)。当該特許出願について、以下において、簡単に説明する。
上述のように、ゴム分子(ポリイソプレン)を合成(生合成)する際の開始基質やモノマーとしては、当該使用する酵素が反応を触媒するものを使用する必要がある結果、ゴム分子(ポリイソプレン)の原料として使用される開始基質やモノマーの構造が限定されていた。具体的には、開始基質としては、オリゴマーを生成させるための酵素に起因する制限により、天然に存在するジメチルアリル二リン酸、ゲラニル二リン酸、ファルネシル二リン酸、ゲラニルゲラニル二リン酸等に限定されていた。
これに対し、本発明者らは、鋭意検討した結果、イソプレンオリゴマーやポリイソプレンを製造する際の開始基質として、構造の一部が変性されたファルネシル二リン酸等を使用することで、末端部に機能性を付加したイソプレンオリゴマーやポリイソプレンの製造が可能であることを見出した。
特に、天然に存在する開始基質であるファルネシル二リン酸等に対して、下記式(I)のI部分の構造を維持することで、その他の部分に所望の構造を導入した場合であっても、天然に存在するオリゴマー生成酵素であるプレニルトランスフェラーゼを用いることで、イソプレンオリゴマーが生成可能であることを見出した。この理由は必ずしも明らかではないが、プレニルトランスフェラーゼが開始基質の下記式(I)のI部分の構造に吸着を生じ、他の部分の構造には比較的鈍感であるためと考えられる。
Figure 0006757938
当該知見に基づけば、所望の特性を有する末端部を有するイソプレンオリゴマーやポリイソプレンを提供することが可能となり、イソプレンオリゴマーやポリイソプレン自体の特性を損なうことなく、様々な機能を付加したイソプレンオリゴマーやポリイソプレンを提供することが可能となる。
従って、本発明において、上記式(I)のI部分の構造を維持する範囲で改変された上記式(X)で表されるアリル性二リン酸を開始基質とし、天然に存在するオリゴマー生成酵素であるプレニルトランスフェラーゼを用いて上記式(Y)で表される化合物(R−IPP)を当該開始基質に重合させることで、主鎖部分だけではなく末端部分(アリル性二リン酸に起因する構造部分)にも変性が施されたイソプレンオリゴマーが得られる。
具体的には、上記式(X)で表されるアリル性二リン酸が、下記式(X−1)で表されるアリル性二リン酸であり、下記式(X−1)中のII部分に含まれる原子又は原子団の少なくとも1つが他の原子又は原子団により置換され、下記式(X−1)中のIII部分に含まれる原子又は原子団は他の原子又は原子団により置換されていないことが好ましい。
Figure 0006757938
(式(X−1)中、nは1〜10の整数を表す。(式(X−1)中のnは、式(X)中のnと同一である。))
これにより、主鎖部分に加えて、末端部分にも変性が施されたイソプレンオリゴマーが得られる。該イソプレンオリゴマーは、主鎖部分に加えて、末端部分にも変性が施されているため、シリカ等の充填剤との相互作用がより向上し、ゴム組成物に配合することにより、従来よりもより高い次元でゴム分子と充填剤が複合したゴム組成物が得られ、例えば、ゴム組成物の低発熱性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性、破断時伸び、破断強度をより向上できる。
なお、本明細書において、分子(ゴム分子)の末端部分を変性とは、分子(ゴム分子)の末端に存在する上記式(X)で表されるアリル性二リン酸に起因する構造部の所定の部分が所望の官能基に置換されていること、又は、分子(ゴム分子)の末端に存在する上記式(X)で表されるアリル性二リン酸に起因する構造部の所定の部分が異なる構造に置換されていることをいう。
上記式(X−1)中のII部分、III部分に含まれる原子又は原子団(置換される前の原子又は原子団)としては、例えば、水素原子、メチル基、メチレン基、炭素原子、メチン基等が挙げられる。
上記他の原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子、炭素原子等が挙げられる。なかでも、窒素原子は強い分子間力を有し、酵素や細胞膜との強い相互作用を生じ、更に、シリカ等の充填剤との相互作用も強いという理由から、窒素原子が好ましい。
上記他の原子団としては、窒素原子含有基、酸素原子含有基、硫黄原子含有基、ケイ素原子含有基、炭素原子含有基等が挙げられ、例えば、アセトキシ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜3のアルコキシ基、より好ましくはメトキシ基)、水酸基、アリール基(好ましくはフェニル基)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜5のアルキル基、より好ましくはエチル基、tert−ブチル基)、アセチル基、N−アルキルーアセトアミノ基(アルキルの炭素数は好ましくは1〜5)、アジド基等が挙げられる。
なかでも、窒素原子は強い分子間力を有し、酵素や細胞膜との強い相互作用を生じるという理由から、抗菌性に関しては、N−アルキルーアセトアミノ基(より好ましくはN−メチルーアセトアミノ基、N−ブチルーアセトアミノ基)、アジド基が好ましい。また、シリカ等の充填剤との相互作用が強いという理由から、アルコキシ基、水酸基が好ましい。
イソプレン単位の一部が改変されたアリル性二リン酸(アリル性二リン酸誘導体)としては、例えば、下記式(A)〜(S)で表される化合物が挙げられる。なかでも、シリカ等の充填剤との相互作用がより強く、低発熱性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性、破断時伸び、破断強度の向上効果が高いという理由から、下記式(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、(K)、(L)、(R)が好ましく、下記式(B)、(C)がより好ましい。また、抗菌性に優れるという理由から、下記式(G)〜(Q)で表される構造が好ましく、下記式(K)、(L)、又は(Q)で表される構造がより好ましい。
Figure 0006757938
上記式(A)〜(S)などで表されるアリル性二リン酸誘導体は、例えば、ジメチルアリル二リン酸、ゲラニル二リン酸、ファルネシル二リン酸、ゲラニルゲラニル二リン酸、ゲラニオール、ファルネソール、ゲラニルゲラニオール等から、特開2012−036360号公報に記載の方法を参考に当業者であれば製造できる。
次に、下記式(Y)で表される化合物(R−IPP)について説明する。
Figure 0006757938
(式(Y)中、Rはメチル基以外の基を表す。)
式(Y)中、Rはメチル基以外の基であれば特に限定されないが、窒素原子含有基、酸素原子含有基、硫黄原子含有基、ケイ素原子含有基、炭素原子含有基(ただし、メチル基を除く)等が挙げられ、具体的には、アセトキシ基、アルコキシ基、水酸基、アリール基、アルキル基(ただし、メチル基を除く)、アセチル基、N−アセチル−アセトアミノ基、アジド基、アミノ基、メルカプト基等が挙げられる。なかでも、低発熱性、ウェットグリップ性能、破断時伸び、破断強度の向上効果が高いという理由から、窒素原子含有基、酸素原子含有基、硫黄原子含有基、ケイ素原子含有基、炭素原子含有基(ただし、メチル基を除く)が好ましく、アルキル基(特に、炭素数が2〜6のアルキル基)、アリール基(特に、フェニル基)、メルカプト基、水酸基、アミノ基がより好ましく、メルカプト基、水酸基が更に好ましい。
上記式(Y)で表される化合物は、例えば、実施例に記載の方法を参考に当業者であれば製造できる。
本発明のイソプレンオリゴマーにおいて、開始基質である上記式(X)で表されるアリル性二リン酸に付加したイソプレン単位数は、好ましくは1〜30、より好ましくは1〜20、更に好ましくは1〜10である。
本発明のイソプレンオリゴマーの具体例としては、例えば、下記式(Z−1)又は下記式(Z−2)で表されるイソプレンオリゴマーであって、下記式(Z−1)又は下記式(Z−2)中のv部分に含まれる原子又は原子団の少なくとも1つが、他の原子又は原子団により置換されているイソプレンオリゴマーである。
Figure 0006757938
(式(Z−1)中、nは1〜10の整数を表す。mは1〜30の整数を表す。Yは、水酸基、ホルミル基、カルボキシ基、アルコキシカルボキシ基、アルコキシカルボニル基又はOPP基を表す。)
Figure 0006757938
(式(Z−2)中、nは1〜10の整数を表す。mは1〜30の整数を表す。Yは、水酸基、ホルミル基、カルボキシ基、アルコキシカルボキシ基、アルコキシカルボニル基又はOPP基を表す。)
上記式(Z−1)、上記式(Z−2)中のv部分に含まれる原子又は原子団、他の原子又は原子団としては、上記式(X−1)について説明したものと同様のものが挙げられる。
上記式(Z−1)、上記式(Z−2)中のiv部分は、開始基質である上記式(X)で表されるアリル性二リン酸に由来する構造である。そのため、上記式(Z−1)、上記式(Z−2)中のnは、式(X)中のnと同一である。
上記式(Z−1)、上記式(Z−2)中のv部分は、開始基質である上記式(X)で表されるアリル性二リン酸に付加したイソプレン単位である。そのため、上記式(Z−1)、上記式(Z−2)中のmは、上述の開始基質である上記式(X)で表されるアリル性二リン酸に付加したイソプレン単位数に対応する。
上記式(Z−1)、上記式(Z−2)中のYとしては、優れた抗菌性を示すこと、及びシリカ等の充填剤との相互作用が強いことから、OPP基、水酸基、カルボキシ基が好ましい。
なお、上述のように、本発明は、イソペンテニル二リン酸の3位のメチル基以外の部分の構造を維持することにより、3位のメチル基を所望の基に置換した場合であっても、天然に存在する酵素を用いることで、イソプレンオリゴマーやポリイソプレンが生成可能であることを見出したことに基づくものである。そのため、上記式(Z−1)又は上記式(Z−2)で表されるイソプレンオリゴマーは、下記式(Z−1−1)又は下記式(Z−2−1)で表されるイソプレンオリゴマーであることが好ましい。
Figure 0006757938
(式(Z−1−1)中のn、m、Yは、式(Z−1)中のn、m、Yと同一である。式(Z−1−1)中のRは、式(Y)中のRと同一である。)
Figure 0006757938
(式(Z−2−1)中のn、m、Yは、式(Z−2)中のn、m、Yと同一である。式(Z−2−1)中のRは、式(Y)中のRと同一である。)
また、上述のように、主鎖部分に加えて、末端部分にも変性が施されていることが好ましいため、上記式(Z−1)又は上記式(Z−2)(好ましくは上記式(Z−1−1)又は上記式(Z−2−1))中のiv部分に含まれる原子又は原子団の少なくとも1つが、他の原子又は原子団により置換されていることが好ましい。
上記式(Z−1)、上記式(Z−2)、上記式(Z−1−1)、上記式(Z−2−1)中のiv部分に含まれる原子又は原子団、他の原子又は原子団としては、上記式(X−1)について説明したものと同様のものが挙げられる。
更に、上述のように、上記式(X)で表されるアリル性二リン酸が、上記式(X−1)で表されるアリル性二リン酸であり、上記式(X−1)中のII部分に含まれる原子又は原子団の少なくとも1つが他の原子又は原子団により置換され、上記式(X−1)中のIII部分に含まれる原子又は原子団は他の原子又は原子団により置換されていないことが好ましい。そのため、下記式(Z)に、上記式(Z−1)、上記式(Z−2)、上記式(Z−1−1)、上記式(Z−2−1)中のiv部分を示すが、上記式(Z−1)、上記式(Z−2)、上記式(Z−1−1)、上記式(Z−2−1)中のiv部分は、下記式(Z)中のiv−II部分に含まれる原子又は原子団の少なくとも1つが他の原子又は原子団により置換され、下記式(Z)中のiv−III部分に含まれる原子又は原子団は他の原子又は原子団により置換されていないことが好ましい。
Figure 0006757938
上記式(Z)中のiv−II部分、iv−III部分に含まれる原子又は原子団、他の原子又は原子団としては、上記式(X−1)について説明したものと同様のものが挙げられる。
末端部分にも変性が施されている場合のiv部分の具体例としては、例えば、下記式(a)〜(s)で表される構造が挙げられる。なかでも、シリカ等の充填剤との相互作用がより強く、低発熱性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性、破断時伸び、破断強度の向上効果が高いという理由から、下記式(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(k)、(l)、(r)で表される構造が好ましく、下記式(b)、(c)で表される構造がより好ましい。また、抗菌性に優れるという理由から、下記式(g)〜(q)で表される構造が好ましく、下記式(k)、(l)、又は(q)で表される構造がより好ましい。
Figure 0006757938
(イソプレンオリゴマーの製造方法)
本発明のイソプレンオリゴマーは、上記式(X)で表されるアリル性二リン酸と、上記式(Y)で表される化合物とから合成(生合成)されて得られる。
上記式(X)で表されるアリル性二リン酸と、上記式(Y)で表される化合物とから本発明のイソプレンオリゴマーを合成(生合成)する方法としては、例えば、プレニルトランスフェラーゼ活性を有する酵素を用いて行う方法が挙げられる。具体的には、上記式(X)で表されるアリル性二リン酸と、該アリル性二リン酸に重合させるモノマーである上記式(Y)で表される化合物とをプレニルトランスフェラーゼ活性を有する酵素の存在下に反応させればよい。なお、上記式(X)で表されるアリル性二リン酸、上記式(Y)で表される化合物としては、それぞれ同一の化合物のみを使用してもよいが、複数の化合物を使用してもよい。例えば、上記式(Y)で表される化合物として、上記式(Y)中のRが異なる複数の化合物を併用することにより、所望の性質を有するイソプレンオリゴマーが得られる。
本発明では、上記式(X)で表されるアリル性二リン酸に重合させるモノマーとして、上記式(Y)で表される化合物(R−IPP)のみを使用してもよい。この場合、上記scheme2のようなイソプレンオリゴマーが得られる。また、上記式(X)で表されるアリル性二リン酸に重合させるモノマーとして、上記式(Y)で表される化合物(R−IPP)と共に、イソペンテニル二リン酸(IPP)を使用してもよい。この場合、上記scheme3のようなイソプレンオリゴマーが得られる。
なお、本明細書において、プレニルトランスフェラーゼ活性を有する酵素とは、アリル性基質(アリル性二リン酸)とイソペンテニル二リン酸との間の縮合反応を触媒し、イソプレン単位が1単位増えた新たなアリル性二リン酸を合成することにより、アリル性基質(アリル性二リン酸)に順次イソペンテニル二リン酸を連結していく反応を触媒する活性を有する酵素を意味する。
上述のように、イソペンテニル二リン酸の3位のメチル基以外の部分の構造を維持しつつ、3位のメチル基を所望の基に置換した上記式(Y)で表される化合物(R−IPP)であれば、天然に存在するプレニルトランスフェラーゼ活性を有する酵素等を用いることで、イソプレンオリゴマーが生成可能である。
上記プレニルトランスフェラーゼ活性を有する酵素は、既に多くの存在が確認されている。
Z型(新たに増えたイソプレン単位がシス構造)にプレニル鎖を伸長させる酵素としては、例えば、Z−ノナプレニル二リン酸合成酵素(Ishii,K.et al.,(1986)Biochem,J.,233,773.)、ウンデカプレニル二リン酸合成酵素(Takahashi,I.and Ogura,K.(1982)J.Biochem.,92,1527.;Keenman,M.V.and Allen,C.M.(1974)Arch.Biochem.Biophys.,161,375.)、Z−ファルネシル二リン酸合成酵素(Identification of a short (C−15) chain Z−isoprenyl diphosphate synthase and a homologous long (C−50) chain isoprenyl diphosphate synthase in Mycobacterium tuberculosis, Schulbach, MC., et al. JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY, 275(30),22876−22881(2000))、デヒドロドキリキル二リン酸合成酵素(Identification of human dehydrodolichyl diphosphate synthase gene Endo,Shota. et al, Biochimica Et Biophysica Acta (BBA),1625(3),(2003)p.291−295.)等が挙げられる。
また、E型(新たに増えたイソプレン単位がトランス構造)にプレニル鎖を伸長させる酵素としては、例えば、ファルネシル二リン酸合成酵素、ゲラニルゲラニル二リン酸合成酵素、ヘキサプレニル二リン酸合成酵素、ヘプタプレニル二リン酸合成酵素、オクタプレニル二リン酸合成酵素、デカプレニル二リン酸合成酵素等が挙げられる。
各々の酵素により生成できる最大のイソプレン単位の数、プレニル鎖の伸長方向(トランス構造、シス構造)が決まっているため、目的のイソプレン単位数やプレニル鎖の伸長方向に応じて使用する酵素を変更すればよい。なお、本発明では、イソプレンオリゴマーのプレニル鎖の伸長方向(トランス構造、シス構造)は、特に限定されない。すなわち、本発明のイソプレンオリゴマーは、例えば、イソプレン単位が全てトランス型に結合したイソプレンオリゴマー(例えば、上記式(Z−1)で表されるイソプレンオリゴマー)であってもよく、イソプレン単位がトランス−シス型に結合したイソプレンオリゴマー(例えば、上記式(Z−2)で表されるイソプレンオリゴマー)であってもよく、イソプレン単位がトランス−シス−トランス型に結合したイソプレンオリゴマー等であってもよい。
地球上に存在する全ての生物が上記プレニルトランスフェラーゼ活性を有する酵素を有するが、上記プレニルトランスフェラーゼ活性を有する酵素を有する生物としては、例えば、ミクロコッカス・ルテウスB−P26(Micrococcus luteus B−P26)、エシェヒリア・コリ(Escherichia coli)、サッカロマイセス・セレビジア(Saccharomyces cerevisiae)、アラビドプシス・サリアーナ(Arabidopsis thaliana)、ヘベア・ブラジリエンシス(Hevea brasiliensis)、ペリプロカ・セピウム(Periploca sepium)、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bachillus Stearothermophilus)、スルフォロバス・アシドカルダリウス(Sulfolobus acidocaldarius、ATCC49426)、ヒト(Homo sapiens)、ノゲシ(Sonchus oleracers L.)、セイヨウタンポポ(Taraxacum officinale)、ヒマワリ(Helianthus annuus)等が挙げられる。
プレニルトランスフェラーゼ活性を有する酵素の本来の基質(開始基質)は、アリル性二リン酸である。そして、上記アリル性二リン酸誘導体は、本来、上記酵素の阻害剤として機能するものであるため、開始基質として上記アリル性二リン酸誘導体を使用する場合、上記酵素では、上記アリル性二リン酸誘導体(特に、上記式(G)〜(Q)で表される化合物)に対する酵素活性が低い場合が多い。そのため、開始基質として上記アリル性二リン酸誘導体を使用する場合、上記アリル性二リン酸誘導体に対する酵素活性を向上させた変異型酵素を使用してもよい。変異型酵素を使用する場合には、遺伝子工学的手法により、変異型酵素を発現するように形質転換された生物体(形質転換体)を作製すればよく、具体的には、特開2012−036360号公報に記載の方法を参考に当業者であれば容易にアリル性二リン酸誘導体に対する酵素活性を向上させた変異型酵素を作製できる。
上記式(X)で表されるアリル性二リン酸と、上記式(Y)で表される化合物とをプレニルトランスフェラーゼ活性を有する酵素の存在下に反応させることにより、本発明のイソプレンオリゴマーが得られる。プレニルトランスフェラーゼ活性を有する酵素の存在下とは、上記生物の培養物、該培養物より分離した生物体、該生物体の処理物、該培養物若しくは該生物体から精製した酵素、遺伝子工学的手法によりプレニルトランスフェラーゼ活性を有する酵素を発現するように形質転換された生物体(形質転換体)の培養物、該培養物より分離した生物体、該生物体の処理物、該培養物若しくは該生物体から精製した酵素等が存在する状況を意味する。
なお、プレニルトランスフェラーゼ活性を有する酵素を発現するように形質転換された生物体は、当業者であれば、従来公知の遺伝子工学的手法により作製できる。
上記生物の生物体を得るには、当該生物を適当な培地で培養すればよい。このための培地はその生物が増殖し得るものであれば特に制限はなく、通常の炭素源、窒素源、無機イオン、更に必要に応じ有機栄養源を含む通常の培地でよい。
例えば、炭素源としては上記生物が利用可能であればいずれも使用でき、具体的には、グルコース、フルクトース、マルトース、アミロース、スクロース等の糖類、ソルビトール、エタノール、グリセロール等のアルコール類、フマル酸、クエン酸、酢酸、プロピオン酸などの有機酸類及びこれらの塩類、パラフィンなどの炭水化物類あるいはこれらの混合物などを使用することができる。
窒素源としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウムなどの無機塩のアンモニウム塩、フマル酸アンモニウム、クエン酸アンモニウムなどの有機酸のアンモニウム塩、硝酸ナトリウム、硝酸カリウムなどの硝酸塩、ペプトン、酵母エキス、肉エキス、コーンスティープリカーなどの有機窒素化合物あるいはこれらの混合物を使用することができる。
他に無機塩類、微量金属塩、ビタミン類、ホルモン等、通常の培地に用いられる栄養源を適宜混合して用いることができる。
培養条件にも格別の制限はなく、例えば、好気的条件下にてpH5〜8、温度10〜60℃の範囲でpHおよび温度を適当に制限しつつ12〜480時間程度培養を行えばよい。
上記生物の培養物とは、例えば、上述の培養条件にて上記生物を培養した培養液や、該培養液から生物(生物体)をろ過等により分離した培養ろ液(培養上澄液)等が挙げられる。また、上記培養物より分離した生物体とは、例えば、培養液からろ過や遠心分離等により分離された生物体(生物)等が挙げられる。
上記生物体の処理物とは、例えば、上記培養物より分離した生物体をホモジナイズした生物体破砕物、超音波処理した生物体破砕物等が挙げられる。
上記培養物又は上記生物体から精製した酵素とは、例えば、上記培養物又は上記生物体に存在する酵素を塩析、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー等の公知の精製操作を行うことにより得られる酵素である。なお、精製酵素の純度は、特に限定されない。
上記式(X)で表されるアリル性二リン酸と、上記式(Y)で表される化合物とをプレニルトランスフェラーゼ活性を有する酵素の存在下に反応させることにより、本発明のイソプレンオリゴマーが得られるが、具体的には、例えば、上記式(X)で表されるアリル性二リン酸と、上記式(Y)で表される化合物とを含む溶液中に上記生物体の培養物や精製酵素等を添加することにより反応を行えばよい。また、反応温度は、例えば、20〜60℃、反応時間は、例えば、1〜16時間、pHは、例えば5〜8とすればよい。また、必要に応じて、塩化マグネシウム、界面活性剤、2−メルカプトエタノール等を添加してもよい。
上記反応により得られる本発明のイソプレンオリゴマーは、通常、上記式(Z−1)、上記式(Z−2)、上記式(Z−1−1)、上記式(Z−2−1)中のYは、OPP基又は水酸基である。OPP基は、IPPやR−IPPに由来するOPP基である。また、OPP基は、加水分解されやすく、OPP基が加水分解されることにより水酸基が生じる。そのため、通常、上記式(Z−1)、上記式(Z−2)、上記式(Z−1−1)、上記式(Z−2−1)中のYは、OPP基又は水酸基である。
また、上記式(Z−1)、上記式(Z−2)中のYがホルミル基であるイソプレンオリゴマーは、例えば、上記式(Z−1)、上記式(Z−2)中のYがOPP基であるイソプレンオリゴマーを酸化することにより得られる。
また、上記式(Z−1)、上記式(Z−2)中のYがカルボキシ基であるイソプレンオリゴマーは、例えば、上記式(Z−1)、上記式(Z−2)中のYがOPP基であるイソプレンオリゴマーを酸化することにより得られる。
また、上記式(Z−1)、上記式(Z−2)中のYがアルコキシカルボキシ基であるイソプレンオリゴマー、及び上記式(Z−1)、上記式(Z−2)中のYがアルコキシカルボニル基であるイソプレンオリゴマーは、例えば、上記式(Z−1)、上記式(Z−2)中のYがOPP基であるイソプレンオリゴマーを上記の方法でカルボキシル化し、さらにエステル化することにより得られる。
本発明のイソプレンオリゴマーは、上記式(Y)で表される化合物、及び場合により開始基質である上記アリル性二リン酸誘導体を有機合成する以外は、生合成により得られるため、石油資源の枯渇や環境問題に配慮できる。
(ポリイソプレン)
次に、本発明のポリイソプレンについて説明する。本発明のポリイソプレンは、上記式(X)で表されるアリル性二リン酸と、上記式(Y)で表される化合物とから合成(生合成)されて得られるポリイソプレンである。なお、上記式(X)で表されるアリル性二リン酸に重合させるモノマーとして、上記式(Y)で表される化合物と共に、イソペンテニル二リン酸を使用してもよい。例えば、本発明のポリイソプレンは、本発明のイソプレンオリゴマーと、上記式(Y)で表される化合物及び/又はイソペンテニル二リン酸とから合成(生合成)されて得られる。また、本発明のポリイソプレンは、例えば、未変性のイソプレンオリゴマー及び上記式(Y)で表される化合物から、又は、未変性のイソプレンオリゴマー、上記式(Y)で表される化合物、及びイソペンテニル二リン酸から合成(生合成)されて得られる。
本発明のポリイソプレンは、天然ゴムに近い構造を有しており、ゴム分子との相溶性が高い。また、本発明のポリイソプレンは、分子の主鎖部分に変性が加えられているため、シリカ等の充填剤との相互作用が強い。このように、本発明のポリイソプレンは、ゴムとの相溶性が高く、さらに、シリカ等の充填剤との相互作用が強いため、ゴム組成物に配合することにより、従来よりも高い次元でゴム分子と充填剤が複合したゴム組成物が得られ、例えば、ゴム組成物の低発熱性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性、破断時伸び、破断強度を向上できる。
本発明のポリイソプレンは、主鎖部分に極性基等が存在する。そのため、末端部分のみに極性基(例えば、末端部分に存在する二リン酸基)等を有する場合に比べて、シリカ等の充填剤の分散性が高く、例えば、低発熱性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性、破断時伸び、破断強度の向上効果が高い。
また、上記式(X)で表されるアリル性二リン酸として、上記式(X−1)で表されるアリル性二リン酸であって、上記式(X−1)中のII部分に含まれる原子又は原子団の少なくとも1つが他の原子又は原子団により置換され、上記式(X−1)中のIII部分に含まれる原子又は原子団は他の原子又は原子団により置換されていない化合物を使用した場合、主鎖部分に加えて、末端部分にも変性が施されたポリイソプレンが得られる。該ポリイソプレンは、主鎖部分に加えて、末端部分にも変性が施されているため、シリカ等の充填剤との相互作用がより向上し、ゴム組成物に配合することにより、従来よりもより高い次元でゴム分子と充填剤が複合したゴム組成物が得られ、例えば、ゴム組成物の低発熱性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性、破断時伸び、破断強度をより向上できる。
本発明のポリイソプレンにおいて、開始基質である上記式(X)で表されるアリル性二リン酸に付加したイソプレン単位数は、好ましくは30〜40000、より好ましくは31〜38000、更に好ましくは1000〜35000、特に好ましくは2000〜30000である。
本発明のポリイソプレンの具体例としては、例えば、下記式(ZZ−1)又は下記式(ZZ−2)で表されるポリイソプレンであって、下記式(ZZ−1)又は下記式(ZZ−2)中のv部分に含まれる原子又は原子団の少なくとも1つが、他の原子又は原子団により置換されているポリイソプレンである。
Figure 0006757938
(式(ZZ−1)中、nは1〜10の整数を表す。qは30〜40000の整数を表す。Yは、水酸基、ホルミル基、カルボキシ基、アルコキシカルボキシ基、アルコキシカルボニル基又はOPP基を表す。)
Figure 0006757938
(式(ZZ−2)中、nは1〜10の整数を表す。qは30〜40000の整数を表す。Yは、水酸基、ホルミル基、カルボキシ基、アルコキシカルボキシ基、アルコキシカルボニル基又はOPP基を表す。)
上記式(ZZ−1)、上記式(ZZ−2)中のv部分に含まれる原子又は原子団、他の原子又は原子団としては、上記式(X−1)について説明したものと同様のものが挙げられる。
上記式(ZZ−1)、上記式(ZZ−2)中のiv部分は、開始基質である上記式(X)で表されるアリル性二リン酸に由来する構造である。そのため、上記式(ZZ−1)、上記式(ZZ−2)中のnは、式(X)中のnと同一である。
上記式(ZZ−1)、上記式(ZZ−2)中のv部分は、開始基質である上記式(X)で表されるアリル性二リン酸に付加したイソプレン単位である。そのため、上記式(ZZ−1)、上記式(ZZ−2)中のqは、上述の開始基質である上記式(X)で表されるアリル性二リン酸に付加したイソプレン単位数に対応する。
上記式(ZZ−1)、上記式(ZZ−2)中のYとしては、シリカ等の充填剤との相互作用が強いことから、OPP基、水酸基、カルボキシ基が好ましい。
なお、上述のように、本発明は、イソペンテニル二リン酸の3位のメチル基以外の部分の構造を維持することにより、3位のメチル基を所望の基に置換した場合であっても、天然に存在する酵素を用いることで、イソプレンオリゴマーやポリイソプレンが生成可能であることを見出したことに基づくものである。そのため、上記式(ZZ−1)又は上記式(ZZ−2)で表されるポリイソプレンは、下記式(ZZ−1−1)又は下記式(ZZ−2−1)で表されるポリイソプレンであることが好ましい。
Figure 0006757938
(式(ZZ−1−1)中のn、q、Yは、式(ZZ−1)中のn、q、Yと同一である。式(ZZ−1−1)中のRは、式(Y)中のRと同一である。)
Figure 0006757938
(式(ZZ−2−1)中のn、q、Yは、式(ZZ−2)中のn、q、Yと同一である。式(ZZ−2−1)中のRは、式(Y)中のRと同一である。)
また、上述のように、主鎖部分に加えて、末端部分にも変性が施されていることが好ましいため、上記式(ZZ−1)又は上記式(ZZ−2)(好ましくは上記式(ZZ−1−1)又は上記式(ZZ−2−1))中のiv部分に含まれる原子又は原子団の少なくとも1つが、他の原子又は原子団により置換されていることが好ましい。
上記式(ZZ−1)、上記式(ZZ−2)、上記式(ZZ−1−1)、上記式(ZZ−2−1)中のiv部分に含まれる原子又は原子団、他の原子又は原子団としては、上記式(X−1)について説明したものと同様のものが挙げられる。
更に、上述のように、上記式(X)で表されるアリル性二リン酸が、上記式(X−1)で表されるアリル性二リン酸であり、上記式(X−1)中のII部分に含まれる原子又は原子団の少なくとも1つが他の原子又は原子団により置換され、上記式(X−1)中のIII部分に含まれる原子又は原子団は他の原子又は原子団により置換されていないことが好ましい。そのため、下記式(Z)に、上記式(ZZ−1)、上記式(ZZ−2)、上記式(ZZ−1−1)、上記式(ZZ−2−1)中のiv部分を示すが、上記式(ZZ−1)、上記式(ZZ−2)、上記式(ZZ−1−1)、上記式(ZZ−2−1)中のiv部分は、下記式(Z)中のiv−II部分に含まれる原子又は原子団の少なくとも1つが他の原子又は原子団により置換され、下記式(Z)中のiv−III部分に含まれる原子又は原子団は他の原子又は原子団により置換されていないことが好ましい。
Figure 0006757938
上記式(Z)中のiv−II部分、iv−III部分に含まれる原子又は原子団、他の原子又は原子団としては、上記式(X−1)について説明したものと同様のものが挙げられる。
末端部分にも変性が施されている場合のiv部分の具体例としては、例えば、上記式(a)〜(s)で表される構造が挙げられる。なかでも、シリカ等の充填剤との相互作用がより強く、低発熱性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性、破断時伸び、破断強度の向上効果が高いという理由から、上記式(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(k)、(l)、(r)で表される構造が好ましく、上記式(b)、(c)で表される構造がより好ましい。
(ポリイソプレンの製造方法)
本発明のポリイソプレンの製造方法としては、(A)本発明のイソプレンオリゴマーと、上記式(Y)で表される化合物(R−IPP)及び/又はイソペンテニル二リン酸(IPP)とから合成(生合成)する方法が挙げられる。なお、得られるポリイソプレンの目標物性に応じて、モノマーであるR−IPP、IPPの使用比率を適宜変更すればよく、一方の使用比率を0としてもよい。また、本発明のポリイソプレンの製造方法としては、(B)未変性のイソプレンオリゴマー及び上記式(Y)で表される化合物から、又は、(C)未変性のイソプレンオリゴマー、上記式(Y)で表される化合物、及びイソペンテニル二リン酸から合成(生合成)する方法も挙げられる。この場合も、得られるポリイソプレンの目標物性に応じて、モノマーであるR−IPP、IPPの使用比率を適宜変更すればよい。
本発明のポリイソプレンは、上記式(Y)で表される化合物、及び場合により開始基質である上記アリル性二リン酸誘導体を有機合成する以外は、生合成により得られるため、石油資源の枯渇や環境問題に配慮できる。
従来から、天然ゴムラテックス(特に、パラゴムノキ由来の天然ゴムラテックス)には、イソプレンオリゴマーとイソペンテニル二リン酸との間の縮合反応を触媒し、イソプレンオリゴマーに順次イソペンテニル二リン酸をZ型(新たに増えたイソプレン単位がシス構造)に連結していき、ポリイソプレンを生成する以下のような反応を触媒する活性を有する酵素やゴム延長因子(上述のイソペンテニル二リン酸を付加重合する酵素等)等が含まれていることが知られている。
Figure 0006757938
また、植物によっては、該植物から得られる天然ゴムラテックス(ゴムラテックス)に、イソプレンオリゴマーとイソペンテニル二リン酸との間の縮合反応を触媒し、イソプレンオリゴマーに順次イソペンテニル二リン酸をE型(新たに増えたイソプレン単位がトランス構造)に連結していき、ポリイソプレンを生成する反応を触媒する活性を有する酵素やゴム延長因子(上述のイソペンテニル二リン酸を付加重合する酵素等)等が含まれていることも知られている。
上述のように、イソペンテニル二リン酸の3位のメチル基以外の部分の構造を維持しつつ、3位のメチル基を所望の基に置換した上記式(Y)で表される化合物(R−IPP)であれば、天然に存在するポリイソプレンを生成する上記のような反応を触媒する活性を有する酵素やゴム延長因子等を用いることで、ポリイソプレンが生成可能である。よって、本発明では、この酵素やゴム延長因子等を使用して、ポリイソプレンを製造できる。
すなわち、(A)本発明のイソプレンオリゴマーと、上記式(Y)で表される化合物及び/又はイソペンテニル二リン酸とから本発明のポリイソプレンを合成(生合成)する方法、(B)未変性のイソプレンオリゴマー及び上記式(Y)で表される化合物から本発明のポリイソプレンを合成(生合成)する方法、又は、(C)未変性のイソプレンオリゴマー、上記式(Y)で表される化合物、及びイソペンテニル二リン酸から本発明のポリイソプレンを合成(生合成)する方法としては、例えば、天然ゴムラテックス中に含まれる酵素やゴム延長因子等を用いて行う方法が挙げられる。また、天然ゴムラテックスからクローニングされた酵素やゴム延長因子等を用いて行ってもよい。
すなわち、(A)本発明のイソプレンオリゴマーと、上記式(Y)で表される化合物及び/又はイソペンテニル二リン酸とを上記酵素及び/又は上記ゴム延長因子の存在下で反応させればよい。また、(B)未変性のイソプレンオリゴマー及び上記式(Y)で表される化合物とを上記酵素及び/又は上記ゴム延長因子の存在下で反応させればよい。また、(C)未変性のイソプレンオリゴマー、上記式(Y)で表される化合物、及びイソペンテニル二リン酸とを上記酵素及び/又は上記ゴム延長因子の存在下で反応させればよい。
具体的には、例えば、本発明のイソプレンオリゴマーと、上記式(Y)で表される化合物及び/又はイソペンテニル二リン酸とを含む溶液中に、天然ゴムラテックスや天然ゴムラテックスから分離した酵素、ゴム延長因子等を添加することにより反応を行えばよい。また、反応温度は、例えば、10〜60℃、反応時間は、例えば、1〜72時間、pHは、例えば、6〜8とすればよい。また、必要に応じて、塩化マグネシウム、界面活性剤、2−メルカプトエタノール、フッ化カリウム等を添加してもよい。未変性のイソプレンオリゴマーを使用する場合も同様の条件で反応を行えばよい。
なお、本発明では、ポリイソプレンのプレニル鎖の伸長方向(トランス構造、シス構造)は、特に限定されない。すなわち、本発明のポリイソプレンは、例えば、イソプレン単位が全てトランス型に結合したポリイソプレン(例えば、上記式(ZZ−1)で表されるポリイソプレン)であってもよく、イソプレン単位がトランス−シス型に結合したポリイソプレン(例えば、上記式(ZZ−2)で表されるポリイソプレン)であってもよく、イソプレン単位がトランス−シス−トランス型に結合したポリイソプレン等であってもよい。なかでも、工業的に汎用されているパラゴムノキ由来の天然ゴムと同様の構造であるイソプレン単位がトランス−シス型に結合したポリイソプレンが好ましい。
上記反応により得られる本発明のポリイソプレンは、通常、上記式(ZZ−1)、上記式(ZZ−2)、上記式(ZZ−1−1)、上記式(ZZ−2−1)中のYは、OPP基又は水酸基である。OPP基は、IPPやR−IPPに由来するOPP基である。また、OPP基は、加水分解されやすく、OPP基が加水分解されることにより水酸基が生じる。そのため、通常、上記式(ZZ−1)、上記式(ZZ−2)、上記式(ZZ−1−1)、上記式(ZZ−2−1)中のYは、OPP基又は水酸基である。
また、上記式(ZZ−1)、上記式(ZZ−2)中のYがホルミル基であるポリイソプレンは、例えば、上記式(ZZ−1)、上記式(ZZ−2)中のYがOPP基であるポリイソプレンを酸化することにより得られる。
また、上記式(ZZ−1)、上記式(ZZ−2)中のYがカルボキシ基であるポリイソプレンは、例えば、上記式(ZZ−1)、上記式(ZZ−2)中のYがOPP基であるポリイソプレンを酸化することにより得られる。
また、上記式(ZZ−1)、上記式(ZZ−2)中のYがアルコキシカルボキシ基であるポリイソプレン、及び上記式(ZZ−1)、上記式(ZZ−2)中のYがアルコキシカルボニル基であるポリイソプレンは、例えば、上記式(ZZ−1)、上記式(ZZ−2)中のYがOPP基であるポリイソプレンを上記の方法でカルボキシル化し、さらにエステル化することにより得られる。
上記天然ゴムラテックスの由来は、特に限定されず、例えば、パラゴムノキ(Hevea brasiliensis)、インドゴムノキ(Ficus elastica)、カシワバゴムノキ(Ficus lyrata)、ベンジャミンゴムノキ(Ficus benjamina)、インドボダイジュ(Ficus religiosa)、ベンガルボダイジュ(Ficus benghalensis)、チチタケ(Lactarius volemus)、ノゲシ(Sonchus oleracers L.)、セイヨウタンポポ(Taraxacum officinale)、ヒマワリ(Helianthus annuus)等が挙げられる。なかでも、生産されているゴムの分子量が大きい、ラテックス中に含まれるゴム分量が多いという理由から、パラゴムノキが好ましい。
天然ゴムラテックスは、例えば、パラゴムノキの幹にナイフ等を用いて溝状に傷をつけて(タッピング)、切断された乳管から流出する天然ゴムラテックスを回収することにより得られる。
天然ゴムラテックスから分離した酵素、ゴム延長因子とは、例えば、天然ゴムラテックスを遠心分離することにより分離されたしょう液(Serum)や液低相(bottom fraction)やゴム相(rubber fraction)等が挙げられる。しょう液や液低相やゴム相には、上記酵素や上記ゴム延長因子等が含まれている。
(ゴム組成物)
本発明のゴム組成物は、本発明のイソプレンオリゴマー及び/又は本発明のポリイソプレンを含む。よって、本発明のゴム組成物は、低発熱性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性、破断時伸び、破断強度(特に、低発熱性、耐摩耗性)に優れている。なお、本発明のポリイソプレンは、ゴム成分として使用できる。
本発明のポリイソプレンの含有量は、ゴム成分100質量%中、好ましくは20質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは60質量%以上であり、100質量%であってもよい。
本発明のポリイソプレン以外に使用できるゴム成分としては、例えば、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等のジエン系ゴムが挙げられる。ゴム成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、NR、BR、SBRが好ましい。
本発明のイソプレンオリゴマーをゴム組成物に配合する場合は、イソプレンオリゴマーとの相溶性が高いという理由から、ゴム成分として、NRを使用することが好ましい。本発明のイソプレンオリゴマーとNRを併用することにより、本発明のイソプレンオリゴマーを配合した効果がより好適に得られる。
本発明のイソプレンオリゴマーをゴム組成物に配合する場合、ゴム成分100質量%中のNRの含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは60質量%以上であり、100質量%であってもよい。
本発明のイソプレンオリゴマーの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上である。1質量部未満であると、イソプレンオリゴマーを配合したことにより得られる効果が充分に得られないおそれがある。また、上記イソプレンオリゴマーの含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。20質量部を超えると、強度が低下し、また耐摩耗性も低下するおそれがある。
本発明で使用できる充填剤としては、例えば、シリカ、カーボンブラック、クレー、炭酸カルシウム等が挙げられる。
本発明では、充填剤としてシリカを使用することが好ましい。シリカを配合することにより、本発明のイソプレンオリゴマー及び/又は本発明のポリイソプレンを配合することにより得られる効果が充分に得られる。シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
また、本発明では、充填剤としてカーボンブラックを使用することも好ましい。この場合にも、本発明のイソプレンオリゴマー及び/又は本発明のポリイソプレンを配合することにより得られる効果が充分に得られる。
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、例えば、シランカップリング剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、各種老化防止剤、オイル等の軟化剤、ワックス、硫黄等の加硫剤、加硫促進剤などを適宜配合することができる。
本発明のゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
本発明のゴム組成物は、タイヤの各部材(例えば、トレッド、サイドウォール、アンダートレッド、プライ、ブレーカー、カーカス)等に好適に使用できる。
(空気入りタイヤ)
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造できる。すなわち、ゴム組成物を未加硫の段階でタイヤの各部材(例えば、トレッド、サイドウォール)の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成形機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造できる。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
(製造例1)
(3−R−3−butenyl diphosphate(上記式(Y)で表される化合物(R−IPP))の合成)
n−R−aldehydeを出発物質として合成した。n−R−aldehydeに、greenらの方法(M.B.Green,and W.J.Hickinbotton , J.Chem.Soc.,1957,3262)により、ギ酸中でジメチルアミンにより、α位にexomethlene基を導入した(下記(i)で表される化合物)。次に、水素化アルミニウムリチウムにより還元し、2−R−allylalcoholを得た(下記(ii)で表される化合物)。さらに、ピリジン中で塩化リンによりクロロ化し、2−R−allylcholorideを経て(下記(iii)で表される化合物)、グリニャール試薬を合成し、二酸化炭素を反応させてカルボン酸とした(下記(iv)で表される化合物)。次に、水素化アルミニウムリチウムにより還元し、アルコール体を得た(下記(v)で表される化合物)。次に、ピリジン中で、塩化トシルによりトシル化した(下記(vi)で表される化合物)。次に、アセトニトリル中で、リン酸トリメチルによりリン酸化を行い、目的生成物を得た(下記(vii)で表される化合物(上記式(Y)で表される化合物(R−IPP)))。各合成段階における中間体および最終生成物の確認は、TLCおよび機器による分析(IR、NMR)を用いて行った。
なお、上記Rが、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、メルカプト基、水酸基、アミノ基の場合について、上記式(Y)で表される化合物(R−IPP)を合成した。また、上記式(Y)中のRが、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、メルカプト基、水酸基、アミノ基であるR−IPPを、以下においては、それぞれ、R−IPP−A、R−IPP−B、R−IPP−C、R−IPP−D、R−IPP−E、R−IPP−F、R−IPP−Gとも記載する。
Figure 0006757938
(実施例1)
(イソプレンオリゴマー(all−trans)の調製)
下記式(Z−1−1−1)で表されるイソプレン単位が全てトランス型に結合したイソプレンオリゴマーの調製を行った。
Figure 0006757938
(形質転換体の調製)
まず、形質転換体の調製を行った。形質転換体の調製には、ヒト由来ゲラニルゲラニル二リン酸合成酵素が組み込まれたpET15b(pET15b/human−GGPS)を用いた。なお、pET15b/human−GGPSは、東北大学多元物質科学研究所の佐上博准教授より譲渡して頂いた。
pET15b/human−GGPSを用いてヒートショック法によってE.coli BL21 (DE3)を形質転換し、該形質転換体を50μg/mLのアンピシリンを含むLB寒天培地に塗布した後37℃で一晩培養し、形質転換株を選択した。
(プレニルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質の生産)
得られたE.coli BL21 (DE3)/pET15b/human−GGPS(野生型)を50μg/mLのアンピシリンを含む3mLのLB培地が入った試験管に接種し、37℃で5時間振盪培養した。得られた培養液のうち1mLを50μg/mLのアンピシリンを含むLB培地100mLが入った500mL三角フラスコに接種し、37℃で3時間振盪培養後、0.1mmol/LになるようにIPTGを添加し、30℃で18時間振盪培養した。該培養液を遠心分離し、湿菌体を取得した。上記で得られた湿菌体を超音波処理により破砕した後、遠心分離して得られた上清から、HisTrap(アマシャム社製)を用いてプレニルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質を精製した。精製した蛋白質は、SDS−PAGEにより精製を確認した。
(イソプレンオリゴマーの調製)
精製した蛋白質を10mg、50mM Tris−HCl Buffer(pH7.5)、40mM 塩化マグネシウム、25mM 2−メルカプトエタノール、1mM 開始基質(ゲラニル二リン酸(GPP))、1mM イソペンテニル二リン酸(IPP)若しくは製造例1で調製した各R−IPPを含む反応液を調整し、37℃のwater bathで1時間反応させた。反応終了後、飽和食塩水100mlとペンタン500mlを加え、攪拌後、静置した。その後、上清(ペンタン層)をエバポレーションにより濃縮乾固した。その一部をNMRにより構造を確認し、イソプレンオリゴマーを得た。得られたイソプレンオリゴマーの詳細(式(Z−1−1−1)中のn、m、R)を、表1に示した。なお、式(Z−1−1−1)中のn、mは、使用した開始基質の情報と、TLCによるイソプレン鎖長を基に算出した。また、式(Z−1−1−1)中のRは、NMR、TLC、GC−MSにより構造を同定した。
また、モノマーとして、IPP、R−IPP−A、R−IPP−B、R−IPP−C、R−IPP−D、R−IPP−E、R−IPP−F、R−IPP−Gを使用して得られたイソプレンオリゴマーを、それぞれ、イソプレンオリゴマー(t−control)、イソプレンオリゴマー(t−A)、イソプレンオリゴマー(t−B)、イソプレンオリゴマー(t−C)、イソプレンオリゴマー(t−D)、イソプレンオリゴマー(t−E)、イソプレンオリゴマー(t−F)、イソプレンオリゴマー(t−G)として以下の実験で使用した。また、イソプレンオリゴマー(t−E)、イソプレンオリゴマー(t−F)は、イソプレンオリゴマーa、イソプレンオリゴマーeとして、以下の実験でゴム組成物に配合した。
Figure 0006757938
(各モノマーの相対活性)
IPP若しくは製造例1で調製した各R−IPP、及びゲラニル二リン酸(GPP)を用いて、以下の条件で反応を行い、GPPに対する各R−IPPの相対活性を、IPPの場合の活性を100として指数表示した。
精製した蛋白質を500ng、50mM Tris−HCl Buffer(pH7.5)、40mM 塩化マグネシウム、25mM 2−メルカプトエタノール、12.5μM GPP、50μM[1−14C]IPP若しくは製造例1で調製した各R−IPP、を含む反応液を調整し、37℃のwater bathで1時間反応させた。反応後、液体シンチレーションの値とTLCを定量することにより、各条件における活性を測定し、IPPの場合の活性を100として各R−IPPの相対活性を表2に示した。
また、上記(実施例1)(イソプレンオリゴマーの調製)と同様に、イソプレンオリゴマーを精製した。そして、得られたイソプレンオリゴマーの詳細(式(Z−1−1−1)中のn、m、R)を、表2に示した。なお、式(Z−1−1−1)中のn、mは、使用した開始基質の情報と、TLCによるイソプレン鎖長を基に算出した。また、式(Z−1−1−1)中のRは、NMR、TLC、GC−MSにより構造を同定した。
Figure 0006757938
表1、2の結果より、R−IPPを使用した場合であっても、IPPを使用した場合と同等の分子量のイソプレンオリゴマーが得られた。また、得られたイソプレンオリゴマーの主鎖が、使用したR−IPPに応じて変性されていることも確認できた。
(実施例2)
(ポリイソプレンの調製)
次に、上記式(Z−1−1−1)で表されるイソプレン単位が全てトランス型に結合したイソプレンオリゴマー(all−trans)を使用して、ポリイソプレンの調製を行った。
ラテックス成分を10μl、50mM Tris−HCl Buffer(pH7.5)、25mM 塩化マグネシウム、40mM 2−メルカプトエタノール、40mM フッ化カリウム、50μM イソプレンオリゴマー、1mM IPP若しくは製造例1で調製した各R−IPPを含む反応液を調整し、30℃のwater bathで3日間反応させた。反応後、GPCにより分子量を測定した。そして、測定した分子量と、使用した開始基質の情報を基に、開始基質であるGPPに付加したイソプレン単位数を算出した。結果を表3に示した。
なお、ラテックス成分としては、パラゴムノキから得られたラテックスを超遠心分離することにより調製したしょう液を使用した。
なお、イソプレンオリゴマーは、上記(イソプレンオリゴマーの調製)により調製したイソプレンオリゴマー(t−control)、イソプレンオリゴマー(t−A)、イソプレンオリゴマー(t−B)、イソプレンオリゴマー(t−C)、イソプレンオリゴマー(t−D)、イソプレンオリゴマー(t−E)、イソプレンオリゴマー(t−F)、イソプレンオリゴマー(t−G)を使用した。
Figure 0006757938
表3の結果より、R−IPPを使用した場合であっても、IPPを使用した場合と同等の分子量のポリイソプレンが得られた。また、得られたポリイソプレンをNMR、TLC、GC−MSにより分析した結果、イソプレンオリゴマーの場合と同様に、使用したR−IPPに応じてポリイソプレンの主鎖が変性されていることも確認できた。
(実施例3)
(イソプレンオリゴマー(trans−cis)の調製)
下記式(Z−2−1−1)で表されるイソプレン単位がトランス−シス型に結合したイソプレンオリゴマーの調製を行った。
Figure 0006757938
(形質転換体の調製)
まず、形質転換体の調製を行った。形質転換体の調製には、dsDNA templateとして、Micrococcus luteus B−P26由来ウンデカプレニル二リン酸合成酵素が組み込まれたpET22b(pET22b/MLU−UPS)を用いた。なお、pET22b/MLU−UPS は、東北大学多元物質科学研究所の古山種俊教授より譲渡して頂いた。
pET22b/MLU−UPSを用いてヒートショック法によってE.coli BL21 (DE3)を形質転換し、該形質転換体を50μg/mLのアンピシリンを含むLB寒天培地に塗布した後37℃で一晩培養し、形質転換株を選択した。
(プレニルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質の生産)
得られたE.coli BL21 (DE3)/pET22b/MLU−UPSを50μg/mLのアンピシリンを含む3mLのLB培地が入った試験管に接種し、37℃で5時間振盪培養した。得られた培養液のうち1mLを50μg/mLのアンピシリンを含むLB培地100mLが入った500mL三角フラスコに接種し、37℃で3時間振盪培養後、0.1mmol/LになるようにIPTGを添加し、30℃で18時間振盪培養した。該培養液を遠心分離し、湿菌体を取得した。上記で得られた湿菌体を超音波処理により破砕した後、遠心分離して得られた上清から、HisTrap(アマシャム社製)を用いてプレニルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質を精製した。精製した蛋白質は、SDS−PAGEにより精製を確認した。
(イソプレンオリゴマーの調製)
精製した蛋白質を10mg、50mM Tris−HCl Buffer(pH 7.5)、40mM 塩化マグネシウム、40mM Triton X−100、25mM 2−メルカプトエタノール、1mM 開始基質(ファルネシル二リン酸(FPP))、1mM IPP若しくは製造例1で調製した各R−IPPを含む反応液を調整し、37℃のwater bathで1時間反応させた。反応終了後、飽和食塩水100mlと1−ブタノール500mlを加え、攪拌後、静置した。その後、上清(1−ブタノール層)をエバポレーションにより濃縮乾固した。その一部をNMRにより構造を確認し、イソプレンオリゴマーを得た。得られたイソプレンオリゴマーの詳細(式(Z−2−1−1)中のn、m、R)を、表4に示した。なお、式(Z−2−1−1)中のn、mは、使用した開始基質の情報と、TLCによるイソプレン鎖長を基に算出した。また、式(Z−2−1−1)中のRは、NMR、TLC、GC−MSにより構造を同定した。
また、モノマーとして、IPP、R−IPP−A、R−IPP−B、R−IPP−C、R−IPP−D、R−IPP−E、R−IPP−F、R−IPP−Gをそれぞれ使用して得られたイソプレンオリゴマーを、それぞれ、イソプレンオリゴマー(tc−control)、イソプレンオリゴマー(tc−A)、イソプレンオリゴマー(tc−B)、イソプレンオリゴマー(tc−C)、イソプレンオリゴマー(tc−D)、イソプレンオリゴマー(tc−E)、イソプレンオリゴマー(tc−F)、イソプレンオリゴマー(tc−G)として以下の実験で使用した。また、イソプレンオリゴマー(tc−E)は、イソプレンオリゴマーbとして、以下の実験でゴム組成物に配合した。更に、イソプレンオリゴマー(tc−A)、イソプレンオリゴマー(tc−B)、イソプレンオリゴマー(tc−C)、イソプレンオリゴマー(tc−D)、イソプレンオリゴマー(tc−E)、イソプレンオリゴマー(tc−F)、イソプレンオリゴマー(tc−G)を、イソプレンオリゴマーh、イソプレンオリゴマーi、イソプレンオリゴマーj、イソプレンオリゴマーk、イソプレンオリゴマーl、イソプレンオリゴマーm、イソプレンオリゴマーnとして、以下の実験でゴム組成物に配合した。
Figure 0006757938
(各モノマーの相対活性)
IPP若しくは製造例1で調製した各R−IPP、及びファルネシル二リン酸(FPP)を用いて、以下の条件で反応を行い、FPPに対する各R−IPPの相対活性を、IPPの場合の活性を100として指数表示した。
精製した蛋白質を500ng、50mM Tris−HCl Buffer(pH7.5)、40mM 塩化マグネシウム、40mM TritonX−100、25mM 2−メルカプトエタノール、12.5μM FPP、50μM[1−14C]IPP若しくは製造例1で調製した各R−IPP、を含む反応液を調整し、37℃のwater bathで1時間反応させた。反応後、液体シンチレーションの値とTLCを定量することにより、各条件における活性を測定し、IPPの場合の活性を100として各R−IPPの相対活性を表5に示した。
また、上記(実施例3)(イソプレンオリゴマーの調製)と同様に、イソプレンオリゴマーを精製した。そして、得られたイソプレンオリゴマーの詳細(式(Z−2−1−1)中のn、m、R)を、表5に示した。なお、式(Z−2−1−1)中のn、mは、使用した開始基質の情報と、TLCによるイソプレン鎖長を基に算出した。また、式(Z−2−1−1)中のRは、NMR、TLC、GC−MSにより構造を同定した。
Figure 0006757938
表4、5の結果より、R−IPPを使用した場合であっても、IPPを使用した場合と同等の分子量のイソプレンオリゴマーが得られた。また、得られたイソプレンオリゴマーの主鎖が、使用したR−IPPに応じて変性されていることも確認できた。
(実施例4)
(ポリイソプレンの調製)
次に、上記式(Z−2−1−1)で表されるイソプレン単位がトランス−シス型に結合したイソプレンオリゴマー(trans−cis)を使用して、ポリイソプレンの調製を行った。
ラテックス成分を10μl、50mM Tris−HCl Buffer(pH7.5)、25mM 塩化マグネシウム、40mM 2−メルカプトエタノール、40mM フッ化カリウム、50μM イソプレンオリゴマー、1mM IPP若しくは製造例1で調製した各R−IPPを含む反応液を調整し、30℃のwater bathで3日間反応させた。反応後、GPCにより分子量を測定した。そして、測定した分子量と、使用した開始基質の情報を基に、開始基質であるFPPに付加したイソプレン単位数を算出した。結果を表6に示した。
なお、ラテックス成分としては、パラゴムノキから得られたラテックスを超遠心分離することにより調製したしょう液を使用した。
なお、イソプレンオリゴマーは、上記(イソプレンオリゴマーの調製)により調製したイソプレンオリゴマー(tc−control)、イソプレンオリゴマー(tc−A)、イソプレンオリゴマー(tc−B)、イソプレンオリゴマー(tc−C)、イソプレンオリゴマー(tc−D)、イソプレンオリゴマー(tc−E)、イソプレンオリゴマー(tc−F)、イソプレンオリゴマー(tc−G)を使用した。なお、イソプレンオリゴマー(tc−E)、イソプレンオリゴマー(tc−F)を使用して得られたポリイソプレンは、ポリイソプレンD、ポリイソプレンAとして、以下の実験でゴム組成物に配合した。更に、イソプレンオリゴマー(tc−A)、イソプレンオリゴマー(tc−B)、イソプレンオリゴマー(tc−C)、イソプレンオリゴマー(tc−D)、イソプレンオリゴマー(tc−E)、イソプレンオリゴマー(tc−F)、イソプレンオリゴマー(tc−G)を使用して得られたポリイソプレンは、ポリイソプレンI、ポリイソプレンJ、ポリイソプレンK、ポリイソプレンL、ポリイソプレンM、ポリイソプレンN、ポリイソプレンPとして、以下の実験でゴム組成物に配合した。
Figure 0006757938
表6の結果より、R−IPPを使用した場合であっても、IPPを使用した場合と同等の分子量のポリイソプレンが得られた。また、得られたポリイソプレンをNMR、TLC、GC−MSにより分析した結果、イソプレンオリゴマーの場合と同様に、使用したR−IPPに応じてポリイソプレンの主鎖が変性されていることも確認できた。
(実施例5)
(イソプレンオリゴマー(all−trans)の調製)
下記式(Z−1−1−1)で表されるイソプレン単位が全てトランス型に結合したイソプレンオリゴマーの調製を行った。
Figure 0006757938
(形質転換体の調製)
まず、形質転換体の調製を行った。形質転換体の調製には、Bacillus Sterarothermophilus由来ファルネシル二リン酸合成酵素が組み込まれたpET15b(pET15b/bacillus−FPS)を用いた。なお、pET15b/bacillus−FPSは、東北大学多元物質科学研究所の古山種俊教授より譲渡して頂いた。
pET15b/bacillus−FPSを用いてヒートショック法によってE.coli BL21 (DE3)を形質転換し、該形質転換体を50μg/mLのアンピシリンを含むLB寒天培地に塗布した後37℃で一晩培養し、形質転換株を選択した。
(プレニルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質の生産)
得られたE.coli BL21 (DE3)/pET15b/bacillus−FPS(野生型)を50μg/mLのアンピシリンを含む3mLのLB培地が入った試験管に接種し、37℃で5時間振盪培養した。得られた培養液のうち1mLを50μg/mLのアンピシリンを含むLB培地100mLが入った500mL三角フラスコに接種し、37℃で3時間振盪培養後、0.1mmol/LになるようにIPTGを添加し、30℃で18時間振盪培養した。該培養液を遠心分離し、湿菌体を取得した。上記で得られた湿菌体を超音波処理により破砕した後、遠心分離して得られた上清から、HisTrap(アマシャム社製)を用いてプレニルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質を精製した。精製した蛋白質は、SDS−PAGEにより精製を確認した。
(イソプレンオリゴマーの調製)
精製した蛋白質を10mg、50mM Tris−HCl Buffer(pH7.5)、40mM 塩化マグネシウム、25mM 2−メルカプトエタノール、1mM 開始基質(ジメチルアリル二リン酸(DMAPP))、1mM イソペンテニル二リン酸(IPP)若しくは製造例1で調製した各R−IPPを含む反応液を調整し、37℃のwater bathで1時間反応させた。反応終了後、飽和食塩水100mlとペンタン500mlを加え、攪拌後、静置した。その後、上清(ペンタン層)をエバポレーションにより濃縮乾固した。その一部をNMRにより構造を確認し、イソプレンオリゴマーを得た。得られたイソプレンオリゴマーの詳細(式(Z−1−1−1)中のn、m、R)を、表7に示した。なお、式(Z−1−1−1)中のn、mは、使用した開始基質の情報と、TLCによるイソプレン鎖長を基に算出した。また、式(Z−1−1−1)中のRは、NMR、TLC、GC−MSにより構造を同定した。
また、モノマーとして、IPP、R−IPP−A、R−IPP−B、R−IPP−C、R−IPP−D、R−IPP−E、R−IPP−F、R−IPP−Gを使用して得られたイソプレンオリゴマーを、それぞれ、イソプレンオリゴマー(t−control−1)、イソプレンオリゴマー(t−A−1)、イソプレンオリゴマー(t−B−1)、イソプレンオリゴマー(t−C−1)、イソプレンオリゴマー(t−D−1)、イソプレンオリゴマー(t−E−1)、イソプレンオリゴマー(t−F−1)、イソプレンオリゴマー(t−G−1)として以下の実験で使用した。
Figure 0006757938
(各モノマーの相対活性)
IPP若しくは製造例1で調製した各R−IPP、及びジメチル二リン酸(DMAPP)を用いて、以下の条件で反応を行い、DMAPPに対する各R−IPPの相対活性を、IPPの場合の活性を100として指数表示した。
精製した蛋白質を500ng、50mM Tris−HCl Buffer(pH7.5)、40mM 塩化マグネシウム、25mM 2−メルカプトエタノール、12.5μM DMAPP、50μM[1−14C]IPP若しくは製造例1で調製した各R−IPP、を含む反応液を調整し、37℃のwater bathで1時間反応させた。反応後、液体シンチレーションの値とTLCを定量することにより、各条件における活性を測定し、IPPの場合の活性を100として各R−IPPの相対活性を表8に示した。
また、上記(実施例5)(イソプレンオリゴマーの調製)と同様に、イソプレンオリゴマーを精製した。そして、得られたイソプレンオリゴマーの詳細(式(Z−1−1−1)中のn、m、R)を、表8に示した。なお、式(Z−1−1−1)中のn、mは、使用した開始基質の情報と、TLCによるイソプレン鎖長を基に算出した。また、式(Z−1−1−1)中のRは、NMR、TLC、GC−MSにより構造を同定した。
Figure 0006757938
表7、8の結果より、R−IPPを使用した場合であっても、IPPを使用した場合と同等の分子量のイソプレンオリゴマーが得られた。また、得られたイソプレンオリゴマーの主鎖が、使用したR−IPPに応じて変性されていることも確認できた。
(実施例6)
(ポリイソプレンの調製)
次に、上記式(Z−1−1−1)で表されるイソプレン単位が全てトランス型に結合したイソプレンオリゴマー(all−trans)を使用して、ポリイソプレンの調製を行った。
ラテックス成分を10μl、50mM Tris−HCl Buffer(pH7.5)、25mM 塩化マグネシウム、40mM 2−メルカプトエタノール、40mM フッ化カリウム、50μM イソプレンオリゴマー、1mM IPP若しくは製造例1で調製した各R−IPPを含む反応液を調整し、30℃のwater bathで3日間反応させた。反応後、GPCにより分子量を測定した。そして、測定した分子量と、使用した開始基質の情報を基に、開始基質であるDMAPPに付加したイソプレン単位数を算出した。結果を表9に示した。
なお、ラテックス成分としては、パラゴムノキから得られたラテックスを超遠心分離することにより調製したしょう液を使用した。
なお、イソプレンオリゴマーは、上記(イソプレンオリゴマーの調製)により調製したイソプレンオリゴマー(t−control−1)、イソプレンオリゴマー(t−A−1)、イソプレンオリゴマー(t−B−1)、イソプレンオリゴマー(t−C−1)、イソプレンオリゴマー(t−D−1)、イソプレンオリゴマー(t−E−1)、イソプレンオリゴマー(t−F−1)、イソプレンオリゴマー(t−G−1)を使用した。
Figure 0006757938
表9の結果より、R−IPPを使用した場合であっても、IPPを使用した場合と同等の分子量のポリイソプレンが得られた。また、得られたポリイソプレンをNMR、TLC、GC−MSにより分析した結果、イソプレンオリゴマーの場合と同様に、使用したR−IPPに応じてポリイソプレンの主鎖が変性されていることも確認できた。
(実施例7)
(イソプレンオリゴマー(trans−cis)の調製)
次に、アリル性二リン酸誘導体を使用して、下記式(Z−2−1−1)で表されるイソプレン単位がトランス−シス型に結合したイソプレンオリゴマーであって、主鎖部分に加えて、末端部分にも変性が施されたイソプレンオリゴマー(主鎖末端変性イソプレンオリゴマー)の調製を行った。
Figure 0006757938
(アリル性二リン酸誘導体の調製)
まず、アリル性二リン酸誘導体の合成を行った。
(製造例2)
(8−metoxy−3,7−dimetyl−dodeca−(2E,6E)−dienyl diphosphate(上記式(B)で表される化合物)の合成)
ゲラニオールを出発物質として合成した。無水ジクロロメタン中でピリジンと無水酢酸を用いてアセチル化し、アセテート(下記(bi)で表される化合物)を得た(収率95%)。次に、エタノール中で8位の炭素にセレン酸化し、アルデヒド体(下記(bii)で表される化合物)を得た(収率24%)。次に水酸化カリウムを用いてアルカリ加水分解し、アルコール体(下記(biii)で表される化合物)を得た(収率38%)。次に無水ジクロロメタン中でイミダゾール、tert−ブチルジフェニルシリルクロライド(TBDPS)を用いて(下記(biv)で表される化合物)を得た(収率80%)。その後、無水エーテル中でブチルリチウムを反応させ、ブチルアルコール体(下記(bv)で表される化合物)を得た(収率73%)。次に無水テトラヒドラフラン中で水酸化ナトリウムでナトリウム塩にした後ヨウ化メチルを加え、Williamson合成により、エーテル体(下記(bvi)で表される化合物)を得た(収率95%)。次に無水テトラヒドラフラン中でテトラ−n−アンモニウムフルオリドを用いて脱離し、アルコール体(下記(bvii)で表される化合物)を得た(収率87%)。次に−40℃以下、無水ジクロロメタン溶媒中でN−クロロコハク酸イミドとジメチルスルフィドを用いて、一級水酸基を塩素置換し、塩化物(下記(bviii)で表わされる化合物)を得た(収率92%)。次に無水アセトニトリル中でトリス−テトラnブチルアンモニウム水素化リン酸塩を用いて二リン酸化し、目的物質である(下記(bix)で表わされる化合物(上記式(B)で表わされる化合物))を得た(収率26%)。
各合成段階における中間体および最終生成物の確認は、TLCおよび機器による分析(IR、NMR)を用いて行った。
Figure 0006757938
(製造例3)
(8−hydroxy−3,7−dimetyl−dodeca−(2E,6E)−dienyl diphosphate(上記式(C)で表される化合物)の合成)
ゲラニオールを出発物質として合成した。無水ジクロロメタン中でピリジンと無水酢酸を用いてアセチル化し、アセテート(下記(ci)で表される化合物)を得た(収率97%)。次に、エタノール中で8位の炭素にセレン酸化し、アルデヒド体(下記(cii)で表される化合物)を得た(収率20%)。次に水酸化カリウムを用いてアルカリ加水分解し、アルコール体(下記(ciii)で表される化合物)を得た(収率42%)。次に無水ジクロロメタン中でイミダゾール、tert−ブチルジフェニルシリルクロライド(TBDPS)を用いて(下記(civ)で表される化合物)を得た(収率80%)。その後、無水エーテル中でブチルリチウムを反応させ、ブチルアルコール体を得た(収率62%)。次に無水テトラヒドラフラン中でテトラ−n−アンモニウムフルオリドを用いて脱離し、ジオール体(下記(cvi)で表される化合物)を得た(収率94%)。次に−40℃以下、無水ジクロロメタン溶媒中でN−クロロコハク酸イミドとジメチルスルフィドを用いて、一級水酸基を塩素置換し、塩化物(下記(cvii)で表わされる化合物)を得た(収率90%)。次に無水アセトニトリル中でトリス−テトラnブチルアンモニウム水素化リン酸塩を用いて二リン酸化し、目的物質である(下記(cviii)で表わされる化合物(上記式(C)で表わされる化合物))を得た(収率46%)。
各合成段階における中間体および最終生成物の確認は、TLCおよび機器による分析(IR、NMR)を用いて行った。
Figure 0006757938
(変異導入酵素の作製)
開始基質としてアリル性二リン酸誘導体を使用した場合、野生型のプレニルトランスフェラーゼ活性を有する酵素を使用しても反応を進行させ、イソプレンオリゴマーを調製できるが、反応効率の向上を図るため、アリル性二リン酸誘導体に対する酵素活性を向上させた変異型酵素の作製を行った。
試薬はStratagene社のQuickChange Site−Directed Mutagenesis Kitを用いた。目的の部位に変異を導入できるようにプライマーを設計した。なお、変異導入用プライマーは株式会社医学生物学研究所(製造元:IDT)より購入した。設計したプライマーは、以下に示すとおりである。
変異型酵素N77A作製用プライマー
センスプライマー 5’−act gaa gca tgg tct cgt cct aaa g−3’(配列番号1)
アンチセンスプライマー 5’−gag acc atg ctt cag ttg aaa atg c−3’(配列番号2)
変異型酵素L91D作製用プライマー
センスプライマー 5’−gat gaa aga tcc ggg tga ttt ttt aa−3’(配列番号3)
アンチセンスプライマー 5’−cac ccg gat ctt tca tca agt aat ta−3’(配列番号4)
dsDNA templateはMicrococcus luteus B−P26由来ウンデカプレニル二リン酸合成酵素(以下、野生型酵素ともいう)が組み込まれたpET22b(pET22b/MLU−UPS)を用いた。なお、pET22b/MLU−UPSは、東北大学多元物質科学研究所の古山種俊教授より譲渡して頂いた。10x Pfu polymerase bufferを 2μl、dsDNA template 2−20ng、sense primer 50ng、antisense primer 50ng、2.5mM each dNTP 0.4μl、ddHO up to 20μl、Pfu polymerase (2.5U/μl) 0.4mlを混合し、PCR反応を行なった。PCR反応は、95℃ 30 secを1サイクル、95℃ 30 sec−55℃ 1 min−68℃ 8 minを15サイクル行った。PCR後、PCR反応液にDpn Iを0.4μl入れ、37℃ 1時間、Dpn I 処理を行なった。Dpn I処理液1−10μl を用いヒートショック法によってE.coli DH5αを形質転換し、該形質転換体を50μg/mLのアンピシリンを含むLB寒天培地に塗布した後37℃で一晩培養し、形質転換株を選択した。該形質転換体を50μg/mlのアンピシリンを含むLB培地で終夜培養し、得られた培養液からアルカリSDS法によりプラスミドを調製した。該プラスミドは、シークエンサーを用いて変異導入を確認した。
(プレニルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質の生産)
得られたE.coli BL21 (DE3)/pET22b/MLU−UPS(野生型および変異型)を50μg/mLのアンピシリンを含む3mLのLB培地が入った試験管に接種し、37℃で5時間振盪培養した。得られた培養液のうち1mLを50μg/mLのアンピシリンを含むLB培地100mLが入った500mL三角フラスコに接種し、37℃で3時間振盪培養後、0.1mmol/LになるようにIPTG を添加し、30℃で18時間振盪培養した。該培養液を遠心分離し、湿菌体を取得した。上記で得られた湿菌体を超音波処理により破砕した後、遠心分離して得られた上清から、HisTrap(アマシャム社製)を用いてプレニルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質を精製した。精製した蛋白質は、SDS−PAGEにより精製を確認した。得られた変異型酵素N77A、変異型酵素L91Dのアミノ酸配列を配列表配列番号5、6に示す。
(イソプレンオリゴマーの調製)
精製した各蛋白質を10mg、50mM Tris−HCl Buffer(pH 7.5)、40mM 塩化マグネシウム、40mM Triton X−100、25mM 2−メルカプトエタノール、1mM 開始基質(ファルネシル二リン酸(FPP)又は製造例2、3で調製したアリル性二リン酸誘導体)、1mM IPP若しくは製造例1で調製した各R−IPPを含む反応液を調整し、37℃のwater bathで1時間反応させた。反応終了後、飽和食塩水100mlと1−ブタノール500mlを加え、攪拌後、静置した。その後、上清(1−ブタノール層)をエバポレーションにより濃縮乾固した。その一部をNMRにより構造を確認し、イソプレンオリゴマーを得た。得られたイソプレンオリゴマーの詳細(式(Z−2−1−1)中のn、m、R)を、表10に示した。なお、式(Z−2−1−1)中のn、mは、使用した開始基質の情報と、TLCによるイソプレン鎖長を基に算出した。また、式(Z−2−1−1)中のRは、NMR、TLC、GC−MSにより構造を同定した。
また、酵素として変異型酵素N77A、開始基質として上記式(B)で表わされる化合物を使用し、モノマーとして、IPP、R−IPP−A、R−IPP−B、R−IPP−C、R−IPP−D、R−IPP−E、R−IPP−F、R−IPP−Gをそれぞれ使用して得られたイソプレンオリゴマーを、それぞれ、イソプレンオリゴマー(tc−control−AB)、イソプレンオリゴマー(tc−A−AB)、イソプレンオリゴマー(tc−B−AB)、イソプレンオリゴマー(tc−C−AB)、イソプレンオリゴマー(tc−D−AB)、イソプレンオリゴマー(tc−E−AB)、イソプレンオリゴマー(tc−F−AB)、イソプレンオリゴマー(tc−G−AB)として以下の実験で使用した。
また、酵素として変異型酵素L91D、開始基質として上記式(B)で表わされる化合物を使用し、モノマーとして、IPP、R−IPP−A、R−IPP−B、R−IPP−C、R−IPP−D、R−IPP−E、R−IPP−F、R−IPP−Gをそれぞれ使用して得られたイソプレンオリゴマーを、それぞれ、イソプレンオリゴマー(tc−control−DB)、イソプレンオリゴマー(tc−A−DB)、イソプレンオリゴマー(tc−B−DB)、イソプレンオリゴマー(tc−C−DB)、イソプレンオリゴマー(tc−D−DB)、イソプレンオリゴマー(tc−E−DB)、イソプレンオリゴマー(tc−F−DB)、イソプレンオリゴマー(tc−G−DB)として以下の実験で使用した。
また、酵素として変異型酵素N77A、開始基質として上記式(C)で表わされる化合物を使用し、モノマーとして、IPP、R−IPP−A、R−IPP−B、R−IPP−C、R−IPP−D、R−IPP−E、R−IPP−F、R−IPP−Gをそれぞれ使用して得られたイソプレンオリゴマーを、それぞれ、イソプレンオリゴマー(tc−control−AC)、イソプレンオリゴマー(tc−A−AC)、イソプレンオリゴマー(tc−B−AC)、イソプレンオリゴマー(tc−C−AC)、イソプレンオリゴマー(tc−D−AC)、イソプレンオリゴマー(tc−E−AC)、イソプレンオリゴマー(tc−F−AC)、イソプレンオリゴマー(tc−G−AC)として以下の実験で使用した。
また、酵素として変異型酵素L91D、開始基質として上記式(C)で表わされる化合物を使用し、モノマーとして、IPP、R−IPP−A、R−IPP−B、R−IPP−C、R−IPP−D、R−IPP−E、R−IPP−F、R−IPP−Gをそれぞれ使用して得られたイソプレンオリゴマーを、それぞれ、イソプレンオリゴマー(tc−control−DC)、イソプレンオリゴマー(tc−A−DC)、イソプレンオリゴマー(tc−B−DC)、イソプレンオリゴマー(tc−C−DC)、イソプレンオリゴマー(tc−D−DC)、イソプレンオリゴマー(tc−E−DC)、イソプレンオリゴマー(tc−F−DC)、イソプレンオリゴマー(tc−G−DC)として以下の実験で使用した。
なお、イソプレンオリゴマー(tc−E−AB)、イソプレンオリゴマー(tc−F−AB)、イソプレンオリゴマー(tc−E−DB)、イソプレンオリゴマー(tc−F−DB)は、イソプレンオリゴマーc、イソプレンオリゴマーf、イソプレンオリゴマーd、イソプレンオリゴマーgとして、以下の実験でゴム組成物に配合した。
Figure 0006757938
(各モノマーの相対活性)
IPP若しくは製造例1で調製した各R−IPP、及びファルネシル二リン酸(FPP)若しくは製造例2、3で調製したアリル性二リン酸誘導体を用いて、以下の条件で反応を行い、FPP、IPPを用いた場合に対する各アリル性二リン酸誘導体、各R−IPPを用いた場合の相対活性を、FPP、IPPの場合の活性を100として指数表示した。
精製した各蛋白質を500ng、50mM Tris−HCl Buffer(pH7.5)、40mM 塩化マグネシウム、40mM TritonX−100、25mM 2−メルカプトエタノール、12.5μM FPP若しくは製造例2、3で調製したアリル性二リン酸誘導体、50μM[1−14C]IPP若しくは製造例1で調製した各R−IPP、を含む反応液を調整し、37℃のwater bathで1時間反応させた。反応後、液体シンチレーションの値とTLCを定量することにより、各条件における活性を測定し、FPP、IPPの場合の活性を100として各アリル性二リン酸誘導体、各R−IPPを用いた場合の相対活性を表11に示した。
また、上記(実施例7)(イソプレンオリゴマーの調製)と同様に、イソプレンオリゴマーを精製した。そして、得られたイソプレンオリゴマーの詳細(式(Z−2−1−1)中のn、m、R)を、表11に示した。なお、式(Z−2−1−1)中のn、mは、使用した開始基質の情報と、TLCによるイソプレン鎖長を基に算出した。また、式(Z−2−1−1)中のRは、NMR、TLC、GC−MSにより構造を同定した。
Figure 0006757938
表10、11の結果より、R−IPP、アリル性二リン酸誘導体を使用した場合であっても、IPP、FPPを使用した場合と同等の分子量のイソプレンオリゴマーが得られた。また、得られたイソプレンオリゴマーが、使用したR−IPP、アリル性二リン酸誘導体に応じて変性されていることも確認できた。
(実施例8)
(ポリイソプレンの調製)
次に、アリル性二リン酸誘導体を使用して、上記式(Z−2−1−1)で表されるイソプレン単位がトランス−シス型に結合したイソプレンオリゴマーであって、主鎖部分に加えて、末端部分にも変性が施されたイソプレンオリゴマー(主鎖末端変性イソプレンオリゴマー)を使用して、ポリイソプレンの調製を行った。
ラテックス成分を10μl、50mM Tris−HCl Buffer(pH7.5)、25mM 塩化マグネシウム、40mM 2−メルカプトエタノール、40mM フッ化カリウム、50μM イソプレンオリゴマー、1mM IPP若しくは製造例1で調製した各R−IPPを含む反応液を調整し、30℃のwater bathで3日間反応させた。反応後、GPCにより分子量を測定した。そして、測定した分子量と、使用した開始基質の情報を基に、開始基質であるFPP若しくはアリル性二リン酸誘導体に付加したイソプレン単位数を算出した。結果を表12に示した。
なお、ラテックス成分としては、パラゴムノキから得られたラテックスを超遠心分離することにより調製したしょう液を使用した。
なお、イソプレンオリゴマーは、上記(イソプレンオリゴマーの調製)により調製したイソプレンオリゴマー(tc−control−AB)、イソプレンオリゴマー(tc−A−AB)、イソプレンオリゴマー(tc−B−AB)、イソプレンオリゴマー(tc−C−AB)、イソプレンオリゴマー(tc−D−AB)、イソプレンオリゴマー(tc−E−AB)、イソプレンオリゴマー(tc−F−AB)、イソプレンオリゴマー(tc−G−AB)、イソプレンオリゴマー(tc−control−DB)、イソプレンオリゴマー(tc−A−DB)、イソプレンオリゴマー(tc−B−DB)、イソプレンオリゴマー(tc−C−DB)、イソプレンオリゴマー(tc−D−DB)、イソプレンオリゴマー(tc−E−DB)、イソプレンオリゴマー(tc−F−DB)、イソプレンオリゴマー(tc−G−DB)、イソプレンオリゴマー(tc−control−AC)、イソプレンオリゴマー(tc−A−AC)、イソプレンオリゴマー(tc−B−AC)、イソプレンオリゴマー(tc−C−AC)、イソプレンオリゴマー(tc−D−AC)、イソプレンオリゴマー(tc−E−AC)、イソプレンオリゴマー(tc−F−AC)、イソプレンオリゴマー(tc−G−AC)、イソプレンオリゴマー(tc−control−DC)、イソプレンオリゴマー(tc−A−DC)、イソプレンオリゴマー(tc−B−DC)、イソプレンオリゴマー(tc−C−DC)、イソプレンオリゴマー(tc−D−DC)、イソプレンオリゴマー(tc−E−DC)、イソプレンオリゴマー(tc−F−DC)、イソプレンオリゴマー(tc−G−DC)を使用した。
なお、イソプレンオリゴマー(tc−E−AB)、イソプレンオリゴマー(tc−F−AB)、イソプレンオリゴマー(tc−E−DB)、イソプレンオリゴマー(tc−F−DB)、イソプレンオリゴマー(tc−E−AC)、イソプレンオリゴマー(tc−E−DC)を使用して得られたポリイソプレンは、ポリイソプレンE、ポリイソプレンB、ポリイソプレンF、ポリイソプレンC、ポリイソプレンG、ポリイソプレンHとして、以下の実験でゴム組成物に配合した。
Figure 0006757938
表12の結果より、R−IPP、主鎖末端変性イソプレンオリゴマーを使用した場合であっても、IPP、未変性イソプレンオリゴマーを使用した場合と同等の分子量のポリイソプレンが得られた。また、得られたポリイソプレンをNMR、TLC、GC−MSにより分析した結果、イソプレンオリゴマーの場合と同様に、使用したR−IPP、主鎖末端変性イソプレンオリゴマーに応じてポリイソプレンが変性されていることも確認できた。
なお、上記実施例で調製したイソプレンオリゴマー、ポリイソプレンの末端部(上記式(Z−1)、上記式(Z−2)、上記式(ZZ−1)、上記式(ZZ−2)等のYに相当)は、水酸基、又はOPP基であった。
以下、実施例9〜41及び比較例1〜4で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
NR:TSR20
BR:JSR(株)製のBR01
カーボンブラック:三菱化学(株)製のダイヤブラック(N220)
イソプレンオリゴマーa〜n:上記実施例で得られたイソプレンオリゴマー
ポリイソプレンA〜P:上記実施例で得られたポリイソプレン
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛1号
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックワックス
硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤NS:大内新興化学工業(株)製のノクセラ−NS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)
シリカ:日本シリカ工業(株)製のニップシールAQ(湿式シリカ)
シランカップリング剤:デグッサ社製のSi266(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
加硫促進剤DPG:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N−ジフェニルグアニジン)
表13〜16に示す配合処方にしたがい、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物をスチーム加硫プレスを用いて圧力80kgf/cmにて150℃で30分間加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
得られた加硫ゴム組成物について下記の評価を行った。結果を表13〜16に示す。なお、表13の基準配合は比較例1、表14の基準配合は比較例2、表15の基準配合は比較例3、表16の基準配合は比較例4とした。
(粘弾性試験)
(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメーターを用いて、70℃、歪み2%時(初期伸度)の条件でtanδの測定を行ない、基準配合のtanδを100として指数表示した。指数が大きいほど発熱が大きいことを表す。指数が100以下のとき、耐発熱性(低発熱性)は向上したものとみなした。すなわち、指数が小さいほど低発熱性に優れることを示す。
(ランボーン摩耗試験)
(株)岩本製作所製のランボーン摩耗試験機を用いて、荷重3kg、スリップ率40%および砂量15g/分の条件で5分間摩耗試験を実施した。サンプルの形状は厚さ5mm、直径50mmとし、砥石は、粒度#80のGCタイプ砥粒を使用した。試験結果を、基準配合を100(基準)として指数化した。指数が大きいほど耐摩耗性に優れ、指数が100を超えるとき耐摩耗性は向上したものとみなした。
(引張試験)
JIS K6251「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に準じて、上記加硫ゴムシートからなる3号ダンベル型試験片を用いて引張試験を実施し、破断強度(TB)(MPa)、破断時伸び(EB)(%)を測定した。破断時伸びが480%未満では、大型タイヤに用いるとゴム欠けが発生しやすく、改良が必要である。また破断強度についても、低下するとタイヤの破壊原因となるため、材料の変更による低下を防ぐ必要がある。
Figure 0006757938
Figure 0006757938
Figure 0006757938
Figure 0006757938
表13、15より、本発明のイソプレンオリゴマーを使用した実施例では、低発熱性、耐摩耗性、破断時伸びに優れていた。
表14、16より、本発明のポリイソプレンを使用した実施例では、低発熱性、耐摩耗性、破断強度に優れていた。
(配列表フリーテキスト)
配列番号1:変異型酵素N77A作製用センスプライマー
配列番号2:変異型酵素N77A作製用アンチセンスプライマー
配列番号3:変異型酵素L91D作製用センスプライマー
配列番号4:変異型酵素L91D作製用アンチセンスプライマー
配列番号5:変異型酵素N77Aのアミノ酸配列
配列番号6:変異型酵素L91Dのアミノ酸配列

Claims (8)

  1. 下記式(Z−1)又は下記式(Z−2)で表されるイソプレンオリゴマーであって、下記式(Z−1)又は下記式(Z−2)中のv部分に含まれる原子又は原子団の少なくとも1つが、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子、窒素原子含有基、酸素原子含有基、硫黄原子含有基、又はケイ素原子含有基により置換されているイソプレンオリゴマー。
    Figure 0006757938
    (式(Z−1)中、nは1〜10の整数を表す。mは1〜30の整数を表す。Yは、水酸基、ホルミル基、カルボキシ基、アルコキシカルボキシ基、アルコキシカルボニル基又はOPP基を表す。)
    Figure 0006757938
    (式(Z−2)中、nは1〜10の整数を表す。mは1〜30の整数を表す。Yは、水酸基、ホルミル基、カルボキシ基、アルコキシカルボキシ基、アルコキシカルボニル基又はOPP基を表す。)
  2. 前記式(Z−1)又は前記式(Z−2)中のiv部分に含まれる原子又は原子団の少なくとも1つが、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子、炭素原子、窒素原子含有基、酸素原子含有基、硫黄原子含有基、ケイ素原子含有基、又は炭素原子含有基により置換されている請求項1記載のイソプレンオリゴマー。
  3. 請求項1又は2に記載のイソプレンオリゴマーと、下記式(Y)で表される化合物及び/又はイソペンテニル二リン酸とから合成されて得られるポリイソプレン。
    Figure 0006757938
    (式(Y)中、Rは窒素原子含有基、酸素原子含有基、硫黄原子含有基、又はケイ素原子含有基を表す。)
  4. 下記式(ZZ−1)又は下記式(ZZ−2)で表されるポリイソプレンであって、下記式(ZZ−1)又は下記式(ZZ−2)中のv部分に含まれる原子又は原子団の少なくとも1つが、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子、窒素原子含有基、酸素原子含有基、硫黄原子含有基、又はケイ素原子含有基により置換されているポリイソプレン。
    Figure 0006757938
    (式(ZZ−1)中、nは1〜10の整数を表す。qは30〜40000の整数を表す。Yは、水酸基、ホルミル基、カルボキシ基、アルコキシカルボキシ基、アルコキシカルボニル基又はOPP基を表す。)
    Figure 0006757938
    (式(ZZ−2)中、nは1〜10の整数を表す。qは30〜40000の整数を表す。Yは、水酸基、ホルミル基、カルボキシ基、アルコキシカルボキシ基、アルコキシカルボニル基又はOPP基を表す。)
  5. 前記式(ZZ−1)又は前記式(ZZ−2)中のiv部分に含まれる原子又は原子団の少なくとも1つが、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子、炭素原子、窒素原子含有基、酸素原子含有基、硫黄原子含有基、ケイ素原子含有基、又は炭素原子含有基により置換されている請求項4記載のポリイソプレン。
  6. 請求項1又は2に記載のイソプレンオリゴマーと、前記式(Y)で表される化合物及び/又はイソペンテニル二リン酸とから合成するポリイソプレンの製造方法。
  7. 請求項1又は2に記載のイソプレンオリゴマー及び/又は請求項3〜5のいずれかに記載のポリイソプレンを含むゴム組成物。
  8. 請求項7記載のゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤ。
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