JP6755649B2 - 虚血性疾患の診断マーカー - Google Patents

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Description

本発明は、ペプチドマーカーを用いた血液凝固反応を随伴する疾患の検出方法に関し、より詳細には、ペプチドマーカーを用いた血液凝固反応を随伴する疾患の判定、予防効果の判定、治療効果の判定、早期診断のための検査方法、早期治療のための検査方法、及び物質のスクリーニング方法に関する。
心疾患は近年日本人の死因の第2位であり、心臓病の死亡原因の約8割は虚血性心疾患であり、その患者数は80万人を超え増加傾向にある。急性冠症候群(ACS)は致死的な冠動脈疾患であるため、正確かつ迅速な診断を得ることが重要である。さらに、最も急性の合併症である不安定性狭心症(UAP)と急性心筋梗塞(AMI)の基礎には血栓が存在すると認識されている。歴史的には、クレアチンキナーゼアイソザイムと比較して優れた診断および予後性能を示す初期の研究後、ACSの罹患が疑われるACS患者の評価には心筋トロポニンT及びIが代表的な基準として採用されており、臨床の場面では高感度トロポニンTまたはIを測定することも可能である。
しかしながら、これらの高感度トロポニンTまたはIの特異度がそれぞれ41%及び46%と低く(非特許文献1)、ACSを検出するための高い陽性予測値(PPV)を有するバイオマーカーが強く求められている。
一方で、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF/MS)等の質量分析の進歩により小サイズのペプチドが検出できるようになっているが(非特許文献2)、大半のペプチド解析では質量分析の前に血漿タンパク質の大部分を除去する必要があり、この操作により内因性ペプチドも除かれ、有用なバイオマーカー候補ペプチドがこれまでに見落とされている(非特許文献3,4)。
BMC Medical Genomics 2013, 6:16 Rapid Commun. Mass Spectrom. 1988;2(8):151-153 Clin. Chem. 2005;51(10):1933-45 Proteomics. 2005;5(18):4713-8
本願発明者らはMALDI-TOF/MSに、ペプチドの新たなターゲットプレートとしてBLOTCHIP(登録商標)を用い、一つのステップでペプチドを直接転写できる技術の開発に成功した。この方法によるとペプチドが主要な血液タンパク質から効果的に分離されるため、アルブミン等によるサンプルの前処理が不要であり、従来は検出できなかった低濃度(フェムトモル〜ピコモル)のペプチドも検出できる。
本発明の目的は、被験者の生物試料中のバイオマーカー候補ペプチドを同定かつ確認し、かかる候補ペプチドの血液凝固反応を随伴する疾患、特にACS等の血液凝固反応を随伴する疾患の検出のための有用性を実証することにある。
本発明者らは、上記の目的を達成すべく、ACSを含む血液凝固反応を随伴する疾患の被験者の血清サンプルを調べたところ、6種類のバイオマーカー候補ペプチドを発見し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]被験者の生物試料中の、配列番号1で表されるアミノ酸配列、配列番号2で表されるアミノ酸配列、配列番号3で表されるアミノ酸配列、配列番号4で表されるアミノ酸配列、配列番号5で表されるアミノ酸配列、及び配列番号6で表されるアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する1種又は2種以上のペプチドを測定することを含む、該被験者における血液凝固反応を随伴する疾患の検出方法。
[2]被験者の生物試料中の、配列番号3で表されるアミノ酸配列、配列番号5で表されるアミノ酸配列、及び配列番号6で表されるアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する2種又は3種のペプチドを測定することを含む、項1に記載の方法。
[3]前記血液凝固反応を随伴する疾患が、急性冠症候群、深部大腿静脈血栓症、弁膜症、脳梗塞、肺梗塞、固形がん、播種性血管内凝固症候群(DIC)、心房細動、心筋梗塞、狭心症、または無症候性心筋虚血である項1または2に記載の方法。
[4]前記血液凝固反応を随伴する疾患が、虚血性心疾患、心房細動、または弁膜症である項1または2に記載の方法。
[5]前記虚血性心疾患が、心筋梗塞または狭心症である項4に記載の方法。
[6]前記血液凝固反応を随伴する疾患が、急性冠症候群である項1または2に記載の方法。
[7]前記生物試料が血液、血漿、血清、唾液、尿、髄液、骨髄液、胸水、腹水、関節液、涙液、眼房水、硝子体液およびリンパ液からなる群より選択される体液からなる、項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
[8]生体試料を質量分析にかけることを含む、項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
[9]配列番号1で表されるアミノ酸配列、配列番号2で表されるアミノ酸配列、配列番号3で表されるアミノ酸配列、配列番号4で表されるアミノ酸配列、配列番号5で表されるアミノ酸配列、及び配列番号6で表されるアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドを特異的に認識する抗体を用いることを特徴とする、項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
[10]配列番号1で表されるアミノ酸配列、配列番号2で表されるアミノ酸配列、配列番号3で表されるアミノ酸配列、配列番号4で表されるアミノ酸配列、配列番号5で表されるアミノ酸配列、及び配列番号6で表されるアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する1種又は2種以上のペプチドに対する抗体を含む血液凝固反応を随伴する疾患の検出キット。
[11]配列番号1で表されるアミノ酸配列、配列番号2で表されるアミノ酸配列、配列番号3で表されるアミノ酸配列、配列番号4で表されるアミノ酸配列、配列番号5で表されるアミノ酸配列、及び配列番号6で表されるアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する1種又は2種以上のペプチドに対する抗体を検出試薬として含む血液凝固反応を随伴する疾患の検出剤。
[12]被験者における血液凝固反応を随伴する疾患の罹患可能性を判定するための、コンピュータにより実行される方法であって、被験者の生物試料中の、配列番号1で表されるアミノ酸配列、配列番号2で表されるアミノ酸配列、配列番号3で表されるアミノ酸配列、配列番号4で表されるアミノ酸配列、配列番号5で表されるアミノ酸配列、及び配列番号6で表されるアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する1種又は2種以上のペプチドについての定量的データを取得する工程と、前記取得したデータを、前記1種又は2種以上のペプチドの関数である多変量ロジスティック回帰モデルに適用し、被験者における血液凝固反応を随伴する疾患の罹患可能性の予測確率を求める工程と
を含む方法。
[13]配列番号3で表されるアミノ酸配列、配列番号5で表されるアミノ酸配列、及び配列番号6で表されるアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する2種以上のペプチドの定量的データを取得し、前記取得したデータを、前記2種以上のペプチドの関数である多変量ロジスティック回帰モデルに適用する項12に記載の方法。
[14]配列番号1〜6のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるペプチド。
本発明によれば、血液凝固反応を随伴する疾患、特には急性冠症候群を迅速かつ極めて高い信頼性で判定できるため、該疾患の判定、予防効果の判定、治療効果の判定、早期診断、早期治療のための検査方法、及び物質のスクリーニング方法が可能となる。
6つのバイオマーカーペプチドの箱ひげ図。縦軸:BLOTCHIP(登録商標)-MSにより分析した各ペプチドのピーク強度、横軸 A:コントロールとしての退院から6か月後の患者の上腕静脈から採取した血液のサンプル(n=10)、B:発症時の下肢静脈から採取した血液のサンプル(n=10)、C:発症時の閉塞した冠動脈から採取した血液のサンプル(n=10)。 ロジスティックモデルにより得られた予測確率の箱ひげ図。縦軸:予測確率(probability)、横軸 A:コントロールとしての退院から6か月後の患者の上腕静脈から採取した血液のサンプル(n=10)、B:発症時の下肢静脈から採取した血液のサンプル(n=10) (A)5番目のペプチドをマーカーとして用いた場合、(B)5番目のペプチドと6番目のペプチドの2つのペプチドを用いた場合、(C)3番目のペプチドと5番目のペプチドと6番目のペプチドの3つのペプチドを用いた場合。 各種の心疾患を有する被験者における、3番目のペプチドと5番目のペプチドと6番目のペプチドの3つのペプチドをマーカーとして用いたロジスティックモデルにより得られた予測確率の箱ひげ図。縦軸:予測確率(probability)、横軸 Others:弁膜症等の疾患を含む冠動脈疾患のないコントロール(N=39)、A/U:急性心筋梗塞と不安定狭心症の混合群(n=7)、FU:フォローアップ(発症・処置後半年から一年後の患者の上腕静脈から採取した血液のサンプル(n=8)、AMI:急性心筋梗塞(n=22)、UAP:不安定狭心症(n=8)、SAP:安定狭心症および無症候性心筋虚血を含む症状(n=16)、rMI:急性心筋梗塞で、発症よりやや時間が経過したもの(n=5)、CSA:冠攣縮性狭心症(n=1)。
本発明は、新規かつ有用な血液凝固反応を随伴する疾患の検出マーカーペプチド(以下、包括して「本発明のペプチド」という場合もある)を提供する。
なお、本明細書において、血液凝固反応を随伴する疾患の「検出」には、血液凝固反応を随伴する疾患の判定、予防効果の判定、治療効果の判定、診断(特には早期診断)のための検査方法、及び治療(特には早期治療)のための検査方法が含まれる。血液凝固反応を随伴する疾患の「判定」には、血液凝固反応を随伴する疾患の有無を判定することのみならず、予防的に血液凝固反応を随伴する疾患の罹患可能性を判定することや、治療後の血液凝固反応を随伴する疾患の予後を予測すること、及び血液凝固反応を随伴する疾患の治療剤の治療効果を判定することが含まれる。物質のスクリーニング方法には、血液凝固反応を随伴する疾患の「検出」、「判定」及び「治療」に有用な物質のスクリーニング方法が含まれる。
本明細書において、「罹患」には「発症」が含まれる。
本明細書において、「治療」とは、疾患もしくは症状の治癒又は改善、或いは症状の抑制を意味し、「予防」を含む。「予防」とは、疾患又は症状の発現を未然に防ぐことを意味する。
配列番号1から6で表されるアミノ酸配列解析結果から、これらのペプチドは、血液凝固第I因子(フィブリノーゲン)と血液凝固第XIII因子(γグルタミルトランスフェ
ラーゼ)の部分配列であることが判明した。血液凝固第XIII因子は血液凝固カスケードの最終段階で、可溶性フィブリンクロットを不溶性のフィブリンクロット(血餅)に転換するために、可溶性フィブリン分子上にあるリジン残基のアミノ基とグルタミン酸残基のカルボキシル基を脱水重合させる酵素であり、この基質タンパク質と酵素タンパク質断片がACSで減少したことは、これら両タンパクが血液凝固反応の進行の結果消尽したことを強く示唆した。このようなACS発病により両凝固因子とりわけ血液凝固第XIII因子が激減するデータは今までに存在しなかった。以上の成績と理論から、本特許がカバーするペプチドとそれを使用した検査、判定、診断、診察、物質スクリーニング法は、血液凝固反応を随伴する疾患(血液凝固反応が原因となるACS、深部大腿静脈血栓症等の疾患、疾患の発症に伴い血液凝固反応が開始される弁膜症、脳梗塞、肺梗塞等の疾患、上記の心室及び/又は心房への血液供給が減少している心疾患、フィブリンクロットの生成を伴う固形がん、及び凝固反応と線溶反応が交互あるいは同時に進行する播種性血管内凝固症候群(DIC)等)に遍く適応可能である。本明細書において、心疾患には心室及び/又は心房への血液供給が減少している心疾患には、例えば虚血性心疾患、心房細動、および弁膜症が含まれ、虚血性心疾患には心筋梗塞、狭心症、および無症候性心筋虚血が含まれる。狭心症には不安定狭心症、安定狭心症、および冠攣縮性狭心症が含まれる。急性冠症候群は、虚血性心疾患のうち、急性心筋梗塞および不安定狭心症のうちの少なくともいずれか一方の症状(発症を含む)を含む。
本発明の被験者における血液凝固反応を随伴する疾患の検出方法に用いられるペプチドは、被験者の生物試料中に見出される、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、及び配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるペプチドからなるペプチドである。これらのペプチドの測定値は心疾患、特には虚血性心疾患、心房細動、および弁膜症等の、心室及び/又は心房への血液供給が減少している心疾患の罹患と相関する。配列番号1〜6のアミノ酸配列は以下の表1に示す通りである。
配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる1番目のペプチド、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる2番目のペプチド、配列番号3で表されるアミノ酸配列からなる3番目のペプチド、配列番号4で表されるアミノ酸配列からなる4番目のペプチド、及び配列番号6で表されるアミノ酸配列からなる6番目のペプチドは、いずれも血液凝固第I因
子(フィブリノーゲン)α鎖の部分配列である。配列番号5で表されるアミノ酸配列からなる5番目のペプチドは血液凝固第XIII因子(γグルタミルトランスフェラーゼ)の部分配列である。
配列番号1〜6で表されるアミノ酸配列からなるペプチドの質量分析による見かけの分子量[M+H]+は、それぞれ約1545.62、約1616.66、約2553.10、約3277.46、約3949.98、約5901.70である。
本発明においては、上記のインタクトなペプチドをマーカーとして用いるが、配列番号1〜6に表されるアミノ酸配列において、1個または数個(好ましくは1ないし3個,より好ましくは1または2個)のアミノ酸が欠失、置換、付加したアミノ酸配列からなるペプチドも含み得、これらの修飾ペプチドも本発明の方法においてバイオマーカーとして用いることができる。さらに、本発明のペプチドは、特定のアミノ酸に酸素原子が結合して酸化されたり、リン酸化されたり、N-アセチル化されたり、S-システイン化されたりしている場合がある。好ましくは、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチドはN末端側から2番目(フィブリノペプチドAのN末端から22番目)のセリンがリン酸化されていてもよく、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドはN末端側から3番目(フィブリノペプチドAのN末端から22番目)のセリンがリン酸化されていてもよく、配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるペプチドはN末端側から28番目(フィブリノーゲンα鎖のN末端から603番目)のメチオニンが酸素で酸化されていてもよく、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチドはN末端側から1番目(血液凝固因子第XIII因子サブユニットのN末端から1番目)のセリンがN−アセチル化されていてもよい。
このような場合も、配列番号1〜6で表されるアミノ酸配列を有するペプチドである限り、本発明の範囲に包含される。なお、配列番号1〜6で表されるアミノ酸配列を有するペプチドの上記修飾体は、質量分析にて非修飾体(インタクト)と区別が可能であり、疾患の検出、判定及び治療等には修飾ペプチドまたは非修飾ペプチドのいずれを適切な状況で使用することも本発明の範囲に包含される。
本発明は、被験者の生物試料中の、上記の6個の本発明のペプチドのうちの1種、又は2種以上を測定することを含む、該被験者における血液凝固反応を随伴する疾患の検出又は判定方法を包含する。
さらに好ましい一つの実施形態では、被験者における血液凝固反応を随伴する疾患の検出又は判定方法は、被験者の生物試料中の、配列番号3で表されるアミノ酸配列、配列番号5で表されるアミノ酸配列、及び配列番号6で表されるアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する2種又は3種のペプチドを測定することを含む。
被験者には、血液凝固反応を随伴する疾患に罹患していると疑われる患者を含み、「血液凝固反応を随伴する疾患に罹患していると疑われる被検者」は、被検者本人が主観的に疑いを抱く者(何らかの自覚症状がある者に限らず、単に予防検診の受診を希望する者を含む)であっても、何らかの客観的な根拠に基づく者(例えば、従来公知の臨床検査(例、心拍、血圧、血液又は尿検査)および/または診察の結果、血液凝固反応を随伴する疾患の合理的な罹患可能性があると医師が判断した者)であってもよい。「ペプチドを測定する」とはペプチドの濃度、量、又はシグナル強度を測定することを指す。
被験試料となる被検者由来の生体試料は特に限定されないが、被検者への侵襲が少ないものであることが好ましく、例えば、血液、血漿、血清、唾液、尿、涙液など生体から容易に採取できるものや、髄液、骨髄液、胸水、腹水、関節液、眼房水、硝子体液、リンパ液など比較的容易に採取されるものが挙げられる。一実施形態では、生物試料が血液、血漿、血清、唾液、尿、髄液、骨髄液、胸水、腹水、関節液、涙液、眼房水、硝子体液およびリンパ液からなる群より選択される体液からなる。血清や血漿を用いる場合、常法に従って被検者から採血し、前処理を施さず直接、又は液性成分を分離することにより分析にかける被験試料を調製することができる。検出対象である本発明のペプチドは必要に応じて、抗体カラムやスピンカラムなどを用いて、予め高分子量の蛋白質画分などを分離除去しておくこともできる。
生体試料中の、本発明のペプチドの検出は、例えば、生体試料を各種の分子量測定法、例えば、ゲル電気泳動や、各種の分離精製法(例:イオン交換クロマトグラフィ、疎水性クロマトグラフィ、アフィニティークロマトグラフィ、逆相クロマトグラフィなど)、表面プラズモン共鳴法、イオン化法(例:電子衝撃イオン化法、フィールドディソープション法、二次イオン化法、高速原子衝突法、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)法、エレクトロスプレーイオン化法など)、および質量分析計(例:二重収束質量分析計、四重極型分析計、飛行時間型質量分析計、フーリエ変換質量分析計、イオンサイクロトロン質量分析計、免疫質量分析計、安定同位体ペプチドを内部標準にした質量分析計、免疫顕微鏡計など)を組み合わせる方法等に供し、該ペプチドの分子量と一致するバンドもしくはスポット、あるいはピークを検出することにより行うことができるが、これらに限定されない。
本発明のペプチドを精製してそれらを認識する抗体を作製し、ELISA, RIA,イムノクロマト法、表面プラズモン共鳴法、ウェスタンブロッティング、免疫質量分析法や各種イムノアッセイ、免疫顕微鏡法により該ペプチドを検出する方法もまた、好ましく用いられ得る。さらに上記方法のハイブリッド型検出法も有効である。
本発明の検出又は判定方法における特に好ましい測定法の1つは、飛行時間型質量分析に使用するプレートの表面に被験試料を接触させ、該プレート表面に捕捉された成分の質量を飛行時間型質量分析計で測定する方法が挙げられる。飛行時間型質量分析計に適合可能なプレートは、検出対象である本発明のペプチドを効率よく吸着し得る表面構造(例:官能基付加ガラス、Si、Ge、GaAs、GaP、SiO2、SiN4、改質シリコン、種々のゲルまたはポリマーのコーティング)を有している限り、いかなるものであってもよい。
好ましい実施態様においては、質量分析用プレートとして用いられる支持体は、ポリビニリデンジフロリド(PVDF)、ニトロセルロースまたはシリカゲル、特に好ましくはPVDFで薄層コーティングされた基材である(WO 2004/031759を参照)。かかる基材は、質量分析用プレートにおいて使用されているものであれば、特に限定されず、例えば、絶縁体、金属、導電性ポリマー、それらの複合体などが挙げられる。かかるPVDFで薄層コーティングされた質量分析用プレートとして、好ましくは株式会社プロトセラ社のブロットチップ(BLOTCHIP,登録商標)などが挙げられる。代わりに、質量分析用プレートは、支持体表面を塗布、噴霧、蒸着、浸漬、印刷、スパッタリング等の公知の手段でコーティングすることにより、公知の方法により調製することもできる。また、質量分析用プレート上の分子を質量分析する方法自体は公知である(例えばWO 2004/031759)。WO 2004/031759に記載の方法を、必要に応じて適宜改変して使用することができる。
被験試料の質量分析用プレート(支持体)への移行は、被験試料となる被検者由来の生体試料を未処理のままで、あるいは抗体カラムその他の方法で高分子タンパク質を除去、濃縮した後に、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動もしくは等電点電気泳動に付し、泳動後ゲルをプレートと接触させて転写(ブロッティング)することにより行われる。転写の方法自体は公知であり、好ましくは電気転写が用いられる。電気転写時に使用する緩衝液としては、pH 7〜9、低塩濃度の公知の緩衝液を用いることが好ましい(例えばトリス緩衝液、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、酢酸緩衝液など)。
上記の方法により支持体表面上に捕捉された被験試料中の分子を質量分析することにより、分子量に関する情報から、標的分子である本発明のペプチドの存在および量を同定することができる。質量分析装置からの情報を、任意のプログラムを用いて、非罹患がん患者、処置後の患者(フォローアップ)、もしくは健常人由来の生体試料における質量分析データと比較して、示差的な(differential)情報として出力させることも可能である。そのようなプログラムは周知であり、また、当業者は、公知の情報処理技術を用いて、容易にそのようなプログラムを構築もしくは改変することができることが理解されよう。
高精度な質量分析結果を得るためには、高速液体クロマトグラフィに接続した三連四重極型等の質量分析装置を用いて分析する。標的分子の安定同位体標識ペプチドを合成して、それを既知量の内部標準品として被験試料に混合し、逆相固相担体等でペプチド画分の粗精製を実施する。高速液体クロマトグラフィに導入後、分離された各ペプチドは質量分析装置内でイオン化され、その後コリジョンセル内で断片化、得られたペプチドフラグメントをmultiple reaction monitoring法により定量する。この際、安定同位体標識ペプチドを内部標準として用いることでCV値が5%以下の実測データを取得できる。安定同位体標識ペプチドは、Cambridge Isotope Laboratory(MA, USA)より購入した安定同位体標識アミノ酸(アミノ酸a(13C6,15N2)は、安定同位体炭素(原子量13)6個と、安定同位体窒素(原子量15)2個で置換された質量数が元のアミノ酸より8原子量増加したアミノ酸aを例示)を元のアミノ酸の配列位置に置換して既存の合成法(たとえばF-mocによる固相反応)により得られる。質量分析は株式会社プロトセラ社のBLOTCHIP(登録商標)システムでも実施可能であり、これらの方法は抗体を使用しない検出装置として臨床使用できる。
上記の質量分析による検出において、タンデム質量分析(MS/MS)法を用いてペプチドを同定することができ、かかる同定法としては、MS/MSスペクトルを解析してアミノ酸配列を決定するde novo sequencing法と、MS/MSスペクトル中に含まれる部分的な配列情報(質量タグ)を用いてデータベース検索を行い、ペプチドを同定する方法等が挙げられる。また、MS/MS法を用いることにより、直接本発明のペプチドのアミノ酸配列を同定し、該配列情報に基づいて該ペプチドの全部もしくは一部を合成し、これを以下の抗体に対する抗原として利用することもできる。
本発明のペプチドの測定は、それに対する抗体を用いて行うこともできる。よって、本発明は、ペプチドを特異的に認識する抗体を用いた血液凝固反応を随伴する疾患の検出又は判定方法、かかる抗体を含む血液凝固反応を随伴する疾患の検出又は判定剤、ならびにかかる抗体を含む血液凝固反応を随伴する疾患の検出又は判定キットを含む。かかる方法は、最適化されたイムノアッセイ系を構築してこれをキット化すれば、上記質量分析装置のような特殊な装置を使用することなく、高感度かつ高精度に該ペプチドを検出することができる点で、特に有用である。
本発明のペプチドに対する抗体は、例えば、本発明のペプチドを、これを発現する患者由来の生体試料から単離・精製し、該ペプチドを抗原として動物を免疫することにより調製することができる。あるいは、得られるペプチドの量が少量である場合は、RT-PCRによる該ペプチドをコードするcDNA断片の増幅等の周知の遺伝子工学的手法によりペプチドを大量に調製することができ、あるいはかかるcDNAを鋳型として、無細胞転写・翻訳系を用いて本発明のペプチドを取得することもできる。さらに有機合成法により大量に調製することも可能である。
本発明のペプチドに対する抗体(以下、「本発明の抗体」と称する場合がある)は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のいずれであってもよく、周知の免疫学的手法により作製することができる。また、該抗体は完全抗体分子だけでなくそのフラグメントをも包含し、例えば、Fab、F(ab')2、ScFv、およびminibody等が挙げられる。
例えば、ポリクローナル抗体は、本発明のペプチドを抗原として、市販のアジュバント(例えば、完全または不完全フロイントアジュバント)とともに、動物の皮下あるいは腹腔内に2〜3週間おきに2〜4回程度投与し、最終免疫後に全血を採取して抗血清を精製することにより取得できる。抗原を投与する動物としては、ラット、マウス、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、モルモット、ハムスターなど、目的の抗体を得ることができる哺乳動物が挙げられる。
また、モノクローナル抗体は、細胞融合法により作成することができる。モノクローナル抗体を調製するための技法の説明は、Stites et al, Basic and Clinical Immunology. (Lang Medical Publications Los Altos. CA. 4th Edition) and references therein, 、in particular Koehler, G. & Milstein, C. Nature 256, 495-497 (1975).に見出され得る。例えば、本発明のペプチドを市販のアジュバントと共にマウスに2〜4回皮下あるいは腹腔内に投与し、最終投与後に脾臓あるいはリンパ節を採取し、白血球を採取する。この白血球と骨髄腫細胞(例えば、NS-1, P3X63Ag8など)を細胞融合して該ペプチドに対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得る。所望のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、周知のEIAまたはRIA法等を用いて抗原と特異的に結合する抗体を、培養上清中から検出することにより選択できる。モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの培養は、インビトロ、またはマウスもしくはラット、このましくはマウス腹水中等のインビボで行うことができ、抗体はそれぞれハイブリドーマの培養上清および動物の腹水から取得することができる。
抗体を用いる本発明の検出又は判定方法は、特に制限されるべきものではなく、被験試料中の抗原量に対応した抗体、抗原もしくは抗体−抗原複合体の量を化学的または物理的手段により検出し、これを既知量の抗原を含む標準液を用いて作製した標準曲線より算出する測定法であれば、いずれの測定法を用いてもよい。例えば、ネフロメトリー、競合法、イムノメトリック法およびサンドイッチ法等が好適に用いられる。測定に際し、抗体または抗原は、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、または発光物質等の標識剤と結合され得る。さらに、抗体あるいは抗原と標識剤との結合にビオチン-アビジン系を用いることもできる。これら個々の免疫学的測定法は、当業者の通常の技能により、本発明の定量方法に適用可能である。
本発明のペプチドはタンパク質分解産物からなるため、未分解のタンパク質や、切断部位が共通の類似ペプチド等様々な分子が測定値に影響を与える可能性がある。そこで、第1工程において、生体試料を抗体により免疫アフィニティ精製し、抗体に結合したフラクションを、第2工程において質量分析に付し、精緻な分子量を基準に同定、定量する、いわゆる免疫質量分析法を利用することができる(例えば、Rapid Commun. Mass Spectrom. 2007, 21: 352-358を参照)。免疫質量分析法によれば、未分解のタンパク質も類似ペプチドも、質量分析計で完全に分離され、バイオマーカーの正確な分子量を基準に高い特異度と感度で定量が可能となる。
あるいは、本発明の抗体を用いる別の本発明の検出又は判定方法として、該抗体を上記したような質量分析計に適合し得るチップの表面上に固定化し、該チップ上の該抗体に被検試料を接触させ、該抗体に捕捉された生体試料成分を質量分析にかけ、該抗体が認識するマーカーペプチドの分子量に相当するピークを検出する方法が挙げられる。
上記のいずれかの方法により測定された被検者由来試料中の本発明のペプチドのレベルが、非血液凝固反応を随伴する疾患患者、処置後の患者もしくは健常人由来の対照試料中の該ペプチドレベルに比べて有意に変動している場合、該被検者は血液凝固反応を随伴する疾患に罹患している可能性が高いと判定することができる。
本発明のペプチドは、それぞれ単独でも血液凝固反応を随伴する疾患の検出マーカーとして利用することができるが、2種以上を組み合わせることにより、感度(有病正診率)および特異度(無病正診率)をより高めることができる。
2種以上のペプチドをマーカーとして用いる場合の検出手法としては、例えば、(1) 測定対象であるすべてのペプチドについてレベルが有意に変動する場合に血液凝固反応を随伴する疾患に罹患していると判定し、いずれかのペプチドについてレベルが有意に変動しない場合に血液凝固反応を随伴する疾患に罹患していないと判定する方法、(2) 測定対象であるすべてのペプチドについてレベルが有意に変動しない場合に血液凝固反応を随伴する疾患に罹患していないと判定し、いずれかのペプチドについてレベルが有意に変動した場合に血液凝固反応を随伴する疾患に罹患していると判定する方法、(3) 測定対象であるn個のペプチドのうち、例えば、2〜(n-1)個以上のペプチドについて、レベルが有意に変動する場合に血液凝固反応を随伴する疾患に罹患していると判定する方法、さらに各ペプチド間で重みを持たせる方法、ならびに(4) バギング法、ブースティング法、ランダムフォレスト法などの機械学習法、などが考えられるが、特には複数のマーカーペプチドを1つのマーカーセットとして取り扱うことが出来る解析手法である多変量ロジスティック回帰分析を用いることが好ましい。この場合、マーカーとして用いるペプチドの数は特に限定されないが、好ましくは2種以上、より好ましくは3〜6種、さらにより好ましくは3〜5種である。
一つの実施形態において、上記の解析に用いられるペプチドは、配列番号1〜配列番号6で表されるアミノ酸配列からなる6種のペプチドのうちの少なくとも1種であり、好ましくは2種以上である。
好ましい実施形態において、上記の解析に用いられるペプチドは、配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、及び配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるペプチドのうちの少なくとも1種であり、好ましくは2種以上、より好ましくは3種以上、さらに好ましくは4種以上である。
さらに好ましい実施形態において、上記の解析に用いられるペプチドは、配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、及び配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるペプチドの3種を包含する。
本願では、質量分析により特定された候補ペプチドの多変量ロジスティック回帰モデルを最尤法により構築したところ、ROCの曲線下面積(AUC)が高い(5つのマーカーペプチドで0.9を超える)極めて信頼性の高い血液凝固反応を随伴する疾患の検出又は判定が可能であることを見出した。検出又は測定されるペプチドの数が多いほど、検査の精度は向上する。
検出又は測定されるペプチドの数は、本発明の検査方法におけるAUCが或る閾値を超える値となる数であることが好ましい。通常、閾値は0.9であり、好ましくは0.92、より好ましくは0.95、さらに好ましくは0.98である。ペプチドの数を増やすほど約1に近づけることが可能である。
例えば、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるペプチドの2つのペプチドの血中濃度の関数であるロジスティック回帰モデルによれば、特異度に対して感度をプロットしたROCの曲線下面積(AUC)が0.9を超え、高い精度で血液凝固反応を随伴する疾患を検出することができる。また、配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチドと、配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるペプチドの3つのペプチドの血中濃度の関数であるロジスティック回帰モデルによれば、AUCがほぼ1となり、極めて高い精度で血液凝固反応を随伴する疾患を検出することができる。
本発明の検出方法は、患者から時系列で生体試料を採取し、各試料における本発明のペプチドの発現の経時変化を調べることにより行うこともできる。生体試料の採取間隔は特に限定されないが、患者のQOLを損なわない範囲でできるだけ頻繁にサンプリングすることが望ましく、例えば、血漿もしくは血清を試料として用いる場合、約1日〜約1月間の間隔で採血を行うことが好ましい。本発明のペプチドは、血液凝固反応を随伴する疾患が進行するに従って血清・血漿レベルが各ペプチドで低下する傾向にある。従って、これらのマーカーのレベルが経時的に低下した場合には、該患者における血液凝固反応を随伴する疾患が改善または悪化している可能性が高いと判定することができる。
さらに、上記時系列的なサンプリングによる血液凝固反応を随伴する疾患の検出方法は、前回サンプリングと当回サンプリングとの間に、被検者である患者に対して該疾患の治療措置が講じられた場合に、当該措置による治療効果を評価するのに用いることができる。即ち、治療の前後にサンプリングした試料について、治療後の状態が治療前の状態と比較して病態の改善が認められると判定された場合に、当該治療の効果があったと評価することができる。一方、治療後の状態が治療前の状態と比較して病態の改善が認められない、あるいはさらに悪化していると判定された場合には、当該治療の効果がなかったと評価することができる。
さらに、上記時系列的なサンプリングによる血液凝固反応を随伴する疾患の検出のための検査方法は、健康食品等の摂取、禁煙、運動療法、有害環境からの隔離等、血液凝固反応を随伴する疾患の罹患リスク低減措置後の予防効果を評価するのに用いることができる。即ち、罹患リスクの低減措置の施行の前後にサンプリングした試料について、施行後の状態が施行前の状態と比較して病態の発症もしくは進行が認められないと判定された場合に、当該措置の施行の効果があったと評価することができる。一方、治療後の状態が治療前の状態と比較して病態の改善が認められない、あるいはさらに悪化していると判定された場合には、当該措置の施行の効果がなかったと評価することができる。
従って、本発明のペプチドならびに方法は、血液凝固反応を随伴する疾患を診断または検出するマーカーのみならず、血液凝固反応を随伴する疾患の予後を予測するマーカー、ならびに治療効果判定のマーカーともなり得る。すなわち、本発明のペプチドならびに方法は、血液凝固反応を随伴する疾患の治療の創薬標的分子のスクリーニングに、および/または患者(リスポンダー)の選別もしくは薬の投与量(用量)の調節のためのコンパニオン診断薬として使用することができる。
また、本発明のペプチドならびに方法は、物質のスクリーニング方法に使用できる。この場合の物質には、血液凝固反応を随伴する疾患を未病段階で防止する健康食品やトクホ製品などの食品類、血液凝固反応を随伴する疾患を診断または検出するマーカー類、及び罹患後の血液凝固反応を随伴する疾患を治療する治療薬医薬品類が含まれる。
一実施形態において、本発明は、配列番号1で表されるアミノ酸配列、配列番号2で表されるアミノ酸配列、配列番号3で表されるアミノ酸配列、配列番号4で表されるアミノ酸配列、配列番号5で表されるアミノ酸配列、及び配列番号6で表されるアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する1種、2種、3種、4種、5種または6種のペプチドに対する抗体を含む血液凝固反応を随伴する疾患の検出キットを包含する。
別の実施形態において、本発明は、配列番号3で表されるアミノ酸配列、配列番号5で表されるアミノ酸配列、及び配列番号6で表されるアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する1種、2種又は3種のペプチドに対する抗体を含む血液凝固反応を随伴する疾患の検出キットを包含する。
別の実施形態において、本発明は、 配列番号1で表されるアミノ酸配列、配列番号2で表されるアミノ酸配列、配列番号3で表されるアミノ酸配列、配列番号4で表されるアミノ酸配列、配列番号5で表されるアミノ酸配列、及び配列番号6で表されるアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する1種、2種、3種、4種、5種又は6種のペプチドに対する抗体を検出試薬として含む血液凝固反応を随伴する疾患の検出剤を包含する。
別の実施形態において、本発明は、配列番号3で表されるアミノ酸配列、配列番号5で表されるアミノ酸配列、及び配列番号6で表されるアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する1種、2種又は3種のペプチドに対する抗体を検出試薬として含む血液凝固反応を随伴する疾患の検出剤を包含する。
また別の実施形態において、本発明は、被験者における血液凝固反応を随伴する疾患の罹患可能性を判定するための、コンピュータにより実行される方法であって、被験者の生物試料中の、配列番号1で表されるアミノ酸配列、配列番号2で表されるアミノ酸配列、配列番号3で表されるアミノ酸配列、配列番号4で表されるアミノ酸配列、配列番号5で表されるアミノ酸配列、及び配列番号6で表されるアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する1種、2種、3種、4種、5種又は6種のペプチドについての定量的データを取得する工程と、前記取得したデータを、前記1種、2種、3種、4種、5種又は6種のペプチドの関数である多変量ロジスティック回帰モデルに適用し、被験者における血液凝固反応を随伴する疾患の罹患可能性の予測確率を求める工程とを含む方法を包含する。ここで、ペプチドの定量的データとは、例えば質量分析やペプチドに対する抗体を用いて測定されたペプチドの発現量、血中濃度等の定量的な測定値を指す。
別の実施形態において、本発明は、被験者における血液凝固反応を随伴する疾患の罹患可能性を判定するための、コンピュータにより実行される方法であって、被験者の生物試料中の、配列番号3で表されるアミノ酸配列、配列番号5で表されるアミノ酸配列、及び配列番号6で表されるアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する1種、2種、又は3種のペプチドについての定量的データを取得する工程と、前記取得したデータを、前記1種、2種、又は3種のペプチドの関数である多変量ロジスティック回帰モデルに適用し、被験者における血液凝固反応を随伴する疾患の罹患可能性の予測確率(予測罹患確率)を求める工程とを含む方法を包含する。
好ましい実施形態において、定量的データを取得するペプチドは、配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、及び配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるペプチドの3つのペプチドである。
上記コンピュータにより実行される方法は、予測確率を求めた後で、該予測確率に基づいて被験者における血液凝固反応を随伴する疾患の罹患可能性を判定する工程をさらに含んでもよい。例えば求めた予測確率が或る閾値を超えた場合に、その被験者を血液凝固反応を随伴する疾患に罹患していると判定する。通常、閾値は0.5であり、好ましくは0・1以下である。
別の実施形態において、本発明のペプチドは、検出以外に積極的な血液凝固反応を随伴する疾患の創薬ターゲットを提供することもできる。即ち、該ペプチドそれ自体が該疾患の治療(寛解)方向に生理機能を持つ(「治療ペプチド」という)場合、該ペプチドの量もしくは活性を増大させる物質(例えばワーファリン等の抗凝固剤、エリキュース等の凝固因子阻害剤、TS23 (Translational Sciences社)等の抗線溶因子阻害剤等)を患者に投与することにより、該疾患を治療することができる。
別の実施形態において、本発明はまた、本発明のペプチドが治療ペプチドとして作用する場合に、該ペプチドの量もしくは活性を増大させることによる、血液凝固反応を随伴する疾患の治療方法を提供する。該治療方法は、具体的には、治療ペプチドとしての本発明のペプチドの量もしくは活性を増大させる物質の有効量を、血液凝固反応を随伴する疾患の患者に投与することを含む。従って、本発明はまた、治療ペプチドとしての本発明のペプチドの量もしくは活性を増大させる物質を含有してなる、(例えばワーファリン等の抗凝固剤、エリキュース等の凝固因子阻害剤、TS23 (Translational Sciences社)等の抗線溶因子阻害剤等)の血液凝固反応を随伴する疾患の治療剤を提供する。
具体的には、治療ペプチドとしての本発明のペプチドの活性を増大させる物質としては、該ペプチド自体あるいはそれと同様のアゴニスト作用を有する分子が挙げられる。あるいは、治療ペプチドとしての本発明のペプチドの活性を増大させる物質として、該ペプチドの非中和抗体、好ましくはアゴニスト抗体なども挙げることができる。
治療ペプチドとしての本発明のペプチドの量もしくは活性を増大させる物質は、常套手段に従って製剤化することができる。
例えば、経口投与のための組成物としては、固体または液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤などがあげられる。かかる組成物は自体公知の方法によって製造され、製剤分野において通常用いられる担体、希釈剤もしくは賦形剤を含有するものである。例えば、錠剤用の担体、賦形剤としては、乳糖、でんぷん、蔗糖、ステアリン酸マグネシウムなどが用いられる。かかる経口剤には、脳血管障壁(BBB)を通過する性状を持つものも含まれる。
非経口投与のための組成物としては、例えば、注射剤、坐剤などが用いられ、注射剤は静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤F、点滴注射剤、関節内注射剤などの剤形を包含する。注射剤、坐剤などでは、有効成分(該ペプチド)の血中濃度の延長や吸収効率の増加を目的に、既存の方法による化学修飾(糖鎖、PEGその他)体が使用される。かかる注射剤は、自体公知の方法に従って、例えば、上記化合物またはその塩を通常注射剤に用いられる無菌の水性もしくは油性液に溶解、懸濁または乳化することによって調製する。調製された注射液は、通常、適当なアンプルに充填される。直腸投与に用いられる坐剤は、上記化合物またはその塩を通常の坐薬用基剤に混合することによって調製される。かかる注射剤には、脳血管障壁(BBB)を通過する性状を持つものも含まれる。
上記の経口用または非経口用医薬組成物は、活性成分の投与量に適合するような投薬単位の剤形に調製されることが好都合である。かかる投薬単位の剤形としては、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐剤などが例示され、それぞれの投薬単位剤形当たり非生物学的製剤では通常5〜500mg、とりわけ注射剤では5〜100mg、その他の剤形では10〜250mgの上記化合物が含有され、生物学的製剤の注射剤では10〜50000mgの上記化合物が含有されていることが好ましい。
なお前記した各組成物は、上記治療ペプチドとしての本発明のペプチドの量もしくは活性を増大させる物質との配合により、好ましくない相互作用を生じない限り、他の活性成分を含有してもよい。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトに対して経口的にまたは非経口的に投与することができる。
治療ペプチドとしての本発明のペプチドの量もしくは活性を増大させる物質の投与量は、その作用、投与ルート、患者の重篤度、年齢、体重、薬物受容性などにより差異はあるが、例えば、成人1日あたり活性成分量として非生物学的製剤では約0.0008〜約25mg/kg、好ましくは約0.008〜約2mg/kgの範囲であり、これを1回もしくは数回に分けて投与することができる。生物学的製剤の注射剤では10〜5000mg/kg, 好ましくは約10〜約2000mg/kgの範囲であり、これを1回もしくは数回に分けて投与することができる。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されないことは言うまでもない。
本明細書中に引用されているすべての特許出願および文献の開示は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれるものとする。
実施例1
(材料および方法)
本研究は大阪市立大学医学部の倫理委員会の承認を得て行った。すべての患者は大阪市立大学医学部付属病院の心臓血管外科の診療科に来た者であり、すべての患者に書面による同意書を配布してから本研究を行った。
1.患者
急性心筋梗塞に罹患した7名の成人患者と不安定狭心症に罹患した3名の成人患者が本研究に参加した。これらの患者は疾患発症の24時間以内に冠血管造影(CAG)により急性冠症候群(ACS)と診断された。
2.血液サンプルの採取
急性冠症候群(ACS)の患者を明確に診断し、急性期における冠動脈疾患の重度を評価するために、冠血管造影(CAG)ですべてのACS患者を調べた。冠動脈血のサンプルを、疾患の原因となっている冠動脈に冠ガイドワイヤを介して導入した吸引カテーテルを用いて採取した。また、21ゲージ針を用いて発症時の下肢静脈と退院6か月後の上腕静脈から静脈血サンプルを得、5ml 真空血液採取管に入れた。それらのサンプルを室温で1時間静置し、3,000rpmで10分間室温にて遠心分離し、血清を得た。上清を使用するまで-80℃で分けて保存した。
3.BLOTCHIP(登録商標)による質量分析
血清中の質量分析によるペプチド解析を、ペプチドームプロファイリングの迅速定量法である、ワンステップの直接転写技術のBLOTCHIP(登録商標)質量分析により行った(Biochem. Biophys. Res. Commun. 2009;379(1):110-4)。
まず、血清サンプルをドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)に供し、ペプチドをタンパク質と分離した。次に、ゲル中のペプチドをBLOTCHIP(登録商標)(株式会社プロトセラ、尼崎市所在)に電気転写した。転写終了後、チップの表面を超純水でリンスし、BLOTCHIP(登録商標)に直接マトリックス(α-シアノ-4-ヒドロキシ桂皮酸, Sigma-Aldrich Co., アメリカ合衆国ミズーリ州)を塗布後、UltraFlexII TOF/TOF mass spectrometer (Bruker Daltonics社製、アメリカ州マサチューセッツ州)の反射モードで、Proteomics 11:2727-2737.に記載された通りに質量分析を行い、ペプチドプロファイルを得た。
4.ペプチドの統計解析
サンプルはBLOTCHIP(登録商標)質量分析により4回繰り返し解析した。より統計学的に有意なピークを見出すために、4つのデータを独立データとして使用し、解析ソフトClinProTools 2.2 (Bruker Daltonics社製)を使用してウィルコクソン検定のp値を計算し、p値が0.05以下の場合に有意差ありとみなした。
統計解析ソフトR(R Core Team (2013). R: A language and environment for statistical computing. R Foundation for Statistical Computing, Vienna, Austria. URL http://www.R-project.org/.)によりウィルコクソン検定のp値を計算するために、一つのサンプル当たりの4つのデータの平均値を用いてペプチドの診断性能を評価した。モデルの構築には統計解析ソフトR(R Core Team (2013)を使用した。
構築したモデルの診断能の評価のためにROC分析を実施した。Rのパッケージである"Epi パッケージ"(A package for statistical analysis in epidemiology、Version 1.149、http://cran.r-project.org/web/packages/Epi/index.html)を用いた。AUCはROC曲線から計算した。診断のための最適カットオフ値は、Cancer 1950;3:32-5のYouden's indexに従って決定でき、95%信頼区間は、ノンパラメトリックなブートストラップ抽出を用いて推定した。
5.ペプチドの同定
各標的ペプチドを含む血清を、その同定のために採取した。ペプチドは、Sep-Pak C18固相抽出カートリッジ(Waters Corporation、アメリカ合衆国マサチューセッツ州ミルフォード)を用いて、0.1%トリフルオロ酢酸を含む水に80%v/v アセトニトリル(ACN)で抽出した。溶出液をCC-105 遠心濃縮器(株式会社トミー精工, 東京)を用いて100μL以下に濃縮した。次に溶液を0.065% TFAを含む2%v/v CAN水溶液400μL(溶離液Aと称する)に希釈し、C18シリカカラム(COSMOSIL(登録商標) 5C18-AR-II)(ナカライテスク株式会社、京都)を装備したAEKTA精製装置(GE Healthcare UK Ltd, 英国バッキンガムシャー州)にかけた。溶出液を、溶離液Aに対し0.05% TFAを含む80%v/v CANの水溶液で1.0mL/分の流速で0-100%の線形勾配により20個の画分(各1mL)に分けた。各画分をCC-105遠心濃縮器で10μL以下に濃縮し、ペプチドの配列をMALDI-TOF/TOF(UltraFlex II TOF/TOF)及びLC-MS/MS(Q-Exactive;Thermo Fisher Scientific Inc, アメリカ合衆国マサチューセッツ州ワルサム)を用いて分析した。
(結果)
1.ACS血清のペプチド解析
合計で30血清のペプチド解析をBLOTCHIP(登録商標)質量分析により行った。各ペプチドームプロファイルより得られた質量スペクトルのデータをデータベースに保存した。すべてのMS測定が完了した後、解析ソフトFlexAnalysis2.4を用いて、A群(発症時の閉塞した冠動脈から採取した血液のサンプル/コントロールとしての退院から6か月後の患者の上腕静脈から採取した血液のサンプル)及びB群(発症時の下肢静脈から採取した血液のサンプル/コントロールとしての退院から6か月後の患者の上腕静脈から採取した血液のサンプル)でのディファレンシャル解析を行った。その結果、m/z 1,500-20,000の領域に79個のピークが確認された(p<0.05)。統計解析により得られたすべてのピークの形状を目視により精査し、MALDI-MS測定にランダムに現れるノイズ、弱いピーク、及び微かなピークを除外した。これにより、22個のシャープなピークが得られた。
2.同定されたバイオマーカー候補ペプチド
逆相クロマトグラフィで部分的に精製した血清ペプチドによりMALDI-TOF/TOF及びLC-MS/MSペプチド配列決定分析を行った。22個のピークのうち6個のペプチドを最終的に同定した(表2)。M/z 1616.66のペプチドはトロンビンによりフィブリノーゲンのα鎖から放出されたフィブリノペプチドAであることが明らかとなった。M/z 1545.62のペプチドはタンパク質分解によりフィブリノペプチドAからさらにN−末端のアラニンが放出されることにより形成されたペプチドである。m/z 3949.98のペプチドはトロンビンにより不活性血液凝固因子第XIII因子サブユニットA(酵素前駆体)から放出され、血液凝固因子第XIII因子サブユニットA(活性酵素)となった活性化ペプチドである。さらに、残りの3つのペプチドであるm/z 2553.10, 3277.45及び5901.70 はフィブリノーゲンα鎖の中間領域を異なる部位でタンパク質分解したものであり、これまで報告されていないペプチドであった。m/z 1545.62 及び1616.66のペプチド (フィブリノペプチドA)は Ser22 の位置でリン酸化により修飾されており、m/z 3277.46のペプチド (フィブリノゲンα鎖)はMet603で酸化されており、m/z 3949.98のペプチドXIII因子サブユニットA 活性化ペプチド)はSer2の位置でN−アセチル化により修飾されていた。
3.各バイオマーカー候補ペプチドの変化率とACSの診断性能
表3に示すように、A群では、発症時の閉塞した冠動脈におけるフィブリノーゲンAα鎖に対応する5つのペプチドの量は、コントロールと比較して、31% (m/z 1545.62)、30% (m/z 1616.66)、29% (m/z 2553.10)、 (33%) m/z 3277.46及び37% (m/z 5901.70)に有意に減少した。驚いたことに、発症時の閉塞した冠動脈におけるm/z 3949.98ペプチド(血液凝固因子第XIII因子サブユニットA活性化ペプチド))の量の変化はコントロールと比較して3%にまで減少した。6つのすべてのバイオマーカー候補ペプチドは、緊急CAGにより診断されたACSを、非常に高い診断性能でもっぱら区別できた:m/z 1545.62 (AUC 0.87,感度100%,特異度80%,p 0.004), m/z 1616.66 (AUC 0.76,感度100%,特異度60%,p 0.052), m/z 2553.10 (AUC 0.90,感度90%,特異度80%,p 0.002), m/z 3277.46 (AUC 0.83,感度100%,特異度70%,p 0.011), m/z 3949.98 (AUC 1.00,感度100%,特異度100%,p 0.00001), and m/z 5901.70 (AUC 0.88,感度90%,特異度90%, p 0.003)。
他方、B群では、発症時の下肢静脈における6つのペプチドの量は、コントロールと比較して5%〜74%の変化率に減少した。AUC 0.86,感度70%,特異度90%, p 0.005でACSを区別できたm/z 3949.98 ペプチドを除くと、A群と異なり、バイオマーカー候補ペプチド単独ではACSを区別できなかった。一つのバイオマーカー候補ペプチドの変化率を箱ひげ図で図1に示す。
4.多変量ロジスティック回帰分析
表3の結果から、1つのペプチドではACSを検出するのに診断性能が十分ではない場合があると思われたため、6つの候補ぺプチドから多変量ロジスティック回帰モデルを用いてランダムに選択した2つ又は3つのペプチドの組み合わせを用いて、回帰モデル構築を調べた。種々のペプチドセットのモデルを調べた後、以下の1つまたは複数のペプチドを用いて、ロジスティックモデルによりACSの予測確率を計算した(表4):
(1)1つのペプチド( m/z 3949.98のペプチド)、予測確率=1/{1+exp[-(-0.00008×[m/z 3949.98] +1.96)]}
(2)2つのペプチド( m/z 3949.98のペプチド及びm/z 5901.70のペプチド)、予測確率=1/{1+exp[-(-0.00029×[m/z 3949.98] + 0.00018×[m/z 5901.70] + 0.82)]}
(3)3つのペプチド( m/z 2553.10のペプチド, m/z 3949.98のペプチド及びm/z 5901.70のペプチド)、予測確率=1/{1+exp[-(-0.00466×[m/z 2553.10] -0.00278×[m/z 3949.98] + 0.00257×[m/z 5901.70] + 15.07)]}
なお、[m/z ***] は各ペプチドの血中濃度を表す。
結果として、最も高い1.00のAUCを示す最適モデルを以下の方程式(1)として得た:
予測確率=1/{1+exp[-(-0.00466×[m/z 2553.10] -0.00278×[m/z 3949.98] + 0.00257×[m/z 5901.70] + 15.07)]} (1)
上記の3つの回帰モデルは、以下の診断性能で、ACSをコントロールに対し区別した;1つのペプチド(AUC 0.86,感度100%,特異度60%,p 0.005),2つのペプチド(AUC 0.95,感度90%,特異度100%,p 0.0002)及び3つのペプチド(AUC 1.00,感度100%,特異度100%, p 0.00001)(表4)。
1つ又は2つ又は3つのペプチドを用いた場合の多変量ロジスティック回帰モデルによるA群及びB群の予測確率を箱ひげ図で図2に示す。
最後の回帰モデルは3つのペプチドm/z 2553.10のペプチド, m/z 3949.98及び m/z 5901.70のペプチドから構成されており、回帰モデルによりコントロール群からACS群が十分に区別されることは明らかである。
実施例2
以下の表5に示される心疾患患者の血液サンプルを、実施例1に記載した通りに採取した。血液サンプルは、A/U群は大阪市立大学医学部付属病院の患者から採取した以外は、守口生野記念病院(大阪府守口市)の患者より採取した。
実施例1にて判明した最も高い1.00のAUCを示すペプチドの組み合わせである3番目のペプチド(m/z 2553.10のペプチド)、5番目のペプチド(m/z 3949.98のペプチド)及び6番目のペプチド(m/z 5901.70のペプチド)を用いて、実施例1の方程式(1)のロジスティックモデルにより予測確率を計算した。
図3に示す通り、AMI群とUAP群ではFU群と比較して予測確率が高く、AMI群とUAP群は共に診断可能と推察され、A/U群、rMI群、及びCSA群も予測確率が高かった。
SAP群ではばらつきがあるが、患者を疾患別に個別に見たところ測定可能な場合があることが判明した(データ非図示)。
Other群の場合も、弁膜症の患者のように、測定可能な場合があることが判明した(データ非図示)。

Claims (11)

  1. 被験者における血液凝固反応を随伴する疾患を検出するための方法であって、
    該被験者の生物試料中の、配列番号5で表されるアミノ酸配列を有するペプチドを質量分析により測定することを含み、
    前記測定したペプチドのレベルが、前記疾患の処置後の患者又は健常人由来のペプチドのレベルと比較して低下している場合に、該被験者は血液凝固反応を随伴する疾患に罹患している可能性が高いことを示す、方法。
  2. 被験者の生物試料中の、配列番号1で表されるアミノ酸配列を有するペプチド、配列番号2で表されるアミノ酸配列を有するペプチド、配列番号3で表されるアミノ酸配列を有するペプチド、配列番号4で表されるアミノ酸配列を有するペプチド、及び配列番号6で表されるアミノ酸配列を有するペプチドからなる群から選択されるペプチドをさらに測定することを含む、請求項1に記載の方法。
  3. 被験者の生物試料中の、配列番号5で表されるアミノ酸配列を有するペプチドと、配列番号3で表されるアミノ酸配列を有するペプチド及び配列番号6で表されるアミノ酸配列を有するペプチドからなる群から選択される1種又は2種のペプチドを測定することを含む、請求項1に記載の方法。
  4. 前記血液凝固反応を随伴する疾患が、急性冠症候群、深部大腿静脈血栓症、弁膜症、脳梗塞、肺梗塞、固形がん、播種性血管内凝固症候群(DIC)、心房細動、心筋梗塞、狭心症、または無症候性心筋虚血である請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記血液凝固反応を随伴する疾患が、虚血性心疾患、心房細動、または弁膜症である請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記虚血性心疾患が、心筋梗塞または狭心症である請求項5に記載の方法。
  7. 前記血液凝固反応を随伴する疾患が、急性冠症候群である請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記生物試料が血液、血漿、血清、唾液、尿、髄液、骨髄液、胸水、腹水、関節液、涙液、眼房水、硝子体液およびリンパ液からなる群より選択される体液からなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 被験者における血液凝固反応を随伴する疾患の罹患可能性を判定するための、コンピュータにより実行される方法であって、被験者の生物試料中の、配列番号5で表されるアミノ酸配列を有するペプチドと、配列番号3で表されるアミノ酸配列を有するペプチド及び配列番号6で表されるアミノ酸配列を有するペプチドからなる群から1種以上のペプチドとの定量的データを質量分析を用いて取得し、前記取得したデータを、2種以上のペプチドの関数である多変量ロジスティック回帰モデルに適用する方法。
  10. 被験者における血液凝固反応を随伴する疾患を検出するための方法であって、
    該被験者の生物試料中の、配列番号5で表されるアミノ酸配列を有するペプチドを質量分析により測定することを含み、
    前記測定したペプチドのレベルが、経時的に低下している場合に、該被験者は血液凝固反応を随伴する疾患が悪化している可能性が高いことを示す、方法。
  11. 被験者における血液凝固反応を随伴する疾患の治療効果を評価するための方法であって、
    該被験者の生物試料中の、配列番号5で表されるアミノ酸配列を有するペプチドを質量分析により測定することを含み、
    治療後のペプチドのレベルが、治療前のペプチドのレベルよりも増大している場合に、治療の効果があることを示し、治療後のペプチドのレベルが、治療前のペプチドのレベルよりも低下している場合に、治療の効果がないことを示す、方法。
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