[第1実施形態]
図1において、認知症診断支援システム10は、回答端末11、および認知症診断支援装置に相当する認知症診断支援サーバ12を備えている。認知症診断支援サーバ12は、認知症に関する問題で構成される認知症の簡易診断テストを被検者Sに提供する。回答端末11および認知症診断支援サーバ12は、インターネットや公衆通信網といったWAN(Wide Area Network)等のネットワーク13を介して相互に通信可能に接続されている。ネットワーク13には、情報セキュリティを考慮して、VPN(Virtual Private Network)が構築されたり、HTTPS(Hypertext Transfer Protocol Secure)等のセキュリティレベルの高い通信プロトコルが使用されている。
回答端末11と認知症診断支援サーバ12は、サーバコンピュータ、パーソナルコンピュータ、ワークステーションといったコンピュータをベースに、オペレーティングシステム等の制御プログラムや、各種アプリケーションプログラム(以下、APと略記)をインストールして構成される。
回答端末11は、例えばタッチパネル14を有するタブレット型コンピュータである。回答端末11は医療施設15の待合室16に配備され、被検者Sによって操作される。タッチパネル14は、被検者Sの操作に応じた各種画面を表示する。画面にはGUI(Graphical User Interface)による操作機能が備えられる。
被検者Sは医療施設15に来院した患者である。被検者Sは、認知症診断支援システム10によって、診療の待ち時間に待合室16において簡易診断テストを受けることができる。
認知症診断支援サーバ12はデータセンタ17に設置される。データセンタ17は、電子カルテや医用画像等の医療データの管理および配信、診療予約の受け付け、特定疾患の診断支援といった様々なサービスを医療施設15に提供する。
認知症診断支援サーバ12は、簡易診断テストを構成する認知症に関する問題を回答端末11に送信する。回答端末11は、被検者Sによる問題の回答を認知症診断支援サーバ12に送信する。認知症診断支援サーバ12は、回答端末11からの回答に基づいて、被検者Sの認知症の罹患の疑いを認知症の種類別に判別し、判別結果を回答端末11に送信する。
認知症診断支援サーバ12は、問題および判別結果の出力の一形態として、回答端末11のウェブブラウザ上で閲覧可能な問題表示画面60(図24〜図34参照)および判別結果表示画面70(図35参照)を生成し、これを回答端末11に出力する。
認知症診断支援サーバ12は、各画面60,70を、例えば、XML(Extensible Markup Language)等のマークアップ言語によって作成されるウェブ配信用の画面データの形式で出力する。XMLに代えて、JSON(JavaScript(登録商標) Object Notation)等の他のデータ記述言語を利用してもよい。なお、認知症診断支援サーバ12は、上記各画面60,70の他にも、様々な画面をウェブ配信用の画面データの形式で回答端末11に出力する。
認知症診断支援サーバ12は、ネットワーク13を介して、医療施設15の診療室18に設置された診療端末19とも相互に通信可能に接続されている。診療端末19は、例えばディスプレイ20および操作部21を有するノート型パーソナルコンピュータであり、被検者Sの主治医である担当医師Dによって操作される。認知症診断支援サーバ12は、診療端末19からの要求に応じて、様々な情報を診療端末19に送信する。
なお、図1では、回答端末11および診療端末19を1台のみ描いているが、これらは複数台あってもよい。また、データセンタ17から各種サービスを提供される医療施設15も複数あってもよい。
図2において、回答端末11および認知症診断支援サーバ12を構成するコンピュータは、基本的な構成は同じであり、それぞれ、ストレージデバイス30、メモリ31、CPU(Central Processing Unit)32、通信部33、および入出力デバイス34を備えている。これらはデータバス35を介して相互接続されている。
ストレージデバイス30は、回答端末11等を構成するコンピュータに内蔵、またはケーブルやネットワークを通じて接続されたハードディスクドライブ、もしくはハードディスクドライブを複数台連装したディスクアレイである。ストレージデバイス30には、オペレーティングシステム等の制御プログラムや各種AP、およびこれらのプログラムに付随する各種データ等が記憶されている。
メモリ31は、CPU32が処理を実行するためのワークメモリである。CPU32は、ストレージデバイス30に記憶されたプログラムをメモリ31へロードして、プログラムにしたがった処理を実行することにより、コンピュータの各部を統括的に制御する。通信部33は、ネットワーク13を介した各種情報の伝送制御を行うネットワークインターフェースである。入出力デバイス34は、回答端末11の場合は前述のタッチパネル14、認知症診断支援サーバ12の場合はディスプレイおよび操作部(図示せず)である。
なお、以下の説明では、回答端末11を構成するコンピュータの各部には添え字の「A」を、認知症診断支援サーバ12を構成するコンピュータの各部には添え字の「B」をそれぞれ符号に付して区別する。
図3において、ウェブブラウザが起動されると、回答端末11のCPU32Aは、メモリ31等と協働して、ブラウザ制御部40として機能する。ブラウザ制御部40は、ウェブブラウザの動作を制御する。ブラウザ制御部40は、認知症診断支援サーバ12からの各種画面の画面データを受け取る。ブラウザ制御部40は、画面データに基づきウェブブラウザ上に表示する各種画面を再現し、これをタッチパネル14に表示する。
また、ブラウザ制御部40は、各種画面を通じて被検者Sによってタッチパネル14から入力される様々な操作指示を受け付ける。操作指示には、認知症診断支援サーバ12へのアクセス指示、回答選択肢の選択指示、簡易診断テストの中断指示および終了指示等がある。ブラウザ制御部40は、操作指示に応じた要求を認知症診断支援サーバ12に対して発行する。
認知症診断支援サーバ12へのアクセス指示には、被検者Sの識別情報である被検者ID(Identification Data)の入力が含まれる。アクセス指示があった場合、ブラウザ制御部40は、入力された被検者IDと、予め登録された施設IDを含むアクセス要求を認知症診断支援サーバ12に対して発行する。施設IDは医療施設15の識別情報である。また、被検者IDは、例えば医療施設15で被検者Sに付した患者IDである。
回答選択肢の選択指示には、各問題の正答および誤答を含む回答選択肢の選択指示と、これに加えて、回答が分からないことを意思表示するための「分からない」の回答選択肢の選択指示とがある。回答選択肢の選択指示があった場合、ブラウザ制御部40は、選択された回答選択肢の情報、すなわち回答を含む登録要求を認知症診断支援サーバ12に対して発行する。また、簡易診断テストの中断指示および終了指示があった場合、ブラウザ制御部40は、簡易診断テストの中断要求および終了要求を認知症診断支援サーバ12に対して発行する。アクセス要求と同様に、登録要求、中断要求、終了要求にも、施設IDと被検者IDが含まれる。
図4において、認知症診断支援サーバ12のストレージデバイス30Bには、APとして作動プログラム45が記憶されている。作動プログラム45は、認知症診断支援サーバ12を構成するコンピュータを、認知症診断支援装置として機能させるためのAPである。ストレージデバイス30Bには、作動プログラム45の他に、問題情報46、判別情報47、および履歴情報48が記憶されている。
作動プログラム45が起動されると、認知症診断支援サーバ12のCPU32Bは、メモリ31等と協働して、出力制御部50、受付部51、判別部52、および情報管理部53として機能する。
出力制御部50は問題出力制御部に相当し、回答端末11への問題の出力を制御する問題出力制御機能を担う。より具体的には、出力制御部50は、ウェブ配信用の問題表示画面60の画面データを生成し、これをアクセス元の回答端末11に出力する。出力制御部50は、各問題の問題表示画面60を出力する度に、問題表示画面60を出力した旨を受付部51に出力する。
受付部51は回答受付部に相当し、回答端末11からの登録要求に含まれる回答を受け付ける回答受付機能を担う。また、受付部51は、各問題の回答に掛った時間である回答時間を測定する。回答時間は、出力制御部50から当該問題の問題表示画面60を出力した旨を受けてから、当該問題の回答を受け付けるまでの時間である。受付部51は、受け付けた回答および測定した回答時間を情報管理部53に出力する。
受付部51は、回答を受け付ける度に、回答を受け付けた旨を出力制御部50に出力する。出力制御部50は、受付部51から回答を受け付けた旨を受けた場合に次の問題の問題表示画面60を出力する。
受付部51は、アクセス要求、簡易診断テストの中断要求、終了要求も受け付ける。受付部51は、アクセス要求、中断要求、終了要求を出力制御部50および情報管理部53に出力する。出力制御部50は、受付部51からのアクセス要求を受けた場合、問題表示画面60の出力を開始し、受付部51からの中断要求および終了要求を受けた場合、問題表示画面60の出力を停止する。
判別部52は、回答に基づいて、被検者Sの認知症の罹患の疑いを認知症の種類別に判別する判別機能を担う。判別部52は、判別結果を出力制御部50に出力する。
出力制御部50は判別結果出力制御部にも相当し、判別結果の出力を制御する判別結果出力制御機能も担う。より具体的には、出力制御部50は、ウェブ配信用の判別結果表示画面70の画面データを生成し、これをアクセス元の回答端末11に出力する。
情報管理部53は、問題情報46、判別情報47、および履歴情報48の各情報を管理する。情報管理部53は、受付部51からの回答および回答時間を履歴情報48に登録する。また、情報管理部53は、問題情報46を出力制御部50および受付部51(出力制御部50のみ図示)に、判別情報47および履歴情報48を判別部52にそれぞれ出力する。
問題情報46は、図5に示す第1問題群の問題情報46A、図6に示す第2問題群の問題情報46B、図7に示す第3問題群の問題情報46C、および図8に示す第4問題群の問題情報46Dで構成される。各問題情報46A〜46Dには、問題とその内容、順番、制限時間等が登録されている。
内容は、ここでは説明の便宜上、当該問題で問う被検者Sの認知能力を記している。実際には、回答選択肢、問題文、問題に必要なイラスト、これらの画面レイアウト等の問題表示画面60を生成するための情報、並びに正答が登録されている。回答選択肢、問題文、イラスト、並びに正答のセットは、被検者Sが複数回簡易診断テストを受けることを考慮して、各回で異なる内容となるように複数種類用意されている。また、回答選択肢や問題文には、他の言語への翻訳を容易にするため、日本語特有の表現を排したものが用いられる。
順番は、出力制御部50から当該問題の問題表示画面60を出力する順番、すなわち出題順を示す。制限時間は、出力制御部50から当該問題の問題表示画面60を出力してから、受付部51で回答を受け付けるまでの時間に制約を設けたものである。受付部51は、この制限時間内に当該問題の回答が受け付けられなかった場合、タイムアウトの旨を情報管理部53に出力する。
図5において、第1問題群には、第1問題Q1−1〜Q1−4の4つの問題が属している。第1問題Q1−1は遠隔記憶を問う問題である。遠隔記憶は、例えば数年〜数十年単位の比較的長期的なスパンの記憶である。第1問題Q1−1は、順番に1、制限時間に5秒が登録されている。第1問題Q1−2は即時記憶を問う問題である。即時記憶は、例えば数秒〜数分単位の、遠隔記憶と比較してより短期的なスパンの記憶である。第1問題Q1−2は、順番に5、制限時間に30秒が登録されている。
第1問題Q1−3は計算力を問う問題である。第1問題Q1−3は、順番に8、制限時間に5秒が登録されている。第1問題Q1−4は近時記憶を問う問題である。近時記憶は、例えば数十分〜数か月単位の、遠隔記憶と即時記憶の中間のスパンの記憶である。第1問題Q1−4は、順番に11、制限時間に30秒が登録されている。
図6において、第2問題群には、第2問題Q2−1〜Q2−4の4つの問題が属している。第2問題Q2−1は幻視の有無を問う問題であり、被検者Sが普段の生活の中で幻視があるか否かを明らかにするものである。第2問題Q2−1は、順番に2、制限時間に10秒が登録されている。第2問題Q2−2は形態知覚の問題であり、被検者Sがあるものをある、ないものをないと認識することができるか否かを明らかにするものである。形態知覚の問題は、例えば、複数の物品が重なり合って描かれた錯綜図を被検者Sに提示して、錯綜図内の物品を被検者Sに答えさせる内容である(図29参照)。第2問題Q2−2は、順番に6、制限時間に30秒が登録されている。
第2問題Q2−3は相貌の失認を問う問題であり、被検者Sが複数の人の顔を区別することができるか否かを明らかにするものである。第2問題Q2−3は、順番に9、制限時間に5秒が登録されている。第2問題Q2−4は人の表情の見当識を問う問題であり、被検者Sが、感情によって表情が異なることを把握し、さらに表情から感情を推定できるか否かを明らかにするものである。第2問題Q2−4は、順番に12、制限時間に5秒が登録されている。
図7において、第3問題群には、第3問題Q3−1〜Q3−3の3つの問題が属している。第3問題Q3−1は左右の見当識を問う問題であり、被検者Sが左右の違いを区別して認識することができているか否かを明らかにするものである。第3問題Q3−1は、順番に3、制限時間に5秒が登録されている。第3問題Q3−2は空間認識を問う問題であり、右側または左側(半側)からの刺激を認識することができない半側空間無視が被検者Sにあるか否かを明らかにするものである。第3問題Q3−2は、順番に7、制限時間に5秒が登録されている。第3問題Q3−3は地誌的認知機能を問う問題であり、被検者Sが場所や道順を理解し、位置関係を把握することができているか否かを明らかにするものである。第3問題Q3−3は、順番に10、制限時間に30秒が登録されている。
図8において、第4問題群には、第4問題Q4−1の1つの問題が属している。第4問題Q4−1はかな拾いの問題であり、被検者Sが1つの事柄に集中して情報を処理する意欲があるか否かを明らかにするものである。第4問題Q4−1は、順番に4、制限時間に60秒が登録されている。なお、図5〜図8に示した制限時間は一例であり、適宜変更が可能である。
図9の表55に示すように、第1問題群はアルツハイマー型認知症に対応する問題群、第2問題群はレビー小体型認知症に対応する問題群、第3問題群は血管性認知症に対応する問題群、第4問題群は前頭側頭型認知症に対応する問題群である。つまり、第1問題Q1−1〜Q1−4はアルツハイマー型認知症に関する問題、第2問題Q2−1〜Q2−4はレビー小体型認知症に関する問題、第3問題Q3−1〜Q3−3は血管性認知症に関する問題、第4問題Q4−1は前頭側頭型認知症に関する問題である。
このように、問題は、複数種類の認知症に対応する複数の問題群のうちの少なくとも1つに属している。また、第1〜第3問題群で明らかなように、複数の問題群のうちの少なくとも1つは複数の問題を含む。
発症件数は、本例ではアルツハイマー型認知症が1位で、以下レビー小体型認知症、血管性認知症、前頭側頭型認知症の順である。したがって、例えばアルツハイマー型認知症を基準としてみた場合、発症件数が多い認知症に対応する問題群の問題は第1問題Q1−1〜Q1−4であり、発症件数が少ない認知症に対応する問題群の問題は第1問題Q1−1〜Q1−4以外の問題である。なお、発症件数は、厚生労働省等の公共機関が調査して発表している統計情報に基づいている。
第1問題群において、アルツハイマー型認知症の罹患の疑いの判別の確度は、本例では第1問題Q1−1が1位で、以下第1問題Q1−2,Q1−3,Q1−4の順である。したがって、例えば第1問題Q1−1を基準としてみた場合、第1問題Q1−1が判別の確度が高い高確度問題に相当し、第1問題Q1−2〜Q1−4が判別の確度が高確度問題と比べて低い低確度問題に相当する。
第2問題群において、レビー小体型認知症の罹患の疑いの判別の確度は、本例では第2問題Q2−1が1位で、以下第2問題Q2−2,Q2−3,Q2−4の順である。したがって、例えば第2問題Q2−1を基準としてみた場合、第2問題Q2−1が高確度問題に相当し、第2問題Q2−2〜Q2−4が低確度問題に相当する。
第3問題群において、血管性認知症の罹患の疑いの判別の確度は、本例では第3問題Q3−1が1位で、以下第3問題Q3−2,Q3−3の順である。したがって、例えば第3問題Q3−1を基準としてみた場合、第3問題Q3−1が高確度問題に相当し、第3問題Q3−2,Q3−3が低確度問題に相当する。なお、第4問題群は、第4問題Q4−1のみであるため、判別の確度は1位であるが、高確度問題、低確度問題の区別はない。
判別の確度は、認知症に関する過去の膨大な医学的知見に基づき、各認知症の罹患の疑いを判別するうえで、罹患の疑いがあると判別するために効果的であるか否かを考慮して定めた指標である。このため、判別の確度が1位の問題は、判別の確度が2位以下の問題の回答を待たずに、その回答だけで即座に罹患の疑いがあることを判別することが可能な問題が選定される。
本例では、第1問題群の中で1番目に出題される第1問題Q1−1は遠隔記憶を問う問題であり、第1問題群における高確度問題である。第2問題群の中で1番目に出題される第2問題Q2−1は幻視の有無を問う問題であり、第2問題群における高確度問題である。第3問題群の中で1番目に出題される第3問題Q3−1は左右の見当識を問う問題であり、第3問題群における高確度問題である。
また、判別の確度が同じ順位の問題、例えば第1問題Q1−1、第2問題Q2−1、第3問題Q3−1、第4問題Q4−1の出題順は、本例では、発症件数が1位のアルツハイマー型認知症に関する問題である第1問題Q1−1、発症件数が2位のレビー小体型認知症に関する問題である第2問題Q2−1、発症件数が3位の血管性認知症に関する問題である第3問題Q3−1、発症件数が4位の前頭側頭型認知症に関する問題である第4問題Q4−1の順である。
出力制御部50は、各問題情報46A〜46Dに登録された順番にしたがって、各問題の問題表示画面60を回答端末11に出力する。すなわち、1番目に第1問題Q1−1の問題表示画面60A(図24参照)、2番目に第2問題Q2−1の問題表示画面60B(図25参照)、3番目に第3問題Q3−1の問題表示画面60C(図26参照)、4番目に第4問題Q4−1の問題表示画面60D(図27参照)、5番目に第1問題Q1−2の問題表示画面60E(図28参照)、6番目に第2問題Q2−2の問題表示画面60F(図29参照)、・・・、10番目に第3問題Q3−3の問題表示画面60J(図33参照)、11番目に第1問題Q1−4の問題表示画面60(図示せず)、12番目に第2問題Q2−4の問題表示画面60K(図34参照)を、それぞれ回答端末11に出力する。
これにより、問題は、第1〜第4問題群の各々から1つずつ順に出力される。また、第1〜第4問題群において、高確度問題が低確度問題よりも先に出力される。さらに、第1問題Q1、第2問題Q2、第3問題Q3、第4問題Q4の順に出力され、発症件数が多い認知症に対応する問題群の問題が、発症件数が少ない認知症に対応する問題群の問題よりも先に出力される。
判別情報47は、図10および図11に示すアルツハイマー型認知症の判別情報47A、図12〜図16に示すレビー小体型認知症の判別情報47B、図17および図18に示す血管性認知症の判別情報47C、図19〜図22に示す前頭側頭型認知症の判別情報47Dで構成される。各判別情報47A〜47Dは、図10、図12、図13、図17、図19、図20に示す判別フロー47A1〜47D1、および図11、図14〜図16、図18、図21、図22に示す判別表47A2〜47D2で表される判別ロジックを表す情報で構成される。
判別部52は、これらの判別情報47A〜47Dにしたがって、被検者Sの各認知症の罹患の疑いを判別する。そして、判別結果として、罹患の疑いの程度を示す罹患リスク度を出力する。罹患リスク度はA〜Dの4段階がある。罹患リスク度Aは罹患の疑いの程度が最高で、罹患リスク度B,Cの順に罹患の疑いの程度が低くなり、罹患リスク度Dが罹患の疑いの程度が最低である。
図10および図11において、アルツハイマー型認知症の判別ロジックは、第1問題Q1−1の遠隔記憶を問う問題、第1問題Q1−2の即時記憶を問う問題、第1問題Q1−3の計算力を問う問題、並びに第1問題Q1−4の近時記憶を問う問題の、それぞれの回答の正誤(正答、誤答)に基づく。
ここで、正答は、文字通り回答が正解であった場合と、複数回答の場合は正答数が設定数よりも多かった場合とを含む。また、誤答は、文字通り回答が不正解であった場合と、回答選択肢で「分からない」が選択された場合と、制限時間内に受付部51で回答が受け付けられなかった場合(タイムアウト)と、複数回答の場合は正答数が設定数以下であった場合とを含む。以降の各認知症の判別ロジックも同様である。
まず、第1問題Q1−1の遠隔記憶を問う問題の回答が誤答であった場合(ステップS10でNG)、判別部52は、被検者Sのアルツハイマー型認知症の罹患リスク度をAと判別する(ステップS11、判別パターンDP1−1)。一方、第1問題Q1−1の遠隔記憶を問う問題の回答が正答であった場合(ステップS10でOK)は、第1問題Q1−2の即時記憶を問う問題の回答の正誤に基づく判別(ステップS12)に移る。
第1問題Q1−2の即時記憶を問う問題の回答が誤答であった場合(ステップS12でNG)は、第1問題Q1−3の計算力を問う問題の回答の正誤に基づく判別(ステップS13)に移る。一方、第1問題Q1−2の即時記憶を問う問題の回答が正答であった場合(ステップS12でOK)は、第1問題Q1−4の近時記憶を問う問題の回答の正誤に基づく判別(ステップS14)に移る。
第1問題Q1−3の計算力を問う問題の回答が誤答であった場合(ステップS13でNG)、判別部52は、被検者Sのアルツハイマー型認知症の罹患リスク度をAと判別する(ステップS15、判別パターンDP1−2)。一方、第1問題Q1−3の計算力を問う問題の回答が正答であった場合(ステップS13でOK)、判別部52は、被検者Sのアルツハイマー型認知症の罹患リスク度をBと判別する(ステップS16、判別パターンDP1−3)。
ステップS14において、第1問題Q1−4の近時記憶を問う問題の回答が誤答であった場合(ステップS14でNG)、判別部52は、被検者Sのアルツハイマー型認知症の罹患リスク度をCと判別する(ステップS17、判別パターンDP1−4)。一方、第1問題Q1−4の近時記憶を問う問題の回答が正答であった場合(ステップS14でOK)、判別部52は、被検者Sのアルツハイマー型認知症の罹患リスク度をDと判別する(ステップS18、判別パターンDP1−5)。
被検者Sのアルツハイマー型認知症の罹患リスク度が最高のAか否かは、判別パターンDP1−1に示すように、最短で第1問題Q1−1の遠隔記憶を問う問題の回答を受け付けたときに判別することができる。また、第1問題Q1−1の遠隔記憶を問う問題の回答が正答であった場合でも、被検者Sのアルツハイマー型認知症の罹患リスク度がAかBかは、判別パターンDP1−2,DP1−3に示すように、第1問題Q1−4の近時記憶を問う問題の回答を待たずに、第1問題Q1−3の計算力を問う問題の回答を受け付けたときに判別することができる。
図12〜図16において、レビー小体型認知症の判別ロジックは、第2問題Q2−1の幻視の有無を問う問題の幻視の有無と、第2問題Q2−2の形態知覚の問題の、ないものを答えたか否か、およびあるものを見逃したか否かと、第2問題Q2−3の相貌の失認を問う問題、および第2問題Q2−4の人の表情の見当識を問う問題の、それぞれの回答の正誤と、遠隔記憶等の記憶の問題の成績の良否と、回答時間の長短とに基づく。
ここで、記憶の問題の成績の良否は、第1問題Q1−1の遠隔記憶を問う問題、第1問題Q1−2の即時記憶を問う問題、および第1問題Q1−4の近時記憶を問う問題の総正答数と設定数との比較により決定される。すなわち、総正答数が設定数よりも多い場合は記憶の問題の成績が良とされ、一方、総正答数が設定数以下の場合は記憶の問題の成績が不可とされる。このように、第1問題Q1−1,Q1−2,Q1−4は、アルツハイマー型認知症だけでなくレビー小体型認知症にも関わるので、第1問題群だけでなく第2問題群にも属しているといえる。
回答時間の長短は、簡易診断テストを構成する各問題の回答時間の平均(以下、平均回答時間)と設定時間との比較により決定される。すなわち、平均回答時間が設定時間以下であった場合は回答時間が短いとされ、一方、平均回答時間が設定時間よりも長い場合は回答時間が長いとされる。
まず、図12、図14、図15に示すように、第2問題Q2−1の幻視の有無を問う問題の回答が幻視ありであった場合(ステップS20でYES)、判別部52は、被検者Sのレビー小体型認知症の罹患リスク度をAと判別する(ステップS21、判別パターンDP2−1)。一方、第2問題Q2−1の幻視の有無を問う問題の回答が幻視なしであった場合(ステップS20でNO)は、第2問題Q2−2の形態知覚の問題の、ないものを答えたか否かに基づく判別(ステップS22)に移る。
第2問題Q2−2の形態知覚の問題で、ないものを答えた場合(ステップS22でYES)、判別部52は、被検者Sのレビー小体型認知症の罹患リスク度をAと判別する(ステップS23、判別パターンDP2−2)。一方、第2問題Q2−2の形態知覚の問題で、ないものを答えなかった場合(ステップS22でNO)は、第2問題Q2−2の形態知覚の問題の、あるものを見逃したか否かに基づく判別(ステップS24)に移る。
第2問題Q2−2の形態知覚の問題で、あるものを見逃した場合(ステップS24でYES)は、第2問題Q2−3の相貌の失認を問う問題の正誤に基づく判別(ステップS25−1)に移る。第2問題Q2−2の形態知覚の問題で、あるものを見逃さなかった場合(ステップS24でNO)も同様に、第2問題Q2−3の相貌の失認を問う問題の正誤に基づく判別(ステップS25−2、図13参照)に移る。
ステップS25−1において、第2問題Q2−3の相貌の失認を問う問題の回答が誤答であった場合(ステップS25−1でNG)は、第2問題Q2−4の人の表情の見当識を問う問題の正誤に基づく判別(ステップS26−1)に移る。第2問題Q2−3の相貌の失認を問う問題の回答が正答であった場合(ステップS25−1でOK)も同様に、第2問題Q2−4の人の表情の見当識を問う問題の正誤に基づく判別(ステップS26−2)に移る。
ステップS26−1において、第2問題Q2−4の人の表情の見当識を問う問題の回答が誤答であった場合(ステップS26−1でNG)、判別部52は、被検者Sのレビー小体型認知症の罹患リスク度をAと判別する(ステップS27、判別パターンDP2−3)。一方、第2問題Q2−4の人の表情の見当識を問う問題の回答が正答であった場合(ステップS26−1でOK)は、記憶の問題の成績の良否に基づく判別(ステップS28−1)に移る。
ステップS28−1において、記憶の問題の成績が良であった場合(ステップS28−1でOK)、判別部52は、被検者Sのレビー小体型認知症の罹患リスク度をBと判別する(ステップS29、判別パターンDP2−4)。一方、記憶の問題の成績が不可であった場合(ステップS28−1でNG)は、回答時間の長短に基づく判別(ステップS30−1)に移る。
ステップS30−1において、回答時間が長かった場合(ステップS30−1でNG)、判別部52は、被検者Sのレビー小体型認知症の罹患リスク度をBと判別する(ステップS31、判別パターンDP2−5)。一方、回答時間が短かった場合(ステップS30−1でOK)、判別部52は、被検者Sのレビー小体型認知症の罹患リスク度をCと判別する(ステップS32、判別パターンDP2−6)。
ステップS26−2において、第2問題Q2−4の人の表情の見当識を問う問題の回答が誤答であった場合(ステップS26−2でNG)は、記憶の問題の成績の良否に基づく判別(ステップS28−2)に移る。第2問題Q2−4の人の表情の見当識を問う問題の回答が正答であった場合(ステップS26−2でOK)も同様に、記憶の問題の成績の良否に基づく判別(ステップS28−3)に移る。
ステップS28−2において、記憶の問題の成績が良であった場合(ステップS28−2でOK)、判別部52は、被検者Sのレビー小体型認知症の罹患リスク度をBと判別する(ステップS33、判別パターンDP2−7)。一方、記憶の問題の成績が不可であった場合(ステップS28−2でNG)は、回答時間の長短に基づく判別(ステップS30−2)に移る。
ステップS30−2において、回答時間が長かった場合(ステップS30−2でNG)、判別部52は、被検者Sのレビー小体型認知症の罹患リスク度をBと判別する(ステップS34、判別パターンDP2−8)。一方、回答時間が短かった場合(ステップS30−2でOK)、判別部52は、被検者Sのレビー小体型認知症の罹患リスク度をCと判別する(ステップS35、判別パターンDP2−9)。
ステップS28−3において、記憶の問題の成績が良であった場合(ステップS28−3でOK)、判別部52は、被検者Sのレビー小体型認知症の罹患リスク度をCと判別する(ステップS36、判別パターンDP2−10)。一方、記憶の問題の成績が不可であった場合(ステップS28−3でNG)は、回答時間の長短に基づく判別(ステップS30−3)に移る。
ステップS30−3において、回答時間が長かった場合(ステップS30−3でNG)、判別部52は、被検者Sのレビー小体型認知症の罹患リスク度をBと判別する(ステップS37、判別パターンDP2−11)。一方、回答時間が短かった場合(ステップS30−3でOK)、判別部52は、被検者Sのレビー小体型認知症の罹患リスク度をCと判別する(ステップS38、判別パターンDP2−12)。
図13、図16に示すように、ステップS25−2において、第2問題Q2−3の相貌の失認を問う問題の回答が誤答であった場合(ステップS25−2でNG)は、第2問題Q2−4の人の表情の見当識を問う問題の正誤に基づく判別(ステップS26−3)に移る。第2問題Q2−3の相貌の失認を問う問題の回答が正答であった場合(ステップS25−2でOK)も同様に、第2問題Q2−4の人の表情の見当識を問う問題の正誤に基づく判別(ステップS26−4)に移る。
ステップS26−3において、第2問題Q2−4の人の表情の見当識を問う問題の回答が誤答であった場合(ステップS26−3でNG)、判別部52は、被検者Sのレビー小体型認知症の罹患リスク度をBと判別する(ステップS39、判別パターンDP2−13)。一方、第2問題Q2−4の人の表情の見当識を問う問題の回答が正答であった場合(ステップS26−3でOK)は、記憶の問題の成績の良否に基づく判別(ステップS28−4)に移る。
ステップS28−4において、記憶の問題の成績が良であった場合(ステップS28−4でOK)、判別部52は、被検者Sのレビー小体型認知症の罹患リスク度をBと判別する(ステップS40、判別パターンDP2−14)。一方、記憶の問題の成績が不可であった場合(ステップS28−4でNG)は、回答時間の長短に基づく判別(ステップS30−4)に移る。
ステップS30−4において、回答時間が長かった場合(ステップS30−4でNG)、判別部52は、被検者Sのレビー小体型認知症の罹患リスク度をBと判別する(ステップS41、判別パターンDP2−15)。一方、回答時間が短かった場合(ステップS30−4でOK)、判別部52は、被検者Sのレビー小体型認知症の罹患リスク度をCと判別する(ステップS42、判別パターンDP2−16)。
ステップS26−4において、第2問題Q2−4の人の表情の見当識を問う問題の回答が誤答であった場合(ステップS26−4でNG)は、記憶の問題の成績の良否に基づく判別(ステップS28−5)に移る。
ステップS28−5において、記憶の問題の成績が良であった場合(ステップS28−5でOK)、判別部52は、被検者Sのレビー小体型認知症の罹患リスク度をBと判別する(ステップS43、判別パターンDP2−17)。一方、記憶の問題の成績が不可であった場合(ステップS28−5でNG)は、回答時間の長短に基づく判別(ステップS30−5)に移る。
ステップS30−5において、回答時間が長かった場合(ステップS30−5でNG)、判別部52は、被検者Sのレビー小体型認知症の罹患リスク度をBと判別する(ステップS44、判別パターンDP2−18)。一方、回答時間が短かった場合(ステップS30−5でOK)、判別部52は、被検者Sのレビー小体型認知症の罹患リスク度をCと判別する(ステップS45、判別パターンDP2−19)。
ステップS26−4において、第2問題Q2−4の人の表情の見当識を問う問題の回答が正答であった場合(ステップS26−4でOK)、判別部52は、被検者Sのレビー小体型認知症の罹患リスク度をDと判別する(ステップS46、判別パターンDP2−20)。
被検者Sのレビー小体型認知症の罹患リスク度が最高のAか否かは、判別パターンDP2−1に示すように、最短で第2問題Q2−1の幻視の有無を問う問題の回答を受け付けたときに判別することができる。第2問題Q2−1の幻視の有無を問う問題の回答が幻視なしであった場合も、判別パターンDP2−2に示すように、第2問題Q2−2の形態知覚の問題で、ないものを答えた場合には罹患リスク度がAと判別されるため、第2問題Q2−3の相貌の失認を問う問題、第2問題Q2−4の人の表情の見当識を問う問題の回答を待たずに判別することができる。
なお、例えば判別パターンDP2−4と判別パターンDP2−5,DP2−6のように、記憶の問題の成績が良であった場合の罹患リスク度(判別パターンDP2−4の罹患リスク度B)と、記憶の問題の成績が不可であった場合の罹患リスク度(判別パターンDP2−5,DP2−6)とが、同等か後者の方が低いのは、レビー小体型認知症では記憶力は比較的維持されるという医学的知見に基づく。
図17および図18において、血管性認知症の判別ロジックは、第3問題Q3−1の左右の見当識を問う問題、第3問題Q3−2の空間認識を問う問題、並びに第3問題Q3−3の地誌的認知機能を問う問題の、それぞれの回答の正誤と、タイムアウト数の多寡と、タイムアウトの時間的偏りの有無とに基づく。
ここで、タイムアウト数の多寡は、タイムアウト数と設定数との比較により決定される。すなわち、タイムアウト数が設定数以下であった場合はタイムアウト数が少ないとされ、一方、タイムアウト数が設定数よりも多い場合はタイムアウト数が多いとされる。
また、タイムアウトの時間的偏りの有無は、簡易診断テストを前半と後半に分けた場合の前半のタイムアウト数と後半のタイムアウト数の差分の絶対値と設定値との比較により決定される。すなわち、差分の絶対値が設定値以下であった場合はタイムアウトの時間的偏りがないとされ、一方、差分の絶対値が設定値よりも大きい場合はタイムアウトの時間的偏りがあるとされる。
まず、第3問題Q3−1の左右の見当識を問う問題の回答が誤答であった場合(ステップS50でNG)、判別部52は、被検者Sの血管性認知症の罹患リスク度をAと判別する(ステップS51、判別パターンDP3−1)。一方、第3問題Q3−1の左右の見当識を問う問題の回答が正答であった場合(ステップS50でOK)は、第3問題Q3−2の空間認識を問う問題の回答の正誤に基づく判別(ステップS52)に移る。
第3問題Q3−2の空間認識を問う問題の回答が誤答であった場合(ステップS52でNG)、判別部52は、被検者Sの血管性認知症の罹患リスク度をAと判別する(ステップS53、判別パターンDP3−2)。一方、第3問題Q3−2の空間認識を問う問題の回答が正答であった場合(ステップS52でOK)は、第3問題Q3−3の地誌的認知機能を問う問題の回答の正誤に基づく判別(ステップS54)に移る。
第3問題Q3−3の地誌的認知機能を問う問題の回答が誤答であった場合(ステップS54でNG)は、タイムアウト数の多寡に基づく判別(ステップS55−1)に移る。第3問題Q3−3の地誌的認知機能を問う問題の回答が正答であった場合(ステップS54でOK)も同様に、タイムアウト数の多寡に基づく判別(ステップS55−2)に移る。
ステップS55−1において、タイムアウト数が多かった場合(ステップS55−1でNG)は、タイムアウトの時間的偏りの有無に基づく判別(ステップS56−1)に移る。
ステップS56−1において、タイムアウトの時間的偏りがなかった場合(ステップS56−1でNO)、すなわち前半後半によらずタイムアウト数が多かった場合、判別部52は、被検者Sの血管性認知症の罹患リスク度をBと判別する(ステップS57、判別パターンDP3−3)。一方、タイムアウトの時間的偏りがあった場合(ステップS56−1でYES)、すなわちタイムアウト数が多く、かつ前半または後半にタイムアウトが偏っていた場合、判別部52は、被検者Sの血管性認知症の罹患リスク度をCと判別する(ステップS58、判別パターンDP3−4)。
ステップS55−1において、タイムアウト数が少なかった場合(ステップS55−1でOK)、判別部52は、被検者Sの血管性認知症の罹患リスク度をCと判別する(ステップS59、判別パターンDP3−5)。
ステップS55−2において、タイムアウト数が多かった場合(ステップS55−2でNG)は、タイムアウトの時間的偏りの有無に基づく判別(ステップS56−2)に移る。
ステップS56−2において、タイムアウトの時間的偏りがなかった場合(ステップS56−2でNO)、判別部52は、被検者Sの血管性認知症の罹患リスク度をCと判別する(ステップS60、判別パターンDP3−6)。一方、タイムアウトの時間的偏りがあった場合(ステップS56−2でYES)、判別部52は、被検者Sの血管性認知症の罹患リスク度をDと判別する(ステップS61、判別パターンDP3−7)。
ステップS55−2において、タイムアウト数が少なかった場合(ステップS55−2でOK)、判別部52は、被検者Sの血管性認知症の罹患リスク度をDと判別する(ステップS62、判別パターンDP3−8)。
被検者Sの血管性認知症の罹患リスク度が最高のAか否かは、判別パターンDP3−1に示すように、最短で第3問題Q3−1の左右の見当識を問う問題の回答を受け付けたときに判別することができる。第3問題Q3−1の左右の見当識を問う問題の回答が正答であった場合も、判別パターンDP3−2に示すように、第3問題Q3−2の空間認識を問う問題の回答が誤答であった場合には罹患リスク度がAと判別されるため、第3問題Q3−3の地誌的認知機能を問う問題の回答を待たずに判別することができる。
図19〜図22において、前頭側頭型認知症の判別ロジックは、持続力の有無と、第4問題Q4−1のかな拾いの問題の成績の良否と、「分からない」の選択肢を選択した回数(「分からない」の選択回数)の多寡と、「分からない」の選択の後半の偏りの有無と、タイムアウト数の多寡と、タイムアウトの後半の偏りの有無とに基づく。
ここで、持続力の有無は、被検者Sが簡易診断テストを最後まで受けたか否かによって決定される。すなわち、簡易診断テストを最後まで受けた場合は持続力があるとされ、一方、簡易診断テストを途中で強制的に終了した場合は持続力がないとされる。
第4問題Q4−1のかな拾いの問題の成績の良否は、かな拾いの問題の正答数と設定数との比較により決定される。すなわち、正答数が設定数よりも多い場合はかな拾いの問題の成績が良とされ、一方、正答数が設定数以下であった場合はかな拾いの問題の成績が不可とされる。
「分からない」の選択回数の多寡は、「分からない」の選択回数と設定回数との比較により決定される。すなわち、「分からない」の選択回数が設定回数以下であった場合は「分からない」の選択回数が少ないとされ、一方、「分からない」の選択回数が設定回数よりも多い場合は「分からない」の選択回数が多いとされる。
「分からない」の選択の後半の偏りの有無は、簡易診断テストを前半と後半に分けた場合の前半の「分からない」の選択回数と後半の「分からない」の選択回数の大小比較により決定される。すなわち、後半の「分からない」の選択回数が前半の「分からない」の選択回数よりも多い場合は「分からない」の選択の後半の偏りがあるとされ、一方、後半の「分からない」の選択回数が前半の「分からない」の選択回数以下であった場合は「分からない」の選択の後半の偏りがないとされる。単純に後半の「分からない」の選択回数が設定回数よりも多い場合は「分からない」の選択の後半の偏りがあるとし、一方、後半の「分からない」の選択回数が設定回数以下であった場合は「分からない」の選択の後半の偏りがないとしてもよい。
タイムアウトの後半の偏りの有無は、簡易診断テストを前半と後半に分けた場合の前半のタイムアウト数と後半のタイムアウト数の大小比較により決定される。すなわち、後半のタイムアウト数が前半のタイムアウト数よりも多い場合はタイムアウトの後半の偏りがあるとされ、一方、後半のタイムアウト数が前半のタイムアウト数以下であった場合はタイムアウトの後半の偏りがないとされる。単純に後半のタイムアウト数が設定数よりも多い場合はタイムアウトの後半の偏りがあるとし、一方、後半のタイムアウト数が設定数以下であった場合はタイムアウトの後半の偏りがないとしてもよい。なお、タイムアウト数の多寡は、血管性認知症の判別ロジックの場合と同じである。
まず、図19および図21に示すように、持続力がなかった場合(ステップS70でNG)、判別部52は、被検者Sの前頭側頭型認知症の罹患リスク度をAと判別する(ステップS71、判別パターンDP4−1)。一方、持続力があった場合(ステップS70でOK)は、第4問題Q4−1のかな拾いの問題の成績の良否に基づく判別(ステップS72)に移る。
第4問題Q4−1のかな拾いの問題の成績が不可であった場合(ステップS72でNG)は、「分からない」の選択回数の多寡に基づく判別(ステップS73−1)に移る。第4問題Q4−1のかな拾いの問題の成績が良であった場合(ステップS72でOK)も同様に、「分からない」の選択回数の多寡に基づく判別(ステップS73−2、図20参照)に移る。
ステップS73−1において、「分からない」の選択回数が多かった場合(ステップS73−1でNG)、判別部52は、被検者Sの前頭側頭型認知症の罹患リスク度をAと判別する(ステップS74、判別パターンDP4−2)。一方、「分からない」の選択回数が少なかった場合(ステップS73−1でOK)は、タイムアウト数の多寡に基づく判別(ステップS75−1)に移る。
ステップS75−1において、タイムアウト数が多かった場合(ステップS75−1でNG)は、タイムアウトの後半の偏りの有無に基づく判別(ステップS76−1)に移る。
ステップS76−1において、タイムアウトの後半の偏りがあった場合(ステップS76−1でYES)、判別部52は、被検者Sの前頭側頭型認知症の罹患リスク度をAと判別する(ステップS77、判別パターンDP4−3)。一方、タイムアウトの後半の偏りがなかった場合(ステップS76−1でNO)、判別部52は、被検者Sの前頭側頭型認知症の罹患リスク度をBと判別する(ステップS78、判別パターンDP4−4)。
ステップS75−1において、タイムアウト数が少なかった場合(ステップS75−1でOK)、判別部52は、被検者Sの前頭側頭型認知症の罹患リスク度をBと判別する(ステップS79、判別パターンDP4−5)。
図20および図22に示すように、ステップS73−2において、「分からない」の選択回数が多かった場合(ステップS73−2でNG)は、「分からない」の選択の後半の偏りの有無に基づく判別(ステップS80)に移る。
「分からない」の選択の後半の偏りがあった場合(ステップS80でYES)、判別部52は、被検者Sの前頭側頭型認知症の罹患リスク度をBと判別する(ステップS81、判別パターンDP4−6)。一方、「分からない」の選択の後半の偏りがなかった場合(ステップS80でNO)は、タイムアウト数の多寡に基づく判別(ステップS75−2)に移る。
ステップS75−2において、タイムアウト数が多かった場合(ステップS75−2でNG)は、タイムアウトの後半の偏りの有無に基づく判別(ステップS76−2)に移る。
ステップS76−2において、タイムアウトの後半の偏りがあった場合(ステップS76−2でYES)、判別部52は、被検者Sの前頭側頭型認知症の罹患リスク度をBと判別する(ステップS82、判別パターンDP4−7)。一方、タイムアウトの後半の偏りがなかった場合(ステップS76−2でNO)、判別部52は、被検者Sの前頭側頭型認知症の罹患リスク度をCと判別する(ステップS83、判別パターンDP4−8)。
ステップS75−2において、タイムアウト数が少なかった場合(ステップS75−2でOK)、判別部52は、被検者Sの前頭側頭型認知症の罹患リスク度をCと判別する(ステップS84、判別パターンDP4−9)。
ステップS73−2において、「分からない」の選択回数が少なかった場合(ステップS73−2でOK)は、タイムアウト数に基づく判別(ステップS75−3)に移る。
ステップS75−3において、タイムアウト数が多かった場合(ステップS75−3でNG)は、タイムアウトの後半の偏りの有無に基づく判別(ステップS76−3)に移る。
ステップS76−3において、タイムアウトの後半の偏りがあった場合(ステップS76−3でYES)、判別部52は、被検者Sの前頭側頭型認知症の罹患リスク度をCと判別する(ステップS85、判別パターンDP4−10)。一方、タイムアウトの後半の偏りがなかった場合(ステップS76−3でNO)、判別部52は、被検者Sの前頭側頭型認知症の罹患リスク度をDと判別する(ステップS86、判別パターンDP4−11)。
ステップS75−3において、タイムアウト数が少なかった場合(ステップS75−3でOK)、判別部52は、被検者Sの前頭側頭型認知症の罹患リスク度をDと判別する(ステップS87、判別パターンDP4−12)。
被検者Sの前頭側頭型認知症の罹患リスク度が最高のAか否かは、判別パターンDP4−1に示すように、最短で第1問題Q1−1で簡易診断テストを強制的に終了した場合に判別することができる。簡易診断テストを強制的に終了しなかった場合も、判別パターンDP4−2に示すように、第4問題Q4−1のかな拾いの問題の成績が不可で、かつ「分からない」の選択回数が多かった場合には罹患リスク度がAと判別されるため、第4問題Q4−1のかな拾いの問題の回答を受け付けたときに判別することができる。なお、図10〜図22に示した判別ロジックは一例であり、適宜変更が可能である。また、罹患リスク度を、A〜Dのランクではなく、%等の数値で表してもよい。
図23において、履歴情報48は、被検者S毎の簡易診断テストの履歴である。履歴情報48には、被検者Sが簡易診断テストを受けた医療施設15の施設ID、被検者ID、並びに簡易診断テストの実施日時(開始日時)が関連付けられている。被検者Sが複数回簡易診断テストを受けた場合は、実施日時毎の履歴情報48が記憶される。
履歴情報48には、1回分の簡易診断テストとして予め用意された一連の問題である第1問題Q1−1〜Q1−4、第2問題Q2−1〜Q2−4、第3問題Q3−1〜Q3−3、第4問題Q4−1の欄と、それらの回答、正誤、および回答時間の欄が設けられている。情報管理部53は、受付部51からの回答および回答時間を、これらの欄にそれぞれ登録する。また、情報管理部53は、受付部51からの回答と問題情報46に登録された正答とを照合することで回答の正誤を判断し、判断した正誤を正誤の欄に登録する。第2問題Q2−1の幻視の有無を問う問題は正誤の区別がなく、第4問題Q4−1のかな拾いの問題は成績の良否が判別に用いられるので、正誤の欄は空欄となっている。
回答選択肢で「分からない」が選択された場合、情報管理部53は、第1問題Q1−3に例示するように、回答の欄に「分からない」を登録し、正誤の欄に誤答を登録する。また、受付部51からタイムアウトの旨が入力された場合、情報管理部53は、第3問題Q3−1に例示するように、回答の欄に「タイムアウト」を登録し、正誤の欄に誤答を登録する。
被検者Sにより簡易診断テストが途中で強制的に終了された場合は、終了されるまでに受け付けた回答が回答の欄に登録され、強制的に終了された以降の問題の回答の欄は空欄となる。また、被検者Sの診療の順番がきて、止むを得ず簡易診断テストが中断された場合も同様に、中断されるまでに受け付けた回答が回答の欄に登録され、中断された以降の問題の回答の欄は空欄となる。情報管理部53は、簡易診断テストが強制的に終了された旨と、簡易診断テストが中断された旨を区別して履歴情報48に登録する。
判別部52は、この履歴情報48から、判別に必要な情報(回答の正誤、総正答数、平均回答時間、タイムアウト数、「分からない」の選択回数、簡易診断テストが強制的に終了されたか否か等)を抽出または算出し、判別を行う。
簡易診断テストが強制的に終了または中断された場合には、判別部52は、終了または中断されるまでに受け付けた回答に基づいて判別を行う。この際、終了または中断したときの問題と回答によっては、罹患リスク度を判別することができない認知症も出現する。こうした場合、判別部52は、当該認知症の罹患リスク度を判別せずに不定とする。
図24〜図34は、問題表示画面60の例である。問題表示画面60には、「問題1」等の当該問題の出題順が何番目かを示す表題、「あなたは何月生まれですか?」等の問題文、「1月〜12月」等の回答選択肢、問題によってはイラストが表示される。回答選択肢には、回答が分からないことを意思表示するための分からないボタン61が必ず用意されている。
また、問題表示画面60には、止むを得ず簡易診断テストを中断する場合に操作される中断ボタン62と、簡易診断テストを途中で強制的に終了する場合に操作される終了ボタン63と、問題表示画面60の操作ガイド等を表示する場合に操作されるヘルプボタン64とが設けられている。
図24は、第1問題Q1−1の遠隔記憶を問う問題の問題表示画面60Aである。問題表示画面60Aには、1番目の問題であることを示す表題「問題1」、問題文「あなたは何月生まれですか?」、および「1月〜12月」の回答選択肢が表示される。なお、遠隔記憶を問う問題としては、被検者Sが現在住んでいる都道府県、現在の年号、あるいは家族の名前を問う内容でもよい。
このように、第1問題Q1−1の遠隔記憶を問う問題は、被検者S個人に関わる情報を問うものである。この場合、情報管理部53は、例えば被検者Sの電子カルテにアクセスして、電子カルテ記載の被検者Sの情報から正答を抽出し、問題情報46に登録する。
図25は、第2問題Q2−1の幻視の有無を問う問題の問題表示画面60Bである。問題表示画面60Bには、2番目の問題であることを示す表題「問題2」、問題文「いない人、いない動物、いない虫等が見えることがありますか?」、および「見えることはない」、「見えることがある」の回答選択肢、「見えることがある」場合にどういったものが見えるかを選ばせる「人」、「虫」等の回答選択肢が表示される。
図26は、第3問題Q3−1の左右の見当識を問う問題の問題表示画面60Cである。問題表示画面60Cには、3番目の問題であることを示す表題「問題3」、問題文「左右どちらの手ですか?」、「右手」、「左手」の回答選択肢、および手のイラストが表示される。手のイラストは、例示するように親指と他の指の先端同士が接触した状態のイラストや、手を握った状態のイラストが好ましい。なお、左右の見当識を問う問題としては、手の代わりに目、耳、足のイラストを用いてもよいし、左は白丸、右は黒丸等、左右を示すマークを予め決めておき、提示されたマークに応じた左右のボタンを被検者Sに選ばせる内容でもよい。
図27は、第4問題Q4−1のかな拾いの問題の問題表示画面60Dである。問題表示画面60Dには、4番目の問題であることを示す表題「問題4」、問題文「「あいうえお」を全て押して下さい。」、「あいうえお」が10個混在した25個のひらがなの回答選択肢、並びに選択間違いを1つ訂正する際に操作される「1文字訂正」、回答を最初からやり直す際に操作される「やり直し」、回答を送信する際に操作される「決定」の各選択肢が表示される。この場合、前頭側頭型認知症の判別ロジックのかな拾いの問題の成績の良否を決定するための設定数には、例えば全問正解の10の半分である5が設定される。
図28は、第1問題Q1−2の即時記憶を問う問題の問題表示画面60Eである。問題表示画面60Eには、5番目の問題であることを示す表題「問題5」、問題文「先ほど憶えた5つを選んで下さい。」、「りんご」、「自転車」、「ひまわり」等の25個の単語の回答選択肢、選択間違いを訂正する際に操作される「訂正」、回答を送信する際に操作される「決定」の各選択肢が表示される。
問題表示画面60Eは、25個の単語の中に含まれる例えば5個の単語を表すイラストを被検者Sに次々に提示し、かつイラストが表す単語が何であるかを被検者Sに選択させて、5個の単語を被検者Sに憶えさせた後、直ちに出力される。このため、問題表示画面60Eの回答選択肢には、被検者Sに憶えさせた5個の単語が必ず含まれている。この場合、アルツハイマー型認知症の判別ロジックの第1問題Q1−2の即時記憶を問う問題の回答の正誤を決定するための設定数には、例えば3が設定される。なお、即時記憶を問う問題としては、被検者Sに複数のキーワードを含む文章を読ませた後、直ちにキーワードを問う内容でもよい。
図29は、第2問題Q2−2の形態知覚の問題の問題表示画面60Fである。問題表示画面60Fには、6番目の問題であることを示す表題「問題6」、問題文「何がありますか?」、「包丁」、「人」、「馬」等の9個の単語の回答選択肢、選択間違いを訂正する際に操作される「訂正」、回答を送信する際に操作される「決定」の各選択肢、並びに錯綜図が表示される。錯綜図は、複数の物品が重なり合って描かれたもので、図29では、「包丁」、「金槌」、「ジョッキ」の3品が重なり合って描かれた錯綜図を例示している。錯綜図は、曲線を含み、かつ線の太さが異なることが好ましく、さらに図形が波線で構成され、所々線の太さが異なることがより好ましい。なお、錯綜図の代わりに、曲線を含み、かつ所々線の太さが異なる単品の図形を提示してもよい。
図30は、第3問題Q3−2の空間認識を問う問題の問題表示画面60Gである。問題表示画面60Gには、7番目の問題であることを示す表題「問題7」、問題文「線の真ん中を触って下さい。」、および横の直線のイラストが表示される。問題表示画面60Gにおいては、横の直線のイラスト自体が回答選択肢となり、被検者Sが横の直線のイラストに触った位置(左側、真ん中、右側)が回答となる。空間認識を問う問題のイラストは、例示するように横の直線が好ましく、触る位置の指示も例示するように真ん中が好ましい。なお、横の直線に代えて縦の直線を提示してもよいし、触る位置の指示を真ん中以外としてもよい。
図31は、第1問題Q1−3の計算力を問う問題の問題表示画面60Hである。問題表示画面60Hには、8番目の問題であることを示す表題「問題8」、問題文「15+8はいくつですか?」、「0〜9」の回答選択肢、並びに選択間違いを1つ訂正する際に操作される「1文字訂正」、回答を最初からやり直す際に操作される「やり直し」、回答を送信する際に操作される「決定」の各選択肢が表示される。なお、計算力を問う問題としては、100から7を繰り返し引いた数を被検者Sに何回か回答させる内容でもよい。
図32は、第2問題Q2−3の相貌の失認を問う問題の問題表示画面60Iである。問題表示画面60Iには、9番目の問題であることを示す表題「問題9」、問題文「この人は誰ですか?」、「よしお」、「わるお」等の4人の人物の名前の回答選択肢、並びに人物の顔のイラストが表示される。
問題表示画面60Iは、4人の人物の顔のイラストと名前を被検者Sに提示して、4人の人物の顔と名前を被検者Sに憶えさせた後に出力される。顔のイラストは、例示するように3人以上であることが好ましく、また、同性であることが好ましい。さらに、人物の年代も同じであることが好ましい。なお、問題表示画面60Iの場合とは逆に、名前ではなく顔のイラストを回答選択肢とし、1人の人物の名前を提示して、提示した名前の人物の顔のイラストを選ばせる内容でもよい。
図33は、第3問題Q3−3の地誌的認知機能を問う問題の問題表示画面60Jである。問題表示画面60Jには、10番目の問題であることを示す表題「問題10」、問題文「家のすぐ北の交差点から東に進み2つ目の交差点を押して下さい。」、並びに家と方角を示すマークと複数の交差点が描かれた地図のイラストが表示される。地図のイラストは、例示するように模式化されたものが好ましい。なお、地誌的認知機能を問う問題としては、出発点と到達点を定め、出発点から到達点までの道順を問う内容、あるいは地図上の2点の位置関係を問う内容でもよい。
第1問題Q1−4の近時記憶を問う問題の問題表示画面は、表題が11番目の問題であることを示す「問題11」である以外は、図28に示す第1問題Q1−2の即時記憶を問う問題の問題表示画面60Eと同じである。
図34は、第2問題Q2−4の人の表情の見当識を問う問題の問題表示画面60Kである。問題表示画面60Kには、12番目の問題であることを示す表題「問題12」、問題文「嬉しそうなのは誰ですか?」、並びに表情が異なる4人の人物の顔のイラストと名前が表示される。顔のイラストと名前は、図32に示す相貌の失認を問う問題の問題表示画面60Iを出力する前に被検者Sに提示したものと同じである。表情は、喜び、怒り、悲しみ、驚き、恐怖、無表情等の中から3つ以上選択することが好ましい。なお、人の表情の見当識を問う問題としては、1人だけ他の人と異なる表情の人物の顔のイラストを提示し、他の人と違う感情を抱いている人物を選ばせる内容でもよい。
図35において、判別結果表示画面70には、各認知症の罹患リスク度と、罹患リスク度に応じた被検者Sへのメッセージとが表示され、簡易診断テストを最初からもう一度やり直す際に操作されるリトライボタン71と、簡易診断テストを終了する際に操作される終了ボタン72とが設けられている。
以下、上記構成による作用について、図36のフローチャートを参照して説明する。医療施設15の待合室16において、診療待ちの被検者Sは、簡易診断テストを受けるため、待合室16に配備された回答端末11を操作してウェブブラウザを起動し、ウェブブラウザ上に認知症診断支援サーバ12のアクセス画面を表示させる。このアクセス画面において、被検者Sは自らの被検者IDを入力してアクセス指示を行う。これにより、入力された被検者IDと施設IDを含むアクセス要求が認知症診断支援サーバ12に送信され、認知症診断支援サーバ12へのアクセスが完了する。なお、被検者IDの入力等の初期設定は、被検者Sの付き添いの家族、あるいは看護師等の第三者の協力を得て実施する場合も有り得る。
回答端末11からのアクセスを受けて、認知症診断支援サーバ12では、問題表示画面60が出力制御部50からアクセス元の回答端末11に出力される(ステップS100、問題出力制御ステップ)。回答端末11では、問題表示画面60がタッチパネル14に表示される。なお、問題表示画面60の前に、被検者Sを回答端末11の操作に慣れさせるための練習画面を出力したり、被検者Sの体調(よく眠れるか、最近物忘れがひどいと感じるか等)や家族構成を問う画面を出力したりしてもよい。
被検者Sは、問題表示画面60の所望の回答選択肢を選択する。正答が分からない場合は分からないボタン61を選択する。これにより、回答を含む登録要求が認知症診断支援サーバ12に送信される。
認知症診断支援サーバ12において、回答端末11からの回答を含む登録要求が受付部51で受け付けられる(ステップS110、回答受付ステップ)。このとき、受付部51では回答時間が測定される。回答および測定時間は、受付部51から情報管理部53に出力される。制限時間内に受付部51で回答が受け付けられなかった場合は、タイムアウトの旨が受付部51から情報管理部53に出力される。
回答および測定時間は、情報管理部53により被検者ID等と関連付けられて履歴情報48に登録される(ステップS120)。これらステップS100〜ステップS120までの処理は、全問終了するか、中断ボタン62が押されて中断要求が受付部51で受け付けられるか、終了ボタン63が押されて終了要求が受付部51で受け付けられるまで(ステップS130でNO)繰り返される。
問題は、第1〜第4問題群の各々から1つずつ順に出力される。このため、各認知症の罹患の疑いを、最短で4番目の第4問題Q4−1のかな拾いの問題の回答後に判別することができる。したがって、例えば第1問題Q1−1〜Q1−4を出力した後、第2問題Q2−1〜Q2−4を出力する等、各問題群の問題をまとめて出力する場合よりも、認知症の罹患の疑いを認知症の種類別に素早く判別することが可能となる。
また、高確度問題ほど低確度問題よりも先に出力される。このため、高確度問題の回答によっては、低確度問題の回答を待つことなく、即座に罹患の疑いがあることを判別することが可能となる。
第1問題群はアルツハイマー型認知症、第2問題群はレビー小体型認知症、第3問題群は血管性認知症、第4問題群は前頭側頭型認知症にそれぞれ対応する。そして、第1問題群における高確度問題を第1問題Q1−1の遠隔記憶を問う問題、第2問題群における高確度問題を第2問題Q2−1の幻視の有無を問う問題、第3問題群における高確度問題を第3問題Q3−1の左右の見当識を問う問題としている。
遠隔記憶の障害はアルツハイマー型認知症に、幻視はレビー小体型認知症に、左右の見当識障害は血管性認知症に、それぞれ典型的な症状である。このため、上記のように遠隔記憶を問う問題、幻視の有無を問う問題、および左右の見当識を問う問題を高確度問題とすれば、より妥当性のある判別結果を得ることができる。
さらに、発症件数が多い認知症に対応する問題群の問題が、発症件数が少ない認知症に対応する問題群の問題よりも先に出力される。すなわち、第1問題、第2問題、第3問題、第4問題の順に出力される。このため、罹患の可能性が高い発症件数が多い認知症の罹患の疑いを、優先的に判別することができる。
全問終了するか、中断ボタン62が押されて中断要求が受付部51で受け付けられるか、終了ボタン63が押されて終了要求が受付部51で受け付けられた場合(ステップS130でYES)、判別部52において、被検者Sの各認知症の罹患の疑いが判別される(ステップS140、判別ステップ)。これにより、各認知症の罹患の疑いの程度を示す罹患リスク度が、判別結果として判別部52から出力制御部50に出力される。
簡易診断テストが強制的に終了または中断された場合、履歴情報48には、終了または中断されるまでに受け付けた回答が含まれている。この場合、終了または中断されるまでに受け付けた回答に基づいて被検者Sの各認知症の罹患の疑いが判別される。このため、簡易診断テストが強制的に終了または中断された場合でも、可能な範囲で判別結果を出力することができる。
第1〜第4問題群の各々から1つずつ順に問題を出力したり、高確度問題を低確度問題よりも先に出力したり、発症件数が多い認知症に対応する問題群の問題を、発症件数が少ない認知症に対応する問題群の問題よりも先に出力したりすることは、簡易診断テストが強制的に終了または中断された場合に、それまでに受け付けた回答に基づいて被検者Sの各認知症の罹患の疑いを判別する際により効果を発揮する。
というのは、第1〜第4問題群の各々から1つずつ順に問題を出力したり、高確度問題を低確度問題よりも先に出力したりすれば、より判別可能な範囲が広がるため、簡易診断テストが強制的に終了または中断された場合でも、各認知症の罹患の疑いを判別することができる可能性が高まる。また、発症件数が多い認知症に対応する問題群の問題を、発症件数が少ない認知症に対応する問題群の問題よりも先に出力すれば、簡易診断テストが強制的に終了または中断された場合でも、発症件数が多い認知症の罹患の疑いを判別することができる可能性が高まる。
出力制御部50では、判別部52からの判別結果に基づいて判別結果表示画面70が生成される。生成された判別結果表示画面70は、出力制御部50からアクセス元の回答端末11に出力される(ステップS150、判別結果出力制御ステップ)。回答端末11では、判別結果表示画面70がタッチパネル14に表示される。
判別結果として罹患リスク度が出力され、判別結果表示画面70に各認知症の罹患リスク度が表示されるので、各認知症の罹患の疑いの程度を被検者Sに定量的に報せることができる。
なお、高確度問題を低確度問題よりも先に出力し、かつ発症件数が多い認知症に対応する問題群の問題を、発症件数が少ない認知症に対応する問題群の問題よりも先に出力しているが、問題は、少なくとも複数の問題群の各々から1つずつ順に出力されればよい。このため、例えば1番目を第4問題Q4−1のかな拾いの問題とし、2番目を第1問題Q1−2の即時記憶を問う問題、3番目を第3問題Q3−3の地誌的認知機能を問う問題、4番目を第2問題Q2−2の形態知覚の問題としてもよい。
問題群は、少なくともアルツハイマー型認知症に対応する第1問題群と、レビー小体型認知症に対応する第2問題群または血管性認知症に対応する第3問題群とがあればよい。パーキンソン病に伴う認知症に対応する問題群等、他の種類の認知症に対応する問題群を追加してもよい。パーキンソン病に伴う認知症に対応する問題群の問題としては、例えば安静時振戦(いわゆる震え)の有無を問う問題が挙げられる。
第3問題群における高確度問題を、上記の第3問題Q3−1の左右の見当識を問う問題に代えて、第3問題Q3−2の空間認識を問う問題としてもよい。
第4問題Q4−1のかな拾いの問題に加えて、第4問題群に被検者Sの持続力、集中力、問題を解く意欲と根気を試す問題を用意してもよい。こうした問題としては、例えば複数の単語を被検者Sに提示し、一つだけ他と違うカテゴリの単語を選ばせるものや、並べ替えれば一文となる複数の文節を被検者Sに提示し、正しい順番に文節を並べ替えさせ、かつ正しい順番に並べ替えたときに特定の順番になる文節を選ばせるものが考えられる。
第4問題Q4−1のかな拾いの問題に加えて、第4問題群に上記のような問題を用意した場合も、判別の確度はかな拾いの問題が1位であり、かな拾いの問題が第4問題群における高確度問題となる。このため、第4問題群においては、上記第1実施形態と同じく第4問題Q4−1のかな拾いの問題が他の問題よりも先に出力される。
問題表示画面60に問題をスキップするためのボタンを設けておき、問題をスキップした数で、前頭側頭型認知症の判別ロジックの持続力の有無を決定してもよい。
[第2実施形態]
簡易診断テストを中断した被検者Sが、例えば診療後に再度簡易診断テストを実施しようとした場合、中断された問題から簡易診断テストを再開したいか、あるいは最初から簡易診断テストをやり直したいかは、被検者Sの好み、または/および簡易診断テストを中断してから再度簡易診断テストを実施しようとするまでの期間の長短といった状況により異なる。
そこで、図37および図38に示す第2実施形態では、回答端末11を通じて、簡易診断テストを中断した被検者Sから再アクセスがあった場合、中断された問題から簡易診断テストを再開するか、最初から簡易診断テストをやり直すかを被検者Sに選択させる。
具体的には図37に示すように、回答端末11を通じて被検者Sからアクセスがあった場合、情報管理部53は、履歴情報48に基づいて、アクセスした被検者Sが前回の簡易診断テストを中断したか否かを判断する。アクセスした被検者Sが前回の簡易診断テストを中断したと判断した場合、情報管理部53は、その旨を出力制御部50に出力する。
情報管理部53から、アクセスした被検者Sが前回の簡易診断テストを中断した旨が入力された場合、出力制御部50は、問題表示画面60を出力する前に、再開やり直し選択画面75をアクセス元の回答端末11に出力する。再開やり直し選択画面75には、前回のアクセス時に簡易診断テストが中断された旨と、中断された問題から簡易診断テストを再開するか否かを問うメッセージが表示され、再開ボタン76およびやり直しボタン77が設けられている。
再開ボタン76は、中断された問題から簡易診断テストを再開する場合に選択される。やり直しボタン77は、最初から簡易診断テストをやり直す場合に選択される。やり直しボタン77が選択された場合は、出力制御部50は図24に示す問題表示画面60Aをアクセス元の回答端末11に出力する。
一方、再開ボタン76が選択された場合は、図38に示すように、出力制御部50は、前回のアクセス(1回目)時に記憶された履歴情報48から、中断要求があった問題、すなわち中断された問題を特定し、特定した問題の問題表示画面60をアクセス元の回答端末11に出力する。
図38では、中断された問題が第1問題Q1−3の計算力を問う問題の場合を例示している。この場合、再アクセス(2回目)時には、出力制御部50は図31に示す問題表示画面60Hをアクセス元の回答端末11に出力する。
中断された問題から簡易診断テストが再開された場合、判別部52は、中断されるまでに受け付けた回答と、再開されてから受け付けた回答とに基づいて、改めて各認知症の罹患の疑いを判別する。また、情報管理部53は、再開した日時も履歴情報48に関連付けて記憶する。
このように、中断された問題から簡易診断テストを再開するか、最初から簡易診断テストをやり直すかを被検者Sに選択させるので、被検者Sの好みや被検者Sが置かれた状況に応じた選択が可能となる。例えば、簡易診断テストを中断してから再度簡易診断テストを実施しようとするまでの期間が比較的長く、簡易診断テストの内容もあまり憶えていない場合は、最初から簡易診断テストをやり直す選択をする。一方、最初から簡易診断テストをやり直すとこの後の用事に間に合わない場合は、中断された問題から簡易診断テストを再開する選択をする。中断された問題から簡易診断テストを再開する場合は、中断されるまでに受け付けた回答が無駄にならなくて済む。
なお、中断された問題を特定する情報を、履歴情報48とは別に記憶しておいてもよい。また、回答端末11を通じて、簡易診断テストを中断した被検者Sから再アクセスがあった場合に、再開、やり直しの選択を被検者Sにさせることなく、自動的に中断された問題から簡易診断テストを再開する構成としてもよい。
[第3実施形態]
被検者Sが実際にした回答等を含む履歴情報48は、担当医師Dにとって診療に大変役立つ情報である。そこで、図39および図40に示す第3実施形態では、閲覧端末からの履歴情報48の出力要求を受けて、閲覧端末に向けて履歴情報48を出力する。
図39において、本実施形態の認知症診断支援サーバ80の受付部51は、閲覧端末に相当する診療端末19からの出力要求を受け付ける。出力要求には、施設ID、被検者ID、および診療端末19の識別情報である端末IDが含まれている。受付部51は、出力要求を出力制御部50および情報管理部53に出力する。
情報管理部53は、出力要求に含まれる施設IDと被検者IDが関連付けられた履歴情報48をストレージデバイス30Bから検索し、検索した履歴情報48を出力制御部50に出力する。出力制御部50は、受付部51からの出力要求に含まれる端末IDの診療端末19に向けて、情報管理部53からの履歴情報48を出力する。すなわち、出力制御部50は情報出力制御部にも相当する。なお、図39では、本実施形態の説明に必要な部分だけを図示し、不要な部分は省略している。
出力制御部50は、履歴情報48の出力の一形態として、図40に示す履歴情報表示画面81を出力要求元の診療端末19に出力する。履歴情報表示画面81は、医療施設15の名称、被検者Sの氏名、および簡易診断テストの実施日時を表示する基本情報表示領域82と、第1〜第4表示領域83〜86とを有する。第1〜第4表示領域83〜86には、遠隔記憶や幻視の有無といった問題の内容と、履歴情報48に登録された回答、正誤、および回答時間が表示される。これらが一度に表示しきれない場合は、第1表示領域83のように縦スクロールバー87が設けられる。なお、確認ボタン88は、履歴情報表示画面81の表示を消すためのボタンである。
第1表示領域83にはアルツハイマー型認知症に対応する第1問題群の履歴情報48、第2表示領域84にはレビー小体型認知症に対応する第2問題群の履歴情報48がそれぞれ表示される。また、第3表示領域85には血管性認知症に対応する第3問題群の履歴情報48、第4表示領域86には前頭側頭型認知症に対応する第4問題群の履歴情報48がそれぞれ表示される。つまり、出力制御部50は、履歴情報48を、図23に示す問題の出力順ではなく、複数の問題群毎に整列した状態で出力する。
被検者Sが複数回簡易診断テストを受けていた場合は、履歴情報表示画面81には最新の履歴情報48が表示される。出力要求の際や履歴情報表示画面81上で特定の回の簡易診断テストの履歴情報48を指定可能としてもよい。あるいは、履歴情報表示画面81上で各回の簡易診断テストの履歴情報48をタブやプルダウンメニューで切り替え表示可能な構成としてもよい。
このように、閲覧端末からの履歴情報48の出力要求を受けて、閲覧端末に向けて履歴情報48を出力するので、被検者Sが実際にどういった回答をしたのか、タイムアウトとなった問題は何か、どの問題にどれだけの回答時間が掛かったかといった、診療に役立つより詳細な情報を提供することができる。また、判別結果の妥当性も検証することができる。さらに、履歴情報48を複数の問題群毎に整列した状態で出力するので、容易に各認知症に対応する履歴情報48の分析を行うことができる。
なお、閲覧端末として診療端末19を例示したが、閲覧端末は回答端末11でもよく、履歴情報48を被検者Sが閲覧可能としてもよい。とにかくネットワーク13への接続が可能で、認知症診断支援サーバ80へのアクセス権限が与えられ、かつウェブブラウザ機能を有する端末であれば何でもよい。また、複数の問題群毎に整列させることなく、図23に示す問題の出力順に履歴情報48を出力してもよい。
[第4実施形態]
上記第1実施形態では、判別結果を回答端末11に出力して被検者Sに報せているが、判別結果が罹患の疑いありの場合は、担当医師Dに早急な処置を促すために、罹患の疑いありの旨を担当医師Dにも通知することが好ましい。また、診療時の被検者Sの言動から、担当医師Dが特に認知症の罹患の疑いが強いと感じた被検者Sが診療前に簡易診断テストを受けていて、簡易診断テストが中断されていた場合は、診療後に最後まで簡易診断テストを受けてもらい、罹患の疑いがあるか否かをその場ではっきりとさせることが好ましい。
そこで、図41〜図43に示す第4実施形態では、判別結果が罹患の疑いありの場合、罹患の疑いありの旨の第1通知を、予め登録された担当医師Dのアドレスに出力する。また、簡易診断テストが中断された場合、担当医師Dのアドレスに対して、簡易診断テストが中断された旨の第2通知を出力する。
図41において、本実施形態の認知症診断支援サーバ90のストレージデバイス30Bには、担当医師アドレス情報91が記憶されている。担当医師アドレス情報91には、施設IDおよび被検者ID毎に、これらに対応する担当医師Dの電子メールアドレスが登録されている。電子メールアドレスは、例えば診療端末19のウェブブラウザで電子メールを閲覧可能なものであり、担当医師Dにより予め登録される。
本実施形態において、判別部52は、出力制御部50だけでなく、情報管理部53にも判別結果を出力する。情報管理部53は、判別部52からの判別結果が罹患の疑いありの場合、担当医師アドレス情報91から該当する担当医師Dの電子メールアドレスを検索し、検索した電子メールアドレスを出力制御部50に出力する。
出力制御部50は、情報管理部53からの電子メールアドレス宛に、罹患の疑いありの旨の第1通知を出力する。すなわち、出力制御部50は第1通知出力制御部にも相当する。ここで、罹患の疑いありの場合とは、例えば罹患リスク度がAまたはBの場合である。もちろん、罹患リスク度がAの場合のみを罹患の疑いありとしてもよい。
また、情報管理部53は、受付部51から中断要求を受けた場合も、電子メールアドレスを出力制御部50に出力する。出力制御部50は、情報管理部53からの電子メールアドレス宛に、簡易診断テストが中断された旨の第2通知を出力する。すなわち、出力制御部50は第2通知出力制御部にも相当する。第2通知は、第1通知のように判別結果が罹患の疑いありかなしかに関係なく、簡易診断テストが中断された場合に出力される。なお、図41では、図39と同様に、本実施形態の説明に必要な部分だけを図示し、不要な部分は省略している。
出力制御部50は、第1通知の出力の一形態として、図42に示す第1通知画面92を診療端末19に出力する。また、出力制御部50は、第2通知の出力の一形態として、図43に示す第2通知画面93を診療端末19に出力する。
図42において、第1通知画面92には、担当医師Dの担当患者である被検者Sの判別結果が罹患の疑いありの旨のメッセージ、つまり第1通知と、適切な処置を担当医師Dに促すメッセージとが書かれている。図42では、被検者ID「S001」の「○山×男」さんのアルツハイマー型認知症の罹患リスク度がAであった場合を例示している。
また、図43において、第2通知画面93には、担当医師Dの担当患者である被検者Sが簡易診断テストを中断した旨のメッセージ、つまり第2通知が書かれている。図43では、被検者ID「S001」の「○山×男」さんが簡易診断テストを中断した場合を例示している。
これら各通知画面92,93は、診療端末19のディスプレイ20にポップアップ表示されるように設定されており、診療中に担当医師Dが各通知をすぐに確認することが可能となっている。なお、各通知画面92,93の確認ボタン94,95は、各通知画面92,93の表示を消すためのボタンである。
第1通知画面92が表示された場合、担当医師Dは、当該被検者Sに対して、例えば頭部MRI(Magnetic Resonance Imaging)検査等、認知症の確定診断をするためのより詳細な検査を実施する等の適切な処置を施す。また、第2通知画面93が表示され、かつ診療の結果、当該被検者Sが認知症の罹患の疑いが強いと感じた場合、担当医師Dは、簡易診断テストを中断した被検者Sに、診療後に最後まで簡易診断テストを受けさせるよう、看護師に指示する。
このように、罹患の疑いありの旨の第1通知を担当医師Dのアドレスに出力するので、罹患の疑いありの被検者Sを放置することなく、適切な処置を施すことができる。また、簡易診断テストが中断された旨の第2通知を担当医師Dのアドレスに出力するので、担当医師Dが認知症の罹患の疑いが強いと感じた被検者Sが罹患の疑いがあるか否かをその場ではっきりとさせることができる。
なお、第2通知に、中断されるまでに受け付けた回答に基づく判別結果を含めてもよい。診療時の被検者Sの言動だけでなく、判別結果を参照することで、簡易診断テストを中断した被検者Sに、診療後に最後まで簡易診断テストを受けさせる指示を看護師にするか否かの決定に妥当性をもたせることができる。
また、第2通知に、簡易診断テストを中断した被検者Sに、診療後に最後まで簡易診断テストを受けさせるか否かについての、担当医師Dへの問い合わせを含めてもよい。具体的には、第2通知画面93に、診療後に最後まで簡易診断テストを受けさせるか否かを選択させるボタンを設ける。そして、問い合わせに応じて担当医師Dから診療後に最後まで簡易診断テストを受けさせる指示があった場合、看護師の所有するスマートフォン等の携帯端末に、診療後に最後まで簡易診断テストを受けさせる指示を出力する。
[第5実施形態]
被検者Sが複数回簡易診断テストを受けた場合、各回の判別結果の推移を知ることができれば、被検者Sの認知症の進行度合いを確かめることができる。そこで、図44に示す第5実施形態では、複数回の簡易診断テストにおける判別結果を記憶しておき、判別結果の推移を出力する。
図44において、判別結果情報100は、各被検者Sの各回の簡易診断テストの罹患リスク度を記憶したものである。判別結果情報100はストレージデバイス30Bに記憶される。各回の簡易診断テストは実施日時で区別される。判別結果情報100は、判別部52が判別結果を情報管理部53に出力し、情報管理部53が判別結果を被検者S毎に登録することで作成される。なお、判別結果情報100の罹患リスク度の欄の「ア」はアルツハイマー型認知症、「レ」はレビー小体型認知症、「血」は血管性認知症、「前」は前頭側頭型認知症をそれぞれ示す。
この場合、出力制御部50は、判別結果情報100に基づいて、判別結果推移表示画面101を生成し、これを回答端末11に出力する。判別結果推移表示画面101は、図35に示す判別結果表示画面70の代わりに、あるいは判別結果表示画面70と切り替え可能に表示される。判別結果推移表示画面101には、折れ線グラフ102と、折れ線グラフ102の表題103および凡例104とが表示され、リトライボタン105および終了ボタン106が設けられている。
折れ線グラフ102は、罹患リスク度を縦軸、実施日時を横軸とし、実施日時毎の罹患リスク度をプロットして線で結んだものである。折れ線グラフ102内の今回の簡易診断テストの判別結果は、枠107で囲われて他と区別して表示される。リトライボタン105および終了ボタン106の機能は、判別結果表示画面70のリトライボタン71および終了ボタン72と同じである。
このように、判別結果の推移を出力するので、認知症の進行度合いが一目瞭然である。このため、被検者Sは、自分の認知症の症状が良化しているのか悪化しているのか、または変わらないのかを把握することができる。毎日適度な運動を行ったり、物忘れに効くサプリメントを服用する等、被検者Sが普段から認知症予防を心掛けていて、認知症の症状が良化していた場合には、被検者Sにとってこれからも認知症予防を積極的に行うモチベーションとなる。対して認知症の症状が悪化していた場合には、認知症予防を真剣に考えるきっかけとなる。いずれにしても認知症の症状をこれ以上悪化させない方向に向けることができる。
なお、折れ線グラフ102ではなく、判別結果情報100のような表形式で判別結果の推移を出力してもよい。また、回答端末11だけでなく、上記第3実施形態の履歴情報表示画面81と同様に、診療端末19等の閲覧端末からの出力要求を受けて、閲覧端末に判別結果推移表示画面101を出力してもよい。
[第6実施形態]
判別結果は、被検者Sや被検者Sの担当医師Dだけでなく、被検者Sの家族や被検者Sの介護士等、被検者Sの関係者にも知っておいてもらいたい情報である。そこで、図45および図46に示す第6実施形態では、判別結果を予め登録された被検者Sの関係者のアドレスに出力する。
図45において、本実施形態の認知症診断支援サーバ110のストレージデバイス30Bには、関係者アドレス情報111が記憶されている。関係者アドレス情報111には、施設IDおよび被検者ID毎に、これらに対応する被検者Sの関係者の電子メールアドレスが登録されている。電子メールアドレスは、関係者が所有する関係者端末112のウェブブラウザで電子メールを閲覧可能なものであり、被検者Sまたは関係者により予め登録される。
判別部52から判別結果が出力された場合、情報管理部53は、関係者アドレス情報111から該当する関係者の電子メールアドレスを検索し、検索した電子メールアドレスを出力制御部50に出力する。出力制御部50は、情報管理部53からの電子メールアドレス宛に判別結果を出力する。なお、図45では、図39、図41と同様に、本実施形態の説明に必要な部分だけを図示し、不要な部分は省略している。
出力制御部50は、判別結果の出力の一形態として、図46に示す判別結果通知画面113を出力する。判別結果通知画面113には、被検者Sの判別結果(罹患リスク度)、判別結果に対するコメント、被検者Sの様子に今後とも留意するよう関係者に促すメッセージ等が書かれている。図46では、被検者ID「S001」の「○山×男」さんの判別結果を例示している。なお、確認ボタン114は、各通知画面92,93の確認ボタン94,95と同様に、判別結果通知画面113の表示を消すためのボタンである。
このように、判別結果を関係者のアドレスに出力するので、関係者も判別結果を知ることができ、被検者S、担当医師D、および関係者の間で情報を共有することができる。被検者Sに適切な認知症予防策を講じさせたり、被検者Sの見守りを強化する等、関係者が判別結果に応じた適切な処置をとることができる。
上記第4実施形態の第1通知のように、判別結果が罹患の疑いありの場合のみ、判別結果を関係者のアドレスに出力してもよい。また、判別結果に代えて、あるいは加えて、上記第5実施形態の判別結果の推移を関係者のアドレスに出力してもよい。
[第7実施形態]
上記各実施形態では、回答端末11を医療施設15の待合室16に配備した態様を例示したが、薬局において処方薬を購入する場合も診療前と同様に待ち時間が発生する。そこで、図47および図48に示す第7実施形態では、待合室16に加えて、薬局にも回答端末11を配備する。
図47において、本実施形態の認知症診断支援システム120は、上記第1実施形態の待合室16に配備された回答端末11、および認知症診断支援サーバ12に加えて、薬局121に配備された回答端末122を備えている。回答端末122は、回答端末11と同じく、タッチパネル123を有するタブレット型コンピュータであり、ネットワーク13を介して認知症診断支援サーバ12と相互に通信可能に接続されている。
このように、薬局121に回答端末122が配備されるので、薬局121における待ち時間にも被検者Sに簡易診断テストを受けさせることができる。このため、例えば図48に示すように、待合室16にて回答端末11で簡易診断テストを実施していて、診療の順番がきて簡易診断テストを中断した場合、診療後に薬局121において回答端末122で簡易診断テストを再開することができる。
なお、待合室16に代えて、薬局121にのみ回答端末122を配備してもよい。また、待合室16および/または薬局121に加えて、医療施設15の会計窓口に回答端末11を配備してもよい。あるいは会計窓口にのみ回答端末11を配備してもよい。会計窓口は、待合室16および薬局121と同様に待ち時間が発生するので、回答端末11の配備場所として好適である。
本発明の認知症診断支援装置を構成するコンピュータのハードウェア構成は種々の変形が可能である。例えば、認知症診断支援装置を、処理能力や信頼性の向上を目的として、ハードウェアとして分離された複数台のコンピュータで構成することも可能である。例えば、出力制御部50、受付部51、および判別部52の機能と、情報管理部53の機能とを、2台のコンピュータに分散して担わせる。この場合は2台のコンピュータで認知症診断支援装置を構成する。
上記各実施形態では、出力制御部50に、問題出力制御機能、判別結果出力制御機能、情報出力制御機能、および通知出力制御機能の複数の機能を一手に担わせているが、これらの機能をそれぞれ独立した機能部に担わせてもよい。
また、上記各実施形態では、問題表示画面60や判別結果表示画面70等の各画面を、ウェブ配信用の画面データの形式で出力制御部50から回答端末11等のクライアント端末に出力する態様を例示したが、クライアント端末に各画面を表示するためのAPをインストールしておき、出力制御部50からは、各画面の表示をAPに指示する指令を出力する態様でもよい。
回答端末に作動プログラムをインストールし、認知症診断支援サーバに構築した各機能部を回答端末に構築して、回答端末を認知症診断支援装置として稼働させてもよい。この場合、回答端末を市販のタブレット型コンピュータではなく、認知症診断支援システムに特化した専用の製品としてもよい。
認知症診断支援サーバ12の設置場所はデータセンタ17に限らない。各医療施設15に1台ずつ認知症診断支援サーバ12を設置してもよい。
このように、コンピュータのハードウェア構成は、処理能力、安全性、信頼性等の要求される性能に応じて適宜変更することができる。さらに、ハードウェアに限らず、作動プログラム45等のAPについても、安全性や信頼性の確保を目的として、二重化したり、あるいは、複数のストレージデバイスに分散して格納することももちろん可能である。
簡易診断テストの実施中に、回答端末11のスピーカーからBGM(Background Music)を出力してもよい。また、判別結果表示画面70を表示した後に、適度な運動をしているか、読書はよくするか、買物に行くか等の生活習慣に関するアンケート画面を表示してもよい。さらに、指定されたボタンを押す際の反応時間を測定し、反応時間の長短を判別ロジックに組み込んでもよい。
本発明は、上述の種々の実施形態や種々の変形例を適宜組み合わせることも可能である。また、上記各実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の構成を採用し得ることはもちろんである。さらに、本発明は、プログラムに加えて、プログラムを記憶する記憶媒体にもおよぶ。