JP4431731B2 - 認知機能評価システム - Google Patents

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Description

本発明は、被験者の認知機能を評価する認知機能評価システムに係り、例えば、アルツハイマー病の患者についての視空間における対象と自己身体の座標系の措定の障害、空間的ワーキングメモリの障害等の検出、あるいはアルコール依存症、統合失調症、気分障害等の発見や鑑別、さらには精神障害者、脳器質性障害、発達障害等の各種障害者の社会復帰後の訓練等に利用できる。
一般に、アルツハイマー病については、視空間における対象と自己身体の座標系の措定の障害、空間的ワーキングメモリの障害等が比較的早期から出現することが諸家によって報告されているが、これらの障害の発現メカニズムに関しては、未だに解明されていない部分が多い。
従って、これらの障害を、より鋭敏に検出可能な方法論を確立することは、より早期の薬物治療の導入や、その効果判定、あるいはリハビリテーション効果の判定という見地からも重要であると考えられる。
一方、従来の痴呆症の診断では、簡易認知機能スケールを用いた問診形式の長谷川式とミニ・メンタルテストと呼ばれる方法(以下、MMSEという。)が主流であった。この方法は、医師等の検査を行う者が、患者に対し予め定められた質問を口頭で行い、その質問に対する患者の回答に得点を付けることにより診断・評価を行うものである。
また、このような問診形式による従来の痴呆症の診断方法をシステム化した例として、検査開始から結果出力までの一連の作業をコンピュータで制御し、かつ、一般病院や他の公共施設等で医師等の検査する者の立会いを必要とせずに自己の操作のみで検査ができる物忘れ自己診断システムが提案されている(特許文献1参照)。
さらに、上述した問診形式による従来の痴呆症の診断方法とは別の方法であるが、コンピュータを用いて人の精神機能を検査できるようにした装置として、予め定められた順にポイントされる所定数のターゲット(例えば、1→2→3…という具合にポイントされる数字等)を表示手段の画面にランダムに配置して表示し、被験者に予め定められた順に各ターゲットをポイントさせて各ターゲットの探索に要した探索反応時間を測定し、この測定値に基づいて被験者の神経機能を演算する精神機能検査装置が提案されている(特許文献2参照)。
特開2003−79631号公報(段落[0008]、[0015]、図1、図2、要約) 特開2002−112981号公報(段落[0021]、図1、図2、要約)
しかしながら、前述した問診形式による従来の痴呆症の診断方法では、問診形式で行われるため、被験者は検査の行われる施設等に出向かなければならない、被験者が高齢者の場合には質問を聞き取れない場合がある、医師等の検査を行う者が高齢者の回答を聞き取れない場合がある、被験者が初対面の人から質問されて試されていると感じることによる心理的な影響を受ける、被験者が緊張する、時間がかかる、被験者が飽きる等の不都合がある。
また、前述した特許文献1に記載された物忘れ自己診断システムでは、医師等の検査する者の立会いを必要とせずに自己の操作のみで検査ができるので、問診形式による不都合の一部は解消されるが、基本的には、従来の問診形式の診断をタッチパネルを備えたコンピュータを用いて自動化しただけなので、診断に時間がかかる、あるいは被験者の集中力が続かない等の問題がある。
さらに、前述した特許文献2に記載された精神機能検査装置では、被験者は、表示手段の画面上でターゲットを予め定められた順で探索し、その順でターゲットをポイントしていくので、記憶した情報(画面上におけるターゲットの位置情報)を記憶に基づき再現するのではなく、その場でターゲットを探索する行為を行っているだけであることから、把握できる検査項目に限りがある、あるいは検査に時間がかかる等の問題がある。
本発明の目的は、被験者の認知機能について、短時間で、かつ、簡易な方法により信頼性の高い評価結果を得ることができる認知機能評価システムを提供するところにある。
本発明は、被験者の認知機能を評価する認知機能評価システムであって、タッチパネル式表示手段と、このタッチパネル式表示手段の画面上の領域を区画して形成された複数のセルのうちの少なくとも一部を構成する複数のセルについて、被験者に対する記憶用の課題として被験者に対して視覚的刺激を与えるための刺激表示を一つずつ順番に行う課題呈示処理手段と、この課題呈示処理手段による課題の呈示処理で被験者に記憶させた刺激表示の表示順序を被験者に再現させてこの再現行為としての被験者によるセルへの入力操作を受け付ける再現操作受付処理手段と、この再現操作受付処理手段による入力操作の受付処理結果に基づき表示順序の再現の正誤を判断する正誤判断手段と、この正誤判断手段による判断処理結果を含めて再現操作受付処理手段による入力操作の受付処理で得られたデータまたはその加工データを認知機能評価用データとして画面表示若しくは印刷し、または外部記憶装置に記憶保存させる評価用データ出力手段とを備えたことを特徴とするものである。
ここで、「画面上の領域を区画して形成された複数のセル」は、横方向に並んでいてもよく、縦方向に並んでいてもよく、縦横の碁盤状に並んでいてもよく、円周方向に並んでいてもよく、並ぶ方向や配置は任意であり、要するに、画面上の領域が複数に分割され、それぞれのセルが、ある程度の面積(各セルの面積は、均等または略均等であることが好ましい。)を有していればよい。従って、画面上の領域を区画する線(セル同士の境界線)の方向は、縦方向のみの場合、横方向のみの場合、縦横両方向の線が交差する場合、ある点から放射状に延びる場合等、任意である。また、各セルの形状は、主として四角形であるが、これに限定されず、例えば、三角形や扇形等でもよい。以下の発明においても同様である。
また、「複数のセルのうちの少なくとも一部を構成する複数のセル」とは、画面上の領域を区画して形成された複数のセルのうち、全部のセル(つまり、複数のセル)を刺激表示を行う対象セルとしてもよく、一部のセルを対象セルとしてもよいが、後者の場合には、複数のセルを対象セルとしなければならない趣旨である。例えば、画面上の領域を5分割して5つのセルを形成した場合には、5つのセルの全てを対象セルとしてもよく、あるいは3つのセルのみを対象セルとしてもよい趣旨である。但し、1つのセルのみを対象セルとすることは、表示順序を作り出すことができないので除かれる。
さらに、「刺激表示」とは、例えば、対象セルを他のセルと異なる色にすること(例えば、他のセルが白色であるときに、対象セルをブルー、オレンジ、ピンク等の刺激色とすること)、対象セルのみに文字や図形等のマークや模様を表示すること、対象セルの輝度を他のセルよりも明るくすること(例えば、光らせる等)などである。以下の発明においても同様である。
そして、「入力操作」には、被験者が自分の指で画面を触れる操作のみならず、ペン等の道具を用いて画面を触れる操作も含まれる。
また、「外部記憶装置」とは、中央演算処理装置(CPU)に付属する主記憶装置やキャッシュメモリ以外の記憶装置であり、例えば、メモリカード、ハードディスク、光磁気ディスク(MO)、CDレコーダブル(CD−R)、CDリライタブル(CD−RW)、DVDを利用したランダム・アクセス・メモリ(DVD−RAM)、フレキシブルディスク(FD)、磁気テープ、あるいはこれらの組合せ等を採用することができる。
このような本発明の認知機能評価システムにおいては、先ず、課題呈示処理手段により、タッチパネル式表示手段の画面上の複数のセルについて一つずつ順番に刺激表示を行うことにより、被験者に対して視覚的刺激を与え、被験者に刺激表示の表示順序を記憶させる。次に、刺激表示の表示順序を被験者に記憶に基づき再現させ、再現操作受付処理手段により、この再現行為としての被験者によるセルへの入力操作を受け付ける。そして、正誤判断手段により、再現操作受付処理手段による入力操作の受付処理結果に基づき、表示順序の再現の正誤を判断する。その後、評価用データ出力手段により、正誤判断手段による判断処理結果を含めて再現操作受付処理手段による入力操作の受付処理で得られたデータまたはその加工データを、認知機能評価用データとして画面表示若しくは印刷し、または外部記憶装置に記憶保存させる。
このため、前述した問診形式による従来の痴呆症の診断方法の場合に生じていた不都合は解消される。すなわち、被験者は、自宅等で認知機能評価システムを自ら操作して検査や訓練を行うことが可能となり、病院のような検査施設等に出向く必要がなくなる。
また、タッチパネル式表示手段の画面上での視覚的な刺激表示およびその表示順序に従った被験者の入力操作により検査や訓練が行われるので、被験者が高齢者の場合でも質問あるいは回答を聞き取れないという事態が生じることはない。
さらに、タッチパネル式表示手段の画面上での表示および入力操作なので、初対面の人に対する被験者の心理的影響や緊張も無くなる。
そして、タッチパネル式表示手段の画面上での表示および入力操作なので、従来の問診形式の場合に比べ、検査等に要する時間が短縮されるため、被験者の集中力が途切れにくい。また、被験者は、タッチパネル式表示手段の画面上で行われる刺激表示を目で追い、それを記憶し、自分の指等を動かして刺激表示の表示順序を記憶に基づき再現する入力操作を行うので、質問に対して声を出して答える場合に比べ、飽きが来ないという利点がある。
さらに、上記のように飽きが来ないことから、繰り返し行う訓練に使用することにも適しており、例えば、精神障害者等の各種障害者のリハビリテーションに使用することも可能となる。
また、タッチパネル式表示手段の画面上での刺激表示および入力操作という簡易な方法にもかかわらず、後述する実験結果に示す如く、従来の問診形式の方法による認知機能評価との相関関係が確保され、信頼性の高い認知機能評価を行うことが可能となり、これらにより前記目的が達成される。
また、前述した認知機能評価システムにおいて、課題呈示処理手段による課題の呈示処理後に被験者に対して再現行為としての入力操作を開始させるための合図を効果音または画面表示により送る回答開始合図手段と、この回答開始合図手段による合図から各入力操作までの所要時間または入力操作同士の間の所要時間を計測する所要時間計測手段とを備えた構成とすることが望ましい。
このように回答開始合図手段および所要時間計測手段を備えた構成とした場合には、刺激表示の表示順序についての記憶に基づく再現の正誤のみならず、回答に相当する再現行為に要する時間を把握することも可能となり、認知機能について、より一層多様な評価を行うことが可能となる。
さらに、前述した認知機能評価システムにおいて、課題呈示処理手段は、刺激表示を行うセルの配置形態および刺激表示の表示順序の異なる複数の問題を課題として呈示する構成とされていることが望ましい。
ここで、「セルの配置形態」とは、セルの個数(分割数)、あるいは上下分割・左右分割・碁盤状分割等の分割形態をいう。
このように課題呈示処理手段を、内容の異なる複数の問題を課題として呈示する構成とした場合には、認知機能について、より一層多様な評価を行うことが可能となるうえ、より一層信頼性の高い評価結果を得ることが可能となる。
また、本発明は、被験者の認知機能を評価する認知機能評価システムであって、タッチパネル式表示手段と、このタッチパネル式表示手段の画面上の領域を区画して形成された複数のセルのうちの一部を構成する少なくとも一つのセルについて、被験者に対する記憶用の課題として被験者に対して視覚的刺激を与えるための刺激表示を行う課題呈示処理手段と、この課題呈示処理手段による課題の呈示処理で被験者に記憶させた刺激表示の表示位置を被験者に再現させてこの再現行為としての被験者によるセルへの入力操作を受け付ける再現操作受付処理手段と、この再現操作受付処理手段による入力操作の受付処理結果に基づき表示位置の再現の正誤を判断する正誤判断手段と、この正誤判断手段による判断処理結果を含めて再現操作受付処理手段による入力操作の受付処理で得られたデータまたはその加工データを認知機能評価用データとして画面表示若しくは印刷し、または外部記憶装置に記憶保存させる評価用データ出力手段とを備えたことを特徴とするものである。
ここで、「複数のセルのうちの一部を構成する少なくとも一つのセル」における「少なくとも一つ」とは、前述した表示順序を再現させる課題呈示を行う発明の場合とは異なり、表示順序を作り出す必要がなく、セルの場所だけ課題として呈示できればよいので、1つのセルのみを刺激表示を行う対象セルとしてもよい趣旨であり、「一部を構成する」とは、セルの場所を課題として呈示する発明なので、画面上の領域を区画して形成された複数のセルの全部について対象セルとしてしまうと意味をなさなくなるため、これを除く趣旨である。例えば、画面上の領域を5分割して5つのセルを形成した場合には、3つのセルを対象セルとしてもよく、1つのセルのみを対象セルとしてもよいが、5つのセルの全てを対象セルとすることは、課題として意味をなさないので除かれる。
また、「刺激表示の表示位置」とは、刺激表示を行ったセルの場所をいう。
このような本発明の認知機能評価システムにおいては、刺激表示の表示位置、すなわち刺激表示を行ったセルの場所を記憶させ、再現させることが可能となる。このため、前述した刺激表示の表示順序を再現させる課題呈示を行う発明の場合とは異なり、刺激表示の表示順序まで記憶させ、再現させることはしないので、被験者の時間に関する記憶に基づく認知機能、すなわち時を刻んで行われる認知機能については評価することができないものの、その他の認知機能の評価は、前述した刺激表示の表示順序を再現させる課題呈示を行う発明の場合と同様に行うことが可能であり、これにより前記目的が達成される。
なお、課題呈示処理手段は、刺激表示を行うセルの個数(例えば、画面上の領域を5分割して形成された5つのセルのうち、幾つのセルについて刺激表示を行うのかという情報)および刺激表示の表示位置(刺激表示を行うセルの場所)の異なる複数の問題を課題として呈示する構成とされていることが望ましい。
さらに、以上に述べた認知機能評価システムにおいて、再現操作受付処理手段による入力操作の受付処理中に入力操作が行われたセルに、既に入力操作を行ったセルであることを示す再現済マークを表示する再現済マーク表示処理手段を備えた構成としてもよい。
このように再現済マーク表示処理手段を備えた構成とした場合には、既に入力操作を行ったセルに対し、再度、入力操作を行うという再現の誤りが生じる可能性が低くなり、検査等が円滑に実施されるようになるうえ、入力操作に対して常にタッチパネル式表示手段からの応答がある状態になるので、被験者は、途中で不安を感じたり、戸惑うことなく再現行為を進めることが可能となる。
以上に述べたように本発明によれば、タッチパネル式表示手段の画面上の複数のセルについて一つずつ順番に刺激表示を行うことにより、被験者に対して視覚的刺激を与えて刺激表示の表示順序を記憶させた後、その表示順序を被験者に記憶に基づき再現させ、この再現行為としての被験者によるセルへの入力操作を受け付けるので、被験者の認知機能について、短時間で、かつ、簡易な方法により信頼性の高い評価結果を得ることができるという効果がある。
また、本発明によれば、タッチパネル式表示手段の画面上の複数のセルの一部について刺激表示を行うことにより、被験者に対して視覚的刺激を与えて刺激表示の表示位置を記憶させた後、その表示位置を被験者に記憶に基づき再現させ、この再現行為としての被験者によるセルへの入力操作を受け付けるので、被験者の認知機能について、短時間で、かつ、簡易な方法により信頼性の高い評価結果を得ることができるという効果がある。
以下に本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。図1には、本実施形態の認知機能評価システム10の全体構成が示されている。図2には、認知機能評価システム10によるテスト実施時の処理の流れがフローチャートで示されている。図3および図4には、認知機能評価システム10による課題1(分割数2)および課題2(分割数3)をそれぞれ構成する問題の内容が示されている。図5は、問題に対して回答する際の処理の流れの説明図である。図6は、テスト結果の表示画面24の例示図である。
図1において、認知機能評価システム10は、コンピュータにより構成され、タッチパネル式表示手段20と、認知機能の評価に必要な各種の処理を行う処理手段30と、この処理手段30に接続された問題記憶手段50とを備えて構成されている。また、処理手段30には、本実施形態では、認知機能評価用データを記憶保存させるための外部記憶装置として、メモリカード60が筐体外面に設けられたスロットから挿入されて接続されている。
タッチパネル式表示手段20は、情報を画面表示するとともに、被験者の指や被験者の持つペン等の道具で画面を触れることによる入力操作を受け付ける手段であり、具体的には、例えば、タッチパネル式液晶ディスプレイやタッチパネル式CRTディスプレイ等である。このタッチパネル式表示手段20は、タッチパネルと、液晶ディスプレイやCRTディスプレイ等の表示装置とが一体化形成されたものでもよく、あるいは液晶ディスプレイやCRTディスプレイ等の表示装置に、別体とされたタッチパネルを装着して形成されたものでもよい。なお、タッチパネル式表示手段20をタッチパネル式液晶ディスプレイとした場合には、軽量で持ち運びや取扱いの容易な認知機能評価システム10を実現することができる。
処理手段30は、課題呈示処理手段31と、再現操作受付処理手段32と、正誤判断手段33と、評価用データ出力手段34と、回答開始合図手段35と、所要時間計測手段36と、再現済マーク表示処理手段37と、不正解マーク表示処理手段38と、回答受付音出力手段39と、問題作成手段40とを含んで構成されている。
課題呈示処理手段31は、タッチパネル式表示手段20の画面上の領域を区画して形成された複数のセルについて、被験者に対する記憶用の課題として被験者に対して視覚的刺激を与えるための刺激表示を一つずつ順番に行うことにより、被験者に課題を呈示する処理を行うものである。なお、本実施形態では、刺激表示は、対象セルを他のセルと異なる色にすること(例えば、他のセルが白色であるときに、対象セルをブルー、オレンジ、ピンク等の刺激色とすること)により実現するものとするが、刺激表示は、これに限定されるものではない。また、本実施形態では、画面上の領域を区画して形成された複数のセルの全部を用いて課題呈示を行うものとするが、これに限定されず、複数のセルの一部(但し、一部も複数のセルであることが必要となる。)を用いて課題呈示を行ってもよい。
また、課題呈示処理手段31は、刺激表示を行うセルの配置形態(分割数、上下分割か左右分割かの別)および刺激表示の表示順序の異なる複数の問題を課題として呈示する。これらの問題は、問題作成手段40により予め作成されて問題記憶手段50に記憶されているものである。
再現操作受付処理手段32は、課題呈示処理手段31による課題の呈示処理で被験者に記憶させた刺激表示の表示順序を、被験者に自己の記憶に基づき再現させ、この再現行為としての被験者によるセルへの入力操作を受け付ける処理を行うものである。この際、被験者によるセルへの入力操作は、指やペン等の道具を、画面上の再現対象とするセル(回答として選択するセル)の位置に接触させることにより行われる。
正誤判断手段33は、再現操作受付処理手段32による入力操作の受付処理結果に基づき、表示順序の再現の正誤を判断する処理を行うものである。すなわち、正誤判断手段33は、被験者がセルを正しい順序(課題として出題した通りの順序)で触れたか否かを判断する。
評価用データ出力手段34は、正誤判断手段33による判断処理結果を含めて再現操作受付処理手段32による入力操作の受付処理で得られたデータまたはその加工データを、認知機能評価用データとして画面表示若しくは印刷し、または外部記憶装置に記憶保存させる処理を行うものである。入力操作の受付処理で得られたデータまたはその加工データとは、正誤判断手段33による判断処理結果(被験者の回答が正しいか否か)の他に、不正解の場合には何個目のセルで間違えたかという情報、回答開始音から各入力操作までの所要時間または前の入力操作からその次の入力操作までの所要時間等である。本実施形態では、評価用データ出力手段34は、テスト結果の表示画面24(図6参照)をタッチパネル式表示手段20の画面上に表示する処理、およびメモリカード60へのCSV形式等での各データの保存処理を行うものとする。
回答開始合図手段35は、課題呈示処理手段31による課題の呈示処理後に、被験者に対して再現行為としての入力操作を開始させるための合図を送る処理を行うものである。本実施形態では、回答開始合図手段35は、回答を開始させる合図として、例えば「ピー」等の回答開始音を出力するものとする。
所要時間計測手段36は、回答開始音の出力とともにタイマをスタートさせ、回答開始音の出力時から各入力操作までの所要時間、または入力操作同士の間の所要時間を計測する処理を行うものである。
再現済マーク表示処理手段37は、再現操作受付処理手段32による入力操作の受付処理中に入力操作が行われたセルに、既に入力操作を行ったセルであることを示す再現済マーク(本実施形態では、一例として「○」マークとする。)を表示する処理を行うものである。なお、間違ったセルに触れると、回答は直ちに終了するので、結局、再現済マークは、正しいセルを触れたことを示すマークとなる。
不正解マーク表示処理手段38は、再現操作受付処理手段32により受け付けた入力操作が、間違ったセルに対して行われた場合に、回答が不正解であることを示す不正解マーク(本実施形態では、一例として「×」マークとする。)を表示する処理を行うものである。
回答受付音出力手段39は、再現操作受付処理手段32により入力操作を受け付けたときに、回答を受け付けたことを知らせる回答受付音(例えば「ポン」等の効果音)を出力する処理を行うものである。なお、回答受付音出力手段39は、正誤判断手段33により正しいセルを選択したか否かを判断してから、その判断結果に基づき、正しいセルを選択した場合と間違ったセルを選択した場合とで異なる音を出力する構成としてもよい。
問題作成手段40は、問題作成者が、被験者に課題として呈示する問題を予め作成する作業を支援し、問題記憶手段50に記憶させておく処理を行うものである。この際、問題は、カテゴリ(子供/大人/老人)毎に作成され、管理される。また、問題作成者は、通常、内容の異なる複数の問題が束ねられて一つの課題を構成するように、問題を作成する。そして、一つの課題を構成する問題数は任意であり、問題作成者の問題作成意図に従って決定される。なお、一つの課題の中に分割数の異なる問題を混在させることもできるが、本実施形態では、分割数毎に異なる課題No.を付すものとする。従って、一つの課題の中には、同じ分割数の問題のみが存在し、刺激表示の表示順序が異なっているだけである。但し、同じ分割数といっても、後述する課題1(分割数2)の場合(図3参照)のように、上下分割と左右分割とが混在している場合もある。
さらに、問題作成手段40により各問題を作成する際には、上下方向の分割数(行数)および左右方向の分割数(列数)を変更できる他、各セルについて刺激表示を行う時間(あるセルについて刺激表示を開始してから次のセルの刺激表示に移るまでの時間間隔)も、問題作成者の問題作成意図に従って変更することができ、例えば、1秒間、2秒間等と設定することができる。なお、本実施形態の場合には、一つの問題の中における各セルの刺激表示時間は、全てのセルについて均等な時間間隔となるように設定される。
問題記憶手段50は、問題作成手段40により作成された問題を記憶しておくものである。この問題記憶手段50は、問題(問題を集合させた課題)をカテゴリ(子供/大人/老人)毎に分類して保存する。
そして、以上において、処理手段30に含まれる各手段31〜40は、認知機能評価システム10を構成するコンピュータ本体(パーソナル・コンピュータのみならず、その上位機種のものも含む。)の内部に設けられた中央演算処理装置(CPU)、およびこのCPUの動作手順を規定する一つまたは複数のプログラムにより実現される。
また、問題記憶手段50は、例えばハードディスク等により好適に実現されるが、記憶容量やアクセス速度等に問題が生じない範囲であれば、EEPROM、フラッシュ・メモリ、RAM、MO、CD−R、CD−RW、DVD−RAM、FD、磁気テープ、あるいはこれらの組合せ等を採用してもよい。
このような本実施形態においては、以下のようにして認知機能評価システム10を用いて被験者の認知機能の評価や訓練等が行われる。
先ず、被験者またはその補助者(医師等の検査を行う者や、被験者の家族等を含む。)は、認知機能評価システム10の電源を入れ、認知機能評価用プログラムを立ち上げ、システム10による処理を開始させる(ステップS1)。次に、被験者またはその補助者は、モードの設定やユーザ名の選択を行う(ステップS2)。モードの設定は、再現済マーク表示処理手段37による再現済マーク「○」の表示、あるいは不正解マーク表示処理手段38による不正解マーク「×」の表示を行うか否かの切替選択、回答受付音出力手段39による回答受付音(「ポン」等の効果音)の出力を行うか否かの切替選択、セルの枠を表示するか否かの切替選択等である。
続いて、被験者またはその補助者は、問題カテゴリを子供、大人、老人の中から選択し(ステップS3)、さらに分割数毎に分けて作成されている課題を選択する(ステップS4)。そして、課題が選択されると、その課題を構成する問題が問題記憶手段50から読み込まれる。
それから、「問題を表示します。音のあと、表示場所を押してください。」という文章と、問題の表示を開始させるための「OK」ボタンとが設けられている操作説明画面が、タッチパネル式表示手段20の画面上に表示される(ステップS5)。
そして、被験者により「OK」ボタンが押し下げられたか否かが判断され(ステップS6)、押し下げられた場合には、次のステップに進み、課題呈示処理手段31により、ステップS4で選択した課題を構成する問題の中の第1問目が、タッチパネル式表示手段20の画面上に表示される(ステップS7)。
図3は、ステップS4で課題1(分割数2)を選択したときの画面表示例であり、この例では、課題1の問1は、タッチパネル式表示手段20の画面上の領域を左右に2分割して形成された2つのセル21A,21Bを用いて課題を呈示している。この課題1の問1では、左側のセル21Aを例えば1秒間ブルーで表示した後、右側のセル21Bを例えば1秒間ブルーで表示する。ここで、左側のセル21Aを例えば2秒間ブルーで表示した場合には、右側のセル21Bも例えば2秒間ブルーで表示されるが、このように各セルの刺激表示の時間間隔を長くすると、被験者が表示順序を忘れてしまい、正解率が低下する等の傾向を掴むことができる。
なお、課題1の問2,3は、タッチパネル式表示手段20の画面上の領域を上下に2分割して形成された2つのセル22A,22Bを用いて課題を呈示している。問2では、上側のセル22Aをオレンジで表示した後、下側のセル22Bをオレンジで表示し、問3では、下側のセル22Bをピンクで表示した後、上側のセル22Aをピンクで表示する。
また、図4は、ステップS4で課題2(分割数3)を選択したときの画面表示例であり、この例では、課題2の問1〜問4は、タッチパネル式表示手段20の画面上の領域を左右方向に3分割して形成された3つのセル23A,23B,23Cを用いて課題を呈示している。この課題2の問1では、先ず、左側のセル23Aを例えば1秒間ブルーで表示し、次に、中央のセル23Bを例えば1秒間ブルーで表示し、その後、右側のセル23Cを例えば1秒間ブルーで表示する。
なお、課題2の問2では、先ず、右側のセル23Cを例えば1秒間ブルーで表示し、次に、中央のセル23Bを例えば1秒間ブルーで表示し、その後、左側のセル23Aを例えば1秒間ブルーで表示し、問3では、左側のセル23Aを例えば1秒間ブルーで表示し、次に、右側のセル23Cを例えば1秒間ブルーで表示し、その後、中央のセル23Bを例えば1秒間ブルーで表示し、問4では、中央のセル23Bを例えば1秒間ブルーで表示し、次に、左側のセル23Aを例えば1秒間ブルーで表示し、その後、右側のセル23Cを例えば1秒間ブルーで表示する。
そして、課題呈示処理手段31による課題呈示処理が終わると、全てのセルが白色となった回答待ち画面が表示される。また、これと同時に、回答開始合図手段35により、被験者に回答を促す「ピー」等の回答開始音が出力されるとともに、所要時間計測手段36により、タイマーによるカウントが開始される(ステップS8)。
この状態で、被験者が、記憶した刺激表示(刺激色)の表示順序に従って、その表示順序を再現すべく、いずれかのセルに指で触れると、再現操作受付処理手段32により、この入力操作が受け付けられるとともに、回答受付音出力手段39により、「ポン」等の回答受付音が出力され、さらに所要時間計測手段36により、回答開始合図手段35による回答開始音の出力時からその入力操作時までの所要時間の把握処理が行われる(ステップS9)。
続いて、正誤判断手段33により、再現操作受付処理手段32により受け付けた入力操作の行われたセル(被験者により選択されたセル)が、問題における刺激表示(刺激色)の表示順序に従った正しいセルであるか否かの判断が行われる(ステップS10)。ここで、間違ったセルであると判断された場合には、図5に示すように、不正解マーク表示処理手段38により不正解マーク「×」が該当セルに表示され(ステップS11)、回答は途中であっても中断されて終了する。なお、このように間違ったセルを選択した時点で回答を中断して終了するのではなく、間違ったセルを選択しても最後のセルの選択まで継続して回答できるようにしてもよい。また、中断・継続の切替選択が可能な構成としてもよい。
一方、ステップS10で、正しいセルであると判断された場合には、図5に示すように、再現済マーク表示処理手段37により再現済マーク「○」が該当セルに表示された後(ステップS12)、そのセルで回答が終了したか否かが判断される(ステップS13)。そして、ステップS13で、回答が未だ終了していないと判断された場合には、再び、ステップS9の処理に戻り、以降、回答が終了するまで、ステップS9〜S13の処理が繰り返される。
また、ステップS13で回答が終了したと判断された場合、およびステップS11で不正解マーク「×」を表示した場合には、現在呈示されている課題に、次の問題があるか否かが判断され(ステップS14)、次の問題がある場合には、再び、ステップS5の処理に戻り、以降、問題が無くなるまで、ステップS5〜S14の処理が繰り返される。
そして、現在呈示されている課題を構成する全ての問題に対する回答を終了させると、評価用データ出力手段34により、図6に示すようなテスト結果の表示画面24が、タッチパネル式表示手段20の画面上に表示される(ステップS15)。図6において、テスト結果の表示画面24には、回答開始音の出力時から最後のセルの選択受付時までの所要時間(但し、不正解の場合には、その旨)を各問題毎に表示する所要時間表示部24Aと、この所要時間表示部24Aに表示されたデータを含む認知機能評価用データを保存するための「保存」ボタン24Bと、保存せずに終了するための「終了」ボタン24Cとが設けられている。
図6のテスト結果の表示画面24において、被験者またはその補助者が、「保存」ボタン24Bを押すと、メモリカード60への認知機能評価用データの保存処理が行われ(ステップS16)、認知機能の評価や訓練等のための一連の処理が終了する(ステップS17)。
このような本実施形態によれば、次のような効果がある。すなわち、認知機能評価システム10を用いれば、被験者は、自宅等で自ら操作して検査や訓練を行うことができるので、病院のような検査施設等に出向く必要がなくなり、問診形式による従来の痴呆症の診断方法の場合に生じていた不都合を解消することができる。
また、認知機能評価システム10を用いれば、タッチパネル式表示手段20の画面上での視覚的な刺激表示およびその表示順序に従った被験者の入力操作により検査等を行うことができるので、被験者が高齢者の場合でも、質問あるいは回答を聞き取れないという事態を回避でき、この点でも問診形式の場合の不都合を解消することができる。
さらに、認知機能評価システム10を用いれば、タッチパネル式表示手段20の画面上での表示および入力操作により検査等を行うことができるので、問診形式の場合のような初対面の人に対する被験者の心理的影響や緊張による不都合を解消することができる。
そして、認知機能評価システム10を用いれば、タッチパネル式表示手段20の画面上での表示および入力操作により検査等を行うことができるので、問診形式の場合に比べ、検査等に要する時間を短縮できるため、被験者の集中力を保つことができる。また、被験者は、タッチパネル式表示手段20の画面上で行われる刺激表示を目で追い、それを記憶し、自分の指等を動かして刺激表示の表示順序を記憶に基づき再現する入力操作を行うので、質問に対して声を出して答える場合に比べ、検査を飽きずに受けることができる。
さらに、上記のように飽きが来ないことから、繰り返し行う訓練に使用することにも適しており、例えば、精神障害者等の各種障害者のリハビリテーションに使用することもできる。
また、タッチパネル式表示手段20の画面上での刺激表示および入力操作という簡易な方法にもかかわらず、後述する実験結果に示す如く、従来の問診形式の方法による認知機能評価との相関関係を確保でき、信頼性の高い認知機能評価を行うことができる。
さらに、認知機能評価システム10は、回答開始合図手段35および所要時間計測手段36を備えているので、再現の正誤のみならず、再現行為に要する時間を把握することもでき、認知機能について、より一層多様な評価を行うことができる。
そして、課題呈示処理手段31は、セルの個数(分割数)および刺激表示の表示順序の異なる複数の問題を課題として呈示できる構成とされているので、認知機能について、より一層多様な評価を行うことができるうえ、より一層信頼性の高い評価結果を得ることができる。
また、認知機能評価システム10は、再現済マーク表示処理手段37を備えているので、回答中に被験者が選択したセルに、既に選択されたセルであることを示す再現済マーク「○」を表示することができるため(図5参照)、既に選択されたセルを、再度、選択してしまうという再現の誤りを生じる可能性を低くすることができ、検査等を円滑に実施することができるうえ、入力操作に対して常にタッチパネル式表示手段20からの応答がある状態になるので、被験者は、途中で不安を感じたり、戸惑うことなく再現行為を進めることができる。
なお、本発明の効果を確かめるために、次のような比較実験を行った。
<実験の概要>
アルツハイマー病の可能性のある者と、健常高齢者とについて、それぞれ複数人ずつ認知機能評価システム10を用いて認知機能の検査を行い、得られた認知機能評価用データの比較検討を行うと同時に、これらの知機能評価システム10による認知機能評価と、従来から行われている簡易認知機能スケールを用いた問診形式の方法(MMSE)による認知機能評価との相関を解析した。
<対象者>
NINCDS−ADRDAの診断基準(米国で出された世界的なアルツハイマーの診断基準)でprobableを満たすアルツハイマー病の可能性のある者14名(以下、ADという。)と、年齢を合わせた健常高齢者13名(以下、HCという。)を対象とした。
ADについては、男性6名、女性8名の合計14名で、年齢は、平均(mean)±標準偏差(S.D.)=73.0±8.5、MMSEの合計得点は、21.4±4.9である。
一方、HCについては、男性1名、女性12名の合計13名で、年齢は、69.5±4.5、MMSEの合計得点は、28.7±1.2である。
<実験方法>
タッチパネル式表示手段20の画面全体を2〜6分割して矩形のセルを形成し、これらの分割数2〜6の場合のセルを用いて作成される問題を、それぞれ被験者に呈示する課題1〜5とし、各々の課題を構成する問題については全て分割数が同じになるようにした(図3、図4参照)。各課題1〜5についての分割数、刺激表示の表示順序パターン数、各セルで行う刺激表示の時間間隔は、次の表1に示す通りである。例えば、課題1は、分割数2の問題のみであり、表示順序パターン数は、3通りであり、時間間隔は、各セルにつき均等な1秒間隔である。他の課題No.の場合も同様である。なお、各課題1〜5について、各問題の表示順序パターンは、戦略的に回答することができる規則的なパターンのみにならないように、不規則な順序のパターンを適宜含ませている。
Figure 0004431731
各課題1〜5の各問題の表示処理を実行し、各セルに一つずつ順番に表示される刺激表示(刺激色)の表示順序を被験者に記憶させた後、回答開始音の合図でタッチパネル式表示手段20の画面上で、被験者に、その者の記憶に基づきセルの位置を指で触れさせることにより、刺激表示の表示順序を再生させた(図2参照)。また、各課題1〜5の各問題を正解するのに要した時間および各セルの反応時間、並びに回答の正誤について記録し、得られた認知機能評価用データに基づき各種の比較検討や解析を行った。この結果を、図7〜図10に示す。
<実験結果>
図7には、正解率および正解セル数が示されている。正解セル数とは、1つの問題中で何番目のセルまで正しい選択ができたかという数値である。図8には、課題(課題を構成する各問題)完了の所要時間およびセル反応時間が示されている。課題完了の所要時間とは、回答開始音からその問題における最後のセルの選択までに要する時間であり、セル反応時間とは、回答開始音からその問題における最初のセルの選択まで、またセル選択から次のセルの選択までに要する時間である。図9には、図7の正解セル数の不偏分散値が示されている。図10には、ADについての正解率(縦軸)および正解セル数(縦軸)とMMSEの合計得点(横軸)との相関関係が示されている。なお、図7〜図9の棒グラフの上端位置の右側に付された上下方向の幅表示は、標準偏差を示している。
図7によれば、2〜5分割の各課題での正解率および正解セル数については、HCは、ADに比べ、有意に成績がよい。
図8によれば、課題完了の所要時間については、ADとHCの両群の間に有意差はみられないものの、セル反応時間については、2分割および6分割を除き、HCは、ADに比べ有意に成績がよい。また、課題完了の所要時間およびセル反応時間に共通して、ADでは2分割課題で成績が悪く、しかし次の3分割課題で成績が改善し、再び分割数が多くなるに従って成績が悪くなる。
図9によれば、分割数が多くなり難易度が高くなるに従い、ADとHCに共通して、正解数の不偏分散が増大する。
図10によれば、ADについての正解率および正解セル数と、MMSEの合計得点との相関係数は、それぞれ4分割課題および5分割課題で最大になる。
<考察>
2分割課題の成績不良は、ADの認知機能障害を原因とする瞬時に正しい判断をする能力の低下によるものであり、3分割課題以降の成績改善は、システム10が2分割課題の呈示から開始していることから、学習効果等による慣れが関係する可能性がある。
MMSEの合計得点の標準偏差(S.D.)が1.2と小さいHCについて、課題の難易度が増す5分割、6分割課題で正解セル数の不偏分散が増大する(図9参照)。これは、正解セル数を指標にすれば、MMSEでは測定できない精度で認知機能が測定できる可能性があることを示唆している。また、HCについては、2分割〜4分割課題で正解セル数の不偏分散が小さいことから(図9参照)、2分割から4分割課題の範囲で正解セル数を指標にすれば、統計学的に高い精度でADと比較できる可能性がある。
問診形式の従来的認知機能評価法であるMMSEとの相関の結果(図10参照)から、3分割〜5分割課題で良好な相関が期待できる。
以上より、ADとHCとを比較検討する場合には、3分割〜5分割課題を測定すればよく、測定に要する時間は、5分程度であることから、臨床的に簡便に、しかも高い精度をもって検査を行うことができ、これにより本発明の効果が顕著に示された。
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲内での変形等は本発明に含まれるものである。
すなわち、前記実施形態の認知機能評価システム10では、刺激表示の表示順序を再現させるための課題の呈示処理を行うにあたり、タッチパネル式表示手段20の画面上の領域を区画して形成された全てのセルを用いていた。例えば、画面全体を3分割して全部で3つのセルを形成した場合には、その3つのセルの全てを用い、画面全体を4分割して全部で4つのセルを形成した場合には、その4つのセルの全てを用いて課題の呈示処理を行っていた。あるいは、認知機能評価システム10は、全てのセルではなく、一部のセルを用いて課題の呈示処理を行う設定も可能であったが、前記実施形態では、そのような設定は行わなかったと考えてもよい。しかし、本発明の認知機能評価システムは、刺激表示の表示順序を再現させるための課題の呈示処理を行うにあたり、全てのセルではなく、一部のセルを用いてもよい。例えば、図11に示すように、画面全体を5分割して全部で5つのセル71〜75を形成し、そのうち任意の3つのセルについて一つずつ順番に刺激表示を行って課題を呈示してもよい。この場合、一番左側のセル71、一番右側のセル75、中央のセル73の順番で刺激表示(例えば、ブルーの色表示)を行ったとすると、被験者は、これと同じ順番、すなわちセル71、セル75、セル73の順に選択していけば正解となる。
なお、図11に示すように、全部で5つのセル71〜75を形成し、そのうち任意の3つのセルについて一つずつ順番に刺激表示を行って課題を呈示した場合において、刺激表示の表示順序とは無関係に、どのような順番でも良いから刺激表示が行われた3つのセルを選択できれば、正解とする処理を行ってもよい。つまり、表示順序とは関係なく、表示位置さえ正しく選択できれば、正解としてもよい。例えば、図11において、セル71、セル75、セル73の順番で刺激表示を行った場合において、これとは異なるセル71、セル73、セル75という順番で選択しても正解とする処理を行ってもよい。
また、前記実施形態の場合や図11の場合では、セルに刺激表示を行う際には、各セルについて一つずつ順番に行っていたが、同時に複数(但し、全部ではない。)のセルについて刺激表示を行って課題を呈示し、刺激表示が行われたセルの場所を被験者に選択させる検査や訓練を行ってもよい。例えば、図12に示すように、5つのセル81〜85のうち、任意の複数のセル(例えば、3つのセル81,83,85)について刺激表示を行って課題を呈示し、これらの複数のセル(セル81,83,85)の場所を被験者に選択させる検査や訓練を行ってもよい。このような検査や訓練を行った場合には、前記実施形態のように刺激表示の表示順序を再現させるための課題呈示を行う場合とは異なり、刺激表示の表示順序まで記憶させ、再現させることはしないので、被験者の時間に関する記憶に基づく認知機能、すなわち時を刻んで行われる認知機能については評価することができないものの、その他の認知機能の評価は、刺激表示の表示順序を再現させるための課題呈示を行う場合と同様に行うことができる。
以上のように、本発明の認知機能評価システムは、例えば、アルツハイマー病の患者についての視空間における対象と自己身体の座標系の措定の障害、空間的ワーキングメモリの障害等の検出、あるいはアルコール依存症、統合失調症、気分障害等の発見や鑑別、さらには精神障害者、脳器質性障害、発達障害等の各種障害者の社会復帰後の訓練等に用いるのに適している。
本発明の一実施形態の認知機能評価システムの全体構成図。 前記実施形態の認知機能評価システムによるテスト実施時の処理の流れを示すフローチャートの図。 課題1(分割数2)を構成する各問題の内容の説明図。 課題2(分割数3)を構成する各問題の内容の説明図。 問題に対して回答する際の処理の流れの説明図。 テスト結果の表示画面の例示図。 正解率および正解セル数を示すグラフの図。 課題完了の所要時間およびセル反応時間を示すグラフの図。 正解セル数の不偏分散値を示すグラフの図。 ADについての正解率および正解セル数とMMSEの合計得点との相関関係図。 本発明の変形の形態を示す課題呈示方法の説明図。 本発明の別の変形の形態を示す課題呈示方法の説明図。
符号の説明
10 認知機能評価システム
20 タッチパネル式表示手段
21A,21B,22A,22B,23A,23B,23C,71,72,73,74,75,81,82,83,84,85 セル
31 課題呈示処理手段
32 再現操作受付処理手段
33 正誤判断手段
34 評価用データ出力手段
35 回答開始合図手段
36 所要時間計測手段
37 再現済マーク表示処理手段
60 外部記憶装置であるメモリカード

Claims (3)

  1. 被験者の認知機能を評価する認知機能評価システムであって、
    タッチパネル式表示手段と、
    このタッチパネル式表示手段の画面上の領域を区画して形成された複数のセルの全部について、前記被験者に対する記憶用の課題として前記被験者に対して視覚的刺激を与えるための刺激表示を一つずつ順番に行う課題呈示処理手段と、
    この課題呈示処理手段による前記課題の呈示処理で前記被験者に記憶させた前記刺激表示の表示順序を前記被験者に再現させてこの再現行為としての前記被験者による前記セルへの入力操作を受け付ける再現操作受付処理手段と、
    この再現操作受付処理手段による前記入力操作の受付処理結果に基づき前記表示順序の再現の正誤を判断する正誤判断手段と、
    この正誤判断手段による判断処理結果を含めて前記再現操作受付処理手段による前記入力操作の受付処理で得られたデータまたはその加工データを認知機能評価用データとして画面表示若しくは印刷し、または外部記憶装置に記憶保存させる評価用データ出力手段とを備え
    前記課題呈示処理手段は、前記セルの分割数を切り替え、かつ、各分割数のそれぞれで前記刺激表示の表示順序の異なる複数の問題を前記課題として呈示するとともに、前記セルの分割方向を左右方向と上下方向とで切り替えた問題も前記課題として呈示することができ、さらに前記各セルの刺激表示の時間間隔を変更することができる構成とされていることを特徴とする認知機能評価システム。
  2. 請求項1に記載の認知機能評価システムにおいて、
    前記課題呈示処理手段による前記課題の呈示処理後に前記被験者に対して前記再現行為としての前記入力操作を開始させるための合図を効果音または画面表示により送る回答開始合図手段と、
    この回答開始合図手段による前記合図から前記各入力操作までの所要時間または前記入力操作同士の間の所要時間を計測する所要時間計測手段と
    を備えたことを特徴とする認知機能評価システム。
  3. 請求項1または2に記載の認知機能評価システムにおいて、
    前記再現操作受付処理手段による前記入力操作の受付処理中に前記入力操作が行われた前記セルに、既に前記入力操作を行ったセルであることを示す再現済マークを表示する再現済マーク表示処理手段を備えたことを特徴とする認知機能評価システム。
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