JP6754623B2 - 非水電解質二次電池 - Google Patents

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Description

本発明は、非水電解質二次電池に関する。
非水電解質二次電池は、密封された収納容器内に、正極及び負極からなる一対の分極性電極と、この正極と負極の間に介在されたセパレータと、正極、負極及びセパレータに含浸され、支持塩及び有機溶媒等の非水溶媒を含む電解液とを備えるものである。このような非水電解質二次電池は、エネルギー密度が高く軽量であることから、電子機器の電源部、発電装置の発電量の変動を吸収する蓄電部などに利用されている。
また、負極において、負極活物質としてシリコン酸化物(SiO)を含む非水電解質二次電池は、高い放電容量が得られることから、特に、コイン型(ボタン型)等の小型の非水電解質二次電池として用いられている。このようなコイン型(ボタン型)の非水電解質二次電池は、高電圧、高エネルギー密度で充放電特性に優れるとともに、サイクル寿命が長く信頼性が高いことが知られている。そのため、非水電解質電池は、従来から、例えば、携帯電話、PDA、携帯用ゲーム機、デジタルカメラ等の各種小型電子機器において、半導体メモリのバックアップ用電源や時計機能のバックアップ用電源等として利用されている(例えば、特許文献1を参照)。
また、非水電解質二次電池においては、主に、電解液として、環状の炭酸エステルや鎖状の炭酸エステル、又は、それらの混合物を溶媒とする有機電解液が使用されている。特許文献1に記載の非水電解質二次電池では、電解液として、鎖状炭酸エステルであるジメチルカーボネート(以下、DMCと言うことがある。)、ジエチルカーボネート(以下、DECと言うことがある。)、プロピレンカーボネート(以下、PCと言うことがある。)、ジメトキシエタン(以下、DMEと言うことがある。)等の有機溶媒が例示されている。
特開2000−243449号公報
一方、例えば、携帯電話やデジカメ等のメモリのバックアップ用等に用いられるコイン型(ボタン型)の非水電解質二次電池を長期保存した場合、電解液の揮発や電池内への水分の浸入によるリチウムの劣化が生じ、容量が大きく低下する場合がある。このため、従来、例えば、非水電解質二次電池を、製品倉庫等に長期にわたって保管したり、あるいは、各種機器に組み込んだ状態で長期にわたって保存・保管、又は使用した場合に、十分な放電容量が得られなくなるという問題があった。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、長期にわたって保存・保管、又は使用した場合であっても十分な放電容量を維持でき、長期保存特性に優れた非水電解質二次電池を提供することを目的とする。
本発明者等は上記課題を解決するために鋭意検討を行い、非水電解質二次電池を長期にわたって保存・保管、又は使用した場合において十分な放電容量を確保するための実験を繰り返した。この結果、電解液に用いる有機溶媒及び支持塩の組成を調整・適正化するとともに、負極に用いられる負極活物質の構成を適正化することにより、非水電解質二次電池を長期にわたって保存・保管、又は使用した場合においても十分な放電容量を維持することが可能であることを知見した。
即ち、本発明者等は、まず、電解質に含まれる有機溶媒として、下記(化学式1)で表される構造の環状カーボネート溶媒、及び、下記(化学式2)で表される構造の鎖状エーテル溶媒の混合溶媒を用いるとともに、各溶媒の混合比を調整することで、常温下での容量特性や、高温下での容量維持率を損なうことなく、低温特性を改善できることを見出した。
Figure 0006754623
但し、上記(化学式1)中において、R1、R2、R3、R4は、水素、フッ素、塩素、炭素数1〜3のアルキル基、フッ素化されたアルキル基の何れかを表す。また、上記(化学式1)中におけるR1、R2、R3、R4は、それぞれ同一であっても、異なっていても良い。
Figure 0006754623
但し、上記(化学式2)中において、R7、R8は、水素、フッ素、塩素、炭素数1〜3のアルキル基、フッ素化されたアルキル基の何れかを表す。また、R7、R8はそれぞれ同一であっても、異なっていても良い。
そして、本発明者等は、上記の混合溶媒を構成する環状カーボネート溶媒(化学式1)、鎖状エーテル溶媒(化学式2)について、さらなる実験・検討を繰り返した。
この結果、まず、(化学式1)で表される環状カーボネート溶媒としてエチレンカーボネート(EC)及びプロピレンカーボネート(PC)を用いることで、特に、高温下における容量維持率を良好に維持できることを見出した。
また、(化学式2)で表される鎖状エーテル溶媒として、ジメトキシエタン(DME)を用いることにより、常温下における容量を確保しながら、特に、低温特性を向上させることができることを見出した。
さらに、上記のEC、PC及びDMEの混合比を調整することで、特に低温環境下において放電容量を維持できる効果が顕著に得られることを見出した。
また、本発明者等は、電解液に用いられる溶媒を上記組成とするとともに、支持塩の組成及び含有量を調整・最適化することにより、非水電解質二次電池を長期にわたって保存・保管、又は使用した際、仮に、電解液の揮発や電池内への水分の浸入が生じた場合であっても、リチウムが劣化するのを抑制でき、十分な放電容量を確保できることを見出した。
さらに、本発明者等は、上記の電解液の組成の適正化に加え、負極に用いられる負極活物質として、少なくとも、SiO(0≦X<2)、あるいは、Li−Al合金を含むものの何れかを用いることで、上述したような、非水電解質二次電池を長期にわたって保存・保管、又は使用した場合であっても十分な放電容量を確保できる効果がより顕著に得られ、長期にわたって安定した動作が可能となることを見出した。さらに、負極に用いられる負極活物質として、粒子の表面が炭素で被覆されたSiO(0≦X<2)を用いた場合には、導電性をさらに向上させ、初期容量をより増加させる作用が得られることを見出した。
即ち、本発明の非水電解質二次電池は、正極活物質としてリチウムマンガン酸化物を含む正極と、負極活物質として、SiO(0X<2)を含む負極と、有機溶媒として、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)及びジメトキシエタン(DME)を、体積比で{PC:EC:DME}={0.5〜1.5:0.5〜1.5:1〜3}の範囲で含有し、且つ、支持塩として、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)を単独で1.4〜2.0(mol/L)で含有する電解液と、を含むことを特徴とする。
本発明によれば、まず、電解液に用いる有機溶媒を上記組成とすることにより、−30〜−40℃の低温環境下において電解液の粘性が上昇するのを防止し、電荷の移動が妨げられるのを抑制できるので、低温環境下における放電特性が向上し、幅広い温度範囲において十分な放電容量を維持することが可能となる。
具体的には、まず、環状カーボネート溶媒として、誘電率が高く、支持塩の溶解性が高いPC及びECを用いることにより、大きな放電容量を得ることが可能となる。また、PC及びECは、沸点が高いことから、仮に高温環境下で使用又は保管した場合であっても、揮発し難い電解液となる。
また、環状カーボネート溶媒として、ECよりも融点が低いPCを、ECと混合して用いることにより、低温特性を向上させることが可能となる。
また、鎖状エーテル溶媒として、融点の低いDMEを用いることにより、低温特性が向上する。また、DMEは低粘度なので、電解液の電気伝導性が向上する。さらに、DMEは、Liイオンに溶媒和することにより、非水電解質二次電池の放電容量が大きくなる。
さらに、電解液に用いる支持塩として、導電性に優れたLiFSIを単独で、上記範囲のモル比で含むことにより、放電初期の電圧降下を抑制することができることから、非水電解質二次電池を長期にわたって保存・保管、又は使用した際の放電特性を改善でき、仮に、電解液の揮発や電池内への水分の浸入が生じた場合でも、リチウムが劣化するのを抑制できるので、十分な放電容量が得られ、長期保存特性(長期信頼性)が向上する。
また、本発明によれば、負極における負極活物質として、SiO(0X<2)を用いることで、負極の導電性が向上し、内部抵抗の上昇が抑制されることから、放電初期における電圧降下が抑制され、放電特性をより安定化させることが可能となる。
また、本発明の非水電解質二次電池は、上記構成において、前記正極が、前記正極活物質に用いられるリチウムマンガン酸化物として、少なくともLi1+xCoMn2−x−y(0≦x≦0.33、0<y≦0.2)を含むことがより好ましい。
正極が、正極活物質に用いられるリチウムマンガン酸化物として、上記組成の化合物を含むものを用いることにより、上記のような、長期にわたって保存・保管、又は使用した際の放電特性が向上して十分な放電容量が得られ、長期保存特性が向上する効果がより顕著に得られる。
また、本発明の非水電解質二次電池は、上記構成において、前記負極として、前記負極活物質が、表面の少なくとも一部が炭素で被覆されたSiO(0X<2)を含む構成のものを採用することがより好ましい。
負極に用いられる負極活物質が、表面の少なくとも一部が炭素で被覆されたSiOを含むことにより、導電性がさらに向上し、初期容量が増加する効果がより顕著に得られる。
また、本発明の非水電解質二次電池は、上記構成において、前記負極活物質に含まれる、表面の少なくとも一部が炭素で被覆されたSiO(0X<2)の粒子径(D50)が、0.1〜30μmであることがより好ましい。
負極活物質を構成する、表面の少なくとも一部が炭素で被覆されたSiO(0X<2)の粒子径(D50)が上記範囲であることにより、非水電解質二次電池を充放電させる際、負極の膨張や収縮が生じた場合にも導電性が維持されるため、サイクル特性等の充放電特性の低下が抑制される。これにより、非水電解質二次電池を長期にわたって保存・保管、又は使用した際の放電特性も改善でき、十分な放電容量が得られ、長期保存特性がさらに向上する。
また、本発明の非水電解質二次電池は、上記構成において、前記負極の容量と前記正極の容量とから表される容量バランス{負極容量(mAh)/正極容量(mAh)}が、1.56〜2.51の範囲であることがより好ましい。
負極と正極との容量バランス{負極容量(mAh)/正極容量(mAh)}を上記範囲とし、負極側の容量に所定の余裕を確保しておくことで、万が一、電池反応による負極活物質の分解が早く進んだ場合であっても、一定以上の負極容量を確保できる。これにより、非水電解質二次電池を長期にわたって保存・保管、又は使用した際の放電特性も改善でき、十分な放電容量が得られ、長期保存特性がより一層向上する。
本発明の非水電解質二次電池によれば、上述のように、電解液に用いられる有機溶媒及び支持塩の組成を適正化するとともに、負極における負極活物質として、SiO(0X<2)を用いることで、非水電解質二次電池を長期にわたって保存・保管、又は使用した際、仮に、電解液の揮発や電池内への水分の浸入が生じた場合でも、リチウムが劣化するのを抑制できるので、十分な放電容量が得られる。
従って、長期保存特性に優れ、長期信頼性を有する非水電解質二次電池を提供することが可能となる。
図1は、本発明の実施形態であるコイン型(ボタン型)に構成された非水電解質二次電池を模式的に示す断面図である。 図2は、本発明に係る非水電解質二次電池の実施例について説明する図であり、非水電解質二次電池の初期の容量特性を説明する図で、(a)は、電解液中に含まれる支持塩のモル濃度を変化させた際の初期容量の変化を示すグラフであり、(b)は、初期容量と電圧との関係から表される初期の放電特性を示すグラフである。 図3は、本発明に係る非水電解質二次電池の実施例について説明する図であり、非水電解質二次電池の高温高湿環境下における長期保存特性を説明する図で、(a)は、保存日数に対する容量の変化を示すグラフであり、(b)は、その容量維持率の変化を示すグラフである。 図4は、本発明に係る非水電解質二次電池の実施例について説明する図であり、非水電解質二次電池の高温高湿環境下における長期保存特性を説明する図で、(a)は、電解液中に含まれる支持塩のモル濃度を変化させた際の容量維持率の変化を示すグラフであり、(b)は、その容量の変化を示すグラフである。
以下、本発明の非水電解質二次電池の実施形態を挙げ、その各構成について図1〜図4を参照しながら詳述する。なお、本発明で説明する非水電解質二次電池は、具体的には、正極または負極として用いる活物質と電解液とが容器内に収容されてなるものであるが、本発明に係る構成は、例えば、リチウムイオンキャパシタ等の電気化学セルにも応用可能なものである。
<非水電解質二次電池の構成>
図1に示す本実施形態の非水電解質二次電池1は、いわゆるコイン(ボタン)型の電池である。この非水電解質二次電池1は、収納容器2内に、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極10と、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極20と、正極10と負極20との間に配置されたセパレータ30と、少なくとも支持塩及び有機溶媒を含む電解液50とを備える。
より具体的には、非水電解質二次電池1は、有底円筒状の正極缶12と、正極缶12の開口部12aにガスケット40を介在して固定され、正極缶12との間に収容空間を形成する有蓋円筒状(ハット状)の負極缶22とを有し、正極缶12の開口部12aの周縁を内側、即ち負極缶22側にかしめることで収容空間を密封する収納容器2を備える。
収納容器2によって密封された収容空間には、正極缶12側に設けられる正極10と、負極缶22側に設けられる負極20とがセパレータ30を介して対向配置され、さらに、電解液50が充填されている。また、図1に示す例においては、負極20とセパレータ30との間にリチウムフォイル60が介装されている。
また、図1に示すように、ガスケット40は、正極缶12の内周面に沿って狭入されるとともに、セパレータ30の外周と接続され、セパレータ30を保持している。
また、正極10、負極20及びセパレータ30には、収納容器2内に充填された電解液50が含浸している。
図1に示す例の非水電解質二次電池1においては、正極10が、正極集電体14を介して正極缶12の内面に電気的に接続され、負極20が、負極集電体24を介して負極缶22の内面に電気的に接続されている。なお、本実施形態においては、図1に例示するような正極集電体14及び負極集電体24を備えた非水電解質二次電池1を例に挙げて説明しているが、これには限定されず、例えば、正極缶12が正極集電体を兼ねるとともに、負極缶22が負極集電体を兼ねた構成を用いても構わない。
本実施形態の非水電解質二次電池1は、上記のように構成されることにより、正極10と負極20の一方から他方へリチウムイオンが移動することで、電荷を蓄積(充電)したり、電荷を放出(放電)したりすることができるものである。
そして、本実施形態の非水電解質二次電池1は、正極活物質としてリチウムマンガン酸化物を含む正極10と、負極活物質として、SiO(0≦X<2)、あるいは、Li−Al合金を含む負極20と、有機溶媒として、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)及びジメトキシエタン(DME)を、体積比で{PC:EC:DME}={0.5〜1.5:0.5〜1.5:1〜3}の範囲で含有し、且つ、支持塩として、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)又はリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)の少なくとも何れかを合計で1.4〜2.0(mol/L)で含有する電解液50と、を含む構成とされている。
[正極缶及び負極缶]
本実施形態において、収納容器2を構成する正極缶12は、上述したように、有底円筒状に構成され、平面視で円形の開口部12aを有する。このような正極缶12の材質としては、従来公知のものを何ら制限無く用いることができ、例えば、SUS329J4L、NAS64等のステンレス鋼が挙げられる。
また、負極缶22は、上述したように、有蓋円筒状(ハット状)に構成され、その先端部22aが、開口部12aから正極缶12に入り込むように構成される。このような負極缶22の材質としては、正極缶12の材質と同様、従来公知のステンレス鋼が挙げられ、例えば、SUS304−BA等を用いることができる。また、負極缶22には、例えば、ステンレス鋼に銅やニッケル等が圧接されてなるクラッド材を用いることもできる。
図1に示すように、正極缶12と負極缶22とは、ガスケット40を介在させた状態で、正極缶12の開口部12aの周縁を負極缶22側にかしめることで固定され、非水電解質二次電池1を、収容空間が形成された状態で密封保持する。このため、正極缶12の最大内径は、負極缶22の最大外径よりも大きい寸法とされている。
正極缶12や負極缶22に用いられる金属板材の板厚は、一般に0.1〜0.3mm程度であり、例えば、正極缶12や負極缶22の全体における平均板厚で0.20mm程度として構成することができる。
また、図1に示す例においては、負極缶22の先端部22aが、負極缶22の外側面に沿って折り返した形状とされているが、これには限定されない。例えば、金属板材の端面が先端部22aとされた、上記の折り返し形状を有していない負極缶22を用いる場合においても、本発明を適用することが可能である。
また、本実施形態で詳述する構成を適用可能な非水電解質二次電池としては、例えば、コイン型非水電解質二次電池の一般的なサイズである920サイズ(外径φ9mm×高さ2.0mm)の他、各種サイズの電池を挙げることができる。
[ガスケット]
ガスケット40は、図1に示すように、正極缶12の内周面に沿って円環状に形成され、その環状溝41の内部に負極缶22の先端部22aが配置される。
また、ガスケット40は、例えば、その材質が、熱変形温度が230℃以上の樹脂であることが好ましい。ガスケット40に用いる樹脂材料の熱変形温度が230℃以上であれば、非水電解質二次電池1を高温環境下で使用又は保管した場合や、非水電解質二次電池1の使用中に発熱が生じた場合でも、ガスケットが変形して電解液50が漏出するのを防止できる。
このようなガスケット40の材質としては、例えば、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリフェニルサルファイド(PPS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド、液晶ポリマー(LCP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリエーテルニトリル樹脂(PEN)、ポリエーテルケトン樹脂(PEK)、ポリアリレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂(PES)、ポリアミノビスマレイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フッ素樹脂等のプラスチック樹脂が挙げられる。これらの中でも、ガスケット40にポリプロピレン樹脂を用いることが、高温環境下における使用や保管時にガスケットが大きく変形するのを防止でき、非水電解質二次電池の封止性がさらに向上する観点から好ましい。
また、ガスケット40には、上記材料にガラス繊維、マイカウイスカー、セラミック微粉末等を、30質量%以下の量で添加したものも好適に用いることができる。このような材質を用いることで、高温によってガスケットが大きく変形するのを抑制し、電解液50が漏出するのを防止できる。
また、ガスケット40の環状溝の内側面には、さらに、シール剤を塗布してもよい。このようなシール剤としては、アスファルト、エポキシ樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチルゴム系接着剤等を用いることができる。また、シール剤は、環状溝41の内部に塗布した後、乾燥させて用いる。
なお、ガスケット40は、正極缶12と負極缶22との間に挟まれ、その少なくとも一部が圧縮された状態となるが、この際の圧縮率は特に限定されず、非水電解質二次電池1の内部を確実に封止でき、且つ、ガスケット40に破断が生じない範囲とすればよい。
[電解液]
本実施形態の非水電解質二次電池1は、電解液50として、少なくとも有機溶媒及び支持塩を含むものを用いる。そして、本実施形態で説明する電解液50は、有機溶媒として、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)及びジメトキシエタン(DME)を、体積比で{PC:EC:DME}={0.5〜1.5:0.5〜1.5:1〜3}の範囲で含有する混合溶媒を用いる。さらに、電解液50は、支持塩として、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)又はリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)の少なくとも何れかを合計で1.4〜2.0(mol/L)で含有するものである。
このような電解液50は、通常、支持塩を、有機溶媒等の非水溶媒に溶解させたものからなり、電解液50に求められる耐熱性や粘度等を勘案して、その特性が決定される。
一般に、有機溶媒を含有する電解液を非水電解質二次電池に使用した場合、リチウム塩の溶解性が乏しいことから導電性の温度依存性が大きくなり、常温下における特性に較べて、低温下における特性が大きく低下するという問題がある。一方、低温特性を向上させるために、例えば、鎖状炭酸エステルである非対称構造のエチルメチルカーボネートや酢酸エステル類を電解液の有機溶媒に用いた場合には、逆に、高温下における非水電解質二次電池としての特性が低下するという問題がある。また、エチルメチルカーボネート等の有機溶媒を電解液に用いた場合でも、やはり、リチウム塩の溶解性が乏しく、低温特性を向上させるのには限界がある。
このため、本実施形態では、電解液50に用いる有機溶媒を、環状カーボネート溶媒であるPC、EC、及び、鎖状エーテル溶媒であるDMEを、適正範囲とされた混合比で含有してなる混合溶媒とすることにより、低温環境下も含めた幅広い温度範囲において十分な放電容量を維持可能な非水電解質二次電池1が得られる。
具体的には、まず、環状カーボネート溶媒として、誘電率が高く、支持塩の溶解性が高いPC及びECを用いることにより、非水電解質二次電池1の放電容量が大きくなる。また、PC及びECは、沸点が高いことから、仮に高温環境下で使用、又は保存・保管した場合であっても、揮発し難い電解液となる。
また、環状カーボネート溶媒として、ECよりも融点が低いPCを、ECと混合して用いることにより、低温特性を向上させることが可能となる。
また、鎖状エーテル溶媒として、融点の低いDMEを用いることにより、低温特性が向上する。また、DMEは低粘度なので、電解液の電気伝導性が向上する。さらに、DMEは、Liイオンに溶媒和することにより、非水電解質二次電池の放電容量が大きくなる。
環状カーボネート溶媒は、下記(化学式1)で表される構造を有してなり、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、トリフロロエチレンカーボネート(TFPC)、クロロエチレンカーボネート(ClEC)、トリフロロエチレンカーボネート(TFEC)、ジフロロエチレンカーボネート(DFEC)、ビニレンカーボネート(VEC)等が挙げられる。本発明に係る非水電解質二次電池1においては、特に、負極20上への電極上の皮膜形成の容易性や、低温特性向上の観点に加え、さらに、高温下における容量維持率を向上させる観点から、下記(化学式1)で表される構造の環状カーボネート溶媒として、PC及びECの2種類を用いる。
Figure 0006754623
但し、上記(化学式1)中において、R1、R2、R3、R4は、水素、フッ素、塩素、炭素数1〜3のアルキル基、フッ素化されたアルキル基の何れかを表す。また、上記(化学式1)中におけるR1、R2、R3、R4は、それぞれ同一であっても、異なっていても良い。
本実施形態では、上述したように、環状カーボネート溶媒として、誘電率が高く、支持塩の溶解性が高いPC及びECを用いることにより、大きな放電容量を得ることが可能となる。また、PC及びECは沸点が高いことから、高温環境下で使用又は保管した場合でも揮発し難い電解液となる。さらに、環状カーボネート溶媒として、ECよりも融点が低いPCを、ECと混合して用いることにより、優れた低温特性が得られる。
鎖状エーテル溶媒は、下記(化学式2)で表される構造を有してなり、例えば、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,2−ジエトキシエタン(DEE)等が挙げられる。
本実施形態においては、特に、導電率向上の観点に加え、さらに、常温下における容量を確保しながら低温特性を向上させる観点から、下記(化学式2)で表される構造の鎖状エーテル溶媒として、リチウムイオンと溶媒和しやすいDMEを用いる。
Figure 0006754623
但し、上記(化学式2)中において、R5、R6は、水素、フッ素、塩素、炭素数1〜3のアルキル基、フッ素化されたアルキル基の何れかを表す。また、R5、R6はそれぞれ同一であっても、異なっていても良い。
本実施形態では、上述したように、鎖状エーテル溶媒として融点の低いDMEを用いることで低温特性が向上する。また、DMEは低粘度であることから、電解液の電気伝導性が向上する。さらに、DMEは、Liイオンに溶媒和することから、非水電解質二次電池として大きな放電容量が得られる。
本実施形態では、電解液50の溶媒中における各有機溶媒の配合比率を、体積比で{PC:EC:DME}=0.5〜1.5:0.5〜1.5:1〜3の範囲に設定する。また、溶媒中における配合比率は、体積比で0.8〜1.2:0.8〜1.2:1.5〜2.5の範囲であることがさらに好ましく、概ね{PC:EC:DME}={1:1:2}であることが最も好ましい。有機溶媒の配合比率が上記範囲であると、上述したような、高温下あるいは常温での容量維持率を損なうことなく、低温特性を改善できる効果がより顕著に得られる。
より詳細に説明すると、環状カーボネート溶媒であるプロピレンカーボネート(PC)の配合比率が上記範囲の下限以上であれば、ECよりも融点が低いPCと、ECとを混合して用いることで低温特性を向上できる効果が顕著に得られる。
一方、PCは、ECに較べて誘電率が低いことから支持塩の濃度を高められないため、含有量が多過ぎると大きな放電容量が得られ難くなる可能性があることから、その配合比率を上記範囲の上限以下に制限することが好ましい。
また、有機溶媒中において、環状カーボネート溶媒であるエチレンカーボネート(EC)の配合比率が上記範囲の下限以上であれば、電解液50の誘電率及び支持塩の溶解性が高められ、非水電解質二次電池の放電容量が大きくなる。
一方、ECは、粘度が高いことから電気伝導性に乏しく、また、融点が高いことから含有量が多過ぎると低温特性が低下する可能性があるため、その配合比率を上記範囲の上限以下に制限することが好ましい。
さらに、有機溶媒中におけるECの配合比率を上記範囲とすることにより、低温環境下における内部抵抗の上昇を抑制することが可能となる。
また、有機溶媒中において、鎖状エーテル溶媒であるジメトキシエタン(DME)の配合比率を上記範囲の下限以上とすれば、融点の低いDMEが所定量で有機溶媒中に含まれることにより、低温特性を向上できる効果が顕著になる。また、DMEは粘度が低いことから、電気伝導性が向上するとともに、Liイオンに溶媒和することによって大きな放電容量を得ることが可能となる。
一方、DMEは誘電率が低いことから支持塩の濃度を高められないため、含有量が多過ぎると大きな放電容量が得られ難くなる可能性があることから、その配合比率を上記範囲の上限以下に制限することが好ましい。
さらに、有機溶媒中におけるDMEの配合比率を上記範囲とすることにより、放電初期の電圧降下を抑制することが可能となる。
電解液50に用いられる支持塩としては、非水電解質二次電池において、従来から電解液に支持塩として添加されている公知のLi化合物、具体的には、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)又はリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)の何れか1種を単独で用いるか、あるいは、2種を組み合わせて用いる。
電解液50中の支持塩の含有量は、支持塩の種類等を勘案するとともに、後述の正極活物質の種類を勘案して決定でき、本実施形態においては、上記のLiFSI又はLiTFSIの合計量で1.4〜2.0(mol/L)で含有する。電解液50中の支持塩として、上記のリチウム化合物を上記範囲のモル比で含むことにより、非水電解質二次電池を長期にわたって保存・保管、又は使用した際、仮に、電解液の揮発や電池内への水分の浸入が生じた場合でも、リチウムが劣化するのを抑制できるので、十分な放電容量が得られ、長期保存特性が向上する。また、詳細なメカニズムは明らかでは無いが、電解液50中に上記リチウム化合物からなる支持塩を最適なモル濃度で含むことで、仮に電解液が劣化した場合でも必要十分なリチウム量を確保でき、長期保存特性が向上する効果が得られると考えられる。
なお、電解液50中の支持塩濃度が上記範囲の上限を超えても放電容量の維持効果は頭打ちとなり、また、上記の下限を下回った場合には、低温特性の向上には一定の効果が見られるものの、長期使用、又は保存・保管後の放電容量の維持効果は得られ難くなる。従って、電解液50中の支持塩濃度は、高過ぎても、あるいは低過ぎても電池特性に悪影響を及ぼすおそれがあることから、上記範囲とすることが好ましい。
また、電解液50中の支持塩の下限は、長期保存特性が安定して得られる観点から、1.4(mol/L)超であることが好ましく、1.5(mol/L)以上がより好ましく、1.6(mol/L)以上が最も好ましい。
また、電解液50に用いられる支持塩としては、上記のうち、LiFSIを単独で用い、電解液50中において1.4〜2.0(mol/L)で含有されることが、放電初期の電圧降下を抑制することができ、また、上記の長期保存特性が安定して得られ、長期にわたって保存・保管、又は使用した場合においても十分な放電容量が得られる観点から、より好ましい。このLiFSIは導電性に優れていることから、上記の各効果がより顕著に得られる。また、LiFSIを単独で用いた場合においても、上記同様の理由により、電解液50中のLiFSIの下限は、1.4(mol/L)超であることが好ましく、1.5(mol/L)以上がより好ましく、1.6(mol/L)以上が最も好ましい。
本実施形態においては、上記のように、まず、電解液50に用いる有機溶媒を上記組成とすることにより、特に、−30〜−40℃の低温環境下において電解液の粘性が上昇するのを防止し、電荷の移動が妨げられるのを抑制できる。これにより、低温環境下における放電特性が向上し、幅広い温度範囲において十分な放電容量を維持することが可能となる。
そして、本実施形態によれば、電解液50に用いる有機溶媒を上記組成したうえで、電解液50に含有される支持塩として、上記のリチウム化合物を上記範囲のモル比で含む構成を採用することにより、非水電解質二次電池1を長期にわたって保存・保管、又は使用した場合においても十分な放電容量が得られ、長期保存特性が向上する。
さらに、本実施形態の非水電解質二次電池1によれば、上記の電解液50の組成の適正化に加え、詳細を後述する負極20を、表面の少なくとも一部に炭素が被覆されたSiO(0≦X<2)、あるいは、Li−Al合金のうちの、何れかの負極活物質を含むものとすることにより、上述した長期保存特性がより一層向上する。
[正極]
正極10としては、リチウムマンガン酸化物からなる正極活物質を含有するものであれば、特に限定されず、従来からこの分野で公知のものを用いることができる。また、正極10としては、上記の正極活物質に加え、さらに、結着剤としてポリアクリル酸を、導電助剤としてグラファイト等を混合したものを用いることができる。
正極10に含まれる正極活物質としては、例えば、スピネル型結晶構造であるLiMnや、LiMn12等のリチウムマンガン酸化物が挙げられる。このようなリチウムマンガン酸化物のうち、特に、Li1+xCoMn2−x−y(0≦x≦0.33、0<y≦0.2)のように、Mnの一部がCoに置換されたものが好ましい。このように、リチウムマンガン酸化物にCoやNi等の遷移金属元素を添加し、その一部が遷移金属元素によって置換された正極活物質を用いることで、放電特性がさらに向上する。
本実施形態では、正極10に、上記組成のリチウムマンガン酸化物からなる正極活物質を用いることで、上述したような、長期にわたって保存・保管するか、あるいは長期使用した場合であっても、十分な放電容量が得られ、長期保存特性が向上するという本発明の効果がより顕著に得られる。
また、本実施形態では、正極活物質として、上記のリチウムマンガン酸化物のうちの1種のみならず、複数を含有していても構わない。
また、上記材料からなる粒状の正極活物質を用いる場合、その粒子径(D50)は、特に限定されず、例えば、0.1〜100μmが好ましく、1〜10μmがより好ましい。
正極活物質の粒子径(D50)が、上記好ましい範囲の下限値未満であると、非水電解質二次電池が高温に曝された際に反応性が高まるために扱いにくくなり、また、上限値を超えると、放電レートが低下するおそれがある。
なお、本発明における「正極活物質の粒子径(D50)」とは、従来公知のレーザー回折法を用いて測定される粒子径であって、メジアン径を意味する。
正極10中の正極活物質の含有量は、非水電解質二次電池1に要求される放電容量等を勘案して決定され、50〜95質量%が好ましい。正極活物質の含有量が、上記好ましい範囲の下限値以上であれば、充分な放電容量が得られやすく、好ましい上限値以下であれば、正極10を成形しやすい。
正極10は、導電助剤(以下、正極10に用いられる導電助剤を「正極導電助剤」ということがある)を含有してもよい。
正極導電助剤としては、例えば、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、グラファイト等の炭素質材料が挙げられる。
正極導電助剤は、上記のうちの1種を単独で用いてもよく、あるいは、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、正極10中の正極導電助剤の含有量は、4〜40質量%が好ましく、10〜25質量%がより好ましい。正極導電助剤の含有量が、上記の好ましい範囲の下限値以上であれば、充分な導電性が得られやすくなる。また、電極をペレット状に成型する場合に成型しやすくなる。一方、正極10中の正極導電助剤の含有量が、上記好ましい範囲の上限値以下であれば、正極10による充分な放電容量が得られやすくなる。
正極10は、バインダ(以下、正極10に用いられるバインダを「正極バインダ」ということがある。)を含有してもよい。
正極バインダとしては、従来公知の物質を用いることができ、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)等が挙げられ、中でも、ポリアクリル酸が好ましく、架橋型のポリアクリル酸がより好ましい。
また、正極バインダは、上記のうちの1種を単独で用いてもよく、あるいは、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、正極バインダにポリアクリル酸を用いる場合には、ポリアクリル酸を、予め、pH3〜10に調整しておくことが好ましい。この場合のpHの調整には、例えば、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物や水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属水酸化物を用いることができる。
正極10中の正極バインダの含有量は、例えば、1〜20質量%とすることができる。
正極10の大きさは、非水電解質二次電池1の大きさに応じて決定される。
また、正極10の厚さも、非水電解質二次電池1の大きさに応じて決定され、非水電解質二次電池1が、各種電子機器向けのバックアップ用のコイン型のものである場合、例えば、300〜1000μm程度とされる。
正極10は、従来公知の製造方法により製造できる。
例えば、正極10の製造方法としては、正極活物質と、必要に応じて正極導電助剤、及び、正極バインダのうちの少なくとも何れかと、を混合して正極合剤とし、この正極合剤を任意の形状に加圧成形する方法が挙げられる。
上記の加圧成形時の圧力は、正極導電助剤の種類等を勘案して決定され、例えば0.2〜5ton/cmとすることができる。
正極集電体14としては、従来公知のものを用いることができ、炭素を導電性フィラーとする導電性樹脂接着剤等からなるものが挙げられる。
[負極]
本実施形態で用いられる負極20は、負極活物質として、SiO(0≦X<2)、あるいは、Li−Al合金を含むものである。負極20としては、上記の負極活物質に加え、さらに、適当なバインダと、結着剤としてポリアクリル酸を、導電助剤としてグラファイト等を混合したものを用いることができる。
負極20に用いられる負極活物質としては、まず、SiO又はSiO、即ち、上記のSiO(0≦X<2)で表されるシリコン酸化物からなるものが挙げられる。負極活物質に上記組成のシリコン酸化物を用いることで、非水電解質二次電池1を高電圧で使用することが可能になるとともに、サイクル特性が向上する。
また、負極20は、負極活物質として、上記のSiO(0≦X<2)、又は、Li−Al合金に加え、さらに、炭素、Li−Al合金以外の合金系負極、Si、WO及びWOのうちの少なくとも何れかを含有していてもよい。
負極20に、負極活物質として上記材料を用いることで、充放電サイクルにおける電解液50と負極20との反応が抑制され、容量の減少を防止でき、サイクル特性が向上する。
さらに、負極20は、表面の少なくとも一部が炭素(C)で被覆されたSiO(0≦X<2)か、あるいは、Li−Al合金からなる負極活物質を含むことで、負極20の導電性が向上し、特に低温環境下における内部抵抗の上昇が抑制される。これにより、放電初期における電圧降下が抑制され、放電特性をより安定化させることが可能となる。なお、上記のSiO(0≦X<2)を負極活物質に用いる場合、SiO(0≦X<2)からなる粒子の表面の少なくとも一部が炭素によって被覆されていればよいが、表面全体が被覆されていることが、上記効果がより顕著になる点から好ましい。ここで、負極20に用いられる負極活物質として、粒子の表面が炭素で被覆されたSiO(0≦X<2)を用いた場合には、導電性がさらに向上し、初期容量がより増加する効果が得られる。
本実施形態においては、上述したように、まず、電解液50の組成を適正化し、そのうえで、SiO(0≦X<2)からなる負極活物質、あるいは、Li−Al合金からなる負極活物質を含む負極20を採用することで、長期にわたって保存・保管するか、あるいは長期使用した場合の放電特性を改善できる。これにより、長期保存特性が向上し、十分な放電容量を長期間にわたって維持可能な非水電解質二次電池1が実現できる。
なお、SiO(0≦X<2)の粒子表面を炭素で被覆する方法としては、特に限定されないが、例えば、メタンやアセチレン等の有機物が含まれるガスを用いた物理蒸着法(PVD)や、化学蒸着法(CVD)等の方法を挙げることができる。
負極活物質として、表面の少なくとも一部が炭素で被覆されたSiO(0≦X<2)を用いる場合、その粒子径(D50)は、特に限定されず、例えば、0.1〜30μmが好ましく、1〜10μmがより好ましい。負極活物質の粒子径(D50)が上記範囲内であれば、非水電解質二次電池を充放電させる際、負極の膨張や収縮が生じた場合にも導電性が維持されるため、サイクル特性等の充放電特性の低下が抑制される。負極活物質の粒子径(D50)が、上記好ましい範囲の下限値未満であると、例えば、非水電解質二次電池が高温に曝された際に反応性が高まるために扱いにくくなり、また、上限値を超えると、放電レートが低下するおそれがある。なお、本明細書で説明する、負極活物質(SiO(0≦X<2))の粒子径(D50)とは、SiO(0≦X<2)の表面の少なくとも一部に炭素が被覆された状態における粒子径である。
さらに、本実施形態においては、負極20中の負極活物質が、リチウム(Li)とSiO(0≦X<2)との両方を含み、これらのモル比(Li/SiO)が3.7〜4.9の範囲であることがより好ましい。このように、負極活物質がリチウム(Li)とSiOとの両方を含み、これらのモル比を上記範囲とすることにより、充電異常等を防止できる効果が得られる。また、非水電解質二次電池1を高温環境下で長期間にわたって保存・保管、又は使用した場合においても、十分な放電容量が確保でき、優れた長期保存特性が得られる。
上記のモル比(Li/SiO)が3.7未満だと、Liが少な過ぎることから、高温環境下で長期間にわたって使用、又は保存・保管した場合にLi不足となり、放電容量が低下する。
一方、上記のモル比(Li/SiO)が4.9を超えると、Liが多過ぎることから、充電異常が発生する可能性がある。また、金属LiがSiOに取り込まれずに残存することから、内部抵抗が上昇して放電容量が低下する可能性がある。
さらに、本実施形態においては、上記範囲とされたモル比(Li/SiO)を、上述した正極10に含まれる正極活物質の種類に応じて、さらに適正な範囲を選択して設定することがより好ましい。例えば、正極活物質にチタン酸リチウムを用いた場合には、負極活物質中における上記のモル比(Li/SiO)を4.0〜4.7の範囲とすることがより好ましい。また、正極活物質にリチウムマンガン酸化物を用いた場合には、負極活物質中における上記のモル比(Li/SiO)を3.9〜4.9の範囲とすることがより好ましい。このように、負極活物質のモル比(Li/SiO)を、正極活物質の種類に応じた範囲で設定することにより、上述したような、初期抵抗の上昇を抑制して充電異常等を防止できる効果や、高温環境下で長期間にわたる保存・保管、又は使用した際も十分な放電容量が得られ、長期保存特性が向上する効果がより顕著に得られる。
負極20中の負極活物質の含有量は、非水電解質二次電池1に要求される放電容量等を勘案して決定され、例えば、50質量%以上が好ましく、60〜80質量%がより好ましい。
負極20において、上記材料からなる負極活物質の含有量が、上記好ましい範囲の下限値以上であれば、充分な放電容量が得られやすく、また、上限値以下であれば、負極20を成形するのが容易になる。
負極20は、導電助剤(以下、負極20に用いられる導電助剤を「負極導電助剤」ということがある)を含有してもよい。負極導電助剤は、正極導電助剤と同様のものである。
負極20は、バインダ(以下、負極20に用いられるバインダを「負極バインダ」ということがある)を含有してもよい。
負極バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリイミド(PI)、ポリイミドアミド(PAI)等が挙げられ、中でも、ポリアクリル酸が好ましく、架橋型のポリアクリル酸がより好ましい。
また、負極バインダは、上記のうちの1種を単独で用いてもよく、あるいは、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、負極バインダにポリアクリル酸を用いる場合には、ポリアクリル酸を、予め、pH3〜10に調整しておくことが好ましい。この場合のpHの調整は、例えば、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物や水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属水酸化物を添加することで行うことができる。
負極20中の負極バインダの含有量は、例えば1〜20質量%とされる。
なお、負極20の大きさ、厚さについては、正極10の大きさ、厚さと同様である。
また、図1に示す非水電解質二次電池1においては、負極20の表面、即ち、負極20と後述のセパレータ30との間に、リチウムフォイル60を設けている。
負極20を製造する方法としては、例えば、負極活物質として上記材料を用い、必要に応じて黒鉛等の負極導電助剤、及び/又は、負極バインダとを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤を任意の形状に加圧成形する方法が挙げられる。
この場合の加圧成形時の圧力は、負極導電助剤の種類等を勘案して決定され、例えば0.2〜5ton/cmとすることができる。
また、負極集電体24には、正極集電体14と同様の材料を用いることができる。
[セパレータ]
セパレータ30は、正極10と負極20との間に介在され、大きなイオン透過度を有するとともに耐熱性に優れ、かつ、所定の機械的強度を有する絶縁膜が用いられる。
セパレータ30としては、従来から非水電解質二次電池のセパレータに用いられ、上記特性を満たす材質からなるものを何ら制限無く適用でき、例えば、アルカリガラス、ホウ珪酸ガラス、石英ガラス、鉛ガラス等のガラス、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミド、ポリイミド(PI)、アラミド、セルロース、フッ素樹脂、セラミックス等の樹脂からなる不織布や繊維等が挙げられる。セパレータ30としては、上記の中でも、ガラス繊維からなる不織布を用いることがより好ましい。ガラス繊維は、機械強度に優れるとともに、大きなイオン透過度を有するため、内部抵抗を低減して放電容量の向上を図ることが可能となる。
セパレータ30の厚さは、非水電解質二次電池1の大きさや、セパレータ30の材質等を勘案して決定され、例えば5〜300μm程度とすることができる。
[負極と正極との容量バランス]
本実施形態の非水電解質二次電池1においては、負極20の容量と正極10の容量とから表される容量バランス{負極容量(mAh)/正極容量(mAh)}が、1.56〜2.51の範囲であることがより好ましい。
負極20と正極10との容量バランスを上記範囲とすることで、負極側の容量に所定の余裕を確保しておくことができ、例えば、電池反応による負極活物質の分解が早く進んだ場合であっても、一定以上の負極容量を確保することが可能となる。従って、仮に、非水電解質二次電池1を過酷な高温多湿環境下において、長期にわたって保存・保管するか、あるいは長期使用した場合であっても放電容量の低下が抑制され、長期保存特性が向上する効果が得られる。
負極20と正極10との容量バランスが1.56未満だと、例えば、高温環境下で長期にわたって保存・保管、又は使用した際の容量維持率が低下するおそれがある。一方、負極20と正極10との容量バランスが2.51を超えると、十分な放電容量が得られ難くなる。
本実施形態の非水電解質二次電池1においては、電解液50の組成を上記のように適正化するとともに、負極20として、少なくとも、表面の少なくとも一部に炭素が被覆されたSiO(0≦X<2)からなる負極活物質、あるいは、Li−Al合金からなる負極活物質を含むものを用い、さらに、負極20と正極10との容量バランスを上記の適正範囲で構成することにより、より優れた放電特性が得られる。これにより、非水電解質二次電池1を、例えば、過酷な高温多湿環境下において、長期にわたって保存・保管するか、あるいは長期使用した場合であっても十分な放電容量が確保でき、長期保存特性に優れたものとなる。
<非水電解質二次電池のその他の形態>
本実施形態においては、非水電解質二次電池の一実施形態として、ステンレス鋼製の正極缶と負極缶とを用い、これらをかしめた収納容器を備えるコイン型構造の非水電解質二次電池を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、セラミックス製の容器本体の開口部が、金属製の封口部材を用いたシーム溶接等の加熱処理によって、セラミックス製の蓋体で封止された構造の非水電解質二次電池であってもよい。
さらに、本発明に係る構成は、例えば、リチウムイオンキャパシタ等の電気化学セルにも応用可能である。
<非水電解質二次電池の用途>
本実施形態の非水電解質二次電池1は、上述したように、例えば、過酷な温度・湿度環境下で、長期にわたって保存・保管、又は使用した場合においても十分な放電容量を確保することができ、長期保存特性に優れたものなので、例えば、電圧値2〜3Vのバックアップ用の電源に好適に用いられる。
<作用効果>
以上説明したように、本発明の実施形態である非水電解質二次電池1によれば、上述のように、電解液50として、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)及びジメトキシエタン(DME)を、体積比で{PC:EC:DME}={0.5〜1.5:0.5〜1.5:1〜3}の範囲で含有する有機溶媒を用いるとともに、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)又はリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)の少なくとも何れかを合計1.4〜2.0(mol/L)で含有する支持塩を用い、且つ、負極活物質として、SiO(0≦X<2)、あるいは、Li−Al合金を含む負極20を用いている。
このように、電解液に用いられる有機溶媒及び支持塩の組成を適正化するとともに、負極における負極活物質に上記材料を用いることで、非水電解質二次電池1を長期にわたって保存・保管、又は使用した際、仮に、電解液の揮発や電池内への水分の浸入が生じた場合でも、リチウムが劣化するのを抑制できるので、十分な放電容量が得られる。
従って、長期保存特性に優れ、長期信頼性を有する非水電解質二次電池を提供することが可能となる。
次に、実施例及び比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお本発明は、本実施例によってその範囲が制限されるものではなく、本発明に係る非水電解質二次電池は、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
<電解液の調整及び非水電解質二次電池の作製>
[実験例1〜8]
実験例1〜8においては、電気化学セルとして、図1に示すようなコイン型の非水電解質二次電池を作製した。なお、これらの実験例では、下記表1に示す組成の電解液を調整し、さらに、正極活物質としてLi1.14Co0.06Mn1.80、負極活物質として表面全体が炭素で被覆されたSiOを用いて非水電解質二次電池を作製した。本実験例では、図1に示す断面図において、外形が6.8mm、厚さが2.1mmのコイン型(621サイズ)の非水電解質二次電池(リチウム二次電池)を作製した。
(電解液の調整)
まず、下記表1に示す配合比率(体積%)に従って有機溶媒を調整し、この有機溶媒に支持塩を溶解させることで電解液50を調整した。この際、有機溶媒として、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、及び、ジメトキシエタン(DME)を、体積比で{PC:EC:DME}={1:1:2}の割合で混合することで、混合溶媒を調整した。次いで、得られた混合溶媒に、支持塩として、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)を、下記表1中に示した各々異なる濃度で溶解させることで電解液50を得た。
(電池の作製)
正極10として、まず、市販のリチウムマンガン酸化物(Li1.14Co0.06Mn1.80)に、導電助剤としてグラファイトを、結着剤としてポリアクリル酸を、リチウムマンガン酸化物:グラファイト:ポリアクリル酸=90:8:2(質量比)の割合で混合して正極合剤とした。
次いで、得られた正極合剤98.6mgを、2ton/cmの加圧力で加圧し、直径8.9mmの円盤形ペレットに加圧成形した。
次に、得られたペレット(正極10)を、ステンレス鋼(NAS64:t=0.20mm)製の正極缶12の内面に、炭素を含む導電性樹脂接着剤を用いて接着し、これらを一体化して正極ユニットを得た。その後、この正極ユニットを、大気中で120℃・11時間の条件で減圧加熱乾燥した。
そして、正極ユニットにおける正極缶12の開口部12aの内側面にシール剤を塗布した。
次に、負極20として、まず、表面全体に炭素(C)が形成されたSiO粉末を準備し、これを負極活物質とした。そして、この負極活物質に、導電剤としてグラファイトを、結着剤としてポリアクリル酸を、それぞれ54:44:2(質量比)の割合で混合して負極合剤とした。
次いで、得られた負極合剤15.1mgを、2ton/cm加圧力で加圧成形し、直径6.7mmの円盤形ペレットに加圧成形した。
次に、得られたペレット(負極20)を、ステンレス鋼(SUS304−BA:t=0.20mm)製の負極缶22の内面に、炭素を導電性フィラーとする導電性樹脂接着剤を用いて接着し、これらを一体化して負極ユニットを得た。その後、この負極ユニットを、大気中で160℃・11時間の条件で減圧加熱乾燥した。
そして、ペレット状の負極20上に、さらに、直径6.1mm、厚さ0.38mmに打ち抜いたリチウムフォイル60を圧着し、リチウム−負極積層電極とした。
上述したように、本実施例においては、図1中に示す正極集電体14及び負極集電体24を設けず、正極缶12に正極集電体の機能を持たせるとともに、負極缶22に負極集電体の機能を持たせて、非水電解質二次電池を作製した。
また、上記各電極の作製にあたっては、負極20の容量と正極10の容量とから表される容量バランス{負極容量(mAh)/正極容量(mAh)}を、下記表1に示す値となるように調整した。
次に、ガラス繊維からなる不織布を乾燥させた後、直径7mmの円盤型に打ち抜いてセパレータ30とした。そして、このセパレータ30を、負極20上に圧着されたリチウムフォイル60上に載置し、負極缶22の開口部に、ポリプロピレン製のガスケット40を配置した。
次に、正極缶12及び負極缶22に、上記手順で調整した電解液50を、電池1個あたりの合計で40μL充填した。
次に、セパレータ30が正極10に当接するように、負極ユニットを正極ユニットにかしめた。そして、正極缶12の開口部を嵌合することで正極缶12と負極缶14とを密封した後、25℃で7日間静置して、実施例1〜8の非水電解質二次電池を得た。
これら、各実験例の非水電解質二次電池は、上記のように、電解液に含まれる支持塩の量がそれぞれ異なるものであり、また、そのサンプル数(作製数)nを、下記表1に示す数量とした。
Figure 0006754623
[実験例9,10]
実験例9,10においては、電気化学セルとして、下記表2に示すように、電解液50に含まれる支持塩をLiTFSIとして支持塩濃度を変化させるとともに、容量バランスを下記表2中に示す値に調整し、さらに、図1に示す断面図において、外形が9.5mm、厚さが2.0mmのコイン型(920サイズ)として構成した点を除き、実施例1〜8と同様の条件で非水電解質二次電池(リチウム二次電池)を作製した。この際、各サンプル数(作製数)nを、下記表2に示す数量とした。
Figure 0006754623
<評価方法>
上記手順で得られた実験例1〜10の非水電解質二次電池に対して、以下に説明するような評価試験を実施した。
[初期電気特性の評価]
(放電容量試験)
初期電気特性の評価においては、実験例1〜10の非水電解質二次電池の初期の放電容量試験を行った。具体的には、上記各実験例の非水電解質二次電池を(各実験例においてn=3)、25℃の環境下、100kΩの抵抗を電流制限用抵抗として用い、電圧2.0Vになるまで放電し、次いで、25℃の環境下、470kΩの定抵抗を用いて、電圧3.1Vで96時間印加した。その後、25℃の環境下、100kΩの抵抗を電流制限用抵抗として用いて電圧2.0Vになるまで放電した際の容量を測定し、この値を常温下の容量(初期容量:mAh)とした。
そして、電解液中に含まれる支持塩のモル濃度と、初期容量との関係を図2(a)のグラフに示すとともに、初期容量と初期電圧との関係である初期放電特性を図2(b)のグラフに示した。ここで、図2(a),(b)のグラフにおいては、実験例1〜8のみのデータを示した。また、図2(a),(b)においては、実験例1〜8のサンプル数(作製数)n=27〜35の中からランダムにn=3で選択したうえで、図2(a)には3点(n=3)のデータをプロットし、図2(b)には3点(n=3)中の中央値となる1点(n=1)のデータを代表サンプルとしてプロットした。
また、上記の実験例1〜8のデータを表1中に示すととともに、実験例9,10のデータを表2中に示した。
[長期保存特性(高温高湿環境)の評価]
(放電容量試験及び容量維持率試験)
上記の各初期特性の測定が完了した実験例1〜10の非水電解質二次電池に対して、以下に説明するような高温高湿保存試験(HHTS)を実施した。具体的には、まず、実験例1〜8の非水電解質二次電池を、恒湿恒温槽を用いて、80℃、90%RHの高温高湿環境下で80日間保存した。
そして、上記条件の高温高湿に曝された非水電解質二次電池について、途中、20日、40日及び60日の段階も含み、80日の期間で電池を保存した後の放電容量を測定し、初期容量に対する容量維持率を評価した。この際、25℃の環境下において、100kΩの抵抗を電流制限用抵抗として用い、電圧2.0Vになるまで放電し、次いで、25℃の環境下、470kΩの定抵抗を用いて、電圧3.1Vで96時間印加した。その後、25℃の環境下、100kΩの抵抗を電流制限用抵抗として用いて電圧2.0Vになるまで放電した際の容量を測定し、この値を高温高湿環境下に保存後の容量(試験後の容量:mAh)として図3(a)のグラフに示した。また、この際の各実験例の非水電解質二次電池の容量維持率を図3(b)のグラフに示した。さらに、電解液に含まれる支持塩のモル濃度と、80日間で保存した後の容量との関係を図3(c)のグラフに示した。ここで、図3(a)〜(c)のグラフにおいては、実験例1〜8のみのデータを示した。また、図3(a)〜(c)においては、実験例1〜8のサンプル数(作製数)n=27〜35の中からランダムにn=3で選択したうえで、図3(a),(b)には3点(n=3)のデータの平均値をプロットし、図3(c)には3点(n=3)のデータ及びその平均値の両方をプロットした。また、図3(b)においては、次式{(n=3の保存後の平均容量)/(n=3の初期の平均容量)}から算出した容量維持率をプロットし、図3(c)においては、3点(n=3)のデータの実値を「○」、それらの平均値を「△」でプロットした。
また、上記の実験例1〜8のデータを表1中に示すととともに、実験例9,10のデータを表2中に示した。
なお、本実施例における容量維持率試験では、常温下(25℃)初期容量に対する試験後容量の変化(減少状態)をもって、高温高湿環境下における容量維持率の指標とした。
[評価結果]
図2(a),(b)のグラフ及び表2に示すように、電解液中に含まれる支持塩のモル濃度を変化させた実験例1〜8においては、初期の容量特性については大きな差は見られなかった。
しかしながら、図3(a),(b),(c)のグラフ中に示すように、高温高湿環境下において長期保存した後の非水電解質二次電池は、電解液中に含まれる支持塩のモル濃度に応じて、その保存期間によって容量及び容量維持率に大きな差が生じていることがわかる。
即ち、電解液中に含まれる支持塩のモル濃度が0.6〜1.2(mol/L)の範囲とされた実験例1〜4の非水電解質二次電池は、高温高湿環境下において40日間保存した後から容量及び容量維持率が大きく下がり始めていることがわかる。
そして、図3(a)に示すように、80日間保存した後の実験例1〜4の非水電解質二次電池は、全ての例において容量が0.7(mAh)以下となり、実験例1,2においては容量がほぼ0(mAh)に近いことがわかる。また、図3(b)に示すように、80日間保存した後の実験例1〜4の非水電解質二次電池は、全ての例において容量維持率が20%以下であり、実験例1,2においては容量維持率がほぼ0%(1%弱)である。
一方、有機溶媒の成分を最適化したうえで、支持塩の含有量(モル濃度)を1.4〜2.0(mol/L)の範囲に調整した電解液を使用し、さらに、正極活物質としてリチウムマンガン酸化物であるLi1.14Co0.06Mn1.80を含む正極、及び、負極活物質として表面が炭素で被覆されたSiOを含む負極が備えられた実験例5〜8の非水電解質二次電池は、実験例1〜4に比べて、高温高湿環境下において60〜80日間保存した後の容量が大きく、また、容量維持率に優れていることが確認できた。具体的には、図3(a),(b)に示すように、80日間保存した後の実験例5〜8の非水電解質二次電池においては、容量が1.754〜2.278(mAh)であるとともに、容量維持率が51〜68%であり、実験例1〜4に比べて長期保存特性に優れていることがわかる。
また、図3(c)に示すように、特に、電解液中に含まれる支持塩のモル濃度が1.6(mol/L)以上である実験例6〜8においては、同条件で作製した各サンプル間(n=3)におけるばらつきも小さく、より安定して優れた長期保存特性が得られることがわかる。ここで、図3(c)に示すように、支持塩のモル濃度が1.0〜1.2(mol/L)である実験例3,4においても、サンプルによっては、高温高湿環境下に保存した後の容量が1.5〜1.8(mAh)前後と、高めの容量が得られるケースもある。しかしながら、これら実験例3,4においては、高温高湿環境下に保存した後の容量がほぼ0(mAh)に近くなるサンプルも存在し、長期保存特性が不安定であることがグラフ中から確認できる。一方、図3(c)のグラフ中からは、高温高湿環境下に保存した後の容量が、全てのサンプルで安定して1(mAh)以上で得られるのは、実験例5〜8のように、電解液中の支持塩のモル濃度が1.4(mol/L)以上の場合であることが確認できる。
ここで、図4(a)は、電解液中に含まれる支持塩のモル濃度を変化させた際の、高温高湿環境下において80日間にわたって保存した後の容量維持率の変化を示すグラフであり、図4(b)は、その容量の変化を示すグラフである。なお、図4(a),(b)のグラフは、実験例1〜8のサンプル数(作製数)n=27〜35の中からランダムにn=3で選択した、図3(a)〜(c)と同じサンプルのデータを示しており、図4(a)においては容量維持率として3点(n=3)のデータの平均値をプロットし、図4(b)においては、容量として3点(n=3)のデータの実値をプロットしている。
図4(a)のグラフ中に示すように、高温高湿環境下で保存した後の非水電解質二次電池の容量維持率は、電解液中に含まれる支持塩のモル濃度が1.4(mol/L)とされた実験例5においては51%であり、支持塩のモル濃度が1.2(mol/L)とされた実験例4が20%であるのに比べ、大幅に向上しているのがわかる。また、支持塩のモル濃度が1.6(mol/L)とされた実験例6においては、容量維持率が59%と非常に高くなっており、さらに、支持塩のモル濃度が1.8(mol/L)とされた実験例7及び2.0(mol/L)とされた実験例8においても、安定して高い容量維持率を示している。
また、図4(b)のグラフ中に示すように、電解液中に含まれる支持塩のモル濃度が0.6〜0.8(mol/L)とされた実験例1,2においては、高温高湿環境下において80日間にわたって保存した後の容量はほぼ0(mAh)であった。また、電解液中に含まれる支持塩のモル濃度が1.0〜1.2(mol/L)とされた実験例3,4においては、高温高湿環境下において80日間にわたって保存した後の容量が比較的高めであるサンプルも一部確認できたものの、容量がほぼ0(mAh)となったサンプルもあり、ばらつきが大きかった。
一方、図4(b)のグラフ中に示すように、電解液中に含まれる支持塩のモル濃度が1.4(mol/L)とされた実験例5においては、高温高湿環境下において80日間にわたって保存した後の容量が、全てのサンプルで1.0(mAh)以上が確保されている。また、電解液中に含まれる支持塩のモル濃度が1.6〜2.0(mol/L)とされた実験例6〜8においては、高温高湿環境下において80日間にわたって保存した後の容量が、全てのサンプルで1.9(mAh)以上が確保されており、ばらつきも小さいことがわかる。
なお、表2中には、電解液50中に含まれる支持塩にLiTFSIを用い、その支持塩濃度を変化させた実験例9,10の評価結果を示している。表2においては、実験例9,10のサンプル数(作製数:n=3000又はn=150)の中からランダムにn=6で選択し、容量については6点(n=6)のデータの実値及び平均値を示し、容量維持率については6点のデータの平均値を示している。
表2に示すように、電解液50中に含まれる支持塩にLiTFSIを用いた場合においても、支持塩にLiFSIを用いた場合と同様、電解液中の支持塩のモル濃度が1.0(mol/L)である実験例9に比べ、支持塩のモル濃度が1.4(mol/L)である実験例10は、高温高湿環境下において80日間にわたって保存した後の容量が3.687(mAh)、容量維持率が57%と、長期保存特性に優れていることが明らかである。
以上説明した実施例の結果より、本発明で規定する組成を有する電解液が用いられるとともに、負極活物質としてSiO(0≦X<2)を含む負極を用いた構成を採用することにより、長期にわたって使用、又は保存・保管するか、あるいは長期使用した場合であっても放電容量の低下が抑制され、優れた長期保存特性(長期信頼性)を有する非水電解質二次電池が得られることが明らかである。
本発明の非水電解質二次電池によれば、電解液に用いられる有機溶媒及び支持塩の組成を適正化するとともに、負極が、少なくとも、SiO(0≦X<2)からなる負極活物質又はLi−Al合金からなる負極活物質の何れかを含むことで、長期にわたって使用、又は保存・保管した場合であっても十分な放電容量を維持でき、優れた長期保存特性が得られる。従って、本発明を、例えば、各種の電子機器等の分野において用いられる非水電解質二次電池に適用し、特に、比較的高めの雰囲気温度とされた環境での使用に供することで、各種電子機器類等の性能向上にも貢献できるものである。
1…非水電解質二次電池
2…収納容器
10…正極
12…正極缶
12a…開口部
14…正極集電体
20…負極
22…負極缶
22a…先端部
24…負極集電体
30…セパレータ
40…ガスケット
41…環状溝
50…電解液
60…リチウムフォイル

Claims (5)

  1. 正極活物質としてリチウムマンガン酸化物を含む正極と、
    負極活物質として、SiO(0X<2)を含む負極と、
    有機溶媒として、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)及びジメトキシエタン(DME)を、体積比で{PC:EC:DME}={0.5〜1.5:0.5〜1.5:1〜3}の範囲で含有し、且つ、支持塩として、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)を単独で1.4〜2.0(mol/L)で含有する電解液と、を含むことを特徴とする非水電解質二次電池。
  2. 前記正極は、前記正極活物質に用いられるリチウムマンガン酸化物として、少なくともLi1+xCoMn2−x−y(0≦x≦0.33、0<y≦0.2)を含むことを特徴とする請求項1に記載の非水電解質二次電池。
  3. 前記負極は、前記負極活物質が、表面の少なくとも一部が炭素で被覆されたSiO(0X<2)を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の非水電解質二次電池。
  4. 前記負極活物質に含まれる、表面の少なくとも一部が炭素で被覆されたSiO(0X<2)の粒子径(D50)が、0.1〜30μmであることを特徴とする請求項3に記載の非水電解質二次電池。
  5. 前記負極の容量と前記正極の容量とから表される容量バランス{負極容量(mAh)/正極容量(mAh)}が、1.56〜2.51の範囲であることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の非水電解質二次電池。
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