特許文献3の支持部材(取付具10)は野縁受けを幅方向に挟み込みながら、吊りボルト下端部のハンガーを保持すると同時に、天井ブレースにも接続されるよう、図6に示すように野縁受けの幅方向に2分割された形態をしている。分割された部品の内、天井ブレースが接続される第一部材20の野縁受けを挟持する部分の垂直部21は鉛直面をなし、その下端部に、野縁に接続される水平部23が連続して形成されている。
垂直部21の幅方向両側からはハンガーを野縁受けの軸方向に挟み込む側面垂直部22が連続して形成され、側面垂直部22の下に野縁受けが納まる関係で、側面垂直部22の下側は切り欠かれているため、垂直部21の下側は側面垂直部22が連ならない形状になっている。
垂直部21の上側の部分には支持部材を構成する第二部材30の上端部が重なって接合されるため、図6に示すように野縁が接続される水平部23から野縁軸方向の力fを受けたとき、垂直部21の下側の第二部材30との接合部以下の区間が軸方向に垂直な力として負担することになる。図6に示す力fが矢印と逆向きでも同じ状況になる。
このとき、垂直部21の下側の部分は野縁軸方向の力を面外方向に受け、垂直部21の下側部分と上側部分との境界に力が集中するため、垂直部21の下側部分が面外方向に変形し易い状態にある。また垂直部21の下側の区間は第二部材30との接合部の回りに作用する曲げモーメントを負担するため、曲げモーメントが最大になる第二部材30との接合部が構造上の弱点になり易く、この接合部に曲げが生じ易くなる。
本発明は上記背景より、野縁軸方向の力に対して変形が生じにくい形態の天井ブレース用支持部材を提案するものである。
請求項1に記載の発明の天井ブレース用支持部材は、上部の躯体から懸垂する吊りボルトの下端部に接続され、野縁を支持する野縁受けを支持するハンガーを保持しながら、前記上部の躯体と前記吊りボルトの下端部との間に架設される天井ブレースを受ける支持部材であり、
前記天井ブレースと前記野縁が接続される主構成材と、この主構成材と共に前記ハンガーを前記野縁受けの幅方向に挟み込みながら、前記主構成材に接続される補助材を備え、
前記主構成材が前記補助材に重なって接合される垂直部と、この垂直部に連続し、前記垂直部から下方へかけて前記補助材から遠ざかる向きに傾斜した傾斜部と、この傾斜部に連続し、前記野縁に重なって接合される水平部を有することを構成要件とする。
特許文献3を示す図6と本発明を示す図4との対比から、支持部材6は特許文献3の取付具10に相当し、主構成材61と補助材62はそれぞれ特許文献3の第一部材20と第二部材30に相当する。ハンガー2は図2、図3に示すように野縁受け4を支持しながら、野縁受け4をその幅方向に挟持する形状をし、野縁受け4を支持した状態で吊りボルト1の下端部に接続されることで、野縁受け4を吊りボルト1に支持させる。天井ブレース5は上部の躯体と吊りボルト1の下端部との間に架設されるが、天井ブレース5の下端部は吊りボルト1の下端部に接続されたハンガー2を保持する支持部材6の主構成材61に接続(接合)される。
主構成材61と補助材62は野縁受け4の幅方向に互いに対向した状態で互いに接合されることによりハンガー2に支持された野縁受け4を挟持(保持)すると同時に、野縁受け4に支持される。主構成材61は特許文献3の第一部材20と同様、野縁受け4の幅方向に主構成材61に対向する補助材62に接合される垂直部61aと、野縁3に重なって接合される水平部61cを有し、垂直部61aと水平部61cをつなぐ部分が鉛直面と水平面に対して傾斜した傾斜部61bになる。
補助材62は詳しくは特許文献3の第二部材30と同様、図2、図3に示すように野縁受け4の幅方向に主構成材61に対向し、主構成材61の垂直部61aと共に野縁受け4を挟持し得る垂直部62aと、垂直部62aの上端部から主構成材61側へ張り出す張出部62bと、張出部62bの先端部から立ち上がり、主構成材61の垂直部61aに重なる立上り部62cと、垂直部62aの下端部から野縁3の軸方向に、野縁受け4に衝突しない側へ張り出す水平部62dを持つ。主構成材61の垂直部61aはこれに重なる補助材62の立上り部62cに接合されることで、補助材62の垂直部62aと共に野縁受け4を幅方向に挟持し、保持する。
主構成材61は水平部61cにおいて例えば図2に示すように野縁3の幅方向両側面に重なって接合されることで、野縁3を支持し、野縁3を吊りボルト1に支持させる。野縁3は補助材62の水平部62dにおいても支持され、主構成材61と補助材62の両水平部61c、62dの2箇所で支持されるが、補助材62の水平部62dには接合されないことで、野縁3の軸方向の熱伸縮による応力の発生が回避されている。
主構成材61の垂直部61aと水平部61c間の傾斜部61bが鉛直面と水平面に対して傾斜することで、傾斜部61bが負担する傾斜部61bの軸方向の力は鉛直方向の成分と水平方向の成分に分けられる。このことは、主構成材61の傾斜部61bが野縁3軸方向の水平方向の力と鉛直方向の力を負担できることを意味するため、傾斜部61bは水平部61cから伝達される野縁3軸方向の力である水平方向の力を傾斜部61bの軸方向の力として負担できる状態にある。「傾斜部61bの軸方向」は傾斜部61bの傾斜方向(傾斜面に沿った方向)を指す。
主構成材61の傾斜部61b自体が野縁3軸方向の力を負担できることで、傾斜部61bと垂直部61aの境界線(交線)61h部分に野縁3軸方向の力を集中させることがなくなり、垂直部61aが野縁3軸方向の力を受けることによる面外方向への変形に対する安定性が向上する。詳しく言えば、図4に示すように野縁3に軸方向に水平力fが生じたとき、傾斜部61b軸方向と野縁3軸方向のなす角度をθとすれば、傾斜部61bはf/cosθの軸方向力を負担し、垂直部61aにはf・tanθの反力が生じることで、野縁3の水平力fを処理することができ、傾斜部61bと垂直部61aの境界に面外方向の力を集中させることがなくなる。傾斜部61bに生じるf/cosθの水平成分fは主構成材61に接合される補助材62が負担する。図4に示す力fが矢印と逆向きのときには、傾斜部61bと垂直部61aに生じる力の向きは逆になる。
図2、図3に示すように主構成材61の垂直部61aが補助材62の立上り部62cに接合されたとき、前記のように主構成材61の垂直部61aと補助材62の垂直部62aが野縁受け4を幅方向に挟持する。併せて主構成材61の水平部61cが野縁3に接合されることで、主構成材61の傾斜部61bと補助材62、及び主構成材61の水平部61cと野縁受け4間にある野縁3の区間は野縁受け4を軸方向に見たときに形態上(見かけ上)、トラスを形成する。結果的に野縁3に作用する軸方向の力fを傾斜部61bが軸方向の力として負担することが可能になっている。
図4中、主構成材61の傾斜部61bと垂直部61aの境界(交点)部分(図1の境界線61h部分)では、傾斜部61bの軸方向力と垂直部61aの軸方向力が、または傾斜部61bの軸方向力と垂直部61aの軸方向力及び補助材62の高さ方向の力の合力が釣り合いを保とうとする。このため、上記の通り、主構成材61の傾斜部61bと垂直部61aの境界において傾斜部61bがf/cosθの軸方向力を負担したときに、垂直部61aにはf・tanθの反力、または垂直部61aと補助材62の高さ方向の力を合わせてf・tanθの反力が生じることになる。傾斜部61bの軸方向力f/cosθの水平成分fは補助材62の反力と釣り合う。
傾斜部61bが上記のf/cosθの軸方向力を負担し、垂直部61a等と釣り合いを保とうとするとき、水平部61cからの水平方向の力を受けて傾斜部61bが図1に示す垂直部61aとの間の境界線61h、及び水平部61cとの間の境界線61iの回りに相対的な回転を生じる可能性があり、水平部61cと垂直部61aが野縁3軸方向に相対変位する可能性がある。
このような状況に対しては、少なくとも傾斜部61bと垂直部61aとの間、及び傾斜部61bと水平部61cとの間に、それぞれの境界線61h、61i回りの相対的な回転を生じにくくするリブ61gを形成すること(請求項2)が有効である。「相対的な回転を生じにくくする」とは、相対的な回転変形(曲げ変形)に対して補剛する、あるいは曲げ剛性を付与する、の意味である。
傾斜部61bと垂直部61aとの間、及び傾斜部61bと水平部61cとの間へのリブ61gの形成により境界線61h、61iの回りの傾斜部61bの曲げ剛性が上昇する結果、傾斜部61bが垂直部61aに対して回転変形しにくくなり、水平部61cが傾斜部61bに対しても回転変形しにくくなるため、水平部61cと垂直部61aが野縁3軸方向に相対変位する可能性と相対的に回転変形する可能性が低下する。
「少なくとも」とは、リブ61gがそれぞれの境界線61h、61iを跨いだ部分にのみ形成される場合の他、傾斜部61bと垂直部61aとの間の境界線61h部分から傾斜部61bと水平部61cとの間の境界線61i部分にまで、傾斜部61bの軸方向に連続して、または断続的に形成される場合があることを言い、傾斜部61bの軸方向にもリブ61gが形成されることを言う。傾斜部61bの軸方向にもリブ61gが形成されることで、傾斜部61b自体が軸方向圧縮力を負担するときの座屈に対する安定性も向上する。リブ61gはまた、境界線61h部分から連続し、垂直部61aに形成される場合の他、境界線61i部分から連続し、水平部61cに形成される場合もある。
リブ61gの形成方法は問われないが、例えば傾斜部61bの裏面(野縁3側の面)側、もしくは表面(上面側の面)側からプレス加工等をし、傾斜部61bの表面側、もしくは裏面側へ突出する突起を形成する方法、傾斜部61bの表面側や裏面側に棒状(線状)の別部品を溶接、または接着する方法等が考えられる。
このように少なくとも傾斜部61bと垂直部61aとの間、及び傾斜部61bと水平部61cとの間にリブ61gを形成した場合(請求項2)には、支持部材6の使用上、境界線61h、61i(交線)が傾斜部61bと水平部61cがそれぞれ垂直部61aと傾斜部61bに対し、境界線61h、61iの回りに容易に回転できない剛な状態にあることになる。このことは反面、主構成材61の水平部61cが受ける野縁3軸方向の力(水平力)が傾斜部61bと垂直部61aに曲げモーメントとして伝達されることでもある。
請求項2では境界線61h、61i部分に、または境界線61h、61i部分と傾斜部61bにリブ61gが形成されることで、これらの部分は曲げモーメントによる曲げ変形に対して補剛された状態にある。但し、水平部61cからの野縁3軸方向の力に伴い、垂直部61aに曲げモーメントが伝達されるため、垂直部61aをも曲げ変形に対して補剛する必要が生じ得、前記のように境界線61hのリブ61gを垂直部61aにまで延長させ、垂直部61aの高さ方向に連続的に形成することを必要とすることも想定される。
一方、請求項2とは逆に、傾斜部61bと垂直部61aを両者間の境界線61h(水平軸)の回りに互いに回転可能な状態にすれば(請求項3)、水平部61cが受ける野縁3軸方向の力に起因して垂直部61aに曲げモーメントを生じさせることを回避することが可能になるため、境界線61hのリブ61gを垂直部61aにまで延長させる必要がなくなり、主構成材61の形状自体を簡素化することも可能になる。「傾斜部61bと垂直部61aが境界線61hの回りに互いに回転可能な状態」は、傾斜部61bと垂直部61aがヒンジやそれに類する部品を介して連結されるか、水平部61cからの想定される野縁3軸方向の力が実質的に傾斜部61bから垂直部61aに伝達されない状態に連結されることで得られる。
この場合、主構成材61の水平部61cが受ける野縁3軸方向の力が傾斜部61bと垂直部61a、及び交線に曲げモーメントが生じさせることがないため、境界線61hを含め、垂直部61aを曲げモーメントの負担から解放させることが可能であり、垂直部61aを曲げモーメントに対して補剛する必要がなくなる。
前記のように野縁受け4は支持部材6を構成する主構成材61と補助材62に野縁受け4の幅方向に挟持されるが、このことは詳しくは、図1、図4に示すように主構成材61の垂直部61aの一部が野縁受け4の高さ方向の一部区間に重なり、野縁受け4の幅方向(野縁3軸方向)片側に係合し得る状態にある(請求項4)、と言い換えられる。「係合し得る状態」とは、垂直部61aが野縁受け4に接触した状態にあることと、垂直部61aが傾斜部61bからの軸方向力を受けた直後に野縁受け4に接触できるよう、僅かな隙間が形成されていることを含む。図面では垂直部61aの下方寄りの幅方向両側に屈曲して形成され、垂直部61aの面に垂直な面をなすフランジ61eにおいて野縁受け4にその幅方向に係合させている。
この場合、垂直部61aの一部が野縁受け4の幅方向に係合することで、野縁受け4を主構成材61、もしくは補助材62を含む支持部材6に組み合わせるときに、野縁受け4を主構成材61に対して野縁受け4の幅方向に位置決めし易くなる利点が得られる。
前記のように主構成材61の傾斜部61bがその軸方向の力(圧縮力と引張力)を負担するとき、その力の水平成分は垂直部61aに伝達され、垂直部61aから補助材62に流れる。ここで、垂直部61aの一部が野縁受け4の幅方向(野縁3軸方向)片側に係合し得る状態にあれば(請求項4)、傾斜部61bの軸方向圧縮力の水平成分が直接、野縁受け4にも伝達されるため、ハンガー2を介して吊りボルト1に伝達することができる。
結果的に主構成材61の垂直部61aは野縁受け4の幅方向の水平力に対して補強される効果も得られるため、垂直部61aの曲げ変形に対する安全性が向上する。また垂直部61aから野縁受け4への力の伝達の結果、主構成材61の負担が軽減され、主構成材61の垂直部61aが傾斜部61bの軸方向圧縮力の水平成分を負担することによる変形を回避することが可能になる。
主構成材61の垂直部61aの幅方向両側(野縁受け4の長さ方向両側)には、ハンガー2を野縁受け4の軸方向に挟み込んで対向し、天井ブレース5が接合される側面垂直部61f、61fが形成されるが(請求項5)、主構成材61が野縁受け4の軸方向の力を受けたときに側面垂直部61fが垂直部61aに対して曲げ変形、あるいは捩り変形を起こす可能性がある。側面垂直部61fが一旦、垂直部61aに対して変形すれば、この変形が進行し、側面垂直部61fに接合された天井ブレース5からの軸方向引張力により対向する側面垂直部61f、61f間の距離が増大し、天井ブレース5と吊りボルト1がトラスを形成する状態が失われる可能性が高まる。
そこで、図1に示すように野縁受け4の軸方向に対向する側面垂直部61f、61fと垂直部61aの頂部に跨り、水平板63を形成するか、もしくは一体化させることで(請求項5)、側面垂直部61f、61fと垂直部61aの一体性を強め、側面垂直部61f、61fの剛性を高めることができる。結果として側面垂直部61f、61fの変形を抑制し、天井ブレース5と吊りボルト1がトラスを形成した状態を維持し易くなる。水平板63は例えば側面垂直部61f、61fと垂直部61aの頂部に鉛直方向に嵌合するか、溶接や接着される等により側面垂直部61f、61fと垂直部61aに一体化する、または一体的に挙動可能に一体性を確保する。
支持部材を構成し、天井ブレースと野縁が接続される主構成材が、主構成材と共にハンガーを保持する補助材に重なり、互いに接合される垂直部から下方へかけて補助材から遠ざかる向きに傾斜した傾斜部を有することで、傾斜部に野縁軸方向の水平方向の力と鉛直方向の力を負担させることができる。
この結果、傾斜部は野縁軸方向の力である水平方向の力を傾斜部の軸方向の力として負担することができるため、傾斜部と垂直部の境界部分に野縁軸方向の力を集中させることがなくなり、傾斜部と垂直部の境界部分が野縁軸方向の力を受けることによる面外方向への変形に対する安定性が向上する。
図1は上部の躯体から懸垂する吊りボルト1の下端部に接続され、野縁3を支持する野縁受け4を支持するハンガー2を保持し、上部の躯体と吊りボルト1の下端部との間に架設される天井ブレース5を受ける支持部材6と吊りボルト1と、野縁3及び野縁受け4の配置状態を示す。上部の躯体は図示しないが、上階の床スラブ、もしくは屋根スラブ、または屋根架構等である。
ハンガー2は図2、図3に示すように例えば単一部品で野縁受け4を幅方向に挟み込みながら野縁受け4が載置可能な、下から支持できるフック形状をし、野縁受け4幅方向片側の部分が吊りボルト1側へ延長して水平に屈曲し、この屈曲した水平部2aが吊りボルト1の下端部に螺合等により接続されることにより吊りボルト1に支持される。図面では吊りボルト1の下端部に切られた雄ねじをハンガー2の水平部2aに螺合させるか、挿通させ、水平部2aの両面側からナット1a、1aを締結している。
支持部材6は天井ブレース5と野縁3が接続される主構成材61と、主構成材61と共にハンガー2を野縁3の軸方向に挟み込みながら、主構成材61に接続される補助材62を構成要素として備える。天井ブレース5は図5に示すように上部の躯体と吊りボルト1の下端部との間に架設され、下端部において支持部材6の主構成材61に接続(接合)される。
主構成材61は図2〜図4に示すように上方側から見れば、補助材62に重なり、補助材62に接合される垂直部61aと、垂直部61aの下方に連続しながら垂直部61aに対して傾斜し、垂直部61aから下方へかけて補助材62から遠ざかる向きに傾斜する傾斜部61bと、傾斜部61bに連続しながら傾斜部61bに対して傾斜し、野縁3に重なって接合され、野縁3を支持する水平部61cを少なくとも有する。垂直部61aは平坦な形状である場合、野縁受け4の軸方向に平行な面をなし、水平部61cは平坦である場合、実質的に水平面をなす。
図面では水平部61cの幅方向両側に野縁3の幅方向両側面に重なる垂下片61d、61dを形成し、垂下片61d、61dを野縁3の幅方向両側面に重ね、両者を貫通するねじ等の連結材7により水平部61cを野縁3に接合しているが、水平部61cの野縁3への接合方法はこれには限られない。
補助材62は主構成材61の垂直部61aの下方寄りの部分と共に野縁受け4をその幅方向に挟持し得る垂直部62aと、垂直部62aの上端部に連続して主構成材61側へ屈曲し、野縁受け4の上面に重なる張出部62bと、張出部62bの主構成材61側の先端部から屈曲して立ち上がり、主構成材61の垂直部61aに重なる立上り部62cと、垂直部62aの下端部から野縁3軸方向のいずれかの側へ張り出し、野縁3を支持する水平部62dを少なくとも有する。
主構成材61の垂直部61aの下方寄りの部分の、補助材62の垂直部62aと共に野縁受け4を幅方向に挟持し得る部分は必ずしも図4に示すように垂直部62aと共に野縁受け4を挟んでいる必要はなく、野縁受け4より上に位置することもある。補助材62が主構成材61に接合されたとき、補助材62の垂直部62aと主構成材61の垂直部61a間には野縁受け4の幅程度の間隔、またはこれに後述のフランジ61eの幅を加えた程度の間隔が確保される。この垂直部62aと垂直部61a間の間隔の確保により両垂直部62a、61aが野縁受け4をその幅方向に挟持することになる。
補助材62の水平部62dは図3、図4に示すように垂直部62aの下端部から主構成材61側、もしくはその反対側へ張り出し、野縁3内に差し込まれて野縁3に上側へ係合し、野縁3の上面を野縁受け4の下面に密着させることにより間接的に野縁受け4を張出部62bと共に高さ方向に挟持し、保持する。水平部62dは野縁3の内部に差し込まれたときに野縁3が載置可能な形状をする。
補助材62の水平部62dは野縁3の軸方向の相対移動により野縁3の上面の内周に差し込まれることで、主構成材61の水平部61cと共に野縁3を支持する。図面では野縁3に上方が開放したリップ溝形鋼を使用していることに伴い、野縁3のリップ部分に内周側から係合する係合片62e、62eを水平部62dの幅方向両側に形成し、この係合片62e、62eが野縁3を支持しているが、水平部62dの形状はこれには限られない。
補助材62の立上り部62cは例えば主構成材61の垂直部61aのハンガー2側の面に重なり、両者を貫通するねじ等の連結材7により主構成材61に接合される。補助材62の立上り部62cが主構成材61の垂直部61aに接合された状態では、補助材62の垂直部62aが主構成材61の垂直部61aと共に野縁受け4をその幅方向に挟持して保持し、野縁受け4を幅方向に拘束した状態になる。
同時に補助材62の張出部62bが野縁受け4の上面に載置されることで、支持部材6が野縁受け4に支持されるため、野縁受け4を支持したハンガー2に支持部材6が支持された状態になる。補助材62の張出部62bはまた、前記のように水平部62dが野縁3に上側へ係合したときに野縁3と共に野縁受け4を高さ方向に挟持し、保持する。
図4に示すように支持部材6が野縁受け4に支持され、支持部材6を構成する主構成材61と補助材62の各水平部61c、62dが野縁3を支持することで、野縁3は野縁受け4を支持したハンガー2を通じて吊りボルト1に支持されることになる。
主構成材61の傾斜部61bは垂直部61aの下端から補助材62の反対側へ屈曲した状態で形成されるが、傾斜部61bは垂直部61aには、垂直部61aとの交線である垂直部61aとの境界線61hの回りに容易に回転できない状態に接合されているか連続している場合と、境界線61hの回りに容易に回転できる状態に接合されているか連続している場合がある。傾斜部61bと垂直部61aの境界線61h(交線)は図4に示すように野縁受け4の軸方向に平行な水平軸になる。
傾斜部61bが垂直部61aとの交線の回りに容易に回転できない状態は傾斜部61bが垂直部61aに溶接等により接合されるか、傾斜部61bを垂直部61aに対して折り曲げ加工する等により可能になる。この場合、傾斜部61bが野縁3から受ける軸方向の力(水平力)が境界線61h(交線)を介して垂直部61aに伝達可能で、境界線61hを含め、傾斜部61bと垂直部61aが境界線61h回りの曲げモーメントを負担し得る状態にある。
この傾斜部61bと垂直部61a間の境界線61h部分と傾斜部61bを曲げモーメントに対して補強するために、図1では水平部61cと傾斜部61b間の境界線61i部分から境界線61h部分までの区間に連続し、これらの部分に曲げ剛性を付与するリブ61gを形成している。リブ61gは境界線61h部分から垂直部61aに鉛直方向に連続して形成される場合も、境界線61i部分から水平部61cに水平方向に連続して形成される場合もある。
図1では境界線61i部分から境界線61h部分までに亘り、水平部61cと傾斜部61b及び垂直部61a自体を裏面側からプレス加工することによりリブ61gを形成しているが、リブ61gの形成方法と形成面は問われない。水平部61cと傾斜部61b及び垂直部61aは境界線61h回りの曲げモーメントを負担するため、リブ61gは傾斜部61bの軸方向である傾斜方向に連続して形成される。図1では傾斜部61bの軸方向に連続するリブ61gを傾斜部61bの幅方向に2本、形成しているが、幅方向のリブ61gの形成数は任意である。
傾斜部61bが垂直部61aとの境界線61hの回りに容易に回転できる状態は傾斜部61bと垂直部61aがヒンジ等に連結されるか、双方が単純に回転可能な状態で繋がる(連続する)ことにより可能になる。この状態は例えば板要素からなる垂直部61aと傾斜部61bの幅方向両側に図4に示すように後述のフランジ61e、61eを形成した場合に、傾斜部61bと垂直部61aを境界線61h回りに回転可能な状態にしながら、垂直部61aのフランジ61eと傾斜部61bのフランジ61eを分離させることによっても得られる。
傾斜部61bが垂直部61aとの境界線61hの回りに回転できる場合には、野縁3に接合されている水平部61cに野縁3軸方向の力(水平力)が作用し、傾斜部61bに伝達されたときに、傾斜部61bから境界線61h部分と垂直部61aにその力が伝達されず、境界線61h部分を含め、傾斜部61bと垂直部61aに曲げモーメントが伝達されない利点がある。この場合、境界線61h部分と垂直部61aが曲げモーメントを負担しないで済むため、これらの部分に曲げ変形が生じることが回避される。
主構成材61の垂直部61aの下方寄りの部分は野縁受け4に幅方向に係合しないこともあるが、図面では図1、図4に示すように垂直部61aの下方寄りの部分を野縁受け4に幅方向に係合させ、傾斜部61bから垂直部61aに伝達された野縁3軸方向の力の一部が野縁受け4に伝達されるようにしている。この場合、垂直部61aの下方部分が野縁受け4に補助材62側へ係合した状態にあることで、水平部61cから傾斜部61bを通じて垂直部61aに伝達される野縁3軸方向の、主構成材61側から補助材62側へ向かう水平力の一部を野縁受け4に伝達させることができるため、この水平力を主構成材61と補助材62のみが負担する場合より支持部材6の負担が軽減される利点がある。
この垂直部61aの下方寄りの部分はまた、補助材62と共に野縁受け4をその幅方向に挟持する状態になるため、互いに組み合わせられ、本接合前の主構成材61と補助材62(支持部材6)に対して野縁受け4を後から差し込む場合に、野縁受け4をその幅方向に支持部材6に対して位置決めした状態で差し込むことを可能にする役目も有する。
なお、主構成材61の垂直部61aと傾斜部61bは共に、平坦な板要素のみからなることもあるが、図面では垂直部61aと傾斜部61b自体が面外方向の力を受けることによる曲げ変形に対する補剛等の目的で、図4に示すように垂直部61aと傾斜部61bの本体の幅方向両側に本体に直交する面をなすフランジ61e、61eを形成している。垂直部61aにフランジ61e、61eが形成される場合、垂直部61aは野縁受け4にはフランジ61e、61eにおいて野縁受け4の幅方向に係合する。図面では前記のように傾斜部61bのフランジ61eと垂直部61aのフランジ61eを切り離しているが、図1に示すように傾斜部61bと垂直部61aが境界線61h回りに回転可能でない場合もある。
主構成材61には前記の通り、図2、図5に示すように天井ブレース5も接合されるため、垂直部61aの幅方向両側には天井ブレース5の下端部が重なり、接合されるための側面垂直部61fが垂直部61aの、フランジ61eを除く本体部に対し、垂直に屈曲して形成される。天井ブレース5は側面垂直部61fには溶接により、または連結材7等により接合される。図5は野縁3が既存の天井に後から追加された架設(後付け)された場合の施工例を示している。
天井ブレース5は図2に示すように支持部材6の幅方向(野縁受け4の軸方向)片側に接合されることから、側面垂直部61fは垂直部61aの幅方向片側にのみ形成れれればよいが、主構成材61自体に天井ブレース5からの軸方向力を受けることによる捩りに対する安定性(変形しにくさ)を持たせるために、図面では側面垂直部61f、61fを垂直部61aの幅方向両側に形成している。天井ブレース5を主構成材61の垂直部61aのフランジ61e等に接合できる場合には、必ずしも側面垂直部61f、61fを形成する必要はない。
垂直部61aの幅方向両側に側面垂直部61f、61fを形成した場合に、図2に示すようにいずれか一方の側面垂直部61fに天井ブレース5が接合された場合、天井ブレース5の軸方向力は側面垂直部61fの面内方向を向くため、基本的には天井ブレース5の軸方向力が直接、側面垂直部61fを面外方向に変形させることはない。但し、天井ブレース5に軸方向力が生じながら、野縁受け4の軸方向の相対移動を伴う場合に、側面垂直部61fが面内方向に曲げ変形する可能性がある。
側面垂直部61fに曲げ変形が生じると、図5から分かるように吊りボルト1と天井ブレース5と野縁3が形成するトラスの形状が崩れ、野縁3の軸方向力を天井ブレース5が吊りボルト1と共に分担することができなくなる可能性がある。このような事態に至らないよう、側面垂直部61fの曲げ変形の発生を回避する上では、側面垂直部61f、61fと垂直部61aの頂部に跨り、水平板63が形成されるか、一体化させられ、側面垂直部61f、61fと垂直部61aの頂部が繋がれる。側面垂直部61f、61fと垂直部61aの頂部が繋がることで、側面垂直部61f、61fの変形が拘束されるため、側面垂直部61fが垂直部61aに対して曲げ変形しにくくなる。
水平板63は側面垂直部61f、61fと垂直部61aの頂部が形成する開口に上方から嵌合することにより、または落とし込まれて溶接(溶着)、もしくは接着等されることにより図1に示すように前記開口を閉塞した状態で側面垂直部61f、61fと垂直部61aに一体化する。図1では主構成材61を1枚の板の折り曲げ加工により形成していることから、各側面垂直部61f、61fの上側にこれに連続する板を張り出した状態で主構成材61を構成する1枚の板を切り出しておき、この側面垂直部61f、61fの上側の板を側面垂直部61f、61fの上端部分において互いに対向する側へ折り曲げて溶接等することによりこの上側の板を互いに重ねた状態で前記開口を閉塞させ、2枚板からなる水平板63を形成している。
この他、水平板63は側面垂直部61f、61fの対向する面に形成された溝に沿って野縁受け4の幅方向にスライドさせられる等により図1に示すように前記開口を閉塞した状態で側面垂直部61f、61fと垂直部61aに一体化させられることもある。水平板63が一体化したとき、水平板63には吊りボルト1が貫通する形になるため、水平板63の、吊りボルト1の貫通位置には挿通孔が形成される。水平板63がスライドする場合、挿通孔は長孔になる。