JP6751210B2 - トリイソシアネート組成物、水系塗料組成物及び塗膜 - Google Patents
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Description
本願は、2017年7月3日に、日本に出願された特願2017−130297号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
特許文献2には、親水性基を付加させることなくイソシアネート基数を維持して、低粘度とすることで水分散することができ、得られた塗膜の耐久性を高める技術が開示されている。
一方、特許文献3には、 水系塗料から得られた塗膜の耐水性等の物性を向上させる技術が開示されている。具体的には、架橋剤として、カルボジイミド基含有化合物、オキサゾリン基含有化合物、メラミン化合物を使用した塗料組成物が開示されている。
また、特許文献3で開示された塗料組成物は、耐水性等の塗膜物性で良好な結果が得られるが、その一方で、自動車、プレコートメタル等の塗装ライン等における予備乾燥後の耐ブロッキング性に課題を有していた。
[1] 1種類以上の下記一般式(I)で示されるトリイソシアネート(A)と、
カルボジイミド基含有化合物、オキサゾリン基含有化合物及びメラミン化合物からなる群より選択される1種以上の架橋剤(B)と、
を含み、
前記トリイソシアネート(A)と前記架橋剤(B)の混合質量比(A)/(B)が75/25以上90/10以下である、トリイソシアネート組成物。
[2] 前記トリイソシアネート中の複数あるY1のうち1つ以上がエステル構造を含む、前記[1]に記載のトリイソシアネート組成物。
[3] 前記トリイソシアネート(A)がビス(2−イソシアナトエチル)2−イソシアナトグルタレート及びリジントリイソシアネートからなる群より選択される1種以上である、前記[1]又は[2]に記載のトリイソシアネート組成物。
[4] 前記トリイソシアネート(A)と前記架橋剤(B)の混合質量比(A)/(B)が80/20以上90/10以下である、前記[1]〜[3]のいずれか一つに記載のトリイソシアネート組成物。
[5] 前記[1]〜[4]のいずれか一項に記載のトリイソシアネート組成物と、水酸基及び/又はカルボキシ基含有樹脂と、を含む、水系塗料組成物。
[6] 前記[5]に記載の水系塗料組成物を硬化した、塗膜。
本明細書において、「ポリオール」とは、2つ以上の水酸基(−OH)を有する化合物をいう。
本発明の一実施形態に係るトリイソシアネート組成物は、1種類以上の下記一般式(I)で示されるトリイソシアネート(以下、「トリイソシアネート(I)」と称する場合がある)と、カルボキシ基及び水酸基からなる群より選択される1種類以上と架橋しうる架橋剤と、を含む。
本実施形態のトリイソシアネート組成物の構成成分について、以下に詳細を説明する。
本実施形態のトリイソシアネート組成物に含まれるトリイソシアネートは、上記一般式(I)で示される化合物である。
一般式(I)中、複数あるY1は、それぞれ独立に、単結合、又は、エステル構造及びエーテル構造からなる群より選択される1種以上を含んでもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基である。複数あるY1は、それぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。
前記直鎖状又は分岐状の脂肪族基としては、例えば、アルカンジイル基(アルキレン基)、アルキリデン基等が挙げられる。
前記環状の脂肪族基としては、例えば、シクロアルキレン基等が挙げられる。
前記芳香族基としては、例えば、フェニレン基等のアリーレン基が挙げられる。
*1−(CH2)n1−X−(CH2)n2−*2 (II)
中でも、n1及びn2はそれぞれ独立して、0〜20の整数であることが好ましく、0〜4がより好ましく、0〜2がさらに好ましい。
n1及びn2の組み合わせとしては、例えば、n1=0、n2=2の組み合わせ、n1=2、n2=2の組み合わせが好ましい。
R1は、水素原子、又は、炭素数1〜12の1価の炭化水素基である。R1における炭化水素基としては、特に限定されず、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。中でも、R1としては、水素原子が好ましい。
本実施形態において、トリイソシアネート組成物に含まれるトリイソシアネート(I)は、例えば、アミノ酸誘導体、エーテルアミン及びアルキルトリアミン等のアミンをイソシアネート化して得ることができる。
前記アミノ酸誘導体としては、例えば2,5−ジアミノ吉草酸、2,6−ジアミノヘキサン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等が挙げられる。これらアミノ酸誘導体はジアミンモノカルボン酸又はモノアミンジカルボン酸であるため、カルボキシル基を、例えばエタノールアミン等のアルカノールアミンでエステル化することで、エステル基を有するトリアミンとすることができる。得られたエステル基を有するトリアミンは、アミンのホスゲン化等により、エステル構造を含むトリイソシアネートとすることができる。
本実施形態のトリイソシアネート組成物に含まれる架橋剤は、カルボキシ基及び水酸基からなる群より選択される1種類以上と架橋しうるものであればよい。
カルボキシ基と架橋しうる架橋剤としては、例えば、カルボジイミド基含有化合物、オキサゾリン基含有化合物、エポキシ基含有化合物等が挙げられる。
水酸基と架橋しうる架橋剤としては、例えば、メラミン化合物、ブロックポリイソシアネート等が挙げられる。
本実施形態のトリイソシアネート組成物は、これらの架橋剤を単独で含んでもよく、2種以上組み合わせて含んでもよい。
中でも、架橋剤を含む水系塗料組成物から得られた塗膜において、耐水性及び下地との密着性が優れている点、及び、原料の入手のしやすさ等の観点から、架橋剤としては、カルボジイミド基含有化合物、オキサゾリン基含有化合物、又はメラミン化合物が好ましい。
カルボジイミド基含有化合物の市販品としては、例えば、カルボジライトV−02、カルボジライトV−02−L2、カルボジライトV−04、カルボジライトE−01、カルボジライトE−02(いずれも日清紡社製、商品名)等が挙げられる。
オキサゾリン基含有化合物の市販品としては、例えば、エポクロスWS−500(日本触媒製、標品名)等が挙げられる。
前記アルデヒドとしは、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド等が挙げられる。
また、前記メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をアルコールによって部分的に又は完全にエーテル化したものであってもよい。エーテル化に用いられるアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノール等が挙げられる。
メラミン化合物の市販品としては、例えば、サイメル303、サイメル323、サイメル325、サイメル327、サイメル350、サイメル370、サイメル380、サイメル385、サイメル212、サイメル251、サイメル254、マイコート776(いずれもオルネクス社製、商品名)等を挙げることができる。
本実施形態のトリイソシアネート組成物に含まれるトリイソシアネート(A)と架橋剤(B)との混合質量比(A)/(B)は、特に制限されないが、有効成分の質量比で、(A)/(B)=5/95以上95/5以下であることが好ましく、10/90以上90/10以下であることがより好ましい。
本実施形態のトリイソシアネート組成物を含む水系塗料組成物のポットライフをより一層長く保持する観点から、混合質量比(A)/(B)は、20/80以上85/15以下であることがより好ましく、30/70以上80/20以下であることがより更に好ましく、55/45以上80/20以下であることがより更に好ましい。
本実施形態のトリイソシアネート組成物を含む水系塗料組成物から得られる塗膜の耐溶剤性や下地との密着性をより向上させる観点から、混合質量比(A)/(B)は、70/30以上90/10以下がより好ましく、75/25以上90/10以下がより更に好ましい。
本実施形態のトリイソシアネート組成物は、上述のトリイソシアネートと、上述の架橋剤とを公知の方法を用いて混合することで製造することができる。より具体的には、例えば、上述のトリイソシアネートと、上述の架橋剤とを室温で撹拌装置等を用いて混合することで、本実施形態のトリイソシアネート組成物を得られる。上述のトリイソシアネートと上述の架橋剤は、水系塗料組成物製造のために、水と水酸基及び/又はカルボキシ基含有樹脂等とを混合する前に、混合させておくことがポットライフをより一層長く保持するできるため、好ましい。
本発明の一実施形態に係る水系塗料組成物は、上述のトリイソシアネート組成物と、水酸基及び/又はカルボキシ基含有樹脂と、を含む。
水系塗料組成物の総質量に対する、トリイソシアネート組成物の樹脂分質量比は、1〜25質量%が好ましく、2〜20質量%がより好ましく、4〜15質量%が最も好ましい。前記範囲とすることにより、塗膜の耐溶剤性とポットライフをより向上することができる。ここで、トリイソシアネート組成物の樹脂分質量比とは、トリイソシアネートと架橋剤の総質量を意味する。
水系塗料組成物の総質量に対する、水酸基及び/又はカルボキシ基含有樹脂の質量比は、10〜70質量%が好ましく、15〜60質量%がより好ましく、20〜50質量%が最も好ましい。前記範囲とすることにより、より適切な塗料粘度に調整することができる。
また、本実施形態の水系塗料組成物を構成する液分の全質量に対する水の含有量は、50質量%以上であり、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましく、95質量%以上であることが最も好ましい。
一方、本実施形態の水系塗料組成物を構成する液分の全質量に対する水の含有量の上限値は、98質量%であることができる。
本実施形態の水系塗料組成物に含まれる水酸基及び/又はカルボキシ基含有樹脂について、以下に詳細を説明する。
本実施形態の水系塗料組成物に含まれる水酸基及び/又はカルボキシ基含有樹脂(水酸基及びカルボキシ基からなる群から選択される少なくとも一つの基を有する樹脂)としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。本実施形態の水系塗料組成物は、これらの樹脂を単独で含んでもよく、2種以上組み合わせて含んでもよい。
中でも、水酸基及び/又はカルボキシ基含有樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、又はポリウレタン樹脂が好ましく、本実施形態の水系塗料組成物から得られる塗膜の耐水性、耐溶剤性、及び下地との密着性がより良好となることから、アクリル樹脂又はポリウレタン樹脂が好ましい。
ポリエステル樹脂としては、例えば、二塩基酸の単独又は2種類以上の混合物と、多価アルコールの単独又は2種類以上の混合物とを、縮合反応させることによって得ることができる。
前記二塩基酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のカルボン等が挙げられる。
前記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリンなどの群から選ばれた多価アルコール等が挙げられる。
上述の二塩基酸又は上述のε−カプロラクトン等のカルボン酸成分と多価アルコール成分とを反応させる際、多価アルコールの水酸基をカルボン酸成分のカルボキシ基よりも過剰となるように反応させて、最終的に得られたポリエステル樹脂中に水酸基を残存させることが好ましい。
アクリル樹脂としては、水酸基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体の単独又は混合物と、前記エチレン性不飽和結合含有単量体の単独又は混合物とを共重合させて得られる、水酸基を有するアクリル樹脂が挙げられる。また、カルボキシ基含有アクリル樹脂としては、エチレン性不飽和結合含有カルボン酸の単独又は混合物を共重合させて得られる、アクリル樹脂が挙げられる。
(i)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル。
(ii)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル等のメタクリル酸エステル。
(iii)アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸。
アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等の不飽和アミド。
(iv)メタクリル酸グリシジル、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、フマル酸ジブチル等のビニル系単量体。
(v)ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の加水分解性シリル基を有するビニル系単量体。
ポリウレタン樹脂としては、常法により製造することができ、具体的には、例えば、カルボキシル基を含有しないポリオールとポリイソシアネートとを反応させることにより得ることができる。
前記カルボキシル基を含有しないポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等の低分子量のポリオール;アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等の高分子量のポリオール等が挙げられる。
カルボキシル基を含有しないポリオールとポリイソシアネートとを反応させる際、ポリオールの水酸基をポリイソシアネートのイソシアネート基よりも過剰となるように反応させて、最終的に得られたポリウレタン樹脂中に水酸基を残存させることが好ましい。
前記水酸基及びカルボキシル基含有樹脂の水酸基価は、特に限定されないが、10mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることが好ましく、20mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることがより好ましく、30mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることがさらに好ましく、40mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることが特に好ましく、50mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることが最も好ましい。
また、前記水酸基及びカルボキシル基含有樹脂の酸価は、特に限定されないが、5mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であることが好ましく、8mgKOH/g以上45mgKOH/g以下であることがより好ましく、10mgKOH/g以上40mgKOH/g以下であることがさらに好ましく、12mgKOH/g以上35mgKOH/g以下であることが特に好ましく、15mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であることが最も好ましい。
前記水酸基及びカルボキシル基含有樹脂組成物の水酸基価及び酸価は、JIS K1557に準拠して測定することができる。
本実施形態の水系塗料組成物において、前記水酸基及びカルボキシル基含有樹脂の水酸基に対する、前記トリイソシアネートのイソシアネート基のモル当量比(NCO/OH)は、0.2以上5.0以下が好ましく、0.4以上3.0以下がより好ましく、0.6以上2.5以下がさらに好ましく、0.8以上2.0以下が特に好ましく、1.0以上2.0以下が最も好ましい。
NCO/OHが上記下限値以上であることにより、本実施形態の水系塗料組成物から得られる塗膜の予備乾燥後の耐溶剤性をより良好にすることが可能となる。NCO/OHが上記上限値以下であることにより、本実施形態の水系塗料組成物から得られる塗膜の耐溶剤性をより一層向上させることができる。
本実施形態の水系塗料組成物は、上述のトリイソシアネート、並びに、上述の水酸基及び/又はカルボキシ基含有樹脂の他に、以下に示す構成成分を含んでいてもよい。
本実施形態の水系塗料組成物において、トリイソシアネートを分散させるために、有機溶剤を含んでいてもよい。
有機溶剤としては、例えば、1−メチルピロリドン、ブチルグリコールアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エタノール、メタノール、iso−プロパノール、1−プロパノール、iso−ブタノール、1−ブタノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−n−ブトキシエチルアセテート、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、ペンタン、iso−ペンタン、ヘキサン、iso−ヘキサン、シクロヘキサン、ソルベントナフサ、ミネラルスピリット等が挙げられる。これら有機溶剤を単独で含んでもよく、2種以上組み合わせて含んでもよい。
中でも、有機溶剤としては、トリイソシアネートの水への安定分散化の観点から、水での溶解度が5質量%以上であるものが好ましい。また、本実施形態の水系塗料組成物から得られる塗膜の表面外観をより良好にできることから、有機溶剤としては、沸点が100℃以上であるものが好ましい。具体的には、ブチルグリコールアセテート等が好ましい。
本実施形態の水系塗料組成物は、その目的や用途に応じて、本実施形態の効果を損なわない範囲で、触媒、顔料、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、界面活性剤等の当該技術分野で使用されている各種添加剤を含んでいてもよい。
本実施形態の水系塗料組成物は、ロール塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装、ベル塗装、静電塗装等の塗料として用いることができる。
また、本実施形態の水系塗料組成物は、金属(鋼板、表面処理鋼板等)、プラスチック、木材、フィルム、無機材料等の素材に対するプライマーや上中塗り塗料として有用である。
また、本実施形態の水系塗料組成物は、防錆鋼板を含むプレコートメタル、自動車の塗装部等に美粧性、耐候性、耐酸性、防錆性、耐チッピング性等を付与するための塗料としても有用である。
また、本実施形態の水系塗料組成物は、接着剤、粘着剤、エラストマー、フォーム、表面処理剤等のウレタン原料としても有用である。
本発明の一実施形態に係る塗膜は、上述の水系塗料組成物を硬化したものである。
本実施形態の塗膜は、予備乾燥後の耐ブロッキング性に優れ、且つ、耐水性、耐溶剤性、及び下地との密着性に優れている。
但し、実施例7は参考例である。
以下に示す方法に従い、実施例及び比較例で製造された塗料組成物及び該塗料組成物を硬化して得られた塗膜について、各物性及び各評価を行った。
各ポリイソシアネートの粘度は、E型粘度計(トキメック社製)を用いて25℃で測定した。測定に際しては、標準ローター(1°34’×R24)を用いた。回転数は、以下に示すとおりに設定した。
100rpm(128mPa・s未満の場合)
50rpm(128mPa・s以上256mPa・s未満の場合)
20rpm(256mPa・s以上640mPa・s未満の場合)
10rpm(640mPa・s以上1280mPa・s未満の場合)
5rpm(1280mPa・s以上2560mPa・s未満の場合)
ポリイソシアネートのNCO含有率(質量%)は、測定試料中のイソシアネート基を過剰の2Nアミンで中和した後、1N塩酸による逆滴定によって求めた。なお、後述する実施例及び比較例で製造したポリイソシアネートの不揮発分を上述した方法によって調べ、その値が98質量%以上であったものは、そのまま測定した。
各架橋剤について、Bruker社製Biospin Avance600(商品名)を用いた、13C−NMRの測定により、架橋基の存在を確認した。
具体的な測定条件は以下の通りであった。
13C−NMR装置:AVANCE600(ブルカー社製)
クライオプローブ(ブルカー社製)
Cryo Probe
CPDUL
600S3−C/H−D−05Z
共鳴周波数:150MHz
濃度:60質量/体積%
シフト基準:CDCl3(77ppm)
積算回数:10000回
算出方法:積分値÷3
カルボジイミド基:140ppm付近
オキサゾリン基:165ppm付近
メラミン基:167ppm付近
各実施例及び各比較例において得られた水系塗料組成物を、樹脂膜厚30μmとなるようにアプリケーターで軟鋼版に塗布し、室温で30分静置した。次いで、80℃のオーブン内に5分間静置して塗膜を得た。得られた塗膜にコットンボールを置き、1gの分銅を置き、1分間放置した。1分後、分銅を取り除き、コットンボールを取り除いた後の状態を観察した。評価基準としては、分銅の跡が残らないものを〇、ごく一部残るものを△、全体的に残る場合を×とした。
各実施例及び各比較例において得られた水系塗料組成物を、樹脂膜厚30μmとなるようにアプリケーターで軟鋼版に塗布し、室温で30分静置した。次いで、80℃で5分間の予備乾燥し、140℃で30分間の焼付を行い、塗膜を得た。得られた塗膜にトルエンを浸したコットンボールを置き、室温で30分放置し、コットンボールを取り除いた状態を観察した。評価基準としては、塗膜が溶解した場合を×、全体的に膨潤している場合を△、ほぼ変化ないものを〇とした。
各実施例及び各比較例において得られた水系塗料組成物を、樹脂膜厚30μmとなるようにアプリケーターで軟鋼版に塗布し、室温で30分静置した。次いで、80℃で5分間の予備乾燥し、140℃で30分間の焼付を行い、塗膜を得た。得られた塗膜を60℃温水に6時間浸漬した後、取り出して、水をふき取った塗膜の状態を観察した。評価基準としては、塗膜1cm2に1以上ブツがある場合を×、塗膜1cm2に1未満のブツがある場合を△、ブツはないが、全体的に白化が見られる場合を〇、大きな変化が見られない場合を◎とした。
なお、ここで、「ブツ」とは、塗膜中に異物等が混在したことで、突起状(凸状)となった部分を意味する。
軟鋼鈑にアクリルポリオール(樹脂固形分濃度55質量%,水酸基価30mgKOH/樹脂g)を樹脂膜厚40μmになるように塗装し、室温30分放置した。次いで、各実施例及び各比較例において得られた水系塗料組成物を、樹脂膜厚30μmとなるようにアプリケーターで軟鋼版に塗布し、室温で30分静置した。次いで、80℃で5分間の予備乾燥し、140℃で30分間の焼付を行い、塗膜を得た。得られた塗膜の下地への密着性を、JIS K5600−5−6に準じて評価した。評価基準としては、剥離塗膜無し、又は、カット部に一部浮きありの場合を○、半分以下だが剥離がある場合を△、半分以上剥離が見られた場合を×として示した。
トリイソシアネート(A)、架橋剤(B)、溶剤、水酸基及びカルボキシル基含有樹脂(C)を、ディスパー羽根、600rpmで、実施例、比較例に記載の添加順、使用質量を混合後、さらに、塗料固形分が40質量%となるように水を添加した。次いで、室温でディスパー羽根、600rpmで、15分かけて混合し、水系塗料組成物を得た。
得られた水系塗料組成物を予定時間、室温で保持し、塗液の状態と塗膜作成後の外観を観察した。3時間保持後であっても、塗液でゲル化、増粘が見られず、作成した塗膜の目視でブツ、光沢低下が見られない場合を◎、2時間保持後まで塗液、塗膜で問題が発生しない場合を〇、2時間保持後に少なくとも塗液、あるいは塗膜で問題が発生した場合を×とした。
4−アミノメチル−1,8−オクタメチレンジアミンを溶剤(o−ジクロロベンゼン)存在下、ホスゲン化し、冷却後濾過し、減圧下蒸留することにNTI(トリイソシアネート(A−1))を得た。得られたトリイソシアネート(A−1)の粘度は、5mPa・s/25℃であった。
リジン塩酸塩とエタノールアミンとを溶剤(o−ジクロロベンゼン)存在下、120℃で7時間反応させた。得られた反応物に、メタノールを添加した後、再結晶により、リジンβ−アミノエステル三塩酸塩を得た。次いで、溶剤(o−ジクロロベンゼン)存在下、リジンβ−アミノエステル三塩酸塩をホスゲン化し、冷却後濾過し、減圧下蒸留することによりLTI(トリイソシアネート(A−2))を得た。得られたトリイソシアネート(A−2)の粘度は、25mPa・s/25℃であった。
グルタミン酸塩酸塩とエタノールアミンとを溶剤(トルエン)存在下、110℃で24時間反応させた。得られた反応物に、メタノールを添加した後、再結晶により、ビス(2−アミノエチル)グルタメート三塩酸塩を得た。次いで、溶剤(o−ジクロロベンゼン)存在下、ビス(2−アミノエチル)グルタメート三塩酸塩をホスゲン化し、冷却後濾過し、減圧下蒸留することによりGTI(トリイソシアネート(A−3))を得た。得られたトリイソシアネート(A−3)の粘度は、50mPa・s/25℃であった。
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管、滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI 600g、イソブタノール0.6gを仕込み、撹拌下反応器内温度を80℃、2Hrで保持した。次いで、イソシアヌレート化触媒として、トリメチル−2−メチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキシドを加え、イソシアヌレート化反応を行い、NCO含有率が44.7%になった時点で燐酸を添加し反応を停止した。次いで、反応液を更に160℃、1Hrで保持した。反応液を冷却後、ろ過し、さらに薄膜蒸発缶にフィードし、未反応のHDIを除去して、HDI系ポリイソシアネートを得た。得られたHDI系ポリイソシアネートの粘度は、620mPa・s/25℃であった。
LTI(トリイソシアネート(A−2))80質量部、「カルボジライト V−02(商品名)」(日清紡ケミカル株式会社製、水分散性ポリカルボジイミド、カルボジイミド当量590、有効成分40質量%)(架橋剤(B−1))50質量部(有効成分20質量部)、ブチルグリコールアセテート(BGA)20質量部とを、室温でディスパー羽根、600rpmで5分間撹拌した。次いで、水酸基及びカルボキシル基含有樹脂(C−1)(「SETAQUA6510(商品名)、Nuplex Resins社製、有効成分42質量%)700質量部(有効成分294質量部)を添加した。さらに、さらに、水135質量部添加し、塗料固形分が40質量%となるように調整した。次いで、室温でディスパー羽根、600rpm、15分かけて混合し、水系塗料組成物1を調製した。得られた水系塗料組成物1について、ポットライフを評価した。別途、調製後、30分間保持した水系塗料組成物1を使用し、上述の評価方法に従い、塗膜を作製し、予備乾燥後の耐ブロッキング性、焼付後の耐水性、耐溶剤性、及び下地との密着性を評価した。得られた結果を以下の表1に示す。
表1に示すトリイソシアネート(A)、架橋剤(B)、及び溶剤を、室温で、ディスパー羽根、600rpmで5分間撹拌した。次いで、水酸基及びカルボキシル基含有樹脂組成物(C−1)を添加した。さらに、塗料固形分が40質量%となるように水を加え、室温でディスパー羽根、600rpm、15分かけて混合し、水系塗料組成物2〜8を製造した。得られた水系塗料組成物2〜8について、実施例1と同様に、ポットライフ、予備乾燥後の耐ブロッキング性、焼付後の耐水性、耐溶剤性、及び下地との密着性を評価した。得られた結果を以下の表1に示す。
表1に示すトリイソシアネート(A−2)、水酸基及びカルボキシル基含有樹脂組成物(C−1)、及び溶剤を、室温で、ディスパー羽根、600rpmで5分間撹拌した。次いで、架橋剤(B−1)を添加した。さらに、塗料固形分が40質量%となるように水を加え、室温でディスパー羽根、600rpm、15分かけて混合し、水系塗料組成物9を製造した。得られた水系塗料組成物9について、実施例1と同様に、ポットライフ、予備乾燥後の耐ブロッキング性、焼付後の耐水性、耐溶剤性、及び下地との密着性を評価した。得られた結果を以下の表1に示す。
※2:架橋剤(B−1)(カルボジイミド基含有化合物): 「カルボジライト V−02(商品名)」(日清紡ケミカル株式会社製、水分散性ポリカルボジイミド、カルボジイミド当量590、有効成分40質量%)(表中の数値は、「カルボジライト V−02(商品名)」の配合量を記載している。)
※3:架橋剤(B−2)(オキサゾリン基含有化合物):「エポクロス WS−500(商品名)」(日本触媒社製、水溶性オキサゾリン、オキサゾリン当量220、有効成分質量40%)(表中の数値は、「エポクロス WS−500(商品名)」の配合量を記載している。)
※4:架橋剤(B−3)(メラミン化合物): 「CYMEL 327(商品名)」(Allnex社製、イミノ基含有タイプ、有効成分100質量%)
※5:水酸基含有樹脂(C−1)(アクリルポリオール):「SETAQUA6510(商品名)」(Nuplex Resins社製、アクリルディスパージョン、有効OH%:4.2質量%(樹脂)、AV:8.8mgKOH/g(有姿)、有効成分42質量%)(表中の数値は、「SETAQUA6510(商品名)」の配合量を記載している。)
表中、一液型架橋剤(B)[質量部]は、各架橋剤の配合量を表示しているが、A/B比(質量比)は、各架橋剤の有効成分質量を用いて算出された値を表示している。
表2に示すトリイソシアネート(A)、架橋剤(B)、及び/又は、溶剤を、室温で、ディスパー羽根、600rpmで5分間撹拌した。次いで、水酸基及びカルボキシル基含有樹脂組成物(C−1)を添加した。さらに、塗料固形分が40質量%となるように水を加え、室温でディスパー羽根、600rpm、15分かけて混合し、水系塗料組成物10〜15を製造した。得られた水系塗料組成物10〜15について、実施例1と同様に、ポットライフ、予備乾燥後の耐ブロッキング性、焼付後の耐水性、耐溶剤性、及び下地との密着性を評価した。得られた結果を以下の表2に示す。
※2:架橋剤(B−1)(カルボジイミド基含有化合物): 「カルボジライト V−02(商品名)」(日清紡ケミカル株式会社製、水分散性ポリカルボジイミド、カルボジイミド当量590、有効成分40質量%)(表中の数値は、「カルボジライト V−02(商品名)」の配合量を記載している。)
※3:架橋剤(B−2)(オキサゾリン基含有化合物):「エポクロス WS−500(商品名)」(日本触媒社製、水溶性オキサゾリン、オキサゾリン当量220、有効成分40質量%)(表中の数値は、「エポクロス WS−500(商品名)」の配合量を記載している。)
※4:架橋剤(B−3)(メラミン化合物): 「CYMEL 327(商品名)」(Allnex社製、イミノ基含有タイプ、有効成分100質量%)
※5:水酸基含有樹脂(C−1)(アクリルポリオール):「SETAQUA6510(商品名)」(Nuplex Resins社製、アクリルディスパージョン、有効OH%:4.2質量%(樹脂)、AV:8.8mgKOH/g(有姿)、有効成分42質量%)(表中の数値は、「SETAQUA6510(商品名)」の配合量を記載している。)
表中、一液型架橋剤(B)[質量部]は、各架橋剤の配合量を表示しているが、A/B比(質量比)は、各架橋剤の有効成分質量を用いて算出された値を表示している。
具体的には、LTI(トリイソシアネート(A−2))又はGTI(トリイソシアネート(A−3))を80質量部以上(水系塗料組成物全体の質量に対して、8質量%以上)含有する、あるいは、LTI(トリイソシアネート(A−2))又はGTI(トリイソシアネート(A−3))と架橋剤(B)との質量比((A−2)又は(A−3)/(B))が80/20以上である、実施例1、2、4、5及び8で製造した水系塗料組成物1、2、4、5及び8から得られた塗膜は、耐ブロッキング性、耐溶剤性、及び下地密着性が特に良好であった。
また、カルボジイミド系化合物である架橋剤(B−1)を50質量部(水系塗料組成物全体の質量に対して、有効成分2質量%程度)含有し、NTI(トリイソシアネート(A−1))、LTI(トリイソシアネート(A−2))又はGTI(トリイソシアネート(A−3))を80質量部〜90質量部(水系塗料組成物全体の質量に対して、有効成分8質量%〜9質量%程度)含有する、実施例1、3及び4で製造した水系塗料組成物1、3及び4から得られた塗膜は、耐水性、耐溶剤性、下地密着性が特に良好であった。
また、架橋剤(B)を含有しない、比較例1及び2で製造した水系塗料組成物10及び11から得られた塗膜は、耐水性が特に劣っていた。
また、HDI系ポリイソシアネートと架橋剤(B)を組み合わせた比較例3で製造した水系塗料組成物12から得られた塗膜は、下地との密着性が特に劣っていた。
また、架橋剤を含有しない、比較例1で製造した水系塗料組成物10は、ポットライフが特に劣っていた。
Claims (6)
- 1種類以上の下記一般式(I)で示されるトリイソシアネート(A)と、
カルボジイミド基含有化合物、オキサゾリン基含有化合物及びメラミン化合物からなる群より選択される1種以上の架橋剤(B)と、
を含み、
前記トリイソシアネート(A)と前記架橋剤(B)の混合質量比(A)/(B)が75/25以上90/10以下である、トリイソシアネート組成物。
- 前記トリイソシアネート(A)中の複数あるY1のうち1つ以上がエステル構造を含む、請求項1に記載のトリイソシアネート組成物。
- 前記トリイソシアネート(A)がビス(2−イソシアナトエチル)2−イソシアナトグルタレート及びリジントリイソシアネートからなる群より選択される1種以上である、請求項1又は2に記載のトリイソシアネート組成物。
- 前記トリイソシアネート(A)と前記架橋剤(B)の混合質量比(A)/(B)が80/20以上90/10以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のトリイソシアネート組成物。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載のトリイソシアネート組成物と、水酸基及び/又はカルボキシ基含有樹脂と、を含む、水系塗料組成物。
- 請求項5に記載の水系塗料組成物を硬化した、塗膜。
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