JP2006028248A - 感熱ゲル化性エマルジョン - Google Patents

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Abstract

【課題】 低濃度でも感熱ゲル化性が良好でありマイグレーションの防止効果に優れる上、液安定性にも優れた感熱ゲル化性エマルジョン。
【解決手段】 主剤樹脂(a)、重合体(b)および界面活性剤(c)とから主としてなり、且つ下記要件(1)〜(3)を満たすことを特徴とする感熱ゲル化性エマルジョン。
(1)主剤樹脂(a)が、ウレタン樹脂(a1)および/またはウレタン−アクリル複合樹脂(a2)である;
(2)重合体(b)が、一般式(I)で示される構造のエチレン性不飽和モノマー(b1)80〜100質量%およびその他のエチレン性不飽和モノマー(b2)0〜20質量%を重合して得られる重合体である;
【化1】
Figure 2006028248

(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは水素原子または炭素数1〜18のアルキル基から選ばれる基を表し、mは0以上の整数を表し、nは0〜10の整数を表す。ただし、m+nは2以上である。)
(3)重合体(b)中のオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位の質量比が1:0.5〜1:5である。
【選択図】 なし


Description

本発明は、低濃度でも感熱ゲル化性が良好でありマイグレーションの防止効果に優れる上、液安定性にも優れた感熱ゲル化性エマルジョンに関する。
従来より、加熱すると流動性を失ってゲル化し、室温に冷却してもゲル化したままの状態である感熱ゲル化性エマルジョンを得る方法として、樹脂エマルジョンに対して感熱ゲル化剤を添加することが行われている。感熱ゲル化剤としては、ノニオン性界面活性剤、無機金属塩およびそれらの組み合わせや、オルガノシロキサン系化合物などが提案されている(例えば、特許文献1〜5参照)。しかしながら、これらの感熱ゲル化剤は、主剤樹脂の種類などに感熱ゲル化性や液安定性が大きく左右され、特定の樹脂を用いないと感熱ゲル化性と液安定性を両立できない問題がある。さらに、上記の感熱ゲル化剤は主剤樹脂の濃度が低くなると感熱ゲル化性が低下し、繊維質基材などに含浸した際に乾燥中に樹脂が表面に移動するマイグレーションが起こり、基材中に樹脂を均一に付着させることが極めて困難である。
これらの問題を解決するために、本発明者らは感熱ゲル化剤として側鎖にポリオキシエチレン基を有する特定の重合体を用いることを先に提案している(例えば、特許文献6参照)。しかしながら、この方法においても主剤樹脂の濃度が極端に低い場合の感熱ゲル化性は必ずしも満足できるレベルではなく、その改良が望まれていた。
特開平2−308844号公報 特開平4−261453号公報 特開平6−256617号公報 特開平6−329867号公報 特開平7−90154号公報 特開2004−124347号公報
本発明の目的は、低濃度でも感熱ゲル化性が良好でありマイグレーションの防止効果に優れる上、液安定性にも優れた感熱ゲル化性エマルジョンを提供することである。
上記目的を達成すべく本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、感熱ゲル化剤としてオキシエチレン単位およびオキシプロピレン単位を有する特定の重合体および界面活性剤を組み合わせることにより、上記目的を達成できることを見出した。
すなわち本発明は、主剤樹脂(a)、重合体(b)および界面活性剤(c)とから主としてなり、且つ下記要件(1)〜(3)を満たすことを特徴とする感熱ゲル化性エマルジョンである。
(1)主剤樹脂(a)が、ウレタン樹脂(a1)および/またはウレタン−アクリル複合樹脂(a2)である;
(2)重合体(b)が、一般式(I)で示される構造のエチレン性不飽和モノマー(b1)80〜100質量%およびその他のエチレン性不飽和モノマー(b2)0〜20質量%を重合して得られる重合体である;
Figure 2006028248
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは水素原子または炭素数1〜18のアルキル基から選ばれる基を表し、mは0以上の整数を表し、nは0〜10の整数を表す。ただし、m+nは2以上である。)
(3)重合体(b)中のオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位の質量比が1:0.5〜1:5である。
本発明の感熱ゲル化性エマルジョンは、低濃度でも感熱ゲル化性が良好でありマイグレーションの防止効果に優れる上、液安定性にも優れる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の感熱ゲル化性エマルジョンは、主剤樹脂(a)、重合体(b)および界面活性剤(c)とから主として構成されており、且つ下記要件(1)〜(3)を満たしている。また、本発明の感熱ゲル化性エマルジョンは、無機金属塩(d)をさらに含有していることが好ましい。
(1)主剤樹脂(a)が、ウレタン樹脂(a1)および/またはウレタン−アクリル複合樹脂(a2)である;
(2)重合体(b)が、一般式(I)で示される構造のエチレン性不飽和モノマー(b1)80〜100質量%およびその他のエチレン性不飽和モノマー(b2)0〜20質量%を重合して得られる重合体である;
Figure 2006028248
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは水素原子または炭素数1〜18のアルキル基から選ばれる基を表し、mは0以上の整数を表し、nは0〜10の整数を表す。ただし、m+nは2以上である。)
(3)重合体(b)中のオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位の質量比が1:0.5〜1:5である。
感熱ゲル化性エマルジョンが、主剤樹脂(a)を5〜40質量%の割合で含有していることが、感熱ゲル化性および基材に含浸・乾燥時のマイグレーションの防止効果と液安定性が特に優れることから好ましい。主剤樹脂濃度が5質量%未満である場合には、感熱ゲル化性およびマイグレーションの防止効果が不十分になりやすく、一方、主剤樹脂濃度が40質量%を超えると液安定性が低下しやすい上、粘度が高くなり取り扱いが困難となりやすい。
なお、感熱ゲル化性エマルジョンのマイグレーションは同一組成であっても該エマルジョンの樹脂濃度が低いほど起こりやすいことから、主剤樹脂(a)の割合が7〜40質量%であることがより好ましく、10〜40質量%であることがさらに好ましい。
また、感熱ゲル化性エマルジョンが、重合体(b)を0.3〜10質量%の割合で含有していることが、感熱ゲル化性およびマイグレーションの防止効果と液安定性を両立するために好ましく、重合体(b)を0.4〜8質量%の割合で含有していることがより好ましく、0.5〜6質量%の割合で含有していることがさらに好ましい。
さらに、感熱ゲル化性エマルジョンが、界面活性剤(c)を0.2〜5質量%の割合で含有していることが感熱ゲル化性およびマイグレーションの防止効果や液安定性が特に良好であるため好ましく、0.25〜4質量%であることがより好ましく、0.3〜3質量%であることがさらに好ましい。
そして、感熱ゲル化性エマルジョン中の無機金属塩(d)の含有量は、2質量%以下であることが液安定性の点から好ましい。感熱ゲル化性およびマイグレーションの防止効果と液安定性を両立するために、感熱ゲル化性エマルジョン中の無機金属塩(d)の含有量が0.1〜1.5質量%であることが特に好ましく、0.2〜1質量%であることがさらに好ましい。
重合体(b)を構成する、一般式(I)で示される構造のエチレン性不飽和モノマー(b1)としては、Rが水素原子またはメチル基であることが、重合しやすく、モノマーの入手も容易であることから必須であり、Rが水素原子または炭素数1〜18のアルキル基であることが液安定性が良好となることから重要であり、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基であることが好ましく、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であることが特に好ましい。Rの炭素数が18を超えた場合には、液安定性が低下する。また、mが0以上の整数である必要があり、感熱ゲル化性およびマイグレーションの防止効果の点から0〜25の整数であることが好ましく、0〜15の整数であることがより好ましく、0〜9の整数であることがさらに好ましい。さらに、nが0〜10の整数である必要があり、0〜9の整数であることが好ましい。nが10を超えた場合には、液安定性が低下する。なお、m+nが2以上である必要がある。m+nが2未満である場合には、Rが水素原子の際は感熱ゲル化性およびマイグレーションの防止効果が低下し、一方、Rが炭素数1〜18のアルキル基の際は液安定性が低下し、いずれにおいても感熱ゲル化性およびマイグレーションの防止効果と液安定性の両立が困難である。
このようなモノマーの例としては、オキシエチレン単位の繰り返し数が2以上のメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(新中村化学工業株式会社製「NKエステルM−20G」「NKエステルM−40G」「NKエステルM−90G」など)、オキシエチレン単位の繰り返し数が2以上のエトキシポリエチレングリコールモノアクリレート(共栄社化学株式会社製「ライトアクリレートEC−A」など)、オキシエチレン単位の繰り返し数が2以上のメトキシポリエチレングリコールモノアクリレート(共栄社化学株式会社製「ライトアクリレートMTG−A」など)、オキシエチレン単位の繰り返し数が2以上のポリエチレングリコールモノメタクリレート(日本油脂株式会社製「ブレンマーPE−90」「ブレンマーPE−200」など)、オキシエチレン単位の繰り返し数が2以上のポリエチレングリコールモノアクリレート(日本油脂株式会社製「ブレンマーAE−90」「ブレンマーAE−200」など)、オキシプロピレン単位の繰り返し数が2〜10のポリプロピレングリコールモノメタクリレート(日本油脂株式会社製「ブレンマーPP−1000」「ブレンマーPP−500」など)、オキシプロピレン単位の繰り返し数が2〜10のポリプロピレングリコールモノアクリレート(日本油脂株式会社製「ブレンマーAP−400」「ブレンマーAP−550」など)、オキシプロピレン単位の繰り返し数が10以下且つオキシエチレン単位およびオキシプロピレン単位の繰り返し数の総和が2以上のポリプロピレングリコールーb−ポリエチレングリコールモノメタクリレート(日本油脂株式会社製「ブレンマー70PEP−350B」「ブレンマー10PEP−550B」など)などが挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
重合体(b)を構成する、その他のエチレン性不飽和モノマー(b2)としては、従来用いられている公知のエチレン性不飽和モノマーを用いることができる。例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリルなどのメタクリル酸誘導体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸テトラヒドロフルフリルなどのアクリル酸誘導体;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどのスチレン誘導体;アクリルアミド、メタクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミドなどのアクリルアミド類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸およびそれらの誘導体;ビニルピロリドンなどの複素環式ビニル化合物;塩化ビニル、アクリロニトリル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ビニルケトン、酢酸ビニルなどのビニル化合物;エチレン、プロピレンなどのα−オレフィン;エチレン性不飽和基を有する界面活性剤(例えば、第一工業製薬株式会社製「アクアロンKH−05」「アクアロンKH−10」、旭電化工業株式会社製「アデカリアソープPP−70」、三洋化成工業株式会社製「エレミノールJS−2」など)などが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。これらのなかでも、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどのメタクリル酸アルキルエステルや、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアクリル酸アルキルエステルを用いるのが好ましい。なお、上記した単官能エチレン性不飽和モノマーとともに、重合体(b)が曇点以下で水溶性である範囲内で、少量の2官能以上の多官能エチレン性不飽和モノマーを併用してもよい。
さらに、重合体(b)の分子量を調整するためにオクタンチオール、チオグリセロール、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、α−メチルスチレンダイマーなどの連鎖移動剤を併用しても良い。重合体(b)の数平均分子量は5000〜10万であることが、感熱ゲル化性およびマイグレーションの防止効果が良好で、且つエマルジョンの液粘度への影響が小さいことから好ましい。
重合体(b)が、一般式(I)で示される構造のエチレン性不飽和モノマー(b1)80〜100質量%およびその他のエチレン性不飽和モノマー(b2)0〜20質量%を重合して得られる重合体であることが必要であり、一般式(I)で示される構造のエチレン性不飽和モノマー(b1)85〜100質量%およびその他のエチレン性不飽和モノマー(b2)0〜15質量%を重合して得られる重合体であることが感熱ゲル化性およびマイグレーションの防止効果と液安定性をより両立しやすいことから好ましい。一般式(I)で示される構造のエチレン性不飽和モノマー(b1)が80質量%未満の場合、液安定性が不十分である。
重合体(b)中のオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位の質量比は1:0.5〜1:5であることが必要である。オキシプロピレン単位の割合が上記範囲よりも少ない場合には感熱ゲル化性およびマイグレーションの防止効果が低下する。一方、オキシプロピレン単位の割合が上記よりも多い場合には液安定性が低下する。重合体(b)中のオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位の質量比が1:0.6〜1:4.8であることが好ましく、1:0.7〜1:4.6であることがより好ましい。重合体(b)中のオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位の質量比は、一般式(I)で示される構造のエチレン性不飽和モノマー(b1)として先に例示した化合物を適宜組み合わせて用いることにより調整できる。
また、重合体(b)中のポリオキシエチレン基の割合が10〜40質量%であることが感熱ゲル化性およびマイグレーションの防止効果と液安定性を両立しやすいことから好ましく、12〜38質量%であることがより好ましく、14〜36質量%であることがさらに好ましい。
また、重合体(b)は、その10%水溶液の曇点が5〜50℃であることが、感熱ゲル化性エマルジョンの感熱ゲル化性およびマイグレーションの防止効果と液安定性を両立しやすいことから好ましく、7〜47℃であることがより好ましく、10〜45℃であることがさらに好ましい。
重合体(b)の製造方法としては公知の製造方法を用いることができ、例えば、ラジカル重合開始剤を用いた、重合体(b)の曇点以上の温度での乳化重合や懸濁重合、有機溶剤中または重合体(b)の曇点以下の温度の水溶液中での溶液重合、塊状重合などの他、イオン重合開始剤によるカチオン重合、アニオン重合なども行うことができる。この中でも、ラジカル重合開始剤を用いる方法が、重合が容易であることから特に好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、公知のものを用いることができ、例えば、ベンゾイルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルヒドロパーオキシドなどの油溶性過酸化物;2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2´−アゾビスイソ酪酸ジメチルなどの油溶性アゾ化合物;過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの水溶性過酸化物;アゾビスシアノ吉草酸、2,2´−アゾビス−(2−アミジノプロパン)二塩酸塩などの水溶性アゾ化合物などが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。また、上記の重合開始剤とともに、還元剤および必要に応じてキレート化剤を併用したレドックス開始剤系を用いてもよい。
本発明においては、界面活性剤(c)がHLB値が12〜18のノニオン性界面活性剤(c1)30〜100質量%およびその他の界面活性剤(c2)0〜70質量%から構成されていることが、感熱ゲル化性およびマイグレーションの防止効果と液安定性の両立の点から好ましく、(c1)が50〜90質量%、(c2)が10〜50質量%であることがより好ましい。
なお、ノニオン性界面活性剤(c1)のHLBが12未満の場合には、感熱ゲル化性エマルジョンの液安定性が不十分となる傾向があり、18を超えた場合には、感熱ゲル化性およびマイグレーションの防止効果が低下する傾向がある。
界面活性剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリオキシエチレン−ポリシロキサンブロック共重合体などのノニオン性界面活性剤;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム(例えば、日光ケミカルズ株式会社製「ECT−3NEX」など)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸ナトリウム、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤;公知の浸透剤および消泡剤などが挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。なお、ノニオン性界面活性剤のHLB値は、藤本武彦著「全訂版新・界面活性剤入門」(三洋化成工業株式会社刊)の128〜131ページに従って計算することができる他、界面活性剤メーカーのカタログ等にも記載されている。
HLB値が12〜18のノニオン性界面活性剤を例示すると、花王株式会社製「エマルゲン108(HLB=12.1)」「エマルゲン109P(HLB=13.6)」「エマルゲン120(HLB=15.3)」「エマルゲン147(HLB=16.3)」「エマルゲン320P(HLB=13.9)」「レオドールTW−L120(HLB=16.7)」「レオドールTW−S120(HLB=14.9)」「エマノーン1112(HLB=13.7)」「エマノーン3115(HLB=13.4)」、三洋化成工業株式会社製「ナロアクティーN−85(HLB=12.6)」「ナロアクティーN−100(HLB=13.3)」「ナロアクティーN−140(HLB=14.7)」「ナロアクティーN−200(HLB=16.0)」「ナロアクティーN−400(HLB=17.8)」などが挙げられる(HLB値はいずれもメーカーカタログ値)。
さらに、本発明の感熱ゲル化性エマルジョンは無機金属塩(d)を含有することが好ましい。用いることができる無機金属塩としては、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、塩化カリウムなどのアルカリ金属の塩や、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、塩化マグネシウムなどのアルカリ土類金属の塩が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
本発明の感熱ゲル化性エマルジョンを構成する主剤樹脂(a)としては、ウレタン樹脂(a1)および/またはウレタン−アクリル複合樹脂(a2)であることが必要であり、ウレタン−アクリル複合樹脂(a2)であることが好ましい。
主剤樹脂(a)として用いうるウレタン樹脂(a1)としては、公知のウレタン樹脂を用いることができ、例えば、高分子ポリオール、有機ポリイソシアネートおよび鎖伸長剤を主原料として用いて得られたウレタン樹脂を用いることができる。
高分子ポリオールとしては公知の高分子ポリオールのいずれも使用することができ、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(メチルテトラメチレングリコール)などのポリエーテルポリオール;ポリブチレンアジペートジオール、ポリブチレンセバケートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレン アジペート)ジオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレン セバケート)ジオール、ポリカプロラクトンジオールなどのポリエステルポリオール;ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレン カーボネート)ジオールなどのポリカーボネートポリオール;ポリエステルカーボネートポリオールなどを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
本発明に用いうる有機ポリイソシアネートとしては、通常のウレタン樹脂の製造に従来から用いられている有機ポリイソシアネートのいずれもが使用でき、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
本発明で用いうる鎖伸長剤成分としては、通常のウレタン樹脂の製造に従来から用いられている鎖伸長剤のいずれもが使用できるが、イソシアネート基と反応し得る活性水素原子を分子中に2個以上有する分子量300以下の低分子化合物を用いるのが好ましい。例えば、ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジンおよびその誘導体、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドなどのジアミン類;ジエチレントリアミンなどのトリアミン類;トリエチレンテトラミンなどのテトラミン類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオールなどのジオール類;トリメチロールプロパン等のトリオール類;ペンタエリスリトール等のペンタオール類;アミノエチルアルコール、アミノプロピルアルコールなどのアミノアルコール類などが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。また、鎖伸長反応時に、鎖伸長剤とともに、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミンなどのモノアミン類;4−アミノブタン酸、6−アミノヘキサン酸などのカルボキシル基含有モノアミン化合物;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのモノオール類を併用してもよい。
さらに、ウレタン樹脂(a1)の原料として、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)吉草酸などのカルボキシル基含有ジオールを併用し、ウレタン樹脂中にカルボキシル基を導入することが好ましい。
ウレタン樹脂(a1)のエマルジョンを製造する方法としては、前記したウレタン樹脂を水中に乳化分散するものであればよく、製造方法としては従来公知の方法を用いることができ特に制限されない。例えば、(1)高分子ポリオールと有機ポリイソシアネートから得られた疎水性の末端イソシアネートプレポリマーを、乳化剤の存在下で高い機械的剪断力により水中に乳化分散させると同時に/または乳化分散させた後に、ポリアミン等の鎖伸長剤により高分子量化させる方法や、(2)カルボキシル基などを導入した親水性の末端イソシアネートプレポリマーを水中に自己乳化させると同時に/または自己乳化させた後にポリアミン等の鎖伸長剤により高分子量化させる方法などを用いることができる。
この際に用いうる乳化剤としては、本発明の感熱ゲル化性エマルジョンが含有しうる界面活性剤(c)として先に例示したものを使用することができる。
また、乳化分散をしやすくするために、末端イソシアネートプレポリマーをアセトン、2−ブタノン、トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド等の有機溶媒で希釈しても良い。さらに、鎖伸長剤の一部または全部をウレタン樹脂の乳化前に反応させておいてもよい。
主剤樹脂(a)として用いうるウレタン−アクリル複合樹脂(a2)とは、ウレタン樹脂エマルジョンの存在下でメタクリル酸誘導体および/またはアクリル酸誘導体を主成分とするエチレン性不飽和モノマーを乳化重合して得られた樹脂である。この際の重合条件は特に制限されず、従来既知のエチレン性不飽和モノマーの乳化重合と同様にして行うことができるが、一般に0〜90℃の温度で、不活性ガス雰囲気下に乳化重合を行うことが、重合安定性などの点から好ましい。この際に用いるウレタン樹脂エマルジョンとしては、上記したウレタン樹脂(a1)のエマルジョンと同様のものを使用することができ、ウレタン樹脂100gあたり界面活性剤を0.5〜6g含有するウレタン樹脂エマルジョンが特に好ましい。また、ウレタン樹脂エマルジョンを製造する際に、2−ブタノン等の有機溶剤の代わりにメタクリル酸誘導体および/またはアクリル酸誘導体を主成分とするエチレン性不飽和モノマーでポリウレタンプレポリマーを希釈してウレタン樹脂エマルジョンを製造しても良い。また、エチレン性不飽和基を含有するポリウレタン樹脂を用いると、複合樹脂中のウレタン樹脂とアクリル系樹脂との粗大相分離が起こりにくくなり、皮膜物性が向上することから好ましい。ウレタン樹脂中へのエチレン性不飽和基の導入は、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アリルアルコール、エチレングリコールジグリシジルエーテルとメタクリル酸の1:2付加物、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルとメタクリル酸の1:2付加物、エチレングリコールジグリシジルエーテルとアクリル酸の1:2付加物、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルとアクリル酸の1:2付加物などの水酸基含有エチレン性不飽和モノマーをウレタン樹脂原料として用いることにより達成される。
一方、ウレタン樹脂エマルジョンの存在下で乳化重合するメタクリル酸誘導体および/またはアクリル酸誘導体を主成分とするエチレン性不飽和モノマーとしては、重合体(b)の製造原料として先に例示したものを使用することができ、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどのメタクリル酸アルキルエステルや、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアクリル酸アルキルエステルを主成分として用いることが特に好ましい。さらに、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、ジビニルベンゼンなどの多官能性エチレン性不飽和モノマーを少量共重合し、樹脂を架橋構造とすることが好ましい。
また、この際に用いうる重合開始剤としては、重合体(b)の製造時に用いうるラジカル重合開始剤として先に例示したものを使用することができる。
ウレタン−アクリル複合樹脂(a2)の原料として用いるウレタン樹脂とエチレン性不飽和モノマーの質量比は90:10〜10:90であることが好ましく、80:20〜15:85であることがより好ましく、70:30〜20:80であることがさらに好ましい。
本発明においては、感熱ゲル化性エマルジョンを構成する主剤樹脂(a)が、樹脂骨格中にカルボキシル基を樹脂100gあたり、1〜10mmol含有していることが、感熱ゲル化性およびマイグレーションの防止効果と液安定性がより良好であることから好ましい。樹脂骨格中のカルボキシル基が、樹脂100gあたり1.5〜9mmolであることがより好ましく、樹脂100gあたり2〜8mmolであることがさらに好ましい。なお、カルボキシル基は中和して塩の状態となっていても良い。
本発明の感熱ゲル化性エマルジョンは、70℃密閉条件下で静置した際のゲル化時間が10分以内であり、且つ40℃密閉条件下で2週間静置した際の粘度上昇率が50%以下であることが感熱ゲル化性およびマイグレーションの防止効果と液安定性に優れる点で好ましい。70℃密閉条件下で静置した際のゲル化時間とは、密閉したガラス製サンプル管(内径:3cm,高さ6cmの円筒形状)中にエマルジョンを30g入れ、70℃の熱水浴中に浸漬して静置した際の、熱水中に浸漬してから液全体がゲル化して流動性を失うまでの時間である。70℃密閉条件下で静置した際のゲル化時間が10分を超える場合には感熱ゲル化性が低過ぎるため、基材に含浸した際に乾燥中に樹脂が表面に移動するマイグレーションが起こり、基材中に樹脂を均一に付着させることが困難である。70℃密閉条件下で静置した際のゲル化時間が9分以内であることがより好ましく、8分以内であることがさらに好ましい
本発明の感熱ゲル化性エマルジョンの安定性は、例えば、該エマルジョンを静置した場合の粘度上昇等を持って評価することができる。40℃密閉条件下で2週間静置した際の粘度上昇率とは、密閉した容器中にエマルジョンを入れ、40℃の恒温槽中に2週間静置した後で室温(25℃)に冷却した際の粘度の上昇率であり、下式により求められる。
粘度上昇率(%)=(静置後の粘度−静置前の粘度)/(静置前の粘度)×100
40℃密閉条件下で2週間静置した際の粘度上昇率が50%を超える場合には、夏場など温度が上がった時に、増粘やゲル化が起こり用途や使用方法が限定される。40℃密閉条件下で2週間静置した際の粘度上昇率が50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、30%以下であることがさらに好ましい。
本発明の感熱ゲル化性エマルジョンは、さらに主剤樹脂(a)用の架橋剤を含有していても良い。用いることができる架橋剤としては、主剤樹脂の官能基と反応し得る官能基を分子内に2個以上含有する水溶性または水分散性の化合物である。主剤樹脂の官能基と、架橋剤の官能基の組み合わせとしては、カルボキシル基とオキサゾリン基、カルボキシル基とカルボジイミド基、カルボキシル基とエポキシ基、カルボキシル基とシクロカーボネート基、カルボキシル基とアジリジン基、カルボニル基とヒドラジド基などの組み合わせが挙げられる。これらの中でも、エマルジョンのポットライフが優れ、且つ製造が容易であることから、カルボキシル基を有する主剤樹脂と、オキサゾリン基またはカルボジイミド基を有する架橋剤の組み合わせが好ましい。オキサゾリン基を有する架橋剤としては、例えば日本触媒株式会社製「エポクロスK−2010E」、「エポクロスK−2020E」、「エポクロスWS−500」などを挙げることができ、カルボジイミド基を有する架橋剤としては、例えば日清紡績株式会社製「カルボジライトE−01」、「カルボジライトE−02」、「カルボジライトV−02」などを挙げることができる。架橋剤の付与量としては、主剤樹脂に対して、架橋剤の有効成分が20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。
さらに、本発明の感熱ゲル化性エマルジョンは、本発明の性質を損なわない限り、さらに、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、蛍光剤、防黴剤、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなどの水溶性高分子化合物、染料、顔料などを適宜含有していてもよい。
本発明の感熱ゲル化性エマルジョンは、感熱ゲル化性およびマイグレーションの防止効果と液安定性に優れ、特に繊維質基材の含浸加工や紙塗工、接着剤、塗料などの用途に、安定に用いることができ、非常に有用である。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、実施例中の部および%は断りのない限り、質量に関するものである。また、以下の実施例において、70℃密閉条件下で静置した際のゲル化時間、40℃密閉条件下で2週間静置した際の粘度上昇率、水溶液の曇点は以下の方法により評価した。
[70℃密閉条件下で静置した際のゲル化時間]
密閉したガラス製サンプル管(内径:3cm,高さ6cmの円筒形状)中にエマルジョンを30g入れた後、70℃の熱水浴中に浸漬して静置し、熱水中に浸漬してから液全体がゲル化して流動性を失うまでの時間を1分単位で測定した。
[40℃密閉条件下で2週間静置した際の粘度上昇率]
密閉した容器中にエマルジョンを入れた後、40℃の恒温槽中に2週間静置し、40℃静置前後の粘度をJIS−K6828に従って測定し、下記式より求めた。
粘度上昇率(%)=(静置後の粘度−静置前の粘度)/(静置前の粘度)×100
[水溶液の曇点]
密閉したガラス製サンプル管(内径:3cm,高さ6cmの円筒形状)中に10%濃度の水溶液を30g入れた後、3℃から1℃/分の速度で昇温し、水溶液が完全に白濁する点を曇点とした。
《重合体(b)の製造》
[参考例1]
冷却管付きフラスコに、蒸留水489gを秤取し、80℃に昇温した後、系内を十分に窒素置換した。メトキシテトラエチレングリコールモノメタクリレート50.4g、ポリプロピレングリコール(オキシプロピレン単位の繰り返し数が5)モノメタクリレート75.6g、n−オクタンチオール1.26gおよび2,2´−アゾビスイソ酪酸ジメチル0.38gを添加して30分撹拌後、メトキシテトラエチレングリコールモノメタクリレート33.6gおよびポリプロピレングリコール(オキシプロピレン単位の繰り返し数が5)モノメタクリレート50.4ggの混合液を、滴下ロートからフラスコ内に180分間かけて滴下し、その後80℃に180分間保持して重合を完了させ、さらにロータリーエバポレーターにより水を除去して、側鎖にオキシエチレン単位およびオキシプロピレン単位を有する重合体を得た(以後、重合体b(1)と呼ぶ)。この重合体中のオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位の質量比は1:1.8、重合体中のオキシエチレン単位の割合は25質量%であり、10%水溶液の曇点は34℃であった。
[参考例2]
冷却管付きフラスコに、蒸留水489gを秤取し、80℃に昇温した後、系内を十分に窒素置換した。メトキシテトラエチレングリコールモノメタクリレート27.7g、ポリプロピレングリコール(オキシプロピレン単位の繰り返し数が5)モノメタクリレート98.3g、n−オクタンチオール2.52gおよび2,2´−アゾビスイソ酪酸ジメチル0.38gを添加して30分撹拌後、メトキシテトラエチレングリコールモノメタクリレート18.5gおよびポリプロピレングリコール(オキシプロピレン単位の繰り返し数が5)モノメタクリレート65.5ggの混合液を、滴下ロートからフラスコ内に180分間かけて滴下し、その後80℃に180分間保持して重合を完了させ、さらにロータリーエバポレーターにより水を除去して、側鎖にオキシエチレン単位およびオキシプロピレン単位を有する重合体を得た(以後、重合体b(2)と呼ぶ)。この重合体中のオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位の質量比は1:4.3、重合体中のオキシエチレン単位の割合は14質量%であり、10%水溶液の曇点は14℃であった。
[参考例3]
冷却管付きフラスコに、蒸留水489gを秤取し、80℃に昇温した後、系内を十分に窒素置換した。メトキシテトラエチレングリコールモノメタクリレート50.4g、メトキシジエチレングリコールモノメタクリレート25.2g、ポリプロピレングリコール(オキシプロピレン単位の繰り返し数が5)モノメタクリレート44.1g、メタクリル酸メチル6.30g、n−オクタンチオール1.26gおよび2,2´−アゾビスイソ酪酸ジメチル0.38gを添加して30分撹拌後、メトキシテトラエチレングリコールモノメタクリレート33.6g、メトキシジエチレングリコールモノメタクリレート16.8g、ポリプロピレングリコール(オキシプロピレン単位の繰り返し数が5)モノメタクリレート29.4gおよびメタクリル酸メチル4.2gの混合液を、滴下ロートからフラスコ内に180分間かけて滴下し、その後80℃に180分間保持して重合を完了させ、さらにロータリーエバポレーターにより水を除去して、側鎖にオキシエチレン単位およびオキシプロピレン単位を有する重合体を得た(以後、重合体b(3)と呼ぶ)。この重合体中のオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位の質量比は1:0.8、重合体中のオキシエチレン単位の割合は35質量%であり、10%水溶液の曇点は31℃であった。
[参考例4]
冷却管付きフラスコに、蒸留水489gを秤取し、80℃に昇温した後、系内を十分に窒素置換した。ポリプロピレングリコールーb−ポリエチレングリコール(オキシプロピレン単位の繰り返し数が3、オキシエチレン単位の繰り返し数が4)モノメタクリレート113.4g、メタクリル酸メチル12.6gおよび2,2´−アゾビスイソ酪酸ジメチル0.38gを添加して30分撹拌後、ポリプロピレングリコールーb−ポリエチレングリコール(オキシプロピレン単位の繰り返し数が3、オキシエチレン単位の繰り返し数が4)モノメタクリレート75.6gおよびメタクリル酸メチル8.4gの混合液を、滴下ロートからフラスコ内に180分間かけて滴下し、その後80℃に180分間保持して重合を完了させ、さらにロータリーエバポレーターにより水を除去して、側鎖にオキシエチレン単位およびオキシプロピレン単位を有する重合体を得た(以後、重合体b(4)と呼ぶ)。この重合体中のオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位の質量比は1:1.0、重合体中のオキシエチレン単位の割合は36質量%であり、10%水溶液の曇点は32℃であった。
[参考例5]
冷却管付きフラスコに、蒸留水489gを秤取し、80℃に昇温した後、系内を十分に窒素置換した。メトキシテトラエチレングリコールモノメタクリレート37.8g、メトキシジエチレングリコールモノメタクリレート81.9g、メタクリル酸メチル6.30g、n−オクタンチオール1.26gおよび2,2´−アゾビスイソ酪酸ジメチル0.38gを添加して30分撹拌後、メトキシテトラエチレングリコールモノメタクリレート25.2g、メトキシジエチレングリコールモノメタクリレート54.6gおよびメタクリル酸メチル4.2gの混合液を、滴下ロートからフラスコ内に180分間かけて滴下し、その後80℃に180分間保持して重合を完了させ、さらにロータリーエバポレーターにより水を除去して、側鎖にオキシエチレン単位を有する重合体を得た(以後、重合体b(5)と呼ぶ)。この重合体中のオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位の質量比は1:0、重合体中のオキシエチレン単位の割合は49質量%であり、10%水溶液の曇点は34℃であった。
[参考例6]
冷却管付きフラスコに、蒸留水489gを秤取し、80℃に昇温した後、系内を十分に窒素置換した。メトキシテトラエチレングリコールモノメタクリレート17.6g、ポリプロピレングリコール(オキシプロピレン単位の繰り返し数が5)モノメタクリレート108.4g、n−オクタンチオール1.26gおよび2,2´−アゾビスイソ酪酸ジメチル0.38gを添加して30分撹拌後、メトキシテトラエチレングリコールモノメタクリレート11.8gおよびポリプロピレングリコール(オキシプロピレン単位の繰り返し数が5)モノメタクリレート72.2gの混合液を、滴下ロートからフラスコ内に180分間かけて滴下し、その後80℃に180分間保持して重合を完了させ、さらにロータリーエバポレーターにより水を除去して、側鎖にオキシエチレン単位およびオキシプロピレン単位を有する重合体を得た(以後、重合体b(6)と呼ぶ)。この重合体中のオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位の質量比は1:7.4、重合体中のオキシエチレン単位の割合は9質量%であり、10%水溶液の曇点は6℃であった。
《主剤樹脂(a)の製造》
[参考例7]
(1)ウレタン樹脂エマルジョンの製造
フラスコに、数平均分子量が2000のポリテトラメチレングリコール150g、数平均分子量が2000のポリヘキサメチレンカーボネートジオール150g、2,2−ジメチロールブタン酸8.44g、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート105gを秤取し、乾燥窒素雰囲気下、90℃で3時間撹拌して系中の水酸基を定量的に反応させ、イソシアネート基末端のプレポリマーを得た。これに2−ブタノン211gを加えて均一に撹拌した後、40℃にフラスコ内温度を下げ、トリエチルアミン5.65gを加えて10分間撹拌を行った。次いで、乳化剤(界面活性剤)としてラウリル硫酸ナトリウム8.45gを蒸留水378gに溶解した水溶液を前記プレポリマーに加えホモミキサーで3分間撹拌して乳化した後、直ちにヒドラジン・1水和物3.46gおよびジエチレントリアミン7.13gを蒸留水246gに溶解した水溶液を加えてホモミキサーで3分間撹拌し、鎖伸長反応を行った.その後、2−ブタノンをロータリーエバポレーターにより除去し、樹脂濃度40質量%のウレタン樹脂エマルジョンを得た。
(2)ウレタン−アクリル複合樹脂エマルジョンの製造
冷却管付きフラスコに、上記(1)で得られたウレタン樹脂エマルジョン563g、硫酸第一鉄・7水和物0.002g、ピロリン酸カリウム0.34g、二酸化チオウレア0.45g、エチレンジアミン四酢酸・2ナトリウム塩0.011gおよび蒸留水197gを秤取し、40℃に昇温した後、系内を十分に窒素置換した。次いで、アクリル酸ブチル214g、1,6−ヘキサンジオールジアクリリレート6.75g、メタクリル酸アリル4.50gおよびエマルゲン120(花王株式会社製ノニオン性界面活性剤)4.50gの混合液と、クメンヒドロパーオキシド0.45g、ECT−3NEX(日光ケミカルズ株式会社製アニオン性界面活性剤)0.225gおよび蒸留水10gの乳化液を別々の滴下ロートからフラスコ内に240分かけて滴下し、さらに滴下終了後40℃に60分間保持して重合を完了させ、樹脂固形分濃度45質量%のウレタン−アクリル複合樹脂エマルジョン(主剤樹脂(a)+界面活性剤(c)を含有)を得た。なお、このウレタン−アクリル複合樹脂は樹脂骨格中に主剤樹脂100gあたりカルボキシル基を6.7mmol含有している。また、このエマルジョンは70℃静置条件下で感熱ゲル化性を示さず、40℃で2週間静置後の粘度上昇率は1%であった。
参考例1で製造した重合体b(1)1.8部および硫酸ナトリウム1.2部を蒸留水197部に溶解した水溶液を参考例7で製造したウレタン−アクリル複合樹脂エマルジョン100部に添加し、ウレタン−アクリル複合樹脂濃度が15質量%のエマルジョンを得た。このエマルジョンの70℃静置条件下での感熱ゲル化時間は7分と感熱ゲル化性が良好であり、また40℃で2週間静置後の粘度上昇率は15%と液安定性にも優れていた。
実施例1において、参考例1で製造した重合体b(1)に代えて参考例2で製造した重合体b(2)を用いること以外は実施例1と同様にして、ウレタン−アクリル複合樹脂濃度が15質量%のエマルジョンを得た。このエマルジョンの70℃静置条件下での感熱ゲル化時間は6分と感熱ゲル化性が良好であり、40℃で2週間静置後の粘度上昇率は21%と液安定性にも優れていた。
実施例1において、参考例1で製造した重合体b(1)に代えて参考例3で製造した重合体b(3)を用いること以外は実施例1と同様にして、ウレタン−アクリル複合樹脂濃度が15質量%のエマルジョンを得た。このエマルジョンの70℃静置条件下での感熱ゲル化時間は6分と感熱ゲル化性が良好であり、40℃で2週間静置後の粘度上昇率は17%と液安定性にも優れていた。
実施例1において、参考例1で製造した重合体b(1)に代えて参考例4で製造した重合体b(4)を用いること以外は実施例1と同様にして、ウレタン−アクリル複合樹脂濃度が15質量%のエマルジョンを得た。このエマルジョンの70℃静置条件下での感熱ゲル化時間は8分と感熱ゲル化性が良好であり、40℃で2週間静置後の粘度上昇率は23%と液安定性にも優れていた。
比較例1
実施例1において、参考例1で製造した重合体b(1)に代えて参考例5で製造した重合体b(5)を用いること以外は実施例1と同様にして、ウレタン−アクリル複合樹脂濃度が15質量%のエマルジョンを得た。このエマルジョンの70℃静置条件下での感熱ゲル化時間は13分と劣っており、40℃で2週間静置後の粘度上昇率は15%であった。
比較例2
実施例1において、参考例1で製造した重合体b(1)に代えて参考例6で製造した重合体b(6)を用いること以外は実施例1と同様にして、ウレタン−アクリル複合樹脂濃度が15質量%のエマルジョンを得た。このエマルジョンの70℃静置条件下での感熱ゲル化時間は7分と感熱ゲル化性は良好であったが、40℃で2週間静置後の粘度上昇率は147%と粘度安定性が劣っていた。


Claims (7)

  1. 主剤樹脂(a)、重合体(b)および界面活性剤(c)とから主としてなり、且つ下記要件(1)〜(3)を満たすことを特徴とする感熱ゲル化性エマルジョン。
    (1)主剤樹脂(a)が、ウレタン樹脂(a1)および/またはウレタン−アクリル複合樹脂(a2)である;
    (2)重合体(b)が、一般式(I)で示される構造のエチレン性不飽和モノマー(b1)80〜100質量%およびその他のエチレン性不飽和モノマー(b2)0〜20質量%を重合して得られる重合体である;
    Figure 2006028248
    (式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Rは水素原子または炭素数1〜18のアルキル基から選ばれる基を表し、mは0以上の整数を表し、nは0〜10の整数を表す。ただし、m+nは2以上である。)
    (3)重合体(b)中のオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位の質量比が1:0.5〜1:5である。
  2. 感熱ゲル化性エマルジョンが、さらに無機金属塩(d)を含有している請求項1に記載の感熱ゲル化性エマルジョン。
  3. 感熱ゲル化性エマルジョンが、主剤樹脂(a)を5〜40質量%、重合体(b)を0.3〜10質量%、界面活性剤(c)を0.2〜5質量%および無機金属塩(d)を0〜2質量%含有している請求項1または2に記載の感熱ゲル化性エマルジョン。
  4. 主剤樹脂(a)が、樹脂骨格中に主剤樹脂100gあたりカルボキシル基を1〜10mmol含有している請求項1〜3のいずれか1項に記載の感熱ゲル化性エマルジョン。
  5. 重合体(b)中のオキシエチレン単位の割合が10〜40質量%である請求項1〜4のいずれか1項に記載の感熱ゲル化性エマルジョン。
  6. 重合体(b)の10%水溶液の曇点が、5〜50℃である請求項1〜5のいずれか1項に記載の感熱ゲル化性エマルジョン。
  7. 界面活性剤(c)が、HLB値が12〜18のノニオン性界面活性剤(c1)30〜100質量%およびその他の界面活性剤(c2)0〜70質量%から構成されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の感熱ゲル化性エマルジョン。
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