以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
なお、本明細書において、「ポリマー」とは「ホモポリマー(単独重合体)」と「コポリマー(共重合体)」を含む重合体ないしは重合物の総称である。ただし、ホモポリマーは繰り返し単位が1種類であるものの他、同種の繰り返し単位、即ち、同一の一般式で表される2種以上の繰り返し単位を含むものを包含するものとする。
また、「(メタ)アクリル」は「アクリル」及び/又は「メタクリル」をさし、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリロ」についても同様である。
[作用機構]
本発明において、特定のカチオン性ポリマーAとカチオン性ポリマーBの併用、更にはカチオン性ポリマーCとの併用における各ポリマーの相互作用の詳細については明確でないが、以下のような作用機構の相乗効果により、本発明の効果が発現されるものと推定される。
(1) カチオン性ポリマーAに含まれるアルキル4級化塩又はアラルキル4級化塩のアルキル基又はアラルキル基に由来する強いカチオン性のために、本発明の汚泥脱水剤を添加して得られる凝集フロックの水親和性が低下し、含水率が下がり易い脱水性に優れた凝集フロックが形成される。
(2) カチオン性ポリマーBの汚泥粒子への高い吸着力により、脱水機の圧搾圧力に耐えうるフロック強度を得ることができるようになる。
(3) アミジン系ポリマーであるカチオン性ポリマーCは、配合量がわずかであっても、カチオン密度が高いので緻密なフロックを形成しSSリークを減少させる他、高い荷電密度により脱水ケーキ含水率を下げやすくする。
本発明で用いるカチオン性ポリマーABでは、上記のカチオン性ポリマーAとカチオン性ポリマーBの両方の作用効果が得られる。
更に、カチオン性ポリマーA及びカチオン性ポリマーB、或いはカチオン性ポリマーABと、必要に応じてカチオン性ポリマーCと共に、アニオン基を有するポリマーを併用して汚泥の脱水を行うことにより、カチオン性ポリマーとアニオン基を有するポリマーとの静電的反応により、さらに強固な凝集フロックを形成することができることにより、汚泥脱水剤の有効性を高め、より一層良好な脱水効果を得ることができる。
[カチオン性ポリマーA]
本発明で用いるカチオン性ポリマーAは、下記一般式(1)で表される四級アミン塩単位(以下「四級アミン塩単位(1)」と称す場合がある。)を繰り返し単位として含むものである。
(一般式(1)中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2は炭素数1〜4のアルキレン基を表し、R3a,R3bは各々独立に炭素数1〜4のアルキル基を表し、R4は炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜12のアラルキル基を表す。Aは−O−又は−NH−、Z−は塩形成性アニオンを表す。)
上記一般式(1)において、R1は水素原子又はメチル基であり、R2はメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などの炭素数1〜4のアルキレン基であり、プロピレン基及びブチレン基は直鎖状であってもよく、側鎖を有するものであってもよい。R3a,R3bは各々独立にメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基であり、R4は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基、又はベンジル基、フェニルエチル基等の炭素数6〜12のアラルキル基であり、好ましくはベンジル基である。また、Aは−O−又は−NH−であり、Z−は塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンなどのハロゲンイオン、1/2SO4 2−、NO3 −、CH3COO−、CH3SO4 −、C2H5SO4 −などの塩形成性アニオンである。
四級アミン塩単位(1)を繰り返し単位として有するカチオン性ポリマーAは、下記一般式(1’)で表されるカチオン性ビニルモノマー(以下「カチオン性ビニルモノマー(1’)」と称す場合がある。)を用いて製造される。
(上記式中、R1、R2、R3a、R3b、R4、A及びZ−は一般式(1)におけると同義であり、その具体例も同様である。)
カチオン性ビニルモノマー(1’)としては、例えば、ジメチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジエチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジ−n−プロピルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジイソプロピルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジ−n−ブチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジ−sec−ブチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジイソブチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジメチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリルアミド又はメタクリルアミド、ジエチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリルアミド又はメタクリルアミド、ジ−n−プロピルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリルアミド又はメタクリルアミド、ジイソプロピルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリルアミド又はメタクリルアミド、ジ−n−ブチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリルアミド又はメタクリルアミド、ジ−sec−ブチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリルアミド又はメタクリルアミド、ジイソブチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリルアミド又はメタクリルアミドなどの、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アラルキルによる四級化物などが挙げられる。例えば、R4がベンジル基のベンジル系カチオン性ビニルモノマーとしては、これらのモノマーのハロゲン化ベンジルによる四級化物などを挙げることができる。ハロゲン化ベンジルとしては、塩化ベンジル、臭化ベンジルなどを挙げることができる。
カチオン性ポリマーAの製造にあたり、これらのカチオン性ビニルモノマー(1’)は、1種を単独で用いることができ、また、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明で用いるカチオン性ポリマーAは、上記のカチオン性ビニルモノマー(1’)のホモポリマーを好適に用いることができるが、このカチオン性ビニルモノマー(1’)と共重合可能な他のモノマー(以下、「共重合性モノマー」と称す場合がある。)の1種又は2種以上とのコポリマーであってもよい。なお、カチオン性ビニルモノマー(1’)のホモポリマーとは、2種以上の四級アミン塩単位(1)が含まれるものを包含するものとする。
カチオン性ポリマーAがカチオン性ビニルモノマー(1’)と共重合性モノマーとのコポリマーである場合、使用される共重合性モノマーには特に制限はない。
この共重合性モノマーとしては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミドなどのアミド類、アクリロニトリルやメタクリロニトリルなどのシアン化ビニル系化合物、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸のアルキルエステル類、酢酸ビニルなどのビニルエステル類、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどの芳香族ビニル系化合物などのノニオン性ビニルモノマーや、(メタ)アクリル酸を挙げることができる。これらの共重合性モノマーは、1種を単独で用いることができ、また、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明において、カチオン性ポリマーAが上記のコポリマーである場合、コポリマー中の四級アミン塩単位(1)の割合が過度に少ないと本発明の効果を十分に得ることができない。従って、カチオン性ポリマーAは、全繰り返し単位中の四級アミン塩単位(1)の割合が70〜100モル%で、共重合性モノマー由来の繰り返し単位が0〜30モル%であることが好ましく、特に、全繰り返し単位中の四級アミン塩単位(1)の割合は80〜100モル%、とりわけ90〜100モル%であることが好ましい。
また、本発明で用いるカチオン性ポリマーAは、0.1Nの塩化ナトリウム水溶液を溶媒として30℃で測定した固有粘度が3.0dl/g以上、特に8.0dl/g以上であることが好ましい。固有粘度が3.0dl/g未満であると、凝集力が弱く、汚泥の処理量が低下するおそれがある。なお、分子量が大きくなると、形成されるフロックの緻密性が低下し、フロック強度が低下するため、カチオン性ポリマーAの固有粘度の上限は通常12.0dl/g以下である。
また、本発明で用いるカチオン性ポリマーAのコロイド当量は2.8〜4.8meq/gであることが好ましい。なお、カチオン性ポリマーA、後述のカチオン性ポリマーB、カチオン性ポリマーAB及びカチオン性ポリマーCのコロイド当量は「コロイド滴定法」(千手諒一著、南江堂(株)(S44年11月発行))により測定される。
本発明に用いるカチオン性ポリマーAの製造方法には特に制限はなく、常法である溶液重合、懸濁重合、エマルション重合など、いずれの方法も用いることができる。水溶液重合においては、モノマーを水に溶解し、雰囲気を不活性ガスで置換し、重合温度まで昇温した後、重合開始剤として、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩などの水溶性重合開始剤を加えて重合することができる。
[カチオン性ポリマーB]
本発明で用いるカチオン性ポリマーBは、下記一般式(2A)で表される三級アミン塩単位(以下「三級アミン塩単位(2A)」と称す場合がある。)及び/又は下記一般式(2B)で表されるアミン・酸付加体単位(以下「アミン・酸付加体単位(2B)」と称す場合がある。)を繰り返し単位として有するものである。
(一般式(2A),(2B)中、R5は水素原子又はメチル基を表し、R6は炭素数1〜4のアルキレン基を表し、R7は炭素数1〜4のアルキル基を表し、R8は炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜12のアラルキル基を表す。Dは−O−又は−NH−、Y−は塩形成性アニオン、Qは酸を表す。)
上記一般式(2A),(2B)において、R5は水素原子又はメチル基であり、R6はメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などの炭素数1〜4のアルキレン基であり、プロピレン基及びブチレン基は直鎖状であってもよく、側鎖を有するものであってもよい。R7はメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基であり、R8は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基、又はベンジル基、フェニルエチル基等の炭素数6〜12のアラルキル基が挙げられるが、汚泥への吸着性の観点から、あまり嵩高くない炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。また、Dは−O−又は−NH−であり、Y−は塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンなどのハロゲンイオン、1/2SO4 2−、NO3 −、CH3COO−、CH3SO4 −、C2H5SO4 −などの塩形成性アニオンである。Qは塩酸、臭素酸、ヨウ素酸、1/2硫酸、酢酸、硝酸などの酸である。
三級アミン塩単位(2A)及び/又はアミン・酸付加体単位(2B)を繰り返し単位として有するカチオン性ポリマーBは、下記一般式(2A’)で表されるカチオン性ビニルモノマー(以下「カチオン性ビニルモノマー(2A’)」と称す場合がある。)及び/又は下記一般式(2B’)で表されるカチオン性ビニルモノマー(以下「カチオン性ビニルモノマー(2B’)」と称す場合がある。)を用いて製造される。
(上記式中、R5、R6、R7、R8、D、Y−及びQは一般式(2A),(2B)におけると同義であり、その具体例も同様である。)
カチオン性ビニルモノマー(2A’)のアミン形のモノマー及びカチオン性ビニルモノマー(2B’)の酸Q以外のモノマーとしては、例えば、ジメチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジエチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジ−n−プロピルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジイソプロピルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジ−n−ブチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジ−sec−ブチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジイソブチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリレート又はメタクリレート、ジメチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリルアミド又はメタクリルアミド、ジエチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリルアミド又はメタクリルアミド、ジ−n−プロピルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリルアミド又はメタクリルアミド、ジイソプロピルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリルアミド又はメタクリルアミド、ジ−n−ブチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリルアミド又はメタクリルアミド、ジ−sec−ブチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリルアミド又はメタクリルアミド、ジイソブチルアミノ(メチル、エチル、プロピル又はブチル)アクリルアミド又はメタクリルアミドが挙げられる。カチオン性ビニルモノマー(2A’)、カチオン性ビニルモノマー(2B’)はこれらのカチオン性ビニルモノマーに酸を付加させたものである。
カチオン性ポリマーBの製造にあたり、これらのカチオン性ビニルモノマー(2A’),(2B’)は、1種を単独で用いることができ、また、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明で用いるカチオン性ポリマーBは、上記のカチオン性ビニルモノマー(2A’),(2B’)のホモポリマーを好適に用いることができるが、このカチオン性ビニルモノマー(2A’),(2B’)と共重合可能な他のモノマー(以下、「共重合性モノマー」と称す場合がある。)の1種又は2種以上とのコポリマーであってもよい。なお、カチオン性ビニルモノマー(2A’),(2B’)のホモポリマーとは、2種以上の三級アミン塩単位(2A)及び/又はアミン・酸付加体単位(2B)が含まれるものを包含するものとする。
カチオン性ポリマーBがカチオン性ビニルモノマー(2A’),(2B’)と共重合性モノマーとのコポリマーである場合、使用される共重合性モノマーには特に制限はない。
この共重合性モノマーとしては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、(メタ)アクリル酸、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミドなどのアミド類、アクリロニトリルやメタクリロニトリルなどのシアン化ビニル系化合物、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸のアルキルエステル類、酢酸ビニルなどのビニルエステル類、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどの芳香族ビニル系化合物などのノニオン性ビニルモノマーや、(メタ)アクリル酸を挙げることができる。これらの共重合性モノマーは、1種を単独で用いることができ、また、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明において、カチオン性ポリマーBが上記のコポリマーである場合、コポリマー中の三級アミン塩単位(2A)及び/又はアミン・酸付加体単位(2B)の割合が過度に少ないと本発明の効果を十分に得ることができない。従って、カチオン性ポリマーBは、全繰り返し単位中の三級アミン塩単位(2A)及び/又はアミン・酸付加体単位(2B)の割合が70〜100モル%で、共重合性モノマー由来の繰り返し単位が0〜30モル%であることが好ましく、特に、全繰り返し単位中の三級アミン塩単位(2A)及び/又はアミン・酸付加体単位(2B)の割合は80〜100モル%、とりわけ90〜100モル%であることが好ましい。
また、本発明で用いるカチオン性ポリマーBは、1.0Nの硝酸水溶液を溶媒として30℃で測定した固有粘度が3.0dl/g以上、特に5.0dl/g以上であることが好ましい。固有粘度が3.0dl/g未満であると、凝集力が弱く、汚泥の処理量が低下するおそれがある。なお、分子量が大きくなると、形成されるフロックの緻密性が低下し、フロック強度が低下するため、カチオン性ポリマーBの固有粘度の上限は通常8.0dl/g以下である。
また、本発明で用いるカチオン性ポリマーBのコロイド当量は2.8〜5.0meq/gであることが好ましい。
本発明に用いるカチオン性ポリマーBの製造方法には特に制限はなく、常法である溶液重合、懸濁重合、エマルション重合など、いずれの方法も用いることができる。水溶液重合においては、モノマーを水に溶解し、雰囲気を不活性ガスで置換し、重合温度まで昇温した後、重合開始剤として、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩などの水溶性重合開始剤を加えて重合することができる。
[カチオン性ポリマーAB]
本発明においては、上記のカチオン性ポリマーAとカチオン性ポリマーBとを併用する代りに、四級アミン塩単位(1)と三級アミン塩単位(2A)及び/又はアミン・酸付加体単位(2B)とを繰り返し単位として有するカチオン性ポリマーABを用いてもよく、カチオン性ポリマーAとカチオン性ポリマーBと共にカチオン性ポリマーABを併用してもよい。
カチオン性ポリマーABは、前述のカチオン性ビニルモノマー(1’)とカチオン性ビニルモノマー(2A’)及び/又はカチオン性ビニルモノマー(2B’)とを用いてカチオン性ポリマーAやカチオン性ポリマーBと同様に製造することができる。その際、カチオン性ポリマーA,Bと同様に、前述の共重合性モノマーを用いてもよい。
カチオン性ポリマーABは、四級アミン塩単位(1)と三級アミン塩単位(2A)及び/又はアミン・酸付加体単位(2B)とを繰り返し単位に有することによる効果を有効に得る上で、全繰り返し単位中の四級アミン塩単位(1)の割合が10〜90モル%で、三級アミン塩単位(2A)及び/又はアミン・酸付加体単位(2B)の割合が10〜90モル%で、共重合性モノマー由来の繰り返し単位が0〜30モル%であることが好ましく、全繰り返し単位中の四級アミン塩単位(1)の割合が30〜70モル%で、三級アミン塩単位(2A)及び/又はアミン・酸付加体単位(2B)の割合が30〜70モル%であることが好ましい。
また、本発明で用いるカチオン性ポリマーABは、0.1Nの塩化ナトリウム水溶液を溶媒として30℃で測定した固有粘度が3.0dl/g以上、特に8.0dl/g以上であることが好ましい。固有粘度が3.0dl/g未満であると、凝集力が弱く、フロックを形成しないおそれがある。なお、分子量が大きくなると、形成されるフロックの緻密性が低下し、フロック強度が低下するため、カチオン性ポリマーABの固有粘度の上限は通常12.0dl/g以下である。
また、本発明で用いるカチオン性ポリマーABのコロイド当量は3.0〜5.5meq/gであることが好ましい。
[カチオン性ポリマーC]
本発明で用いるカチオン性ポリマーCは、下記一般式(3)で表されるアミジン単位(以下「アミジン単位(3)」と称す場合がある。)又は下記一般式(4)で表されるアミジン単位(以下「アミジン単位(4)」と称す場合がある。)を繰り返し単位として有するものである。
(一般式(3),(4)中、R11,R12は各々独立に水素原子又はメチル基を表し、X−は塩形成性アニオンを表す。)
上記一般式(3),(4)において、X−としては、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンなどのハロゲンイオン、1/2SO4 2−、NO3 −、CH3COO−、CH3SO4 −、C2H5SO4 −などが挙げられる。
本発明で用いるアミジン単位(3)又はアミジン単位(4)を繰り返し単位として含むカチオン性ポリマーC(アミジン単位(3)とアミジン単位(4)の両方を含むものであってもよい。)は、下記一般式(5)で表されるN−ビニルカルボン酸アミド又はN−イソプロペニルカルボン酸アミドと、下記一般式(6)で表される(メタ)アクリロニトリルと、必要に応じて用いられるこれらと共重合可能なモノマー(以下「共重合性モノマー」と称す場合がある。)を共重合し、得られたコポリマーを加水分解及びアミジン化することによって得ることができる。
(ただし、式中、R11は水素原子又はメチル基、R13は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である。)
CH2=CR12−CN …(6)
(ただし、式中、R12は水素原子又はメチル基である。)
上記のN−ビニルカルボン酸アミドとしては、例えば、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルプロピオンアミド、N−ビニルブチルアミド、N−ビニルバレルアミドなどを挙げることができる。N−イソプロペニルカルボン酸アミドとしては、例えば、N−イソプロペニルホルムアミド、N−イソプロペニルアセトアミド、N−イソプロペニルプロピオンアミド、N−イソプロペニルブチルアミド、N−イソプロペニルバレルアミドなどを挙げることができる。
必要に応じてN−ビニルカルボン酸アミド又はN−イソプロペニルカルボン酸アミドの代わりに、N−ビニルこはく酸イミド、N−ビニルグルタルイミド、N−イソプロペニルこはく酸イミド、N−イソプロペニルグルタルイミドなどのN−ビニルカルボン酸イミド又はN−イソプロペニルカルボン酸イミドを使用することができる。
共重合性モノマーとしては、適当なモノマー反応性比を有するものであれば制限なく使用することができ、例えば、(メタ)アクリルアミド、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドンなどのノニオン性ビニルモノマー、(メタ)アクリル酸又はそのアルカリ金属塩、ビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸などのスルホン基を有するモノマー又はそのアルカリ金属塩などのアニオン性ビニルモノマー、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどの3級塩若しくは4級アンモニウム塩などのカチオン性ビニルモノマーなどの1種又は2種以上を挙げることができる。
重合方法には特に制限はなく、使用するモノマー及び生成するポリマーの溶解性などに応じて、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などを選ぶことができる。例えば、使用するモノマーも生成するポリマーも水溶性であれば、水溶液重合が可能であり、モノマーを水に溶解し、不活性ガスをバブリングし、所定温度まで昇温した後、水溶性重合開始剤を添加することによってポリマーを得ることができる。水溶液重合により得られたポリマーは、そのまま又は単離した後、加水分解及びアミジン化反応に供することができる。また、使用するモノマーの水への溶解度が小さいときは、懸濁重合、乳化重合などを用いることができる。
懸濁重合においては、水、モノマー、乳化剤、水溶性の重合開始剤及び炭化水素系分散媒などを不活性ガス雰囲気中で撹拌下に加熱することによりポリマーを得ることができる。
重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩など、一般的な開始剤を用いることができるが、アゾ系化合物が特に好ましい。
本発明において、上記のポリマーの水溶液又は懸濁液を酸又はアルカリの存在下に加熱することにより、ポリマー中の酸アミド単位を加水分解してアミン単位とし、さらにアミン単位と隣接するニトリル単位の反応によりアミジン単位(3)及び/又は(4)を生成するアミジン化反応を行う。
アミジン単位(3),(4)は反応するモノマーの異性体によって決定される。なお、この異性体は通常、共存している。
加水分解及びアミジン化反応は2段階で行うことができるが、通常は1段階で行うことが好ましい。ポリマーの構造と目的の加水分解率及びアミジン化率に応じて、反応条件を選択することが可能である。通常は上記のポリマーを5〜80重量%の水溶液又は懸濁液とし、酸アミド単位に対し1〜5当量倍の酸、又は酸アミド単位に対し1〜5当量倍のアルカリを加え、40〜100℃に加熱することにより加水分解及びアミジン化反応を行うことができる。酸による加水分解及びアミジン化反応を行った場合には、得られるカチオン性ポリマーAのアミノ基はアンモニウム塩を形成する。
なお、前記の共重合性モノマーのうち、(メタ)アクリルアミド類及び(メタ)アクリレート類に由来するポリマー中の構造単位は、加水分解によって一部は(メタ)アクリル酸単位に変化する。
アミジン単位(3),(4)を有するカチオン性ポリマーCを構成する全繰り返し単位に占めるアミジン単位(3),(4)の割合は、20〜100モル%であることが好ましく、50〜100モル%であることがさらに好ましい。カチオン性ポリマーC中のアミジン単位(3),(4)が少な過ぎるとアミジン単位(3),(4)を含むことによる含水率減少効果が低下する。
アミジン単位(3),(4)を有するカチオン性ポリマーCは、高分子量であることが好ましく、分子量の指標となる1.0N塩化ナトリウム水溶液を溶媒として30℃で測定した固有粘度が1dl/g以上であることが好ましく、3dl/g以上であることがさらに好ましい。なお、分子量が高すぎると反応性が悪くなり、高カチオン密度のメリットが活かせないので、固有粘度の上限は通常10dl/g以下である。
また、カチオン性ポリマーCのコロイド当量は、5.0〜6.4meq/g、特に5.5〜6.4meq/gであることが好ましい。カチオン性ポリマーCのコロイド当量がこの範囲であることにより高い凝集性が得られ、好ましい。
本発明において、カチオン性ポリマーCは、上記アミジン化反応を終了した水溶液のまま又は濃縮若しくは希釈した水溶液として、汚泥脱水剤に使用することができる。或いは、カチオン性ポリマーCの水溶液又は懸濁液を公知の方法で分離、乾燥して粉末化して使用することができる。
[カチオン性ポリマーAとカチオン性ポリマーBとカチオン性ポリマーCの割合]
本発明の汚泥脱水剤は、カチオン性ポリマーAとカチオン性ポリマーBとを含むものであってもよく、更にカチオン性ポリマーCを含むものであってもよい。
本発明の汚泥脱水剤中のカチオン性ポリマーAとカチオン性ポリマーBとカチオン性ポリマーCとの割合は、これらの合計100重量%におけるカチオン性ポリマーAの割合が10〜90重量%、カチオン性ポリマーBの割合が10〜90重量%、カチオン性ポリマーCの割合が0〜20重量%であることが好ましく、より好ましくはカチオン性ポリマーAの割合が20〜80重量%、カチオン性ポリマーBの割合が20〜80重量%、カチオン性ポリマーCの割合が0〜20重量%であるり、特に好ましくはカチオン性ポリマーAの割合が30〜80重量%、カチオン性ポリマーBの割合が30〜80重量%、カチオン性ポリマーCの割合が0〜10重量%である。
各ポリマーの割合が上記範囲外であると、これらの2種又は3種のポリマーを組み合わせて用いることによる本発明の効果を十分に得ることができない。
[カチオン性ポリマーABとカチオン性ポリマーCの割合]
本発明の汚泥脱水剤は、カチオン性ポリマーABのみを含むものであってもよく、更にカチオン性ポリマーCを含むものであってもよい。
本発明の汚泥脱水剤中のカチオン性ポリマーABとカチオン性ポリマーCとの割合は、これらの合計100重量%におけるカチオン性ポリマーABの割合が80〜100重量%、カチオン性ポリマーCの割合が0〜20重量%であることが好ましく、より好ましくはカチオン性ポリマーABの割合が90〜100重量%、カチオン性ポリマーCの割合が0〜10重量%である。
各ポリマーの割合が上記範囲外であると、この1種又は2種のポリマーを組み合わせて用いることによる本発明の効果を得ることができない。
[アニオン基を有するポリマー]
上記のカチオン性ポリマーAとカチオン性ポリマーB、或いはカチオン性ポリマーAB、或いはこれらに更にカチオン性ポリマーCを含有する本発明の汚泥脱水剤(以下、「本発明のカチオン系脱水剤」と称す場合がある。)と共に、アニオン基を有するポリマー(以下、「アニオン基含有ポリマー」と称す場合がある。)を併用して汚泥の脱水処理を行うことで、本発明のカチオン系脱水剤の有効性を高め、より一層良好な脱水効果を得ることができる。
従って、本発明の汚泥脱水剤は更にアニオン基を有するポリマーを含むものであってもよい。
また、本発明のカチオン系脱水剤は、アニオン基を有するポリマーと併用されるものであってもよい。
アニオン基含有ポリマーとしては、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸ナトリウムを繰り返し単位として含むアニオン性ポリマー又は両性ポリマーが挙げられる。
アニオン性ポリマーとしては、1.0Nの塩化ナトリウム水溶液を溶媒として30℃で測定した固有粘度が10dl/g以上で、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸ナトリウム単位を全繰り返し単位中に5モル%以上含有するものであることが重要である。固有粘度が10dl/g以上であるとより強固な凝集フロックを得ることができ、アニオン性ポリマーを併用する効果を十分に得ることができる。アニオン性ポリマーの固有粘度は12dl/g以上であることが好ましい。また、全繰り返し単位中の(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸ナトリウム単位の含有量が5モル%未満では、アニオン基による本発明のカチオン系脱水剤との静電的作用により、凝集フロックを強固にする作用が得られなくなる。(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸ナトリウム単位の含有量の上限は特になく、汚泥の凝集状態をみて最適比率のものを用いればよいが、20〜100モル%程度であることが好ましい。
また、アニオン性ポリマーのpH10でのアニオンコロイド当量は0.7〜10.6meq/gであることが好ましい。
アニオン性ポリマーであるアニオン基含有ポリマーは、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸ナトリウム以外にこれらと共重合可能なノニオン性モノマーやアニオン性モノマーに基づく単位を有していてもよく、このうち、共重合可能なノニオン性モノマーとしては、例えばアクリルアミド、メタアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド等の水溶性のN置換低級アルキルアクリルアミド等が挙げられる。好ましくは(メタ)アクリルアミドである。これらのノニオン性モノマーは、1種または2種以上を用いることができる。また、共重合可能なアニオン性モノマーとしては、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、ビニル硫酸などが挙げられる。これらのアニオン性モノマーは、1種または2種以上を用いることができる。
両性ポリマーであるアニオン基含有ポリマーとしては、1.0Nの硝酸水溶液を溶媒として30℃で測定した固有粘度が4dl/g以上で、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸ナトリウム単位を全繰り返し単位中に5モル%以上有するものであることが重要である。固有粘度が4dl/g以上であるとより強固な凝集フロックを得ることができる。両性ポリマーの固有粘度は6dl/g以上であることが好ましい。また、全繰り返し単位中の(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸ナトリウム単位の含有量が5モル%未満ではアニオン基による本発明のカチオン系脱水剤との静電的作用により、凝集フロックを強固にする作用が得られなくなる。(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸ナトリウム単位の含有量の上限は特になく、汚泥の凝集状態をみて最適比率のものを用いればよいが、5〜60モル%程度であることが好ましい。
また、両性ポリマーのpH3でのカチオンコロイド当量は1.5〜3.5meq/gであることが好ましい。
両性ポリマーには、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸ナトリウム単位以外に、カチオン性モノマー単位と必要に応じてノニオン性モノマー単位が含まれる。
両性ポリマーに含まれるカチオン性モノマー単位のカチオン性モノマーとしては、例えば、アクリル酸ジエチルアミノエチル及びメタクリル酸ジエチルアミノエチルのようなアクリル酸ジアルキルアミノアルキル及びメタクリル酸ジアルキルアミノアルキル、及びそれらの4級塩又は酸塩(例えば、アクリル酸ジメチルアミノエチル塩化メチル4級塩、アクリル酸ジメチルアミノエチル塩化ベンジル4級塩、アクリル酸ジメチルアミノエチル塩酸塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチル塩化メチル4級塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチル塩化ベンジル4級塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチル塩酸塩などがあるが、それらに限られない。)、塩化アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩酸塩、塩化メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド塩酸塩のようなジアルキルアミノアルキルアクリルアミド又はジアルキルアミノアルキルメタクリルアミド、及びそれらの4級塩及び酸塩が含まれる。カチオン性モノマーは、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
両性ポリマーに含まれるノニオン性モノマー単位のノニオン性モノマーとしては、アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド等の水溶性であるN置換低級アルキルアクリルアミド等が挙げられる。また、メタクリロニトリル、アクリロニトリル、アルキルアクリレート、ヒドロキシアクリレート、酢酸ビニル等であっても良く、ノニオン性モノマーはこれらの1種または2種以上を用いることができる。
アニオン基含有ポリマーとしては、上記のアニオン性ポリマーの1種又は2種以上を用いてもよく、両性ポリマーの1種又は2種以上を用いてもよく、アニオン性ポリマーの1種又は2種以上と両性ポリマーの1種又は2種以上を併用してもよい。
このようなアニオン性ポリマー及び/又は両性ポリマーであるアニオン基含有ポリマーを併用する場合、アニオン基含有ポリマーは、カチオン性ポリマーA及びカチオン性ポリマーB或いはカチオン性ポリマーABと、必要に応じて用いられるカチオン性ポリマーCとの合計100重量部に対して5〜80重量部、特に10〜50重量部用いることが好ましい。アニオン基含有ポリマーの使用量が上記下限よりも少ないと、アニオン基含有ポリマーを併用することによる脱水作用の向上効果を十分に得ることができず、上記上限を超えると凝集フロック強度が大きく低下する傾向がある。
従って、本発明の汚泥脱水剤が、カチオン性ポリマーA及びカチオン性ポリマーB或いはカチオン性ポリマーABと、必要に応じて用いられるカチオン性ポリマーCと、更にアニオン基含有ポリマーを含む場合、本発明の汚泥脱水剤は、アニオン基含有ポリマーを、カチオン性ポリマーA及びカチオン性ポリマーB或いはカチオン性ポリマーABと、必要に応じて用いられるカチオン性ポリマーCの合計100重量部に対して5〜80重量部、特に10〜50重量部含有することが好ましい。
[汚泥脱水剤の形態]
本発明の汚泥脱水剤は、上述のカチオン性ポリマーAとカチオン性ポリマーBとを含むものであればよく、カチオン性ポリマーAとカチオン性ポリマーBとが別々に提供されるものであっても、これらが予め混合されて一剤化されたものであってもよい。
本発明の汚泥脱水剤が更にカチオン性ポリマーCを含む場合においても、それぞれのカチオン性ポリマーが別々に提供されるものであってもよく、これらのうちの2種以上が予め混合されて一剤化されたものであってもよい。
カチオン性ポリマーABとカチオン性ポリマーCとを含む汚泥脱水剤についても同様である。
本発明の汚泥脱水剤が更にアニオン基含有ポリマーを含む場合においても、それぞれのポリマーが別々に提供されるものであってもよく、これらのうちの2種以上が予め混合されて一剤化されたものであってもよい。
2種以上のポリマーを用いる場合、これらが予め所定の割合で混合されて一剤化されたものであれば、汚泥への脱水剤の添加制御が簡略化される場合がある。
例えば、カチオン性ポリマーAとカチオン性ポリマーBと必要に応じて用いられるカチオン性ポリマーC及び/又はアニオン基含有ポリマーとを粉末状態で所定の配合に混合した粉末組成物として製剤化し、使用する場合は0.1〜0.5重量%程度の水溶液として汚泥に添加することができる。
[脱水方法]
本発明の汚泥脱水剤を汚泥に添加して脱水するには、本発明のカチオン系脱水剤を単独で用いる場合、本発明のカチオン系脱水剤を汚泥に添加して20秒〜5分程度混合した後、脱水機に投入して脱水すれば良い。
本発明のカチオン系脱水剤とアニオン基含有ポリマーとを併用する場合は、(1)本発明のカチオン系脱水剤をまず汚泥に添加し撹拌後にアニオン基含有ポリマーを添加して凝集、脱水する、(2)本発明のカチオン系脱水剤とアニオン基含有ポリマーを同時に添加して凝集、脱水する、(3)本発明のカチオン系脱水剤とアニオン基含有ポリマーを予め混合して1液として汚泥に添加して凝集、脱水する、(4)アニオン基含有ポリマーをまず汚泥に添加し撹拌後に本発明のカチオン系脱水剤を添加して凝集、脱水する、など必要に応じて選ぶことができ、これらに限定されるものではない。
汚泥脱水剤と汚泥との混合は、移送配管内で行ってもよく、別途設けた凝集反応槽で行ってもよい。また、遠心脱水機のように混合機構を有する脱水機であれば、脱水前の混合工程を省略することができる。
汚泥への汚泥脱水剤の添加量としては、十分な凝集効果で高い脱水性が得られる程度であれば良く、汚泥性状や用いるポリマーの種類、無機凝集剤の併用の有無などによって適宜決定されるが、通常、SS0.4〜4.0重量%程度の汚泥に対してカチオン性ポリマーA及びカチオン性ポリマーB或いはカチオン性ポリマーABと、必要に応じて用いられるカチオン性ポリマーCとの合計の添加量が20〜1600mg/L、特に60〜1200mg/L程度、すなわち、汚泥のSSに対して0.5〜4.0重量%、特に1.5〜3.0重量%程度となるような添加量とすることが好ましい。
また、アニオン基含有ポリマーは、前述の通り、カチオン性ポリマーA及びカチオン性ポリマーB或いはカチオン性ポリマーABと、必要に応じて用いられるカチオン性ポリマーCとの合計100重量部に対して5〜80重量部、特に10〜50重量部となるように、例えば、汚泥に対して5〜800mg/L、特に10〜500mg/L程度となるような添加量とすることが好ましい。
前述の通り、なお、カチオン性ポリマーAとカチオン性ポリマーBと必要に応じて用いられるカチオン性ポリマーC及び/又はアニオン基含有ポリマーとは汚泥に対して同時に添加してもよく、予め混合して添加してもよく、別々に添加してもよい。カチオン性ポリマーABとカチオン性ポリマーC及び/又はアニオン基含有ポリマーについても同様である。
ただし、カチオン性ポリマーAとカチオン性ポリマーBと必要に応じて用いられるカチオン性ポリマーC、或いはカチオン性ポリマーABと必要に応じて用いられるカチオン性ポリマーCよりなる本発明のカチオン系脱水剤に、更にアニオン基含有ポリマーを併用することによる効果をより有効に得る上で、汚泥にカチオン系脱水剤を添加した後アニオン基含有ポリマーを添加して脱水処理することが好ましい。これは、通常、汚泥はアニオン性であるため、アニオン性の汚泥に本発明のカチオン系脱水剤を添加することで良好な凝集汚泥が得られ、これに更にアニオン基含有ポリマーを添加することで、更に強固な凝集フロックを形成することができるためである。従って、塗料汚泥等のようにアニオン度の低い汚泥の場合は、アニオン基含有ポリマーを添加した後本発明のカチオン系脱水剤を添加するのがよい場合もある。
凝集反応槽としては、撹拌羽のついた縦型の一般的な凝集反応槽を用いることができ、特別な反応装置は必要としない。また、適用できる脱水機にも特に制限はなく、多重円盤脱水機、スクリュープレス脱水機、回転加圧(ロータリー)脱水機、フィルタープレス脱水機、ベルトプレス脱水機、遠心脱水機等、様々な脱水機を適用することができるが、本発明の汚泥脱水剤を用いる汚泥脱水方法では、特にフロック強度が強く、濾水性に優れたフロックを形成することができることから、金属メッシュ、金属スリットあるいはワイヤーからなる濾過ゾーンと圧密圧搾工程を有する脱水機である多重円盤脱水機、スクリュープレス脱水機、回転加圧脱水機が好適に用いられる。
本発明によれば、このような脱水処理により、従来の汚泥脱水剤及び汚泥脱水方法に比較して低含水率の脱水ケーキを得ることができる。得られた脱水ケーキは焼却処分又は埋め立て処分などに供される。
なお、本発明で脱水処理する汚泥には特に制限はなく、例えば下水、し尿、一般産業排水処理などで発生する有機性汚泥や食品工場、水産加工工場、食肉加工工場、畜産業等から排出される余剰汚泥、或いはこれらの汚泥を含む混合汚泥が挙げられるが、本発明はその優れた脱水性向上効果から、難脱水性の余剰汚泥や消化汚泥の脱水処理に有効に使用される。
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。以下において、「%」は「重量%」を意味する。
[ポリマー]
以下の実施例及び比較例で用いたポリマーは次の通りである。
[汚泥性状]
以下の実施例及び比較例において、脱水試験に供した各工場の余剰汚泥の性状は下記表2〜5に示す通りである。
[試験方法]
以下の実施例及び比較例における脱水試験は以下の方法で行った。
余剰汚泥200mLを300mL容のビーカーに採取し、各種脱水剤を添加し、180rpmで30秒反応させて凝集させた。
次いで、ブフナーロートに直径50mmの筒をセットし、ここに凝集させた汚泥を一気に投入し、20秒後の濾液量を測定した。また、濾取された凝集物のフロック径と濾液へのSSのリーク量(SV:Sludge Volume)を測定した。濾液量は多い程、フロック径は大きい程、SVは少ない程好ましい。
また、以下の方法で脱水ケーキの含水率の測定を行った。
<ケーキ含水率>
濾過後のブフナーロート上の凝集物を、直径30mm、高さ17.5mmのカラムに詰め、0.1MPaで60秒圧搾して脱水ケーキを得た。この脱水ケーキの含水率を測定した。
[実施例1〜4、比較例1〜4]
下記表6に示す脱水剤をそれぞれ用い、食品工場の余剰汚泥IIIに有効成分(ポリマー)として150mg/L(汚泥のSSに対して1.2重量%)添加して、前述の脱水試験を行い、結果を表7に示した。
なお、脱水剤は、いずれも0.2重量%水溶液として添加した。
[実施例5〜9、比較例5〜7]
下記表8に示す脱水剤をそれぞれ用い、化学工場の余剰汚泥IIに、カチオン系脱水剤を有効成分(ポリマー)として500mg/L、アニオン基含有ポリマーを有効成分(ポリマー)として250mg/L添加して(ただし、実施例8,9ではアニオン基含有ポリマーを添加せず)、前述の脱水試験を行い、結果を表9に示した。
なお、脱水剤は、いずれも0.2重量%水溶液として添加した。
[実施例10,11、比較例8〜16]
下記表10に示す脱水剤をそれぞれ用い、有効成分(ポリマー)として表11に示す量となるように食品工場の余剰汚泥Iに添加して、前述の脱水試験を行い、結果を表11に示した。
なお、脱水剤は、いずれも0.2重量%水溶液として添加した。
[実施例12〜16、比較例17〜21]
下記表12に示す脱水剤をそれぞれ用い、食品工場の余剰汚泥IVにカチオン系脱水剤を有効成分(ポリマー)として100mg/L、アニオン基含有ポリマーを有効成分(ポリマー)として30mg/L添加して(ただし、実施例16と比較例17ではアニオン基含有ポリマーを添加せず)、前述の脱水試験を行い、結果を表13に示した。
なお、脱水剤は、いずれも0.2重量%水溶液として添加した。
[結果のまとめ]
実施例及び比較例の結果を以下にまとめる。
余剰汚泥IIIの脱水処理において、本発明処理の実施例1〜4に対し、カチオン性ポリマーの配合組合せが本発明の範囲外の比較例1,4では、濾水量、SSリーク、ケーキ含水率とも劣る結果となった。また、比較例2,3では、カチオン性ポリマーの配合比率が本発明の範囲外となるため、これらの結果が劣るものとなる。
余剰汚泥IIの脱水処理でアニオン基含有ポリマー不使用の実施例8,9に対して、アニオン基含有ポリマーを併用した実施例5〜7は更に良好な結果が得られた。アニオン基含有ポリマーを使用してもカチオン性ポリマーの配合組合せが本発明の範囲外の比較例5〜7では、濾水量、SSリーク、ケーキ含水率とも劣る結果となった。
余剰汚泥Iの脱水処理において、本発明のカチオン性ポリマーによる実施例10,11に対し、本発明の範囲外のカチオン性ポリマーを用いた比較例8〜16では、濾水量、SSリーク、ケーキ含水率の評価で総合的に劣る結果となった。
余剰汚泥IVの脱水処理で、アニオン基含有ポリマー不使用の実施例16に対して、アニオン基含有ポリマーを併用した実施例12〜15は更に良好な結果が得られた。アニオン性ポリマーを使用しても本発明の範囲外のカチオン性ポリマーを用いた比較例20,21では、濾水量、SSリークが劣る結果となった。比較例18,19は、アニオン基含有ポリマーを使用していても、カチオン系脱水剤のカチオン性ポリマーの配合比率が本発明の範囲外であるため、濾水量、SSリークが劣る結果となった。比較例17は、アニオン基含有ポリマー不使用で、カチオン系脱水剤のカチオン性ポリマーの配合組成も本発明の範囲外であるため、濾水量が非常に少ない。