JP6749031B1 - 自己ゲル化こんにゃく粉の製造方法、自己ゲル化こんにゃく粉及びこんにゃくゲル化物 - Google Patents

自己ゲル化こんにゃく粉の製造方法、自己ゲル化こんにゃく粉及びこんにゃくゲル化物 Download PDF

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Abstract

【課題】凝固剤を使用せず単独で容易にゲル化することが可能な酸性〜中性の自己ゲル化こんにゃく粉を製造する製造方法、それにより製造される自己ゲル化こんにゃく粉、及び、その自己ゲル化こんにゃく粉を用いたこんにゃくゲル化物を提供する。【解決手段】アルコール溶液にこんにゃく粉を添加し、こんにゃく粉を半膨潤状態とし、そのこんにゃく粉が含まれるアルコール溶液にアルカリ性溶液を添加してその溶液を強アルカリ性に調整する。そして、その溶液を所定時間反応させ、半膨潤状態のこんにゃく粉中のグルコマンナンにおける一部のアセチル基を脱離させた後、その溶液に酸を添加して溶液のpH濃度を酸性〜中性域のpH濃度まで低下させることにより溶液中のアルカリを除去する。その後、その溶液を脱水してこんにゃく粉を乾燥させることにより、自己ゲル化こんにゃく粉を得る。【選択図】なし

Description

本発明は、自己ゲル化こんにゃく粉の製造方法、それにより製造される自己ゲル化こんにゃく粉、及び、その自己ゲル化こんにゃく粉を用いたこんにゃくゲル化物に関する。
こんにゃくは、カロリーが極めて低く食物繊維が豊富なダイエット食品として知られている。こんにゃくを含む食品(ゼリー、その他菓子類、麺類等)の多くは、こんにゃく粉がゲル化されてなるゲル化物が含まれている。また、こんにゃく粉のゲル化物は、例えば増粘剤、乳化剤、保水剤、弾力剤等の食品添加剤、化粧品添加剤等としても使用されている。
特許文献1には、こんにゃく粉と水と弱アルカリ性の凝固剤とを混合させた混合物を加熱してゲル化させる方法が記載されている。
また、特許文献2には、膨潤が抑制されたこんにゃく粉をアルカリ溶液とともに加熱処理することで得られた改質こんにゃく粉を、水に分散して分散液とした後に加熱処理又は攪拌処理することで、ゲル化物を得ることが記載されている。
特開平11−69948号公報 特許第5669127号公報
特許文献1に記載のこんにゃく粉は、そのこんにゃく粉からゲル化物(グルコマンナンゲル)を得るために、弱アルカリ性の凝固剤を添加して加熱する必要がある。そのため、凝固剤の調整が複雑となるといった問題がある。
また、凝固剤に含まれるアルカリに起因してアルカリ臭、アク等が発生する虞がある。そのため、得られるゲル化物は、多くの酸性〜中性の製品(食品、化粧品等)の製造において利用することが難しいといった問題がある。
また、特許文献2に記載の改質こんにゃく粉は、こんにゃく粉をアルカリ溶液とともに加熱処理して得るものである。そのため、加熱処理の制御が難しく、この改質こんにゃく粉を安定した品質で製造することは、困難である。また、得られた改質こんにゃく粉は、弱アルカリ性〜アルカリ性を呈し、酸性〜中性を呈しないことから、上述のアルカリ臭、アク等の問題が生じる可能性がある。
このアルカリ臭に敏感な人は、そのアルカリ臭が僅かな臭いであっても不快に感じてしまう。そのような人は、一定数存在しており、そのような人にとっては製品選択の幅が狭まることになってしまう。そのため、こんにゃく粉の市場を拡大するためには、アルカリ性を呈さないこんにゃく粉が必要とされていた。
このような点から、凝固剤を使用せず単独で容易にゲル化することが可能な酸性〜中性の自己ゲル化こんにゃく粉の開発が望まれていた。
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたものであり、凝固剤を使用せず単独で容易にゲル化することが可能な酸性〜中性の自己ゲル化こんにゃく粉を製造する製造方法、それにより製造される自己ゲル化こんにゃく粉、及び、その自己ゲル化こんにゃく粉を用いたこんにゃくゲル化物を提供することを目的とする。
上述の目的を達成するため、本発明の自己ゲル化こんにゃく粉の製造方法は、アルカリを含有するpH濃度13以上のアルコール溶液にこんにゃく粉を添加し、前記こんにゃく粉を半膨潤状態とする半膨潤化工程と、前記半膨潤化工程で半膨潤状態とされた前記こんにゃく粉が含まれる前記アルコール溶液に、アルカリ性溶液を添加し、半膨潤状態の前記こんにゃく粉が含まれる溶液をpH濃度13以上の強アルカリ性に調整するアルカリ調整工程と、前記アルカリ調整工程で強アルカリ性に調整された溶液を非加熱状態で5〜60分間反応させ、半膨潤状態の前記こんにゃく粉中のグルコマンナンにおける一部のアセチル基を脱離させる脱アセチル化工程と、前記脱アセチル化工程でグルコマンナンの一部のアセチル基が脱離した半膨潤状態の前記こんにゃく粉が含まれる溶液に酸を添加し、半膨潤状態の前記こんにゃく粉が含まれる溶液のpH濃度を酸性〜中性域のpH濃度まで低下させることにより該溶液中のアルカリを除去するpH調整工程と、前記pH調整工程でpH濃度が調整された半膨潤状態の前記こんにゃく粉が含まれる溶液を脱水し、前記こんにゃく粉を乾燥させることにより、自己ゲル化こんにゃく粉を得る乾燥工程と、を有する。
また、本発明の自己ゲル化こんにゃく粉は、本発明の製造方法により製造される。
また、本発明のこんにゃくゲル化物は、本発明の製造方法により製造された自己ゲル化こんにゃく粉を溶媒に溶解してなる。
本発明により得られる自己ゲル化こんにゃく粉は、水溶性を有し一部のアセチル基が脱離していることでゲル化能を有する粉体である。そのため、この自己ゲル化こんにゃく粉は、凝固剤を使用せず単独で溶媒に溶解させるといった容易な処理により、ゲル化することが可能である。
また、本発明により得られる自己ゲル化こんにゃく粉は、酸性〜中性を呈する。そのため、この自己ゲル化こんにゃく粉は、アルカリに起因するアルカリ臭、アク等の問題が生じない。これにより、この自己ゲル化こんにゃく粉は、多くの酸性〜中性の製品(食品、化粧品等)の製造において好適に利用することができる。また、この自己ゲル化こんにゃく粉は、弱酸性〜中性とすることにより、他の素材の風味を損なわない食品原料(素材)とすることができ、また、得られたゲル化物の保存性を向上させることができ、さらには、そのまま食する製品(食品)へ直接添加することができる。
このような点から、本発明により得られる自己ゲル化こんにゃく粉及びそのこんにゃくゲル化物は、様々な製品を製造する際にその原料として広く使用されることが可能となり、その汎用性を高めることができる。
本発明の一実施形態(以下、これを「本実施の形態」という。)について説明する。
実施の形態に係る自己ゲル化こんにゃく粉の製造方法は、以下に述べる半膨潤化工程と、アルカリ調整工程と、脱アセチル化工程と、pH調整工程と、乾燥工程とを有しており、これらの工程をこの順に経ることにより、こんにゃく粉から自己ゲル化こんにゃく粉を製造するものである。
こんにゃく粉は、グルコマンナンを含む粉体であり、一般に、こんにゃく芋をスライスして乾燥させ、これを粉砕精製することで得られる。グルコマンナンは、水溶性の増粘多糖類であり、これに水を加えると膨潤し、粘稠性の高い物質となる。
(半膨潤化工程)
半膨潤化工程では、後の脱アセチル化工程での部分脱アセチル化反応の前段階の処理として、こんにゃく粉を半膨潤状態とするための処理を行う。この半膨潤化工程では、先ず、こんにゃく粉を半膨潤状態とするためのアルコール溶液(半膨潤化溶液)を準備する。
ここで準備するアルコール溶液中のアルコールとしては、例えば、エタノール、イソプロパノール、メタノール等の低級アルコール、アセトン等が挙げられるが、中でも、安全性等の点から、エタノールが特に好ましい。
ここで準備するアルコール溶液におけるアルコール濃度(vol%)は、20〜70vol%であることが好ましい。アルコール濃度(vol%)が20vol%未満であると、こんにゃく粉が半膨潤状態を維持し難くなり、膨潤状態になり易くなる。また、アルコール濃度(vol%)が70vol%よりも大きいと、水溶性のこんにゃく粉は膨潤しなくなるという問題がある。
ここで準備するアルコール溶液は、例えば、アルカリをさらに含有するアルコール溶液(アルカリのアルコール溶液)であってよい。
このアルカリのアルコール溶液中のアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム(消石灰)、水酸化カリウム等が挙げられるが、中でも、アルカリ金属であり強塩基である等の点から、水酸化ナトリウムが特に好ましい。
このアルカリのアルコール溶液のpH濃度は13〜13.5であることが好ましい。この溶液のpH濃度をこの範囲とすることにより、後の部分脱アルカリ化反応で溶液のpH濃度が急激にアルカリ性域に変化して脱アセチル化反応が不均質に進行することを防止することが可能となる。すなわち、アルカリのアルコール溶液におけるアルカリ濃度は、アルカリ(塩基)の価数が1であるとき、0.01〜0.1mol/Lであることが好ましい。
ここで準備するアルカリのアルコール溶液は、例えば、水酸化ナトリウムのエタノール溶液であることが好ましい。上述のアルカリのアルコール溶液におけるアルカリ濃度の点から、水酸化ナトリウムのエタノール溶液における水酸化ナトリウム濃度(mol/L)は、0.01〜0.1mol/Lであることが好ましい。また、上述のアルコール溶液におけるアルコール濃度(vol%)の点から、水酸化ナトリウムのエタノール溶液におけるエタノール濃度(vol%)は、20〜70vol%であることが好ましい。
なお、ここで準備するアルコール溶液(半膨潤化溶液)は、上述のアルカリのアルコール溶液に代えて、例えば、水とアルコールとからなる溶液(アルコール水溶液)であってもよい。この場合、このアルコール水溶液のpH濃度は7となる。
次に、この半膨潤化工程では、準備したアルコール溶液(半膨潤化溶液)にこんにゃく粉を添加し、そのこんにゃく粉を半膨潤状態とする。この半膨潤状態は、こんにゃく粉の粒子の中に溶液が入りその粒子は膨らんでいる(膨潤している)ものの、その粒子の形状は維持されている状態である。
アルコール溶液(半膨潤化溶液)へのこんにゃく粉の添加量は、アルコール溶液1Lに対し、こんにゃく粉50〜400gとするのが好ましい。アルコール溶液1Lに対するこんにゃく粉の添加量が50g未満であると、こんにゃく粉に対するアルコール溶液の使用量が大きいことからコストが上がるという問題がある。また、アルコール含有液1Lに対するこんにゃく粉の添加量が400gよりも多いと、アルコール溶液が全てこんにゃく粉に吸収されてアルコール溶液が不足してしまい、こんにゃく粉が均等に半膨潤状態にならないことから、後の部分脱アセチル化反応を均一に進行させることができないという問題がある。
こんにゃく粉が添加されたアルカリのアルコール溶液のpH濃度は11〜13となる。すなわち、こんにゃく粉の比重を1.5g/cmとした場合、こんにゃく粉が添加されたアルカリのアルコール溶液におけるアルカリ濃度は、アルカリ(塩基)の価数が1であるとき、0.01〜0.1mol/Lである。
なお、アルコール溶液(半膨潤化溶液)が水とアルコールとからなるアルコール水溶液である場合、こんにゃく粉が添加されたアルコール水溶液のpH濃度は7である。
(アルカリ調整工程)
アルカリ調整工程では、半膨潤化工程で半膨潤状態とされたこんにゃく粉が含まれるアルコール溶液にアルカリ性溶液を添加し、その半膨潤状態のこんにゃく粉が含まれる溶液をpH濃度13以上の強アルカリ性に調整する。添加するアルカリ性溶液中のアルカリは、後の部分脱アセチル化反応において、グルコマンナンのアセチル基を脱離させるためのものである。
アルカリ調整後の溶液のpH濃度は、13以上であることから、例えばアルカリ調整後の溶液におけるアルカリ濃度は、アルカリ(塩基)の価数が1であるとき、0.1〜0.2mol/Lであることが好ましい。
アルカリ性溶液を添加した後の半膨潤状態のこんにゃく粉が含まれる溶液のpH濃度が13未満であると、後の部分脱アセチル化反応において、グルコマンナンのアセチル基の脱離が不充分となり、充分なゲル化能が付与されなくなる虞がある。なお、この溶液のpH濃度が大きすぎると、後の脱アセチル化工程での部分脱アセチル化反応において、グルコマンナンのアセチル基が脱離し過ぎてグルコマンナンの不溶化を引き起こす虞がある。
上述の半膨潤化工程でアルカリのアルコール溶液を準備した場合には、このアルカリ調整後の溶液のpH濃度を13以上とするために、添加するアルカリ性溶液のアルカリ濃度(mol/L)は、例えば0.1〜10mol/Lとすることが好ましく、そのアルカリ性溶液の添加量は、例えば1〜200mlとすることが好ましい。
また、上述の半膨潤化工程でアルコール水溶液を準備した場合には、このアルカリ調整後の溶液のpH濃度を13以上とするために、添加するアルカリ性溶液のアルカリ濃度(mol/L)は、例えば0.1〜10mol/Lとすることが好ましく、そのアルカリ性溶液の添加量は、例えば2〜250mlとすることが好ましい。
添加するアルカリ性溶液に含まれるアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム等が挙げられるが、中でも、アルカリ金属であり強塩基である等の点から、水酸化ナトリウムが特に好ましい。なお、このアルカリ性溶液のアルカリは、上述のアルカリのアルコール溶液中のアルカリと同じであるのがよい。
添加するアルカリ性溶液は、例えばアルカリのアルコール溶液であってよい。アルカリのアルコール溶液におけるアルコールとしては、例えば、エタノール、イソプロパノール、メタノール等の低級アルコール、アセトン等が挙げられるが、中でも、安全性等の点から、エタノールが特に好ましい。アルカリ性溶液中のアルコールは、上述のアルコール溶液中のアルコールと同じであるのがよい。
添加するアルカリ性溶液は、例えば、水酸化ナトリウムのエタノール溶液であってよい。このとき、上述の半膨潤化工程でアルカリのアルコール溶液を準備した場合には、このアルカリ調整後の溶液のpH濃度を13以上とするために、添加する水酸化ナトリウムのエタノール溶液における水酸化ナトリウム濃度(mol/L)は、例えば0.1〜10mol/Lとすることが好ましく、その添加量は例えば1〜200mlとすることが好ましい。
また、上述の半膨潤化工程でアルコール水溶液を準備した場合には、このアルカリ調整後の溶液のpH濃度を13以上とするために、添加する水酸化ナトリウムのエタノール溶液における水酸化ナトリウム濃度(mol/L)は、例えば0.1〜10mol/Lとすることが好ましく、その添加量は例えば2〜250mlとすることが好ましい。
また、添加するアルカリ性溶液がアルカリのアルコール溶液である場合、その溶液におけるアルコール濃度(vol%)は、上述の半膨潤化工程で準備するアルコール溶液におけるアルコール濃度(vol%)と同様の理由により、20〜70vol%であることが好ましい。
(脱アセチル化工程)
脱アセチル化工程では、アルカリ調整工程でpH濃度13以上の強アルカリ性に調整された溶液について、非加熱状態で攪拌及び静置の一方又は両方(攪拌及び/又は静置)を行うことで、溶液を反応させる。例えば、この溶液を非加熱状態で最初に少しだけ攪拌した後、静置させる。これにより、半膨潤状態のこんにゃく粉中のグルコマンナンにアルカリを作用させ、半膨潤状態のこんにゃく粉中のグルコマンナンにおける一部のアセチル基を脱離させる部分脱アセチル化反応を進行させる。
具体的に、この脱アセチル化工程での部分脱アセチル化反応では、半膨潤状態のこんにゃく粉中のグルコマンナンにおける25〜75%のアセチル基を脱離させるようにする。
この部分脱アセチル化反応の際の溶液の攪拌及び/又は静置の合計時間は、5〜60分間であることが好ましい。この合計時間が5分間よりも短いと、グルコマンナンのアセチル基の脱離が不充分となり、充分なゲル化能が付与されなくなる虞がある。また、この合計時間が60分間よりも長いと、グルコマンナンのアセチル基が脱離しすぎてグルコマンナンが充分な膨潤をしない状態になる虞がある。
仮にこんにゃく粉を水に溶解させてその粒子の形状が維持されない(すなわち粉体状態が維持されない)膨潤状態とし、その膨潤状態のこんにゃく粉にアルカリを作用させると、そのこんにゃく粉はゲル化してしまうため、乾燥させたとしても粉体状態には戻らなくなる。また仮に、乾燥状態のこんにゃく粉にアルカリを作用させると、そのこんにゃく粉は膨潤せずに不溶化してしまう。
これに対し、この部分脱アセチル化反応を行った半膨潤状態のこんにゃく粉は、ゲル化していないが水溶性を有し、一部のアセチル基(グルコマンナン中の25〜75%のアセチル基)が脱離した状態となっている。そのため、この部分脱アセチル化反応を行った半膨潤状態のこんにゃく粉は、膨潤に充分な水分を保水するゲルとなるための機能(ゲル化能)が、粉体状態が維持されたまま付与されたものとなっている。このように、部分脱アセチル化反応では、こんにゃく粉のグルコマンナンの脱アセチル化を制御(コントロール)することができる。
(pH調整工程)
pH調整工程では、脱アセチル化工程での部分脱アセチル化反応の開始から数分間後(上述の5〜60分間後)に、グルコマンナンの一部(25〜75%)のアセチル基が脱離した半膨潤状態のこんにゃく粉が含まれる溶液に酸を添加する。これにより、グルコマンナンの一部(25〜75%)のアセチル基が脱離した半膨潤状態のこんにゃく粉が含まれる溶液のpH濃度を酸性〜中性域のpH濃度まで低下させることで、その溶液中のアルカリを除去する。
酸としては、例えばクエン酸、酢酸、リン酸、リンゴ酸、乳酸等が挙げられるが、中でも、無色無臭で清涼感があり、食品にも多く利用されている等の点から、クエン酸が特に好ましい。添加する酸の量(又は濃度)は、特に限定されないが、グルコマンナンの一部のアセチル基が脱離した半膨潤状態のこんにゃく粉が含まれる溶液のpH濃度が酸性〜中性域の何れかのpH濃度となるような量(又は濃度)で添加すればよい。
このようにして、グルコマンナンの一部のアセチル基が脱離した半膨潤状態のこんにゃく粉が含まれる溶液中のアルカリを除去することで、後に得られる自己ゲル化こんにゃく粉において、アルカリに起因する風味の損失(アルカリ臭、アクの発生等)を抑制することができる。これにより、後に得られる自己ゲル化こんにゃく粉を多くの酸性〜中性の食品の製造において利用することが可能となる。
(乾燥工程)
乾燥工程では、pH調整工程でpH濃度が調整された半膨潤状態のこんにゃく粉が含まれる溶液を脱水し、こんにゃく粉を乾燥させることにより、自己ゲル化こんにゃく粉を得る。
乾燥工程での乾燥処理は、脱水加熱であってよい。脱水加熱における加熱温度は、50〜130℃であることが好ましい。加熱温度が50℃よりも低いと溶液の脱水に時間が掛かってしまう。また、加熱温度が130℃よりも高いとこんにゃく粉が焦げてしまう虞がある。
なお、この乾燥処理は、脱水加熱に限定されず、例えば自然乾燥等の処理であってもよいが、乾燥効率を向上させるためには、脱水加熱の方が好ましい。
(ゲル化物の生成)
本実施の形態の製造方法により製造された自己ゲル化こんにゃく粉は、溶媒に溶解することで、ゲル化物とすることができる。溶媒としては、水溶性溶媒であれば特に限定されないが、ここでは水を例に挙げて説明する。
本実施の形態の製造方法により得られた自己ゲル化こんにゃく粉を溶媒である水に添加し溶解させる。そして、この自己ゲル化こんにゃく粉が溶解された水を非加熱の状態で攪拌する。これにより、ゲル強度が比較的弱いゲル化物が生成される。
或いは、本実施の形態の製造方法により得られた自己ゲル化こんにゃく粉を溶媒である水に添加し溶解させる。そして、この自己ゲル化こんにゃく粉が溶解された水を攪拌した後に加熱する。これにより、ゲル強度が比較的強いゲル化物が生成される。この加熱において、加熱温度は50〜100℃であることが好ましく、加熱時間は10〜60分間であることが好ましい。
(効果)
本実施の形態の製造方法により得られた自己ゲル化こんにゃく粉は、酸性〜中性域の何れの溶媒に溶解してもゲル化物とすることができる。但し、その溶媒のpH濃度が低いとゲル強度は弱くなる。
また、本実施の形態の製造方法により得られた自己ゲル化こんにゃく粉は、グルコマンナンの脱アセチル化が制御(コントロール)されているため、従来のこんにゃくゲル化物とは異なる性質を有する。
例えば、この自己ゲル化こんにゃく粉は、溶質が低濃度の溶液(低濃度溶液)に添加した場合には、チキソトロピー流体のようにせん断によって粘度(固さ)が低下し流動するが、そのまま放置すると元の粘度(固さ)に戻る性質を有する。
また例えば、この自己ゲル化こんにゃく粉は、水溶性を有し不溶化していないため、冷凍した後に解凍してもその性質が変わらない優れた冷凍解凍耐性を有する。
以上のように、本実施形態の製造方法によって製造される自己ゲル化こんにゃく粉は、粉体状態を維持したまま、水溶性を有し膨潤に充分な水分を保水するゲルとなるための機能(ゲル化能)が付与されたものとなっている。そのため、この自己ゲル化こんにゃく粉は、非加熱状態で、凝固剤を使用せず、単独で溶媒に溶解させるといった容易な処理により、ゲル化することが可能である。
また、この自己ゲル化こんにゃく粉を溶媒に溶解することで、上述したように従来のこんにゃくゲル化物にはない優れた性質を有するゲル化物とすることができる。
また、この自己ゲル化こんにゃく粉は、酸性〜中性を呈するため、アルカリに起因するアルカリ臭、アク等の問題が生じない。これにより、この自己ゲル化こんにゃく粉は、多くの酸性〜中性の製品(食品、化粧品等)の製造において好適に利用することができる。
特に、この自己ゲル化こんにゃく粉は、弱酸性〜中性とすることにより、他の素材の風味を損なわない食品原料(素材)とすることができ、得られるゲル化物の保存性を向上させることができ、さらには、そのまま食する製品(食品)へ直接添加するこんにゃく粉とすることができる。
これにより、本実施の形態の製造方法により製造された自己ゲル化こんにゃく粉及びそのこんにゃくゲル化物は、様々な製品を製造する際にその原料として広く使用されることが可能となり、その汎用性を高めることができる。
以下に、本発明の実施例について説明するが、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
(実施例1:半膨潤化工程)
実施例1の半膨潤化工程では、こんにゃく粉を半膨潤化させるための半膨潤化溶液(アルコール溶液)として、水酸化ナトリウム濃度0.05mol/Lの45vol%エタノール溶液を準備した。この半膨潤化溶液のpH濃度は、13.0であった。
この半膨潤化溶液1Lに、こんにゃく粉250gを添加した。これにより、こんにゃく粉を半膨潤状態とした。この半膨潤状態のこんにゃく粉が含まれる溶液のpH濃度は12.7であった。
(実施例2:アルカリ調整工程)
実施例2のアルカリ調整工程では、実施例1の半膨潤化工程で半膨潤状態とされたこんにゃく粉が含まれるアルコール溶液に、アルカリ性溶液として、水酸化ナトリウム濃度1mol/Lの45vol%エタノール溶液75mlを添加し、その半膨潤状態のこんにゃく粉が含まれる溶液をpH濃度13.5の強アルカリ性に調整した。
(実施例3:脱アセチル化工程)
実施例3の脱アセチル化工程では、実施例2のアルカリ調整工程でpH濃度が調整された溶液を、非加熱状態で6分間攪拌した。これにより、溶液中の半膨潤状態のこんにゃく粉中のグルコマンナンに水酸化ナトリウムを作用させ、半膨潤状態のこんにゃく粉中のグルコマンナンにおける一部(25〜75%)のアセチル基を脱離させる部分脱アセチル化反応を進行させた。
(実施例4:pH調整工程)
実施例4のpH調整工程では、実施例3の脱アセチル化工程での部分脱アセチル化反応の開始から6分後に、グルコマンナンの一部(25〜75%)のアセチル基が脱離した半膨潤状態のこんにゃく粉が含まれる溶液に、酸としてクエン酸を7g添加した。これにより、グルコマンナンの一部(25〜75%)のアセチル基が脱離した半膨潤状態のこんにゃく粉が含まれる溶液のpH濃度を酸性〜中性域のpH濃度まで低下させることで、その溶液中のアルカリを除去した。
(実施例5:乾燥工程)
実施例5の乾燥工程では、実施例4のpH調整工程の後に、グルコマンナンの一部のアセチル基が脱離した半膨潤状態のこんにゃく粉が含まれる溶液に対し、乾燥処理として脱水加熱を行い、自己ゲル化こんにゃく粉を得た。
(実施例6:ゲル化物の生成1)
実施例6では、実施例5の乾燥工程で得られた自己ゲル化こんにゃく粉3gを溶媒である水97gに添加し溶解させた(3%水溶液)。そして、この自己ゲル化こんにゃく粉が溶解された水(水溶液)を非加熱の状態で攪拌した。これにより、ゲル強度が比較的小さい(軟らかい)ゲル化物が生成された。
(実施例7:ゲル化物の生成2)
実施例7では、実施例5の乾燥工程で得られた自己ゲル化こんにゃく粉3gを溶媒である水97gに添加し溶解させた(3%水溶液)。そして、この自己ゲル化こんにゃく粉が溶解された水(水溶液)を容器に入れ、湯煎で加熱したこの加熱において、加熱温度は95℃とし、加熱時間は15分間とした。これにより、ゲル強度が比較的大きい(硬い)ゲル化物(ゲル強度:150g/cm)が生成された。
この実施例6、7から、実施例1〜5の処理により得られた自己ゲル化こんにゃく粉は、凝固剤を使用せず単独で溶媒に溶解させるといった容易な処理により、ゲル化できることがわかった。

Claims (8)

  1. アルカリを含有するpH濃度13以上のアルコール溶液にこんにゃく粉を添加し、前記こんにゃく粉を半膨潤状態とする半膨潤化工程と、
    前記半膨潤化工程で半膨潤状態とされた前記こんにゃく粉が含まれる前記アルコール溶液に、アルカリ性溶液を添加し、半膨潤状態の前記こんにゃく粉が含まれる溶液をpH濃度13以上の強アルカリ性に調整するアルカリ調整工程と、
    前記アルカリ調整工程で強アルカリ性に調整された溶液を非加熱状態で5〜60分間反応させ、半膨潤状態の前記こんにゃく粉中のグルコマンナンにおける一部のアセチル基を脱離させる脱アセチル化工程と、
    前記脱アセチル化工程でグルコマンナンの一部のアセチル基が脱離した半膨潤状態の前記こんにゃく粉が含まれる溶液に酸を添加し、半膨潤状態の前記こんにゃく粉が含まれる溶液のpH濃度を酸性〜中性域のpH濃度まで低下させることにより該溶液中のアルカリを除去するpH調整工程と、
    前記pH調整工程でpH濃度が調整された半膨潤状態の前記こんにゃく粉が含まれる溶液を脱水し、前記こんにゃく粉を乾燥させることにより、自己ゲル化こんにゃく粉を得る乾燥工程と、
    を有する自己ゲル化こんにゃく粉の製造方法。
  2. 前記酸は、クエン酸である請求項1に記載の自己ゲル化こんにゃく粉の製造方法。
  3. 前記アルコール溶液は、アルコールとしてエタノールを含有する請求項1又は2に記載の自己ゲル化こんにゃく粉の製造方法。
  4. 前記アルコール溶液におけるエタノール濃度は、20〜70vol%である請求項3に記載の自己ゲル化こんにゃく粉の製造方法。
  5. 前記アルカリ性溶液は、アルカリとして水酸化ナトリウムを含有する請求項1乃至4の何れか1項に記載の自己ゲル化こんにゃく粉の製造方法。
  6. 前記アルコール溶液は、アルカリとして水酸化ナトリウムを含有する請求項1乃至5に記載の自己ゲル化こんにゃく粉の製造方法。
  7. 請求項1乃至の何れか1項に記載の製造方法により製造された自己ゲル化こんにゃく粉。
  8. 請求項1乃至の何れか1項に記載の製造方法により製造された自己ゲル化こんにゃく粉を溶媒に溶解してなるこんにゃくゲル化物。
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