JP6746842B2 - 金属皮膜付シクロオレフィン糸の製造方法 - Google Patents

金属皮膜付シクロオレフィン糸の製造方法 Download PDF

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Description

本件発明は、シクロオレフィン糸を構成するシクロオレフィン繊維の表面に金属皮膜が成膜された金属皮膜付シクロオレフィン糸の製造方法に関する。
特許文献1には、金属皮膜付シクロオレフィンポリマー材の製造方法として、シクロオレフィンポリマー樹脂からなる厚さ3mmの板材に対して無電解銅めっき処理を施すことにより厚さ0.5μmの無電解銅めっき皮膜を成膜した後に、電解銅めっきを施すことにより厚さ20μmの電解銅皮膜を成膜する方法が開示されている。上記板材は、シクロオレフィンポリマー樹脂からなるペレットを溶融し射出成形したものである。
シクロオレフィンポリマー樹脂は、構造的に見て化学的に安定性の高い物質である。また、シクロオレフィンポリマー樹脂は、低吸水性、高透明性、低比重、高耐熱性及び低不純物である点で優れる。さらに、シクロオレフィンポリマー樹脂は、フッ素樹脂(PTEF)と同等レベルの低誘電率及び低誘電正接であり、高い周波数領域でも低い誘電正接を維持できるとされている。
近年、シクロオレフィンポリマー樹脂からなる繊維が提案されている。特許文献2には、シクロオレフィンポリマー樹脂からなる繊維の製造方法が開示されている。特許文献2によれば、上記ペレットを溶融した樹脂をダイに導き、紡糸ノズル(口金)から樹脂を押し出して紡糸し、ノズルから吐出された繊維を冷風等によって冷却しながらローラー等を用いて引き取り、巻き取った後に熱処理することにより、シクロオレフィンポリマー樹脂からなる繊維を得ることができる。このとき、紡糸ノズルから押し出された直後の樹脂に対して当該樹脂の外径方向から水溶性バインダーを吹き付けて付着させることにより、個々の繊維同士を結着させている。シクロオレフィンポリマー樹脂からなる繊維は、ノズルの口径や引き取り速度を制御することによって、所望の繊維径とすることができる。
本件明細書では、シクロオレフィンポリマー樹脂及びシクロオレフィンコポリマー樹脂を「シクロオレフィンポリマー樹脂」と称す。また、紡糸ノズルから吐出された個々の繊維を「シクロオレフィン繊維」と称す。そして、紡糸ノズルから吐出された複数のシクロオレフィン繊維が引き取られ巻き取られたことによって束状に集合した繊維を「シクロオレフィン糸」と称す。シクロオレフィン糸は、長尺状の例えば直径20μmのシクロオレフィン繊維が束状に集合したものである。
そして、シクロオレフィン繊維の表面に金属皮膜を設けた金属皮膜付シクロオレフィン糸は、導電性ウエアラブル繊維としての用途が期待されている。例えば、金属皮膜として導電性に優れる銅を用いた金属皮膜付シクロオレフィン糸は、衣料に用いたときに、配線や電極の役割を持たせることができる。
そこで、上記金属皮膜付シクロオレフィン糸を得るために、特許文献1に開示された方法を適用して、シクロオレフィン繊維の表面に金属皮膜を成膜することが考えられる。
特許第4738308号公報 国際公開第2015/060242号
しかしながら、シクロオレフィン糸を、無電解めっき処理を施すためのめっき浴や、無電解めっき処理の前処理に用いる前処理液等の種々の溶液に浸漬すると、シクロオレフィン繊維の表面に付着する上記水溶性バインダーが溶出し、シクロオレフィン糸が解れて糸としての形状を維持できなくなるという不都合がある。
本発明の課題は、糸としての形状を維持した状態でシクロオレフィン繊維に金属皮膜を成膜することができる金属皮膜付シクロオレフィン糸の製造方法を提供することを目的とする。
本件発明は、シクロオレフィン糸を構成するシクロオレフィン繊維の表面に金属皮膜が成膜された金属皮膜付シクロオレフィン糸の製造方法であって、以下の工程A〜工程Dを含み、且つ、当該工程A〜工程Dをシクロオレフィン糸に対して長手方向に張力を付与した状態で行うことを特徴とする。
工程A:シクロオレフィン繊維の表面にパラジウム及びスズを吸着させる工程。
工程B:工程Aで得られたシクロオレフィン糸のシクロオレフィン繊維の表面に吸着するスズを酸化させパラジウムを還元させる工程。
工程C:工程Bで得られたシクロオレフィン糸に無電解めっき処理を施すことにより、シクロオレフィン繊維の表面に金属皮膜を成膜する工程。
工程D:工程Cで得られたシクロオレフィン糸を50℃以上且つシクロオレフィンポリマー樹脂の溶融温度以下の温度で加熱することにより、シクロオレフィン繊維に付着した水分を除去する工程。
また、本件発明に係る金属皮膜付シクロオレフィン糸の製造方法は、前記工程Dの後に以下の工程Eを設けることが好ましい。
工程E:前記工程Dで得られたシクロオレフィン糸に対して無電解めっき処理又は電解めっき処理を施す工程。
本件発明の製造方法では、上記工程A〜工程Dをシクロオレフィン糸に対して長手方向に張力を付与した状態で行うことにより、シクロオレフィン糸を無電解めっき処理やその前処理に用いる溶液に浸漬した際にシクロオレフィン繊維の表面から水溶性バインダーが溶出しても、シクロオレフィン糸が解れずに糸としての形状を維持することができる。従って、本件発明の製造方法によれば、糸としての形状を維持した状態で、シクロオレフィン繊維に金属皮膜が成膜された金属皮膜付シクロオレフィン糸を得ることができる。
実施例1の金属皮膜付シクロオレフィン糸の製造方法を示す図である。
本件発明に係る金属皮膜付シクロオレフィン糸の製造方法の実施の形態を説明する。本実施形態の金属皮膜付シクロオレフィン糸の製造方法は、以下の工程A〜工程Dを含み、且つ、当該工程A〜工程Dをシクロオレフィン糸に対して長手方向に張力を付与した状態で行う。各工程を終えた後、必要に応じて水洗処理を行ってもよい。以下、張力付与及び各工程について説明する。
張力付与: シクロオレフィン糸への張力付与は、シクロオレフィン糸への張力付与は、シクロオレフィン糸を構成するシクロオレフィン繊維の弾性範囲内で行うこととし、弾性限界を超えないように行う。シクロオレフィン糸への張力付与は、例えば、矩形の枠体からなる治具にシクロオレフィン糸を伸長させながら巻き付けることにより行うことができる。シクロオレフィン糸を上記治具に巻き付ける際、シクロオレフィン糸同士が重なっていると金属皮膜が成膜されない部分が生じることがあるので、重ならないように間隔を存して巻き付けるとよい。
シクロオレフィン糸に対して長手方向に張力を付与した状態で、以下の工程A〜工程Dを行うことにより、シクロオレフィン糸を各工程で種々の溶液に浸漬した際にシクロオレフィン繊維の表面から水溶性バインダーが溶出しても、シクロオレフィン糸が解れずに糸としての形状を維持することができる。
工程A: 工程Aは、パラジウム及びスズをシクロオレフィン繊維の表面に吸着させる工程である。張力が付与された状態にあるシクロオレフィン糸と、パラジウム及びスズのコロイド触媒(キャタライザー)とを接触させることにより、シクロオレフィン繊維の表面に触媒としてのパラジウム金属を吸着又は付着させる(触媒付与)。このとき、少量のスズが2価又は4価のスズ塩としてシクロオレフィン繊維の表面に吸着又は付着する。
上記コロイド触媒を浴成分として含む溶液は、例えば、パラジウムの水和物とスズの水和物とを水に溶解させ、その後界面活性剤を加えて十分に撹拌を行いながら、ここに還元剤を添加する方法等、従来既知の方法により調製することができる。また、一般にキャタライザーとして市販されているものを用いることもできる。上記触媒付与は、シクロオレフィン糸を上記コロイド触媒を浴成分として含む溶液に浸漬することによって行ってもよく、シクロオレフィン糸をスズ水溶液に浸漬した後にパラジウム水溶液に浸漬することによって行ってもよい。
また、パラジウム及びスズをシクロオレフィン繊維の表面に吸着させ易くするために、シクロオレフィン繊維の表面に触媒を付与する前に、シクロオレフィン繊維の表面調整処理(コンディショニング)を行っておくことが好ましい。表面調整処理は、張力が付与されたシクロオレフィン糸を、界面活性剤を含むコンディショニング溶液に液温25℃〜60℃で1分間〜20分間浸漬することにより行う。上記コンディショニング溶液は、カチオン系界面活性剤を含むものが好ましい。カチオン系界面活性剤を含むコンディショニング溶液にシクロオレフィン糸を浸漬すると、シクロオレフィン繊維の表面にカチオン系界面活性剤が吸着し、カチオン系界面活性剤の親水基がマイナスに帯電する。これにより、上記工程Aにおいてシクロオレフィン繊維の表面にパラジウムを均一に吸着し易くすることができる。カチオン系界面活性剤を含むコンディショニング溶液としては、市販のコンディショニング溶液、例えば、ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製CC−231等を用いることができる。
さらに、表面調整処理を行った後且つシクロオレフィン繊維の表面に触媒を付与する前に、プレディップ処理を行うことが好ましい。プレディップ処理として、上記触媒付与に用いるものと同一の上記コロイド触媒を浴成分として含む溶液に浸漬する。これにより、表面調整処理に用いたコンディショニング溶液等の不純物が上記触媒付与に用いる溶液に混入することを防ぐことができる。
工程B: 工程Bは、シクロオレフィン繊維の表面に吸着しているパラジウムを活性化するための工程である(アクセレーター)。工程Aで得られたシクロオレフィン糸を、濃度が0.1%〜10%程度の硫酸に浸漬することにより、シクロオレフィン繊維の表面に付着しているスズを酸化させてパラジウムを還元し、後述する工程Cの無電解めっき反応における初期析出を促進することができる。
また、上記アクセレーターを行ったシクロオレフィン糸は、必須ではないが、0.01g/L〜1g/Lの塩化パラジウム溶液に浸漬することが好ましい(アクチベーター)。これにより、工程Cの無電解めっき反応における初期析出をより均一的に反応させることができる。
工程C: 工程Cは、無電解めっき処理によってシクロオレフィン繊維の表面に金属又は合金からなる金属皮膜を成膜する工程である。工程Bで得られたシクロオレフィン糸を、金属皮膜を構成する金属を含む従来既知のめっき浴を構成する無電解めっき液に浸漬することにより、無電解めっき反応によって、シクロオレフィン繊維の表面に吸着するパラジウム金属を触媒としてシクロオレフィン繊維の表面に金属が析出し、金属皮膜が成膜される。このとき、無電解めっき液が含有する金属成分の種類に応じた金属又は合金が適宜析出する。
無電解めっき液が含有する金属成分としては、Cu、Ni、Co、Au、Ag、Pd、Rh、Pt、In、Sn、P、S、V、Cr、Mn、Fe、Zn、Mo、Cd、W、Re、Tl等を挙げることができる。金属皮膜付シクロオレフィン糸を導電性ウエアラブル繊維として用いる場合には、銅からなる金属皮膜を成膜することが好ましい。
工程D: 工程Dは、工程Cで得られたシクロオレフィン糸のシクロオレフィン繊維に付着した水分を除去するための熱処理を行う工程である。工程Cで得られたシクロオレフィン糸のシクロオレフィン繊維の表面には金属皮膜が設けられている。しかしながら、シクロオレフィン糸を無電解めっき液から引き上げた時点では、シクロオレフィン繊維の表面に付着している水分の存在によって金属皮膜はシクロオレフィン繊維に対する密着性が乏しい状態にある。
そこで、工程Dでは、工程Cで得られたシクロオレフィン糸を熱処理することにより、シクロオレフィン繊維に付着した水分を除去する。処理温度は50℃以上(好ましくは100℃以上)且つシクロオレフィンポリマー樹脂の溶融温度(約160℃)以下の温度とし、水分が完全に除去されるまで3分間〜30分間加熱する。水分が除去されると、金属皮膜はシクロオレフィン繊維の表面に対して十分な密着強度を得ることができる。処理温度が50℃未満であったり、加熱時間が不足した場合には、水分除去が不十分となり、金属皮膜の密着強度が低下し、剥離し易くなる。
上述のとおり、本実施形態の製造方法では、シクロオレフィン糸に対して長手方向に張力を付与した状態で上記工程A〜工程Dを行うことにより、途中でシクロオレフィン糸が解れることなく、糸としての形状を維持しているシクロオレフィン繊維の表面に金属皮膜が成膜された金属皮膜付シクロオレフィン糸を得ることができる。
工程Dを終えた後、上記治具に巻き付いた状態にある金属皮膜付シクロオレフィン糸を治具から取り外す。金属皮膜が張力付与状態にあるシクロオレフィン繊維の表面に成膜されその表面に強固に密着しているために、治具から取り外された金属皮膜付シクロオレフィン糸は、金属皮膜の存在によって張力付与前の長さに戻ることなく伸長した状態を維持している。
本実施形態では、無電解めっき処理によってシクロオレフィン繊維上に金属皮膜を成膜しているが、上記工程Dに続いて以下の工程Eを行うことにより、当該金属皮膜上にさらに金属皮膜を成膜することもできる。
工程E: 工程Eは、上記工程A〜工程Dで得られた金属皮膜付シクロオレフィン糸に対して無電解めっき処理又は電解めっき処理を施すことにより、金属皮膜付シクロオレフィン糸の表面に金属皮膜を成膜する工程である。無電解めっき処理又は電解めっき処理は、張力が付与された状態にある金属皮膜付シクロオレフィン糸に対して行う。無電解めっき処理又は電解めっき処理を施した後、工程Dと同様に熱処理を行う。これにより、金属皮膜付シクロオレフィン糸に付着する水分を除去すると共に、成膜された金属皮膜を密着させることができる。
無電解めっき処理又は電解めっき処理では、従来既知のめっき浴を用いることができる。工程Eでは、例えば、工程A〜工程Dで得られた銅皮膜の上に銀皮膜や金皮膜を成膜してもよいし、銅皮膜の一部を銀皮膜や金皮膜に置換してもよい。また、工程A〜工程Dで得られた銅皮膜の上にさらに銅皮膜を成膜して膜厚を確保してもよい。
本実施形態の製造方法では、上記矩形の枠体からなる治具にシクロオレフィン糸を伸長させながら巻き付けることによりシクロオレフィン糸へ張力を付与した状態で上記工程A〜工程Dを行っているが、汎用的な繊維めっき装置を用いてもよい。具体的には、シクロオレフィン糸が巻き付けられたボビンから当該シクロオレフィン糸に対して張力が付与された状態で当該シクロオレフィン糸を送り出し、送り出されたシクロオレフィン糸に対してめっき糟等で上記工程A〜上記工程Cを行い乾燥装置で上記工程Dを行った後、別のボビンによって張力が付与された状態で巻き取ることにより、シクロオレフィン糸へ張力を付与した状態で上記工程A〜工程Dを行うことができる。
また、本実施形態の製造方法では、工程Cの無電解めっき処理の前処理として工程A及び工程Bを行っているが、従来既知の前処理を行ってもよい。例えば、工程Aの前に、シクロオレフィン繊維の表面に付着した油脂分等の汚染物質を除去するために、アルカリ水溶液を用いた脱脂処理や、超音波洗浄、プラズマ洗浄を行ってもよい。また、工程Aの前に、有酸素雰囲気下での紫外線照射やオゾン水への浸漬等による表面改質処理を行ってもよい。
以下では実施例を挙げて、本件発明をより具体的に説明するが、下記実施例に本件発明が限定されるものではないのは勿論である。
本実施例では、シクロオレフィン糸として、結晶性のジシクロペンタジエン開環重合体水素添加物からなる樹脂を溶融紡糸したシクロオレフィン繊維を水溶性バインダーによって結着したシクロオレフィン糸(日本ゼオン株式会社製、糸径18μm、繊維径5μm、繊維数24本)を長さ1m用意した。まず、矩形の枠体(横幅70mm)からなる治具にシクロオレフィン糸を伸長させながら枠体の横方向に巻き付けた。
続いて、図1に示す手順で工程A〜工程Dを行った。工程Cの無電解めっき液の組成は以下のとおりであり、浴温度は50℃、pHは12.6とした。以上により、本実施例では、金属皮膜が銅からなり膜厚1μmである金属皮膜付シクロオレフィン糸を得た。
EDTA・4Na 15g/dm
CuSO・5HO 10g/dm
2,2−ビピリジン 10ppm
PEG−4000 100ppm
ホルマリン 8ml/L
本実施例では、工程Cの無電解めっき液の組成を以下のとおりとし、浴温度を40℃、pHを8.0とした以外は、実施例1と全く同一にして図1に示す工程を順に行った。以上により、本実施例では、金属皮膜がニッケル−リン合金からなり膜厚1μmである金属皮膜付シクロオレフィン糸を得た。
硫酸ニッケル・六水和物 15g/dm
無水クエン酸 9g/dm
グリシン 7g/dm
硫酸アンモニウム 26g/dm
次亜リン酸ナトリウム・一水和物 21g/dm
水酸化ナトリウム 18g/dm
ビスマス 1mg/dm
チオ硫酸ナトリウム・五水和物 2mg/dm
本実施例では、実施例1と全く同一にして工程A〜工程Dを行った後、さらに工程Eを行った。本実施例の工程Eでは、まず、図1に示す工程によって得られた銅皮膜付シクロオレフィン糸に対してプリディップを室温で30秒間行った後。続いて、無電解めっき液として日本マクダーミッド株式会社製スターリング(登録商標)を用い、浴温度を52℃として60秒間浸漬することにより無電解めっき処理(置換めっき)を行い、銅皮膜上に銀皮膜を成膜した。上記無電解めっき液は、硝酸銀を含むノーシアンタイプの溶液である。その後、温度100℃で30分間熱処理を行った。以上により、本実施例では、銅皮膜の上に膜厚0.3μmの銀皮膜が設けられた金属皮膜付シクロオレフィン糸を得た。
本実施例では、実施例1と全く同一にして工程A〜工程Dを行った後、さらに工程Eを行った。本実施例の工程Eでは、まず、図1に示す工程によって得られた銅皮膜付シクロオレフィン糸に対してパラジウム触媒を含む溶液に30秒間浸漬した。続いて、実施例2で用いたニッケル及びリンを含む無電解めっき液に60秒間浸漬することにより、無電解めっき処理を行い、銅皮膜上にニッケル−リン合金からなる金属皮膜を成膜した。その後、無電解めっき液として日本高純度化学株式会社製IM−GOLD CNを用い、浴温度を85℃として120秒間浸漬することにより無電解めっき処理(置換めっき)を行い、その後、温度100℃で30分間熱処理を行った。ニッケル−リン合金からなる金属皮膜上に金皮膜を成膜した。以上により、本実施例では、銅皮膜上に膜厚1μmのニッケル−リン合金からなる金属皮膜が設けられ、その上に膜厚0.03μmの金皮膜が設けられた金属皮膜付シクロオレフィン糸を得た。
〔比較例1〕
本比較例1では、工程Dで熱処理を温度40℃で行った以外は、実施例1と全く同一にして工程A〜工程Dを行った。以上により、本比較例では、金属皮膜が銅からなり膜厚1μmである金属皮膜付シクロオレフィン糸を得た。
<評価>
実施例1〜4及び比較例1のシクロオレフィン糸について、図1の各工程を行っている間のシクロオレフィン糸の解れを目視で観察した。また、実施例1〜実施例4及び比較例1で得られた金属皮膜付シクロオレフィン糸を上記治具から取り外し、上記治具と同じ横幅を有する紙片に移した後に、金属皮膜付シクロオレフィン糸の中間部分10cmについて、日置電機株式会社製デジタルマルチメーターDT4256を使用して導通の有無を調べた。さらに、実施例1〜実施例4及び比較例1で得られた金属皮膜付シクロオレフィン糸について、テープ試験によって金属皮膜の密着性を評価した。結果を表1に示す。
Figure 0006746842
表1に示すとおり、実施例1〜4のシクロオレフィン糸は、いずれも、図1の各工程を行っている間、シクロオレフィン糸の解れは観察されなかった。また、実施例1〜実施例4で得られた金属皮膜付シクロオレフィン糸は、いずれも導通が得られた。実施例1〜実施例4で得られた金属皮膜付シクロオレフィン糸は、いずれも、テープ試験によって金属皮膜は剥離しなかったことから、金属皮膜が優れた密着強度を備えることが判った。
比較例1のシクロオレフィン糸は、実施例1〜実施例4と同様に、図1の各工程を行っている間、シクロオレフィン糸の解れは観察されなかった。また、比較例1で得られた金属皮膜付シクロオレフィン糸は、実施例1〜実施例4と同様に、導通が得られた。しかしながら、比較例1で得られた金属皮膜付シクロオレフィン糸は、テープ試験によって金属皮膜が剥離したことから、金属皮膜の密着強度が不十分であることが判った。これは、工程Dの処理温度が低いことによりシクロオレフィン繊維に付着した水分の除去が不十分となり、金属皮膜の密着性が低下したと考えられる。
本件発明によれば、糸としての形状を維持した状態で、シクロオレフィン繊維に金属皮膜が成膜された金属皮膜付シクロオレフィン糸を製造することができる。得られた金属皮膜付シクロオレフィン糸はウエアラブル繊維として使用することができる。例えば、金属皮膜として導電性に優れる銅を用いた金属皮膜付シクロオレフィン糸から織り地又は編み地を作り、配線や電極の役割を持たせることができる。この布地を衣料に用いれば、例えば、配線として作用する金属皮膜付シクロオレフィン糸が曲がることによって抵抗値が変わることを使用して姿勢を判断することが可能となる。
また、当該金属皮膜付シクロオレフィン糸は、ウェラブルデバイス同士を接続するための配線としての活用や、ウェラブルアンテナやセンサー、繊維ヒーターとしての活用が期待される。さらに、当該金属皮膜付シクロオレフィン糸は、抗菌繊維としても有用である。シクロオレフィンは優れた誘電特性を備える上に軽量であることから、ウェラブル用導体繊維として使用可能な金属皮膜付シクロオレフィン糸は、IoT社会において有望な素材である。

Claims (3)

  1. シクロオレフィン糸を構成するシクロオレフィン繊維の表面に金属皮膜が成膜された金属皮膜付シクロオレフィン糸の製造方法であって、
    以下の工程A〜工程Dを含み、且つ、当該工程A〜工程Dをシクロオレフィン糸に対して長手方向に張力を付与した状態で行うことを特徴とする金属皮膜付シクロオレフィン糸の製造方法。
    工程A:シクロオレフィン繊維の表面にパラジウム及びスズを吸着させる工程。
    工程B:工程Aで得られたシクロオレフィン糸のシクロオレフィン繊維の表面に吸着するスズを酸化させパラジウムを還元させる工程。
    工程C:工程Bで得られたシクロオレフィン糸に無電解めっき処理を施すことにより、シクロオレフィン繊維の表面に金属皮膜を成膜する工程。
    工程D:工程Cで得られたシクロオレフィン糸を50℃以上且つシクロオレフィンポリマー樹脂の溶融温度以下の温度で加熱することにより、シクロオレフィン繊維に付着した水分を除去する工程。
  2. 前記工程Dの後に以下の工程Eを設けた請求項1に記載の金属皮膜付シクロオレフィン糸の製造方法。
    工程E:前記工程Dで得られたシクロオレフィン糸に対して無電解めっき処理又は電解めっき処理を施す工程。
  3. 前記工程Bと工程Cとの間で、更に、シクロオレフィン糸を、0.01g/L〜1g/Lの塩化パラジウム溶液に浸漬する請求項1又は請求項2に記載の金属皮膜付シクロオレフィン糸の製造方法。
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