JP6745624B2 - 飛来物防護バリア - Google Patents

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Description

本発明は、飛来物防護バリアに関し、特に、飛来物と防護対象物との間に設けられて防護対象物を飛来物から防護するための飛来物防護バリアに関する。
自然災害のエネルギーは非常に大きいものがあり、従来、竜巻により巻き上げられた乗用車、ブロック塀、鋼製材等が建物に飛来し、大きな被害が生じることがあった。また、火山の噴火が生じた場合、噴火のエネルギーにより火山礫が2,000m程度の高さに噴き上げられて落下してくるため、火山礫が建物に飛来すると大きな被害をもたらすことになる。
かかる飛来物から建物を保護するためには、金網の使用が考えられる。特許文献1には、一般的に使用されている菱形金網を開示する。特許文献1は、太さ4〜5mmの鉄線からなる三角波状ワイヤーが並列に配列されて、隣り合う三角波状ワイヤーの山部と谷部が互いに編まれて構成される周知の菱形金網を開示する。
また、菱形金網以外では、周知のリングネットを用いることも考えられる。リングネットは、硬鋼線材で作製された線材を複数回巻き、周方向の数か所を締結手段によって線材を束ねて構成したリング部材を、それぞれ隣り合うリング部材の内周側が接触するように相互に連結することにより構成される。
リングネットによれば、飛来物がリングネットに衝突した際に、飛来物のエネルギーを衝突部からリング部材を介して外方へと均一に拡散させることができるとともに、各リング部材が他のリング部材との連結箇所で外方へ引っ張られ、図10に示すように、略円状の各リング部材(同図(A)参照)が略四角形状(同図(B)参照)となるまで大きく変形する。その結果、リングネットは飛来物の進行方向へと大きく張りだし、飛来物の大エネルギーをネットにより吸収することが可能となる。
特開平11−101026号公報
しかしながら、特許文献1の菱形金網によれば、菱形金網は鉄線、すなわち、軟鋼線材(一般に、引張強さ290〜540N/mm)から構成されていることから、竜巻等により飛来したコンクリート板等の板状物、トラック等の塊状物等の飛来物の大エネルギーを受け止めることができないおそれがある。
また、周知のリングネットによれば、その中央領域においては飛来物の進行方向に大きく張り出して飛来物の大エネルギーを受け止めることが可能であるものの、リングネットが取り付けられるワイヤロープ近傍の部位においてはリング部材の変形による飛来物のエネルギー吸収が不十分となるおそれがある。
すなわち、リング部材の変形によるエネルギーの吸収は、飛来物の衝突部からリングネットの面広がり方向へと順次リング部材が円形から略四角形状へと変形することによりなされるところ、リングネットの取付け部位付近においてリングネットに大エネルギーの飛来物が衝突した場合、ワイヤロープに飛来物のエネルギーが伝達される前に変形できるリング部材の数が少ないことから、リング部材の変形による飛来物のエネルギーの吸収が不十分となり、衝突部のリング部材に応力が集中して該部においてリングネットが破断するおそれがある。また、衝突部から最寄りのワイヤロープへの取付け部のリング部材にもリング部材の変形による飛来物のエネルギーの吸収が不十分なままエネルギーが伝達され、その取付け部のリング部材が破断するおそれがある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、飛来物のエネルギーを確実に受け止めて防護対象物を防護することができる飛来物防護バリアを提供することにある。
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、防護対象物の外側に設けられ、該防護対象物を飛来物から防護するための飛来物防護バリアにおいて、前記防護対象物の周囲に設置された複数の柱材と、該柱材に組み付けられた梁部材とを備えて構成され、該防護対象物を内部に収容するように固定して設置された骨格部材と、少なくとも前記防護対象物の上方を覆うように前記骨格部材間に張り渡され、硬鋼線材で作製されたワイヤーからなる複数のリング部材が連結されて形成されたリングネットと、を有し、前記リングネットの強度が、中央領域よりも骨格部材近傍領域において大きく設定されたことを特徴とする。

この構成によれば、骨格部材近傍領域におけるリングネットの強度が中央領域の強度よりも大きく設定されていることから、骨格部材近傍領域におけるリングネットに大エネルギーの飛来物が衝突した場合であっても、衝突部および衝突部から最寄りのワイヤロープへの取付け部におけるリング部材への応力集中によるリングネットの破断を防止することができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の飛来物防護バリアにおいて、前記リング部材の連結は、一個ずつのリング部材単位および/または二個以上のリング部材を重ねてなる多重リング部材単位の相互連結であり、前記リングネットは、前記骨格部材近傍領域のリング部材単位を構成するリング部材の重ね数が、前記中央領域におけるリング部材単位を構成するリング部材よりも多く設定されたことを特徴とする。
この構成は、請求項1に記載したリングネットの構成の一例を具体的に示したものであり、これによれば、骨格部材近傍領域のリングネットはリング部材単位を構成するリング部材の重ね数が中央領域におけるリング部材単位を構成するリング部材よりも多いことから、骨格部材近傍領域のリングネットの強度が中央領域よりも大きいものとなっている。
したがって、リング部材そのものの規格を変更することなく、リングネットの強度変更の作業がより単純なものとなっている。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の飛来物防護バリアにおいて、前記リング部材は、硬鋼線材で作製されたワイヤーからなる巻回物と、該巻回物の周方向の数か所を束ねた結束部と、を有し、前記リングネットは、前記骨格部材近傍領域のリング部材の巻回物の巻回数が前記中央領域におけるリング部材の巻回物よりも多く設定されたことを特徴とする。
この構成は、請求項1に記載したリングネットの構成の一例を具体的に示したものであり、これによれば、骨格部材近傍領域のリングネットはリング部材のワイヤーの巻回物の巻回数が中央領域のリング部材のワイヤーの巻回物よりも多いことで、強度が中央領域よりも大きいものとなっている。
したがって、リングネット中のリング部材の要求される強度に応じて巻回物の巻回数を変更させることで、リングネットによる飛来物のエネルギーの受け止めをより最適なものとすることができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載の飛来物防護バリアにおいて、前記リングネットは、前記骨格部材間に張架されたワイヤロープに対して非固定状態で取り付けられており、該ワイヤロープには、前記リングネットに対して負荷が加えられたときに前記ワイヤロープの所定範囲の伸びを許容する緩衝手段が設けられていることを特徴とする。
この構成によれば、骨格部材近傍領域においてリングネットに飛来物が衝突した際、リングネットは、ワイヤロープへの取付け部において非固定状態で取り付けられていることからこの取付け部への応力集中が回避され、該部におけるリングネットの破断が抑制される。
また、リングネットを介して飛来物の大エネルギーがワイヤロープに伝達された際、緩衝手段によってワイヤロープの伸びが許容されて飛来物のエネルギーが吸収される。
したがって、骨格部材近傍領域においてリングネットに衝突した飛来物の大エネルギーをさらに確実に受け止めることが可能となる。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか1項に記載の飛来物防護バリアにおいて、前記骨格部材間において前記リングネットよりも前記防護対象物に対して外側の位置に張り渡され、硬鋼線材で作製されたワイヤーからなる菱形金網を有し、該菱形金網の編み合わせ部における互いの屈曲部の間に硬鋼線材で作製された略直線状のワイヤーが挿通されたことを特徴とする。
この構成によれば、編み合わせ部に略直線状のワイヤーが挿通された菱形金網はその網目の開口部面積をリングネットよりも小さくすることができるので、小型の飛来物についてもより確実に受け止めることが可能となる。また、硬鋼線材で作製されたワイヤーからなる菱形金網によってバリアがより強化されている。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の何れか1項に記載の飛来物防護バリアにおいて、前記ワイヤーが、800〜2500N/mmの引張強さを有することを特徴とする。
この構成によれば、リングネットが、存在する場合には菱形金網が、一般の軟鋼線材製の線材、すなわち、鉄線(一般に、引張強さ290〜540N/mmである)に基づく汎用金網とは異なり、800〜2500N/mmの引張強さを有する、硬鋼線材で作製されたワイヤーで構成されることとなる。
したがって、大エネルギーを有する飛来物がリングネットの骨格部近傍に衝突した場合であっても的確にそのエネルギーを受け止めることが可能となる。
本発明によれば、骨格部材近傍領域におけるリングネットの強度が中央領域の強度よりも大きいことから、骨格部材近傍領域におけるリングネットに大エネルギーの飛来物が衝突した場合であっても、衝突部および衝突部から最寄りのワイヤロープへの取付け部におけるリング部材への応力集中によるリングネットの破断を防止することができる。
本発明の実施の形態に係る飛来物防護バリア10の概略斜視図である。 飛来物防護バリア10を模式的に示す一部破断平面図である。 菱形金網35の記載を省略した飛来物防護バリア10の一部破断平面図である。 リングネット25を形成するリング部材30を示す斜視図である。 (A)リングネット25の要部拡大斜視図であり、(B)図5(A)のb部拡大図である。 菱形金網35の要部拡大斜視図である。 図6のVII−VII線断面図である。 図2のVIII−VIII線断面図である。 飛来物Yが飛来物防護バリア10に衝突した際の、リングネット25および菱形金網35によるエネルギーの受け止めを示す図である。 (A)1個のリングネットに4個のリングネットが連結された、従来のリングネットを示す平面図、および(B)衝撃が加わった時のリング部材の変形状態を示す平面図である。
次に、本発明の実施の形態に係る飛来物防護バリア10を、図1〜図9を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態に係る飛来物防護バリア10の概略斜視図、図2は飛来物防護バリア10を模式的に示す一部破断平面図、図3は飛来物防護バリア10の菱形金網35の記載を省略した一部破断平面図、図4はリングネット25を形成するリング部材30を示す斜視図、図5(A)はリングネット25の要部拡大斜視図、図5(B)は図5(A)のb部拡大図、図6は菱形金網35の要部拡大斜視図、図7は図6のVII−VII線断面図、図8は図2のVIII−VIII線断面図および図9は飛来物Yが飛来物防護バリア10に衝突した際の、リングネット25および菱形金網35によるエネルギーの受け止めを示す図である。
図1に示すように、本実施の形態に係る飛来物防護バリア10は、防護対象物Xの外側において地面に固定されて立設された8本の柱材12と、これらの柱材の上端部および中央部近傍においてそれぞれ平面視略矩形に組みつけられた梁部材13,14と、からなる骨格部材を有しており、梁部材13(骨格部材)間に網状体20が張り渡された基本構成を有する。
すなわち、梁部材13によって略四角形状の枠体16が形成されている。なお、防護対象物Xは、飛来物から防護すべきものであればどのようなものであってもよく、例えば、発電所、校舎、工場および住宅等の建物や、道路、線路および空港等の交通施設等が挙げられる。本実施の形態においては、発電所のポンプ室を想定している。
また、骨格部材としては、例えば、周知のH型鋼を用いることができる。骨格部材の大きさは、防護対象物Xの大きさにより適宜に選択することができる。例えば、図1に示す枠体16の奥行は5m〜10m、枠体16の横幅は5m以上、柱部材12の長さは5m〜10m程度に設定することができる。本実施の形態においては、骨格部材は、発電所のポンプ室の骨組みのH型鋼をそのまま利用しているが、これに限られるものではない。
網状体20は、梁部材13(骨格部材)間に限らず、図1に示すように、飛来物防護バリア10の四隅の柱材10,10および梁部材13,14(骨格部材)間にも張り渡されているが、以下、飛来物防護バリア10の天面、すなわち、梁部材13(骨格部材)間に張り渡された網状体20を例にその構成を具体的に説明する。
網状体20は、図2に示すように、硬鋼線材で作製されたワイヤーからなる多数のリング部材30が連結された網状体として形成されたリングネット25と、リングネット25よりも飛来物が飛来してくる側(すなわち、防護対象物Xから見て外側)に配置され、硬鋼線材で作製された複数のワイヤーが編み合わせられた網体として形成された菱形金網35と、を含む。
なお、本願発明の飛来物防護バリアの網状体20としては、少なくともリングネット25を有していればよく、菱形金網35や他の網体を有さないものであってもよい。
リングネット25は、図3に示すように、一のリング部材30が、同図の左上、右上、左下および右下のそれぞれ隣り合う位置にある4個の他のリング部材30と連結されて形成されたリングネットである。なお、一のリング部材30は、4個の他のリング部材30と連結される場合に限られず、例えば、6個の他のリング部材30と連結することとしてもよい。
リング部材30は、図4に示すように、硬鋼線材で作製されたワイヤーからなる巻回物30aと、該巻回物の周方向の数か所を束ねた結束部30bと、を有する。リング部材30の直径は、例えば、250mm〜350mmの範囲内で変更することができ、本実施の形態では約300mmとしている。
巻回物30aのワイヤーの巻回数は、想定する飛来物の性状に合わせた任意の回数とすることができ、例えば、5回〜21回、好ましくは、9回〜19回である。 結束部30bは、例えば、巻回物30aの周方向数か所に、断面C形の略筒状の金具をその金具の解放部を通して巻回物30aに嵌めた後に、締め付け工具によって巻回物30aに固定することにより構成することができる。
リングネット25は、図3および図5に示すように、枠体16(骨格部材)近傍領域において二個のリング部材30を重ねてなる二重リング部材単位33が相互に連結され、中央領域において一個ずつのリング部材単位(リング部材30)が相互に連結された構成を有する。
これにより、リングネット25は、枠体16(骨格部材)近傍領域における強度がその中央領域の強度よりも大きいものとなっている。なお、本願明細書において、リングネット25の強度とは、引張強さのことを意味する。
菱形金網35は、図6に示すように、並列に配置された、平面視で三角波状に形成された三角波状ワイヤー36が、屈曲部36aにおいて互いに編み合わせられた菱形金網である。
三角波状ワイヤー36は、硬鋼線材で作製されたワイヤーであり、ほぼ直線状の直線部36bが屈曲部36aと交互に繰り返して螺旋状に一方向に伸長する構成を有する。
屈曲部36a同士の編み合わせ部35aには、図6および図7に示すように、互いの屈曲部36a,36aの間に硬鋼線材で作製された略直線状のワイヤー37が挿通されている。
なお、リングネット25のリング部材30の巻回物30aを構成するワイヤー、三角波状ワイヤー36および略直線状のワイヤー37はすべて硬鋼線材から作製されており、特に、JIS G 3506に規定される硬鋼線材から作製されたものである。かかる硬鋼線材から、ワイヤーである硬鋼線(JIS G 3521)、亜鉛めっき鋼線(JIS G 3548)等が作製される。これらのワイヤーの材質は異なっていてもよく、同じであってもよい。巻回物30aを構成するワイヤー、三角波状ワイヤー36および略直線状のワイヤー37の引張強さは、例えば、800〜2500N/mm、好ましくは1000〜2000N/mm、特に1200N/mm以上であることが有利である。
また、ワイヤー(素線)の直径は、菱形金網35の場合には、例えば、2.5mm〜5mmの範囲とすることができ、リングネット25の場合には、例えば、2.5mm〜6mmの範囲とすることができる。
さらに、巻回物30aを構成するワイヤー、三角波状ワイヤー36および略直線状のワイヤー37には、必要により被覆処理がなされていてもよい。これにより、ワイヤー相互の接触部分の摩耗や、腐食等を防止することができる。被覆処理としては、例えば、亜鉛めっき処理やポリエステル被覆処理が挙げられる。いずれのワイヤーにも被覆処理が施されていることが好ましい。
菱形金網35の網目の大きさは、リングネット25のリング部材30の直径よりも小さい。具体的には、図6に示すように、菱形金網35の網目の内接円の直径D(図6参照)が、リングネット25のリング部材30の直径よりも小さければよい。さらに、小径の棒状物等の受け止めの観点から、菱形金網35の内接円の直径Dは、好ましくは65mm以下であり、特に好ましくは、50mm以下である。この場合において、菱形金網35の網目とは、三角波状ワイヤー36と略直線状のワイヤー37とにより形成された三角形状の網目をいう。なお、本実施の形態においては、菱形金網35の網目の内接円の直径Dは48mmである。
次に、リングネット25および菱形金網35の、枠体16(骨格部材)内部への張り渡しについて説明する。
枠体16の四辺には、図2に示すように、4本のワイヤロープ40が井桁状に張り渡されている。このワイヤロープ40に対して、図5に示すように、二重リング部材単位33のリング部材30がシャックル42等の取付け手段を介して取り付けられることで、リングネット25が枠体16(骨格部材)の内部に張り渡される。
同じく、図6に示すように、菱形金網35の外縁部がシャックル42等の取付け手段を介して取り付けられることで、菱形金網35が枠体16(骨格部材)の内部に張り渡される。
すなわち、リングネット25および菱形金網35は、略四角形状の枠体16(骨格部材)の四辺に井桁状に張り渡されたワイヤロープ40に対して、シャックル42を介してそれぞれ所定の遊びを持って(すなわち、非固定状態で)取り付けられている。
また、リングネット25および菱形金網35は、図8に示すように、所定の距離に設定された初期たるみIを有する。初期たるみIは、各ネット25,35のシャックル42等への取付け点の高さ位置と張り渡し状態の各ネットの最下点の高さ位置との差により表すことができる。初期たるみは、各ネット25,35の横スパンの10〜20%の範囲内で設定することができ、好ましくは15%以内の範囲内とすることができる。本実施の形態において、リングネット25の初期たるみI及び菱形金網35の初期たるみIは、それぞれ約0.5mに設定されている(横スパンの12.5%である)。
このように初期たるみIを設定することで、飛来物の運動エネルギーをさらに効率良く吸収することが可能となる。
また、ワイヤロープ40には、網状体20(リングネット25および菱形金網35)に対して飛来物による負荷が加えられたときにワイヤロープ40の所定範囲の伸びを許容する緩衝手段44が設けられている。
緩衝手段44は、網状体20に対して負荷が加えられたときにワイヤロープ40の所定範囲の伸びを許容しうるものであればどのようなものであっても良いが、本実施の形態においては、リング状の鋼管44aの内部にワイヤロープ40が挿通する構成を有する、いわゆるブレーキリングである。
このブレーキリングは、ワイヤロープ40に大きな張力が作用すると鋼管44aが絞られるように塑性変形して縮径し、これによりワイヤロープ40の所定範囲の伸びが許容され、飛来物のエネルギーが吸収される。
次に、上記構成を有する飛来物防護バリア10の天面に設けられた網状体20における枠体16(骨格部材)近傍領域に、飛来物Yとして重量あるH型鋼等の鋼製材(長さ4.2m×幅0.3m×奥行0.2m)が上方から衝突した場合を例に、飛来物防護バリア10の作用を図9を参照して説明する。なお、図9は、飛来物防護バリア10を、図2のVIII−VIII線断面に相当する断面で示している。
図9に示すように、飛来物Yはリングネット25よりも外側に位置する菱形金網35に衝突し、さらに矢印150方向に移動してリングネット25に衝突する。このとき、飛来物Yのエネルギーは菱形金網35およびリングネット25の面広がり方向へと分散伝達され、且つ、菱形金網35およびリングネット25の塑性変形によって吸収される。しかしながら、リングネット25に着目すると、同図に示すように、衝突部とワイヤロープ40との距離が近く、ワイヤロープ40に飛来物Yのエネルギーが伝達される前に変形できるリング部材30の数が少ないことから、リング部材30の変形による飛来物Yのエネルギー吸収が不十分となり、衝突部および衝突部から最寄りのワイヤロープ40への取付け部のそれぞれのリング部材30への応力の集中が懸念される。
しかしながら、本実施の形態によれば、枠体16(骨格部材)近傍領域のリングネット25は二重リング部材単位33の相互連結によって強度が中央領域よりも大きいものとなっているので、衝突部および衝突部から最寄りのワイヤロープ40への取付け部への応力の集中によるリングネット25の破断を防止することができる。
また、リングネット25および菱形金網35は、略四角形状の枠体16(骨格部材)の四辺に井桁状に張り渡されたワイヤロープ40に対して、シャックル42を介してそれぞれそれぞれ所定の遊びを有して(すなわち、非固定状態で)取り付けられていることから、枠体16(骨格部材)の近傍に飛来物Yが衝突した場合であっても、ワイヤロープ40に対してリングネット25および菱形金網35がそれぞれワイヤロープ40の延在方向に若干スライド移動することが許容される。
したがって、リングネット25および菱形金網35のワイヤロープ40への取付け部における応力の集中、およびこの応力の集中による各ネット25,35および/またはワイヤロープ40の破断を回避することができる。
さらに、ワイヤロープ40には緩衝手段44が設けられていることから、枠体16(骨格部材)近傍領域に飛来物Yが衝突した際、緩衝手段44によってワイヤロープ40の伸びが許容され、これにより、図9に示すように、ワイヤロープ40の位置が矢印250方向に移動して飛来物Yのエネルギーを吸収し、衝突部および衝突部から最寄りのワイヤロープ40への取付け部への応力の集中によるリングネット25の破断をより効果的に防止することができる。
そのうえ、上述のとおり、枠体16(骨格部材)近傍領域におけるリングネット25の強度の向上は、二重リング部材単位33の相互連結によりなされているので、リング部材30そのものの規格を変更することなく、リングネット25の強度変更の作業がより単純なものとなっている。
なお、リングネット25の中央領域においては、従来どおり、衝突部からシャックル42を介したリングネット25の取付け部に至るまでに多くのリング部材30の変形によるエネルギー吸収効果が得られることから、中央領域のリングネット25の強度を枠体16(骨格部材)の近傍における強度にまで高める必要はなく、これにより、リングネット25のエネルギー吸収性能の最適化が図られている。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、本実施の形態において、枠体16(骨格部材)近傍領域において、リング部材30として二重リング部材単位33を採用することで、骨格部材近傍領域におけるリングネット25の強度をその中央領域よりも大きいものとしているが、これに限られるものではない。
例えば、枠体16(骨格部材)近傍領域において、リング部材30として、巻回物30aのワイヤーの巻回数をリングネット25の中央領域の巻回物30aの巻回数よりも多くすることにより、骨格部材近傍領域におけるリングネット25の強度をその中央領域よりも大きいものとしてもよい。
具体的には、リングネット25の骨格部材近傍領域におけるリング部材30の巻回物30aのワイヤーの巻回数を、その中央領域のリング部材30の巻回物30aのワイヤーの巻回数に対して1.2倍〜2.0倍、好ましくは1.5倍〜2.0倍の範囲で多くすることができる。
これにより、リングネット25中のリング部材30の要求される強度に応じて巻回物30aの巻回数を変更させることで、リングネット25による飛来物Yのエネルギーの受け止めをより確実なものとすることができる。
また、本実施の形態においては、リング部材単位として、リングネット25の骨格部材近傍領域における二重リング部材単位33および中央領域における一重のリング部材単位(リング部材30)を採用しているが、これに限られるものではない。
すなわち、リングネット25の骨格部材近傍領域のリング部材単位を構成するリング部材30の重ね数が、中央領域におけるリング部材単位を構成するリング部材30よりも多くなるのであれば、どのようなリング部材単位を採用してもよい。
さらに、本実施の形態において、リングネット25は枠体16の内部に張り渡されているが、これに限られるものではなく、防護対象物Xの外側に固定して設定された骨格部材に張り渡されるのであればどのようなものであってもよい。
例えば、骨格部材として地面に固定して設けられた二本一対の支柱の上端部間および下端部間に上部ワイヤロープおよび下部ワイヤロープをそれぞれ張り渡し、この上部ワイヤロープおよび下部ワイヤロープ間にリングネット25を張り渡す構成としてもよい。
かかる構成の変更が可能であることは、リングネット25に限らず、菱形金網35等の他の網体に対しても同様に当てはまる。
また、本実施の形態では、リングネット25以外に菱形金網35を採用しているが、菱形金網35に代えて、亀甲金網等の他の網目形状を有する網体を採用することができる。
さらに、菱形金網35に加えて、菱形金網35よりも飛来物が飛来してくる側(すなわち、防護対象物から見て外側)に第3の網体を追加することとしてもよい。
第3の網体は、菱形金網35同様、硬鋼線材で作製された複数のワイヤーが編み合わせられた網体として形成された編み合わせ網体である。第3の網体としてはどのようなものを用いてもよいが、菱形金網35と同じ金網を用いることが、飛来物防護バリアの製造効率の観点から有利である。
そのうえ、上記実施の形態においては、リングネット25の初期たるみI及び菱形金網35の初期たるみIは同じに設定しているが、各ネット25,35の横スパンの10〜20%の範囲内で、例えば、リングネット25の初期たるみIを菱形金網35の初期たるみIよりも大きいものとしてもよい。これによれば、飛来物のエネルギーの吸収モードを変更させることができる。
10 飛来物防護バリア
15 骨格部材
25 リングネット
30 リング部材(リング部材単位)
30a 巻回物
30b 結束部
33 二重リング部材単位(多重リング部材単位)
35 菱形金網
36a 屈曲部
37 略直線状のワイヤー
40 ワイヤロープ
44 緩衝手段

Claims (6)

  1. 防護対象物の外側に設けられ、該防護対象物を飛来物から防護するための飛来物防護バリアにおいて、
    前記防護対象物の周囲に設置された複数の柱材と、該柱材に組み付けられた梁部材とを備えて構成され、該防護対象物を内部に収容するように固定して設置された骨格部材と、
    少なくとも前記防護対象物の上方を覆うように前記骨格部材間に張り渡され、硬鋼線材で作製されたワイヤーからなる複数のリング部材が連結されて形成されたリングネットと、を有し、
    前記リングネットの強度が、中央領域よりも骨格部材近傍領域において大きく設定されたことを特徴とする飛来物防護バリア。
  2. 前記リング部材の連結は、一個ずつのリング部材単位および/または二個以上のリング部材を重ねてなる多重リング部材単位の相互連結であり、
    前記リングネットは、前記骨格部材近傍領域のリング部材単位を構成するリング部材の重ね数が、前記中央領域におけるリング部材単位を構成するリング部材よりも多く設定されたことを特徴とする請求項1に記載の飛来物防護バリア。
  3. 前記リング部材は、硬鋼線材で作製されたワイヤーからなる巻回物と、該巻回物の周方向の数か所を束ねた結束部と、を有し、
    前記リングネットは、前記骨格部材近傍領域のリング部材の巻回物の巻回数が前記中央領域におけるリング部材の巻回物よりも多く設定されたことを特徴とする請求項1に記載の飛来物防護バリア。
  4. 前記リングネットは、前記骨格部材間に張架されたワイヤロープに対して非固定状態で取り付けられており、
    該ワイヤロープには、前記リングネットに対して負荷が加えられたときに前記ワイヤロープの所定範囲の伸びを許容する緩衝手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の飛来物防護バリア。
  5. 前記骨格部材間において前記リングネットよりも前記防護対象物に対して外側の位置に張り渡され、硬鋼線材で作製されたワイヤーからなる菱形金網を有し、
    該菱形金網の編み合わせ部における互いの屈曲部の間に硬鋼線材で作製された略直線状のワイヤーが挿通されたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の飛来物防護バリア。
  6. 前記ワイヤーが、800〜2500N/mmの引張強さを有することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の飛来物防護バリア。
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